説明

触媒コンバータ装置及び触媒担体通電方法

【課題】触媒担体の局所過熱に起因する破損を抑制可能な触媒コンバータ装置を得る。
【解決手段】触媒担体は、温度上昇に伴って電気抵抗が低下する特性を備えている。触媒担体への通電電力は、少なくとも通電終了時TEを含む通電終了段階TE’で漸減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管に設けられる触媒コンバータ装置と、触媒担体に通電するための触媒担体通電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で生じた排気を浄化するために排気管に設けられる触媒コンバータ装置では、触媒を担持する触媒担体を通電して昇温させ、十分な触媒効果が得られるようにすることが望まれる。しかし、触媒担体の内部に局所的な過熱部分が生じると、触媒担体の破損を招くことがある。
【0003】
これに対し、特許文献1では、触媒担体に配置された温度センサからの情報に基づいて、触媒担体への通電制御を行う通電加熱式触媒装置の通電制御システムが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の通電制御システムは、触媒担体への通電と非通電とを切り替えるものであり、実際に触媒担体の破損を抑制するには、さらなる対策が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−189921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、触媒担体の局所過熱に起因する破損を抑制可能な触媒コンバータ装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、温度上昇に伴って電気抵抗が低下する特性を備え、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持すると共に通電によって加熱される触媒担体と、前記触媒担体に対し通電電力を制御して通電可能な通電手段と、を有し、前記通電手段が、前記触媒担体への通電終了時を含む少なくとも通電終了段階では通電終了時に向けて通電電力を漸減させる。
【0008】
この触媒コンバータ装置では、触媒担体が通電手段によって通電されると、触媒担体は加熱されて昇温されるので、担持された触媒による浄化効果をより高く発揮させることができる。
【0009】
触媒担体は、温度上昇に伴って電気抵抗が低下する特性を備えているため、触媒担体への通電の時間経過と共に、触媒担体の局所過熱に起因する温度ムラが大きくなりがちであるが、通電手段による触媒担体への通電電力は、通電終了時を含む少なくとも通電終了段階では通電終了時に向けて漸減される。すなわち、通電電力が徐々に低くなりながら、通電が終了される。したがって、通電終了段階で通電電力が漸増する構成や通電電力が一定である構成と比較して、触媒担体の局所過熱が抑制される。これにより、触媒担体の温度ムラも小さくなるので、触媒担体の破損を抑制できる。
【0010】
なお、ここでいう「漸減」には、通電終了段階において、通電電力が全く上昇することなく単調に低下するものが含まれるのはもちろんであるが、たとえば、触媒担体の温度上昇に実質的に寄与しない程度の短時間で通電電力が極大値をとるような構成や、通電終了段階における一定時間で通電電力が一定値をとる構成であっても、通電終了段階を全体として見たときに通電電力が徐々に低下していれば、ここでいう「漸減」に含まれる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記通電手段が、前記触媒担体への通電開始時以降で前記通電終了時よりも前に通電電力を最大値とし、この最大値の時点から通電終了時までに記通電終了段階を設定して通電電力を漸減させる。
【0012】
このように、触媒担体への通電開始時以降で通電終了時よりも前に通電電力を最大値とすることで、触媒担体を効果的に加熱できる。
【0013】
しかも、最大値の時点(以下「電力最大時」という)から通電終了時までは、通電終了段階として通電電力が漸減されるので、触媒担体の局所過熱が抑制される。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記最大値の時点が、通電開始から全通電時間の(3/4)よりも前に設定されている。
【0015】
すなわち、電力最大時が、通電開始時から全通電時間の(3/4)よりも前なので、全通電時間の(3/4)よりも後では、確実に通電電力が漸減される。このため、より確実に、触媒担体への通電終了前(特に通電終了直前)における破損を抑制できる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、温度上昇に伴って電気抵抗が低下する特性を備え、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持した触媒担体を、通電によって加熱する触媒担体通電方法であって、前記触媒担体への通電終了時を含む少なくとも通電終了段階では通電終了時に向けて通電電力を漸減させる。
【0017】
この触媒担体通電方法では、触媒担体は通電されると加熱されて昇温されるので、担持された触媒による浄化効果をより高く発揮させることができる。
【0018】
触媒担体は、温度上昇に伴って電気抵抗が低下する特性を備えているため、触媒担体への通電の時間経過と共に、触媒担体の局所過熱に起因する温度ムラが大きくなりがちであるが、触媒担体への通電電力は、通電終了時を含む少なくとも通電終了段階では通電終了時に向けて漸減される。すなわち、通電電力が徐々に低くなりながら、通電が終了される。したがって、通電終了段階で通電電力が漸増する構成や、通電電力が一定である構成と比較して、触媒担体の局所過熱が抑制される。これにより、触媒担体の温度ムラも小さくなるので、触媒担体の破損を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成としたので、触媒担体の局所過熱に起因する破損を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を示し、(A)は排気の流れ方向に沿った断面図、(B)は排気の流れ方向と直交する方向での断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を図1(B)と同様の断面で示し、(A)は触媒担体の電流の大きさを概念的に示す説明図、(B)は触媒担体の温度分布を示す説明図である。
【図3】本発明の実施パターンA及び比較例のパターンEにおいて、(A)は通電電力の時間変化を、(B)は触媒担体の温度の時間変化をそれぞれを示すグラフである。
【図4】本発明の実施パターンA、B、C及び比較例のパターンにおいて、触媒担体に作用させた熱エネルギーの時間変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施パターンB、Cにおける通電電力の時間変化を示すグラフである。
【図6】本発明の実施パターンDにおける通電電力の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1(A)には、本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置12が示されている。触媒コンバータ装置12は、排気管の途中に装着されるようになっている。排気管内には、エンジンからの排気が流れるが、図1(B)は、この排気の流れ方向と直交する方向の断面(図1(A)のB−B線断面)にて、触媒コンバータ装置12を示したものである。
【0022】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、導電性及び剛性を有する材料によって形成された触媒担体14を有している。触媒担体14は、たとえばハニカム状とすることで材料の表面積が増大されている。触媒担体14の表面には触媒(白金、パラジウム、ロジウム等)が付着された状態で担持されている。触媒は、排気管内を流れる排気(流れ方向を矢印F1で示す)中の有害物質を浄化する作用を有している。なお、触媒担体14の表面積を増大させる構造は、上記したハニカム状に限定されるものではなく、たとえば格子状や波状等であってもよい。
【0023】
触媒担体14を構成する材料としては、導電性セラミック、導電性樹脂や金属等を適用可能であるが、本実施形態では特に、SiC(炭化珪素)を含む材料を用いている。このSiCは、温度上昇に伴って電気抵抗が減少する特性(NTC特性)を持つ材料の一例である。本実施形態ではこのように、触媒担体14を構成する材料が炭化珪素を含んでいるので、高い強度や耐熱性を得られる。
【0024】
さらに、触媒担体14の電気抵抗率としては、10〜200Ω・cmとすれば、後述するように通電したときに、担持した触媒を効率的に温度上昇させることができるので好ましい。触媒担体14の気孔率としては、30〜60%の範囲とすることが好ましい。気孔率を30%以上とすると、必要な表面積を確保して多くの触媒を担持可能となる。また、気孔率を60%以下とすることで、触媒担体14として求められる強度を維持することが可能となる。
【0025】
触媒担体14には、2枚の電極16A、16Bが貼着され、さらに電極16A、16Bの中心にはそれぞれ端子18A、18Bが接続されている。電極16A、16Bは、触媒担体14の外周面に沿って所定の広がりをもった範囲で触媒担体14に接触配置されており、端子18A、18Bから電極16A、16Bを通じて触媒担体14に通電することで、触媒担体14を加熱できる。そして、この加熱により、触媒担体14に担持された触媒を昇温させることで、触媒が有する排気の浄化作用をより高く発揮させることができるようになっている。
【0026】
触媒担体14の断面形状(排気の流れ方向と直交する断面の形状)は特に限定されないが、本実施形態では円形としている。そして、この円形の中心をはさんで対向する位置に、電極16A、16Bを配置している。
【0027】
触媒担体14の外周には、絶縁性材料によって円筒状に形成された保持部材24が配置されている。さらに、保持部材24の外周には、ステンレス等の金属で円筒状に成形されたケース筒体28が配置されている。すなわち、円筒状のケース筒体28の内部に、触媒担体14が収容されると共に、ケース筒体28と触媒担体14との間に配置された保持部材24により、触媒担体14がケース筒体28の内部に隙間なく保持されている。そして、絶縁性を有する保持部材24が触媒担体14とケース筒体28との間に配置されているので、触媒担体14からケース筒体28への電気の流れが阻止されている。
【0028】
電極16A、16Bには、触媒担体14に電力を供給可能な電源装置30が接続されている。電源装置30は制御装置32によって制御されるようになっており、所定のタイミングで電力供給の開始時間及び終了時間を設定でき、さらに供給電力量を調整可能とされている。電源装置30及び制御装置32は、本発明の通電手段を構成している。
【0029】
次に、本実施形態の触媒コンバータ装置12の作用を説明する。
【0030】
触媒コンバータ装置12は、ケース筒体28が排気管の途中に取り付けられており、触媒担体14の内部を排気が矢印F1方向に通過する。このとき、触媒担体14に担持された触媒により、排気中の有害物質が浄化される。本実施形態の触媒コンバータ装置12では、端子18A、18B及び電極16A、16Bによって触媒担体14に通電し、触媒担体14を加熱することで、触媒担体14に担持された触媒を昇温させ、浄化作用をより早期に発揮させることができる。たとえば、エンジンの始動直後等、排気の温度が低い場合には、あらかじめ触媒担体14への通電加熱を行うことで、エンジン始動初期における触媒の浄化性能を確保できる。
【0031】
ここで、図3(A)には、触媒担体14への供給電力の時間変化のパターン例(実施パターンA及び比較例のパターンE)が示されている。また、図3(B)には、実施パターンA及び比較例のパターンEにおける触媒担体の最高温度部位及び最低温度部位での温度変化が示されている(このグラフでは触媒担体14の温度を「EHC温度」と記している)。また、図4には、実施パターンA及び比較例のパターンEに加えて、後述する実施パターンB及びCにおける、触媒担体14に付与する熱エネルギーの量の時間変化が示されている。これらの電力供給のパターンは、供給電力の時間積分値が略同一となるように設定されている。このため、図4に示すように、通電終了時TEまでに触媒担体14に付与する熱エネルギーの総量ESは略同一となっている。
【0032】
そして、本発明の各実施パターンについては、触媒担体14の局所過熱(温度ムラ)を抑制し、この局所過熱に起因する触媒担体14の破損も抑制可能な電力供給パターンとされている。以下に詳述する。
【0033】
本実施形態で触媒担体14として用いたSiCは強度が低いため、過大な力が作用すると破損する(たとえば割れたり欠けたりする)ことがある。特に、触媒担体14の部位に応じて内部温度に差(温度勾配あるいは温度ムラ)が生じた場合には、この温度差に比例する熱応力が触媒担体14に発生するため、触媒担体14が内部から破損する原因となる。このような触媒担体14の破損を防止するためには、触媒担体14への通電電力を低くすればよいが、その場合には、触媒担体14の温度を目標温度にまで上昇させるために要する時間が長くなる。
【0034】
本実施形態のように、触媒担体14を通電によって加熱する構成では、通電時の電流分布によっても、触媒担体14の温度分布に偏りが生じることがある。すなわち、図1(B)に示すように、触媒担体14の断面形状を円形とし、この触媒担体14を挟んで対向する位置に電極16A、16Bを貼着した構成を例に考えると、電極と比較して触媒担体14の電気抵抗が大きいため、触媒担体14を流れる距離が相対的に短くなるような径路に電流が集中する傾向がある。したがって、図2(A)に矢印ECで示すような電流分布となる(図2(A)では電流値の大きさを矢印ECの大きさに対応させている)。なお、触媒担体14がこれと異なる断面形状である構造や、電極16A、16Bの配置がこれと異なる構造であっても、それぞれの構造に応じた電流分布は生じる。
【0035】
また、本実施形態で触媒担体14として用いたSiCはNTC特性を有している。図2(A)に示したように電流が多く流れた部位は、その周囲と比較して温度が高くなるため、電気抵抗は低くなり、より電流が流れやすくなる。すなわち、電流が多く流れた部位に、さらに電流が集中することになり、局所加熱が促進される。また、電流集中の程度は、供給電力に比例するため、電力が大きいほど、局所加熱も顕著になる。触媒担体14の内部においても熱伝導(相対的に高温の部位から低温の部位への熱移動)は発生するが、この電流集中が大きくなると熱伝導が間に合わなくなり、触媒担体14の温度分布が大きくなる。たとえば、図1(A)に示した触媒担体14及び電極16A、16Bの構造の場合、図2(B)に示すように、電流の集中箇所に近い高温箇所HTと、この集中箇所から離れた低温箇所LTとが生じるような温度分布となる。そして、この温度の偏りが大きくなると、触媒担体14の破損を招く原因となる。
【0036】
図3(A)に示す本実施形態の電力供給パターンA及び、図5に示す電力供給パターンB、Cはいずれも、時刻TS(通電開始時)で電力供給を開始し、時刻TE(通電終了時)で電力供給を終了しているが、少なくとも通電終了時TEを含む所定時間(これを通電終了段階TE’とする)では、通電電力が漸減している。
【0037】
上記したNTC特性を持つ材料では、通電からの時間経過と共に、内部での温度ムラが大きくなる傾向がある。したがって、たとえば、通電終了時TEの直前で通電電力が大きくなるように触媒担体14に通電してしまうと、内部での温度差をより大きくしてしまうことになる。また、比較例の電力供給パターンEのように、通電電力を通電開始時TSから通電終了時TEまで一定とした場合であっても、図3(B)のグラフにおいて二点鎖線で示すように、触媒担体14の内部での温度差は、本実施形態の電力供給パターンAよりも大きくなる傾向にある。
【0038】
これに対し、本実施形態では、触媒担体14の温度ムラが小さい段階(通電初期段階)では通電電力を大きくし、通電終了時TEを含む少なくとも通電終了段階TE’において、通電電力を漸減させている。したがって、触媒担体14の温度が上昇した状態で触媒担体14の局所過熱を抑制することができる。すなわち、通電終了時TEの直前で通電電力が大きくなる構成と比較して、触媒担体14内での温度ムラを少なくし、触媒担体14の熱応力に起因する破損を抑制できる。
【0039】
なお、電力供給パターンAでは、通電開始時TSで通電電力を最大とし、時間経過と共に通電電力を線型(時間の一次関数)で減少させるような変化としているが、要するに、通電終了時TEを含む通電終了段階TE’において通電電力が漸減していればよく、かかる観点からは、たとえば、図5に示すような、以下の各電力供給パターンB及びCでもよい。
【0040】
電力供給パターンBでは、通電開始時TSから所定時間は、通電電力が漸増している。そして、通電開始時TSと通電終了時TEの間において、通電電力が最大値となっている(この電力最大値の時点を電力最大時TMとする)。電力最大時TMから通電終了時TEまでは、通電電力が漸減している。このような電力供給パターンBであっても、通電終了段階TE’において通電電力が漸減しており、触媒担体14内での温度ムラを少なくすることが可能である。
【0041】
また、通電終了段階TE’において、触媒担体14への熱エネルギーの供給に実質的な大変動が無ければ、通電電力が上昇(あるいは降下)している時間が存在していても、通電終了段階TE’において通電電力が「漸減」している構成に含まれる。たとえば、図5の電力供給パターンCでは、通電終了段階TE’において、通電電力が極大値となる時間ΔT’がある。しかし、この時間ΔT’が十分に短ければ、触媒担体14の温度が過大に上昇することなないため、通電終了段階TE’においては通電電力が漸減されていることになり、触媒担体14内での温度ムラを少なくすることが可能である。なお、このように時間ΔT’における通電電力の極大値(グラフ上での上に凸の部分の高さ)は特に問わない。
【0042】
また、触媒担体14への供給電力は、連続的に変化している必要はなく、断続的な(ステップ状の)変化であってもよい。たとえば、図6に示す電力供給パターンDでは、通電開始時TSから所定時間ΔT1では通電電力を一定とし、その後の所定時間ΔT2では、一時的に通電電力を低くしている(実質的にゼロとしている)。そしてその後、所定時間ΔT3では、通電電力を最大(一定値)とし、その後の通電終了時TEに至る所定時間ΔT4では、最大値よりも低い通電電力(一定値)としている。この電力供給パターンDでは、所定時間ΔT3の終了時を含み、さらに所定時間ΔT4を経て通電終了時TEに至るまでが、本発明における通電終了段階TE’に該当する。すなわち、通電終了段階TE’では通電電力が漸減(段階的に減少)しているので、触媒担体14内での温度ムラを少なくすることが可能である。
【0043】
しかも、この電力供給パターンDでは、通電開始時TSから通電終了時TEまでの間に、通電電力を一時的に低くする時間ΔT2を設定しているので、この時間で触媒担体14内部の熱伝導による温度の均一化を促進でき、温度ムラの発生をさらに効果的に抑制可能となる。
【0044】
なお、本実施形態のいずれの電力供給パターンにおいても、通電開始時TS以降(通電開始時TSを含む)から通電終了時TEまでの間に、通電電力が最大値をとるようになっており、触媒担体14の効率的な加熱が可能である。特に、通電の初期段階で通電電力を最大値にすれば、触媒担体14の温度が低い段階で、大きな電力により触媒担体14を加熱できるので、好ましい。たとえば、電極供給パターンAは、通電開始時TSにおいて通電電力が最大値となっており、触媒担体14の効率的な加熱という観点からは、好ましい。もちろん、本発明としては、通電開始時TSから所定時間は通電電力を一定とし、その後、通電終了時TEに向けて通電電力を漸減させる構成も含まれる。
【0045】
本発明において、「通電終了段階TE’」は、少なくとも通電終了時TEを含んでいるが、あまりに短い時間では、実質的に通電終了時TEの直前でのみ通電電力を漸減させることになってしまうため、通電電圧が漸減している実質的な時間が短くなり、触媒担体14内での温度ムラを少なくするという効果が低くなる。したがって、触媒担体14への全通電時間の(3/4)経過時TC(図3、図5及び図6参照)よりも前から「通電終了段階TE’」が開始されると、通電電圧が漸減している時間を十分に確保できる。たとえば、電力供給パターンAでは、通電開始時TSにおいて通電電力が最大値となっており、その後は通電電力が漸減されているので、この条件を満たす。また、電力供給パターンB及びCにおいても、通電電力を最大値とする電力最大時TMを、上記した(3/4)経過時TCよりも前に設定すればよい。同様に、電力供給パターンDにおいても、通電電力を最大値とする時間ΔT3の終了時を、上記した(3/4)経過時TCよりも前に設定すればよい。
【0046】
また、本発明の「通電終了段階」の開始時点は、あらかじめ時間によって決めておいてもよい。上記したように、触媒担体14への全通電時間の(3/4)経過時TCよりも後の段階を「通電終了段階」とする構成は、この一例である。これに代えて(あるいは併用して)温度センサ等によって触媒担体14の温度を検出し、この温度が、触媒担体14の目標温度の所定範囲に達した段階で、「通電終了段階」に移行するようにしてもよい。
【0047】
上記では、触媒担体14として、排気の流れ方向(矢印F1方向)と直交する断面形状が円形のものを挙げたが、触媒担体14の形状は円形に限定されない。すなわち、触媒担体14がNTC特性を有していれば、触媒担体14の形状に関わらず、触媒担体14内での温度ムラを少なくし、触媒担体14の熱応力に起因する破損を抑制できる。
【符号の説明】
【0048】
12 触媒コンバータ装置
14 触媒担体
24 保持部材
28 ケース筒体
30 電源装置(通電手段)
32 制御装置(通電手段)
TS 通電開始時
TE 通電終了時
TE’ 通電終了段階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度上昇に伴って電気抵抗が低下する特性を備え、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持すると共に通電によって加熱される触媒担体と、
前記触媒担体に対し通電電力を制御して通電可能な通電手段と、
を有し、
前記通電手段が、前記触媒担体への通電終了時を含む少なくとも通電終了段階では通電終了時に向けて通電電力を漸減させる触媒コンバータ装置。
【請求項2】
前記通電手段が、前記触媒担体への通電開始時以降で前記通電終了時よりも前に通電電力を最大値とし、この最大値の時点から通電終了時までに記通電終了段階を設定して通電電力を漸減させる請求項1に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項3】
前記最大値の時点が、通電開始から全通電時間の(3/4)よりも前に設定されている請求項2に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項4】
温度上昇に伴って電気抵抗が低下する特性を備え、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持した触媒担体を、通電によって加熱する触媒担体通電方法であって、
前記触媒担体への通電終了時を含む少なくとも通電終了段階では通電終了時に向けて通電電力を漸減させる触媒担体通電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163058(P2012−163058A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24866(P2011−24866)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】