説明

記録ディスクへのパターン書き込み方法及びデータ記憶装置

【課題】SSWにおける誤差伝播防止のためのサーボ補正を効率的に行う。
【解決手段】サーボ位置信号生成部231は、サーボ・チャネル211からのサーボ信号に基づいて、リード素子の現在位置を示すサーボ位置信号を生成する。ターゲット位置設定部232は、リード素子がフォロしているトラック書き込み時のPESと予め登録されている補正係数との積和演算により補正値を生成する。この補正値と基準ターゲット位置とから補正ターゲット位置を生成し、位置誤差量算出部233に出力する。位置誤差量算出部233は、サーボ位置信号とターゲット位置信号とから位置誤差信号(PES)を生成し、サーボ・コントローラ234に出力する。サーボ・コントローラ234は、PESに従って制御信号(DACOUT)を生成し、モータ・ドライバ・ユニット22はその制御信号に従って所定値の電流をVCM15に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転する記録ディスクにパターンを書き込む方法及びそれを実行するデータ記憶装置に関し、特に、記録ディスクへのパターン書き込みにおける、サーボ補正処理に関する。
【背景技術】
【0002】
データ記憶装置として、光ディスクや磁気テープなどの様々な態様のメディアを使用する装置が知られている。その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができない記憶装置の一つとなっている。さらに、コンピュータ・システムにとどまらず、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システム、携帯電話、あるいはデジタル・カメラなどで使用されるリムーバブルメモリなど、HDDの用途は、その優れた特性により益々拡大している。
【0003】
HDDで使用される磁気ディスクは、同心円状に形成された複数のトラックを有しており、各トラックにはサーボ・データと、ユーザ・データが記憶される。薄膜素子で形成されたヘッド素子部がサーボ・データに従って所望の領域(アドレス)にアクセスすることによって、データ書き込みあるいはデータ読み出しを行うことができる。データ読み出し処理において、ヘッド素子部が磁気ディスクから読み出した信号は、信号処理回路によって波形整形や復号処理などの所定の信号処理が施され、ホストに送信される。ホストからの転送データは、信号処理回路によって同様に所定処理された後に、磁気ディスクに書き込まれる。
【0004】
上述のように、各トラックはユーザ・データが記憶されるユーザ・データ領域とサーボ・データが記憶されるサーボ・パターン領域とを備えている。サーボ・パターンは、シリンダID、セクタ番号、バースト・パターンなどから構成されている。シリンダIDはトラックのアドレス、セクタ番号はトラック内のセクタ・アドレスを示す。バースト・パターンはトラックに対する磁気ヘッドの相対位置情報を有している。
【0005】
サーボ・パターンは各トラックにおいて円周方向に離間して複数セクタ形成されており、全トラックに渡る各セクタのサーボ・パターンは、円周方向において位置(位相)が揃っている。磁気ディスクに対するデータの読み出しまたは書き込みは、磁気ディスクが回転している状態において、サーボ・データによって磁気ヘッドの位置を確認しながら実行される。
【0006】
サーボ・パターンは、製品としてのHDDが出荷される前に工場内において磁気ディスクに書き込まれる。従来の典型的なサーボ・パターンの書き込みは、外部装置としてのサーボ・ライタを使用して行われている。トップ・カバーを外した状態のHDDがサーボ・ライタにセットされ、サーボ・ライタはHDD内のヘッドをポジショナ(外部位置決め機構)によって位置決めし、サーボ・パターン生成回路が生成したサーボ・パターンを磁気ディスクに書き込む。
【0007】
現在、サーボ・データの書き込み工程(Servo Track Write:STW)は、HDDの製造コストの中で主要な位置を占めている。特に近年、HDDは高容量化の競争が激化し、これに伴いTPI(Track Per Inch)の増加が進んでいる。TPIが増加する事により、Track数は増え、Track幅が小さくなる、これらはSTW時間の増加及びサーボ・ライタの高精密化を進め、STWのコスト増加の要因となっている。このコストを削減する為にサーボ・ライタのコスト削減、STW時間の短縮等が進められている。
【0008】
例えば、SSW(Self Servo Write)は、HDD本体のメカ部分のみを使い、外部回路からHDD内のスピンドル・モータとボイス・コイル・モータをコントロールし、外部回路を用いてサーボ・パターンを書き込む。これによって、サーボ・ライタのコスト削減を図っている。
【0009】
SSWの手法として、ヘッド素子部のリード素子とライト素子の半径方向位置が異なる(これをリード・ライト・オフセットと呼ぶ)ことを利用して、内周側もしくは外周側にすでに書き込まれたサーボ・パターンをリード素子が読み出しながら位置決めを行い、ライト素子が、リード・ライト・オフセット離れた所望のトラックに新たなサーボ・パターンを書きこむものが知られている。
【0010】
このように、新たなトラックを書き込むサーボ・パターンの自己伝播において、基本的には読み出すサーボ・パターンの半径方向の精度が、そのまま新たな書き込むサーボ・パターンに受け継がれることが期待される。しかしながら、種々の誤差を引き起こす要因のため、この精度は伝播によって劣化していく。位置決め精度低下は、バースト・パターンの本来あるべき位置からのずれを引き起こし、これが次の伝播のときに引き継がれていく。また、このプロセスは、ヘッド素子部をトラック・フォロさせるためのサーボ・ループの係数にも依存する。このように、精度の劣化は、種々の要因が絡んだ複雑なメカニズムである。
【0011】
この伝播によるトラック・フォロの精度の劣化を防ぐためにSSWでは次のような方法が、特許文献1において提唱されている。例えば、現在トラックTOをトラック・フォロし、新たなトラックTNを書こうとしている場合を考える。トラックTOを書き込んだ時のトラック・フォロの位置誤差信号(Position Error Signal:PES)を記憶しておく。このPESのフーリエ変換を行い、これに基準修正係数をかける。この修正係数はヘッド素子部の位置決めサーボの閉ループ応答の周波数成分のうち、ゲインの大きい成分に対して(これは通常小さい周波数のいくつかの成分のみに限定されるが)準備されるものである。次にこれを逆フーリエ変換して、トラックTNにトラック・フォロするときの各セクタでのターゲット値の補正をする。これによって半径方向の伝播誤差を抑えている。
【特許文献1】特開平8−212733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に開示された補正方法は、各セクタのターゲット値への補正において、(1)PESに対する離散的フーリエ変換、(2)係数をかけることによるフーリエ変換のゲインの大きい成分の抑制、(3)離散的逆フーリエ変換による補正値の算出、(4)ターゲット基準位置に補正値を加えて新しいターゲット位置を取得、となる。この補正処理は、各トラックの書き込みの際に、セクタ毎に実行することが必要である。しかし、フーリエ変換及び逆フーリエ変換をセクタ毎に繰り返すことは非常に大きな演算パワーを必要とする。このような処理は、専用のサーボ・ライタに実装されたDSPであれば可能であるが、HDD内に実装されている内部回路を使用してこの作業を短時間に行うことは困難を伴う。
【0013】
本発明は上述のような事情を背景としてなされたものであって、記録ディスクへのパターン自己書き込みにおいて、誤差累積を抑制するサーボ補正を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様は、回転する記録ディスク上において、サーボ制御によってリード素子で第1トラックをフォロしながら、半径位置の異なるライト素子で、前記第1トラックの各セクタのパターンを基準としてその第1トラックと異なる第2トラックの各セクタのパターンを書き込む方法であって、前記第1トラックの複数セクタのサーボ・パターンを書き込み、前記第1トラックの書き込み時における各セクタに対応する前記リード素子のターゲット位置からの位置誤差量と、サーボ・ループの選択された周波数におけるサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を抑える予め登録された係数群との積和演算により補正値を算出し、前記補正値によってサーボ制御の補正を行って、前記リード素子を前記第1トラックの各セクタについて位置決めし、位置決めした状態で前記ライト素子によって前記第1トラックの各セクタを基準として前記第2トラックに各セクタのパターンを書き込むものである。
【0015】
前記第1トラックの書き込み時における各セクタに対応する前記リード素子のターゲット位置からの位置誤差量と、サーボ・ループの選択された周波数におけるサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を抑える予め登録された係数群との積和演算により補正値を算出することによって、位置誤差の伝播累積を抑制するサーボ制御補正のための補正値を効率的に算出することができ、演算パワーの小さいプロセッサであっても容易にサーボ制御補正を行うことができる。ここで、前記サーボ制御補正は、前記補正値によって前記第1トラックの各セクタに対するターゲット位置を補正するものとすることが好ましい。
【0016】
前記係数群は、前記記録ディスクの回転周波数の整数倍の全ての周波数において前記サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度が1未満となるように設定されていることが好ましい。これによって、位置誤差の伝播累積をより効果的に抑制することができる。
【0017】
さらに、前記第1トラックの各セクタに対する補正値の算出は、そのセクタを含む連続する複数セクタであって、前記第1トラックの全セクタ数よりも少ない複数セクタの書き込み時の各位置誤差量と、前記係数群との積和演算によって行うことが好ましい。これによって、誤差累積を抑制しつつ、補正値算出の演算処理を減らすことができる。さらに、前記第1トラックの各セクタに対する補正値の算出は、そのセクタの前及び後のセクタを含む連続する複数セクタの書き込み時の各位置誤差量と前記係数群との積和演算によって行うことが好ましい。あるいは、前記第1トラックの各セクタに対する補正値の算出は、そのセクタの前及び後のそれぞれ一定数のセクタを含む連続する複数セクタと前記係数群との積和演算によって行うことが好ましい。これによって、位置誤差の伝播累積をより効果的に抑制することができる。
【0018】
前記係数群は、前記記録ディスクの回転周波数の整数倍の複数周波数において前記サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を小さくするように設定されていることが好ましい。これによって、位置誤差の伝播累積を効率的に抑制することができる。
【0019】
前記係数群を、予め決められたトラック数ごとに再演算により算出し、算出された係数群を使用してその後のパターン書き込みにおけるサーボ制御補正を実行することが好ましい。これによって、ことなるトラック位置に対する適切な補正を行うことができる。
【0020】
本発明の他の態様は、記録ディスク上に、各トラックのパターンを書きこむデータ記憶装置であって、回転する記録ディスクと、前記記録ディスクに書き込まれており、複数セクタのパターンを含む第1トラックを、サーボ制御によってフォロするリード素子と、前記リード素子と半径位置が異なり、前記第1トラックの各セクタを基準として、前記第1のトラックと異なる第2トラックに、各セクタのパターンを書き込むライト素子と、前記第1トラックの書き込み時における各セクタに対応する前記リード素子のターゲット位置からの位置誤差量と、サーボ・ループの選択された周波数におけるサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を抑える予め登録された係数群との積和演算により補正値を算出し、その補正値によって補正したサーボ制御によって、前記第1トラックの各セクタにおいて前記リード素子を位置決めするコントローラとを備える。
【0021】
前記第1トラックの書き込み時における各セクタに対応する前記リード素子のターゲット位置からの位置誤差量と、サーボ・ループの選択された周波数におけるサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を抑える予め登録された係数群との積和演算により補正値を算出することによって、位置誤差の伝播累積を抑制するサーボ制御補正のための補正値を効率的に算出することができ、演算パターの小さいプロセッサであっても容易にサーボ制御補正を行うことができる。ここで、前記コントローラは、算出された補正値を使用して前記第1トラックの各セクタに対応するターゲット位置を補正することによってサーボ制御補正を行うことができる。
【0022】
前記係数群は、前記記録ディスクの回転周波数の整数倍の全ての周波数においてサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度が1未満となるように設定されていることが好ましい。これによって、効果的に伝播誤差累積を抑制することができる。
【0023】
前記コントローラは、前記第1トラックの各セクタについて、そのセクタを含む連続する複数セクタであって、前記第1トラックの全セクタ数よりも少ない複数セクタの各位置誤差量と、前記係数群との積和演算によって前記補正値を算出することが好ましい。これによって、より効率的な演算処理によって位置誤差の伝播累積を抑制することができる。さらに、前記コントローラは、前記第1トラックの各セクタについて、当該セクタの前及び後のセクタを含む連続複数セクタの各位置誤差量と、前記係数群との積和演算によって前記補正値を算出することが好ましい。これによって、より効果的に位置誤差の伝播累積を抑制することができる。
【0024】
前記係数群は、前記記録ディスクの回転周波数の整数倍の複数周波数において前記サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度が1未満となるように設定されていることが好ましい。
【0025】
前記コントローラは、前記第1トラックのフォロ前に、フーリエ逆変換、補正ゲイン・マトリックス及びフーリエ変換のマトリックス積に相当する演算によって前記係数群を予め算出して登録することができる。
【0026】
前記コントローラはFIRフィルタを備え、前記係数群をそのFIRフィルタの重み係数とし、前記第1トラックの位置誤差量を順次入力して、各セクタに対する前記補正値を生成することができる。これによって、効率的な演算によって補正値を算出することができる。さらに、効率的な演算の点から、前記重み係数は前記第1のトラックの全てのセクタに対して同一であることが好ましい。あるいは、前記FIRフィルタのタップ数は、前記第1トラックのセクタ数よりも小さく、各セクタの補正値の算出において、そのセクタを含む連続する複数セクタの位置誤差量が各タップからの値となっていることが好ましい。これによって、より効率的な演算処理によって位置誤差の伝播累積を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、記録ディスクへのパターン自己書き込みにおいて、誤差累積を抑制するサーボ補正を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0029】
本実施形態は、データ記憶装置におけるメディアへの自己パターン書き込み、つまり、自らメディアに書き込んだパターンを基準として新たなパターンを書き進む処理に関する。特に、自己パターン書き込みにおけるヘッド位置制御に関する。本形態においては、データ記憶装置の一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)における、サーボ・パターンの自己書き込み処理を例として、本発明を説明する。
【0030】
HDDにおいて、その内部機構を使用してサーボ・パターンを書き込む自己サーボ書き込み(Self Servo Write(SSW))が知られている。好ましい実施形態のHDDにおいて、従来のSSWにおいて外部回路が行っていた機能が、製品カード(完成品としてのHDDの各ICが実装されている基板)上の内部回路自体に組み込まれている。これによって、HDDは、外部装置としてのサーボ・ライタ装置に直接的に依存することなく、実質的に内部構成のみによって磁気ディスクへのサーボ・パターン書き込み処理を実行することができる。HDDは、外部の制御装置からのスタート信号に応答して内部回路に実装された機能によってサーボ・パターンを磁気ディスクに書き込む。
【0031】
そこで、本形態におけるSSWの処理について説明する前に、本形態のSSWを実行するHDDの全体構成について、その概略を説明する。図1は、HDD1の概略構成を示すブロック図である。HDD1は、密閉されたエンクロージャ10内に、メディア(記録媒体)の一例である磁気ディスク11、ヘッド素子部12、アーム電子回路(アームエレクトロニクス:AE)13、スピンドル・モータ(SPM)14、ボイス・コイル・モータ(VCM)15、そしてアクチュエータ16を備えている。
【0032】
HDD1は、エンクロージャ10の外側に固定された回路基板20を備えている。回路基板20上には、リード・ライト・チャネル(R/Wチャネル)21、モータ・ドライバ・ユニット22、ハードディスク・コントローラ(HDC)とMPUの集積回路(以下、HDC/MPU)23、及び揮発性メモリの一例であるRAM24などの各ICを備えている。尚、各回路構成は一つのICに集積すること、あるいは、複数のICに分けて実装することができる。
【0033】
外部ホスト51からのライト・データは、HDC/MPU23によって受信され、R/Wチャネル21、AE13を介して、ヘッド素子部12によって、不揮発性の記録媒体である磁気ディスク11に書き込まれる。また、磁気ディスク11に記憶されているリード・データはヘッド素子部12によって読み出され、そのリード・データは、AE13、R/Wチャネル21を介して、HDC/MPU23から外部ホスト51に出力される。
【0034】
次に、HDD1の各構成要素について説明する。磁気ディスク11は、SPM14に固定されている。SPM14は所定の速度で磁気ディスク11を回転する。HDC/MPU23からの制御データに従って、モータ・ドライバ・ユニット22がSPM14を駆動する。本例の磁気ディスク11は、データを記録する記録面を両面に備え、各記録面に対応するヘッド素子部12が設けられている。
【0035】
各ヘッド素子部12はスライダ(不図示)に固定されている。また、スライダはアクチュエータ16に固定されている。アクチュエータ16はVCM15に連結され、回動軸を中心に揺動することによって、ヘッド素子部12(及びスライダ)を磁気ディスク11上において半径方向に移動する。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの制御データ(DACOUT)に従ってVCM15を駆動する。
【0036】
ヘッド素子部12には、磁気ディスク11への記録データに応じて電気信号を磁界に変換するライト素子、及び磁気ディスク11からの磁界を電気信号に変換するリード素子を備えている。この点については後述する。なお、磁気ディスク11は、1枚以上あればよく、記録面は磁気ディスク11の片面あるいは両面に形成することができる。
【0037】
続いて各回路部の説明を行う。AE13は、複数のヘッド素子部12の中からデータ・アクセスが行われる1つのヘッド素子部12を選択し、選択されたヘッド素子部12により再生される再生信号を一定のゲインで増幅(プリアンプ)し、R/Wチャネル21に送る。また、R/Wチャネル21からの記録信号を選択されたヘッド素子部12に送る。SSWにおいては、AE13は選択したヘッド素子部12が読み出したサーボ信号をR/Wチャネル21に転送し、全てのヘッド素子部12に対してR/Wチャネル21からのライト・データ(サーボ・データ)を転送する。
【0038】
R/Wチャネル21は、ホスト51から転送されたデータについて、ライト処理を実行する。ライト処理において、R/Wチャネル21はHDC/MPU23から供給されたライト・データをコード変調し、更にコード変調されたライト・データをライト信号に変換してAE13に供給する。また、ホスト51にデータを供給する際にはリード処理を行う。リード処理において、R/Wチャネル21はAE13から供給されたリード信号を一定の振幅となるように増幅し、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。読み出されるデータは、ユーザ・データとサーボ・データを含む。デコード処理されたリード・データは、HDC/MPU23に供給される。R/Wチャネル21はクロック回路を備え、SSWのタイミング制御は、R/Wチャネル21が生成するクロック信号に従って実行される。
【0039】
HDC/MPU23において、MPUはRAM24にロードされたマイクロコードに従って動作する。HDD1の起動に伴い、RAM24には、MPU上で動作するマイクロコードの他、制御及びデータ処理に必要とされるデータが磁気ディスク11あるいはROM(不図示)からロードされる。HDC/MPU23は、コマンド実行順序の管理、サーボ・データを使用したヘッド素子部12のポジショニング制御、インターフェース制御、ディフェクト管理などのデータ処理に関する必要な処理の他、HDD1の全体制御を実行する。SSWは、HDC/MPU23の制御の下において実行される。
【0040】
図2は、SSWの手法を概略的に示している。SSWは、内周(ID)側もしくは外周(OD)側サーボ・トラック(TO)に書き込まれているパターン(PO)をヘッド素子部12内のリード素子121で読み出しながら、外周側もしくは内周側サーボ・トラック(TN)に配置されたヘッド素子部12内のライト素子122で新たなパターン(PN)を書き込む。つまり、リード素子121が基準トラックTOの各セクタのサーボ・パターンをフォロしながら、各セクタの検出から所定タイミング後にライト素子122がトラックTNに新たなサーボ・パターンPNを書きこむ。ヘッド素子部12を外周側もしくは内周側に順次移動させながらパターンを書き進めることによって、磁気ディスク11全面にサーボ・パターンを書き込むことができる。
【0041】
SSWは、いくつかのシーケンスから構成されている。磁気ディスク11上には、最終的にユーザ・データのリード/ライトのための最終的なサーボ・パターン(Product Servo Pattern)が全面に書きこまれる。その書き込みのために、磁気ディスク11上のProduct Servo Patternを使用してProduct Servo Patternを書き進めるシーケンス(Product Servo Patternの自己伝播)の他に、初期シーケンスにおいて、他のタイプのパターンを使用してProduct Servo Patternを書き込む。本発明のパターン自己書き込みは、サーボ制御が可能であれば、いずれのパターンの自己書き込みにも利用することができるが、以下においてはProduct Servo Patternの自己伝播処理の例について詳細に説明する。以下、Product Servo Patternをサーボ・パターンと呼ぶ。
【0042】
図3は、本形態のヘッド素子部12におけるリード素子121とライト素子122の位置関係を示している。本例において、リード素子121がライト素子122よりも磁気ディスク11の内周(ID)側に配置されている。内周側からパターンを書き込むことによって、ライト素子122により先に書き込まれたパターンをリード素子121が読み取ることができる。これによって、リード素子121が読み取ったパターンによってヘッド素子部12の位置合わせを行いながら、ライト素子122が新たなパターンの書き込みを行うことができる。以下では、磁気ディスク11の内周側からサーボ・パターンを書き進めていく例を説明する。尚、リード/ライト素子122、122の位置を変更することによって、磁気ディスク11の外側からSSWを開始することも可能である。尚、本形態のSSWにおいては、円周方向における各素子の位置は特に限定されない。
【0043】
さらに、図3はリード素子121とライト素子122の位置の相違が規定するいくつかの値を示している。一つはRead/Write Separationである。Read/Write Separationはリード素子121とライト素子122の磁気ディスク11の円周方向の時間的な差である。例えば、リード素子121が特定トラック(半径位置)の特定円周方向位置に達してから、磁気ディスク11が回転し、同一の円周方向位置(トラックは異なる)にライト素子122が到達するまでの時間をRead/Write Separation Timeと呼ぶ。
【0044】
もう一つは、Read/Write offsetである。Read/Write offsetは、リード素子121とライト素子122との間の半径方向における距離である。具体的には、リード素子121とライト素子122の各センター(Read Element Center/Write Element Center)間の、磁気ディスク11の半径方向における距離である。Read/Write offsetはスキュー角のためヘッド素子部12の半径方向の位置によって変化し、一般的にはOD側へ向かうにつれて大きくなる。ヘッド素子部12において、最もID側のトラック位置から最もOD側の全てのトラック位置においてもRead/Write offsetが存在する。これによって、内周側に書き込んだサーボ・パターンを読み出してヘッド素子部12の位置合わせを行い、最もOD側のトラックまでサーボ・パターンを書き込むことができる。
【0045】
すでに書きこまれたサーボ・パターンを使いさらにOD側にサーボ・パターンを書き伸ばして行く(伝播)方法について具体的に説明する。本シーケンスは、図4に示す工程を備えている。まず、リード素子121を、基準とするサーボ・トラックに移動する(S11)。次に、そのサーボ・トラックにおけるサーボ・パターン間の時間間隔(インターバル)を測定する(S12)。さらに、測定した時間間隔からサーボ・パターンの書き込みタイミングを計算する(S13)。
【0046】
続いて、リード素子121が読み出したサーボ・パターンを基準に計算された書き込みタイミングを使用して、ライト素子122がサーボ・パターンを書き込む(S14)。ここで、サーボ・パターンの書き込みは、1サーボ・トラックのサーボ・パターンの半数ずつ行う。つまり、磁気ディスク11が2周することで、1サーボ・トラックのサーボ・パターンの書き込み処理が完了する。一つのサーボ・トラックにおけるサーボ・パターンの書き込みが終了すると、OD側の隣接サーボ・トラックへリード素子121を移動し(S15)、上記処理を繰り返す。
【0047】
リード素子121(ヘッド素子部12)の位置決め、サーボ・パターン間のインターバル測定及びサーボ・パターン書き込みのタイミング制御は、サーボ・パターン内の所定のパターン要素を使用して行う。そこで、サーボ・パターンのパターン・フォーマットについて、図5を参照して説明する。図5(a)は、一つのサーボ・パターンのフォーマットを示している。サーボ・パターンは、プリアンブル(Preamble)、サーボ・アドレス・マーク(Servo Address Mark:SAM)、グレイ・コードからなるトラックID(Gray)、サーボ・セクタ・ナンバ(PHSN)及びバースト・パターン(Burst)から構成されている。
【0048】
プリアンブルは、読み出し信号の位相の検出や信号アンプの増幅率調整のためのパターンを含んでいる。サーボ・アドレス・マークはサーボ・データの始まりを示す。トラックIDは、最終的にユーザ・データが記録されるトラックのトラック番号を示す。サーボ・セクタ・ナンバは、一つのトラック内におけるサーボ・セクタの番号を示す。最後に、バースト・パターンは4種類のパターンA、B、C及びDを備えており、トラックに対するリード素子121(ヘッド素子部12)の相対位置を示す。
【0049】
図5(b)は、複数連続サーボ・トラック、具体的には10サーボ・トラックにわたって書き込まれたサーボ・パターンを示している。ここで、サーボ・トラック・ピッチは、ユーザ・データが記憶されるデータ・トラック・ピッチの半分であり、図5(b)は5データ・トラックに相当する。SSWは、内周側に書き込まれたパターンの半分に外周側のパターンの半分を重ねるようにして、内周側から外周側にサーボ・パターンを書き進めていく。
【0050】
図4のフロー・チャートに示すように、HDC/MPU23は、トラックID(Gray)及びバースト・パターンを使用して、リード素子121(ヘッド素子部12)を所望の位置に位置決めする(S11)。また、サーボ・アドレス・マークの読み出しタイミングを使用してサーボ・パターン間の時間間隔を測定し(S12)、さらに、その読み出しタイミングを、サーボ・パターン書き込みにおける基準タイミングとして使用する(S14)。なお、SSW専用の付加的機能を少なくするため、HDD1は、最終的なProduct Servo Patternのみを使用してProduct Servo Patternを伝播することが好ましいが、この他に付加的なタイミング・パターンやバースト・パターンなどを備えることは、本発明と抵触するものではない。
【0051】
図4及び図6を参照して、サーボ・パターンの書き込み処理を説明する。図4のS11において、リード素子121は基準とするサーボ・トラックTO(図6)に移動し、そのサーボ・トラックをフォローイングする。HDC/MPU23は、リード素子121が読み出したトラックIDとバースト・パターンとから、サーボ・トラック番号と、バースト位置信号を生成する。ここで、バースト位置信号は、サーボ・トラック中心からのずれ量を示し、その距離に比例する。バースト位置信号は、バースト・パターンの振幅を測定してその振幅の比率から生成する。
【0052】
なお、バースト位置信号の算出はサーボ・トラックに応じて、A、B、C、Dを選択的に使用する。HDC/MPU23は、これらの値が所定値になるように、リード素子121を位置決めする。本実施形態に係るSSWは、ヘッド素子部12の位置決め、特にそのトラック・フォローイング制御に特徴的な点を有するが、この点については後述する。
【0053】
続いて、S12において、HDC/MPU23は、SAMの検出タイミング間の時間間隔を測定することによって、サーボ・パターン間の時間間隔を測定する。測定は、Indexを基準にして、R/Wチャネル21が生成するクロック信号を使用して実行する。ここでIndexは、スピンドル・モータ14を駆動するモータ・ドライバ・ユニット22がスピンドル・モータの逆起電力に応じて生成する信号であって、スピンドル・モータ14の回転周期によって規定される。
【0054】
図6の例において、Index直後のサーボ・パターンから測定結果をTP_00、TP_01、TP_02、・・・TP_2*Ns-1と定義している。ここで、サフィックス00、01、02、・・・2*Ns-1 はセクタ番号で、この場合のサーボ・セクタ数は最終的な製品のサーボ・セクタ数Nsの2倍の数だけある。この理由は後述する。最終的なサーボ・セクタ間(サーボ・パターン間)の時間間隔をTsとすると、伝播における各サーボ・パターンの時間間隔はTs/2となる。
【0055】
次に、S13において、HDC/MPU23は、測定した時間間隔から、ヘッド素子部12のRead/Write Separation Time及びプリアンブルからSAMまでの理論的時間について補正を行い、書き込みタイミングを計算する。ここで、書き込みタイミングは、内周側基準トラック(TO)のSAMの検出タイミングを基準として、外周側トラック(TN)におけるサーボ・パターンの書き込み開始を示すタイミングである。
【0056】
S14において、以上の計算結果と時間的に1つ前のセクタのサーボ・パターンを使用して、OD側トラックTNにサーボ・パターンを書く。サーボ・パターンの書き込みは、磁気ディスク11の2回転を使用して行う。最初の回転で[0]、[2]、[4]、[6]・・・と偶数セクタのサーボ・パターンを基準にして奇数セクタのサーボ・パターンを書く。次の回転で[1]、[3]、[5]、[7]・・・と奇数セクタのサーボ・パターンを基準にして偶数セクタのサーボ・パターンを書く(この順番は逆でもかまわない。)。通常、ヘッド素子部は書き込みと読み出しを同時に行うことは出来ない。その為、例えば、内周側基準トラックのサーボ・パターン[0]を基準に最初の外周側トラックにおけるサーボ・パターン[1]を書いている時、リード素子121は内周側基準トラックのサーボ・パターン[1]を読むことはできない。
【0057】
上述のように、書かれたサーボ・パターンは実際に必要なサーボ・パターンの2倍の数が書かれている。製品としてサーボ・パターンを使う場合、このうちの半分(奇数のみあるいは偶数のみ)を使用する。この場合奇数と偶数セクタをそれぞれ別々の回転で書く必要がある。サーボ・パターンの書き込みを磁気ディスク11の2回転で行った場合、1回転目と2回転目に書かれたサーボ・パターンの間に半径方向のずれが生じ、あるいは、集配方向における時間のずれが問題となることがある。しかし、2倍の方法で書き込むことによって磁気ディスク11の1回転で、最終製品で必要なセクタ数のサーボ・パターンを全て書き込むことができるので、これらを防止することができる。なお、奇数セクタと偶数セクタに異なるタイプSAMを使用することによって区別することが好ましい。
【0058】
上述のシーケンスによって内周側の基準となるトラック(TO)にすでに書きこまれているサーボ・パターン(PO)をフォロして、外周側に新たなサーボ・パターン(PN)からなるトラック(TN)を形成することができる。このように、外周側に新たなトラックTNを書き込むパターンの伝播において、基本的には内周側の基準となるパターンPOの半径方向の精度(ヘッド素子部12の位置決め精度)が、そのまま新たな書き込むパターンPNに受け継がれることが期待される。しかしながら、種々の誤差を引き起こす要因のため、この精度は伝播によって劣化していく。位置決め精度低下は、サーボ・パターンのうちのバースト・パターンA、B、C、Dの本来あるべき位置からのずれを引き起こし、これが次の伝播のときに引き継がれていく。また、このプロセスは、ヘッド素子部12をトラック・フォロさせるためのサーボ・ループの係数にも依存する。このように、精度の劣化は、種々の要因が絡んだ複雑なメカニズムである。
【0059】
この伝播によるトラック・フォロ精度の劣化を防ぐために、本形態のSSWではサーボ・トラックTNを書き込む際における、基準トラックTOの目標位置からのずれ(位置誤差)を記憶する。ここで、ターゲット位置からのずれを示す信号を位置誤差信号(Position Error Signal:PES)と呼ぶ。位置誤差信号(PES)は、リード素子部121が読み出したサーボ信号から、(ターゲット位置−現在位置)で表すことができる。
【0060】
その後、そのトラックTNをフォロするとき、トラックTN書き込みにおいて記憶しておいたPESを使用して位置決めターゲット値を補正することによって、半径方向の伝播誤差を抑制する。つまり、TOのトラックをフォロして新たにトラックTNを書こうとしている場合、かつてそのトラックTOを書き込んだ時のトラック・フォロのPESを記憶しておき、このPESを使用して、トラックTOのフォロのためのターゲット値を補正する。ターゲット値の補正はセクタ毎に行われる。
【0061】
補正値の具体的な算出方法について説明する前に、HDD1のサーボ・システムについて説明を行う。図7は、本形態のサーボ・システムの構成を示すブロック図である。R/Wチャネル21は、AE13からの出力信号からサーボ信号を抽出するサーボ・チャネル211を備えている。HDC/MPU23は、サーボ位置信号を生成するサーボ位置信号生成部231、ヘッド素子部12のターゲット位置を設定するターゲット位置設定部232、サーボ位置信号及び基準信号であるターゲット位置設定部232からのターゲット位置信号との差分を算出する位置誤差量算出部233、モータ・ドライバ・ユニット22にVCM15を制御する(VCM15の電流量を制御する)ためのデジタル制御信号(DACOUT)を出力するサーボ・コントローラ234を備えている。
【0062】
尚、HDC/MPU23内の各構成要素は、ハードウェア構成によって、あるいは、MPU上でマイクロコードが動作することによって実現することができる。ハードウェア/ソフトウェアの構成は、設計に従って適切な構成が選択される。また、必要な処理を実行する各論理ブロックは、設計によって、いずれのハードウェア構成に実装することも可能である。
【0063】
サーボ・チャネル211は、AE13からのアナログ・サーボ信号を、所定のサンプリング周波数においてAD変換する。サーボ・チャネル211は、さらに、AD変換された信号からサーボ・アドレスをデコードする。デコードされたアドレスと、AD変換されたバースト信号は、サーボ位置信号生成部231に転送される。
【0064】
サーボ位置信号生成部231は、サーボ・チャネル211からのサーボ信号に基づいて、ヘッド素子部12の現在位置を示すサーボ位置信号を生成する。具体的には、トラック番号及びバースト位置信号から構成される。さらに、サーボ位置信号生成部231は、セクタ番号を生成する。トラック番号及びバースト位置信号は位置誤差量算出部233に入力され、セクタ番号はターゲット位置設定部232に入力される。例えば、トラック番号を上位ビットとし、バースト位置信号を下位ビットとするデータが、位置誤差量算出部233に入力される。
【0065】
ターゲット位置設定部232は、ヘッド素子部12(リード素子121)が移動すべきターゲット位置を示すターゲット位置信号を出力する。ターゲット位置信号は位置誤差量算出部233に入力され、それはターゲットとなるトラック番号及びバースト位置信号を含む。本形態のHDD1はターゲット位置設定部232の処理に特徴を有するが、具体的な説明は後述する。
【0066】
位置誤差量算出部233は、サーボ位置信号とターゲット位置信号を比較し、ターゲット位置に対する現在位置の偏差の大きさ及び方向を示す位置誤差信号(PES)を生成する。PESは、ヘッド素子部12がターゲット位置に対して磁気ディスク11半径方向の内側もしくは外側に、どの程度ずれているかを示す。
【0067】
位置誤差量算出部233によって生成されたPESは、サーボ・コントローラ234に入力される。サーボ・コントローラ234は、PESに従ってVCM15のデジタル制御信号DACOUTを生成する。DACOUTは、モータ・ドライバ・ユニット22に入力され、モータ・ドライバ・ユニット22はDACOUTをDA変換して、所定値の電流をVCM15に供給する。
【0068】
上述のように、本形態のHDD1は、ターゲット位置設定部232におけるターゲット位置信号の生成に特徴的な点を備えている。ターゲット位置設定部232は、トラックを書き込む際のPESを記憶しておき、そのトラックをフォロするために記憶しているPESを使用してターゲット位置を補正する。ターゲット位置の補正はセクタ毎に行われ、各セクタ[m](indexを基準とする)におけるターゲット値の補正値Corr[m]は、全セクタ数をN(図6における2Ns−1に相当する)とすると以下の数式(1)での積和演算(マトリックス演算)で与えられる。
【数1】

【0069】
図8のフロー・チャートに示すように、ターゲット位置設定部232は予め積和演算の各係数Tm,tを算出し、それをRAM24内のテーブルに登録しておく(S21)。位置誤差量算出部233は、各トラックを書き込む際に、サーボ・コントローラ234にPESを出力すると共に、各セクタのPESをRAM内のテーブルに登録しておく(S22)。ターゲット位置設定部232は、各トラックのトラック・フォロにおいて、そのトラックを書き込んだときのPESと係数Tm,tを使用してターゲット位置の補正を行い、補正されたターゲット位置信号を位置誤差量算出部233に出力する(S23)。位置誤差量算出部233は、サーボ位置信号と補正されたターゲット位置信号を比較してPESを生成する(S24)。
【0070】
S21に示すようにターゲット位置設定部232がトラック・フォロのタイミングまでに係数Tm,tを取得しておくことによって、専用サーボ・ライタと異なり演算パワーの小さいHDD1に実装されるMPUであっても、トラック・フォロ時にターゲット位置の補正を短時間で処理することができる。各係数Tm,tは磁気ディスク11全体において同一のものを使用することも可能であるが、好ましくは、数千トラック程度の間隔でキャリブレーションを実行して各係数Tm,tの再演算を実行する。アクチュエータ位置によって風乱などの影響が異なるため、適切なトラック間隔で係数Tm,tのキャリブレーションを実行することが好ましい。
【0071】
ここで、係数Tm,tの算出方法について説明する。数式(1)から理解されるように、各セクタの補正値を要素とする補正値ベクトル|Corr>は、各セクタのPESを要素とするPESベクトルと、補正係数を要素とする補正マトリックスの行列式で表すことができる。
【数2】

ここで、補正マトリックスTは
【数3】

と表され、さらに、各補正値Corr[m]は、以下のように表すことができる。
【数4】

【0072】
数式(3)、(4)において、IFは逆離散フーリエ変換マトリックス、Gは周波数に対応する補正係数を要素とするゲイン・マトリックス、Fは離散フーリエ変換マトリックスである。つまり、書き込み時のPESの周波数特性を修正する。ここでゲイン・マトリックスは、書き込み時におけるサーボ・ループの閉ループ応答の周波数成分のうちゲインの大きい成分に対して補正をして、サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を抑制する。好ましくは、全ての周波数において伝播増幅度が1未満になるように決定される。これによって、誤差の増加を抑えながら偶発機械動作を効果的に減らすことができる。
【0073】
PESの軌道は、基本的には回転周波数を周期とする周期関数である。このようなすべての周期関数波形は、基本周波数の整数倍に対応する周波数からなる離散集合でのみ非ゼロの振幅を含む周波数スペクトルを有する。この場合は磁気ディスク11の回転周波数が基本周波数に当たる。そのため、サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を1未満に保つべき周波数は、磁気ディスク11の回転周波数の整数倍のものを考えればよい。
【0074】
周波数に依存する量としてのサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度は、実際には、大きさと位相の両方を有する複素数のベクトルであり、このベクトルの各成分が磁気ディスク11の回転周波数のある倍数に対応している。1未満でなければならないのは、このベクトルの各成分の大きさである。実際には、磁気ディスク11の回転周波数の整数倍のうち、限られた倍数までの周波数においてのみサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度が1以上となる、これらの限られた周波数においてのみ補正すればよい。
【0075】
ここで、上記特許文献1に記載されているように、書き込み時のPESを使用した補正によって、サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度Sは、S=C+g(1−C)と表すことができる。Cはサーボ・ループの伝達関数であって、補正前のサーボ・ループの閉ループ応答である。伝達関数Cは、図7における位置誤差量算出部233の出力から入力までのループに相当する。gは修正ゲイン・ファクタであって補正値となるPESの割合を示す。
【0076】
上述のように、磁気ディスク11の回転周波数の整数倍の複数周波数において、サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度S=C+g(1−C)の調整を行う。好ましくは、回転周波数の全ての整数倍において、Sが1未満の大きさになるように調整を行う。つまり、回転周波数の整数倍において、伝達関数Cにおいて1以上となる周波数成分についてターゲット位置の修正を行い、補正後のサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を全ての周波数で1未満とする。ここで、Sは、典型的には、0.9以下の値に設定する。
【0077】
また、ターゲット位置設定部232が上記g(つまりマトリックスT)を算出するためには、伝達関数Cを決定しなければならない。HDC/MPU23は、各キャリブレーション・ステップにおいて、VCM15に磁気ディスク11の回転周波数の整数倍のサイン波を加えるように制御し、ヘッド素子部12の位置情報(PES)の周波数成分を測定することによって伝達関数Cの周波数応答を求めることができる。上述のように、実際には、サーボのパラメターを調整することにより、回転周波数の特定の整数倍以上は1以下となるようにすることができるため、限られた数の測定でCの必要な値を得ることができる。ターゲット位置設定部232は、求められたCと設定されているSとから、g(マトリックスT)を決定することができる。なお、一つのマトリックスTで全サーボ・トラックの補正を行うこと可能である場合、HDD1に予めマトリックスTを規定値として登録しておくことを妨げるものではない。
【0078】
続いて、マトリックスTの具体的な詳細について説明する。上述のように、ターゲット位置の修正は、磁気ディスク11の回転周波数の整数倍においてのみ実行すればよいことから、上述の数式(4)における各マトリックス[IF]、[G]、[F]の要素は、以下のように表すことができる。
【数5】

【0079】
ゲイン・ファクタ(Gマトリックスの要素)は1つの周波数成分に対して1つの値であるので、Gは対角成分のみが0ではないマトリックスとなる。さらに、マトリックスTの成分要素は、
【数6】

となり、(m−t)の関数である。
【0080】
この式から、マトリックスTの要素間で下の数式(7)の関係が満たされていることが導出される。
【数7】

【0081】
ここで、Tm,t=Tm-tとしてマトリックスTを表すと、
【数8】

となる。
【0082】
これは、上記数式(1)のように、書き込み時における各セクタで、PESとマトリックスTとの積和演算を行うことを示している。さらに、各マトリックス要素を見ればわかるように、セクタが1つ変わるごとにサイクリックに積和の項を変えていけばよく、簡略な計算によって補正値を算出することができる。つまり、各セクタ[m]におけるターゲット値の補正値Corr[m]は、以下の式で与えられる。
【数9】

【0083】
この演算は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタとして実装することが可能である。FIRフィルタはMPUによる効率的な演算が可能であり、演算パワーの小さいMPUであっても高速処理が可能である。図9に示すように、FIRフィルタ310は、1クロック分遅延させる遅延要素311、マトリックスTの要素を係数とする重み関数312(積算)及び重み関数312により処理された各値を加算する和要素313から構成されている。
【0084】
FIRフィルタ310はNタップのFIRフィルタであり、各タップにT〜TN−1の重み関数が結合されている。つまり、各タップからの出力は重み関数によって係数と積算される。FIRフィルタ310には、セクタ[0]からセクタ[N−1]のPESが順次入力される。例えば、セクタ[0]の演算において、各タップからは、PES[0]〜PES[N−1]の各値が出力されている。ここで、FIRフィルタ310はハードウェアで構成することもできるが、設計のフレキシビリティの点からマイクロコードで実装し、MPUによってFIR処理を実行することが好ましい。
【0085】
図10は、ターゲット位置信号の生成処理に関する機能部のブロック図である。RAM24内において、マトリックスT・テーブル241はマトリックスTの各要素を登録し、PESテーブル242は各サーボ・トラックの書き込み時における各セクタのPESを登録している。PESテーブル242には、位置誤差量算出部233がリード・トラックの書きこみ時における各セクタに対応するPESを登録する。また、ターゲット位置基準テーブル243は、各サーボ・トラックに対応する、サーボ位置信号のターゲット値の基準値が登録されている。具体的には、ターゲット・トラック番号とターゲットPESの各基準値から構成されている。
【0086】
ターゲット位置設定部232は、マトリックスT・テーブル241からマトリックス要素、つまり重み係数を取得し、FIRフィルタ310の重み関数312として使用する。リード素子121のフォローイング動作に合わせて、ターゲット位置設定部232は、PESテーブル242に登録されている対応サーボ・トラックの各セクタのPESを取得し、順次FIRフィルタ310に入力することによって、各セクタの補正値を生成する。さらに、ターゲット位置基準テーブル243からターゲット基準値を取得し、補正演算部320が生成した補正値を使用してそれを補正する。ターゲット位置設定部232は、補正されたターゲット値をターゲット位置信号として位置誤差量算出部233に出力する。
【0087】
ここで重要なこととして、FIRフィルタ310のタップ数を減らす、つまり、数式(9)の積和演算を短くし、処理の効率化を図ることが好ましい。タップ数を減らすことによって、補正値の計算時間を短縮することができる。しかし、タップ数を減らすことによって補正値の効果が半減し、伝播誤差の累積による大きな位置誤差が生じることは避けなければならない。発明者らは、マトリックスTの特定要素を選択することによって、残りの要素を0とする、つまりそれらを使用せずとも伝播誤差の累積を防止することができることを見出した。
【0088】
具体的には、マトリックスTにおいて、T成分の前後の限られた数の要素のみを考慮し、積和演算を短くすることができる。Tはリード素子121が読み出すセクタとライト素子122が書き込むセクタが同一であることを意味している。つまり、セクタ[k]を書き込むときに、そのセクタを含む前後の複数セクタのPESを使用してターゲット位置を補正する。各セクタの位置ずれは、その前後の近いセクタの位置ずれと強い相関性を示し、セクタが遠くなるほど相関性が小さくなる。つまり、セクタが遠いほどTの値が小さくなる。そのため、該当セクタ及びその近隣セクタの位置ずれのみを演算において使用することによっても、十分な位置ずれ補正を達成することができる。
【0089】
例えば、T成分の前後2ずつの要素を考慮した、タップ数5のFIRフィルタ410を図11に示す。このFIRフィルタ410は、数式(8)のマトリックスにおいて、TN-2、TN-1、T0、T1、T2、のみを使用することを意味する。各タップからの出力は、それぞれTN-2、TN-1、T0、T1及びT2の係数を持つ重み関数412によって演算処理されて和要素413において加算される。図11は、セクタ[0]の演算時における状態を例示しており、各タップからは、PES[N−2]、PES[N−1]、PES[0]、PES[1]及びPES[2]が、TN-2、TN-1、T0、T1及びT2の重み関数412にそれぞれ入力される。
【0090】
各セクタの補正値計算において、FIRフィルタ410には各セクタのPESが順次入力される。例えば、セクタ[1]の演算時には、FIRフィルタ410にPES[3]が入力され、セクタ[2]の演算時には、FIRフィルタにPES[4]が入力される。以下同様に、順次PESがFIRフィルタに入力される。図11の状態における演算をマトリックス式で表せば以下のようになる。
【数10】

【0091】
このように、補正値の計算において、書き込みセクタと同一セクタのPESを含む、連続する複数セクタのPESを使用する。使用するセクタ数は全セクタ数よりも少なく、設計によって適切な数が選択される。各セクタの位置ずれは、該当セクタの前後のセクタの位置ずれとそれぞれ強い相関性有しているため、補正値の計算は書き込みセクタの前及び後のセクタのPESを含むことが好ましい。該当セクタの前後同数の連続する数セクタもしくは数十セクタを使用することは、好ましい一例である。
【0092】
図12は、セクタ数が168におけるマトリックスTの1行目の要素の分布例を示している。このグラフは、シミュレーションによって得られた。図12が示すように、マトリックスTは小さい引数の要素のみが有効であることがわかる。さらに、168セクタの例において、Tの前後12の要素を使用した場合、つまり、25タップのFIRフィルタを使用した場合と、168セクタの全てについて演算処理した場合の補正量を同じ誤差入力に対して計算した結果を図13に示す。図13において、実線が25タップのFIRフィルタを使用した場合、点線が168セクタの全てについて演算処理した場合である。図13が示すように、25タップのFIRフィルタを使用して、全セクタ演算処理と同等の結果を得ることができた。
【0093】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。例えば、本発明は磁気ディスク装置に限らず、他のタイプのメディアを使用するデータ記憶装置に適用することができる。あるいは、本発明はサーボ・パターンの自己書き込みに特に有用であるが、他のパターンの自己書き込みに適用することを妨げるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態にかかるHDDの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態にSSWの手法を概略的に示す図である。
【図3】本実施形態のヘッド素子部におけるリード素子とライト素子の位置関係を示す図である。
【図4】すでに書きこまれたID側サーボ・パターンを使いさらにOD側にサーボ・パターンを書き伸ばして行く(伝播)方法を示す図である。
【図5】サーボ・パターンのフォーマットを示す図である。
【図6】磁気ディスク2回転によって、ID側サーボ・パターンを使いさらにOD側にサーボ・パターンを書き伸ばして行く方法を示す図である。
【図7】本実施形態のサーボ・システムの構成を示すブロック図である。
【図8】ターゲット位置設定部のターゲット位置信号生成処理を示すフロー・チャートである。
【図9】ターゲット位置設定部における、FIRフィルタの機能構成を示すブロック図である
【図10】ターゲット位置信号の生成処理に関する機能部のブロック図である。
【図11】ターゲット位置設定部における、タップ数5のFIRフィルタの例を示す機能構成図である。
【図12】セクタ数が168におけるマトリックスTの1行目の要素の分布例を示す図である。
【図13】25タップのFIRフィルタを使用した場合と、168セクタの全てについて演算処理した場合の補正量を同じ誤差入力に対して計算した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 ハードディスク・ドライブ、10 エンクロージャ、11 磁気ディスク
12 ヘッド素子部、14 スピンドル・モータ、15 ボイス・コイル・モータ、
16 アクチュエータ、20 回路基板、21 リード・ライト・チャネル、
22 モータ・ドライバ・ユニット、51 ホスト、121 リード素子、
122 ライト素子、211 サーボ・チャネル、231 サーボ位置信号生成部、
232 ターゲット位置設定部、233 位置誤差量算出部、
234 サーボ・コントローラ、310 FIRフィルタ、311 遅延要素、
312 重み関数、313 和要素、320 補正演算部、410 FIRフィルタ、
412 重み関数、413 和要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する記録ディスク上において、サーボ制御によってリード素子で第1トラックをフォロしながら、半径位置の異なるライト素子で、前記第1トラックの各セクタのパターンを基準としてその第1トラックと異なる第2トラックの各セクタのパターンを書き込む方法であって、
前記第1トラックの複数セクタのサーボ・パターンを書き込み、
前記第1トラックの書き込み時における各セクタに対応する前記リード素子のターゲット位置からの位置誤差量と、サーボ・ループの選択された周波数におけるサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を抑える予め登録された係数群との積和演算により補正値を算出し、
前記補正値によってサーボ制御の補正を行って、前記リード素子を前記第1トラックの各セクタについて位置決めし、
位置決めした状態で前記ライト素子によって前記第1トラックの各セクタを基準として前記第2トラックに各セクタのパターンを書き込む方法。
【請求項2】
前記係数群は、前記記録ディスクの回転周波数の整数倍の全ての周波数において前記サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度が1未満となるように設定されている、請求項1に記載の各セクタのパターンを書き込む方法。
【請求項3】
前記サーボ制御補正は、前記補正値によって前記第1トラックの各セクタに対するターゲット位置を補正する、請求項1に記載の各セクタのパターンを書き込む方法。
【請求項4】
前記第1トラックの各セクタに対する補正値の算出は、そのセクタを含む連続する複数セクタであって、前記第1トラックの全セクタ数よりも少ない複数セクタの書き込み時の各位置誤差量と、前記係数群との積和演算によって行う、請求項2に記載の各セクタのパターンを書き込む方法。
【請求項5】
前記第1トラックの各セクタに対する補正値の算出は、そのセクタの前及び後のセクタを含む連続する複数セクタの書き込み時の各位置誤差量と前記係数群との積和演算によって行う、請求項4に記載の各セクタのパターンを書き込む方法。
【請求項6】
前記第1トラックの各セクタに対する補正値の算出は、そのセクタの前及び後のそれぞれ一定数のセクタを含む連続する複数セクタと前記係数群との積和演算によって行う、請求項4に記載の各セクタのパターンを書き込む方法。
【請求項7】
前記係数群は、前記記録ディスクの回転周波数の整数倍の複数周波数において前記サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を小さくするように設定されている、請求項1に記載の各セクタのパターンを書き込む方法。
【請求項8】
前記係数群を、予め決められたトラック数ごとに再演算により算出し、算出された係数群を使用してその後のパターン書き込みにおけるサーボ制御補正を実行する、請求項1に記載の各セクタのパターンを書き込む方法。
【請求項9】
記録ディスク上に、各トラックのパターンを書きこむデータ記憶装置であって、
回転する記録ディスクと、
前記記録ディスクに書き込まれている複数セクタのパターンを含む第1トラックを、サーボ制御によってフォロするリード素子と、
前記リード素子と半径位置が異なり、前記第1トラックの各セクタを基準として、前記第1のトラックと異なる第2トラックに、各セクタのパターンを書き込むライト素子と、
前記第1トラックの書き込み時における各セクタに対応する前記リード素子のターゲット位置からの位置誤差量と、サーボ・ループの選択された周波数におけるサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度を抑える予め登録された係数群との積和演算により補正値を算出し、その補正値によって補正したサーボ制御によって、前記第1トラックの各セクタにおいて前記リード素子を位置決めするコントローラと、
を備える、データ記憶装置。
【請求項10】
前記係数群は、前記記録ディスクの回転周波数の整数倍の全ての周波数においてサーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度が1未満となるように設定されている、請求項9に記載のデータ記憶装置。
【請求項11】
前記コントローラは、算出された補正値を使用して前記第1トラックの各セクタに対応するターゲット位置を補正することによってサーボ制御補正を行う、請求項10に記載のデータ記憶装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記第1トラックの各セクタについて、そのセクタを含む連続する複数セクタであって、前記第1トラックの全セクタ数よりも少ない複数セクタの各位置誤差量と、前記係数群との積和演算によって前記補正値を算出する、請求項9に記載のデータ記憶装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記第1トラックの各セクタについて、当該セクタの前及び後のセクタを含む連続複数セクタの各位置誤差量と、前記係数群との積和演算によって前記補正値を算出する、請求項12に記載のデータ記憶装置。
【請求項14】
前記係数群は、前記記録ディスクの回転周波数の整数倍の複数周波数において前記サーボ書き込みによるトラック位置誤差の伝播増幅度が1未満となるように設定されている、請求項10に記載のデータ記憶装置。
【請求項15】
前記コントローラは、前記第1トラックのフォロ前に、フーリエ逆変換、補正ゲイン・マトリックス及びフーリエ変換のマトリックス積に相当する演算によって前記係数群を予め算出して登録する、請求項10に記載のデータ記憶装置。
【請求項16】
前記コントローラはFIRフィルタを備え、前記係数群をそのFIRフィルタの重み係数とし、前記第1トラックの位置誤差量を順次入力して、各セクタに対する前記補正値を生成する、請求項11に記載のデータ記憶装置。
【請求項17】
前記重み係数は前記第1のトラックの全てのセクタに対して同一である、請求項16に記載のデータ記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−323966(P2006−323966A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148339(P2005−148339)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】