説明

記録装置

【課題】 記録ヘッドのヘッド面を被記録材の支持面や被記録材に当接させることなく、かつ短時間でPGを適正な間隔に自動調整可能な記録装置を実現する。
【解決手段】 PGセンサ36は、光学式センサであり、ワイパ571の側部に設けられたセンサホルダ572に配設されている。ワイパ571をZ方向へ変位させることによって、プラテン53の直近で、PGセンサ36をZ方向へ変位させることができる。プラテン53のプラテンリブ531の頂面(記録紙Pの支持面)、プラテンリブ531の頂面に支持される記録紙Pの記録面及び記録ヘッド62のヘッド面のZ方向における位置をPGセンサ36により非接触で検出することが可能になり、それによって、PG、記録紙Pの厚みを非接触で検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのヘッド面と被記録材の支持面との間隔を調整する間隔調整装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成して被記録材への記録を実行する記録装置においては、記録実行時における記録ヘッドのヘット面とプラテン等の支持部材に支持された被記録材の記録面との間隔を適正な一定の間隔に設定して維持することが、高精度な記録を実行する上で極めて重要である。また、記録ヘッドのヘット面と支持部材に支持された被記録材の記録面との間隔が適正な間隔より狭い状態で記録を実行すると、記録ヘッドのヘッド面が被記録材の記録面に接触する、いわゆるヘッド擦れが生ずる虞がある。このヘッド擦れが生ずると、被記録材の記録面に傷や汚れが付いてしまったり、記録ヘッドが損傷してしまったりすることがある。
【0003】
そして、記録ヘッドのヘット面と支持部材に支持された被記録材の記録面との間隔が常に適正な一定の間隔となるようにするためには、記録ヘッドのヘッド面とプラテン等による被記録材の支持面との間隔(いわゆるプラテンギャップ、以下略して「PG」という。)を被記録材の厚みに応じて増減調整する必要がある。
【0004】
ここで、被記録材の厚みに応じてPGを増減調整可能な記録装置の従来技術としては、記録ヘッドの支持位置を変位させることでPGを自動調節可能な記録装置が公知である(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
この特許文献1に記載された従来技術においては、記録ヘッドの支持位置は記録ヘッドの支持位置を変位させる装置に設けられた公知のロータリエンコーダにより特定され、以下のような手順でPGの自動調節が行われる。まず、プラテンに被記録材が支持されていない状態で、基準位置からヘッド面がプラテンに当接する位置まで記録ヘッドを移動させ、そのときの移動量から基準位置とプラテン面との間の距離Aを算出する。次に、プラテンに被記録材が支持されている状態で、基準位置からヘッド面が被記録材に当接する位置まで記録ヘッドを移動させ、そのときの移動量から基準位置と被記録材との間の距離Bを算出する。そして、距離Aから距離Bを減算して被記録材の厚みを算出し、その算出した被記録材の厚みに所定の調整距離を加算した距離を当該被記録材におけるPGに設定する。
【特許文献1】特開2004−50539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された従来技術においては、PGを設定するに際してヘッド面をプラテン面や被記録材に当接させるため、ヘッド面に損傷等が生ずる虞がある。また、記録ヘッドのヘッド面をプラテン上の被記録材に当接させると、当接面に撓みや皺等が生ずる可能性があり、そうなると正確な被記録材の厚みを正確に検出できず、結果的に適正なPGが設定できない虞がある。
【0007】
そして、記録ヘッドのヘッド面からインクを噴射して記録を実行するインクジェットプリンタ等の記録装置においては、ヘッド面をプラテン面や被記録材に当接させると、プラテン面や被記録材の記録面にインクが付着して汚れてしまうため、当該従来技術は採用できない。さらに、上記の特許文献1に記載された従来技術は、上記のように記録ヘッドの上下動を複数回行う必要があるため、PGの調整に多くの時間を要することとなり、スループットの低下が生ずる虞もある。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、記録ヘッドのヘッド面を被記録材の支持面や被記録材に当接させることなく、かつ短時間でPGを適正な間隔に自動調整可能な記録装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、記録ヘッドのヘッド面と被記録材の支持面との間隔を調整する間隔調整装置と、前記記録ヘッドのヘッド面及び前記支持面を非接触で検出可能な検出装置と、前記検出装置で検出した前記記録ヘッドのヘッド面と前記支持面との間隔に基づいて前記間隔調整装置を制御する制御装置と、を備えた記録装置である。
【0010】
このように、PGを非接触で検出可能な検出装置によって、記録ヘッドのヘッド面を支持面や被記録材に当接させることなく、PGを検出することができる。そして、記録ヘッドのヘッド面と被記録材の記録面との間隔が適正な一定の間隔となるように、PGを間隔調整装置により調整する。それによって、記録ヘッドのヘッド面と被記録材の記録面との間隔を適正な一定の間隔に設定することができる。
【0011】
これにより、本発明の第1の態様に記載の記録装置によれば、記録ヘッドのヘッド面を被記録材の支持面や被記録材に当接させることなく、かつ短時間でPGを適正な間隔に自動調整可能な記録装置を実現することができるという作用効果が得られる。
【0012】
本発明の第2の態様は、記録ヘッドのヘッド面と被記録材の支持面との間隔を調整する間隔調整装置と、前記記録ヘッドのヘッド面及び前記支持面に支持される被記録材の記録面を非接触で検出可能な検出装置と、前記検出装置で検出した前記記録ヘッドのヘッド面と前記被記録材の記録面との間隔に基づいて前記間隔調整装置を制御する制御装置と、を備えた記録装置である。
【0013】
このように、記録ヘッドのヘッド面と支持面に支持される被記録材の記録面との間隔を非接触で検出可能な検出装置によって、記録ヘッドのヘッド面を支持面や被記録材に当接させることなく、記録ヘッドのヘッド面と支持面に支持される被記録材の記録面との間隔を検出することができる。そして、検出装置で検出する記録ヘッドのヘッド面と被記録材の記録面との間隔が適正な一定の間隔となるように、PGを間隔調整装置により調整する。それによって、記録ヘッドのヘッド面と被記録材の記録面との間隔を適正な一定の間隔に設定することができる。
【0014】
また、検出装置で記録ヘッドのヘッド面と支持面に支持される被記録材の記録面との間隔を検出するので、前記の従来技術のように被記録材の厚みを検出する工程が不要になる。したがって、従来よりも短時間でPGを自動調整することができる。さらに、検出装置で記録ヘッドのヘッド面と支持面に支持される被記録材の記録面との間隔を実測してPGを設定するので、記録ヘッドのヘッド面と被記録材の記録面との間隔をより高精度に設定することができる。
【0015】
これにより、本発明の第2の態様に記載の記録装置によれば、記録ヘッドのヘッド面を被記録材の支持面や被記録材に当接させることなく、かつ短時間でPGを適正な間隔に自動調整可能な記録装置を実現することができるという作用効果が得られる。
【0016】
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記検出装置は、前記支持面に支持される被記録材の記録面を非接触で検出可能であり、前記制御装置は、前記検出装置で検出した前記記録ヘッドのヘッド面と前記支持面との間隔及び前記支持面と前記支持面に支持される被記録材の記録面との間隔に基づいて前記間隔調整装置を制御する、ことを特徴とした記録装置である。
【0017】
前記の通り、記録実行時における記録ヘッドのヘット面とプラテン等の支持面に支持された被記録材の記録面との間隔は、ドットの形成位置の誤差を極力小さくして高精度な記録を可能にする上では、可能な限り狭い方が良い。しかし、被記録材は、反りやいわゆるコックリングによる波打ち変形等によって、一部が支持面から浮き上がった状態となる可能性がある。そのため、現実には、このような被記録材の浮き上がりによるヘッド擦れが生じないように、ある程度のマージンをもってPGを設定する必要がある。
【0018】
ここで、被記録材の反りやいわゆるコックリングによる被記録材の波打ち変形は、被記録材の種類(普通紙、専用紙、厚紙等)によって、その程度が異なってくる。したがって、PGは、被記録材の種類に応じて設定可能な間隔が異なってくる。そして、被記録材の種類は、被記録材の厚みからある程度は特定することが可能である。
【0019】
本発明の第3の態様に記載の記録装置は、支持面に支持される被記録材の厚み(支持面と支持面に支持される被記録材の記録面との間隔)も検出装置で検出することによって、検出した被記録材の厚みからその被記録材の種類等を特定することができる。したがって、その特定した被記録材の種類に応じてPGをさらに微調整することが可能になるので、さらに高精度な記録を実現することができるという作用効果が得られる。
【0020】
本発明の第4の態様は、前述した第1〜第3の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記検出装置は、光学式センサと、前記光学式センサを変位させるセンサ変位装置とを有している、ことを特徴とした記録装置である。
【0021】
例えば、光学式センサを一定方向へ変位させながら、支持面又は支持面に支持される被記録材の記録面及び記録ヘッドのヘッド面を光学式センサで検出する。そして、支持面又は支持面に支持される被記録材の記録面を検出したときの光学式センサの変位位置と、記録ヘッドのヘッド面を検出したときの光学式センサの変位位置との差から、PG又は記録ヘッドのヘッド面と支持面に支持される被記録材の記録面との間隔を非接触で検出することができる。
【0022】
本発明の第5の態様は、前述した第4の態様に記載の記録装置において、前記記録ヘッドの保守を行う記録ヘッド保守装置を備え、前記記録ヘッド保守装置は、前記記録ヘッドに係合可能な位置へ進退可能に支持された保守部材と、前記保守部材を変位させる保守部材変位装置とを有し、前記光学式センサは、前記保守部材に配設されている、ことを特徴とした記録装置である。
【0023】
ここで、記録ヘッドに係合可能な位置へ進退可能に支持された保守部材とは、例えば、記録を実行しないときに記録ヘッドのヘッド面を封止する封止部材(キャップ等)や記録ヘッドのヘッド面に摺接係合してヘッド面に付着した余分なインクや紙粉等を除去するワイピング部材(ワイパ等)である。
【0024】
記録ヘッド保守装置は、被記録材の支持面となるプラテン等の直近に配設されているのが通常である。つまり、保守部材は、被記録材の支持面となるプラテン等の直近に配設されている。したがって、その保守部材に光学式センサを設ければ、被記録材の支持面の直近で光学式センサを変位させることができる。また、光学式センサを変位可能に支持する機構を別個に設ける必要もない。さらに、保守部材変位装置がセンサ変位装置を兼ねることになる。すなわち、記録ヘッド保守装置の保守部材変位装置をセンサ変位装置として利用することができる。
【0025】
これにより、本発明の第5の態様に記載の記録装置によれば、本発明の第4の態様に記載の記録装置を極めて合理的に低コストで実現することができるという作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
<インクジェットプリンタの構成>
まず、「記録装置」の一例としてのインクジェットプリンタの基本的な構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、インクジェットプリンタの要部平面図であり、図2はその側面図である。図3は、インクジェットプリンタの概略のブロック図である。
インクジェットプリンタ50は、「被記録材」としての記録紙Pにインクを噴射して記録面にドットを形成する記録ヘッド62を備えている。記録ヘッド62は、主走査方向Xに移動可能にキャリッジガイド軸56に軸支されたキャリッジ61に搭載されている。キャリッジ61には、記録ヘッド62の他、後述するPWセンサ34や図示していないインクカートリッジ等が搭載されている。キャリッジ61は、図示していないベルト伝達機構によって、CRモータ63(図3)の回転駆動力が伝達されて主走査方向Xに往復動する。
【0029】
記録ヘッド62のヘッド面と対向する位置には、記録を実行する記録紙Pを裏面側から支持して、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pとのギャップを規定するプラテン53が設けられている。キャリッジ61の主走査方向Xへの往復動領域の一端側の外側には、公知のキャッピング装置57が設けられている。記録を実行しない待機状態においては、キャリッジ61がキャッピング装置57の上まで移動して停止し、キャッピング装置57に配設されているキャップCPによって記録ヘッド62のヘッド面が封止される。このキャリッジ61の停止位置は、ホームポジションHPとして規定される。
【0030】
また、インクジェットプリンタ50は、記録ヘッド62を記録紙Pに対して副走査方向Yへ走査させる手段として、記録紙Pを副走査方向Yに搬送する搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とを備えている。搬送駆動ローラ51は、外周面に高摩擦抵抗を有する皮膜が施されており、PFモータ58(図3)の回転駆動力で回転する。複数の搬送従動ローラ52は、個々に従動回転可能に軸支されているとともに、図示していないばね等の付勢手段により個々に搬送駆動ローラ51に付勢されている。記録紙Pは、搬送従動ローラ52で搬送駆動ローラ51の外周面に押しつけられ、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持された状態で搬送駆動ローラ51が回転することによって、副走査方向Yへ搬送される。
【0031】
搬送駆動ローラ51の副走査方向Yの上流側には、多数の記録紙Pを積重可能な給送トレイ71が配設されている。給送トレイ71には、記録紙Pの積重位置を規制するための記録紙ガイド71aが記録紙Pの幅に合わせて幅方向に摺動可能に設けられている。また、給送トレイ71の近傍には、給送ローラ72が配設されている。給送ローラ72は、PFモータ58(図3)の回転駆動力で回転する。給送トレイ71に積重された記録紙Pは、図示していないホッパ等の押圧手段で給送ローラ72の外周面に押圧され、給送ローラ72が回転することによって、搬送駆動ローラ51へ向けて1枚ずつ給送される。このとき、公知の分離パッド等の分離手段によって、最上位にある記録紙Pから他の記録紙Pが分離されて重送が防止される。給送ローラ72と搬送駆動ローラ51との間には、給送された記録紙Pの先端位置及び後端位置を検出可能な公知の紙検出器33が配設されている。
【0032】
さらに、インクジェットプリンタ50は、記録実行後の記録紙Pを排出する手段として、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とを備えている。排出駆動ローラ54は、PFモータ58(図3)の回転駆動力で回転する。複数の排出従動ローラ55は、個々に従動回転可能に軸支されているとともに、図示していないばね等の付勢手段により個々に排出駆動ローラ54に付勢されている。排出従動ローラ55は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が記録紙Pの記録面に点接触するように鋭角的に尖った歯付きローラになっている。記録紙Pは、排出従動ローラ55で排出駆動ローラ54の外周面に押しつけられ、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とで挟持された状態で排出駆動ローラ54が回転することによって、副走査方向Yに搬送されて排出される。
【0033】
このような構成のインクジェットプリンタ50において、給送ローラ72、搬送駆動ローラ51及び排出駆動ローラ54を回転させるPFモータ58(図3)並びにキャリッジ61を主走査方向に駆動するCRモータ63(図3)は、後述する記録制御部100により制御される。また、記録ヘッド62も同様に、記録制御部100により制御される。記録制御部100は、キャリッジ61を主走査方向Xへ往復動させながら記録ヘッド62から記録紙Pへインクを噴射する動作と、記録紙Pを副走査方向Yへ所定の搬送量で搬送する動作とを交互に繰り返しながら記録紙Pへの記録を行う制御を実行する。
【0034】
記録制御部100は、ROM101、RAM102、ASIC(特定用途向け集積回路)103、CPU(中央処理装置)104、不揮発性メモリ105、PFモータドライバ106、CRモータドライバ107及びヘッドドライバ108を備えている。ROM101、RAM102、ASIC103、CPU104及び不揮発性メモリ105は、記録制御部100のシステムバスに接続されている。PFモータドライバ106、CRモータドライバ107及びヘッドドライバ108は、ASIC103に接続されている。
【0035】
ROM101は、CPU104によるインクジェットプリンタ50の制御に必要な記録制御プログラム(ファームウェア)等が格納される。RAM102は、CPU104の作業領域や記録データ等の格納領域として用いられる。CPU104は、インクジェットプリンタ50の記録制御を実行する為の演算処理やその他必要な演算処理を行う。不揮発性メモリ105は、記録制御プログラムの処理に必要な各種データ等が記憶されている。
【0036】
ASIC103は、DCモータであるPFモータ58及びCRモータ63の速度制御並びに記録ヘッド62のノズル駆動制御を行うための制御回路を有している。ASIC103は、PFモータ58及びCRモータ63の速度制御を行うための各種演算を行い、その演算結果に基づくモータ制御信号をPFモータドライバ106及びCRモータドライバ107へ送出する。また、ASIC103は、記録ヘッド62の制御信号を演算生成してヘッドドライバ108へ送出し、記録ヘッド62のインク噴射を制御する。さらに、ASIC103は、パーソナルコンピュータ301とのインタフェース機能も有している。
【0037】
さらに、インクジェットプリンタ50は、搬送駆動ローラ51の回転量を検出するロータリエンコーダ31、キャリッジ61の移動量を検出するリニアエンコーダ32、搬送される記録紙Pの先端及び後端を検出する紙検出器33、主走査方向Xの記録紙Pの端部を検出するためのPWセンサ34、インクジェットプリンタ50の電源をON/OFFするための電源スイッチ35及び後述するPGセンサ36を備えている。
【0038】
公知のロータリエンコーダ31は、搬送駆動ローラ51の回転に連動して回転するロータリスケール311と、ロータリスケール311の外周に沿って等間隔に形成されているスリットを検出するロータリスケールセンサ312とを有している(図2)。ロータリスケールセンサ312の出力信号は、搬送駆動ローラ51の回転に伴い変化し、ASIC103を介してCPU104へ出力される。
【0039】
公知のリニアエンコーダ32は、キャリッジ61の近傍に主走査方向Xと略平行に配置されたリニアスケール321と、リニアスケール321に等間隔に形成されているスリットを検出するキャリッジ61に搭載されたリニアスケールセンサ322とを有している(図2)。リニアスケールセンサ322の出力信号は、キャリッジ61の主走査方向Xの移動量に応じてパルスの周期が移動速度に伴い変化し、ASIC103を介してCPU104へ出力される。
【0040】
公知の紙検出器33は、立位姿勢への自己復帰習性が付与され、かつ記録紙Pの搬送方向(副走査方向Y)にのみ回動し得るよう記録紙Pの搬送経路内に突出する状態で枢支されたレバーを有している。紙検出器33は、このレバーの先端が記録紙Pに押されることでレバーが回動し、それによって、給送ローラ72の回転により給送された記録紙Pの先端位置及び搬送中の記録紙Pの後端位置を検出する。PWセンサ34は、非接触の光学式センサであり、記録紙Pの主走査方向Xの端部位置(記録紙Pの側端位置)を検出する。紙検出器33及びPWセンサ34の検出信号は、ASIC103を介してCPU104へ出力される。
【0041】
<自動PG調整機構の概略構成>
つづいて、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pを支持するプラテン53の支持面との間隔を調整する「間隔調整装置」としての自動PG調整機構について、図4を参照しながら説明する。
【0042】
図4は、インクジェットプリンタ50の自動PG調整機構の要部を図示した斜視図である。
インクジェットプリンタ50は、両側部にサイドフレーム11が設けられている。キャリッジ61を軸支するキャリッジガイド軸56の両端は、サイドフレーム11に設けられたZ方向(主走査方向X及び副走査方向Yと略直交する方向)に長尺な案内溝12に挿通された状態でZ方向へ変位可能に支持される。キャリッジガイド軸56の端部には、PG調整カム14及びガイド軸ギヤ15が一体に設けられている。また、サイドフレーム11には、円柱体形状の凸部13が一体に設けられている。歯車16は、回転自在に軸支された歯車であり、記録制御部100により制御されるモータ(図示せず)の回転駆動力が伝達されて回転する。尚、ガイド軸ギヤ15は、図面をより観やすくするために、キャリッジガイド軸56から外した状態で図示されている。
【0043】
このような構成の自動PG調整機構において、キャリッジガイド軸56は、PG調整カム14を介して凸部13の外周面に、自重で当接した状態で支持される。そして、キャリッジガイド軸56は、PFモータ58の回転駆動力が伝達されて歯車13が回転することによって回転し、それによって、偏心カムであるPG調整カム14の外周面形状(カムプロフィール)に応じてZ方向へ上下動する。つまり、インクジェットプリンタ50は、キャリッジガイド軸56の回転位置を記録制御部100が制御することによって、PGを自動調整することができる。尚、キャリッジガイド軸56の回転位置は、例えば、前記のロータリエンコーダ31をキャリッジガイド軸56にも設けることによって正確に検出することが可能になる。
【0044】
<キャッピング装置及びPGセンサ>
つづいて、キャッピング装置57及びPGセンサ36について、図5〜図8を参照しながら説明する。
【0045】
図5〜図8は、インクジェットプリンタ50の要部斜視図である。図5及び図6は、ワイパ571を上昇させた状態を図示したものであり、図7及び図8は、ワイパ571を下降させた状態を図示したものである。
PFモータ58の回転軸に設けられた駆動歯車581は、回転伝達歯車582、583と噛合している。搬送駆動ローラ51には、回転伝達歯車582を介してPFモータ58の回転駆動力が伝達される。また、「記録ヘッド保守装置」としてのキャッピング装置57には、回転伝達歯車583を介してPFモータ58の回転駆動力が伝達される。キャッピング装置57は、キャップCP、ワイパ571及び図示していない吸引手段等を有している。
【0046】
「保守部材」としてのキャップCPは、記録紙Pへの記録を実行しないときに記録ヘッド62のヘッド面を封止するための部材(封止部材)である。また、同じく「保守部材」としてのワイパ571は、記録ヘッド62のヘッド面に摺接係合してヘッド面に付着した余分なインクや紙粉等を除去するための部材(ワイピング部材)である。キャップCP及びワイパ571は、Z方向へ個々に変位可能に支持されている。キャッピング装置57は、回転伝達歯車583を介して伝達される回転駆動力で、キャップCP及びワイパ571をZ方向へ個々に変位させる機構を備えている(保守部材変位装置)。
【0047】
記録を実行しないときには、キャリッジ61がホームポジションHPで停止した状態(図7)でキャップCPを上昇させることで、記録ヘッド62のヘッド面がキャップCPで封止され、ヘッド面の乾燥が防止される。また、この状態では、図示していない吸引手段でヘッド面を吸引することが可能であり、それによって記録ヘッド62のヘッド面に配設されたインク噴射ノズル(図示せず)のノズル詰まり等を解消することができる。そして、キャップCPを下降させることで、記録ヘッド62のヘッド面からキャップCPが離間し、記録紙Pへの記録を実行することが可能な状態になる。このとき、ワイパ571を記録ヘッド62のヘッド面に摺接係合可能な位置へ進出させた状態で、記録ヘッド62をホームポジションHPからプラテン53上へ移動させれば、記録ヘッド62のヘッド面に付着した余分なインクや紙粉等をワイパ571で除去することができる。
【0048】
PGセンサ36は、光学式センサであり、ワイパ571の側部に設けられたセンサホルダ572に配設されている。したがって、ワイパ571をZ方向へ変位させることによって、プラテン53の直近で、PGセンサ36をZ方向へ変位させることができる(センサ変位装置)。それによって、プラテン53のプラテンリブ531の頂面(記録紙Pの支持面)、プラテンリブ531の頂面に支持される記録紙Pの記録面及び記録ヘッド62のヘッド面のZ方向における位置をPGセンサ36により非接触で検出することが可能になる(検出装置)。尚、PGセンサ36は、ワイパ571と同様にZ方向へ変位させることが可能なキャップCPに配設しても良いし、別個にPGセンサ36専用の変位機構を設けても本発明の実施は可能である。
【0049】
<自動PG制御手順>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50における自動PG制御について、図9〜図11を参照しながら説明する。
【0050】
図9は、インクジェットプリンタ50の要部斜視図であり、図10は、インクジェットプリンタ50の要部を模式的に図示した正面図であり、ともにキャリッジ61をワイパ571の近傍に停止させた状態を図示したものである。図11は、自動PG制御手順のフローチャートである。
【0051】
「制御装置」としての記録制御部100は、まず記録紙Pを給送し(ステップS1)、紙検出器33で記録紙Pの副走査方向Yの先端位置を検出するとともに、キャリッジ61を主走査方向Xへ往復動させながらPWセンサ34で記録紙Pの主走査方向Xの両端位置を検出する(ステップS2)。この記録紙Pの主走査方向Xの両端位置からは、その記録紙Pの大きさを特定することができる。
【0052】
つづいて、キャリッジ61を検出ポジション(ワイパ571の近傍の位置)へ移動させる(ステップS3)。つづいて、ワイパ571をZ方向へ変位させて、Z方向におけるプラテンリブ531の頂面位置A、プラテンリブ531に支持される記録紙Pの記録面位置B及び記録ヘッド62のヘッド面位置CをPGセンサ36でそれぞれ検出する(ステップS4)。
【0053】
つづいて、各検出位置からPG及び記録紙Pの厚みdを演算する(ステップS5)。より具体的には、Z方向におけるプラテンリブ531の頂面位置Aと記録ヘッド62のヘッド面位置Cとの差から、PGを特定することができる。また、Z方向におけるプラテンリブ531の頂面位置Aと記録紙Pの記録面位置Bとの差から、その記録紙Pの厚みdを特定することができる。そして、演算したPG及び記録紙Pの厚みdに基づいて、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dが適正な一定の間隔となるように、前記の自動PG調整機構(図4)により、その記録紙Pに最適なPGを設定する(ステップS6)。
【0054】
以上説明したように、本発明に係るインクジェットプリンタ50は、PG(記録ヘッド62のヘッド面とプラテンリブ531の頂面との間隔)を非接触で検出することによって、記録ヘッド62のヘッド面をプラテンリブ531の頂面や記録紙Pに当接させることなく、PGを検出することができる。そして、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dが適正な一定の間隔となるように、PGを調整する。それによって、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dを適正な一定の間隔に設定することができる。
【0055】
したがって、本発明に係るインクジェットプリンタ50によれば、記録ヘッド62のヘッド面を記録紙Pの支持面や記録紙Pに当接させることなく、かつ短時間でPGを適正な間隔に自動調整することができる。
【0056】
また、本発明に係るインクジェットプリンタ50においては、PGセンサ36により、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dを直接検出しても良い。より具体的には、記録紙Pの記録面位置Bと記録ヘッド62のヘッド面位置Cだけを検出すれば、その差から、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dを特定することができる。そして、検出した記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dが適正な一定の間隔となるようにPGを調整する。
【0057】
このように、PGセンサ36により、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dを直接検出することによって、記録紙Pの厚みdにかかわらず、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dを適正な一定の間隔に設定することができる。また、記録紙Pの厚みdを検出する工程が不要になるので、より短時間でPGを自動調整することができる。さらに、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔Dを直接検出しながら設定するので、その間隔Dをより高精度に設定することができる。
【0058】
さらに、本発明に係るインクジェットプリンタ50においては、記録紙Pの厚みdを特定しなくても本発明による作用効果を得ることができるのは言うまでもないが、上記のように、PGセンサ36により、プラテンリブ531の頂面に支持される記録紙Pの厚みdも検出するのがより好ましい。検出した記録紙Pの厚みdからは、その記録紙Pの種類(普通紙、専用紙、厚紙等)を特定することが可能だからである。そして、コックリングによる記録紙Pの波打ち変形の程度は、記録紙Pの種類によって異なってくる。
【0059】
したがって、その特定した記録紙Pの種類に応じて、コックリングによる記録紙Pの波打ち変形を考慮したマージンを付加してPGをさらに微調整することが可能になる。それによって、さらに高精度な記録を実現することができるとともに、コックリングに起因したいわゆるヘッド擦れが生ずる虞もより低減させることができる。さらに、その特定した記録紙Pの種類に応じて、記録紙Pの搬送誤差の補正値等を調整することも可能になる。
【0060】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】インクジェットプリンタの概略の平面図。
【図2】インクジェットプリンタの概略の側面図。
【図3】インクジェットプリンタの概略のブロック図。
【図4】インクジェットプリンタの自動PG調整機構の要部を図示した斜視図。
【図5】キャッピング装置のワイパを上昇させた状態を図示した要部斜視図。
【図6】キャッピング装置のワイパを上昇させた状態を図示した要部斜視図。
【図7】キャッピング装置のワイパを下降させた状態を図示した要部斜視図。
【図8】キャッピング装置のワイパを下降させた状態を図示した要部斜視図。
【図9】キャリッジをワイパの近傍に停止させた状態を図示した要部斜視図。
【図10】キャリッジをワイパの近傍に停止させた状態を図示した正面図。
【図11】自動PG制御手順のフローチャート。
【符号の説明】
【0062】
14 PG調整カム、33 紙検出器、34 PWセンサ、36 PGセンサ、50 インクジェットプリンタ、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排出駆動ローラ、55 排出従動ローラ、56 キャリッジガイド軸、57 キャッピング装置、58 PFモータ、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、63 CRモータ、100 記録制御部、571 ワイパ、CP キャップ、P 記録紙、X 主走査方向、Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドのヘッド面と被記録材の支持面との間隔を調整する間隔調整装置と、
前記記録ヘッドのヘッド面及び前記支持面を非接触で検出可能な検出装置と、
前記検出装置で検出した前記記録ヘッドのヘッド面と前記支持面との間隔に基づいて前記間隔調整装置を制御する制御装置と、を備えた記録装置。
【請求項2】
記録ヘッドのヘッド面と被記録材の支持面との間隔を調整する間隔調整装置と、
前記記録ヘッドのヘッド面及び前記支持面に支持される被記録材の記録面を非接触で検出可能な検出装置と、
前記検出装置で検出した前記記録ヘッドのヘッド面と前記被記録材の記録面との間隔に基づいて前記間隔調整装置を制御する制御装置と、を備えた記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記録装置において、前記検出装置は、前記支持面に支持される被記録材の記録面を非接触で検出可能であり、
前記制御装置は、前記検出装置で検出した前記記録ヘッドのヘッド面と前記支持面との間隔及び前記支持面と前記支持面に支持される被記録材の記録面との間隔に基づいて前記間隔調整装置を制御する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記検出装置は、光学式センサと、前記光学式センサを変位させるセンサ変位装置とを有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、前記記録ヘッドの保守を行う記録ヘッド保守装置を備え、
前記記録ヘッド保守装置は、前記記録ヘッドに係合可能な位置へ進退可能に支持された保守部材と、前記保守部材を変位させる保守部材変位装置とを有し、
前記光学式センサは、前記保守部材に配設されている、ことを特徴とした記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−248535(P2009−248535A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102630(P2008−102630)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】