説明

親油性材料を包装するための蓋用シール

本発明は、容器およびシールを有する閉鎖具を含み、親油性充填製品が少なくとも一部に充填されている包装体の製造方法であって、i)開口部を有し、かつ親油性充填製品が少なくとも一部に充填されている容器の提供工程;ii)開口部を有する容器の閉鎖に適した閉鎖具の提供工程;iii)粒状熱可塑性ポリマーと高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物との混合により得ることができる組成物の、閉鎖具内面の少なくとも一部への適用工程;iv)閉鎖具内面の少なくとも一部へ適用された組成物を該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;v)ゲル化した組成物の冷却工程;vi)閉鎖具による容器の閉鎖工程を含む方法に関する。本発明は該方法により得ることができ、親油性充填製品が充填されている包装体、および容器および閉鎖具を含み、該閉鎖具がシールを有する包装体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性充填製品が充填されている包装体の製造方法、当該方法により得ることができ、親油性充填製品が充填されている包装体、および容器および閉鎖具を含み、該閉鎖具がシール(seal)を有する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑剤は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)のような脆性硬質プラスチックに混合されて、可撓性および伸長性のような、加工時や使用時に望ましい特性を付与する物質である。工業的に適切な可塑剤およびそれらの使用については知られており、例えば、次の文献に記載されている:デービッド・F・キャドガン(David F.Cadogan)、クリストファー・J・ホーウィック(Christopher J.Howick)著:「可塑剤」、ウルマン工業化学百科事典(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry)、電子版、第6版、第1〜6章、ワイリー・VCH(Wiley-VCH)発行、ヴァインハイム、2003年およびL・マイヤー(L.Meier)著:「可塑剤」、R・ゲヒター(R.Gachter)、H・ミュラー(H.Muller)編:プラスチック添加剤ハンドブック(Taschenbuch der Kunststoffadditive)、第3版、第341頁以降参照、ハンザー(Hanser)出版、ミュンヘン、1990年。
【0003】
PVC包装体の分野またはPVC製品が油またはガソリンと接触する分野において、油またはガソリンはPVC製品から可塑剤を溶解させることがある。これに関連して、特にこのような蓋用シールが大面積を有し、包装体中に油またはガソリンが少しでも存在する場合、PVC蓋用シールには特有の問題が存在する。シールから充填製品への可塑剤のこのような移行を防止または最少化するために、高分子可塑剤が使用される。このような高分子可塑剤は通常、ジオール類とジカルボン酸類との高分子量ポリエステル類であり、移行する傾向が相対的に低いことにより特徴付けられるものである。しかしながら、高分子可塑剤の不都合は、高分子可塑剤が比較的高い粘度によって特徴付けられるために、加工性が劣悪なものにすぎないことである。非高分子であって低粘度の可塑剤の添加は高分子可塑剤の粘度を実際にある程度まで低下させるので、加工性を改善させるが、シールから充填製品への当該可塑剤の移行が増加する。特に、充填製品が、例えば、包装体の中にある間に殺菌を目的としてオートクレーブ中、一般に約120℃で加熱される食品である場合、可塑剤が充填製品へこのように移行することが特に目立つ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】デービッド・F・キャドガン、クリストファー・J・ホーウィック著:「可塑剤」、ウルマン工業化学百科事典、電子版、第6版、第1〜6章、ワイリー・VCH発行、ヴァインハイム、2003年
【非特許文献2】L・マイヤー著:「可塑剤」、R・ゲヒター、H・ミュラー編:プラスチック添加剤ハンドブック、第3版、第341頁以降参照、ハンザー出版、ミュンヘン、1990年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、充填される製品として、特に親油性液体、例えば油またはガソリン、を含む包装体において、蓋用シール、特にPVCを基剤とした蓋用シールに関連して先行技術で生じる不都合を克服することを目的としている。
【0006】
本発明は、頻繁にある比較的高い温度でも、親油性充填製品を可塑剤による汚染の危険なしに、長期の間、貯蔵できる方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特に本発明は、容器および閉鎖具を含む包装体であって、該閉鎖具が好ましくはPVCを基剤としたシールを有し、このPVCを基剤としたシールに含有される可塑剤が親油性充填製品に対する特に良好な移行特性により特徴付けられる包装体を提供することを目的とする。当該シールはさらに可撓性により特徴付けられ、可能な限り気密性のある容器の閉鎖を確保する。
【0008】
一般的には、独立請求項は、上記目的のうちの少なくとも1つを達成する。これらに従属する従属請求項は、それぞれの場合における本発明の好ましい実施態様である。
【0009】
以下に示す包装体の製造方法は上記した目的を達成する:
容器およびシールを有する閉鎖具を含み、親油性充填製品が少なくとも一部に充填されている包装体の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
i)開口部を有し、かつ親油性充填製品が少なくとも一部に充填されている容器を提供する工程;
ii)前記開口部を有する容器の閉鎖に適した閉鎖具を提供する工程;
iii)粒状熱可塑性ポリマーと、高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物とを混合することにより得ることができる組成物を、前記閉鎖具の内面の少なくとも一部へ適用する工程;
iv)前記閉鎖具の内面の少なくとも一部へ適用された組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;
v)前記ゲル化した組成物を冷却する工程;
vi)前記容器を前記閉鎖具で閉鎖する工程。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、容器1および該容器1を閉鎖する閉鎖具2を含む本発明の包装体を示す。
【図2】図2は、上方から見た本発明の包装体の閉鎖具2を示す。図2の左側の略図ではシール環形状を有するシール3が、右側の略図ではシール円盤形状を有するシール3が見られる。
【図3】図3は、開口部4領域に雄ネジ5を有する本発明の包装体の容器1を示す。対応する雌ネジを有する閉鎖具1を用いると、シール3が閉鎖具2と容器1との気密な接触を確保するように、容器を閉鎖することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
工程i)においては、開口部を有し、かつ親油性充填製品が少なくとも一部に充填されている容器を提供する。原則として、このような容器はもちろん、工程ii)〜v)の最中または後で提供することもできる。
【0012】
容器としては、当業者に既知のあらゆる容器形状のものが適切である。従って、容器は、例えば、缶、ガラス瓶のような瓶、キャニスター、栓付きドラム缶(plugged drum)のようなドラム缶などであってもよい。容器が製造される材料については原則として制限はない。従って、容器は、例えば、金属、プラスチックまたはガラスから製造することができる。容器はまた、工程ii)〜v)に関連して記載された組成物から任意に製造することもできる。
【0013】
このような容器は親油性充填製品が少なくとも一部に、好ましくは少なくとも50体積%の範囲まで、特に好ましくは少なくとも75体積%の範囲まで、最も好ましくは少なくとも90体積%の範囲まで充填される(それぞれの値は当該容器が満たされ得る最大容積に基づいている)。親油性充填製品は20℃で液体の親油性物質であることが好ましい。本発明において適切な液状の親油性物質は水との混合物において2相系をもたらすあらゆる液体である。本発明において特に好ましい親油性物質は油、特に植物または動物由来の食用油、炭化水素または炭化水素混合物、例えばガソリンである。さらに適切な親油性充填製品は、脂肪含有食品であり、特に脂肪含有量が該食品の全重量に基づいて少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%の食品である。言及されているこのような食品の具体例として、例えば、チーズ、肉またはソーセージが挙げられる。
【0014】
工程ii)においては、開口部を有する容器の閉鎖に適した閉鎖具を提供する。
【0015】
閉鎖具についても制限はない。従って、例えば、雄ネジまたは雌ネジを有し、かつ容器開口部の対応する雌ネジまたは雄ネジへネジ締め可能なネジ蓋式クロージャーが可能である。さらに、例えば、対応する容器開口部へ挿入される単純形状の閉鎖具、一般には、円錐形に構成された栓が適切である。適切な閉鎖具として、さらには、特にビール瓶と関連して知られている、いわゆる「王冠コルク」があり、これは一般には、金属薄板の円形品においてその縁部が王冠状に曲がっているものである。
【0016】
ボトルの場合には、当該ボトルが上端領域に雄ネジを有し、このようなボトルが閉鎖具を備え、当該閉鎖具が対応する雌ネジにより容器へネジ締め可能であることが、特に有利である。栓付きドラム缶の場合には、このようなドラム缶が栓ハウジング内へ押し込まれる雄ネジ付き栓ホールコネクターを有し、かつ閉鎖具として、ネジ蓋が該栓ホールコネクターへネジ締め可能なように、常套的には平坦な上蓋ディスクとその周囲で直角に延びている、雌ネジを備えたフランジ付き縁部とを有するネジ蓋を使用することが、引き続いて特に有利である。
【0017】
本発明の方法における工程iii)においては、粒状熱可塑性ポリマーと、高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物とを混合することにより得ることができる組成物を、この時に、閉鎖具における少なくとも一部の内面に適用する;
【0018】
本発明においては、「内面」とは、閉鎖具で閉鎖された容器を回転または振動させるとき、親油性充填物質と接触し得る閉鎖具の内側表面を意味するものとして理解される。
【0019】
本発明において可塑剤組成物は一成分として高分子可塑剤を含有し、当該高分子可塑剤はジカルボン酸および少なくとも1種のジオールのポリエステルが好ましく、当該ジカルボン酸はC−C20−ジカルボン酸が好ましく、当該ジオールはC−C20−ジオールが好ましい。本発明において、当該ポリエステルの末端基は単官能有機化合物とのエステルを含有することができる。このような末端基による停止(closing)は、例えば英国1173323または米国5,281,647に記載されているように、酸が過剰な場合はモノアルコールにより、またアルコールが過剰な場合はモノカルボン酸により、行うことができる。
【0020】
本発明において好ましいジカルボン酸は特に、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、トリデカン二酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、およびこれらのジカルボン酸の少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるジカルボン酸類であり、好ましいジオールは特に、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量200〜1,000のポリエチレングリコール類、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコール類、ヒドロキシピバル酸モノネオペンチルグリコールエステル、およびこれらのジオールの少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるジオール類である。
【0021】
上記したポリエステル可塑剤は、ジカルボン酸とジオールとを、任意に適切な停止基(closing groups)の存在下で、エステル化することによる、それ自体既知の方法で工業的に製造することができる。好ましい実施態様においては、例えば、アジピン酸および1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオールからなる群に由来する少なくとも1種のジオール、および任意のさらなるジオール類または停止基としてのモノカルボン酸類、ならびにエステル化触媒、例えばジアルキルチタネート類、メタンスルホン酸または硫酸、をはじめに反応槽へ導入し、混合物をまず、例えば100〜140℃に加熱し、撹拌することにより均一化する。その後、反応混合物を標準圧力下、例えば160〜190℃に加熱する。水を分離しながらエステル化を約150℃で開始する。形成された反応水は蒸留により蒸留塔を通じて分離する。その後、反応混合物を、例えば200〜250℃へさらに加熱し、例えば150〜300mbarの真空度を適用し、窒素の通過により、反応混合物から反応水をさらに除去する。反応混合物の酸価が15mgKOH/g未満の値に到達するまで、例えば200〜250℃で窒素を通過させながら、反応混合物を減圧下で撹拌する。反応混合物はその後、任意に、第2槽へポンプ輸送し、当該反応混合物の酸価が1.0mgKOH/g未満の値に到達するまで、例えば200〜250℃の温度で、例えば10〜150mbarの真空度下、増加させた窒素流の通過により残留水を除去しながら、撹拌して、遊離ヒドロキシル基のエステル化を好ましく行うことができる。その後、反応混合物を、例えば80〜140℃で濾過することも好ましい。このような工程は、例えばWO−A−2003/018686で詳細に説明されている。
【0022】
本発明においては、上記したポリエステル可塑剤は、ブルックフィールド法により20℃で測定される粘度が少なくとも500mPas、特に好ましくは少なくとも750mPas、最も好ましくは少なくとも1,000mPasであることが好ましく、このようなポリエステルの粘度は通常、500〜20,000mPasの範囲内であり、好ましくは750〜15,000mPasの範囲内、最も好ましくは1,000〜5,000mPasの範囲内である。
【0023】
本発明の可塑剤組成物は、さらなる成分として、ポリオールエステルを含有するものであり、当該ポリオールエステルはC−C10−モノカルボン酸とジオール、トリオールまたはテトラオールとのエステルであることが好ましい。
【0024】
本発明においては、C−C10−モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸およびこれらのモノカルボン酸類のうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるモノカルボン酸であることが好ましく、ジオール、トリオールまたはテトラオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジグリセロールおよびこれらのトリオール類またはテトラオール類のうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるジオール、トリオールまたはテトラオールであることが好ましい。特に非常に好ましいポリオールエステル類はトリオール類またはテトラオール類のトリアセテート類およびトリプロピオネート類であり、ポリオールエステルとして最も好ましいのは、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)、グリセロールトリプロピオネートまたはグリセロールトリアセテートおよびグリセロールトリプロピオネートの混合物である。
【0025】
ポリオールエステル類は、モノカルボン酸類およびトリオール類またはテトラオール類から、適切な触媒、例えばDE−A−3004660でトリアセチン用として記載されているもの、の存在下での単なるエステル化により製造される。DE−A−3004660によれば、トリアセチンは、グリセロールと酢酸との反応および無水酢酸による後アセチル化(post-acetylation)により連続的に得ることができる。本明細書中、グリセロールおよび酢酸は2.5:1〜5:1の比率で向流中、互いに反応し、例えば、0.2〜30barの圧力下、180〜250℃にて、複数のダブルバブルトレーを備えたエステル化カラム中、過熱酢酸蒸気の上昇流に対して向流で液体グリセロールを通過させる。反応混合物の対流時間は通常、少なくとも1時間である。OH価が600未満に到達したら、当該カラムの底または対応する後反応器において、下方に流れる混合物へ無水酢酸を、液体反応相に溶解されている水および存在するモノおよびジアセチンが定量的に反応して酢酸を与えることができるような量で添加する。ここでは、反応するべきグリセロール1molあたり0.1〜1.5molの無水酢酸が使用されることが好ましい。触媒、好ましくは0.01〜0.5重量%のp−トルエンスルホン酸、が存在する場合、圧力は0.2〜3barまで低下させることができ、反応温度は100〜180℃まで低下させることができる。
【0026】
本発明によれば、可塑剤組成物は、ブルックフィールド法により20℃で測定される粘度が8,000mPas未満、特に好ましくは6,000mPas未満、最も好ましくは4,000mPas未満であることがさらに好ましい。
【0027】
工程iii)において適用される組成物は、さらなる成分として、熱可塑性ポリマーを含有する。特に好ましい熱可塑性ポリマー類は次のものからなる群から選択されるポリマー類である:ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸エステル(PLA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン類、ポリエーテル類、ゴム、好ましくは硫黄によって架橋されたポリイソプレンの形態の天然ゴム、またはアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエン(NBRゴム)、スチレンおよび1,3−ブタジエン、アクリル酸、スチレンおよびアクリル酸または酢酸ビニル、ポリブタジエン、上記ポリマー類の少なくとも2種のコポリマー類、特にポリエチレン/ポリプロピレンコポリマー類、を基剤とした合成ゴム、およびこれらのうち少なくとも2種の混合物。熱可塑性ポリマー類としては、PE、PP、PVC、PET、ゴムおよびPLAが特に好ましく、PVCおよびゴムが最も好ましい。
【0028】
PVCは塩化ビニルの単独重合により得られるものである。本発明のポリマー組成物中に含有されるPVCは、例えば、懸濁重合、マイクロ懸濁重合、乳化重合または塊状重合により製造できる。塩化ビニルの重合によるPVCの製造および可塑化PVCの製造および組成については、例えば、次の文献に記載されている:ベッカー/ブラウン(Becker/Braun)著、プラスチックハンドブック(Kunststoff-Handbuch)、第2/1巻、「ポリ塩化ビニル」、第2版、カール・ハンザー出版(Carl Hanser Verlag)、ミュンヘン。可塑剤およびPVCを含有する混合物の場合、可塑剤の含有量に応じて、硬質PVC(可塑剤0.1%未満)と可塑化PVC(可塑剤0.1%超)とに区別される。
【0029】
工程iii)において適用される組成物は、熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物以外に、このような2種の成分とは異なる少なくとも1種の添加剤をさらに含有することができる。ここで適切な添加剤は、特に、高分子可塑剤とは異なるさらなる可塑剤、および安定剤、潤滑剤、充填剤、顔料、難燃剤、光安定剤、発泡剤、高分子加工補助物質(polymeric processing auxiliary substances)、衝撃改良剤、蛍光増白剤、帯電防止剤または生物安定剤(biostabilizers)である。本発明において適切な安定剤、潤滑剤、充填剤、顔料、難燃剤、光安定剤、発泡剤、高分子加工補助物質、衝撃改良剤、蛍光増白剤、帯電防止剤または生物安定剤として使用可能な添加剤としては、特に、WO−A−2003/018686において記載されている、このような成分が挙げられる。このような添加剤が好ましく使用される量もまた、WO−A−2003/018686において見つけることができる。
【0030】
本発明の方法における好ましい実施態様においては、工程iii)で適用される組成物は以下の成分:
I)該組成物の総重量に基づいて40〜90重量%、特に好ましくは45〜80重量%、最も好ましくは50〜70重量%の熱可塑性ポリマー;
II)該組成物の総重量に基づいて10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%、最も好ましくは30〜40重量%の可塑剤組成物;および
III)該組成物の総重量に基づいて0〜25重量%、特に好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは2〜5重量%の、成分I)およびII)とは異なる添加剤少なくとも1種;
を含有し、該成分I)、II)およびIII)の量が合計100重量%になる。
【0031】
本発明の方法におけるさらに好ましい実施態様においては、工程iii)において適用される組成物は、40℃で測定されるブルックフィールド粘度が1,000〜10,000mPas、特に好ましくは2,000〜8,000mPas、最も好ましくは3,000〜6,000mPasの範囲内にあるペースト状組成物である。
【0032】
このようなポリマーペースト、好ましくはこのようなPVCペーストの製造は当業者に既知の方法およびやり方により行うことができる。このような製造のためには、微細に分割された熱可塑性ポリマー粒子、好ましくは粒径0.1〜100μm、特に好ましくは1〜30μmの粒子を、任意に、さらなる添加剤、例えば充填材とともに、可塑剤組成物中に常套的に分散させる。可塑化熱可塑性ポリマー類、特に可塑化ポリ塩化ビニルの製造方法は、例えば、L.マイヤー(L.Meier)によって知られている:「可塑剤」、R・ゲヒター(R.Gachter)、H・ミュラー(H.Muller)(編):プラスチック添加剤ハンドブック(Taschenbuch der Kunststoffadditive)、第3版、第350〜357頁、ハンザー(Hanser)出版、ミュンヘン、1990年。特にPVCペーストの製造に関するさらに詳しい記載は以下の文献の7.3章「PVCペーストの製造」でも見つけることができる:「プラスチックハンドブック(Kunststoffhandbuch) ポリ塩化ビニル 第2/2巻」、ハンスK.フェルガー(Hans K.Felger)編、1986年、カール・ハンザー出版(Karl Hanser Verlag)、ミュンヘン/ウィーン。
【0033】
閉鎖具の少なくとも一部の内面へのポリマーペーストの適用は、当業者がポリマーペーストを容器の蓋の内側における規定領域へ適用するに際して適切と考えるあらゆる方法により実施することができる。ポリマーペーストは、閉鎖具の少なくとも一部の内面に対して、射出成形法により適用することが特に好ましい。本発明では、容器を閉鎖したときにシールが容器の開口部に位置し、かつ該シールが、工程iv)において、ゲル化した組成物により形成されるように、当該組成物を閉鎖具の内面の少なくとも一部へ適用することが好ましい。本発明では、工程iii)において組成物を円状領域または環状領域へ適用することが好ましく、円状領域および環状領域の両方の場合において、外縁領域のシール、すなわち特に、包装体を開口部領域で閉鎖するときに容器の開口部領域と直接的に接触する領域のシール、はその他のシール領域よりも厚いことが有利である。
【0034】
本発明の方法における工程iv)においては、閉鎖具の内面の少なくとも一部へ適用された組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する。ゲル化の間、熱可塑性ポリマー粒子、好ましくはPVC粒子は可塑剤組成物中に少なくとも部分的に溶解するため、均一かつ固形で、多かれ少なかれ弾性のある可塑化材料が得られる。熱可塑性ポリマーとしてPVCを用いる場合、ポリマーペーストが工程iv)で加熱される温度は通常、160〜220℃である。
【0035】
本発明の方法における工程v)においては、ゲル化した組成物を、その後、冷却させる。冷却後、閉鎖具の内側でシールが得られ、当該シールは、工程iii)において組成物を適用した方法およびやり方に応じて、円状または環状であってもよい。
【0036】
本発明の方法における工程vi)においては、次に、親油性充填物質が少なくとも一部に充填されている容器を、この時にはシールを有する閉鎖具で閉鎖する。
【0037】
親油性充填製品が充填され、かつ上記した方法により得ることができる包装体もまた、上記した目的を達成する。
【0038】
以下の包装体もまた、上記した目的を達成する:
容器および閉鎖具を含む包装体であって、
該閉鎖具が以下の成分:
熱可塑性ポリマー、および
高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物
を含有する組成物から製造されたシールを有し、
容器の少なくとも一部に親油性充填製品が充填されている包装体。
【0039】
ここで容器、閉鎖具および親油性充填製品としては、本発明の方法において好ましい容器、閉鎖具および親油性充填製品として既に上記した容器、閉鎖具および親油性充填製品が好ましい。シールを製造する組成物およびシールの形状はまた、本発明の方法において好ましい組成物および好ましい形状として既に上記した組成物および形状に相当していることが好ましい。
【0040】
図面および実施例を用いて本発明をより詳しく説明するが、それらに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1〜3
単に混合することにより、以下の3種の可塑剤組成物を調製する:
実施例1 エデノール(Edenol)TM1215(ポリオールエステルを基剤とした高分子可塑剤、エメリー・オレオケミカルズ・ヨーロッパ社製、デュッセルドルフ)−本発明の範囲外
実施例2 500gのエデノールTM1215+200gのトリアセチン−本発明の範囲内
実施例3 500gのエデノールTM1215+200gのジブチルセバケート−本発明の範囲外
【0042】
3種の可塑剤組成物の粘度をブルックフィールド法により20℃で測定する。
【表1】

【0043】
実施例4〜6
実施例1〜3由来の可塑剤組成物を用いてワーナー・マティスAG(Werner Mathis AG)社製の溶解機によりPVCペーストを調製する(材料の量200g)。分散を室温(約20℃)および真空(約100mbar)中で行った。当該組成物を以下で説明する(実施例4〜6)。
実施例4:
PVCソルビン(Solvin)271PC 100重量部、エデノールD81 3重量部、スタビノール(Stabinol)VCZ2001/1 3重量部および実施例1由来の可塑剤組成物70重量部−本発明の範囲外;
実施例5:
PVCソルビン271PC 100重量部、エデノールD81 3重量部、スタビノールVCZ2001/1 3重量部および実施例2由来の可塑剤組成物70重量部−本発明の範囲内;
実施例6:
PVCソルビン271PC 100重量部、エデノールD81 3重量部、スタビノールVCZ2001/1 3重量部および実施例3由来の可塑剤組成物70重量部−本発明の範囲外;
コグニス社(デュッセルドルフ)製エポキシ可塑剤
コグニス社(デュッセルドルフ)製Ca−Zn安定剤
【0044】
PVCペーストをマティス熱試験機(Mathis Thermotester)(ワーナー・マティスAG社製)でゲル化し、分出しした化合物(sheeted-out compounds)を得た(180℃、3分間)。可塑剤の移行特性を測定するために、このようにして得られた分出し化合物の重量変化を、i−オクタン中での貯蔵後に測定した。このために、試験片(3×10cm)を200mlのi−オクタン中、60℃で4時間貯蔵した。その後、試験片を最初に室温で12時間乾燥させた後、60℃で24時間乾燥させ、重量差を測定した。以下の値を測定した:
【0045】
【表2】

【0046】
測定結果より、短鎖モノカルボン酸のポリオールエステル(トリアセチン)により、高分子可塑剤エデノールTM1215の粘度を顕著に低下させることができるが(表1参照)、親油性溶剤i−オクタンへの移行特性は顕著には悪化しなかったことが示されている(表2参照)。短鎖モノカルボン酸のポリオールエステルを基剤としない他のもの(ジブチルセバケート)の粘度低下は、可塑剤の移行特性の顕著な悪化をもたらした。このため、高分子可塑剤と短鎖モノカルボン酸のポリオールエステル(トリアセチン)との本発明の可塑剤の組み合わせは、親油性物質が充填される、例えば、ボトルなどの包装体のための蓋用シールの製造に適したPVCペースト用可塑剤として特に適している。このような組成物は粘度が低いため、当該組成物は特に簡便な方法において射出成形法により適用することでき、また親油性物質に対する有利な移行特性のため、シールから、充填された製品へ移行する可塑剤はほんの僅かしかない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(1)およびシール(3)を有する閉鎖具(2)を含み、親油性充填製品が少なくとも一部に充填されている包装体の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
i)開口部(4)を有し、かつ親油性充填製品が少なくとも一部に充填されている容器(1)を提供する工程;
ii)前記開口部(4)を有する容器(1)の閉鎖に適した閉鎖具(2)を提供する工程;
iii)粒状熱可塑性ポリマーと、高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物とを混合することにより得ることができる組成物を、前記閉鎖具(2)の内面の少なくとも一部へ適用する工程;
iv)前記閉鎖具(2)の内面の少なくとも一部へ適用された組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;
v)前記ゲル化した組成物を冷却する工程;
vi)前記容器(1)を前記閉鎖具(2)で閉鎖する工程。
【請求項2】
前記閉鎖具(1)がネジ蓋式クロージャーまたは王冠コルクである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程iv)においてゲル化した組成物によりシールが形成され、かつ該シールが、容器(1)を閉鎖したとき、該容器(1)の開口部(4)に位置するように、前記組成物を閉鎖具(2)の内面の少なくとも一部へ適用する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程iii)において前記組成物を円状領域または環状領域へ適用する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程iii)において閉鎖具(2)の内面の少なくとも一部へ適用される組成物が、40℃で測定されるブルックフィールド粘度1,000〜10,000mPasのペースト状組成物である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
熱可塑性ポリマーがポリ塩化ビニル(PVC)である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ポリオールエステルがC−C10−モノカルボン酸とジオール、トリオールまたはテトラオールとのエステルである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ポリオールエステルがグリセロールトリアセテートである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
高分子可塑剤がジカルボン酸と少なくとも1種のジオールとのポリエステルである請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
高分子可塑剤が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸およびこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ジペンタエリトリトールおよびこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択される多官能アルコールとのエステルである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程iii)において適用される組成物が以下の成分:
I)該組成物の総重量に基づいて40〜90重量%の熱可塑性ポリマー;
II)該組成物の総重量に基づいて10〜60重量%の可塑剤組成物;および
III)該組成物の総重量に基づいて0〜25重量%の、成分I)およびII)とは異なる添加剤少なくとも1種;
を含有し、該成分I)、II)およびIII)の量が合計100重量%になる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
親油性充填製品が油または炭化水素もしくは炭化水素混合物である請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
親油性充填製品が充填され、請求項1〜12のいずれかに記載の方法により得ることができる包装体。
【請求項14】
容器(1)および閉鎖具(2)を含む包装体であって、
該閉鎖具(2)が以下の成分:
熱可塑性ポリマー、および
高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物
を含有する組成物から製造されたシール(3)を有し、
容器(1)の少なくとも一部に親油性充填製品が充填されている包装体。
【請求項15】
閉鎖具(2)にシール(3)がシール環形状またはシール円盤形状で備え付けられている請求項14に記載の包装体。
【請求項16】
熱可塑性ポリマーがポリ塩化ビニル(PVC)である請求項14または15に記載の包装体。
【請求項17】
ポリオールエステルがC−C10−モノカルボン酸とジオール、トリオールまたはテトラオールとのエステルである請求項14〜16のいずれかに記載の包装体。
【請求項18】
ポリオールエステルがグリセロールトリアセテートである請求項14〜17のいずれかに記載の包装体。
【請求項19】
高分子可塑剤がジカルボン酸と少なくとも1種のジオールとのポリエステルである請求項14〜18のいずれかに記載の包装体。
【請求項20】
高分子可塑剤が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸およびこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ジペンタエリトリトールおよびこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択される多官能アルコールとのエステルである請求項19に記載の包装体。
【請求項21】
工程iii)において適用される組成物が以下の成分:
I)該組成物の総重量に基づいて40〜90重量%の熱可塑性ポリマー;
II)該組成物の総重量に基づいて10〜60重量%の可塑剤組成物;および
III)該組成物の総重量に基づいて0〜25重量%の、成分I)およびII)とは異なる添加剤少なくとも1種;
を含有し、該成分I)、II)およびIII)の量が合計100重量%になる請求項14〜20のいずれかに記載の包装体。
【請求項22】
親油性液体が油または脂肪含有食品、炭化水素もしくは炭化水素混合物である請求項14〜21のいずれかに記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518947(P2013−518947A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551546(P2012−551546)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000480
【国際公開番号】WO2011/095332
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511133646)エメリー・オレオケミカルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】EMERY OLEOCHEMICALS GMBH
【Fターム(参考)】