説明

親水性組成物

【課題】ゾルゲルとハイブリッド化せずとも耐傷性と防汚性に優れた親水性塗膜を形成できる親水性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(A)と触媒(B)を含有し、かつ、塗布乾燥して得られる塗布膜の表面ゼータ電位が−15mV〜10mVである親水性組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の基板表面に防汚性、耐傷性、耐摩耗性、防曇性、且つ、より良好な防汚性を有する親水膜を形成するのに有用な親水性組成物、及び、該親水性組成物による親水膜を備えた防汚性、防曇性表面を有する親水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。
また、近年、モバイルの普及に伴い、ディスプレイが屋外で使用されることが多くなってきたが、外光が入射されるような環境下で使用されると、この入射光はディスプレイ表面において正反射され、反射光が表示光と混合して表示画像が見にくくなるなどの問題を引き起こす。このため、ディスプレイ表面に反射防止光学部材を配置することがよく行われている。
このような反射防止光学部材としては、例えば、透明基板の表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層したもの、透明基板の表面に無機や有機フッ化化合物などの低屈折率層を単層で形成したもの、或いは、透明プラスチックフィルム基板の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させるものなどが知られている。これら反射防止光学部材表面も、前述の光学部材と同様に、人が使用することによって、指紋や皮脂などの汚れが付着しやすいが、汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れがより目立つという問題に加え、反射防止膜の表面には通常、微細な凹凸があり、汚れの除去が困難であるという問題もあった。
【0003】
固体部材の表面に汚れを着き難くしたり、付着した汚れを取りやすくした性能を持つ汚れ防止機能を表面に形成する技術が種々提案されている。特に反射防止部材と防汚性部材との組合わせとしては、例えば、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜と、有機ケイ素置換基を含む化合物で処理してなる防汚性、耐摩擦性材料(例えば、特許文献1参照)、基板表面に末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルター(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、ポリフルオロアルキル基を含むシラン化合物をはじめとするシラン化合物を含有する反射防止膜(例えば、特許文献3参照)や、二酸化ケイ素を主とする光学薄膜とパーフルオロアルキルアクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体との組合せ(例えば、特許文献4参照)が、それぞれ提案されている。
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、フッ素やケイ素などの表面エネルギーの低い材料による表面処理は経時的な防汚性能の低下が懸念され、このため、防汚性と耐久性の優れた防汚性部材の開発が望まれている。
【0004】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基板の表面が親水化されると、付着水滴が基板表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0005】
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照)が、この塗膜はある程度の親水性を有するものの、基板との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0006】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基板表面に光触媒含有層を形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、良好な耐摩耗性を有する防汚性部材が求められている。
【0007】
一方、自動車、産業機械、スチール製家具、建築物内外装、家電用品、プラスチック製品などの塗料に加水分解性シリル基を有するビニル系共重合体とアクリルポリオールとのブレンド系、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体とアルコール系水酸基を有するビニル系単量体との共重合体などを塗料に用いることについての検討がされている(例えば、特許文献6参照)。この塗料を用いることで耐酸性や耐候性に優れた塗膜を形成させることができる。しかし、この塗料では形成された塗膜の親水性が低いため、付着した汚れが落ち難く、見た目の美しさ、掃除の容易さ、掃除回数の低減等の点から、耐汚染性の改良が望まれている。上記の問題を改良するために、塗膜を水蒸気などで後処理して親水化方法が提案されたが、それでも十分な親水性は得られていない。
【0008】
こういった課題を解決するために、高い親水性を有するポリマーとゾルゲルとをハイブリッド化する方法が提案された(例えば、特許文献7参照)。この方法で形成された塗膜は非常に高い親水性を有するため防汚性が良好で、また非常に硬度が高いため耐傷性にも優れていた。しかし、ゾルゲルとハイブリッド化させていることから、大きな負電荷を持つため、汚れを寄せ付けやすいという問題点があった。
【0009】
【特許文献1】特開昭64−86101号公報
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【特許文献5】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献6】特開昭63−132977号公報
【特許文献7】特開2002−361800号公報
【非特許文献1】新聞“化学工業日報”1995年1月30日付け記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゾルゲルとハイブリッド化せずとも高い耐傷性と防汚性を有する親水性塗膜を形成できる親水性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の発明者らは鋭意検討した結果、親水膜のコーティング組成物として、特定の加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーを選択したとき、上述した問題を解決できることを見出した。すなわち、高い耐傷性と防汚性を有した親水性塗膜を形成できること見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下のとおりである。
【0012】
1.
1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(A)と触媒(B)とを含有する親水性組成物であって、該親水性組成物を塗布乾燥して得られる塗布膜の表面ゼータ電位が−15mV〜+10mVであることを特徴とする親水性組成物。
2.
前記親水性ポリマー(A)が下記一般式(I)で表される構造を含むことを特徴とする上記1に記載の親水性組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。xおよびyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100である。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
3.
前記親水性組成物を塗布乾燥し、得られた塗布膜の表面ゼータ電位が−10mV〜0mVであることを特徴とする上記1又は2に記載の親水性組成物。
4.
前記触媒(B)が酸、アルカリ、金属キレート、金属塩からなる群より選択される少なくとも一つからなることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の親水性組成物。
5.
前記1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(A)100質量部に対して、前記触媒(B)を0.1〜20質量部含有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の親水性組成物。
6.
前記親水性組成物を塗布乾燥し、得られた塗布膜の水接触角が15°以下となることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の親水性組成物。
7.
前記親水性組成物を塗布乾燥し、得られた塗布膜の水接触角が10°以下となることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の親水性組成物。
8.
さらに、分子内に1つの加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(C)を含有することを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の親水性組成物。
9.
前記親水性ポリマー(A)と前記親水性ポリマー(C)の質量比(親水性ポリマー(A)/親水性ポリマー(C))が、5/95〜50/50の範囲であることを特徴とする上記8に記載の親水性組成物。
10.
フィン本体と、該フィン本体の表面の少なくとも一部に設けられた親水性層とを具備するフィン材であって、該親水性層は、上記1〜9のいずれかに記載の親水性組成物を塗布乾燥したものであることを特徴とするフィン材。
11.
前記フィン本体がアルミニウム製であることを特徴とする上記10に記載のフィン材。
12.
上記11に記載のフィン材を含む熱交換器。
13.
上記12に記載の熱交換器を含むエアコン。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゾルゲルとハイブリッド化せずとも高い耐傷性と防汚性を有する親水性塗膜が形成可能な親水性組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(A)と触媒(B)を含有する親水性組成物であり、かつ、親水性組成物を塗布乾燥して得られる塗布膜の表面ゼータ電位が−15mV〜+10mVである親水性組成物に関する。本発明の課題は、親水性組成物の組成の適正化とともに、表面ゼータ電位の適正制御によって達成されている。
【0017】
表面ゼータ電位は、固体表面の電荷や吸着特性の指標とすることができる。表面と特定の物質表面とのゼータ電位とが、プラスとマイナスの異なる符号のときには、両者のゼータ電位の差が大きいほど、静電的な引力が増加し、特定の物質がある固体表面に付着しやすくなる。従って、特定の物質がある固体表面に付着し難くしたい場合には、固体表面のゼータ電位を0近傍にすることが望まれる。
よって汚れを付着させず長期間高い親水性を保持させるためには、表面ゼータ電位を0近傍にすることが望ましく、特に、表面ゼータ電位が−15mV〜10mVのときが好ましい。また、屋内環境における汚染物質はマイナス電荷のものが多いため、表面ゼータ電位もわずかにマイナスになっている方が良く、−10mV〜0mVのときが更に好ましい。表面ゼータ電位の調節は、一般的に電荷を持った添加剤を添加することで可能となるが、この手法だと親水性の低下が懸念される。しかし、本発明の親水性ポリマーの官能基を変更することで、親水性を保持したまま表面ゼータ電位を調節することが可能となる。具体的には、官能基にカチオン系を選択した時は表面ゼータ電位がプラスになり、アニオン系を選択した時は表面ゼータ電位がマイナスになる。ノニオン系の官能基を選択した時は表面ゼータ電位はゼロ近傍となる。
また、官能基量を変えることによって、表面ゼータ電位の絶対値を調節することも可能となる。
表面ゼータ電位は、レーザーゼータ電位計(大塚電子製、ELS−Z2)と平板試料用セル、ゼータ電位が既知のヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたポリスチレン製のラテックス粒子(大塚電子製)を10mmol/dmのNaCl電解質を含む水溶液に適量分散させた標準粒子を用い、25℃/pH7における電気浸透流を測定し算出することができる。
【0018】
以下に、本発明の親水性組成物に含まれる、(A)親水性ポリマー及び(B)触媒について説明する。
【0019】
〔(A)親水性ポリマー〕
(A)親水性ポリマーの主鎖構造は特に限定されない。好ましい主鎖構造としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられ、特にアクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。親水性ポリマーは共重合体であってもよく、該共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0020】
親水性ポリマーは親水性基を有する。親水性基としては、例えば、−NHCOR、−NHCO2R、−NHCONR2、−CONH2、−NR2、−CONR2、−OCONR2、−COR、−OH、−OR、−OM、−CO2M、−CO2R、−SO3M、−OSO3M、−SO2R、−NHSO2R、−SO2NR2、−PO3M、−OPO3M、−(CHCHO)H、−(CHCHO)CHまたは−NR31などが挙げられる。ただし、Rは複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基)、アリール基、またはアラルキル基を表し、Mは水素原子、アルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはオニウムを表し、nは整数(好ましくは1〜100の整数)を表し、Z1はハロゲンイオンを表す。また、−CONR2のように複数のRを有する場合、R同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。Rはさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、後述する一般式(I)で表される構造を有する親水性ポリマーにおけるR1、R2がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げるものを同様に挙げることができる。
【0021】
前記Rとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
【0022】
親水性基としては、−OH、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH2、−COOH、−SO3-NMe4+、−SO3-+、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−OH、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH2、−COOH、−SO3-+、−(CHCHO)H、であり、さらに好ましくは、−OH、−COOH、−CONH2、である。
【0023】
本発明で使用することのできる(A)親水性ポリマーは、下記一般式(I−a)、(I−b)で示される構造単位を有するポリマー(特定親水性ポリマーともよぶ)であることが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
一般式(I−a)及び(I−b)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数8以下)を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは組成比であり、0<x<100、0<y<100の範囲内の数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0026】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0027】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0028】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0029】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0030】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0031】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、ヒドロキシメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0032】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。ヒドロキシメチル基が親水性の観点からとくに好ましい。
【0033】
は単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。さらに、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0034】
【化3】

【0035】
より好ましくは、−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−、−CH−である。
また、Lはポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、Lがポリマーまたはオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0036】
は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子が連結基なしに直接結合していることを表す。また、L中に、前記構造は2つ以上存在してもよく、その場合には、互いに同じものでも、異なるものであってもよい。前記構造を1つ以上含むのであれば、他の構造はLで挙げられたものと同様の構造を有することができる。
【0037】
また、Xは親水性基であって、−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)又は−N(R)(R)(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0038】
、R又はRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
、Rとしては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、Xとしては具体的には、−CONa、−CONH、−SONa、−SONH、−PO等が好ましい。
【0039】
x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100である。xは10<x<99の範囲であることが好ましく、50<x<99の範囲であることがさらに好ましい。yは1<y<90の範囲であることが好ましく1<y<50の範囲であることがさらに好ましい。この範囲に各構造単位のモル比を設定することで、塗布液の高い安定性、高い膜強度と親水性が発現するという効果が奏される。各構造単位のモル比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である(I−a)及び(I−b)は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよく、その場合、一般式(I−a)に相当する構造単位と一般式(I−b)に相当する構造単位の重合モル比が上記範囲であることが好ましい。
【0040】
(A)特定親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0041】
本発明の親水性ポリマーが有する加水分解性シリル基は、下記一般式(II)で表される。
−SiR3-m(OR (II)
ここで、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは1〜3で表される整数である。
加水分解性シリル基の加水分解物のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成することにより、強固な膜を形成することが可能となる。
【0042】
以下に、(A)特定親水性ポリマーの具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0043】
【化4】

【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
【化15】

【0055】
本発明の(A)特定親水性ポリマーを合成する原料化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
(A)特定親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(1996年、共立出版)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、1992年、共立出版)、新実験化学講座19(1978年、丸善)、高分子化学(I)(日本化学会編、1996年、丸善)、高分子合成化学(物質工学講座、1995年、東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0056】
また、上記特定親水性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0057】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0058】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0060】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0061】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0062】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、(A)特定親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(A)特定親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0063】
(A)親水性ポリマーは、親水性組成物の不揮発性成分に対して、硬化性と親水性の観点から、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは15〜90質量%、最も好ましくは20〜85質量%の範囲で含有される。
【0064】
(A)親水性ポリマーは単独で用いてもよいし、別のポリマーを併用してもよい。別のポリマーとしては、後述の(C)親水性ポリマーが好ましい。
(A)親水性ポリマーと(C)親水性ポリマーを混合して用いる場合は、親水性組成物中に含まれる(A)親水性ポリマーと(C)親水性ポリマーの質量比(親水性ポリマー(A1)/親水性ポリマー(A2))は、5/95〜50/50の範囲であることが好ましい。質量比は、8/92〜45/55がより好ましく、10/90〜40/60がさらに好ましく、20/80〜40/60が特に好ましい。
(A)親水性ポリマーと(C)親水性ポリマーの質量比率を上記範囲とすることで、良好な親水性を維持しつつ、密着性及び耐汚染性が優れたものとなる。
【0065】
〔(C)親水性ポリマー〕
本発明の親水性組成物は、前記(A)親水性ポリマーに加えて、分子内に1つの加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(以下、(C)親水性ポリマーという)を含有することが好ましい。
(C)親水性ポリマーは、下記一般式(c−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(c−a)で表される部分構造を有する親水性ポリマーであることが好ましい。
【0066】
【化16】

【0067】
一般式(c−a)及び(c−b)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。nおよびmは1〜3の整数を表す。Yは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、および−PO(R)(R)からなる群より選択される構造を1つ以上有する構造単位を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0068】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、前記一般式(I−a)、(I−b)におけるR〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましいものも前述と同様である。また、炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基は前述のものが挙げられる。
【0069】
及びLは、前記一般式(I−a)、(I−b)におけるLと同義である。好ましいものも前述と同様である。
は、親水性基であって、前記一般式(I−a)、(I−b)におけるXと同義であり、好ましいものも前述と同様である。
【0070】
(C)親水性ポリマーは、公知の方法で合成することができ、例えば、ラジカル重合可能なモノマーと、ラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0071】
(C)親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0072】
(C)特定親水性ポリマーの具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
【化17】

【0074】
【化18】

【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
【化21】

【0078】
【化22】

【0079】
【化23】

【0080】
【化24】

【0081】
【化25】

【0082】
【化26】

【0083】
【化27】

【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

【0086】
〔(B)触媒〕
本発明の親水性組成物は、触媒として、酸、アルカリ、金属キレート、金属塩から選択される少なくとも1種を含有する。以下これらにつき説明する。
【0087】
(酸)
酸触媒としては、例えば、酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタール酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、蓚酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸などを挙げることができ、好ましくは、塩酸、硝酸が良い。
【0088】
(アルカリ)
アルカリ触媒としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどを挙げることができ、アンモニア、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0089】
(金属キレート)
金属キレートとしては、例えば周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ―ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物とから構成される化合物が挙げられる。
【0090】
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得
られる錯体が優れており、好ましい。
【0091】
上記金属キレートの配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0092】
好ましい配位子はアセチルアセトンまたはアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0093】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。
【0094】
中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0095】
好ましい金属キレートの例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0096】
(金属塩)
上記の金属キレートの代わりに金属塩を用いることもできる。代表的な金属塩は、例えば周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素のハロゲン化物、酸素酸塩や有機酸塩が挙げられる。
【0097】
前記金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた金属塩を形成する。その中でもZr及びAlから得られる金属塩が優れており、好ましい。
【0098】
好ましい金属塩としては、ZrOCl・8HO、ZrOSO・nHO、ZrO(NO・4HO、ZrO(CO・HO、ZrO(OH)・nHO、ZrO(C、(NHZrO(CO、ZrO(C1825、ZrO(C15やAlCl3、Al23・H2O、Al23・3H2O、Al2(SO43・18H2O、Al2(C243・4H2Oが挙げられる。
【0099】
親水性組成物に使用される触媒の添加量について説明する。この触媒の添加量は特に制限されるものではないが、(A)親水性ポリマー100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部の範囲の値とすることが好ましい。触媒の添加量が0.1質量部未満となると、硬化性が低下し、十分な硬化速度が得られない場合がある。一方、触媒の添加量が20質量部を超えると、得られる硬化物の親水性が低下する場合がある。したがって、硬化性と得られる硬化物の親水性とのバランスがより良好な観点から、触媒の添加量を、親水性ポリマー100質量部に対して1〜20質量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0100】
本発明の親水性組成物には、前記必須成分である(A)及び(B)成分に加え、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。
以下、併用し得る成分について説明する。
【0101】
無機微粒子
本発明の組成物は、親水性の向上や、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が2nm〜1μmであるのが好ましく、10nm〜100nmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、塗布、乾燥して得られる親水膜中に安定に分散して、親水膜の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる親水膜を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、組成物の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0102】
界面活性剤
本発明の親水性組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
空気界面は疎水的なため、親水性ポリマーを単に塗布乾燥させると、親水性ポリマーの親水性基は膜中に潜ってしまい親水性が低下してしまう。そこで、界面活性剤を添加すると、界面活性剤の親水側が塗膜表面に向くため塗膜表面は親水的になり、親水性ポリマーの親水性基が膜中に潜ることなく表面に配向させることができる。その結果、高い親水性を発現させることができる。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
界面活性剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0103】
紫外線吸収剤
本発明においては、親水性組成物によって形成した親水膜の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0104】
酸化防止剤
本発明の親水性組成物により形成した親水膜の安定性向上のため、親水性組成物に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0105】
有機溶剤
本発明の親水性組成物により親水膜を形成する時に、基材に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性層形成用塗布液に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水膜形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0106】
高分子化合物
本発明の親水性組成物には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
上記高分子化合物の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜20質量%であることが好ましく、0.01〜15質量%であることがより好ましい。
【0107】
抗菌剤
抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤または、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
上記抗菌剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%が一般的であり、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ膜強度に悪影響を及ぼさない。
【0108】
また、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基材への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0109】
また、この他にも、本発明の目的や硬化を損なわない範囲において、ラジカル性重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、濡れ性改良剤、可塑剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、防腐剤、顔料、乾燥剤、沈殿防止剤、たれ防止剤、増粘剤、皮張り防止剤、色別れ防止剤、平滑剤、消泡剤、粘着防止剤、つや消し防止剤、難燃剤、防錆剤などの添加剤を更に含有させることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0110】
〔親水性組成物の調液〕
親水性組成物の調製は、親水性ポリマー及び触媒、必要に応じて金属アルコキシドなどをエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜50℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は0.5〜20時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0111】
親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0112】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
親水性組成物を、適切な基板上に被膜し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。即ち、本発明の親水性部材は、基板上に、親水性組成物を被膜し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有するものである。
【0113】
〔基材〕
本発明の親水性組成物の支持体として使用可能な基材としては、例えば、防汚及び/又は防曇効果を期待する透明な基材の場合には、その材質はガラス、または無機化合物層を含有したガラス等の無機基材や、透明プラスチック、または無機化合物層を含有した透明プラスチック層など可視光を透過しうる基材が好適に利用できる。
無機基材の詳細について述べれば、通常のガラス板、樹脂層、気体層、真空層などを含む積層ガラス板、強化成分や着色剤などを含む各種のガラス板を挙げることができる。
無機化合物層を含有したガラス板としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属性酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板を挙げることができる。
無機化合物層は、単層あるいは多層構成とすることができる。無機化合物層はその厚みによって、光透過性を維持させることもでき、また、反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層の形成方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0114】
また、プラスチックなどの有機基材のうち、透明プラスチック基材としては、可視光透過性を有する種々のプラスチック材料からなる基材を挙げることができる。特に、光学部材として使用される基材は、透明性、屈折率、分散性などの光学特性を考慮して選択され、使用目的により、種々の物性、例えば、耐衝撃性、可撓性など強度をはじめとする物理的特性や、耐熱性、耐候性、耐久性などを考慮して選択される。これらの観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロフィン等のセルロース系樹脂などを好ましく挙げることができる。これらは、使用目的に応じて、単独で用いられてもよく、或いは、2種以上を混合物、共重合体、積層体などの形態で組み合わせて用いることもできる。
プラスチック基材として、ガラス板の説明において記載した無機化合物層をプラスチック板上に形成したものを用いることもできる。この場合、無機化合物層は反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層をプラスチック板上に形成する場合も、前述した無機基材におけるのと同様の手法で形成することができる。
透明プラスチック基材に無機化合物層を形成する場合、両層の間には、ハードコート層を形成してもよい。ハードコート層を設けることにより、基材表面の硬度が向上すると共に、基材表面が平滑になるので、透明プラスチック基材と無機化合物層との密着性が向上し、耐引っ掻き強度の向上と、基材の屈曲に起因する無機化合物層へのクラックの発生を抑制することができる。このような基材を用いることで親水膜の機械的強度を改善できる。ハードコート層の材質は、透明性、適度な強度、及び機械的強度を有するものであれば、特に限定されない。例えば、電離放射線や紫外線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂が使用でき、特に紫外線照射硬化型アクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、熱硬化性ポリシロキサン樹脂が好ましい。これらの樹脂の屈折率は、透明プラスチック基材の屈折率と同等、もしくはこれに近似していることがより好ましい。
このようなハードコート層の被膜方法は、特に限定されず、均一に塗布されるのであれば任意の方法を採用することができる。また、ハードコート層の膜厚は3μm以上であれば十分な強度となるが、透明性、塗工精度、取り扱いの点から5〜7μmの範囲が好ましい。さらにハードコート層に平均粒子径0.01〜3μmの無機あるいは有機物粒子を混合分散させることによって、一般的にアンチグレアと呼ばれる光拡散性処理を施すことができる。これらの粒子は透明であれば特に限定されないが、低屈折率材料が好ましく、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが安定性、耐熱性等の点で特に好ましい。光拡散性処理は、ハードコート層の表面に凹凸を設けることによっても達成できる。
【0115】
このように、ガラス板やプラスチック板に無機化合物層を有するものを基材として用い、親水性表面を形成することにより、親水性部材を得ることができる。親水性部材は表面に親水性と耐久性に優れた親水膜を有することより、支持体(基材)表面に優れた防汚性、特に油脂汚れに対する防汚性、防曇性のいずれか或いは双方を付与することができる。
【0116】
本発明の親水性部材表面に適用可能な反射防止層は、前述の無機化合物層に限定されず、例えば、反射率、屈折率の異なる複数の薄層を積層することにより、反射防止効果を得る公知の反射防止層なども適宜用いることができ、その材料も無機化合物、有機化合物のいずれも使用することができる。特に、表面に反射防止膜としての無機化合物層が形成された基材は、反射防止膜が形成された側の表面に本発明に係る親水性ポリマー鎖を適用することにより、表面の防汚性及び/又は防曇性機能、さらに反射防止性に優れた本発明の防汚性及び/又は防曇性部材とすることができる。また、目的に応じて、前記構成を有する部材に、偏光板などの機能性光学部材などを、ラミネートに代表される貼り合わせ技術で貼り合わせることにより、本発明の親水性部材を用いて種々の機能や特性を有する反射防止・光学機能性部材を得ることもできる。
【0117】
これらの反射防止部材や反射防止・光学機能性部材を、粘着剤、接着剤などを用いて各種ディスプレイ(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなど)の表示装置の前画板のガラス板、プラスチック板、偏光板などに貼付することにより、この反射防止部材の表示装置への適用が可能となる。
また、本発明の親水性部材は、前記した表示装置以外にも、防汚及び/又は防曇効果を要求される種々の用途への適用が可能である。なお、防汚及び/又は防曇性部材を透明性を必要としない基材に適用しようとする場合には、上記の透明基材に加えて、例えば、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体が、支持体基材としていずれも好適に利用できる。
【0118】
また、本発明の親水性部材に防汚効果を期待する場合には、その基板は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、タイル、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基板は、ガラス基板、プラスチック基板、アルミニウム基板である。
【0119】
(基材の処理法)
基材上に組成物を塗布する際、未処理基材のまま、前記親水膜を塗設できるが、必要に応じ、親水膜の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、表面親水化処理を施すことができる。上記表面親水化処理法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、アルカリ洗浄、サンドブラスト、ブラシ研磨などが挙げられる。
【0120】
(下塗り層)
更に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては、金属酸化膜、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることができる。
金属酸化膜としては、SiO、Al、ZrO、TiO等が挙げられ、ゾルゲル法、スパッタ法や蒸着法により形成することができる。
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
【0121】
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジ
ルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
【0122】
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m 2 が好ましく、0.1〜10g/m 2 がより好ましい。
【0123】
〔塗布方法〕
塗布方法は、特に限定されないが、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0124】
[親水性層の物性]
(水の接触角)
親水性は、汎用的に、水の接触角で測定される。本発明の親水性部材の表面は、20℃にて測定した表面の空中水滴接触角が15°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下である。
【0125】
親水性部材は、窓ガラス等に適用(使用、貼り付け)する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。前記親水性膜は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。
【0126】
前記親水性膜の厚さは、0.1μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜5μmがより好ましい。上記範囲であれば乾燥むら等の欠陥が生じることがなく、親水性を充分発揮するため好ましい。
【0127】
〔用途〕
親水性組成物、および親水性部材が適用可能な用途を例示するが、これらに限定されるものではない。
眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装および塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバーおよび塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装および塗装、トンネル内装および塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバーおよび塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装および塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、雪国用屋根材、アンテナ、送電線、医療用診断装置の各部材、医療用のカテーテル、パソコンやテレビのディスプレイ、化粧品の容器、フィルター、自動車用アルミホイール、カメラのファインダー、印刷装置の各部材、および上記物品表面に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。
【0128】
上記用途の中でも、本発明に係る親水性部材は、フィン材に適用することが好ましく、アルミニウム製フィン材に適用することが好ましい。すなわち、本発明に係る親水性組成物をフィン材本体(好ましくはアルミニウム製フィン材)に塗布し、フィン材表面に親水性層を形成することが好ましい。
室内エアコンや自動車エアコン等の熱交換器等に用いられるアルミニウム製フィン材は、冷房時に発生する凝集水が水滴となりフィン間にとどまることで水のブリッジが発生し、冷房能力が低下する。またフィン間に埃などが付着することでも、同様に冷房能力が低下する。これらの問題に対し、本発明の親水性部材をフィン材に適用することで、親水性、防汚性、及びそれらの持続性に優れたフィン材が得られる。
本発明に係るフィン材は、パルミチン酸に1時間曝気、30分水洗、30分乾燥を5サイクル繰返した後の水接触角が40°以下であることが好ましい。
【0129】
フィン材に用いられるアルミニウムとしては、表面が脱脂されたもの、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板を挙げることができる。アルミニウム製のフィン材は、表面が化成処理されていることが親水化処理皮膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、例えば、クロメート処理を挙げることができ、その代表例として、アルカリ塩−クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法などの処理法、及びクロム酸クロムを主体とした組成物による無水洗塗布型処理法などが挙げられる。
【0130】
例えば、熱交換器用フィン材に用いられるアルミニウム等薄板としては、JIS規格で、1100、1050、1200、1N30等の純アルミニウム板、2017、2014等のAl−Cu系合金板、3003、3004等のAl−Mn系合金板、5052、5083等のAl−Mg系合金板、さらには6061等のAl−Mg−Si系合金板等のいずれを用いても良く、またその形状はシートおよびコイルのいずれでも良い。
【0131】
また、本発明に係るフィン材は、熱交換器に用いることが好ましい。本発明に係るフィン材を用いた熱交換器は、優れた親水性、防汚性及びそれらの持続性を有しているので、フィン間に水滴や埃などが付着するのを防止することができる。熱交換器としては、例えば、室内用クーラーやエアコン、建設機械用オイルクーラー、自動車のラジエーター、キャパシタ等に使用される熱交換器が挙げられる。
また、本発明に係るフィン材を用いた熱交換器をエアコンに使用することが好ましい。本発明に係るフィン材は、優れた親水性、防汚性及びそれらの持続性を有しているので、前述のような冷房能力の低下等の問題が改善されたエアコンを提供することができる。エアコンとしては、ルームエアコン、パッケージエアコン、カーエアコン等、いずれのものでもよい。
その他、本発明の熱交換器、エアコンには公知の技術(例えば特開2002−106882号公報、特開2002−156135号公報など)を用いることができ、特に制限されない。
【実施例】
【0132】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0133】
〔実施例1〜26〕
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面を10分間UV/O3処理により親水化し、塗布用基板とした。表1に示した組成の塗布液を25℃で2時間攪拌し、塗布用基板に塗布バーで塗布した後、150℃、30分乾燥して、乾燥塗布量3.0g/m2の親水性膜を形成した。
以下に、表1に示した成分の調製法あるいは入手先を記す。
【0134】
[親水性ポリマー(1)の合成]
500ml三口フラスコにアクリルアミド11.9g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル11.6g、及び1−メトキシ−2−プロパノール280gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル1.8gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。その後、反応液をアセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、親水性ポリマー(1)を得た。乾燥後の質量は22.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により求めたポリマーの質量平均分子量は22800であった。
以後、実施例にて使用した親水性ポリマーは上記と同様の手法により合成し、評価に使用した。実施例に使用した親水性ポリマー(1)〜(6)の構造を以下に示す。
【0135】
【化30】

【0136】
【化31】

【0137】
【化32】

【0138】
【化33】

【0139】
【化34】

【0140】
【化35】

【0141】
[親水性ポリマー(C1)の合成]
三口フラスコにアクリルアミド28g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.36g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った。こうして、親水性ポリマー(C1)を得た。GPC(ポリエチレンオキシド標準)で求めた親水性ポリマー(C1)の質量平均分子量は46200であった。
親水性ポリマー(C1)の構造は以下のとおりである。
【0142】
【化36】

【0143】
<触媒液(1)>
エタノール200gとアセチルアセトン10gを混合し、オルトチタン酸テトラエチル10g加えて10分攪拌した後、精製水100g加えて1時間攪拌し、調製した。
【0144】
<触媒液(2)>
ジルコゾールZA−30(ZrO(C水溶液、第一稀元素化学(株)製)を用いた。
<触媒液(3)>
1規定塩酸(和光純薬(株)製)を用いた。
【0145】
<界面活性剤>
下記構造式のアニオン系界面活性剤5質量%水溶液を用いた。
【0146】
【化37】

【0147】
【表1】

【0148】
〔比較例〕
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面を10分間UV/O3処理により親水化し、塗布用基板とした。表2に示した組成の塗布液を25℃で2時間攪拌し、塗布用基板に塗布バーで塗布した後、150℃、30分乾燥して、乾燥塗布量3.0g/m2の親水性膜を形成した。
【0149】
【表2】

【0150】
比較例において、使用した成分は以下のとおりである。
TMOS:テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
触媒液(1):実施例と同じ触媒液
スノーテックZL:コロイダルシリカ(粒径70−100nm)分散物40質量%水溶液
スノーテックC:コロイダルシリカ(粒径10−20nm)分散物20質量%水溶液
界面活性剤:実施例と同じ界面活性剤
【0151】
〔親水性部材の評価〕
(親水性)
空中水滴接触角の測定(協和界面科学株式会社製DropMaster500で測定)。
(防曇性)
上記で得られた親水性部材に、昼間、室内の蛍光灯下で、1分間水蒸気を当て、水蒸気から離した後、25℃、RH10%の環境下に配置し、前記と同様の照射条件の蛍光灯下において曇り具合及びその変化を下記基準により三段階で官能評価した。
◎:曇りが観察されない
○:曇っているが、10秒以内に回復し、曇りが見られなくなる
×:曇っており、曇りが10秒経過しても回復しない
(鉛筆硬度)
JIS K 5400に準じ、試験(安田精機製作所製鉛筆引っ掻き硬度試験機553−
Mで試験)を行った。
(磨耗試験)
不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で往復摩耗試験機(HEIDONTYPE30)を用いて200回こすり、その前後の水滴接触角の差を算出し、下記に示すとおり判定した。
◎:摩耗前後の水滴接触角の差が5°以下
○:摩耗前後の水滴接触角の差が5より大きく10°以下
×:摩耗前後の水滴接触角の差が10°より大きく20°以下
(防汚性)
1日に平均4名が利用する浴室に試料を90°で立てかけて曝露し、汚れの付着を目視で観察した。
◎:3ヶ月経っても汚れ付着なし
○:1ヶ月経っても汚れ付着なし
×:1週間で汚れが付着する
(汚染試験1)
1質量%のリンス水溶液(花王メリット、(株)花王)に10分間浸漬し、水道流水でリンスを除去した後(約20秒)、室温(25℃)で1時間乾燥させた。その後、水接触角を測定した。試験前後の水滴接触角の差を算出し、下記に示すとおり判定した。
◎:摩耗前後の水滴接触角の差が5°未満
○:摩耗前後の水滴接触角の差が5〜10°
×:摩耗前後の水滴接触角の差が10°より大きい
【0152】
(汚染試験2)
50mlガラス容器にパルミチン酸を0.2gとり、親水性層を塗布したガラス基板で、親水性層側がパルチミン酸に曝されるように蓋をして105℃/1時間曝気後、30分流水洗浄、80℃/30分乾燥を1サイクルとし、5サイクル後の水滴接触角を測定した。
30°以下・・・・◎
31〜40°・・・・○
41〜70°・・・・△
71°以上・・・・×
【0153】
(表面ゼータ電位)
レーザーゼータ電位計(大塚電子製、ELS−Z2)と平板試料用セルを用い、ポリスチレンラテックスを光散乱のモニター粒子として電気浸透流を測定し、算出した。
【0154】
上記評価法に従った評価結果を表3に示す。
【0155】
【表3】

【0156】
また、ガラス基板をアルミニウム板に変更しても、同程度の性能であり、実施例の性能の優劣も変わらなかった。用いたアルミニウム基材はアルミニウム板(A1200、厚み0.1mm)をアルカリ性洗浄液(横浜油脂、セミクリーンA 5%水溶液)に10分浸漬し、水洗する工程を3回繰り返したものを使用した。
【0157】
表3から明らかなように、本発明の親水性組成物を用いて作製した親水膜は、耐傷性、耐磨耗性、防汚性ともに良好であった。実施例1〜18、20〜26と実施例19との対比において、実施例19は親水性が低く、防曇性が発現せず、防汚性もやや低かった。これは、親水性ポリマーの違いに起因したものと考えられる。また、実施例4、10、14、18は触媒量が多いためやや親水性が低く防曇性が低かった。実施例3、9、13、17は触媒量が少ないため耐傷性、耐摩耗性がやや劣っていた。
実施例7〜10と実施例1〜6、11〜26の対比において、実施例7〜10は表面ゼータ電位が負に大きく汚染試験により親水性が低下する傾向にあった。
また、2種類の親水性ポリマーを組み合わせた実施例20〜25は防汚性が最も高かった。しかし、実施例25から分かるように1つの架橋基を持つポリマー(親水性ポリマーC1)が多すぎると、親水性・耐傷性が低下した。
他方、本発明の範囲外の親水性ポリマーを含有する親水性組成物を用いて形成した比較例1は耐傷性、耐摩耗性、防汚性が不十分であり、実用上問題あるレベルであった。また、無機物ゾルからなる組成物を用いて形成した比較例2は高い耐傷性を有していたが、親水性、耐摩耗性、防汚性が不十分であり、実用上問題あるレベルであった。また、比較例では、本発明の範囲外の親水性ポリマーと無機物ゾルを組み合わせることで高い親水性と耐傷性を両立させることができたが、防汚性と耐摩耗性が不十分であり、実用上問題あるレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(A)と触媒(B)とを含有する親水性組成物であって、該親水性組成物を塗布乾燥して得られる塗布膜の表面ゼータ電位が−15mV〜+10mVであることを特徴とする親水性組成物。
【請求項2】
前記親水性ポリマー(A)が下記一般式(I)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の親水性組成物。
【化1】


一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。xおよびyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100である。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項3】
前記親水性組成物を塗布乾燥し、得られた塗布膜の表面ゼータ電位が−10mV〜0mVであることを特徴とする請求項1又は2に記載の親水性組成物。
【請求項4】
前記触媒(B)が酸、アルカリ、金属キレート、金属塩からなる群より選択される少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項5】
前記1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(A)100質量部に対して、前記触媒(B)を0.1〜20質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項6】
前記親水性組成物を塗布乾燥し、得られた塗布膜の水接触角が15°以下となることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項7】
前記親水性組成物を塗布乾燥し、得られた塗布膜の水接触角が10°以下となることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項8】
さらに、分子内に1つの加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー(C)を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項9】
前記親水性ポリマー(A)と前記親水性ポリマー(C)の質量比(親水性ポリマー(A)/親水性ポリマー(C))が、5/95〜50/50の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の親水性組成物。
【請求項10】
フィン本体と、該フィン本体の表面の少なくとも一部に設けられた親水性層とを具備するフィン材であって、該親水性層は、請求項1〜9のいずれかに記載の親水性組成物を塗布乾燥したものであることを特徴とするフィン材。
【請求項11】
前記フィン本体がアルミニウム製であることを特徴とする請求項10に記載のフィン材。
【請求項12】
請求項11に記載のフィン材を含む熱交換器。
【請求項13】
請求項12に記載の熱交換器を含むエアコン。

【公開番号】特開2009−256575(P2009−256575A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233320(P2008−233320)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】