説明

触媒体、これを用いた空気清浄フィルター及び空気調和機

【課題】加熱することなく、人間が生活を営む通常の環境下において、空気中に混入した一酸化炭素等の有害ガスを効率よく除去することができ且つその機能が短時で劣化しない触媒体を提供する。また、このような触媒体を軽量で柔軟なフィルター基材に保持させてなる使い勝って性のよい空気清浄フィルターなどを提供する。
【解決手段】
核粒子13と、核粒子13上に形成された吸湿性を有する水分供給層14と、水分供給層14に付着された触媒物質粒子10とを有する触媒体1を、吸湿性を有するバインダー層14を介して不織布からなるフィルター基体21に付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的物質との化学反応を触媒する触媒物質を有する触媒体に関し、またこの触媒体を用いた空気清浄フィルター及びこのフィルターを用いた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素は、人体に極めて有毒であることが知られているが、近年、家屋の気密性が高くなっているため、換気が十分に行われない室内において石油やガスなどを用いた暖房器具や調理機器を使用した場合における一酸化炭素中毒が社会問題となっている。また、気密性の高い車内等で多数人がタバコを喫煙したなどの場合においても一酸化炭素濃度が異常に高まることがあり、このような場合においても一酸化炭素が悪影響を及ぼす。
【0003】
このような一酸化炭素は、酸素よりも約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすく、ヘモグロビンの4つある結合サイトのうち1つが一酸化炭素と結合したカルボキシヘモグロビンは、他のサイトに結合した酸素を放出しにくいという性質を持つ。このため、微量の一酸化炭素が人体に取り込まれた場合でも、酸素運搬能力が減少し人体が酸素欠乏状態になる。また、一酸化炭素とヘモグロビンの結びつきは非常に強く、結合後72時間くらいはその影響が持続するため、微量の一酸化炭素を吸入した場合であっても血液中の赤血球が増加する多血症(赤血球増加症)状態が引き起こされ、血栓等が生じる恐れがある。
【0004】
このように、空気中の一酸化炭素は、人体に深刻な影響を及ぼすが、一酸化炭素除去技術としては、貴金属触媒やホプカライト触媒用いて一酸化炭素分子を酸化し二酸化炭素等に変化させる技術がある。このうち、貴金属触媒を用いる従来技術にかかる一酸化炭素除去技術は、触媒活性を高めるために常時加熱しておく必要がある。このため、多大な消費電力を費やすとともに、熱に対する安全性を高めるために周囲を冷却する必要がある。それゆえランニングコストが高いという問題がある。
【0005】
他方、ホプカライト触媒を用いる方法は常温における一酸化炭素除去能力が高いことが知られているが、ホプカライト触媒は、湿気により数時間で活性を失う。このため、ホプカライト触媒を用いる方法は、日本のような湿度の高い地域での使用に適していない。
【0006】
以上から一酸化炭素を常温(約25℃)で効率よく除去でき、かつ長時間の使用によってもその活性が低下せず、しかもランニングコストの小さい一酸化炭素除去技術が求められている。
【0007】
ところで、一酸化炭素除去触媒に関する技術としては、下記特許文献1〜3が提案されている。
【特許文献1】特開2006−17425号公報
【特許文献2】米国特許第4991181号
【0008】
特許文献1は、ハニカム形状の基体に、親水性のゼオライトを担持させ、更に0.10〜0.20重量%の白金を担持させた触媒を、250℃〜400℃に加熱させて一酸化炭素を除去する技術である。この技術によると、効率的に一酸化炭素を除去できるとされる。
【0009】
しかし、この技術では、触媒を250〜400℃に加熱して一酸化炭素を除去しなければならない。このため、この触媒を使った一酸化炭素除去装置の温度が非常に高温となり、冷却機を取り付けなければ、安全に使用できないという問題がある。
【0010】
特許文献2は、シリカゲルなどに酸化スズなどを担持させ更にPtを担持させ、少量の水を加えることにより一酸化炭素を酸化除去する技術である。この技術によっても、効率的に一酸化炭素を除去できるとされる。
【0011】
しかしながら、この技術は、一酸化炭素除去性能が未だ十分でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは上記従来技術の問題点を鋭意研究した。その結果、PtやAu等の触媒物質の一酸化炭素酸化除去能力を高めるには、触媒物質近傍に積極的に水分を存在させるのがよいことを見出した。また、布製や樹脂製等の耐熱性に欠ける材質からなるフィルター基体にPtやAu等の触媒物質を含む触媒体を保持させるには、吸湿性バインダーを用いることが好ましいことなどを見出した。
【0013】
また、PtやAu等の貴金属触媒物質の一酸化炭素酸化除去能力を高めるには、貴金属錯体含有溶液を用い、250℃〜500℃程度の高熱をかけて貴金属錯体周辺の側鎖を断ち切り、貴金属イオンの凝集を経てナノ微粒子化するのが望ましいと共に、ナノ微粒子表面の酸化物等の不純物を除去するために、250℃〜500℃程度の高温で水素還元処理を行う必要があるが、従来より広汎に使用されている空気浄化用フィルターの素材は、紙、布、化学繊維などであり、これらのものは通常250℃を超える温度をかけると、焼失したり、熱軟化により形状が変化したりするので、貴金属触媒物質を紙や布や化学繊維などの素材に添着した後に活性化増強処理を行うことはできない。このため、従来技術では、一酸化炭素などの有害物質を常温(約25℃)で効率よく除去することのできる、使い勝って性のよい空気清浄フィルターを実現することはできないことを知った。
【0014】
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、一酸化炭素等の有害物質の除去率が高く、使用寿命の長い触媒体を提供することを目的とする。また、本発明の更なる目的は、室内や車内などの通常の生活環境で簡便に使用できる、軽量で使い勝って性のよい空気清浄フィルターを提供すること、およびこのようなフィルターを備えた空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための第一の発明は、吸湿性を備えた水分供給体と、前記水分供給体に接触保持された触媒物質と、を有する触媒体である。
【0016】
この構成によると、水分供給体が、空気などの環境雰囲気中に含まれる水分を吸収し、触媒物質の近傍に常に水分が存在する状態を作り出す。触媒物質の近傍に存在する水分は、触媒物質の一酸化炭素等に対する触媒活性を高めるように作用するため、触媒活性を高めるための加熱手段を設けなくとも、通常の室内環境において反応目的物質(例えば一酸化炭素)と他の物質(例えば酸素)とを効率よく反応させることができる。
【0017】
また、通常、空気中の水分は途絶えることがないので、ホプカライトを用いた従来技術のように、長時間の使用によって触媒活性が低下するといったことがない。よって上記構成によると、常に好適な触媒活性を維持させることができる。
【0018】
更に、触媒体を取り巻く環境雰囲気中に湿気が存在しない場合においては、例えば水分供給体に予め水分を吸湿させておけば同様な作用効果が得られる。更にまた、触媒体を取り巻く環境中に水分および反応物質(酸素、活性酸素、オゾン、過酸化水素など)が存在しない場合には、その環境中に加湿空気を添加するなどすれば、上記と同様な作用効果が得られる。
【0019】
ここで上記触媒物質は、気体中に含まれる反応目的分子と他の物質との反応を触媒する作用を有する物質を意味する。また、この触媒物質が触媒する対象となる反応目的物質の代表例は一酸化炭素である。ただし、第一の発明の適用対象はこれに限られるものではない。例えばトリメチルアミン、ホルムアルデヒド、メチルメルカプタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アンモニア、一酸化イオウ、硫化水素等の除去に対しても適用できる。
【0020】
上記課題を解決するための第二の発明は、核粒子と、前記核粒子上に形成された吸湿性を有する水分供給層と、前記水分供給層に付着された触媒物質と、を有する触媒体である。
【0021】
この構成では、核粒子と、前記核粒子上に形成された吸湿性を有する水分供給層が第一発明における水分供給体に相当するものとなる。この構成では、核粒子が水分供給層を支える核となっているので、水分供給体の作製が容易であり、任意の形状、大きさの水分供給体を作製できると共に、水分供給体の強度を高めることができる。また、この水分供給体は粒状であり、これに触媒物質を付着して触媒体を形成する。よって、触媒機能が高度に発揮される比表面積の大きい触媒体が得られる。また、このものは粒状であるので、広く一般の基材に対する適用が容易であり、その好ましい適用例の一つが本発明にかかる空気清浄フィルターである。
【0022】
上記第二の発明において、前記核粒子が、Al,Ti,Zr,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,及びZnから選ばれる群より少なくとも一種類以上の金属または金属酸化物からなる粒子である構成とすることができる。
【0023】
核粒子の形状・サイズを制御することにより、触媒体の粒径を制御することができるが、これらの金属または金属酸化物からなる核粒子であると、所望の粒子形状やサイズが得られるので、触媒活性が高く、適応性・利用性に優れた触媒体を実現し易い。
【0024】
また、貴金属ナノ微粒子からなる触媒物質を活性化した状態で担持体に担持させるには、貴金属錯体含有溶液を担持体に保持させた後、250〜500℃程度の高温で焼成・還元することにより、貴金属錯体の周辺側鎖を断ち切り貴金属イオンとし、更にこの貴金属イオン同士を凝集させる過程を経るのが望ましいが、上記核粒子が金属または金属酸化物からなる粒子は、耐熱性に優れているので、高温処理時に焼失したり破壊されたりすることがない点で好ましい。更に金属酸化物のうち、特に二酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)などが、成形性がよく、水分供給層であるシリカとの接着性もよいので好ましい。
【0025】
また、上記第二の発明においては、前記核粒子がセラミックス製の粒子である構成とすることができる。
【0026】
セラミックス製の粒子は上記核粒子同様、核粒子の形状・サイズの制御性および耐熱性に加え、構造的安定が高く軽量であるという点で有用性が高い。セラミックスとしては、シリカ, ゼオライト, BaTiO3, 窒化物(BN,AlN,SiN,TiN), SiC, 3AlO3・2SiO2(ムライト), Al2TiO5, B4C, フェライト, BeO, 黒鉛, Ca10(PO4)6(OH)2(アパタイト), CaO・SiO3(ワラステナイト), 2MgO・2Al2O3・5SiO2(コージェライト), Si6-2Al2O2N8-2(サイアロン)などが例示できる。
【0027】
ここで上記「核粒子」は、水分供給層を施す対象となる個別独立的に存在する個体を意味する。ここでいう「粒子」には、単一粒子の他、複数の粒子相互が凝集した二次粒子(凝集体粒子)や、種類の異なる粒子が凝集した混成粒子も含まれる。その形状は、通常、球状、楕円状、柱状、棒状、粒状などであるが、特定の形状に限定されない。
【0028】
上記第二の発明においては、前記水分供給層が、吸湿物質を含んでなるものであり、前記触媒物質が、粒子状であり、前記水分供給層の吸湿物質に直接接触している構成とすることができる。
【0029】
第二の発明における水分供給層は、吸湿性を有する物質のみで組成されていてもよいが、吸湿物質と他の物質とで組成されていてもよい。後者の場合、粒状触媒物質を吸湿物質に直接接触させる構成とすることにより、吸湿物質の有する水分を粒状触媒物質に確実に供給させることができる。よって、上記構成であると、触媒物質の触媒活性を確実に高めることができる。
【0030】
また、上記第二の発明においては、前記核粒子の最大直径が、0.02μm以上、10mm以下であり、前記水分供給層の平均厚みが、前記粒子状触媒物質の平均粒子径より薄い、構成とすることができる。
【0031】
触媒物質は水分供給層に保持され、かつその一部が水分供給層から外部に突出していることが好ましい。触媒物質の一部が外部に突出していると、環境雰囲気中の目的物質および気体と効率よく接触させることができるからである。上記構成では、水分供給層の平均厚みが、前記粒子状触媒物質の平均粒子径より薄く形成されるが、これにより、粒子状触媒物質の一部を確実に外部(環境雰囲気中)に突出させることができる。なお、水分供給層は、その平均厚みを好ましくは100nm〜10μmとするのがよい。
【0032】
また、上記構成では、前記核粒子の最大直径を、0.02μm以上、10mm以下とするが、0.02μm未満の粒子は作製し難いとともに微細過ぎて取り扱い性が悪い。その一方、10mmを超える粒子であると比表面積が過少となり、触媒体の触媒機能を十分に高められないと共に、フィルター基材などに保持させ難くなるので好ましくない。なお、核粒子は、取り扱い性、比表面積(触媒活性)、製造し易さなどの面から、その最大直径を好ましくは基体担持用で0.05μm以上、200μm以下、粒単体用で好ましくは200μm以上、5mm以下とし、更に好ましくは基体担持用で0.1μm以上、100μm以下、粒単体用で500μm以上、3mm以下とするのがよい。
【0033】
上記第一および第二の発明においては、前記吸湿物質の構成材料は、多孔質シリカ、多孔質アルミナ、親水性ゼオライト、シリカゲル、珪酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸メチル、セルロース系樹脂などが使用できるが、このうち特にシリカが好適に使用できる。シリカは平均細孔径や比表面積の異なるものが容易に作製でき、かつ吸湿力が強いので好ましい。
【0034】
また、上記第一および第二の発明においては、前記多孔質シリカの平均細孔径が2nm以上、50nm以下の多孔質シリカである構成とすることができる。
【0035】
また、上記第一および第二の発明においては、前記多孔質シリカの平均細孔径が2nmより大きく20nm以下であり、比表面積が100〜500m2/gである構成とすることができる。
【0036】
平均細孔径が2〜50nmのものは、一般にメソ孔と呼ばれ、このものは高湿度時に吸着した水分を低湿度時に放出する性質を有する。また、この細孔径であると細孔内に微粒子状の触媒微粒子(およそ1〜10nm)を存在させ易い。
【0037】
また、上記第一および第二の発明においては、前記多孔質シリカの平均細孔径が0.5nm〜2nmであり、比表面積が500m2/gより大きく1000m2/g以下である構成とすることができる。
【0038】
平均細孔径が2nm以下のものは、一般にミクロ孔と呼ばれ、このミクロ孔内に捕捉された水分は放出されにくい。よって、平均細孔径が2nm以下の多孔質シリカを用いると、触媒物質の近傍に常に水分が存在する状態を形成し易い。
【0039】
なお、ミクロ孔の場合、ミクロ孔内における分子拡散速度が遅いので、この点において一酸化炭素等の除去目的物質の除去効率を高めにくい。他方、メソ孔の場合、ミクロ孔よりも比表面積が小さいので、除去目的物質との反応場が少なくなる点において反応効率が悪くなる傾向がある。それゆえ、シリカの平均細孔径及び比表面積は、これらの利点欠点を勘案して実際の使用環境に適合するように設定するのが好ましい。例えば、湿度が低い環境下においては、ミクロ孔の割合が高い、例えばミクロ孔が50%以上、好ましくは60%以上の多孔質シリカを用いる。他方、日本のように高湿度環境となる環境下においてはメソ孔の割合の高い、例えばメソ孔が50%以上、好ましくは60%以上の多孔質シリカを用いる。また、あらゆる湿度環境に対応できるようにするためには、ミクロ孔、メソ孔を30〜70%の割合で併せ持つ多孔質シリカとする。
【0040】
また、上記第一および第二の発明において、前記触媒物質は、Pt、Au、Rh、Ag、Pd、及びIrからなる群より選択された少なくとも一種以上の金属粒子であり、且つその平均粒径が1nm以上、10nm以下である構成とすることができる。
【0041】
Pt、Au等の上記した金属は微細すぎると取り扱い性が悪くなり、10nmを超えると比表面積が過小になり単位質量当りの触媒力が不十分になる。平均粒径が1nm以上、10nm以下である金属粒子は十分な触媒活性を有する点で好ましく、特にPtからなるものが、粒状加工性に優れかつ一酸化炭素触媒活性に優れる点で好ましい。
【0042】
上記課題を解決するための第三の発明は、空気清浄フィルターにかかる発明であり、フィルター基体と、前記フィルター基体にバインダーにより付着された前記請求項1ないし10の何れかに記載の触媒体と、を有してなる。
【0043】
この構成であると、既に説明した本発明にかかる触媒体の作用効果が顕著に発揮される。この構成の更なる作用効果を説明する。
【0044】
貴金属ナノ微粒子からなる触媒物質をその機能(触媒機能)を障害しない状態で担持体に担持させるには、貴金属錯体含有溶液を担持体に付着させた状態で高温焼成・還元する必要がある。例えば、第二の発明においては、触媒物質粒子を多孔質シリカなどからなる水分供給体(広義の意味における担持体)に保持させるために、250℃〜500℃程度の温度で焼成・還元する。然るに、従来から使用されている一般的なフィルターは耐熱性を有しない。例えば、紙、布、樹脂などの柔軟で軽量な材料は、250℃以上の温度に耐えられない。よって、これらの材料からなるフィルターに直接触媒物質を保持させることができない。
【0045】
ここにおいて、上記第三の発明にかかる空気清浄フィルターは、バインダーを介して触媒体をフィルター基体に付着させた構造を採用し、触媒物質は触媒体の構成成分となっている。よって、触媒物質を直接フィルター基体に保持させる必要がないので、高温熱処理が必須とならない。つまり、耐熱性に劣るフィルター基体をも使用できる。
【0046】
なお、上記第三の発明における「付着」は、狭義の意味における付着ではなく、結着や接着をも含む広い概念で使用されている。
【0047】
上記第三の発明においては、前記フィルター基体が非金属製繊維からなるものとすることができる。また、前記非金属製繊維からなるフィルターとして、不織布からなるフィルターを用いることができる。
【0048】
上記したごとく、第三の発明にかかる空気清浄フィルターは高温での熱処理を必須としないので、金属製繊維に比べ耐熱性の劣る非金属製繊維をフィルター基体材料として使用することができ、更に天然繊維や合成繊維からなる不織布をフィルター基体とすることができる。不織布は、結節点を有しないので、空隙率が高いという利点を有し、天然繊維や合成繊維からなる不織布は軽量で柔軟性に富むという利点を有する。したがって、このような不織布からなるフィルター基体に、触媒活性が高い本発明にかかる触媒体を付着させると、柔軟性を備え、軽量で通気性がよく、かつ一酸化炭素除去能力に優れ、しかも常に好適な一酸化炭素除去能力を発揮し得る空気清浄フィルターを実現することができる。このフィルターは、設置や取替えにおける使い勝手性に優れる。
【0049】
上記第三の発明において、前記触媒体が触媒体粒子群からなり、当該触媒体粒子群は、前記フィルター基体上に形成されたバインダー層より露出した構成とすることができる。
【0050】
触媒体は一酸化炭素を含む気体に接触してその機能を発揮するものであるので、一酸化炭素を含む気体に接触し易いことが望まれる。上記構成では、触媒体である触媒体粒子群がバインダー層より露出しているので、その触媒機能が確実に発揮される。なお、ここで言う「露出」は粒子の一部分のみの露出を含む概念である。
【0051】
また、上記第三の発明において、前記触媒体が、触媒体粒子群からなり、当該触媒体粒子群の平均粒径が、前記フィルター基体上に形成されたバインダーからなる層の平均厚みの1倍を超える構成とすることができる。
【0052】
触媒体粒子の粒径がバインダー層の厚みの1倍を超えれば、触媒体粒子がバインダー層に埋もれてしまうことがない。したがって、この構成であると、触媒体の触媒機能が確実に発揮され、所期の目的が確実に達成できる。具体的には、触媒体粒子の平均粒径を測定し、適宜バインダー溶液調整および処理時間の調節を行い、バインダー層厚さが触媒体粒子の平均粒径より小さくなるよう塗着し、触媒体粒子を散布後加圧する、あるいは加圧して堆積させる等して担持させる。このようなことから、触媒体粒子群の平均粒径をバインダー層の平均厚みの1倍以上、好ましくは100倍以下、より好ましくは2倍以上、10倍以下とするのがよい。
【0053】
上記第三の発明においては、前記バインダーが、吸湿性バインダーである構成とすることができる。
【0054】
既に説明したように、貴金属触媒からなる触媒物質の近傍に水分が存在すると、触媒活性が高まるが、触媒体を付着させるバインダー自体に吸湿性があると、バインダーが吸湿した水分が触媒体に供給される。よって、一層確実に、触媒物質の近傍に常に水分が存在する好都合な状態を作り出すことができる。
【0055】
また、吸湿性バインダーを用いる上記構成において、前記吸湿性バインダーが、平均細孔径が2nm以上、50nm以下の多孔質シリカである、とすることができる。
【0056】
平均細孔径が2nm以上、50nm以下の多孔質シリカは、前述したような調湿または吸湿効果に加え、水分供給層と同等の物質であるため、吸湿性バインダーとして都合よく機能する。
【0057】
また、吸湿性バインダーを用いる上記構成において、前記吸湿性バインダーが、多孔質アルミナ、親水性ゼオライト、シリカゲル、珪酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸メチル、及びセルロース系樹脂からなる群より選択される物質である、とすることができる。
【0058】
多孔質アルミナは、メソポーラスシリカと同様、水分の吸着と放出による調湿作用をもっており、比表面積も大きく、触媒体を存在させるのに好都合である。シリカゲルおよび親水性ゼオライトは吸湿性が高く、比表面積も大きいので、本発明におけるバインダーとして好適に使用できる。なお、ポリビニルアルコール、ポリアミド、親水性アクリル樹脂およびセルロース系樹脂は、本来の性質である結着性に優れ、かつ吸湿性を持つため、本発明におけるバインダーとして採用することができるが、触媒体が完全に埋没しないようにバインダー厚さを制御する必要がある。
【0059】
また、吸湿性バインダーを用いる上記構成において、前記吸湿性バインダーが、表面に親水化処理を施した多孔質材料からなるものである、とすることができる。
【0060】
表面に親水化処理を施した多孔質材料とは、例えば、特開昭62−116644、特開平7−315820、特許公開平10−18445、特開2003−64207にて開示されているような材料が挙げられる。また、表面に親水化処理を施した多孔質材料は、触媒体の吸湿性物質と相性がよいので、フィルター基体に触媒体を確実に付着させることができる。
【0061】
以上で説明した第三発明群にかかる空気清浄フィルターは、次の構成を備える製造方法により製造することができる。
【0062】
すなわち、不織布からなるフィルター基体と、前記フィルター基体にバインダーにより付着された前記請求項1ないし10の何れか1項に規定された触媒体と、を有してなる空気清浄フィルターを製造する方法であって、バインダーを含む水溶液に、前記請求項1ないし10の何れか1項で規定された触媒体粒子群を入れ混合してバインダー触媒体溶液を作製する工程と、前記バインダー触媒体溶液に不織布を浸漬する不織布浸漬工程と、
前記不織布浸漬工程の後、バインダー触媒体溶液が付着した不織布の布面に気体を通過させて孔通しする孔通し工程と、前記孔通し工程の後、前記不織布を250℃以下の温度で乾燥する乾燥工程と、を備える製造方法によって製造することができる。
【0063】
また、不織布からなるフィルター基体と、前記フィルター基体にバインダーにより付着された前記請求項1ないし10の何れか1項に規定された触媒体と、を有してなる空気清浄フィルターを製造する方法であって、バインダーを含む水溶液を不織布に塗布する工程と、前記バインダーを含む水溶液が塗布された不織布に、前記請求項1ないし10の何れか1項で規定された触媒体粒子群を配置し、不織布表面を加圧する触媒体付着工程と、前記触媒体付着工程の後、前記不織布の布面に気体を通過させて孔通しする孔通し工程と、前記孔通し工程を経た不織布を、250℃以下の温度で乾燥する乾燥工程と、を備える製造方法によって製造することができる。
【0064】
上記構成において、前記触媒体付着工程における加圧は、前記不織布表面に加圧気体をブローすることによる加圧とすることができる。また、前記不織布表面に押圧部材を押し当てることによる加圧とすることができる。
【0065】
また、前記不織布としてポリエステル製不織布を用いることができる。
【0066】
上記各構成の製造方法においては、気体を通過させて孔通しする孔通し工程を有するが、この工程によりバインダーや触媒体粒子群による目詰まりが防止される。よって、上記製造方法によると、開口率の大きい空気清浄フィルターを製造することができる。
【0067】
ここで気体としては、N2、He、Ar等の不活性ガスを好適に使用することができる。また、押圧部材としては、平坦面を有する部材、例えば平板などを用いることができる。
【0068】
上記各構成の製造方法において、前記触媒体として300℃以上、500℃以下の温度で焼成処理されたものを使用することができる。
【0069】
300℃以上、500℃以下の温度で焼成処理された触媒体は触媒活性が高いので、一酸化炭素除去効率に優れた空気清浄フィルターとなすことができる。
【0070】
上記課題を解決するための第四の発明は、請求項11ないし19のいずれかに記載の空気清浄フィルターが用いてなる空気調和機である。
【0071】
請求項11ないし19のいずれかに記載の空気清浄フィルターが用いた空気調和機は、室内や車内の一酸化炭素除去の除去と空気浄化に好適に使用することができる。なお、ここでいう空気調和機には、一酸化炭素除去することのできる、空気清浄機、除湿機、加湿器、エアーコンディショナー等も含まれる。
【発明の効果】
【0072】
以上に説明したように、第一および第二の本発明によると、室内等の常温環境下において反応目的物質(例えば一酸化炭素)と他の物質(例えば酸素)とを高効率で反応させることができる触媒体を提供することができる。また、この触媒体を必須構成要素とする第三の本発明によると、フィルターの設置や取替え等における使い勝って性がよく、しかも空気中に混入した一酸化炭素を高効率で除去することのできる空気清浄フィルターを提供することができる。また、このような空気清浄フィルターを必須構成要素とする第四の本発明によると、一酸化炭素除去性能に優れた空気調和機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
本発明を実施するための最良の形態について、水分供給体の構成要素である水分供給層を形成する材料としてシリカを用い、核粒子として二酸化チタン粉末を用い、触媒物質として白金粒子を用いた場合を例として、説明する。
【0074】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる触媒体の構造を図1に示す。図1に示す触媒体1は、核粒子13の表面に水分供給層が形成され、この水分供給層14に触媒物質粒子10が付着された構造である。この構造の触媒体においては、核粒子13とその表面を覆う水分供給層14で水分供給体12が構成される。
【0075】
この実施の形態1では、上記核粒子13には平均粒子径が10μmである球形の二酸化チタン粉末(TiO2)が使用され、水分供給層にはメソポーラスシリカ(平均細孔4.54nm、比表面積364m2/g)が使用されている。また、触媒物質粒子10には、平均粒径が2nmの白金粒子が使用されている。
【0076】
次に、実施の形態1にかかる触媒体の具体的製造方法を説明する。
〔水分供給体の作製〕
≪ケイ酸ナトリウム溶液の調整≫
ビーカに脱イオン化した蒸留水を入れ、これにケイ酸ナトリウム溶液を溶解させ、濃度が0.08〜0.15mol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を作製する。この時のケイ酸ナトリウム水溶液の温度は20〜30℃であることが好ましい。
【0077】
≪強酸性イオン交換樹脂の添加≫
ケイ酸ナトリウム水溶液に、pH1が2.68〜3.60になるまで、H+型強酸性イオン交換樹脂を加える。ここで、pH1とは、強酸性イオン交換樹脂によるイオン交換終了時の水溶液のpHのことをいい、このpH1によってナトリウムイオンと交換されたH+とOH―-との中和反応の進行度、つまりナトリウムイオンの交換度合いを知ることができる。H+型強酸性イオン交換樹脂としては、24時間以上蒸留水に浸したものを使用することが好ましく、より好ましくは24時間以上蒸留水に浸した後、60メッシュ以下のふるいにかけて分別し、ふるいを通ったもののみを使用するのがよい。
【0078】
≪強酸性イオン交換樹脂の除去≫
ケイ酸ナトリウム水溶液のpH1が2.68〜3.60にした時点で、H+型強酸性イオン交換樹脂を加えるのを止め、ふるいでビーカ中の強酸性イオン交換樹脂を取り除く。なお、強酸性イオン交換樹脂を取り除くと、重合(ゲル化)が進行し、これに伴いpH1は少しずつ上昇する。
【0079】
≪核粒子の投入・分散≫
核粒子として、平均粒子径が10μmの二酸化チタン粉体を用意し、これを上記ケイ酸ナトリウム水溶液に加え、超音波を用いて二酸化チタン粉体を分散させる。
【0080】
≪メソポーラスシリカ層の形成≫
上記二酸化チタン粉体分散ケイ酸ナトリウム水溶液に、pH2が7.20〜9.30になるまで、NH3水溶液を加え、pH2が7.20〜9.30になった時点で、NH3水溶液を加えるのを止めた。これによりシリカゾル溶液が調製される。ここで、pH2は、NH3水溶液添加後の水溶液のpHのことをいい、このpH2によって多孔質シリカの細孔径を調整することができる。
【0081】
次に、上記溶液を放置し沈殿物が生成した段階で、沈殿物を濾別し、凝結しないように乾燥した。これにより二酸化チタン粒子(核粒子13)の表面にメソポーラスシリカ(水分供給層14)が形成された水分供給体12が得られた。この工程において、乾燥時に沈殿物が凝結してしまったなどの場合には、凝結物を粉砕する。これによっても二酸化チタン粒子群の表面がメソポーラスシリカで被覆された水分供給体12が得られる。なお、pH2に調整する工程は、メソポーラスシリカ層を形成する場合には必要であるが、ミクロポーラスシリカ層を形成する場合には必ずしも必要でない。
【0082】
≪触媒物質粒子の付着≫
上記水分供給体に対し、平均粒径が2nmのPt(触媒物質粒子)を質量比30:1の割合で付着させた。付着方法としては、Pt等の触媒物質粒子(粒子の集合群である粉末を使用)を水に分散し、この分散液に上記水分供給体12(水分供給体の集合群である粉末を使用)を浸漬した。この際、分散液用の溶媒としては、水、アルコール、又はこれらの混合液などを用いることができる。また、水分供給体12に対する触媒物質粒子10の付着量は、分散液のPt等の微粒子の量を変化させることにより調整することができる。
【0083】
上記浸漬の後、約400℃で乾燥・焼成・還元処理を行ない、実施の形態1にかかる触媒体1を作製した(図1参照)。このものは、平均粒径10μmの球形二酸化チタン粒子(核粒子13)の表面に、平均細孔径4.54nm、比表面積364m2/g、層厚2μmの多孔質シリカ層(水分供給層14)が被覆され、更にこの多孔質シリカ層に平均粒径2nmの白金粒子(触媒物質粒子10)が付着した構造であった。
【0084】
上記における乾燥・焼成・還元処理温度としては、通常、250℃を超え700℃以下の温度とし、好ましくは300〜500℃の温度の温度とする。300〜500℃の温度であると、触媒活性が顕著に向上するので好ましい。他方、250℃以下の温度であると、焼成・還元が不十分になり、700℃を超える温度であると、触媒物質粒子の集合凝結が生じて、触媒機能が低下するので好ましくない。
【0085】
上記比表面積、細孔径、核粒子の粒径、水分供給層の厚み、触媒物質の粒径は、次のようにして求めた。比表面積は、自動ガス吸着装置(日本ベル社製、BELSORP MINI)を用いて窒素吸脱着等温線を測定し、この吸脱着等温線に対しBETプロットを加えて、BET比表面積(m2/g)を算出する方法によった。
【0086】
平均細孔径は、上記の窒素吸脱着曲線にt−plot法を適用して細孔容量を求める方法により算出した。
【0087】
核粒子の粒径および水分供給層の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6400F)による直接観察により測定した。触媒体粉末をエポキシ樹脂等でディスク状に固め、CROSS−SECTION POLISHER(日本電子製、SM−09010)によって研磨して断面出しを行い、断面観察法およびEDX元素分析法によって核粒子、水分供給層を特定し、それぞれの粒径または厚さを求めた。
【0088】
触媒物質の粒径は、走査透過型電子顕微鏡(FEI製、Tecnai F20)による直接観察により測定した。触媒体粉末を乳鉢ですりつぶし、その粉体をCuマイクロメッシュ上に付着させ、STEM−EDX法により触媒物質を特定し観察することにより粒径を求めた。
【0089】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる触媒体1の構造図を図2に示す。実施の形態2に係る触媒体は、実施の形態1と異なり核粒子を有しないので、水分供給体12がメソポーラスシリカのみで形成されている。また、触媒微粒子には、平均粒径が2nmの白金粒子が使用されている。具体的な製造方法については以下のとおりである。
【0090】
まず、≪ケイ酸ナトリウム溶液の調整≫、≪強酸性イオン交換樹脂の添加≫および≪強酸性イオン交換樹脂の除去≫に関しては実施の形態1で説明された方法と同様に行う。そうして得られたケイ酸ナトリウム水溶液にpH2が7.20〜9.30になるまで、NH3水溶液を加え、pH2が7.20〜9.30になった時点で、NH3水溶液を加えるのを止める。上記溶液を放置し沈殿物が生成した段階で、沈殿物を濾別し乾燥させ、バルク状のメソポーラスシリカが得られた。このバルク状シリカを粉砕しすりつぶすことで平均粒径10μmの微粒子とした。この微粒子に、実施の形態1で既に述べた≪触媒物質粒子の付着≫の手順に従い白金粒子を担持させた。
【0091】
以上のようにして、実施の形態2にかかる触媒体1を作製した(図2参照)。このものは、平均細孔径4.54nm、比表面積364m2/g、平均粒径14μmの球形メソポーラスシリカ粒子(水分供給体12)の表面に平均粒径2nmの白金粒子(触媒物質粒子10)が付着した構造であった。
【0092】
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる触媒体は、実施の形態1と同様の構造であるが(図1参照)、核粒子の粒径がマクロサイズ(2mm)となっている。このようなサイズにすることで、触媒体を基体に固着させることなく粒単体で触媒として用いることができ、かつ気体透過時の圧力損失が粉体状のものに比べて小さいので、取り扱い性に優れる。
【0093】
製造方法としては、球形二酸化チタン(核粒子13)を粒径10μmのものから2mmのものに変えたこと以外は上記実施の形態1と同様な方法で触媒体1を作製した。このものは、平均粒径2mmの球形二酸化チタン粒子(核粒子13)の表面に、平均細孔径4.54nm、比表面積364m2/g、層厚2μmの多孔質シリカ層(水分供給層14)が被覆され、更にこの多孔質シリカ層に平均粒径2nmの白金粒子(触媒物質粒子10)が付着した構造であった。触媒体の性能比較のために、水分供給層を有しない以下に示す比較例1及び比較例2の触媒体を準備した。
【0094】
(比較例1)
比較例1として、平均粒径10μmの球形二酸化チタン粒子と、その粒子上に担持された、平均粒径2nmの白金粒子とを有してなる触媒体を作製した。
【0095】
(比較例2)
比較例2として、平均粒径2mmの球形二酸化チタン粒子と、その粒子上に担持された、平均粒径2nmの白金粒子とを有してなる触媒体を作製した。なお、上記比較例1,2は水分供給層を有しない。
【0096】
≪各種触媒体の性能≫
実施の形態1〜3にかかる触媒体(実施の形態1〜3とする)および比較例1、2の室温における一酸化炭素除去性能を、ワンパス試験を行い評価した。ワンパス試験の概要を図8に示す。
【0097】
図8に示す固体粒子タイプ試験ホルダー(内径10mmφ、長さ25mmの円柱状のステンレス製チャンバー)内に石英ウールに保持させた触媒体を充填した。この試験ホルダーに一酸化炭素を含む空気を流通させ、流通後の一酸化炭素濃度を測定することにより、一酸化炭素除去率を算出した。試験温度は25℃(室温)とし、触媒体の量は100mg、流通させる空気の一酸化炭素濃度は100ppm、湿度は50%、空間速度(SV値)は244,000hr-1の条件で行った。この結果を下記表1に示す。
【0098】

【表1】




【0099】
上記表1から、実施の形態1〜3は、一酸化炭素除去率が95〜40%と、比較例1〜2の20〜5%よりも高いことが確認された。
【0100】
このことは、次のように考えられる。白金触媒の一酸化炭素酸化除去触媒活性は、白金の周囲に水分が多いほど高まる。実施の形態1〜3では、白金が吸湿性の多孔質シリカからなる水分供給層に担持されているのに対し、比較例1、2は水分供給層を有しない。よって、実施の形態1〜3は、水分供給層を有していない比較例1、2よりも周囲の水分量が多く、触媒物質の活性が高まる結果、一酸化炭素除去率が向上したと考えられる。
【0101】
また、触媒体の大きさは概ね、実施の形態3(=比較例2)>実施の形態2>実施の形態1(=比較例1)であるところ、一酸化炭素除去率%は比較例2、比較例1、実施の形態3、実施の形態2、実施の形態1の順に良くなっている。このことから、触媒体の平均粒径を小さくすると、一酸化炭素除去率%が向上することがわかる。この理由は、触媒体の平均粒径を小さくすると、白金触媒の存在する領域の面積が大きくなるためであると考えられる。
【0102】
なお、上記表1に示すように実施の形態1、2は同程度の一酸化炭素除去率を示したが、核粒子を使用しない実施の形態2は、実施の形態1に比較し球状の水分供給体12を形成しにくかった。
【0103】
(実施の形態4)
実施の形態4にかかる空気清浄フィルターの構造図を図3に示す。実施の形態4では、実施の形態1で作製した核粒子を有する触媒体を用い、バインダー層22としてメソポーラスシリカを用い、フィルター基体21としてポリエステル製の不織布を用いることで空気清浄フィルター20を作製した。以下その詳細を説明する。
【0104】
≪フィルターの作製≫
フィルター基材として、ポリエステル製の不織布(目付112g/m2、厚さ1mm)を用意した。上記実施の形態1に記載の≪ケイ酸ナトリウム溶液の調整≫、≪強酸性イオン交換樹脂の添加≫および≪強酸性イオン交換樹脂の除去≫と同様にしてケイ酸ナトリウム水溶液を調整する。この水溶液100mLに対して上記実施の形態1に記載の触媒体5gの割合で入れ混合機で攪拌して、触媒体分散シリカゾル溶液を調製した。この溶液にポリエステル製不織布を十分に浸漬した。この後引き上げ、窒素ブローにより基体不織布の通気性を確保した後、150℃で乾燥した。
【0105】
このようにして作製した空気清浄フィルターを走査型電子顕微鏡で観察したところ、触媒体の平均粒径は14μm、バインダー層の厚さは30μmであり、図3に示すような構造であることが確認された。すなわち、この空気清浄フィルターでは、触媒体1がバインダー層22に埋まった状態になっていた。また、触媒体1とバインダー層22の間には粒界がみられた。これは、触媒体1とバインダー層22が溶融せず、それぞれ独立した存在として接着されていることを意味している。
【0106】
(実施の形態5)
上記実施の形態2で作製した核粒子を有しない触媒体を用いたこと以外は、上記実施の形態4と同様にして実施の形態5の空気清浄フィルターを作製した。この実施の形態5で用いた触媒体は、核粒子を有しない点で上記実施の形態4と相違し、その他の点については上記実施の形態4と同様である。
【0107】
(対照例3)
バインダー層の構成材料をシリカからハイシリカゼオライトに代えたこと以外は上記実施の形態4と同様にして対照例3にかかる空気清浄フィルターを作製した。この対照例3は、上記実施の形態1で作製した核粒子を有する触媒体が使用されているが、空気清浄フィルターの重要構成要素であるバインダー層の特性が異なる。すなわち、上記実施の形態4のバインダー層は親水性物質であるシリカで構成されているが、対照例3では、疎水性のハイシリカゼオライトで構成されている。ハイシリカゼオライトは多孔体ではあるが、気体中の水分をほとんど吸湿しない点でシリカと性質が異なる。
【0108】
≪各種空気清浄フィルターの性能比較≫
上記実施の形態4、5、及び対照例3の空気清浄フィルターについて、一酸化炭素除去性能をワンパス試験で評価した。
【0109】
測定方法は概ね上記実施の形態1〜3における場合と同様であるが、ここでは固体粒子タイプ試験ホルダーの代わりに、試験ホルダーに直径50mmの円形に裁断した空気清浄フィルターを挟み込み込んだディスク状フィルタータイプ試験ホルダーを用いた(図9)。このディスク状フィルタータイプ試験ホルダーに、一酸化炭素を含む空気を流通させ、流通後の一酸化炭素濃度を測定することにより、一酸化炭素除去率を算出した。
【0110】
試験温度は25℃(室温)とし、流通させる空気の一酸化炭素濃度は100ppm、湿度は50%、空間速度(SV値)は400,000hr-1の条件にて行った。この結果を下記表2に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
上記表2から、実施の形態4〜5は、一酸化炭素(CO)除去率が90〜87%と、対照例3の40%よりも高いことが確認された。
【0113】
このことは、次のように考えられる。前述したように、白金触媒の一酸化炭素酸化除去触媒活性は、白金の周囲に水分が多いほど高まる。実施の形態4〜5は、触媒体が吸湿性の多孔質シリカからなる吸湿性バインダー層に担持されており、水分供給層だけでなく、バインダー層にも水分が貯蔵されるので、疎水性のバインダー層を用いた対照例3に比較し触媒物質粒子の周囲により多くの水分量が存在し得る。それゆえ、実施の形態3〜4の方が、比較例よりも高い触媒活性を発揮し、その結果として一酸化炭素除去率が高まったものと考えられる。
【0114】
(実施の形態6)
実施の形態6にかかる空気清浄フィルターの構造図を図4に示す。実施の形態6では、上記実施の形態4と同一のポリエステル製不織布を用い、触媒体を分散していないメソポーラスシリカゾル溶液に浸漬し、その両面に上記メソポーラスシリカゾル溶液を十分な厚さに塗着した。この後、この不織布上のメソポーラスシリカゾル層が湿潤状態である間に、実施の形態1で作製した核粒子を有する触媒体を散布した。
【0115】
散布は、粉末ふるい用のメッシュフィルター上に触媒体を適量置き、フィルター下部にメソポーラスシリカゾル層の付着した不織布を配置し、メッシュフィルター上部から窒素ブローを行う方法により、窒素ブローによる風圧にて触媒体をメソポーラスシリカゾル層に付着させた。この際、不織布表面積に対し触媒体の質量が1.8mg/cm2となるようにした。この後さらに窒素ブローし、基体不織布の通気性を確保し、その後150℃で乾燥した。
【0116】
このようにして作製した空気清浄フィルターを走査型電子顕微鏡で観察したところ、触媒体の平均粒径は14μm、バインダー層の厚さは30μmであり、図4に示すような構造であることが確認された。すなわち、この空気清浄フィルターでは、触媒体1はバインダー層22から外部に露出した状態でバインダー層22に付着されていた。
【0117】
(実施の形態7)
実施の形態7にかかる空気清浄フィルターの構造図を図5に示す。実施の形態7では、実施の形態1で作製した核粒子を有する触媒体を用い、ポリビニルアルコールをバインダーとして用いて空気清浄フィルターを作製した。以下その詳細を説明する。
【0118】
先ず走査型電子顕微鏡を用いて、実施の形態1で作製した核粒子を有する触媒体の平均粒径を測定した。その結果、この触媒体の平均粒径は14μmであった。そこで、バインダー層22(ポリビニルアルコールバインダー層)の厚みが7μmになるように、上記ポリエステル製の不織布の両面に上記ポリビニルアルコール含有溶液を塗布した。この後、不織布のポリビニルアルコールバインダー層に実施の形態1にかかる触媒体1を散布した。散布は、粉末ふるい用のメッシュフィルター上に触媒体を適量置き、フィルター下部にポリビニルアルコールバインダー層の付着した不織布を設置し、メッシュフィルター上部から窒素ブローを行い、この風圧により付着担持させる方法により行った。その際、不織布表面積に対し触媒体1の質量が1.8mg/cm2となるようにした。更に平板を用いて散布した触媒体を軽く加圧した後、窒素ブローし、基体不織布の通気性を確保した後、150℃で乾燥した。
【0119】
この実施の形態5にかかる空気清浄フィルターを走査型電子顕微鏡で観察したところ、図5に示すような構造であった。すなわち、この空気清浄フィルターは、バインダー層22の厚みが触媒体1の直径のおおよそ1/2であり、触媒体1の一部が外部に突出していることが確認された。
【0120】
この空気清浄フィルターの性能を調べるため、比較対照として、対照例4を準備した。
【0121】
(対照例4)
上記実施の形態7にかかる触媒体を、バインダー層厚さを7μmから30μmに変えたこと以外は上記実施の形態4と同様な方法で不織布に担持させた空気清浄フィルターを作製した。これを対照例4とする。
【0122】
この空気清浄フィルターを走査型電子顕微鏡で観察したところ、図6のような構造になっていた。すなわち、触媒体はポリビニルアルコールバインダー層に完全に埋没しているものがほとんどであった。
【0123】
≪各種空気清浄フィルターの性能評価≫
実施の形態6〜7、及び対照例4にかかる空気清浄フィルターの一酸化炭素除去性能をワンパス試験で評価した。ワンパス試験の試験方法は、上記実施の形態4の場合と同様である。すなわち、試験温度は25℃(室温)とし、流通させる空気の一酸化炭素濃度は100ppm、湿度は50%、空間速度(SV値)は400,000hr-1の条件で行った。この結果を下記表3に示す。
【0124】

【表3】




【0125】
上記表3から、実施の形態6〜7は、一酸化炭素(CO)除去率が65〜60%と、対照例4の4%よりも高いことがわかる。
【0126】
このことは、次のように考えられる。実施の形態6ではバインダー層表面に散布することで、実施の形態7ではバインダー層厚さを制御することで、触媒体が必ず外気と接触するように工夫している。このため、外気に含まれる一酸化炭素を触媒物質が酸化除去できる。一方、対照例4では、触媒体がバインダー層に完全に埋まっており、またポリビニルアルコールからなるバインダー層は気体透過性がないことから、触媒物質と外気に含まれる一酸化炭素が接触できないので、その結果として除去効果が低かったと考えられる。なお、実施の形態4,5の空気清浄フィルターでは、バインダー層が多孔質なシリカで構成されているので、バインダー層に触媒体が埋まった構造であっても、触媒体は一酸化炭素と接触することができる。
【0127】
ところで、不織布に触媒体を保持させる方法としては、不織布上にバインダー層を塗布した後に、水等の分散媒に触媒体を分散させたスラリーを塗布する方法であってもよく、この方法によると、触媒物質は核粒子と直接接触しないことになる。ただし、この方法では、不織布内部にまで触媒体を十分に配置できにくい。よって、不織布に触媒体を付着させる方法としては、バインダー物質と触媒体を混合して浸漬する方法が好ましい。浸漬法によると、簡単な方法でもって不織布内部にまで触媒体を担持させることができる。
【0128】
また、1枚の不織布に触媒体を保持させた単層構造の空気清浄フィルターでもよいが、複数の薄い不織布に触媒体を担持させた後、これらを積層した積層構造とするのもよい。積層構造とすると、フィルター内部にまで、触媒体が好適に配置された空気清浄フィルターを構成し易い。
【0129】
また、空気清浄フィルターの片面、あるいは両面に脱落防止用の触媒体保護部材を装着させるのもよく、この場合の保護部材としては、通気性に優れた材料を選ぶのがよい。
【0130】
(実施の形態8)
実施の形態8は、上記実施の形態4(図3に記載の空気清浄フィルター)を用いた空気調和機に関する。以下、図7に基づいて、実施の形態8にかかる空気調和機の内容を説明する。図7は、実施の形態8にかかる空気調和機の概略図である。
【0131】
図7に示すように、空気調和機100は、外気を空気調和機内部に取り入れる吸気口113と、外気を空気調和機内部に取り入れ、外部へと送り出す送風手段115と、送風手段115の送風量等を制御する制御手段111と、空気清浄フィルター116と、空気清浄フィルター116を通過した気体を空気調和機外部に送り出す排気口114と、を備える。空気調和機を電気で駆動する場合、電源110と、スイッチ112とを更に備える。
【0132】
空気清浄フィルター116としては、上記実施の形態5で作製した空気清浄フィルターが使用されている。
【0133】
吸気口113には、空気調和機100に空気を取り入れるための開口が形成されている。吸気口113には、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターなどの防塵用フィルターを設けるのがよい。
【0134】
送風手段115としては、プロペラ状の送風機、あるいは圧力式ノズルなどのように空気を圧縮して空気を送り出す手段を用いることができる。
【0135】
排気口114には、空気清浄フィルター116を通過した空気を排出するための開口が形成されている。
【0136】
スイッチ112は、制御手段111と電気的に接続されている。制御手段111は、予め設定されたプログラムを実行するコンピュータからなる。なお、スイッチ112は、制御部111がスイッチ機能を有する電源110と接続されている場合には、省略することができる。
【0137】
空気清浄フィルター115は、不織布上に一酸化炭素除去用触媒体を備えた、図5に記載の空気清浄フィルターであり、一酸化炭素除去用触媒体が、室内環境(室温25℃前後、湿度50%前後)で一酸化炭素を酸化除去する。一酸化炭素ガスが除去された空気は、排気口114から排出される。この装置を駆動したところ、好適に機能することが確認された。
【0138】
〔追記事項〕
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。適宜変更して実施することができることは勿論である。また、本発明は一酸化炭素の除去ばかりでなく、一酸化炭素と共に、また一酸化炭素とは別に、トリメチルアミン、ホルムアルデヒド、メチルメルカプタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アンモニア、一酸化イオウ、硫化水素等の有害物質を除去するための触媒体にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上説明したように、本発明によると、加熱することなく、人間が生活を営む通常の環境下において、空気中に混入した一酸化炭素等の有害ガスを効率よく除去することができる触媒体及び空気清浄フィルター並びに空気調和機を提供できる。よってその産業上の利用可能性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施の形態1にかかる、核粒子を用いた触媒体の概念図である。
【図2】実施の形態2にかかる、核粒子を使用しない触媒体の概念図である。
【図3】実施の形態4にかかる空気清浄フィルターの概念構造図である。
【図4】実施の形態6にかかる空気清浄フィルターの概念構造図である。
【図5】実施の形態7にかかる空気清浄フィルターの概念構造図である。
【図6】対照例4にかかる空気清浄フィルターの概念構造図である。
【図7】実施の形態8に係る空気調和機の概念図である
【図8】固体粒子タイプ試験ホルダーの説明図である。
【図9】ディスク状フィルタータイプ試験ホルダーの説明図である。
【符号の説明】
【0141】
1 触媒体
10 触媒物質粒子
12 水分供給体
13 核粒子
14 水分供給層
20 空気清浄フィルター
21 フィルター基体
22 バインダー層
100 空気調和機
110 電源
111 制御手段
112 スイッチ
113 吸気口
114 排気口
115 送風手段
116 空気清浄フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性を備えた水分供給体と、
前記水分供給体に接触保持された触媒物質と、
を有する触媒体。
【請求項2】
前記水分供給体は、核粒子と、前記核粒子上に形成された吸湿性を有する水分供給層と、を有してなり、
前記触媒物質は、前記水分供給層に付着されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒体。
【請求項3】
前記核粒子は、Al,Ti,Zr,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,及びZnから選ばれる群より少なくとも一種類以上の金属または金属酸化物からなる粒子である、
ことを特徴とする請求項2に記載の触媒体。
【請求項4】
前記核粒子は、セラミックス製の粒子である、
ことを特徴とする請求項2に記載の触媒体。
【請求項5】
前記水分供給層は、吸湿物質を含んでなるものであり、
前記触媒物質は、粒子状であり、前記水分供給層の吸湿物質に直接接触している、
ことを特徴とする請求項2に記載の触媒体。
【請求項6】
前記核粒子の最大直径が、0.02μm以上、10mm以下であり、
前記水分供給層の平均厚みが、1nm〜100μmである
ことを特徴とする請求項5に記載の触媒体。
【請求項7】
前記吸湿物質は、平均細孔径が2nm以上、50nm以下の多孔質シリカである、
ことを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の触媒体。
【請求項8】
前記多孔質シリカの平均細孔径が0.5nm〜2nmであり、比表面積が500m2/gより大きく1000m2/g以下である、
ことを特徴とする請求項7に記載の触媒体。
【請求項9】
前記多孔質シリカの平均細孔径が2nmより大きく20nm以下であり、比表面積が100〜500m2/gである、
ことを特徴とする請求項7に記載の触媒体。
【請求項10】
前記触媒物質は、Pt、Au、Rh、Ag、Pd、及びIrからなる群より選択された少なくとも一種以上の金属粒子であり、且つその平均粒径が1nm以上、10nm以下である、
ことを特徴とする請求項1ないし9の何れかに記載の触媒体。
【請求項11】
フィルター基体と、
前記フィルター基体にバインダーにより付着された前記請求項1ないし10の何れか1項に規定された触媒体と、
を有してなる空気清浄フィルター。
【請求項12】
前記フィルター基体が、非金属製繊維からなる、
ことを特徴とする請求項11に記載の空気清浄フィルター。
【請求項13】
前記非金属製繊維が、不織布である、
ことを特徴とする請求項12に記載の空気清浄フィルター。
【請求項14】
前記触媒体が触媒体粒子群からなり、
当該触媒体粒子群は、前記フィルター基体上に形成されたバインダー層より露出している、
ことを特徴とする請求項11、12、又は13記載の空気清浄フィルター。
【請求項15】
前記触媒体が触媒体粒子群からなり、
当該触媒体粒子群の平均粒径が、前記フィルター基体上に形成されたバインダー層の平均厚みの1倍を超える、
ことを特徴とする請求項11、12、又は13記載の空気清浄フィルター。
【請求項16】
前記バインダーが、吸湿性バインダーである、
ことを特徴とする請求項11ないし15の何れかに記載の空気清浄フィルター。
【請求項17】
前記吸湿性バインダーは、平均細孔径が50nm以下の多孔質シリカである、
ことを特徴とする請求項16に記載の空気清浄フィルター。
【請求項18】
前記吸湿性バインダーは、多孔質アルミナ、親水性ゼオライト、シリカゲル、珪酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸メチル、及びセルロース系樹脂からなる群より選択される物質である、
ことを特徴とする請求項16に記載の空気清浄フィルター。
【請求項19】
前記吸湿性バインダーは、表面に親水化処理を施した多孔質材料からなる、
ことを特徴とする請求項16に記載の空気清浄フィルター。
【請求項20】
不織布からなるフィルター基体と、前記フィルター基体にバインダーにより付着された前記請求項1ないし10の何れか1項に規定された触媒体と、を有してなる空気清浄フィルターを製造する方法であって、
バインダーを含む水溶液に、前記請求項1ないし10の何れか1項で規定された触媒体粒子群を入れ混合してバインダー触媒体溶液を作製する工程と、
前記バインダー触媒体溶液に不織布を浸漬する不織布浸漬工程と、
前記不織布浸漬工程の後、バインダー触媒体溶液が付着した不織布の布面に気体を通過させて孔通しする孔通し工程と、
前記孔通し工程の後、前記不織布を250℃以下の温度で乾燥する乾燥工程と、
を備える空気清浄フィルターの製造方法。
【請求項21】
不織布からなるフィルター基体と、前記フィルター基体にバインダーにより付着された前記請求項1ないし10の何れか1項に規定された触媒体と、を有してなる空気清浄フィルターを製造する方法であって、
バインダーを含む水溶液を不織布に塗布する工程と、
前記バインダーを含む水溶液が塗布された不織布に、前記請求項1ないし10の何れか1項で規定された触媒体粒子群を配置し、不織布表面を加圧する触媒体付着工程と、
前記触媒体付着工程の後、前記不織布の布面に気体を通過させて孔通しする孔通し工程と、
前記孔通し工程を経た不織布を、250℃以下の温度で乾燥する乾燥工程と、
を備える空気清浄フィルターの製造方法。
【請求項22】
前記触媒体付着工程における加圧が、前記不織布表面に加圧気体をブローすることによる加圧である、
ことを特徴とする請求項21に記載の空気清浄フィルターの製造方法。
【請求項23】
前記触媒体付着工程における加圧が、前記不織布表面に押圧部材を押し当てることによる加圧である、
ことを特徴とする請求項21に記載の空気清浄フィルターの製造方法。
【請求項24】
前記不織布が、ポリエステル製不織布である、
ことを特徴とする請求項20ないいし23の何れか1項に記載の空気清浄フィルターの製造方法。
【請求項25】
前記触媒体は300℃以上、500℃以下の温度で焼成処理されたものである、
ことを特徴とする請求項20ないいし24の何れか1項に記載の空気清浄フィルターの製造方法。
【請求項26】
請求項11ないし19のいずれか1項で規定された空気清浄フィルターが用いられてなる空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−56371(P2009−56371A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224657(P2007−224657)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】