説明

記録媒体用ICタグ貼付シート及び記録媒体

CDに直接貼付して使用可能なICタグを提供する。CDに適合する形状に形成された薄板状のシート10と、CDの円周に沿って設けられるループ状のアンテナ101と、アンテナを通じて非接触で通信を行うICチップ102とを備える。アンテナ101を導線で形成し、CDの記録領域上に設ける。従来はアンテナをCDの記録領域上に設けるとその影響により通信できなかったが、アンテナを導線で形成することにより通信可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CDやDVDなどの円盤状の記録媒体にICタグを貼り付けるためのシート及びICタグを貼り付けた記録媒体に関し、特に、図書館の貸し出し管理システムに好適なものを提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
最近、ICタグに注目が集まっている。ICタグとは、超小型のIC(集積回路)チップと、無線通信用のアンテナを組み合わせた小型装置であって、リーダー/ライターと呼ぶ無線通信装置を使って、ICチップにデータを書き込んだり、そのデータを読み取ることができるというものである。
【0003】
ICチップそれぞれに固有なID情報(識別情報)を記録して商品一つひとつに取り付ければ、文字通り『単品管理』が可能になることから、主に流通分野において導入が広く検討されている。従来、流通分野において広くバーコードが用いられてきたが、ICタグは非接触・遠隔でのデータの読み取り及び書き込みが可能になるとともに、記憶可能なデータ量も増大することからバーコードを用いるよりも、より高度・広範囲な用途に適用できるといわれている。
【0004】
ICタグを用いた管理システムとして図書館の貸し出し管理システムが普及しつつある。従来、図書類管理の合理化を目的として、バーコード式(光学式コード読み取り)ならびにOCR(光学式文字認識)式の図書類の貸し出し管理システムが多くの図書館で導入されている。バーコードを用いるシステムによれば大幅な省力化・確実化が可能になるが、図書類を一冊一冊づつスキャナで読み取らなければならず、複数の図書類の情報を一度に読み取ることができず手間がかかる。
【0005】
上記のような問題点を解消し、近年、図書類管理のさらなる合理化を目的として、図書類に図書の情報を記録・登録したICタグを貼付し、リーダー/ライターでICチップに記録された登録番号等の情報を読み取ることが行われている。
【0006】
利用者が書籍を借りる際は、リーダー/ライター上に書籍を置くと当該書籍に貼付されたICタグの情報を読み取り貸し出しの処理を行うとともに、ICタグに貸し出しの情報を書き込む。複数の書籍を借りる場合については、複数の書籍の全てについて処理を行わなければならない。貸し出しの際に複数の図書類のうちいずれかひとつでもその情報を読み取れないときは、どの図書類の情報が読めなかったかを手作業でいちいち確認しなければならず、大変な手間がかかる。そのため、図書館の貸し出し管理システムにおいては全ての書籍のICタグと確実に通信できることが求められる。
【0007】
ところで、図書館において図書とともに音楽CDや映画DVDを貸し出すところも増えている。CDやDVD(以下、これらを総称して「記録媒体」と記す)も管理対象とするためICタグを貼付するが、従来は記録媒体のケースにICタグを貼付することがほとんどであり、記録媒体に直接ICタグを貼付することは行われていなかった。リーダー/ライターのアンテナとICタグのアンテナが電磁的と結合することにより、ICタグに電力を供給するとともに通信を行うのであるが、記録媒体に直接ICタグを貼付すると記録媒体の記録面(導体であるアルミの薄膜でできている)の影響により電磁的な結合が良好に行われなくなり、通信できなくなるためである。
【0008】
しかし、ケースにICタグを貼付した場合、ケースの中身が空であったり、ケースと中身が入れ違っているようなとき、正しい管理を行えない。このようなことを考慮して適正な管理を行うためには、記録媒体のケースと中身をいちいち照合しなければならず、大変な手間がかかる。これではせっかくICタグを導入した意味がなくなってしまう。そのため、ICタグを記録媒体に直接貼付することが求められている。
【0009】
[特許文献1]特開平11−250494号公報
【0010】
特許文献1は、ディスク状記録媒体に非接触式ICチップを一体化することを開示する。記録媒体であるCD−ROMの中央孔の近辺に電磁結合方式の非接触式ICチップを埋め込むか貼り付けるとともに、中央孔を周回するように、アンテナをCD−ROMに埋め込むか貼り付け、ICチップには、各媒体を識別する情報及びCD−ROMの記録内容の真性を確認する情報を記録しておく、というものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
記録媒体に貼付されるICタグは、電磁結合方式により電源電力及び信号を送受すること、読み出し専用又は書き込み及び読み出し可能なものであること、記録媒体の表面に突出せず回転駆動の際に支障しないこと、などの条件に加えて、図書館の貸し出し管理システムに適合するために次のような条件を満足する必要がある。
【0012】
(1)図書館の貸し出し管理システムにおいてはリーダー/ライターとの距離が数十cm程度離れることがあるので、このような場合でも通信可能でなければならない。また、持ち出しを検出するための一般的なゲートの間隔は90cmなので、その半分の45cm程度の読み取り距離が好ましい(記録媒体の記録面の影響によりICタグの通信距離は著しく短くなり、少なくとも図書館の貸し出し管理システムにおいては記録媒体に直接ICタグを貼付して使用することは不可能であると言われてきた)。
【0013】
(2)同時に数冊の書籍及び数枚のCDを貸し出しする場合があるので、書籍やCDを何冊・何枚も重ねてリーダー/ライターに置いたときでも、全ての書籍及びCDのICタグと通信できなければならない。
【0014】
(3)図書館で扱う全ての記録媒体に適用できるものでなければならない。図書館で記録媒体にICタグを貼付する(記録媒体の製造工程で貼付するのではなく、事後的に貼付する)ため、ICタグは任意の記録媒体で使用可能なものでなければならないが、実際は記録媒体の種類によってICタグの通信性能が大きく変化することを発明者は発見した。規格で記録媒体の大きさ・材質等は規定されているが、現実には、記録媒体表面の印刷の状態(印刷の厚みやインクの種類など)により影響を受けるようである(特に鉄分を含むインクの影響が大きいようである)。
【0015】
特許文献1に開示されている、CD−ROMの中央孔にの部分にはアルミ薄膜の記録面は存在しないのでその影響を受けない)を周回するようにアンテナを設けたICタグは、中央孔の周りに設けられたアンテナの直径が小さくその通信能力が低いため、少し離れると通信できなくなる(せいぜい5cm程度である)。したがって、上記(1)及び(2)の条件を満たすことはできない。なお、特許文献1の段落0018にアンテナを記録媒体の最外周に配置することが述べられているが、当該段落には、外周部には指やCD−ROM駆動装置の部材が接触することが多いので、ICチップを損傷する機会も多くなり、実用上は好ましくない、とも述べられている。これは、特許文献1は、アルミ薄膜の記録面以外の部分つまり情報記録領域以外の部分にアンテナを設けることに拘泥しているので、1mm程度の幅しかない記録媒体の円盤の縁にアンテナを設けなければならないためである。特許文献1は、アルミ薄膜の記録面による影響を避けるために、当該記録面の存在しない部分にアンテナを設けることを基本コンセプトとしていることが伺われる。
【0016】
また、特許文献1に開示されている発明では、上記(3)の条件も満足できない。特許文献1の全体の記載を参照すると、当該発明は記録媒体の製造工程においてICタグを設けるためのものであり、製品と出荷した後に事後的にICタグを貼付するものではないようである。特許文献1はさまざまな種類の記録媒体に適用するものではなく、事後的にICタグを貼付する場合に重要な記録媒体の印刷面による影響を無視したものであり、図書館の貸し出し管理システムに用いることはできない。
【0017】
この発明は上記(1)〜(3)の条件を満たし、特に図書館の貸し出し管理システムに好適な記録媒体用ICタグ貼付シート及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、情報を記録するための記録領域を内部に含む円盤状の記録媒体にICタグを貼付するためのシートであって、前記記録媒体に適合する形状に形成された薄板状の基部と、前記基部に設けられるループ状のアンテナと、前記アンテナを通じて非接触で通信を行うICチップとを備え、
前記アンテナを断面略円形、略正多角形又は略正方形の導線で形成するとともに、前記記録媒体に貼付された状態において、前記アンテナを前記記録媒体の記録領域上に位置することを特徴とするものである。
【0019】
前記アンテナの導線の巻数及び間隔は、複数種類の記録媒体に貼付された状態において前記アンテナの通信距離のばらつきが少なくなるように設定されていることが好ましい。
【0020】
前記アンテナの導線の巻数及び間隔の好適な例は次の通りである。
・使用周波数が13.56MHz、記録媒体として直径12cmのCD・DVDに使用する場合、前記導線の巻数が4、前記導線の間隔が0.35mm又は0.45mmである。ただし、前記アンテナの直径が110mm、前記導線の断面直径φが0.11mmである。
【0021】
前記記録媒体に貼付される前の状態における前記アンテナの共振周波数を、前記ICチップの使用周波数よりも高く設定することが好ましい。
【0022】
前記アンテナは、前記記録媒体の円周に位置する円弧状の複数の円周部分と、前記記録媒体の円周を離れその内側に位置する複数の非円周部分とを備え、前記記録媒体の回転中心に対して前記円周部分同士が対称に配置されるとともに、前記非円周部分同士が対称に配置されているようにしてもよい。
【0023】
前記アンテナの形状は、ICタグが貼付された記録媒体が複数重ねられたときに、各記録媒体のアンテナが相互に干渉しないために、さまざまに異なる形状となることが好ましい。アンテナが非円周部分を備えるようにすれば、当該非円周部分の形状を任意に設定でき、さまざまな形状を実現できる。
【0024】
さらに、前記記録媒体の回転中心に対して前記ICチップの位置と対称の位置に設けられた釣合錘を備えるようにしてもよい。
【0025】
この発明に係る記憶媒体は、情報を記録するための記録領域を内部に含む円盤状の記録媒体と、前記記録媒体の表面に設けられるループ状のアンテナと、前記アンテナを通じて非接触で通信を行うICチップとを備え、
前記アンテナを断面略円形又は略正方形の導線で形成するとともに、前記アンテナを前記記録媒体の記録領域上に位置することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アンテナを断面略円形又は略正方形の導線で形成するとともにアンテナを記録媒体の円周に沿って配置したので、通信距離を実用可能な程度まで伸ばすことに成功した。しかも、アンテナを構成する導線の巻数及び間隔を適切に選択することにより、さまざまな記録媒体に貼付して使用することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態に係る記録媒体用ICタグ貼付シート及びこれを貼付した記録媒体について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る記録媒体用ICタグ貼付シートを示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は平面図のA−A線の矢視断面図である。なお断面図は模式図であって各厚みは正しい縮尺を示していない。また歪や撓みが生じていないことを前提に平面的・直線的な状態を示している。図1において、1は本発明の実施の形態に係る記録媒体用ICタグ貼付シートである。記録媒体用ICタグ貼付シート1は、CDなどの記録媒体と同じ形状でそれよりやや小さい円盤状のシート(基部)10と、シート10の外縁のやや内側(例:約2.5mm内側)に円周に沿って設けられたアンテナ101と、アンテナ101を通じて非接触で外部と通信を行うICチップ102と、アンテナ101をICチップ102に接続するための接続導線103と、記録媒体の回転中心に対してICチップ102の対称の位置に設けられて回転のバランスをとるためのカウンタウエイト(釣合錘)104とを備える。記録媒体用ICタグ貼付シート1の下面には、シート1を記録媒体に貼り付けるための両面テープ11(例:厚み=約0.05mm)と、両面テープ11の接着面を保護するセパレータ12が設けられている。セパレータ12を剥がして記録媒体用ICタグ貼付シート1を記録媒体に貼り付ける。
【0028】
シート10はアンテナ101やICチップ102を取り付けるベースとなるものであって、その形状は記録媒体に適合されている。具体的には円形をしている。シート10の直径が記録媒体と同等あるいはそれより大きいとシート10が記録媒体の回転駆動に支障を与えるおそれがあるので、シート10の直径は記録媒体よりも少し小さい(例:記録媒体の直径=約120mm、シート10の直径=約115mm)。シート10の内側には、記録媒体の回転駆動のための内孔を塞がないようにその内孔よりも大きな直径の内孔が設けられている。図1において、10aはシート10の外縁を示し、10bはシート10の内孔の縁を示す。
【0029】
シート10にはICチップ102、カウンタウエイト104を収納するための開口部が設けられている。このためシート10の表面は平坦になっている。ICチップ102が比較的薄いものであれば、ICチップ102はシート10上に突出しないが、多少突出しても実用上差し支えない(例:樹脂製(ポリカーボネート製)のシート10の厚み=約0.25mm。本体高さ=0.15mm、取り付け部の厚さ=0.08mmのICチップの場合はシート10上に突出しないが、本体高さ=0.3mm、取り付け部の厚さ=0.08mmのICチップの場合は多少突出する)。
【0030】
アンテナ101(例:アンテナの直径=約110mm)は、断面略円形(略正方形あるいは略正多角形であってもよい)の導線を複数回巻いて形成したものである。印刷配線のように断面が薄板や箔形状をしていると通信不可能であるが、断面が円形の導線を用いれば、後述のように通信可能であることが判明した。なお、断面形状は円形以外にも正多角形や正方形のものも使用可能と推測される。アンテナ101の共振周波数はICチップ102の使用周波数よりも高く設定されている。このように設定すると、記録媒体用ICタグ貼付シート1を記録媒体に貼り付けたとき共振周波数が低くなり、使用周波数に一致するようになる。図1(a)に示すように、アンテナ101をシート10の外縁に沿って円形に配置することでアンテナ101の直径を最大化し、その利得を高めることができる。もっとも、アンテナ101の少なくとも一部が図1(a)のような形状をしていれば(例:図10、図11参照)必要な利得が得られる。
【0031】
図2(a)はアンテナ101の部分の詳細断面図を示す。アンテナ101はほぼ同心円状に配置された4本の導線101−1〜101−4により構成される。導線の直径は約0.11である。4本の導線101−1〜101−4は一定の間隔(ピッチ)Pで配置されている。アンテナ101を細い導線で構成することが、前述の(1)〜(3)の条件を満たすために重要である。図2(c)の符号101’−1、101’−2のように導体の幅に対して厚みが小さい場合(典型的には導体を印刷したりエッチングで形成した場合)、記録媒体に貼付した状態でICタグと通信することはできなかった。この理由は、エッチング等により形成する場合は導体の厚みを厚くすることが難しく、断面積を大きくすることができない。無理に厚く形成しても導体の一面(例えば側面)がやせ細ってしまい、導線のように断面積を大きくできない。したがってインダクタンスに比べ抵抗値が大きくなり、コイルの特性が劣化するためと推測される。
これに対し、図2(a)のように導線でアンテナを構成すれば、記録媒体の記録面がある領域にアンテナ101とICチップ102を設けることができるのである。特許文献1は、もっぱら記録面が存在しない領域にアンテナ101とICチップ102を設けることを開示するが、本発明の実施の形態によればそのような制約は不要になるのである。
【0032】
図2(b)はICチップ102の部分の詳細断面図を示す。ICチップ102の種類にもよるが、ICチップ102は本体102aとそのベースである取付部102bを備える。取付部102bでICチップ102をシート10に取り付ける。本体102aは、前述のシート10に設けられた開口部に収納される。図2(d)はICチップ102の平面図の例を示す。この例では本体102aの両端に接続端子を兼ねた取付部102bを備える。これらの端子にアンテナ101が接続される。なお、カウンタウエイト104の部分も図2(b)と同様である。
【0033】
図3は記録媒体用ICタグ貼付シート1を記録媒体に取り付けた状態を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は平面図のA−A線の矢視断面図である。図3(a)から明らかなように、記録媒体用ICタグ貼付シート1は記録媒体から突出しない。したがって、シート1の厚みを記録媒体の規格で許容される範囲内にすれば記録媒体の本来の機能を損なうことはない。アンテナ101とICチップは、図3(b)のように記録媒体の記録面(記録領域)21上に設けられている。
【0034】
次に、本発明の実施の形態の具体例について説明する。
図4〜図8はアンテナ101の巻線の数とその間隔(ピッチ)を変えて共振周波数と通信距離を計測した実測データである。共振周波数の計測にはディップメータを用いている。ディップメータの中には発振回路が入っていて発振エネルギーをメータに表示するようになっている。測定する共振回路のコイルにディップメータのコイルを近づけ、測定器のダイヤルを回して発振周波数を少しずつ変えていき、共振周波数になるとディップメータの発振エネルギーが測定対象の共振回路に吸い取られ、メータの針が下がる。このことを使用して共振回路の周波数を測る。
【0035】
図4は、巻数=4、ピッチ=0.35mmの場合の特性を示す。図4(a)は共振周波数と通信距離を示すグラフである。同グラフの右側の縦軸目盛りが周波数(単位:MHz)を示し、左側の縦軸目盛りが通信距離(単位:mm)を示す(図5以降のグラフも同様である)。横軸は測定対象であるICタグを貼付した記録媒体の番号である。図4では10枚の記録媒体について測定している。図4の10枚の記録媒体は全て同じ種類である。これに対し、図5以降のデータは異なる種類の記録媒体について測定したものである。図4(b)は測定データを示す。図4(a)のグラフは図4(b)のデータをグラフ表示したものである(以下同様)。
【0036】
図4によれば次のことがわかる。
・全て同じ種類の記録媒体であるため、記録媒体ごとの共振周波数と通信距離のばらつきが少ない。
・共振周波数は14.5MHz程度、通信距離は260mm程度である。
【0037】
図5は、巻数=4、ピッチ=0.35mm、異なる種類の記録媒体についての特性を示す。図5によれば次のことがわかる。
・異なる種類の記録媒体であるため、記録媒体ごとの共振周波数と通信距離のばらつきが大きくなった。
・共振周波数は14.0MHz程度、通信距離は231〜270mmである。
【0038】
図6は、巻数=5、ピッチ=0.35mm、異なる種類の記録媒体についての特性を示す。図6によれば次のことがわかる。
・異なる種類の記録媒体であるため、記録媒体ごとの共振周波数と通信距離のばらつきが大きくなった。特に通信距離のばらつきが非常に大きい。
・共振周波数は15.00〜15.70MHz、通信距離は222〜310mmである。
【0039】
図7は、巻数=5、ピッチ=1.35mm、異なる種類の記録媒体についての特性を示す。図7によれば次のことがわかる。
・異なる種類の記録媒体であるため、記録媒体ごとの共振周波数と通信距離のばらつきが大きくなった。特に通信距離のばらつきが非常に大きい。
・共振周波数は14.10〜14.40MHz、通信距離は213〜309mmである。
【0040】
図8は、巻数=4、ピッチ=0.45mm、異なる種類の記録媒体についての特性を示す。図8によれば次のことがわかる。
・異なる種類の記録媒体であるため、記録媒体ごとの共振周波数と通信距離のばらつきが大きくなった。
・共振周波数は14.0〜14.50MHz、通信距離は241〜280mmである。
【0041】
図5と図8を比較すると、図8のほうが通信距離のばらつき小さく、かつ、通信距離が伸びていることがわかる。図6と図7から、巻数を4より増やしたり、ピッチを1.35mmと広げたりすると、通信距離のばらつきが非常に大きくなることがわかる。前述した条件(3)を満たすためには、巻数を増やしたりピッチを広げすぎないことが望ましい。
【0042】
図書館の貸し出し管理システムに用いる観点から、アンテナ101の導線の巻数及び間隔は前述の条件(1)と(3)を満たすように、つまり所定の通信距離を確保しつつ複数種類の記録媒体に貼付された状態において前記アンテナの通信距離のばらつきが少なくなるように設定されることが好ましい。以上のデータを総合すると、図8の例が前述の(1)と(3)の条件に最も適すると言える。
【0043】
なお、アンテナ101を記録媒体に貼付するとその共振周波数が低くなることが判明した。これはアンテナと記録媒体の記録面との容量結合が原因であると推測される。したがって、記録媒体に貼付される前の状態におけるアンテナ101の共振周波数を、ICチップ102の使用周波数(例:13.56MHz)よりも高く設定することが好ましい。このようにすればICタグの使用状態において最適な性能を発揮することができる。図9に記録媒体(CD)に貼付前のアンテナの特性を示す。図9は図8と同じ条件のアンテナである。貼り付け前のアンテナの共振周波数はディップメータで19.2MHzであるが、記録媒体に貼り付けると図8に示すように14.00〜14.50MHzに25%程度下がる。
【0044】
本発明の実施の形態は、アンテナを印刷やエッチングではなく、導線を用いて構成した点に特徴がある。これは、印刷やエッチングでは記録媒体に貼付した状態でほとんど通信不可能であるが導線ならば通信可能であるという、発明者の知見に基づくものである。導線によるアンテナは、印刷やエッチングに比べコストアップになるが、図書館の貸し出し管理システムの場合は記録媒体に事後的にICタグを貼り付けるので大量に使用することはなく、コストの点はあまり問題にならない。
【0045】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、アンテナを断面略円形の導線で形成するとともにアンテナを記録媒体の円周に沿って配置したので、コイル状のアンテナの外径を大きくでき出力を増すことができるため通信距離を実用可能な程度まで伸ばすことに成功した。アンテナを構成する導線の巻数及び間隔を適切に選択することにより、さまざまな記録媒体に貼付して使用することができるようになった。しかも、出力が増した結果、記録媒体に貼付された状態においてアンテナを記録媒体の記録領域上に配置できるので信頼性を高くできる。記録領域上に配置できない従来のやり方ではアンテナは外周部に設けざるを得ず、指や駆動装置の部材が接触し、アンテナやICチップを損傷することになり、およそ実用的ではない。
【0046】
ところで、前述の条件(2)書籍や記録媒体を何冊・何枚も重ねてリーダー/ライターに置いたときでも、全ての書籍及び記録媒体のICタグと通信できなければならないが、アンテナを上記のように構成することにより満足することができる。より確実にICタグと通信できるようにするためには、ICタグ間の干渉が生じないようにすることが好ましい。そのひとつのやり方として上記のようにアンテナを大型化するとともに、さまざまな形状のアンテナを用意しておき、記録媒体を重ねたときに隣接するもの同士のアンテナが重ならないようにすることが考えられる。図1のアンテナ一種類だけだと、記録媒体を重ねた場合にアンテナの全体について相互に非常に近接することになり、リーダー/ライターに近い方は通信できるが、遠いほうは近いほうのアンテナが干渉して通信困難になるおそれがある。
【0047】
アンテナの形状をさまざまなものとする場合でも、アンテナの面積をなるべく大きくするためにアンテナの少なくとも一部を記録媒体の円周に沿って配置することが好ましい。アンテナの形状として図1に示す円形や、非円形を採用することができる。ここで言う非円形とはその少なくとも一部が記録媒体の円周に沿って配置され円弧をなしているが、一部が円周を離れ内側に配置されているものであり、図10や図11(a)に示すものもここで言う非円形の一種である。回転のバランスを保つために、記録媒体の回転中心に対して円周に沿って配置された円弧同士は対称であるとともに、円周の内側に配置されている部分同士も対称であることが望ましい。
【0048】
図10のアンテナ101は、円周の約1/4の2つの円弧(円周部分)101aと、円周の約1/4の部分を内側に折り曲げた形状の2つの部分(非円周部分)101bとから構成される。記録媒体の回転中心に対して円周部分101a同士は対称に配置されている。非円周部分101bも同様である。図10のアンテナ101はいわゆる分銅のような形状をしている。
【0049】
図11(a)のアンテナ101は、円周の約1/6の2つの円弧(円周部分)101aと、その端を結ぶ直線部分(非円周部分)101bとから構成される。円周部分101aと非円周部分101bが対称に配置されているのは図10と同様である。図10のアンテナは長方形に近い形状をしている。なお、図11の場合、シート10は円盤状でなくてもよく、例えば図11の点線で示すようにアンテナ101と相似形状であってもよい。シート10は記録媒体に適合する形状をもつが、当該形状には図11のアンテナと相似形状のものも含まれる。
【0050】
なお、以上の説明において、アンテナの少なくとも一部が記録媒体の円周に沿って配置され円弧をなしている例を挙げて説明したが、アンテナに円周に沿った部分を備えない場合であっても同様の作用・効果を奏する。アンテナの少なくとも一部を記録媒体の円周に沿って配置すると記録媒体の面積を最も有効に使用できるが、アンテナの面積を大きくできるのであれば、円周に沿って配置する点は必須ではない。図11(b)にこのようなアンテナの例を示す。同図はアンテナを正方形にした場合を示す。
【0051】
アンテナの形状を図1、図10や図11に示すようなさまざまな形状とすることで、ICタグが貼付された記録媒体が複数重ねられたときでも各記録媒体のアンテナが相互に干渉することを防止できる。干渉防止の観点からはアンテナの形状を記録媒体ごとに異なる形状とすることが好ましい。図1の円形のアンテナの場合は記録媒体を回転してもアンテナの干渉のおそれがあるが、図10や図11の形状であれば記録媒体を回転することにより、たとえ同じ形状であってもアンテナの干渉を防止することができる。つまり、非円形のアンテナ1種類だけを使用した場合であっても、使用時には記録媒体はさまざまな方向を向いているのでアンテナが完全に重なることはほとんどなくなり、干渉の可能性は低くなる。
【0052】
なお、上記説明は図書館の貸し出し管理システムの用途を例にとり説明してきたが、本発明は当該用途に限定されない。例えば、前述の(1)〜(3)の一部又は全部の条件を満足する必要のある任意の用途に適用できる。
【0053】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
[図1]本発明の実施の形態に係る記録媒体用ICタグ貼付シートを示す図である。図1(a)は平面図、図1(b)は平面図のA−A線の矢視断面図である。
[図2]図2(a)は本発明の実施の形態に係るアンテナ部分の詳細断面図、図2(b)は同ICチップ部分の詳細断面図、図2(c)はアンテナ部分を印刷又はエッチングで形成した場合の詳細断面図、図2(d)はICチップの平面図の一例である。
[図3]本発明の実施の形態に係る記録媒体用ICタグ貼付シートを記録媒体に貼付した状態を示す図である。図1(a)は平面図、図1(b)は平面図のA−A線の矢視断面図である。
[図4]本発明の実施の形態に係るアンテナの共振周波数と通信距離の実測データである(同種CD、巻線の数=4、間隔=0.35mm)。
[図5]本発明の実施の形態に係るアンテナの共振周波数と通信距離の実測データである(異種CD、巻線の数=4、間隔=0.35mm)。
[図6]本発明の実施の形態に係るアンテナの共振周波数と通信距離の実測データである(異種CD、巻線の数=5、間隔=0.35mm)。
[図7]本発明の実施の形態に係るアンテナの共振周波数と通信距離の実測データである(異種CD、巻線の数=5、間隔=1.35mm)。
[図8]本発明の実施の形態に係るアンテナの共振周波数と通信距離の実測データである(異種CD、巻線の数=4、間隔=0.45mm)。
[図9]本発明の実施の形態に係るアンテナの記録媒体に貼付前の特性を示す。
[図10]本発明の実施の形態に係る非円形のアンテナ形状を示す平面図である。
[図11]本発明の実施の形態に係る他の非円形のアンテナ形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 記録媒体用ICタグ貼付シート
2 記録媒体
2a 記録媒体の外縁
2b 記録媒体の内孔の縁
10 シート(基部)
10a シートの外縁
10b シートの内孔の縁
11 両面テープ
12 セパレータ
21 記録媒体の記録面(アルミ薄膜)
101 アンテナ
101a アンテナの円周部分
101b アンテナの非円周部分
102 ICチップ
102a ICチップ本体
102b ICチップ取付部
103 接続導線
104 カウンタウエイト
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記録するための記録領域を内部に含む円盤状の記録媒体にICタグを貼付するためのシートであって、前記記録媒体に適合する形状に形成された薄板状の基部と、前記基部に設けられるループ状のアンテナと、前記アンテナを通じて非接触で通信を行うICチップとを備え、前記アンテナを断面略円形、略正多角形又は略正方形の導線で形成するとともに、前記記録媒体に貼付された状態において、前記アンテナを前記記録媒体の記録領域上に位置することを特徴とする記録媒体用ICタグ貼付シート。
【請求項2】
前記アンテナの導線の巻数及び間隔は、複数種類の記録媒体に貼付された状態において前記アンテナの通信距離のばらつきが少なくなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の記録媒体用ICタグ貼付シート。
【請求項3】
前記記録媒体に貼付される前の状態における前記アンテナの共振周波数を、前記ICチップの使用周波数よりも高く設定することを特徴とする請求項1記載の記録媒体用ICタグ貼付シート。
【請求項4】
前記アンテナは、前記記録媒体の円周に位置する円弧状の複数の円周部分と、前記記録媒体の円周を離れその内側に位置する複数の非円周部分とを備え、前記記録媒体の回転中心に対して前記円周部分同士が対称に配置されるとともに、前記非円周部分同士が対称に配置されていることを特徴とする請求項1記載の記録媒体用ICタグ貼付シート。
【請求項5】
前記記録媒体の回転中心に対して前記ICチップの位置と対称の位置に設けられた釣合錘を備えることを特徴とする請求項1記載の記録媒体用ICタグ貼付シート。
【請求項6】
情報を記録するための記録領域を内部に含む円盤状の記録媒体と、前記記録媒体の表面に設けられるループ状のアンテナと、前記アンテナを通じて非接触で通信を行うICチップとを備え、
前記アンテナを断面略円形又は略正方形の導線で形成するとともに、前記アンテナを前記記録媒体の記録領域上に位置することを特徴とする記録媒体。

【国際公開番号】WO2005/091434
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518814(P2005−518814)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015419
【国際出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000152228)株式会社内田洋行 (105)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】