説明

解舒補助装置及びそれを備える自動ワインダ

【課題】バルーンコントローラの昇降の微調整を可能にするとともに、昇降時に発生する衝撃を防止できる自動ワインダの解舒補助装置を提供する。
【解決手段】バルーンコントローラ12は、給糸ボビン21の紡績糸を解舒する際のバルーンを規制するための規制部材40と、この規制部材40を昇降するための昇降手段とを備える。前記昇降手段は、ステッピングモータ41と、ステッピングモータの駆動を伝達するベルト部材42を備える。前記ベルト部材42は歯付きベルトで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ワインダに関するものであり、詳細には、給糸ボビンから糸を解舒する際に発生するバルーンを規制する解舒補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、給糸ボビンから糸を解舒する際に発生するバルーンを規制するための解舒補助装置を備える構成の自動ワインダが知られている。前記解舒補助装置は、給糸ボビンからの糸の解舒点の降下とともに規制部材を降下させ、解舒点との距離を一定に保つことによってバルーンの形成をコントロールする。
【0003】
この種の解舒補助装置は、糸が解舒される上端位置を検知するためのセンサと、規制手段を昇降させるための昇降手段と、を備え、糸の上端位置の下降とともに、エアシリンダやステッピングモータ等の昇降手段を制御することによって前記規制部材を連動して降下させる構成をとることが多い。
【0004】
特許文献1には、前記昇降手段としてステッピングモータを用いた構成の解舒補助装置が開示されている。特許文献1の自動ワインダの解舒補助装置は、給糸ボビンの糸を解舒する際のバルーニングを制御するバルーンコントローラの昇降ガイドと、該昇降ガイドの長さ範囲内に設けた駆動装置と、該駆動装置の昇降運動と異なる方向の運動を昇降運動に変換する変換機構とを設けて構成されている。また、特許文献1は、前記駆動装置を、ラックピニオン機構と、バルーンコントローラと一体に作動するステッピングモータと、により構成することもできる旨を開示している。
【特許文献1】特開平8−198520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したエアシリンダを規制部材の昇降手段として用いた場合、空気圧を利用する特性上、解舒点の移動に追従して規制部材を円滑にキメ細かく昇降制御することが困難である。
【0006】
また、自動ワインダにおいては、糸切れ等が生じて糸継作業のために規制部材を退避させた場合、糸継作業の完了後に規制部材を素早く元の位置に戻して巻返し作業を再開させることが望ましい。しかしながら、エアシリンダは相当の重量を有するシリンダロッド等を進退駆動させる構成であるため、元の位置に戻る際の速度が速すぎると大きな慣性力によって装置の各部に衝撃を与え、故障等の原因となるおそれがあった。更に、エアシリンダは装置の構成上、規制部材の移動距離のほぼ2倍の長さが設置スペースに必要であるため、装置の小型化が困難であった。
【0007】
また、特許文献1は駆動装置としてのステッピングモータ自体が昇降ガイド(規制部材)とともに昇降する構成であるため、ステッピングモータを支持する保持部材にも一定程度の強度が必要となり、大きな重量を昇降させなければならない構成となっていた。このため、昇降制御の円滑化、省エネルギー、及び衝撃防止等の観点から改善の余地が残されていた。更に、ステッピングモータが上下動するので、当該ステッピングモータに対する電気配線の取り回しも複雑となってしまっていた。
【0008】
また、ラックピニオン機構により昇降ガイドの上下動を行う場合、ギアがバックラッシュを考慮されて構成されているためにガタが生じ易く、昇降ガイドの精密な位置決めが困難である。更に、仮にステッピングモータ側を固定してラックとともに昇降ガイドを昇降させる場合、昇降ガイドの移動距離のほぼ2倍の長さがラックの移動のためのスペースとして必要になるので、十分な小型化もできない。また、ラックとピニオンが噛み合う部分に注油を施した場合、その部分には糸の解舒等で発生した風綿が付着し易く、これが蓄積すると故障の原因となるおそれもあるが、注油部分に強力に貼り付いた風綿を除去するメンテナンス作業には多大な手間が掛かってしまう。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、規制部材の昇降の微調整を可能にするとともに、昇降時に発生する衝撃を防止できる自動ワインダの解舒補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下のように構成される自動ワインダの解舒補助装置が提供される。即ち、この解舒補助装置は、給糸ボビンの糸を解舒するときのバルーンを規制するための規制部材と、前記規制部材を昇降するための昇降手段と、を備える。そして、前記昇降手段は、ステッピングモータと、前記ステッピングモータの駆動を伝達するベルト部材と、を備える。
【0012】
これにより、規制部材の位置の制御を、ステッピングモータに対するパルス制御によって、パルス単位の細かい段階(ほぼ無段階)で精密に行うことができる。また、ステッピングモータの駆動力を比較的軽量なベルト部材によって規制部材に伝達する構成であるので、規制部材の昇降時の慣性を小さくでき、加減速性能が向上する。従って、高精度のバルーンコントロールを実現するとともに、規制部材を高速で昇降させた場合でも過大な衝撃の発生を防止できる。更に、規制部材に何らかの衝撃が発生した場合でも、その衝撃はベルト部材によって吸収されるので、過大な衝撃がステッピングモータ側に伝達されて破損することを防止できる。更に、ステッピングモータ自体が有する脱調機能によっても衝撃を吸収でき、当該ステッピングモータの破損を防止できる。また、昇降手段の構成がステッピングモータとベルト部材というシンプルな構成であることから、装置の小型化及びコストの削減が可能になる。また、規制部材の昇降ストロークを変更する場合でも、小規模な構成変更によって容易に対応することができる。
【0013】
前記の自動ワインダの解舒補助装置においては、前記ベルト部材が歯付きベルトであることが好ましい。
【0014】
これにより、歯付きベルトがステッピングモータの駆動力を滑りなく伝達するので、省エネルギー性に優れるとともに、規制部材の一層精密かつ円滑な昇降制御を実現できる。
【0015】
本発明の第2の観点によれば、以下のように構成される自動ワインダが提供される。即ち、この自動ワインダは、前記解舒補助装置と、糸継作業を行うための糸継装置と、ステッピングモータに送信されたパルス数をカウントするカウント手段と、制御部と、を備える。前記制御部は、給糸ボビンから解舒される糸が切れたとき又は切断されたときは前記規制部材を退避させるように制御する。また、前記制御部は、前記糸継装置による糸継作業が完了すると、前記カウント手段のカウント結果に基づいて前記規制部材を元の位置に戻すように制御する。
【0016】
これにより、糸切れや糸切断が発生して規制部材を退避させた場合でも、糸継作業が終了した後に、記憶させておいたパルス数のカウント値に基づいて、糸切れ又は糸切断時の位置まで規制部材を素早く正確に移動させることができる。これによって、糸の巻取作業を素早く再開することができ、糸継作業を含めた作業工程全体のサイクルタイムを短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット10の側面図である。図2はワインダユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
【0018】
図1及び図2に示すワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。
【0019】
それぞれのワインダユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。
【0020】
前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を保持可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。図2に示すように、前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸20をトラバースさせるように構成している。
【0021】
前記クレードル23には、図略のリフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構が備えられている。リフトアップ機構は、糸切れ時にクレードル23を上昇させて、パッケージ30を巻取ドラム24から離間させることができるようになっている。パッケージブレーキ機構は、前記リフトアップ機構によってクレードル23が上昇するのと同時に、クレードル23に把持されたパッケージ30の回転を停止させるように構成されている。
【0022】
前記巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、バルーンコントローラ(解舒補助装置)12と、テンション付与装置13と、糸継装置としてのスプライサ装置14と、クリアラ(糸太さ検出器)15と、を配置した構成となっている。
【0023】
前記ワインダユニット10は、図1に示すように、給糸ボビン21を供給するためのマガジン式供給装置60を備えている。なお、バルーンコントローラ12を詳細に図示するため、図2ではマガジン式供給装置60の図示を省略している。このマガジン式供給装置60は、図1に示すように、ワインダユニット10の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているボビン収納装置62と、を備えている。
【0024】
このボビン収納装置62はマガジンポケット63を備え、このマガジンポケット63には複数の収納孔が円状に並べて形成されている。この収納孔のそれぞれには、供給ボビン70を傾斜姿勢でセットすることができる。前記マガジンポケット63は図略のモータによって間欠的な回転送り駆動が可能であり、この間欠駆動とマガジンポケット63が備える図略の制御弁とによって、マガジン保持部61が有する図略のボビン供給路に供給ボビン70を1つずつ落下させることができる。前記ボビン供給路に供給された供給ボビン70は、傾斜姿勢のまま給糸ボビン保持部71へ導かれる。
【0025】
給糸ボビン保持部71は図略の回動手段を備えており、供給ボビン70を前記ボビン供給路から受け取った後、当該供給ボビン70を斜め姿勢から直立姿勢に引き起こすように回動する。これによって、供給ボビン70が巻取ユニット本体16の下部に給糸ボビン21として適切に供給され、ワインダユニット10による巻取作業を行うことができる。
【0026】
バルーンコントローラ12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。なお、このバルーンコントローラ12の詳細については後述する。
【0027】
また、バルーンコントローラ12近傍には、糸継作業時に発生するビリを防止するためのキンクプリベンタ17が配置されている。このキンクプリベンタ17は回動部とブラシ部31を備え、この回動部の回動は、図2に示すロータリー式のソレノイド55により行われる。糸継作業時には、上述のバルーンコントローラ12を最上端の位置に退避させた状態で、前記回動部が旋回してブラシ部31が給糸ボビン21の上端部分に当接する。これにより、糸継作業時において糸に適切なテンションを付与し、ビリの発生を防止することができる。
【0028】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、ロータリー式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。
【0029】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0030】
クリアラ15は、糸20の太さを適宜のセンサで検出することで欠陥を検出するように構成されており、このクリアラ15のセンサからの信号をアナライザ52(図2)で処理することで、スラブ等の糸欠点を検出可能に構成されている。なお、前記クリアラ15は、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。前記クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0031】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する第1中継パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する第2中継パイプ26と、が設けられている。第1中継パイプ25の先端には吸引口32が形成され、第2中継パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。2つの中継パイプ25,26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0032】
この構成で、糸切れ時又は糸切断時においては、第1中継パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することでスプライサ装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、第2中継パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆転されるパッケージ30表面上に存在する上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、第2中継パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、スプライサ装置14に上糸を案内するようになっている。
【0033】
給糸ボビン21から解舒された糸は、スプライサ装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。図2に示すように、この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0034】
以上の構成で、前記マガジン式供給装置60からボビンが給糸側に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から解舒された糸20を前記巻取ボビン22に巻き取られることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0035】
次に、図3を参照して本実施形態のバルーンコントローラ12について説明する。図3は本実施形態のバルーンコントローラ12の要部を示した斜視図である。
【0036】
バルーンコントローラ12は図3に示すように、円筒状に形成される規制部材40と、この規制部材40を駆動するためのステッピングモータ41と、ステッピングモータ41の駆動を規制部材40に伝達するためのベルト部材42と、規制部材40の上方に配置される第2規制部材56と、を備える。前記規制部材40は規制部材支持板47の一端に保持されており、この規制部材支持板47は、上下方向に配置されたガイドシャフト45に沿って上下方向にスライド移動することができる。更に、規制部材支持板47にはチェース部検出センサ46が取り付けられる。このチェース部検出センサ46は非接触型の距離センサとして構成されており、給糸ボビン21のいわゆるチェース部を検出可能に構成されている。
【0037】
前記第2規制部材56は円筒状に形成されており、その上端が口金58(図3において省略)等によってワインダユニット10に固定されている。第2規制部材56の外径は規制部材40の内径より小さくなっているので、固定側の第2規制部材56を、移動側の規制部材40の内側に差し込むように配置することができる。また、前記第2規制部材56の下部には絞り部57が設けられている。この絞り部57は第2規制部材56の内径よりも小さい孔を有し、この孔を、給糸ボビン21から解舒された糸20が通過するように構成されている。この絞り部57から給糸ボビン21頂部までの距離は、例えば10〜20ミリメートルの範囲内に設定される。この絞り部57によって、規制部材40の上方に発生するバルーンを規制することができ、一定の張力で巻取作業を適切に行うことができる。
【0038】
なお、第2規制部材56は円筒状に形成することに限定されず、絞り部57を有する構成であれば、第2規制部材56の形状を適宜変更することができる。例えば、第2規制部材56を板金折曲げ部材として構成することができる。
【0039】
前記ガイドシャフト45の上端近傍には、前記ステッピングモータ41が配置されている。このステッピングモータ41の出力軸には駆動ギア43が固定されている。一方、前記ガイドシャフト45の下端近傍には従動ギア44が回転可能に支持されている。そして、前記駆動ギア43と前記従動ギア44に対し無端状のベルト部材42が巻き掛けられている。このベルト部材42は、内周面に歯(図略)を形成した歯付きベルトとして構成されている。
【0040】
このベルト部材42は規制部材40を昇降させる範囲をほぼ含むように上下に細長く配置されており、このベルト部材42の適宜の箇所に前記規制部材支持板47が固定されている。この構成で、駆動ギア43が回転してベルト部材42が駆動されることによって、ベルト部材42に接続されている規制部材支持板47を昇降させることができる。
【0041】
図2に示すように、ステッピングモータ41はステッピングモータ制御部51に接続されており、このステッピングモータ制御部51がステッピングモータ41に駆動パルス信号を出力してステッピングモータ41を駆動するようになっている。また、このステッピングモータ制御部51は、ステッピングモータ41に送信したパルス数をカウントし、そのカウント値を記憶することができるように構成されている。ステッピングモータ制御部51はユニット制御部50に接続されており、スプライサ装置14及びクリアラ15等の各部の制御とバルーンコントローラ12の制御を連動させることができる。なお、ステッピングモータ41は、出力軸に一定以上の負荷がかかったときには脱調するように構成されている。
【0042】
ユニット制御部50は、チェース部検出センサ46によって給糸ボビン21のチェース部の位置を把握しながら、ステッピングモータ制御部51を介してステッピングモータ41を制御し、規制部材40の位置を制御する。即ち、給糸ボビン21から糸が解舒されるに従ってチェース部の位置も下降するが、これをチェース部検出センサ46によって検出してステッピングモータ41を駆動することで、チェース部の下降に追従して規制部材40を下降させるのである。
【0043】
また、給糸ボビン21からの解舒時に糸が切れたとき、クリアラ15が糸欠陥を発見して糸をカッタにより切断したとき、給糸ボビン21が新しく供給されたとき等は、上述の糸継作業が行われる。この糸継時においては、ユニット制御部50はステッピングモータ制御部51に信号を送り、前記規制部材40を最上端の位置まで上昇させる。これにより、前記キンクプリベンタ17が給糸ボビン21の芯管の上端部近傍にブラシ部31を接触させ、糸に張力を付与してビリを防止することができる。そして、糸継作業を完了して巻取を再開するときは規制部材40を元の位置まで下降させ、糸解舒時のバルーンを再び制御できる状態に戻す。
【0044】
次に図4及び図5を参照して、バルーンコントローラ12の制御の詳細について説明する。図4及び図5はバルーンコントローラ12の制御を示したフローチャートである。
【0045】
図4に示すように、制御フローがスタートされると、ステッピングモータ制御部51はユニット制御部50からの指令を受けてステッピングモータ41を駆動し、バルーンコントローラ12の規制部材40を昇降ストロークの最上端まで上昇させる(S101)。なお、この最上端の位置が原点位置とされており、規制部材40が最上端の位置に到達したことは、例えばリミットスイッチ等からなる図略の原点センサにより検出することができる。規制部材40の上昇が完了すると、ステッピングモータ制御部51は、カウント値を記憶する変数をゼロにリセットする(S102)。
【0046】
上記の初期化処理の後、新しい給糸ボビン21が供給される(S103)。すると、ユニット制御部50は直ちに、前記給糸ボビン21のチェース部をチェース部検出センサ46が検出しているか否かを調べる(S104)。チェース部を検出していない場合は、ステッピングモータ41に所定パルス数分だけ駆動パルスを送信し、規制部材40を下降させる(S105)。そして、送信した駆動パルスの数を、前記カウント値に加算する(S106)。その後、S104に戻り、再びチェース部検出センサ46がチェース部を検出しているか否かが調べられる。
【0047】
このS104〜S106のループにより、チェース部検出センサ46がチェース部を検出するまで規制部材40を下降させるとともに、この下降のためにステッピングモータ41に送信した駆動パルスのカウント値を記憶させることができる。
【0048】
S104の判断でチェース部が検出されたと判定されると、図5のS107の処理へ移行し、巻取作業が開始される。パッケージ30への巻返し作業が実際に開始された後においても、前記給糸ボビン21のチェース部をチェース部検出センサ46が検出しているか否かが調べられる(S108)。給糸ボビン21からの糸の解舒によりチェース部が下降し、チェース部検出センサ46により検出されなくなった場合は、ステッピングモータ制御部51はユニット制御部50からの信号に基づいてステッピングモータ41に所定パルス数分だけ駆動パルスを送信し、規制部材40を下降させる(S109)。また、ステッピングモータ制御部51は、送信した駆動パルスの数を前記カウント値に加算する(S110)。
【0049】
ここで、S105、S106、S109及びS110の処理で示すように、本実施形態では、規制部材40を下降させる毎に、その下降のためにステッピングモータ41に送信した駆動パルスの数をカウント値に加算する処理を行う。従って、規制部材40を前述の最上端の位置から上記カウント値のパルス数に相当する距離だけ下降させれば、現在の規制部材40の位置を再現できることになる。
【0050】
また、上述したチェース部の監視処理(規制部材40の移動処理)と並行して、ワインダユニット10において糸切れ又は糸切断が発生したか否かが調べられる(S111)。即ち、ユニット制御部50は、給糸ボビン21からの解舒時に糸が切れたり、クリアラ15が糸欠陥を発見して糸をカッタで切断したりしていないかを、クリアラ15からの信号により調べる。
【0051】
糸切れ又は糸切断が発生している場合、ユニット制御部50は規制部材40を直ちに最上端(前記原点位置)まで上昇させるとともに(S112)、中継パイプ25,26及びスプライサ装置14等を駆動して糸継作業を開始する(S113)。なお、規制部材40が最上端に上昇しているので、糸継作業時においてキンクプリベンタ17のブラシ部31を給糸ボビン21の芯管上端部に対しスムーズに接触させ、糸のビリを防止することができる。
【0052】
その後、ユニット制御部50及びステッピングモータ制御部51は、糸継作業が終了するまで待機する(S114)。糸継作業が終了すると、ステッピングモータ制御部51は、記憶されているカウント値の数だけ駆動パルスをステッピングモータ41に送信し、規制部材40を糸切れ又は糸切断の発生時点の位置まで下降させる(S115)。その後、巻取作業を再開する(S116)。なお、S111の判断で糸切れ又は糸切断が発生していないと判定された場合は、S112〜S116の処理は行われない。
【0053】
次に、糸の巻取が終了した否かを調べ(S117)、巻取が終わっていない場合はS108に戻り、巻取が終了した場合は処理を終了する。以上のフローにより、糸切れ又は糸切断の発生時に規制部材40を退避させ、糸継後に元の位置へ戻す作業を繰り返しながら、給糸ボビン21のチェース部の下降に滑らかに追従して規制部材40を徐々に下降させることができる。なお、規制部材40は、所定位置まで下降すると、チェース部の検出の有無にかかわらずそれ以上下降しない構成とすることもできる。
【0054】
以上に示すように、本実施形態のワインダのバルーンコントローラ12は、給糸ボビン21の糸20を解舒するときのバルーンを規制するための規制部材40と、この規制部材40を昇降するための昇降手段と、を備える。そして、前記昇降手段は、ステッピングモータ41と、ステッピングモータの駆動を伝達するベルト部材42を備える。
【0055】
この構成により、規制部材40の位置の制御を、ステッピングモータ41に対するパルス制御によって、パルス単位の細かい段階(ほぼ無段階)で精密に行うことができる。また、ステッピングモータ41の駆動力を比較的軽量なベルト部材42によって規制部材40に伝達する構成であるので、規制部材40の昇降時の慣性を小さくでき、加減速性能も向上する。従って、高精度のバルーンコントロールを実現するとともに、規制部材40を高速で昇降させた場合でも過大な衝撃の発生を防止できる。また、ステッピングモータ41が上下しないように(固定側に)設置した場合、昇降する部分の軽量化を実現して規制部材40の昇降をよりスムーズに行うことができるとともに、ステッピングモータ41への電気配線等も簡素化できる。また、規制部材40が他の部材に衝突する等の何らかの事情で衝撃が発生した場合でも、その衝撃はベルト部材42によって緩衝されるので、過大な衝撃がステッピングモータ41側に伝達されて破損することを防止できる。更に、ステッピングモータ41自体が有する脱調機能によっても衝撃を吸収でき、当該ステッピングモータ41の破損を防止できる。また、昇降手段の構成がステッピングモータ41とベルト部材42というシンプルな構成であることから、装置の小型化及びコストの削減が可能になる。更に、規制部材40の昇降ストロークを変更したい場合、ベルト部材42を長いものに交換する等の小規模な構成変更によって容易に対応できる。また、ベルト部材42には基本的に注油が不要であるためメンテナンスの回数を抑えることができるとともに、糸の解舒の際などに発生する風綿等が潤滑油に付着してバルーンコントローラ12の故障の原因となることを防止できる。
【0056】
また、本実施形態のバルーンコントローラ12は、ベルト部材42が歯付きベルトで構成されている。
【0057】
この構成により、歯付きベルトがステッピングモータ41の駆動力を滑りなく伝達するので、省エネルギー性に優れるとともに、規制部材40の一層精密かつ円滑な昇降制御を実現できる。
【0058】
また、本実施形態の自動ワインダに用いられるワインダユニット10は、前記バルーンコントローラ12と、糸継作業を行うためのスプライサ装置14と、ステッピングモータ41に送信されたパルス数をカウントするステッピングモータ制御部51と、を備える。また、ワインダユニット10はユニット制御部50を備え、このユニット制御部50は、給糸ボビン21から解舒される糸が切れたとき又は切断されたときは規制部材40を退避させるように制御する。また、前記ユニット制御部50は、スプライサ装置14による糸継作業が完了すると、ステッピングモータ制御部51がパルス数をカウントした結果に基づいて規制部材40を元の位置に戻すように制御する。
【0059】
これにより、糸切れや糸切断が発生して規制部材40を退避させた場合でも、糸継作業が終了した後に、記憶させておいたパルス数のカウント値に基づいて、糸切れ又は糸切断時の位置まで規制部材40を素早く正確に移動させることができる。これによって、糸の巻取作業を素早く再開することができ、糸継作業を含めた作業工程全体のサイクルタイムを短縮することができる。
【0060】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0061】
上記実施形態ではベルト部材42に歯付きベルトが用いられているが、この構成に代えて平ベルト又はVベルトを用いる等、適宜ベルトの形状を変更できる。
【0062】
上記実施形態では、糸切れや糸切断が発生した時点での規制部材40の位置へ最上端位置から到達するまでにかかったパルス数をカウントしている。しかしながら、この構成に代えて、糸切れや糸切断が発生した時点での位置から最上端位置へ規制部材40が退避するのに必要なパルス数をカウントし、糸継作業後には上記カウント値のパルス数だけ規制部材40を下降させる構成に変更することができる。
【0063】
上記実施形態ではステッピングモータ制御部51がカウント手段として機能しているが、この構成に代えてユニット制御部50がカウント手段として機能する構成とする等、カウント手段の構成は適宜変更することができる。
【0064】
上記実施形態のワインダユニット10は、マガジン式供給装置60によって給糸ボビン21を供給しているが、この構成に限らず、例えば、給糸ボビン21をセットしたトレーを適宜の経路に沿って搬送することでワインダユニット10に供給する構成に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニットの側面図。
【図2】ワインダユニットの概略的な構成を示す正面図。
【図3】バルーンコントローラの要部斜視図。
【図4】規制部材の制御の前半部分を示すフローチャート。
【図5】規制部材の制御の後半部分を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0066】
10 ワインダユニット
11 ユニットフレーム
12 バルーンコントローラ(解舒補助装置)
40 規制部材
41 ステッピングモータ
42 ベルト部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンの糸を解舒するときのバルーンを規制するための規制部材と、前記規制部材を昇降するための昇降手段と、を備える自動ワインダの解舒補助装置において、
前記昇降手段は、ステッピングモータと、前記ステッピングモータの駆動を伝達するベルト部材と、を備えることを特徴とする自動ワインダの解舒補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動ワインダの解舒補助装置であって、
前記ベルト部材が歯付きベルトであることを特徴とする自動ワインダの解舒補助装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の解舒補助装置と、
糸継作業を行うための糸継装置と、
前記ステッピングモータに送信されたパルス数をカウントするカウント手段と、
前記給糸ボビンから解舒される糸が切れたとき又は切断されたときは前記規制部材を退避させるとともに、前記糸継装置による糸継作業が完了すると前記カウント手段のカウント結果に基づいて前記規制部材を元の位置に戻すように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−149404(P2009−149404A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328507(P2007−328507)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】