説明

記録装置および記録媒体の搬送量制御方法

【課題】記録装置において、1回の搬送動作においてイメージセンサーを用いて複数回の搬送量測定を行う場合であっても、精度が低下しない記録媒体の搬送量制御を可能とする。
【解決手段】記録動作時の記録紙搬送制御の前に、1回の搬送動作におけるイメージセンサーの複数回の測定による累積誤差を補正するための補正値を求める(S202)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置および記録媒体の搬送量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の記録装置では写真画質のようなより高品位の記録が一つの要求としてあり、この様な記録装置では、記録紙などの記録媒体を高精度に搬送すること求められている。これに対し、特許文献1には、測定頻度が高く比較的測定精度が低いエンコーダーのパルス信号を用いて記録紙の搬送量を測定するとともに、この搬送量をイメージセンサーによって直接測定した搬送量によって補正することが記載されている。具体的には、イメージセンサーによる測定では、所定量を搬送するための1回の搬送動作においてイメージセンサーによる連続的な複数回の測定を行い、それら複数回の測定値を合計して上記1回の搬送動作の搬送量測定値とする。そして、この測定値によって、エンコーダーのカウント値から得られた搬送量を補正するものである。これにより、記録媒体の搬送量を高精度に制御することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,846,058号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、イメージセンサーによる複数回の測定値を合計して1回の搬送動作の搬送量を得る構成では、複数回の測定それぞれで生じることがある測定誤差の累積が上記1回の搬送動作の搬送量制御に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
例えば、記録の高速化に資する記録ヘッドの長尺化に対応して、1回の搬送動作で、用いているイメージセンサーの記録媒体搬送方向のサイズより長い搬送を行うことがある。この構成では、イメージセンサーによる搬送前の測定と上記1回の搬送動作が終了したときの測定によって搬送量を得ることができない。このため、上述のように、1回の搬送動作において複数回の測定を行いそれら複数回の測定値を合計して上記1回の搬送動作の搬送量測定値とすることを行う。この場合、上述した本来の、搬送前の測定および搬送動作が終了したときの測定の2回の測定に基づく搬送量がより正確な搬送量を示しているにもかかわらず、上記複数回の測定による累積誤差を含んだ搬送量を得ることになる。その結果、イメージセンサーを用いた搬送量制御を行っても相応の精度を得ることができないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、1回の搬送動作においてイメージセンサーを用いて複数回の搬送量測定を行う場合であっても、精度が低下しない記録媒体の搬送量制御が可能な記録装置および搬送量制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明では、記録媒体を搬送し、該搬送される記録媒体に対して記録を行う記録装置であって、記録媒体の搬送に伴って移動する物に形成された検出用画像を検出するためのイメージセンサーであって、記録媒体の記録に伴う所定の搬送の第1搬送量より、前記検出用画像を検出するための検出領域の搬送方向の長さが短いイメージセンサーと、記録媒体の前記第1搬送量より小さい第2搬送量の搬送の間に、前記イメージセンサーが検出用画像を検出する少なくとも3回以上の複数回のタイミングにおける、それぞれ隣接するタイミング間の搬送量の合計を求め、該合計搬送量を、前記第2搬送量の搬送の間に前記イメージセンサーが検出用画像を検出する最初と最後のタイミング間の搬送量になるように補正するための補正値を求める補正値取得手段と、記録に伴う前記第1搬送量の記録媒体の搬送を行うときに、前記取得された補正値で、前記第1搬送量を補正し、該補正された搬送量の記録媒体の搬送を行う制御手段と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の構成によれば、記録に伴う1回の搬送動作においてイメージセンサーを用いて複数回の搬送量測定を行う場合であっても、精度が低下しない記録媒体の搬送量制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る記録装置の主に記録媒体搬送路に沿った構成を示す模式図である。
【図2】図1に示した記録装置のエンコーダーとイメージセンサーを用いた記録紙の搬送量測定処理を示すローチャートである。
【図3】(a)および(b)は、第1実施形態に係わる、搬送量の補正値の算出方法を説明する図である。
【図4】第1実施形態に係わる、搬送量の補正値の算出方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】第1実施形態に係わる記録装置の記録紙搬送制御のタイミングチャートである。
【図6】第2実施形態に係る記録装置の模式図である。
【図7】第2実施形態に係わる記録装置のエンコーダーとイメージセンサーによる記録紙搬送量検知を併用した搬送制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態は、記録装置においてイメージセンサーによる複数回の測定結果に基づいて補正値を求め、この補正値でエンコーダーによる記録紙搬送量を補正する構成に関するものである。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る記録装置の主に記録媒体搬送路に沿った構成を示す模式図である。図1において、記録ヘッド101は、不図示のキャリッジに搭載されて図の垂直方向に走査し、この走査の間に記録紙106に対してインクを吐出し記録を行う。記録紙106はこれを吸着して保持しながら搬送する搬送ベルト102によって搬送される。この搬送ベルト102は、搬送ローラー105、107によって、これらローラーを周回するように移動する。この搬送ベルト102の移動によって記録紙106の搬送を行うことができる。
【0012】
この搬送ベルト102の裏面には測定用の画像(検出用画像)が形成されている。一方、搬送ベルトの裏側の所定の位置には上記画像を検出するためのイメージセンサー103が設けられており、この画像検出に基づいて搬送ベルト102の搬送量を測定することができる。また、搬送駆動機構の移動部である搬送ローラー105の回転軸と同軸でエンコーダー104が設けられる。これにより、エンコーダー104からの検出信号のカウント値に基づいて記録紙106の搬送量を測定することができる。
【0013】
図2は、図1に示した記録装置のエンコーダー104とイメージセンサー103を用いた記録紙の搬送量測定処理を示すローチャートである。この処理は、記録ヘッドの走査による記録動作に伴って行われるものであり、図1に示した記録装置におけるCPUなどを有した不図示の制御構成によって実行される。
【0014】
図2において、先ず、ステップS201でこれから実行する記録モードを取得する。すなわち、記録モードに応じた記録速度、走査数、記録バンド幅等の情報を取得する。
【0015】
次に、ステップS202において、ステップS201で取得した記録モード情報に基づき、記録動作時の記録紙搬送制御で用いる補正値を算出する。すなわち、この処理によって、1回の搬送動作におけるイメージセンサーの複数回の測定による累積誤差を補正するための補正値を求める。以下では、本ステップS202における一連の処理をキャリブレーションと呼ぶ。
【0016】
図3(a)、(b)および図4は、ステップS202における補正値の算出方法を説明する図である。
【0017】
図3(a)は、記録紙106の1回の搬送動作における搬送位置ごとの、イメージセンサー103と搬送ベルト102の裏面に形成された所定画像の撮像された画像(画像比較領域)との関係を示している。同図に示すように、最初の、記録媒体の搬送開始位置では、イメージセンサー103によって画像比較領域I1が検出され、また、その後、記録媒体の搬送が開始されその搬送の途中に所定の周期で画像比較領域I2、I3、I4、・・・が検出される。さらに、記録ヘッド101の走査によって記録を完成する領域の幅(以下、バンド幅という)の1回の搬送動作が終了した位置で、画像比較領域Iendが検出される。このように、バンド幅に対応した1回の搬送動作の搬送量は、イメージセンサー103の搬送方向サイズより大きいため、その搬送途中の複数回の画像比較領域の検出によってイメージセンサー103による搬送量測定を行う。そして、その累積誤差を補正するための補正値を本ステップのキャリブレーションによって求める。
【0018】
本実施形態のキャリブレーションでは、図3(b)に示すように、実際の記録動作のときよりも短い搬送量の搬送動作においてイメージセンサー103による複数回の画像検出を行い、それら複数回の検出結果に基づいて補正値を求める。すなわち、搬送動作では、基本的にエンコーダー104が検出するスリットの数によって搬送を制御する。すなわち、搬送ローラー105を回転させて指定した数のスリット数を検出することによって、加速領域−定速領域−減速領域を判別するとともにそれぞれの速度ないし加速度の制御を行う。この搬送制御において、キャリブレーションのための搬送では、定速領域を短くしてイメージセンサー103で一度に測定できる搬送量とする。これは、本実施形態のキャリブレーションでは、後述するように、イメージセンサよる複数回の測定結果を得るとともに、その複数回の測定結果のうち最初と最後の測定結果に基づく搬送量を基準として上記複数回の測定の累積誤差の補正値を求めるからである。すなわち、キャリブレーションでは上記最初と最後の測定結果を実際に得る必要がある。しかし、上記最初の測定から最後の測定に至るまでの搬送量がイメージセンサーのサイズを越えると、最初に検出された画像比較領域が最後の検出画像内に存在しないことになるからである。また、定速領域では搬送量のずれがほとんど発生しないため、定速領域を短縮して補正値算出を行ってもそれほど大きな問題はない。なお、このようなイメージセンサーのサイズは、記録装置が総ての記録モードにおいて、定速領域を短縮化することにより記録紙を搬送できる長さが少なくとも必要である。このため、総ての記録モード情報から記録装置に搭載すべきイメージセンサー103のサイズを決定することができる。
【0019】
キャリブレーションでは、以上のように決定された搬送量に基づき搬送ベルト102のみを駆動させる。すなわち、搬送ベルトによって記録媒体を保持することなく搬送ベルトのみを移動させる。
【0020】
図4は、この搬送ベルトに移動に伴って、イメージセンサーのサイズとの関係で3回、4回、・・・、またはn回の測定でそれぞれキャリブレーションを行う場合の、複数回の測定値の合計とそれ複数回の測定における累積誤差に対する補正量を示している。
【0021】
上述したように、複数回の測定結果のうち、最初の画像比較領域I1と最後の画像比較領域Iendを比較することによって移動量(搬送量)を算出する場合、本来のより正確な搬送量を得ることができ、その場合の測定誤差が±αであるとする。これに対し、連続して測定される領域I1と領域I2、領域I2と領域I3、...、領域Iend-1と領域Iendのn個の測定結果を合計して得られる測定結果は、その誤差が最大で±n×αとなって、本来の誤差±αのn倍となる可能性がある。実際には、誤差は、装置構成により撮影された画像が光源の光量むら、レンズゆがみ、ベルトのたわみ等の影響を受け、それが画像解析アルゴリズムが算出する測定結果に影響を与えるため発生するものであり、誤差の大きさや方向性に規則性はあまりない。そのため、測定誤差は単純に測定回数倍とはならないが、測定回数が増えるにつれて累積は発生する。
【0022】
そこで、本実施形態では、複数回測定の合算値が1回測定の結果に近くなるような補正値を算出し、複数回測定の合算値を補正することにより、複数回測定による誤差の累積を低減させる。しかし、本実施形態のキャリブレーションでは、上述したように、イメージセンサー103のサイズで測定可能な搬送量に限定して補正値を算出している。このため、搬送量に依存しない、より汎用的な補正値を算出するために、図4に示す総てのサンプリング位置で、複数回測定の合算値と1回測定値を比較する。そして、総てのサンプリング位置で複数回測定の合算値が1回測定値の結果へ近くなるような補正値e、すなわち、式(1)のEが最小となるような補正値eを算出する。
【0023】
【数1】

【0024】
ここで、Ts→tは、測定位置(サンプリング位置)sとtでの画像を比較することで測定した搬送量を示す。
【0025】
なお、式(1)では加算することで搬送量補正を行うような補正値eを算出しているが、乗算することで搬送量補正を行うような補正値(補正係数)eを算出しても良い。
【0026】
また、式(1)では、複数回測定時の結果を総てについて均等な重み付けにし、補正値eを算出しているが、測定回数が少ないほど測定精度がよい。このため、式(2)に示すように、測定回数が少ないときはより重み付けを大きくするような係数wiをかけて補正値eを算出しても良い。
【0027】
【数2】

【0028】
再び図2を参照すると、以上のとおり、キャリブレーションによって測定回数による誤差の累積を低減させるための補正値eを算出すると、ペーパーセンサーにて記録紙の先端位置を検知するまで記録紙の給紙を行う(ステップS203、S204)。そして、記録紙先端位置を検知すると、ステップS205へ進み、エンコーダー104に基づく搬送制御を開始し、記録開始位置まで記録紙を搬送する(ステップS206)。記録開始位置以降は、エンコーダー104とイメージセンサー103を併用して記録紙の搬送量制御を行うともに、記録ヘッドを走査して記録動作を行う。そして、搬送量制御では、記録を完成する領域の幅である、バンド幅分の搬送を行う度にステップS207〜S210の処理を行う。なお、このバンド幅分(所定量)の搬送では、イメージセンサー103が検出する測定用画像は搬送方向において所定の間隔で複数個が形成されている。これにより、バンド幅分より短い搬送方向長さしか持たないイメージセンサー103でもバンド幅全体にわたって測定用画像を検出することができる。
【0029】
図5は、このステップS207〜S210の処理の詳細を説明する図である。具体的には、図5は、エンコーダー104のスリット検出による搬送制御と搬送量測定、およびイメージセンサー103による測定(画像撮影)とエンコーダー104による搬送量との差を累積するタイミングをそれぞれ示している。図5において上向きの矢印のマークの存在する位置で各処理が実行される。エンコーダー104による記録紙搬送量測定は、各サンプリングタイムにおけるスリット数をカウントアップすることで容易に測定すること可能である。それに対し、イメージセンサー103による記録紙搬送量測定は、画像相関法を用いるため、最低でも基準となる画像と比較するための画像の2枚が必要となる。そのため、画像撮影はすぐに開始されるが、イメージセンサー103による記録紙搬送量測定は1サンプリングタイムだけ遅れてから開始されることになる。
【0030】
以上のように、エンコーダー104およびイメージセンサー103によるサンプリングタイムでの搬送量測定が完了するごとに、イメージセンサーによる測定値とエンコーダーによる測定値との差分を算出し、その差分値を累積する(ステップS207)。これは、イメージセンサーによる測定値をサンプリングタイムごとに累積し最後にエンコーダーによる搬送量測定値を補正する特許文献1に記載されている構成と実質的に同じ処理である。
【0031】
次に、ステップS208で、現在の搬送位置がバンド幅分の搬送終了直前であるか否かを判断し、バンド幅分の搬送終了直前でないときはステップS210で、エンコーダー104に基づく搬送制御を継続する。一方、現在の搬送位置がバンド幅分の搬送終了直前であるときは、ステップS209で、ここまで累積してきたエンコーダー1とイメージセンサーによる測定結果の差分値(搬送量補正量a)を、ステップS202で算出した補正値eで補正し、最終搬送量fとする。そして、ステップS210で、エンコーダー104に基づいて最終搬送量の搬送制御を行う。式(3)は、この最終搬送量の算出方法を示している。
【0032】
【数3】

【0033】
なお、式(3)のように加算用ではなく、乗算用の補正値(補正係数)eを算出している場合は、最終搬送量は式(4)で求めることができる。
【0034】
【数4】

【0035】
また、エンコーダー104とイメージセンサー103による搬送量差を搬送制御へ反映させるためには、1サンプリングタイム遅れが生じるため、実際の記録時は、キャリブレーション時に比べて測定結果を比較できる回数が1サンプリングタイム少なくなる。しかし、1サンプリングタイムあたりの搬送量ずれは微小であり、記録画質への影響も小さいため、記録紙搬送制御上無視することができる。
【0036】
記録終了位置に到達すると、記録紙の排紙が終了するまで(ステップS213)、エンコーダー104からのスリット信号に基づいて搬送制御を行う(ステップS212)。
【0037】
(第2実施形態)
上述の第1の実施形態は、記録紙搬送機構として搬送ベルト102を用いる形態に係るものであるが、図6に示すような搬送ローラー602によって直接記録紙を搬送する構成にも本発明を適用することができる。図6は、第2実施形態に係る記録装置を示す図である。
【0038】
図6において、図1に示す第1実施形態に係る記録装置と本質的に異なる構成は、記録紙605が、搬送方向上流側の搬送ローラー602とこれに記録紙を押圧する不図示のピンチローラと、下流側の排紙ローラー607と拍車によって搬送される点である。また、記録紙の裏面には検出用の画像が予め記録されており、これをイメージセンサー603によって検出する。そして、このイメージセンサー603とエンコーダー604の測定結果に基づいて搬送量の制御を行う。
【0039】
なお、本実施形態に係わる記録装置のイメージセンサー603は、記録紙裏面の画像を撮影する構成としているが、記録紙表面の画像を撮影する構成にすることも可能であることは言うまでもない。
【0040】
図7は、第2実施形態に係わる記録装置のエンコーダー604とイメージセンサー603による搬送量検知を併用した搬送制御を示すフローチャートである。
【0041】
図7において、ステップS704で記録紙裏面画像を撮影してイメージセンサー603による記録紙搬送量検知のキャリブレーションを行う。そのために、ステップS701〜S702で、まず記録紙を給紙する。そして、ステップS703で、これから記録しようとしている記録モードを確認し、その記録モード情報(記録速度、記録スキャン数、記録バンド幅等)を取得する。そして、ステップS704で、第1実施形態で搬送ベルト裏面画像による記録紙搬送量検知のキャリブレーションと同様の手順で、記録紙裏面の画像を用いてキャリブレーションを行う。そして、キャリブレーション終了後、ステップS705〜S706で記録紙を給紙開始位置まで戻してから再給紙し、ステップS707以降は第1実施形態と同様の搬送制御を行うことで正確な記録紙搬送が可能となる。
【0042】
以上のように、本発明の実施形態によれば、記録媒体を搬送し、該搬送される記録媒体に対して記録を行う記録装置は、記録媒体の搬送に伴って移動する物に形成された検出用画像を検出するためのイメージセンサーを用意する。このイメージセンサーは、記録媒体の記録に伴う、バンド幅分などの第1搬送量より、検出用画像を検出するための検出領域の搬送方向の長さが短いイメージセンサーである。そして、キャリブレーションでは、記録媒体の上記第1搬送量より小さい第2搬送量の搬送の間に、イメージセンサーが検出用画像を検出する少なくとも3回以上の複数回のタイミングにおける、それぞれ隣接するタイミング間の搬送量の合計を求める。そして、この合計搬送量を、第2搬送量の搬送の間にイメージセンサーが検出用画像を検出する最初と最後のタイミング間の搬送量になるように補正するための補正値を求める補正値取得を行う。
【0043】
以上の説明により、バンド幅分の搬送量よりも小さなサイズのイメージセンサーによって複数回の測定の累積結果を利用しても、仮に大きなサイズのイメージセンサーで測定した結果を利用した場合と同等の効果を得ることが可能となる。また、サンプリングタイム毎に測定されるエンコーダー104(604)とイメージセンサー103(603)による搬送量測定差は微小であり、仮にサンプリングタイム毎に補正制御を行うには、エンコーダー104(604)の高解像度化が必須であり、装置の大型化を招くことがある。一方、本発明の各実施形態による搬送量制御では、サンプリングタイム毎の搬送量差を累積しておき、最終位置で補正制御を行うことにより、エンコーダー104(604)の高解像度化が不要とすることも可能となる。
【0044】
上記各実施形態では、記録装置内ですべての処理を実行し、目的を達成する方法について述べたが、本記録装置の外部I/Fに接続されているPC上で同等の処理を行ってもよいことは言うまでもない。
【0045】
さらに、上記各実施形態は、イメージセンサーによる測定値とエンコーダーによる測定値の両方を用い、それら測定値の差分を算出し、その累積値を予め求めた補正値で補正することにより、搬送量を制御するものであるが、本発明の適用はこの形態に限られない。イメージセンサーのみを用いて複数回の測定を行いその合計値を予めキャリブレーションで求めた補正値で補正し、搬送量の制御を行う形態であってもよい。
【0046】
また、上記各実施形態は、インクジェット方式の記録装置の例に関するものであるが、この方式に限られず公知のいずれの方式の記録装置における搬送量制御にも本発明を適用できることは、本明細書の説明からも明らかである。
【符号の説明】
【0047】
101 記録ヘッド
102 搬送ベルト
103 イメージセンサー
104 エンコーダー
105 搬送ローラー
106 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送し、該搬送される記録媒体に対して記録を行う記録装置であって、
記録媒体の搬送に伴って移動する物に形成された検出用画像を検出するためのイメージセンサーであって、記録媒体の記録に伴う所定の搬送の第1搬送量より、前記検出用画像を検出するための検出領域の搬送方向の長さが短いイメージセンサーと、
記録媒体の前記第1搬送量より小さい第2搬送量の搬送の間に、前記イメージセンサーが検出用画像を検出する少なくとも3回以上の複数回のタイミングにおける、それぞれ隣接するタイミング間の搬送量の合計を求め、該合計搬送量を、前記第2搬送量の搬送の間に前記イメージセンサーが検出用画像を検出する最初と最後のタイミング間の搬送量になるように補正するための補正値を求める補正値取得手段と、
記録に伴う前記第1搬送量の記録媒体の搬送を行うときに、前記取得された補正値で、前記第1搬送量を補正し、該補正された搬送量の記録媒体の搬送を行う制御手段と、
を具えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、記録に伴う前記第1搬送量の記録媒体の搬送を行うときに、前記取得された補正値で、前記イメージセンサーが検出用画像を検出する少なくとも3回以上の複数回のタイミングにおける、それぞれ隣接するタイミング間の搬送量の合計値を補正し、該補正された搬送量の記録媒体の搬送を行うことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、記録に伴う前記第1搬送量の記録媒体の搬送を行うときに、前記取得された補正値で、記録媒体の搬送を行う駆動機構の移動部の移動を検出するエンコーダーからの検出信号に基づく搬送量を補正することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
記録媒体を搬送し、該搬送される記録媒体に対して記録を行う記録装置における記録媒体の搬送量制御方法であって、
記録媒体の搬送に伴って移動する物に形成された検出用画像を検出するためのイメージセンサーであって、記録媒体の記録に伴う所定の搬送の第1搬送量より、前記検出用画像を検出するための検出領域の搬送方向の長さが短いイメージセンサーを用意する工程と、
記録媒体の前記第1搬送量より小さい第2搬送量の搬送の間に、前記イメージセンサーが検出用画像を検出する少なくとも3回以上の複数回のタイミングにおける、それぞれ隣接するタイミング間の搬送量の合計を求め、該合計搬送量を、前記第2搬送量の搬送の間に前記イメージセンサーが検出用画像を検出する最初と最後のタイミング間の搬送量になるように補正するための補正値を求める補正値取得工程と、
記録に伴う前記第1搬送量の記録媒体の搬送を行うときに、前記取得された補正値で、前記第1搬送量を補正し、該補正された搬送量の記録媒体の搬送を行う制御工程と、
を有したことを特徴とする搬送量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−106404(P2012−106404A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256779(P2010−256779)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】