説明

角速度検出装置

【課題】センサ部と検出部とを電気的に接続する接続手段の駆動信号伝達線が断線しているか否かを判定することができる角速度検出装置を提供する。
【解決手段】C/V変換回路23は、可動電極に搬送波信号Vsが印加され、固定電極に駆動信号Vsv+、Vsv-が印加されるコンデンサCs1〜Cs4の静電容量を変換した電圧Vcvを出力する。判定ロジック25は、コンパレータ24を通じて電圧Vcvをレベル変換した電圧Vcmpに基づいて、サーボ制御を行うための駆動信号Vsv+、Vsv-を回路チップ3側からセンサチップ2側に伝達する接続ラインL1〜L4の断線を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに直交する第1軸および第2軸の方向に変位可能な可動部が第1軸方向に振動した状態における可動部の第2軸方向への振動に基づいて第1軸および第2軸のそれぞれに直交する第3軸回りの角速度を検出する振動型の角速度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動型の角速度検出装置は、互いに直交するX軸方向およびY軸方向に変位可能な振動子(可動部)を備えており、この振動子をX軸方向に定常的に振動させるようになっている。そして、角速度検出装置は、X軸およびY軸のそれぞれに直交するZ軸回りに角速度が与えられたときにコリオリ力によって生じる振動子のY軸方向への振動を検出し、検出したY軸方向の振動に基づいて上記角速度を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成の角速度検出装置において、振動子の製造時の加工ばらつきなどに起因し、純粋なX軸方向への振動ではなくY軸方向への振動成分が加わった振動、いわゆる斜め振動が生じることがある。このような斜め振動状態では、角速度の検出精度が低下してしまう。そこで、振動子に対し、所定の駆動信号を与えることで斜め振動の発生を抑制するようなY軸方向への外力(静電気力)を加えるサーボ制御が行われている。
【0004】
また、振動子を含むセンサ部が形成される半導体チップと、上記したようなサーボ制御を行うとともに角速度を検出する検出部が形成される半導体チップとは、ボンディングワイヤや各チップに設けられたバンプなどの接続手段を介して電気的に接続される。上記サーボ制御を行うため、検出部から振動子に供給される駆動信号についても上記接続手段を介して伝達される。
【0005】
このような電気的な接続手段が断線すると、正確な角速度が検出できないだけでなく、システムの誤動作に繋がるおそれもあるため、断線を検出する技術が種々考案されている。例えば、特許文献2には、センサと、このセンサの出力信号を入力してデジタル値に変換するA/D変換器との間を電気的に接続する信号線および一対の電源線の断線を検出する技術が開示されている。すなわち、特許文献2記載の断線検出装置は、信号線と各電源線との間に複数の抵抗を接続しておくことで信号線または電源線が断線した場合にA/D変換器の入力電圧が通常の電圧レベルとは異なる電圧レベルとなるようにし、この電圧レベルの違いによって信号線および電源線の断線を検出可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−63328号公報
【特許文献2】特開平5−107292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献2記載の技術を、振動型の角速度検出装置におけるサーボ制御を行うための駆動信号を伝達する接続手段の断線検出に適用しようとすると、次のような問題が生じる。振動子の斜め振動を抑制するというサーボ制御の性質上、振動子の出来栄えが理想的である場合、振動子は角速度が与えられていない状態で純粋にX軸方向に振動する、つまり斜め振動が生じないため、サーボ制御による外力を加える必要がない。従って、サーボ制御のための駆動信号が接続手段を通ることがないため、接続手段が断線しているか否かを検出することができない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサ部と検出部とを電気的に接続する接続手段の駆動信号伝達線が断線しているか否かを判定することができる角速度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の手段によれば、角速度を検出する通常動作が行われる場合、検出部の振動信号供給手段は、接続手段を介してセンサ部の振動手段に振動信号を供給する。これによって振動手段が動作し、互いに直交する第1軸および第2軸方向に変位可能な可動部が第1軸方向に振動する。検出部の駆動信号供給手段は、接続手段の駆動信号伝達線を介してセンサ部の振動補正手段に駆動信号を供給する。これにより、駆動電極に駆動信号が印加される。検出部の第2軸振動抽出手段は、可動部が第1軸方向に振動した状態でセンサ部の出力部から出力される可動部の第2軸方向への振動に応じた検出信号に基づいて可動部の第2軸方向の振動成分を表す第2軸振動信号を出力する。検出部の角速度検出手段は、この第2軸振動信号に基づいて、第1軸および第2軸に直交する第3軸を中心とした回転の角速度を検出する。
【0010】
また、検出部の第2軸振動抑制手段は、上記第2軸振動信号に基づいて可動部の第2軸方向の振動を抑制するように駆動信号供給手段をフィードバック制御する。すなわち、第2軸振動抑制手段は、可動部の第2軸方向の振動を抑制するような静電気力が、搬送波信号が印加された可動電極と駆動電極との間に発生するように駆動信号供給手段を制御する。なお、このようなフィードバック制御のことを、以下ではサーボ制御と称す。
【0011】
このような構成により、可動部を第1軸方向に定常的に振動させるとともに、第3軸回りに角速度が与えられたときにコリオリ力によって生じる可動部の第2軸方向への振動成分を抽出し、抽出した第2軸方向への振動成分に基づいて角速度を検出するようになっている。また、上記サーボ制御を行うことにより、センサ部の製造時の加工ばらつきなどに起因するいわゆる斜め振動の発生を抑え、可動部を純粋に第1軸方向に振動させることを可能にしている。
【0012】
また、本手段では、接続手段の駆動信号伝達線の断線を以下のように検出するようになっている。すなわち、C/V変換回路は、駆動信号の供給を停止した状態で、駆動信号伝達線を介して可動電極および駆動電極により構成されるコンデンサの静電容量を入力し、この静電容量を電圧に変換する。上記コンデンサの静電容量は、可動電極に印加された搬送波信号に応じて変化する。このため、駆動信号伝達線が断線していない正常な状態であれば、C/V変換回路の出力電圧は搬送波信号に応じた変化を示す。一方、駆動信号伝達線が断線している状態では、C/V変換回路の出力電圧は一定値となる。このようなことを踏まえ、判定手段は、C/V変換回路の出力電圧に基づいて、接続手段の駆動信号伝達線が断線しているか否かを判定するようになっている。
【0013】
このように、本手段によれば、サーボ制御を行うための駆動信号を検出部からセンサ部に伝達するための接続手段の駆動信号伝達線の断線を検出することが可能となる。また、判定手段は、上記したとおり、搬送波信号に応じた静電容量を変換したC/V変換回路の出力電圧に基づいて断線の判定を行うので、可動部が理想的な状態であり、いわゆる斜め振動が発生しない状態であっても、接続手段の駆動信号伝達線の断線の有無を判定することができる。
【0014】
請求項2記載の手段によれば、センサ部は第1半導体チップ上に形成され、検出部は第2半導体チップ上に形成されている。そして、接続手段は、第1半導体チップおよび第2半導体チップをフリップチップ接続する。つまり、第1半導体チップおよび第2半導体チップのそれぞれに設けられたバンプ同士を接合することで各チップ間を電気的に接続している。このため、接続手段の状態を外部から容易に視認することができない状態となっている。これに対し、接続手段がワイヤなどであれば、その状態を外部から容易に視認することが可能であり、目視によって断線を検出することも可能である。しかし、上記したフリップチップ接続の場合には目視による断線検出はできない。このように、接続手段の接続状態が視認困難な場合であっても、前述した断線判定の手法を用いることで、接続手段の駆動信号伝達線の断線を判定することができる。
【0015】
さて、駆動信号の供給経路における静電容量が微小である場合にはC/V変換回路の出力電圧も微小な値となる。判定手段が、このような微小な電圧に基づいて断線を判定すると、その判定精度を十分に高めることが難しくなる。このような場合、請求項3記載の手段を採用するとよい。請求項3記載の手段によれば、検出部は、C/V変換回路の出力電圧と所定の基準電圧とを比較するコンパレータを備えている。そして、判定手段は、コンパレータの出力電圧に基づいて接続手段の駆動信号伝達線の断線を判定する。このような構成によれば、C/V変換回路の出力電圧が微小な値であっても、コンパレータを介してその出力電圧をレベル変換して高めることが可能となる。これにより、判定手段による断線判定の精度を十分に高めることができる。
【0016】
請求項4記載の手段によれば、判定手段は、C/V変換回路の出力電圧の立ち上がりエッジの数または立ち下がりエッジの数をカウントし、そのカウント値が所定のしきい値未満である場合に駆動信号伝達線が断線していると判定する。駆動信号伝達線が断線していない正常な状態であれば、可動電極と駆動電極との間の静電容量がC/V変換回路によって電圧に変換される。このC/V変換回路の出力電圧は、可動電極に印加された搬送波信号に従った所定の周期で立ち上がりおよび立ち下がりを繰り返すパルス状の信号となる。従って、駆動信号伝達線が正常であれば、上記カウント値はゼロではない所定の値となる。
【0017】
一方、駆動信号伝達線が断線している場合、上記静電容量に従った信号がC/V変換回路に入力されないため、その出力電圧も変化しない。このようにC/V変換回路の出力電圧が一定値である場合、上記カウント値はゼロまたはそれに近い値となる。従って、本手段によれば、駆動信号伝達線が断線しているか否かをカウント値が所定のしきい値以上であるか否かに基づいて定量的に判定することが可能となり、断線の判定精度を一層向上することができる。なお、上記所定値は、ゼロを少しでも超える値であればよいが、ノイズ等の影響を考慮した値に設定することも可能である。
【0018】
請求項5記載の手段によれば、接続手段は駆動信号伝達線を複数備え、判定手段は、複数の駆動信号伝達線のうち、どの駆動信号伝達線が断線したかを表す断線情報を記憶可能に構成されている。また、判定手段は、その記憶した断線情報を外部に出力可能に構成されている。このような構成によれば、断線が生じた駆動信号伝達線を特定することができる。
【0019】
請求項6記載の手段によれば、検出部は、C/V変換回路に対してセンサ部を模擬した検査回路を備えている。そして、判定手段は、接続手段を介してセンサ部および検出部を電気的に接続しない状態であり且つ検査回路が動作した状態で、C/V変換回路の出力電圧に基づいて駆動信号伝達線の断線を判定する各機能が正常に動作可能か否かを判定する。すなわち、センサ部と検出部とを接続手段によって電気的に接続する前の段階(製造段階)において、駆動信号伝達線の断線を判定するための機能のチェックを行うことが可能となる。これにより、検出部の構成の製造段階における不具合により駆動信号伝達線の断線を検出できないという事態が発生することを未然に防ぐことができる。つまり、センサ部と接続する前に検出部の不具合を発見でき、接続後にしか不具合を発見できない場合に比べ、センサ部を無駄に用いる数が少なくなるため、製造歩留まりが向上して製造コストの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す角速度検出装置の構成図
【図2】第2の断線検出動作に関する各信号の波形を示す図
【図3】断線確認動作時のC/V変換回路およびコンパレータの出力電圧を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図3を参照しながら説明する。
図1は、ヨーレートセンサなどの角速度検出装置の構成を概略的に示している。図1に示す角速度検出装置1は、センサチップ2(第1半導体チップに相当)と、回路チップ3(第2半導体チップに相当)と、センサチップ2および回路チップ3を電気的に接続する接続部4(接続手段に相当)とを備えている。
【0022】
本実施形態では、センサチップ2および回路チップ3は、接続部4が備える複数の接続ライン(図1では7つのみ符号L1〜L7を付して示す)によりフリップチップ接続されている。従って、その接続ラインは、センサチップ2および回路チップ3に設けられるバンプ同士の接合部分を表すものである。センサチップ2が備える端子P1s〜P7sは、それぞれ接続ラインL1〜L7を介して回路チップ3が備える端子P1c〜P7cに接続されている。
【0023】
センサチップ2には、センサ部5が形成されている。センサ部5は、水平面内に互いに直交するX軸(第1軸に相当)およびY軸(第2軸に相当)の方向に変位可能な振動子6、7を備えた可動部8と、いずれも可動部8の周囲に設けられる振動部9(振動手段に相当)、振動補正部10(振動補正手段に相当)および出力部11とを備えている。振動子6、7は、X軸方向に振動している状態で、X軸およびY軸のそれぞれに直交するZ軸(第3軸に相当)回りの角速度が作用すると、コリオリ力によってその角速度に応じた振幅でY軸方向に振動するものである。
【0024】
振動部9は、X軸方向に振動子6、7を変位させるための静電気力を発生するコンデンサCv1〜Cv4を備えている。コンデンサCv1、Cv2の一方の電極は、振動子6の一部により構成されており、振動子6と一体的に変位する可動電極である。コンデンサCv3、Cv4の一方の電極は、振動子7の一部により構成されており、振動子7と一体的に変位する可動電極である。コンデンサCv1〜Cv4の各可動電極には、接続部4を介して回路チップ3から搬送波信号Vsが与えられる。搬送波信号(変調信号、キャリア信号)Vsは、振動子6、7の振動の共振周波数よりも十分に高い所定の周波数を持ち且つ一定振幅の矩形波信号である。コンデンサCv1〜Cv4の他方の電極は固定電極であり、それら固定電極には接続部4を介して回路チップ3からそれぞれ振動信号Vv1〜Vv4が与えられる。
【0025】
振動補正部10は、Y軸方向に振動子6、7を変位させるための静電気力を発生するコンデンサCs1〜Cs4を備えている。コンデンサCs1、Cs2の一方の電極は、振動子6の一部により構成されており、振動子6と一体的に変位する可動電極である。コンデンサCs3、Cs4の一方の電極は、振動子7の一部により構成されており、振動子7と一体的に変位する可動電極である。コンデンサCs1〜Cs4の各可動電極には、接続部4を介して回路チップ3から搬送波信号Vsが与えられる。
【0026】
コンデンサCs1〜Cs4の他方の電極は固定電極(駆動電極に相当)であり、端子P1s〜P4sに接続されている。端子P1s、P4sには、接続ラインL1、L4を介して回路チップ3から駆動信号Vsv+が与えられる。端子P2s、P3sには、接続ラインL2、L3を介して回路チップ3から駆動信号Vsv-が与えられる。センサ部5の基板電位VSUBとして、回路チップ3から接続ラインL5および端子P5sを介して電圧Vrが与えられる。コンデンサCs1〜Cs4の各固定電極と基板電位VSUBとの間には、寄生容量Cp1〜Cp4が形成されている。
【0027】
出力部11は、振動子6のY軸方向への変位に応じて静電容量が相補的に変化する一対のコンデンサCd1、Cd2と、振動子7のY軸方向への変位に応じて静電容量が相補的に変化する一対のコンデンサCd3、Cd4とを備えている。コンデンサCd1、Cd2の一方の電極は、振動子6の一部により構成されており、振動子6と一体的に変位する可動電極である。コンデンサCd3、Cd4の一方の電極は、振動子7の一部により構成されており、振動子7と一体的に変位する可動電極である。コンデンサCd1〜Cd4の各可動電極には、接続部4を介して回路チップ3から搬送波信号Vsが与えられる。コンデンサCd1〜Cd4の他方の電極は固定電極である。コンデンサCd1、Cd4の固定電極は端子P6sに接続されており、コンデンサCd2、Cd3の固定電極は端子P6sに接続されている。なお、図1では、固定電極と端子との間を接続する部分の図示をいずれも省略している。
【0028】
このように構成されたセンサ部5では、回路チップ3から与えられる振動信号Vv1〜Vv4を適宜制御することにより、可動部8の振動子6、7がX軸方向に沿って定常的に振動する。そして、振動子6、7がX軸方向に振動した状態で、Z軸を中心とした回転がセンサ部5に加わると、可動部8には、この回転の角速度の大きさに応じたコリオリ力が作用して、Y軸方向に沿った振動が発生する。このとき、Y軸方向の振動状態は、出力部11のコンデンサCd1〜Cd4の静電容量の変化(検出信号に相当)となって現れる。具体的には、コンデンサCd1、Cd4の電極間隔が狭くなり、その静電容量が増加するとともに、コンデンサCd2、Cd3の電極間隔が広くなり、その静電容量が減少する。
【0029】
回路チップ3には、検出部12が形成されている。検出部12は、センサ部5を駆動して、外部からセンサ部5に加わった角速度を検出するものである。検出部12は、変調信号生成部13、振動信号生成部14(振動信号供給手段に相当)、制御回路15、切替回路16、17、出力回路18(角速度検出手段に相当)および断線検出回路19を備えている。
【0030】
変調信号生成部13は、搬送波信号Vsを生成する。変調信号生成部13により生成される搬送波信号Vsは、接続部4の図示しない接続ラインを介してセンサチップ2に供給される。振動信号生成部14は、振動信号Vv1〜Vv4を生成する。振動信号生成部14により生成される振動信号Vv1〜Vv4は、接続部4の図示しない接続ラインを介してセンサチップ2の振動部9に供給される。振動部9のコンデンサCv1〜Cv4は、固定電極に振動信号Vv1〜Vv4が供給されることにより、振動子6、7をX軸方向に変位させる静電気力を発生する。図示しないが、振動信号生成部14には、センサチップ2より振動子6、7のX軸方向への振動成分を表すX軸振動信号が与えられている。振動信号生成部14は、このX軸振動信号に基づいて、振動子6、7が所定の振幅および周波数でX軸方向に振動するように振動信号Vv1〜Vv4の生成をフィードバック制御する。
【0031】
制御回路15は、角速度を検出するためのC/V変換部20および復調/同期検波部21(第2軸振動抽出手段に相当)と、振動子6、7のY軸方向の振動を抑制するためのサーボドライブ部22(第2軸振動抑制手段および駆動信号供給手段に相当)とを備えている。C/V変換部20は、全差動形式の演算増幅器OP1を主体として構成されており、その各入力端子は、端子P6c、P7cに接続されている。C/V変換部20は、出力部11のコンデンサCd1〜Cd4の静電容量を電圧に変換して出力する。C/V変換部20の出力信号は、搬送波信号VsをコンデンサCd1〜Cd4の静電容量の変化に応じて振幅変調したものとなっている。
【0032】
復調/同期検波部21は、全差動形式の演算増幅器OP2を主体として構成されており、C/V変換部20の出力信号を復調するとともに同期検波することで、振動子6、7のY軸方向の振動成分を表すY軸振動信号(第2軸振動信号に相当)を出力する。このY軸振動信号は、サーボドライブ部22および出力回路18に与えられている。サーボドライブ部22は、全差動形式の演算増幅器OP3を主体として構成されている。サーボドライブ部22は、Y軸振動信号を所定のゲインで増幅して、振動子6、7のY軸方向の振動を打ち消すための駆動信号Vsv+、Vsv-を出力する。この駆動信号Vsv+、Vsv-は、切替回路16、接続部4などを介して振動補正部10のコンデンサCs1〜Cs4の固定電極に与えられる。
【0033】
出力回路18は、シングルエンド形式の演算増幅器OP4を主体として構成されており、復調/同期検波部21から出力されるY軸振動信号などに基づいて、振動子6、7のY軸方向の振動の大きさ(振幅)、つまりZ軸回りの角速度を表す出力信号SYAWを出力する。出力信号SYAWは、端子P8cを介して回路チップ3の外部に出力される。
【0034】
切替回路16、17は、それぞれスイッチS1〜S4、スイッチS5〜S8を備えている。スイッチS1、S2の一方の端子は共通に接続されるとともにサーボドライブ部22の非反転出力端子に接続されている。スイッチS3、4の一方の端子は共通に接続されるとともにサーボドライブ部22の反転出力端子に接続されている。スイッチS1の他方の端子は、端子P1cに接続されるとともにスイッチS5の一方の端子に接続されている。スイッチS2の他方の端子は、端子P4cに接続されるとともにスイッチS6の一方の端子に接続されている。スイッチS3の他方の端子は、端子P2cに接続されるとともにスイッチS7の一方の端子に接続されている。スイッチS4の他方の端子は、端子P3cに接続されるとともにスイッチS8の一方の端子に接続されている。スイッチS5〜S8の他方の端子は共通に接続されている。これらスイッチS1〜S8のオン、オフは、図示しない制御回路によって制御される。
【0035】
断線検出回路19は、接続部4の接続ラインL1〜L4(駆動信号伝達線に相当)の断線(オープン状態になる故障)を検出するものであり、C/V変換回路23、コンパレータ24および判定ロジック25(判定手段に相当)を備えている。C/V変換回路23は、シングルエンド形式の演算増幅器OP5、基準電圧源26、積分コンデンサCfおよびスイッチS9を備えている。演算増幅器OP5の反転入力端子は、スイッチS5〜S8の共通に接続された他方の端子に接続されている。演算増幅器OP5の非反転入力端子には、基準電圧源26の出力電圧Vr(例えば+2.5V)が与えられている。演算増幅器OP5の反転入力端子と出力端子との間には、積分コンデンサCfおよびスイッチS9が互いに並列に接続されている。演算増幅器OP5の出力電圧Vcvは、例えば+2.5V〜+5.0Vの範囲の電圧値であり、コンパレータ24に与えられている。
【0036】
コンパレータ24は、入力される電圧Vcvを所定の基準電圧と比較し、その結果を示す電圧Vcmpを出力する。すなわち、コンパレータ24は、電圧Vcvを自身の電源電圧に応じた電圧値にレベルシフトして出力する。コンパレータ24の出力電圧Vcmpは、例えば0V〜+5.0Vの範囲の電圧値であり、判定ロジック25に与えられている。判定ロジック25は、詳細は後述するが、コンパレータ24の出力電圧Vcmpに基づいて接続部4の接続ラインL1〜L4が断線しているか否かを判定する。判定ロジック25は、端子9cを介して、接続ラインL1〜L4の断線判定結果に応じて電圧レベルが変化する判定信号Sdを外部に出力する。この判定信号Sdは、接続ラインL1〜L4に断線が生じていない場合にはLレベル(例えば0V)となり、接続ラインL1〜L4の少なくともいずれか一つが断線している場合にはHレベル(例えば+5V)となる。ただし、システムでの使用方法によっては、接続ラインL1〜L4に断線が生じていない場合にはHレベル(例えば+5V)となり、接続ラインL1〜L4の少なくともいずれか一つが断線している場合にはLレベル(例えば0V)としてもよい。
【0037】
上記スイッチS1〜S9は、アナログスイッチにより構成されている。このうち、スイッチS1〜S4は、センサ部5の振動補正部10を十分に駆動可能なサイズであればよい。また、スイッチS1〜S4は、通常動作時に常時オンとなるため、オン抵抗を極力低減することが望ましい。スイッチS5〜S8は、搬送波信号VsをコンデンサCs1〜Cs4を介して入力するため、搬送波信号Vsの周波数成分が減衰しないようなサイズであればよい。スイッチS9は、搬送波信号Vsの周期の1/2の周期の時間に積分コンデンサCfに蓄えられた電荷をリセット可能なサイズに設定すればよい。積分コンデンサCfの静電容量は、コンデンサCs1〜Cs4の出来栄え(静電容量)が最も小さい場合であっても、C/V変換回路23の出力電圧Vcvがコンパレータ24のしきい値(基準電圧)を超えるような値に設定すればよい。コンパレータ24は、搬送波信号Vsの周波数に対して十分な応答速度が得られるような仕様であればよい。
【0038】
次に、上記構成の作用について図2および図3も参照して説明する。
上記構成の角速度検出装置1では、角速度を検出する通常動作が行われる場合、振動信号生成部14により生成された振動信号Vv1〜Vv4が振動部9に供給される。これによって、コンデンサCv1〜Cv4が振動子6、7をX軸方向に変位させる静電気力を発生し、振動子6、7が所定の振幅および周波数でX軸方向に振動する。なお、通常動作時には、断線検出回路19は非動作状態とされる。また、この通常動作時には、切替回路16のスイッチS1〜S4は全てオンされ、切替回路17のスイッチS5〜S8は全てオフされる。これにより、制御回路15から出力される駆動信号Vsv+、Vsv-は、接続部4の接続ラインL1〜L4などを介してセンサチップ2の振動補正部10に供給され、コンデンサCs1〜Cs4の固定電極に印加される。また、制御回路15は、振動子6、7がX軸方向に振動した状態における出力部11のコンデンサCd1〜Cd4の静電容量の変化に基づいて、振動子6、7のY軸方向の振動成分を表すY軸振動信号を出力する。出力回路18は、このY軸振動信号に基づいて、Z軸を中心とした回転の角速度を表す出力信号SYAWを出力する。
【0039】
また、制御回路15は、Y軸振動信号に基づいて振動子6、7のY軸方向の振動を抑制するように、出力する駆動信号Vsv+、Vsv-の電圧レベルをフィードバック制御する(サーボ制御)。すなわち、制御回路15は、振動子6、7のY軸方向の振動を抑制するような静電気力が、振動補正部10のコンデンサCs1〜Cs4に発生するように駆動信号Vsv+、Vsv-の電圧レベルを制御する。理想的には、振動子6、7のY軸方向への振動がゼロになるように制御する。このとき、制御回路15の復調/同期検波部21は、振動子6、7のY軸方向の振動成分を表すY軸振動信号を出力しているので、実際には振動子6、7はY軸方向に振動していないにもかかわらず、出力回路18がZ軸回りの角速度の大きさを表す出力信号SYAWを出力することが可能となる。
【0040】
このような制御により、振動子6、7をX軸方向に定常的に振動させるとともに、Z軸回りに角速度が与えられたときにコリオリ力によって生じる振動子6、7のY軸方向への振動成分を抽出し、抽出したY軸方向への振動成分に基づいてZ軸回りの角速度を検出する。また、上記サーボ制御を行うことにより、振動子6、7の製造時の加工ばらつきなどに起因するいわゆる斜め振動の発生を抑え、振動子6、7を純粋にX軸方向に振動させることを可能にしている。
【0041】
角速度検出装置1は、上記した振動子6、7の斜め振動を抑制するため、サーボ制御が行われている場合には、以下のように接続ラインL1〜L4の断線を検出する(第1の断線検出動作)。例えば接続ラインL1が断線した場合、駆動信号Vsv+が振動補正部10のコンデンサCs1の固定電極に印加されないため、振動子6、7は斜め振動してしまう。このため、制御回路15は、この斜め振動を抑制すべく、駆動信号Vsv+の電圧レベルを変化させる(この場合には高めるように変化させる)。しかしながら、接続ラインL1が断線しているため、駆動信号Vsv+の電圧レベルを変化させても斜め振動は収まらない。このため、駆動信号Vsv+の電圧レベルは、通常印加する電圧レベルの範囲外の値となる。本実施形態では、この電圧レベルの異常な変化により断線を検出する。例えば、駆動信号Vsv+の場合には4.8V以上になると異常であると判断し、駆動信号Vsv-の場合には0.2V以下になると異常であると判断する。
【0042】
上記した第1の断線検出動作では、以下の場合には断線を検出することができない。すなわち、振動子6、7の出来栄えが理想的である場合、振動子6、7は角速度が与えられていない状態で純粋にX軸方向に振動するために斜め振動が生じない。従って、振動補正部10に駆動信号Vsv+、Vsv-を供給する必要がない。このため、たとえ接続ラインL1〜L4が断線したとしても、駆動信号Vsv+、Vsv-の異常な変化が生じることがなく、第1の断線検出動作では断線を検出することができない。
【0043】
そこで、本実施形態の角速度検出装置1は、以下のような第2の断線検出動作も実行するようになっている。図2は、第2の断線検出動作に関する各信号の波形を概略的に示している。第2の断線検出動作は、センサチップ2の外部に設けられる上位の制御装置(図示せず)から図示しない端子を介して与えられる断線検出開始信号CHECK(図2(a)参照)が、Lレベル(例えば0V)からHレベル(例えば+5V)に転じた後、回路チップ3内部のメインクロック(内部基準クロック)MCK(図(b)参照)の最初の立ち上がりをトリガとして開始される(図2の時刻t1)。その後、メインクロックMCKの次の立ち上がり時点(時刻t2)において、内部断線検出開始信号PRI_SVがLレベルからHレベルに転じる。内部断線検出開始信号PRI_SVがHレベルに転じた後、メインクロックMCKの最初の立ち上がり時点(時刻t3)において、切替回路16のスイッチS1〜S4が全てオフされるとともに、切替回路17のスイッチS5のみがオンされる。その後、メインクロックMCKの次の立ち上がり時点(時刻t4)までの期間において接続ラインL1の断線の有無を確認する断線確認動作が実行される。
【0044】
図3は、上記断線確認動作時の各部の波形を表しており、(a)はメインクロックMCKを示し、(b)は搬送波信号Vsを示し、(c)は電圧Vcvを示し、(d)は電圧Vcmpを示している。例えば、接続ラインL1の断線の有無を確認する場合、C/V変換回路23は、接続ラインL1、スイッチS5などを介して、コンデンサCs1の静電容量を電圧に変換して出力する。C/V変換回路23のスイッチS9のオン、オフは、コンデンサCs1の可動電極に印加される搬送波信号Vsに同期して行われる。従って、理想的には、C/V変換回路23の出力電圧Vcvは、コンデンサCs1の静電容量と積分コンデンサCfの静電容量との比に応じた矩形波信号となる。
【0045】
このため、接続ラインL1が断線していない正常な状態であれば、図3の左側(正常時)に示すように、C/V変換回路23の出力電圧Vcvは搬送波信号Vsと同様の周波数を持つ矩形波信号となる。また、出力電圧Vcvをレベルシフトしたコンパレータ24の出力電圧Vcmpも同様の矩形波信号となる。本実施形態では、矩形波信号の周波数は、例えばメインクロックMCKの周波数の32倍となっている。
【0046】
一方、接続ラインL1が断線している状態では、C/V変換回路23は、コンデンサCs1の静電容量を入力することができない。このため、図3の右側(断線時)に示すように、C/V変換回路23の出力電圧Vcvは一定値(例えば+2.5V)となる。また、コンパレータ24の出力電圧Vcmpも同様に一定値(例えば0V)となる。そして、判定ロジック25は、コンパレータ24の出力電圧Vcmpのパルス数(立ち上がりの回数または立ち下がりの回数)をカウントする。判定ロジック25は、出力電圧Vcmpのパルス数が16パルス(所定のしきい値)以上の場合には該当する接続ラインL1が断線していないと判断し、16パルス未満の場合には該当する接続ラインL1が断線していると判断する。なお、この判断に用いるパル数は、上記した断線に伴う出力電圧Vcmp(Vcv)の変化を検出することができる値であれば適宜変更可能である。
【0047】
さて、時刻t3〜t4の期間に実行された断線確認動作において断線が確認された場合、時刻t4の時点で判定ロジック25から出力される判定信号SdがLレベルからHレベルに転じる。一方、断線が確認されなかった場合、判定信号SdはLレベルのまま変化しない。また、この時刻t4の時点において、切替回路17のスイッチS5がオフされるとともにスイッチS6がオンされる。その後、メインクロックMCKの次の立ち上がり時点(時刻t5)までの期間において接続ラインL4の断線の有無を確認する断線確認動作が実行される。この断線確認動作において断線が確認された場合、判定信号SdがLレベルであれば時刻t5の時点で判定信号SdがHレベルに展示、判定信号SdがHレベルであればその状態が維持される。一方、断線が確認されなかった場合、判定信号Sdのその時点での状態が維持される。すなわち、判定信号SdがLレベルであればLレベルが維持され、HレベルであればHレベルが維持される。
【0048】
その後も、上記した接続ラインL1、L4の断線確認動作と同様に、接続ラインL2、L3の断線確認動作が実行される(時刻t5〜t7)。このような動作により、接続ラインL1〜L4のうち、少なくとも一つの接続ラインの断線が確認されると、判定ロジック25から出力される判定信号SdがHレベルとなる。判定信号Sdを受ける外部の制御機器(図示せず)は、この判定信号Sdのレベル変化に基づいて、接続ラインL1〜L4の断線を検出することが可能となる。なお、図2の(d)〜(g)は、それぞれスイッチS5〜S8のオン、オフ状態を示している。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果が得られる。
角速度検出装置1は、サーボ制御を行うための駆動信号Vsv+、Vsv-を回路チップ3側からセンサチップ2側に伝達するための接続部4の接続ラインL1〜L4の断線を検出する第1および第2の断線検出動作を実行可能に構成されている。そして、第2の断線検出動作において、C/V変換回路23は、搬送波信号Vsを用いてコンデンサCs1〜Cs4の静電容量を変換した電圧Vcvを出力し、判定ロジック25がこの電圧Vcvに基づいて断線の判定を行う。このため、振動子6、7が理想的な状態であり、いわゆる斜め振動が発生しない状態であっても、接続部4の接続ラインL1〜L4の断線の有無を判定することができる。
【0050】
なお、振動子6、7の出来栄えが理想的な場合にはサーボ制御による静電気力(外力)を加える必要がないため、駆動信号Vsv+、Vsv-を伝達するための接続ラインL1〜L4が断線しても問題がないように思える。しかし、角速度検出装置1は、サーボ制御において抽出される振動子6、7のY軸方向への振動成分を表すY軸振動信号に基づいて角速度を検出するようになっている。このため、駆動信号Vsv+、Vsv-を伝達する接続ラインL1〜L4が断線したにもかかわらず、これを検出できない場合、角速度が与えられたとしてもセンサ出力を得ることができない。従って、振動子6、7の出来栄えが理想的な場合であっても、接続ラインL1〜L4の断線を検出することは重要となる。
【0051】
角速度検出装置1において、センサチップ2および回路チップ3は、接続部4が備える複数の接続ラインによりフリップチップ接続されている。このため、接続部4の状態を外部から視認することが難しい状態となっている。本実施形態によれば、このような場合であっても、上記した断線検出動作により、接続部4の接続ラインL1〜L4の断線を判定することができる。
【0052】
断線検出回路19は、C/V変換回路23の出力電圧Vcv(+2.5V〜+5V)をレベル変換した電圧Vcmp(0V〜+5V)を出力するコンパレータ24を備えている。そして、判定ロジック25は、この電圧Vcmpに基づいて断線を判定するようになっている。このような構成によれば、振動補正部10のコンデンサCs1〜Cs4の静電容量が微小であっても、判定ロジック25が断線の判定を行うための電圧Vcmpの電圧レベルを調整して高めるとともに波形整形することが可能となり、判定ロジック25による断線判定の精度を十分に高めることができる。
【0053】
判定ロジック25は、電圧Vcmp(ひいては電圧Vcv)のパルス数をカウントし、そのカウント値が16未満である場合には検出対象の接続ラインが断線していると判定し、カウント値が16以上である場合には断線していないと判定する。このように、判定ロジック25は、検出対象の接続ラインが断線しているか否かをパルスのカウント値に基づいて定量的に判定するので、断線の判定精度を一層向上することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図4を参照しながら説明する。
図4は、第1の実施形態における図1相当図であり、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。図4に示す角速度検出装置31は、図1に示した角速度検出装置1に対し、回路チップ3側に新たに検査回路32を設けた点が異なっている。
【0055】
検査回路32は、コンデンサC31およびスイッチS31、S32を備えている。コンデンサC31の一方の端子は、C/V変換回路23の演算増幅器OP5の反転入力端子に接続されている。コンデンサC31の他方の端子は、スイッチS31、S32の一方の端子に共通に接続されている。スイッチS31の他方の端子は、回路チップ3の端子P10cに接続されている。スイッチS32の他方の端子はグランド電位(0V)を持つグランド端子に接続されている。
【0056】
角速度検出装置31を通常に使用する際、スイッチS31は常時オフし、スイッチS32は常時オンした状態とされる。これにより、検査回路32は、検出部12の回路動作に何ら影響を及ぼすことがなくなる。このため、本実施形態の角速度検出装置31は、第1の実施形態の角速度検出装置1と同様の動作を行うことができる。
【0057】
さらに、本実施形態の角速度検出装置31は、例えば、その製造段階において、断線検出回路19が正常に動作可能であるか否かを検査する機能を有している。すなわち、センサチップ2と回路チップ3とを接続部4を介して接続する前の段階において、検査回路32のスイッチS31をオンするとともにスイッチS32をオフする。そして、回路チップ3の端子P10cを介して搬送波信号Vsと同様の搬送波信号(検査信号に相当)を入力する。これにより、C/V変換回路23には、接続ラインL1〜L4が正常な場合における断線検出動作時と同様の入力が与えられることになる。従って、コンパレータ24の出力電圧Vcmpは搬送波信号Vsと同様の矩形波信号となる。そして、判定ロジック25は、電圧Vcmpのパルス数が所定のしきい値(16)以上であると判断し、判定信号SdをLレベルのままとする。このようなことから、判定信号SdがLレベルであれば、断線検出回路19が正常に動作可能であると判定することが可能となる。
【0058】
このように本実施形態の角速度検出装置31は、センサチップ2と回路チップ3とを接続部4によって電気的に接続する前の段階(ウエハ状態)において、断線検出回路19が正常に機能するか否かのチェックを行うことが可能となる。これにより、断線検出回路19の製造段階における不具合により接続ラインL1〜L4の断線を検出できないという事態の発生を未然に防ぐことができる。
【0059】
なお、センサチップ2と回路チップ3とを接続部4によって電気的に接続する前の段階(ウエハ状態)において、接続ラインL1〜L4の先に検査のためのコンデンサCs1〜Cs4に相当する容量を外付けしても検査は可能である。しかしながら、回路チップ2上に半導体工程で作製したほうが微小な容量を高精度に形成できるため、精度の高い機能検査の実現が可能となる。
【0060】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
判定ロジック25は、電圧Vcmpの電圧値に基づいて断線の判定を行ってもよい。すなわち、電圧Vcmpが所定値未満であれば断線していると判定し、所定値以上であれば断線していないと判定すればよい。この場合、コンパレータ24の出力電圧Vcmpをローパスフィルタなどにより平滑化し、その平滑化した出力電圧の電圧値に基づいて断線の判定を行うとよい。
判定ロジック25による断線検出の判定精度に問題がなければ、コンパレータ24は設けなくてもよい。その場合、判定ロジック25は、C/V変換回路23の出力電圧Vcvに基づいて断線を判定すればよい。
【0061】
判定ロジック25は、接続ラインL1〜L4のうち、どの線が断線したのかを表す断線情報を記憶可能に構成してもよい。また、その場合、判定ロジック25は、その記憶した断線情報を外部に出力可能に構成してもよい。
第1の断線検出動作は必要に応じて実行すればよい。
接続部4の接続ラインL1〜L4は、ワイヤであってもよい。すなわち、センサチップ2と回路チップ3とをワイヤボンディング接続する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
図面中、1、31は角速度検出装置、2はセンサチップ(第1半導体チップ)、3は回路チップ(第2半導体チップ)、4は接続手段、5はセンサ部、8は可動部、9は振動部(振動手段)、10は振動補正部(振動補正手段)、11は出力部、12は検出部、14は振動信号生成部(振動信号供給手段)、18は出力回路(角速度検出手段)、21は復調/同期検波部(第2軸振動抽出手段)、22はサーボドライブ部(第2軸振動抑制手段、駆動信号供給手段)、23はC/V変換回路、24はコンパレータ、25は判定ロジック(判定手段)、32は検査回路、L1〜L4は接続ライン(駆動信号伝達線)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1軸および第2軸の方向に変位可能な可動部を備えたセンサ部と、前記センサ部を駆動して前記第1軸および前記第2軸のそれぞれに直交する第3軸を中心とした回転の角速度を検出する検出部と、前記センサ部および前記検出部を電気的に接続する接続手段とを備えた角速度検出装置であって、
前記センサ部は、前記検出部から与えられる振動信号に基づいて前記可動部を前記第1軸方向に振動する振動手段と、前記検出部から与えられる駆動信号に基づいて前記可動部を前記第2軸方向に変位する振動補正手段と、前記可動部の前記第2軸方向の振動に応じた検出信号を出力する出力部とを備え、
前記振動補正手段は、前記可動部に設けられ搬送波信号が印加された可動電極と、前記駆動信号が印加されることにより前記可動電極との間に前記可動部を前記第2軸方向に変位させる静電気力を発生する駆動電極とを備え、
前記接続手段は、前記駆動信号を伝達する駆動信号伝達線を備え、
前記検出部は、前記振動手段に前記振動信号を供給する振動信号供給手段と、前記振動補正手段に前記駆動信号を供給する駆動信号供給手段と、前記可動部が前記第1軸方向に振動した状態で前記出力部から出力される検出信号に基づいて前記可動部の前記第2軸方向の振動成分を表す第2軸振動信号を出力する第2軸振動抽出手段と、前記第2軸振動信号に基づいて前記角速度を検出する角速度検出手段と、前記第2軸振動信号に基づいて前記可動部の前記第2軸方向の振動を抑制するように前記駆動信号供給手段を制御する第2軸振動抑制手段と、前記駆動信号の供給を停止した状態で前記駆動信号伝達線を介して前記可動電極と駆動電極との間の静電容量を入力して電圧に変換するC/V変換回路と、前記C/V変換回路の出力電圧に基づいて前記接続手段の前記駆動信号伝達線が断線しているか否かを判定する判定手段とを備えていることを特徴とする角速度検出装置。
【請求項2】
前記センサ部は、第1半導体チップ上に形成され、
前記検出部は、第2半導体チップ上に形成され、
前記接続手段は、前記第1半導体チップおよび前記第2半導体チップをフリップチップ接続するものであることを特徴とする請求項1に記載の角速度検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記C/V変換回路の出力電圧と所定の基準電圧とを比較するコンパレータを備え、
前記判定手段は、前記コンパレータの出力電圧に基づいて前記駆動信号伝達線の断線を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の角速度検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記C/V変換回路の出力電圧の立ち上がりエッジの数または立ち下りエッジの数をカウントし、前記カウント値が所定のしきい値未満である場合に前記駆動信号伝達線が断線していると判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の角速度検出装置。
【請求項5】
前記接続手段は、前記駆動信号伝達線を複数備え、
前記判定手段は、前記複数の駆動信号伝達線のうち、どの駆動信号伝達線が断線したかを表す断線情報を記憶可能に構成されるとともに、その記憶した断線情報を外部に出力可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の角速度検出装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記C/V変換回路に対して前記静電容量の変化に相当する検査信号を入力する検査回路を備え、
前記判定手段は、前記接続手段を介して前記センサ部および前記検出部を電気的に接続しない状態であり且つ前記検査回路が動作した状態で、前記C/V変換回路の出力電圧に基づいて前記駆動信号伝達線の断線を判定するための各機能が正常に動作可能か否かを判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の角速度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−247629(P2011−247629A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118305(P2010−118305)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】