説明

記録用インク用色材分散体及びこれを用いた記録用インク

【課題】経時安定性が良好でかつ高画像濃度が実現できる記録用インク用色材分散体及び、これを用いた記録用インク、インクカートリッジ、画像記録装置、画像形成方法、画像形成物の提供。
【解決手段】水と色材と分散剤を含有し、該分散剤が、下記式(1)で表されるポリカルボン酸と炭素数2〜3のオキシアルキレン基を有する系ポリカルボン酸要素を含む分散剤である記録用インク用色材分散体。


〔式(1)中、RはH又はCH、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン、mは1〜30の整数、nは4〜50の整数〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分散媒に色材を微細に安定した状態で分散させた、画像形成などのための記録用インク用色材分散体、及び該分散体を用いた記録用インク、インクカートリッジ、画像記録装置、画像形成方法、画像形成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録用インク用色材分散体は、その色材特性を利用した様々な用途、例えばペン等の筆記用インクや判子用インク、液状インクを利用した画像形成装置(湿式印刷機やインクジェットプリンター)等に利用される。
これら色材分散体は、色材が目的の粒径まで均一に分散されており、経時での液特性が変化しないことが重要である。
更に、色材分散体はそのままで使用されることは少なく、用途に応じて樹脂や他の添加物を添加して使用されるので、それ自体の特性が良いだけではなく、他の添加物に影響を与えないという特性も有する必要がある。
特に記録用インク液として使用された場合、色材分散体自体のインク液中の経時劣化は勿論、記録用インクとして樹脂等の他の添加剤を混合して使用されるため、添加剤との相互作用によるインク液増粘、インク液経時劣化及び印字画像への影響があり、色材を分散させるための分散剤の選択にはかなりの注意が必要となる。
【0003】
これら記録用インク用色材分散体を使用したインクは、媒体上に塗布あるいは転液され乾燥されることで皮膜あるいは記録画像が形成される。
近年、環境面や安全性の面から水系のインク要望が高くなっている。
しかしながら、水系インクは媒体の影響を受け易く、皮膜あるいは画像に各種の問題を引き起こしている。特に媒体にフィルムでなく紙を使用する場合は顕著である。
水性インクの場合、乾燥に時間を要することが問題であり、また紙との相溶性も良好なため、紙への浸透性が高く、特に未コーティングの比較的非平滑な紙の場合、色材が紙中に浸透することにより形成された色材の色濃度が低くなってしまうという溶剤インク及び無溶剤インクではみられなかった問題が生じている。
色濃度を上げるためには、インクに含まれる色材の量を増加させる必要があるが、色材量を増やすとコストが高くなるばかりでなく、溶媒中の色材濃度が高くなることにより、色材の凝集や析出が発生しインク液の液安定性が悪くなる等の問題があった。
また画像及び皮膜の表面が荒れることで見た目が悪い等の問題があった。
【0004】
近年、画像形成方法として、他の記録方式に比べてプロセスが簡単でフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点があることから、インクジェット記録方式が普及している。
インクジェット記録方式は熱等で発生した圧力で少量のインクを飛翔させ、紙など被画像形成体に付着させ、素早く乾燥させて(被画像形成体に浸透させ)画像を形成する必要があり、乾燥性や画像濃度の問題は更に深刻なものとなる。
特に近年、インクジェット方式では産業やビジネス用途への使用が展開され、より高速で高濃度の画像を出力できることが必要となっている。
【0005】
特許文献1には、水系インクの分散安定性や高印字濃度などを目的とし、(メタ)アクリル酸やヒドロキシ基を有するモノマーなどを共重合させたポリマーを含有させることが提案されており、該ヒドロキシ基を有するモノマーとして、ポリエチレングリコールアリルエーテルも例示されている。
しかしながら、画像濃度は不十分であり、カーボンブラックのような比表面積の大きい色材を分散した場合は、経時での分散安定性に劣るという問題があった。
また、特許文献2には、インクの成膜耐性を上げるために、アルキル(メタ)アクリレートと窒素含有モノマーと親水基を含むモノマーを共重合させたインク用バインダーが提案されており、親水基モノマーとしてヒドロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレートジアルキレングリコールアリルエーテルや、アクリル酸スルホン酸基を含有したモノマーが例示されているが、やはり画像濃度で不十分であった。
また、特許文献3には、アクリル酸ナトリウムとポリエチレングリコールモノアクリレートとを共重合させたポリマーを含有するインクが提案されているが、やはり画像濃度で不十分であった。
また、特許文献4には、ポリアルキレングリコールアクリレート(80〜100%)と他のモノマー(0〜20%)を共重合させた無用剤樹脂が提案されている。しかしながらこれらは水溶解性が低いため、水を含んだ色材分散には適していなく、画像濃度向上への効果も低い。
【0006】
【特許文献1】特開2005−23284号公報
【特許文献2】特開2000−44861号公報
【特許文献3】特開平9−183926号公報
【特許文献4】特開平8−283560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、経時安定性が良好でかつ高画像濃度が実現できる記録用インク用色材分散体及び、これを用いた記録用インク、インクカートリッジ、画像記録装置、画像形成方法、画像形成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、水と色材と分散剤を含む色材分散体において、特定の構成の分散剤を使用することにより、色材分散体及びそれを用いた記録用インクの経時保存安定性を向上させることができ、かつ該インクで画像を形成した場合、画像濃度を向上できることを見出し本発明に至った。
即ち、上記課題は、下記1)〜9)の発明(以下、本発明1〜9という)によって解決される。
1) 水と色材と分散剤を含有し、該分散剤が、下記式(1)〜(3)で表される要素を含むポリカルボン酸系分散剤であることを特徴とする記録用インク用色材分散体。
【化8】

【化9】

【化10】

〔式(1)〜(3)中、R,R,RはH又はCH、RはH又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜3のアルキル基、AO及びBOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン、mは1〜30の整数、nは5〜50の整数〕
2) 分散剤が、更に下記式(4)で表される要素を含むポリカルボン酸系分散剤であることを特徴とする1)記載の記録用インク用色材分散体。
【化11】

(式中、RはH又はCH、Rは炭素数1〜3のアルキル基)
3) 分散剤が、更に下記式(5)で表される要素を含むポリカルボン酸系分散剤であることを特徴とする1)又は2)記載の記録用インク用色材分散体。
【化12】

〔式中、RはH又はCH、Xは下記の式(5)−1、又は式(5)−2〕
【化13】

(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン)
【化14】

(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン)
4) 色材がカーボンブラックであることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の記録用インク用色材分散体。
5) 1)〜4)の何れかに記載の記録用インク用色材分散体を用いた記録用インク。
6) 5)記載の記録用インクを容器中に収容したインクカートリッジ。
7) 6)記載のインクカートリッジを搭載した画像記録装置。
8) 記録用インクを画像支持体上にインクジェット方式で吐出させて記録を行う7)記載の画像記録装置。
9) 7)又は8)記載の画像記録装置により画像が形成された画像形成物。
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明に使用されるポリカルボン酸系分散剤は、式(1)〜(3)で表される要素を含む必要がある。これらの要素が揃うことにより色材分散体及びインク液の経時保存安定と印字画像の高画像濃度への効果が顕著に現れる。更に式(4)及び/又は式(5)の要素を含むと、画像濃度は一層良好となる(実施例3、11、12、15、20、21参照)。一方、式(1)と(3)の要素を含むが式(2)の要素を含まない分散剤、あるいは式(1)と(2)の要素を含むが式(3)の要素を含まない分散剤では、高画像濃度に対する効果が低い(比較例2〜5参照)。
式(1)では塩であることが重要であり、塩状態でないと水との相溶性が悪いため水への色材分散性が悪く、またインクにした場合の経時での液安定性が低い。更に高画像濃度への効果も低い(比較例6参照)。
塩状態にするためには、アクリル酸塩モノマーを用いるか、又は式(1)〜(3)を形成できるモノマーを含む塩でないモノマーを共重合した後、塩基で中和して最終的に塩にする。また両方を組み合わせても良い。
式(2)のRはH(水素原子)又は炭素数1〜3のアルキル基とするが、水素原子の方が画像濃度向上面で優れる。
式(3)のRは炭素数1〜3のアルキル基である必要があり、水素原子では画像濃度への効果が少なくなる(比較例1参照)。
また、本発明に係る分散剤はアルカリ条件下で色材の分散に使用されると、分散性が向上するだけでなく画像濃度がより良好となる。
【0010】
式(1)の要素を形成するモノマーとしては下記式(6)のものが挙げられる。
【化15】

(式中、RはH又はCH、MはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン、但し、MがHの場合は他のモノマーと共重合した後、塩基で中和して、カルボン酸を塩にする必要がある。)
【0011】
式(6)の例としては、(メタ)アクリル酸及びその塩が挙げられ、該塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム、モノ,ジ或いはトリメチルアミン、モノ,ジ或いはトリエチルアミン等のアンモニアの水素原子がアルキル基で置換された脂肪族アミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、コリン、アミノエタンプロパンジオール、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、アミノエチルプロパンジオール等のアンモニアの水素原子がアルキル基で置換されたアルコールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等の環状アミン等の有機アミン塩が挙げられる。
中でもリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、及び、ジエタノールアミンやトリエタノールアミン塩が分散安定性としては優れている。
【0012】
式(2)の要素を形成するモノマーとしては下記式(7)のものが挙げられる。
【化16】

〔式中、RはH又はCH、RはH又は炭素数1〜3のアルキル基、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、mは1〜30の整数を示す。〕
は水素原子の方が、画像濃度向上面で優れる。
オキシアルキレン基は、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを用いて重合又は共重合することにより形成できる。
好ましいAOはポリエチレンオキサイド基であり、画像濃度向上に最も効果がある。
オキシアルキレンの付加数mは1〜30であり、好ましくは4〜25である。1以上で画像濃度UPの効果が大きくなり、30以下で分散性が向上する傾向にある。特に4〜25では効果が顕著である。
式(7)の例としては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルやアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルが挙げられるが、後者の中ではメトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルが好ましい。
【0013】
式(3)の要素を形成するモノマーとしては下記式(8)のものが挙げられる。
【化17】

〔式中、RはH又はCH、Rは炭素数1〜3のアルキル基、BOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、nは5〜50の整数を示す。〕
オキシアルキレン基は、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを用いて重合又は共重合することにより形成できる。
好ましいBOはポリエチレンオキサイド基であり、画像濃度向上に最も効果がある。
オキシアルキレンの付加数nは5〜50であり、好ましくは8〜35であり、4以上で画像濃度UPの効果が大きくなる。しかし、50を超えると水溶性に乏しくなり、水系分散剤として使用し難くなる。特に8〜35の範囲が画像濃度効果が良い。
式(8)の例としては、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましい具体例としては、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イソポロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられ、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが最も良い。
【0014】
式(4)の要素を形成するモノマーとしては下記式(9)のものが挙げられる。
【化18】

(式中、RはH又はCH、Rは炭素数1〜3のアルキル基)
式(9)の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0015】
式(5)の要素を形成するモノマーとしては下記式(10)のものが挙げられる。
【化19】

〔式中、RはH又はCH、Xは下記の式(10)−1、又は式(10)−2〕
【化20】

(式中、MはH又はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン、但し、MがHの場合は他のモノマーと共重合した後、塩基で中和して、カルボン酸を塩にする必要がある。)
【化21】

(式中、MはH又はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン、但し、MがHの場合は他のモノマーと共重合した後、塩基で中和して、カルボン酸を塩にする必要がある。)
【0016】
式(10)の例としては、メタリルスルホン酸及びp−メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩が挙げられ、該塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム、モノ,ジ或いはトリメチルアミン、モノ,ジ或いはトリエチルアミン等のアンモニアの水素原子がアルキル基で置換された脂肪族アミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、コリン、アミノエタンプロパンジオール、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、アミノエチルプロパンジオール等のアンモニアの水素原子がアルキル基で置換されたアルコールアミン、モノホリン、N−メチルモノホルリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等の環状アミン等の有機アミン塩が挙げられる。
中でもリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、及び、ジエタノールアミンやトリエタノールアミン塩が分散安定性としては優れている。
【0017】
本発明に係るポリカルボン酸系分散剤は、式(6)、式(7)、式(8)で示されるモノマーを、各々一種類以上用いて共重合することにより得られる。
更に、上記モノマーに加えて、式(9)及び/又は式(10)で示されるモノマーを、一種類以上共重合したポリカルボン酸系分散剤を用いれば、一層画像濃度の優れた色材分散体が得られる。
式(6)〜式(10)の各モノマーの好ましい配合比(モル%)は次のとおりである。
式(6):式(7):式(8):式(9):式(10)=45〜65:3〜25:5〜25:0〜15:8〜23
また、ポリカルボン酸系分散剤の数平均分子量は、2000〜20000(GPC法、プルラン換算)の範囲が好ましい。
本発明で用いる分散剤は合成によっても得られるが、市販品として、竹本油脂社製のポリカルボン酸系分散剤 チュウポールシリーズとして入手可能である。
【0018】
共重合の方法は、分散剤としての機能を損なわない限り、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。例えば、特許第2646449号公報の方法が利用できる。
参考のため合成法例について説明する。
ラジカル開始剤の存在下に、前記各モノマーを所定の共重合比率となるようにラジカル共重合する。共重合方法としては、水又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いた水系溶液重合により行うことが重要である。
具体的には、先ず各モノマーを水に溶解し、各モノマーを合計量として10〜45モル%含む水溶液を調整する。次に、窒素ガス雰囲気下において、該水溶液にラジカル開始剤を加え、50〜70℃で5〜8時間、ラジカル共重合反応させる。かくしてポリカルボン酸系分散剤(水溶性ビニル共重合体)を得る。ラジカル開始剤としては、共重合反応温度下において分解しラジカルを発生するものであれば、その種類は特に制限されないが、水溶性のラジカル開始剤を用いるのが好ましい。水溶性のラジカル開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。これらは、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸のような還元性物質、更にはアミン等と組み合わせて、レドックス開始剤として用いることもできる。
【0019】
色材分散液のpH(水素イオン指数)は中性(7.0±0.5)でも構わないが、8〜12、好ましくは9〜11のアルカリ状態にすることにより、より分散性がよくなり画像濃度効果が高くなる(実施例3、13参照)。pHが低すぎると、乾燥性/画像濃度が低下する傾向にあり、pHが11を超えると、塩基成分が多くなり画像に残留するため、乾燥性や画像濃度が低下する傾向にある。pHはガラス電極法を利用したpHメーターで測定できる。
pHを上記範囲に制御するには、pH調整剤を使用することが望ましい。pH調整剤の添加量は含有する素材により異なるので数値では示せないが、pHメーターで測定しながら上記範囲に収まるように量を設定すればよい。
pH調整剤としては、塩基性を示すものならば何でも良いが、例えば、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアルコールアミン類;水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物;硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム等の酸アンモニウム塩;第4級アルキルアンモニウム水酸化物等のアンモニウム塩;ホスホニウム水酸化物;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本発明における色材としては、特にその種類を限定することなく、無機色材や有機色材を使用することが可能である。
インクジェット記録用インクとして使用する場合は、光による退色や水系インクの面から色材として顔料を使用することが望ましい。
インクジェット用途として好ましい顔料を例示すると、黒色顔料としては、カーボンブラックが好ましく、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、カーボンブラック表面を酸化処理やアルカリ処理したものや、各種の界面活性剤や樹脂で被覆したりグラフト処理やカプセル化処理したカーボンブラックも使用可能である。
特にカーボンブラック表面を酸化処理した酸性を示す酸性カーボンを使用すると、乾燥性が向上すると共に画像濃度の向上効果が大きい。また、スルホン酸基やカルボキシ基を有する樹脂でコーティングしたり、グラフト処理によりスルホン酸基やカルボキシ基を付与したカーボンブラックも同様に効果が大きい。
特に色材がカーボンブラックのような比表面積の大きいものの場合には、本発明に係る分散剤を用いると、他の分散剤を使用した場合と比べて、分散安定性や高画像濃度効果が顕著に現れる。
【0021】
酸性カーボンの具体例としては、MA7、MA8、MA100、MA600、#45、#50、#2200B、#2350、#2650、OIL 7B、OIL 11B(三菱化成製)、Raven 1035、Raven 1040、Raven 1060、Raven 1080、RAVEN 1255、Raven 3500、ラーベンC(コロンビア製)、REGAL 400R、MOGUL L(キャボット製)、Color Black FW1、Color Black FW18、Color Black S150、ColorBlack S160、Color Black S170、Printex U、Printex V、Printex 75、Printex 140U、Printex 140V、Special Black 4、Special Black 100、Special Black 250、Special Black 350、NIPEX 150、NIPEX 180IQ、(デグサ社製)などが挙げられる。
これらの中でも特にpHが5以下のカーボンブラックで揮発分が3.5〜8.0重量%のものを用いることが好ましく、また乾燥性や画像濃度の面でガスブラックが望ましい。
【0022】
マゼンタ顔料としては、ピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメントレッド12、ピグメントレッド48(Ca)、ピグメントレッド48(Mn)、ピグメントレッド57(Ca)、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド168、ピグメントレッド184、ピグメントレッド202、ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン顔料としては、ピグメントブルー1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー3、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー16、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、バットブルー4、バットブルー60等が挙げられる。
イエロー顔料としては、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー2、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー129、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180等が挙げられる。
【0023】
なお、イエロー顔料としてピグメントイエロー74、マゼンタ顔料としてピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19、シアン顔料としてピグメントブルー15を用いることにより、色調、耐光性が優れ、バランスの取れたインクを得ることができる。
上記顔料を用いた分散液中、或いはインク中における濃度はそれぞれ0.1〜50重量%が好ましく、0.1〜30重量%が特に好ましい。
更に本発明で使用される色材は、分散剤等の界面活性剤や樹脂で被覆したり、グラフト処理やカプセル化処理したものを使用することが好ましい。
本発明の色材分散体では、他の公知の分散剤を併用しても良い。
使用できる公知の分散剤としては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを必要に応じて適宜使用することができる。具体例としては下記のものが挙げられる。
【0024】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩及びジエチルヘキシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体等がある。両面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン及びその他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0025】
ノニオン界面活性剤としては、下記のものが使用できる。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンジアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系等が挙げられる。
【0026】
色材としてカーボンブラックを選んだ場合は、アニオン界面活性剤であるナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物が最も好ましい。カーボンブラック固形分が20重量%以上を占める高固形分の場合には、他の分散剤と比べてその効果は特に顕著である。
またカーボンブラックとしては、BET表面積が100〜400m/gで、一次粒子径が10〜30nmのものが、印字画像の濃度が高く安定しており特に好ましい。
分散剤の含有量は色材の種類により適宜選択する必要があるが、色材1重量部に対し、0.005〜5重量部が好ましい。
色材としてカーボンブラックを用いた場合には、色材1重量部に対し0.01〜2重量部で実用上問題のない均一な色材分散体が得られる。この範囲では、色材の分散性が向上すると共に色材分散体やインクの経時安定性が向上する傾向にある。更に好ましいのは、色材1重量部に対し0.02〜0.5重量部であり、この範囲では色材分散体及びインク液の経時安定性が一層向上する。
【0027】
本発明の色材分散体には、水の他に各種添加剤を配合することができる。例えば、水溶性有機媒体としてメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン誘導体;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等;ノニオン、アニオン、カチオン、両性の各種の界面活性剤;防腐剤等が挙げられる。
カーボンブラックを用いた本発明の色材分散液は、カーボンブラック、分散剤、水及び必要に応じて各種添加剤を、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー、超音波分散機等の公知の分散機で分散することによって得られる。このとき、湿式分散処理を採用するのが好適である。なお、本発明で言う湿式分散処理とは、カーボンブラック、分散剤、水、必要に応じて水溶性有機溶剤の混合物を、前記公知の分散機により、いわゆる湿式分散方式で微粉砕・分散する処理のことである。
【0028】
色材として顔料を用いた本発明の色材分散液は、特に顔料系インクジェット用インクとして好適に使用することができる。
顔料系インクジェット用インクは公知の方法、例えば顔料分散液、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤等を攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置等で粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって得られる。なお、インクに於けるカーボンブラックの濃度は全量に対して1〜20重量%が好ましい。1重量%未満では画像濃度が低いため印字の鮮明さに欠け、20重量%より多いとインクの粘度が高くなる傾向があるし、ノズルの目詰まりが発生しやすくなる。またインクには前記顔料分散液への添加剤で記した材料と同様の材料を必要に応じて配合することが出来る。
例えば、水溶性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して0〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは10〜35重量%である。
このようにして得られた顔料系インクジェット用インクは、これを収容するインクカートリッジに好適に用いることが出来る。また、該顔料系インクジェットインクを用い、インクジェットプリント装置により、例えば紙のような画像支持体に吐出させ記録(印字)を行って画像形成することができる。
印字方法としては連続噴射型あるいはオンデマンド型が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、経時安定性が良好でかつ高画像濃度が実現できる記録用インク用色材分散体及び、これを用いた記録用インク、インクカートリッジ、画像記録装置、画像形成方法、画像形成物を提供できる。特にインクジェットプリンター等の画像記録分野に利用すると、高速印字性(乾燥性)が高くかつ高い画像濃度のインクジェット用インクが得られる。
更に、本発明2〜3によれば、一層画像濃度が良好となる。
更に、本発明4によれば、分散安定性や高画像濃度効果が顕著に現れる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、これらの実施例を適宜改変したものも本発明の範囲に含まれる。なお、材料A、Bとして用いたポリエチレングリコール系材料の「m」、「n」はエチレンオキサイド付加モル数を表す。また、「部」は全て重量基準であり、「%」は粘度の変化率を除き重量基準である。
【0031】
実施例1
以下の手順で、分散剤P1、顔料分散液、記録用インク液を順次調製し、該顔料分散液と記録用インク液をそれぞれ評価した。
<分散剤P1の作成>
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=2)モノアリルエーテル…14部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部

上記の材料をフラスコに仕込み、撹拌しながら溶解した。
次に30%の水酸化ナトリウム水溶液84部を投入してメタクリル酸を中和し、反応系のpHを8.5に調整した。
次に反応系の温度を温水浴で60℃に保ち、反応系内を窒素置換した後、重合開始剤として過硫酸アンモニウムの20%水溶液30部を投入して4時間重合反応を行ない、更に過硫酸アンモニウムの20%水溶液15部を投入して3時間重合反応を継続し、重合を完結した。
次に酸性分解物の中和のため、30%水酸化ナトリウム水溶液3部を投入し、完全中和して生成物を得た。
得られた生成物の未反応モノマーを除くためエバポレーターで濃縮し、更に石油エーテル中に沈殿して濾別した後、真空乾燥して精製し、水溶性ビニル共重合体(分散剤P1)を得た。

<顔料分散液の作成>
・カーボンブラック PRINTEX60
(degussa社製:ガスブラック pH10)…20部
・分散剤P1(10%水溶液)…30部
・蒸留水…950部

上記の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社:KDL型バッチ式)により、0.3mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で約平均粒子径が約120nmになるまで分散した後、遠心分離機(久保田商事社製:Model−3600)で粗大粒子を遠心分離し、実施例1の顔料分散液を得た。この顔料分散液のpHを、メトラー社製のpHメーター:MP20で測定したところ、6.8であった。

<インクの作成>
インク処方
・実施例1の顔料分散液(顔料濃度20%)…40.0部
・グリセリン…5部
・1,3−ブタンジオール…15部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール…2.0部
・フッ素系界面活性剤(固形分濃度40%)…2.5部
(DuPont社製、Zonyl FS−300)
・自己乳化型ポリウレタン樹脂エマルジョン…0.6部
(三井化学ポリウレタン社製、W−5025:固形分濃度30%、
平均粒子径=8.2nm)

上記材料を30分攪拌した後、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールでpHを8に調整し、更に蒸留水を加えてインク液が170重量部になるよう調整した。
次に、ザルトリウス社製のセルロースアセテートフィルター(孔径5μm)を用いて、インク液から粗大粒子を除去し、記録用インク液を作成した。
Particle Sizing Systems社のアキュサイザーで、5μm以上の粗大粒子の個数を測定したところ、500個/1.2mlであった。
【0032】
実施例2
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P2を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=4)モノアリルエーテル…23部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0033】
実施例3
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P3を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0034】
実施例4
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P4を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=25)モノアリルエーテル…113部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0035】
実施例5
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P5を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=28)モノアリルエーテル…126部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0036】
実施例6
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P6を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=4)モノメタクリレート…32部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0037】
実施例7
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P7を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=8)モノメタクリレート…45部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0038】
実施例8
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P8を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=35)モノメタクリレート…189部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0039】
実施例9
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P9を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=45)モノメタクリレート…239部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0040】
実施例10
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P10を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:メトキシポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…42部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0041】
実施例11
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P11を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
E:メタリルスルホン酸ナトリウム…18部(0.114モル)
F:イオン交換水…260部
【0042】
実施例12
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P12を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
E:p−メタリルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム…10部(0.04モル)
F:イオン交換水…260部
【0043】
実施例13
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P13(分散剤3と同じ)を作成し、それを使用して顔料分散液を作成する際に、そのpHを0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で8に調整した後、分散した点以外は、実施例1と同様にして、顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0044】
実施例14
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして、分散剤P14(分散剤3と同じ)を作成し、それを使用して顔料分散液を作成する際に、そのpHを0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で11に調整した後、分散した点以外は、実施例1と同様にして顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0045】
実施例15
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P15を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
F:イオン交換水…260部
【0046】
実施例16
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P16を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:アクリル酸…45.2部(0.628モル)、
B:ポリエチレングリコール(m=8)メタリルエーテル…41.4部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノアクリレート…126.4部
(0.120モル)
D:メチルメタクリレート…12.8部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0047】
実施例17
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P17を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:アクリル酸…45.2部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)メタリルエーテル…41.4部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノアクリレート…126.4部
(0.120モル)
D:イソプロピルアクリレート…14.6部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0048】
実施例18
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P18を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)、
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:エトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート
…129.6部(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0049】
実施例19
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P19を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)、
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:イソプロポキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート
…131.2部(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0050】
実施例20
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P20を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
E:アリルスルホン酸ナトリウム…16部(0.114モル)
F:イオン交換水…260部
【0051】
実施例21
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P21を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
E:アリルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム…9.4部(0.04モル)
F:イオン交換水…260部
【0052】
実施例22
材料を下記のものに変更し、30%の水酸化ナトリウム溶液84部に代えて、28%の水酸化カルシウム懸濁液84部を投入してメタクリル酸の中和を行った点以外は、実施例1と同様にして分散剤P22を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0053】
実施例23
材料を下記のものに変更し、30%の水酸化ナトリウム溶液84部に代えて、30%のアンモニア水溶液84部を投入してメタクリル酸の中和を行った点以外は、実施例1と同様にして分散剤P23を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0054】
実施例24
材料を下記のものに変更し、30%の水酸化ナトリウム溶液84部に代えて、30%のトリエタノールアミン水溶液300部を投入してメタクリル酸の中和を行った点以外は、実施例1と同様にして分散剤P24を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0055】
実施例25
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P25を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)、
B:ポリエチレングリコール(m=1)モノアリルエーテル…10部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
F:イオン交換水260部
【0056】
実施例26
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P26を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)、
B:ポリエチレングリコール(m=30)モノアリルエーテル…134部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
F:イオン交換水260部
【0057】
実施例27
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P27を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)、
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=5)モノメタクリレート…52部
(0.120モル)
F:イオン交換水260部
【0058】
実施例28
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤P28を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)、
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=50)モノメタクリレート…265部
(0.120モル)
F:イオン交換水260部
【0059】
比較例1
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤NP1を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。なお、下記化合物Cは、RがHの場合に相当する。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
C:ポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…126部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0060】
比較例2
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤NP2を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0061】
比較例3
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤NP3を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)
B:メトキシポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…42部
(0.098モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0062】
比較例4
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤NP4を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)、
B:ポリエチレングリコール(m=8)モノアリルエーテル…40部
(0.098モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
F:イオン交換水…260部
【0063】
比較例5
材料を下記のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして分散剤NP5を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
A:メタクリル酸…54部(0.628モル)、
C:メトキシポリエチレングリコール(n=23)モノメタクリレート…128部
(0.120モル)
D:メチルアクリレート…11部(0.128モル)
E:メタリルスルホン酸ナトリウム…18部(0.114モル)
F:イオン交換水…260部
【0064】
比較例6
分散剤の作成の際に、30%の水酸化ナトリウム水溶液84部を投入してメタクリル酸を中和しなかった(即ち、カルボン酸を塩にしなかった)点以外は、実施例3と同様にして分散剤NP6を作成し、それを使用して顔料分散液及びインク液を作成し評価した。
【0065】
<評価>
実施例1〜28及び比較例1〜6について、下記の評価を実施した。
結果を表1−1、表1−2、表1−3、表2に示す。

(1)経時保存安定性(液保存性)
各顔料分散液及びインク液について、初期粘度を測定した。次いで、各液50gを日電理化社製サンプル瓶SV−50に密閉し、60℃環境下で2週間保管した後に再び粘度を測定し、下記式に従い変化率を計算し、ランク分けを行った。粘度の測定は粘度計(東洋精機RE500)により行った。
変化率(%)=〔(60℃環境下2週間後の粘度−初期粘度)/初期粘度〕×100
◎:変化率が10%未満 (良好)
○:変化率が10%以上、15%未満 (実用上問題ないレベル)
△:変化率が15%以上、20%未満 (問題あるレベル)
×:変化率が20%以上 (問題あるレベル)

(2)画像濃度
インク液をリコー社製インクジェットプリンタGX−5000のインクカセットに装填し、ゼロックス社製PPC用紙4024に1枚ベタ画像を印字し、Xrite濃度計により測定した。(数値が大きい方が良好である)
【0066】
【表1−1】

【0067】
【表1−2】

【0068】
【表1−3】

【0069】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と色材と分散剤を含有し、該分散剤が、下記式(1)〜(3)で表される要素を含むポリカルボン酸系分散剤であることを特徴とする記録用インク用色材分散体。
【化1】

【化2】

【化3】

〔式(1)〜(3)中、R,R,RはH又はCH、RはH又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜3のアルキル基、AO及びBOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン、mは1〜30の整数、nは5〜50の整数〕
【請求項2】
分散剤が、更に下記式(4)で表される要素を含むポリカルボン酸系分散剤であることを特徴とする請求項1記載の記録用インク用色材分散体。
【化4】

(式中、RはH又はCH、Rは炭素数1〜3のアルキル基)
【請求項3】
分散剤が、更に下記式(5)で表される要素を含むポリカルボン酸系分散剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の記録用インク用色材分散体。
【化5】

〔式中、RはH又はCH、Xは下記の式(5)−1、又は式(5)−2〕
【化6】

(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン)
【化7】

(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン)
【請求項4】
色材がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の記録用インク用色材分散体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の記録用インク用色材分散体を用いた記録用インク。
【請求項6】
請求項5記載の記録用インクを容器中に収容したインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項6記載のインクカートリッジを搭載した画像記録装置。
【請求項8】
記録用インクを画像支持体上にインクジェット方式で吐出させて記録を行う請求項7記載の画像記録装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の画像記録装置により画像が形成された画像形成物。

【公開番号】特開2009−286847(P2009−286847A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138437(P2008−138437)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】