説明

記録媒体供給装置、記録装置、記録媒体供給方法

【課題】簡易な構成で、積層された記録媒体を一枚ずつ記録部に供給することが可能な記録媒体供給装置を提供する。
【解決手段】用紙Pへの記録を行う記録部20に供給する複数の用紙Pが積層状態で装填される媒体装填部を備え、該媒体装填部は、積層状態にして装填された用紙Pにおける記録部20への供給方向の上流側端部Peから下流側端部Psまでの間の少なくとも一部を積層状態のままで供給方向に沿って湾曲させ、複数の用紙Pの下流側端部Psのそれぞれの間において供給方向に位置ずれを発生させる収容通路19を含んで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体供給装置、この記録媒体供給装置を備えた記録装置、および記録媒体供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、装置内に設けられた搬送経路に沿って供給される記録媒体に液体を噴射して文字や図形を含む画像を記録部において記録する記録装置が実用化されている。この種の記録装置は、記録媒体を積層して装填するとともに、積層された記録媒体を一枚ずつ分離して搬送経路に送り出して記録部に供給する記録媒体供給装置を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されるように、記録媒体としての用紙が積層されて装填された給紙カセットから、回転ローラー(給送ローラー)を利用した用紙の送り出し機構によって、積層された最上位の用紙を搬送経路に送り出す装置が記録媒体供給装置として備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−241535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような回転ローラーを利用した用紙の送り出し機構は、回転ローラーの駆動機構やこの駆動機構を制御する制御装置などを必要とするため、記録媒体供給装置ひいては記録装置の構造が少なからず複雑化する。また、駆動される回転ローラーの機構上の問題に起因して、回転ローラーが最上位の用紙を搬送経路に送り出せない状態が発生する課題もある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、簡易な構成で、積層された記録媒体を一枚ずつ記録部に供給することが可能な記録媒体供給装置を提供することにある。また、このような記録媒体供給装置を備えた記録装置を提供することを目的とする。また、積層された記録媒体を一枚ずつ記録部に供給することが容易な記録媒体供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の記録媒体供給装置は、記録媒体への記録を行う記録部に供給する複数の前記記録媒体が積層状態で装填される媒体装填部を備え、該媒体装填部は、積層状態にして装填された前記記録媒体における前記記録部への供給方向の上流側端部から下流側端部までの間の少なくとも一部を前記積層状態のままで前記供給方向に沿って湾曲させ、複数の前記記録媒体の前記下流側端部のそれぞれの間において前記供給方向に位置ずれを発生させる湾曲経路部を含んで形成される。
【0008】
この構成によれば、記録媒体において記録部側の端部となる下流側端部には、積層された記録媒体間において湾曲部の曲率に応じた供給方向の位置ずれが発生する。従って、この位置ずれを利用して積層された記録媒体を一枚ずつ分離させて記録部に供給することができる。この結果、簡易な構成で、積層された記録媒体を一枚ずつ記録部に供給することが可能な記録媒体供給装置を提供できる。
【0009】
本発明の記録媒体供給装置において、前記媒体装填部は、積層状態にして装填された前記記録媒体における前記湾曲経路部よりも前記供給方向の上流側に位置する上流側端部を前記記録媒体の積層方向において揃った状態に位置合せする位置合わせ手段を有する。
【0010】
この構成によれば、湾曲経路部を含む媒体装填部において積層された記録媒体間に発生する位置ずれが、記録媒体の上流側端部では供給方向に位置ずれが発生しないように位置合わせされるため、記録媒体の下流側端部における供給方向の位置ずれとして発生する。従って、この下流側端部において発生した供給方向に沿う位置ずれ量に応じて記録媒体を供給方向へ移動させることによって、積層された記録媒体を一枚ずつ記録部に供給することができる。なお、記録媒体の積層方向において揃った状態とは、各記録媒体がその記録面の平面形状の誤差や装填時のずれによる供給方向の位置ずれを含んで、ほぼ積層方向に重なる状態を言う。
【0011】
本発明の記録媒体供給装置において、前記湾曲経路部は、積層状態にして装填された前記記録媒体における前記供給方向の上流側端部を前記積層状態のままで前記下流側端部よりも内側となる位置に巻き込む形状に形成される。
【0012】
この構成によれば、媒体装填部に積層状態にして装填された記録媒体は、その供給方向の上流側端部から下流側端部までの範囲に積層状態のままで連続して湾曲する筒形の湾曲部が形成されるので、積層された記録媒体間において記録媒体の下流側端部において供給方向に大きな位置ずれ量を生じさせることができる。従って、この生じる大きな位置ずれ量を利用して、積層された記録媒体を容易に一枚ずつ記録部に供給することができる。
【0013】
本発明の記録媒体供給装置において、積層状態にして装填された前記記録媒体における前記供給方向の下流側端部を前記記録部に誘導する誘導通路と、前記積層状態にして装填された前記記録媒体における前記供給方向の上流側端部を前記供給方向の下流側に向けて移動させる移動手段と、を備え、前記誘導通路は、前記供給方向の下流側に向けて前記記録媒体の前記積層方向の通路空間が狭くなる先細り通路である。
【0014】
この構成によれば、記録媒体の上流側端部を移動手段が供給方向の下流側に移動させることによって記録媒体の下流側端部を先細り経路から記録部に誘導することができる。このとき、誘導される記録媒体は、積層された各記録媒体間において互いに供給方向に位置ずれを有しているので、この位置ずれによって、積層された記録媒体を先細り通路から一枚ずつ記録部に容易に搬送することができる。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、供給される記録媒体への記録を行う記録部と、上記構成の記録媒体供給装置と、を備える。
この構成によれば、回転ローラーなどの記録媒体の送り出し機構を設けることなく、積層された記録媒体を一枚ずつ記録部に供給することができる記録装置を実現できる。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の記録媒体供給方法は、記録媒体への記録を行う記録部に供給する複数の前記記録媒体を積層状態で装填し、前記積層状態に装填した前記記録媒体における前記記録部への供給方向の上流側端部から下流側端部までの間の少なくとも一部を前記積層状態のままで前記供給方向に沿って湾曲させるとともに、前記供給方向の上流側端部を前記記録媒体の積層方向において揃った状態に位置合わせし、その状態から前記供給方向の下流側端部から前記記録部に前記記録媒体を供給することを特徴とする記録媒体供給方法。
【0017】
この方法によれば、積層された記録媒体を湾曲させることによって積層された記録媒体の下流側端部間において、供給方向に位置ずれを生じさせることができる。従って、この位置ずれを利用して積層された記録媒体を一枚ずつ記録部に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来のプリンターを側面から見た模式端面図。
【図2】本発明の第1実施形態であるプリンターを側面から見た模式端面図。
【図3】第1実施形態において、積層された最上位の用紙が供給される状態を示すプリンターを側面から見た模式端面図。
【図4】第1実施形態において、積層された最下位の用紙が供給される状態を示すプリンターを側面から見た模式端面図。
【図5】第2実施形態で積層状態のままで筒形に湾曲された用紙が装填された給紙装置を備えたプリンターを、側面から見た模式端面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の記録装置をインクジェット式プリンター(以降、単に「プリンター」と呼ぶ)に具体化した一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以降の説明を容易にするため、図1に示したように、鉛直方向における重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、これと交差する方向であって、記録媒体の一種である用紙Pが画像の記録時において搬送される搬送方向を前方向、搬送方向と反対方向を後方向とする。さらに鉛直方向および搬送方向の双方と交差する方向であって液体噴射ヘッド23が往復移動する方向すなわち走査方向を、前方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0020】
さて、本実施形態のプリンターを説明する前に、本発明に対する理解を容易にするため、従来の記録媒体供給装置としての給紙装置KSJを備えたプリンター11Jについて、図1を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、プリンター11Jは、略直方体状をなす本体ケース12内に、記録媒体としての用紙Pに画像を記録する記録部20と、記録部20に対して用紙Pを供給する記録媒体供給装置としての給紙装置KSJとを備えている。
【0022】
給紙装置KSJは以下のように構成されている。すなわち、本体ケース12の下端部において、用紙Pを収容する有底矩形箱状をなす用紙カセット13が、前後方向に挿抜されることによってプリンター11Jに対して着脱自在に備えられている。そして、この用紙カセット13に複数の用紙Pをその記録面が底面に沿った平坦な状態で積層して収容し、用紙カセット13を本体ケース12に挿入することによって、用紙Pがプリンター11Jに装填されるようになっている。
【0023】
本体ケース12内における用紙カセット13の上側には、回転駆動される回転ローラーである給紙ローラー41を有する送出ユニット40が設けられている。送出ユニット40は、用紙カセット13内に収容された各用紙Pを最上位(最外層)のものから1枚ずつ、後方に位置する用紙Pの搬送経路となる搬送通路16へ順次送り出す送り出し機構となっている。
【0024】
各用紙Pの搬送通路16は、本体ケース12内に設けられた通路形成部材14,15によって形成され、用紙カセット13から後方に送り出された用紙Pを前方に搬送する反転通路となっている。すなわち、通路形成部材14の前側壁面14aおよび通路形成部材15の後側壁面15aは、それぞれ所定の間隔を設けながら用紙カセット13の後端部側から上昇しながら後側に膨らむように湾曲した後、前方に向かって延びるように形成されている。なお、通路形成部材14の前側壁面14aのうち、用紙カセット13の後方に位置する壁面14bは、各用紙Pのうちの最上位のもの(用紙P1)とそれ以外のものとを分離する分離斜面になっている。
【0025】
また、搬送通路16の通路途中には、送出ユニット40により用紙カセット13内から送り出された各用紙Pを搬送通路16内において停滞することなく搬送方向下流側に位置する記録部20に向けて搬送するため、一対の搬送ローラー43,44が配置されている。搬送ローラー43は通路形成部材15に回転可能に軸支され、搬送ローラー44は通路形成部材14に回転可能に軸支され、搬送ローラー43,44のいずれか一方が駆動ローラーとなっている。そして、搬送通路16に沿って搬送された用紙Pは、搬送方向の下流に位置する記録部20に供給される。従って、搬送方向が用紙Pの記録部20への供給方向となっている。
【0026】
記録部20は以下のように構成されている。すなわち、搬送通路16から供給された用紙Pは、搬送手段としての紙送りローラー25によって記録部20内において搬送されて移動するように構成されている。具体的には、紙送りローラー25は、紙送りモーター(図示略)によって回転駆動される紙送り駆動ローラー26と、紙送り駆動ローラー26の回転駆動に伴って従動回転する紙送り従動ローラー27とを備えている。そして各ローラー26,27の間に用紙Pの搬送下流側の先端を挟持した後、挟持した状態で回転することで用紙Pは前方に備えられた支持台24上に送られ、この支持台24によって下側から支持されながら前方に移動して搬送される。
【0027】
この支持台24上を移動する用紙Pの上側には、キャリッジモーター(図示略)により左右方向に往復移動可能に構成されたキャリッジ21が設けられている。キャリッジ21には、液体としてのインクが充填されたインクカートリッジ22が着脱自在に装着されている。キャリッジ21の下端部には、液体噴射ヘッド23が用紙Pと対向するように支持されている。液体噴射ヘッド23には、インクカートリッジ22からインクが供給されるとともに、供給されたインクは、液体噴射ヘッド23が有する複数のノズル(図示略)から噴射可能になっている。従って、キャリッジ21が左右方向に往復移動しながら支持台24上を搬送される用紙Pに対して液体噴射ヘッド23の各ノズルからインクを噴射することで、用紙Pに対して記録処理としての印刷が行われるようになっている。
【0028】
支持台24よりも下流側(前方側)の位置には、排紙モーター(図示略)によって回転駆動される排紙駆動ローラー28と、該排紙駆動ローラー28の回転駆動に伴って従動回転する排紙従動ローラー29とが、用紙Pを挟持するように上下方向に隣接して配置されている。そして、排紙駆動ローラー28の回転駆動により、各ローラー28,29が支持台24上で印刷された後の各用紙Pを挟持しながら回転することで、支持台24上を通過した用紙Pが下流側に搬送されるようになっている。その後、用紙Pは本体ケース12の前面に設けられた排紙口18から排紙トレイ(図示略)に排紙される。
【0029】
さて、プリンター11Jには、記録部20へ用紙Pを供給する給紙装置KSJがこのように構成されて備えられている。従って、プリンター11Jは、積層された用紙Pを一枚ずつ記録部20に供給するため、給紙ローラー41や搬送ローラー43,44を回転駆動させる駆動装置を必要とするので、給紙装置KSJの構造が複雑になる。さらに、送出ユニット40の動作において給紙ローラー41の駆動機構上の問題に起因して、給紙ローラー41が最上位の用紙Pを搬送通路16に送り出せない状態が発生する課題もある。
【0030】
また、平坦な積層状態で用紙Pが収容された用紙カセット13が装着され、用紙Pがプリンター11Jに装填された状態では、収容された用紙Pの前後方向における長さLpが長くなると、給紙装置KSJ(本体ケース12)の前後方向の長さLsもこれに応じて長くなる。このため、プリンター11Jを小型化することは困難である。
【0031】
(第1実施形態)
それでは、本実施形態の記録媒体収容装置としての給紙装置KSを備えたプリンター11について、図2〜4を参照して説明する。なお、以降のプリンター11の説明において、従来の給紙装置KSJを備えたプリンター11Jの構成と同一の構成については同一符号を付し、それらの説明を適宜省略する。また、本実施形態では、説明の簡略化のため、一例として最上位の用紙P1から最下位の用紙P5までの5枚の用紙Pが積層されているものとする。また、用紙P1〜P5を区別せず総称する場合は用紙Pと呼称する。
【0032】
本実施形態のプリンター11に備えられる記録媒体供給装置としての給紙装置KSは、図2に示すように構成されている。すなわち、本体ケース12の下端部において前後方向に挿抜されることによってプリンター11に対して着脱自在に備えられる用紙カセット13は、各用紙Pを積層状態で収容する。このとき、用紙カセット13において収容された積層状態の各用紙Pは、その用紙カセット13の挿入方向でもある記録部20への用紙Pの供給方向における上流側つまり前方側の用紙部分が用紙カセット13の内底面部13dに載置されるようになっている。
【0033】
また、用紙カセット13内における前方側端部には、各用紙Pを記録部20へ供給する供給方向に移動させる移動手段30が備えられている。移動手段30は、位置合わせ手段としても機能する移動部材35と、駆動源となるモーター31と、モーター31の回転軸に固定された駆動歯車32と、この駆動歯車32と噛み合うピニオン33と、このピニオン33と噛み合うように用紙カセット13の内底面部13dに凹設されて前後方向へ形成されたラック34とを有している。ピニオン33は移動部材35に回転自在に固定され、同じくモーター31は移動部材35に固定されている。従って、モーター31が回転することによって駆動歯車32を介して回転するピニオン33は、ラック34に沿って前後方向に移動し、このピニオン33の移動に伴って移動部材35が前後方向に移動するようになっている。
【0034】
そして、各用紙Pはプリンター11に装填された状態で、その前方側すなわち用紙カセット13の挿入方向における各上流側端部Peが、移動部材35の垂直な後面に当接することで積層方向においてそれぞれ揃えられる。したがって、記録部20への供給方向においては各用紙P間において位置ずれが発生しないようになっている。
【0035】
一方、本体ケース12内には、用紙カセット13の挿入に伴って、積層された各用紙Pの後方側が湾曲しつつ挿入されて収容される収容通路(湾曲経路部)19が設けられている。収容通路19は、本体ケース12内に設けられた通路形成部材14,15によって形成されている。そして、通路形成部材14の前側壁面14aおよび通路形成部材15の後側壁面15aは、互いに各用紙Pが積層状態で挿入可能な所定の間隔を設けながら用紙カセット13の後端部側から上昇しながら後側に膨らむ湾曲形状となっている。このような構成によって、本実施形態では、用紙カセット13と収容通路(湾曲経路部)19とを含んで用紙Pを積層状態のままで湾曲させつつ装填する媒体装填部が構成される。
【0036】
なお、本実施形態では、各用紙Pは、各用紙Pの挿入方向の下流側端部Psが、媒体装填部の収容通路19において形成されるこの湾曲部50によって、後方から前方に向くように反転した状態で給紙装置KSに装填されるようになっている。
【0037】
また、各用紙Pの挿入方向における湾曲部50から下流側の収容通路19には、各用紙Pの積層方向における通路空間(通路高さ)が挿入方向(ここでは前方)に沿って漸次狭くなる先細り通路19aが形成されている。すなわち、通路形成部材14の前側壁面14aから更に用紙Pの挿入方向側に連続して形成される壁面14cは、前方が下がる先下がりの傾斜面となっている。一方、通路形成部材15の後側壁面15aから更に用紙Pの挿入方向側に連続して形成される壁面15cは、前方に略水平に延びる平坦面となっている。この平坦面である壁面15cに傾斜面である壁面14cが対峙するように構成され、先細り通路19aが形成されている。
【0038】
この先細り通路19aの前方の通路終端には、用紙Pが少なくとも一枚通過可能な端部隙間17が形成されている。また、この端部隙間17の前方には紙送りローラー25が配設されている。従って、先細り通路19aに形成された端部隙間17を通過した用紙Pの下流側端部Psは、確実に紙送りローラー25に挟持されるようになっている。すなわち、先細り通路19aは用紙Pの下流側端部を紙送りローラー25に挟持されるように誘導する誘導通路となっている。
【0039】
以上説明した構成を有する給紙装置KSにおいて、各用紙Pは、用紙カセット13を本体ケース12内に挿入することによって、図2に示すように装填される。すなわち、各用紙Pは、用紙カセット13の挿入方向の上流側が用紙カセット13の内底面部13dに載置されるとともに、それぞれの上流側端部Peが移動部材35と当接した状態で収容され、積層方向において揃った状態に位置合わせされる。なお、本実施形態において、積層方向において揃った状態とは、各用紙Pがその平面形状誤差や用紙カセット13に収容する際の前後方向の位置ずれを含んで、積層方向において互いにほぼ重なる状態を言う。
【0040】
そして、上流側端部Peが積層方向において揃えられて用紙カセット13に収容された各用紙Pは、収容された用紙カセット13が本体ケース12に挿入されることによって、各用紙Pにおける挿入方向の下流側が湾曲形状を呈する収容通路19内に挿入される。この結果、各用紙Pは、挿入方向の下流側において、挿入方向に沿って積層状態のままで湾曲する湾曲部50が形成された状態となる。このとき、各用紙Pは、上流側端部Peが積層方向において揃えられているので、互いに積層している各用紙Pの下流側端部Ps間において、互いに湾曲部50の曲率および用紙厚に応じて定まる所定量の位置ずれが、挿入方向において発生する。
【0041】
ちなみに、本実施形態では、互いの位置ずれが生じた各用紙Pは、最上位の用紙P1の下流側端部Psが収容通路19において記録部20側に最も近く位置し、続いて用紙P2〜P5の順で記録部20に対して近い位置になるように、給紙装置KSに装填される。また、用紙Pは、その曲げ剛性によって曲がり方向と反対方向に力が発生するので、各用紙Pの下流側端部Psは、先細り通路19aにおいて壁面14c側に付勢され、壁面14cに対して当接もしくはほぼ当接した状態になっている。
【0042】
なお、収容通路19を形成する一方の通路形成部材14において、その前側壁面14aから用紙カセット13の後端部と隣接する位置まで延設されている壁面14bは、挿入された積層状態の用紙Pを、収容通路19に導くための案内面として機能するようになっている。
【0043】
さて、給紙装置KSは、このように装填された各用紙Pを、記録部20に対して一枚ずつ供給するように動作が行われる。次に、給紙装置KSの動作つまり作用について、図2〜図4を参照して説明する。
【0044】
図2に示すように、給紙装置KSは、移動手段30を動作させて、移動部材35を各用紙Pが装填されたときの位置から後方、すなわち装填時の各用紙Pの挿入方向に移動させる。なお、本実施形態では、移動部材35の位置を、用紙P1〜P5に応じて、移動部材35a,35b,35c,35d,35eのそれぞれの位置に順次移動させる。この移動部材35の移動によって、各用紙Pを記録部20へ供給する。従って、本実施形態では、各用紙Pをプリンター11へ装填する際の各用紙Pの挿入方向は、前述するように各用紙Pの記録部20への供給方向でもある。
【0045】
まず移動部材35が移動部材35aの位置まで移動すると、図3に示すように、各用紙Pの上流側端部Peが移動部材35によって一緒に後方つまり供給方向に押されて移動する。この移動によって、最上位の用紙P1の下流側端部Psが先細り通路19aにおいて壁面14c(または壁面15c)を摺動して端部隙間17から供給方向となる前方に押し出される。押し出された用紙P1は、紙送りローラー25に挟持され、紙送り駆動ローラー26の回転によって前方への搬送が開始され、記録部20へ供給される。この搬送において、用紙P1は、隣接する用紙P2および通路形成部材15の少なくとも一方の表面と擦れるために搬送抵抗が生ずる。従って、紙送りローラー25は、通路形成部材15と用紙P2との間を移動できる搬送力を用紙P1に対して付与する。
【0046】
一方、他の用紙P2〜P5は、用紙P1と同様にその下流側端部Psが、移動部材35の移動に伴って先細り通路19aにおいて壁面14cを摺動して端部隙間17側に移動する。このとき用紙P1と積層状態にある用紙P2の下流側端部Psの位置は、用紙P1に対して供給方向と反対方向に所定量ずれているので、用紙P1が紙送りローラー25に挟持された状態において、紙送りローラー25から所定量離間した位置になる。同様に、用紙P3は用紙P2に対して、用紙P4は用紙P3に対して、用紙P5は用紙P4に対して、それぞれの下流側端部Psの位置は、互いに紙送りローラー25に対して所定量離間した位置になる。
【0047】
このように、給紙装置KSは、移動部材35を移動部材35aの位置に移動させることで、積層された各用紙Pのうち、用紙P1を分離して紙送りローラー25に挟持させて搬送させる一方、他の用紙P2〜P5を紙送りローラー25に挟持されないように位置させる。この結果、給紙装置KSは用紙P1一枚を記録部20へ供給する。
【0048】
次に、図示を省略するが、移動部材35が移動部材35aの位置から移動部材35bの位置まで移動すると、各用紙P(すなわち用紙P2〜P5)の上流側端部Peが移動部材35によって一緒に供給方向に押されて移動する。この移動によって、用紙P1が搬送されて最上位となっている用紙P2の下流側端部Psが先細り通路19aにおいて壁面14c(または壁面15c)を摺動して端部隙間17から前方に押し出される。押し出された用紙P1は、紙送りローラー25に挟持され、紙送り駆動ローラー26の回転によって前方への搬送が開始され、記録部20へ供給される。この搬送において、用紙P2は、隣接する用紙P3および通路形成部材15の少なくとも一方の表面と擦れるために搬送抵抗が生ずる。従って、紙送りローラー25は、通路形成部材15と用紙P3との間を移動できる搬送力を用紙P2に対して付与する。
【0049】
一方、他の用紙P3〜P5は、用紙P2と同様にその下流側端部Psが先細り通路19aにおいて壁面14cを摺動して端部隙間17側に移動する。このとき用紙P2と積層状態にある用紙P3の下流側端部Psの位置は、用紙P2との間で供給方向と反対方向において所定量ずれているので、用紙P2が紙送りローラー25に挟持された状態において、紙送りローラー25から所定量離間した位置になる。同様に、用紙P4は用紙P3に対して、用紙P5は用紙P4に対して、それぞれの下流側端部Psの位置は、互いに紙送りローラー25に対して所定量離間した位置になる。
【0050】
このように、給紙装置KSは、移動部材35を移動部材35bの位置に移動させることで、積層された各用紙Pのうち、用紙P2を分離して紙送りローラー25に挟持させて搬送させる一方、他の用紙P3〜P5を紙送りローラー25に挟持されないように位置させる。この結果、給紙装置KSは用紙P2一枚を記録部20へ供給する。
【0051】
以下、動作説明を省略するが、同様に、給紙装置KSは、移動部材35を、移動部材35bの位置から移動部材35cの位置に移動させることで用紙P3一枚を、移動部材35cの位置から移動部材35dの位置に移動させることで、用紙P4一枚を、それぞれ記録部20へ供給する。
【0052】
そして、図4に示すように、移動部材35が移動部材35dの位置から移動部材35eの位置まで移動すると、最後の用紙P5の上流側端部Peが移動部材35によって一緒に供給方向に押されて移動する。この移動によって、用紙P1〜P4が搬送されて残り一枚となっている用紙P5の下流側端部Psが先細り通路19aにおいて壁面14c(または壁面15c)を摺動して端部隙間17から前方に押し出される。押し出された用紙P1は、紙送りローラー25に挟持され、紙送り駆動ローラー26の回転によって前方への搬送が開始され、記録部20へ供給される。この搬送において、用紙P5は、通路形成部材14,15の少なくとも一方の表面と擦れるために搬送抵抗が生ずる。従って、紙送りローラー25は、通路形成部材14,15の間を移動できる搬送力を用紙P5に対して付与する。
【0053】
このように、給紙装置KSは、移動部材35を移動部材35eの位置に移動させることで、用紙P5を紙送りローラー25に挟持させて搬送させ、用紙P5一枚を記録部20へ供給する。こうして、給紙装置KSは積層状態で装填された全ての用紙を一枚ずつ記録部20へ供給する。なお、移動部材35eは、用紙P5が紙送りローラー25によって搬送開始された後は、用紙P5の上流側端部Peを押す必要がないため、次の用紙Pの装填に備えるべく移動開始前の移動部材35の位置に戻される。
【0054】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)各用紙Pにおいて記録部20側の端部となる下流側端部Psには、積層された各用紙P間において湾曲部50の曲率に応じた供給方向の位置ずれが発生する。従って、この位置ずれを利用して積層された用紙Pを一枚ずつ分離させて記録部20に供給することができる。この結果、簡易な構成で、積層された用紙Pを一枚ずつ記録部20に供給することが可能な給紙装置KSを提供できる。また、積層状態のままで湾曲する各用紙Pを装填することができるので、プリンター11の前後方向の長さLsは、各用紙Pが平坦な状態で積層されたプリンター11Jにおける前後方向の長さLsよりも短くすることができる。この結果、プリンター11をプリンター11Jに対して小型化することができる。
【0055】
(2)収容通路19を含む媒体装填部において積層された各用紙P間に発生する位置ずれが、用紙Pの上流側端部Peでは供給方向に位置ずれが発生しないように位置合わせされるため、用紙Pの下流側端部Psにおける供給方向の位置ずれとして発生する。従って、この下流側端部Psにおいて発生した供給方向に沿う位置ずれ量に応じて用紙Pを供給方向へ移動させることによって、積層された用紙Pを一枚ずつ記録部20に供給することができる。
【0056】
(3)用紙Pの上流側端部Peを移動手段30が供給方向の下流側に移動させることによって用紙Pの下流側端部Psを先細り通路19aから記録部20に誘導することができる。このとき、誘導される用紙Pは、積層された各用紙P間において互いに供給方向に位置ずれを有しているので、この位置ずれによって、積層された用紙Pを先細り通路19aから一枚ずつ記録部20に容易に搬送することができる。
【0057】
(4)給紙ローラー41などの用紙Pの送り出し機構を設けることなく、積層された用紙Pを一枚ずつ記録部20に供給できるプリンター11を実現できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図5を参照して説明する。本実施形態は、上記第1実施形態において、供給方向の上流側端部Peが積層状態で内側に巻き込まれた筒形の湾曲部60を形成した各用紙Pを、給紙装置KSに装填するようにした形態である。
【0058】
なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態のプリンター11の構成と同一の構成については同一符号を付し、それらの説明を適宜省略する。また、本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、以下の説明を簡略化するため、一例として図5に示すように筒形の湾曲部60において筒の最も中心側に位置する用紙P1から最も外側に位置する用紙P5までの5枚の用紙Pが積層されているものとする。また、用紙P1〜P5を区別せず総称する場合は用紙Pと呼称する。
【0059】
図5に示すように、本実施形態のプリンター11aが備える給紙装置KSは以下のように構成されている。すなわち、本体ケース12の後方下端部において、各用紙Pを収容する用紙カセット13aが、前後方向に挿抜されることによってプリンター11aに対して着脱自在に備えられている。そして、用紙カセット13aは、記録部20への供給方向における上流側端部Peが積層状態のままで内側に巻き込まれて、上流側端部Peから下流側端部Psまでの範囲に積層状態のままで連続して湾曲する筒形の湾曲部60が形成された各用紙Pを収容して、プリンター11aに装着される。
【0060】
また、本実施形態では、用紙カセット13aがプリンター11aに装着された状態で、各用紙Pは、記録部20への供給方向における各用紙Pの下流側端部Psを、記録部20(紙送りローラー25)へ誘導する通路となる先細り通路19aに位置させるように装填される。そして、装填された状態で、用紙Pの筒形の湾曲部60を囲むように通路形成部材14,15および用紙カセット13が配設される。従って、本実施形態では、用紙カセット13aと通路形成部材14,15とを含んで用紙Pを積層状態のままで湾曲させつつ装填する媒体装填部が構成されている。
【0061】
本実施形態では本体ケース12内に設けられた通路形成部材14は紙送りローラー25の後方に配設され、その下方壁面における前側の壁面14cが、前方向において先下がりの傾斜面となっている。一方、同じく本体ケース12内に設けられた通路形成部材15が用紙カセット13の前方に位置する部位を有して配設されている。そして、紙送りローラー25の後方であって通路形成部材15の上方に位置する壁面15cは、前方に略水平に延びる平坦面となっている。この平坦面である壁面15cに傾斜面である壁面14cが対峙するように構成され、端部隙間17を有する先細り通路19aが形成されている。
【0062】
また、通路形成部材15における用紙カセット13aの前方および下方の双方の内面側壁面13bには、用紙カセット13aに収容された筒形の各用紙Pの外形面(つまり最も外側に位置する用紙P5の表面)に沿う湾曲面部位が形成されている。また、通路形成部材15の後側壁面15aには、用紙カセット13に収容された筒形の各用紙Pの外形面(つまり最も外側に位置する用紙P5の表面)に沿う湾曲面部位が形成されている。
【0063】
さて、本実施形態では、移動手段30は用紙カセット13aに備えられ、前後方向への移動ではなく回転によって各用紙Pを記録部20へ一枚ずつ供給するように構成されている。すなわち、移動手段30は、図示しない駆動源となるモーターと、このモーターによって回転される回転軸61と、回転軸61に固定され外周に庇形状部位63が形成された回転部材62と、を有している。そしてモーターが駆動されることによって回転部材62が図中矢印で示したように回転されるようになっている。本実施形態では、この回転部材62の回転方向が、各用紙Pを記録部20へ供給する供給方向となっている。
【0064】
また、本実施形態では、各用紙Pの供給方向における上流側端部Peは、位置合わせ手段としても機能する回転部材62と当接して積層方向において揃った状態で位置決めされる。また、その上流側端部Peにおける外側部位が用紙Pの曲がり剛性によって外側に移動しないように、庇形状部位63に当接してその移動が規制されるようになっている。このように上流側端部Peが積層方向において揃えられて規制された各用紙Pは、積層状態のままで筒形に丸められた状態の湾曲形状がその供給方向の上流側端部Peから下流側端部Psに至るまで形成される。換言すれば、給紙装置KSには、媒体装填部において各用紙Pが積層状態のままで所謂渦巻き状に湾曲した湾曲経路部が形成されることになる。
【0065】
この結果、各用紙Pは、上流側端部Peが積層方向において揃えられているので、この湾曲によってその下流側端部Psの位置が、互いに積層している各用紙P間で、湾曲部60の曲率および用紙厚に応じて定まる所定量、供給方向における位置ずれが発生する。なお、本実施形態では、原理的に上記第1実施形態よりも大きな位置ずれ量を生じさせることが可能である。
【0066】
従って、本実施形態における給紙装置KSは第1実施形態と同様の動作(作用)を行う。すなわち、筒形で装填された各用紙Pは、上記第1実施形態と同様に、移動手段30によって先細り通路19aから記録部20に対して、各用紙Pを一枚ずつ順次供給する。すなわち、モーターを駆動して回転部材62を回転させることで、各用紙Pを用紙カセット13aの内面側壁面13bおよび通路形成部材15の後側壁面15aに沿って摺動させながら供給方向に押し出す。この押し出しによって、上記実施形態と同様に、まず最も中心側の用紙P1が先細り通路19aの端部隙間17から押し出され、その下流側端部Psが紙送りローラー25に挟持されて搬送され、続いて用紙P2〜P5まで一枚ずつ順次供給される。この供給動作については、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0067】
また、本実施形態では、湾曲部60の最も中心側の用紙P1が記録部20へ搬送される際、用紙P1は、隣接する用紙P2および回転部材62、さらには用紙P5の少なくとも一つの表面と擦れるために搬送抵抗が生ずる。従って、紙送りローラー25は、この生ずる搬送抵抗に抗して移動させる搬送力を用紙P1に対して付与する。なお、図5に示すように、各用紙Pはその曲げ剛性によって曲率が大きくなるように変位することから、用紙P1と回転部材62との間には空隙65(図中網掛け部)が形成される。従って、本実施形態では、この空隙65によって、用紙P1は記録部20への移動に際する搬送抵抗が少なくなるようになっている。
【0068】
本実施形態によれば、上記第1実施形態における効果(1)〜(4)に加えて、次の効果(5),(6)を奏する。
(5)媒体装填部に積層状態にして装填された用紙Pは、その供給方向の上流側端部Peから下流側端部Psまでの範囲に積層状態のままで連続して湾曲する筒形の湾曲部60が形成されるので、積層された用紙P間において用紙Pの下流側端部Psにおいて供給方向に大きな位置ずれ量を生じさせることができる。従って、この生じる大きな位置ずれ量を利用して、積層された用紙Pを容易に一枚ずつ記録部20に供給することができる。
【0069】
(6)各用紙Pを用紙カセット13aに筒形に丸めて収容するので、プリンター11の前後方向の長さLsは、各用紙Pが平坦な状態で積層されたプリンター11Jにおける前後方向の長さLsよりも短くできる。また、筒形の外径を小さくするように丸めることによって、プリンター11aの上下方向の寸法Hsを小さくできる。
【0070】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、移動手段30は、移動部材35を各位置において一旦停止させ、用紙Pが紙送りローラー25によって挟持されて搬送されたのちに再び次の位置へ移動させることが好ましい。こうすれば、一枚の用紙Pに対する画像形成の終了を待って、次の用紙Pを一枚供給することができる。なお、例えば印刷が連続して行われるような場合は、移動部材35を各位置において停止させることなく次の位置へ移動させることが好ましい。
【0071】
・上記実施形態において、例えば、移動手段30が構成できない場合、搬送手段としての紙送りローラー25を移動させ、互いに供給方向に位置ずれしている各用紙Pを、一枚ずつ挟持して記録部20へ供給する構成としてもよい。すなわち、紙送りローラー25を、供給方向と反対方向(ここでは後方向)に移動させてまず用紙P1を挟持し、前方へ搬送させて記録部20へ供給する。その後、積層された各用紙P間(例えば用紙P1と用紙P2との間)における供給方向(前後方向)の位置ずれ量分ずつ後方へ移動させることで、各用紙P2〜P5を順番に挟持し、供給方向(前方)へ搬送させて記録部20へ一枚ずつ用紙Pを供給する。なお、この場合、紙送りローラー25が、先細り通路19aに位置する各用紙Pの下流側端部Psを挟持できるように、先細り通路19aには、紙送りローラー25が通路内へ進入できる開口部が形成されている。
【0072】
・上記実施形態において、各用紙Pの供給方向の上流側端部Peは、装填された状態において、積層方向に必ずしも重なるように揃っていなくても差し支えない。例えば、各用紙Pの供給方向の上流側端部Peは、互いに供給方向に位置ずれすることによって積層方向において斜めになった状態であってもよい。要は、湾曲部50,60の形成によって、各用紙Pの供給方向の下流側端部Ps間において、供給方向の位置ずれが発生すればよい。
【0073】
なお、各用紙Pが積層方向において斜めになる場合、積層された上位の用紙Pが下位の用紙Pに対して供給方向に位置ずれすることが好ましい。このように位置ずれすることで、各用紙P間の供給方向の位置ずれ量が大きくなるので、各用紙Pを紙送りローラー25によって容易に一枚ずつ記録部20へ供給することができる。
【0074】
・上記第2実施形態において、積層状態のままで筒形に湾曲された各用紙Pを、筒の長手方向に沿う左右方向に移動して、プリンター11aに装填されるようにしてもよい。例えば、図5において、各用紙Pを収容する用紙カセット13aが、本体ケース12に対して左から右方向(紙面手前側から奥側方向)に挿入されることによって、プリンター11aに対して各用紙Pが装填されるようにしてもよい。
【0075】
・上記実施形態において、記録媒体は用紙Pに限るものでなく、金属板、樹脂板、布などを材料とする板状部材であってもよい。
・上記実施形態において、プリンター11,11a,11Jは、インクカートリッジ22がキャリッジ21に搭載されないオフキャリッジタイプであってもよい。あるいは、キャリッジ21が主走査方向に移動するシリアル式のプリンターに限らず、液体噴射ヘッド23を固定したままでも用紙Pの最大幅範囲の印字が可能なラインヘッド式やラテラル式のプリンターであってもよい。
【0076】
・上記実施形態では、記録装置を、液体としてのインクを噴射するインクジェット式のプリンター11,11a,11Jとして具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置として具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置を流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
11,11a,11J…記録装置としてのプリンター、19…湾曲経路部としての収容通路、19a…誘導通路としての先細り通路、20…記録部、30…移動手段、35…位置合わせ手段としての移動部材、50,60…湾曲部、62…位置合わせ手段としての回転部材、Pe…上流側端部、Ps…下流側端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体への記録を行う記録部に供給する複数の前記記録媒体が積層状態で装填される媒体装填部を備え、
該媒体装填部は、積層状態にして装填された前記記録媒体における前記記録部への供給方向の上流側端部から下流側端部までの間の少なくとも一部を前記積層状態のままで前記供給方向に沿って湾曲させ、複数の前記記録媒体の前記下流側端部のそれぞれの間において前記供給方向に位置ずれを発生させる湾曲経路部を含んで形成されることを特徴とする記録媒体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録媒体供給装置であって、
前記媒体装填部は、積層状態にして装填された前記記録媒体における前記湾曲経路部よりも前記供給方向の上流側に位置する上流側端部を前記記録媒体の積層方向において揃った状態に位置合せする位置合わせ手段を有することを特徴とする記録媒体供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録媒体供給装置において、
前記湾曲経路部は、積層状態にして装填された前記記録媒体における前記供給方向の上流側端部を前記積層状態のままで前記下流側端部よりも内側となる位置に巻き込む形状に形成されることを特徴とする記録媒体供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の記録媒体供給装置において、
積層状態にして装填された前記記録媒体における前記供給方向の下流側端部を前記記録部に誘導する誘導通路と、
前記積層状態にして装填された前記記録媒体における前記供給方向の上流側端部を前記供給方向の下流側に向けて移動させる移動手段と、を備え、
前記誘導通路は、前記供給方向の下流側に向けて前記記録媒体の前記積層方向の通路空間が狭くなる先細り通路であることを特徴とする記録媒体供給装置。
【請求項5】
供給される記録媒体への記録を行う記録部と、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の記録媒体供給装置と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
記録媒体への記録を行う記録部に供給する複数の前記記録媒体を積層状態で装填し、
前記積層状態に装填した前記記録媒体における前記記録部への供給方向の上流側端部から下流側端部までの間の少なくとも一部を前記積層状態のままで前記供給方向に沿って湾曲させるとともに、前記供給方向の上流側端部を前記記録媒体の積層方向において揃った状態に位置合わせし、
その状態から前記供給方向の下流側端部から前記記録部に前記記録媒体を供給することを特徴とする記録媒体供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250779(P2012−250779A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122160(P2011−122160)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】