説明

解凍加熱補助部材

【課題】 冷凍食品の下方部分の加熱効率を局所的に高くすることが可能で、冷凍食品の上方部分の品質を損なうおそれが小さい解凍加熱補助部材を提供することを課題とする。
【解決手段】解凍加熱補助部材1は、電子レンジ9の解凍加熱室90に配置され、解凍加熱室90に供給されるマイクロ波を遮断可能なマイクロ波遮断具2を有する。マイクロ波遮断具2は、自身を上下方向に貫通すると共に、内周側に冷凍食品8が配置される配置孔20を有し、冷凍食品8における配置孔20よりも下方部分8aには、マイクロ波が直接的に照射され、冷凍食品8における配置孔20よりも上方部分8bには、配置孔20を介して、マイクロ波が間接的に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷凍丼や冷凍寿司などの冷凍食品を、電子レンジで解凍加熱する際に用いられる解凍加熱補助部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンビニエンスストア等で市販されている弁当類は、保冷された状態で店頭に陳列され、レジにて電子レンジで加熱され、暖かい状態で客に引き渡されている。弁当類には当然賞味期限があり、賞味期限切れの弁当類は、廃棄処分されている。廃棄処分される弁当類の量を減少させることは、販売店のみならず、環境保護の観点から見ても、急務の課題である。
【特許文献1】特開平9−98888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、冷凍状態の弁当類を店頭に陳列し、レジにて電子レンジで解凍加熱する方法が考えられる。この方法によると、弁当類の賞味期限(保存期限)を大幅に伸ばすことができる。このため、廃棄処分される弁当類の量を減少させることができる。
【0004】
しかしながら、冷凍状態の弁当類を解凍し、さらに食すのに適した温度まで加熱するのは、困難である。例えば、冷凍丼の場合、具の水分量の方が、ご飯の水分量よりも、多い場合が多い。このため、具を基準に解凍加熱すると、つまり具が食すのに適した温度となった状態で加熱を停止すると、ご飯に未解凍部分あるいは冷たい部分が残る場合がある。一方、ご飯を基準に解凍加熱すると、つまりご飯が食すのに適した温度となった状態で加熱を停止すると、具が過剰に加熱され品質(風味、食感など)を損なう場合がある。
【0005】
この点、特許文献1には、載置台と中間層と底面板とからなる解凍加熱治具が紹介されている。載置台は、誘電体材料により形成されている。中間層は、載置台下方に配置されている。中間層は空気層である。底面板は、中間層下方に配置されている。底面板は、導電体材料により形成されている。底面板つまり解凍加熱治具は、ターンテーブル上面に搭載されている。
【0006】
載置台に載せられた冷凍丼は、上方から照射されるマイクロ波により加熱される。また、冷凍丼は、載置台上面付近に形成されるマイクロ波の表面波により、下方から加熱される。並びに、冷凍丼は、載置台下面や底面板上面で反射されるマイクロ波により、下方から加熱される。このため、冷凍丼の下方部分の加熱効率は、上方部分の加熱効率と比較して、高くなる。したがって、冷凍丼のご飯は、ご飯に載せられた具に優先して、暖められることになる。
【0007】
しかしながら、載置台上面付近に形成される表面波の電界強度は、上方に行くに従って小さくなる。また、冷凍丼は、下面(底面)のみならず上面あるいは側面からも、マイクロ波を吸収する。このため、冷凍丼下方部分の加熱効率を、上方部分の加熱効率と比較して、著しく高くするのは困難である。
【0008】
また、マイクロ波は、冷凍丼の上方から照射される。このため、冷凍丼の具は、不可避的かつ直接的に、マイクロ波を吸収してしまう。したがって、吸収したマイクロ波により、具の品質が損なわれるおそれがある。例えば、冷凍丼が海鮮丼の場合、具である魚介類(生もの)の温度は、低温である方が好ましい。ところが、直接的に具にマイクロ波が照射されると、具が生暖かくなるおそれがある。また、具の上面付近だけが水分が抜け、ぱさつくおそれがある。
【0009】
本発明の解凍加熱補助部材は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、冷凍食品の下方部分の加熱効率を局所的に高くすることが可能で、冷凍食品の上方部分の品質を損なうおそれが小さい解凍加熱補助部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明の解凍加熱補助部材は、電子レンジの解凍加熱室に配置され、該解凍加熱室に供給されるマイクロ波を遮断可能なマイクロ波遮断具を有する解凍加熱補助部材であって、前記マイクロ波遮断具は、自身を上下方向に貫通すると共に、内周側に冷凍食品が配置される配置孔を有し、該冷凍食品における該配置孔よりも下方部分には、該マイクロ波が直接的に照射され、該冷凍食品における該配置孔よりも上方部分には、該配置孔を介して、該マイクロ波が間接的に照射されることを特徴とする。
【0011】
本明細書中において、冷凍食品の下方部分に「直接的に照射」とは、解凍加熱室に供給されるマイクロ波が、直接あるいは解凍加熱室内で反射して、例えば陶磁器や紙などの介在物を透過せずに、冷凍食品の下方部分に照射されることをいう。
【0012】
また、冷凍食品の上方部分に「間接的に照射」とは、解凍加熱室に供給されるマイクロ波が、配置孔内の空間および配置孔内に存在する冷凍食品の部分の少なくとも一方を介して、冷凍食品の上方部分に照射されることをいう。
【0013】
本発明の解凍加熱補助部材によると、従来、冷凍食品の上方部分に直接的に照射されていたマイクロ波も、下方部分に直接的に照射されることになる。このため、冷凍食品の下方部分の加熱効率を局所的に高くすることができる。したがって、より迅速に、下方部分の内部まで、加熱することができる。また、配置孔の下方においては、冷凍食品の下面のみならず下方部分全表面が、マイクロ波に曝されている。すなわち、下方部分全表面から内部にマイクロ波が吸収される。この点においても、本発明の解凍加熱補助部材によると、下方部分の加熱効率を局所的に高くすることができる。
【0014】
これに対して、冷凍食品の上方部分には、直接的にマイクロ波が照射されない。上方部分は、配置孔内の冷凍食品の部分あるいは配置孔内の空間を介して間接的に照射されるマイクロ波や、下方部分からの熱伝導や、下方部分から上昇してくる蒸気などにより、加熱される。このため、本発明の解凍加熱補助部材によると、冷凍食品の上方部分の加熱効率が低い。また、上方部分の表面からマイクロ波が直接的に吸収されないため、上方部分の品質を損なうおそれが小さい。
【0015】
また、本発明の解凍加熱補助部材によると、冷凍食品が配置孔により保持される。このため、冷凍食品の安定性が高い。また、マイクロ波遮断具における配置孔の位置を、冷凍食品の下方部分にマイクロ波が集中しやすいように設定しておけば、常に良好な解凍加熱条件で、冷凍食品を解凍加熱することができる。言い換えると、配置孔の位置により、解凍加熱しやすい位置に、冷凍食品を案内し位置決めすることができる。
【0016】
(2)好ましくは、前記マイクロ波遮断具は、金属製である構成とする方がよい。マイクロ波は、金属により反射される。このため、本構成によると、マイクロ波が、マイクロ波遮断具(配置孔を除く)を透過して、冷凍食品の上方部分に吸収されるのを抑制することができる。また、マイクロ波遮断具で反射されたマイクロ波により、冷凍食品の下方部分を加熱することができる。
【0017】
(3)好ましくは、さらに、前記マイクロ波遮断具の上方に配置され、前記マイクロ波を遮断可能に前記上方部分を覆うマイクロ波遮断カバーを有する構成とする方がよい。本構成によると、仮に、電子レンジの解凍加熱室において給電口が上方に開口している場合であっても、冷凍食品の上方部分に直接的にマイクロ波が照射されるのを、抑制することができる。並びに、冷凍食品の下方部分に、マイクロ波を集中的に照射することができる。
【0018】
(4)好ましくは、上記(3)において、前記マイクロ波遮断カバーは、金属製である構成とする方がよい。本構成によると、マイクロ波が、マイクロ波遮断カバーを透過して、冷凍食品の上方部分に吸収されるのを抑制することができる。また、マイクロ波遮断カバーで反射されたマイクロ波が冷凍食品の下方部分に廻り込むことにより、当該下方部分を加熱することができる。
【0019】
(5)好ましくは、さらに、前記マイクロ波遮断具の下方に配置され、該マイクロ波遮断具を支持する支持脚を有する構成とする方がよい。本構成によると、電子レンジの解凍加熱室側にマイクロ波遮断具を支持する部材が無い場合であっても、解凍加熱室内にマイクロ波遮断具を配置することができる。
【0020】
(6)好ましくは、前記マイクロ波遮断具は、前記解凍加熱室を上室と下室との上下二室に仕切り、前記マイクロ波は該下室に供給される構成とする方がよい。マイクロ波遮断具により、上室はマイクロ波から隔離される。並びに、下室はマイクロ波に曝される。本構成によると、比較的簡単に、冷凍食品の上方部分にマイクロ波が直接的に照射されるのを抑制することができる。並びに、比較的簡単に、冷凍食品の下方部分にマイクロ波が直接的に照射されるのを促進することができる。
【0021】
(7)好ましくは、前記マイクロ波遮断具は、さらに、前記配置孔の孔径を調整可能な孔径調整機構を有する構成とする方がよい。本構成によると、冷凍食品の外径に応じて配置孔の孔径を変えることができる。また、冷凍食品が下方に縮径する形状である場合は、マイクロ波遮断具に対する冷凍食品の下方突出量(つまり冷凍食品の下方部分の上下方向長さ)、並びに冷凍食品の上方部分の上下方向長さを、所望の長さに調整することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の解凍加熱補助部材によると、冷凍食品の下方部分の加熱効率を局所的に高くすることが可能で、冷凍食品の上方部分の品質を損なうおそれが小さい解凍加熱補助部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の解凍加熱補助部材の実施の形態について説明する。
【0024】
<第一実施形態>
【0025】
まず、本実施形態の解凍加熱補助部材の構成について説明する。図1に、本実施形態の解凍加熱補助部材が配置された電子レンジの斜視分解図を示す。図2に、同電子レンジの模式断面図を示す。これらの図に示すように、解凍加熱補助部材1は、マイクロ波遮断テーブル2とマイクロ波遮断カバー3と支持脚4とを備えている。マイクロ波遮断テーブル2は、本発明のマイクロ波遮断具に含まれる。解凍加熱補助部材1は、電子レンジ9の解凍加熱室90内に収容されている。なお、電子レンジ9は、コンビニエンスストア等に設置されている業務用電子レンジである。解凍加熱室90の上底面には、給電口91が開設されている。給電口91は、マグネトロン92のアンテナに連通している。なお、電子レンジ9の出力は、3kWである。
【0026】
マイクロ波遮断テーブル2は、金属製であって、矩形板状を呈している。マイクロ波遮断テーブル2の中央には、真円形の配置孔20が穿設されている。配置孔20の内周側には、冷凍丼8が配置されている。冷凍丼8は、本発明の冷凍食品に含まれる。
【0027】
冷凍丼8の下方部分8aは、配置孔20下方に突出している。反対に、冷凍丼8の上方部分8bは、配置孔20上方に突出している。冷凍丼8は、容器80とご飯81と具82とを備えている。容器80は、樹脂製であって、下方に尖り上方に開口する茶碗状を呈している。ご飯81および具82は、共に冷凍状態であって、容器80内に収容されている。具82は、ご飯81の上面に載置されている。
【0028】
支持脚4は、金属製であって、丸棒状を呈している。支持脚4は、合計四本配置されている。四本の支持脚4は、マイクロ波遮断テーブル2下面の四隅から、各々、下方に突設されている。支持脚4の下端は、解凍加熱室90の下面に当接している。
【0029】
マイクロ波遮断カバー3は、金属製であって、下方に開口する直方体箱状を呈している。マイクロ波遮断カバー3は、マイクロ波遮断テーブル2上面に、開口が伏せられた状態で配置されている。マイクロ波遮断カバー3は、冷凍丼8の上方部分8bを覆っている。マイクロ波遮断カバー3の上壁および側壁には、金網30が貼られている。金網30の網目(線間距離)は、マイクロ波が透過しないに、1mmに設定されている。マイクロ波遮断カバー3の四枚の側壁下端には、各々係合フック31が配置されている。係合フック31は、金属製であって枠体状を呈している。係合フック31は、側壁下端を中心に回転可能に支持されている。係合フック31の先端は、マイクロ波遮断テーブル2の下面に、係止されている。
【0030】
次に、本実施形態の解凍加熱補助部材1に冷凍丼8をセットする際の動きについて説明する。まず、冷凍丼8を、上方から、マイクロ波遮断テーブル2の配置孔20内に配置する。次いで、冷凍丼8の上からマイクロ波遮断カバー3を被せる。そして、マイクロ波遮断カバー3の係合フック31を、マイクロ波遮断テーブル2の下面に係止する。当該係止により、マイクロ波遮断カバー3がマイクロ波遮断テーブル2に固定される。また、冷凍丼8の上方部分8bが、マイクロ波遮断テーブル2およびマイクロ波遮断カバー3により、包囲される。
【0031】
次に、本実施形態の解凍加熱補助部材1を用いて冷凍丼8を解凍加熱する際の動きについて説明する。図2に示すように、マグネトロン92から発生したマイクロ波は、給電口91を介して、解凍加熱室90内に供給される。すなわち、冷凍丼8に対して、マイクロ波は、上方から供給される。ここで、解凍加熱室90を区画する壁は金属製である。並びに、マイクロ波遮断カバー3は金属製である。また、マイクロ波は、金網30の網目を透過することができない。このため、供給されたマイクロ波は、解凍加熱室90の壁、あるいはマイクロ波遮断カバー3により繰り返し反射され、解凍加熱室90の下方にまで廻り込む。解凍加熱室90の下方には、マイクロ波遮断テーブル2の下面、および冷凍丼8の下方部分8aが表出している。ここで、マイクロ波遮断テーブル2は金属製である。このため、解凍加熱室90の下方に廻り込んだマイクロ波は、マイクロ波遮断テーブル2の下面により反射される。最終的に、マイクロ波は、冷凍丼8の下方部分8a全表面から、吸収される。このように、解凍加熱室90内を伝播したマイクロ波は、解凍加熱室90において唯一マイクロ波を吸収する冷凍丼8の下方部分8a全表面により吸収される。
【0032】
吸収されたマイクロ波により、下方部分8aのご飯81は、迅速に解凍され、かつ食すのに適した温度まで暖められる。なお、マイクロ波は、ご飯81内部を進むに従って、指数関数的に減衰する。しかしながら、マイクロ波は、下方部分8a全表面により吸収される。このため、ご飯81の中心部分も、食すのに適した温度まで、充分に解凍され、かつ暖められる。
【0033】
マイクロ波の一部は、下方部分8aを透過し、減衰しながら上方部分8bに到達する。このため、上方部分8bもマイクロ波を吸収し、加熱される。また、熱伝導により、下方部分8aの熱が、ご飯81内を伝達する。この熱伝導によっても、上方部分8bが加熱される。また、マイクロ波により加熱された下方部分8aから、水蒸気が発生する。水蒸気は、ご飯81内を上昇する。この水蒸気によっても、上方部分8bが加熱される。加えて、上方部分8bに到達した水蒸気が水に変わり、当該水がマイクロ波により加熱されることによっても、上方部分8bが加熱される。このように、上方部分8bのご飯81および具82は、間接的なマイクロ波や、熱伝導や、水蒸気などにより、下方から加熱される。そして、解凍され、食すのに適した温度まで暖められる。
【0034】
次に、本実施形態の解凍加熱補助部材1の作用効果について説明する。本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、従来、冷凍丼8の上方部分8bに直接的に照射されていたマイクロ波も、下方部分8aに照射されることになる。このため、下方部分8aの加熱効率を、上方部分8bの加熱効率と比較して、高くすることができる。したがって、より迅速に、下方部分8a内部の中心部分まで、加熱することができる。また、冷凍丼8の下面のみならず下方部分8a全表面から、冷凍丼8の内部にマイクロ波が吸収される。この点においても、下方部分8aの加熱効率を高くすることができる。
【0035】
これに対して、上方部分8bには、直接的にマイクロ波が照射されない。上方部分8bは、下方部分8aを介して間接的に照射されるマイクロ波や、下方部分8aからの熱伝導や、下方部分8aから上昇してくる水蒸気などにより、加熱される。このため、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、上方部分8bの加熱効率が低い。また、具82表面からマイクロ波が直接的に照射されないため、具82の品質を損なうおそれが小さい。具体的には、具82が生ものであっても、表面が生暖かくなるおそれが小さい。また、具82の表面付近から水分が抜け、具82がぱさつくおそれが小さい。また、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、ご飯81から具82に向かって、熱が移動する。このため、あたかも人間が盛りつけたかのように、暖かいご飯81の上に後載せで具82が盛られた状態を再現することができる。
【0036】
また、マイクロ波遮断テーブル2は、金属製である。このため、マイクロ波が、マイクロ波遮断テーブル2(配置孔20を除く)を透過して、上方部分8bに吸収されるのを防止することができる。また、マイクロ波遮断テーブル2で反射されたマイクロ波により、下方部分8aを加熱することができる。
【0037】
また、本実施形態の解凍加熱補助部材1は、マイクロ波遮断カバー3を有している。このため、給電口91が冷凍丼8よりも上方に開口しているにもかかわらず、上方部分8bに直接的にマイクロ波が照射されるのを、防止することができる。並びに、冷凍丼8の下方部分8aに、マイクロ波を集中的に照射することができる。
【0038】
また、マイクロ波遮断カバー3は、金属製である。このため、マイクロ波が、マイクロ波遮断カバー3を透過して、上方部分8bに吸収されるのを抑制することができる。また、マイクロ波遮断カバー3で反射されたマイクロ波が下方部分8aに廻り込むことにより、下方部分8aを集中的に加熱することができる。
【0039】
また、本実施形態の解凍加熱補助部材1は、支持脚4を有している。このため、電子レンジ9の解凍加熱室90側にマイクロ波遮断テーブル2を支持する部材が無いにもかかわらず、解凍加熱室90内にマイクロ波遮断テーブル2を配置することができる。すなわち、電子レンジ9の種類に因らず、本実施形態の解凍加熱補助部材1を用いることができる。このため、本実施形態の解凍加熱補助部材1は汎用性が高い。
【0040】
また、本実施形態の解凍加熱補助部材1は、業務用の電子レンジ9に用いられている。このため、上記加熱効率の高さと出力の高さとが相俟って、より迅速に下方部分8aを解凍加熱することができる。一方、上方部分8bはマイクロ波遮断カバー3およびマイクロ波遮断テーブル2により囲われている。このため、電子レンジ9の出力が高いにもかかわらず、上方部分8bを過剰に解凍加熱するおそれがない。このように、本実施形態の解凍加熱補助部材1を業務用の電子レンジ9に用いると、迅速に、かつ品質を損なうことなく、冷凍丼8を客に提供することができる。
【0041】
また、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、係合フック31により、マイクロ波遮断カバー3がマイクロ波遮断テーブル2に固定されている。このため、マイクロ波遮断カバー3がマイクロ波遮断テーブル2から外れるおそれが小さい。また、マイクロ波遮断カバー3とマイクロ波遮断テーブル2との隙間を介して、マイクロ波が上方部分8bに照射されるおそれが小さい。
【0042】
また、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、マイクロ波遮断カバー3に金網30が配置されている。このため、解凍加熱により発生した水蒸気を、網目を介して、マイクロ波遮断カバー3外部に逃がすことができる。したがって、水蒸気がマイクロ波遮断カバー3の上底面で凝縮して水滴となり、当該水滴が解凍加熱後の冷凍丼8の具82の上に落下するおそれが小さい。この点においても、具82の品質を損なうおそれが小さい。
【0043】
また、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、冷凍丼8を配置孔20に配置した状態でマイクロ波遮断テーブル2を解凍加熱室90に対して出し入れすることにより、冷凍丼8に直接触れることなく、冷凍丼8を解凍加熱室90に対して出し入れすることができる。このため、例えば冷凍丼8の温度が高い場合など、便利である。また、冷凍丼8は、配置孔20により保持されている。このため、冷凍丼8がマイクロ波遮断テーブル2から脱落するおそれが小さい。
【0044】
<第二実施形態>
【0045】
本実施形態と第一実施形態との相違点は、マイクロ波遮断テーブルの代わりに、解凍加熱室を上下二室に仕切るマイクロ波遮断板が配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0046】
図3に、本実施形態の解凍加熱補助部材が配置された電子レンジの模式断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。電子レンジ9は、家庭用のオーブン兼用電子レンジである。電子レンジ9の出力は、500Wである。解凍加熱室90の両側面には、各々上下二本ずつ、オーブンパン(図略)を配置するためのガイドレール93が配置されている。
【0047】
マイクロ波遮断板5は、金属製であって、全体として矩形板状を呈している。マイクロ波遮断板5は、本発明のマイクロ波遮断具に含まれる。マイクロ波遮断板5は、横幅方向に対向する一対のガイドレール93間に、架設されている。マイクロ波遮断板5の中央には、真円形の配置孔50が穿設されている。配置孔50の内周側には、冷凍丼8が配置されている。マイクロ波遮断板5は、解凍加熱室90を下室90aと上室90bとに仕切っている。冷凍丼8の下方部分8aは、下室90aに突出している。一方、上方部分8bは、上室90bに突出している。なお、下室90a下面には、給電口91が開設されている。マイクロ波遮断板5は、一対のガイドレール93上をスライド可能である。当該スライドにより、解凍加熱室90に、マイクロ波遮断板5つまり冷凍丼8を出し入れすることができる。
【0048】
図4に、マイクロ波遮断板5の斜視分解図を示す。図に示すように、マイクロ波遮断板5は、板本体51と一対の調整翼52とを備えている。板本体51は、平らな矩形管状を呈している。板本体51は、横幅方向に対向する一対の開口510を有している。開口510縁には、各々、開口側ストッパ511が形成されている。図5に、図4の円IV内の拡大図を示す。図5に示すように、開口側ストッパ511は、板本体51に形成された突出片(図中、点線で示す)が内側に折り曲げられることにより、形成されている。
【0049】
図4に戻って、一対の調整翼52は、矩形板状を呈している。一対の調整翼52は、板本体51の一対の開口510に対して、各々、出し入れ可能に配置されている。板本体51から調整翼52を出し入れすることにより、マイクロ波遮断板5の横幅を調整することができる。また、調整翼52の翼端がガイドレール93上に係止されることにより、マイクロ波遮断板5がガイドレール93上に架設される。調整翼52の根本端には、翼側ストッパ520が形成されている。翼側ストッパ520は、開口側ストッパ511と、係合可能である。翼側ストッパ520と開口側ストッパ511とが係合することにより、調整翼52が板本体51から分離、脱落するのを防止している。
【0050】
本実施形態の解凍加熱補助部材1は、第一実施形態の解凍加熱補助部材と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、マイクロ波遮断カバーや支持脚等を用いずに、比較的簡単に、下方部分8aにマイクロ波を直接的に照射することができる。並びに、比較的簡単に、上方部分8bにマイクロ波が直接的に照射されるのを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、板本体51から調整翼52を出し入れすることにより、マイクロ波遮断板5の横幅を調整することができる。このため、解凍加熱室90の横幅の長短に因らず、マイクロ波遮断板5を配置することができる。したがって、本実施形態の解凍加熱補助部材1は、汎用性が高い。
【0052】
また、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、電子レンジ9の全出力が、冷凍丼8の下方部分8aを加熱するために用いられる。このため、低出力の家庭用電子レンジ9であるにもかかわらず、比較的迅速に、冷凍丼8を解凍し、食すのに適した温度まで暖めることができる。また、本実施形態の解凍加熱補助部材1によると、配置孔50が給電口91に真上に配置されている。このため、下方部分8aの加熱効率が高い。
【0053】
<第三実施形態>
【0054】
本実施形態と第一実施形態との相違点は、マイクロ波遮断テーブルに孔径調整機構が配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図6に、本実施形態の解凍加熱補助部材のマイクロ波遮断テーブルおよび支持脚の下方から見た斜視分解図を示す。なお、図1と対応する部位について同じ符号で示す。図に示すように、マイクロ波遮断テーブル2は、テーブル本体21と調整板22とを備えている。調整板22は、本発明の孔径調整機構に含まれる。
【0055】
テーブル本体21は、金属製であって矩形板状を呈している。テーブル本体21の中央には、真円形の配置孔本体20aが穿設されている。テーブル本体21の対向する長辺は、共に、下方にC字状に折り曲げられている。C字内部には、各々、ガイド部210が区画されている。
【0056】
調整板22は、金属製であって矩形板状を呈している。調整板22の一辺には、調整凹部20bが形成されている。調整凹部20bは、半円状を呈している。調整凹部20bを挟み対向する調整板22の二辺には、一対の被ガイド部220が配置されている。被ガイド部220がガイド部210に案内されることにより、調整板22はテーブル本体21内部を横幅方向にスライド可能である。
【0057】
冷凍丼の外径が大径の場合について説明する。図7に、本実施形態の解凍加熱補助部材のマイクロ波遮断テーブルの模式断面図を示す。なお、図2と対応する部位は同じ符号で示す。図に示すように、冷凍丼8の容器80の外径は、比較的大径である。容器80が大径の場合、冷凍丼8は、配置孔本体20aのみにより保持される。この場合、配置孔本体20aが本発明の配置孔に相当する。
【0058】
冷凍丼の外径が小径の場合について説明する。図8に、同マイクロ波遮断テーブルの模式断面図を示す。なお、図2と対応する部位は同じ符号で示す。図に示すように、冷凍丼8の容器80の外径は、比較的小径である。容器80が小径の場合は、前出図7の状態から、調整板22を、テーブル本体21の横幅方向中央に向かってスライドさせる。そして、配置孔本体20a内部まで、調整板22つまり調整凹部20bを、進入させる。ここで、配置孔本体20a単独の孔径よりも、横幅方向に対向する配置孔本体20a端と調整凹部20b端との間隔の方が小さい。このため、小径の容器80つまり冷凍丼8は、配置孔本体20aと調整凹部20bとにより挟持される。この場合、配置孔本体20aおよび調整凹部20bが本発明の配置孔に相当する。
【0059】
冷凍丼の下方部分と上方部分との比率を変える場合について説明する。図9に、同マイクロ波遮断テーブルの模式断面図を示す。なお、図2と対応する部位は同じ符号で示す。図に示すように、上方部分8bの比率を大きく、下方部分8aの比率を小さくする場合は、前出図8同様に、前出図7の状態から、調整板22を、テーブル本体21の横幅方向中央に向かってスライドさせる。そして、冷凍丼8を、配置孔本体20aと調整凹部20bとにより挟持する。反対に、上方部分8bの比率を小さく、下方部分8aの比率を大きくする場合は、調整板22を、上記方向と逆方向にスライドする。そして、横幅方向に対向する配置孔本体20a端と調整凹部20b端との間隔を大きくする。
【0060】
本実施形態の解凍加熱補助部材は、第一実施形態の解凍加熱補助部材と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の解凍加熱補助部材によると、配置孔本体20aと調整凹部20bとの重複面積を調整することができる。また、横幅方向に対向する配置孔本体20a端と調整凹部20b端との間隔を調整することができる。このため、冷凍丼8の容器80の外径に応じて、配置孔の孔径を調整することができる。また、冷凍丼8の下方部分8aと上方部分8bとの比率を調整することができる。このため、食すのに好適な解凍加熱条件を模索しやすい。
【0061】
<その他>
【0062】
以上、本発明の解凍加熱補助部材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態においては、本発明の解凍加熱補助部材を冷凍丼8の解凍加熱に用いたが、例えば冷凍寿司、冷凍麺、冷凍饅頭など他の冷凍食品に用いてもよい。特に、本発明の解凍加熱補助部材は、食す際、下方部分の適温よりも上方部分の適温の方が低い冷凍食品に好適に用いることができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、マイクロ波遮断カバー3の金網30の網目を1mmとしたが、網目は特に限定しない(前出図1参照)。マイクロ波が透過しない大きさであればよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、マイクロ波遮断カバー3に金網30を配置したが、金網30を配置しなくてもよい。つまり、板のみによりマイクロ波遮断カバー3を形成してもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、マイクロ波遮断テーブル2(前出図2参照)、マイクロ波遮断板5(前出図3参照)を板により形成したが、これらの部材の少なくとも一部に、マイクロ波を遮断可能な金網を配置してもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、マイクロ波遮断テーブル2とマイクロ波遮断カバー3との固定に係合フック31を用いた(前出図2参照)。しかしながら、例えばマイクロ波遮断テーブル2に係合凹部(係合孔を含む)を配置し、マイクロ波遮断カバー3に係合爪を配置し、係合爪を係合凹部に係止することにより、マイクロ波遮断テーブル2とマイクロ波遮断カバー3とを固定してもよい。また、ボルト−ナット機構(螺合機構)など他の固定機構を用いてもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、調整翼52をスライドすることにより、マイクロ波遮断板5の横幅を調整したが、横幅調整機構は特に限定しない(前出図4参照)。また、上記実施形態においては、調整板22をスライドすることにより、配置孔の孔径を調整したが、孔径調整機構は特に限定しない(前出図6参照)。
【0069】
また、上記実施形態においては、マイクロ波遮断テーブル2(前出図2参照)、マイクロ波遮断カバー3(前出図2参照)、マイクロ波遮断板5(前出図3参照)を、いずれも金属製としたが、これらの部材の材質は特に限定しない。マイクロ波を遮断できればよい。例えば、導電性樹脂などを用いてもよい。また、金属製の部材(例えば金網など)を、樹脂やガラスなどからなる補強部材中に、介挿したものを用いてもよい。こうすると、所望の強度を確保することができる。また、マイクロ波が透過する材料の表面を金属で覆ったものを用いてもよい。例えば、樹脂の表面を金属箔で覆ったものや、樹脂の表面に金属めっき層や金属蒸着層などを積層したものを用いてもよい。また、例えば電子レンジ9の扉のガラスのように、マイクロ波が透過する材料の表面にマイクロ波を遮断するガードスクリーンをプリントしたものを用いてもよい。
【0070】
また、配置孔20、50、あるいは配置孔本体20aと調整凹部20bとによる形成される配置孔の形状も特に限定しない。真円形の他、楕円形、長円形(向かい合う半円同士が一対の直線により連結された形状)、三角形や四角形などの多角形としてもよい。
【0071】
また、配置孔20、50、あるいは配置孔本体20aと調整凹部20bとによる形成される配置孔と、解凍加熱室90の給電口91と、の相対的位置関係も特に限定しない。好ましくは、冷凍丼8の下方部分8aにマイクロ波が集中しやすいような相対的位置関係に設定するとよい。こうすると、より迅速に冷凍食品を解凍加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第一実施形態の解凍加熱補助部材が配置された電子レンジの斜視分解図である。
【図2】同電子レンジの模式断面図である。
【図3】第二実施形態の解凍加熱補助部材が配置された電子レンジの模式断面図である。
【図4】同解凍加熱補助部材のマイクロ波遮断板の斜視分解図である。
【図5】図4の円IV内の拡大図である。
【図6】第三実施形態の解凍加熱補助部材のマイクロ波遮断テーブルおよび支持脚の下方から見た斜視分解図である。
【図7】同マイクロ波遮断テーブルの模式断面図である(冷凍丼の外径が大きい場合)。
【図8】同マイクロ波遮断テーブルの模式断面図である(冷凍丼の外径が小さい場合)。
【図9】同マイクロ波遮断テーブルの模式断面図である(冷凍丼の下方部分と上方部分との比率を変える場合)。
【符号の説明】
【0073】
1:解凍加熱補助部材、2:マイクロ波遮断テーブル(マイクロ波遮断具)、20:配置孔、20a:配置孔本体、20b:調整凹部、21:テーブル本体、210:ガイド部、22:調整板(孔径調整機構)、220:被ガイド部、3:マイクロ波遮断カバー、30:金網、31:係合フック、4:支持脚、5:マイクロ波遮断板(マイクロ波遮断具)、50:配置孔、51:板本体、510:開口、511:開口側ストッパ、52:調整翼、520:翼側ストッパ、8:冷凍丼(冷凍食品)、8a:下方部分、8b:上方部分、80:容器、81:ご飯、82:具、9:電子レンジ、90:解凍加熱室、90a:下室、90b:上室、91:給電口、92:マグネトロン、93:ガイドレール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジの解凍加熱室に配置され、該解凍加熱室に供給されるマイクロ波を遮断可能なマイクロ波遮断具を有する解凍加熱補助部材であって、
前記マイクロ波遮断具は、自身を上下方向に貫通すると共に、内周側に冷凍食品が配置される配置孔を有し、
該冷凍食品における該配置孔よりも下方部分には、該マイクロ波が直接的に照射され、
該冷凍食品における該配置孔よりも上方部分には、該配置孔を介して、該マイクロ波が間接的に照射されることを特徴とする解凍加熱補助部材。
【請求項2】
前記マイクロ波遮断具は、金属製である請求項1に記載の解凍加熱補助部材。
【請求項3】
さらに、前記マイクロ波遮断具の上方に配置され、前記マイクロ波を遮断可能に前記上方部分を覆うマイクロ波遮断カバーを有する請求項1に記載の解凍加熱補助部材。
【請求項4】
前記マイクロ波遮断カバーは、金属製である請求項3に記載の解凍加熱補助部材。
【請求項5】
さらに、前記マイクロ波遮断具の下方に配置され、該マイクロ波遮断具を支持する支持脚を有する請求項1に記載の解凍加熱補助部材。
【請求項6】
前記マイクロ波遮断具は、前記解凍加熱室を上室と下室との上下二室に仕切り、前記マイクロ波は該下室に供給される請求項1に記載の解凍加熱補助部材。
【請求項7】
前記マイクロ波遮断具は、さらに、前記配置孔の孔径を調整可能な孔径調整機構を有する請求項1に記載の解凍加熱補助部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−139226(P2007−139226A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330217(P2005−330217)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(390008431)高砂工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】