説明

記録媒体搬送装置および記録装置

【課題】短時間で記録媒体の搬送精度が高い記録画像を得ることができる。
【解決手段】ロール紙から引き出された記録媒体を所定の長さを単位として搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送方向と逆方向の力を記録媒体に作用する回転負荷手段と、前記記録媒体に作用する搬送方向と逆方向の力が作用していないことを判断する判断手段とを備える記録媒体搬送装置であって、前記記録媒体の前記所定の長さの搬送の間に、前記判断手段により前記記録媒体に作用する搬送方向と逆方向の力が作用していないとき、前記記録媒体の前記所定の長さの搬送量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録媒体搬送装置および記録装置に関し、特に搬送量補正を行う記録媒体搬送装置および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置は、記録媒体を所定量ずつ搬送しながら記録していくものであり、高画質化の要求の高まりにより、記録媒体の搬送方法や制御手段においてもさまざまな提案がなされている。例えば、記録媒体の搬送中の斜行や蛇行を補正するために、搬送される記録媒体に搬送方向とは反対方向に力(バックテンション)を付加しながら記録媒体の搬送を行うものが知られている。このような記録媒体では、常にバックテンションが作用している状態を考慮して、1パスでの搬送補正量を、記録媒体の種類毎、幅サイズ毎、記録モード(搬送量)毎、記録媒体の巻き径毎に設定して高精度の搬送を実施している。
【0003】
しかしながら、このようなバックテンションが作用した状態でロール状の記録媒体の搬送制御は、ロール状に記録媒体が巻回されたロール紙の回転による慣性等により搬送負荷の変動を生じる。例えば、搬送時にロール紙のイナーシャや1パスでの搬送量、搬送時の加減速によりロール紙が搬送方向に搬送量以上に送り出されることがある。このときロール紙は、搬送方向に連れ回り回転し、連れ回り力がなくなると巻き戻す方向に回転する。この連れ回り状態が不規則に発生する状態で、次の1パスのための搬送を行う場合には、例えば搬送毎にバックテンションが作用したりしなかったり、また1パス途中から作用する場合などとバックテンションの作用状態が不安定になる。つまり、パス毎に毎回異なる搬送負荷変動が生じることにより搬送量が不安定になる。その結果、画像劣化を引き起こすことになる。
【0004】
このような問題に対し、例えば特許文献1には、画像形成部の上流と下流部に速度検出手段を設け、搬送速度から搬送位置ずれの補正量を算出し、搬送補正を行うことで高精度搬送を行い、画像劣化を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−236404号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、記録媒体を1パス搬送した後に搬送量を補正する値を設定して搬送量を補正する必要がある。具体的には、1パス搬送毎に、上流と下流部の速度検出手段に基づくそれぞれの搬送速度から、任意の地点の搬送速度を検出し、搬送補正量を求めなければならない。そのため、搬送量を得るのに長い時間を要し、生産性が低下することがある。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、短時間で記録媒体の搬送精度が高い記録画像を得ることができる記録媒体搬送装置および記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、ロール紙から引き出された記録媒体を所定の長さを単位として搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送方向と逆方向の力を記録媒体に作用する回転負荷手段と、前記記録媒体に作用する搬送方向と逆方向の力が作用していないことを判断する判断手段とを備える記録媒体搬送装置であって、前記記録媒体の前記所定の長さの搬送の間に、前記判断手段により前記記録媒体に作用する搬送方向と逆方向の力が作用していないとき、前記記録媒体の前記所定の長さの搬送量を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、搬送される記録媒体に作用するバックテンションを、1パス毎に判断し搬送量を調整することができる。これにより、短時間で記録媒体の搬送精度が高い記録画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の記録装置のシート搬送装置を示す模式的斜視図である。
【図2】図1に示す記録装置の外装を示す模式的縦断面図である。
【図3】第1の実施形態のシート搬送装置の要部を示す模式的斜視図である。
【図4】第1の実施形態のシート搬送装置の搬送モータの駆動指令を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態の回転検知閾値を示す表である。
【図6】第1の実施形態の搬送補正時の速度プロファイルを示す図である。
【図7】第1の実施形態の搬送補正量を示す表である。
【図8】第1の実施形態の1パスでの搬送補正制御のフローを示すブロック図である。
【図9】第1の実施形態の搬送補正の手続を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態の搬送補正時の速度プロファイルを示す図である。
【図11】第3の実施形態のシート搬送装置の要部構成を示す模式図である。
【図12】第3の実施形態の搬送補正時の速度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の記録装置のシート搬送装置を示す模式的斜視図である。また図2は、図1に示す記録装置の外装を示す模式的縦断面図である。記録装置1は、本実施形態の記録媒体であるロール状の記録シートPr(以下、ロール紙ともいう)を回転可能に巻回保持するためのロール紙給紙部10を備えている。また、ロール紙Prに画像を記録する画像形成部30へ搬送するLF搬送部40と、画像形成後のシートを記録装置本体の外へ排出するための排紙部50とを備えている。
【0013】
図3は、本実施形態のシート搬送装置の要部を示す模式的斜視図である。本実施形態のシート搬送装置はロール状の記録シートPrを給紙搬送するものである。
【0014】
まず、LF搬送部40およびロール紙給紙部10について説明をする。
【0015】
搬送ローラ41は、記録ヘッド31の走査方向(X方向、主走査方向)と交差する向(Y方向、復走査方向)にロール紙を所定量搬送する。搬送ローラ41は、一側端に連結されている搬送モータ42により駆動される。ピンチローラ43は、ピンチローラアーム44に回転自在に保持され、その後部のピンチローラばね(図示せず)によって搬送ローラ41に対して押圧され従動回転する。ピンチローラ43は、主走査方向に複数個配置されている。搬送ローラ41の軸には、搬送プーリ46が固定されている。搬送ローラ41は、搬送モータ42の駆動から搬送ベルト45を介して搬送プーリ46に伝達されることにより回転駆動される。ロール紙Prを巻き戻すときは、巻き戻しモータ11よりも遅くなる回転速度差を設けて搬送方向とは逆方向に回転する。
【0016】
ロール紙給紙部10は、両側にフランジ12L、12R(図示せず)を有し、このフランジ12L、12R(図示せず)で記録シートの幅方向位置を規制した状態でロール紙Prが巻回されている。ロール紙給紙部10の両端部は軸受13L、13R(図示せず)により回転自在に軸支されている。
【0017】
ロール紙Prのセット位置(装填状態)では、ロール紙給紙部10の左端部に設けられた回転負荷手段14(トルクリミッタ)に対して、一方向伝達手段としてのワンウエイギア15を介して、巻き取りモータ11の駆動を伝達できるように構成されている。このワンウエイギア15は、ロール紙給紙部10がシートPrを送り出す正転方向において固定され、ロール紙給紙部10はシートPrを巻き戻す逆転方向において自由に回転できるように構成されている。つまり、搬送モータ42の回転により搬送されるロール紙Prは、ワンウエイギア15の正転方向の固定によりロール紙給紙部10の軸部に設けられた回転負荷手段14による搬送方向と逆方向の力(バックテンションT)が作用された状態で搬送される。一方、巻き取り時には、ワンウエイギア15がフリーになることにより巻き取りモータ11の巻き戻す方向の駆動を伝達する。ロール紙給紙部10の左側の軸部に取り付けられた回転負荷手段14は、ロール紙給紙部10と連れ回り可能に構成されている。
【0018】
この回転負荷手段14は、いずれの方向に回転する場合でも、所定値以下の回転力(トルク)は伝達可能であるが、所定値以上の回転力が作用すると相対回転することで回転を伝達しないように機能するものである。つまりロール紙Prを送り出すときのロールブレーキT(バックテンション)を発生させるとともに、巻き戻すときの巻き取り用トルクを発生するために使用される。
【0019】
ロール紙Prと搬送ローラ41との間に一定のロールブレーキT(バックテンション)を作用させることでロール紙Prの斜行を補正することができる。それにより、使用者がロールセットするときに生じるズレや弛み等を除去するとともに、ロール紙Prに一定の負荷を与えることで安定した高精度な搬送を実現することができる。
【0020】
ロール給紙部10と連れ回りする回転軸16の左端部に、後述する回転検出手段60にロール給紙部10の回転を伝達する検出ギア17が固定されている。搬送時にロール給紙部10と共に回転する検出ギア17により回転検出手段60の検出伝達ギア61に回転が伝達される。検出伝達ギア61には、回転を検出するスリットが印刷されたエンコーダフィルム62が配置されている。また、このスリットを検出しカウントするセンサ部63がエンコーダフィルム62の円周上に備えられている。
【0021】
回転負荷手段14は、ロール紙給紙部10の左側軸部にスプリングピン(図示せず)により固定され、ハウジングには突起18a、18bが設けられている。一方巻き取りモータ11からの伝達を、ワンウエイギア15を介して受ける回転ギア19のハウジング内には、凹部20a、20bが設けられている。これらの凹凸部が勘合された構成であるため回転負荷手段14とロール紙Pr及び回転ギア19は、所定値以下の回転力(トルク)では連れ回りすることができる。
【0022】
次に、画像形成部30について説明する。
【0023】
画像形成部30には、記録媒体を吸引しつつ平面状に案内支持するための吸引プラテン33と、記録ヘッド31を搭載して主走査方向(X方向)に往復移動可能なキャリッジ32が設けられている。本実施形態では、キャリッジ32にインクジェット方式の記録ヘッド31が搭載されている。キャリッジ32の主走査移動に同期して、画像データに基づいて記録ヘッド31を駆動することにより、該記録ヘッドの吐出口(吐出口列)から記録媒体Prに向かってインクを吐出し、画像を形成する。装置本体に主走査方向に配置されたメインステイ2上にレールステイ3が配置され、一対の平行なメインレール4およびサブレール5が固定されている。キャッリッジ32はレール軸受6、7を介してそれぞれのレール4、5に沿って往復移動可能に案内支持されている。なお、本実施形態では記録装置1がインクジェット記録装置であるが、本発明の記録装置は、レーザービーム式、熱転写式、感熱式、ワイヤドット式など、他の形態の記録手段を用いる記録装置であってもよい。
【0024】
装置本体の幅方向に延びる下ステイ34の上面には、複数個の吸引孔(図示せず)を有する吸引プラテン33が取り付けられている。密閉空洞構造の下ステイ34の片側端部には吸引ファン35が接続されている。吸引ファン35を作動させることにより、下ステイ34を吸引ダクトとして吸引プラテン33の吸引孔から吸引を行い、記録シートPrを吸引プラテン33上に吸着する。これにより、記録時の紙浮きや記録後の波打ち(コックリング)等を防止する。
【0025】
次に、本実施形態の記録媒体搬送装置の搬送補正制御について説明する。
【0026】
図4は、本実施形態の記録媒体搬送装置の間欠送りを行なう搬送モータの駆動指令(速度プロファイル)を示す模式図である。本実施形態の搬送補正制御は、まず、搬送モータ42へ所定の長さを単位として搬送する間欠送り(1パス送り)の駆動指令を行う。駆動は、駆動ベルト45を介して搬送ローラ41の左端に配置された搬送プーリ46に伝達される。搬送プーリ46に備えられたエンコーダフィルム47からのパルス出力を検出センサ48によりカウントし、搬送モータ駆動指令(速度プロファイル)へフィードバックすることにより高精度位置決め制御を行っている。
【0027】
搬送モータ駆動指令(速度プロファイル)100は、図4に示すように加速制御101−定速制御102−減速制御103を行ういわゆる台形駆動指令を行う。そして、減速時により高精度位置決めを行うために低速状態で微小送り制御(クリープ制御104)を行う構成である。図4に示す速度プロファイル100は、後述する搬送補正を行う前の速度プロファイルとして初期目標プロファイル105とする。本実施形態では、この初期目標プロファイル105に対して、搬送時の記録シートへの搬送方向と逆方向の力(バックテンションT)の作用状態により予め設定された搬送補正量を、クリープ制御104領域で減算処理することにより搬送補正を行なう。
【0028】
バックテンションTの作用の有無は、搬送開始時の加速制御区間および定速制御区間にロール給紙部10の回転量、すなわち回転検出手段60のパルス数により判断する。
【0029】
本実施形態では、バックテンションTを検出するタイミングとして加速制御時を検知区間A、定速制御時を検知区間B、C、Dに分けて制御を行う。各検知区間で検出されたパルス数が、AからDの各検知区間に記録シート種毎、記録モード毎に設定された閾値以上になると、搬送によりロール紙給紙部10が回転し始めたと判断する。つまり、閾値以上になった区間からバックテンションTが作用している状態で記録シートが搬送された判断する。一方、ロール紙給紙部10の回転量(回転検出手段60によるパルス数)が設定した閾値より少ない場合は、その検知区間ではバックテンションTが作用していない状態で記録シートが搬送されたと判断する。
【0030】
図5は、本実施形態の回転検知閾値を示す表である。本実施形態では、検知区間AからDに分けて検知区間毎に回転数(パルス数)の閾値を設定していることに加え、検知区間毎に記録モードを標準、きれい、最高にわけて、それぞれ閾値を設定している。すなわち、画像品質を向上するために、記録媒体の搬送量を少なくするため、連れ回りからバックテンションTの作用がかかるまでの距離が小さくなるからである。また、知区間毎にロール紙の種類によっても閾値が異なっている。
【0031】
図6は、本実施形態のシート搬送装置の搬送補正時の速度プロファイルを示す図である。本図では、1パス内でのバックテンションTの作用状態に応じた搬送補正量と速度プロファイルを示している。
【0032】
「状態1」は、加速制御時の検知区間Aおよび定速制御区間の検知区間B〜Dにおいてロール紙給紙部10の回転量(パルス数)が、図5に示す設定された閾値より小さい(回転量<閾値)と検知した状態である。つまり1パス搬送内のほとんどでバックテンションTが作用しない状態で搬送されたと判断する。これは、連れ回り状態のまま次パス搬送した状態である。この場合、搬送補正量は状態1補正量「A」とし、初期目標プロファイル105からこの状態1補正量「A」を減算した位置をクリープ目標位置110(速度プロファイル)とする。
【0033】
次に「状態2」〜「状態4」は、加速制御時の検知区間Aでは、ロール給紙部10の回転量(パルス数)が設定された閾値より小さい(回転量<閾値)と検知した状態である。また定速制御区間の検知区間B〜Dのいずれかの区間でロール給紙部10の回転量(パルス数)が設定された閾値以上と検知した状態である。つまり、検知された区間からバックテンションTが作用した状態で搬送されたと判断する。これは、加速制御時の検知区間Aで連れ回り状態であり、検知区間B〜Dのいずれかの区間で連れ回りから巻き戻った状態で搬送した状態である。この場合、搬送補正量はそれぞれバックテンションTを検知した状態(検知区間)に応じて、状態2補正量「B」から状態4補正量「D」とし、初期目標プロファイル105のクリープ制御領域から減算する。「状態2」の時は、クリープ位置111までの速度プロファイルとする。「状態3」の時は、クリープ位置112までの速度プロファイルとする。「状態4」の時は、クリープ位置113までの速度プロファイルとする。
【0034】
次に「状態5」は、加速制御時の検知区間Aにおいてロール給紙部10の回転量(パルス数)が設定された閾値以上(回転量>=閾値)と検知した状態である。つまり1パス搬送内のほとんどでバックテンションTが作用した状態で搬送されたと判断する。これは連れ回り状態から巻き戻った状態で次パスの搬送を行った状態である。この場合、クリープ目標位置をクリープ位置114とする。つまり、速度プロファイルは、検知区間の全域でバックテンションTが常に作用した状態を想定して設定された初期目標プロファイル105と同じになる。
【0035】
図7は、本実施形態での搬送補正量を示す表である。上述したそれぞれの補正量(状態1補正量「A」〜状態4補正量「D」)は、図7に示すロール紙種、記録モード、バックテンション作用状態に応じて予め設定された搬送補正量と関係付けられいずれかが選択される。
【0036】
図8は、これら1パスでの搬送補正制御のフローを示すブロック図である。また、図9は、本実施形態の搬送補正の手続を示すフローチャートである。
【0037】
ロール紙種、記録モード、ロール紙巻き径に応じた初期目標プロファイル105をメモリ120からCPU121およびI/F122を介して搬送モータ42に指令され搬送が開始される(ステップS1)。搬送エンコーダの検出センサ48から搬送ローラ41の回転量がフィードバックされ指令回転量との比較により回転制御される。
【0038】
次に、1パス搬送途中で検知区間A〜Dを順々にロールエンコーダ部のセンサ部63からの回転量を検知し(ステップS2〜ステップS5)、バックテンションの作用状態に応じた搬送補正量をメモリ120から選択する。そして、CPU121およびI/F122を介して搬送モータ42へ指令される(ステップS7〜ステップS10)。
【0039】
以上のように、搬送時のバックテンションTの作用状態に応じて搬送補正量を1パス内で設定することにより、バックテンションTの不安定な作用状態に影響されず高精度の搬送を行なうことができる。
【0040】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の搬送補正制御は、初期目標プロファイルから搬送補正量を減ずるものであったが、本実施形態では、初期目標プロファイルに搬送補正量を加えるものである。
【0041】
図10は、本実施形態のシート搬送装置の搬送補正時の速度プロファイルを示す図である。記録シートの搬送時にバックテンションTが1パス内の全域で作用されていない状態を考慮した速度プロファイルを初期目標プロファイル140として設定する。
【0042】
「状態1」は、加速制御時の検知区間Aおよび定速制御区間の検知区間B〜Dにおいてロール紙給紙部10の回転量(パルス数)が、設定された閾値より小さい(回転量<閾値)と検知した状態である。つまり1パス搬送内のほとんどでバックテンションTが効かない状態で搬送されたと判断する。この場合、搬送補正量は0とし、クリープ位置141までの速度プロファイ(初期目標プロファイル140)のままとする。
【0043】
次に「状態2」から「状態4」は、加速制御時の検知区間Aでは、ロール給紙部10の回転量(パルス数)が設定された閾値より小さい(回転量<閾値)と検知した状態である。また定速制御区間の検知区間B、C、Dのいずれかの区間でロール給紙部10の回転量(パルス数)が設定された閾値以上と検知した状態である。つまり検知された区間からバックテンションTが作用した状態で搬送されたと判断する。この場合、搬送補正量はそれぞれバックテンションTを検知した状態(検知区間)に応じた補正量(状態2補正量「A」から状態4補正量「C」)を初期目標プロファイル140のクリープ制御領域に加算する。「状態2」の時は、クリープ位置142までの速度プロファイルとする。「状態3」の時は、クリープ位置143までの速度プロファイルとする。「状態4」の時は、クリープ位置144までの速度プロファイルとする。
【0044】
次に「状態5」は、加速制御時の検知区間Aにおいてロール給紙部10の回転量(パルス数)が設定された閾値以上(回転量>=閾値)と検知した状態である。つまり1パス搬送内のほとんどでバックテンションTが作用した状態で搬送されたと判断する。この場合、搬送補正量を状態5補正量「D」として初期目標プロファイル140のクリープ制御領域に加算する。これらの搬送補正量は、ロール紙の種類、記録モード、ロール巻き径に応じて予め設定された補正値を用いる。
【0045】
以上のように、第1の実施形態と同様に搬送時のバックテンションTの作用状態に応じて搬送補正量を1パス内でつまりリアルタイムに設定することにより、バックテンションTの不安定な作用状態に影響されず高精度の搬送を実現できる。
【0046】
(第3の実施形態)
本実施形態では、第1または第2の実施形態と同様にバックテンションTの作用状態により搬送補正量をクリープ制御153領域に加算または減算するものである。
【0047】
図11は、本実施形態のシート搬送装置の要部構成を示す模式図である。ロール紙をセットするロール紙給紙部10の端部には、ロール紙と同期して回転するロールギア部21が設けられている。このロールギア部21の構成は、伝達ギア22を介して巻き取りDCモータ23の巻き取り駆動が伝達する。この巻き取りDCモータ23は、搬送時にロール回転方向とは反対方向に一定の付加を与える電流を印加し、この電流をフィードバック制御することにより一定の付加トルク制御を行う。つまり、この巻き取りDCモータ23により、搬送される記録シートへのバックテンションTを付加する構成である。また巻き戻し時には、この巻き取りDCモータ23を搬送方向とは逆に回転させることにより巻き取り動作を実施することができる。
【0048】
図12は、本実施形態の搬送補正時の速度プロファイルである。本実施形態の速度プロファイルは、搬送補正量をクリープ制御153領域から減ずるものである。バックテンションTの作用は、巻き取りDCモータ23の電流値つまりトルク値の検知により判断される。搬送時に巻き取りDCモータ23へ設定されたトルクに応じた電流を印加する。そして、1パス内での電流の変化、つまり搬送シートの緩みがなくロール給紙部へ搬送力が伝わった時(シートが張った状態)に生じる印加電流の変化量151が、予め設定された変化量以上の時にバックテンションTが作用されたと判断する。バックテンションTの検知区間、すなわちDCモータ23へ電流変化量の検知区間は、第1または第2の実施形態と同様に1つまたは複数の検知区間で検知を行う。図12は、検知区間CでDCモータ23の電流変化つまりバックテンションTの作用状態を検知し、この作用状態に応じた搬送補正量を初期速度プロファイル150から減算しクリープ目標位置153を設定している。
【0049】
以上のように、第1および第2の実施形態と同様に搬送時のバックテンションTの作用状態に応じて搬送補正量を1パス内でリアルタイムに設定することにより、バックテンションTの不安定な作用状態に影響されず高精度の搬送を実現することができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、キャリッジに搭載された記録ヘッドを使用するシリアルタイプの記録装置を例に挙げて説明した。しかしながら本発明は、副走査のみで記録するラインタイプの記録装置など、他の記録方式の記録装置の場合にも同様に適用可能なものであり、同様の作用効果を得るものであればよい。また、本発明は、インクジェット記録ヘッドを用いる場合、1個の記録ヘッドを用いる装置であっても、異なる色のインクを用いる複数の記録ヘッドを用いる装置であってもよい。あるいは同一色彩で異なる濃度のインクを用いる複数の記録ヘッドを用いる装置、さらには、これらを組み合わせた記録装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
11 巻き戻しモータ
14 回転負荷手段(トルクリミッタ)
15 ワンウエイギア
16 回転軸
17 検出ギア
19 回転ギア
21 ロールギア部
22 伝達ギア
23 巻き取りDCモータ
60 回転検出手段
61 検出伝達ギア
63 センサ部
70 回転検知閾値
80 搬送補正量
100 搬送モータ駆動指令(速度プロファイル)
Pr ロール状の記録シート
T ロールブレーキ(バックテンション)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙から引き出された記録媒体を所定の長さを単位として搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送方向と逆方向の力を記録媒体に作用する回転負荷手段と、前記記録媒体に作用する搬送方向と逆方向の力が作用していないことを判断する判断手段とを備える記録媒体搬送装置であって、
前記記録媒体の前記所定の長さの搬送の間に、前記判断手段により前記記録媒体に作用する搬送方向と逆方向の力が作用していないとき、前記記録媒体の前記所定の長さの搬送量を補正することを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記所定の長さの搬送の間に搬送される前記記録媒体を複数の検知区間に分けて前記記録媒体に作用する搬送方向と逆方向の力が作用していないことを判断することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項3】
前記検知区間毎に予め設定された閾値を用いて前記記録媒体に作用する搬送方向と逆方向の力が作用していないことを判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項4】
前記搬送量の補正は、前記検知区間毎に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の記録媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの記録媒体搬送装置を備え、前記記録媒体搬送装置によって搬送される前記記録媒体に画像を形成することを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−6644(P2013−6644A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139239(P2011−139239)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】