触媒ペーストの製造装置及び製造方法
【課題】低加湿状態で高出力をより安定して得られるMEAを得る。
【解決手段】本発明の触媒ペースト42の製造方法では、第1工程において、触媒81と水3とを混合し、プレペースト41を得る。第1工程では、プレペースト41が流動限界からスラリー状態までの範囲内の水分量のペースト状態となるように、触媒81と水3とを混合する。そして、第2工程において、このプレペースト41にアイオノマー溶液82を混合し、触媒ペースト42を製造する。その後、この触媒ペースト42を用いてMEAを得る。
【解決手段】本発明の触媒ペースト42の製造方法では、第1工程において、触媒81と水3とを混合し、プレペースト41を得る。第1工程では、プレペースト41が流動限界からスラリー状態までの範囲内の水分量のペースト状態となるように、触媒81と水3とを混合する。そして、第2工程において、このプレペースト41にアイオノマー溶液82を混合し、触媒ペースト42を製造する。その後、この触媒ペースト42を用いてMEAを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のカソード極やアノード極といった電極を構成する触媒ペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図12に示すような膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)90を用いた燃料電池システムが知られている。このMEA90は、ナフィオン(登録商標、Nafion(Du pont社製))等の固体高分子膜からなる電解質膜91と、この電解質膜91の一面に接合されて空気が供給されるカソード極93と、電解質膜91の他面に接合されて水素等の燃料が供給されるアノード極92とを有している。
【0003】
カソード極93は、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等のガス透過性のある基材と、この基材の一面に形成されたカソード触媒層93aとからなる。カソード極93におけるカソード触媒層93a以外の部分は基材によって構成されており、ここは非電解質側でカソード触媒層93aに空気を拡散するカソード拡散層93bとされている。
【0004】
また、アノード極92も、上記基材と、この基材の一面に形成されたアノード触媒層92aとからなる。アノード極92におけるアノード触媒層92a以外の部分も基材によって構成されており、ここは非電解質側でアノード触媒層92aに燃料を拡散するアノード拡散層92bとされている。
【0005】
カソード触媒層93aやアノード触媒層92aは、図13に示すように、ほぼ球形のカーボン担体81aに白金(Pt)等の触媒微粒子81bを担持してなる無数の触媒81と、各触媒81を互いに結合するとともに図示しない基材に結合する高分子電解質82とを含むものである。高分子電解質82としては電解質膜91と同様のものが用いられ、高分子電解質82はアイオノマーとして機能していると考えられている。
【0006】
そして、このMEA90を図示しないセパレータで挟むことにより最小発電単位である燃料電池のセルが構成され、このセルが多数積層されて燃料電池スタックが構成される。カソード触媒層93aには空気供給手段によって空気が供給され、アノード触媒層92aには水素供給手段等によって水素等が供給されるようになっている。こうして燃料電池システムが構成される。
【0007】
このMEA90では、図14に示すように、アノード触媒層92aにおける電気化学的反応により、燃料から水素イオン(H+;プロトン)と電子とが生成される。そして、プロトンは水分子を伴ったH3O+の形で電解質膜91内をカソード触媒層93aに向かって移動する。また、電子は、燃料電池システムに接続された負荷を通り、カソード触媒層93aに流れる。一方、カソード触媒層93aにおいては、空気中に含まれる酸素とプロトンと電子とから水が生成される。このような電気化学的反応が連続して起こることにより、燃料電池システムは起電力を連続して発生することができる。
【0008】
この燃料電池システムの実用化のためには、より広い動作条件下で安定して発電できることが重要であるが、高分子電解質82は加湿された環境下でプロトンの導電性を持つ性質であるため、低湿度環境下ではイオン抵抗が上昇し、性能が低下するという問題点がある。
【0009】
この原因は、触媒81とアイオノマー溶液とを混合して触媒ペーストを調製する際、比較的撥水的である触媒81の表面にアイオノマー溶液の疎水基が配向し易い傾向となり、生成水等の水分を保持する能力が低い電極ができることにある。
【0010】
この対策として、触媒81にアイオノマー溶液を添加する前に十分多量の水を添加するとともに、自転/公転式遠心攪拌機で十分攪拌することにより、水を触媒81の内部に十分行き渡らせる親水化工程が有効である。この対策により、触媒81の表面をより親水的にすることができ、触媒81の表面にアイオノマー溶液の親水基をより多く配向させることが可能になる。この結果、発電時の生成水等が触媒81に保持され、低加湿環境での乾燥に強い電極を作製することができる(特許文献1、2)。
【0011】
具体的には、これらの製造方法では、第1工程として、チャンバー内に触媒81と水とを含む混合物を収容した後、チャンバーを公転させることによって混合物に遠心力を付与しつつ、チャンバーを自転させることによって混合物を自身の自重で撹拌する。これにより、各触媒81の表面から空気を強制的に追い出し、表面を水で覆われた状態にすることができる。この際、遠心力の付与及び撹拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いないことから、触媒担持カーボン同士の接触は阻害され難い。
【0012】
そして、第2工程として、第1工程で得られた混合物にアイオノマー溶液を混合し、触媒ペーストを得る。この際、各触媒81は水に対する濡れ性を有していることから、アイオノマー溶液は各触媒81側にアイオノマー溶液が有するプロトン交換基を配向させる。そして、図15に示すように、互いに接触する各触媒81とアイオノマー溶液との間に、水によって互いに連続する親水層83が形成された触媒ペーストが得られる。
【0013】
このため、この触媒ペーストを用いてカソード極93やアノード極92を製造すれば、それらのカソード極93やアノード極92は、図14に示すように、親水層83によってプロトンが移動し易い。また、高分子電解質82は、図15に示すように、その親水層83側にプロトン交換基を配向させているため、プロトンの移動に親水層83が有効に活用される。また、高分子電解質82の疎水性部分は空孔側に配向して空孔側が疎水性になるため、水が溜まり難く、ブラッディングが防止され、ガス拡散が阻害され難くなる。このため、燃料電池システムは、MEAのアノード極、電解質膜及びカソード極でH3O+が良好に移動し、高出力が得られる。
【0014】
また、特許文献3では、触媒81の上記親水化工程を定量的に規定した。すなわち、触媒微粒子81bの担持密度やアイオノマー溶液の混合量によらず、水の添加量を触媒81のカーボン担体81aの重量で一定値とした。具体的には、水倍率=(水の重量)/(触媒微粒子81bを除いたカーボン担体81aのみの重量)(H2O/C)が16以上27以下、20がその最適値であるとした。これにより、高出力をある程度安定して得られるMEAを得ることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−140061号公報
【特許文献2】特開2006−140062号公報
【特許文献3】特開2009−104905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、触媒の親水化工程において、最適値を含む過去の条件はカーボン担体の種類や粉砕状態によって変化することが判明した。このため、触媒に対する水の量の最適値をより正確に決めることが求められる。
【0017】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、低加湿状態で高出力をより安定して得られるMEAを得ることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明者らは、上記課題解決のために鋭意研究を行い、より正確に水の添加量の最適値を決定するパラメータとして粘度に着目し、触媒に水を混合したペーストの粘度測定を行い、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明の触媒ペーストの製造方法は、カーボン担体に触媒微粒子を担持してなる無数の触媒と、水とを混合し、プレペーストを得る第1工程と、
該プレペーストにアイオノマー溶液を混合し、触媒ペーストを製造する第2工程とを備えた触媒ペーストの製造方法において、
前記第1工程では、前記プレペーストが流動限界からスラリー状態までの範囲内の水分量のペースト状態となるように、前記触媒と前記水とを混合することを特徴とする(請求項1)。
【0020】
本発明の製造方法では、まず、第1工程において、無数の触媒と水とを混合してプレペーストを得る。この際、触媒に混合する水の量は、プレペーストが流動限界からスラリー状態までのペースト状態となる水量である。
【0021】
すなわち、粒子と水との混合物において、粒子と水との分散状態は、「スラリーの安定化技術と調製事例」(情報機構刊)に示されるように、4種類に分けられる。以下、上記の出典を基に説明する。図1に示すように、符号2が粒子を示し、符号3が水を示し、符号4が空気を示している。
【0022】
粒子2を上記の触媒に相当させる。粒子2に対して水3の量が少ない場合、図1の(A)に示すように、各粒子2の固相は連続した状態となり、水3の液相は不連続の状態となる。このため、粒子2同士の間に大きな空気4からなる気相が生じている。この状態はペンデュラ状態と呼ばれる。
【0023】
このペンデュラ状態に水3をさらに加え、粒子2に対する水3の量を多くすれば、図1の(B)に示すように、気相の割合が減少する。この状態はファニキュラ状態と呼ばれる。ファニキュラ状態では、水3の液相が連続した状態となるが、未だ空気4の気相が残存している。
【0024】
ファニキュラ状態から、さらに水3の量を多くすれば、図1の(C)に示すように、粒子2と水3との混合物は塑性限界を超える。この状態はキャピラリ状態と呼ばれる。キャピラリ状態では、各粒子2同士の間隙が水3に満たされた状態となる。すなわち、各粒子2の固相は不連続の状態となり、水3の液相は連続した状態であり、かつ空気4の気相が存在しない状態となる。
【0025】
このキャピラリ状態から、さらに水3の量を多くすれば、図1の(D)に示すように、各粒子2が水3の中に分散され、流動性を持つようになる。この状態はスラリー状態と呼ばれる。
【0026】
流動限界とは、混合物がキャピラリ状態からスラリー状態へと変化し、流動し始める水分含量の限界をいう。
【0027】
触媒の表面を単純に親水化するという目的であれば、触媒に対して過剰に水を混合することでもその効果を得ることが可能であると考えられる。しかしながら、触媒に対して過剰に水を混合した場合には、プレペースト中に余分な水が多くなる。その場合には、余分な水にも高分子電解質の親水基が配向するため、触媒と高分子との間に連続する親水層を形成することを阻害し、発電時の生成水を触媒近傍に保持する能力が損なわれ、低加湿環境で燃料電池システムの出力が低下し易くなるという逆効果が生じる。
【0028】
これに対し、触媒に混合する水の混合量を流動限界に基づいて規定し、プレペーストが流動限界近傍であるキャピラリ状態からスラリー状態に変化する水分状態とすることにより、水の混合量は、水により触媒表面を親水化しつつ、触媒と高分子電解質との間に連続する親水層を形成できる最少水分量となる。このため、第1工程で得られるプレペーストは、高出力を安定して得られるMEAを製造するための理想的な状態となる。
【0029】
そして、第2工程において、プレペーストにアイオノマー溶液を混合して触媒ペーストを得る。この状態では、各触媒は水に対する濡れ性を有していることから、アイオノマー溶液中の高分子電解質は、各触媒側に高分子電解質が有する親水基を配向させる。そして、互いに接触する各触媒と高分子電解質との間に水によって互いに連続する親水層が形成された本発明の触媒ペーストが得られる。
【0030】
このプレペーストとアイオノマー溶液とを混合して得られた触媒ペーストでは、互いに接触する各触媒と高分子電解質との間に水によって互いに連続する親水層が形成されている。このため、MEAにおいて、この親水層を伝ってプロトンが移動し易くなる。また、カソード触媒層やアノード触媒層中の触媒と高分子電解質との間において、高分子電解質が有する親水基を触媒側に配向させて水路を形成し、水路が触媒の全面に形成される。また、高分子電解質がその親水層側にアイオノマー溶液が有するプロトン交換基を配向させているため、プロトンの移動に親水層が有効に活用される。
【0031】
したがって、本発明の製造方法で得られた触媒ペーストによれば、低加湿状態で高出力をより安定して得られるMEAを製造することが可能になる。
【0032】
プレペーストのせん断速度と粘度との関係において、粘度をせん断速度に対して両対数でプロットしたときの近似直線を求め、流動限界は近似直線の傾きが−1となるペースト状態であり、スラリー状態は近似直線の傾きが−0.8となるペースト状態である(請求項2)。
【0033】
せん断速度に対する粘度の関係における近似直線の傾きが−1以上、すなわち、傾きが緩やかになるとともに流動性の高いスラリー状態になる。過剰な水分を含んだ状態はMEAの性能の低下を招くため、ペーストが流動限界からスラリー状態になる、すなわち、傾き−1〜−0.8の範囲となる水添加量が最適量となる。これにより理想的なプレペーストを得ることができる。プレペーストではこの近似直線の傾きにより必要最小限の水分添加量を規定することが重要である。一方、傾きが−1未満(傾きがきつくなる)のキャピラリ状態では混合物の流動性がなくなるため、混合時におけるエネルギーがより必要となり、水と触媒との攪拌が不十分となり易く、好適なプレペーストが得られる条件として適さない。
【0034】
本発明の触媒ペーストの製造方法において、第1工程では、混合物に摩擦力と粉砕力とを付与する混合機を用いることが好ましい(請求項3)。特許文献1、2に開示の自転/公転式遠心攪拌機は、公転と自転とによって良好な親水化工程を行っていたと解するが、混合物に摩擦力と粉砕力とを付与する点でも好ましいと考えている。第1工程においてこの混合機を用いることで、混合機による摩擦力と粉砕力とにより、各触媒におけるカーボン担体の内部にまで水を十分に行渡らせることができる。このため、触媒の表面をより親水的なものとすることができ、高出力をより安定して得られるMEAを容易に製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】粒子と水との分散状態を示す摸式図である。
【図2】実験例1に係り、プレペーストのせん断速度と粘度との関係を示すグラフである。
【図3】実験例1に係り、水倍率とせん断速度−粘度勾配との関係を示すグラフである。
【図4】実験例2に係り、プレペーストのせん断速度と粘度との関係を示すグラフである。
【図5】実験例2に係り、水倍率とせん断速度−粘度勾配との関係を示すグラフである。
【図6】実験例3に係り、プレペーストのせん断速度と粘度との関係を示すグラフである。
【図7】実験例3に係り、水倍率とせん断速度−粘度勾配との関係を示すグラフである。
【図8】実施例のカソード極を製造する製造方法を示す工程図である。
【図9】実施例の製造方法で用いた自転/公転式遠心攪拌機のチャンバーの模式図である。
【図10】実験例4に係り、実施例又は比較例のMEAを備えた燃料電池のセルにおいて、フル加湿状態における電流とセル電圧との変化を示すグラフである。
【図11】実験例5に係り、実施例又は比較例のMEAを備えた燃料電池のセルにおいて、低加湿状態におけるセル電圧比を示すグラフである。
【図12】従来及び実施例のMEAを示す摸式構造図である。
【図13】従来及び実施例のカソード触媒層又はアノード触媒層を示す模式拡大断面図である。
【図14】従来及び実施例のMEAの模式拡大断面図である。
【図15】図13のXV部分の模式拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
{検証1}
実施例のMEAを製造するにあたり、後述の第1工程で触媒に混合する水の水量の最適値について、以下の実験例1〜3による検証を行った。実験例1〜3では、触媒に混合する水の量の最適値を決定するパラメータとして、触媒と水とを含むプレペーストの粘度に着目し、プレペーストの粘度測定を行った。なお、粘度の測定においては、東機産業製RB80型粘度測定機を用いた。
【0037】
(実験例1)
実験例1では、触媒に混合する水の量を変化させてプレペーストの粘度を測定した。実験例1では、図13〜15に示す触媒81と同様、触媒として、ほぼ球形のカーボン担体(KB600JD、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)に担持密度60wt%でPt微粒子を担持したものを用意した。この触媒に混合される水の量は、触媒中からPt微粒子81bを取り除き、カーボン担体の重量に対する水の重量の比(H2O/C)で規定される。実験結果を図2及び図3に示す。
【0038】
図2は、横軸xにせん断速度(log(D[1/秒]))を示し、縦軸yに粘度(log(η[Pa・秒]))を示している。それぞれの水量における直線の関数式は以下のとおりである。
【0039】
H2O/C=19:y=−1.0934x+0.7264
H2O/C=20:y=−0.9226x+0.7341
H2O/C=22:y=−0.8156x+0.5516
H2O/C=26:y=−0.7314x+0.369
H2O/C=38:y=−0.7418x−0.0975
【0040】
このように、水量が少なくなると、プレペーストの粘度が増加するとともに、直線の傾きが−1に近づくことが分かる。これは、水量が少なくなると、カーボン担体同士の凝集が進むとともに、プレペーストの粘度が増大し、これにより直線の傾きがきつくなるためである。図2は、直線の傾きが−1より大きくなったプレペースト41が流動限界を超え、キャピラリ状態になったことを示唆している。
【0041】
図3は、H2O/C=19の水分量のプレペーストにおける水倍率(H2O/C)[g/g−C]とせん断速度−粘度勾配d(logη)/d(logD)との関係を示している。図5では、せん断速度−粘度勾配が−1を超えれば、流動限界であり、プレペーストが流動限界を超えたことを示している。図3に示すように、水倍率が20の近傍で勾配が−1となる。すなわち、この実験例1に用いた触媒では、水倍率20が最適値であると言える。
【0042】
(実験例2)
実験例2では、実験例1で用いた触媒と同じく、KB600JDに担持密度60wt%でPt微粒子81bを担持している触媒であるが、触媒とは製造元が異なる触媒を用いた。実験の方法等は実験例1と同様である。結果を図4及び図5に示す。
【0043】
図4に示す直線の関数式は以下のとおりである。
【0044】
H2O/C=27:y=−1.0436x+0.8981
H2O/C=28:y=−0.9077x+0.7343
H2O/C=31:y=−0.7585x+0.5736
【0045】
図5に示すように、これらのプレペーストでは、水倍率が27の近傍で勾配が−1を超えている。
【0046】
図4及び図5より、この実験例2に用いた触媒では、水倍率を28とすることで、プレペーストが流動限界に近くなる。すなわち、同じ担持密度60wt%のKB600JDを用いた触媒であっても、製造元が異なれば、最適水分量となる水量に差が生じることが分かる。
【0047】
(実験例3)
実験例3では、BP800(CABOT社製)にPt微粒子を担持密度20wt%で担持した触媒を用い、水倍率を変化させた場合のプレペーストの粘度を測定した。実験の方法等は実験例1と同様である。結果を図6及び図7に示す。
【0048】
図6に示す直線の関数式は以下のとおりである。
【0049】
H2O/C=3.2:y=−1.1138x+0.8268
H2O/C=3.5:y=−0.9418x+0.5033
H2O/C=4:y=−0.8924x+0.1093
H2O/C=5:y=−0.6826x−0.2232
【0050】
図7に示すように、これらのプレペーストでは、水倍率が3.2の近傍で勾配が−1を超えている。すなわち、この実験例3の触媒では水倍率3.5が最適水添加量となる。
【0051】
このように、実験例1に比べ、勾配が−1になる水量が実験例3の方が少ないのは、BP800の比表面積が実験例1におけるKB600JDのおよそ6分の1であることによる。すなわち、BP880の最適水量は、実験例1のおよそ6分の1となっている。
【0052】
各実験例1〜3により、各触媒に混合する水の量の最適値は、各触媒の種類、より詳細には、各触媒中のカーボン担体の種類や粉砕状況によって変化することが判明した。そして、プレペーストの流動限界を基に各触媒に混合する水の量を決定することが好ましいことがわかる。また、図2、図4及び図6に示す各直線の関数式によれば、各プレペーストの流動限界となる水量は直線の傾きが−0.8〜−1である。
【0053】
(実施例)
上記の検証結果を基に、図8に示す工程図に従って、実施例のMEAのカソード極を製造した。このカソード極は、図9に示す触媒ペースト42の製造方法を除き、図12に示す従来のカソード極93と同様のものであるので、同一の構成については同一の符号を付して説明する。
【0054】
この実施例で用いる触媒81は、実験例1と同様、カーボン担体81aとしてのKB600JDにPt微粒子81bを担持密度60wt%で担持したものである。
【0055】
まず、図8に示すステップS1において、1gの触媒81に対して8gの割合となる水量で触媒81と水3とを混合した(混合物40)。この水量は、上記の検証1の実験例1で得られた最適水添加量、すなわち、水倍率が20となっている。
【0056】
続くステップ2において、ステップS1の混合物40を攪拌し、プレペースト41を得る。この際、各触媒81の表面には親水基である水酸基が元々存在せず、各触媒81は濡れ性が悪いため、単に触媒81に水を添加するだけでは、各触媒81の表面に水が存在しない。このため、まず、図9に示すチャンバー35を有する自転/公転式遠心攪拌機(商品名「ハイブリッドミキサーHM−500」、キーエンス社製)を用意した。このチャンバー35は、容器35aと、この容器35aを封止する蓋35bとからなり、中心点O回りに高速で公転されるとともに、中心点Oから延びる自己の軸芯P回りに高速で自転され得るようになっている。このチャンバー35内に触媒81と水3とを含む混合物40を収容した。この後、チャンバー35を公転させることによって混合物40に遠心力を付与しつつ、チャンバー35を自転させることによって混合物40を自身の自重で攪拌した。こうして、各触媒81の表面から空気を強制的に剥がし、カーボン担体81aの隙間にも水3を充填させた。これにより、触媒81に水3に対する濡れ性が付与され、プレペースト41が得られた。この際、遠心力の付与及び攪拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いないことから、触媒81同士の接触を阻害することがない。また、自転/公転式遠心攪拌機が混合物40に摩擦力と粉砕力とを付与するため、各触媒81におけるカーボン担体81aの内部にまで水3を十分に行渡らせることができ、触媒81の表面をより親水的なものとすることができると考えている。ステップS1、S2が第1工程である。
【0057】
そして、図8に示すステップS3において、自転/公転式遠心攪拌機のチャンバー35内のプレペースト41に7gのアイオノマー溶液(ナフィオン溶液(5質量%溶液))82(図13〜15参照)を混合した。
【0058】
その後、図8に示すステップS4において、図9に示すように、チャンバー35を公転させることによってプレペースト41及びアイオノマー溶液82に遠心力を付与しつつ、チャンバー35を自転させることによってプレペースト41及びアイオノマー溶液82を自身の自重で攪拌した。こうして、プレペースト41及びアイオノマー溶液82から空気を強制的に剥がす。この際、各触媒81は水3に対する濡れ性を有していることから、アイオノマー溶液82中の高分子電解質としてのナフィオンは、各触媒81側に自身が有するスルホン基(SO3-)からなるプロトン交換基を配向させる。これにより、触媒81の表面に吸着した水3に強く配向した状態でナフィオンが形成される。こうして、発電時には互いに接触する各触媒81とナフィオンとの間に水3によって互いに連続する親水層83(図13〜15参照)が形成された触媒ペースト42が得られた。この工程においても自転/公転式遠心攪拌機によって攪拌を行っているため、遠心力の付与及び攪拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いない。このため、触媒81同士の接触が阻害され難い。また、自転/公転式遠心攪拌機による摩擦力と粉砕力とにより、触媒81とアイオノマー溶液82との間には、連続して形成される親水層83をより多く配向させることができると考えている。ステップS3、S4が第2工程である。
【0059】
図8に示すステップS5において、上記触媒ペースト42をガス拡散層基材に印刷し、カソード触媒層93a形成した。ガス拡散層基材は、カーボンクロス、カーボンペーパーなどの電子伝導性を有する基材の上に、カーボンブラックとPTFEとの混合物からなる撥水層を設けたものである。
【0060】
そして、ステップS6において、印刷後の基材を乾燥させてカソード極93を得た。アノード極92も同様に製造した。
【0061】
この後、アノード極92、電解質膜(ナフィオン、NRE212)91及びカソード極93の順でこれらを積層し、140°C、加圧力60kgfでホットプレスして接合した。こうしてMEAを得た。
【0062】
実施例のMEAでは、上記のステップS1〜4で得られた触媒ペースト42を用いている。このため、このMEAでは、アノード極92、電解質層91及びカソード極93の間でH3O+が良好に移動する。
【0063】
したがって、実施例の製造方法で得られた触媒ペーストを用いたMEAは、低加湿状態で高出力をより安定して得ることができる。
【0064】
{検証2}
次に、上記実施例で製造したMEAの電流及び電圧の特性を検証した。この検証では、MEAを備えたセルを用意して行った。
【0065】
(比較例)
また、比較例として、以下に示すMEAを製造し、このMEAを備えたセルを用意した。このMEAでは、実施例で使用した触媒81に対し、水倍率が30となる量の水3を混合してプレペースト41が得られている。他の条件は実施例と同様である。
【0066】
実施例と比較例とについて、触媒81に混合する水3の水量(水倍率)及び各プレペースト41の粘度−せん断直線の傾きを表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、実施例のプレペースト41の直線の傾きは−1以上、−0.8以下であり、実施例のプレペースト41は流動限界に近いことが分かる。これに対し、比較例のプレペースト41の直線の傾きは−0.8を超えており、より流動性が高くなっていることが分かる。
【0069】
(実験例4)
実験例4では、実施例のMEAを備えたセル及び比較例のMEAを備えたセルのそれぞれについて、セル温度を50°Cに設定し、湿度が100%RHの測定環境(以下、フル加湿状態という。)の下、各セルの電流及び電圧の変化を測定した。測定結果を図10に示す。
【0070】
図10では、横軸に電流(A)を示し、縦軸に電圧(V)を示している。また、実施例のMEAを備えたセルの電流と電圧との変化を実線で示し、比較例のMEAを備えたセルの電流と電圧との変化を破線で示している。図10が示すように、実施例のセル及び比較例のセルは、ともに15A未満の低電流領域での電圧の変化にはほとんど差が生じていない。しかし、15Aを超えた高電流領域での電圧は、実施例のセルが勝っている。
【0071】
(実験例5)
実験例5では、上記各セルの温度を70°Cに設定し、湿度40%RHの測定環境(以下、低加湿状態という。)において、電流密度0.7A/cm2の電流を連続して通電した場合の電圧を測定した。測定結果を図11に示す。
【0072】
図11では、フル加湿状態でのセルの電圧に対する低加湿状態でのセルの電圧比を示している。この図11が示すように、比較例のセルの電圧はフル加湿状態でのセルの電圧の80%を下回っているのに対し、実施例のセルの電圧はフル加湿状態でのセルの電圧のおよそ85%を維持している。つまり、実施例のセルは環境の変化による電圧の低下が少ないことが分かる。
【0073】
実験例4、5により、フル加湿状態及び低加湿状態のいずれの状態においても、実施例のMEAの方が比較例のMEAよりも電圧特性が高く、効果的であることが分かる。すなわち、高出力をより安定して発揮可能なMEAを製造するためには、触媒に対して混合される水3の量を正確に求めることが重要であることがわかる。
【0074】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、電気自動車等の移動用電源、あるいは据え置き用電源に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
81a…カーボン担体
81b…Pt微粒子(触媒微粒子)
81…触媒
3…水
41…プレペースト
82…アイオノマー溶液
42…触媒ペースト
93a…カソード触媒層
92a…アノード触媒層
90…MEA(膜電極接合体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のカソード極やアノード極といった電極を構成する触媒ペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図12に示すような膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)90を用いた燃料電池システムが知られている。このMEA90は、ナフィオン(登録商標、Nafion(Du pont社製))等の固体高分子膜からなる電解質膜91と、この電解質膜91の一面に接合されて空気が供給されるカソード極93と、電解質膜91の他面に接合されて水素等の燃料が供給されるアノード極92とを有している。
【0003】
カソード極93は、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等のガス透過性のある基材と、この基材の一面に形成されたカソード触媒層93aとからなる。カソード極93におけるカソード触媒層93a以外の部分は基材によって構成されており、ここは非電解質側でカソード触媒層93aに空気を拡散するカソード拡散層93bとされている。
【0004】
また、アノード極92も、上記基材と、この基材の一面に形成されたアノード触媒層92aとからなる。アノード極92におけるアノード触媒層92a以外の部分も基材によって構成されており、ここは非電解質側でアノード触媒層92aに燃料を拡散するアノード拡散層92bとされている。
【0005】
カソード触媒層93aやアノード触媒層92aは、図13に示すように、ほぼ球形のカーボン担体81aに白金(Pt)等の触媒微粒子81bを担持してなる無数の触媒81と、各触媒81を互いに結合するとともに図示しない基材に結合する高分子電解質82とを含むものである。高分子電解質82としては電解質膜91と同様のものが用いられ、高分子電解質82はアイオノマーとして機能していると考えられている。
【0006】
そして、このMEA90を図示しないセパレータで挟むことにより最小発電単位である燃料電池のセルが構成され、このセルが多数積層されて燃料電池スタックが構成される。カソード触媒層93aには空気供給手段によって空気が供給され、アノード触媒層92aには水素供給手段等によって水素等が供給されるようになっている。こうして燃料電池システムが構成される。
【0007】
このMEA90では、図14に示すように、アノード触媒層92aにおける電気化学的反応により、燃料から水素イオン(H+;プロトン)と電子とが生成される。そして、プロトンは水分子を伴ったH3O+の形で電解質膜91内をカソード触媒層93aに向かって移動する。また、電子は、燃料電池システムに接続された負荷を通り、カソード触媒層93aに流れる。一方、カソード触媒層93aにおいては、空気中に含まれる酸素とプロトンと電子とから水が生成される。このような電気化学的反応が連続して起こることにより、燃料電池システムは起電力を連続して発生することができる。
【0008】
この燃料電池システムの実用化のためには、より広い動作条件下で安定して発電できることが重要であるが、高分子電解質82は加湿された環境下でプロトンの導電性を持つ性質であるため、低湿度環境下ではイオン抵抗が上昇し、性能が低下するという問題点がある。
【0009】
この原因は、触媒81とアイオノマー溶液とを混合して触媒ペーストを調製する際、比較的撥水的である触媒81の表面にアイオノマー溶液の疎水基が配向し易い傾向となり、生成水等の水分を保持する能力が低い電極ができることにある。
【0010】
この対策として、触媒81にアイオノマー溶液を添加する前に十分多量の水を添加するとともに、自転/公転式遠心攪拌機で十分攪拌することにより、水を触媒81の内部に十分行き渡らせる親水化工程が有効である。この対策により、触媒81の表面をより親水的にすることができ、触媒81の表面にアイオノマー溶液の親水基をより多く配向させることが可能になる。この結果、発電時の生成水等が触媒81に保持され、低加湿環境での乾燥に強い電極を作製することができる(特許文献1、2)。
【0011】
具体的には、これらの製造方法では、第1工程として、チャンバー内に触媒81と水とを含む混合物を収容した後、チャンバーを公転させることによって混合物に遠心力を付与しつつ、チャンバーを自転させることによって混合物を自身の自重で撹拌する。これにより、各触媒81の表面から空気を強制的に追い出し、表面を水で覆われた状態にすることができる。この際、遠心力の付与及び撹拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いないことから、触媒担持カーボン同士の接触は阻害され難い。
【0012】
そして、第2工程として、第1工程で得られた混合物にアイオノマー溶液を混合し、触媒ペーストを得る。この際、各触媒81は水に対する濡れ性を有していることから、アイオノマー溶液は各触媒81側にアイオノマー溶液が有するプロトン交換基を配向させる。そして、図15に示すように、互いに接触する各触媒81とアイオノマー溶液との間に、水によって互いに連続する親水層83が形成された触媒ペーストが得られる。
【0013】
このため、この触媒ペーストを用いてカソード極93やアノード極92を製造すれば、それらのカソード極93やアノード極92は、図14に示すように、親水層83によってプロトンが移動し易い。また、高分子電解質82は、図15に示すように、その親水層83側にプロトン交換基を配向させているため、プロトンの移動に親水層83が有効に活用される。また、高分子電解質82の疎水性部分は空孔側に配向して空孔側が疎水性になるため、水が溜まり難く、ブラッディングが防止され、ガス拡散が阻害され難くなる。このため、燃料電池システムは、MEAのアノード極、電解質膜及びカソード極でH3O+が良好に移動し、高出力が得られる。
【0014】
また、特許文献3では、触媒81の上記親水化工程を定量的に規定した。すなわち、触媒微粒子81bの担持密度やアイオノマー溶液の混合量によらず、水の添加量を触媒81のカーボン担体81aの重量で一定値とした。具体的には、水倍率=(水の重量)/(触媒微粒子81bを除いたカーボン担体81aのみの重量)(H2O/C)が16以上27以下、20がその最適値であるとした。これにより、高出力をある程度安定して得られるMEAを得ることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−140061号公報
【特許文献2】特開2006−140062号公報
【特許文献3】特開2009−104905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、触媒の親水化工程において、最適値を含む過去の条件はカーボン担体の種類や粉砕状態によって変化することが判明した。このため、触媒に対する水の量の最適値をより正確に決めることが求められる。
【0017】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、低加湿状態で高出力をより安定して得られるMEAを得ることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明者らは、上記課題解決のために鋭意研究を行い、より正確に水の添加量の最適値を決定するパラメータとして粘度に着目し、触媒に水を混合したペーストの粘度測定を行い、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明の触媒ペーストの製造方法は、カーボン担体に触媒微粒子を担持してなる無数の触媒と、水とを混合し、プレペーストを得る第1工程と、
該プレペーストにアイオノマー溶液を混合し、触媒ペーストを製造する第2工程とを備えた触媒ペーストの製造方法において、
前記第1工程では、前記プレペーストが流動限界からスラリー状態までの範囲内の水分量のペースト状態となるように、前記触媒と前記水とを混合することを特徴とする(請求項1)。
【0020】
本発明の製造方法では、まず、第1工程において、無数の触媒と水とを混合してプレペーストを得る。この際、触媒に混合する水の量は、プレペーストが流動限界からスラリー状態までのペースト状態となる水量である。
【0021】
すなわち、粒子と水との混合物において、粒子と水との分散状態は、「スラリーの安定化技術と調製事例」(情報機構刊)に示されるように、4種類に分けられる。以下、上記の出典を基に説明する。図1に示すように、符号2が粒子を示し、符号3が水を示し、符号4が空気を示している。
【0022】
粒子2を上記の触媒に相当させる。粒子2に対して水3の量が少ない場合、図1の(A)に示すように、各粒子2の固相は連続した状態となり、水3の液相は不連続の状態となる。このため、粒子2同士の間に大きな空気4からなる気相が生じている。この状態はペンデュラ状態と呼ばれる。
【0023】
このペンデュラ状態に水3をさらに加え、粒子2に対する水3の量を多くすれば、図1の(B)に示すように、気相の割合が減少する。この状態はファニキュラ状態と呼ばれる。ファニキュラ状態では、水3の液相が連続した状態となるが、未だ空気4の気相が残存している。
【0024】
ファニキュラ状態から、さらに水3の量を多くすれば、図1の(C)に示すように、粒子2と水3との混合物は塑性限界を超える。この状態はキャピラリ状態と呼ばれる。キャピラリ状態では、各粒子2同士の間隙が水3に満たされた状態となる。すなわち、各粒子2の固相は不連続の状態となり、水3の液相は連続した状態であり、かつ空気4の気相が存在しない状態となる。
【0025】
このキャピラリ状態から、さらに水3の量を多くすれば、図1の(D)に示すように、各粒子2が水3の中に分散され、流動性を持つようになる。この状態はスラリー状態と呼ばれる。
【0026】
流動限界とは、混合物がキャピラリ状態からスラリー状態へと変化し、流動し始める水分含量の限界をいう。
【0027】
触媒の表面を単純に親水化するという目的であれば、触媒に対して過剰に水を混合することでもその効果を得ることが可能であると考えられる。しかしながら、触媒に対して過剰に水を混合した場合には、プレペースト中に余分な水が多くなる。その場合には、余分な水にも高分子電解質の親水基が配向するため、触媒と高分子との間に連続する親水層を形成することを阻害し、発電時の生成水を触媒近傍に保持する能力が損なわれ、低加湿環境で燃料電池システムの出力が低下し易くなるという逆効果が生じる。
【0028】
これに対し、触媒に混合する水の混合量を流動限界に基づいて規定し、プレペーストが流動限界近傍であるキャピラリ状態からスラリー状態に変化する水分状態とすることにより、水の混合量は、水により触媒表面を親水化しつつ、触媒と高分子電解質との間に連続する親水層を形成できる最少水分量となる。このため、第1工程で得られるプレペーストは、高出力を安定して得られるMEAを製造するための理想的な状態となる。
【0029】
そして、第2工程において、プレペーストにアイオノマー溶液を混合して触媒ペーストを得る。この状態では、各触媒は水に対する濡れ性を有していることから、アイオノマー溶液中の高分子電解質は、各触媒側に高分子電解質が有する親水基を配向させる。そして、互いに接触する各触媒と高分子電解質との間に水によって互いに連続する親水層が形成された本発明の触媒ペーストが得られる。
【0030】
このプレペーストとアイオノマー溶液とを混合して得られた触媒ペーストでは、互いに接触する各触媒と高分子電解質との間に水によって互いに連続する親水層が形成されている。このため、MEAにおいて、この親水層を伝ってプロトンが移動し易くなる。また、カソード触媒層やアノード触媒層中の触媒と高分子電解質との間において、高分子電解質が有する親水基を触媒側に配向させて水路を形成し、水路が触媒の全面に形成される。また、高分子電解質がその親水層側にアイオノマー溶液が有するプロトン交換基を配向させているため、プロトンの移動に親水層が有効に活用される。
【0031】
したがって、本発明の製造方法で得られた触媒ペーストによれば、低加湿状態で高出力をより安定して得られるMEAを製造することが可能になる。
【0032】
プレペーストのせん断速度と粘度との関係において、粘度をせん断速度に対して両対数でプロットしたときの近似直線を求め、流動限界は近似直線の傾きが−1となるペースト状態であり、スラリー状態は近似直線の傾きが−0.8となるペースト状態である(請求項2)。
【0033】
せん断速度に対する粘度の関係における近似直線の傾きが−1以上、すなわち、傾きが緩やかになるとともに流動性の高いスラリー状態になる。過剰な水分を含んだ状態はMEAの性能の低下を招くため、ペーストが流動限界からスラリー状態になる、すなわち、傾き−1〜−0.8の範囲となる水添加量が最適量となる。これにより理想的なプレペーストを得ることができる。プレペーストではこの近似直線の傾きにより必要最小限の水分添加量を規定することが重要である。一方、傾きが−1未満(傾きがきつくなる)のキャピラリ状態では混合物の流動性がなくなるため、混合時におけるエネルギーがより必要となり、水と触媒との攪拌が不十分となり易く、好適なプレペーストが得られる条件として適さない。
【0034】
本発明の触媒ペーストの製造方法において、第1工程では、混合物に摩擦力と粉砕力とを付与する混合機を用いることが好ましい(請求項3)。特許文献1、2に開示の自転/公転式遠心攪拌機は、公転と自転とによって良好な親水化工程を行っていたと解するが、混合物に摩擦力と粉砕力とを付与する点でも好ましいと考えている。第1工程においてこの混合機を用いることで、混合機による摩擦力と粉砕力とにより、各触媒におけるカーボン担体の内部にまで水を十分に行渡らせることができる。このため、触媒の表面をより親水的なものとすることができ、高出力をより安定して得られるMEAを容易に製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】粒子と水との分散状態を示す摸式図である。
【図2】実験例1に係り、プレペーストのせん断速度と粘度との関係を示すグラフである。
【図3】実験例1に係り、水倍率とせん断速度−粘度勾配との関係を示すグラフである。
【図4】実験例2に係り、プレペーストのせん断速度と粘度との関係を示すグラフである。
【図5】実験例2に係り、水倍率とせん断速度−粘度勾配との関係を示すグラフである。
【図6】実験例3に係り、プレペーストのせん断速度と粘度との関係を示すグラフである。
【図7】実験例3に係り、水倍率とせん断速度−粘度勾配との関係を示すグラフである。
【図8】実施例のカソード極を製造する製造方法を示す工程図である。
【図9】実施例の製造方法で用いた自転/公転式遠心攪拌機のチャンバーの模式図である。
【図10】実験例4に係り、実施例又は比較例のMEAを備えた燃料電池のセルにおいて、フル加湿状態における電流とセル電圧との変化を示すグラフである。
【図11】実験例5に係り、実施例又は比較例のMEAを備えた燃料電池のセルにおいて、低加湿状態におけるセル電圧比を示すグラフである。
【図12】従来及び実施例のMEAを示す摸式構造図である。
【図13】従来及び実施例のカソード触媒層又はアノード触媒層を示す模式拡大断面図である。
【図14】従来及び実施例のMEAの模式拡大断面図である。
【図15】図13のXV部分の模式拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
{検証1}
実施例のMEAを製造するにあたり、後述の第1工程で触媒に混合する水の水量の最適値について、以下の実験例1〜3による検証を行った。実験例1〜3では、触媒に混合する水の量の最適値を決定するパラメータとして、触媒と水とを含むプレペーストの粘度に着目し、プレペーストの粘度測定を行った。なお、粘度の測定においては、東機産業製RB80型粘度測定機を用いた。
【0037】
(実験例1)
実験例1では、触媒に混合する水の量を変化させてプレペーストの粘度を測定した。実験例1では、図13〜15に示す触媒81と同様、触媒として、ほぼ球形のカーボン担体(KB600JD、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)に担持密度60wt%でPt微粒子を担持したものを用意した。この触媒に混合される水の量は、触媒中からPt微粒子81bを取り除き、カーボン担体の重量に対する水の重量の比(H2O/C)で規定される。実験結果を図2及び図3に示す。
【0038】
図2は、横軸xにせん断速度(log(D[1/秒]))を示し、縦軸yに粘度(log(η[Pa・秒]))を示している。それぞれの水量における直線の関数式は以下のとおりである。
【0039】
H2O/C=19:y=−1.0934x+0.7264
H2O/C=20:y=−0.9226x+0.7341
H2O/C=22:y=−0.8156x+0.5516
H2O/C=26:y=−0.7314x+0.369
H2O/C=38:y=−0.7418x−0.0975
【0040】
このように、水量が少なくなると、プレペーストの粘度が増加するとともに、直線の傾きが−1に近づくことが分かる。これは、水量が少なくなると、カーボン担体同士の凝集が進むとともに、プレペーストの粘度が増大し、これにより直線の傾きがきつくなるためである。図2は、直線の傾きが−1より大きくなったプレペースト41が流動限界を超え、キャピラリ状態になったことを示唆している。
【0041】
図3は、H2O/C=19の水分量のプレペーストにおける水倍率(H2O/C)[g/g−C]とせん断速度−粘度勾配d(logη)/d(logD)との関係を示している。図5では、せん断速度−粘度勾配が−1を超えれば、流動限界であり、プレペーストが流動限界を超えたことを示している。図3に示すように、水倍率が20の近傍で勾配が−1となる。すなわち、この実験例1に用いた触媒では、水倍率20が最適値であると言える。
【0042】
(実験例2)
実験例2では、実験例1で用いた触媒と同じく、KB600JDに担持密度60wt%でPt微粒子81bを担持している触媒であるが、触媒とは製造元が異なる触媒を用いた。実験の方法等は実験例1と同様である。結果を図4及び図5に示す。
【0043】
図4に示す直線の関数式は以下のとおりである。
【0044】
H2O/C=27:y=−1.0436x+0.8981
H2O/C=28:y=−0.9077x+0.7343
H2O/C=31:y=−0.7585x+0.5736
【0045】
図5に示すように、これらのプレペーストでは、水倍率が27の近傍で勾配が−1を超えている。
【0046】
図4及び図5より、この実験例2に用いた触媒では、水倍率を28とすることで、プレペーストが流動限界に近くなる。すなわち、同じ担持密度60wt%のKB600JDを用いた触媒であっても、製造元が異なれば、最適水分量となる水量に差が生じることが分かる。
【0047】
(実験例3)
実験例3では、BP800(CABOT社製)にPt微粒子を担持密度20wt%で担持した触媒を用い、水倍率を変化させた場合のプレペーストの粘度を測定した。実験の方法等は実験例1と同様である。結果を図6及び図7に示す。
【0048】
図6に示す直線の関数式は以下のとおりである。
【0049】
H2O/C=3.2:y=−1.1138x+0.8268
H2O/C=3.5:y=−0.9418x+0.5033
H2O/C=4:y=−0.8924x+0.1093
H2O/C=5:y=−0.6826x−0.2232
【0050】
図7に示すように、これらのプレペーストでは、水倍率が3.2の近傍で勾配が−1を超えている。すなわち、この実験例3の触媒では水倍率3.5が最適水添加量となる。
【0051】
このように、実験例1に比べ、勾配が−1になる水量が実験例3の方が少ないのは、BP800の比表面積が実験例1におけるKB600JDのおよそ6分の1であることによる。すなわち、BP880の最適水量は、実験例1のおよそ6分の1となっている。
【0052】
各実験例1〜3により、各触媒に混合する水の量の最適値は、各触媒の種類、より詳細には、各触媒中のカーボン担体の種類や粉砕状況によって変化することが判明した。そして、プレペーストの流動限界を基に各触媒に混合する水の量を決定することが好ましいことがわかる。また、図2、図4及び図6に示す各直線の関数式によれば、各プレペーストの流動限界となる水量は直線の傾きが−0.8〜−1である。
【0053】
(実施例)
上記の検証結果を基に、図8に示す工程図に従って、実施例のMEAのカソード極を製造した。このカソード極は、図9に示す触媒ペースト42の製造方法を除き、図12に示す従来のカソード極93と同様のものであるので、同一の構成については同一の符号を付して説明する。
【0054】
この実施例で用いる触媒81は、実験例1と同様、カーボン担体81aとしてのKB600JDにPt微粒子81bを担持密度60wt%で担持したものである。
【0055】
まず、図8に示すステップS1において、1gの触媒81に対して8gの割合となる水量で触媒81と水3とを混合した(混合物40)。この水量は、上記の検証1の実験例1で得られた最適水添加量、すなわち、水倍率が20となっている。
【0056】
続くステップ2において、ステップS1の混合物40を攪拌し、プレペースト41を得る。この際、各触媒81の表面には親水基である水酸基が元々存在せず、各触媒81は濡れ性が悪いため、単に触媒81に水を添加するだけでは、各触媒81の表面に水が存在しない。このため、まず、図9に示すチャンバー35を有する自転/公転式遠心攪拌機(商品名「ハイブリッドミキサーHM−500」、キーエンス社製)を用意した。このチャンバー35は、容器35aと、この容器35aを封止する蓋35bとからなり、中心点O回りに高速で公転されるとともに、中心点Oから延びる自己の軸芯P回りに高速で自転され得るようになっている。このチャンバー35内に触媒81と水3とを含む混合物40を収容した。この後、チャンバー35を公転させることによって混合物40に遠心力を付与しつつ、チャンバー35を自転させることによって混合物40を自身の自重で攪拌した。こうして、各触媒81の表面から空気を強制的に剥がし、カーボン担体81aの隙間にも水3を充填させた。これにより、触媒81に水3に対する濡れ性が付与され、プレペースト41が得られた。この際、遠心力の付与及び攪拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いないことから、触媒81同士の接触を阻害することがない。また、自転/公転式遠心攪拌機が混合物40に摩擦力と粉砕力とを付与するため、各触媒81におけるカーボン担体81aの内部にまで水3を十分に行渡らせることができ、触媒81の表面をより親水的なものとすることができると考えている。ステップS1、S2が第1工程である。
【0057】
そして、図8に示すステップS3において、自転/公転式遠心攪拌機のチャンバー35内のプレペースト41に7gのアイオノマー溶液(ナフィオン溶液(5質量%溶液))82(図13〜15参照)を混合した。
【0058】
その後、図8に示すステップS4において、図9に示すように、チャンバー35を公転させることによってプレペースト41及びアイオノマー溶液82に遠心力を付与しつつ、チャンバー35を自転させることによってプレペースト41及びアイオノマー溶液82を自身の自重で攪拌した。こうして、プレペースト41及びアイオノマー溶液82から空気を強制的に剥がす。この際、各触媒81は水3に対する濡れ性を有していることから、アイオノマー溶液82中の高分子電解質としてのナフィオンは、各触媒81側に自身が有するスルホン基(SO3-)からなるプロトン交換基を配向させる。これにより、触媒81の表面に吸着した水3に強く配向した状態でナフィオンが形成される。こうして、発電時には互いに接触する各触媒81とナフィオンとの間に水3によって互いに連続する親水層83(図13〜15参照)が形成された触媒ペースト42が得られた。この工程においても自転/公転式遠心攪拌機によって攪拌を行っているため、遠心力の付与及び攪拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いない。このため、触媒81同士の接触が阻害され難い。また、自転/公転式遠心攪拌機による摩擦力と粉砕力とにより、触媒81とアイオノマー溶液82との間には、連続して形成される親水層83をより多く配向させることができると考えている。ステップS3、S4が第2工程である。
【0059】
図8に示すステップS5において、上記触媒ペースト42をガス拡散層基材に印刷し、カソード触媒層93a形成した。ガス拡散層基材は、カーボンクロス、カーボンペーパーなどの電子伝導性を有する基材の上に、カーボンブラックとPTFEとの混合物からなる撥水層を設けたものである。
【0060】
そして、ステップS6において、印刷後の基材を乾燥させてカソード極93を得た。アノード極92も同様に製造した。
【0061】
この後、アノード極92、電解質膜(ナフィオン、NRE212)91及びカソード極93の順でこれらを積層し、140°C、加圧力60kgfでホットプレスして接合した。こうしてMEAを得た。
【0062】
実施例のMEAでは、上記のステップS1〜4で得られた触媒ペースト42を用いている。このため、このMEAでは、アノード極92、電解質層91及びカソード極93の間でH3O+が良好に移動する。
【0063】
したがって、実施例の製造方法で得られた触媒ペーストを用いたMEAは、低加湿状態で高出力をより安定して得ることができる。
【0064】
{検証2}
次に、上記実施例で製造したMEAの電流及び電圧の特性を検証した。この検証では、MEAを備えたセルを用意して行った。
【0065】
(比較例)
また、比較例として、以下に示すMEAを製造し、このMEAを備えたセルを用意した。このMEAでは、実施例で使用した触媒81に対し、水倍率が30となる量の水3を混合してプレペースト41が得られている。他の条件は実施例と同様である。
【0066】
実施例と比較例とについて、触媒81に混合する水3の水量(水倍率)及び各プレペースト41の粘度−せん断直線の傾きを表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、実施例のプレペースト41の直線の傾きは−1以上、−0.8以下であり、実施例のプレペースト41は流動限界に近いことが分かる。これに対し、比較例のプレペースト41の直線の傾きは−0.8を超えており、より流動性が高くなっていることが分かる。
【0069】
(実験例4)
実験例4では、実施例のMEAを備えたセル及び比較例のMEAを備えたセルのそれぞれについて、セル温度を50°Cに設定し、湿度が100%RHの測定環境(以下、フル加湿状態という。)の下、各セルの電流及び電圧の変化を測定した。測定結果を図10に示す。
【0070】
図10では、横軸に電流(A)を示し、縦軸に電圧(V)を示している。また、実施例のMEAを備えたセルの電流と電圧との変化を実線で示し、比較例のMEAを備えたセルの電流と電圧との変化を破線で示している。図10が示すように、実施例のセル及び比較例のセルは、ともに15A未満の低電流領域での電圧の変化にはほとんど差が生じていない。しかし、15Aを超えた高電流領域での電圧は、実施例のセルが勝っている。
【0071】
(実験例5)
実験例5では、上記各セルの温度を70°Cに設定し、湿度40%RHの測定環境(以下、低加湿状態という。)において、電流密度0.7A/cm2の電流を連続して通電した場合の電圧を測定した。測定結果を図11に示す。
【0072】
図11では、フル加湿状態でのセルの電圧に対する低加湿状態でのセルの電圧比を示している。この図11が示すように、比較例のセルの電圧はフル加湿状態でのセルの電圧の80%を下回っているのに対し、実施例のセルの電圧はフル加湿状態でのセルの電圧のおよそ85%を維持している。つまり、実施例のセルは環境の変化による電圧の低下が少ないことが分かる。
【0073】
実験例4、5により、フル加湿状態及び低加湿状態のいずれの状態においても、実施例のMEAの方が比較例のMEAよりも電圧特性が高く、効果的であることが分かる。すなわち、高出力をより安定して発揮可能なMEAを製造するためには、触媒に対して混合される水3の量を正確に求めることが重要であることがわかる。
【0074】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、電気自動車等の移動用電源、あるいは据え置き用電源に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
81a…カーボン担体
81b…Pt微粒子(触媒微粒子)
81…触媒
3…水
41…プレペースト
82…アイオノマー溶液
42…触媒ペースト
93a…カソード触媒層
92a…アノード触媒層
90…MEA(膜電極接合体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン担体に触媒微粒子を担持してなる無数の触媒と、水とを混合し、プレペーストを得る第1工程と、
該プレペーストにアイオノマー溶液を混合し、触媒ペーストを製造する第2工程とを備えた触媒ペーストの製造方法において、
前記第1工程では、前記プレペーストが流動限界からスラリー状態までの範囲内の水分量のペースト状態となるように、前記触媒と前記水とを混合することを特徴とする触媒ペーストの製造方法。
【請求項2】
前記プレペーストのせん断速度と粘度との関係において、粘度をせん断速度に対して両対数でプロットしたときの近似直線を求め、
前記流動限界は前記近似直線の傾きが−1となるペースト状態であり、
前記スラリー状態は前記近似直線の傾きが−0.8となるペースト状態である請求項1記載の触媒ペーストの製造方法。
【請求項3】
前記第1工程では、混合物に摩擦力と粉砕力とを付与する混合機を用いる請求項1又は2記載の触媒ペーストの製造方法。
【請求項1】
カーボン担体に触媒微粒子を担持してなる無数の触媒と、水とを混合し、プレペーストを得る第1工程と、
該プレペーストにアイオノマー溶液を混合し、触媒ペーストを製造する第2工程とを備えた触媒ペーストの製造方法において、
前記第1工程では、前記プレペーストが流動限界からスラリー状態までの範囲内の水分量のペースト状態となるように、前記触媒と前記水とを混合することを特徴とする触媒ペーストの製造方法。
【請求項2】
前記プレペーストのせん断速度と粘度との関係において、粘度をせん断速度に対して両対数でプロットしたときの近似直線を求め、
前記流動限界は前記近似直線の傾きが−1となるペースト状態であり、
前記スラリー状態は前記近似直線の傾きが−0.8となるペースト状態である請求項1記載の触媒ペーストの製造方法。
【請求項3】
前記第1工程では、混合物に摩擦力と粉砕力とを付与する混合機を用いる請求項1又は2記載の触媒ペーストの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−100696(P2011−100696A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256459(P2009−256459)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
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