説明

記録波形生成装置およびその生成方法

【課題】フレキシブル基板を経由して記録波形を伝送する際の劣化を抑制する記録波形生成装置を提供する。
【解決手段】基板10に記録データを変調し変調信号を生成する変調回路と、記録波形の形状を示すパラメータ値を出力する制御回路と、変調信号を記録波形信号に変換する記録補償回路と、矩形波信号を生成する矩形波生成回路を設け、ピックアップ12に伝送信号を光ビームの駆動電流に変換する駆動回路と、2系統以上の伝送信号のタイミングに応じた検出信号を出力する検出回路と、駆動電流に基づき所定のパワーで発光するレーザダイオードを設けている。基板10とピックアップ12はフレキシブル基板11で結合されており、フレキシブル基板上を経由して伝送信号が該基板からピックアップに伝送され、基板上に設けられた該制御回路は、ピックアップ上に設けられた該検出回路より出力される検出信号に応じてパラメータ値を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録波形を生成する装置とその生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ビームを用いてデータを記録再生する光ディスク装置が種々開発されている。特に追記録可能な光ディスクとしてCD−R/RW、DVD−RAM、DVD−R/RW、BlurayDiscなどが開発されている。
【0003】
これらの光ディスクは一般的に色素あるいは相変化材料等で構成された記録膜で構成されており、螺旋上に形成した記録溝(グルーブトラック)を持ち、グルーブトラックに光ビームを照射し、照射するパワーの強弱を調整することにより、記録マークを形成してデータの記録を行う。色素の場合は、光ビームを強く照射した部分が熱により色素が分解する化学変化により、光学的特性が変化して記録マークが形成される。相変化材料の場合は、光ビームを強く照射した部分が急速に冷却すると記録層の結晶が解けた状態で安定し非結晶相(アモルファス)に変化する化学変化により、光学的特性が変化して記録マークが形成される。
【0004】
DVD−R/RWの場合、記録マークの長さは、最短0.40μmから最長1.866μmであり、3Tから11Tまでの9通りと14Tの合計10通りある。ここで1Tとは記録マークの単位時間長さのことをさし、DVD−R/RWの標準速度では、38.2ns(1/(26.16MHz))になる。
【0005】
記録マークを品質良く形成するために、図14に示すように記録パワー方向(縦方向)と時間軸方向(横方向)の形状に所定の変化を加えた記録波形で光ビームを記録膜に照射する。この処理は記録補償と呼ばれる。記録補償により得られた記録波形は、最適に記録マークを形成できるように、各記録マークごとにパルスの本数が異なる等の形状が異なるものになっている。さらに、最短0.40μmという微小な記録マークを高速かつ正確に形成しなければならないため、記録波形の各パルスのエッジの位置を極めて高精度に調整する必要がある。このような各パルスのエッジ位置のタイミングを示す情報を、以下では記録補償パラメータと呼ぶ。DVD−Rでは、良好な記録特性を得るために、単位時間長さTの1/40程度の分解能で記録波形のエッジを調整する必要があり、16倍速の場合、約60ps(38.2ns÷16÷40)程度の調整分解能を有した高精度な記録波形生成装置が必要となる。
【0006】
一方、光ディスクドライブは、図15に示すようにレーザー光源や受光部をもつピックアップ12と信号処理を行うメイン基板10が分離し、ピックアップ12とメイン基板10間をフレキシブル基板11で連結することにより、信号のやり取りを行う構成が一般的である。その際、記録補償回路は、主にメイン基板10側に設けられる場合と、ピックアップ12側に設けられる場合の2つに大別できる。
【0007】
記録補償回路をメイン基板10側に設ける構成では、メイン基板側で変調データを記録補償パラメータに基づいた記録波形に変換する。さらに記録波形を図3に示すように、おのおのが記録パワーに対応した複数の信号線からなるディジタル信号(以下、伝送信号)に変換して、フレキシブル基板11を経由して、ピックアップ12に伝送する。ピックアップ側で、複数の伝送信号を用いて複数の電流源の出力をON/OFFすることにより光ビームの駆動電流を生成し、その駆動電流を用いてレーザーダイオードを駆動することにより、光ディスク13の記録膜に光ビームを照射する。メイン基板10で直接駆動電流を生成せず、記録波形を一度複数の信号線からなるディジタル信号に変換するのは、駆動電流として伝送するよりレベルの変動やノイズに対して影響を受けづらいためである。
【0008】
記録波形生成装置をピックアップ12側に設ける構成では、特許文献1に記載されているように、変調データと基準クロック信号、および記録補償パラメータをフレキシブルケーブルを経由して、ピックアップに伝送する。ピックアップ側には、記録補償パラメータを記憶する記憶手段をもち、基準クロックを逓倍して得られるクロックを動作クロックとして、記録補償パラメータに基づいた記録波形を生成し、その記録波形を駆動電流に変換し、その駆動電流を用いてレーザーダイオードを駆動することにより、光ディスク13の記録膜に光ビームを照射する。
【特許文献1】特許第3528612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
記録補償回路をメイン基板側に設ける構成では、メイン基板からフレキシブル基板を経由してピックアップに伝送する間の伝送路損失の影響や、メイン基板の送信回路およびピックアップの受信回路のばらつき等により、伝送信号が劣化することにより、光ビームの駆動電流を得るための電流源のON/OFFのタイミングに誤差が生じて本来の記録波形で光ビームを照射させることができないことがあった。
【0010】
具体的には、図16に示すように、伝送信号のパルス幅が変動したり、図17に示すように複数の伝送信号線間でスキューが発生し、電流源のON/OFFタイミングがずれることにより、光ビームの発光波形の立ち上がり時間Trや立ち下がり時間Tfが長くなる波形なまり等が発生することがあった。
【0011】
上記パルス幅の変動やスキューは、光ディスクドライブの設計時や製造工程において低減させることが考えられる。例えば、設計時において、インピーダンス整合を厳密に行い、配線経路長等をあわせたり、光ディスクドライブの製造工程において、光ビームの発光波形の観測により、パルス幅変動やスキューの影響が最小になるように調整を行ったりすることがあげられる。
【0012】
しかしながら、上記パルス幅の変動やスキューは、フレキシブル基板の屈曲や温度変化、電圧変化や経年劣化など光ディスクドライブ使用状態により変化する可能性があるため、光ディスクドライブの設計時あるいは製造工程において調整するだけでは、不十分という課題がある。さらに製造工程で調整を行うことは、製造のタクト時間が増加や調整用の製造設備の導入といった製造費用の増加につながるため、調整は行わないことが望ましい。
【0013】
一方、記録補償回路をピックアップ側に設ける構成では、フレキシブルケーブル上を高速、高精度な信号を伝送する必要がなく、フレキシブルケーブル上の信号の歪みによる影響を低減する効果がある。しかしながら、ピックアップ側に比較的大規模かつ高周波な記録補償用のディジタル回路や逓倍回路を持つ必要があり、ピックアップ上のアナログ回路にノイズが混入する等の影響が懸念される。
【0014】
また、記録波形形状を変更する場合は、記録補償パラメータを逐次、フレキシブルケーブルを経由してピックアップに伝送する必要があるため、記録補償パラメータ変更に伴う時間のロスが発生してしまうという課題があった。
【0015】
本発明の目的は、ピックアップ側に大規模な回路を設けることなく、伝送信号の形状が、伝送路損失や送信回路、受信回路のばらつき、電圧変化、温度変化、フレキシブル基板の屈曲等により劣化し、本来の記録波形と異なった記録波形で記録してしまうことを抑制する記録波形生成装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の記録波形生成装置および方法では、メイン基板側に記録補償回路を設け記録波形を生成し、ピックアップに伝送する構成において、所定の周期の2つ以上の系統の矩形波信号をピックアップ側に設けた検出回路で検出することにより記録波形伝送の際の伝送信号の劣化を検出し、劣化を相殺するように伝送する記録波形の形状を変更することを最も主要な特徴とする。
【0017】
具体的には、本発明の記録波形生成装置は、光ディスクの記録波形を生成する記録波形生成装置であって、基板に記録データを変調し変調信号を生成する変調回路と、記録波形の形状を示すパラメータ値を出力する制御回路と、所定の規則に基づき該変調信号を該パラメータ値に応じて、複数の系統の記録波形信号に変換する記録補償回路と、所定の周期の2つ以上の系統の矩形波信号を生成する矩形波生成回路と、該記録波形信号と該矩形波信号を選択し伝送信号として出力する選択回路が設けられており、ピックアップに該伝送信号を光ビームの駆動電流に変換する駆動回路と、おのおのの伝送信号のタイミングに応じた検出信号を出力する検出回路と、駆動電流に基づき所定のパワーで発光するレーザダイオードが設けられており、該基板と該ピックアップはフレキシブル基板で結合されており、フレキシブル基板上を経由して伝送信号が該基板からピックアップに伝送され、基板上に設けられた該制御回路は、ピックアップ上に設けられた該検出回路より出力される検出信号に応じてパラメータ値を変更することを特徴とする。
【0018】
また本発明の記録波形生成方法は、光ディスクの記録波形を生成する方法であって、
(a)記録波形を調整するためのステップと(b)データを記録するためのステップを持ち、
(a)記録波形を調整するステップは、(a-1)所定周期の2つ以上の系統の矩形波信号を生成するステップと、(a-2)生成された2つ以上の系統の矩形波信号のタイミングをピックアップ上で比較し検出結果を通知するステップと、(a-3)該検出した結果をオフセット値に変換するステップを備え、
(b)データを記録するためのステップは、(b-1)記録データを変調するステップと、(b-2)該オフセット値に応じて、記録波形の形状を示すパラメータ値を変更するステップと、(b-3)該パラメータ値に応じて、複数の系統の記録波形信号に変換するステップと、(b-4)該記録波形信号を光ビームの駆動電流に変換するステップと、(b-5)駆動電流に基づき所定のパワーでレーザーダイオードを発光させるステップを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の記録波形生成装置および方法は、メイン基板からピックアップへ記録波形を伝送する際の、伝送路損失や送信回路、受信回路のばらつきによる記録波形の変化をピックアップ側で検出でき、さらに検出結果に応じて伝送する記録波形の形状を変更することにより、伝送時の記録波形の変化を抑制でき、所望の記録波形で記録できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明による実施の形態の記録波形生成装置の構成と動作を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明による実施の形態の記録波形生成装置のブロック図である。図2は、本発明による実施の形態の記録波形生成装置で伝送する記録波形の一例である。
【0022】
図1に示すように、本発明による実施の形態の記録波形生成装置は、メイン基板10とフレキシブル基板11とピックアップ12で構成される。メイン基板10は、変調回路14、記録補償回路15、ドライバ回路16、コントローラ17、シリアルI/F18、矩形波生成回路19、切り替え器20を有しており、ピックアップ12は、レシーバ回路21、検出回路22、駆動回路23、レーザーダイオード24、シリアルI/F25を有している。
【0023】
データを記録する際は、メイン基板10で記録波形を生成し、伝送信号に変換した後フレキシブル基板11を経由してピックアップ12に伝送し、伝送信号をピックアップ内で駆動電流に変換し、レーザーダイオード24を駆動して、光ビームを光ディスクに照射する。ピックアップ12内部のレーザーダイオード24から送出された光ビームは、最適な記録が行えるように、光ディスク13の記録面上でのスポットサイズが調整される。
【0024】
変調回路14は、記録するデータに対して所定の変調を行い、記録マーク、記録スペースを示す変調信号(NRZI)を生成する。一例として、DVDで採用されている8/16変調の方式を説明する。8−16変調では、所定の変調テーブルを用いて、8ビット(1バイト)を16ビットに変換したRLL(2,10)方式の変調符号を生成する。RLLとは「Run Length Limited」の略であり、「0」の連続数(RUN Length)を制限していることを意味する。すなわち、RLL(2,10)では「1」に続く「0」の連続数が2から10に制限されていることになる。さらに再生時のフレーム同期を取る為に変調符号91バイト(1456ビット)おきに2バイト(32ビット)の同期信号を付与する。この同期信号は後部にRLL(2,10)では存在しない「1000000000000010001」のパターンを含み、ラン長が13のため他のデータと区別がつくようになっている。
【0025】
このようにして生成した変調符号をNRZI変換することにより「0」または「1」の連続数が3から11あるいは14(すなわち3Tから11Tあるいは14T)に制限された変調信号が得られる。NRZIとは「Non Return to Zero Invert」の略で変調符号をディスクに記録するとき,変調符号の「1」が現れるごとに「0」「1」を反転する方法のことである。
【0026】
記録補償回路15は、前記変調符号を記録に適した波形に変換する回路である。前記のように光ディスクへの記録は光ビームを強く照射する熱により、記録膜に化学変化を生じさせ、他の部分と光学的特性が異なる記録マークを形成するが、単に変調符号「1」に対応して一定のパワーで光ビームを照射しただけでは、熱の干渉や熱の蓄積により記録マークが所望の形状にならない。したがって変調符号を複数のパルスに分割し、熱の蓄積をさけるといった制御が必要となる。一例として、図2にDVD−RWのマルチパルス変調の波形を示す。DVD−RWのマルチパルス変調では、記録マークを形成する為に、トップパルスと呼ばれる先頭のパルスと、後続する複数のマルチパルスと冷却用のクーリングパルスで構成される。トップパルスの幅はTtopで、マルチパルスの幅はTmpで、クーリングパルスの幅はTclで定義される。また、記録パワー値はゼロレベルを基準に、Po、Pe、Pbで定義される。これらのパルス幅および記録パワー値を精密に制御することにより、記録マーク間の熱干渉や記録マークの後端部での熱蓄積を抑制し、記録マーク形成で生ずる熱分布を最適にでき、所望の記録マークを形成することができる。それぞれのパルス(トップパルス、マルチパルス、クーリングパルス等)は、所定の分解能をもつ遅延線や多相PLL(Phase Locked Loop)で構成されたパルス生成器で生成し、各パルスを合成して出力する。倍速によって異なるがDVD−RWの場合、分解能はT/40程度必要になる。
【0027】
また、図2のような記録波形の場合、照射する光ビームのパワーレベルがPo、Pe、Pbの3値あるため、ゼロレベルとあわせて4値の信号になるが、1系統で多値信号を伝送すると振幅変動やレベル変動の影響を受けやすく、信号伝送が難しいため、Po、Pe、Pbの記録パワーに対応した複数の系統に分割したディジタル信号(以下、記録波形伝送信号)として伝送するのが一般的である。ここでは図3に示すような3系統の2値信号の記録波形伝送信号に変換して出力する。
【0028】
ドライバ回路16は、3系統の伝送信号を伝送に適した信号レベルに変換して出力する。本発明を実施するための形態として伝送方式は特に問わないが、TTLあるいは、1系統2本の差動信号で構成されるLVDS(Low Voltage Differential Signaling)の信号レベルに変換して伝送するのが一般的である。
【0029】
フレキシブル基板11は、メイン基板10とピックアップ12を連結し、メイン基板10とピックアップ12から出力される信号を伝送する。
【0030】
レシーバ回路21は、TTLあるいはLVDSの信号レベルの伝送信号を受信し、3系統の元の伝送信号に復元する。
【0031】
駆動回路23は、伝送信号を光ビームの駆動電流に変換する。一例として、図4に示すような電流源およびスイッチによる構成を説明する。スイッチ45〜48は伝送信号A、B、C、Dと記録ゲートでON/OFFするようになっており、4つの電流源A、B、C、Dを制御する。電流源A、B、Cは記録用の駆動電流を生成する電流源であり、電流源Dは再生用の駆動電流を生成する電流源である。記録時には記録ゲートがHになることにより、伝送信号A、B、Cに応じて電流源A,B,Cの出力がONになる。また非記録時には記録ゲートがLになり、電流源Dの出力がONになる。それぞれの出力電流の合計が駆動電流として出力される。
【0032】
レーザーダイオード24は、駆動回路23から出力される駆動電流に応じた発光パワーの光ビームを、光ディスク12に照射する。
【0033】
なお、前記変調回路14、記録補償回路15、ドライバ回路16、レシーバ回路21、駆動回路23、レーザーダイオード24はそれぞれ一般的な構成を示したもので、本発明を実施する形態として限定するものではない。
【0034】
コントローラ17は、内部のメモリ素子(図示せず)に記録波形のタイミング情報(記録補償パラメータ)を格納しており、記録補償回路15に出力する。記録補償パラメータは、図2のTtop、Tmp、Tclといった記録波形の立ち上がり、立ち下がりを示した情報で構成されている。記録メディアや記録マーク長や前後の記録マークとの間隔に応じて最適な記録が行えるTtop、Tmp、Tclの値は異なるため、様々なバリエーションの記録補償パラメータを格納しておく必要がある。
【0035】
矩形波生成回路19は、後述する記録波形調整ステップで用いる矩形波信号を矩形波伝送信号として出力する。出力される矩形波伝送信号の詳細は後述の記録波形調整の手順で説明する。
【0036】
切り替え器20は、記録補償回路15から出力される記録波形伝送信号と、矩形波生成回路19から出力される矩形波伝送信号のいずれか1つを選択して、伝送信号として出力する。記録波形調整を行う場合は矩形波伝送信号が選択され、通常のデータ記録を行う場合は記録波形伝送信号が選択される。
【0037】
検出回路22は、2系統の伝送信号のタイミング差を検出し、タイミング差情報としてシリアルI/F25に出力する。ここでは最も簡単な構成で実現できる図5に示すようなDFFで構成した場合について説明する。DFFのD入力の前段のORに伝送信号Aを接続し、クロック入力に伝送信号Bを接続する。図6に示すように、DFFを一度リセットした後、所定の位相差を持つ伝送信号A,Bを伝送すると、伝送信号AのL区間に伝送信号Bの立ち上がりエッジがある場合、Lレベル信号が出力され、伝送信号AのH区間に伝送信号Bの立ち上がりエッジがある場合、Hレベル信号が出力される。このとき、検出ばらつきを低減するために、複数のパルスを出力したり、同様の処理を繰り返したりして、統計的にタイミング差情報を求めるとなお良い。図6においては、3つのパルスを出力している。
【0038】
ピックアップ上のシリアルI/F25は、検出回路の検出結果を、フレキシブル11基板を経由してメイン基板10のシリアルI/F18に伝送する。コントローラ17はシリアルI/F18に通知された検出結果を受け取り、検出結果からパルス幅の変動量およびスキュー量を検出し、記録補償パラメータを変更する。
【0039】
次に本発明による実施の形態の記録波形生成装置の動作について説明する。本記録波形生成装置の動作は、大きく(a)記録波形調整ステップと(b)データ記録ステップに分けられ、コントローラ17によって切替制御が行われる。
【0040】
(a)記録波形調整ステップは、(b)データ記録ステップに先立って実行され、記録波形調整のためのテスト波形を用いて、記録波形の歪みを検出して、本来の記録波形と実際に伝送される記録波形との差(以下、オフセット値)を導出する。
【0041】
(b)データ記録ステップは、(a)で求めたオフセット値を用いて、記録波形の歪みが小さくなるように制御してデータを記録する。
【0042】
以下に、(a)記録波形調整ステップについて詳細に説明する。記録波形調整ステップでは、記録波形調整のためのテスト波形を用いて、記録波形の歪みを検出して、本来の記録波形と実際に伝送される記録波形との差(以下、オフセット値)を導出する。
【0043】
図7は記録波形調整手順を示すタイミング図である。本実施の形態の記録波形生成装置で生成する記録波形は図3に示すように2本の伝送信号A,Bにパルス上の波形が伝送される。したがって、パルス幅の変動やスキューは伝送信号A、Bに発生するため、図7(a)に示すように伝送信号A,Bを用いて調整を行う。もし、生成する記録波形が伝送信号A、B、Cの全てにパルス上の波形が伝送される場合は、図7(a)に示すように伝送信号A,Bを用いて調整を行ったのち、図7(b)に示すように伝送信号A,Cを用いて調整を行えばよい。
【0044】
以下は、2本の伝送信号A,Bにパルス上の波形が伝送される場合について説明する。
【0045】
矩形波生成回路19は、記録波形調整で用いる矩形波伝送信号A、Bを生成する。その際、矩形波伝送信号A,Bの少なくともいずれか一方は実際に記録する場合に用いられるトップパルス幅Ttopやマルチパルス幅Tmp、クーリングパルス幅Tclと同一か小さい幅にすることが望ましい。同一か小さい幅にするのは、パルス幅が細いほど顕著に、パルス幅の変動やスキューの影響があらわれるためである。
【0046】
切り替え器20は記録補償回路15から出力される記録波形伝送信号と矩形波生成回路19から出力される矩形波伝送信号のうち、矩形波伝送信号を選択し、伝送信号AからCとして出力する。これらの伝送信号AからCはドライバ回路16、フレキシブル基板12、レシーバ回路21を経由して、検出回路22に入力される。なお、記録波形調整ステップにおいては、本来のデータ記録を行うわけではないため、記録ゲートをLにして、駆動回路23内の伝送信号AからCに対応する電流源の出力を遮断する等の処置を行い、駆動電流が反応しないようにする。
【0047】
検出回路22のDFFは、矩形波伝送信号の伝送に先立って、コントローラ17からシリアルI/F18、25を経由して、検出回路22のDFFの出力がLレベルになるようにリセット指示を行う。その状態で伝送信号Aと伝送信号Bが、図6(a)のように出力されると、検出信号はLレベルとなり、伝送信号Bの立ち上がりタイミングが伝送信号のAのL区間にあることが検出でき、図6(b)のように出力されると、Hレベルとなり、伝送信号Bの立ち上がりタイミングが伝送信号のAのH区間にあることが検出できる。その結果をシリアルI/F25、18を経由してコントローラ17に通知する。コントローラ17は通知された検出結果を受信すると、コントローラ17内部のメモリ素子(図示せず)に結果を保持し、次の計測を行うためにシリアルI/F18、25を経由して、検出回路22にリセット指示を行う。次に、伝送信号Aに対し、伝送信号Bを後ろに遅延させて出力する。遅延させる際の分解能は、記録補償回路で調整可能な分解能と同一あるいはそれ以下であることが望ましい。そして上記と同様の処理を行いコントローラ17は検出回路の結果を受信すると、コントローラ17内部のメモリ(図示せず)に結果を保持する。
【0048】
上記のような動作を伝送信号AとBの位相関係を変化させながら繰り返すことにより、図8のような検出結果が得られる。例えば、伝送信号Aとして幅Wの信号を伝送した場合、図8のような検出結果が得られた場合、受信側でのL→Hの変化点は、伝送信号Aに対する伝送信号Bの位相差がP1のポイントであり、H→Lの変化点は伝送信号Aに対する伝送信号Bの位相差がP2のポイントになるので、この検出結果より、ピックアップ側では、P2−P1の幅の伝送信号として受信したことがわかる。すなわち、W−(P2−P1)がパルス幅の変動分ΔWになる。また、メイン基板10側から伝送信号Aと伝送信号Bが-する伝送信号Bの位相差が0になるポイントがP1であるため、P1が伝送信号Aに対する伝送信号BのスキューΔABであることがわかる。
【0049】
同様の処理を、Ttop幅の矩形波を伝送して行うと、Ttop幅の信号を伝送したときのパルス変動分ΔTtopが得られる。Tmp幅の矩形波を伝送して行うと、Tmp幅の信号を伝送したときのパルス変動分ΔTmpが得られる。Tcl幅の矩形波を伝送して行うと、Tcl幅のパルスを伝送したときのパルス変動分ΔTclが得られる。また、伝送信号Aと伝送信号Bを使って、図8のP1を求めると、伝送信号Aに対する伝送信号BのスキューΔABが得られる。これらの値は、本来の記録波形と実際に伝送される記録波形との差であり、オフセット値として、コントローラ17内部のメモリ素子に保持しておく。
【0050】
次に(b)データ記録ステップについて詳細に説明する。
【0051】
データ記録ステップでは(a)記録波形調整ステップで求めたオフセット値を用いて、記録波形の歪みが小さくなるように記録補償パラメータを補正してデータを記録する。
【0052】
図2の記録波形を出力する場合について説明する。前記記録波形調整手順でもとめたオフセット値を使用して、図2の記録波形に、パルス幅の変動分を相殺するようにパラメータ値にオフセット値に加算すると図9のようになる。つまり、Ttopに関しては、オフセット値ΔTtopを加算してTtop+ΔTtopをパラメータ値とし、Tmpに関しては、オフセット値ΔTmpを加算してTmp+ΔTmpをパラメータ値とし、Tclに関しては、オフセット値ΔTclを加算してTcl+ΔTclをパラメータ値とする。このことにより、伝送時のパルス変動分を上乗せして記録波形を生成することになり、ピックアップ12側ではパルス幅変動分が打ち消され、精度のよい記録波形を得ることができる。
【0053】
さらに、スキューに関しては、図10に示すような回路で調整できる。図10の回路では、伝送信号A,B,Cに対し、可変遅延線等を通し、伝送信号A、B、C間に発生するスキューを調整する。実施の形態の記録波形生成装置で生成する記録波形は図3に示すように2本の伝送信号A,Bにパルス上の波形が伝送されるため、伝送信号Aと伝送信号Bの間のスキューを調整すればよい。ΔABが正の場合、伝送信号Aに対して伝送信号Bが遅れており、負の場合、伝送信号Aに対する伝送信号Bが進んでいるといえる。したがって、ΔABが正の場合は、可変遅延線AをΔAB分遅延させるように設定する。ΔABが負の場合は、可変遅延線Bを−ΔAB分遅延させるように設定する。このことにより、伝送時のスキュー分を上乗せして記録波形を生成することになり、ピックアップ12側ではスキュー分が打ち消され、精度の良い記録波形を得ることができる。なお、この回路は記録補償回路15に内蔵してもよいし、ドライバ回路16に内蔵しても良い。
【0054】
また本説明においては、2本の伝送信号A、Bにパルス上の波形が伝送されるため、伝送信号AとBの間のスキューΔABのみを補正したが、生成する記録波形によっては伝送信号A、B、Cの全てにパルス上の波形が伝送される場合もある。その場合は、伝送信号A、Bを用いてΔABを求めた後、伝送信号A、Cを用いてΔACを求め、以下のように処理すればよい。
【0055】
ΔABが正の場合、伝送信号Aに対して伝送信号Bが遅れており、負の場合、伝送信号Aに対する伝送信号Bが進んでいるといえる。ΔACが正の場合、伝送信号Aに対して伝送信号Cが遅れており、負の場合、伝送信号Aに対する伝送信号Cが進んでいるといえる。よって、ΔABが正、ΔACが正で、ΔABがΔACより小さい場合は、可変遅延線AをΔAC分遅延させるように設定し、可変遅延線BをΔAC−ΔAB分遅延させるように設定すれば、受信側での伝送信号A、B、C間に発生するスキューを打ち消すことができる。同様に、ΔABが正、ΔACが正で、ΔABがΔACより大きい場合は、可変遅延線AをΔAB分遅延させるように設定し、可変遅延線CをΔAB−ΔAC分遅延させるように設定する。ΔABが負、ΔACが正の場合は、可変遅延線AをΔAC分遅延させるように設定し、可変遅延線BをΔAC−ΔAB分遅延させるように設定する。ΔABが正、ΔACが負の場合は、可変遅延線AをΔAB分遅延させるように設定し、可変遅延線CをΔAB−ΔAC分遅延させるように設定する。ΔABが負、ΔACが負の場合は、可変遅延線Bを−ΔAB分遅延させるように設定し、可変遅延線Cを−ΔAC分遅延させるように設定する。上記をまとめると図11のようになる。
【0056】
記録補償パラメータのオフセット値を用いた補正を行わない場合と行わなった場合を比較すると、行わない場合は、図12に示すように、伝送路損失の影響やドライバ回路15およびレシーバ回路21のばらつき等により受信側でパルス幅変動やスキューが発生し、受信側で所望の記録波形が得られないケースがあるが、行った場合は、図13に示すように、送信側であらかじめパルス幅変動分やスキュー分を上乗せして波形生成するため、受信側でのパルス幅変動やスキューを抑制する効果が得られる。また、この処理を実現するためにピックアップに設ける検出回路は、DFFと簡単なロジック回路でよく、比較的容易に実現できる。
【0057】
なお、本実施の形態では、Ttop、Tmp、Tclのパルス幅ごとにオフセット値を求めるようにしたが、実際には、前後のパルスの干渉により、パルス幅が変動するケースもある。そのような場合は、パルス幅と前後までの間隔の組み合わせ毎にオフセット値を求めるようにすれば、より正確にパルス変動の抑制が可能となる。たとえば、図2の記録波形の場合、Tmpのパラメータで設定されるパルスは、H区間がTmpであり、L区間は、1T−Tmpになる。したがって調整の際、H区間がTmpで、L区間が1T−Tmpの矩形波伝送信号を用いれば、より実際に使用する伝送信号に近いパルス形状で調整を行うことになるため、精度の高い調整結果が得られることになる。
【0058】
なお、調整精度をさらに向上させるためには、同一の計測を複数回行い、統計的にオフセットを求めるようにすればよい。
【0059】
また、検出回路22にタイマーを設け、伝送信号間のエッジ間の時間やパルス幅を計測するような構成にしてもよい。この場合、検出回路22の規模は少なくともタイマー分だけ増加するが、伝送信号Bの位相をずらしながら、何度も計測する必要がなくなるため、調整の時間短縮が測れる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にかかる記録波形生成装置および方法は、複数の伝送信号線を用いて、高速に信号の伝送が必要な用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態における記録波形生成装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態における記録波形生成装置で伝送される記録波形を示す波形図
【図3】本発明の実施の形態における記録波形生成装置で伝送される伝送信号を示す波形図
【図4】本発明の実施の形態における記録波形生成装置の駆動回路の構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態における記録波形生成装置の検出回路の構成を示す図
【図6】本発明の実施の形態における記録波形生成装置の検出回路の動作を示すタイミング図
【図7】本発明の実施の形態における記録波形生成装置の記録波形調整手順を示すタイミング図
【図8】本発明の実施の形態における記録波形生成装置の記録波形のオフセット調整の説明のための波形図
【図9】本発明の実施の形態における記録波形生成装置の記録波形のオフセット調整の説明のための波形図
【図10】本発明の実施の形態における記録波形生成装置の記録波形のスキュー調整回路の構成を示すブロック図
【図11】本発明の実施の形態における記録波形生成装置のスキュー調整の動作説明のための図
【図12】本発明の実施の形態における記録波形生成装置のオフセット調整を行わなかった場合の影響を示す波形図
【図13】本発明の実施の形態における記録波形生成装置のオフセット調整を行わった場合の効果を示す波形図
【図14】従来の記録波形生成装置で伝送される記録波形の一例を示す波形図
【図15】従来の一般的な光ディスク装置の構成を示すブロック図
【図16】伝送信号線のパルス幅変動の影響を示す説明図
【図17】伝送信号線のスキューの影響を示す説明図
【符号の説明】
【0062】
10 メイン基板
11 フレキシブル基板
12 ピックアップ
13 光ディスク
14 変調回路
15 記録補償回路
16 ドライバ回路
17 コントローラ
18 シリアルI/F
19 矩形波生成回路
20 切り替え器
21 レシーバ回路
22 検出回路
23 駆動回路
24 レーザーダイオード
25 シリアルI/F
41、42、43、44 電流源A、B、C、D
45、46、47、48 スイッチ
91、92、93 可変遅延線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録波形を生成する記録波形生成装置であって、基板に記録データを変調し変調信号を生成する変調回路と、記録波形の形状を示すパラメータ値を出力する制御回路と、所定の規則に基づき該変調信号を該パラメータ値に応じて、複数の系統の記録波形信号に変換する記録補償回路と、所定の周期の2つ以上の系統の矩形波信号を生成する矩形波生成回路と、該記録波形信号と該矩形波信号を選択し伝送信号として出力する選択回路が設けられており、
ピックアップに該伝送信号を光ビームの駆動電流に変換する駆動回路と、おのおのの伝送信号のタイミングに応じた検出信号を出力する検出回路と、駆動電流に基づき所定のパワーで発光するレーザダイオードが設けられており、
該基板と該ピックアップはフレキシブル基板で結合されており、フレキシブル基板上を経由して伝送信号が該基板からピックアップに伝送され、
基板上に設けられた該制御回路は、ピックアップ上に設けられた該検出回路より出力される検出信号に応じてパラメータ値を変更することを特徴とする記録波形生成装置。
【請求項2】
前記矩形波生成回路は、所定のパルス幅の2つの系統の矩形波信号の一方の位相を可変して出力し、
前記検出回路は、2つの系統の矩形波信号の一方の立ち上がりタイミングが、他方のH区間およびL区間のいずれにあるかを検出して検出信号を出力し、
前記制御手段は、検出信号に応じてパラメータ値を変更することを特徴とする請求項1記載の記録波形生成装置。
【請求項3】
前記矩形波生成回路は、同一のパルス幅の2つの系統の矩形波信号を同時に出力し、
前記検出回路は、2つの系統の矩形波信号の位相差を検出して検出信号を出力し、
前記制御手段は、検出信号に応じてパラメータ値を変更することを特徴とする請求項1記載の記録波形生成装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記選択回路が前記矩形波信号を選択している場合、前記伝送信号に応じて駆動電流値を変化させないことを特徴とする請求項1記載の記録波形生成装置。
【請求項5】
光ディスクの記録波形を生成する方法であって、
(a)記録波形を調整するためのステップと
(b)データを記録するためのステップを持ち、
(a)記録波形を調整するステップは、
(a-1)所定周期の2つ以上の系統の矩形波信号を生成するステップと、
(a-2)生成された2つ以上の系統の矩形波信号のタイミングをピックアップ上で比較し検出結果を通知するステップと、
(a-3)該検出した結果をオフセット値に変換するステップを備え、
(b)データを記録するためのステップは、
(b-1)記録データを変調するステップと、
(b-2)該オフセット値に応じて、記録波形の形状を示すパラメータ値を変更するステップと、
(b-3)該パラメータ値に応じて、複数の系統の記録波形信号に変換するステップと、
(b-4)該記録波形信号を光ビームの駆動電流に変換するステップと、
(b-5)駆動電流に基づき所定のパワーでレーザーダイオードを発光させるステップ
を備えたことを特徴とする記録波形生成方法。
【請求項6】
前記矩形波生成は、所定のパルス幅の2つの系統の矩形波信号をいずれか一方を位相を可変して出力し、
前記検出信号は、2つの系統の矩形波信号の一方の立ち上がりタイミングが、他方のH区間およびL区間のいずれにあるかを示し、
前記検出信号に応じてパラメータ値を変更することを特徴とする請求項5記載の記録波形生成方法。
【請求項7】
前記矩形波生成は、同一のパルス幅の2つの系統の矩形波信号を同時に出力し、
前記検出信号は、2つの系統の矩形波信号の位相差を示し、
前記検出信号に応じてパラメータ値を変更することを特徴とする請求項5記載の記録波形生成方法。
【請求項8】
前記矩形波信号を選択している場合、前記伝送信号に応じて駆動電流を出力しないことを特徴とする請求項5記載の記録波形生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−141406(P2007−141406A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336544(P2005−336544)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】