説明

親水性組成物及び親水性部材

【課題】各種の基材表面に防汚性、防曇性、耐摩擦性に優れた親水性膜を形成することができ、且つ、親水性膜に使用する親水性ポリマーの汎用性が高い親水性組成物、及び、簡易な合成プロセスで親水性膜を形成してなる防汚性、防曇性を有する親水性部材を提供する。
【解決手段】反応性基を有する親水性ポリマー、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物、及び、該親水性ポリマーと反応する官能基と該アルコキシド化合物と反応する官能基とを同一分子内に有する化合物、を含有することを特徴とする。この親水性組成物によって支持体上に被膜を形成し、加熱、乾燥することにより、表面に親水性膜を有する親水性部材を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の基材表面に親水性、耐摩擦性に優れた親水性膜を形成しうる親水性組成物、及び、それを用いた防汚性、防曇性に優れた親水性部材に関し、詳細には、親水性膜に使用する親水性ポリマーの汎用性を向上し、合成プロセスの簡略化した親水性膜を形成しうる親水性組成物及びそれを用いた防汚性及び又は防曇性に優れた親水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。また、近年、モバイルの普及に伴い、ディスプレイが屋外で使用されることが多くなってきたが、外光が入射されるような環境下で使用されると、この入射光はディスプレイ表面において正反射され、反射光が表示光と混合して表示画像が見にくくなるなどの問題を引き起こす。このため、ディスプレイ表面に反射防止光学部材を配置することがよく行われている。
このような反射防止光学部材としては、例えば、透明基材の表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層したもの、透明基材の表面に無機や有機フッ化化合物などの低屈折率層を単層で形成したもの、或いは、透明プラスチックフィルム基材の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させるものなどが知られている。これら反射防止光学部材表面も、前述の光学部材と同様に、人が使用することによって、指紋や皮脂などの汚れが付着しやすいが、汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れがより目立つという問題に加え、反射防止膜の表面には通常、微細な凹凸があり、汚れの除去が困難であるという問題もあった。
【0003】
固体部材の表面に汚れを着き難くしたり、付着した汚れを取りやすくした性能を持つ汚れ防止機能を表面に形成する技術が種々提案されている。特に反射防止部材と防汚性部材との組合わせとしては、例えば、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜と、有機ケイ素置換基を含む化合物で処理してなる防汚性、耐摩擦性材料(例えば、特許文献1参照。)、基材表面に末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルター(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。また、ポリフルオロアルキル基を含むシラン化合物をはじめとするシラン化合物を含有する反射防止膜(例えば、特許文献3参照。)や、二酸化ケイ素を主とする光学薄膜とパーフルオロアルキルアクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体との組合せ(例えば、特許文献4参照。)が、それぞれ提案されている。
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、フッ素やケイ素などの表面エネルギーの低い材料による表面処理は経時的な防汚性能の低下が懸念され、このため、防汚性と耐久性の優れた防汚性部材の開発が望まれている。
【0004】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基材の表面が親水化されると、付着水滴が基材表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0005】
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)が、この塗膜はある程度の親水性を有するものの、基材との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0006】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基材表面に光触媒含有層形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、良好な耐摩耗性を有する防汚性部材が求められている。
【0007】
上記以外の親水性膜としてゾルゲル有機無機ハイブリッドを利用した例がある。例えば、ポリビニルアルコールをテトラアルコキシシランのゾルゲル重縮合反応によって無機架橋構造中に取り込み、有機無機ハイブリッド膜を形成する公知の技術がある(例えば、特許文献6参照。)。しかし、ポリビニルアルコールでは親水性が不十分であり、ポリマーが無機架橋の中に取り込まれているだけであるので耐摩耗性にも劣る。耐摩耗性を解決するためには、例えば親水性ポリマーが、ゾルゲルゾルゲル重縮合反応の際に、強い結合を作るなど、すなわちテトラアルコキシシランと反応する官能基を付与ことが考えられるが、親水性ポリマーは防汚性、防曇性向上の観点から、その親水性を高める必要があり、より水溶性となる傾向がある。一方、テトラアルコキシシランと反応する官能基の一つとして、例えばシランカップリング基を挙げることができるが、親水性ポリマーにシランカップリング基を導入するには、シランカップリング基の性能上、反応溶媒として水以外を用いるという制限を受けるため、それと同時に親水性ポリマーを合成するために使用する親水性モノマーの種類も制限を受けるという問題があるため、親水性ポリマーの汎用性を向上し、防汚性、防曇性、耐摩擦性に優れた親水性部材が求められている。
【特許文献1】特開昭64−86101号公報
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【特許文献5】国際出願公開PTC/JP96/00733号パンフレット
【特許文献6】特開平5‐19460号公報
【非特許文献1】新聞”化学工業日報”1995年1月30日付け記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、各種の基材表面に防汚性、防曇性、耐摩擦性に優れた親水性膜を形成することができ、且つ、親水性膜に使用する親水性ポリマーの汎用性が高い親水性組成物を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、任意の支持体表面に、本発明の親水性組成物を用いて、簡易な合成プロセスで親水性膜を形成してなる防汚性、防曇性を有する親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、親水性グラフトポリマーの特性に着眼し研究を進めた結果、本発明者らは、親水性ポリマーとアルコキシドを加水分解、縮重合することにより形成された架橋構造を備えた表面層により上記目的を達成し得ること、さらには、このような架橋構造を有する表面層が反応性基を末端に有する親水性ポリマー、架橋剤、親水性ポリマーと架橋剤と反応する化合物を組合せることにより容易に得られ、防汚性、防曇性、耐摩擦性に優れることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の請求項1に係る親水性組成物は、(A)反応性基を有する親水性ポリマー〔以下、適宜、(A)特定親水性ポリマー或いは(A)成分と称する〕、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物〔以下、適宜、(B)特定アルコキシド或いは(B)成分と称する〕、及び、(C)該(A)親水性ポリマーと反応する官能基と、該(B)アルコキシド化合物と反応する官能基とを、同一分子内に有する化合物〔以下、適宜、(C)特定反応性化合物或いは(C)成分と称する〕を含有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に係る親水性部材は、支持体上に、(A)反応性基を有する親水性ポリマー、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物、及び、(C)該(A)親水性ポリマーと反応する官能基と該(B)アルコキシド化合物と反応する官能基とを、同一分子内に有する化合物を含有する親水性組成物により被膜を形成し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有することを特徴とする。この親水性膜は、前記親水性組成物を調整し、製膜することにより形成された架橋構造を有する。
【0011】
本発明の請求項1に係る親水性組成物或いは請求項5に係る親水性部材の形成に用いられる親水性組成物において、前記(C)特定反応性化合物の有する(B)アルコキシド化合物と反応する官能基としては、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基であることが好ましい。
また、前記(A)親水性ポリマーが有する反応性基は、親水性ポリマーにおけるポリマー鎖の末端に位置することが、ポリマー鎖の運動性増加による親水性向上の観点から好ましい。
この親水性組成物には、さらに(D)触媒を含むことが好ましく、その(D)触媒としては、前記(B)特定アルコキシドと(C)特定反応性化合物との反応を促進する特性を有する化合物が挙げられる。
【0012】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
本発明の親水性組成物は、(A)反応性基を有する親水性ポリマー、(B)特定アルコキシド、(C)特定反応性化合物を含有しており、このような組成物を適当な溶媒に溶解させ、攪拌することで、系中で加水分解・重縮合が進行し、親水性組成物がゾル状の態様となる。ゾル状の親水性組成物中で、(A)特定親水性ポリマーにおける反応性基と、(C)特定反応性化合物における親水性ポリマーと反応しうる官能基との機能により、双方が迅速に反応する。それを基材上に塗布し、乾燥することにより、基材上には、親水性ポリマー鎖を有し、且つ、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有する親水性膜が形成される。この親水性膜は、高密度の架橋構造を有する有機無機複合体被膜であるため、高い防汚性、防曇性、耐摩擦性を有する高強度の被膜となる。
ここで、好ましくは、親水性ポリマー鎖をグラフト鎖の状態で導入することで、親水性ポリマー鎖の運動性が増加するため、水との相溶性が向上し、より高い親水性を有する膜となる。このように、基材表面にグラフト鎖を形成するように親水性ポリマーを合成する際に、(A)特定親水性ポリマーにおける反応性基を末端に導入することで、基材表面にグラフト鎖を有する架橋構造が形成される。
【0013】
本発明の親水性組成物には、(A)親水性ポリマーと迅速に反応する官能基と、(B)特定アルコキシドと反応する官能基の両方を有する(C)特定反応性化合物を用いており、この(C)成分が(A)特定親水性ポリマーと(B)特定アルコキシドとを連結する役割を果たす。このため、従来の如く親水性ポリマーに直接シランカップリング基を導入しなくても、このような架橋構造を容易に且つ迅速に形成することが可能となったため、(A)親水性ポリマーの形成に用いられる親水性モノマーの汎用性が向上し、合成プロセスの簡略化が実現したものと考えられる。
即ち、本発明によれば、従来技術の問題であった、シランカップリング基などを親水性ポリマーに導入する際に、親水性モノマーが高親水性であると、重合溶媒に水しか用いることができず、それによりシランカップリング剤が加水分解、重縮合し、得られる親水性ポリマーが架橋構造を形成してしまう懸念なく、シランカップリング基を有する親水性ポリマーを合成するために使用する親水性モノマーの種類や、得られる親水性ポリマーの汎用性が向上し、合成プロセスの簡素化が実現された。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各種の基材表面に防汚性、防曇性、耐摩擦性に優れた親水性膜を形成することができ、且つ、親水性膜に使用する親水性ポリマーの汎用性が高い親水性組成物を提供することができる。
また、本発明の親水性組成物を用いることで、任意の支持体表面に、簡易な合成プロセスで親水性膜を形成してなる防汚性、防曇性を有した親水性部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の親水性組成物は、(A)反応性基を有する親水性ポリマーと、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物と、(C)該(A)親水性ポリマーと反応する官能基と、該(B)アルコキシド化合物と反応する官能基とを、同一分子内に有する化合物と、を含有することを特徴とする。
このような親水性組成物を、適切な基材上に塗布して被膜を形成し、該被膜を乾燥、好ましくは加熱乾燥することで、親水性グラフト鎖を有し、且つ、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有する親水性膜を形成することができ、このような架橋構造を有する親水性膜は、先に例示されたアルコキシド構造と、親水性グラフト鎖を形成しうる親水性の官能基を有する化合物とにより形成される。
(B)特定アルコキシドのなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましく、具体的には、シランカップリング剤に用いる化合物を好適に使用することができる。
前記したようなアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では以下、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。
以下に、本発明の親水性組成物に含まれる各成分について説明する。
【0016】
〔(A)反応性基を有する親水性ポリマー〕
本発明で使用することのできる(A)特定親水性ポリマーは、後述するB1またはBbで示される親水基をポリマー構造のいずれかに有し、且つ、反応性基を有するものであれば、特に制限はなく使用することができるが、反応性基はポリマー鎖の末端に位置することが好ましい。
より具体的な(A)特定親水性ポリマーの例として、下記一般式(I)で表される構造を有する化合物を好ましく挙げることができる。
【0017】
【化1】

【0018】
一般式(I)中、R,R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。LおよびLは、それぞれ単結合又はn価、m価の有機連結基を表す。また、n及びmはそれぞれ独立に1〜4の整数を表す。
は以下に詳述する反応性基を表す。
は親水基であり、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、‐OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−PO(R)(R10)、−OPO(R)(R10)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)または−N(R)(R)(R)(R11)を表し、ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R、R10は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、R11は、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、xおよびyは、x+y=100とした時の組成比(モル比)を表し、x:yは99:1〜1:99の範囲を表し、95:5〜1:99の範囲がさらに好ましい。
【0019】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0020】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0021】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl)) およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0022】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル2 基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0023】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0024】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0025】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル) カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル) スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0026】
およびLは、それぞれ単結合又はn価、m価の有機連結基を表す。また、n及びmはそれぞれ独立に1〜4の整数を表す。ここで、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0027】
【化2】

【0028】
また、Aは反応性基であり、より具体的には、例えば、カルボン酸基(−COOH)、水酸基(−OH)、チオール基(−SH),アミノ基(−NH)、イソシアネート基(−NCO)、エポキシ基などを挙げることができる。一般式(I)中Aで示される反応性基は(C)特定反応性化合物における(A)成分と反応しうる官能基と反応し、結合する。
この反応における(A)特定親水性ポリマーの反応性基と(C)特定反応性化合物の反応性基の好ましい組み合わせとしては、((A)特定親水性ポリマーの反応性基、(C)特定反応性化合物の反応性基)=(−COOH、−NH)、(−COOH、アジリジン)、(−COOH、−NCO)、(−COOH、エポキシ)、(−OH、−NH)、(−OH、−NCO)、(−OH、エポキシ)、(−SH、−NCO)、(−SH、エポキシ)(−NH、−COOH)、(−NH、−OH)、(−NH、−NCO)、(−NH、−CHO)、(−NH、エポキシ)、(−NCO、−COOH)、(−NCO、−OH)、(−NCO、−SH)、(−NCO、−NH)、(−NCO、−NCO)、(−NCO、エポキシ)、(エポキシ、−COOH)、(エポキシ、−OH)、(エポキシ、−SH)、(エポキシ、−NH)、(エポキシ、−NCO)が挙げられる。より好ましくは((A)特定親水性ポリマーの反応性基、(C)特定反応性化合物の反応性基)=(−COOH、−NCO)、(−COOH、エポキシ)、(−NH、−NCO)、(−NH、エポキシ)、(−NCO、−COOH)、(−NCO、−NH)、(−NCO、−NCO)、(−NCO、エポキシ)、(エポキシ、−COOH)、(エポキシ、−NH)、(エポキシ、−NCO)である。
【0029】
このような反応性基Aは、親水性膜形成の際、親水性組成物を調整した後に攪拌するとき、または支持体上に親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥する時の熱等により、反応が進行する。より詳細には、下記のex1.で示される脱水反応やex2.で示される付加反応が進行し、(A)特定親水性ポリマーと(C)特定反応性化合物が結合する。
【0030】
【化3】

【0031】
また、Bは親水基であり、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、‐OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−PO(R)(R10)、−OPO(R)(R10)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)または−N(R)(R)(R)(R11)を表し、ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R、R10は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、R11は、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)−PO(R)(R10)、−OPO(R)(R10)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)または−N(R)(R)(R)(R11)についてR〜R11がお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜R11はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。ここで、Aで表される反応性官能基が親水性を有する場合などには、AとBとが同じ官能基となる場合があるが、特に問題はない。
【0032】
、RまたはRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
、R10としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
11としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、このようなBとしては具体的には、−CONa、−CONH、−SONa、−SONH、−PO等が好ましい。
【0033】
本発明に係る(A)特定親水性ポリマーの他の好ましい態様として、反応性基をポリマー鎖の末端に有する化合物を挙げることができる。このような親水性ポリマーとしては、下記一般式(II)で表される構造を有するポリマーが好適なものとして挙げられる。
【0034】
【化4】

【0035】
一般式(II)中、R,Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。また、Yは2価の有機連結基、Lは、単結合又はl価の有機連結基を表す。また、lは1〜4の整数を表す。A及びBは、前記一般式(I)におけるA及びBとそれぞれ同義である。
詳細には、一般式(II)で表される親水性ポリマーは、下記一般式(II−2)で表されるように、式(II−b)で表されるポリマー鎖の末端に、式(II−a)で表される反応性基を有する部分構造が結合してなるものであり、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である(II−b)は、すべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよい。
【0036】
【化5】

【0037】
前記一般式(II)又は(II−2)におけるR,Rで表される炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R,Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。またR、Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0038】
また、Yは2価の有機連結基、Lは、単結合又はl価の有機連結基を表す。また、lは1〜4の整数を表す。ここで、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては前記LおよびLの場合に導入可能な構造単位として挙げたもの同様に挙げることができる。
【0039】
また、Aは反応性基であり、カルボン酸基(−COOH)、水酸基(−OH)、チオール基(−SH),アミノ基(−NH)、イソシアネート基(−NCO)、エポキシ基を挙げることができる。反応性基は(C)特定反応性化合物と反応し、その(A)特定親水性ポリマーの反応性基と(C)特定反応性化合物の反応性基の好ましい組み合わせとしては、前記Aの場合において組み合わせとして挙げたもの同様に挙げることができる。
【0040】
また、Bは親水基であり、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、‐OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−PO(R)(R10)、−OPO(R)(R10)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)または−N(R)(R)(R)(R11)を表し、ここで、R〜R10は、前記R〜Rと同様の置換基を挙げることができる。
【0041】
(A)特定親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0042】
以下に、本発明に好適に用い得る特定親水性ポリマーを構成する構造単位を便宜上、下記構造単位(i)、(ii)、(iii)及び(iv)として、それぞれの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化6】

【0044】
上記構造単位(i)、(ii)、(iii)および(iv) において、R〜R、R、R、L、L、L、Y、A、A、B、Bおよびm、n、lは、上記一般式(I)、(II)におけるのと同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
まず、構造単位(i)の具体例を示す。
【0045】
【化7】

【0046】
次に、構造単位、(ii)及び構造単位(iii)の例を示す。上記構成より明らかなように、一般式(I)における構造単位(ii)、及び一般式(II−b)における構造単位(iii)は同様の構成を有するものが用いられる。
【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
次に、構造単位(iv)の例を示す。
【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
また、本発明における(A)特定親水性ポリマーのうち、一般式(I)で表される親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(1−1)〜(1−50)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
【化19】

【0061】
【化20】

【0062】
次に、本発明における(A)特定親水性ポリマーのうち、一般式(II)で表される親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(2−1)〜(2−50)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化21】

【0064】
【化22】

【0065】
【化23】

【0066】
【化24】

【0067】
【化25】

【0068】
【化26】

【0069】
〔合成方法〕
本発明に係る(A)特定親水性ポリマーは、下記構造単位(i)および(ii)で表されるラジカル重合可能なモノマーをラジカル共重合することにより合成すること、または下記構造単位(iii)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記構造単位(iv)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有する化合物、若しくは、ラジカル開始剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。反応性基を有する化合物が連鎖移動能、若しくは、ラジカル開始能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端に反応性基が導入されたポリマーを合成することができる。
この反応様式は特に制限されるものではないが、ラジカル重合開始剤の存在下、或いは、高圧水銀灯の照射下において、バルク反応、溶液反応、懸濁反応などを行えばよい。
【0070】
また、重合反応において、(iv)で表される構造単位の導入量を制御し、これと構造単位(iii)との単独重合を効果的に抑制するため、不飽和化合物の分割添加法、逐次添加法などを用いた重合法を行うことが好ましい。
構造単位(iv)に対する構造単位(iii)の反応比率は特に制限されるものではないが、構造単位(iv)1モルに対して、構造単位(iii)が0.5〜50モルの範囲内とすることが、副反応の抑制や加水分解性シラン化合物の収率向上の観点から好ましく、1〜45モルの範囲がより好ましく、5〜40モルの範囲であることが最も好ましい。
また、下記構造単位(i)、(ii)および(iii)で表されるラジカル重合可能なモノマーは、単独で重合しても、2種以上の共重合体でもよい。
【0071】
【化27】

【0072】
上記構造単位(i)、(ii)、(iii)および(iv) において、R〜R、R、R、L、L、L、Y、A、A、B、Bおよびm、n、lは、上記一般式(I)、(II)におけるのと同義である。
【0073】
特定親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0074】
また、上記特定親水性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0075】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0076】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2 − エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0077】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル) アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0078】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0079】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0080】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、割合が大きすぎる場合には、親水性膜としての機能が不十分となり、(A)特定親水性ポリマーを添加する利点を十分に得られない懸念がある。従って、(A)特定親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0081】
本発明に係る(A)特定親水性ポリマーは、本発明の親水性組成物の不揮発性成分に対して、硬化性と親水性の観点から、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは15〜90質量%、最も好ましくは20〜85質量%の範囲で含有される。これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0082】
〔(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物〕
本発明で用いられる(B)特定アルコキシドであるSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、以下に詳述する(C)特定反応性化合物と縮重合することで、架橋構造を有する強固な被膜を形成する。
(B)特定アルコキシドは、下記一般式(III)で表される化合物であり、親水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記(A)特定親水性ポリマー、(B)一般式(III)で表される特定アルコキシド、(C)特定反応性化合物を混合して支持体表面に塗布し、加熱、乾燥する。
【0083】
【化28】

【0084】
一般式(III)中、R12は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R13はアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R12及びR13がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0085】
以下に、(B)一般式(III)で表される特定アルコキシドの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。XがSiの場合、即ち、特定アルコキシド中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0086】
XがAlである場合、即ち、特定アルコキシド中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらのうち、XとしてはSiが好ましい。
【0087】
本発明に係る(B)特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
(B)特定アルコキシドは、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用される。
【0088】
〔(C)(A)反応性基を有する親水性ポリマーと反応する官能基と、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物と反応する官能基とを、同一分子内に有する化合物〕
本発明で用いられる(C)特定反応性化合物は、前記(A)特定親水性ポリマーの反応性基と迅速に反応する官能基と、前記(B)特定アルコキシドと加水分解、重縮合し、架橋構造を形成する官能基とを有する化合物である。このような2種の官能基を有することにより、(A)特定親水性ポリマーと(B)特定アルコキシドとを(C)特定反応性化合物によって連結し、高親水性、且つ、高強度の膜を形成することができる。さらに(C)成分を用いた結合を形成することで、(A)特定親水性ポリマーに直接(B)特定アルコキシドと反応する官能基を導入する必要がないため、(A)特定親水性ポリマーを構成する親水性化合物の選択の範囲がひろがるとともに、親水性ポリマーを形成するための合成プロセスの簡略化が可能となる。
本発明で用いられる(C)特定反応性化合物としては、下記一般式(IV)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0089】
【化29】

【0090】
一般式(IV)中、Zはi+j価の有機連結基を表す。また、iは1〜3、jは1〜3の整数であり、i+jは2〜4である。ここで、有機連結基とは非金属からなる連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては前記一般式(I)及び一般式(II)におけるL、L、LおよびYの場合に導入可能な構造単位として挙げたものと同様に挙げることができる。
【0091】
また、Dは(A)特定親水性ポリマーの反応性基と反応する官能基であり、カルボン酸基(−COOH)、水酸基(−OH)、チオール基(−SH),アミノ基(−NH)、イソシアネート基(−NCO)、エポキシ基を挙げることができる。反応性基Dは(A)特定親水性ポリマーの反応性基A及びAと反応し、その(A)特定親水性ポリマーの反応性基A及びAと(C)特定反応性化合物の反応性基Dの好ましい組み合わせとしては、前記A及びAの場合において組み合わせとして挙げた通りである。
【0092】
また、Eは(B)特定アルコキシドと反応する官能基であり、具体的には、例えば、水酸基(−OH)、リン酸基(−PO)、リン酸エステル基(−PO1415)、アルコキシシリル基(−Si(OR16174−h)が挙げられ、より好ましくはアルコキシシリル基が挙げられる。ここで、R14、R15は、前記R及びRと同様の置換基を、R16、R17は前記R12、R13と同様の置換基を挙げることができ、hは0〜2の整数である。
【0093】
本発明に好適に用い得る(C)特定反応性化合物の具体例(3−1)〜(3−85)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
【化30】

【0095】
【化31】

【0096】
【化32】

【0097】
【化33】

【0098】
【化34】

【0099】
【化35】

【0100】
【化36】

【0101】
本発明に係る(C)特定反応性化合物は、本発明の親水性組成物中に、親水性ポリマーの反応性基Aに対して、(C)特定反応性化合物の(A)特定反応性化合物と反応する反応性基Dが等モル量以上となるように含有することが好ましい。これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0102】
〔(D)触媒〕
本発明の親水性組成物において(C)特定反応性化合物として、シランカップリング基を有する化合物を用いる場合には、(C’)シランカップリング基を有する特定反応性化合物、(A)特定親水性ポリマー、さらに(B)特定アルコキシドなどの架橋成分を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、このような(D)触媒を含有させることが好ましい。
【0103】
本発明で用いられる(D)触媒としては、前記(B)アルコキシド化合物を加水分解、重縮合し、(C)特定反応性化合物と結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、あるいは塩基性化合物を水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0104】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。その他の触媒としてはTiのアセチルアセトン錯体、SuCl、Zr(OR)などの金属化合物が挙げられる。
【0105】
本発明に係る(D)触媒は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。また、(D)触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0106】
本発明の親水性組成物には、前記必須成分である(A)乃至(C)成分、及び、所望により併用される(D)触媒に加え、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。以下、併用しうる成分について説明する。
〔界面活性剤〕
本発明においては、前記親水性組成物の塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0107】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0108】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0109】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0110】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型; パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
〔無機微粒子〕
本発明の親水性組成物には、形成される親水性膜の硬化被膜強度向上及び親水性向上のために無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。上記範囲であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、親水性に優れる膜を形成することができる。上述したような無機微粒子はコロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
【0112】
本発明に係る無機微粒子は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10重量%以下の範囲で使用される。また、無機微粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
〔親水性組成物の調液〕
親水性塗布液の調製は、(A)特定親水性ポリマー(B)特定アルコキシド及び(C)特定反応性化合物、更に好ましくは(D)触媒をエタノールなどの溶媒に溶解後、上記触媒を加え、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0114】
前記(A)特定親水性ポリマー(B)特定アルコキシド及び(C)特定反応性化合物を含有する親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0115】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
このような本発明の親水性組成物を含む塗布液を、適切な支持体上に塗布し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。即ち、本発明の親水性部材は、支持体上に、前記本発明の親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有するものである。
親水性膜の形成において、親水性組成物を含む塗布液を塗布した後の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0116】
〔基板〕
本発明の親水性部材の支持体として使用可能な基材としては、例えば、防汚及び/又は防曇効果を期待する透明な基材の場合には、その材質はガラス、または無機化合物層を含有したガラス等の無機基材や、透明プラスチック、または無機化合物層を含有した透明プラスチック層など可視光を透過しうる基材が好適に利用できる。
【0117】
無機基材の詳細について述べれば、通常のガラス板、樹脂層、気体層、真空層などを含む積層ガラス板、強化成分や着色剤などを含む各種のガラス板を挙げることができる。
無機化合物層を含有したガラス板としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属性酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板を挙げることができる。
【0118】
無機化合物層は、単層あるいは多層構成とすることができる。無機化合物層はその厚みによって、光透過性を維持させることもでき、また、反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層の形成方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0119】
また、プラスチックなどの有機基材のうち、透明プラスチック基材としては、可視光透過性を有する種々のプラスチック材料からなる基材を挙げることができる。特に、光学部材として使用される基材は、透明性、屈折率、分散性などの光学特性を考慮して選択され、使用目的により、種々の物性、例えば、耐衝撃性、可撓性など強度をはじめとする物理的特性や、耐熱性、耐候性、耐久性などを考慮して選択される。これらの観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロフィン等のセルロース系樹脂などを好ましく挙げることができる。これらは、使用目的に応じて、単独で用いられてもよく、或いは、2種以上を混合物、共重合体、積層体などの形態で組み合わせて用いることもできる。
【0120】
プラスチック基材として、ガラス板の説明において記載した無機化合物層をプラスチック板上に形成したものを用いることもできる。この場合、無機化合物層は反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層をプラスチック板上に形成する場合も、前述した無機基材におけるのと同様の手法で形成することができる。
【0121】
透明プラスチック基材に無機化合物層を形成する場合、両層の間には、ハードコート層を形成してもよい。ハードコート層を設けることにより、基材表面の硬度が向上すると共に、基材表面が平滑になるので、透明プラスチック基材と無機化合物層との密着性が向上し、耐引っ掻き強度の向上と、基材の屈曲に起因する無機化合物層へのクラックの発生を抑制することができる。このような基材を用いることで親水性部材の機械的強度を改善できる。ハードコート層の材質は。透明性、適度な強度、及び機械的強度を有するものであれば、特に限定されない。例えば、電離放射線や紫外線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂が使用でき、特に紫外線照射硬化型アクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、熱硬化性ポリシロキサン樹脂が好ましい。これらの樹脂の屈折率は、透明プラスチック基材の屈折率と同等、もしくはこれに近似していることがより好ましい。
【0122】
このようなハードコート層の塗布方法は、特に限定されず、均一に塗布されるのであれば任意の方法を採用することができる。また、ハードコート層の膜厚は3μm以上であれば十分な強度となるが、透明性、塗工精度、取り扱いの点から5〜7μmの範囲が好ましい。さらにハードコート層に平均粒子径0.01〜3μmの無機あるいは有機物粒子を混合分散させることによって、一般的にアンチグレアと呼ばれる光拡散性処理を施すことができる。これらの粒子は透明であれば特に限定されないが、低屈折率材料が好ましく、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが安定性、耐熱性等の点で特に好ましい。光拡散性処理は、ハードコート層の表面に凹凸を設けることによっても達成できる。
【0123】
このように、ガラス板やプラスチック板に無機化合物層を有するものを基材として用い、親水性表面を形成することにより、本発明の親水性部材を得ることができる。親水性部材は表面に親水性と耐久性に優れた親水性膜を有することより、支持体(基材)表面に優れた防汚性、特に油脂汚れに対する防汚性、防曇性のいずれか或いは双方を付与することができる。
本発明の親水性部材表面に適用可能な反射防止層は、前述の無機化合物層に限定されず、例えば、反射率、屈折率の異なる複数の薄層を積層することにより、反射防止効果を得る公知の反射防止層なども適宜用いることができ、その材料も無機化合物、有機化合物のいずれも使用することができる。特に、表面に反射防止膜としての無機化合物層が形成された基板は、反射防止膜が形成された側の表面に本発明に係る親水性ポリマー鎖を適用することにより、表面の防汚性及び/又は防曇性機能、さらに反射防止性に優れた本発明の防汚性及び/又は防曇性部材とすることができる。また、目的に応じて、前記構成を有する部材に、偏光板などの機能性光学部材などを、ラミネートに代表される貼り合わせ技術で貼り合わせることにより、本発明の親水性部材を用いて種々の機能や特性を有する反射防止・光学機能性部材を得ることもできる。
【0124】
これらの反射防止部材や反射防止・光学機能性部材を、粘着剤、接着剤などを用いて各種ディスプレイ(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなど)の表示装置の前画板のガラス板、プラスチック板、偏光板などに貼付することにより、この反射防止部材の表示装置への適用が可能となる。
【0125】
また、本発明の親水性部材は、前記した表示装置以外にも、防汚及び/又は防曇効果を要求される種々の用途への適用が可能である。なお、防汚及び/又は防曇性部材に透明性を必要としない基材に適用しようとする場合には、上記の透明基材に加えて、例えば、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体が、支持体基材としていずれも好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の親水性部材の応用可能な分野の一例を挙げれば、可視光を透過しうる基材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられる。
その他の適用可能な用途としては、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルム、家庭用電気製品のハウジングや部品や外装及び塗装、OA機器製品のハウジングや部品や外装及び塗装、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられ、その応用範囲は広い。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
(合成例1;(A)特定親水性ポリマー(I−1)の合成)
500ml三口フラスコにp−ビニルベンジルアミン塩酸塩50g、酢酸ビニル2.7g、及びジメチルスルホキシド220gを入れ、65℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル0.5gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。アセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体を、1N水酸化ナトリウム水溶液に入れ、5時間攪拌した。アセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、アセトンにて洗浄後、下記構造を有する特定親水性ポリマー(I−1)を得た。乾燥後の重量は49.8gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量6000のポリマーであり、H−NMRの測定によりビニルアルコール:p−ビニルベンジルアミンが89:11であることが確認された。
【0128】
【化37】

【0129】
(合成例2:(A)特定親水性ポリマー(I−2)の合成)
500ml三口フラスコに2−スルホエチルアクリレートカリウム塩50g、アクリル酸0.9g、及び蒸留水220gを入れ、50℃窒素気流下、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩0.5gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。メタノール2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、メタノールにて洗浄後、下記構造を有する特定親水性ポリマー(I−2)を得た。乾燥後の重量は51.1gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量8500のポリマーであり、酸価の測定によりアクリルアミド:アクリル酸が89:11であることが確認された。
【0130】
【化38】

【0131】
(合成例3:(A)特定親水性ポリマー(II−1)の合成)
500ml三口フラスコに酢酸ビニル50g、2-アミノエタンチオール塩酸塩1.8g、及びジメチルスルホキシド220gを入れ、65℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル0.6gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。アセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体を1N水酸化ナトリウム水溶液に入れ、5時間攪拌した。アセトン2リットル中に投入し、アセトンにて洗浄後、下記構造を有し、ポリマー鎖の繰り返し単位の重合度nが約40である特定親水性ポリマー(II−1)を得た。乾燥後の重量は48.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量3,000のポリマーであった。
【0132】
【化39】

【0133】
(合成例4:(A)特定親水性ポリマー(II−2)の合成)
500ml三口フラスコにアクリルアミド50g、2-アミノエタンチオール塩酸塩2.0g、及びジメチルスルホキシド220gを入れ、65℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル0.9gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。メタノール2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、アセトンにて洗浄後、下記構造を有し、ポリマー鎖の繰り返し単位の重合度nが約46である特定親水性ポリマー(II−2)を得た。乾燥後の重量は51.4gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量3,400のポリマーであった。
【0134】
【化40】

【0135】
(合成例5;(A)特定親水性ポリマー(II−3)の合成)
500ml三口フラスコにアクリルアミド50g、3-3-メルカプトプロピオン酸2.0g、及び蒸留水220gを入れ、65℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル0.7gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。メタノール2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、アセトンにて洗浄後、下記構造を有し、ポリマー鎖の繰り返し単位の重合度nが約70である特定親水性ポリマー(II−3)を得た。乾燥後の重量は50.8gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量5,000のポリマーであった。
【0136】
【化41】

【0137】
(合成例6;(A)特定親水性ポリマー(II−4)の合成)
500ml三口フラスコに2-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩50g、3-3-メルカプトプロピオン酸2.0g、及び蒸留水220gを入れ、50℃窒素気流下、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩0.15gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。ジメチルスルホキシド2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、アセトンにて洗浄後、下記構造を有し、ポリマー鎖の繰り返し単位の重合度nが約45である特定親水性ポリマー(II−4)を得た。乾燥後の重量は49.2gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量9,900のポリマーであった。
【0138】
【化42】

【0139】
(合成例7;(A)特定親水性ポリマー(II−5)の合成)
500ml三口フラスコに2-スルホエチルアクリレートカリウム塩50g、2-アミノエタンチオール塩酸塩2.2g、及び蒸留水220gを入れ、50℃窒素気流下、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩0.2gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。ジメチルスルホキシド2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、アセトンにて洗浄後、下記構造を有し、ポリマー鎖の繰り返し単位の重合度nが約35である特定親水性ポリマー(II−5)を得た。乾燥後の重量は50.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量7,700のポリマーであった。
【0140】
【化43】

【0141】
(実施例1〜9、比較例1〜3)
〔親水性組成物(ゾルゲル液)の調製〕
下記親水性塗布液組成物1に記載の成分を均一に混合し、20℃で、2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の親水性塗布液組成物を得た。
<親水性塗布液組成物1>
・(A)特定親水性ポリマー(表1に記載の化合物) 25質量部
・(B)特定アルコキシド(表1に記載の化合物) 75質量部
・(C)特定反応性化合物(表1に記載の化合物)
〔(A)の反応性基のmolと等mol量もしくは2倍mol量:表6に記載〕
・蒸留水 1008質量部
・エタノール 68質量部
【0142】
(実施例10〜19)
下記親水性塗布液組成物2に記載の成分を均一に混合し、20℃で、2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の親水性塗布液組成物を得た。
<親水性塗布液組成物2>
・(A)特定親水性ポリマー(表2に記載の化合物) 22質量部
・(B)特定アルコキシド(表2に記載の化合物) 67質量部
・(C)特定反応性化合物(表2に記載の化合物)
〔(A)の反応性基のmolと等mol量もしくは2倍mol量:表2に記載〕
・(D)触媒(表2に記載の化合物) 11質量部
・蒸留水 887質量部
・エタノール 59質量部
【0143】
〔表面親水性部材の作製〕
基材であるガラス板(遠藤科学製)に、上記親実施例1〜19、比較例1〜3の親水性塗布液組成物を乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗布し、100℃、10分加熱乾燥させて基材上に親水性層を形成し実施例1〜19、比較例1〜3の表面親水性部材を得た。
【0144】
〔表面親水性部材の評価〕
〔耐摩擦性の評価〕
得られた親水性部材表面を不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で100回擦り、その前後の接触角(空中水滴接触角)を、協和界面科学(株)製、DropMaster500を用いて測定した。擦り前後の接触角の変化が少ないものほど、親水性が低下せず耐久性に優れると評価する。
○:擦り前後の接触角の変化が1°
△:1°より大きく2°以下
×:2°より大きい
〔防曇性の評価〕
上記で得られた親水性部材に、昼間、室内の蛍光灯下で、1分間水蒸気を当て、水蒸気から離した後、25℃、RH10%の環境下に配置し、前記と同様の照射条件の蛍光灯下において曇り具合及びその変化を下記基準により三段階で官能評価した。
○:曇りが観察されない
△:曇っているが、10秒以内に回復し、曇りが見られなくなる
×:曇っており、曇りが10秒経過しても回復しない
〔防汚性の評価〕
上記で得られた親水性部材表面に油性インク(三菱鉛筆株式会社製油性マーカー)で線を書き、水を掛け続け、流れ落ちるかを三段階で官能評価した。
○:インクが1分以内に取れる
△:1分を経過した後インクが取れる
×:2分を超え10分間にわたり実施してもインクがとれない
耐摩擦性、防汚性及び防曇性の評価結果は下記表1〜表2に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【0147】
なお、前記表1に記載の比較親水性ポリマー(1)、(b)特定アルコキシ化合物、(C)特定反応性化合物の構造は以下に示すとおりである。
【0148】
【化44】

【0149】
上記親水性ポリマー(2)のビニルアルコールを他のより親水性の高いモノマーに、例えば2−スルホエチルアクリレートカリウム塩に変えた親水性ポリマーの合成を試みたが、2−スルホエチルアクリレートカリウム塩は水以外の溶媒に不溶であった。また、重合溶媒として水を用いたが、トリメトキシシリル基が重縮合したため、反応溶液がゲル状となったため、親水性ポリマーを取り出すことができず、親水性膜の形成に用いることができなかった。しかし、本発明ではより高親水性なポリマーをゾルゲル有機無機ハイブリッド膜に利用することが可能であった。
【0150】
更に、上記表1に明らかなように、本発明の親水性組成物を用いて形成した親水性膜は、従来公知の親水膜(比較例1)に比べ、耐摩擦性に優れたものであった。また、実施例4と実施例10との対比などにより、(D)触媒を添加することで、ゾルゲル重縮合反応が促進され、より高い耐摩擦性を示すことが確認された。さらに、親水性ポリマーの反応性基は末端に有することが、より防汚性、防曇性を向上させることも明らかである。
他方、(C)特定反応性化合物を用いなかった他は、本発明と同様の組成物である比較例2,3の親水性組成物を用いて形成した親水性膜は各実施例に比べて、耐摩擦性に劣ることがわかる。以上、本発明では、基材表面に防汚性、防曇性、耐摩擦性に優れた親水性膜を形成することができ、且つ、親水性膜に使用する親水性ポリマーの汎用性が高い親水性組成物、及び、簡易な合成プロセスで親水性膜を形成してなる親水性部材を提供できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基を有する親水性ポリマー、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物、及び、該親水性ポリマーと反応する官能基と該アルコキシド化合物と反応する官能基とを同一分子内に有する化合物、を含有する親水性組成物。
【請求項2】
前記親水性ポリマーと反応する官能基とアルコキシド化合物と反応する官能基とを同一分子内に有する化合物における、アルコキシドと反応する官能基が、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基である請求項1に記載の親水性組成物。
【請求項3】
前記親水性ポリマーが、反応性基をポリマー鎖の末端に有する請求項1又は請求項2に記載の親水性組成物。
【請求項4】
さらに、前記アルコキシド化合物と、親水性ポリマーと反応する官能基と該アルコキシド化合物と反応する官能基とを同一分子内に有する化合物と、の反応を促進する触媒を含有する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の親水性組成物。
【請求項5】
支持体上に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の親水性組成物による被膜を形成し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有する親水性部材。

【公開番号】特開2007−138104(P2007−138104A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337181(P2005−337181)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】