説明

記録装置及び記録装置の記録データ格納方法

【課題】 1回の走査で記録可能なデータ量未満の容量の記録バッファを有する記録装置において、記録バッファを有効に利用する。
【解決手段】 記録に使用する色毎に所定方向に配列された記録素子列を有する記録ヘッドを有し、容量が1回の走査で記録可能なデータ量未満であり、記録素子列の構成に合わせた形式の記録データを格納する記録バッファ401を備える記録装置において、記録バッファを所定のサイズ毎に複数の領域410〜489に分割し、走査方向に沿って各色の記録データを所定のサイズに分割し、該所定のサイズ内に有効な記録データがある場合にのみ領域に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及び記録装置の記録データ格納方法に関し、より詳細には、記録に使用する色毎に所定方向に配列された記録素子列を有する記録ヘッドを搭載したキャリッジを、記録素子の配列方向と交差する方向に記録媒体に対して走査させて記録を行い、容量が1回の走査で記録可能なデータ量未満であり、記録素子列の構成に合わせた形式の記録データを格納する記録バッファを備える記録装置における、記録データの格納処理に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、低騒音、低コスト、低ランニングコストであり、かつ装置の小型化が容易であるため、一般的なプリンタ装置や複写機等において広く利用されている。
【0003】
このうちシリアル式のインクジェット記録装置は、記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させ、画像を記録する毎にその記録幅(副走査方向の長さ)に応じた長さだけ副走査方向に記録紙を搬送させ、このような動作を繰り返して1頁の記録を行う記録装置である。
【0004】
このような記録装置では、少なくとも1回の走査で記録する記録データの全てをメモリ(記録バッファ)に格納し、1回の走査で記録すべき記録データの全てが確定され記録バッファに格納された後に、記録ヘッドの走査を開始するように制御するのが一般的である。このため、高価なメモリを多く必要とし、装置のコストが高くなってしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1(特開昭58−146929号公報)には、1回の走査で記録するデータ量よりもメモリ容量が少ないメモリを記録バッファとして使用する記録装置が提案されており、該文献には、記録データを格納したプリントバッファのアドレスを管理して、そのプリントバッファに格納された記録データに基づいて記録を行う技術が記載されている。
【0006】
このような記録装置では、記録データを格納するメモリを、1回の走査で記録するデータ量を所定数で分割したサイズを単位として管理しており、インクの色毎には管理していない。
【特許文献1】特開昭58−146929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、記録装置に搭載されている記録ヘッドの1回の走査分のデータを上位装置で展開する場合、記録対象の画像に存在しない色についてもイメージデータとして、データがないことを示す“NULL”データを生成しなければならず、データの転送効率が低下する。
【0008】
また、記録装置に搭載されているメモリも記録装置に搭載されている記録ヘッドと同一の構成をとっているため、データの記録の有無に関わらず、メモリは必要となり、メモリの無駄が発生する。
【0009】
これは記録装置に搭載されている記録ヘッドの1回の走査分に満たないメモリで構成されている記録装置でも同様で、対象色にデータが存在しない場合でもデータ格納手段が割り当てられている。
【0010】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであり、1回の走査で記録可能なデータ量未満の容量の記録バッファを有する記録装置において、記録バッファを有効に利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の一態様としての記録装置は、記録に使用する色毎に所定方向に配列された記録素子列を有する記録ヘッドを搭載したキャリッジを、前記記録素子の配列方向と交差する方向に記録媒体に対して走査させて記録を行う記録装置であって、
容量が1回の走査で記録可能なデータ量未満であり、前記記録素子列の構成に合わせた形式の記録データを格納する記録バッファと、
前記記録バッファを所定のサイズ毎に複数の領域に分割し、走査方向に沿って各色の記録データを前記所定のサイズに分割し、該所定のサイズ内に有効な記録データがある場合にのみ前記領域に格納する分割格納手段と、を備えている。
【0012】
すなわち、本発明では、記録に使用する色毎に所定方向に配列された記録素子列を有する記録ヘッドを搭載したキャリッジを、記録素子の配列方向と交差する方向に記録媒体に対して走査させて記録を行い、容量が1回の走査で記録可能なデータ量未満であり、記録素子列の構成に合わせた形式の記録データを格納する記録バッファを備える記録装置において、記録バッファを所定のサイズ毎に複数の領域に分割し、走査方向に沿って各色の記録データを所定のサイズに分割し、該所定のサイズ内に有効な記録データがある場合にのみ領域に格納する。
【0013】
このようにすると、1回の走査で記録可能なデータ量よりも容量が小さい記録バッファを備える構成において、走査方向に分割した所定サイズの各色の記録データ内に有効なデータがない場合には領域への格納を行なわないので、データ格納処理が簡略化されると共に記録バッファの容量を有効に使用することができる。
【0014】
なお、記録に使用される記録素子の数が異なる複数の記録モードを有している場合でも、複数の記録モードに対して所定のサイズを一定として、1つの領域に対応した走査方向の長さを記録モードによって変更するようにすると、領域の管理が常に一定となるので好ましい。
【0015】
走査開始のタイミングとしては、複数の領域のうち所定数の領域内に記録データが格納されたとき、あるいは1回の走査で記録すべき記録データが格納されたときのいずれか早いタイミングとするのがよい。
【0016】
分割格納手段は、各領域に格納された記録データが記録に使用された後に該領域を開放して、複数の領域を循環的に使用する、いわゆるリングバッファとして記録バッファを使用するのがよい。
【0017】
記録ヘッドの構成としては、各色の記録素子列に含まれる記録素子の数が等しいのが好ましく、記録方式としては、各記録素子からインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録方式に適用すると好適である。
【0018】
複数の領域を管理する管理手段を備え、管理手段が、複数の領域のうちの先頭領域の先頭アドレスを保持するレジスタと、複数の領域のうちの最終領域の先頭アドレスを保持するレジスタを有していてもよい。
【0019】
また、上記の目的は、上述の記録装置に対応した記録装置の記録データ格納方法、該記録データ格納方法をコンピュータ装置によって実行させるコンピュータプログラム、及び該コンピュータプログラムを格納した記憶媒体によっても達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、1回の走査で記録可能なデータ量よりも容量が小さい記録バッファを備える構成において、走査方向に分割した所定サイズの各色の記録データ内に有効なデータがない場合には領域への格納を行なわないので、データ格納処理が簡略化されると共に記録バッファの容量を有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
尚、以下で説明する実施形態では、インクジェット記録装置を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、記録ヘッドを記録媒体に対して走査させて記録を行う記録装置であれば、例えば、サーマルプリンタ、ワイヤドットプリンタなどの他の方式の記録装置にも適用できる。
【0023】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0024】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0025】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0026】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0027】
また、本明細書において「格納」とは「記憶」と同様に、メモリ領域にデータを書き込む、あるいは転送する処理を表している。
【0028】
<記録装置の概略説明(図1)>
図1は本発明の代表的な実施形態であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【0029】
図1に示すように、インクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なう記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2にキャリッジモータM1によって発生する駆動力を伝達機構4より伝え、キャリッジ2を矢印A方向に往復移動させるとともに、例えば、記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行なう。
【0030】
また、記録ヘッド3の状態を良好に維持するためにキャリッジ2を回復装置10の位置まで移動させ、間欠的に記録ヘッド3の吐出回復処理を行う。
【0031】
記録装置1のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するインクカートリッジ6を装着する。インクカートリッジ6はキャリッジ2に対して着脱自在になっている。
【0032】
図1に示した記録装置はカラー記録が可能であり、そのためにキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジを搭載している。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
【0033】
さて、キャリッジ2と記録ヘッド3とは、両部材の接合面が適正に接触されて所要の電気的接続を達成維持できるようになっている。記録ヘッド3は、記録信号に応じてエネルギーを印加することにより、複数の吐出口からインクを選択的に吐出して記録する。特に、この実施形態の記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用し、熱エネルギーを発生するために電気熱変換体を備え、その電気熱変換体に印加される電気エネルギーが熱エネルギーへと変換され、その熱エネルギーをインクに与えることにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させる。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。
【0034】
図1に示されているように、キャリッジ2はキャリッジモータM1の駆動力を伝達する伝達機構4の駆動ベルト7の一部に連結されており、ガイドシャフト13に沿って矢印A方向に摺動自在に案内支持されるようになっている。従って、キャリッジ2は、キャリッジモータM1の正転及び逆転によってガイドシャフト13に沿って往復移動する。また、キャリッジ2の移動方向(矢印A方向)に沿ってキャリッジ2の絶対位置を示すためのスケール8が備えられている。この実施形態では、スケール8は透明なPETフィルムに必要なピッチで黒色のバーを印刷したものを用いており、その一方はシャーシ9に固着され、他方は板バネ(不図示)で支持されている。
【0035】
また、記録装置1には、記録ヘッド3の吐出口(不図示)が形成された吐出口面に対向してプラテン(不図示)が設けられており、キャリッジモータM1の駆動力によって記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2が往復移動されると同時に、記録ヘッド3に記録信号を与えてインクを吐出することによって、プラテン上に搬送された記録媒体Pの全幅にわたって記録が行われる。
【0036】
さらに、図1において、14は記録媒体Pを搬送するために搬送モータ(不図示)によって駆動される搬送ローラ、15はバネ(不図示)により記録媒体Pを搬送ローラ14に当接するピンチローラ、16はピンチローラ15を回転自在に支持するピンチローラホルダ、17は搬送ローラ14の一端に固着された搬送ローラギアである。そして、搬送ローラギア17に中間ギア(不図示)を介して伝達された搬送モータの回転により、搬送ローラ14が駆動される。
【0037】
またさらに、20は記録ヘッド3によって画像が形成された記録媒体Pを記録装置外ヘ排出するための排出ローラであり、搬送モータの回転が伝達されることで駆動されるようになっている。なお、排出ローラ20は記録媒体Pをバネ(不図示)により圧接する拍車ローラ(不図示)により当接する。22は拍車ローラを回転自在に支持する拍車ホルダである。
【0038】
またさらに、記録装置には、図1に示されているように、記録ヘッド3を搭載するキャリッジ2の記録動作のための往復運動の範囲外(記録領域外)の所望位置(例えば、ホームポジションに対応する位置)に、記録ヘッド3の吐出不良を回復するための回復装置10が配設されている。
【0039】
回復装置10は、記録ヘッド3の吐出口面をキャッピングするキャッピング機構11と記録ヘッド3の吐出口面をクリーニングするワイピング機構12を備えており、キャッピング機構11による吐出口面のキャッピングに連動して回復装置内の吸引手段(吸引ポンプ等)により吐出口からインクを強制的に排出させ、それによって、記録ヘッド3のインク流路内の粘度の増したインクや気泡等を除去するなどの吐出回復処理を行う。
【0040】
また、非記録動作時等には、記録ヘッド3の吐出口面をキャッピング機構11によるキャッピングすることによって、記録ヘッド3を保護するとともにインクの蒸発や乾燥を防止することができる。一方、ワイピング機構12はキャッピング機構11の近傍に配され、記録ヘッド3の吐出口面に付着したインク液滴を拭き取るようになっている。
【0041】
これらキャッピング機構11及びワイピング機構12により、記録ヘッド3のインク吐出状態を正常に保つことが可能となっている。
【0042】
<記録装置の制御構成(図2)>
図2は、図1に示したインクジェット記録装置の概略制御構成を示すブロック図である。
【0043】
CPU101は、ホスト機器から送信されたラスタ形式の画像データからの記録データの生成、記録制御のためのモータ駆動に関する命令、記録ヘッドの吐出タイミングの制御、ホスト機器から転送されたコマンドやデータの解析、表示・SW手段112からのユーザの入力に応じた各種設定などを行う。
【0044】
本実施形態ではこれらに加え、プログラム更新時のプログラムデータの解析、フラッシュROM110に対する書き込み、また、システムの起動時においては、フラッシュROM110からのプログラムの読み出しや訂正用RAM111への書き込み、その後、RAM103に格納されている関数とグローバル変数のアドレステーブルの更新をCPU101が行なう。
【0045】
ROM102には、記録装置を駆動するための制御プログラム、各種固定データ(モータの駆動テーブル等)、フォントデータ等が格納されている。ROM102に格納された制御プログラムはCPU101によって読み出されて実行される。各種固定データはそのまま初期値として使用されるものと、RAM103に展開されCPUにより加工されて使用されるものとがある。本実施形態では、ROM103には書き換え不能なマスクROMが使用されているので、読み出し専用である。
【0046】
RAM103は、CPU101によって読み込まれたラスタ形式の画像データを記録位置(印字位置)と対応する記録ヘッドの駆動データに展開された記録データを格納する記録バッファとして使用される。更にRAM103は、プログラム実行に必要なワークメモリ、及びインターフェース(I/F)104から入力データの一時格納場所としての受信バッファとしても使用される。
【0047】
なお、画像データから記録データへの変換は、記録装置側(のCPU)で行なっても、ホスト機器(のプリンタドライバ)で行なってもよい。
【0048】
I/F104は、不図示のホスト装置と接続され、記録すべき画像のデータや各種制御コマンド、及びダウンロードされるプログラムデータ等のデータを受信する。本実施形態のI/F104は、USBの規格に準拠した電気的仕様を備えており、ホスト装置からのデータだけでなく、プリンタの状態をホストに転送するため、双方向の通信が可能となっている。
【0049】
EEPROM105には、プリンタの設定状態の情報が格納されているだけでなく、その他、記録枚数、インク残量などの情報も格納されている。プリンタの状態としては、対応用紙、自動電源ON/OFFなどの機能項目、などの情報が格納されている。
【0050】
モータコントローラ106は、本実施形態のプリンタにおいては、主走査方向に記録ヘッドを移動(走査)させるキャリッジモータと、記録ヘッドの1回、又は複数回の走査毎に記録媒体を搬送させる搬送モータとを制御する。モータコントローラ106に対する制御はCPU101が行い、記録はキャリッジモータの等速域と加減速領域を使用して行われる。
【0051】
記録ヘッドコントローラ107は、記録ヘッドの駆動を制御すべく、記録ヘッドに対してクロック信号、記録データ、駆動タイミングを規定する信号(駆動パルス)等を供給する。
【0052】
フラッシュROM110は、電気的に書き換え可能な不揮発性の記憶媒体であり、ファームウエアなどが格納される。訂正用RAM111には、フラッシュROM110に格納されたプログラムを訂正・変更する際にホスト機器等からダウンロードされたプログラムが一時的に格納される。
【0053】
また、表示・SW手段112は、ユーザが記録装置に対する指示を入力するための操作スイッチや、ユーザに装置の状態等を通知するための表示パネル等を含んでいる。
【0054】
バスライン109は、データを転送するためのデータ及びアドレスバスである。CPU101は109バスラインを介して、102から111までの各ユニットを制御する。
【0055】
<記録データの格納方法>
図3は、本実施形態の記録装置において、記録ヘッドが1回の走査で記録するスキャンに必要なメモリ容量と、実際の記録バッファの様子を示した図である。
【0056】
301は1スキャンに必要なメモリ量の総数であり、本実施形態では、主走査方向の解像度が600dpi、記録可能な用紙の幅がA4サイズの210mm(約8インチ)、記録ヘッドの各色のノズル数が128、色数が4であるため、1回の走査で記録するデータ量は、
600×8×128×4÷8=307200(バイト)≒300K(バイト)
となり、1回の走査で記録するデータを格納するためには、300Kバイトのメモリ容量が必要になる。
【0057】
図3において、301は1回の走査に必要な容量300Kバイトのメモリ領域を表し、310〜389までは分割されたメモリブロックを表している。主走査方向には128ドットの幅でメモリ領域301を38分割しており、副走査方向には各色のノズル高さ、すなわち、128ノズル分の高さで分割している。このため、310〜389で示す各メモリブロックのサイズは、128×128÷8=2Kバイト、となっている。
【0058】
図3の例では、記録データの有無に関わらず、メモリブロックを各色ごとに順に割り当てており、80個のメモリブロックで走査方向に20ブロック分(2560ドット)の記録データが格納されている。
【0059】
図4は、本実施形態で実際の記録実行時における記録バッファに格納された記録データの様子を示しており、401は図3と同様に1回の走査での記録に必要なメモリ容量(300Kバイト)、410〜489は図3と同様なサイズのメモリブロックを示している。
【0060】
本実施形態の記録装置では、記録バッファとして使用できるメモリ容量は160Kバイトであり、これはメモリブロック80個分に相当する。
【0061】
本実施形態では、対象となる色のデータが無い場合にはメモリブロックは割り当てられない。このため、図3に示した例と図4に示した例とを比較すると、図3では80個のメモリブロックを用いて走査方向に20ブロック(2560ドット)分の記録データが格納されているが、図4では、同じ80個のメモリブロックを用いて走査方向に25ブロック(3200ドット)分の記録データが格納されている。
【0062】
そして、実際の記録(走査)は、80個のメモリブロックのうち、所定数のメモリブロック、例えば、64個のメモリブロックに記録データが格納されたとき、あるいは1回の走査での記録データ全てが格納されたときのいずれか早いタイミングで開始される。
【0063】
図5は、本実施形態における分割されたメモリブロックの管理方法を説明する図である。2Kバイト単位に分割されたメモリブロックは総数80個あり、(a)ではそれぞれを510〜589で示している。各メモリブロックは、リング構造で管理されている。
【0064】
(b)は、メモリブロックを管理するためのレジスタを示しており、501には先頭ブロックの先頭アドレスが格納され、502には最終ブロックの先頭アドレスが格納される。各メモリブロックの先頭アドレスには次ブロックの先頭アドレスが順次格納されており、最終のメモリブロックには、NULLデータが格納されている。
【0065】
なお、これら2つのレジスタ501及び502は、RAM103内の所定の領域に確保されるか、CPU101内の所定のレジスタであってもよい。
【0066】
以下、これら2つのレジスタを用いたメモリブロックの取得及び開放の際の処理について、図7A及び7Bのフローチャートをそれぞれ参照して説明する。
【0067】
メモリブロックを取得する際の処理は、図7Aに示されているように、最初にレジスタ501の値を読み取り、メモリブロックの先頭アドレスを取得する(ステップS501)。取得した先頭アドレスの値がNULLデータ以外であるか否かを判定し(ステップS702)、NULLデータである場合には、メモリブロックの取得は出来ず、待ち状態となる。
【0068】
一方、ステップS702でNULLデータ以外であると判定された場合には、取得したメモリブロックの先頭アドレスに格納されている、次のメモリブロックの先頭アドレスをレジスタ501に書き込む(ステップS703)。
【0069】
次のメモリブロックの先頭アドレスがNULLデータである、すなわち、最終のメモリブロックであるか否かを判定し(ステップS704)、最終のメモリブロックである場合には、最終ブロックレジスタ502にNULLデータを格納する(ステップS705)。
【0070】
最後に、次のメモリブロックの先頭アドレスをレジスタ501に格納する(ステップS706)。この場合、次のメモリブロックが最終メモリブロックであると、レジスタ501及び502の両方にNULLデータが格納されることとなる。以上のようにしてメモリブロックの取得処理は終了する。
【0071】
また、メモリブロック内に格納された記録データが実際の記録に使用された後に該メモリブロックを開放する際の処理は、図7Bに示されているように、最初に最終ブロックレジスタ502の値を読み取り、最終メモリブロックを探す(ステップS711)。レジスタ502の値がNULLデータ以外であるか否かを判定し(ステップS712)、NULLデータである場合には、先頭ブロックレジスタ501と最終ブロックレジスタ502の両方に、開放するメモリブロックの先頭アドレスを格納する(ステップS713)。
【0072】
一方、ステップS712で最終ブロックレジスタ502の値がNULLデータ以外であると判定された場合は、読み取った最終メモリブロックの先頭アドレスに開放するメモリブロックの先頭アドレスを格納し(ステップS714)、最終ブロックレジスタ502に開放するメモリブロックの先頭アドレスを格納する(ステップS715)。
【0073】
最後に、開放するメモリブロックの先頭アドレスにNULLデータを格納し(ステップS716)、メモリブロックの開放処理を終了する。
【0074】
このように本実施形態では、走査方向に分割した領域毎に、各色(記録ヘッド)の記録データが有るときにのみメモリブロックを割り当てるようにする。これは、例えば、写真などの自然画像においても、4種類の色(インク)を全て使用する部分はそれほど多くなく、128×128ドット程度の小さな部分に分割すると、1つ又は2つの色だけで記録される部分が多いことに着目したものである。DTPなどの文字が混在する文書においては文字を記録する色(黒)のみで記録される部分が更に多くなる。本発明ではこのような記録画像の特性に着目して、記録バッファの容量を有効に使用する。
【0075】
[変形例]
図6を参照して、1回の走査で使用する記録ヘッドのノズル数が異なる場合について説明する。
【0076】
上記の実施形態では1回の走査で記録ヘッドの128個のノズルを使用して記録を行うものとして説明したが、例えば、2回の走査で1回の走査での記録幅の領域を記録する、いわゆる2パスのマルチパス記録を行なう場合、1回の走査で使用するノズル数は半分の64個となる。
【0077】
このような場合、従来の用に記録領域毎にメモリブロックを割り当てると、各メモリブロックの容量の半分が使用されず無駄となってしまう。本発明ではこのような場合、メモリブロックのサイズを変更せずに、1つのメモリブロックでカバーする走査方向の長さを2倍に変更する。すなわち、通常の記録モードでは走査方向に38分割していたが、2パス記録では分割数を19に変更し、走査方向のブロックサイズを256ドットに変更する。
【0078】
図6の(a)は上記実施形態でのメモリブロック601を表し、(b)は本変形例でのメモリブロック602を表している。図示されたように、メモリブロック601のサイズは、128×128(ドット)であり、メモリブロック602のサイズは、64×256(ドット)である。
【0079】
以上のようにして、1回の走査で使用される記録ヘッドのノズル数が変化した場合にも、メモリブロックのサイズを固定サイズとして、記録バッファの管理を容易にしている。
【0080】
[その他の実施形態]
上記の実施形態においては、各記録ヘッドが128個のノズルを有し、メモリブロックのサイズを128×128(ドット)の2Kバイトとした構成を例に挙げて説明したが、本発明は使用される記録ヘッドのノズル数や、メモリブロックのサイズに依存することなく適用することが可能であり、同様の効果が得られる。
【0081】
また、上記実施形態ではインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は記録ヘッドを記録媒体に対して走査させて記録を行なう構成であれば、インクジェット方式以外の他の記録方式に従って記録を行なう記録装置にも適用できる。
【0082】
本発明は、複数の機器から構成される記録システムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる記録装置に適用しても良い。
【0083】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(本実施形態では図7A及び図7Bに示すフローチャートに対応したプログラム)を、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。その場合、プログラムの機能を有していれば、形態は、プログラムである必要はない。
【0084】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明のクレームでは、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0085】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0086】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0087】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのサイトに接続し、該サイトから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるサイトからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範囲に含まれるものである。
【0088】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してサイトから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0089】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0090】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る記録装置の実施形態の構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1の記録装置の制御構成を示す概略ブロック図である。
【図3】1回の走査で必要な記録バッファの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における記録バッファへの記録データの格納状態を示す図である。
【図5】図4のメモリブロックの管理方法を説明する図である。
【図6】メモリブロックの変形例を示す図である。
【図7A】メモリブロック取得処理のフローチャートである。
【図7B】メモリブロック開放処理のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録に使用する色毎に所定方向に配列された記録素子列を有する記録ヘッドを搭載したキャリッジを、前記記録素子の配列方向と交差する方向に記録媒体に対して走査させて記録を行う記録装置であって、
容量が1回の走査で記録可能なデータ量未満であり、前記記録素子列の構成に合わせた形式の記録データを格納する記録バッファと、
前記記録バッファを所定のサイズ毎に複数の領域に分割し、走査方向に沿って各色の記録データを前記所定のサイズに分割し、該所定のサイズ内に有効な記録データがある場合にのみ前記領域に格納する分割格納手段と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
記録に使用される記録素子の数が異なる複数の記録モードを有し、前記複数の記録モードに対して前記所定のサイズが一定であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記複数の領域のうち所定数の領域内に前記記録データが格納されたとき、あるいは1回の走査で記録すべき記録データが格納されたときのいずれか早いタイミングで走査を開始させる走査開始手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記分割格納手段は、各領域に格納された記録データが記録に使用された後に該領域を開放して、前記複数の領域を循環的に使用することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
各色の記録素子列に含まれる記録素子の数が等しいことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記複数の領域を管理する管理手段を備え、
前記管理手段は、前記複数の領域のうちの先頭領域の先頭アドレスを保持するレジスタと、前記複数の領域のうちの最終領域の先頭アドレスを保持するレジスタを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
記録に使用する色毎に所定方向に配列された記録素子列を有する記録ヘッドを搭載したキャリッジを、前記記録素子の配列方向と交差する方向に記録媒体に対して走査させて記録を行い、容量が1回の走査で記録可能なデータ量未満であり、前記記録素子列の構成に合わせた形式の記録データを格納する記録バッファを備える記録装置の記録データ格納方法であって、
前記記録バッファを所定のサイズ毎に複数の領域に分割し、
走査方向に沿って各色の記録データを前記所定のサイズに分割し、
該所定のサイズ内に有効な記録データがある場合にのみ前記領域に格納することを特徴とする記録装置の記録データ格納方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2006−15557(P2006−15557A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194298(P2004−194298)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】