説明

記憶装置、通信システム、液体収容体、記憶装置の制御方法および記憶装置の検査方法

【課題】複数の記憶装置がバスを介して接続された場合に個別にアクセス可能な記憶装置、液体収容体、通信システム、記憶装置の制御方法、および記憶装置の検査方法を提供すること。
【解決手段】記憶装置20は、識別データ210および装置固有の固有データ211を記憶するメモリーアレイ21と、通信制御部30と、識別データ書換えユニット27と、を備えている。通信制御部30は、メモリーアレイ21へのアクセスに対し、指定されたアクセス先の装置を示すIDデータと識別データ210との比較により当該アクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する。識別データ書換えユニット27は、固有データ211から、データ信号端子DTを介したデータ通信の範囲内で固有となる更新識別データを決定し、識別データ210を更新識別データに書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピューターとのデータ通信を行う記憶装置、通信システム、液体収容体、記憶装置の制御方法および記憶装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターなどの液体噴射装置は、複数種類のインクカートリッジが装着されて、各インクカートリッジからインクの供給を受けることによって、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの複数色のインクを噴射するよう構成されている。
【0003】
特許文献1には、インクカートリッジに、プリンター本体側からのアクセスを制御する機能を有した記憶装置が取り付けられ、プリンター本体側とインクカートリッジの記憶装置とがバスを介して接続されたシステムが開示されている。記憶装置には、カートリッジの種類、すなわち収容するインクの種類に応じて予め決められた識別データが格納されており、プリンター本体側のコントローラーは、カートリッジの記憶装置にアクセスする際、アクセス対象とするカートリッジに対応するIDデータによってアクセス先を指定したデータ列を、バスを介して複数のインクカートリッジの各記憶装置に送出する。記憶装置は、データ列に含まれるIDデータと自身が格納する識別データとを比較して一致した場合に、コントローラーからメモリーアレイへのアクセスを許可する。したがって、プリンター本体側のコントローラーは、データ列に含まれるIDデータを適宜設定することにより、複数の記憶装置のうちの任意の記憶装置に対してアクセスすることができる。
【0004】
特許文献2には、交換部品の記憶装置に格納された識別データを参照することにより装着されたカートリッジの種類を判別し、同一種類の複数のカートリッジが装着されている場合には交換部品のメモリーに対して書き込みを行わないようにした画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−14870号公報
【特許文献2】特開2008−29184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、プリンターに同一種類の複数のカートリッジが装着された場合に、複数のカートリッジの各記憶装置に記憶された識別データが同一となるため、プリンター本体側から、アクセス対象とする記憶装置に対して個別にアクセスできなくなるという課題があった。すなわち、同一種類の複数のカートリッジがプリンターに装着された場合、プリンター本体側のコントローラーは、いずれかのカートリッジの記憶装置にアクセスすべく、アクセス対象の記憶装置に対応するIDデータを含むデータ列を送出する。このデータ列はバスを介して複数の記憶装置の各々に入力されると、複数の記憶装置の各々が格納する識別データは同一であるため、各記憶装置においてアクセスが許可されてコントローラーとのデータ通信が開始される。この結果、複数の記憶装置のそれぞれから、コントローラーとのデータ通信を行うべく信号がバスに送出されるため、バス上で信号が競合することとなって正しく通信できなくなることがあった。
【0007】
なお、同一種類の複数のカートリッジが装着される例としては、洗浄液を収容した洗浄用カートリッジが挙げられる。洗浄用カートリッジは、インク色に関わらずに共通のものが一般に用いられるため、複数種類のインクカートリッジを装着するために設けられた複数の装着位置のそれぞれに対して、同一種類の洗浄用カートリッジが装着される。このため、複数の洗浄用カートリッジがプリンターに装着された場合に、プリンター本体側のコントローラーは洗浄用カートリッジの記憶装置とのデータ通信ができなくなり、各洗浄用カートリッジに収容された洗浄液の残量などを個別に管理できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置であって、記憶部と、前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部と、前記記憶装置の固有データを記憶する固有データ記憶部と、アクセス先を指定する第2の識別データを含むアクセスに対し、前記第2の識別データと前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部と、前記第1の識別データを書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する書換え制御部と、を備え、前記書換え制御部は、前記固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える書換え部、を有することを特徴とする記憶装置。
【0010】
この構成によれば、識別データ書換えモードの動作により、固有データに基づいて決定される更新識別データは、データ信号端子を介したデータ通信の範囲内において固有なものとなる。このため、識別データ記憶部に記憶された第1の識別データを更新識別データに書き換えることにより、データ通信の範囲内で固有な第1の識別データを用いて通常アクセスモードの動作が行われるようになる。したがって、例えば、複数の記憶装置がバスを介して接続されたシステムにおいても、通常アクセスモードの動作により個別にアクセスされることが可能な記憶装置を得ることができる。
【0011】
[適用例2]上記記憶装置において、前記データ信号端子には、送出元の装置が前記第1の識別データの書き換えを行う旨を通知する書換え通知パルスが入力され、前記書換え制御部は、送出元である自装置が前記第1の識別データの書き換えを行う旨を通知する書換え通知パルスを、前記固有データにより定められるタイミングで前記データ信号端子を介して送出する送出部と、前記送出部による前記書換え通知パルスの送出より前に前記データ信号端子に前記書換え通知パルスが入力された回数を、カウントする第1のカウント部と、を有し、前記書換え部は、前記第1のカウント部のカウント値に基づいて前記更新識別データを決定することを特徴とする記憶装置。
【0012】
この構成によれば、書換え通知パルスの送出が、固有データにより定められるタイミングで行われるため、例えば、複数の記憶装置がバスを介して接続されたシステムにおいては、記憶装置ごとに異なるタイミングで書換え通知パルスが送出される。また、書換え通知パルスを送出した記憶装置とは異なる他の記憶装置は、この書換え通知パルスが入力されることで入力回数が増えることになる。このため、記憶装置が第1の識別データの書き換えを行う際、書換え通知パルスを送出するタイミングより前に入力された書換え通知パルスの入力回数は、他の記憶装置の入力回数と異なる値となり、データ通信の範囲内で重複することがない固有のものとなる。したがって、識別データ書換えモードの動作により、識別データは、データ通信の範囲内で固有な更新識別データに書き換えられることとなって、個別にアクセスされることが可能な記憶装置を得ることができる。
【0013】
[適用例3]上記記憶装置において、クロック信号が入力されるクロック信号端子を備え、前記書換え制御部は、前記クロック信号に含まれるパルス数をカウントする第2のカウント部を有し、前記送出部は、前記第2のカウント部のカウント値が前記固有データに対応する値になった時に、前記書換え通知パルスを送出することを特徴とする記憶装置。
【0014】
この構成によれば、クロック信号に含まれるパルス数のカウント値が固有データに対応する値になった時に書換え通知パルスが送出されるので、例えば、複数の記憶装置がバスを介して接続されたシステムにおいても、同じタイミングで書換え通知パルスが送出されることがなく、バス上で書換え通知パルスが競合することがない。したがって、識別データ書換えモードの動作により、識別データは、データ通信の範囲内で固有な更新識別データに確実に書き換えられることとなって、個別にアクセスされることが可能な記憶装置を得ることができる。
【0015】
[適用例4]上記記憶装置において、前記第1の識別データは、第3の識別データおよび第4の識別データを含み、前記書換え部は、前記第1の識別データのうち前記第4の識別データを前記更新識別データに書き換えることを特徴とする記憶装置。
【0016】
この構成によれば、第1の識別データのうち第4の識別データは更新識別データに書き換えされる一方、第3の識別データは書き換えられない。したがって、第3の識別データおよび第4の識別データを含む第1の識別データ全体としては、データ通信の範囲内で固有であるため、これを用いることで個別にアクセスされることが可能であるとともに、第2の識別データを用いることで、識別データ書換えモードによる書換え前の識別データを用いてアクセスされることも可能な記憶装置を得ることができる。
【0017】
[適用例5]上記記憶装置において、クロック信号が入力されるクロック信号端子と、リセット信号が入力されるリセット信号端子とを備え、前記書換え制御部は、前記クロック信号がハイのレベルを維持する期間において前記リセット信号のレベルが変化した場合に、識別データ書換えモードの動作を実行することを特徴とする記憶装置。
【0018】
この構成によれば、第1端子を介して入力されるクロック信号および第2端子を介して入力されるリセット信号により、記憶装置に識別データ書換えモードの動作を実行させることができる。通常、リセット信号によるリセットは、クロック信号がローの期間で、リセット信号がレベル変化することで実行される。そこで、クロック信号がハイのレベルを維持する期間においてリセット信号のレベルが変化する信号の組み合わせ、すなわち通常のリセットでは用いられない信号の組み合わせにより、識別データ書換えモードの動作を記憶装置に実行させる。これにより、識別データ書換えモードの動作を実行させるための特別な信号を伝送するための信号線や端子などの回路構成を記憶装置に新たに設ける必要がなく、記憶装置の回路規模を小さくできる。
【0019】
[適用例6]データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置であって、記憶部と、前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部と、アクセス先を指定する第2の識別データを含むアクセスに対し、前記第2の識別データと前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部と、前記第1の識別データを書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する書換え制御部と、を備え、前記データ信号端子には、送出元の装置が前記第1の識別データの書き換えを行う旨を通知する書換え通知パルスが入力され、前記書換え制御部は、送出元である自装置が前記第1の識別データの書き換えを行う旨を通知する書換え通知パルスを、前記データ信号端子を介して送出する送出部と、前記送出部による前記書換え通知パルスの送出より前に前記データ信号端子に前記書換え通知パルスが入力された回数を、カウントする第1のカウント部と、前記第1のカウント部のカウント値に基づいて前記更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える書換え部と、を有することを特徴とする記憶装置。
【0020】
この構成によれば、例えば、複数の記憶装置がバスを介して接続されたシステムにおいて、書換え通知パルスを送出した記憶装置とは異なる他の記憶装置は、この書換え通知パルスが入力されることにより入力回数が増えることになる。このため、記憶装置が第1の識別データの書き換えを行う際、書換え通知パルスを送出するタイミングより前に入力された書換え通知パルスの入力回数は、他の記憶装置の入力回数と異なる値となり、データ通信の範囲内で重複することがない固有のものとなる。したがって、識別データ書換えモードの動作により、識別データは、データ通信の範囲内で固有な更新識別データに書き換えられることとなって、個別にアクセスされることが可能な記憶装置を得ることができる。
【0021】
[適用例7]データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置を備える液体収容体であって、前記記憶装置は、記憶部と、前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部と、前記記憶装置の固有データを記憶する固有データ記憶部と、アクセス先を指定する第2の識別情報を含むアクセスに対し、前記第2の識別データと前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部と、前記第1の識別データを書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する書換え制御部と、を備え、前記書換え制御部は、前記固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える書換え部、を有することを特徴とする液体収容体。
【0022】
この構成によれば、識別データ書換えモードの動作により、通常アクセスモードの動作時において個別にアクセス可能な液体収容体を得ることができる。
【0023】
[適用例8]上記液体収容体において、前記第1の識別データは、収容する液体の種類を示すことを特徴とする液体収容体。
【0024】
この構成によれば、識別データ書換えモードの動作によって、収容する液体の種類を示す第1の識別情報が書き換えられることにより、通常アクセスモードの動作時において個別にアクセス可能な液体収容体を得ることができる。
【0025】
[適用例9]上記液体収容体において、収容する液体が洗浄液であることを特徴とする液体収容体。
【0026】
この構成によれば、識別データ書換えモードの動作により、通常アクセスモードの動作時において個別にアクセス可能な洗浄用の液体収容体を得ることができる。
【0027】
[適用例10]複数の記憶装置がバスを介して接続される通信システムであって、各記憶装置は、記憶部と、前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部と、前記記憶装置の固有データを記憶する固有データ記憶部と、アクセス先を指定する第2の識別情報を含むアクセスに対し、前記第2の識別データと前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部と、前記第1の識別データを書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する書換え制御部と、を備え、前記書換え制御部は、前記固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える書換え部、を有することを特徴とする通信システム。
【0028】
この構成によれば、識別データ記憶部に記憶された第1の識別データを更新識別データに書き換えることにより、バスを介したデータ通信の範囲内で固有な第1の識別データを用いて通常アクセスモードの動作が行われるようになるので、各記憶装置は、通常アクセスモードの動作により個別にアクセスされることができる。
【0029】
[適用例11]記憶部と、前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部とを有し、データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置の制御方法であって、アクセス先を指定する第2の識別情報を含むアクセスに対し、前記第2の識別情報と前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードで動作するステップと、前記記憶装置の固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える識別データ書換えモードで動作するステップと、を含むことを特徴とする記憶装置の制御方法。
【0030】
このようにすれば、識別データ書換えモードの動作により、識別データ記憶部に記憶された識別データが、データ通信の範囲内で固有の識別データに書き換えられるので、記憶装置は通常アクセスモードの動作時において個別にアクセス可能となる。
【0031】
[適用例12]記憶部と、前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部とを有し、データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置の検査方法であって、前記記憶装置の固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える識別データ書換えモードの動作を、複数の前記記憶装置のそれぞれに実行させるステップと、複数の前記記憶装置のそれぞれを、アクセス先を指定する第2の識別情報を含むアクセスに対し、前記第2の識別情報と前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードで動作させるステップと、前記通常アクセスモードで動作する前記記憶装置の前記記憶部に対して、書き換え後の前記第1の識別データに対応する前記第2の識別情報を含むアクセスにより、前記記憶装置の動作を検査するステップと、を含むことを特徴とする記憶装置の検査方法。
【0032】
このようにすれば、識別データ書換えモードの動作により、識別データ記憶部に記憶された識別データが、データ通信の範囲内で固有の識別データに書き換えられるので、複数の記憶装置に対して個別にアクセスして動作検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態に係る通信システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】カートリッジの概観斜視図である。
【図3】ホストコンピューターの構成を示したブロック図である。
【図4】データ列のデータ構造を示したブロック図である。
【図5】記憶装置内部の回路構成を示したブロック図である。
【図6】識別データ書換えユニットの構成を示したブロック図である。
【図7】各記憶装置が送出する信号例を示したタイミングチャートである。
【図8】バスを介して書換え通知パルスが入出力される様子を示した説明図である。
【図9】通信システムにおける処理の手順を示したフローチャートである。
【図10】識別データ書換えモードの処理の手順を示したフローチャートである。
【図11】通常アクセスモードの処理の手順を示したフローチャートである。
【図12】第2の実施形態における識別データの構成を示したブロック図である。
【図13】識別データの書換えを説明するための説明図である。
【図14】第3実施形態に係る検査システムの概略構成を示したブロック図である。
【図15】検査システムにおける処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態では、通信システムの一例として、インクジェットプリンターに備わる通信システムについて説明する。
【0035】
図1は、第1の実施形態に係る通信システムの概略構成を示した図である。図1に示すように、通信システム1は、複数の記憶装置20(20a〜20d)と、記憶装置20のホスト装置としてのホストコンピューター10とを含む。記憶装置20は、図2に示すように、4つのカートリッジ(液体収容体)C1〜C4にそれぞれ備えられるものである。4つのカートリッジC1〜C4の例としては、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの各色インクを収容したインクカートリッジや、洗浄液を収容した洗浄用カートリッジがある。もっとも、記憶装置20の数およびカートリッジの種類についてはこれに限られるものではない。また、ホストコンピューター10の例としては、インクジェットプリンターの本体側に配置されたプリンタコントローラーなどが挙げられる。
【0036】
記憶装置20は、インクカートリッジに設けられたメモリモジュール基板上に配置され、クロック信号端子CT、データ信号端子DTおよびリセット信号端子RTを有している。クロック信号端子CTにはクロック信号線CLが接続されており、クロック信号線CLはクロックバスCBを介してホストコンピューター10に接続されている。データ信号端子DTにはデータ信号線DLが接続されており、データ信号線DLはデータバスDBを介してホストコンピューター10に接続されている。リセット信号端子RTにはリセット信号線RLが接続されており、リセット信号線RLはリセットバスRBを介してホストコンピューター10に接続されている。
【0037】
図3は、ホストコンピューター10の構成を示した図である。図3に示すように、ホストコンピューター10は、クロック信号生成回路11、電源回路12、電源補償回路13、データ記憶回路14および各回路を制御する制御回路15を備える制御装置である。ホストコンピューター10は、印刷制御の他、記憶装置20a〜20dへのアクセス制御や、インク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを記憶装置20から取得してデータ記憶回路14に記憶する制御などを行う。
【0038】
電源補償回路13は、電源の供給が遮断された場合にも所定の期間(例えば、0.3s)、記憶装置20に電源を供給する。これにより、停電、電源プラグが抜かれることによってデータ書き込み中の電源が遮断されても、上述した所定期間の間に書き込みを優先すべきデータの書き込みを完了することができる。電源補償回路13としては、例えば、コンデンサーが用いられる。
【0039】
制御回路15は、電源回路12を制御して正電源および正電源よりも電位の低い基準電位の基準電源の出力を制御する。ホストコンピューター10は、各記憶装置20a〜20dに対して常時電源を供給しておらず、記憶装置20a〜20dに対するアクセス要求が発生した場合にのみ、記憶装置20a〜20dに対して正電源および基準電源を供給する。
【0040】
クロック信号生成回路11は、クロック信号SCKを生成する。生成されたクロック信号SCKは、クロック信号線CLを介して各記憶装置20a〜20dに供給される。
【0041】
また、制御回路15は、記憶装置20とのデータ通信を制御する。制御回路15は、記憶装置20とデータ通信する際、所定のフォーマットに従うデータ列を送出する。
【0042】
次に、ホストコンピューター10と記憶装置20との間のデータ通信で用いられるデータ列のデータ構造について説明する。図4は、データ列のデータ構造を示した図である。なお、図4(a)は、記憶装置20へのアクセスを開始する際に、ホストコンピューター10が送出するデータ列100aを示している。図4(b)、(c)は、記憶装置20にデータを書き込む際に、ホストコンピューター10と記憶装置20との間で送受信されるデータ列を示しており、(b)はホストコンピューター10が送出するデータ列100b、(c)は記憶装置20が送出するデータ列100cを示している。図4(d)、(e)は記憶装置20からデータを読み出す際に、ホストコンピューター10と記憶装置20との間で送受信されるデータ列を示しており、(d)はホストコンピューター10が送出するデータ列100d、(e)は記憶装置20が送出するデータ列100eを示している。
【0043】
まず、アクセスを開始する際に用いられるデータ列100aについて説明する。図4(a)に示すように、ホストコンピューター10が送出するデータ列100aには、IDデータ110が含まれる。IDデータ110は、例えば、3ビットのデータであり、プリンターに装着された複数のインクカートリッジの各記憶装置20a〜20dのうちから、アクセスの対象とする記憶装置20、すなわちアクセス先を指定するための識別データである。なお、IDデータ110が第2の識別データに相当する。ホストコンピューター10は、このIDデータ110を含むデータ列100aを送出することにより、IDデータ110に対応する記憶装置20に対して、データの書き込みまたは読み出しのアクセスを開始する。
【0044】
次に、書き込み時に用いられるデータ列100b、100cについて説明する。図4(b)に示すように、書き込み時にホストコンピューター10が送出するデータ列100bには、書き込みコマンド120と、ライトデータ130とが含まれる。書き込みコマンド120は、記憶装置20に対して書き込みの処理を指定するコマンドである。ライトデータ130は、書き込みコマンド120で指定された書き込みの対象となるデータである。
【0045】
記憶装置20は、上述したデータ列100bを受け取ると、メモリーアレイ21にライトデータ130を書き込むための処理を行い、書き込みを正常に行えた場合に、データ列100cをホストコンピューター10に送出する。図4(c)に示すように、データ列100cには、書き込みを正常に行えたことを示すACKデータ140が含まれる。ホストコンピューター10は、ACKデータ140を受け取ることにより、データ列100bに従うデータの書き込みが正常に行えたことを認識する。
【0046】
次に、読み出し時に用いられるデータ列100d、100eについて説明する。図4(d)に示すように、読み出し時にホストコンピューター10が送出するデータ列100dには、読み出しコマンド150が含まれる。読み出しコマンド150は、記憶装置20に対して読み出しの処理を指定するコマンドである。
【0047】
記憶装置20は、上述したデータ列100dを受け取ると、読み出しコマンド150に応じてメモリーアレイ21からデータを読み出すための処理を行い、読み出しが成功した場合、データ列100eをホストコンピューター10に送出する。図4(e)に示すように、データ列100eには、メモリーアレイ21から読み出したデータがリードデータ160として含まれている。ホストコンピューター10は、データ列100eを受け取ることにより、データ列100dに従うデータの読み出しが正常に行えたことを認識するとともに、メモリーアレイ21から読み出されたデータを取得する。
【0048】
以上に述べたように、ホストコンピューター10と記憶装置20との間の通信は、データ列100(100a〜100e)に従って行われる。
【0049】
制御回路15は、インクジェットプリンターの電源投入時、インクカートリッジの交換時、印刷ジョブの終了時、インクジェットプリンターの電源遮断時などに、上述したデータ列100に従うデータ通信により記憶装置20a〜20dに対するアクセスを実行する。
【0050】
なお、ホストコンピューター10から記憶装置20にアクセスする場合、ホストコンピューター10は、データ通信によるアクセスに先立って記憶装置20にリセットを実行させる必要がある。すなわち、記憶装置20は、リセットにより初期化された後にアクセス可能に構成されている。このため、ホストコンピューター10の制御回路15は、インクジェットプリンターの電源投入時、インクカートリッジの交換時、印刷ジョブの終了時、インクジェットプリンターの電源遮断時など、ホストコンピューター10から記憶装置20にアクセスする場合に記憶装置20に対してリセット信号RSTを送出する。
【0051】
次に、記憶装置20の構成について説明する。図5は、記憶装置20内部の回路構成を示したブロック図である。なお、以下では、1つの記憶装置20の内部構成を例に挙げて説明するが、各記憶装置20a〜20dの内部構成は、メモリーアレイに格納されているデータを除いて同じである。
【0052】
図5に示すように、記憶装置20は、メモリーアレイ21と、アドレスカウンター22と、メモリーコントローラー23と、IDコンパレーター24と、オペレーションコードデコーダー25と、I/Oコントローラー26と、識別データ書換えユニット27と、を備えている。なお、記憶装置20の構成のうち、アドレスカウンター22、IDコンパレーター24、オペレーションコードデコーダー25およびI/Oコントローラー26が、後述する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部30に相当する。
【0053】
メモリーアレイ21は、EEPROMやフラッシュROMなど、不揮発的に記憶内容を保持すると共に記憶内容を書き換え可能なメモリーであり、例えば、256ビットなどの所定容量の記憶領域を有している。メモリーアレイ21には、識別データ210および固有データ211が格納されている。識別データ210は、インクカートリッジの種類、すなわちインクカートリッジが収容するインクの種類に応じて予め決められた情報であり、メモリーアレイ21のアドレス空間の先頭に格納されている。固有データ211は、例えば、カートリッジCの製造年月日を示す時間情報、シリアルナンバーなどを含むカートリッジ固有の情報であり、メモリーアレイ21の記憶領域のうち読み出し専用に設定された所定の記憶領域に格納されている。なお、メモリーアレイ21が記憶部に相当し、メモリーアレイ21の記憶領域のうち、第1の識別データに相当する識別データ210を記憶する記憶領域が識別データ記憶部、固有データ211を記憶する記憶領域が固有データ記憶部に相当する。
【0054】
アドレスカウンター22は、クロック信号SCKに同期してそのカウント値をインクリメントする回路であり、クロック信号端子CT、リセット信号端子RTおよびメモリーアレイ21と接続されている。アドレスカウンター22のカウント値とメモリーアレイ21の記憶領域位置(アドレス)とは関連付けられており、アドレスカウンター22のカウント値によってメモリーアレイ21における書き込み位置または読み出し位置を指定することができる。
【0055】
また、アドレスカウンター22は、リセット信号RSTが入力されると、カウント値を初期値にリセットすることにより初期化を行う。ここで、初期値はメモリーアレイ21の先頭位置と関連付けられていればどのような値でもよく、例えば、”0”が初期値として用いられる。
【0056】
メモリーコントローラー23は、メモリーアレイ21、アドレスカウンター22およびI/Oコントローラー26に接続されており、I/Oコントローラー26の制御に従ってメモリーアレイ21の記憶領域のうち、アドレスカウンター22が指定するアドレスの領域への情報の書き込み/読み出しを実行する。具体的には、メモリーアレイ21から情報を読み出してI/Oコントローラー26に受け渡す処理や、I/Oコントローラー26から書き込み対象の情報を受け取ってメモリーアレイ21の記憶領域に書き込む処理などを行う。
【0057】
IDコンパレーター24は、クロック信号端子CT、データ信号端子DT、リセット信号端子RT、I/Oコントローラー26およびオペレーションコードデコーダー25と接続されており、データ信号端子DTを介して入力されるデータ列100に含まれるIDデータ110とメモリーアレイ21に格納されている識別データ210とを比較して一致するか否かを判定する。また、IDコンパレーター24は、ホストコンピューター10から入力されたIDデータ110を格納する3ビットの第1レジスター240と、I/Oコントローラー26を介してメモリーアレイ21から取得した識別データ210を格納する第2レジスター241とを有している。IDコンパレーター24は、第1レジスター240に格納されたIDデータ110と、第2レジスター241に格納された識別データ210とが一致する場合に、ホストコンピューター10からメモリーアレイ21へのアクセスを許可する旨のアクセス許可信号ENをオペレーションコードデコーダー25に送出する。
【0058】
なお、IDコンパレーター24は、リセット信号RSTの入力により初期化を行う。IDコンパレーター24の初期化は、第1レジスター240および第2レジスター241に格納された情報をクリアすることによって行われる。初期化後のIDコンパレーター24は新たなIDデータ110の入力待ちの状態となり、この状態においてホストコンピューター10からデータ列100が送出されると、データ列100に含まれるIDデータ110を取得して第1レジスター240に格納するよう構成されている。また、IDコンパレーター24は、IDデータ110を第1レジスター240に格納した後などの所定のタイミングで、I/Oコントローラー26を介してメモリーアレイ21から識別データ210を取得して第2レジスター241に格納する。
【0059】
オペレーションコードデコーダー25は、クロック信号端子CT、データ信号端子DT、IDコンパレーター24およびI/Oコントローラー26と接続されており、ホストコンピューター10から送出されたデータ列100より読み出し/書き込みコマンド120を取得する。オペレーションコードデコーダー25は、IDコンパレーター24からアクセス許可信号ENが入力されると、取得した読み出し/書き込みコマンド120を解析して、解析結果に応じて書き込み処理要求または読み出し処理要求をI/Oコントローラー26に送出する。
【0060】
I/Oコントローラー26は、クロック信号端子CT、データ信号端子DT、リセット信号端子RT、メモリーコントローラー23およびオペレーションコードデコーダー25と接続されており、オペレーションコードデコーダー25からの要求に従ってメモリーアレイ21に対するデータ転送方向ならびにデータ信号端子DTに対するデータ転送方向を切り換え制御する。
【0061】
また、I/Oコントローラー26は、リセット信号RSTの入力により初期化を行う。I/Oコントローラー26の初期化は、メモリーアレイ21に対するデータ転送方向を読み出し方向に設定し、データ信号端子DTと接続されている信号線をハイインピーダンスとすることでデータ信号端子DTに対するデータ転送を禁止することによって行われる。こうして初期化した状態は、オペレーションコードデコーダー25から書き込み処理要求または読み出し処理要求が入力されるまで維持される。したがって、リセット信号RSTが入力された後にデータ信号端子DTを介して入力されるデータ列100の先頭4ビットのデータはメモリーアレイ21に書き込まれることはない。
【0062】
ホストコンピューター10から記憶装置20にアクセスする場合、ホストコンピューター10は、アクセス対象とする装置に対応するIDデータ110を含むデータ列100を、データバスDBを介して各記憶装置20に送出する。各記憶装置20側では、IDコンパレーター24は、ホストコンピューター10から送られたIDデータ110と自装置の識別データ210とを比較して、一致した場合にメモリーアレイ21へのアクセスを許可することにより、アクセス対象とした記憶装置20とホストコンピューター10との間でデータ通信が行われる。なお、このような動作を行うときの記憶装置20の動作モードを、通常アクセスモードという。
【0063】
ここで、インクカートリッジに代えて、洗浄用カートリッジがインクジェットプリンターに装着される場合には、同一種類のカートリッジCが複数装着されることになる。しかしながら、プリンターに同一種類のカートリッジCが複数装着されている場合、プリンター本体側のホストコンピューター10から、アクセス対象の記憶装置20に個別にアクセスできなくなることがある。これは、各カートリッジCの識別データ210が同一になるため、アクセス対象とするカートリッジCに対応するIDデータ110を含むデータ列100を、ホストコンピューター10側からデータバスDBを介して各記憶装置20に送出した場合に、データ列が入力された各々の記憶装置20がアクセス可能な状態になってしまうからである。このため、ホストコンピューター10とアクセス対象としたカートリッジCの記憶装置20だけでなく、アクセス対象としていないカートリッジCの記憶装置20との間でもデータ通信が開始されてしまう。結果、各記憶装置20から送出される信号がデータバスDBにおいて競合することとなって、ホストコンピューター10が、本来アクセス対象としていた記憶装置20とのデータ通信ができずにアクセスできなくなる事態が生じる。
【0064】
そこで、本実施形態に係る通信システム1では、複数の洗浄用カートリッジが装着されている場合に対応するため、ホストコンピューター10は、記憶装置20を識別データ書換えモードで動作させる。識別データ書換えモードは、記憶装置20に格納されている識別データ210を、少なくとも、通信システム1内におけるバスを介したデータ通信の範囲内において固有の識別データ、すなわち、同じプリンターに装着されている複数のカートリッジの記憶装置20間で重複しない識別データに書き換えるモードである。
【0065】
記憶装置20には、識別データ書換えモードの動作を行うため、識別データ書換えユニット27が備えられている。識別データ書換えユニット27は、クロック信号端子CT、データ信号端子DT、リセット信号端子RT、およびI/Oコントローラー26と接続されており、図6に示すように、モード切替え制御部270と、クロック数カウント部(第2のカウント部)271と、書換え通知パルス送出部(送出部)272と、書換え通知パルスカウント部(第1のカウント部)273と、書換え処理部(書換え部)274とを有している。
【0066】
モード切替え制御部270は、クロック信号端子CTおよびリセット信号端子RTと接続されており、クロック信号SCKのレベルとリセット信号RSTのレベルとに応じて、通常アクセスモードと識別データ書換えモードとの切替えを制御する。なお、本実施形態では、クロック信号SCKのレベルがハイとなっている期間に、リセット信号RSTのレベルがローからハイに立ち上がったタイミングにおいて、モード切替え制御部270は、ホストコンピューター10から識別データ書換えモードへの移行が要求されたと判断して、識別データ書換えモードに移行する。もっとも、ホストコンピューター10からの移行要求の形態としてはこれに限られるものではなく、例えば、ホストコンピューター10から所定のコマンドを受信した場合に、識別データ書換えモードに移行するようにしてもよい。
【0067】
クロック数カウント部271は、クロック信号端子CTに接続されており、識別データ書換えモードに切り替わった後、クロック信号SCKに含まれるクロックパルスのパルス数をカウントする。
【0068】
書換え通知パルス送出部272は、データ信号端子DTに接続されており、自装置が識別データを書き換える旨の書換え通知パルスを、データ信号線DLからデータバスDBを介して他の記憶装置20に送出する。本実施形態においては、書換え通知パルスの送出は、データ信号線DL上に所定の波形を有するパルスを出力して、このパルスがデータバスDBを介して各記憶装置20およびホストコンピューター10に送出されることにより行われる。書換え通知パルスカウント部273は、データ信号端子DTおよび書換え処理部274に接続されており、他の記憶装置20から送出され、データ信号線DLを介して入力された書換え通知パルスのパルス数N2をカウントする。
【0069】
書換え処理部274は、I/Oコントローラー26に接続されており、識別データ書換えモードにおける識別データ210の書換えを制御する。書換え処理部274は、I/Oコントローラー26を介して、メモリーアレイ21に記憶された固有データ211を取得する処理、クロック数カウント部271のカウント値が固有データ211に対応する値に到達したタイミングで、書換え通知パルス送出部272に書換え通知パルスを送出させる処理を行う。これにより、データバスDBを介して接続された他の記憶装置20の各々およびホストコンピューター10に対して、書換え通知パルスの送出元である自装置が識別データ210の書き換えを行う旨を通知する。さらに、書換え処理部274は、書換え通知パルスを送出した時において他の記憶装置20から入力済みとなっていた書換え通知パルスのパルス数から更新識別データ212を決定する処理、I/Oコントローラー26を介して、メモリーアレイ21に記憶された識別データ210を更新識別データ212に書き換える処理を行う。
【0070】
次に、識別データ書換えモードの動作の概要について説明する。図7は、識別データ書換えモードにおけるリセット信号RST、クロック信号SCKおよびデータ信号SDAの一例を示したタイミングチャートである。図8は、識別データ書換えモードにおいて書換え通知パルスが送出される様子を示した図である。なお、図7,8は、記憶装置20aの固有データ211が”126”、記憶装置20bの固有データ211が”6”、記憶装置20cの固有データ211が”237”、記憶装置20dの固有データ211が”15”であるときの例を示している。
【0071】
まず、各記憶装置に電源が供給されたのち、自身が通常アクセスモードで動作するのか識別書き換えモードで動作するのかを決定するために、各記憶装置のモード切替え制御部270は、クロック信号SCKとリセット信号RSTを監視しており、クロック信号SCKのレベルがハイとなっている期間に、リセット信号RSTのレベルがハイに変化するレベル変化を検出すると(図7の時刻T0)、ホストコンピューター10から識別データ書換えモードへの移行が要求されたと判断して、識別データ書換えモードに移行する。なお、移行要求を構成する信号は、クロックバスCBおよびリセットバスRBを介して各記憶装置20a〜20dに入力されるため、各記憶装置20a〜20dは同時に識別データ書換えモードに移行する。
【0072】
識別データ書換えモードに移行すると、各記憶装置20a〜20dにおいて、クロック数カウント部271がクロック信号SCKのパルス数N1のカウントを開始し、記憶装置20a〜20d間でカウントが同時に進行する。次に、記憶装置20a〜20dのうち、パルス数N1のカウント値が自装置の固有データ211の値に到達した記憶装置20は、データバスDBを介して他の記憶装置20に書換え通知パルスを送出する。
【0073】
図7,8の例では、記憶装置20a〜20dのうち、記憶装置20bの固有データ211(=6)が最も小さい。このため、クロック信号SCKのパルス数のカウント値N1が”6”になると(時刻T1)、記憶装置20bはデータ信号線DLを介してデータバスDBに書換え通知パルスP1を送出する(図8(a)参照)。この結果、他の記憶装置20a,20c,20dに記憶装置20bからの書換え通知パルスP1が入力されることとなって、各記憶装置20についての書換え通知パルスP1の入力回数N2は、記憶装置20aの入力回数N2=1、記憶装置20bの入力回数N2=0、記憶装置20cの入力回数N2=1、記憶装置20dの入力回数N2=1となる。このとき、書換え通知パルスを送出した記憶装置20bは、自身の書換え通知パルスの入力回数N2=0から自身の更新識別データ212を決定する。本実施形態では、入力回数N2に1を加算した値を更新識別データ212とすることとし、記憶装置20bの更新識別データは”1”に決定される。もっとも、書換え通知パルスの入力回数N2から更新識別データ212を決定する方法についてはこれに限られることなく、例えば、入力回数N2自体を更新識別データとしてもよいし、入力回数N2を所定の演算式によって変換した値を更新識別データとしてもよい。
【0074】
次に、クロック数カウント部271によるカウント値N1が、2番目に値が小さい記憶装置20dの固有データ211の値(=15)に到達すると(時刻T2)、記憶装置20dはデータバスDBに書換え通知パルスP2を送出する(図8(b)参照)。この結果、記憶装置20aの入力回数N2=2、記憶装置20cの入力回数N2=2、記憶装置20dの入力回数N2=1となる。書換え通知パルスを送出した記憶装置20dは、自身の入力回数N2に対して1を加算した値”2”を、記憶装置20dの更新識別データ212に決定する。
【0075】
次に、クロック数カウント部271によるカウント値N1が、3番目に値が小さい記憶装置20aの固有データ211の値(=126)に到達すると(時刻T3)、記憶装置20aはデータバスDBに書換え通知パルスP3を送出する(図8(c)参照)。この結果、記憶装置20aの入力回数N2=2、記憶装置20cの入力回数N2=3となる。書換え通知パルスを送出した記憶装置20aは、自身の入力回数N2に対して1を加算した値”3”を、記憶装置20aの更新識別データ212に決定する。
【0076】
次に、クロック数カウント部271によるカウント値N1が、記憶装置20cの固有データ211の値(=237)に到達すると(時刻T4)、記憶装置20cはデータバスDBに書換え通知パルスP4を送出する(図8(d)参照)。書換え通知パルスを送出した記憶装置20dは、書換え通知パルスの入力回数N2=3に対して1を加算した値”4”を記憶装置20aの更新識別データ212に決定する。
【0077】
以上のようにして、図7,8の例では、データバスDBを介したデータ通信の範囲内にある記憶装置20a〜20dについて、固有データ211の値が小さい順に更新識別データ212が決定され、記憶装置20bの更新識別データ212が”1”、記憶装置20dの更新識別データ212が”2”、記憶装置20aの更新識別データ212が”3”、記憶装置20cの更新識別データ212が”4”に決定される。したがって、各記憶装置20の更新識別データ212は、データバスDBを介したデータ通信の範囲内で重複がなく、固有のものとなる。そして、各記憶装置20は、自身のメモリーアレイ21に格納された識別データ210を更新識別データ212に書き換えることにより、プリンターに装着された複数のカートリッジC間で重複することがなく、データバスDBを介したデータ通信の範囲内で固有な識別データ210が設定される。
【0078】
なお、データバスDBに送出された書換え通知パルスは、ホストコンピューター10にも入力される。ホストコンピューター10の制御回路15は、入力された書換え通知パルスの数をカウントすることにより、装着されたカートリッジの記憶装置20に割り当てられた識別データの範囲を特定する。図7,8の例では、ホストコンピューター10には、計4回の書込み通知パルスP1〜P4が入力されるので、記憶装置20a〜20dに対して”1”〜”4”の識別データが割り当てられたことを認識する。以後、ホストコンピューター10は、これらの識別データを用いて各記憶装置20へのアクセスを行う。
【0079】
図9は、ホストコンピューター10によって行われる処理および記憶装置20によって行われる処理の手順を示したフローチャートである。以下、通信システム1において行われる処理について、図9のフローチャートに従って詳細に説明する。
【0080】
インクジェットプリンターの電源投入時、インクカートリッジや洗浄用カートリッジの交換時などに、図9の処理が開始される。処理が開始されると、ホストコンピューター10の制御回路15は、識別データ書換えモードへの移行条件が成立したか否かを判断する(ステップS10)。識別データ書換えモードへの移行条件が成立する例としては、ユーザー操作などによって、プリンターに装着された洗浄用カートリッジによってインクジェットヘッド内の流路を洗浄するための洗浄モードに移行した場合や、ホストコンピューター10から、プリンターに装着されたカートリッジCの記憶装置20へのアクセスを試みた結果、同一種類の複数のカートリッジCが装着されていたためにアクセスできなかった場合などが挙げられる。識別データ書換えモードへの移行条件が成立すると(ステップS10:Yes)、制御回路15は、電源回路12により記憶装置20に電源を供給する(ステップS11)。そして、クロック信号SCKのレベルをハイとするとともにリセット信号RSTのレベルをハイとすることにより、プリンターに装着された各カートリッジの記憶装置20a〜20dに対して、識別データ書換えモードへの移行を要求する(ステップS12)。なお、識別データ書換えモードへの移行条件が成立しなかった場合は(ステップS10:No)、図9の処理は終了する。
【0081】
一方、記憶装置20は、ホストコンピューター10から電源の供給を受けると電源オンの状態となって起動し、識別データ書換えユニット27のモード切替え制御部270は、クロック信号SCKおよびリセット信号RSTを監視する(ステップS20)。その後、クロック信号SCKがハイ、且つリセット信号RSTがハイとなる信号の組み合わせを検出すると、識別データ書換えモードへの移行要求があったものと判断して(ステップS21)、モード切替え制御部270は、記憶装置20を識別データ書換えモードに移行させる(ステップS22)。これにより、記憶装置20は識別データ書換えモードで動作する(ステップS23)。なお、ホストコンピューター10から送出される移行要求は、クロックバスCBおよびリセットバスRBを介して各記憶装置20a〜20dに送出されるので、複数の記憶装置20a〜20dのそれぞれは同時に識別データ書換えモードに移行する。
【0082】
次に、識別データ書換えモードの動作について、図10のフローチャートに従って説明する。識別データ書換えモードに移行すると、書換え処理部274は、クロック数カウント部271にクロック信号SCKのパルス数N1のカウントを開始させる(ステップS30)。
【0083】
次に、ステップS31〜S33において、クロック信号SCKのパルス数N1が固有データ211の値に等しくなるまで、書き換え通知の入力回数N2がカウントされる。ここでは、書換え通知パルスカウント部273は、他の記憶装置20から書換え通知パルスが入力されたか否かを判断し、入力された場合(ステップS31:Yes)、カウント値を1つインクリメントする(ステップS32)。ステップS31の判断において、書換え通知パルスが入力されていない場合は(ステップS31:No)、入力回数のカウント値をインクリメントすることなく、ステップS33に進む。ステップS33では、書換え処理部274は、クロック信号SCKのパルス数N1が固有データ211の値に等しくなったかを判断し、クロック信号SCKのパルス数N1が固有データ211の値より小さい場合(ステップS33:No)、ステップS31に戻ってステップS31〜S32の処理を繰り返す。そして、クロック信号SCKのパルス数N1が固有データ211の値に等しくなると(ステップS33:Yes)、ステップS34に進む。これにより、各記憶装置20a〜20dは、自身の固有データ211の値に応じて互いに異なるタイミングにおいて、ステップS34以降の処理が行われる。
【0084】
ステップS34に処理が進むと、書換え通知パルス送出部272は、データ信号線DLからデータバスDBを介して他の記憶装置20に書換え通知パルスを出力する。このとき、他の記憶装置20は、書換え通知パルスが入力される。次に、書換え処理部274は、書換え通知パルスの入力回数N2に基づいて更新識別データ212を決定し(ステップS35)、I/Oコントローラー26を介して、メモリーアレイ21に格納された自装置の識別データ210を更新識別データ212に書き換える(ステップS36)。
【0085】
以上に述べた識別データ書換えモードの動作により、例えば、複数の洗浄用カートリッジがプリンターに装着されていた場合であっても、複数のカートリッジの各記憶装置20のメモリーアレイ21には、データバスDBを介したデータ通信の範囲内で固有の識別データ210が格納される。これにより、以後、記憶装置20側では、書き換えられた識別データを用いた通常アクセスモードの動作が行われるようになる。
【0086】
図9の処理に戻って、ホストコンピューター10は、データバスDBを介して入力される書換え通知パルスの入力数をカウントしており、書換え通知パルスの入力回数N2に”1”を加算するなど、記憶装置20と同様の手法で入力回数N2から更新識別情報を求めることにより、複数の記憶装置20に割り当てられた更新識別データ212を取得する(ステップS13)。これにより、以後、更新識別データ212をIDデータ110として用いて記憶装置20にアクセスすることが可能となる。
【0087】
次に、ホストコンピューター10は、リセット信号をローにしてから(ステップS15)、記憶装置20への電源供給を遮断することにより、記憶装置20の電源をオフにする(ステップS16)。記憶装置20側では、リセット信号がローであることを検出すると、識別データ書換えユニット27を初期化して(ステップS24)、その後、ホストコンピューター10からの電源供給が遮断されることによって電源オフの状態となる(ステップS25)。
【0088】
次に、通常アクセスモードにおける動作について、図11のフローチャートに従って説明する。インクジェットプリンターの電源投入時、インクカートリッジの交換時、印刷ジョブの終了時、インクジェットプリンターの電源遮断時などに、図11の処理が開始される。処理が開始されると、ホストコンピューター10は、記憶装置20に電源を供給し(ステップS40)、リセット信号RSTをハイにする(ステップS41)。
【0089】
一方、記憶装置20側では、ホストコンピューター10から電源の供給を受けると電源オンの状態となって起動して(ステップS50)、さらにリセット信号RSTがハイとなっていることを検出すると、記憶装置20のリセットが行われる(ステップS51)。記憶装置20のリセットにより、アドレスカウンター22はカウント値をクリアし、IDコンパレーター24は第1レジスター240および第2レジスター241をクリアする。I/Oコントローラー26は、メモリーアレイ21に対するデータ転送方向を読み出し方向に設定すると共に、データ信号端子DTと接続されている信号線をハイインピーダンスにしてデータ転送を禁止する。
【0090】
記憶装置20がリセットされると、次に、ホストコンピューター10と記憶装置20との間においてデータ列100に従うデータ通信が開始される。ここでは、ホストコンピューター10は、まず、IDデータ110を送信し(ステップS42)、記憶装置20は、ホストコンピューター10からIDデータ110を受信する(ステップS52)。このとき、IDコンパレーター24は、IDデータ110を第1レジスター240に格納する。
【0091】
次に、IDコンパレーター24は、I/Oコントローラー26を介してメモリーアレイ21に記憶された識別データ210を取得して第2レジスター241に格納し、第1レジスター240に格納したIDデータ110と、第2レジスター241に格納した識別データ210とが一致しているか否かを判定する(ステップS53)。IDデータ110と識別データ210とが一致していれば(ステップS53:Yes)、ホストコンピューター10と記憶装置20との間でデータ列100に従うデータ通信が行われて(ステップS43)、メモリーアレイ21へのアクセス制御が行われる。記憶装置20側では、オペレーションコードデコーダー25およびI/Oコントローラー26が、受信した書き込みコマンド120、ライトデータ130、読み出しコマンド150に応じた処理を行うことにより、ホストコンピューター10からメモリーアレイ21への書き込みまたは読み出しのアクセスを制御する(ステップS54)。なお、ステップS53の判断において、IDデータ110と識別データ210とが一致していない場合は(ステップS53:No)、ホストコンピューター10からメモリーアレイ21へのアクセスが禁止される。
【0092】
ホストコンピューター10と記憶装置20との間のデータ通信が終了すると、ホストコンピューター10は、リセット信号をローにしてから(ステップS44)、記憶装置20への電源供給を遮断することにより、記憶装置20の電源をオフにする(ステップS45)。記憶装置20側では、リセット信号がローであることを検出すると、識別データ書換えユニット27を初期化して(ステップS55)、その後、ホストコンピューター10からの電源供給が遮断されることによって電源オフの状態となる(ステップS56)。
【0093】
以上に述べた第1の実施形態によれば、通信システム1の各記憶装置20a〜20dは、識別データ書換えモードの動作により、メモリーアレイ21に記憶された識別データ213が、データバスDBを介したデータ通信の範囲内で固有となる更新識別データ212に書き換えられる。したがって、プリンターに、例えば、洗浄用カートリッジなど同一の種類のカートリッジCが複数装着された場合であっても、識別データ書換えモードの動作を行うことにより、以後、ホストコンピューター10は、通常アクセスモードで動作する各カートリッジの記憶装置20に個別にアクセスすることができる。
【0094】
また、各記憶装置20a〜20dは、クロック信号SCKのカウント値が、自身がもつ固有データ211の値に到達した時、すなわち固有データ211に基づく固有のタイミングでデータバスDBを介して書換え通知パルスを送出するようにしている。このため、複数の書換え通知パルスが同時にデータバスDBに送出されることによって、各記憶装置20が書換え通知パルスの入力回数N2のカウントを誤ってしまうことがなく、更新識別データ212を、データ通信の範囲内で確実に固有となるものに書き換えることができる。
【0095】
なお、固有データ211をそのまま更新識別データ212とした場合にも、更新識別データ212はデータ通信の範囲内で固有となるため、ホストコンピューター10から各カートリッジの記憶装置20に個別にアクセスすることが可能である。しかしながら、固有データ211は製造年月日や製品のシリアル番号などを含むため、更新識別データ212の情報量が多くなってしまう。第1の実施形態では、書換え通知パルスの入力回数N2から更新識別データ212を定めるようにしたので、例えば、固有データ211をそのまま更新識別データ212とする場合に比べると、更新識別データ212の情報量は小さくなる。したがって、更新識別データ212に書き換えられる識別データ210を記憶するための記憶領域を小さくすることができる。さらに、識別データ210の情報量が小さくなることに対応して、データ列100に含まれるIDデータ110の情報量も小さくできるため、ホストコンピューター10、記憶装置20間のデータ通信を高速化できる。
【0096】
また、クロック信号SCKおよびリセット信号RSTがハイになったときに、識別データ書換えモードに移行するように制御しているので、識別データ書換えモードの動作を実行させるための特別な信号を伝送するための信号線や端子などの回路構成を記憶装置20に新たに設ける必要がなく、記憶装置の回路規模を小さくできる。
【0097】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、メモリーアレイ21に格納された識別データ210を更新識別データ212に書き換えるようにしたが、第2の実施形態では、識別データの一部分を更新識別データ212で書き換える。なお、以下では、第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付与し、詳細な説明を省略することとする。
【0098】
図12に、第2の実施形態に係る識別データのデータ構造を示す。図12に示すように、識別データ213は、付加識別データ214と固定識別データ215とを有しており、例えば、8ビットの識別データ213のうち、上位4ビットが付加識別データ214、下位の4ビットが固定識別データ215となっている。
【0099】
付加識別データ214は、例えば、”0000”などの所定値が初期値とされており、識別データ書換えモードの動作により、書換え処理部274は、付加識別データ214を更新識別データ212に書き換える。一方の固定識別データ215は、カートリッジの種類、すなわち収容するインクや洗浄液の種類に応じて決められた識別情報であり、書換え処理部274は固定識別データ215を書き換えないようになっている。なお、固定識別データ215が第3の識別データ、付加識別データ214が第4の識別データに相当する。
【0100】
図13に、識別データ書換えモードにおける書換え前後の識別データ213の例を示す。図13(a)に示すように、書換え前の識別データ213は、付加識別データ214の初期値は”0000”であり、固定識別データ215には、洗浄用カートリッジであることを示す”0110”となっている。したがって、書換え前の識別データ213のビット列は”00000110”である。
【0101】
識別データ書換えモードによる識別データの書換えが行われると、図13(b)に示すように、付加識別データ214が書き換えられる一方で、固定識別データ215については書き換えられない。なお、図13の例は、第1の実施形態の図7,8にて説明した記憶装置20aに対応しており、記憶装置20aの更新識別データが”3”であったことから、付加識別データ214は”0011”に書き換えられる。したがって、識別データ書換えモードによる書換え後の識別データ213のビット列は”00110110”となる。書換え後の識別データ213は、付加識別データ214を含むため、プリンター1に装着された記憶装置20間で固有の値となる。
【0102】
以上に述べた第2の実施形態によれば、識別データ書換えモードにおいて、識別データ213のうちの一部である付加識別データ214が書き換えられることにより、記憶装置20間で固有の識別データ213が得られるので、第1の実施形態と同様にホストコンピューター10から記憶装置20に対して個別にアクセスすることが可能である。
【0103】
また、識別データ書換えモードによって識別データ213を書き換えた後においても、固定識別データ215については書き換えられていないので、洗浄用カートリッジであることを示す情報”0110”が残っている。これにより、例えば、識別データ書換えモードによって識別データ213を書換えられた洗浄用カートリッジが、他のプリンターに装着された場合に、他のプリンターは、固定識別データ215から判断して、装着されたカートリッジを洗浄用カートリッジと判断することが可能である。したがって、いったん識別データ書換えモードによって識別データ210を書き換えた後においても、書き換えが行われていないカートリッジと同様に用いることが可能であり、より使い勝手に優れたカートリッジを提供できるようになる。
【0104】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、複数の同一種類のインクカートリッジについて動作検査を行う検査システムについて説明する。
【0105】
図14は、第3の実施形態に係る検査システムの構成を示した図である。図14に示すように、検査システム2は検査装置40を含んでおり、検査装置40のカートリッジ装着部41には複数のインクカートリッジが装着される。また、検査装置40は、ホストコンピューター42を備えており、ホストコンピューター42は、クロック信号線CL、データ信号線DL、リセット信号線RLによって、それぞれクロックバスCB、データバスDB、リセットバスRBを介して、各インクカートリッジの記憶装置20と接続されている。すなわち、検査装置40には、第1の実施形態と同様の構成をもつ通信システムが構築されている。
【0106】
図15のフローチャートに従って、検査システム2の動作について説明する。例えば、検査対象とする複数のインクカートリッジが検査装置40に装着された状態で、検査開始を指示する所定の操作が行われると、図15の処理が開始される。処理を開始すると、検査装置40は、記憶装置20に電源を供給して電源をオンにしてから(ステップS60)、クロック信号SCKのレベルをハイとするとともにリセット信号RSTのレベルをハイとすることにより、装着された各インクカートリッジの記憶装置20に対して、識別データ書換えモードへの移行を要求する(ステップS61)。
【0107】
一方、記憶装置20は、検査装置40から電源が供給されると電源がオンの状態となって起動し、識別データ書換えユニット27のモード切替え制御部270は、識別データ書換えモードへの移行要求があるまではクロック信号SCKおよびリセット信号RSTを監視する(ステップS70)。そして、クロック信号SCKがハイ、且つリセット信号RSTがハイとなる信号の組み合わせを検出すると、識別データ書換えモードへの移行要求があったと判断して(ステップS71)、記憶装置20は、識別データ書換えモードに移行し(ステップS72)、識別データ書換えモードの動作を行う(ステップS73)。なお、検査装置40から送出される移行要求は、クロックバスCBおよびリセットバスRBを介して各記憶装置20a〜20dに送出されるので、複数の記憶装置20a〜20dのそれぞれは同時に識別データ書換えモードに移行する。識別データ書換えモードの動作を終えると、通常アクセスモードに移行する(ステップS74)。なお、識別データ書換えモードの動作については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0108】
また、記憶装置20が識別データ書換えモードで動作しているとき、検査装置40のホストコンピューター42は、データバスDBを介して入力される書換え通知パルスの入力数をカウントし、記憶装置20と同様の手法で入力回数N2から更新識別情報を求めることにより、複数の記憶装置20に割り当てられた更新識別データ212を取得する(ステップS62)。次に、この更新識別データ212をIDデータ110として用いて、検査装置40が記憶装置20にアクセスすると(ステップS63)、検査装置40と記憶装置20との間でデータ列100に従うデータ通信が行われて、メモリーアレイ21へのアクセス制御が行われる(ステップS75)。このとき、検査装置40は、メモリーアレイ21への情報の書き込み動作や読み出し動作などを各記憶装置20に実行させることにより、記憶装置20の動作検査を行う(ステップS64)。動作検査を終えると、検査装置40は、記憶装置20への電源供給を遮断することにより、記憶装置20の電源をオフにする(ステップS65)。一方、記憶装置20側では、検査装置40からの電源供給が遮断されることによって電源オフの状態となる(ステップS76)。
【0109】
以上に述べた検査システム2によれば、検査装置40のホストコンピューター42は、検査装置40に装着された複数のインクカートリッジの各記憶装置20に個別にアクセスして、各記憶装置20の動作検査を行うことができる。したがって、例えば、検査装置に1つずつインクカートリッジを装着して動作検査を行う場合に比べて、インクカートリッジの検査に要する工数を著しく低減できる。
【0110】
以上、本発明の第1ないし第3の実施形態について説明したが、本発明はこれらの形態に限られることなく、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。その趣旨に逸脱しない範囲で様々な態様とすることもできる。以下、変形例について説明する。
【0111】
(変形例1)
上記第1,2の実施形態では、同一種類のカートリッジがプリンターに複数装着される例として、複数の洗浄用カートリッジが装着される場合を例に挙げて説明したが、記憶装置を備えるカートリッジの例としてはこれに限られない。例えば、モノクロ印刷の印刷可能枚数を増やすため、ブラックのインクを収容したインクカートリッジを複数個装着できるように構成されたプリンターの場合、識別データ書換えモードの動作により、ブラックのインクカートリッジのそれぞれに備わる記憶装置20について個別にアクセスすることが可能となる。もちろん、同一種類のインクカートリッジのインク色としてはブラックに限られない。
【0112】
(変形例2)
上記第1ないし第3の実施形態では、識別データ210および固有データ211を、記憶装置20のメモリーアレイ21に記憶する構成としたが、記憶装置20内にメモリーアレイ21とは別の記憶部を設け、この記憶部に識別データ210および固有データ211の一方または両方を格納する構成としてもよい。
【0113】
(変形例3)
上記第1ないし第3の実施形態では、インクジェットプリンター用のインクカートリッジにインクカートリッジ情報を格納するための記憶装置20を備えた構成について説明したが、本発明に係る記憶装置および通信システムはこの態様に限られるものではない。本発明は、例えば、レーザープリンターのトナーカートリッジや現像ユニットなど、様々な交換部品に設けられる記憶装置、およびこの記憶装置を含む通信システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1…通信システム、10…ホストコンピューター、20…記憶装置、21…記憶部、識別データ記憶部、固有データ記憶部としてのメモリーアレイ、27…書換え制御部としての識別データ書換えユニット、30…通信制御部、100…データ列、110…第2の識別データとしてのIDデータ、210…第1の識別データとしての識別データ、211…固有データ、212…更新識別データ、214…第4の識別データとしての付加識別データ、215…第3の識別データとしての固定識別データ、270…モード切替え制御部、271…第2のカウント部としてのクロック数カウント部、272…送出部としての書換え通知パルス送出部、273…第1のカウント部としての書換え通知パルスカウント部、274…書換え部としての書換え処理部、C…液体収容体としてのカートリッジ、CT…クロック信号端子、DT…データ信号端子、RT…リセット信号端子、SCK…クロック信号、SDA…データ信号、RST…リセット信号、P1〜P4…書換え通知パルス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置であって、
記憶部と、
前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部と、
前記記憶装置の固有データを記憶する固有データ記憶部と、
アクセス先を指定する第2の識別データを含むアクセスに対し、前記第2の識別データと前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部と、
前記第1の識別データを書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する書換え制御部と、を備え、
前記書換え制御部は、
前記固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える書換え部、を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶装置において、
前記データ信号端子には、送出元の装置が前記第1の識別データの書き換えを行う旨を通知する書換え通知パルスが入力され、
前記書換え制御部は、
送出元である自装置が前記第1の識別データの書き換えを行う旨を通知する書換え通知パルスを、前記固有データにより定められるタイミングで前記データ信号端子を介して送出する送出部と、
前記送出部による前記書換え通知パルスの送出より前に前記データ信号端子に前記書換え通知パルスが入力された回数を、カウントする第1のカウント部と、を有し、
前記書換え部は、
前記第1のカウント部のカウント値に基づいて前記更新識別データを決定することを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記憶装置において、
クロック信号が入力されるクロック信号端子を備え、
前記書換え制御部は、
前記クロック信号に含まれるパルス数をカウントする第2のカウント部を有し、
前記送出部は、前記第2のカウント部のカウント値が前記固有データに対応する値になった時に、前記書換え通知パルスを送出することを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の記憶装置において、
前記第1の識別データは、第3の識別データおよび第4の識別データを含み、
前記書換え部は、前記第1の識別データのうち前記第4の識別データを前記更新識別データに書き換えることを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の記憶装置において、
クロック信号が入力されるクロック信号端子と、リセット信号が入力されるリセット信号端子とを備え、
前記書換え制御部は、前記クロック信号がハイのレベルを維持する期間において前記リセット信号のレベルが変化した場合に、識別データ書換えモードの動作を実行することを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置であって、
記憶部と、
前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部と、
アクセス先を指定する第2の識別データを含むアクセスに対し、前記第2の識別データと前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部と、
前記第1の識別データを書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する書換え制御部と、を備え、
前記データ信号端子には、送出元の装置が前記第1の識別データの書き換えを行う旨を通知する書換え通知パルスが入力され、
前記書換え制御部は、
送出元である自装置が前記第1の識別データの書き換えを行う旨を通知する書換え通知パルスを、前記データ信号端子を介して送出する送出部と、
前記送出部による前記書換え通知パルスの送出より前に前記データ信号端子に前記書換え通知パルスが入力された回数を、カウントする第1のカウント部と、
前記第1のカウント部のカウント値に基づいて前記更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える書換え部と、を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項7】
データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置を備える液体収容体であって、
前記記憶装置は、
記憶部と、
前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部と、
前記記憶装置の固有データを記憶する固有データ記憶部と、
アクセス先を指定する第2の識別情報を含むアクセスに対し、前記第2の識別データと前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部と、
前記第1の識別データを書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する書換え制御部と、を備え、
前記書換え制御部は、
前記固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える書換え部、を有することを特徴とする液体収容体。
【請求項8】
請求項7に記載の液体収容体において、
前記第1の識別データは、収容する液体の種類を示すことを特徴とする液体収容体。
【請求項9】
請求項7または8に記載の液体収容体において、
収容する液体が洗浄液であることを特徴とする液体収容体。
【請求項10】
複数の記憶装置がバスを介して接続される通信システムであって、
各記憶装置は、
記憶部と、
前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部と、
前記記憶装置の固有データを記憶する固有データ記憶部と、
アクセス先を指定する第2の識別情報を含むアクセスに対し、前記第2の識別データと前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードの動作を制御する通信制御部と、
前記第1の識別データを書き換える識別データ書換えモードの動作を制御する書換え制御部と、を備え、
前記書換え制御部は、
前記固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える書換え部、を有することを特徴とする通信システム。
【請求項11】
記憶部と、前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部とを有し、データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置の制御方法であって、
アクセス先を指定する第2の識別情報を含むアクセスに対し、前記第2の識別情報と前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードで動作するステップと、
前記記憶装置の固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える識別データ書換えモードで動作するステップと、を含むことを特徴とする記憶装置の制御方法。
【請求項12】
記憶部と、前記記憶部へのアクセスを識別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶部とを有し、データ信号端子を介したデータ通信を行う記憶装置の検査方法であって、
前記記憶装置の固有データに基づいて更新識別データを決定し、前記第1の識別データを前記更新識別データに書き換える識別データ書換えモードの動作を、複数の前記記憶装置のそれぞれに実行させるステップと、
複数の前記記憶装置のそれぞれを、アクセス先を指定する第2の識別情報を含むアクセスに対し、前記第2の識別情報と前記第1の識別データとの比較により前記記憶部へのアクセスを許可する通常アクセスモードで動作させるステップと、
前記通常アクセスモードで動作する前記記憶装置の前記記憶部に対して、書き換え後の前記第1の識別データに対応する前記第2の識別情報を含むアクセスにより、前記記憶装置の動作を検査するステップと、を含むことを特徴とする記憶装置の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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