説明

親水性膜、それを用いた平版印刷材料、防汚性部材、防曇性部材、及び、平版印刷材料を用いた平版印刷版の作製方法

【課題】表面親水性とその持続性に優れた親水性膜、該親水性膜を備えた平版印刷材料、防汚性部材、防曇性部材、及び、それを用いた非画像部の親水性及びその耐久性に優れた平版印刷版の作製方法を提供する。
【解決手段】(A)分子内に、5員環構造及び6員環構造より選択される環構造を2個以上有し、かつ、該環構造が親水性基を有する化合物を含有する組成物からなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて得られる親水性膜であり、該組成物中には、さらに(B)架橋剤を含有することが好ましい。この親水性膜は平版印刷版の画像記録層、防汚性、防曇性を有する表面親水性部材の親水性層として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は親水性膜、該親水性膜を備えた平版印刷材料、防汚性部材、防曇性部材、及び、該平版印刷材料を用いた平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷は、インキを受容する親油性領域と、インキを受容せず湿し水を受容する撥インク領域(親水性領域)を有する版材を利用する印刷方法であり、現在では広く感光性の平版印刷版原版(PS版)が用いられている。PS版は、アルミニウム板などの支持体の上に、感光層を設けたものが実用化され広く用いられている。このようなPS版は、画像露光および現像により非画像部の感光層を除去し、基板表面の親水性と画像部の感光層の親油性を利用して印刷が行われている。このような版材では、非画像部の汚れ防止のため、基板表面には高い親水性が要求される。
【0003】
一方、近年進展が目覚ましいコンピュータ・トゥ・プレートシステム用刷版については、多数の研究がなされている。その中で、一層の工程合理化と廃液処理問題の解決を目指すものとして、露光後、現像処理することなしに、印刷機に装着して印刷できる現像不要の平版印刷版原版が研究され、種々の方法が提案されている。処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷用原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。
【0004】
このような機上現像に適した平版印刷版原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な感光層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。現像工程を必要としない刷版として、基板上に架橋された親水層を設け、その中にマイクロカプセル化された熱溶融物質を含有した無処理刷版が記載されている(例えば、特許文献1参照)。この刷版ではレーザーの露光領域に発生した熱の作用によりマイクロカプセルが崩壊し、カプセル中の親油物質が溶け出し、親水層表面が疎水化される。この印刷版原版は、現像処理を必要としないが、基板上に設けられた親水層の親水性や耐久性が不充分であり、印刷するにつれて非画像部に徐々に汚れが生じてくる問題点があった。
【0005】
親水性及びその耐久性を向上させる目的で、アクリルアミド―ヒドロキシエチルアクリレートの共重合ポリマーを、メチロールメラミン架橋剤を用いて硬化させてなる親水性層(例えば、特許文献2参照)、ゼラチン又はポリビニルアルコールを用いた親水性層(例えば、特許文献3参照)、及び、4級アンモニウム塩ポリマーからなる親水性層(例えば、特許文献4参照)などが提案されている。これらは、用いるポリマーの親水性や架橋構造などを改良し、ある程度の改良は達成されているものの、実用上、印刷版として用いるには親水性が不足し、印刷時の放置汚れやインキでの払い性の点で満足のいくものが未だ得られていないのが現状である。このような現状をふまえ、表面に親水性ポリマーを直接結合させた支持体が提案されている(例えば、特許文献5参照)。この支持体表面の親水性層は確かに高親水性を達成しており、一般の平版印刷版支持体としては良好な性能を有するものの、マイクロカプセルなどの疎水性材料を含有させる目的に使用する場合には、被膜形成の調製が困難になるなど、取り扱いが難しいという問題があった。
【0006】
また、高い表面親水性とその持続性が望まれる部材として、防汚性、防曇性を有する親水性部材が挙げられる。例えば、部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。また、近年、モバイルの普及に伴い、ディスプレイが屋外で使用されることが多くなってきたが、外光が入射されるような環境下で使用されると、この入射光はディスプレイ表面において正反射され、反射光が表示光と混合して表示画像が見にくくなるなどの問題を引き起こす。このため、ディスプレイ表面に反射防止光学部材を配置することがよく行われている。
このような反射防止光学部材としては、例えば、透明基材の表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層したもの、透明基材の表面に無機や有機フッ化化合物などの低屈折率層を単層で形成したもの、或いは、透明プラスチックフィルム基材の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させるものなどが知られている。これら反射防止光学部材表面も、前述の光学部材と同様に、人が使用することによって、指紋や皮脂などの汚れが付着しやすいが、汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れがより目立つという問題に加え、反射防止膜の表面には通常、微細な凹凸があり、汚れの除去が困難であるという問題もあった。
【0007】
固体部材の表面に汚れを着き難くする、或いは、付着した汚れを取りやすくするという性能を持つ汚れ防止機能を表面に形成する技術が種々提案されている。特に反射防止部材と防汚性部材との組合せとしては、例えば、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜と、有機ケイ素置換基を含む化合物で処理してなる防汚性、耐摩擦性材料(例えば、特許文献6参照。)、基材表面に末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルター(例えば、特許文献7参照。)が提案されている。また、ポリフルオロアルキル基を含むシラン化合物をはじめとするシラン化合物を含有する反射防止膜(例えば、特許文献8参照。)や、二酸化ケイ素を主とする光学薄膜とパーフルオロアルキルアクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体との組合せ(例えば、特許文献9参照。)が、それぞれ提案されている。
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、フッ素やケイ素などの表面エネルギーの低い材料による表面処理は経時的な防汚性能の低下が懸念され、このため、防汚性と耐久性の優れた防汚性部材の開発が望まれている。
【0008】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基材の表面が親水化されると、付着水滴が基材表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0009】
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)が、この塗膜はある程度の親水性を有するものの、基材との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0010】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基材表面に光触媒含有層形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献10参照。)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、良好な耐摩耗性を有する防汚性部材が求められている。
【特許文献1】国際出願WO94/23954号明細書
【特許文献2】特開2002−370467公報
【特許文献3】特開平11−95417号公報
【特許文献4】特表2003−527978公報
【特許文献5】特開2003−63166公報
【特許文献6】特開昭64−86101号公報
【特許文献7】特開平4−338901号公報
【特許文献8】特公平6−29332号公報
【特許文献9】特開平7−16940号公報、
【特許文献10】国際出願公開PTC/JP96/00733号パンフレット
【非特許文献1】新聞”化学工業日報”1995年1月30日付け記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来における諸問題を解決することを目的でなされたものであり、本発明の目的は、表面親水性とその持続性に優れた親水性膜を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記親水性膜を備えた平版印刷材料、及び、それを用いた非画像部の親水性及びその耐久性に優れた平版印刷版の作製方法を提供することにある。本発明のさらなる目的は、前記親水性膜を備えた防汚性部材並びに防曇性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意検討の結果、特定の親水性基を有する複数の環構造を備えた化合物を、特定のアルコキシド化合物で架橋、硬化させた被膜により、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。また、親水性とその持続性に備えた親水膜を応用することで、優れた平版印刷材料、防汚性部材、並びに、防曇性部材を得られることを見出した。
即ち、本発明の親水性膜は、(A)分子内に、5員環構造及び6員環構造より選択される環構造を2個以上有し、かつ、該環構造が親水性基を有する化合物〔以下、適宜、(A)特定親水性化合物と称する〕と、(B)Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物〔以下、適宜、(B)特定アルコキシドと称する〕と、を含有する組成物からなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて得られることを特徴とする。
このような親水性膜を形成するための組成物には、前記(A)特定の環構造を有する親水性化合物に加え、さらに(C)親水性ポリマーを含有することが、親水性膜の強度、耐久性向上の観点から好ましい。
【0013】
本発明における(A)特定親水性化合物としては、親水性基を有する5員環構造、及び/又は親水性基を有する6員環構造を有する、親水性の糖類、デンプン誘導体、セルロース誘導体などが挙げられる。このような親水性の糖類に代表される(A)特定親水性化合物を用いることで高親水性で、且つ、高強度の膜を得られる機構は明確ではないが、糖類、或いは、セルロース誘導体などは、1つのユニットに多くの親水性基を有し、且つ、環構造を形成しているため、親水性基が環構造の外側に向いて存在することにより、このような化合物を用いて被膜を形成すると、被膜表面に高い親水性を示すものと思われる。また、このような糖類などにおける親水性基は、アルコールやカルボン酸などの構造を示すことが多く、このため、架橋成分として(B)特定アルコキシドを共存させることにより、被膜形成時にこれらの親水性基、好ましくは、水酸基と、この(B)特定架橋成分とが高い反応性を発現し、(A)と(B)とが架橋することに加え、さらに、(B)特定アルコキシドの加水分解、縮重合により(B)成分同士も架橋し、高密度の架橋構造が形成されるため、硬化後の被膜は優れた強度と耐久性を発現するものと考えられる。
【0014】
本発明に係る親水性膜は、表面高親水性であり、且つ、高強度で耐久性に優れるため、表面親水性を要する種々の用途に用いることができるが、なかでも、平版印刷版の親水性領域を形成するのに有用である。
即ち、本発明の請求項3に記載のように、前記親水性膜中に、エネルギー線により、親水性から疎水性に変化する材料を含有させることで、エネルギー照射領域のみを疎水性領域とすることができ、任意の領域に疎水性領域を形成しうる親水性膜を得ることができる。従って、このような親水性膜を用いて、画像様に親/疎水性領域を形成することで平版印刷版を得ることも可能となる。
【0015】
本発明の請求項4に係る平版印刷材料は、支持体上に、前記本発明の親水性膜を有することを特徴とする。このような平版印刷材料は、支持体上に優れた親水性表面性状を与えるため、その表面に、何らかの手段により、疎水性のインク受容性領域を形成することで平版印刷版が作製できる。
本発明の請求項5に係る平版印刷版の作製方法は、その一例を示すものであり、支持体上に、前記本発明の親水性膜を形成してなる平版印刷材料に、インクジェット記録方法により疎水性材料を適用してインク受容性領域を形成することを特徴とする。
インクジェット記録方式の一つとして、放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。例えば、紫外線硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性で、インク吸収性の低い親水性膜への記録ができる点で、近年注目されつつある。
このようなインクジェット記録用インクを本発明の高親水性膜を用いた平版印刷材料に画像様に適用し、硬化させて画像部を形成することで、UV硬化インクの疎水性と、親水性膜の高親水性により、優れた印刷画像を形成しうる平版印刷版の作製を容易に行うことが可能となる。
【0016】
また、前記本発明の親水性膜の特性を生かした適用例として、高い親水性とその持続性を有する表面特性を必要とする防汚性部材、防曇性部材が挙げられる。
即ち、本発明の請求項8に係る防汚性部材は、基材上に、前記本発明の親水性膜を有することを特徴とする。また、本発明の請求項9に係る防曇性部材は、基材上に、前記本発明の親水性膜を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面親水性とその持続性に優れた親水性膜を提供することができる。
該親水性膜は表面親水性に優れるため、支持体上に親水性膜を形成することで、優れた平版印刷材料となり、さらに、適切な基材上に親水性膜を形成することで、優れた防汚性部材、防曇性部材となる。
また、該平版印刷材料を用いることで、非画像部の親水性及びその耐久性に優れた平版印刷版の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の親水性膜は、(A)分子内に特定の親水性環構造を2個以上有る化合物と、(B)Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物と、を含有する組成物からなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて得られることを特徴とする。以下、本発明の親水性膜の構成成分について順次説明する。
【0019】
<(A)分子内に、5員環構造及び6員環構造より選択される環構造を2個以上有し、かつ、該環構造が親水性基を有する化合物>
このような(A)特定親水性化合物の主たる構造をなす5員環、6員環は炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から任意に選ばれる原子により形成することが可能であり、また、複数の5員環、6員環同士は、各々炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子或いは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、水素原子を組み合わせた連結基により結合される。
【0020】
本発明に用いられる(A)特定親水性化合物である(A)分子内に、5員環構造及び6員環構造より選択される環構造を2個以上有し、かつ、該環構造が親水性基を有する化合物としては、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、グロース、アロース、イドース、キシロース、リボース、アラビノース、リキソース、エリトロース、トレオース等の単糖類、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、サッカロース等の2糖類、ゲンチアノースなどの環構造を有する2以上の化合物を、メチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、チオエーテル基、アリール基、ウレタン基、ウレア基等を有する連結基で結合することにより得ることが出来る。
さらに、前記糖類は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エチレンオキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ウレタン基、ウレア基、チオール基、アセタール基などの置換基、或いはこれらを組み合わせた置換基などを有するものであってもよい。
また、セルロース誘導体、デンプン誘導体の如く、親水性基を有する環構造が多数連結した高分子化合物も、本発明の(A)特定親水性化合物として用いることができる。
【0021】
(A)特定親水性化合物は、その環構造に親水性基を有することが必要であるが、このような親水性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エチレンオキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ウレタン基、ウレア基、チオール基、硫酸基などが挙げられる。これらは直接5員環或いは6員環に結合したものであってもよく、また、必要に応じメチレン基、メチレンオキシ基、アリール基等連結基を介して環構造に結合していてもよい。また、前記した親水性基のうち、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、チオール基、硫酸基等はプロトン体でも、塩基で中和されても使用することが可能である。
また、アミノ基は酸で中和されたアンモニウム基であっても構わない。
【0022】
以下に本発明に用いることのできる(A)特定親水性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、メチルセルロース、カラゲーニン、マルトヘプタノース、マルトヘキサノース、ニストース、ラフィノース、パノース、キチン、キトサン、ペクチン酸、ペントサン、ペントース、セルローストリアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、デキストリン、硝酸セルロース、酢酸セルロース、セルロースカーバメート、シアノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの共重合体、コンドロイチン6−硫酸六糖、ヘパリン、デキストラン硫酸、カロチン硫酸、マルトデキストリン硫酸塩、ヘミセルロース硫酸塩、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム塩、N−ジカルボキシエチルアミノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース エチルスルホネート、N−(o−カルボキシフェニル)アミノデオキシセルロース、s−(o−カルボキシフェニル)メルカプトデオキシセルロース、ヒドラジノデオキシセルロース、アミロース、メチルアミロース、デンプン、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、アクリル酸グラフトデンプン、プルラン、カードラン、キサンタンガム、ジュランガム、グアーガム、アラビアガム、カラギーナン、ヘパラン硫酸などが挙げられる。
【0023】
本発明に使用できる5員環及び/又は6員環構造を2個以上有し、かつ該環構造が親水性基を有する化合物の好ましい形態は、親水性の観点から、該環構造に少なくとも水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、硫酸基またはそれらの塩を有することが好ましい。最も好ましくは−SO構造、−OSO構造を有する糖構造を有する化合物である。これらの親水性基は前記環構造に少なくとも1つ有すればよいが、複数個有するものであってもよく、その場合、5員環及び/又は6員環構造に、複数の同種の親水性基を有していてもよく、互いに異なる複数種の親水性基を有していてもよい。効果の観点からは、前記環構造に、水酸基とカルボン酸基、水酸基とリン酸基、水酸基と硫酸基、などの組み合わせで複数の親水性基を有するものが好ましい。
【0024】
(A)特定親水性化合物は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
(A)特定親水性化合物は、本発明に係る親水性膜形成用の組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは25〜50質量%の範囲で使用される。この範囲において、良好な膜強度と被膜特性が得られ、膜にクラックが入るなどの懸念もないため、好ましい。
【0025】
<(B)Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物>
本発明においては、親水性膜形成用の組成物中に、前記(A)特定親水性化合物に加えて、架橋成分として、(B)特定アルコキシドを含有することで、親水性とその耐久性に優れた高強度被膜が形成される。
(B)Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物は、好ましくは、一般式(2)で表される化合物であり、親水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記特定親水性化合物と、下記一般式(2)で表される架橋成分とを混合して支持体表面に塗布・乾燥することが好ましい。
下記一般式(2)で表される架橋成分は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす化合物であり、前記(A)特定親水性化合物と、又は、(B)成分同士で、縮重合することで、架橋構造を形成する。また、被膜性、親水性のさらなる向上といった観点から、後述する(C)親水性ポリマーをさらに含有することが好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
一般式(2)中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rはアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRがアルキル基を表す場合、アルキル基の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0028】
以下に、一般式(2)で表される架橋成分の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0029】
また、XがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0030】
(B)特定アルコキシドは、本発明に係る親水性膜形成用の組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは20〜70質量%の範囲で使用される。また、(B)特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0031】
<その他の架橋剤>
本発明においては、前記(B)特定アルコキシドに加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、親水性膜の特性向上のため、(B)特定アルコキシド以外の、公知の熱、酸又はラジカルにより架橋を形成する架橋剤を併用することができる。
本発明に併用可能な「その他の架橋剤」としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものが挙げられる。本発明に用いうる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、前記(A)特定親水性化合物及び/又は(B)成分と有効に架橋可能ならば特に制限はない。但し、アルデヒドケトンは、官能基数が少なくとも1個あれば、本発明に係る架橋剤として使用することができる。
具体的な熱架橋剤としては、1,2−エタンジカルボン酸、アジピン酸といったα,ω−アルカン若しくはアルケンジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン、等のポリアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、
【0032】
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のオリゴアルキレンまたはポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール等のポリヒドロキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒド、アセトルデヒド、ベンズアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、ジチオエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)などのポリチオール化合物などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性膜の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
【0033】
その他の架橋剤は、本発明において親水性膜の形成に用いられる組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜30質量%、更に好ましくは0〜15質量%の範囲で使用される。また、このような架橋剤は、単独で用いても2種以上併用してもよいが、本発明の主たる架橋成分である(B)特定アルコキシドに対しては、50質量%以下であることが好ましい。
【0034】
<(C)親水性ポリマー>
本発明の親水性膜形成用組成物には、架橋密度向上の観点から、さらに(C)親水性ポリマーを含有することが好ましい。
本発明に用いうる親水性ポリマーとしては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニル類或いはその加水分解物、スチレン類、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、アクリルニトリル、無水マレイン酸類、マレイン酸イミド類などのモノマーを原料とするポリマーが挙げられる。
特に上記のモノマーでもアミノ基、アンモニウム基、水酸基、スルホンアミド基、カルボキシル基又はその塩、リン酸基又はその塩、スルホン酸基又はその塩、エーテル基特にエチレンオキシ基を有するモノマーが好ましい。
また、上記以外に主鎖にウレタン結合、或いはアミド結合、或いはウレア結合を有する親水性ポリマーも使用することが可能である。
【0035】
アクリル酸エステル類の具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0036】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
【0037】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0038】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
ビニル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルピロリドン等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、トリメトキシスチレン、カルボキシスチレン、スチレンスルホン又はその塩等が挙げられる。
【0040】
また、本発明においては、親水性膜の特性のさらなる向上の観点からは、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する特定親水性ポリマー〔以下、適宜、「(C−1)特定親水性ポリマー」と称する〕を含有することが好ましい。(C−1)特定親水性ポリマーは、末端にシランカップリング基を有することを特徴とする。
このような末端にシランカップリング基を有する(C−1)特定親水性ポリマーの併用により、親水性ポリマーのシランカップリング基と前記架橋成分との相互作用、さらには、シランカップリング基同士の相互作用による、Si(OR)4により形成された架橋構造が形成され、強固な架橋構造による親水性膜の強度、耐久性の向上が達成されるものと推定される。
【0041】
【化2】

【0042】
一般式(1)で表される構造を有する親水性高分子化合物は、構造単位(i)、(ii)で表されるポリマーユニットの両末端の少なくとも一方に、構造単位(iii)で表されるシランカップリング基を有していればよく、他の末端にもこの官能基を有していてもよく、水素原子、または重合開始能を有する官能基を有していてもよい。
上記一般式(1)において、mは0、1または2を表し、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0043】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。
アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いらる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
【0044】
N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、
【0045】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0046】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル2基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO-)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0047】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0048】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12まての分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0049】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0050】
およびLは、単結合又は有機連結基を表す。ここで、有機連結基とは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0051】
【化3】

【0052】
は、単結合又は有機連結基を表す。ここで、有機連結基とは、非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、上記LおよびLと同様のものもを挙げることができる。中でも、特に好ましい構造としては、−(CH−S−である(nは1〜8の整数)。
【0053】
また、YおよびYは、−NHCOR、−CONH、−CON(R)(R)、−COR、−OH、−COM又は−SOMを表し、ここで、R、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。また、−CON(R)(R)についてR、Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R、Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0054】
、Rとしては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
また、Y、Yとしては具体的には、−NHCOCH、−CONH、−COOH、−SONMe、モルホリノ基等が好ましい。
【0055】
xおよびyは、x+y=100とした時の組成比を表し、x:yは100:0〜1:99の範囲を表し、100:0〜5:95の範囲がさらに好ましい。
【0056】
(C−1)特定親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がさらに好ましく、1,000〜30,000が最も好ましい。
【0057】
本発明に好適に用い得る(C−1)特定親水性ポリマーの具体例(1−1)〜(1−23)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
【化4】

【0059】
【化5】

【0060】
【化6】

【0061】
<合成方法>
本発明において所望により併用される(C−1)特定親水性ポリマーは、下記構造単位(i)及び(ii)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記構造単位(iii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
この反応様式は特に制限されるものではないが、ラジカル重合開始剤の存在下、或いは、高圧水銀灯の照射下、バルク反応、溶液反応、懸濁反応などを行えばよい。
【0062】
また、重合反応において、(iii)で表される構造単位の導入量を制御し、これと構造単位(i)又は(ii)との単独重合を効果的に抑制するため、不飽和化合物の分割添加法、逐次添加法などを用いたじ重合法を行うことが好ましい。
構造単位(iii)に対する構造単位(i)、(ii)の反応比率は特に制限されるものではないが、構造単位(iii)1モルに対して、構造単位(i)、(ii)が0.5〜50モルの範囲内とすることが、副反応の抑制や加水分解性シラン化合物の収率向上の観点から好ましく、1〜45モルの範囲がより好ましく、5〜40モルの範囲であることが最も好ましい。
【0063】
【化7】

【0064】
上記構造単位(i)、(ii)及び(iii)において、R1〜R6、L1〜L3、Y1、Y2、mは、上記一般式(1)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0065】
(C−1)特定親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0066】
また、上記(C−1)特定親水性ポリマーは、前記した各構造単位と、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0067】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−又はi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0068】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−又はi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0069】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0070】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0071】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0072】
共重合体の合成に使用されるこれら、他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、割合が大きすぎる場合には、親水性膜としての機能が不十分となり、(C−1)親水性ポリマーを添加する利点を十分に得られない懸念がある。従って、(C−1)特定親水性ポリマー中の、他のモノマーの好ましい総割合は80重量%以下であり、さらに好ましくは50重量%以下である。
【0073】
(C)親水性ポリマーは、単独で用いても2種以上併用してもよい。この(C)親水性ポリマーの最も好ましい態様が、(C−1)特定親水性ポリマーであることを考慮すれば、用いる(C)親水性ポリマーの全てが、このような(C−1)特定親水性ポリマーであってもかまわない。
所望により併用される(C)親水性ポリマーは、被膜性と親水性のバランスをとるといった観点から、本発明において親水性膜の形成に用いられる組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは0〜20質量%の範囲で使用される。
【0074】
<界面活性剤>
本発明においては、前記親水性膜形成用組成物の塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0076】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0077】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0078】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0079】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0080】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、前記組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0081】
<無機微粒子>
本発明の親水性膜形成用の組成物には、親水性膜の硬化皮膜強度向上及び親水性、保水性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水性膜形成用組成物の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0082】
<親水性膜の形成>
本発明の親水性膜は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は、溶解して塗布液を調製し、適切な支持体上に塗布してなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて形成することができる。
【0083】
また、好ましい態様である親水性膜塗布液組成物の調製にあたっては、(A)特定親水性化合物の質量1に対して、(B)特定アルコキシドが0.1〜4の質量比であるように用いられることが好ましい。架橋成分添加量の上限は親水性ポリマーと十分架橋できる範囲内であれば特にないが、大過剰に添加した場合、架橋に関与しない架橋成分により、作製した親水性表面がべたつくなどの問題を生じる可能性がある。
【0084】
所望により用いられる(C)親水性ポリマーのうち、特に(C−1)末端にシランカップリング基を有する特定親水性ポリマーを用いる場合、(C−1)シランカップリング基を末端に有する親水性ポリマー、(A)少なくとも5員環及び/又は6員環構造を有し、かつ該環構造が親水性基を含有する化合物、さらに(B)特定アルコキシドなどの架橋成分とを溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解し、縮重合して、有機無機複合体ゾル液が形成され、このゾル液が本発明に係る親水性膜形成用塗布液となり、これによって、高い親水性と高い膜強度を有する表面親水性層が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び縮重合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、触媒は必須である。
【0085】
触媒としては、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよいが、濃度が高い場合は加水分解、縮重合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0086】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。
具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。その他の触媒としては、Tiのアセチルアセトン錯体、SuCl、Zr(OR)などの金属化合物が挙げられる。
【0087】
親水性膜塗布液の調製は、(A)特定親水性化合物、(B)特定アルコキシドなどの架橋成分、及び、好ましくはさらに(C−1)シランカップリング基を末端に有する親水性ポリマー、をエタノールなどの溶媒に溶解後、所望により上記触媒を加え、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・縮重合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0088】
前記親水性膜塗布液組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0089】
以上述べたように、本発明の親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性塗布液組成物)の調製はゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明に係る親水性膜塗布液組成物の調製に適用することができる。
【0090】
本発明に係る親水性膜塗布液組成物には、先に述べたように、本発明の効果を損なわない限りにおいて、種々の添加剤を目的に応じて使用することができる。例えば、先に詳述したように、塗布液の均一性を向上させるため界面活性剤を添加することができる。
【0091】
上記のようにして調製した親水性膜塗布液組成物を、支持体の基板に塗布、乾燥することで親水性表面を形成することができる。
本発明の親水性膜は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
親水性表面の膜厚は目的により選択できるが、一般的には乾燥後の塗布量で、0.2〜5.0g/mの範囲であり、好ましくは0.5〜3.0g/mの範囲である。塗布量が、上記範囲において、優れた親水性効果の発現と、良好な膜強度が得られ、以下に詳述するように、画像記録成分を添加した場合も、良好な記録感度を達成できる。
【0092】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0093】
<支持体>
本発明の親水性膜は任意の基材上に形成することができるが、適切な支持体上に該親水性膜を形成することで、平版印刷版材料とすることができる。また、この親水性膜に後述するようにエネルギー付与により親水性から疎水性に変化する材料を含有することで、平版印刷版原版とすることもできる。
ここで用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0094】
支持体の厚さは0.05〜1.0mmであるのが好ましく、0.07〜0.7mmであるのがより好ましく、0.1〜0.5mmであるのが更に好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。
【0095】
<硬化方法>
本発明の親水性膜は、支持体上に塗布後、乾燥することにより硬化させることもできるが、塗布、乾燥後に、さらに光及び/又は熱により硬化させることも可能である。即ち、塗布により形成された被膜を硬化させるために加熱及び/又は光照射を行ってもよく、塗布後の加熱及び/又は光照射により、架橋反応がさらに進行し、親水性膜の被膜強度が向上する。
これらのうち、製造適性上、熱で硬化させることが好ましい。本発明の親水性膜の形成に係る組成物を熱で硬化、製膜させる場合の温度条件には特に制限はないが、好ましくは60℃〜300℃であり、架橋剤を含有する場合の架橋性と製造安定性の観点から80℃〜250℃の範囲がより好ましい。親水性膜は塗布後、そのまま上記温度条件で乾燥、硬化を行ってもよく、また、親水性膜の乾燥後に、別工程で加熱し、被膜を硬化させることも可能である。
また、光により硬化させる場合、光源は特に制限なく、紫外光、可視光、赤外線、白色光いずれの波長を用いても良い。
【0096】
親水性膜形成用の組成物に他の架橋剤を含む場合、架橋構造の形成は、熱、光等による共有結合の形成、熱、光などにより発生する酸及び/又はラジカルによる共有結合の形成、或いは、酸と塩基によるイオン架橋形成のいずれであってもよい。ラジカルを大量に発生させ、硬化させることが可能であれば、大気中でも窒素、アルゴン雰囲気下いずれで硬化反応を実施しても構わない。
本発明においては、硬化性を向上させるために、硬化に用いる架橋反応に適する、公知の架橋反応の促進剤を必要に応じて用いることが可能である。特にラジカル重合反応を用いて被膜形成組成物の硬化を行う場合には、アゾ化合物、パーオキシ化合物、有機ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、遷移金属化合物など、熱又は光ラジカル発生剤を用いることができる。
【0097】
<熱または光により親水性からを疎水性に変化する材料>
本発明の親水性膜に画像形成機能を有する化合物、即ち、加熱或いは輻射線露光により疎水化領域を形成することのできる化合物を含有させることで、本発明の親水性膜は、加熱または輻射線の照射などのエネルギー付与により疎水性領域を形成しうる材料となりうる。このような化合物を用いることにより、例えば、露光により親水性膜中に疎水性領域が形成され、そのまま平版印刷版として使用することができる。
熱または光により親水性からを疎水性に変化する材料としては、化合物自体の物性が親水性から疎水性に変化する化合物、もしくはポリマー粒子等のように、有着などにより疎水性領域を形成する物質などを挙げることができる。
親水性から疎水性に変化する化合物としては特開2000−122272号(特願平10−229783)公報に記載の熱により脱炭酸を起こして親水性から疎水性に変化する官能基を有するポリマーを挙げることができ、具体的には、以下に示す高分子化合物が好ましく例示される。好ましい物性としては、このポリマー自身を塗布したときの被膜表面の空中水滴による接触角が、加熱前に20°以下であり、加熱後には65°以上に変化するものが特に好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0098】
【化8】

【0099】
本発明に好ましく使用されるポリマー粒子は、熱が加えられたときに親水性の画像記録層を疎水性に変換できる粒子である。この粒子としては、熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子及び疎水性化合物を内包するマイクロカプセルから選ばれる少なくともひとつのポリマー粒子であることが好ましい。
【0100】
本発明の画像記録層に用いられる熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及びEP931647号公報などに記載の熱可塑性ポリマー粒子を好適なものとして挙げることができる。かかるポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0101】
本発明に用いられる熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱可塑性ポリマー粒子の合成方法としては、乳化重合法、懸濁重合法の他に、これら化合物を非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を蒸発させながら粒子状に固化させる方法(溶解分散法)がある。
【0102】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー粒子としては、熱硬化性ポリマー粒子及び熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。
【0103】
上記熱硬化性ポリマーとしては、フェノール骨格を有する樹脂、尿素系樹脂(例えば、尿素又はメトキシメチル化尿素など尿素誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、メラミン系樹脂(例えば、メラミン又はその誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、特に好ましいのは、フェノール骨格を有する樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂及びエポキシ樹脂である。
【0104】
好適なフェノール骨格を有する樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールなどをホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、及びN−(p−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどのフェノール骨格を有するメタクリルアミドもしくはアクリルアミド又はメタクリレートもしくはアクリレートの重合体又は共重合体を挙げることができる。
【0105】
本発明に用いられる熱硬化性ポリマー粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱硬化性ポリマー粒子は、溶解分散法で容易に得られるが、熱硬化性ポリマーを合成する際に粒子化してもよい。しかし、これらの方法に限らない。
【0106】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー粒子の熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でも良いが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)、縮合反応を行うカルボキシル基及び反応相手であるヒドロキシル基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシル基などを好適なものとして挙げることができる。
【0107】
これらの官能基のポリマー粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
【0108】
重合時に導入する場合は、上記の官能基を有するモノマーを乳化重合又は懸濁重合することが好ましい。上記の官能基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレート又はそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレート又はそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
本発明では、これらのモノマーと、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性基をもたないモノマーとの共重合体も用いることができる。熱反応性基をもたない共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができるが、熱反応性基をもたないモノマーであれば、これらに限定されない。
【0110】
熱反応性基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
【0111】
上記熱反応性基を有するポリマー粒子の中で、ポリマー微粒子同志が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で水に分散するものが特に好ましい。ポリマー粒子のみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度より高い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このようにポリマー微粒子表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーもしくはオリゴマー又は親水性低分子化合物をポリマー微粒子表面に吸着させてやればよい。しかし、表面親水化の方法は、これに限定されない。
【0112】
これらの熱反応性基を有するポリマー粒子の凝固温度は、70℃以上が好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上がさらに好ましい。ポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、特に0.1〜1.0μmが最適である。この範囲内で良好な解像度及び経時安定性が得られる。
【0113】
本発明に用いられるマイクロカプセルは、疎水性化合物を内包する。この疎水性化合物は、好ましくは熱反応性基を有する化合物である。熱反応性基としては、前記の熱反応性基を有するポリマー粒子に用いられるものと同じ熱反応性基を好適なものとして挙げることができる。以下、熱反応性基を有する化合物についてより詳しく説明する。
【0114】
ラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などを少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を好適なものとして挙げられる。このような化合物群は当該産業分野において、重合性組成物用のモノマー又は架橋剤として広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定することなく用いることができる。化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体、オリゴマー、重合体もしくは共重合体、又はそれらの混合物である。
【0115】
具体例としては、特開2001−277740号公報に重合性不飽和基を有する化合物として記載されている化合物が挙げられる。代表的な化合物例として、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートとキシリレンジイソシアナートとの付加体などが挙げられる。しかし、これらに限定されない。
【0116】
エチレン性重合性不飽和基を有する重合体又は共重合体形態のものとして、アリルメタクリレートの共重合体を挙げることができる。例えば、アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体などを挙げることができる。
本発明に使用できるスチリル系化合物としては、特願2004−045114に記載の化合物などを挙げることができる。
【0117】
本発明に好適なビニルオキシ基を有する化合物としては、特開2002−29162号公報に記載の化合物が挙げられる。具体例として、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,2−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3,5−トリス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ビフェニル、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルエーテル、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルメタン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ナフタレン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フラン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}チオフェン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}イミダゾール、2,2−ビス[4−{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フェニル]プロパン{ビスフェノールAのビス(ビニルオキシエチル)エーテル}、2,2−ビス{4−(ビニルオキシメチルオキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシ)フェニル}プロパンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0118】
本発明に好適なエポキシ基を有する化合物としては、2個以上エポキシ基を有する化合物が好ましく、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物又はそのプレポリマー、更に、アクリル酸グリシジル又はメタクリ酸グリシジルの重合体もしくは共重合体等を挙げることができる。
【0119】
具体例としては、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等、更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
【0120】
上記化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、エピコート1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、エピコート1004(約1060、エポキシ当量875〜975)、エピコート1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、エピコート1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、エピコート1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、エピコート1100L(エポキシ当量4000)、エピコートYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195XL、ESCN−195XF等を挙げることができる。
【0121】
本発明に好適なイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、シクロヘキシルジイソシアナート、又は、これらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物を挙げることができる。
【0122】
本発明に好適なアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0123】
本発明に好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類などを挙げることができる。
【0124】
本発明に好適なカルボキシル基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸などの芳香族多価カルボン酸、アジピン酸などの脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
【0125】
本発明に好適な酸無水物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0126】
上記の熱反応性基を有する化合物をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、英国特許第990443号、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素−ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
マイクロカプセルを水媒体中に安定に分散するための分散剤として、水溶性ポリマーを使用することができる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール及びその変性物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン/アクリル酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム及びアルギン酸ナトリウムを挙げることができる。これらの水溶性ポリマーは、イソシアネート化合物との反応しないもの、或いは、極めて反応し難いものが好ましく、たとえばゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは予め反応性をなくしておくことが好ましい。
【0127】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。マイクロカプセル壁に熱反応性基を有する化合物を導入しても良い。
【0128】
また、本発明では、本願出願人が先に提案した特願2004−222932明細書に記載されるような2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物を水と非混和性の溶剤に溶解させ、この溶液を、イソシアネート基と反応しうる活性水素基を片末端に1つ以上有する親水性ポリマーを含む水溶液に乳化分散させた後、該油滴から溶剤を除去するマイクロカプセル粒子が汚れ性向上の観点から好ましい。この片末端に1つ以上有する親水性ポリマーを含む水溶液に乳化分散させた後、該油滴から溶剤を除去するマイクロカプセル粒子は上記の反応性化合物を内包することが可能である。
【0129】
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましいが、0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0130】
このようなマイクロカプセルは、カプセル同志が熱により合体してもよいし、合体しなくとも良い。要は、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面もしくはマイクロカプセル外に滲み出したもの、又は、マイクロカプセル壁に浸入したものが、熱により化学反応を起こせば良い。添加された親水性樹脂又は添加された低分子化合物と反応してもよい。また2種類以上のマイクロカプセルに、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせることによって、マイクロカプセル同士を反応させてもよい。従って、熱によってマイクロカプセル同士が、熱で溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
【0131】
上記ポリマー粒子及びマイクロカプセルの画像記録層への添加量は、いずれの粒子の場合も、固形分換算で、画像記録層固形分の50質量%以上が好ましく、70〜98質量%がより好ましい。この範囲内で、良好な画像形成ができ、良好な耐刷性が得られる。
【0132】
本発明の画像記録層にマイクロカプセルを含有させる場合には、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類などが好ましい。
【0133】
具体的化合物としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。
【0134】
このような溶剤の添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり好ましい範囲は、10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0135】
<赤外線吸収剤>
本発明の親水性膜を平版印刷材料として用いる場合、前記熱または光により親水性からを疎水性に変化する材料による疎水性領域の形成を高感度で行うため、さらに、赤外線吸収剤を併用することが好ましい。即ち、平版印刷材料を、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源により画像形成して平版印刷版を作製する場合には、通常、赤外線吸収剤を用いることが必須である。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、疎水化領域を形成することのできる化合物の熱分解や、ポリマー粒子の熱融着、相変化によって、疎水化領域を形成する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収する物質であればよく、種々の公知の顔料、染料又は色素、及び金属粒子を用いることができる。
【0136】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0137】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願平2001−6326、特願平2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0138】
【化9】

【0139】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(i)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0140】
【化10】

【0141】
一般式(i)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は以下に示す基を表す。ここで、Xは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xaは後述するZaと同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0142】
【化11】

【0143】
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0144】
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Zaは、対アニオンを示す。ただし、一般式(i)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。好ましいZaは、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0145】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(i)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0146】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0147】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0148】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0149】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像記録層塗布液中での良好な安定性と画像記録層の良好な均一性が得られる。
【0150】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0151】
本発明において使用される金属粒子は、遷移金属の酸化物、周期律表の2〜12族の金属元素の硫化物及び周期律表の3〜12族の金属の窒化物、周期律表の2〜12族の金属の単体または合金である。
遷移金属酸化物には鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ニオブ、イットリウム、ジルコニウム、ビスマス、ルテニウム、バナジウムなどの酸化物が含まれる。また、必ずしも遷移金属に含めない分類法もあるが、亜鉛、水銀、カドミウム、銀、銅の酸化物も本発明に用いることができる。これらの中では、FeO,Fe,Fe,CoO,Cr,MnO,ZrO,Bi,CuO,CuO,AgO,PbO,PbO、VO(x=1〜5)がとくに好ましい金属酸化物の例として挙げられる。VOには、黒色のVO、V、VO、や褐色のVが挙げられる。
【0152】
好ましい無機金属酸化物としては、TiO(x=1.0〜2.0)、SiO(x=0.6〜2.0)、AlO(x=1.0〜2.0)も挙げることができる。TiO(x=1.0〜2.0)には、黒色のTiO、黒紫色のTi、結晶形と狭雑物によって種々の色を呈するTiO類がある。SiO(x=0.6〜2.0)には、SiO、Si、無色あるいは共存物質によって紫、青、赤などの色を示すSiOが挙げられる。また、AlO(x=1.5)には、無色あるいは共存物質によって赤、青、緑などに呈色するコランダムなどが挙げられる。
【0153】
金属酸化物が多価金属の低次酸化物の場合は、光熱変換剤であって、かつ自己発熱型の空気酸化反応物質でもある場合がある。その場合は、光吸収したエネルギーのほかに自己発熱反応の結果発生した熱エネルギーも利用できるので、好ましい。これらの多価金属の低次酸化物は、Fe,Co,Niなどの低次酸化物が挙げられる。具体的には、酸化第一鉄、四三酸化鉄、一酸化チタン、酸化第一錫、酸化第一クロムなどが挙げられる。その中でも酸化第一鉄、四三酸化鉄及び一酸化チタンが好ましい。
【0154】
自己発熱反応が起こるかどうかは、示差熱天秤(TG/DTA)により容易に確認することができる。示差熱天秤に、自己発熱反応物質を挿入して、温度を一定速度で上昇させていくと、ある温度で発熱ピークが出現して発熱反応が起こったことが観測される。金属あるいは低次酸化金属の酸化反応を自己発熱反応として用いた場合、発熱ピークが現れるとともに、熱天秤では重量が増えることも同様に観測される。繰り返しになるが、光・熱変換機構に加えて自己発熱反応エネルギーを利用することにより、従来よりも単位輻射線量当たり、より多くの熱エネルギーを、しかも持続的に利用することができ、そのために感度を向上させることができる。
【0155】
光熱変換性微粒子が金属硫化物からなる場合、好ましい金属硫化物は、遷移金属などの重金属硫化物である。中でも好ましい硫化物には鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ストロンチウム、錫、銅、銀、鉛、カドミウムの硫化物が挙げられ、とりわけ、硫化銀、硫化第一鉄及び硫化コバルトが好ましい。
【0156】
光熱変換性微粒子が金属窒化物からなる場合、好ましい金属窒化物は、金属のアジド化合物である。とくに銅、銀及び錫のアジド化物が好ましい。これらのアジド化合物は、光分解によって発熱する自己発熱性化合物でもある。そのほかの好ましい無機金属窒化物には、TiN(x=1.0〜2.0)、SiN(x=1.0〜2.0)、AlN(x=1.0〜2.0)などが挙げられる。TiN(x=1.0〜2.0)としては、青銅色のTiNや褐色のTiN(x=1.3)が挙げられる。SiN(x=1.0〜2.0)としては、Si,SiN,Siが挙げられる。また、AlN(x=1.0〜2.0)にはAlNなどを挙げることができる。
【0157】
上記の各金属酸化物、硫化物及び窒化物は、いずれも公知の製造方法によって得られる。また、チタンブラック、鉄黒、モリブデン赤、エメラルドグリーン、カドミウム赤、コバルト青、紺青、ウルトラマリンなどの名称で市販されているものも多い。
【0158】
これら親水性の金属化合物の粒子サイズは、粒子を構成する物質の屈折率や吸光係数によって最適サイズがことなるが、一般に0.005〜5μmであり、好ましくは0.01〜3μmである。粒子サイズが、微小に過ぎると光散乱により、粗大に過ぎると粒子界面反射により、光吸収の非効率化がおこる。
【0159】
金属粒子の多くは、光熱変換性であってかつ自己発熱性でもあって光吸収によって熱を発生させた上にその熱をトリガーとする発熱反応によってさらに多量の熱を供給する。
【0160】
粒子としては、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb等の微粒子が含まれる。これらの金属微粒子は光熱変換性であると同時に自己発熱性でもある。この中でも、吸収光の光熱変換によって得た熱エネルギーにより、酸化反応等の発熱反応を容易に起こすものが好ましく、具体的には、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、In、Sn、Wが好ましい。その中でもとくに輻射線の吸光度が高く、自己発熱反応熱エネルギーの大きいものとして、Fe、Co、Ni、Cr、Ti、Zrが好ましい。
【0161】
また、これらの金属は、単体粒子のみでなく、2成分以上の合金で構成されていてもよく、また、金属と前記した金属酸化物、窒化物、硫化物及び炭化物等で構成された粒子でもよい。金属単体の方が酸化等の自己発熱反応熱エネルギーは大きいが、空気中での取り扱いが煩雑で、空気に触れると自然発火する危険があるものもある。そのような金属粉体は、表面から数nmの厚みは金属の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物等で覆われている方が好ましい。これらの粒子の粒径は、10μm以下、好ましくは、0.005〜5μm、さらに好ましくは、0.01〜3μmである。0.01μm以下では、粒子の分散が難しく、10μm以上では、印刷物の解像度が悪くなる。
【0162】
これらの赤外線吸収剤は、マイクロカプセル等の粒子内に、他の成分と同様に添加してもよいし、また、親水性膜中へ添加してもよく、別の層を設けそこへ添加してもよいが、親水性膜を画像記録層として製膜した際に、画像記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲において、画像記録層に疎水化領域が効率よく形成される。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
なお、親水性膜(画像記録層)に対する添加量としては、0.5〜30質量%の範囲とすることが好ましく、1〜15質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0163】
<着色剤>
本発明では、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、親水性膜形成用の組成物全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0164】
<焼き出し剤>
本発明に係る親水性膜を平版印刷版の画像記録層として用いる場合には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0165】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェ
ニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0166】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0167】
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、親水性膜形成用の組成物全固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0168】
このように、本発明の親水性膜にエネルギー付与により親水性から疎水性に変化する材料を含有させることで平版印刷版原版を得ることができる。
画像の書き込みは、像様に熱及び/又は光などによりエネルギーを付与することで、親水性から疎水性に変化する材料のエネルギー付与領域のみが疎水性に変化してインク受容性の画像部領域を形成することで行われるが、一般的には、熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
【0169】
画像露光された平版印刷版は、露光領域が疎水性のインク受容領域である画像部となり、未露光領域が湿し水受容性の非画像部となるため、特段の現像処理を行なうことなしに、印刷機に装着し、インキと湿し水を用いて通常の手順で印刷することができる。
なお、ここで、親水性領域と疎水性領域との差異を明確にし、親水性領域の耐久性を向上させるため、後加熱処理などのエネルギー付与を行うことも好ましい態様である。後加熱処理としては、80〜200℃で、パネルヒーター、ウィスコンシンオーブンなどの非接触加熱手段により、15秒間〜10分間処理されることが好ましい。具体的には、例えば、パネルヒーターにて、100〜160℃で1〜8分間加熱処理する方法などが挙げられる。
【0170】
また、本発明の平版印刷版原版は、日本特許2938398号に記載されているように、印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水および/またはインクをつけて機上現像することも可能である。
かくして得られた本発明の平版印刷版原版は、画像露光後、何らの現像処理を経ることなく、そのままインクと湿し水とを供給して印刷することができ、非画像部を構成する親水性領域の親水性とその耐久性に優れることから、非画像部に汚れのない高品質の印刷物を多数枚得ることができる。
【0171】
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
支持体上に本発明の親水性膜を形成してなる平版印刷材料に疎水性領域を形成して平版印刷版を得る他の平版印刷版の作製方法として、インクジェット記録方法を適用する平版印刷版の作製方法を挙げることができる。
即ち、本発明の親水性膜に前記したようなエネルギー付与により親水性から疎水性に変化する材料を含有することなく、親水性膜に直接疎水性物質をインクジェット記録方法により適用して疎水性領域を形成し、親/疎水性領域を有する平版印刷版とする方法である。
以下に、本発明の平版印刷版の作製方法に好適に採用され得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置について説明する。
【0172】
インクジェット記録方法において用いられるインク組成物としては、インク吐出時は液状で、被記録媒体上で直ちに硬化する、ワックスを主成分とするいわゆるソリッドインクや、重合性モノマーと重合開始剤と色材とを含有し、インクが被記録媒体に付着した後、紫外線照射により重合、硬化するUV硬化インクなど、被記録媒体に浸透せず、表面で硬化するインク組成物が好ましく挙げられる。
【0173】
インクジェット記録方法においては、上記インク組成物を40〜80℃に加熱して、インク組成物の粘度を7〜30mPa・sに下げた後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い射出安定性を実現することができる。一般に、放射線硬化型インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。
このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが一つの特徴であり、一定温度にする部位はインクタンクからノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
温度コントロールの方法としては、特に制限はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。
また、加熱するヘッドユニットは、装置本体かを外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断、若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立ち上げ時間を短縮する為、或いは熱エネルギーのロスを低減する為に他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0174】
次に放射線の照射条件について述べる。基本的な照射方法は、特開昭60−132767号広報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
また本発明では、インク組成物を一定温度に加温するとともに、着弾から照射までの時間を0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留が抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
【0175】
本発明の平版印刷版の作製方法によれば、インクジェット記録装置の解像度に応じた疎水性領域を本発明の平版印刷材料表面に形成することで容易に平版印刷版を得ることができる。即ち、本発明の作製方法により得られた平版印刷版は、何らの現像処理を経ることなく、そのままインクと湿し水とを供給して印刷することができる。
本発明の平版印刷材料は優れた親水性表面を有するため、ここにソリッドインクや紫外線硬化インクなどの疎水性材料により疎水性領域を形成してなる平版印刷版は、非画像部の親水性とその耐久性に優れ、非画像部に汚れのない高画質の印刷物を多数枚得ることができる。
【0176】
<防汚性部材>
前記本発明の親水性膜は、高い親水性とその持続性を有するため、部材表面への油性汚れの付着を防止する防汚性部材に好適に使用することができる。即ち、表面防汚性を必要とする基材の表面に前記本発明の親水性膜を備えることで、その高い表面親水性により、油性の汚れ、例えば、人が使用することによって付着する指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れ、或いは、工場や調理設備における油性の汚れが、その表面に付着し難くなり、或いは、付着した場合でも、拭き取りや水洗などにより容易に除去できるようになる。
このような防汚性部材の一般的な応用例としては、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材の表面における使用が挙げられる。
【0177】
ここで防汚性部材に用いられる基材には制限はなく、本発明の親水性膜が形成されるものであれば、どのような材料でも用いることができる。
例えば、特に光学部材に使用する場合には、透明な基材が好ましく、その材質はガラスや、酸化チタン、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板等の無機基材や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系樹脂などの可視光透過性のプラスチック類や、前記ガラス板に積層したのと同様の無機化合物層を有する透明プラスチック板等が好適に利用できる。
防汚性部材に適用しうる基材については、本願出願人が先に提案した特開2003−206472公報の段落番号〔0029〕乃至〔0036〕に詳細に記載され、このような基材を本発明の親水性膜を形成するための基材として使用しうる。
【0178】
適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム、ブラウン管等が挙げられ、光学部材以外の用途としては、建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられる。
【0179】
防汚部材を透明性を必要としない基材に適用しようとする場合には、上記の透明基材に加えて、例えば、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体などが、いずれも好適に利用できる。
適用可能な用途としては、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルム、家庭用電気製品のハウジングや部品や外装及び塗装、OA機器製品のハウジングや部品や外装及び塗装、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられる。
【0180】
<防曇性部材>
前記本発明の親水性膜は、高い親水性とその持続性を有するため、部材表面の結露による水滴の付着を防止する防曇性部材に好適に使用することができる。即ち、親水性膜により高い親水性を有する表面は、温度や湿度の影響で大気中の水蒸気が結露して表面に付着した場合でも、表面に水滴を形成することなく、速やかに拡散することから、表面の曇りを抑制することができる。
このため、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材の表面、或いは、視認性を必要とする窓ガラスや車両ガラスの表面などにおいて、好適に使用しうる。
防曇性部材に適用可能な基材は、先に防汚性部材において挙げたものと同様であり、また、用途も同様である。防汚性部材の用途として挙げた態様において、油性汚れの付着のみならず、高い親水性による結露の防止を必要とする部材に、本発明は好適に使用することができる。
【実施例】
【0181】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
<実施例1>
〔親水性膜の作製〕
以下の成分を均一に混合し、室温で2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の親水性膜塗布液組成物1を得た。
(親水性膜塗布液組成物1)
・(A)カラギーナン 12g
・(B)テトラメトキシシラン〔架橋成分〕 30g
・エタノール 250g
・水 750g
・硝酸水溶液(1N) 10g
【0182】
上記親水性膜塗布液組成物1を、以下に記載の方法で得られたアルミニウム支持体に乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるように塗布し、100℃、10分加熱乾燥して支持体上に親水性膜を形成した。
【0183】
〔親水性の評価〕
得られた親水性膜表面を水でぬらした不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で100回擦り、その前後の接触角(空中水滴接触角)を、協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定した。擦りを行った後、部材の表面を観察したが、擦り後にも表面の親水性膜が剥がれたり、目視で確認できる傷が付いたことはなく、実施例1の親水性膜は磨耗に対して充分な強度を有することがわかった。
また、接触角は擦り前が8.6°であり、擦り後8.1°であった。擦り後も十分な親水性を示し、本発明の実施例1の親水性膜は耐摩耗性が良好であることが確認された。
【0184】
<実施例2>
〔親水性膜の作製〕
以下の成分を均一に混合し、室温で2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の親水性膜塗布液組成物2を得た。
(親水性膜塗布液組成物2)
・(A)カルボキシメチルセルロース 12g
・(B)テトラメトキシシラン〔架橋成分〕 30g
・(C−1)下記親水性ポリマー 4g
・エタノール 250g
・水 750g
・硝酸水溶液(1N) 10g
【0185】
【化12】

【0186】
前記実施例1において用いた親水性膜塗布液組成物1を前記親水性膜塗布液組成物2に代えた他は、実施例1と同様にして支持体上に親水性膜を形成し、同様に評価した。その結果、実施例2の親水性膜も、磨耗に対して充分な強度を有することがわかった。
また、接触角は擦り前が7.8°であり、擦り後7.6°であった。擦り後も十分な親水性を示し、実施例2の親水性膜も、また、耐摩耗性が良好であることが確認された。
<実施例3〜6>
〔平版印刷版原版の作成〕
(1)支持体の作成
<アルミニウム板>
Al:99.5質量%以上、Fe:0.30質量%、Si:0.10質量%、Ti:0.02質量%、Cu:0.013質量%を含有し、残部は不可避不純物のJIS A1050アルミニウム合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理としては、溶湯中の水素等の不要なガスを除去するために脱ガス処理し、更に、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊の表面を10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。ついで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中、500℃で60秒間、中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、厚さ0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。得られたアルミニウム板を、以下に示す表面処理に供した。
【0187】
まず、アルミニウム板の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施し、その後、30質量%硝酸水溶液を用いて50℃で30秒間、中和およびスマット除去処理を施した。
ついで、画像記録層と支持体との密着性を良好にし、かつ、非画像部に保水性を与えるため、粗面化処理を施した。具体的には、間接給電セルに供給された、硝酸1質量%および硝酸アルミニウム0.5質量%を含有する水溶液(液温45℃)中を、アルミニウム板のウェブを通過させながら、電流密度20A/dm、duty比1:1の交番波形で、アルミニウム板が陽極時の電気量が240C/dmとなるように電解して、電気化学的粗面化処理を施した。
更に、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で30秒間、エッチング処理を施し、その後、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間、中和およびスマット除去処理を施した。
【0188】
その後、耐摩耗性、耐薬品性および保水性を向上させるために、陽極酸化処理を施した。具体的には、間接給電セルに供給された、20質量%硫酸水溶液(液温35℃)中を、アルミニウム板のウェブを通過させながら、電流密度14A/dmの直流で電解して、2.5g/mの陽極酸化皮膜を作成した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、1.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で15秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/mであった。その後、水洗して、支持体を得た。得られた支持体の中心線平均粗さRは0.25μmであった。
【0189】
(2)画像記録層の形成
前記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液3をバー塗布した後、140℃、2分でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.9g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版用原版を作成した。
【0190】
(画像記録層塗布液3)
・(A)特定親水性化合物(表1に記載の化合物) 1.0g
・(B)テトラエトキシシラン 1.4g
・水 90g
・メタノール 25g
・マイクロカプセル〔表1に記載(1)又は(2))(固形分換算) 1.6g
・界面活性剤(スルホこはく酸ジエチルヘキシルナトリウム塩) 0.01g
・1N塩酸 10g
【0191】
【表1】

【0192】
(マイクロカプセル(1)の合成)
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、下記の赤外線吸収剤(1)0.35g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成製ODB)1g、下記の重合開始剤(1)0.75g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてカルボン酸変性ポリビニルアルコール(KL−506,クラレ(株)製)の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液(1)の固形分濃度を、20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.4μmであった。
【0193】
【化13】

【0194】
【化14】

【0195】
(マイクロカプセル(2)の合成)
〔イソシアネート基と反応する活性水素基を片末端に1つ以上有する親水性ポリマー(1)の合成例〕
アクリルアミド:50g、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩:5gをエタノール:100gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合開始剤2,2−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN):0.5gを加えて6時間反応した。反応後白色沈殿を濾過しメタノールで十分洗浄して、末端アミン塩酸塩の親水性ポリマー(1)を48g得た。(分子量2.2×10)。
【0196】
(マイクロカプセル粒子の作製例1)
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)4.5g、下記の赤外線吸収剤(1)1.5g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成(株)製ODB)0.5g、下記の重合開始剤(1)0.75g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分として合成例1で作製した親水性ポリマー(1)1.5gと1規定水酸化ナトリウム水溶液0.7gに水33gを加え調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、60℃で2時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.3μmのマイクロカプセル(2)を作成した。
【0197】
【化15】

【0198】
【化16】

【0199】
<実施例7>
〔平版印刷版原版の作成〕
前記実施例3〜6において用いた画像記録層塗布液3を下記画像記録層塗布液に代えた他は、同様にして実施例7の平版印刷版用原版を作成した。
【0200】
(画像記録層塗布液4)
・(A)カルボキシメチルセルロース 0.8g
・(B)テトラエトキシシラン 1.4g
・(C−1)特定親水性ポリマー(実施例2で用いた化合物) 0.2g
・水 90g
・メタノール 25g
・マイクロカプセル(1)(固形分換算) 1.8g
・界面活性剤(スルホこはく酸ジエチルヘキシルナトリウム塩) 0.01g
・1N塩酸 10g
【0201】
<比較例1>
実施例3で用いた画像記録層塗布液3における(A)特定親水性化合物に代えて、ポリ(ヒドロキシメチルメタクリレート)を用いた以外は、実施例3と同様にして比較例1の平版印刷版用原版を作製した。
【0202】
(3)露光および印刷
得られた実施例3〜7、比較例1の平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザ搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水を供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を500枚行った。その後、一旦、版面上にインキを付着させ、湿し水を供給してインキが版面上からなくなり、印刷物の非画像部に地汚れが発生しなくなる枚数を計測した。その後、地汚れが発生するまで、印刷を行った。
【0203】
<実施例8>
〔インクジェット記録方法を用いた平版印刷版の作製及び印刷〕
実施例3〜7で用いたのと同様のアルミ基板を支持体とし、その上に下記親水性膜塗布液組成物5を乾燥後の塗布量が0.7g/mとなるように塗布し、130℃、4分加熱乾燥させて支持体上に親水性膜を形成し、平版印刷材料を得た。
(親水性膜塗布液組成物5)
・(A)カルボキシメチルセルロース 11.5g
・(B)テトラメトキシシラン 30g
・(C−1)下記特定親水性ポリマー 4.5g
・エタノール 250g
・水 850g
・硝酸水溶液(1N) 10g
【0204】
【化17】

【0205】
上記親水性支持体上にインクジェットプリンタ(エプソン社製、PM−9000)を用い、ワックスを主体としたソリッドインクジェット用黒インクを使用して画像部(疎水性のインク受容領域)を形成し平版印刷版を作製した。
得られた平版印刷版をハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水を供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を500枚行った。その後、一旦、版面上にインキを付着させ、湿し水を供給してインキが版面上からなくなり、印刷物の非画像部に地汚れが発生しなくなる枚数を計測した。
<比較例2>
実施例8で用いた親水性膜塗布液組成物5のカルボキシメチルセルロースをポリビニルアルコールに変更した以外は実施例8と同様して比較例2の平版印刷版を作製し、同様の印刷を行った。
【0206】
〔平版印刷版の評価〕
実施例2〜8、比較例1、2の平版印刷版の前記印刷において、以下のようにして地汚れ、インク払いを評価した。結果を下記表2に記示す。
(1)地汚れ
刷りだし500枚の時点で、印刷物上の非画像部におけるインキ付着量を目視評価した。インキが全く付着せず地汚れしていない状態を○、インキが少しでも付着している状態を×とした。
(2)インキ払い
上に記載した方法で印刷を行い、インキ払い枚数を計測した。親水性に優れる親水層ほど、インキ払い枚数が少ない。
【0207】
【表2】

【0208】
表2に明らかなように、本発明の親水性膜を用いて作製した平版印刷版は、親水性膜にエネルギー付与により親水性から疎水性に変化する材料を含有してなる平版印刷材料を用いた実施例2〜7、親水性膜に前記化合物を含有しない平版印刷材料を用い、インクジェット記録方法により画像部を形成した実施例8のいずれも、非画像部の親水性と耐久性に優れ、地汚れがなく、インク払い性に優れていることがわかった。
【0209】
<実施例9〜13>
〔表面親水性部材の作製〕
下記親水性塗布液組成物B−1〜親水性塗布液組成物B−5を用いて、以下のようにゾル状の親水性膜塗布液B−1〜親水性膜塗布液B−5を調製し、基材であるガラス板(遠藤科学製)に、乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗布し、100℃、10分加熱乾燥させて基材上に親水性膜を形成し、実施例9〜実施例13の表面親水性部材を得た。
【0210】
下記(親水性膜塗布液組成物B−1)〜(親水性膜塗布液組成物B−5)の成分を均一に混合し、室温で2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の親水性膜塗布液B−1〜親水性膜塗布液B−5を得た。
(親水性膜塗布液組成物B−1)
・(A)カルボキシメチルセルロース 12g
・(B)テトラメトキシシラン〔架橋成分〕 30g
・(C−1)下記親水性ポリマー 4g
・エタノール 250g
・水 750g
・硝酸水溶液(1N) 10g
【0211】
【化18】

【0212】
(親水性膜塗布液組成物B−2)
・(A)カラギーナン 15g
・(B)テトラメトキシシラン〔架橋成分〕 31g
・エタノール 250g
・水 750g
・塩酸(1N) 10g
【0213】
(親水性膜塗布液組成物B−3)
・(A)アルギン酸 12g
・(B)テトラメトキシチタン〔架橋成分〕 30g
・(C−1)下記親水性ポリマー 4g
・エタノール 250g
・水 750g
・塩酸(1N) 10g
【0214】
【化19】

【0215】
(親水性膜塗布液組成物B−4)
・(A)カルボキシメチルセルロース 12g
・(B)テトラエトキシジルコニウム〔架橋成分〕 30g
・(C−1)下記親水性ポリマー 4g
・エタノール 250g
・水 750g
・塩酸(1N) 10g
【0216】
【化20】

【0217】
(親水性膜塗布液組成物B−5)
・(A)カルボキシメチルセルロース 12g
・(B)テトラエトキシシラン〔架橋成分〕 30g
・(C−1)下記親水性ポリマー 4g
・エタノール 250g
・水 750g
・チタンアセチルアセトナート 1g
【0218】
【化21】

【0219】
<比較例3>
上記親水性膜塗布液組成物B−1において、(A)カルボキシメチルセルロースに代えて、ポリビニルアルコール等量を用いた他は同様にして親水性膜塗布液B−6を得て、それを用いて親水性膜を形成し、比較例3の表面親水性部材を得た。
【0220】
〔表面親水性部材の評価〕
〔耐摩擦性の評価〕
得られた実施例9〜13、比較例3の親水性部材表面を、不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で100回擦り、その前後の接触角(空中水滴接触角)を、協和界面科学(株)製、DropMaster500を用いて測定し、以下の基準で評価した。結果を下記表3に示す。以下の評価基準のとおり、擦り前後の接触角の変化が少ないものほど、親水性が低下せず耐久性に優れると評価する。
○:擦り前後の接触角の変化が1°
△:1°より大きく2°以下
×:2°より大きい
【0221】
〔防曇性の評価〕
上記で得られた親水性部材に、昼間、室内の蛍光灯下で、1分間水蒸気を当て、水蒸気から離した後、25℃、RH10%の環境下に配置し、前記と同様の照射条件の蛍光灯下において曇り具合及びその変化を下記基準により三段階で官能評価した。結果を下記表3に示す。
○:曇りが観察されない
△:曇っているが、10秒以内に回復し、曇りが見られなくなる
×:曇っており、曇りが10秒経過しても回復しない
【0222】
〔防汚性の評価〕
上記で得られた親水性部材表面に油性インク(三菱鉛筆株式会社製油性マーカー)で線を書き、水を掛け続け、流れ落ちるかを三段階で官能評価した。結果を下記表3に示す。
○:インクが1分以内に取れる
△:1分を経過した後インクが取れる
×:2分を超え10分間にわたり実施してもインクがとれない
【0223】
【表3】

【0224】
表3に明らかなように、本発明の親水性組成物を用いて形成した親水性膜を基材表面に有する表面親水性部材は、防汚性、防曇性に優れ、親水膜の耐摩擦性が良好であった。このため、防汚性部材、防曇性部材として有用であることがわかる。他方、本発明に係る特定親水性化合物を用いなかった親水性膜を有する比較例3の親水性部材は、防汚性、防曇性が不十分であり、実用上問題のあるレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に、5員環構造及び6員環構造より選択される環構造を2個以上有し、かつ、該環構造が親水性基を有する化合物と、(B)Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物と、を含有する組成物からなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて得られる親水性膜。
【請求項2】
前記親水性膜が、前記組成物中に含まれる化合物の加水分解、縮重合により形成されることを特徴とする請求項1に記載の親水性膜。
【請求項3】
前記組成物が、さらに(C)親水性ポリマーを含有する請求項1又は請求項2に記載の親水性膜。
【請求項4】
前記(C)親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の親水性膜。
【化1】

上記一般式(1)で表される構造を有する親水性ポリマーは、構造単位(i)、(ii)で表されるポリマーユニットの末端に、構造単位(iii)で表されるシランカップリング基を有する。
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは0、1または2を表し、xおよびyは、x+y=100とした時の組成比を表し、x:yは100:0〜1:99の範囲を表す。L1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合又は有機連結基を表し、Y1、Y2はそれぞれ独立に−N(R7)(R8)、−OH、−NHCOR7、−COR7、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。
よびR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。
【請求項5】
前記親水性膜中に、エネルギー付与により親水性から疎水性に変化する材料を含有する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の親水性膜。
【請求項6】
支持体上に、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の親水性膜を有する平版印刷材料。
【請求項7】
支持体上に、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の親水性膜を有する平版印刷材料に、インクジェット記録方法により疎水性材料を適用してインク受容性領域を形成することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項8】
基板上に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の親水性膜を有する防汚性部材。
【請求項9】
基板上に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の親水性膜を有する防曇性部材。

【公開番号】特開2006−306031(P2006−306031A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23364(P2006−23364)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】