説明

触覚エミュレーションを備えた操作装置

本発明は、シフトバイワイヤ操作されるギアチェンジ伝動装置のための操作装置に関する。この操作装は、操作レバー(2)と、位置センサ(5)と、触覚エミュレーションのための装置とを有している。触覚エミュレーション装置は、操作レバー(2)に接続された調節可能な力発生エレメント(3)を有していて、この力発生エレメントは操作装置のベース(10)に枢着(8)されている。本発明は、操作レバー(2)と、調節可能な力発生エレメント(3)と、該力発生エレメント(3)の枢着部(8)との間の作用結合(W)の範囲内に、既知のばね定数を有したばねエレメント(4)が配置されていることを特徴とする。本発明により、ばねエレメントに基づき、1つだけの位置センサによって、操作レバーの位置も、操作レバーに加えられる操作力も検出することができる。機械的な操作レバーの触覚の完全な模倣を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、ギアチェンジ伝動装置、例えばシフトバイワイヤ操作されるマニュアルトランスミッション又はオートマチックトランスミッションのための操作装置に関する。
【0002】
自動車のギアチェンジ伝動装置は一般的に、運転者の手の届く範囲に配置された操作装置によって切り替えられる、若しくは制御される。このために通常、シフトレバーやセレクトレバーのような操作エレメントが使用され、この操作エレメントは例えば、自動車のフロントシートの間又は車室の別の領域に配置されている。
【0003】
この場合、人間工学的な理由及び安全性の理由から特に、目下場合によっては許可されない切替状態、若しくは、要求された切替操作の経過を、相応の切替抵抗若しくは操作レバーのロックといった形で、触感的に明らかに知覚可能であるように知らせる必要がある。これは、運転者がこのようなことを例えば、その回転数若しくは速度に応じて同期ロックを行う完全同期された機械的なマニュアルトランスミッションにより、又は、係止やシフトロックを行うオートマチックトランスミッションの従来の操作によっても、検知することができ、慣用であるのと同様のものである。
【0004】
従っていずれにせよ、運転者に、伝動装置操作の際にはっきりと触覚的に、若しくは手の感触によって、伝動装置の実際の切替状態若しくは運転状態について、若しくは切替結果について、フィードバックする必要がある。
【0005】
しかしながら、電気的若しくはシフトバイワイヤ式に操作されるギアチェンジ伝動装置では、車両客室内の操作レバーとエンジンルームの自動車トランスミッションとの間には機械的な連結部は存在しない。機械的な連結部ではなく、操作装置から自動車トランスミッションへの切替命令の伝達は、「シフトバイワイヤ式」トランスミッションでは電気的又は電子的な信号と、それに次ぐ、トランスミッションにおける切替命令の主として電気液圧的な変換とによって行われる。しかしながらトランスミッションアクチュエータと操作レバーとの間の機械的な接続がないので、トランスミッションの状態、例えば切替ロック又は許可できない切替命令は、もはや直接的に、運転者が操作レバーの状態を感じることができるようにはフィードバックされない。
【0006】
従って運転者はシフトバイワイヤ式に操作されるトランスミッションでは、操作レバーにおいて知覚可能なロックされた所定の切替位置によって、レバー位置や走行段、切替命令が、目下の走行状態では場合によっては許容できず、従って、選択することができないということを簡単に知ることはできない。同様に、シフトバイワイヤ式操作の場合、運転者の切替命令の実行が、トランスミッションによって操作レバーにフィードバックされないので、運転者は、例えばロックや同期ロックを行う機械的に操作されるマニュアルトランスミッションでは普通であるようには、切替操作の経過を触覚的に感じて知ることができない。
【0007】
従って、操作したいギアチェンジ伝動装置の状態に応じて、並びに、自動車におけるその他の状態ファクタ、例えばエンジン回転数、車両速度、クラッチ位置等に応じて、必要な触覚的フィードバックを実現するために、シフトバイワイヤ式に制御されるトランスミッションでは、操作レバーの運動をトランスミッションの状態に応じて、アクティブにかつアクチュエータにより制御して、制限したり、遅らせたり、又は完全にロックする必要がある。
【0008】
このようにすれば、操作レバーを把持する際にシフトバイワイヤ式トランスミッションにおいても、運転者にその切替要求が、例えば、実際の車両速度やギアチェンジ伝動装置の目下の運転状態では許容できず、ロックされていることを触覚的に知覚できるように伝えることができる。従って、トランスミッション電子機器ユニットによって検知され、操作装置によってトランスミッションには伝達されない、シフトバイワイヤ式トランスミッションによって実際には実行不能な切替命令が、操作レバーにおいて操作されるようなことも回避することができる。
【0009】
また、運転者がシフトバイワイヤ式トランスミッションにおいても、例えば伝達リンク機構を有したマニュアルトランスミッションのような機械式に操作されるトランスミッションにおけるのと同様に、シフトレバーにおける個々のギアの選択が特に、回転数若しくは速度に応じて検知可能に、操作レバーにおける相応の反力経過が形成されるのと同様の、触覚的なフィードバックを所望するならば、操作レバーにそのためのアクチュエータも必要である。
【0010】
例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19848191号明細書により公知の例のように、先行技術では、相応の触覚をギアチェンジ伝動装置のための操作エレメントにおいても実現しようとされている。このために、操作エレメントに、電子的に操作可能な力発生エレメント若しくは運動緩衝器を設け、これを制御装置によって、運転者が操作エレメントを操作する際に、ギアチェンジ伝動装置におけるその都度の運転状態に伴う反力を、操作エレメントにおいて模倣することができるように制御している。
【0011】
しかしながら触覚をリアルに模倣するためには、特に操作レバーに作用する反力をリアルにエミュレーションするためには、操作レバーの制御電子機器のために、いつでも操作レバーの状態を、位置や角速度に関しても、運転者によって操作レバーに実際に加えられる力に関しても検知する必要がある。しかしながら先行技術により公知の手段によればこのために、まず、操作レバーの位置や角速度を検出する第1のセンサと、付加的に、使用者によって加えられる力を検出する別のセンサとが必要とされている。
【0012】
システム故障に対処する安全性を満たす必要に基づき、先行技術において基本的に必要とされている上記両センサは、それぞれ、二重に、又は多重に構成されなければならない。このことは結果として先行技術において、必要なセンサの数が多いことにより、著しい構造的な手間と、相応のコストに結びついている。
【0013】
このような背景により本発明の課題は、先行技術の上記欠点を克服することができるような、ギアチェンジ伝動装置の特に電気的な若しくは電子的なシフトバイワイヤ式操作のための、操作レバーのための触覚をエミュレーションするための装置を備えた操作装置を提供することである。この場合、この操作装置は特に構造的に簡単であって、しかも安価に形成可能であって、操作レバーに作用する操作力の確実かつ正確な検出が可能であるのが望ましい。さらに、機械的にロックされる操作レバーの触覚の確実かつリアルなエミュレーションが行われるべきである。
【0014】
この課題は、請求項1の特徴を有した操作装置及び請求項5の特徴を有した操作装置により解決される。
【0015】
有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0016】
まず公知のように、本発明による操作装置は、操作レバーの実際の位置を検出するためのセンサを有した操作レバーを有している。同様に公知のように、操作装置はさらに、操作レバーに接続され、制御可能に調節可能な力発生エレメントを有したエミュレーションのための装置を有している。
【0017】
しかしながら本発明による、操作装置は、操作レバーに加えられる操作力を検出するために、操作レバーと、調節可能な力発生エレメントと、該力発生エレメントの枢着部材との間の作用結合の範囲内の任意の個所に、既知のばね定数を有したばねエレメントが配置されていることを特徴としている。
【0018】
上記作用結合の範囲内に設けられたばねエレメント及びその公知のばね定数により、本発明によれば、操作装置に設けられた唯一の位置センサによって、操作レバーの目下の位置も、使用者によって操作レバーに加えられる操作力も検出することができる。「作用結合の範囲内の任意の個所」という概念によって、本発明を実現するために、まず原則的に、ばねエレメントが、操作レバーと調節可能な力発生エレメントとの間の結合部の範囲内に配置されているか、調節可能な力発生エレメントと、該力発生エレメントの、操作装置のベースにおける枢着部の間の結合部の範囲内に配置されているか、又は、これら両結合部の間の任意の個所に配置されているかは問題ではないことが表現されている。
【0019】
この場合、本発明によれば、操作レバーに加えられる操作力の検出は、使用者によって操作力が操作レバーに加えられるとすぐに、位置センサによりばねエレメントの圧縮若しくは膨張が検知されることによって行われる。その結果、操作レバーに接続されている位置センサは、操作力に基づく操作レバーの相応の(僅かな)運動を検知することができる。操作レバーのこのような力を発生させる運動の大きさにより、ばねエレメントの公知のばね定数に基づき、操作レバーに加えられる力の大きさを検出することができる。
【0020】
使用者によって操作レバーに加えられる操作力の大きさに基づき、操作装置の制御電子機器によって、例えば、力発生エレメントの相応の制御が行われ、これにより、操作レバーの運動の開始時に使用者は、実際のロックの克服に相当する所望のリアルな反力を受ける。このようにして、位置センサ、ばねエレメント、調節可能な力発生エレメントを配置するだけで、機械的にロックされる操作レバーにより既知の触覚を、ほぼリアルにシミュレーション若しくは模倣することができる。
【0021】
操作レバーは、この場合、少なくとも2つの切替位置の間で運動可能なロックする、安定的なレバー位置を有した操作レバーであるか、又は、各操作後に再びニュートラルな中間位置に戻される単安定的な操作レバーであって良い。
【0022】
本発明はまず、操作レバーに力を加える際に必要な操作レバーの僅かな運動が、ばねエレメントの相応の圧縮により行われることが保証されているならば、ばねエレメントが構造的にどのように形成され、配置されているかに関わらず実現される。しかしながら本発明の有利な構成によれば、ばねエレメントは、エラストマエレメント、例えばOリングによって形成されている。
【0023】
このようにして特に安価かつ省スペースなばねエレメントを形成し、配置することができ、例えばこの場合、ばねエレメント若しくはOリングは、操作レバーと制御可能な力発生エレメント若しくは、操作装置のケーシングベースにおける力発生エレメントの枢着部の間の作用結合の範囲内の任意の個所に配置することができる。
【0024】
本発明の別の有利な構成によれば、ばねエレメントは、操作装置のジョイントの領域に配置されており、若しくは、操作装置のジョイントの1つの構成部分を成している。
【0025】
これにより特に簡単な構成が得られる。何故ならば、このようにして構造的に独立的なばね装置は不要であるからである。その代わりに、単に、操作装置のジョイントの1つを、例えば、有利にはエラストマエレメントとして形成されているばねエレメントをジョイント自体に組み込むことにより、所望のように弾性的に形成される。このようにして例えば、ばねエレメントの取り付けのために、調節可能な力発生エレメントのケーシングベースへの枢着部、又は調節可能な力発生エレメントの操作レバーへの結合部を利用することができる。
【0026】
さらに本発明は、力発生エレメントのための所望の多数の操作サイクルと、短い切替時間が得られるならば、調節可能な若しくは制御可能な力発生エレメントがどのような形式であるかに関わらず実現することができる。
【0027】
しかしながら本発明の有利な構成によれば、調節可能な力発生エレメントは制御可能な電気レオロジによる又は磁気レオロジによる緩衝器である。電気レオロジによる若しくは磁気レオロジによる緩衝器を使用することにより、最小限のエネルギの使用、ひいては最小限の電力消費と最小限の熱の発生のみで、場合によっては緩衝器の、従って操作レバーの制御されたロックまでも行うような、ほぼ任意の反力を可変に形成することができる。電気レオロジによる又は磁気レオロジによる緩衝器を使用することのさらなる利点は、緩衝特性の調節可能性がほぼ摩耗なしに、かつ遅延なしに得られることであり、これにより機械的な操作レバーの触覚のできるだけリアルな模倣を実現することもできる。
【0028】
本発明はさらに、操作レバー、操作レバーの位置を検出するための位置センサ、触覚エミュレートのための装置を備えた操作装置に関する。触覚エミュレートのための装置は、公知のようにまず、操作レバーに接続され、操作装置のベースに枢着された、制御可能に調節可能な力発生エレメントを有している。
【0029】
しかしながら操作装置は、触覚エミュレート装置がさらに、モータ作動するアクチュエータを有していることを特徴とする。この場合、触覚エミュレート装置の調節可能な力発生エレメントは、制御特性マップを使用して、使用者によって加えられる手動の力に抗する反力を得るように調整されている。これに対してモータ作動されるアクチュエータは、同様に制御特性マップに基づき、専ら、操作レバーのアクチュエータによる運動を行うように調整されている。従って、制御特性マップに基づき、力発生エレメントとモータ作動されるアクチュエータとの間では正確に規定された任務の分配が行われていて、これにより力は専ら力発生エレメントにより、運動は専らモータ作動されるアクチュエータにより形成される。
【0030】
従ってアクチュエータは、フォースのフィードバックについて先行技術とは異なり、もはや力の発生のために使用されるのではなく、専ら操作レバーをアクティブにアクチュエータにより動かすために使用される。これにより、機械的な操作レバーの触覚を極めてリアルに、完全にシミュレートすることができ、模倣することができる。特に調節可能な力発生エレメントをアクチュエータと組み合わせることにより、機械的なロックを実際に設けることなしに、機械的なロックの触覚も完全にリアルに模倣することができる。この場合、調節可能な力発生エレメントは特に専ら、操作レバー若しくは車両伝動装置のロックのリアルな反力を形成するために適しており、一方、アクチュエータは特に専ら、ヴァーチャルなロックガイドの凹部への操作レバーのリアルなばね的な引き戻しのために適している。
【0031】
このことは、これにより操作レバーのアクチュエータ及び触覚エミュレートのために最小のエネルギ消費が得られ、同時にアクチュエータを最小に寸法設計することができるので特に有利である。何故ならば先行技術とは異なり、本発明ではアクチュエータは単に操作レバーの運動を行わせるためだけに働き、使用者によって加えられる操作力に対する反力は完全に制御可能な力発生エレメントによって形成することができるので、この反力を形成するためには働かないからである。
【0032】
しかしながら使用者が操作力をレバーに加えなくなるとすぐに、制御装置及び記憶されている特性マップにより、力発生エレメントの起動制御はすぐに、モータ作動されるアクチュエータへと切替られ、モータ作動されるアクチュエータにより操作レバーが、伝動装置若しくは操作装置の(実際には全く存在していない)ロックゲートの最も近い凹部へ戻されるのがシミュレートされる。操作レバーを仮想ロックゲートの凹部に戻す際に必要な制動力を発生させるという役割と、操作レバーの静止に至るまでに必要な運動緩衝とは、この場合相応に、力発生エレメントによって行われる。
【0033】
ロックゲートの切替抵抗の触覚だけではなく、ロックゲートの凹部へのセレクトレバーのばね的な戻し運動もこのように完全にエミュレートすることにより、大きな利点と、本発明により得られる大きな進歩性が得られる。
【0034】
これにより例えば、操作レバーに可変のロックを設けることも考えられ、この場合、ロックの硬さだけではなく、ロック凹部の数や、互いの間隔も自由に可変に、ソフトウェアにより、若しくは力発生エレメントとモータ作動されるアクチュエータの制御のための相応の特性マップの選択により調節することができる。例えば、ロック点の数や、ロック点の間隔や硬さをソフトウェア側で、運転者ごとの好みに応じて調節することができる。記憶された特性マップによって、この場合、(使用者が手の力をレバーに加えている限りは)反力を発生するための力発生エレメントの、又は(使用者が重要な手の力をレバーに加えなくなり、レバーがロック位置に戻された場合には)モータ作動されるアクチュエータの起動制御が行われる。
【0035】
このようにして、運転者に、希望や好みに応じて、機械的に操作されるマニュアルトランスミッションの触覚と、オートマチックトランスミッションの触覚又は、無断変速機の触覚を提供することができる。このために場合によっては必要な、セレクトレバー又はシフトレバーの複数の切替経路の実現のためには、この場合、調節可能な力発生エレメント、アクチュエータ、ばねエレメントから成る装置を、例えば操作レバーの互いに垂直に配置された運動軸線に沿って多重に設けることができる。
【0036】
本発明は、アクチュエータが構造的にどのように形成され、配置されているかに関わらず実現することができる。特に、本発明により可能なアクチュエータのための寸法の削減により、伝動装置を使用しない、操作レバーを直接駆動するアクチュエータの使用も考慮される。アクチュエータの選択における別の可能性は、ブラシを有した又はブラシレスの直流モータにあり、ステップモータを使用することもできる。
【0037】
しかしながら有利な構成によれば、操作装置のアクチュエータは電気的なサーボギアモータであり、この場合、操作レバーは有利には直接、アクチュエータの駆動軸に接続されている。これにより、特に省スペースかつ堅牢で安価な構造が得られる。アクチュエータは、操作レバーを(仮想の)ロックゲートの凹部内へ動かす若しくはアクチュエータにより戻し案内するためにだけ使用され、反力形成の役割は専ら制御可能な力発生エレメントにより行うことができるので、比較的小さく軽量なアクチュエータを使用することができ、その軸は操作レバーに直接作用することができる。
【0038】
次に、図面につき本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】調節可能な力発生エレメントとアクチュエータとを備えた本発明による操作装置の構成の作用原理を概略的に示した等尺図である。
【図2】本発明による操作装置の別の実施の形態を示した等尺図である。
【0040】
図1には、概略的な等尺図で、本発明による操作装置の作用原理が示されている。この操作装置は、調節可能な力発生エレメント若しくは緩衝器及びアクチュエータを有している。
【0041】
まず、軸1に支承された操作レバー2が示されている。さらに、極めて概略的に示された調節可能な力発生エレメント3若しくは調節可能な緩衝器3と、この調節可能な緩衝器3とセレクトレバー2との間に配置されたばねエレメント4と、位置センサ5と、アクチュエータ6とが示されており、位置センサ5とアクチュエータ6とは、操作レバー2の軸1に直接結合されているか、若しくは軸1に組み込まれている。軸1は支承部によって(斜線で略示した)操作装置のベース10に結合されている。操作装置のベース10とアクチュエータ6及び位置センサ5との、同様に設けられる結合部は、見易さを考慮して、図1の概略図には示されていない。
【0042】
調節可能な緩衝器3若しくはばねエレメント4は、概略的に略示されたジョイント7を介して操作レバー2に接続されており、調節可能な緩衝器3はさらに、操作装置のベース10に枢着若しくは固定されている。
【0043】
従って図1に示された構成は、アクチュエータ6も、ばねエレメント4と本発明により二重に利用される位置センサ5との組み合わせ体も有している。
【0044】
このようにして図示の構成では、まず、唯一の位置センサ5によって、軸1を中心とした操作レバー2の目下の位置及び/又は角速度と、運転者によって操作レバー2に加えられる操作力Fとを検出することができる。何故ならば、運転者によって操作レバー2に力Fが加えられると、これにより力の方向に応じて、ばねエレメント4が僅かに圧縮若しくは膨張されるが、このようなばねエレメント4の圧縮若しくは膨張は、軸1を介して位置センサ5に伝えられるので、位置センサ5のセンサ信号と、ばねエレメント4の公知のばね定数とから、操作レバー2に加えられた操作力Fの大きさを検出することができるからである。従って、操作レバー2に加えられる力を検出するための別個のセンサは、本発明により省くことができる。
【0045】
操作装置の図1に示した構成では、位置センサ5と調節可能な緩衝器3の他に、操作レバー2をアクチュエータにより動かすためのモータにより作動するアクチュエータ6も設けられている。これにより、伝動装置のための機械的な操作装置の触覚は、機械的に操作される伝動装置又は機械的な操作装置に設けられるロック装置による係止も含めて、完全に模倣することができる。
【0046】
この場合、調節可能な緩衝器は、ロック装置による若しくは伝動装置で生じる反力を、場合によっては許容できないシフト命令の際の操作レバー2のロックに到るまで、模倣するために使用される。これに対してモータによるアクチュエータ6は、運転者が操作レバー2に力を加えることなく操作レバー2が動かされなければならない場合に初めて作動する。このことは特に、レバー2がまだ正確に(仮想の)ロック位置にない場合にレバー2が放される場合である。この場合、アクチュエータ6は操作装置の制御電子機器により制御され、操作レバー2はアクチュエータ6によって、相応に仮想のロック位置の真ん中に戻される。このようにして、機械的なロックは実際には全く行われていないにもかかわらず、操作者若しく運転者には、正確に、機械的にロックされる操作レバーの挙動が表される。
【0047】
さらに、アクチュエータ6は、所定の理由により、操作レバー2の切替位置と伝動装置における実際の切替状態との間に不一致が生じた場合に、操作レバー2を正確な切替位置へと調整することもできる。このことは例えば、点火キーの引き抜き又は自動車から離れる際に、運転者がパークロックを手動で入れることを忘れた際に、伝動装置においてオートPによって自動的にパークロックが入れられる場合等である。このような場合、操作レバー2は、アクチュエータ6により自動的にパークロック位置にもたらされ、セレクトレバーが運転者により走行段位置にされていた場合でも、自動車に戻った際にセレクトレバー位置が、運転者にとっては、伝動装置において自動的に入れられたパークロックに一致することになる。
【0048】
単安定的な操作レバーの触覚を再現するためにも、図1に示した構成は適している。この場合、一方では、調節可能な緩衝器3とアクチュエータ6との組み合わせ体も、ロックのリアルな模倣、場合によっては、伝動装置における切替ロック若しくは切り替え抵抗の模倣のために役立つ。他方では、アクチュエータ6により、操作レバー2を、ニュートラル位置からの変位後や、解除後に再びニュートラル位置に戻すこともできる。
【0049】
図2には、作用原理では、図1に示したものとほぼ一致している本発明による操作装置の構成が示されている。
【0050】
この場合も、軸1の上に支承された操作レバー2が示されており、さらに調節可能な緩衝器3と、位置センサ5と、アクチュエータ駆動装置6とが示されている。図1に示した概略的な構成とは異なり、アクチュエータ駆動装置6は、図2に示した構成では、変速装置としてベルト伝動装置9を有している。しかしながらこれにより図1の操作装置と作業原理が大きく異なることはない。
【0051】
しかしながら図2の構成は、図1の原則的な図とは特に、ばねエレメント4の配置と構成で異なっている。即ち図2の構成では、ばねエレメント4はジョイント8に組み込まれており、このジョイント8によって、調節可能な緩衝器3が操作装置のベースプレート10に結合されている。従って、最も単純な場合、ばねエレメント4は、公知のばね定数を有した残留弾性としてジョイントに組み込まれるだけである。例えば、ジョイント8の外側リングと内側リングとの間にエラストマ層の形で組み込まれる。同様に、同じ作用で、ばねエレメント4は例えばジョイント7に組み込むこともできる。
【0052】
図2の構成では、運転者が操作力Fを操作レバー2に加えると、この力はジョイント7と、(まず剛性的に接続された)調節可能な緩衝器3とを介して、ジョイント8に組み込まれたばねエレメント4の相応の圧縮の結果、ジョイント8の内側リング若しくはベースプレート10におけるジョイント8の固定部に対して相対的にジョイント8の外側リングを相応に僅かに変位させる。ジョイント8のこのような変位はさらに、緩衝器3を通り、ジョイント7を介して操作レバー2へと逆に伝播し、操作レバー2も相応に、操作者には殆ど知覚されない程度に僅かに変位する。操作レバー2のこのような変位は、軸1を相応に僅かに回転させ、位置センサ5のセンサディスク11も相応に回転させる。センサディスク11のこのような回転は、位置センサ5の評価回路によって検知され、これにより、操作レバー2の変位の大きさと、ばねエレメント4の公知のばね定数とに基づき、操作レバー2に加えられた力の大きさを検出することができる。
【0053】
剛性的に接続されていない緩衝器3のもとで、換言するなら、操作レバー2の同時に行われる旋回運動のもとで、操作レバー2に加えられた力Fも勿論、検出することができる。しかしながらこのためには、ばねエレメント4の圧縮は、もはや測定される必要はない。何故ならば、同時的に動かされる操作レバー2の場合に操作レバー2に加えられる力Fの大きさは、既に、操作レバー2の運動速度と、公知の特性線と、調節可能な緩衝器3の公知の作業点に基づき検出することができるからである。
【0054】
図1の構成と同様に、アクチュエータ6は、図2の構成においても、ロックされた操作レバー2の触覚の極めてリアルな模倣のために働き、この場合、アクチュエータ6により、(存在しない)ロックゲートのその都度のロック位置への操作レバー2の戻しばねを模倣することができる。
【0055】
従って、結果としては、本発明により、シフトバイワイヤ操作されるギアチェンジ伝動装置のための触覚エミュレーションを有した操作装置が提供される。このような操作装置はまず特に、1つだけのセンサによって、位置(及び場合によっては運動速度)も、操作レバーに加えられる操作力も検出することができるという利点を有している。
【0056】
このようにして本発明により、操作レバーの状態を確実に検出するために必要なセンサの数は、先行技術に対して半減され、これにより相応に構造が簡単になり、コストが低減される。さらに本発明により、機械的なロックはもはや全く存在しないにも関わらず、運転者に正確に、機械的にロックされる操作レバーの挙動を表すことができる。さらにこのような仮想のロックは、ロック点の数及び間隔に関しても、ロックの硬さに関しても、自由に制御可能に変更できる。これにより、ギアチェンジ伝動装置のための全ての触覚と操作装置の全ての運動特性とは純粋にソフトウェアの側で、広範囲に変更することができ、使用状況に合わせることができる。オートマチックセレクトレバーと、クラッシックな切替伝動装置のための切替レバーとの間で操作装置の触覚をソフトウェア制御により切替ることも可能である。
【0057】
従って本発明は、特に、自動車の伝動装置操作の領域における要求度の高い使用に際して、人間工学的な改善、操作快適性の改善、構成スペース効率及びコストパフォーマンスの改善に大きく貢献し、手間のかかる機械的な構成部分をソフトウェアに置き換えることで大きな発展を可能にする。
【符号の説明】
【0058】
1 軸
2 操作レバー
3 調節可能な力発生エレメント、調節可能な緩衝器
4 ばねエレメント
5 位置センサ、回転角度センサ
6 モータアクチュエータ
7,8 ジョイント
9 ベルト伝動装置
10 ベース、ベースプレート
11 センサディスク
F 操作力
W 操作力のための作用結合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にシフトバイワイヤ式のギアチェンジ伝動装置の切替段を選択するための操作装置であって、位置センサ(5)を備えた操作レバー(2)と、触覚エミュレーションのための装置とを備えており、触覚エミュレーション装置は、操作レバー(2)に接続され、操作装置のベース(10)に枢着された(8)調節可能な力発生エレメント(3)を有している形式のものにおいて、
操作レバーに加えられる操作力(F)を検出するために、操作レバー(2)と、調節可能な力発生エレメント(3)と、該力発生エレメント(3)の枢着部(8)との間の作用結合(W)の範囲内に、既知のばね定数を有したばねエレメント(4)が配置されていることを特徴とする、操作装置。
【請求項2】
ばねエレメント(4)がエラストマエレメントにより形成されている、請求項1記載の操作装置。
【請求項3】
ばねエレメント(4)がOリングにより形成されている、請求項1又は2記載の操作装置。
【請求項4】
ばねエレメント(4)が操作装置のジョイント(8)の範囲に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項5】
調節可能な力発生エレメント(3)が、電気レオロジによる又は磁気レオロジによる緩衝器である、請求項1から4までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項6】
特にシフトバイワイヤ式のギアチェンジ伝動装置の切替段を選択するための操作装置であって、位置センサ(5)を備えた操作レバー(2)と、触覚エミュレーションのための装置とを備えており、触覚エミュレーション装置は、操作レバー(2)に接続され、操作装置のベース(10)に枢着された(8)調節可能な力発生エレメント(3)を有している形式のものにおいて、
触覚エミュレーション装置が、モータアクチュエータ(6)を有しており、調節可能な力発生エレメント(3)は、反力を発生させるための制御特性マップに基づき調整されており、モータアクチュエータ(6)は、専ら操作レバー(2)のアクチュエータによる運動のための特性マップに基づき調整されていることを特徴とする、操作装置。
【請求項7】
アクチュエータ(6)が電気的なサーボギアモータである、請求項6記載の操作装置。
【請求項8】
操作レバー(2)が、アクチュエータ(6)の軸に直接結合されている、請求項6又は7記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−517750(P2011−517750A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501096(P2011−501096)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000295
【国際公開番号】WO2009/117980
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(508187001)レムフェルダー エレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】Lemfoerder Electronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Von dem Bussche−Muench−Strasse 12, D−32339 Espelkamp, Germany
【Fターム(参考)】