説明

記録再生装置および記録再生方法

【課題】
追記型記録ディスクにおいて、記録を失敗した時に、それ以降の記録ができず、ディスクが無駄になってしまう。また、記録停止位置から再度記録を再開しようとしても、同様に記録失敗が発生してしまう場合がある。
【解決手段】
記録停止が発生した場合において、記録停止位置を記憶しておき、そこに継続するように再度アクセスして記録を再開する。このとき、記録停止の要因に応じて、記録を再開する位置を変化させて、適切な記録ができるようにする。また、再度アクセスする時に、記録停止要因に応じてパラメータを変更するようにし、再度記録停止が発生することを回避するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の記録媒体にデータを記録再生装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DVD(Digital Versatile Disc)は、再生専用メディアであるDVD-ROM、データを記録することができる記録型DVD(DVD-R、DVD-RAM、DVD-RW等)があり、広く普及している。その中でDVD-R(Recordable)は、ライトワンスメディアもしくは追記型と呼ばれ、1回だけ記録ができるという特徴をもっており、映像、音声の記録や、データの保存のために、使用されている。また、Blu−rayディスク(以下BDと略す)は、大容量の記録メディアとして注目されており、高品質な画像を記録する記録メディアとして、普及が進んでいる。BDにおいても、ライトワンスのメディアとしてBD-Rという種類のディスクがある。
【0003】
これらライトワンスの記録媒体にデータを記録する場合、記録中に何らかの理由で記録停止した時に、記録エラーディスクとなり、再使用不可のディスクとなっていた。ここで、特許文献1に示すように、記録に失敗した時も、継続して記録ができる情報記録方法が示されている。
【0004】
【特許文献1】特願平4−76913号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、記録中にトラッキングが外れて記録が停止した場合に、継続して記録する方法について述べている。トラッキングが外れる要因としては、例えば、外部から衝撃が加わるなどの外的な要因と、ディスクの欠陥等により、トラッキングが大きく振られて、トラッキングが外れてしまうというディスクに関わる要因等、が考えられる。
【0006】
ここで、外部から与えられた衝撃のような場合には、再び、同じ位置から続けて記録をする場合に、同様の外乱が加わることは少なく、トラッキングが外れる要因は無くなった状態となる。しかし、ディスクの欠陥による要因の場合には、再度、記録を続ける場合にも、ディスク上の同じ位置で同様にトラッキングが振られる現象が発生するため、同じようにトラッキングはずれが発生してしまう可能性が高い。
【0007】
このように、同じトラッキング外れによる記録停止の場合でも、要因によっては、再び同じ位置から継続して記録できる場合と、そのまま記録を行ってもうまくいかない場合とがある。よって、記録停止した場合にも、再び継続して記録する再には、記録停止の要因によって、処理を変える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、追記型記録媒体にデータを記録する記録再生装置であって、記録媒体を回転させるモータと、記録媒体にレーザを照射するピックアップと、記録媒体から再生された信号を波形等化する波形等化回路と、再生された信号からサーボ信号を生成するサーボ制御回路と、再生された信号から再生データを処理する再生信号処理回路と、記録すべきデータに対して記録処理をする記録信号処理回路と、記録データまたは再生データを格納するメモリと、記録再生の動作を制御するシステム制御回路とを備えた記録再生装置において、
記録停止すべき事象が発生したことを検出する記録停止検出回路と、記録停止すべき事象の要因を判定する要因判定回路と、記録停止した位置情報を記憶する記憶回路とを備え、要因の種類により、記録停止した位置から記録再開までの長さを切り替える切り替え、記録停止が発生した時に、停止した位置よりも後方から記録を再開するように制御するようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録途中で記録停止した場合に、再度継続して記録を再開する時に適切な記録処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明を実現するためのシステム構成を示した図である。
101は記録ディスク、102はピックアップ、103はAFE(Analog Front End)回路、104はウォブル検出回路、105は記録用PLL(Phase Locked Loop)、106は記録信号処理回路、107はライトパルス生成回路、108はメモリ、109は再生信号処理回路、110は入出力回路、111は信号入出力、112はモータ、113はサーボ制御回路、114はトラック(以下Trと略す)外れ検出回路、115はシステム制御回路、116は停止位置記憶回路、118はTr外れ要因判定回路である。
【0011】
まず、本システムの基本動作について説明する。記録ディスク101に対して、ピックアップ102から発光したレーザ光を記録膜上に集光し、ディスク上のデータを読み出したり、ディスクに記録データを書き込んだりする。ディスクからピックアップ102により読み出された信号は、AFE回路103により、増幅及び波形等化され、また、サーボ信号を生成するための演算処理が行われる。このサーボ信号を用いてサーボ制御回路113にて、フォーカス制御、トラッキング制御等の制御信号が生成され、ピックアップの動作が制御される。同じくサーボ制御回路113からの制御信号により、ディスク101はモータ112によって回転制御される。
【0012】
AFE回路103で処理された再生信号は、再生信号処理回路109にて再生処理され、復調処理、同期信号検出、再生クロック生成、誤り訂正等を行い、メモリ108に格納される。再生出力は、メモリ108に格納されたデータが入出力回路110を介して出力される。また、AFE回路で処理されたウォブル信号は、ウォブル検出回路104にて、ディスク上に刻まれたウォブル信号からアドレス情報が抽出される。
【0013】
次に本システムによる記録動作について説明する。信号入出力111から入力した記録データは、例えばATAPIのような入出力インターフェイス回路110を介して、メモリ108に格納される。メモリに格納されたデータは、記録信号処理回路106により、訂正符号やアドレス情報を付加して、記録データとして準備される。
【0014】
PLL回路105では、ウォブル信号の周波数と同じ周波数の信号を生成し、これをもとにデータを記録するための記録クロックを生成する。記録信号処理回路106にて準備された記録データは、記録用PLL回路105で生成された記録クロックに同期して出力され、ライトパルス生成回路107にて、レーザ発光波形として変換されピックアップ102のレーザを発光させる。
【0015】
また記録・再生動作の切り替え、アドレスを探索してピックアップを位置付ける等のシステム全体の制御は、システム制御回路115にて制御されている。
【0016】
次に、データ構成の一例として、DVDのデータフォーマットを示す。DVDは、約32kバイトのデータに対して記録信号処理を行い、記録データの記録単位としている。図7では、2048バイトのデータに対して、アドレスを示す4バイトのIDとその誤りチェック符号、4バイトの誤りチェック用EDC符号、等が付加されている。これにより、172バイト×12行の一つのセクタを構成している。図8は、図7で示したセクタを16セクタ集めてデータブロックを構成し、これにPI(10バイト×208行),PO(172バイト×16行)という2方向の誤り訂正符号を付加する。記録データの順序としては横方向なので、バーストエラーに対してはPO符号により訂正が可能である。
【0017】
次に、これを図9に示すように12行毎にPOを1行挿する。これを図10に示すように13行単位に分け、さらに91バイトごとに同期信号が挿入される。ここでは、91バイトのデータに対してひとつの同期信号が付加されており、このひとつ同期信号と91バイトのデータの長さをフレームと呼ぶ。同期信号は2バイト分のデータの長さと同等である。記録データとしては、同期信号及びデータを8−16変調して、実際の記録信号とする。また、この同期信号は、SY0〜7の順序により、その13行内のどこの位置かを特定できる。また、記録ブロック内の位置は、データに付加されたIDによって知ることができる。
【0018】
このように、DVDでは、IDと同期信号により、記録ブロック内の位置を特定することができる。このように記録ブロック内の位置を特定ことする方法をDVDの記録フォーマットを用いて示したが、記録フォーマットはDVDに限定されるものではなく、所定の単位でデータを構成するフォーマットであれば、特にフォーマットに限定はされない。また、ディスクに刻まれたアドレス情報と所定の位置関係を持ちながら記録を行うフォーマットであれば、同様にディスク上での位置を特定することも可能である。
【0019】
図2は、記録動作における記録データと制御信号の関係を示したものである。図2(a)は通常の記録動作をしめし、(b)はTr外れが発生した場合の動作を示したものである。図2(a)において、記録状態では、記録データは、同期信号(sync)と所定の長さの記録データ(DVDでは91バイト)が連続的に出力されており、Tr外れ検出信号が何も発生しない場合には、記録再生切替信号は、記録状態を示す“H”となっている。
【0020】
図2(b)では、記録途中でTr外れが発生し、記録が停止した動作を示している。ここで、Tr外れ検出信号は、Tr外れが発生したタイミングで検出信号を出力し、その信号を受けることで、記録再生切替信号は記録状態から再生状態へと切り替わり記録動作は停止する。これは、Tr外れが発生した場合には、別のトラックに集光した光スポットが移動してしまうため、記録を中断しなければ、既に記録したデータを上書きにより破壊してしまったり、未記録のトラックに不適切にデータを記録してしまったりするためである。
【0021】
図2(b)では、n番目のsyncに続く記録データを記録している途中で、Tr外れが発生しており、それ以降の記録データがディスク上に記録されない。図の斜線部は、データが記録されていないことを示している。ここで、記録停止の要因としてTr外れを例に示したが、記録を停止する要因は、これに限定されない。例えば、フォーカスが外れたことを検出するようにしてもかまわない。
【0022】
次に、記録が停止して未記録状態になると、データを再生した時に連続的な読み取りエラー(バーストエラー)となり、訂正不能となってしまう可能性がある。そこで、図3に示すような技術が考えられる。これは、図2の(b)で記録停止が発生した時に、一旦記録を停止した後、再度記録を再開する技術である。図3では、nのsyncに続く記録データの途中で記録が停止し、その記録停止位置を記憶しておき、次に再びその位置から継続的に記録を再開するものである。
【0023】
ここで、どの位置で記録が停止したかという情報を記録データのビット単位まで記憶できれば、記録を再開する場合に、ほぼ隙間無くつないで記録することができ、未記録の領域を小さくすることができる。記録データの何番目かを記憶するには、例えば、メモリに格納された状態でのメモリ上のアドレスを記憶することで可能となる。
【0024】
しかし、通常、記録データには、誤り訂正符号が付加されており、ある程度のバーストエラーが存在していても誤り訂正を施すことでデータ再生は可能である。図3では、記録停止した次のsyncから記録を再開する動作を示している。Tr外れ検出により記録が停止した位置nを記憶しておき、再度ピックアップをディスク上の同じ場所に位置付けして、n+1の位置に到達したときに記録再生切替信号の切替により、再生状態から記録状態に切り替える。これにより、次のsyncから記録が再開し、データを継続して記録することが可能になる。
【0025】
この動作を図1のシステムを用いて説明すると、サーボ制御回路113からTr外れを検出するための信号、例えばトラッキングエラー信号をTr外れ検出回路114で受け、Tr外れ検出回路114ではその信号が所定の閾値を越えた時にTr外れが発生したと判断するようにする。そして、Tr外れが検出された時に、それを記録停止位置記憶回路116に伝え、記録が停止した位置を記憶するようにする。このとき、記憶する位置は、記録データの停止位置が特定できるものであれば構わない。記録データのブロック先頭からのバイト数、メモリ上でのアドレス、同期信号による位置、など、比較的短い距離で特定できる位置情報であれば、特に限定はしない。この短い距離とは、誤り訂正によって、バーストエラーとして訂正可能な距離の範囲内である。図3の例では、syncの単位でデータの記録停止位置を記憶している例であり、記録を再開するのはn+1のsyncと同期している例を示している。
【0026】
そして、この記憶した位置情報をシステム制御回路115に伝え、システム制御回路115では、一旦記録が停止した後に、再度ディスク上の同じ位置に位置付けして、データができるだけ連続するように記録を再開する。つまり、記録信号処理回路105では、記録が停止した時の記録データと同じデータブロックを同じディスク上のアドレスに記録する動作を再び動作させ、記録が停止した位置情報を元に記録を再開させる。記録再開については、記録再生切替信号により、再生状態から記録状態に動作モードを変化させることで、容易に実現できる。
【0027】
メモリ108に格納された記録データは、通常は記録されたらデータは破棄され、新たな記録データが格納されるが、記録停止が発生した場合には、その記録ブロックのデータは破棄されずに保持され、次に記録再開してデータが記録されるまでは、メモリ上に保存される。このときメモリ上では、記録が終わったデータに対しては記録終了フラグを用いて管理し、記録停止が発生した場合には、記録終了フラグを未終了のフラグとすることで管理ができる。
【0028】
ここで、実際に記録を再開する位置としては、n+1の同期信号の位置からではなく、同期信号よりも少し手前から開始するようにしても良い。データが記録されていない部分では、データ再生用PLLが正しく動作していない可能性があり、PLLが再生データに同期してクロックを生成するまでに、引き込み期間が必要であるためのプリアンブル期間を与えることが必要である。同期信号を正しく検出するためにもPLLが同期してクロックを生成していることが必要であり、同期信号の少し手前からデータを記録再開することは有用である。
【0029】
図4は、図2及び図3において記録停止位置及び記録再開位置を同期信号にて制御したのに対して、ウォブル信号に対して制御する例を示したものである。ウォブル信号は、ディスク上に予め所定の長さ単位で記録されており、位置情報として利用することが可能である。図4においても、図2と同様に記録停止した位置情報を記憶するが、これをウォブル信号によって制御するものである。同期信号は、データの一部としてディスクに記録される情報であるのに対し、ウォブル信号は、データを記録していない状態でもディスク上に刻まれているため、読み出しの信頼性は高い。また、データが記録される位置関係も一定に保たれているからである。
【0030】
図5は、記録を再開する位置を記録停止要因に応じて適応させた場合の動作を示したものである。先に述べたように、トラッキングが外れた場合、既記録データを破壊したり、別のトラックに不適切に記録を行ったりする可能性があるため、記録を停止するようにしている。トラッキングが外れる要因としては、外部から衝撃を与えられた時のような外乱によるものと、ディスク自身が、製造上の不具合により、トラックが揺れて作製されてしまった場合のようにディスク自身に起因するもの、記録信号処理やサーボ制御処理の回路の異常動作によるものなど、様々である。
【0031】
ここで、外乱による要因の場合は、偶発的なものであり、再び同じ位置で同じことが起こる場合はまずない。しかし、ディスク自身による原因の場合は、同じ位置で、同じ現象が繰り返し発生する。例えば、ディスク製造時にできる気泡のような欠陥や異物が混入したような場合は、その現象はディスク上の同じ位置で発生し、影響はある程度の期間持続する。トラック上においては、数十〜百バイト、あるいは、数フレーム分継続する場合もある。ただし、欠陥や異物の大きさは、許容される大きさが概ね規定されているため、それよりも極端に大きくなることは無い。また、欠陥や異物の場合、検出されるサーボ信号から、原因が特定できる場合が多い。また、同じ場所に再びアクセスすることで、偶発的な外乱の場合は、何も検出されないが、ディスク自身の傷等が要因の場合には、同様のサーボ信号が検出され、ディスク要因であることが判定できる。
【0032】
図5では、このように特定の要因で3フレーム程度の長さで不具合の影響が継続する場合、その部分での記録再開を行わず、安定して記録ができる領域から記録を再開(図ではn+4から)するようにしたものである。要因の解析は、サーボ信号だけでなく、外部に付属した装置、例えば加速度を感知するセンサー等を用いて、外乱を検出し、加速度の方向と大きさから外乱であることを検出するようにしても良い。
【0033】
このように、外乱による偶発的な記録停止か、ディスク要因による再現性の有る記録停止かを切り分けることで、記録停止した位置から記録再開までの長さを切り替えることができる。外乱の場合には、全く未記録期間をあけないように記録再開の制御をすることも可能である。さらに、記録停止の要因を詳細に判別することで、その要因に応じた記録再開までの長さに適切に設定することが可能となる。
【0034】
図1において、118はTr外れ要因判定回路である。図5の動作説明で述べたように、Tr外れ要因判定回路118で要因を判別し、システム制御回路115に伝えることと、記録停止位置記憶回路116の情報から、要因に応じた記録再開までの期間を設定することができる。
【0035】
図6は、Tr外れによる記録停止が発生してから、記録再開されるまでの処理の流れを示したものである。
【0036】
ST10で、記録中にTr外れが発生したとする。ST11では、Tr外れが発生した位置nを記録する。次にST12では、Tr外れの要因を判定し、外乱による偶発的なものか、同じ位置で再度発生するようなものかにより分岐する。装置外部からの偶発的な外乱によるTr外れと判断した場合には、同じ位置で再度発生するようなディスク自身の要因によるTr外れの場合のときよりも、できるだけ未記録期間を短くするように、記録再開位置を設定する。ここでは、ST13でn+1の位置から記録を再開するように設定している。なお、ここでn+1は、図3で示したsyncの番号によるフレーム数を表しているが、設定する距離の単位はこれに限定されず、記録停止直後から記録再開としてもよい。
【0037】
ST12での判定がNoの場合には、ST14において、判定された要因によって、記録をしない距離mを決定する。例えば、トラッキング方向に大きく揺すられるような場合には、m=1、フォーカス方向に大きく揺すられる場合にはm=2、両方向に揺すられる場合にはm=3、というように、要因に応じて記録再開までの距離を変えられるようにする。ただし、その距離は、誤り訂正によって、容易に訂正が可能な範囲内とする。ST15では、記録停止位置に、それぞれの要因に応じた距離mを加えて、記録再開位置を設定する。
【0038】
また、記録再開位置を目標にしてアクセスするように制御することで、ディスク上の不良な個所を通過させずに、ピックアップを目標位置に位置付けることも可能である。例えば、nフレームのところにディスク欠陥があり、トラッキングが外れた場合、記録再開する場所をn+mからとすると、(例えばm=3とすると)欠陥があった場所から3フレーム後ろの位置に着地させればよいことになる。そうであれば、nフレーム目の場所にあった欠陥を通過しないので、Tr外れは再び発生しない。そうすることで、n+mに着地し、そこから記録を再開することが可能になる。
【0039】
ここで、Tr外れの要因が、サーボの振られによるものである場合には、再度同じ位置にアクセスする前に、ST16にてサーボパラメータを変更し、要因による影響を受けにくくする。これにより、同じ場所でTr外れが再発することを防止することができる。サーボのパラメータとしては、トラッキングやフォーカスのゲインや位相の周波数特性を変更することや、イコライザやフィルタの特性を変えて、傷に対する追従性能を増したり、傷検出の閾値を変更することで、傷による影響を受けにくくすることが考えられる。また、スピンドルモータの特性を変えて、記録速度を変更しても良い。ここで、再アクセスの時に停止要因を解消するために変更するパラメータとして、サーボを例にあげたが、信号の振幅レベルの増幅や、記録用PLLの定数、ウォブル検出のフィルタ定数、同期信号の検出保持期間など、要因に応じて変更すればよい。
【0040】
このように記録再開位置を決定し、パラメータを最適化した後に、同じ記録位置にアクセスし、ST17で指定した位置から記録を再開する。これにより、記録停止位置から適切な距離を距離で記録を再開することができる。
【0041】
このような処理を行うことで、何らかの要因で記録停止したディスクに対して、適切なパラメータで記録再開を行うことができ、データ記録の信頼性を向上させることができる。
【0042】
図11は、図1に示したTr外れ検出回路114に入力されるトラッキングエラー信号の閾値の例を示したものである。トラッキングエラー信号は、トラックジャンプをした時には、図11に示すような波形を出力する。このような上下に振幅があるような波形が観測された場合には、光スポットは隣接するトラックに移動している。通常は、振幅の中心付近になるようにサーボ制御されている。そのため、Tr外れ検出回路114ではトラッキングエラー信号が所定の閾値を越えた時にTr外れが発生したと判断するようにし、隣接するトラックにデータを記録してしまわないように記録を停止する信号振幅に対して判定レベル1および2を決めており、または、振幅の中心から、上下に分けて、それぞれの振幅レベルに対して判定レベルを決めるようにする。このようにすることで、Tr外れ検出を正確に行うことが可能となる。また、さらに判定レベル1,2とは別に、判定レベル3,4を設け、記録速度を下げるなどの制限に用いてもかまわない。
【0043】
ここまで、記録停止が発生した時に、続きの位置から記録を再開する方法についてしめした。図12は、記録媒体が書き換え可能な媒体である時に、記録停止が発生したに後、再度同じ位置のデータの記録を行う上書きの場合について示したものである。
【0044】
図12の(ア)はトラックはずれによる記録停止の状態を示したものである。記録データは、Link領域データと記録データを合わせて、一つの記録単位である記録ブロックを構成しており、これを連続でディスク上に記録する。ここで、トラック外れを検出し、記録が停止している。図12の(イ)は、再記録を行った場合を示した例である。(ア)に示したように、記録データnの途中で記録停止が発生し、記録データnは、途中まで記録された状態となっている。この媒体は書き換え可能な記録媒体であり、記録データnを再びLink領域nから、上書きして再記録を行う。Link領域には、予めつないで記録する時のための重ね書き許可領域が設けられており、この領域から再記録を開始する。Link領域nの一部と記録データnの一部は重ね書きされることになるが、書き換え可能な記録媒体であれば問題はない。このような方法を用いることで、書き換え可能な記録媒体では、再記録により記録停止したデータを正しく記録することが可能である。
【0045】
図13は、図12に示した書き換え可能なディスクの場合の再記録処理の一例を示したものである。記録中にトラッキングが外れた場合、ST20によりトラッキング外れを検出し、ST21によりトラッキング外れが発生した記録位置nを記憶し、ST22により記録媒体が書換型ディスク(書き換え可能なディスク)かどうかを判断し、書換型ディスクであれば、ST24にて記録位置nから再記録を行い、書換型ディスクでない場合、すなわち追記型ディスクの場合には、追加記録を行うか、または記録停止するようにする。このような処理方法を用いることで、書換型ディスクで記録停止が発生した時に、記録停止したブロックのデータから再記録を行うことが可能となる。
【0046】
図14は、書き換え可能なディスクの場合の再記録処理の別の一例を示したものである。図13と同じ番号のものは同じ処理を示す。ST25では、記録データnの記録中に再度トラッキング外れが発生するなどして、記録停止にならなかったかどうかを確認するステップである。もしくは、記録データnを記録した後に記録データnを再生して、正しく読み出せるかどうかを確認しても良い。正しく記録できていれば、そのまま継続して次の記録データの記録処理を行う。例えば、ディスクの傷などの影響により、記録データnの記録が失敗した場合には、ST26によりパラメータを変更して、再び記録データnの記録を行うようにする。パラメータの変更は、例えばサーボのパラメータの変更であり、傷検出のレベルを変えて傷検出を速くし振られにくくしたり、傷追従のサーボ特性を緩慢にして傷の影響を受けにくくしたり、傷の位置を学習して特性を制御したりしても良いし、記録速度を遅くするなどして、傷を通過させるようにしてもよい。このような処理を行うことで、記録データnに対して複数回の再記録を試みることが出来、記録信頼性を向上することが出来る。
【0047】
また、この書換ディスクがフォーマット時に交替領域を確保しており、記録失敗時に交替処理を行うことが可能な場合には、複数回の再記録が失敗した後に、交替領域に記録データnを記録することが可能である。
【0048】
図15は、書換型ディスクと追記型ディスクで、交替領域が確保されているかどうか、それぞれの場合において、処理の違いについて示したものである。
【0049】
(1)書換型ディスクで交替領域なしの場合には、記録停止が発生した後に、記録停止した位置に対して再記録を行うことが出来る。再記録は複数回実施することができ、その場合にパラメータ等を変更して、記録の安定化を図り再記録を行うようにすることが出来る。再記録を実施しても記録が出来ない場合には、記録不可となり記録停止する。
【0050】
(2)書換型ディスクで交替領域が確保されている場合には、記録停止が発生した後に、記録停止した位置に対して再記録を行うことが出来、さらに、再記録を行ってもその位置での記録が成功しない時には、交替領域に記録データnを記録することが出来る。そして、仮に交替領域でも記録停止が発生しても、交替領域で再記録を行うことが出来、データが確実に記録されるようになる。
【0051】
ここで、(1)(2)の場合には、データを上書きする再記録を行うのでなく、記録停止が発生したところからの追加記録を行うようにしてもかまわない。また、追加記録と再記録を組合せて、追加記録が失敗した場合に、再記録を行うようにするなどの組合せ処理を行っても良い。
【0052】
(3)追記型ディスクで交替領域なしの場合には、記録停止が発生した場合は、記録停止した位置の続きから追加記録を行うことが出来る。追加記録を実施しても記録が出来ない場合には、記録失敗となり記録を停止する。
【0053】
(4)追加型ディスクで交替領域が確保されている場合には、記録停止が発生した後に、記録停止した位置の続きから追加記録を行うことが出来、さらに、追加記録を行ってもその記録ブロックの記録が成功しない時には、交替領域に記録データnを記録することが出来る。そして、仮に交替領域でも記録停止が発生しても、交替領域で追加記録を行うことが出来、データが確実に記録されるようになる。
【0054】
このように、記録媒体の種類に応じて追加記録、再記録を適切に組み合わせて記録処理を行うことにより、データを確実に記録することができ、記録の信頼性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の記録停止に対応したシステム構成一例を示した図である。
【図2】通常の記録動作と記録停止動作の一例を示したものである。
【図3】記録停止が発生した時の記録再開動作の一例を示した図である。
【図4】記録停止が発生した時の記録再開動作の別の一例を示した図である。
【図5】記録停止が発生した時の記録再開動作の別の一例を示した図である。
【図6】記録停止が発生した時の記録再開の処理の流れの一例を示した図である。
【図7】DVDを一例とした記録データの構成を示したものである。
【図8】DVDを一例とした記録データの誤り訂正符号の構成を示した図である。
【図9】DVDを一例とした記録データのインターリーブを示した図である。
【図10】DVDを一例とした記録データのフレーム構成を示した図である。
【図11】Tr外れ検出回路114に入力されるトラッキングエラー信号の閾値の例を示した図である。
【図12】記録停止が発生した時の再記録動作の一例を示した図である。
【図13】書き換え可能なディスクの場合の再記録処理の一例を示した図である。
【図14】書き換え可能なディスクの場合の再記録処理の別の一例を示した図である。
【図15】書換型ディスクと追記型ディスクで、交替領域が確保されているかどうか、それぞれの場合において、処理の違いについて示した図である。
【符号の説明】
【0056】
101…記録ディスク、102…ピックアップ、103…AFE回路、104…ウォブル検出回路、
105…記録用PLL、106…記録信号処理回路、107…ライトパルス生成回路、108…メモリ、
109…再生信号処理回路、110…入出力回路、111…信号入出力、112…モータ、
113…サーボ制御回路、114…Tr外れ検出回路、115…システム制御回路、
116…停止位置記憶回路、118…トラック外れ要因判定回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
追記型記録媒体にデータを記録する記録再生装置であって、
記録媒体を回転させるモータと、
記録媒体にレーザを照射するピックアップと、
記録媒体から再生された信号を波形等化する波形等化回路と、
再生された信号からサーボ信号生成するサーボ制御回路と、
再生された信号から再生データを処理する再生信号処理回路と、
記録すべきデータに対して記録処理をする記録信号処理回路と、
記録データまたは再生データを格納するメモリと、
記録再生の動作を制御するシステム制御回路と
を備えた記録再生装置において、
記録停止すべき事象が発生したことを検出する記録停止検出回路と、
記録停止すべき事象の要因を判定する要因判定回路と、
記録停止した位置情報を記憶する記憶回路とを備え、
要因の種類により、記録停止した位置から記録再開までの長さを切り替える切り替え、
記録停止が発生した時に、停止した位置よりも後方から記録を再開するように制御
することを特徴とした記録再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載した記録再生装置において、
前記記録停止すべき要因は、記録中に記録トラックを逸脱してしまう事象であり、
前記要因の判定において、記録媒体に起因する要因か、そうでないかを判定し、
記録媒体に起因する要因か、そうでないかにより、記録停止した位置から記録再開までの長さを切り替えるように制御することを特徴とした記録再生装置。
【請求項3】
請求項1に記載した記録再生装置において、
前記記録停止すべき要因は、記録中に記録トラックを逸脱してしまう事象であり、
前記要因の判定において、記録媒体に起因する要因か、装置外部からの偶発的な要因か、を判定し、
装置外部からの偶発的な要因の場合には、記録停止した位置から記録再開までの長さを短くするように制御
することを特徴とした記録再生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載した記録再生装置において、
記録停止が発生した後に、記録再開するために、
記録媒体の同じ位置に位置付けする前に、
記録停止した要因に応じて、要因の影響を少なくするようにパラメータを変更する
ことを特徴とした記録再生装置。
【請求項5】
追記型記録媒体にデータを記録する記録再生方法であって、
記録媒体を回転制御するステップと、
記録媒体の所定の位置に位置付けるためにフォーカス、トラッキングを制御するステップと、
記録媒体上の記録位置を読み取るステップと、
記録媒体に記録するための記録データを準備する記録信号処理ステップと、
記録媒体への記録の開始、停止、及び再度記録開始を制御するステップをもつ
記録再生方法において、
記録停止すべき事象が発生したことを検出する記録停止検出ステップと、
記録停止すべき事象の要因を判定する要因判定ステップと、
記録停止した位置情報を記憶するステップとを備え、
要因の種類により、記録停止した位置から記録再開までの長さを切り替えるステップと、
記録停止が発生した時に、停止した位置よりも後方から記録を再開するように制御
することを特徴とした記録再生方法。
【請求項6】
請求項5に記載した記録再生方法において、
前記記録停止すべき要因は、記録中に記録トラックを逸脱してしまう事象であり、
前記要因の判定において、記録媒体に起因する要因か、そうでないかを判定するステップと、
記録媒体に起因する要因か、そうでないかにより、記録停止した位置から記録再開までの長さを切り替えるステップをもつことを特徴とした記録再生方法。
【請求項7】
請求項5に記載した記録再生方法において、
前記記録停止すべき要因は、記録中に記録トラックを逸脱してしまう事象であり、
前記要因の判定において、記録媒体に起因する要因か、装置外部からの偶発的な要因か、を判定するステップと、
装置外部からの偶発的な要因の場合には、記録停止した位置から記録再開までの長さを短くするように制御するステップをもつ
ことを特徴とした記録再生方法。
【請求項8】
請求項5乃至7に記載した記録再生方法において、
記録停止が発生した後に、記録再開するために、
記録媒体の同じ位置に位置付けする前に、
記録停止した要因に応じて、要因の影響を少なくするようにパラメータを変更するステップをもつ
ことを特徴とした記録再生方法。
【請求項9】
書き換え型記録媒体にデータを記録する記録再生装置であって、
記録媒体を回転させるモータと、
記録媒体にレーザを照射するピックアップと、
記録媒体から再生された信号を波形等化する波形等化回路と、
再生された信号からサーボ信号生成するサーボ制御回路と、
再生された信号から再生データを処理する再生信号処理回路と、
記録すべきデータに対して記録処理をする記録信号処理回路と、
記録データまたは再生データを格納するメモリと、
記録再生の動作を制御するシステム制御回路と
を備えた記録再生装置において、
記録停止すべき事象が発生したことを検出する記録停止検出回路と、
記録停止した位置情報を記憶する記憶回路とを備え、
記録停止した位置に再びアクセスし、再び記録停止すべき事象と同様の事象が検出された場合には、
記録停止した要因に応じて、要因の影響を少なくするようにパラメータを変更するように制御
することを特徴とした記録再生装置。
【請求項10】
書き換え型記録媒体にデータを記録する記録再生方法であって、
記録媒体を回転制御するステップと、
記録媒体の所定の位置に位置付けるためにフォーカス、トラッキングを制御するステップと、
記録媒体上の記録位置を読み取るステップと、
記録媒体に記録するための記録データを準備する記録信号処理ステップと、
記録媒体への記録の開始、停止、及び再度記録開始を制御するステップをもつ
記録再生方法において、
記録停止すべき事象が発生したことを検出する記録停止検出ステップと、
記録停止した位置情報を記憶するステップとを備え、
記録停止した位置に再びアクセスし、再び記録停止すべき事象と同様の事象が検出された場合には、
記録停止した要因に応じて、要因の影響を少なくするようにパラメータを変更するステップ
備えたことを特徴とした記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−269758(P2008−269758A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335596(P2007−335596)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】