説明

記録媒体供給装置、記録媒体供給装置の制御方法及び記録装置

【課題】ユーザーの負担を軽減することが可能な記録媒体供給装置を提供すること。
【解決手段】手差し供給される記録媒体の搬送経路に設けられ、前記記録媒体を挟持して所定の搬送方向に搬送する駆動ローラー及び従動ローラーを有する搬送部と、前記搬送部よりも前記搬送方向の下流側に搬送された前記記録媒体の搬送状態の良不良を検出する検出部と、前記搬送部に前記記録媒体を前記検出部へ搬送させると共に、前記検出部による検出結果が良の場合に前記駆動ローラーを第一駆動量駆動させ、前記検出結果が不良の場合に前記駆動ローラーを前記第一駆動量とは異なる第二駆動量駆動させる制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体供給装置、記録媒体供給装置の制御方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写装置等の記録装置には、印刷媒体や複写媒体等の媒体処理部としての印刷ヘッドや複写機構へ搬送するための搬送経路が設けられている。一般に、搬送経路は複数設けられている場合が多く、ピックアップローラーによって1枚ずつ自動的に媒体を供給し印刷ヘッドや複写機構へ搬送する自動搬送経路、記録装置の外部から手差しによって媒体を供給し搬送する手差し搬送経路、ロール紙を搬送するロール紙搬送経路等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すような手差し搬送経路を備えたプリンタには、手差しによってプリンタの後方から斜めに挿入された用紙に対して印刷を行うタイプのものがある。このようなタイプのプリンタにおいては、手差し搬送経路に用紙検出器及び搬送ローラー対が設けられている。手差しによって供給された用紙に印刷を行う場合、例えば用紙検出器の下を用紙が通過し、搬送ローラー対に用紙が接触した状態で止まるようになっている。
【0004】
当該プリンタは、この状態で印刷データを受信するまで待機し、印刷データを受信すると、搬送ローラー対によって用紙を下流側の印刷処理部へ搬送する。印刷処理部の手前には、用紙の搬送状態を検出する検出センサが設けられており、この検出センサにより用紙の搬送状態が良好であると検出された場合、印刷処理部で印刷が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−331123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成においては、手差し用紙が搬送ローラー対に完全に挟持されない場合には、搬送ローラー対から印刷処理部の検出センサまで用紙が十分に搬送されず、上流側では用紙が検出されるが下流側では検出されない場合が発生し、この場合にもエラーとなってしまう。このような場合、エラーを解除するためには用紙を設定し直す必要があるため、ユーザーに手間を掛けてしまうことになる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明は、ユーザーの負担を軽減することが可能な記録媒体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る記録媒体供給装置は、手差し供給される記録媒体の搬送経路に設けられ、前記記録媒体を挟持して所定の搬送方向に搬送する駆動ローラー及び従動ローラーを有する搬送部と、前記搬送部よりも前記搬送方向の下流側に搬送された前記記録媒体の搬送状態の良不良を検出する検出部と、前記搬送部に前記記録媒体を前記検出部へ搬送させると共に、前記検出部による検出結果が良の場合に前記駆動ローラーを第一駆動量駆動させ、前記検出結果が不良の場合に前記駆動ローラーを前記第一駆動量とは異なる第二駆動量駆動させる制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、検出部による検出結果が良の場合には駆動ローラーを第一駆動量駆動させると共に、検出結果が不良の場合には駆動ローラーを第一駆動量とは異なる第二駆動量駆動させることとしたので、手差しの搬送経路において記録媒体が駆動ローラー及び従動ローラーに完全に挟持されていない場合であっても、例えば挟持位置から第二駆動量以内の範囲で搬送方向の上流側に配置されている場合には、第二駆動量の駆動によって記録媒体の搬送状態を良にすることができる。このため、当該記録媒体を設定しなおす状況を減少させることができる。これにより、ユーザーの負担を軽減することが可能となる。
【0010】
上記の記録媒体供給装置は、前記検出部は、前記搬送部よりも前記搬送方向の下流側の所定の検出位置を検出するように配置されており、前記検出位置に前記記録媒体の先端が到達している場合が、前記検出結果が良の場合であり、前記検出位置に前記記録媒体の先端が到達していない場合が、前記検出結果が不良の場合であることを特徴とする。
本発明によれば、第二駆動量の駆動によって記録媒体の先端を検出位置に到達させることができる。このため、当該記録媒体を設定しなおす状況を減少させることができる。これにより、ユーザーの負担を軽減することが可能となる。
【0011】
上記の記録媒体供給装置は、前記第二駆動量は、前記搬送経路に露出する前記駆動ローラーの露出部分のうち前記搬送方向の上流側端部が配置される第一位置から、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとで前記記録媒体が挟持される第二位置までの、前記駆動ローラーの外周の長さに等しいことを特徴とする。
本発明によれば、搬送経路に露出する駆動ローラーの露出部分のうち搬送方向の上流側端部が配置される第一位置から、駆動ローラーと従動ローラーとで記録媒体が挟持される第二位置までの範囲に記録媒体が配置されている場合には、第二駆動量の駆動によって記録媒体の搬送状態を良にすることができる。これにより、ユーザーの負担を軽減することが可能となる。
【0012】
上記の記録媒体供給装置は、前記搬送部よりも前記搬送方向の上流側の第二検出位置において前記記録媒体の有無を検出する第二検出部を更に備え、前記制御部は、前記第二検出部において前記記録媒体が有ると検出された後、前記搬送部に前記記録媒体を前記検出部へ搬送させることを特徴とする。
本発明によれば、第二検出部において記録媒体が有ると検出された後、記録媒体を検出部へ搬送させることとしたので、駆動ローラーの空回りを回避することができる。
【0013】
上記の記録媒体供給装置は、前記検出部は、前記記録媒体のうち前記搬送方向に直交する方向の寸法を検出可能であることを特徴とする。
本発明によれば、検出部が記録媒体のうち搬送方向に直交する方向の寸法を検出可能であることとしたので、搬送精度をより高めることができる。
【0014】
上記の記録媒体供給装置は、前記記録媒体とは異なる第二記録媒体を、前記搬送経路とは異なる第二搬送経路を介して、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとで挟まれる位置に搬送する第二搬送部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、搬送経路と、第二搬送経路とが設けられているうち、手差しの記録媒体が搬送される搬送経路について、第二駆動量の駆動によって記録媒体の搬送状態を良にすることができるため、ユーザーの負担を軽減することが可能となる。
【0015】
本発明に係る記録媒体供給装置の制御方法は、手差し供給される記録媒体の搬送経路に設けられ、前記記録媒体を挟持して所定の搬送方向に搬送する駆動ローラー及び従動ローラーを有する搬送部と、前記搬送部よりも前記搬送方向の下流側に搬送された前記記録媒体の搬送状態の良不良を検出する検出部とを備える記録媒体供給装置の制御方法であって、前記搬送部に前記記録媒体を前記検出部へ搬送させると共に、前記検出部による検出結果が良の場合に前記駆動ローラーを第一駆動量駆動させると共に、前記検出結果が不良の場合に前記駆動ローラーを前記第一駆動量とは異なる第二駆動量駆動させることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、検出部による検出結果が良の場合には駆動ローラーを第一駆動量駆動させると共に、検出結果が不良の場合には駆動ローラーを第一駆動量とは異なる第二駆動量駆動させることとしたので、記録媒体が駆動ローラー及び従動ローラーに完全に挟持されていない場合であっても、例えば挟持位置から第二駆動量以内の範囲で搬送方向の上流側に配置されている場合には、第二駆動量の駆動によって記録媒体の搬送状態を良にすることができる。このため、当該記録媒体を設定しなおす状況を減少させることができる。これにより、ユーザーの負担を軽減することが可能となる。
【0017】
本発明に係る記録装置は、記録媒体に記録を行う記録部と、前記記録部に前記記録媒体を供給する記録媒体供給装置とを備え、前記記録媒体供給装置として、上記の記録媒体供給装置が用いられることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、記録媒体に記録を行う記録部と、記録部に記録媒体を供給する記録媒体供給装置とを備え、当該記録媒体供給装置として、ユーザーの負担を軽減することが可能な記録媒体供給装置が用いられることとしたので、操作性に優れた記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの外観を示す斜視図。
【図2】本実施形態に係るプリンタの用紙の搬送経路を示す断面図。
【図3】本実施形態に係るプリンタの制御系を示すブロック図。
【図4】本実施形態に係るプリンタの動作を示すフローチャート。
【図5】本実施形態に係るプリンタの用紙の搬送経路の一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る記録装置及び記録装置の制御方法の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明に係る記録装置の一実施の形態であるインクジェット式プリンタの外観斜視図である。図2は、図1に示したプリンタ内部の用紙搬送経路の概略構成を示す縦断面図である。図3はプリンタの制御系を示した機能ブロック図である。
【0021】
本発明に係る記録装置の一実施の形態であるプリンタ1は、フロント、リア、オートシートフィーダ、ロールの4形態で給紙されるタイプの業務用のインクジェット式プリンタである。図1に示すように、上部ケース2と下部ケース3とから構成される装置ケース4の前面中央に、記録媒体である用紙を装填した媒体収容部である略箱形の用紙カセット5が着脱自在に挿着されている。また、装置ケース4の背面には、背面側給紙部9が設けられている。
【0022】
また、用紙カセット5の上面開放部を覆うように、給排紙トレイ6が設けられている。給排紙トレイ6は、印刷が終了した用紙を排出する排紙トレイとして機能すると共に、例えば写真用紙などの厚紙などを給紙させる給紙トレイとしても機能するようになっている。
【0023】
また、装置ケース4の前面の両側には、動作状態を表示する表示部7や操作部8が設けられている。さらに、操作部8の近傍にはフィードボタン10が設けられており、紙ジャム等によってプリンタ1の内の用紙搬送路に紙詰まりが生じ、詰まった用紙を一度取り除いた場合でも、このフィードボタンを押すことによって用紙カセット5から強制的に搬送路内に用紙を繰り出すことができる。
【0024】
図2に示すように、装置ケース4内には、給排紙トレイ6から正面供給路Fを介して直線状搬送経路Bへ搬送する正面搬送経路(第二搬送経路)と、用紙カセット5から自動供給された用紙Pを円弧状供給路Aを介して直線状搬送経路Bへ搬送する自動搬送経路(第二搬送経路)と、手差し用紙装填部30から手差し供給路Cを介して直線状搬送経路Bへ搬送する手差し搬送経路(搬送経路)と、ロール紙給紙部60からロール供給路Rを介して搬送するロール搬送経路(第二搬送経路)と、の4つの搬送経路が設けられている。
【0025】
正面搬送経路は、上記の給排紙トレイ6から挿入された用紙が正面搬送ローラー9a及び9b(第二搬送部)によって直線状搬送経路Bへ搬送される搬送経路である。
【0026】
また、円弧状供給路A及びこの円弧状供給路Aから給排紙トレイ6へ繋がる直線状搬送経路Bを形成する紙搬送装置11を備えており、用紙カセット5と円弧状供給路Aと直線状搬送経路Bと給排紙トレイ6とによって、用紙カセット5から繰り出された用紙Pを処理した後に前面の給排紙トレイ6に戻すU字状搬送経路が形成されている。
【0027】
紙搬送装置(第二搬送部)11は、ASF(オートシートフィーダ)部とPF(ペーパフィーダ)部とを有している。
【0028】
ASF部は、用紙カセット5に収容されている用紙Pを一枚ずつ装置後方に繰り出す用紙繰り出し機構22と、この用紙繰り出し機構22が繰り出した用紙Pを円弧状供給路Aに沿って搬送する円弧状搬送部を形成する中間ローラー31及びガイド部34等から構成されている。
【0029】
PF部は、円弧状搬送部から搬送されてきた用紙Pを挟持して印刷処理部43の用紙支持面48上に送る第1搬送手段と、印刷処理部43を通過した用紙Pをその下流の給排紙トレイ6に挟持して搬送する第2搬送手段55とを備えている。
【0030】
ASF部の用紙繰り出し機構22は、図2に示したように、先端に繰り出し用のピックアップローラー21を備えたフレーム25の後端が支持ピン24によって図中上下方向に回動可能に構成されている。この用紙繰り出し機構22は、フレーム25の上下方向の揺動により、用紙Pカセット5内の最上部の用紙Pに対してピックアップローラー21を接触させることが可能である。用紙繰り出し機構22は、当該プリンタ1の休止時には図2に実線で示すようにフレーム25が水平に維持されて、ピックアップローラー21が用紙Pカセット5上の用紙Pから離れた状態に保たれる。
【0031】
そして、給紙時には、支持ピン24を中心とするフレーム25の下方への回動によって、図2に二点鎖線で示すように、ピックアップローラー21が用紙カセット5上の用紙Pに押し付けられ、ピックアップローラー21の回転によって用紙カセット5上の用紙Pが傾斜した摩擦パッド23に当接して、その摩擦力と用紙Pのこしの強さによって分離されながら、一枚ずつ中間ローラー31とガイド部34の間に繰り出される。給紙が済むと、印刷処理部43によって印刷が行われる。印刷が終了して用紙Pが排出された後に、図2に実線で示したように、フレーム25は元の水平状態に戻される。
【0032】
円弧状供給路A(指示待ち供給路)は、図2に示すように、円弧状供給路Aの外側(プリンタ1の背面側)に設けられ略円弧状に湾曲したガイド面を有するガイド部34と、円弧状供給路Aの内側(プリンタ1の前面側)に設けられガイド部34の下方から上方に向かって用紙Pを送る中間ローラー31とを備えた構成である。また、ガイド部34には、下方側に設けられたリタードローラー32と、上方側に配置されたアシストローラー33とが設けられている。そして、ピックアップローラー21によって送り出された用紙Pは、中間ローラー31とリタードローラー32とによって挟持されて搬送され、さらに中間ローラー31とアシストローラー33とによって挟持されて搬送される。これにより、用紙Pは、中間ローラー31とガイド部34との間隙として形成された円弧状供給路Aに沿って搬送され、その先端部がプリンタ前面側に向けられてU字状搬送経路を構成する直線状搬送経路Bに送り出される。
【0033】
また、中間ローラー31の上方には、補助ガイド部材35を備えている。この補助ガイド部材35は、ガイド部34に対して後端側が回動可能に支持され、先端側が移動されるようになっている。この補助ガイド部材35は、円弧状供給路Aから直線状搬送経路Bへ搬送される用紙Pを、その上方側から自重により押さえて、用紙Pを直線状搬送経路Bに沿ってプリンタ1の前方側に案内する。
【0034】
PF部の第1搬送手段は、図2に示したように、駆動ローラー41及び従動ローラー42により構成されている。駆動ローラー41及び従動ローラー42は、円弧状供給路Aの出口端(ガイド部34の下流側端部)から装置前面側に所定距離離れた位置に設けられており、円弧状供給路Aから直線状搬送経路Bに送り出されてきた用紙Pを挟持して印刷位置である印刷処理部43の下に搬送する。そして、回転駆動量を制御することにより、用紙Pを印刷処理部43に対して位置決めすることが可能である。
【0035】
さらに、プリンタ1は、背面側給紙部9として、手差し用紙装填部30及びロール紙給紙部60を備えている。手差し用紙装填部30は、プリンタ1の背面側から手差し用紙P1を給紙する。この手差し用紙装填部30は、円弧状供給路Aとは別の手差し供給路(搬送経路)Cから給紙されてきた用紙を直線状搬送経路Bへ送り込むものである。
【0036】
ロール紙給紙部(第二搬送部)60は、軸部60aに取り付けられたロール用紙PRをプリンタ1の背面側から給紙する。ロール紙給紙部60は、円弧状供給路A、手差し供給路Cとは異なるロール供給路Rを介して直線状搬送経路Bへ送り込むものである。
【0037】
このように、本実施形態のプリンタ1は、給排紙トレイ6から正面供給路Fを介して直線状搬送経路Bへ搬送する正面搬送経路と、用紙カセット5から自動供給された用紙Pを円弧状供給路Aを介して直線状搬送経路Bへ搬送する自動搬送経路と、手差し用紙装填部30から手差し供給路Cを介して直線状搬送経路Bへ搬送する手差し搬送経路と、ロール紙給紙部60からロール供給路Rを介して搬送するロール搬送経路と、の4つの搬送経路を備えた構成となっている。なお、直線状搬送経路Bは4つの搬送経路で共通の搬送経路として構成されている。
【0038】
このうち、円弧状供給路A、ロール供給路R及び手差し供給路Cの出口端、つまり直線状搬送経路Bの入口端には、用紙の有無を検出する媒体検出器としての用紙検出器(以下、PE検出器という。)62が設けられている。円弧状供給路A、ロール供給路R及び手差し供給路CでPE検出器62を兼用することによって、それぞれの経路ごとに専用の検出器を設ける必要がないので、プリンタ1の部品点数を減らしコストを下げることができるとともに、プリンタ1の省スペース設計が可能である。
【0039】
記録部としての印刷処理部43は、印刷ヘッド44を有するキャリッジ45を備えており、このキャリッジ45は、送り込まれた用紙Pあるいは用紙P1に対してその幅方向へ移動可能に支持されている。この印刷ヘッド44は、図2に示すように、用紙に向かってインク滴を吐出させる吐出ノズル46を有しており、この吐出ノズル46に対して、プリンタ1の前方側には、用紙を検出するとともに、用紙の搬送方向に直交する方向の寸法(幅)を検出する用紙幅検出器(以下、PW検出器という。)47が設けられている。
【0040】
プリンタ1は、図示せぬCPUがフラッシュROMに記憶されたファームウェアを実行しながら、通信インタフェースを介して接続されたホストコンピュータと通信を行うことにより印刷データを受信する。そして、印刷処理部43が各種コマンドや印刷データに基づき、紙搬送装置11を介して用紙Pや手差し用紙装填部30から手差しによって給紙された用紙P1を搬送しつつ印刷ヘッド44を駆動して印刷を実行し、給排紙トレイ6へ排出させる。なお、本実施形態ではホストコンピュータから送信された処理データに基づき印刷を行うように構成されているが、プリンタ1に直接入力された処理データに基づき印刷を行うように構成することも可能である。例えば、処理データが記憶された外部記憶媒体を直接プリンタ1に接続して処理データを入力するものであってもよい。
【0041】
次に、図3を参照してプリンタ1の制御系が行う内部処理について説明する。図3は、プリンタ1の制御系を示した機能ブロック図である。
図3に示すように、プリンタ1内には、ホストコンピュータ100から送信される処理データに含まれる各種コマンドやデータを受信する受信部85と、各種コマンドに応じた応答をホストコンピュータ100へ送信する送信部86と、受信部85が受信した各種コマンドやデータを一時的に保持する受信バッファ87が設けられている。受信バッファ87によって受信されたデータは、コマンド解析部88によって解析され、制御コマンドの場合は制御コマンドバッファ89に、印刷データの場合には、データ展開処理が行われてデータ変換され、印刷ヘッド44のノズル列に対応したドットパターンデータが生成されて印刷バッファ90に記憶される。
【0042】
一方、制御コマンドバッファ89に一時記憶された制御コマンドデータは、主制御部91によって読み出されて、制御コマンドに応じた処理が実行される。なお、受信バッファ87、制御コマンドバッファ89、印刷バッファ90は図示せぬRAM内に設けられた所定の記憶領域である。
【0043】
主制御部91は、制御コマンドバッファ89に記憶された制御コマンドを読み出し、各種制御コマンドに応じた処理を行うよう、検出器制御部92、搬送制御部94やエラー通知部95へ指示を出したり、印刷バッファ90に記憶された印刷データを印刷制御部93へ転送するとともに印刷指示を与える。なお、当該主制御部91と、上記のPW検出器47と、駆動ローラー41及び従動ローラー42とにより、用紙Pを印刷処理部43へ供給する用紙供給装置(記録媒体供給装置)200が構成されている。
【0044】
検出器制御部92は、主制御部91からの指示に応じてPE検出器62、PW検出器47の動作を制御し、検出結果を主制御部91へ通知する。印刷制御部93は、主制御部91からの指示に応じて印刷ヘッド44及びキャリッジ45の動作を制御する。同様に、搬送制御部94は主制御部91からの指示に応じてASF部、PF部を構成する各種搬送ローラーの駆動を制御し、用紙の搬送制御を行う。
【0045】
エラー通知部95は、主制御部91からの指示に応じてプリンタ1がエラー状態にある場合に、エラー通知を行うよう制御する。例えば、表示部7を点滅させたりあるいは点灯させたり、表示部7にエラーの内容をメッセージによって表示させる。
【0046】
次に、プリンタ1の印刷処理部43による印刷動作ついて説明する。図4はプリンタ1が行う手差し供給処理を説明するフローチャートである。
まず、ユーザーが手差し用紙装填部30へ用紙P1を載置する。図5は、ユーザーが手差し用紙装填部30へ用紙P1を載置した状態を示す図であり、図2で示した搬送経路のうちPE検出器62、駆動ローラー41、従動ローラー42、PW検出器47にかけての範囲を拡大して示す図である。
【0047】
なお、図5に示すように、駆動ローラー41は、手差し供給路Cの一部に露出するように配置されている。駆動ローラー41は手差し供給路Cの第一位置PS1から搬送方向の下流側に掛けて露出するように配置されている。したがって、当該第一位置PS1は、駆動ローラー41のうち手差し用紙の搬送方向の上流側端部が配置される位置である。
【0048】
また、図5に示すように、駆動ローラー41と従動ローラー42とで用紙P1が挟持される位置が第二位置PS2である。印刷ヘッド44に設けられたPW検出器47によって検出される位置が検出位置PS3である。印刷動作のため用紙P1の先端が待機する位置が待機位置PS4である。また、PE検出器62によって検出される位置が検出位置PS0である。
【0049】
なお、第一位置PS1と第二位置PS2との距離L2は、駆動ローラー41の外周に沿った距離であり、例えば5mm程度に設定される。第二位置PS2と検出位置PS3との距離Lは、用紙P1の搬送経路に沿った距離であり、例えば10mm程度に設定される。検出位置PS3と待機位置PS4との距離L1は、直線距離であり、例えば5mm程度に設定される。
【0050】
この構成において、ユーザーが手差し用紙装填部30から手差し給紙を行うと、その用紙P1の先端は、駆動ローラー41及び従動ローラー42に挟持される第二位置PS2まで到達して停止する。ユーザーが手差し給紙を行う場合、用紙P1の先端が第二位置PS2に到達したときの感触により、用紙P1のセットが完了したと判断する。用紙P1の先端が当該第二位置PS2に到達した状態(図5の装填状態Pt)が正しい用紙P1の装填状態である。
【0051】
これに対して、ユーザーによっては、用紙P1の先端が第一位置PS1に到達して停止したときの感触により、用紙P1のセットが完了したと誤認する場合がある。用紙P1の先端が当該第一位置PS1に到達した状態(図5の装填状態Pf)は、誤った用紙P1の装填状態であり、上記の正しい用紙P1の装填状態Ptに対して搬送方向の上流側に距離L2だけずれている。
【0052】
ユーザーが手差し用紙装填部30に用紙P1を装填した場合、PE検出器62が検出位置PS0において用紙P1の有無を検出し(ステップS11)、検出器制御部92によって検出信号が主制御部91へ通知される。上記のように装填状態には装填状態Pt及び装填状態Pfの両方の場合があるが、それぞれ用紙P1の先端がPE検出器62の検出位置PS0を通過しているため、PE検出器62では装填状態Ptと装填状態Pfとを判別することができず、いずれの場合にも用紙P1が有る旨の検出信号を主制御部に通知する(ステップS11のYes)。
【0053】
主制御部91はこの状態で待機させておき、例えばユーザーの給紙操作などによる給紙信号の有無を検出する(ステップS12)。給紙信号を受信したら、主制御部91は、搬送制御部94に対して用紙P1を印刷処理部43に対して給紙するよう指示する(ステップS12のYes)。指示を受けた搬送制御部94は、駆動ローラー41を駆動量L(図5参照)だけ駆動させる(ステップS13)。
【0054】
なお、当該駆動量Lは、図5に示すように、駆動ローラー41と従動ローラー42とで用紙P1が挟持される第二位置PS2と、PW検出器47による検出位置PS3との間の距離Lに相当する。用紙P1が装填状態Ptとなるように装填された場合、当該ステップS13を行うことにより、用紙P1の先端は第二位置PS2から距離Lだけ搬送方向下流に進んだ位置、つまり、PW検出器47の検出位置PS3に到達する。
【0055】
駆動ローラー41の駆動の後、PW検出器47による検出を行わせる(ステップS14)。PW検出器47による検出結果が良の場合、すなわち、用紙P1の先端が検出位置PS3において幅方向に位置ズレ無く配置されていると検出された場合(ステップS14のYes)、駆動ローラー41を第一駆動量L1だけ駆動させる(ステップS15)。この第一駆動量L1は、PW検出器47の検出位置PS3と、印刷動作のための用紙P1の待機位置PS4との間の距離L1に相当する。したがって、ステップS15を行うことにより、用紙P1の先端が待機位置PS4に到達する。
【0056】
この状態で、印刷開始の信号が入力されるまで待機させておく。主制御部91は、印刷開始の信号の有無を検出し(ステップS16)、信号が入力された場合には(ステップS16のYes)印刷制御部93が印刷処理部43を駆動して印刷処理を実行させる(ステップS17)。
【0057】
一方、用紙P1が装填状態Pfとなるように装填された場合、上記ステップS13を行うことにより、用紙P1の先端は第一位置PS1から距離Lだけ搬送方向下流に進んだ位置に到達する。つまり、用紙P1は搬送方向の上流側に距離L2だけずれた状態で搬送されるため、用紙P1の先端はPW検出器47の検出位置PS3よりも搬送方向の上流側に距離L2だけずれた位置に到達する。この場合、ステップS14を行っても用紙P1が検出されないことになる。
【0058】
このように、ステップS14において用紙P1が検出されない場合、すなわち、PW検出器47による検出結果が不良の場合(ステップS14のNo)、主制御部91は、駆動ローラー41を第二駆動量L2だけ駆動させる(ステップS18)。この動作により、用紙P1が搬送方向の上流側の距離L2だけずれた位置に配置されていた場合、ずれている分だけ搬送方向の下流側に移動するため、用紙P1の先端がPW検出器47の検出位置PS3に到達する。このため、用紙P1のずれが解消されることになる。
【0059】
その後、主制御部91は、再度PW検出器47によって用紙P1の先端を検出する(ステップS19)。用紙P1のずれが解消され、PW検出器47によって用紙P1の先端の搬送状態が良であると検出された場合(ステップS19のYes)、駆動ローラー41を第一駆動量L1だけ駆動させる(ステップS15)。この動作により、用紙P1の先端が待機位置PS4に到達する。
【0060】
この状態で、上記同様、印刷開始の信号が入力されるまで待機させておく。主制御部91は、印刷開始の信号の有無を検出し(ステップS16)、信号が入力された場合には(ステップS16のYes)印刷制御部93が印刷処理部43を駆動して印刷処理を実行させる(ステップS17)。
【0061】
一方、PW検出器47による再度の検出によっても用紙P1の先端の搬送状態が不良であると検出された場合(ステップS19のNo)、用紙P1の装填状態によらず他に問題点があると判断し、紙無しエラーとしてエラー通知部95を介して表示部7にエラー表示を行うようにする。
【0062】
このように、本実施形態によれば、PW検出器47による検出結果が良の場合には駆動ローラー41を第一駆動量L1だけ駆動させると共に、検出結果が不良の場合には駆動ローラー41を第一駆動量L1とは異なる第二駆動量L2だけ駆動させることとしたので、手差しの用紙P1が駆動ローラー41及び従動ローラー42に完全に挟持されていない場合であっても、例えば挟持位置である第二位置PS2から第二駆動量L2以内の範囲で搬送方向の上流側に配置されている場合には、第二駆動量L2の駆動によって用紙P1の搬送状態を良にすることができる。このため、当該用紙P1を設定しなおす状況を減少させることができる。これにより、ユーザーの負担を軽減することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態によれば、用紙P1に記録を行う印刷処理部43と、当該印刷処理部43に用紙P1を供給する用紙供給装置200とを備え、当該用紙供給装置200として、ユーザーの負担を軽減することが可能な用紙供給装置200が用いられることとしたので、操作性に優れたプリンタ1を得ることができる。
【0064】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。
【0065】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【0066】
ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
P、P1…用紙 C…手差し供給路 R…ロール供給路 PS0…検出位置 PS1…第一位置 PS2…第二位置 PS3…検出位置 PS4…待機位置 41…駆動ローラー 42…従動ローラー 43…印刷処理部(記録部) 47…用紙幅検出器(PW検出器:検出部) 62…用紙検出器(PE検出器:第二検出部) 91…主制御部(制御部) 200…用紙供給装置(記録媒体供給装置) 1…プリンタ(記録装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手差し供給される記録媒体の搬送経路に設けられ、前記記録媒体を挟持して所定の搬送方向に搬送する駆動ローラー及び従動ローラーを有する搬送部と、
前記搬送部よりも前記搬送方向の下流側に搬送された前記記録媒体の搬送状態の良不良を検出する検出部と、
前記搬送部に前記記録媒体を前記検出部へ搬送させると共に、前記検出部による検出結果が良の場合に前記駆動ローラーを第一駆動量駆動させ、前記検出結果が不良の場合に前記駆動ローラーを前記第一駆動量とは異なる第二駆動量駆動させる制御部と
を備える記録媒体供給装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記搬送部よりも前記搬送方向の下流側の所定の検出位置を検出するように配置されており、
前記検出位置に前記記録媒体の先端が到達している場合が、前記検出結果が良の場合であり、
前記検出位置に前記記録媒体の先端が到達していない場合が、前記検出結果が不良の場合である
請求項1に記載の記録媒体供給装置。
【請求項3】
前記第二駆動量は、前記搬送経路に露出する前記駆動ローラーの露出部分のうち前記搬送方向の上流側端部が配置される第一位置から、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとで前記記録媒体が挟持される第二位置までの、前記駆動ローラーの外周の長さに等しい
請求項1に記載の記録媒体供給装置。
【請求項4】
前記搬送部よりも前記搬送方向の上流側の第二検出位置において前記記録媒体の有無を検出する第二検出部を更に備え、
前記制御部は、前記第二検出部において前記記録媒体が有ると検出された後、前記搬送部に前記記録媒体を前記検出部へ搬送させる
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の記録媒体供給装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記記録媒体のうち前記搬送方向に直交する方向の寸法を検出可能である
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の記録媒体供給装置。
【請求項6】
前記記録媒体とは異なる第二記録媒体を、前記搬送経路とは異なる第二搬送経路を介して、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとで挟まれる位置に搬送する第二搬送部
を更に備える請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の記録媒体供給装置。
【請求項7】
手差し供給される記録媒体の搬送経路に設けられ、前記記録媒体を挟持して所定の搬送方向に搬送する駆動ローラー及び従動ローラーを有する搬送部と、
前記搬送部よりも前記搬送方向の下流側に搬送された前記記録媒体の搬送状態の良不良を検出する検出部と
を備える記録媒体供給装置の制御方法であって、
前記検出部による検出結果が良の場合に前記駆動ローラーを第一駆動量駆動させると共に、前記検出結果が不良の場合に前記駆動ローラーを前記第一駆動量とは異なる第二駆動量駆動させる
記録媒体供給装置の制御方法。
【請求項8】
記録媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部に前記記録媒体を供給する記録媒体供給装置と
を備え、
前記記録媒体供給装置として、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の記録媒体供給装置が用いられる
記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−62182(P2012−62182A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209552(P2010−209552)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】