説明

観察装置

【課題】 添加物に起因する画像の変化を抑え、自動観察において適切な画像の取得を可能とすることを目的とする。
【解決手段】 培養容器で培養される試料を観察する観察装置であって、照明光学系を備え、前記試料を照明する照明部と、前記照明部により照明された前記試料の像を撮像して画像を取得する画像取得部と、前記試料の培養に用いる培地のpH値を測定するpH測定部と、前記pH値と前記培地に含まれる添加物の光吸収特性とに応じて、前記照明部の光量と前記画像取得部による撮像時の露光時間との少なくとも一方を含む条件を決定する条件決定部と、前記条件決定部により決定された前記条件に応じて、前記照明部と前記画像取得部との少なくとも一方を制御する制御部とを備えたことを特徴とする観察装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器で培養される試料を観察する観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、培養容器で培養される試料を観察する観察装置として、位相差顕微鏡などが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような観察装置により観察される試料には、各種の微生物や細胞等がある。
【特許文献1】特開平11−84260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した微生物や細胞などの試料の培養においては、培地にpH指示薬などの添加物を添加することが多い。pH指示薬などの添加物には、特徴的な光吸収特性を有するものがある。そのため、添加物に起因して、観察される試料の明るさや見え方が変化してしまう場合がある。人間による目視観察の場合には、明るさやコントラストなどを人間が適宜調整することにより、このような変化に対応することが可能である。しかし、カメラなどの撮像装置を用いた自動観察の場合には、取得される画像の明るさやコントラストが変化してしまうという問題がある。
【0004】
本発明の観察装置は、pH指示薬などの添加物に起因する画像の変化を抑え、自動観察において適切な画像の取得を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の観察装置は、培養容器で培養される試料を観察する観察装置であって、照明光学系を備え、前記試料を照明する照明部と、前記照明部により照明された前記試料の像を撮像して画像を取得する画像取得部と、前記試料の培養に用いる培地のpH値を測定するpH測定部と、前記pH値と前記培地に含まれる添加物の光吸収特性とに応じて、前記照明部の光量と前記画像取得部による撮像時の露光時間との少なくとも一方を含む条件を決定する条件決定部と、前記条件決定部により決定された前記条件に応じて、前記照明部と前記画像取得部との少なくとも一方を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
なお、好ましくは、前記条件決定部は、前記培地のpH値に加えて、前記培地中の前記添加物の濃度と前記照明光学系の光軸方向における前記培地の厚さとの少なくとも一方に応じて、前記条件を決定しても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の観察装置によれば、pH指示薬などの添加物に起因する画像の変化を抑え、自動観察において適切な画像の取得を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、本発明の観察装置の一例として、位相差顕微鏡を用いて説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態における顕微鏡の構成を示すブロック図である。図1に示すように、顕微鏡1は、顕微鏡本体2、照明部3、コンピュータ4から構成される。
【0010】
顕微鏡本体2は、pH測定器7、観察対象の試料を静置するステージ8、対物レンズ部9、位相板10、画像取得部11、対物レンズ部9からの光束を画像取得部11に導くミラー12を備える。また、顕微鏡本体2は、照明部3と相互に接続可能なコネクタI/F部13、コンピュータ4と相互に接続可能な外部I/F部14、焦点調節を行う焦点調節部15、各部を制御する顕微鏡制御部16を備える。顕微鏡制御部16は、画像取得部11、コネクタI/F部13、外部I/F部14、焦点調節部15と相互に接続されるとともに、ステージ8を制御する。
【0011】
観察対象である培養容器は、ステージ8上に静置される。培養容器には様々な種類があるが、ここでは外径が円形であるディッシュ5を例に挙げて説明する。ディッシュ5の内部は培地6で満たされており、その培地6の中で細胞や微生物などの試料が培養されている。pH測定器7は、ディッシュ5内部の培地6に接触する位置に配置され、培地6のpH値を測定して顕微鏡制御部16に出力する。pH測定器7は、例えば、ガラス電極や半導体センサを用いたpHメーターなどである。
【0012】
対物レンズ部9は、対物レンズ、対物レンズ駆動部、中間変倍部などを備える。なお、複数の対物レンズを備え、それらを切り替えて使用可能な構成であっても良い。また、位相板10の断面図を10Aに示す。また、画像取得部11は、撮像素子11A、A/D変換などの画像処理を行う画像処理部などを備える。
【0013】
照明部3は、照明光源部21、リング絞り22、照明光源部21を制御する照明部制御部23、単色光フィルタ24を備える。照明光源部21は、LEDなどの光源、集光レンズ、絞り、ミラーなどを備える。照明部制御部23は、上述したコネクタI/F部13を介して、顕微鏡制御部16と接続され、顕微鏡制御部16の指示にしたがって照明光源部21を制御する。リング絞り22の断面図を22Aに示す。
【0014】
単色光フィルタ24は、照明光源部21からの照明光のうち、緑色光を透過させる一方、緑色以外の光の透過を制限するフィルタであり、図1に示すように、照明光源部21とリング絞り22との間に配置される。
【0015】
コンピュータ4は、コンピュータ制御部31、表示部32、操作部33、記録部34、テーブル記憶部35を備え、操作部33を介して顕微鏡1の動作に関わるユーザ指示を受け付けるとともに、顕微鏡本体2から取得した画像や記録部34に記録した画像を表示部32に表示する。また、コンピュータ制御部31は、不図示のメモリに各部を制御するためのプログラムを予め記録する。そして、コンピュータ制御部31は、外部I/F部14を介して顕微鏡制御部16と接続され、画像取得部11により取得された画像を顕微鏡制御部16から取得するとともに、顕微鏡制御部16を制御する。記録部34は、コンピュータ制御部31の制御に基づいて画像を記録する。テーブル記憶部35は、後述する照明光源部21の光量に関するテーブルを予め記録する。
【0016】
顕微鏡1の観察においては、ステージ8に静置されたディッシュ5に対して、照明光源部21により照明光を照射する。照明光は、リング絞り22によって絞られ、単色光フィルタ24を透過してステージ8上のディッシュ5内の試料を照明する。そして、試料を透過した光束(直接光と回折光とを含む)は、対物レンズ部9を透過して位相板10に到達する。そして、位相板10を経た光束は、ミラー12により画像取得部11に導かれる。画像取得部11は、撮像素子11Aにより試料の透過像を撮像して画像を取得する。画像取得部11により取得される画像は、位相差により明暗のコントラストを有する画像である。
【0017】
顕微鏡制御部16は、ステージ8を上下方向に移動することにより、焦点調節の対象となる面を変更するとともに、焦点調節部15を介して対物レンズ部9の一部を対物レンズの光軸方向に移動して、焦点調節を行う。なお、焦点調節は、公知技術と同様に行われるため、説明を省略する。
【0018】
ところで、細胞や微生物などの試料の培養においては、培地6にpH指示薬を添加することが多い。しかし、pH指示薬などの添加物には、培地6のpH変化に応じた特徴的な光吸収特性を有するものがある。そのため、添加物に起因して、観察される試料の明るさや見え方が変化してしまう場合がある。そこで、以下、観察される試料の明るさを一定にするために、照明光源部21の光量を制御する例を説明する。
【0019】
本実施形態では、添加物の一例として、pH指示薬であるフェノールレッドを例に挙げて説明する。ユーザはフェノールレッドで染色された培地6の色から細胞や微生物の数などを判定し、必要に応じて培地6の交換や継代を行う。すなわち、pH指示薬は、培地6の交換や継代などの目安として利用するために培地6に添加される。
【0020】
次に、フェノールレッドの光吸収特性について説明する。図2は、フェノールレッドの光吸収特性を示す図である。図2に示すように、フェノールレッドは500〜600nm付近に特徴的な吸収帯がある。この吸収帯は、培地6のpH値の変化、光軸方向の培地6の厚さ(以下、「培地6の光路長」と称する)、および培地6中のフェノールレッドの濃度変化に応じて変化することが知られている。なお、培地6の光路長および培地6中のフェノールレッドの濃度変化は、培地6の濃度に関するファクターである。
【0021】
図3に培地6の光路長と培地6中のフェノールレッドの濃度とを固定し、培地6のpH値を変化させた場合の光吸収特性を示す。図3に示すように、pH値がpH7.0、pH7.4、pH7.8、pH8.2と高くなると、光吸収特性の変化が大きくなることが分かる。そのため、培養中に培地6の光路長と培地6中のフェノールレッドの濃度とが変化せず、培地6のpH値が変化した場合には、pH値が高い培地6ほど500nm〜600nm付近の光がフェノールレッドに吸収されて、撮像素子11Aに入射する入射光の光量が少なくなる。したがって、培地6のpH値によって撮像素子11Aに入射する入射光の光量が変化するため、取得される画像の明るさが一定にならず、ユーザが試料を観察しづらい場合や、取得した画像を比較しづらい場合がある。
【0022】
図4に培地6のpH値と培地6中のフェノールレッドの濃度とを固定し、培地6の光路長を変化させた場合の光吸収特性を示す。図4に示すように、培地6の光路長が5mm、10mm、15mmと長くなると、光吸収特性の変化が大きくなることが分かる。そのため、培養中に培地6のpH値と培地6中のフェノールレッドの濃度とが変化せず、培地6の光路長が変化した場合(培地6の量が変化した場合)には、培地6の光路長が長い培地ほど500nm〜600nm付近の光がフェノールレッドに吸収されて、撮像素子11Aに入射する入射光の光量が少なくなる。したがって、培地6の光路長によって撮像素子11Aに入射する入射光の光量が変化するため、取得される画像の明るさが一定にならず、上記の図3の例と同様に、ユーザにとって好ましくない場合がある。
【0023】
なお、培地6のpH値と培地6の光路長とを固定し、培地6中のフェノールレッドの濃度を変化させた場合にも、濃度が高くなるほど光吸収特性の変化が大きくなる。
【0024】
ここで、照明光源部21から照射された光が撮像素子11Aに到達するまでの流れを考える。撮像素子11Aに入射する入射光Iin(λ)は、以下の式1で表される。
【0025】
in(λ)=Io(λ)×τ1(λ)×A ・・・(式1)
ただし、式1において、Io(λ)は照明光源部21の光量を示し、τ1(λ)は培地(培地に添加されたフェノールレッド)の影響を示し、式1のAは、以下の式2で表される試料の周囲媒体による光吸収特性を示す。
【0026】
A=α(λ)×L×C ・・・(式2)
ただし、式2において、α(λ)は吸光係数を示し、Lは培地6の光路長を示し、Cは培地6中のフェノールレッドの濃度を示す。
【0027】
以上説明したように、培地6のpH値と、培地6の光路長と、培地6中のフェノールレッドの濃度とのうち、少なくとも一つが培養中に変化した場合には、撮像素子11Aに入射する入射光の光量が変化する。そのため、上述した通りユーザにとって好ましくない場合がある。したがって、撮像素子11Aに入射する入射光の光量が一定になることが好ましい。また、式1において、培地の影響τ1(λ)と試料の周囲媒体による光吸収特性Aとは、試料の培養状態によって変化する。したがって、培地6のpH値が変化しても、培地6の光路長が変化しても、培地6中のフェノールレッドの濃度が変化しても、撮像素子11Aに入射する入射光の光量Iin(λ)が一定になるような照明光の光量Io(λ)が照明光源部21から出力されることが好ましい。
【0028】
そこで、本実施形態では、培地6のpH値と照明光源部21の光量とを対応づけたテーブルをテーブル記憶部35に予め記録する。図5にテーブル記憶部35に記録されるテーブルの一例を示す。図5は、培地6の光路長ごとに培地6のpH値と照明光源部21の光量とを対応づけたテーブルである。なお、pH値ごとの照明光源部21の光量Io(λ)は、上述した式1に基づいて、撮像素子11Aに入射する入射光の光量Iin(λ)が一定になるように予め算出される。
【0029】
図6のフローチャートは、コンピュータ制御部31の撮像時の動作を示す。
【0030】
ステップS1において、コンピュータ制御部31は、ユーザから操作部33を介して培養容器の種類の指定を受け付ける。なお、培養容器の種類ごとに培地6の光路長が対応づけられたテーブルがテーブル記憶部35に予め記録されている。そして、コンピュータ制御部31は、このテーブルからユーザが指定した培養容器に対応する培地6の光路長を読み出す。ここでは、前述したように培養容器の一例として、ディッシュ5を例に挙げて説明する。
【0031】
ステップS2において、コンピュータ制御部31は、ユーザから操作部33を介して撮像開始の指示が行われたか否かを判定する。開始の指示が行われた場合(YES)には、S3に移行する。一方、開始の指示がない場合(NO)には、コンピュータ制御部31は、開始の指示が行われるまで待機する。
【0032】
ステップS3において、コンピュータ制御部31は、外部I/F部14を介して顕微鏡制御部16を制御し、pH測定器7に培地6のpH値を測定する指示を行う。pH測定器7は、培地6のpH値を測定し、顕微鏡制御部16に出力する。顕微鏡制御部16は、外部I/F部14を介してコンピュータ制御部31に培地6のpH値を出力する。
【0033】
ステップS4において、コンピュータ制御部31は、ステップS1で読み出した培地6の光路長と、ステップS3で測定した培地6のpH値とに応じて、上記の照明光源部21の光量に関するテーブルから照明光源部21の光量を読み出す。
【0034】
ステップS5において、コンピュータ制御部31は、ステップS4で読み出した光量に応じて、外部I/F部14を介して照明部制御部23を制御し、照明光源部21の光量を制御するとともに、顕微鏡制御部16を制御し、画像取得部11を駆動させて画像を取得する。
【0035】
ステップS6において、コンピュータ制御部31は、ステップS5で取得した画像とともに、タグ情報として、画像取得日時、ステップS4で読み出した照明光源部21の光量、ステップS3で測定した培地6のpH値などを記録部34に記録する。
【0036】
図7は、記録部34に記録した複数の画像とタグ情報とをあわせて表示部32に表示した例を示す図である。図7に示すように、複数の画像を並べて表示した場合に、それぞれの画像を取得した際の培養条件(培地6のpH値など)が異なっても、画像の明るさは一定であるため、ユーザは画像を比較しやすい。
【0037】
なお、上記の実施形態では、培地6の光路長ごとに培地6のpH値と照明光源部21の光量とを対応づけたテーブルをテーブル記憶部35に予め記録したが、照明光源部21の光量を決定する要素はこれらに限らない。例えば、フェノールレッドの濃度をファクターとして追加して、培地6の光路長と培地6中のフェノールレッドの濃度との組み合わせごとに、培地6のpH値と照明光源部21の光量とを対応づけたテーブルを用意しても良い。すなわち、図5の例では、4種類の光路長に加えて4種類のフェノールレッドの濃度がある場合には、合計で16個のテーブルを用意しても良い。
【0038】
さらに、培地6のpH値と、培地6の光路長と、培地6中のフェノールレッドの濃度との3つの要素のうち、いずれか任意の要素の組み合わせと照明光源部21の光量とを対応づけたテーブルを用意しても良い。
【0039】
なお、上記の実施形態では、照明光源部21の光量を制御する例を示したが、画像取得部11による撮像時の露光時間を制御しても良い。例えば、コンピュータ制御部31は、培地6のpH値と培地6の濃度に関するファクターとを画像取得部11による撮像時の露光時間に対応づけたテーブルを予めテーブル記憶部35に記録する。そして、コンピュータ制御部31は、このテーブルに基づいて、露光時間を決定する。次に、コンピュータ制御部31は、前記決定した露光時間に応じて、外部I/F部14を介して顕微鏡制御部16を制御し、画像取得部11による撮像時の露光時間を制御する。このように、画像取得部11による撮像時の露光時間を制御しても、上記の実施形態と同様に、撮像素子11Aに入射する入射光の光量を一定にすることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の観察装置によれば、添加物に起因する画像の変化を抑え、自動観察において適切な画像の取得を可能とすることができる。また、本実施形態によれば、撮像素子に入射する入射光の光量を一定にするので、明るさの変化の少ない画像を生成することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、pH測定器7を顕微鏡本体2の構成要件としたが、pH測定器7を備えない顕微鏡本体2にも本発明を同様に適用することができる。この場合、ステップS1において、コンピュータ制御部31は、ユーザから予め測定した培地6のpH値を受け付ければ良い。
【0042】
また、図6のフローチャートでは、ユーザの撮像開始指示に応じて画像を取得する例を示したが、画像を取得する流れはこれに限らない。例えば、ステップS1で、コンピュータ制御部31は、ユーザから培養容器の種類の指定に加えて、観察間隔(12時間,24時間など)の指定を受け付け、この観察間隔が経過する毎にステップS3からステップS6までの動作を繰り返す構成としても良い。
【0043】
また、上記の実施形態において、照明光源部21の光量と画像取得部11による撮像時の露光時間とのうち、いずれか一方を試料に応じて選択的に制御する構成としても良い。例えば、動きのある試料を観察する場合には、露光時間を制御することなく、光量を制御する構成としても良い。
【0044】
また、上記の実施形態では、培地6の光路長ごとに培地6のpH値と照明光源部21の光量とを対応づけたテーブルをテーブル記憶部35に予め記録したが、照明光源部21の光量の算出方法はこれに限らない。例えば、照明光源部21の光量を算出するための式(Io(λ)=Iin(λ)/(τ1(λ)×A))をコンピュータ制御部31に予め記録する。そして、コンピュータ制御部31は、ステップS4でこの式を用いて照明光源部21の光量を算出しても良い。
【0045】
また、本実施形態では、照明光として緑色単色光を用いたが、他の照明光にも同様に適用することができる。
【0046】
また、本実施形態では、添加物として、pH指示薬であるフェノールレッドを例に挙げて説明したが、他のpH指示薬にも本発明を同様に適用することができる。また、pH指示薬以外の添加物についても同様である。例えば、培地6に添加される添加物である血清や各種試薬などについても本発明を同様に適用することができる。何れの場合も、培地6のpH変化に伴う光吸収特性の変化を有する添加物であれば、その特性と培地6のpH値とに応じて撮像素子11Aに入射する入射光の光量を一定にするように、照明光源部21の光量と画像取得部11による撮像時の露光時間との少なくとも一方を制御すれば良い。
【0047】
さらに、本実施形態では、培地6のpH値の変化に伴う光吸収特性の変化を有する添加物を例に挙げて説明したが、培地6の光路長の変化に伴う光吸収特性の変化を有する添加物にも、本発明を同様に適用することができる。この場合、培地6の光路長の変化を検出し、検出した光路長に応じて照明光源部21の光量と画像取得部11による撮像時の露光時間との少なくとも一方を制御すれば良い。また、濃度の変化に伴う光吸収特性の変化を有する添加物にも、本発明を同様に適用することができる。この場合、添加物の濃度の変化を検出し、検出した濃度に応じて照明光源部21の光量と画像取得部11による撮像時の露光時間との少なくとも一方を制御すれば良い。
【0048】
また、上述した通り、他の添加物にも本発明を同様に適用することができるため、添加物の種類ごとに、照明光源部21の光量に関するテーブルや画像取得部11による撮像時の露光時間に関するテーブルをテーブル記憶部35に予め記録しても良い。この場合、ステップS1で、コンピュータ制御部31は、ユーザから培養容器の種類の指定に加えて、添加物の種類の指定を受け付ければ良い。
【0049】
また、本実施形態では、本発明の検査装置の一例として位相差顕微鏡を例に挙げて説明したが、その他の顕微鏡や観察装置にも本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態の顕微鏡の構成を示すブロック図である。
【図2】フェノールレッドの光吸収特性を示す図である。
【図3】培地6の光路長と培地6中のフェノールレッドの濃度とを固定し、培地6のpH値を変化させた場合の光吸収特性を示す図である。
【図4】培地6のpH値と培地6中のフェノールレッドの濃度とを固定し、培地6の光路長を変化させた場合の光吸収特性を示す図である。
【図5】照明光源部21の光量に関するテーブルの一例を示す図である。
【図6】コンピュータ制御部31の動作を示すフローチャートである。
【図7】記録部34に記録した複数の画像とタグ情報とをあわせて表示部32に表示した例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…顕微鏡,2…顕微鏡本体,3…照明部,6…培地,7…pH測定器,11…画像取得部,16…顕微鏡制御部,21…照明光源部,23…照明部制御部,31…コンピュータ制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器で培養される試料を観察する観察装置であって、
照明光学系を備え、前記試料を照明する照明部と、
前記照明部により照明された前記試料の像を撮像して画像を取得する画像取得部と、
前記試料の培養に用いる培地のpH値を測定するpH測定部と、
前記pH値と前記培地に含まれる添加物の光吸収特性とに応じて、前記照明部の光量と前記画像取得部による撮像時の露光時間との少なくとも一方を含む条件を決定する条件決定部と、
前記条件決定部により決定された前記条件に応じて、前記照明部と前記画像取得部との少なくとも一方を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置において、
前記条件決定部は、前記培地のpH値に加えて、前記培地中の前記添加物の濃度と前記照明光学系の光軸方向における前記培地の厚さとの少なくとも一方に応じて、前記条件を決定する
ことを特徴とする観察装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−36808(P2009−36808A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198645(P2007−198645)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】