説明

記録装置及び記録方法

【課題】被記録材に対するインクの着弾位置の精度を向上し、高画質な記録を実現する。
【解決手段】ロール紙Pに記録ヘッド7からインクを吐出して記録を行う記録装置において、連続して給送されるロール紙Pを搬送する搬送ローラ31と、搬送ローラ31による搬送方向に並べられた複数の記録ヘッド7と、ロール紙Pが搬送方向に対して斜行したときの、搬送方向と直交する幅方向に変位したロール紙Pと記録ヘッド7との相対位置の変位量を検出する斜行センサ38と、斜行センサ38によって検出された変位量に基づいて記録ヘッド7をロール紙Pに対して相対的に回転させる角度調整機構10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙等の被記録材にインクを吐出して記録を行う記録装置及び記録方法に関し、特に、被記録材の搬送方向に対する斜行を矯正して記録を行う記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に画像形成装置、特にカラー画像を出力する装置では、複数の記録紙に記録を行うためにロール紙を用いて一度に大量の記録が可能なものがある。従来、この種のロール紙を用いて記録を行う記録装置としては、乾式銀塩方式やインクジェット方式を用いたものがある。
【0003】
図7(a)、(b)は従来の画像形成装置を示す図であり、図8(a)、(b)は従来の画像形成装置の搬送機構部を示す平面図である。画像形成装置は、回転駆動されてロール紙Pを矢印(図中)方向に移動させる搬送力を発生する駆動ローラ133と、ノズル列方向が互いに平行に配置された複数の記録ヘッド107を挟んで上流側に配置された搬送ローラ131とを備えて構成されている。これらの各ローラによって一定の幅を有するロール紙Pが予め定められた張力が加えられた状態で搬送され、ロール紙Pの搬送動作に同期して記録ヘッド107からインクが吐出されて記録動作が行われるように構成されている。
【0004】
まず、ロール紙Pの搬送動作に関して給紙側から説明する。ロール紙Pは、給送回転体122に保持されており、給送回転体122が回転することによって、搬送方向に給送される。また、給送回転体122に保持されているロール紙Pは、搬送方向と直交する幅方向の一端側に配置されたロール紙基準ガイド125にロール紙Pの一端が突き当てられる。さらに、ロール紙Pは、幅方向の他端側に配置されたロール紙移動ガイド124にロール紙Pの他端が突き当てられることよって、幅方向に対して規制されている。そして、ロール紙Pは、ループ検知フラグ129に張架されて給送され、ロール紙Pの幅方向に対する位置を規制する基準規制ガイド115と移動規制ガイド116との間に導かれる。ロール紙Pは、図8(a)及び図8(b)に示すように、基準規制ガイド115と移動規制ガイド116によって、搬送方向に対して傾斜された方向に斜行するのが抑えられる。
【0005】
ループ検知フラグ129は、矢印C方向に揺動可能に設けられており、ロール紙Pの搬送方向に一定の張力を付与している。ロール紙Pが搬送されて、ループ量が減少したときには、ループ検知フラグ129が揺動して、このループ検知フラグ129をセンサによって検出し、給送回転体122を回転させてロール紙Pを各規制ガイド115,116の方向に搬送する。その結果、ループ量が増大してループ検知フラグ129が元の位置に戻り、検知が解除されて、給送回転体122の駆動を停止し、再び一定の張力を維持する構成になっている。この動作を搬送動作中、繰り返すことで、搬送ローラ131の上流側においてロール紙Pに張力を安定して発生させながらロール紙Pの搬送を行っている。
【0006】
規制基準ガイド115によって搬送方向と直交する斜行方向に対して位置決めされたロール紙Pは、搬送ローラ131と従動ローラ132のニップ部に搬送される。搬送ローラ131と、この搬送ローラ131に追従して圧力を加えながら回転する従動ローラ132とによって、ロール紙Pは一定の搬送力が付与され、各記録ヘッド107で記録が行われる記録エリアに搬送される。
【0007】
記録エリアには、インクを飛翔させるために多数のノズルが搬送方向と直交する方向に沿って配列された記録ヘッド107(107K、107C、107M、107Y)が、搬送方向に複数並べられている。また、記録エリアには、各記録ヘッド107の上流側から下流側にわたって、ロール紙Pの浮き上がりを抑制するための複数の上ローラ134が設けられている。この上ローラ134によって、記録ヘッド107とロール紙Pとの間隔を1.00mm程度に狭くして、インクの飛翔による着弾位置のズレを少なくすることで高精細な画像を可能にしている。
【0008】
記録エリアにおいて、高精細な画像が形成されたロール紙Pは、駆動ローラ133と上ローラ134によって搬送され、後工程であるカッターエリアへと搬送される。上ローラ134は、上側の位置で上ローラクリーナ135と当接されており、ロール紙Pの上面(記録面)と接触する際に、記録面から転写されたインクを上ローラクリーナ135によって拭き取られる。これにより、上ローラ134が再度回転してロール紙Pの記録面と接触したときに、上ローラ134に付着したインクを転写することを防ぐように構成されている。上ローラクリーナ135は、複数の記録ヘッド107が配置された領域に配置された各上ローラ134に対応する位置に設けられている。
【0009】
また、図7(a)及び図7(b)に示す4つの記録ヘッド107は、上下ヘッド枠106に固定されており、記録時にロール紙Pと一定の間隔をなす位置に配置されている。そして、記録装置を保管するときや、ヘッド回復動作などのときには、上下ヘッド枠106が移動することによって、記録ヘッド107を上下移動させるように構成されている。上下移動させる構成としては、例えばステッピングモータ(不図示)を用いてパルス制御する構成や、上下方向に設けられた高さ基準に上下ヘッド枠106を突き当てることで、記録ヘッド107の高さ方向の位置を常に一定にさせる構成が採られてもよい。
【0010】
カッターエリアでは、連続して搬送されてくるロール紙Pがカット動作時間の間停止されて、カット動作の終了後に、ロール紙Pを搬送速度の3倍程度の速度で比較的高速に搬送させて、次のカット位置まで移動させる動作が繰り返し行われる。これによって、カッターエリアでは、ロール紙Pを一定の長さに切断するカット動作が行われている。そのため、カッターエリアにおいては、ロール紙Pを間欠送りすることになるので、ループ領域が設けられて、カッター動作時にロール紙Pが停止している間、連続送りされてくる部分にループを形成させて一時的に留めておくように構成されている。切断されたロール紙Pは、カッターエリアから排出されて、一連の記録動作が終了する。
【0011】
このような構成の記録装置は、従来、はがき、名刺、ラベル等の低解像度プリンタとして利用されていたが、近年におけるインクジェット記録方式の飛躍的な画質の向上、記録紙の材質の向上に伴って、高精細、高画質な写真画像記録用の利用が考えられている。特に、記録紙の記録幅に等しいノズル列を有する長尺状の記録ヘッドが搬送方向に複数並べて配置された記録装置では、1分間当たりの記録枚数が30枚から100枚程度の高速記録か可能であり、需要が増大する傾向にある。
【特許文献1】特開平08−133540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上述した構成においては、規制基準ガイド115と、搬送ローラ131と従動ローラ132のニップ部との直角度によって、給送動作の初期におけるロール紙Pの斜行が決定される。例えば搬送ローラ131に対してロール紙Pが搬送方向に対して傾いて給紙されたとき、搬送ローラ131は、搬送方向に傾いた方向にロール紙Pを搬送し、ロール紙Pが斜行を続けることになる。このとき、ロール紙Pは、連続して供給されているので、ロール紙Pの上流側からの張力の影響を受けて、ロール紙Pの搬送方向が、ロール紙Pの給送回転体の軸方向に垂直な方向に矯正されて、ロール紙Pの斜行状態が次第に収束されることになる。しかしながら、ニップ部での搬送力が強い場合には、ロール紙Pの斜行状態が収束することはなく、ロール紙Pは斜行され続けて、最終的に紙詰まり、いわゆるジャムを発生することになる。
【0013】
また、斜行状態が収束されたときも、規制基準ガイド115及び基準移動ガイド116でロール紙Pを規制する構成であっても、ロール紙Pを円滑に移動させるために、ロール紙Pの幅方向の両端と各ガイド115,116との間に微少な隙間を確保する必要である。また、ロール紙Pにおいても、ロール紙Pの外周部と芯中心部において幅寸法の誤差を持っているので、ロール紙Pと各ガイド115,116との間に隙間が必要である。この隙間の影響によって、上述したように一定の搬送が行われて給送動作の初期における斜行状態が収束された後にも、搬送されるロール紙Pには低周期で斜行が発生することになる。
【0014】
この低周期で発生する斜行は、上述したロール紙を搬送するために必要な隙間が起因している。したがって、ロール紙を円滑に搬送するためには、この隙間を解消することができない。そのため、給送動作の初期における斜行を低減するために、搬送方向に対して傾いた方向にロール紙を搬送する斜送ローラを用いて、搬送方向に対してロール紙の幅方向を常に安定して直交させるための種々の構成が提案されている。
【0015】
また、特に近年インクジェット方式において実現している写真画像の記録品位に匹敵する高画質を複数の長尺状記録ヘッドを用いて可能にする現在の方式では、給紙動作の初期又は斜行状態の収束後に生じる長周期な斜行でさえも影響を受けてしまう。このため、複数の長尺状記録ヘッドを用いた構成では、平行に並んだノズル列間でのインクの着弾位置のズレを誘発して高画質が得られないといった問題がある。
【0016】
また、比較的安価に記録ヘッドのノズル列を構成するために、比較的短いノズル列を有するチップを複数個、ノズル列方向に並べて長尺状記録ヘッドを構成するものも存在する。しかしながら、この構成の場合、ロール紙の斜行が発生したときに各チップ間の隙間が変動して、ロール紙の記録面に交互に白筋、黒筋を発生させる現象が、斜行量によって生じるので、斜行量をより一層低減することが要求されている。一般的には、ロール紙が斜行したときのロール紙の幅方向に対する変位量を±20μm以下に抑える必要があり、現状の搬送機構の構成では実現することが困難である。
【0017】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされ、給紙動作の初期における斜行又は斜行状態の収束後に発生する長周期の斜行においてもインクの着弾位置の精度を向上させることができる記録装置及び記録方法を提供することを目的とする。また、本発明は、特に被記録材に対するインクの着弾位置の精度を向上させて、高画質な記録を可能とする記録装置及び記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するため、本発明に係る記録装置は、被記録材に記録手段からインクを吐出して記録を行う記録装置において、連続して給送されるロール状の被記録材を搬送する搬送手段と、搬送手段による搬送方向に並べられた複数の記録手段と、被記録材が搬送方向に対して斜行したときの、搬送方向と直交する幅方向に変位した被記録材と記録手段との相対位置の変位量を検出する検出手段と、検出手段によって検出された変位量に基づいて記録手段を被記録材に対して相対的に回転させる回転手段と、を備える。
【0019】
また、本発明に係る記録方法は、被記録材に記録手段からインクを吐出して記録を行う記録動作中に、被記録材が搬送方向に対して斜行したときの、搬送方向に直交する幅方向に変位した被記録材と記録手段との相対位置の変位量を検出し、変位量に基づいて記録手段を被記録材に対して回転させる記録方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被記録材が斜行したときの、被記録材の幅方向に変位した被記録材と記録手段の相対位置の変位量に応じて、記録手段を被記録材に対して相対的に回転させることによって、被記録材に対するインクの着弾位置の精度を向上することができる。したがって、本発明は被記録材の記録品位の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
なお、以下に説明する実施形態では、インクジェット記録方式を用いた記録装置としてプリンタを例に挙げ説明する。
【0023】
本発明において、「記録」とは、文字、図形等の有意の情報を形成する場合のみならず、有意、無意を問わず、また人間が感覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、「記録」とは、被記録材上に画像、模様、パターン等を形成する場合や、被記録材の加工を行う場合も指すものとする。
【0024】
また、「被記録材」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、例えば、布、プラスティック、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等の、インクを受容可能なものを指すものとする。
【0025】
さらに、「インク」とは、「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきものである。したがって、「インク」とは、被記録材上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または被記録材の加工、あるいはインクの処理(例えは被記録材に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を指すものとする。
【0026】
さらに、「インク」とは、被記録材上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または被記録材の加工や、インクの処理(例えば被記録材に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を指すものとする。
【0027】
本実施形態の記録装置の構成に関しては、従来技術として図7及び図8を参照して説明した構成と同じ部分に関しては説明を省略する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態の画像形成装置を示す図であって、(a)が平面図、(b)が断面図である。図2はロール紙の搬送時に発生する斜行量を測定した結果を示す図である。
【0029】
図1に示すように、ロール状の被記録材としてのロール紙Pは、給送回転体22に保持されており、ループ検知フラグ29に張架されて、ロール紙Pに一定の張力が加えられながら、搬送手段としての搬送ローラ31と従動ローラ32のニップ部に搬送される。搬送ローラ31及び従動ローラ32の下流には、複数の記録ヘッドと対向する位置にプラテン30が設けられており、ロール紙Pがプラテン30に沿って記録ヘッドの直下を送られて、駆動ローラ33まで搬送されるように構成されている。この構成は従来の構成例と同一である。また、その後処理であるカッターエリアにおける動作も従来の構成例と同様である。
【0030】
次に、本実施形態による構成について説明する。
【0031】
インクを飛翔させる複数のノズルがロール紙Pの幅方向に沿って配列された長尺状の記録ヘッド7は、角度調整ヘッド枠9によって保持される点が従来の構成例と異なっている。本実施形態では、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インク色用の記録ヘッドの順に4つが配置された構成であるが、記録ヘッドの個数が4つに限定されるものではない。したがって、記録ヘッドの個数は、4つ以上の数であっても、各記録ヘッドが一体化された1つの組み合わせ型記録ヘッドであってもよく、記録ヘッドの構成を限定するものでなく、各色のノズル列が複数列状に配置されている記録ヘッドすべてを含んでいる。
【0032】
この角度調整ヘッド枠9は、図4(a)から図4(c)に示すように、上述した上下ヘッド枠6に回転基準軸11を介して回転可能に支持されており、ロール紙Pの記録面に平行な面内方向において回転基準軸11を回転中心として回動可能に設けられている。そして、角度調整ヘッド枠9は、上下ヘッド枠6が上下移動するのに伴って移動される。例えば記録動作以外のときには、ノズル部のインク蒸発に起因するノズル詰まりを防止するために、上下ヘッド枠6が上方に移動して、図1(b)に示すキャップ8が記録ヘッド7の下方に向かって横方向に移動する。続いて、記録ヘッド7がキャップ8の位置まで下降することで、キャップ8によって記録ヘッド7のノズル周辺は密閉された状態になる。この構成によって、記録ヘッド7の停止(保存)状態を長期間維持することが可能にされている。また、他にも一般的なインクジェット方式の記録装置と同様の動作が可能な構成であり、図示しないが記録ヘッド7の回復動作、予備吐出動作等も上下ヘッド枠6が上下方向に移動することで各位置において動作可能にされている。
【0033】
図5(a)に示すように、角度調整ヘッド枠9には、上下ヘッド枠6と対向する対向面側の4隅に凹部がそれぞれ設けられており、これら各凹部にボール12が配置されている。したがって、角度調整ヘッド枠9は、凹部内でボール12が回動することで、上下ヘッド枠6の上を低負荷で回転動作することができ、かつ一定の平面度を維持しながら回転可能に構成されている。
【0034】
また、上下ヘッド枠6には、記録ヘッド7の下流側の位置に、角度調整ヘッド枠9を移動するための角度調整機構10が固定されて設けられている。この角度調整機構10は、角度調整ヘッド枠9に連結された駆動軸10aを有している。本実施形態では、角度調整機構10として、直動型ステッピングモータを用いてステップを制御することで、角度調整ヘッド枠9の角度調整を行うように構成されている。近年の直動型ステッピングモータでは、1ステップにおける駆動軸10aの駆動量が10μmで駆動制御することが可能であり、駆動量が±0.5mmの動作範囲を持つこのモータを用いて行っているが、特にこの構成に限定されるものではない。角度調整機構としては、高精度な駆動制御が可能であれば他の構成でも用いることは可能である。
【0035】
そして、角度調整機構10は、駆動軸10aをロール紙Pの幅方向に対して移動させることによって、記録ヘッド7の下流側の位置において角度調整ヘッド枠9を押し引きする。これによって、角度調整機構10は、角度調整ヘッド枠9を回転基準軸11を回転中心として回転させて、搬送方向に対する記録ヘッド7の角度を制御することが可能にされている。このとき、角度調整機構10は、複数の記録ヘッド7を一体的に回転基準軸11回りに回転させる。
【0036】
また、上下ヘッド枠6の搬送方向の下流側には、ロール紙Pが搬送方向に対して斜行したときのロール紙Pの幅方向に対する変位量を検出する斜行センサ38が設けられている。図4(a)から図4(c)は、角度調整動作を示した平面図である。図5(a)から図5(e)は、斜行センサ38を、搬送方向と直交する平面で切断して示す断面図である。これら図面を参照して、斜行センサ38による検出動作と、この検出動作に対応する角度調整機構10の制御動作についての一例を説明する。
【0037】
斜行センサ38は、発光部39aと、受光部39bを有するアナログセンサとを有して構成されている。本実施形態では、上下ヘッド枠6は、角度調整ヘッド枠9を間に挟んで上側になるようにフレームが延ばされて、このフレームに発光部39aが配置されている。プラテン30の裏面には、発光部39aから照射された光を受光するための受光部39bを有するアナログセンサが設けられている。斜行センサ38としてアナログセンサを用いることで、ロール紙Pの幅方向の端部の変動と、角度調整ヘッド枠9の変動に伴って生じる光量の変化を検出するように構成されている。
【0038】
まず、図5(a)に示したように、斜行センサ38の発光部39aから照射された光は、角度調整ヘッド枠9の端部によって光束の端部が遮断され、その下方に位置するロール紙Pの端部によって反対側の端部が遮断される。そして、この光が角度調整ヘッド枠9及びロール紙Pの幅方向の端部を通過して受光部39bで受光されることで、斜行センサ38は、角度調整ヘッド枠9及びロール紙Pによって狭めらた光の幅を検出する。
【0039】
この状態が給送動作の初期状態であるとすれば、給紙動作の初期、又はこの初期に生じた斜行状態が収束した後においてロール紙Pの搬送に伴って斜行して、ロール紙Pの幅方向の端部が図5中の矢印X1方向に移動した場合、図5(b)に示した状態に変位する。このとき、ロール紙Pの端部がX1方向に移動したことによって、角度調整ヘッド枠9とロール紙Pの端部を通り抜けて受光部39bに達する光量が減少するため、斜行センサ38からの出力が変化し、ロール紙Pの端部がX1方向に移動したことが検出される。この検出結果、すなわち斜行したロール紙Pの端部の変位量に基づいて、図5(c)に示したように、制御回路部(不図示)によって角度調整機構10を制御して、角度調整ヘッド枠9をX1方向に移動させる。そして、角度調整機構10は、斜行センサ38の受光部39bが受光する光量が、上述した初期状態の光量と同じになるように角度調整ヘッド枠9を移動させる。このように角度調整ヘッド枠9を駆動制御することで、ロール紙Pの搬送方向と直交する幅方向において、ロール紙Pの端部と角度調整ヘッド枠9とが常に同じ相対位置になるように制御される。すなわち、角度調整機構10によって、ロール紙Pの幅方向に対する記録ヘッド7の位置が調整される。
【0040】
同様に、ロール紙Pが搬送に伴って斜行して、ロール紙Pの幅方向の端部が矢印X2方向に移動した場合、図5(d)に示した状態になる。X2方向にロール紙Pが移動したとき、角度調整ヘッド枠9とロール紙Pの端部を通り抜けて受光部39bに達する光量が増加するので、斜行センサ38からの出力が変化し、ロール紙Pの端部がX2方向に移動したことが検出される。この検出結果に基づいて、図5(e)に示したように、制御回路部によって角度調整機構10を制御して、角度調整ヘッド枠9をX2方向に移動させて、受光部39bが受光する光量が、上述した初期状態の光量と同じになるように移動させる。その結果、ロール紙Pの幅方向の端部と角度調整ヘッド枠9とが常に一定の相対位置になるように制御され、ロール紙Pの幅方向に対する記録ヘッド7の位置が調整されるので、ロール紙Pに対するインクの着弾位置の精度が向上する。
【0041】
次に、ロール紙Pの斜行を制御する動作について、図1及び図3を参照して説明する。
【0042】
ループ検知フラグ29に対する搬送方向の下流側には、図1(a)及び図1(b)に示したように給送ローラ28が設けられており、上流側におけるループの影響によって搬送精度が劣化したり、ロール紙Pの斜行状態が不安定に発生したりすることを防いでいる。給送ローラ28の下流側には、ロール紙Pを幅方向に対して規制するとともに搬送方向に対してロール紙Pを回転させることでロール紙Pの斜行を矯正する斜行矯正手段としての斜行矯正機構が設けられている。この斜行矯正機構は、ロール紙Pを回転させる回転基準軸としての回転軸26aに回転自在に支持された、第1ローラ部材としての基準ローラ26を有している。また、この斜行矯正機構は、ロール紙Pを挟んで基準ローラ26に対向する位置にロール紙Pの幅方向に移動可能に配置された第2ローラ部材としての押付けローラ27を有している。さらに、斜行矯正機構は、押付けローラ27を押圧してロール紙Pを基準ローラ26に当接させる付勢手段としての押付けローラばね23を有している。
【0043】
ロール紙Pの幅方向の一端側に、基準ローラ26が配置されている。この基準ローラ26の回転軸26aは、軸方向が搬送方向及びロール紙Pの幅方向にそれぞれ直交する向きに配置されている。基準ローラ26は、ロール紙Pの幅方向に対して固定され、ロール紙Pの記録面に平行な面内において図3中の矢印B方向に回転可能に設けられている。つまり、基準ローラ26は、ロール紙Pが搬送方向に搬送されるのに伴って、B方向に回転可能に設けられている。
【0044】
また、ロール紙Pの幅方向の他端側には、ロール紙Pを間に挟んで基準ローラ26と対向する位置に、ロール紙Pの幅方向の一端側を基準ローラ26に押し付ける押付けローラ27が配置されている。この押付けローラ27は、基準ローラ26と同様に、回転軸27aの軸方向が搬送方向及びロール紙Pの幅方向にそれぞれ直交する向きに配置されており、ロール紙Pの幅方向に対して移動可能に支持されている。押付けローラ27は、押付けローラばね23の付勢力によってロール紙Pの一端側を基準ローラ26に押し付けている。
【0045】
そして、この押付けローラ27による押圧力に関しては、搬送ローラ31と従動ローラ32のニップ部によって、ロール紙Pに斜行を生じさせる、ロール紙Pの幅方向に作用する力よりも大きく設定されている。
【0046】
搬送ローラ31としては、搬送精度を向上させるために、金属材の表面にブラスト処理が施されたローラが用いられる。また、従動ローラ32としては、硬度75度程度のゴムローラを用いることで、搬送方向に対してロール紙Pを斜行させる方向に生じる力を減らし、ニップ圧を増やすことで搬送力を向上させる構成が採られている。また、これら搬送ローラ31及び従動ローラ32の下流側に位置する駆動ローラ33においても同様の構成が用いられている。
【0047】
したがって、ロール紙Pの給紙側において斜行方向が変動した場合には、図3(a)から図3(c)に示したように、ロール紙Pは基準ローラ26を回転中心として斜行方向が変動することになる。この構成において、ロール紙Pの斜行量を測定した結果を図2に示す。図2に示すように、給送動作の初期において、ロール紙Pには一定の周期をもって大きく斜行が発生する。これは、給紙動作の初期において、ロール紙Pが搬送ローラ31のニップ部に保持される際に、ロール紙Pの前端の幅方向が、搬送方向に直交する方向に対して位置ズレしており、その位置ズレの影響を受けるためである。
【0048】
その後、ロール紙Pは、押付けローラ27によって基準位置である基準ローラ26に押し付けられることによって、斜行状態が収束する。そして、ロール紙Pの斜行状態が収束した後も、ロール紙Pに一定の周期で斜行が発生しているのは、給送回転体22とロール紙Pとの取付精度や寸法精度に起因するためである。そのため、ロール紙Pの斜行の周期は給送回転体22の回転周期に同期している。これは、写真画像記録用の記録紙として200g/cm3程度の坪量を有する厚紙が用いられるためであり、上述した取付精度や寸法精度の影響を受けやすいためである。
【0049】
ここで上述した、角度調整ヘッド枠9を回転させる回転基準軸11と、ロール紙Pを回転させる基準ローラ26の回転軸26aとが、平面上において同一位置、つまり回転中心を一致させて配置されている。この構成によって、搬送方向に対して斜行したロール紙Pの幅方向の変位量に応じて、角度調整機構10が記録ヘッド7を回動させる動作と、斜行矯正機構の基準ローラ26によってロール紙Pを回転させる動作とを同期させて制御することが可能になる。このため、この構成によれば、ロール紙Pに対するインクの着弾位置の精度を更に向上させることができる。本実施形態では、回転中心である回転基準軸11から最も下流側に配置された記録ヘッド7の位置までの搬送方向における長さが300mm、回転基準軸11から角度調整機構10の駆動軸10aまでの搬送方向における長さが350mmと距離が比較的長い。また上述したように、角度調整機構10の角度調整範囲が、駆動軸10aの駆動量を±0.5mmで10μm単位で回転基準軸11回り制御することが可能である。そのため、記録動作中に角度調整機構10によって角度を変動させた場合であっても、ロール紙Pに記録される画像に影響することはない。したがって、記録ヘッド7のノズル列間で着弾位置がずれる要因である長周期で生じる、ロール紙Pの幅方向の位置ズレを、記録動作中に角度調整機構10によってアクティブに制御することで、20μm以下に抑えることができた。
【0050】
上述したように本実施形態では、ロール紙Pが斜行したときの、ロール紙Pの幅方向に変位したロール紙Pと記録ヘッド7の相対位置の変位量に応じて、記録ヘッド7をロール紙Pに対して相対的に回転させるように構成されている。この構成によって、本実施形態は、ロール紙Pに対するインクの着弾位置の精度を向上することが可能になり、ロール紙Pの記録品位の向上を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、ロール紙Pを回転させる基準ローラ26の回転中心と、記録ヘッド7を回転させる角度調整機構10の回転基準軸11の回転中心とを同一平面上で一致させることで、インクの着弾位置の精度を更に向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、ロール紙Pの幅方向に沿って複数のノズルが配列された長尺状の記録ヘッド7を用いることで、1分間当たりの記録枚数が30枚から100枚程度の高速なフルカラー高画質の記録を行うことが可能になる。
【0053】
また、本実施形態では、斜行センサ38の位置が、基準ローラ26の回転軸26a及び記録ヘッド7よりも下流に配置されている。この構成によって、本実施形態は、ロール紙Pの幅方向の変位量に応じて記録ヘッド7の微小な回転制御を行うことが可能になり、ロール紙Pに対するインクの着弾位置の精度を向上することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、他の実施形態として、ロール紙Pの斜行を制御するために斜送ローラを備えた構成例について、図6(a)から図6(c)を参照して説明する。
【0055】
図6(a)に示すように、ループ検知フラグ29に対してロール紙Pの搬送方向の下流側には、回転軸の軸方向が搬送方向に対して所定の角度で傾けて配置された斜送ローラ40が設けられている。また、この斜送ローラ40は、基準ローラ26の上流側に配置されている。斜送ローラ40は、上流側におけるループの影響によって搬送精度が劣化したり、ロール紙Pに斜行が不安定に発生することを防ぎながら、ロール紙Pを搬送方向に対して傾斜した方向に搬送している。本実施形態では、斜送ローラ40の回転軸の軸方向が、ロール紙Pの幅方向から搬送方向の下流側に向けて7度程度の傾斜角で傾けて配置されている。これによって、斜送ローラ40は、基準ローラ26が配置されているロール紙Pの幅方向の一端側に向けてロール紙Pを傾けて搬送するように構成されている。
【0056】
斜送ローラ40の下流側の、ロール紙Pの幅方向の一端側に配置されている基準ローラ26は、ロール紙Pの幅方向に対して固定されている。基準ローラ26は、斜送ローラ40から搬送されてきたロール紙Pの斜行方向を矯正しながら回転することで、ロール紙Pに作用する摩擦力を抑えて、ロール紙Pを搬送ローラ31に搬送するように構成されている。
【0057】
このように構成することによって、常に搬送ローラ31の上流側で基準ローラ26に一定の力で押さえ付けることが可能になる。したがって、搬送ローラ31や給送回転体22の影響によってロール紙Pの斜行方向に変動を受けた場合であっても、ロール紙Pの一端側が基準ローラ26に常に押し付けられるので、ロール紙Pは常に基準ローラ26を回転中心として斜行状態が矯正される。このように斜送ローラ40を備える搬送機構部の構成と、上述した角度調整ヘッド枠9を回動する角度調整機構10とを用いて、記録動作中にアクティブに回転制御を行うことで、ロール紙Pに対するインクの着弾位置の精度を更に向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態の画像形成装置を示す図である。
【図2】本実施形態において、ロール紙の搬送時に発生した斜行量を測定した結果を示す図である。
【図3】本実施形態における搬送機構部を示す平面図である。
【図4】本実施形態における角度調整機構の動作を説明するための平面図である。
【図5】本実施形態における斜行センサを、搬送方向と直交する平面で切断して示す断面図である。
【図6】第2の実施形態における搬送機構部を示す平面図である。
【図7】従来の画像形成装置を示す断面図である。
【図8】従来の画像形成装置の搬送機構部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0059】
P 記録紙
1 記録装置
7(7K,7C,7M,7Y) 記録ヘッド(記録手段)
9 角度調整ヘッド枠
10 角度調整機構(回転手段)
10a 駆動軸
11 回転基準軸
26 基準ローラ(斜行矯正手段の第1ローラ部材)
26a 回転軸(回転基準軸)
27 押付けローラ(斜行矯正手段の第2ローラ部材)
31 搬送ローラ(搬送手段)
32 従動ローラ(搬送手段)
38 斜行センサ(検出手段)
40 斜送ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材に記録手段からインクを吐出して記録を行う記録装置において、
連続して給送されるロール状の前記被記録材を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による搬送方向に並べられた複数の前記記録手段と、
前記被記録材が前記搬送方向に対して斜行したときの、前記搬送方向と直交する幅方向に変位した前記被記録材と前記記録手段との相対位置の変位量を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記変位量に基づいて、前記記録手段を前記被記録材に対して相対的に回転させる回転手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録手段の上流に配置され、前記被記録材を前記幅方向に対して規制するとともに前記搬送方向に対して前記被記録材を回転させる回転基準軸を有する斜行矯正手段を備え、
前記回転手段は、複数の前記記録手段を一体的に前記回転基準軸を回転中心として回転させる、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記斜行矯正手段は、
前記被記録材の幅方向の一端側に、前記幅方向に対して固定された前記回転基準軸に回転自在に支持された第1ローラ部材と、
前記被記録材を挟んで前記第1ローラ部材に対向する位置に前記被記録材の幅方向に移動可能に配置された第2ローラ部材と、
前記第2ローラ部材を押圧して前記被記録材を前記第1ローラ部材に当接させる付勢手段と、
を有する、請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録手段は、前記被記録材の幅方向に沿って複数のノズルが配列されている記録ヘッドである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記回転基準軸及び前記記録手段の位置よりも下流に配置されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記斜行矯正手段に対する前記搬送方向の上流側には、前記被記録材を前記搬送方向に対して傾斜させて前記斜行矯正手段の前記回転基準軸に向けて前記被記録材を搬送する斜送ローラが設けられている、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
被記録材に記録手段からインクを吐出して記録を行う記録動作中に、前記被記録材が搬送方向に対して斜行したときの、前記搬送方向に直交する幅方向に変位した前記被記録材と前記記録手段との相対位置の変位量を検出し、該変位量に基づいて前記記録手段を前記被記録材に対して回転させる記録方法。
【請求項8】
前記記録手段の回転中心に対して、斜行した前記被記録材を回転させる、請求項7に記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−142969(P2010−142969A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319632(P2008−319632)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】