説明

記憶回路

【課題】SRAMの1セルあたりのトランジスタ数を低減し、さらに回路構成の自由度を広げた記憶回路を提供する。
【解決手段】2つのインバータを用いて互いの出力を互いの入力とするフリップフロップと、該フリップフロップとビット線との間で信号を伝達するトランスファートランジスタとを有するメモリセルに対して、データの書き込みと読み出しを行う記憶回路において、p型の第1のMOSFETと第2のMOSFETからなり、第1のMOSFETはソースがVDDに接続され、このゲートに複数のメモリセルのトランスファートランジスタからの読み出し信号を共通に入力し、このドレインとビット線とを第2のMOSFETを介して接続する読み出し回路を備え、データの読み出し時にビット線を予め所定の電圧にプリチャージしておき、第2のMOSFETをONとしたときのビット線の電圧上昇をセンスアンプで検出することによりデータを読み出す構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SRAMの1セルあたりのトランジスタ数を低減し、さらに回路構成の自由度を広げた記憶回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のSRAMの回路構成を示す。
SRAMは、2個のCMOSインバータ(P1とN1、P2とN2)の互いの出力を互いの入力に接続するフリップフロップFFをメモリセルとしている。この回路は、トランスファートランジスタN3,N4を有する。データ読み出し動作は、両方のビット線BL、BL Nの電位をVDDにプリチャージし、N3,N4をONした後、たとえば一方のビット線BL Nの電位が降下するが、これを図示しないセンスアンプにより検出するものである。
【0003】
しかし、この回路では、微細化により読み出し時のノイズマージンが小さくなり、読み出しの誤動作が起きる問題があった。この問題を解決するために、2つのポートを持つSRAM(2-port SRAM、デュアルポートSRAM)を用いて読み出しを行う方法が提案された。2-port SRAMの回路構成を図6に示す(非特許文献1)。
【0004】
この回路は、読み出しのノイズマージンを大きくすることが非特許文献1において示されている。さらに2-port SRAMの特徴の1つとして、読み出しビット線RBLは、VDDにプリチャージする必要はなく、VDD/8であってもよい。このとき、トランスファートランジスタN20とN21の直列接続の両端は、VDD/8とGND電位となり、微細化を進めた場合の電流密度を小さくすることができ、エレクトロマイグレーションによる配線断線の問題を解決し得る利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−026376号公報
【特許文献2】特開2009−181604号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L.Chang et al., ”Stable SRAM Cell Design for the 32 nm Node and beyond,” IEEE Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers, pp.128-129 (2005 年)
【非特許文献2】低電力LSIの技術白書 1ミリワットへ挑戦 日経BP社 1994年 p.175
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図6に示す従来の2-port SRAMの場合、1メモリセル8トランジスタ(8T)となり、図5に示す2つのポートを持たない通常のSRAMの6Tと比べてLSI面積が増大する問題点があった。
【0008】
この課題を解決するための発明が、特許文献1,2に開示されている。ここに開示される回路の一例を図7に示す。
【0009】
図7に示す回路では、2個のCMOSインバータ(P1とN1、P2とN2)の互いの出力を互いの入力に接続するフリップフロップFFと、ビット線BLi,BLi_Nへ信号を伝達するトランスファートランジスタN3,N4によりメモリセルを構成し、nMOSFETのN5〜N10を用いて、書き込みポートと読み出しポートを異なるメモリセル間で共有化する構成である。この回路は、書き込みポートと読み出しポートを対で配置している。そして読み出しを行う時に、一方(例えばBL)がGND、他方(例えばBL N)がGND電位を有するハイインピーダンスの状態であり、これからGND電位をGNDに固定したまま、ハイインピーダンスの状態をVDDに昇圧する。
【0010】
この動作を行うために、センスアンプCが用いられる。センスアンプCは、2つのインバータ(P41とN41、P42とN42)の互いの出力を互いの入力に接続するフリップフロップで構成される。その電源線を最初GNDとし、その後GNDからVDDへと昇圧を行う。これによりGND電位のハイインピーダンスのビット線をVDDに昇圧できる。
【0011】
しかし、このような従来回路は回路構成が限定されており、回路の設計自由度が少ないという問題点があった。
【0012】
本発明は、SRAMにおいて対となるビット線を共に所定の電圧にプリチャージする回路構成や、読み出しポートをpMOSとする回路構成などにより、回路構成の自由度を広げた記憶回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、2つのインバータを用いて互いの出力を互いの入力とするフリップフロップと、該フリップフロップとビット線との間で信号を伝達するトランスファートランジスタとを有するメモリセルに対して、データの書き込みと読み出しを行う記憶回路において、n型の第1のMOSFETと第2のMOSFETからなり、第1のMOSFETはソースがGNDに接続され、このゲートに複数のメモリセルのトランスファートランジスタからの読み出し信号を共通に入力し、このドレインとビット線とを第2のMOSFETを介して接続する読み出し回路を備え、データの読み出し時にビット線を予め所定の電圧にプリチャージしておき、第2のMOSFETをONとしたときのビット線の電圧降下をセンスアンプで検出することによりデータを読み出す構成である。
【0014】
第2の発明は、2つのインバータを用いて互いの出力を互いの入力とするフリップフロップと、該フリップフロップとビット線との間で信号を伝達するトランスファートランジスタとを有するメモリセルに対して、データの書き込みと読み出しを行う記憶回路において、p型の第1のMOSFETと第2のMOSFETからなり、第1のMOSFETはソースがVDDに接続され、このゲートに複数のメモリセルのトランスファートランジスタからの読み出し信号を共通に入力し、このドレインとビット線とを第2のMOSFETを介して接続する読み出し回路を備え、データの読み出し時にビット線を予め所定の電圧にプリチャージしておき、第2のMOSFETをONとしたときのビット線の電圧上昇をセンスアンプで検出することによりデータを読み出す構成である。
【0015】
第2の発明の記憶回路において、読み出し回路は、対となるビット線のそれぞれのビット線に配置し、センスアンプは一方のビット線の電圧上昇を差動で検出し、データを読み出す構成である。また、読み出し回路は、対となるビット線の一方のビット線に配置し、センスアンプは一方のビット線の電圧上昇を単相で検出し、データを読み出す構成である。
【0016】
また、第2の発明の記憶回路おいて、データの読み出し時に、対となるビット線の一方を電源電圧VDDでハイインピーダンス状態とし、他方をVDDに接続し、センスアンプは、2つのインバータを用いて互いの出力を互いの入力とするフリップフロップを用い、該フリップフロップのGND線を電源電圧VDDからGNDへと低減させ、他方のビット線をVDDとしたまま、VDDでハイインピーダンス状態の一方のビット線をGND電位まで降下させ、これによりデータを読み出す構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の記憶回路は、書き込みポートと読み出しポートを異なるメモリセル間で共有化し、1セルメモリあたりのトランジスタ数を低減できる構成において、対となるビット線を共に所定の電圧にプリチャージする回路構成や、読み出しポートをpMOSとする回路構成などが可能となり、回路構成の自由度を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の記憶回路の実施例1の構成例を示す図である。
【図2】本発明の記憶回路の実施例2の構成例を示す図である。
【図3】本発明の記憶回路の実施例3の構成例を示す図である。
【図4】本発明の記憶回路の実施例4の構成例を示す図である。
【図5】従来のSRAMの回路構成を示す図である。
【図6】2-port SRAMの回路構成を示す図である。
【図7】従来の記憶回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の記憶回路の実施例1の構成例を示す。
図1において、1つのメモリセルは、2つのインバータ(P1とN1、P2とN2)の互いの出力を互いの入力に接続するフリップフロップFFと、ビット線BLi,BLi_Nへ信号を伝達するトランスファートランジスタN3,N4を有する。メモリセルからの読み出し信号は、ソース接地したnMOSFETのN6,N10のゲートに入力し、このN6のドレインとビット線BL_NとをnMOSFETのN7を介して接続した回路、およびN10のドレインとビット線BLとをnMOSFETのN9を介して接続した回路を、複数のメモリセル行Line1〜LineNに対して共有する構成である。
【0020】
本実施例の特徴は、ビット線BL,BL_Nを所定の電圧VP1に接続し、ビット線BL,BL_Nを所定の電圧VP1にプリチャージした後に、ビット線BL,BL_Nの信号を図7におけるセンスアンプCと異なるセンスアンプAにより読み出す構成にある。
【0021】
書き込み動作および読み出し動作は次のとおりである。
書き込み時は従来構成と同じであり、ワード線RWLはLowとし、ワード線WLおよびWWLはHighとする。これによりビット線BLとBL_Nがメモリセル内のフリップフロップFFと接続される。ビット線の一方にVDD、他方にGND電位に近い信号を入力することにより書き込みを行うことができる。
【0022】
一方、読み出し時には、WWLをLow、RWLをHighとし、WLをHighとする。これによりN4を伝わる信号がHigh、N3を伝わる信号がLowの時に、N6,N10の入力がHighおよびLowとなるために、N6,N10がONおよびOFFとなる。また、N7,N9はRWLがHighなのでONとなり、よってBL_NはGNDに接地され、BLはGNDに接地されない。ビット線をある電圧VP1に事前にプリチャージした場合に、BL_Nの電位のみが降下する。
【0023】
この状態をセンスアンプAを用いて検出する。センスアンプAの一例を図1に示す(非特許文献2)。
【0024】
センスアンプAは、図7に示すセンスアンプCのフリップフロップとビット線BL,BL_Nとの間にpMOSFETを接続し、フリップフロップとGNDとの間にnMOSFETを接続する。pMOSFET,nMOSFETのゲートにEnable信号ENが入力され、ENがLowのときにBL,BL_Nとフリップフロップが接続され、BL,BL_Nからデータを取り込む。また、フリップフロップのGND側のnMOSFETがOFFとなり、フリップフロップが休止している。
【0025】
ENがHighになると、BL,BL_Nとフリップフロップが電気的に切断されるが、フリップフロップのGND側のnMOSFETがONとなり、フリップフロップがアクティブとなり、フリップフロップの状態を記憶する。この動作によりBL,BL_Nをセンスすることができる。
【0026】
プリチャージ電圧VP1はVDDである必要はなく、VDD/2,VDD/4またはVDD/8であってもよく、電圧の降下が確認できるならばよい。VDD/8の場合、電圧が1/8倍となり、エレクトロマイグレーションの問題が解決できる。
【0027】
この方法により、1メモリセルのトランジスタ数が低減できる。今、分割したビット線BLiに、8行のメモリセル行が接続されている場合を考える。この時、Line1からLine8が接続される。この場合に1メモリセルの平均トランジスタ数は、(6×8+6)/8=6.75個となる。従来の8T−SRAMは(8×8+2)/8=8.25個であるから、従来回路の6.75/8.25=82%となる。ここでは、N5,N8はビット線を分割するのに必要なトランジスタとして考えて、従来の8T−SRAMの計算の中に含めている。
【0028】
また、16行のメモリセル行が接続されている場合に1メモリセルの平均トランジスタ数は、(6×16+6)/16=6.375 個となる。この場合、従来の8T−SRAMは(8×16+2)/16=8.125 個である。よって、従来回路の 6.375/8.125 =78%となる。
【0029】
2-port SRAMではない、6TのSRAMと比較した場合、N5,N8をビット線を分割するのに必要なトランジスタとして計算すると、16行が接続されている場合に(6×16+2)/16=6.125 となる。よって、面積の増大は 6.375/6.125 =1.04となり、4%でよいことになる。
【0030】
なお、実施例1は、フリップフロップFFから外部のビット線に接続するトランスファートランジスタは1ポートであり、通常のシングルポートSRAMである。
【実施例2】
【0031】
図2は、本発明の記憶回路の実施例2の構成例を示す。
本実施例は、実施例1の構成において、読み出しポートのN6,N7,N9,N10をpMOSFETのP6,P7,P9,P10とした回路である。また、ビット線をプリチャージする電圧をVP2とする。
【0032】
読み出し時にビット線は、例えばP6の入力がLow、P10の入力がHighとすると、BL_NがVDDに接続され、BLがハイインピーダンス状態となる。ビット線をVDDよりも低いある電圧VP2に事前にプリチャージしておくと、BL_NはVP2からVDDに充電され、BLはVP2の電位を保つ。この状態を図1と同様にセンスアンプAで検出する。
【実施例3】
【0033】
図3は、本発明の記憶回路の実施例3の構成例を示す。
本実施例は、実施例2の構成において、対としている読み出しポートおよび書き込みポートを片側のビット線のみに配置した回路である。ビット線BL_NをVDDよりも低いある電圧VP2に事前にプリチャージしておき、BL_Nの電位がVp2からVDDに充電されているか、あるいはVp2の電位を保っているかを検出する。
【実施例4】
【0034】
図4は、本発明の記憶回路の実施例の構成例を示す。
本実施例は、実施例2の構成において、センスアンプAの代わりにセンスアンプBを接続した回路である。なお、ビット線をプリチャージする電圧をVDDとする。センスアンプBは、図7に示す従来のセンスアンプCと同様にフリップフロップのみの構成であるが、GND線を制御することを特徴とする。すなわち、最初、GND線をVDD電位としておき、その後VDDから緩やかに電位を低減させ、例えばGNDレベルまで電位を低減させる。
【0035】
読み出し動作は次のとおりである。まず、ビット線BL,BL_NをVDDに事前にプリチャージする。その後、WL,RWLをONする。N4を伝わる信号がLowでP6がON、N3を伝わる信号がHighでP10がOFFの場合には、BL_NはVDDに接続され、またBLはVDDの電位を保つものの、ハイインピーダンス状態となる。このとき、センスアンプBを用いて、BL_NをVDDに保ちつつ、BLの電位をVDDから緩やかに降下させる。BLの電位を降下させていき、たとえばGND電位まで降下させる。このように、センスアンプBにより、BLとBL_Nの状態を確実に、一方がVDD他方が例えばGNDとすることが可能となる。
【0036】
以上説明した実施例1〜実施例4によれば、SRAMにおいて読み出し回路を共有化して1メモリセルあたりのトランジスタ数を低減し、さらにSRAMにおいて対となるビット線を所定の電圧にプリチャージする回路構成を実現したり、あるいは、読み出しポートをpMOSにより構成することにより、回路構成の自由度を広げることができる。
【0037】
また、実施例1〜実施例4ではシングルポートSRAMを例に説明したが、特許文献2の図1,2のような2-port SRAM(デュアルポートSRAM)にも適用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0038】
A,B,C センスアンプ
P1,P2,P6,P7,P9,P10 pMOSFET
N1,N2,N3,N4,N5,N6,N7,N8,N9,N10 nMOSFET
BL,BL N ビット線
WL ワード線
FF フリップフロップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのインバータを用いて互いの出力を互いの入力とするフリップフロップと、該フリップフロップとビット線との間で信号を伝達するトランスファートランジスタとを有するメモリセルに対して、データの書き込みと読み出しを行う記憶回路において、
n型の第1のMOSFETと第2のMOSFETからなり、第1のMOSFETはソースがGNDに接続され、このゲートに複数のメモリセルのトランスファートランジスタからの読み出し信号を共通に入力し、このドレインと前記ビット線とを第2のMOSFETを介して接続する読み出し回路を備え、
前記データの読み出し時に前記ビット線を予め所定の電圧にプリチャージしておき、前記第2のMOSFETをONとしたときの前記ビット線の電圧降下をセンスアンプで検出することによりデータを読み出す構成である
ことを特徴とする記憶回路。
【請求項2】
2つのインバータを用いて互いの出力を互いの入力とするフリップフロップと、該フリップフロップとビット線との間で信号を伝達するトランスファートランジスタとを有するメモリセルに対して、データの書き込みと読み出しを行う記憶回路において、
p型の第1のMOSFETと第2のMOSFETからなり、第1のMOSFETはソースがVDDに接続され、このゲートに複数のメモリセルのトランスファートランジスタからの読み出し信号を共通に入力し、このドレインと前記ビット線とを第2のMOSFETを介して接続する読み出し回路を備え、
前記データの読み出し時に前記ビット線を予め所定の電圧にプリチャージしておき、前記第2のMOSFETをONとしたときの前記ビット線の電圧上昇をセンスアンプで検出することによりデータを読み出す構成である
ことを特徴とする記憶回路。
【請求項3】
請求項2に記載の記憶回路おいて、
前記読み出し回路は、対となるビット線のそれぞれのビット線に配置し、前記センスアンプは一方のビット線の電圧上昇を差動で検出し、データを読み出す構成である
ことを特徴とする記憶回路。
【請求項4】
請求項2に記載の記憶回路おいて、
前記読み出し回路は、対となるビット線の一方のビット線に配置し、前記センスアンプは一方のビット線の電圧上昇を単相で検出し、データを読み出す構成である
ことを特徴とする記憶回路。
【請求項5】
請求項3に記載の記憶回路おいて、
前記データの読み出し時に、対となるビット線の一方を電源電圧VDDでハイインピーダンス状態とし、他方をVDDに接続し、
前記センスアンプは、2つのインバータを用いて互いの出力を互いの入力とするフリップフロップを用い、該フリップフロップのGND線を電源電圧VDDからGNDへと低減させ、前記他方のビット線を前記VDDとしたまま、前記VDDでハイインピーダンス状態の一方のビット線をGND電位まで降下させ、これによりデータを読み出す構成である
ことを特徴とする記憶回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187126(P2011−187126A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51828(P2010−51828)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】