説明

親局装置および光信号受信方法

【課題】複数の異なる伝送レートが混在するPONシステムにおいて、それぞれの伝送レートで良好な受信感度を得ることが可能な親局装置を得ること。
【解決手段】TIA12の利得を調整する利得調整部16、10G用利得調整部17と、識別番号と、伝送速度と、受信電圧と、設定電圧とを子局装置ごとに記憶するためのメモリ30と、メモリ30に記憶されている各子局装置の伝送速度に基づいて、子局装置ごとに前記10G用利得調整部17を用いるかどうかを判断し、また、トレーニング通信時に子局装置ごとに設定電圧を求めて前記メモリ30に記憶し、通常通信時に前記メモリ30から設定電圧を読み出し、読み出した設定電圧を前記利得調整部16、または前記利得調整部16および前記10G用利得調整部17に印加する制御手段15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる複数の伝送レートで光信号を受信可能な親局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及や、高精細映像配信・交換を代表とするブロードバンドサービスの一般加入者エリア(加入者系)への拡大に伴って、加入者系通信網における加入者数、データトラフィック量が爆発的に増大している。このような加入者系での大容量通信の要求に応えるため、光ファイバを介して広帯域な光信号による通信を可能とするFTTH(Fiber to the home)サービスの本格的な市場展開が開始されている。
【0003】
FTTHシステムには、一例として、PON(Passive Optical Networks)システムがある。PONシステムは、一芯の光ファイバと光カプラを伝送路として、親局装置(OLT:Optical Line Terminal)が、複数の子局装置(ONU:Optical Network Unit)を収容している。PONシステムでは、複数の子局装置が1つの親局装置を共有することで、親局装置の数を少なくすることができる。そのため、PONシステムは、経済的に優位であり、FTTHシステムの主要インフラとして導入が進んでいる。
【0004】
PONシステムにおいて、親局装置は、距離や信号出力が異なる各子局装置からの受信信号を、高速に最適受信レベルに調整する必要がある。下記特許文献1には、受信信号を最適なレベルに増幅する際のAGC(Auto Gain Control)利得調整を高速に行う技術が開示されている。具体的には、親局装置は、各子局装置から受信した光信号の受信レベルに応じたAGC利得を得るために、利得調整回路に印加する設定電圧をメモリに記憶し、テーブルとして保持する。そして、任意の子局装置から通信要求があった場合、親局装置は、メモリ内のテーブルから設定電圧を読み出し、利得調整回路に印加することによって最適なAGC利得に調整する。これにより、親局装置は、良好な受信感度を確保することができる。
【0005】
また、近年、PONシステムでは、既存の1Gbps−PONシステムの更なる広帯域化を目指し、10Gbps−PONシステムに関する標準化活動等が盛んに行われている。10Gbps−PONシステムの運用形態としては、一般的に、既存の1Gbpsと混在したシステムが提案されており、1G/10G混在システムに対応した装置の開発が進められている。ここで、1G/10Gが共存(混在)するPONシステムでは、親局装置は、良好な受信感度を確保するために、子局装置から受信した光信号の伝送レートに応じて最適受信レベルを変更する。それぞれの伝送レートで良好な受信感度を確保するために、親局装置は、GB積(Gain Bandwidth product)で決定されるアンプの特性から、伝送レートに応じて最適利得を変更する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−020417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術によれば、親局装置は、受信する光信号(パケット)の受光レベルのみからAGC利得の設定電圧を決定しており、この設定電圧に基づいてAGC利得を制御している。そのため、複数の異なる伝送レートが混在しているPONシステムでは、親局装置は、特定の伝送レートでは最適なAGC利得の設定電圧を決定でき、良好な受信感度を確保できるが、特定の伝送レート以外の伝送レートでは最適なAGC利得の設定電圧を決定できず、良好な受信感度を確保できない、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の異なる伝送レートが混在するPONシステムにおいて、それぞれの伝送レートで良好な受信感度を得ることが可能な親局装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、伝送速度が速い高速光信号と当該高速光信号よりも遅い低速光信号が混在するPONシステムにおいて、複数の子局装置との間で光信号による通信を行う親局装置であって、子局装置から受信した光信号を光電変換して電気信号を出力する受光手段と、光電変換後の電気信号を増幅する増幅手段と、所定の期間における増幅後の電気信号の電圧の平均値を検出し、検出した平均値を受信電圧とする平均値検出手段と、所定の印加電圧に基づいて前記増幅手段の利得を調整する機能を有する第一の利得調整手段と、前記第一の利得調整手段と同じ機能を有し、前記第一の利得調整手段と並列に配置され、高速光信号による通信を行う子局装置から高速光信号を受信するときに前記第一の利得調整手段と共に用いられる第二の利得調整手段と、子局装置の識別番号と、伝送速度と、受信電圧と、当該受信電圧を得たときに前記第一の利得調整手段または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に印加された電圧である設定電圧とを、子局装置ごとに記憶するための記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている伝送速度に基づいて、子局装置ごとに前記第二の利得調整手段を用いるかどうかを判断し、また、トレーニング通信時に子局装置ごとに設定電圧を求めて前記記憶手段に記憶し、通常通信時に前記記憶手段から設定電圧を読み出し、読み出した設定電圧を前記第一の利得調整手段、または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に印加する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の異なる伝送レートが混在するPONシステムにおいて、それぞれの伝送レートで良好な受信感度を得ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、1G/10Gの異なる伝送レートが混在するPONシステムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、トレーニング通信を行うPONシステムを示す図である。
【図3】図3は、OLT受信部の構成例を示す図である。
【図4】図4は、トレーニングモード時の1G/10G親局装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は、自走モード時の1G/10G親局装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる親局装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態.
図1は、1G/10Gの異なる伝送レートが混在するPONシステムの構成例を示す図である。PONシステムは、1G/10G親局装置(OLT)1と、1G子局装置(ONU)2と、10G子局装置(ONU)3と、1G子局装置(ONU)4と、から構成される。1G/10G親局装置1は、1G/10Gbpsのデュアルレートを受信可能な親局装置である。1G子局装置2,4は、1Gbps送受信専用の子局装置である。10G子局装置3は、10Gbps送受信専用の子局装置である。パケット5は、各子局装置から送信された異なる送信パワーおよび伝送レートの上り側パケット信号である。
【0014】
各子局装置は、それぞれの伝送レートでパケットデータを時間的に間欠したバースト光信号として1G/10G親局装置1に対し送信する。ここで、1G/10G親局装置1が受信するパケット5は、各子局装置の送信パワーおよび各子局装置から1G/10G親局装置1までの伝送路損により、1G/10G親局装置1に到達する時点では異なるパワーのパケットデータである。
【0015】
つぎに、本実施の形態の概要を説明する。図2は、トレーニング通信を行うPONシステムを示す図である。PONシステムの構成は図1と同等である。1G/10G親局装置1は、OLT受信部10と、AD(Analogue to Digital)/DA(Digital to Analogue)変換制御部20と、メモリ30と、を備える。
【0016】
OLT受信部10は、複数の異なる伝送レート(伝送速度)が混在する場合に、伝送レートごとに最適な受信利得に調整し良好な受信感度を得る光信号受信部である。伝送レートごとに最適な受信利得とは、伝送レートによって最適な出力レベルが異なるため、それぞれの出力レベルを得るための利得をいう。複数の伝送レートが存在する場合、いずれかの伝送レートに最適な出力レベルに他の伝送レートの出力レベルを合わせると、他の伝送レートにおいて良好な受信感度を得ることができないためである。詳細な動作については後述する。
【0017】
AD/DA変換制御部20は、OLT受信部10がメモリ30に記録する設定電圧(利得調整電圧)をAD変換し、また、OLT受信部10がメモリ30から設定電圧を読み出すときにDA変換を行う。
【0018】
メモリ30は、テーブル31を備え、OLT受信部10が設定した設定電圧等を子局装置ごとに記憶するための記憶部である。
【0019】
まず、1G/10G親局装置1は、各子局装置の最適利得を決定するため、各子局装置との間でトレーニング通信を行う。1G/10G親局装置1から要求を受けた各子局装置は、利得を決定するために十分なパケット長のトレーニングデータ(6〜8)を送信する。トレーニングデータ6〜8を受信した1G/10G親局装置1では、OLT受信部10が、最適な利得に調整する。OLT受信部10は、利得を調整した際に用いた設定電圧をAD/DA変換制御部20によりAD変換し、メモリ30に記憶させる。メモリ30では、子局装置ごとに、テーブル31に示す内容を記憶している。
【0020】
テーブル31は、ONU識別番号と、伝送レート(1G/10G)と、受信パワー(Pf)と、設定電圧と、から構成される。ONU識別番号は、PONシステムに接続されている子局装置を識別するための番号である。伝送レート(1G/10G)は、接続している子局装置が行う光通信の伝送速度を示す。ここでは、1Gbpsと10Gbpsの2種類とする。伝送レートは、各子局装置が当該PONシステムに接続する際に、1G/10G親局装置1において認識可能である。受信パワー(Pf)は、受信パケットの受信パワーを示す。設定電圧は、後述する処理に基づいて、子局装置ごとに最適利得を得るために設定した電圧である。実運用時、1G/10G親局装置1は、テーブル31に保持された情報に基づいて子局装置ごとに最適利得を調整し、各子局装置からのパケットを受信する。
【0021】
つぎに、1G/10G親局装置1のOLT受信部10の構成について説明する。図3は、OLT受信部10の構成例を示す図である。OLT受信部10は、受光素子11と、TIA(Trans Impedance Amplifier)12と、平均値検出部13と、セレクタ14と、制御部15と、利得調整部16と、10G用利得調整部17と、ボルテージホロワ回路18,19と、を備える。
【0022】
受光素子11は、各子局装置からの光信号(パケット)を受信し、光電変換して電気信号(電流)を出力する。TIA12は、光電変換後の電流を電圧に変換し、増幅後に電圧出力する。平均値検出部13は、TIA12からの出力である受信パワーの平均値を検出する。
【0023】
セレクタ14は、制御部15からのモード切替信号に基づいて、各子局装置の最適利得を決定するときのトレーニングモード、または、メモリに記憶された設定電圧の情報から各子局装置の最適利得に調整する自走モードによって平均値検出部13からの出力先を切り替える。
【0024】
制御部15は、セレクタ14のモード切り替え、および10G用利得調整部17の1G/10Gモードの切り替えを制御する。また、トレーニングモード時はセレクタ14からの受信パワーに応じて利得調整部16、または利得調整部16および10G用利得調整部17へ電圧を印加し、自走モード時はメモリ30が備えるテーブル31から設定電圧を読み出して利得調整部16、または利得調整部16および10G用利得調整部17へ印加する。
【0025】
利得調整部16は、TIA12の利得を決定する帰還抵抗の働きをする。利得調整部16の構成としては、例えば、FET(Field Effect Transistor)に印加するゲート電圧を変化させることによって、ソース−ドレイン間の抵抗値を変化させる方法があるが、これに限定するものではない。
【0026】
10G用利得調整部17は、TIA12に対して利得調整部16と並列に配置されており、10G信号が入力された際、帯域を広帯域化するための10G用の帰還抵抗の働きをする。具体的な構成としては、利得調整部16と同等である。
【0027】
ボルテージホロワ回路18は、AD/DA変換制御部20経由でメモリ30に記憶する設定電圧を保持する。ボルテージホロワ回路19は、AD/DA変換制御部20経由でメモリ30から読み出す設定電圧を保持する。
【0028】
つづいて、子局装置ごとにTIA12の最適利得を求めるモードであるトレーニングモード時の1G/10G親局装置1の動作について説明する。図4は、トレーニングモード時の1G/10G親局装置1の動作を示すフローチャートである。まず、1G/10G親局装置1では、1G/10G親局装置1全体を制御する図示しないOLT制御部の制御に基づいて、任意のタイミング(ある時間ごと、あるパケットごと、等)で、トレーニング通信要求を所定の識別番号を持つ子局装置(ここでは、ONU#Xとする。)に送信する(ステップS1)。
【0029】
このとき、OLT受信部10では、制御部15から送信されたモード切替信号に基づいて、セレクタ14のモードをトレーニングモードに切り替える(ステップS2)。具体的に、セレクタ14は、平均値検出部13からの受信パワーを左方のパスを経由して制御部15へ出力するように切り替える。
【0030】
つぎに、OLT受信部10では、トレーニング通信要求を受けたONU#Xからのトレーニングデータを受信する(ステップS3)。詳細には、OLT受信部10において、受光素子11が前記ONU#Xからのトレーニングデータを受信し、光電変換後、TIA12へ出力する。ここでは、電流で出力される。TIA12は、光電変換後の信号を増幅し、増幅後の信号を後段のAMP、および平均値検出部13へ出力する。このとき、電流電圧変換により、電圧で出力する。平均値検出部13は、所定の期間における増幅後のパケットの受信パワーの平均値を検出し、セレクタ14へ出力する。平均値は、所定の期間内からサンプリングした複数の受信パワーから算出してもよいし、所定の期間の半分の時点における受信パワーとしてもよい。
【0031】
セレクタ14は、制御部15の制御に基づいてトレーニングモードのパスに切り替えているので、入力した受信パワーを、制御部15へ出力する。制御部15は、入力した受信パワーに応じて、利得調整部16へ電圧を印加する。制御部15は、受信パワーの値に基づいて、同等の電圧を印加してもよいし、利得調整部16の回路構成に応じて異なる電圧を印加してもよい。
【0032】
このとき、制御部15では、セレクタ14のモード切り替えとともに、10G用利得調整部17に対して、トレーニング通信を要求した子局装置の伝送レート(1G/10G)に基づいて、1G/10Gセレクト信号を送信する。制御部15は、テーブル31を参照することによって、子局装置の伝送レートを把握することができる。
【0033】
10G用利得調整部17は、1G/10Gセレクト信号に基づいて、Enable/Disableを切り替える。例えば、トレーニング通信を要求したONU#Xの伝送レートが10Gの場合(ステップS4:Yes)、10G用利得調整部17は、Enableに設定する(ステップS5)。すなわち、10G子局装置の場合は、10G用利得調整部17を用いた回路構成とする。一方、トレーニング通信を要求したONU#Xの伝送レートが1Gの場合(ステップS4:No)、10G用利得調整部17は、Disableに設定する(ステップS6)。すなわち、1G子局装置の場合は、10G用利得調整部17を用いない回路構成とする。
【0034】
上記の状態において、OLT受信部10では、セレクタ14および制御部15経由で受信パワーの大きさによる帰還制御が行われ、TIA12が帰還制御を行うための最適な利得が決定される。そして、決定された最適利得時に制御部15が印加した電圧を設定電圧として、制御部15が、ボルテージホロワ回路18およびAD/DA変換制御部20によるAD変換処理を介して、メモリ30に記憶させる(ステップS7)。上記処理を子局装置ごとに行い、1G/10G親局装置1では、図2に示すテーブル31のような形で子局装置ごとに設定電圧を記憶する。なお、制御部15は、セレクタ14から出力された受信パワーについても、あわせてテーブル31に記憶させる。
【0035】
1G/10Gが混在するPONシステムの場合、TIA12における最適な出力レベルは伝送レートによって異なるため、最適利得も伝送レートによって異なる。図3に示すように、10Gの場合、OLT受信部10では、並列に抵抗が付加されることから帰還抵抗が小さくなり、増幅量を小さくすることができる。すなわち、増幅後の受信パワーは、10Gのときよりも、1Gのときの方が大きくなる。
【0036】
従来のように、受信パケットの受信パワーだけを見て設定電圧を決定する場合、その受信パケットからだけでは、当該パケットが1G/10Gによるものなのか判断できない。そのため、伝送レートに応じた最適利得(出力レベル)を得ることができなかった。例えば、1Gの伝送レートに最適な利得の場合、1Gでは良好な受信感度を確保できるが、10Gの伝送レートでは最適な利得とはならないため、10Gでは良好な受信感度を確保することができない。
【0037】
本実施の形態では、トレーニングモード時、伝送レートごとに最適利得(出力レベル)が得られるように、1G/10G親局装置1が、テーブル31に記憶された子局装置の既知の情報(子局装置ごとの伝送レートの情報)を利用することによって、10G用利得調整部17を適宜使用する。これにより、異なる複数の伝送レートが存在する場合であっても、1G/10G親局装置1は、伝送レートごとに、最適な利得を得ることができる。
【0038】
つづいて、通常動作(自走モード)時の1G/10G親局装置1の動作について説明する。図5は、自走モード時の1G/10G親局装置1の動作を示すフローチャートである。まず、1G/10G親局装置1では、OLT受信部10が、所定の識別番号を持つ子局装置(ここでは、ONU#Xとする。)からの通信要求を受信すると(ステップS11)、制御部15が、当該ONU#Xの識別番号を持つ子局装置に設定された設定電圧を、AD/DA変換制御部20におけるDA変換処理を介して、メモリ30から読み出す。
【0039】
このとき、制御部15は、トレーニングモード時と同様に、10G用利得調整部17に対して、通信要求をした子局装置の伝送レート(1G/10G)に基づいて、1G/10Gセレクト信号を送信する。すなわち、通信要求をした子局装置の伝送レートが10Gの場合は、10G用利得調整部17をEnableとし、通信要求をした子局装置の伝送レートが1Gの場合は、10G用利得調整部17をDisableとする。
【0040】
そして、制御部15が、利得調整部16、または、利得調整部16および10G用利得調整部17に、読み出した設定電圧を印加して、TIA12をONU#Xにおける最適な利得に設定する(ステップS12)。
【0041】
1G/10G親局装置1では、図示しないOLT制御部がトレーニング通信を要求したONU#Xに対して通信許可を行い、パケットの受信を開始する(ステップS13)。その後は、トレーニングモード時と同様、受光素子11が前記ONU#Xからのパケットデータを受信し、光電変換後、TIA12へ出力する。TIA12は、光電変換後の信号を増幅し、増幅後の信号を後段のAMP、および平均値検出部13へ出力する。
【0042】
1G/10G親局装置1のOLT受信部10では、平均値検出部13が、実際に受信したパケットについて受信パワーの平均値を検出する(ステップS14)。この時、セレクタ14には自走モード時のモード切替信号が制御部15から入力されている。平均値検出部13は、検出した受信パワーの平均値を、セレクタ14の右方のパスを通し、AD/DA変換制御部20経由でメモリ30に入力し、テーブル31において該当するONU#Xの受信パワーの欄に記憶させる(ステップS15)。
【0043】
なお、テーブル31には、子局装置ごとに、トレーニングモード時に記憶された受信パワーと設定電圧の関係が記憶されている。ここで、トレーニングモード時に記憶された受信パワーと自走モード時に検出・記憶された受信パワーとの間で差異を検出した場合、制御部15は、テーブル31の設定電圧を更新してもよい。さらに、制御部15は、受信パワーの差異に基づいて、トレーニングモード時の受信パワーと関連付けて記憶されていた設定電圧を変更し、変更後の設定電圧を利得の調整に用いてもよい。例えば、トレーニングモード時に記憶された受信パワーと自走モード時に記憶された受信パワーとを比較し、2つの受信パワーの比率に応じてトレーニングモード時に記憶した設定電圧を変更してもよい。
【0044】
また、自走モードを継続中において、ある時点で受信したパケットがN個目のパケットとすると、このN個目のパケット受信時に平均値検出された受信パワーとテーブル31に記憶されている受信パワーとを比較し、N個目のパケットの受信パワーの値に何らかの重み付けを加えて、テーブル31に記憶されている受信パワーの値を更新し、N+1個目のパケット受信時の設定電圧の更新(最適利得の調整)に利用してもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態では、異なる複数の伝送レートが混在するPONシステムにおいて、1G/10G親局装置1では、制御部15が、伝送レートが異なる子局装置に対して最適な利得を設定するために、トレーニング通信時、伝送レートが10Gの場合(伝送速度が速い場合)には、伝送レートが1Gの場合(伝送速度が遅い場合)と比較して受光信号を増幅するTIA12の増幅率を小さくするように、1Gの時には用いない10G用利得調整部17を、TIA12に対して利得調整部16と並列に挿入する。そして、制御部15は、子局装置ごとに最適な利得となったときに利得調整部16、または利得調整部16および10G用利得調整部17に印加した電圧を設定電圧としてメモリ30に記憶する。通常通信時、制御部15は、通信要求があった子局装置に関する設定電圧をテーブル31から読み出し、当該設定電圧を利得調整部16、または利得調整部16および10G用利得調整部17に印加することとした。これにより、伝送レートごとに最適な利得を得ることができ、それぞれの伝送レートでの受信感度を向上することができる。また、オーバヘッド時間の短縮、および連続同符号信号入力時のAGC利得設定誤りの問題を解消することができる。
【0046】
なお、通常通信時においても、10G用利得調整部17を用いることとしたが、これに限定するものではない。例えば、制御部15が、トレーニングモード時に得た設定電圧によるTIA12の利得を、10G用利得調整部17を用いず、利得調整部16のみで実現する電圧値に変換して、テーブル31に記憶させておいてもよい。この場合、通常通信時では10G用利得調整部17を用いないため、制御を簡素化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる光信号受信装置は、PONシステムに有用であり、特に、異なる伝送レートが混在するPONシステムに適している。
【符号の説明】
【0048】
1 1G/10G親局装置
2,4 1G子局装置
3 10G子局装置
10 OLT受信部
11 受光素子
12 TIA
13 平均値検出部
14 セレクタ
15 制御部
16 利得調整部
17 10G用利得調整部
18,19 ボルテージホロワ回路
20 AD/DA変換制御部
30 メモリ
31 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送速度が速い高速光信号と当該高速光信号よりも遅い低速光信号が混在するPONシステムにおいて、複数の子局装置との間で光信号による通信を行う親局装置であって、
子局装置から受信した光信号を光電変換して電気信号を出力する受光手段と、
光電変換後の電気信号を増幅する増幅手段と、
所定の期間における増幅後の電気信号の電圧の平均値を検出し、検出した平均値を受信電圧とする平均値検出手段と、
所定の印加電圧に基づいて前記増幅手段の利得を調整する機能を有する第一の利得調整手段と、
前記第一の利得調整手段と同じ機能を有し、前記第一の利得調整手段と並列に配置され、高速光信号による通信を行う子局装置から高速光信号を受信するときに前記第一の利得調整手段と共に用いられる第二の利得調整手段と、
子局装置の識別番号と、伝送速度と、受信電圧と、当該受信電圧を得たときに前記第一の利得調整手段または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に印加された電圧である設定電圧とを、子局装置ごとに記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている伝送速度に基づいて、子局装置ごとに、前記第二の利得調整手段を用いるかどうかを判断し、また、トレーニング通信時に子局装置ごとに設定電圧を求めて前記記憶手段に記憶し、通常通信時に前記記憶手段から設定電圧を読み出し、読み出した設定電圧を前記第一の利得調整手段、または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に印加する制御手段と、
を備えることを特徴とする親局装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記記憶手段に記憶されている各子局装置の伝送速度に基づいて各子局装置が行う光信号の速度を確認し、高速光信号による通信を行う子局装置と通信を行う場合は、前記第二の利得調整手段に対して有効とするセレクト信号を送信し、低速光信号による通信を行う子局装置と通信を行う場合は、前記第二の利得調整手段に対して無効とするセレクト信号を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の親局装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
トレーニング通信において、子局装置から送信された通常通信時のパケット長よりも長いトレーニングデータを受信中に、前記第一の利得調整手段または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に対して、前記受信電圧の大きさに応じた電圧を印加して帰還制御を行い、増幅後の信号電圧が一定となったときの印加電圧を設定電圧とし、当該設定電圧をこのときの受信電圧とともに前記記憶手段に記憶する処理を、接続する全ての子局装置に対して行い、
通常通信時には、通信要求送信元の子局装置の設定電圧を前記記憶手段から読み出し、読み出した設定電圧を、前記第一の利得調整手段または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に印加して前記増幅手段の利得を調整する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の親局装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
通常通信中に現在の受信電圧と前記トレーニング通信において前記記憶手段に記億された受信電圧との間に差異を検出した場合に、当該記憶手段に記憶された受信電圧を現在の受信電圧に更新し、更新前の受信電圧と更新後の受信電圧の比率に基づいて、当該記憶手段に記憶された設定電圧を更新する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の親局装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
通常通信中に現在の受信電圧と前記トレーニング通信において前記記憶手段に記億された受信電圧との間に差異を検出した場合に、現在の受信電圧に重み付けを行い、当該重み付けを行った後の受信電圧と当該記憶手段に記億された受信電圧とに基づいて、当該記憶手段に記憶された受信電圧を更新し、更新前の受信電圧と更新後の受信電圧の比率に基づいて、当該記憶手段に記憶された設定電圧を更新する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の親局装置。
【請求項6】
伝送速度が速い高速光信号と当該高速光信号よりも遅い低速光信号が混在するPONシステムにおいて、複数の子局装置との間で光信号による通信を行う親局装置の光信号受信方法であって、
前記親局装置が、
所定の印加電圧に基づいて、光電変換後の電気信号を増幅するときの利得を調整する機能を有する第一の利得調整手段と、
前記第一の利得調整手段と同じ機能を有し、前記第一の利得調整手段と並列に配置され、高速光信号による通信を行う子局装置から高速光信号を受信するときに前記第一の利得調整手段と共に用いられる第二の利得調整手段と、
子局装置の識別番号と、伝送速度と、受信電圧と、当該受信電圧を得たときに前記第一の利得調整手段または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に印加された電圧である設定電圧とを、子局装置ごとに記憶するための記憶手段と、
を備える場合に、
子局装置から受信した光信号を光電変換して電気信号を出力する受光ステップと、
光電変換後の電気信号を増幅する増幅ステップと、
所定の期間における増幅後の電気信号の電圧の平均値を検出し、検出した平均値を受信電圧とする平均値検出ステップと、
前記記憶手段に記憶されている伝送速度に基づいて、子局装置ごとに、前記第二の利得調整手段を用いるかどうかを判断する判断ステップと、
トレーニング通信時に子局装置ごとに設定電圧を求めて前記記憶手段に記憶するトレーニングステップと、
通常通信時に前記記憶手段から設定電圧を読み出し、前記判断ステップにて前記第二の利得調整手段を用いないと判断した場合には読み出した設定電圧を前記第一の利得調整手段に印加し、一方、前記第二の利得調整手段を用いると判断した場合には読み出した設定電圧を前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に印加する通常通信ステップと、
を含むことを特徴とする光信号受信方法。
【請求項7】
前記判断ステップでは、
前記記憶手段に記憶されている各子局装置の伝送速度に基づいて各子局装置が行う光信号の速度を確認し、高速光信号による通信を行う子局装置と通信を行う場合は、前記第二の利得調整手段に対して有効とするセレクト信号を送信し、低速光信号による通信を行う子局装置と通信を行う場合は、前記第二の利得調整手段に対して無効とするセレクト信号を送信する、
ことを特徴とする請求項6に記載の光信号受信方法。
【請求項8】
前記トレーニングステップでは、
子局装置から送信された通常通信時のパケット長よりも長いトレーニングデータを受信中に、前記第一の利得調整手段または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に対して、前記受信電圧の大きさに応じた電圧を印加して帰還制御を行い、増幅後の信号電圧が一定となったときの印加電圧を設定電圧とし、当該設定電圧をこのときの受信電圧とともに前記記憶手段に記憶する処理を、接続する全ての子局装置に対して行い、
前記通常通信ステップでは、
通信要求送信元の子局装置の設定電圧を前記記憶手段から読み出し、読み出した設定電圧を、前記第一の利得調整手段または前記第一の利得調整手段および前記第二の利得調整手段に印加して、前記増幅ステップにおいて光電変換後の電気信号を増幅するときの利得を調整する、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の光信号受信方法。
【請求項9】
さらに、
通常通信中に現在の受信電圧と前記トレーニング通信において前記記憶手段に記億された受信電圧との間に差異を検出した場合に、当該記憶手段に記憶された受信電圧を現在の受信電圧に更新し、更新前の受信電圧と更新後の受信電圧の比率に基づいて、当該記憶手段に記憶された設定電圧を更新する記憶手段更新ステップ、
を含むことを特徴とする請求項6、7または8に記載の光信号受信方法。
【請求項10】
さらに、
通常通信中に現在の受信電圧と前記トレーニング通信において前記記憶手段に記億された受信電圧との間に差異を検出した場合に、現在の受信電圧に重み付けを行い、当該重み付けを行った後の受信電圧と当該記憶手段に記億された受信電圧とに基づいて、当該記憶手段に記憶された受信電圧を更新し、更新前の受信電圧と更新後の受信電圧の比率に基づいて、当該記憶手段に記憶された設定電圧を更新する記憶手段更新ステップ、
を含むことを特徴とする請求項6、7または8に記載の光信号受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249863(P2011−249863A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117575(P2010−117575)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】