説明

記録装置

【課題】処理液塗布の有無を選択可能でありながら独立した搬送経路の切り替えを必要とせず、画像記録と塗布動作の異なる動作を同一駆動源が実現でき、装置本体の大型化を招くことなく複数の搬送経路を設けることができ、搬送経路を増やすことなく記録媒体の両面の塗布記録を実現できる記録装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に記録に先立って画質向上のための処理液を塗布する塗布手段を備えた記録装置において、記録部から逆搬送される記録媒体13を再び記録部へ搬送するための逆搬送経路28、24を設け、塗布手段52、53を逆搬送経路内の記録媒体に処理液を塗布できる位置に配置して記録媒体の両面に塗布ありで記録できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録に先立って画質向上のための処理液を塗布する塗布手段を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像情報に基づいて記録用紙等の記録媒体に画像を形成する記録装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等として数多く使用されている。記録装置の記録方式にも種々の方式があり、中でも、記録ヘッドの吐出口からインクを吐出して記録するインクジェット記録方式は、被プリント材である紙や布、不繊布、OHP用紙、シート材などの記録媒体に直接インクを付着させる低騒音でノンインパクトな記録方式である。このような方式のインクジェット記録ヘッドを用いた記録装置は高密度かつ高速な記録動作が可能である。
【0003】
しかし、従来のインクジェット記録に用いられるインクの組成は、一般に、主成分である水と、乾燥防止や目詰まり防止等の効果を示すグリコール等の水溶性高沸点溶剤とから構成されている。このようなインクを用いて普通紙に記録を行う場合、インクの定着性が不十分であったり、普通紙表面の填料やサイズ剤の不均一な分布によるものと思われる不均一な画像形成が発生することがある。カラー画像を得る場合には、定着の前に複数色のインクを次々と重ね打ちすることから、異なった色の画像の境界部分で色が滲んだり、不均一に混ざり合ったりし、満足すべき画像を記録することが困難であった。
【0004】
このような課題を解決するために、記録に先立って記録媒体に画像を良好に形成するための処理液を塗布することが行われている。例えば、特許文献1には、記録媒体に多価金属塩溶液を適用した後にインク組成物を適用することで良好な画像を得る方法が開示されている。この場合のインク組成物としては、少なくとも一つのカルボキシル基を有する少なくともひとつの化学染料剤を含むインク組成物が使用されている。特許文献2にも、良好な画像を得るための画像形成方法において使用される処理液及びインク組成物が開示されている。また、これらの特許文献1及び2には、実施例として、インクジェット記録ヘッドによる記録に先立って処理液をローラを用いて記録媒体に塗布する構成が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2のように処理液の塗布とインクジェット記録とを連動させる方法では、画像形成時に記録媒体をピッチ送りする際に、搬送停止中の塗布量が過多となって塗布むらが生じることがあり、また、多種類の記録媒体を搬送する場合には処理液を必要としない記録媒体にも塗布が行われるといった不都合があった。これらの課題を解決する手段として、特許文献3には、処理液の塗布工程とその後の画像記録工程の動作を独立した別工程にするために、処理液塗布のための塗布ローラの駆動と画像記録のための搬送ローラの駆動とを独立に行う方式が開示されている。特許文献4には、処理液を必要としない記録媒体のために、塗布の有無に応じて選択可能な独立した搬送経路を設けた記録装置が開示されている。さらに、特許文献5には、記録媒体の先端から特定領域に表裏両面ともに処理液を塗布する構成の記録装置が開示されている。
【0006】
図6は従来の記録装置の構成例を示す縦断面図である。図6において、記録装置100には、給紙ローラ72により給送される記録媒体71の搬送経路を給紙直後に切り替えるための切り替え爪88が設けられている。切り替え爪により、塗布工程を有する搬送経路Aと塗布なしの搬送経路Bに分けられる。搬送経路A中には、汲み上げローラ83、84により汲み上げられる処理液82を塗布ローラ85に転写し、塗布ローラ上の処理液を記録媒体に塗布するように構成された塗布手段が配設されている。図6のような構成においては、搬送経路A又はBを通過した記録媒体は、処理液の塗布の有無に関わらず補助ローラ73を通過し、次いで搬送ローラ対91、92に挟持されることで記録部を通して搬送される。
【0007】
この搬送される記録媒体に対しては、搬送ローラ対91、92と排紙ローラ対98、98との間で、キャリッジ95に搭載された記録ヘッド96により画像記録が行われる。インクジェット記録装置の場合は、画像情報に基づいて記録ヘッドの吐出面に形成された複数の吐出口(吐出口列)からインクを吐出することで画像が記録される。
【特許文献1】特開平5−202328号公報
【特許文献2】特開昭61−75870号公報
【特許文献3】特開2002−103583号公報
【特許文献4】特開2002−137378号公報
【特許文献5】特開2001−334642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように処理液塗布の有無を選択可能とするために複数の搬送経路を設ける構成では、装置本体の大型化を招き、処理液の有無選択可能にするための切り替え爪を設けることで構成が煩雑になるという課題があった。
また、搬送ローラと塗布ローラが連動するため、画像形成時の搬送ローラの間欠送り動作に塗布ローラが追従することで塗布ムラが発生しやすいという課題があった。この課題を解決するために搬送ローラと塗布ローラを独立に駆動する方法も考えられるが、これではかえって装置の大型化とコストアップを招いてしまうことになる。
また、複数の搬送経路を設けたうえに記録媒体の両面に塗布及び記録を行うための反転経路を設けることは、装置のさらなる大型化を招くことになる。
【0009】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、処理液塗布の有無を選択可能でありながら独立した搬送経路の切り替えを必要とせず、画像記録と塗布動作の異なる動作を同一駆動源が実現でき、装置本体の大型化を招くことなく複数の搬送経路を設けることができ、搬送経路を増やすことなく記録媒体の両面の塗布記録を実現できる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、画像情報に基づいて記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、前記記録媒体に記録に先立って画質向上のための処理液を塗布する塗布手段と、を備えた記録装置において、記録部から逆搬送される記録媒体を再び記録部へ搬送するための逆搬送経路を設け、前記塗布手段を前記逆搬送経路内の前記記録媒体に前記処理液を塗布できる位置に配置して記録媒体の両面に塗布ありで記録できるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録部から逆搬送される記録媒体を再び記録部へ搬送するための逆搬送経路を設け、塗布手段を逆搬送経路内の記録媒体に処理液を塗布できる位置に配置して記録媒体の両面に塗布ありで記録できるように構成するので、処理液塗布の有無を選択可能でありながら独立した搬送経路の切り替えを必要とせず、画像記録と塗布動作の異なる動作を同一駆動源が実現でき、装置本体の大型化を招くことなく複数の搬送経路を設けることができ、搬送経路を増やすことなく記録媒体の両面の塗布記録を実現できる記録装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。図1は本発明を適用した記録装置の一実施形態を示す縦断面図である。図1において、記録装置は、積載された記録用紙等の記録媒体13を1枚ずつ分離して送り出す給紙ユニット10と、記録ヘッドにより画像情報に基づいて記録媒体に画像を形成する記録ユニット30と、記録画像を良好なものにするための処理液を記録に先立って記録媒体に塗布するための塗布ユニット20とを備えている。記録ユニット30と塗布ユニット20は独立した搬送経路を有する。
【0013】
給紙ユニット10は、記録媒体を画像を形成する記録部に給紙するものであり、圧板12に積載された複数枚の記録媒体13を給紙ローラ11により1枚ずつ分離して記録部へ送り出す。給紙ローラ11は第1の搬送手段である給紙手段を構成する。なお、画像記録時の搬送方向も含めて、給紙ローラから記録部へ向かう搬送方向を正転方向(又は記録方向)という。記録媒体の主たる搬送(画像記録時の搬送)を行う搬送ローラ31までの搬送経路は、第1の搬送路である給紙路37と第2の搬送路である突入路26により形成されるUターン経路になっている。
【0014】
このUターン経路の途中には、必要時にのみ回転する第2搬送手段としての給紙補助ローラ36が配設されている。給紙補助手段である給紙補助ローラは、給紙手段である給紙ローラの駆動源(不図示)とワンウェイギアを介して連結され、必要時にのみ回転して正転方向の搬送力を補助する。給紙ローラの給紙動作時には、上記ワンウェイギアの働きにより給紙補助ローラには回転力が伝達されず、カムなどで離間されている。
【0015】
記録ユニット30は、画像情報に基づいて記録媒体に画像を記録するための記録ヘッド41と、画像記録部を通して記録媒体を搬送するための主搬送部とを備えている。主搬送部は、第3の搬送手段である搬送ローラ31とピンチローラ32からなるローラ対で構成され、記録媒体13はこのローラ対に挟持されることで搬送力を付与される。搬送ローラ31のニップ部(挟持部)の上流側の近接位置には、搬送ローラの搬送方向の切り替えを制御するための紙端センサ38が配置されている。この紙端センサは記録媒体の有無を検知する反射型のフォトセンサで構成されている。搬送ローラ31の下流側には画像記録時の記録媒体の平面性を保つためのプラテン35が配置され、さらにその下流側には記録後の記録媒体を排出するための排紙ローラ33及び拍車34が配設されている。排出された記録媒体は排紙トレイ39上に載置される。
【0016】
記録ユニット30は、記録媒体を記録方向に間欠的にピッチ送り(副走査)しながら、記録媒体の幅方向(紙面と交差する方向)に記録ヘッド41を移動(主走査)させて画像を記録していくものである。記録ヘッド41を搭載したキャリッジ42は記録装置1の装置本体(シャーシ)に固定されたガイドシャフト43とガイドレール44に沿って移動可能に案内支持されている。このキャリッジを記録媒体の幅方向を往復動しながら記録を行い、1ラインの記録の間に搬送ローラ31による記録媒体の間欠送りを行い、両者を交互に繰り返すことで画像を完成させる。
【0017】
塗布ユニット20は記録に先立って記録媒体に処理液を塗布する塗布工程を実施するためのユニットである。この処理液は、良好な画像を形成するために予め記録媒体に塗布されるものであり、例えば、記録液中の着色剤を不溶化する化合物を含有する液体が使用される。この化合物としては、例えば多価金属塩溶液を使用することができる。なお、この処理液としては、例えば上記の特許文献1(特開平5−202328号公報)や特許文献2(特開昭61−75870号公報)に開示されている溶液を使用することができる。
【0018】
塗布ユニットには記録部の経路とは別の独立した経路を有する。塗布工程は、画像記録の方向とは逆の方向に記録媒体を逆搬送することで行われる。すなわち、正転方向に搬送されてきた記録媒体の後端を紙端センサ38で検知すると、後端が搬送ローラ31とピンチローラ32で挟持された状態で正転方向の搬送を停止する。次に搬送ローラ31を逆転することにより記録媒体を逆搬送する。搬送ローラの逆搬送側には記録媒体の逆搬送路(第3の搬送路)を形成する逆転ベース28が配置されている。
【0019】
逆転ベース28の逆搬送路は記録面を位置出しするためのプラテン35とほぼ同様に水平に形成されている。そのため、搬送ローラ31を逆転しても、記録媒体は、その剛性のため、突入路26の方向へは逆送りされず、逆転ベース28の方向へスムーズに逆搬送される。逆転ベースの搬送路の上方には撓みスペース27Aを有する逆転カバー27が設けられている。このスペース27Aは、逆転搬送時の搬送ローラ31と塗布ローラ52の速度差を吸収するためのものである。すなわち、塗布ローラ52は搬送ローラ31の逆転と連動して駆動されることで逆方向の搬送力を発生するが、この際に塗布ローラよりも増速されて連動する搬送ローラの余剰搬送分を吸収するのが撓みスペース27Aである。
【0020】
逆転ベース(第3の搬送路)28の逆搬送方向下流側にはUターン形状の反転搬送路(第4の搬送路)24が設けられている。逆転ベース28と反転搬送路24との間に塗布手段である塗布部が配置されている。また、反転搬送路24の終端部には給紙補助ローラ36が配置されている。なお、逆転ベース28の逆搬送路とUターン形状の反転搬送路24は記録方向と反対方向の逆搬送経路を構成している。
【0021】
塗布手段を構成する塗布部は、処理液を記録媒体に塗布するための塗布ローラ52と圧接ローラ53からなるローラ対を具備する。圧接ローラ53は塗布ローラ52へ押圧されて従動回転する。押圧された両ローラの間を通過する記録媒体の裏面(記録面と反対側の図示下側の面)に対して処理液21の塗布が行われる。塗布ローラ52の記録媒体との接触部は反転ベース28の延長線上よりも低い位置にあり、そのため、圧接ローラ53の押圧がないと処理液の塗布は行われない。
【0022】
塗布部には、所定量の処理液21が溜められた処理液溜め54が設けられ、処理液溜めの内部には処理液に略半分浸された汲み上げローラ51が軸支されている。この汲み上げローラは塗布ローラ52に押圧接触している。塗布ローラ52は搬送ローラ31の逆転と連動して回転駆動される。圧接ローラ53が圧接された塗布ローラ52が搬送ローラの逆転と連動して回転駆動されると、記録媒体は塗布ユニット20内で記録方向(正転方向)とは逆方向に搬送される。このとき、汲み上げローラ51もギア列を介して塗布ローラ52と連動して回転される。従って、処理液溜め54内の処理液21が汲み上げローラ51に付着され、汲み上げローラ51に付着した処理液が塗布ローラ52に付着される。そして、塗布ローラに付着した処理液は、圧接ローラによって押し付けられて逆搬送される記録媒体の裏面(記録面の裏側)に転写される。
【0023】
次に、塗布手段(塗布部)の構成及び動作について説明する。搬送ローラ(第3の搬送手段)31の逆転と連動して塗布ローラ(第4の搬送手段)52は記録媒体を記録方向とは逆方向に搬送する。処理液溜め54には所定水位まで処理液21が溜められている。処理液溜めには、汲み上げローラ51が処理液に略半分を浸した状態で回転可能に軸支されている。汲み上げローラ51の上部は塗布ローラ52の下部に当接している。汲み上げローラは不図示のギア列により塗布ローラと連動しており、両者が回転することにより汲み上げローラに付着した処理液を塗布ローラに付着させることができる。塗布ローラ52には圧接ローラ53が圧接されており、その間を通して記録媒体が逆方向に搬送される。
【0024】
塗布ローラ52に付着した処理液21は、この逆方向に搬送される記録媒体の図示下側の面に塗布(再付着)される。塗布された記録媒体はUターン形状の逆搬送路(第4の搬送路)24を通して逆方向に搬送される。そして、逆搬送路24の終端近傍に配置された給紙補助手段である給紙補助手段36を通過することで、再び突入路まで再搬送される。反転搬送路24の長さは記録媒体13の長さより小さく、塗布手段(塗布ローラ)52から主搬送部(搬送ローラ)31までの逆搬送路(逆搬送方向)の長さは記録媒体の長さより大きく設定されている。
【0025】
そこで、記録媒体の後端が紙端センサ38を通過してから塗布が終了するまでの記録媒体の長さをカウントして逆搬送経路28、24に沿った逆搬送を停止する。Uターン形状の再反転経路である逆搬送経路28、24は記録媒体の長さよりも短いため、塗布が終了した時点で記録媒体は給紙補助手段である給紙補助ローラ36に挟持された状態になり、該ローラを駆動することで搬送可能になる。このとき、記録媒体の後端は、塗布ローラ52を通過し、その搬送力は給紙補助ローラ36による搬送力だけになる。なお、反転搬送路24の途中には補助ローラ25が配置されている。
【0026】
ここで、給紙手段である給紙ローラ11の駆動源を逆転作動することで、給紙ローラ(第1の搬送手段)11は駆動停止されるが、補助給紙手段である給紙補助ローラ(第2の搬送手段)36は記録媒体の搬送力を発生する。これによって、記録ユニット30の主搬送部へ再給紙動作が行われる。なお、給紙ローラ11にもワンウエイギアが埋め込まれているので、塗布終了後の記録媒体が給紙ローラの駆動源の逆転に連動して給紙補助ローラ36による再給紙動作を開始しても、給紙ユニット10から新しい記録媒体が送り出されることはない。
【0027】
塗布手段を構成する塗布ローラ52、汲み上げローラ51及び処理液溜め54は、逆転ベース28及びUターン搬送路24からなる逆搬送経路の内部(本実施形態では逆転ベース28とUターン搬送路24との間)に配置されている。これにより、搬送ローラ31の逆転により画像形成部から逆転搬送される記録媒体13を再び画像形成部へ搬送するための逆搬送経路(本実施形態では、逆転ベース28と反転搬送路24)を設け、この逆搬送経路内の記録媒体の両面に処理液を塗布できる位置に塗布ローラ52を具備する塗布手段を配置する構成が得られる。また、本実施形態では、逆搬送経路28、24は記録媒体の両面に記録するためのUターン搬送経路を構成している。
【0028】
図2は以上説明した記録装置において処理液塗布なしで片面に画像を記録するときの各部の動作を示すタイミングチャートである。図3は本発明の一実施形態において処理液塗布ありで片面に画像を記録するときの各部の動作を示すタイミングチャートである。図4は本発明の一実施形態において処理液塗布ありで両面に画像を記録するときの各部の動作を示すタイミングチャートである。次に、図2〜図4を用いて、塗布なし記録、塗布有り記録、並びに両面の塗布あり記録を行う場合の各搬送手段の動作について時系列に説明する。
【0029】
まず、図2を用いて、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)や写真画像の記録のように処理液塗布なしで記録する場合を説明する。図2において、記録媒体を給紙するための駆動源Ma、すなわち第1の搬送手段である給紙ローラ11及び第2の搬送手段である給紙補助ローラ36の駆動源Maの正転により給紙ローラが正転する。送り出された記録媒体は搬送力のない給紙補助ローラ36を通過し、紙端センサ38が記録媒体の先端を検知することで記録動作へと移行する。記録動作においては、記録媒体は第3の搬送手段である搬送ローラ31の正転により記録方向へ搬送される。画像記録に際しては、搬送ローラ31による紙送り(副走査)とキャリッジ42に搭載された記録ヘッド1の往復動作(主走査)とを交互に繰り返すことで、画像情報に基づいて記録媒体の記録面に画像を記録する。片面塗布なし記録の場合は、ここで排紙ローラ33により排紙トレイ39上へ排出する。
【0030】
次に、図3を用いて、画像記録に先立って処理液塗布を行う記録動作(片面塗布記録)について説明する。図3において、駆動源Maの正転により給紙ローラ11が正転し、送り出された記録媒体は搬送力のない給紙補助ローラ36を通過し、記録部へ給紙されることで主搬送部(搬送ローラ31)へ送り込まれる。この給紙動作は前述の塗布なし記録の場合と同じである。しかし、塗布記録の場合は、記録部で画像記録を行わずに紙端センサ38が記録媒体の後端を検知するまで搬送ローラ31により搬送する。後端が主搬送部に挟持された状態で搬送を停止する。そこで、搬送ローラの搬送方向を逆転させて記録媒体の逆搬送を開始する。
【0031】
この搬送ローラ(第3の搬送手段)の逆転と連動して、第4の搬送手段である塗布ローラ52が逆転方向に回転を開始する。これにより、記録媒体13は反転ベース28の逆搬送路を通過して塗布手段(塗布部)へ送り込まれ、塗布ローラ52により記録媒体の裏面(図示下面)に処理液が塗布される。塗布された記録媒体はUターン形状の反転搬送路24に沿って搬送(逆搬送)される。この際、記録媒体の逆搬送方向後端が搬送ローラ31及び紙端センサ38を通過しても記録媒体を停止させず、紙端センサが後端を検知してからのカウントにより塗布工程が終了するまで搬送し、ここで記録媒体を停止させる。
【0032】
ここで給紙手段の駆動源Maの駆動を逆転させる。これにより給紙ローラ11は回転せず、給紙補助ローラ36だけに駆動が伝達されて搬送力が生じる。この状態では、給紙ユニット10からの新たな給紙は行われない。一方、上記の塗布を終了した記録媒体は主搬送部(第3の搬送手段)まで再給紙される。再度給紙された記録媒体の先端を紙端センサ38が検知することで、搬送ローラ31が正転を開始し、記録媒体を正転方向に搬送する。記録媒体は、逆搬送経路のUターン反転搬送路24を経ているため、塗布された裏面が記録面を向くことになる。そして、主搬送部による記録媒体のピッチ送りと往復移動する記録ヘッド41の画像形成動作とを繰り返すことにより画像記録が行われる。片面塗布あり記録の場合は、ここで、記録された記録媒体を排紙ローラ33により排紙トレイ39上へ排出する。
【0033】
次に、図4を用いて、記録媒体の両面に塗布あり記録を行う場合の記録動作について説明する。この両面塗布記録は、図3と同じ動作で片面塗布記録を行った記録媒体を逆搬送経路28、24に沿って再度逆搬送することで、残りの面に塗布ローラ52で処理液を塗布し、しかる後にこの塗布面に画像を記録することで実現される。従って、図4においては、図3と同じ動作で片面塗布記録を終了した後、記録媒体を排出せず、紙端センサ38が記録媒体の後端を検知したところで後端が主搬送部に挟持された状態で搬送を停止する。そこで、再度、搬送ローラの搬送方向を逆転させて記録媒体の逆搬送を開始する。
【0034】
以下、記録媒体の裏面に対して図3の塗布記録の場合と同様の塗布動作及び記録動作を行う。すなわち、上記搬送ローラ31の逆転と連動して塗布ローラ52が逆転方向に回転を開始することにより、記録媒体は反転ベース28を通過して塗布手段(塗布部)へ送り込まれ、塗布ローラ52により搬送されながら裏面に処理液を塗布される。塗布された記録媒体は反転搬送路24に沿って逆搬送される。記録媒体の逆搬送方向後端が搬送ローラ及び紙端センサを通過しても停止させず、後端検知からのカウントにより塗布工程が終了するまで搬送したところで停止させる。
【0035】
ここで、駆動源Maの駆動を逆転させることにより、給紙ローラ11を駆動せずに給紙補助ローラ36だけを駆動し、裏面の塗布を終了した記録媒体を主搬送部まで再々度給紙する。再々度給紙された記録媒体の先端を紙端センサ38が検知することで搬送ローラの正転を開始し、記録媒体を記録方向に搬送しながら再度反転された塗布面に対して画像を記録する。こうして両面に塗布ありで記録された記録媒体を排紙ローラ33により排紙トレイ39上へ排出することで、両面塗布記録が実現される。
【0036】
片面記録あるいは両面記録において処理液を塗布するか否かの選択は、操作者によりホストコンピュータから記録装置へ指示することが可能である。また、給紙の際の紙種を検知することで0HP用紙や写真画像など塗布を必要としない記録媒体であると判別できる場合は、記録装置自体で塗布を行わないことを選択することも可能である。さらに、塗布ローラ52及び圧接ローラ53を記録媒体に対して接触・離間できるように構成することにより、両面記録における裏面の塗布なし記録を実施することも可能である。その場合は、図1に示すように反転搬送路24に塗布補助ローラ25を配置することにより、塗布ローラ52の搬送力消滅を補完することができる。
【0037】
図5は本発明を適用した記録装置の他の実施形態の縦断面図である。図5において、給紙ユニット10の給紙ローラ11から主搬送部である搬送ローラ31へ向かうUターン形状の搬送経路の途中に、給紙時に処理液の塗布を行うか否かの切り替えを行うための切り替え手段である切り替え爪22が配置されている。この切り替え爪22は、図1の突入路26に対応する位置又はその近傍に配置されており、処理液を塗布する場合は、最初に主搬送部(搬送ローラ31)へ通じる搬送路を遮断し、塗布ユニット20へ通じる搬送路を開放する位置にセットされる。つまり、塗布を行う場合は、前述のように記録媒体を一旦記録部まで搬送した後に搬送ローラを逆転する反転動作を実施することなく、直接的に反転搬送路24の手前の塗布部である塗布ローラ52と圧接ローラ53の間のニップ部へ記録媒体を搬送する。
【0038】
塗布ローラ52により逆搬送されながら処理液を塗布された記録媒体は、反転搬送路24を通過し塗布が終了した時点で給紙補助ローラ36に挟持されて停止する。そこで、切り替え爪22を反対側へ倒すことで、塗布終了の記録媒体は主搬送部である搬送ローラ31とピンチローラ32のニップ部へ送り込まれ、搬送ローラによりピッチ送りされながら記録ヘッド41により1ラインずつ画像を形成することで、画像記録が行われる。片面塗布記録の場合は、この画像記録を終えたところで排紙トレイ39上に排出される。
【0039】
また、両面塗布記録を行う場合は、上記の片面塗布記録を終えて記録媒体の後端を紙端センサ38で検知すると搬送ローラの回転方向を逆転させる。搬送ローラの逆転により、片面記録された記録媒体を逆転ベース28を通して塗布ローラ52及び圧接ローラからなる塗布部へ逆搬送し、裏面に処理液を塗布する。次いで、反転搬送路24を通して逆搬送される。記録媒体の後端通過を紙端センサ38が検知したところで搬送ローラ31の正転を開始する。そして、Uターン形状の反転搬送路24を通過し塗布を終了した記録媒体は、今度は切り替え爪22の切り替え動作を行うことなく、そのまま再び記録部へ搬送される。反転搬送路24を通過して表裏反転された記録媒体の記録面に画像を記録することで両面塗布記録が実現される。
【0040】
図5の実施形態は、以上説明した以外の点では、図1〜図4で説明した実施形態と実質的に同じであり、それぞれ対応する部分を同一符号で示し、それらの詳細説明は省略する。従って、図5の構成によっても、図1の場合と同様の作用効果を奏することができる。なお、図1及び図5で説明した各実施形態においては、圧接ローラ53及び塗布ローラ52を記録媒体から離間させた状態でUターン形状の反転搬送路24に沿って通過させることにより、塗布なしの両面記録も可能であり、操作者は両面記録においても処理液の塗布の有無を選択することができる。
【0041】
以上説明した実施形態によれば、記録媒体に記録に先立って画質向上のための処理液を塗布する塗布手段を備えた記録装置において、記録部から逆搬送される記録媒体を再び記録部へ搬送するための逆搬送経路を設け、前記塗布手段を前記逆搬送経路内の前記記録媒体に前記処理液を塗布できる位置に配置して記録媒体の両面に塗布ありで記録できるように構成するので、処理液塗布の有無を選択可能でありながら独立した搬送経路の切り替えを必要とせず、画像記録と塗布動作の異なる動作を同一駆動源が実現でき、装置本体の大型化を招くことなく複数の搬送経路を設けることができ、搬送経路を増やすことなく記録媒体の両面の塗布記録を実現することができる。
【0042】
また、処理液の塗布を行うか否かの搬送経路の切り替えを記録動作のための主搬送部(主搬送手段)である搬送ローラ31の正転か逆転かで行うことができるため、装置構成の一層の簡単化及び小型化を図ることができる。また、主搬送部である搬送ローラの上流側近接位置に紙端センサ38を配置するので、塗布を行うか否かの切り替えの制御は、紙端を検知して記録媒体13の搬送方向を正転方向及び逆転方向のいずれかに選定するかで実行可能となり、塗布の有無を簡単な構成で容易に制御することができる。また、記録部における搬送速度を塗布部における搬送速度より大きくし、主搬送部から塗布部に向かう逆搬送路に記録媒体の撓みを吸収するためのスペース27Aを設けるので、記録媒体を逆搬送する際の搬送ローラ31と塗布ローラ52の連動駆動を円滑に実行できる。
【0043】
また、塗布工程のための反転搬送路24の経路長さを記録媒体の長さよりも小さくするとともに、塗布部から記録部までの逆搬送路(逆搬送方向)の長さを記録媒体の長さよりも大きくするので、記録媒体が記録部に突入する前に搬送を停止させることが可能となり、搬送ローラと塗布ローラの回転方向が異なることに起因する紙ジャムを防ぐことができる。このことにより、塗布動作と記録動作の動作形態が異なる場合でも、同一の駆動源で動作させることが可能となり、装置の小型化を促進することができる。
【0044】
さらに、処理液の塗布が終了した記録媒体を再度記録部に搬送するためのUターン形状の反転搬送路24を設けるので、画像記録が終了した記録媒体を再度反転搬送することで塗布部を通過させた後、再度記録部による画像記録を行うことで両面に対する塗布あり記録も容易に実施することができる。この場合、同時に圧接ローラ53のオン・オフ等を制御するだけで塗布の有無を自由に選択できる両面画像記録を実現することもできる。さらに、反転逆搬送のための逆搬送経路28、24の内部に処理液塗布手段(塗布ローラ52等)を設けるので、装置の一層の小型化を実現することができる。
【0045】
なお、以上の実施形態では、記録ヘッドから記録液(インク)を吐出して記録するインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、記録に先立って画質向上のための処理液を塗布する手段を備えた記録装置であれば、その他の記録方式の記録装置にも適用可能なものであり、同様の作用効果を奏するものである。また、以上の実施形態では、キャリッジに搭載された記録ヘッドを使用するシリアルタイプの画像記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、副走査のみで記録するラインタイプの画像記録装置など、他の記録方式の画像記録装置の場合にも同様に適用可能なものであり、同様の作用効果を奏するものである。
【0046】
さらに、本発明は、インクジェット記録ヘッドを用いる場合、1個の記録ヘッドを用いる装置、異なる色のインクを用いる複数の記録ヘッドを用いる装置、同一色彩で異なる濃度のインクを用いる複数の記録ヘッドを用いる装置、あるいは、これらを組み合わせた装置、さらには、キャリッジを用いずに記録ヘッドを直接往復移動させる形態の画像記録装置の場合にも、同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を適用した記録装置の一実施形態の縦断面図である。
【図2】本発明を適用した記録装置の一実施形態において処理液塗布なしで画像を記録するときの各部の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明を適用した記録装置の一実施形態において処理液塗布ありで画像を記録するときの各部の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明を適用した記録装置の一実施形態において処理液塗布ありで両面に画像を記録するときの各部の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明を適用した記録装置の他の実施形態の縦断面図である。
【図6】従来の記録装置の構成例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 記録装置
10 給紙ユニット
11 給紙ローラ(第1の搬送手段、給紙手段)
12 圧板
13 記録媒体
20 塗布ユニット
21 処理液
22 切り替え爪(切り替え手段)
24 Uターン形状の反転搬送路
26 突入路(第2の搬送路)
27 逆転カバー
27A 撓み吸収用のスペース
28 逆転ベース(逆転路、第3の搬送路)
30 記録ユニット
31 主搬送部(搬送ローラ、第3の搬送手段)
32 ピンチローラ
33 排紙ローラ
34 拍車
35 プラテン
36 給紙補助ローラ(給紙補助手段、第2の搬送手段)
37 給紙路(第1の搬送路)
38 紙端センサ(フォトセンサ)
39 排紙トレイ
41 記録ヘッド
42 キャリッジ
43 ガイドシャフト
44 ガイドレール
51 汲み上げローラ
52 塗布ローラ(第4の搬送手段、塗布手段)
53 圧接ローラ
54 処理液溜め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に基づいて記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、前記記録媒体に記録に先立って画質向上のための処理液を塗布する塗布手段と、を備えた記録装置において、
記録部から逆搬送される記録媒体を再び記録部へ搬送するための逆搬送経路を設け、前記塗布手段を前記逆搬送経路内の前記記録媒体に前記処理液を塗布できる位置に配置して記録媒体の両面に塗布ありで記録できるようにすることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
正転及び逆転を切り替えられることで記録媒体を記録方向及びその反対方向に搬送可能な主搬送部を有することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記塗布手段は記録媒体に処理液を塗布しながら逆搬送する塗布ローラと圧接ローラを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記逆搬送経路は、前記主搬送部の逆転で記録媒体を前記塗布手段へ搬送するための逆転ベースと、前記塗布手段で処理液を塗布された記録媒体を給紙部へ搬送するためのUターン形状の反転搬送路とを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記逆搬送経路の終端近傍に前記記録媒体の前記主搬送部への搬送を補助するための給紙補助手段が配置されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記逆転ベースの搬送路は記録部の搬送路と略同一の平面であることを特徴とする請求項4又は5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記主搬送部による搬送量は前記塗布手段による搬送量より大きく、前記塗布手段の逆搬送方向上流側に記録媒体の撓みを吸収するためのスペースが設けられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記主搬送部の正転搬送方向上流側の近接位置に、該主搬送部の正転及び逆転の切り替えを制御するために記録媒体の先端又は後端を検知する紙端センサが配置されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記反転搬送路の長さは記録媒体の長さより小さく、前記塗布手段から前記主搬送部までの逆搬送路の長さは記録媒体の長さより大きいことを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記給紙補助手段の駆動源は給紙手段の駆動源と連動し、該駆動源が給紙方向に回転するときに前記給紙補助手段は回転されず、該駆動源が給紙方向と逆方向に回転するときに搬送力を発生することを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記塗布手段は、記録媒体への処理液塗布の有無を選択可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記給紙補助手段に代えて切り替え手段を設け、該切り替え手段により記録媒体の搬送方向を前記主搬送部へ向かう方向と前記塗布手段へ向かう方向のいずれかに切り替え可能にすることを特徴とする請求項5〜11のいずれか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−346926(P2006−346926A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173501(P2005−173501)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】