説明

記録装置

【課題】本発明の目的は、操作子によって指し示された位置に応じた領域を示す画像を表示媒体に記録する前に、この画像が記録される領域を表示媒体上に表示することである。
【解決手段】記録装置は、2種類の光を照射する光照射部を有する。記録装置は、光記録型の表示媒体に対して、電圧を印加しないように電圧印加部を制御し、位置検出装置から取得した位置信号に応じて表示媒体を透過する第1の光を表示媒体に対して照射するように光照射部を制御する。その後に、記憶部に記憶されている位置信号に応じて表示媒体に画像を記録させるように電圧印加部に電圧を印加させ光照射部に第2の光を照射させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者が書き込んだ情報を表示する情報処理装置が知られている。特許文献1には、利用者の指定する位置を検出し、検出された位置情報に応じた情報をシート型表示装置に表示させる情報処理装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−206845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、操作子によって指し示された位置に応じた領域を示す画像を表示媒体に記録する前に、この画像が記録される領域を表示媒体上に表示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る記録装置は、照射される光及び印加される電圧に応じて画像を記録する表示媒体に対して電圧を印加する印加手段と、前記表示媒体に光を照射する照射手段と、移動可能な操作子が指し示している前記表示媒体上の位置を示す位置信号を出力する装置から当該位置信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記位置信号を記憶する記憶手段と、電圧を印加しないように前記印加手段を制御し、前記取得手段が取得した前記位置信号に応じて前記表示媒体を透過する第1の光を前記表示媒体に対して照射するように前記照射手段を制御する第1の制御と、その後に、前記記憶手段に記憶されている前記位置信号に応じて前記表示媒体に画像を記録させるように前記印加手段に電圧を印加させ前記照射手段に第2の光を照射させるように制御する第2の制御とを行う制御手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る記録装置は、前記第1の光は、前記第2の光とは波長分布または強度が異なることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る記録装置は、前記表示媒体を透過した前記第1の光は可視光であることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る記録装置は、前記表示媒体は、コレステリック液晶を有し、前記第1の光は、前記コレステリック液晶が反射する光の円偏光成分とは反対周りの円偏光であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る記録装置は、前記表示媒体は可視光以外の光を吸収する割合よりも可視光を吸収する割合の方が大きく、前記第1の光は、可視光以外の波長分布を有し、前記照射手段は、前記表示媒体を透過して可視光以外の光を可視光に変換する変換手段に入射するように前記第1の光を照射することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る記録装置は、前記制御手段は、前記操作子の移動する態様に応じて前記第1の制御を前記第2の制御に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、操作子によって指し示された領域を示す画像を表示媒体に記録する前に、この画像が記録される領域を表示媒体上に表示することができる。
請求項2に係る発明によれば、第1の光と第2の光とが同じ波長分布および同じ強度である場合に比べて、第1の光による表示媒体の材料へ与える影響の大きさを低減することができる。
請求項3に係る発明によれば、表示媒体を透過した第1の光を変換することなく画像が記録される領域を表わすことができる。
請求項4に係る発明によれば、コレステリック液晶が反射する光の円偏光成分とは反対周りの円偏光に第1の光を偏光しない場合に比べて、第1の光による画像を記録する領域の表示の態様がコレステリック液晶の状態によって異なることを抑制することができる。
請求項5に係る発明によれば、表示媒体を透過する第1の光の可視光成分によって記録する画像を示す領域を表示する場合に比べて、表示媒体に記録される画像のコントラストを向上させることができる。
請求項6に係る発明によれば、操作子の移動する態様に応じた第1の制御から第2の制御への切り替えを行わない場合に比べて、利用者は少ない操作でこの切り替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る記録装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る記録装置の外観図である。
【図3】表示媒体の構成を説明する図である。
【図4】コレステリック液晶の配向変化を説明する図である。
【図5】バックライトが照射する2種類の光の特性を示すグラフである。
【図6】記録装置の第1の制御を説明する図である。
【図7】記録装置の第2の制御を説明する図である。
【図8】記録面上の認識光および記録される画像を説明する図である。
【図9】変形例1に係る表示媒体の構成を説明する図である。
【図10】変形例2に係る記録装置および表示媒体の構成を説明する図である。
【図11】変形例3に係る記録装置の構成を説明する図である。
【図12】変形例4に係る記録装置の操作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る記録装置10の構成を示すブロック図である。記録装置10は、移動可能な操作子30が指し示す表示媒体20上の位置Pに応じた領域の画像を表示媒体20に記録する。表示媒体20は、印加される電圧および照射される光に応じた画像が記録される光記録型の電子ペーパである。例えば、コレステリック液晶を有する電子ペーパである。操作子30は、利用者が表示媒体20に画像を記録する際に用いられる部材である。操作子30は、利用者の操作によって、画像が記録される位置を指し示す。位置検出装置40は、電磁誘導式のセンサを有し、このセンサが検出する操作子30の位置から位置Pを検出する。
【0014】
電圧印加部110は、電圧を印加する機構を有し、表示媒体20に画像を記録するときに用いる電圧(以下、「記録電圧VR」という。)を表示媒体20に対して印加する。光照射部120は、2次元に配列された画素を複数有する透過型の液晶パネル121と光源として機能するバックライト122とを備える。バックライト122から照射された光Lは、液晶パネル121を透過し、表示媒体20に照射される。I/F(Infter Face:インターフェース)130は、USB(Universal Serial Bus)などの外部装置と接続する端子を有し、位置検出装置40とのインターフェースとなる。上述した位置検出装置40が検出した位置Pを示す信号(以下、「位置信号SP」という。)は、I/F130を介して制御部140へ伝達される。
【0015】
制御部140は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置やメモリなどの記憶手段を備え、記録装置10の各部の動作を制御する。記憶部150は、不揮発性メモリなどの記憶手段であって、表示媒体20へ記録する画像の領域を示す情報などを記憶する。操作部160は、利用者が記録装置10に対して各種操作を行うためのタッチパネル、キーボードなどの操作手段であって、操作内容を示す情報を制御部140に出力する。制御部140の制御によって情報が表示される表示画面を有していてもよい。
【0016】
図2は、本実施形態に係る記録装置10の外観図である。記録装置10は、筐体11、保持部12を備えている。筐体11は、プラスチック等の材料をにより構成され、表示媒体20を設置する面S11を有する形状に形成されている。筐体11は、内部に図示せぬ電圧印加部110、光照射部120、I/F130、制御部140および記憶部150を備えている。筐体11は、面S11上に操作部160を備えている。保持部12は、筐体11上に設けられ、表示媒体20の端部を挟んで保持する。表示媒体20は、記録された画像を表示する側の面である表示面201とは反対側の面を面S11に向けて保持される。保持部12は、表示媒体20を保持したときに表示媒体20と接する位置に電極を有する。電圧印加部110は、保持部12を介して表示媒体20に電圧を印加する。操作子30は、利用者が操作することによって、表示面201を指し示す。位置検出装置40は、記録装置10の表示媒体20が保持される側とは反対側に設置される。
【0017】
図3は、表示媒体20の断面と記録装置10および位置検出装置40とを模式的に示した図である。表示媒体20は、表示面201と記録面202とを有する。記録面202は、図3に示す各層を介して表示面201と対向する面である。表示面201と記録面202の間には、表示面201側から順に、保護層241、透明電極231、液晶層210、黒吸収層250、感光層220、透明電極232及び保護層242が形成されている。保護層241,242は、表示媒体20の表面を保護するための層である。保護層241,242は、例えば、PET(PolyEthylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタラート)樹脂を用いて作られる。透明電極231,232は、液晶層210及び感光層220に電圧を印加するための層である。透明電極231,232は、例えば、ITO(Indium-Tin Oxide:酸化インジウム錫)を用いて作られる。透明電極231,232には、それぞれ、透明電極231,232に電圧を印加するための端子233,234が電気的に接続されている。表示媒体20が保持部12に保持されているときには、端子233,234が保持部12の有する電極と接触する。このとき、電圧印加部110が電圧を印加すると、透明電極231,232に対して電圧が印加される。
【0018】
液晶層210は、印加される電圧に応じて配向が変化することにより光の反射状態を異ならせる素子を有する。液晶層210は、バインダー樹脂中にマイクロカプセル状のコレステリック液晶表示素子(以下、「コレステリック液晶」という。)が複数分散されたものである。感光層220は、照射される光に応じて電気抵抗を変化させる層である。感光層220は、例えば、有機感光体を材料に含んで組成されている。感光層220は、用いられる材料およびこれらの組成によってあらかじめ定められる光の波長帯の成分を吸収し、この光を吸収する前よりも電気抵抗が低くなる。このため、透明電極231,232に電圧が印加されているときには、光が照射される感光層220の領域において液晶層210に分圧される電圧が増加する。吸収層250は、感光層220が吸収する波長帯以外の波長帯の光を吸収する。吸収層250は、光を吸収する材料に顔料を用いる。なお、吸収層250は、染料を材料に構成されてもよい。吸収層250は、液晶層210および感光層220が光を透過する場合に観察されて黒色を呈する層である。なお、感光層220および吸収層250は、各々が吸収する波長帯の光であっても、全ては吸収せず、一部は透過する。例えば、表示媒体20のOD(Opitical Densitiy:光学密度)値は、1.5から2.0程度である。
【0019】
表示媒体20に電圧が印加されると複数の層により印加された電圧が分圧される。このとき、液晶層210には分圧された電圧が印加され、液晶層210の内部に電界が発生する。この電界の強度(以下、「電界強度」という。)によって、コレステリック液晶は配向状態を変化させる。コレステリック液晶は、いわゆる双安定性を有し、電界が発生していない状態においては、光を透過するフォーカルコニック配向または特定の波長の光を選択的に反射(ブラッグ反射)するプレーナ配向のいずれかを維持する。この例においては、プレーナ配向のコレステリック液晶は白色を呈する。コレステリック液晶は、液晶層210内部の電界強度に応じて、プレーナ配向からフォーカルコニック配向またはフォーカルコニック配向からホメオトロピック配向を経てプレーナ配向に配向状態を変化させる。このとき、液晶層210内部の電界強度は、配向状態を変化させるしきい値(以下、「電界強度しきい値EST」という。)を超えていることが必要である。
【0020】
図4は、コレステリック液晶の配向変化を説明する図である。図4は、液晶層210の内部の電界強度ES(以下、「電界強度ES210」という。)と液晶層210の反射率との関係の一例を示すグラフである。図4の横軸は電界強度ES210を示し、縦軸は液晶層210の反射率を示している。この例の場合、電界強度ES210が電界強度しきい値EST1未満であるときに、コレステリック液晶は、元の配向状態を維持してプレーナ配向またはフォーカルコニック配向となっている。この状態から液晶層210に電圧が印加されて電界強度ES210が電界強度しきい値EST1以上でEST2未満になると、コレステリック液晶は、元の配向状態がプレーナ配向であった場合はフォーカルコニック配向に配向状態が変化し、元の配向状態がフォーカルコニック配向であった場合は配向状態が維持される。この状態から液晶層210に電圧が印加されて電界強度ES210が電界強度しきい値EST2以上になると、コレステリック液晶は、フォーカルコニック配向からホメオトロピック配向に配向状態が変化する。ホメオトロピック配向となったコレステリック液晶は、電界強度ES210が急激に減少すると、プレーナ配向に配向状態が変化する。液晶層210に印加される電圧に応じて変化する反射率の相違が、液晶層210に階調の変化を生じさせる。
【0021】
図3に戻る。液晶パネル121およびバックライト122は、筐体11の内部に設置されている。バックライト122は、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等を有する光源である。バックライト122は、表示媒体20が保持される面S11に向けて光を照射する。バックライト122は、図示せぬ2つの光源を有し、各光源が照射する光の波長分布および強さが異なることで2種類の光を照射する。
【0022】
図5は、バックライト122が照射する2種類の光の特性を示すグラフである。グラフの縦軸は光の強さである光強度LSを示し、横軸は光の波長λを示す。光の波長λには各波長帯を、各々が示す色であるUV(Ultra Violet:紫外線)、V(Violet:紫)、B(Blue:青)、G(Green:緑)、Y(Yellow:黄)、O(Orange:橙)、R(Red:赤)、IR(Infrared:赤外線)によって示している。第1の光L1は、赤の波長帯に広がる波長分布を有し、光強度LSの最大値が光強度値LS1となる光である。第2の光L2は、可視光の紫から赤まで広がる波長分布を有し、光強度LSの最大値が光強度値LS2となる光である。
【0023】
ここで、感光層220は、紫および青の波長帯WB220の光を吸収するように組成されている。このため、感光層220は、第2の光L2に含まれる波長帯WB220の成分を吸収し、吸収した光に応じて抵抗を変化させる。吸収層250は、可視光における波長帯WB220を除く波長帯WB250の光を吸収する。ただし、上述のとおり、表示媒体20は、一部の光を透過する。このため、表示媒体20に入射する光強度値LS3を超える光強度値LSを有する光は、表示媒体20を透過した光が表示面201上で人間の目に視認される。この例では、バックライト122は、光強度値LS3以上の光強度値LS1を有する第1の光L1を照射する。なお、図5では、光強度値LS2は、光強度値LS3未満で示されているが、光強度値LS3以上であってもよい。
【0024】
図3に戻る。液晶パネル121は、バックライト122よりも面S11側で面S11に一方の面を露出するように配置されている。液晶パネル121は、電圧を印加されると入射する光を画素ごとに選択的に透過させる。位置検出装置40は、筐体11に対して表示媒体20が保持される側とは反対側に設置される。操作子30は、コイル等で構成されている回路を内部に有する。位置検出装置40は、電磁誘導式のセンサを有し、操作子30が有する回路に反応して操作子30の位置を検出する。位置検出装置40には、電磁誘導方式によるデジタイザ等の公知の技術が用いられる。
【0025】
位置検出装置40は、自装置における筐体11側の面S40と表示媒体20が記録装置10に保持されているときの表示面201との距離の情報をあらかじめ有している。この距離の情報と検出した操作子30の位置の情報とに基づいて、位置検出装置40は、位置Pを検出する。具体的には、位置検出装置40は、操作子30を表示面201からあらかじめ定められた距離よりも近い位置で検出した場合に、この検出した位置に対応する表示面201上の位置を位置Pとして検出する。位置検出装置40は、あらかじめ定められた時間の間隔で位置Pを検出する動作を繰り返す。位置検出装置40は、図示せぬ配線を介してI/F130と接続している。位置検出装置40は、検出した位置Pを示す信号である位置信号SPを制御部140へI/F130を介して出力する。
【0026】
図6は、記録装置10の第1の制御を説明する図である。以下の説明では、図3と共通する部分は同じ符号をつけて説明を割愛する。図6は、利用者が操作子30を操作して表示媒体20に画像を記録している状態を示している。図6では、記録領域RAが操作子30によって指し示された画像が記録される領域を示し、非記録領域NRAが画像の記録されない領域を示す。位置検出装置40は、検出したこれら複数の位置信号SPを制御部140へ出力する。制御部140は、位置信号SPを取得すると、まず、電圧を印加しないように電圧印加部110を制御する。次に、取得した位置信号SPに応じて表示媒体20を透過する第1の光L1を表示媒体20に対して照射するように光照射部120を制御する。図6では、記録領域RA121が位置信号SPに応じた画素の領域を示し、非記録領域NRA121が領域RA以外の画素の領域を示す。また、制御部140は、位置信号SPの取得すると、取得した位置信号SPの情報を記憶部150へ記憶させる。
【0027】
記録領域RA121においては、バックライト122が照射した第1の光L1は、液晶パネル121を透過して表示媒体20の記録面202へ入射する。このとき、表示媒体20は電圧が印加されていない状態となっている。このため、液晶層210の配向状態は変化しない。記録面202から表示媒体20に入射した第1の光L1は、上述のとおり吸収層250を含む表示媒体20の各層を透過して、表示面201における記録領域RAから出射する。制御部140は、このようにして、表示媒体20を透過する第1の光L1によって操作子が指し示した領域を表示媒体20上に表示する。制御部140がこのように記録装置10の各部を制御することを、第1の制御という。
【0028】
図7は、記録装置10の第2の制御を説明する図である。図7は、利用者が書き込みを終了して、位置検出装置40によって位置Pが検出される距離よりも離れた位置に操作子30を移動させた状態を示している。位置検出装置40は、位置Pが検出されなくなると、制御部140への位置信号SPの出力を停止する。制御部140は、位置信号SPが取得されなくなると、記憶部150を参照し、蓄積した位置信号SPの情報を取得する。制御部140は、取得した位置信号SPに応じて表示媒体20に画像を記録させる第2の光L2を表示媒体20に対して照射するように光照射部120を制御する。そして、制御部140は、電圧印加部110を制御して、表示媒体20に記録電圧VRを印加する。
【0029】
記録電圧VRは、感光層220に光が照射されていない場合、液晶層210に分圧される電圧で生じる電界の電界強度ESが電界強度しきい値EST1未満になる大きさの電圧である。また、記録電圧VRを表示媒体20に印加した状態で感光層220に光が照射されると、液晶層210に分圧される電圧で生じる電界の電界強度ESが電界強度しきい値EST1以上電界強度しきい値EST2未満になる。記録電圧VRを印加されている表示媒体20では、光が照射された感光層220の領域における液晶層210の配向状態がフォーカルコニック配向に変化または維持されて黒色を呈する。制御部140は、このようにして、利用者が書き込んだ領域RAを黒く表示する画像を表示媒体20に記録する。制御部140がこのように記録装置10の各部を制御することを、第2の制御という。このようにして、制御部140は、操作子30の移動する態様に応じて第1の制御を第2の制御に切り替える。
【0030】
図8は、記録面201上の認識光および記録される画像を説明する図である。図8(a)は、利用者が操作子30を操作した結果表示面201に第1の光L1が表示されている状態を示している。書き込まれた画像の領域には、記録装置10によって第1の光L1が出射されている。利用者は、第1の光L1が示す画像である認識画像AIによって書き込んだ画像が記録される領域を認識する。認識画像AIは、第1の光L1によって赤く光る領域として表示される。図8(a)では、説明の便宜上、認識画像AIは記録される画像とは異なる画像であることを示すため一点鎖線で示されているが、実際には連続した領域で表示される。図8(b)は、利用者が操作子30を表示面201から離した後、記録装置10が表示媒体20に書き込まれた画像を記録画像RIとして記録した状態を示している。記録画像RIは、認識画像AIが表示されていた領域に黒く表示される画像として表示される。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな形態で実施可能である。
<変形例1>
上述した実施形態においては、操作子の指し示す位置を検出するセンサとしてデジタイザを用いたが、他のセンサを用いてもよい。例えば、タッチパネルを用いて、操作子30がタッチパネルに接触する位置Pを検出してもよい。
【0032】
図9は、変形例1に係る表示媒体の構成を説明する図である。表示媒体20aは、保護層241の表面にタッチパネル41aが構成されている。タッチパネル41aは、図示せぬ保持部12が表示媒体20aを保持したときにI/F130と接続して操作子30が接触した位置Pの位置信号SPを制御部140へ出力する。
【0033】
<変形例2>
上述した実施形態においては、第1の光L1に可視光を用いたが、可視光以外の光を用いてもよい。表示媒体20は、感光層220および吸収層250が可視光を吸収することで画像を記録し、表示面201に黒い領域を表示している。このため、表示媒体20は、可視光以外の光を吸収する割合よりも可視光を吸収する割合の方が大きく構成されている。このことから、表示媒体20に吸収されにくい光として、例えば、紫外線や赤外線を用いればよい。この場合、表示媒体20を透過した第1の光は蛍光材等の材料によって可視光に変換されることで、認識画像を表示する。ここで用いられる蛍光材等の材料は、例えば、照射される光のエネルギーを吸収して可視光を放出する材料である。
【0034】
図10は、変形例2に係る記録装置10bおよび表示媒体20bの構成を説明する図である。光照射部120bは、可視光以外の光を含む第1の光L1bを照射する。表示媒体20bは、保護層241の表面に蛍光材等を材料に形成されている波長変換層51bが構成されている。波長変換層51bは、保護層241とは反対側に表示面201bを有する。波長変換層51bは、表示媒体20bの各層を透過した第1の光L1bを可視光の波長帯の光に変換する。この例では、例えば、青の波長帯の光である第1の光L1b2に変換する。波長変換層51bは、変換した第1の光L1b2を表示面201bから出射する。表示面201bには、第1の光L1b2によって認識画像AIが表示される。光照射部120bが照射する第1の光L1bは、表示媒体20に入射し、波長変換層51bに到達すると第1の光L1b2に変換される。なお、波長変換層51bは、記録装置10に含めて構成してもよい。この場合、波長変換層51bは、例えば、保持部12に接合されて構成され、保持部12に保持される表示媒体20の表面を覆うように配置される。いずれの場合も、光照射部120bは、表示媒体20を透過して波長変換層51bに入射するように第1の光L1を照射する
【0035】
<変形例3>
上述した実施形態においては、液晶パネル121から出射された第1の光L1をそのまま表示媒体20に入射させたが、偏光特性の異なる第1の光L1を表示媒体20に入射させてもよい。例えば、第1の光L1として、コレステリック液晶が反射する光の円偏光成分とは反対周りの円偏光を表示媒体に入射させてもよい。これにより、第1の光L1が液晶層210においてプレーナ配向となっている領域を透過する際、コレステリック液晶の反射する円偏光に比べてコレステリック液晶による反射が少なくなる。
【0036】
図11は、変形例3に係る記録装置10cの構成を説明する図である。記録装置10cは、液晶パネル121よりも面S11側に偏光変換層124cを備える。偏光変換層124cは、液晶パネル121から出射される直線偏光を液晶層210が有するコレステリック液晶の反射する円偏光成分とは反対周りの円偏光に変換する1/4λ板などのフィルタを有する。この場合、偏光変換層124cから出射される円偏光は、液晶層210の有するコレステリック液晶が反射する円偏光とは反対の方向の円偏光である。なお、この例においては、直線偏光を変換したが、例えば、光照射部120が有機EL(Electro-Luminescence)等の照射される光が直線偏光でない光源で構成されていた場合は、照射される光の特性に合わせて円偏光に変換する偏光変換層124cを用いればよい。
【0037】
<変形例4>
上述した実施形態においては、制御部140は、操作子30が表示面201から位置検出装置40によって位置Pが検出される距離よりも離れた後に第2の制御を開始したが、操作部への操作によって第2の制御を開始してもよい。この際、制御部140は、第2の制御の開始以外に、第1の制御を停止した後に再び第1の制御をやり直すように各部を制御してもよい。また、制御部140は、第2の制御を開始する際に選択された態様に応じて画像を記録してもよい。例えば、点線や破線等の領域自身が示す線の種類または領域の境界を示す線の種類およびこれらの線の太さなどである。また、色を表示する表示媒体の場合は記録画像IRの領域の色を選択させてもよい。
【0038】
図12は、変形例4に係る記録装置10dの操作を説明する図である。表示媒体20dは、表示面201dに色を有する記録された画像を表示する。操作部160dは、記録を開始する「確定」、記録をやり直す「やり直し」、記録する画像の色を選択する「色」および記録する画像における線の種類や太さを選択する「線の種類」のスイッチを有する。図12(a)は、利用者が操作子30を操作して画像を書き込んだ状態を示している。表示面201上には、認識画像AIが表示されている。図12(b)は、利用者が操作子30で操作部160dの確定スイッチを押した状態を示している。制御部140は、この操作により、表示媒体20に画像を記録するように各部を制御する。表示面201上には、表示媒体20に記録された記録画像RIが表示されている。このとき、利用者が確定スイッチを押す前に、色スイッチを押して色を選択すると、記録画像RIの色が選択された色で表示される。図12(c)は、図12(a)の後、利用者が操作子30で操作部160dのやり直しスイッチを押した状態を示している。制御部140は、この操作により、認識画像AIの表示を停止し、位置信号SPの情報を消去するように各部を制御する。
【0039】
<変形例5>
上述した実施形態においては、第1の光L1には光強度値LS3以上である赤の波長帯の光、第2の光L2には光強度値LS3未満である可視光の波長帯の光を用いた。しかし、第1の光L1および第2の光L2は各々の波長分布または光の強度が異なる光であれば他の光であってもよい。例えば、第1の光L1と第2の光L2とが光強度値LS3未満の光強度LSである場合、第1の光L1および第2の光L2には異なる波長帯の光を用いればよい。この場合、感光層220は、第1の光L1は透過し、第2の光L2が有する波長帯の光を吸収するように組成されていることが望ましい。また、表示媒体20全体では、第1の光L1を透過することが望ましい。例えば、赤、緑および青の光を照射するLEDでバックライト122を構成し、制御部140が表示媒体20の特性に合わせて第1の光L1および第2の光L2に用いる光の波長帯および強さを制御すればよい。表示媒体20が緑の光を透過し、感光層220が青または赤の光を吸収するように組成されていれば、制御部140は、緑の光を照射するLEDを用いて第1の光L1を照射し、青または赤の光を照射するLEDを用いて第2の光L2を照射するように各部を制御する。
【0040】
<変形例6>
本発明は、中間調を表示する場合、すなわち3以上の階調数で情報を表示する場合にも適用され得る。本発明は、例えば、コレステリック液晶の配向状態が変わる際の過渡状態を利用して中間値を表現してもよいし、階調に応じて照射する光の強度または光を照射する期間を変えて記録することで中間値を表現してもよい。また、本発明は、いわゆるモノクロ表示に限定されるものではない。本発明は、例えば、青(400〜500nm程度)、緑(500〜580nm程度)、赤(580〜700nm程度)のそれぞれの波長域の光を選択的に反射し、その他の波長域の光を透過する表示素子層を積層した表示媒体と、かかる表示媒体のそれぞれの表示素子層に独立に電圧を印加するように構成された記録装置とによる記録システムに適用されれば、カラー表示が実現される。
【0041】
<変形例7>
上述した実施形態においては、記録装置10は、露光した部分の液晶層がフォーカルコニック配向からホメオトロピック配向に変化するように表示媒体20を制御した。しかし、本発明においては、どの相状態の変化を利用するかは特に制限はなく、第2の光L2を照射することで配向変化が生じ、反射と透過とが選択されて画像が記録されれば問題ない。例えば、本実施形態の表示媒体20においても、全面をプレーナ配向として、印加されると電界強度ES210がEST2以上EST3以下となる記録電圧VRを印加された領域が階調を変化させ、その表示を白より黒へと変化させてもよい。この場合、第2の光L2が照射された領域は、フォーカルコニック配向となり、第2の光L2が照射されなかった領域は、プレーナ配向となる。
【0042】
<変形例8>
上述した実施形態においては、制御部140は、位置検出装置40によって位置Pが検出される距離よりも操作子30が表示面201から離れた状態となると、第1の制御を停止して第2の制御を開始した。しかし、制御部140は、このように位置Pが検出されなくなっても、あらかじめ定められた時間の間は第2の制御を開始せずに第1の制御の状態を維持してもよい。この場合、制御部140は時刻の情報を生成する機能をさらに有し、位置Pが検出されなくなった時刻からあらかじめ定められた時間が経過する時刻までは、第1の制御の状態を維持するように各部を制御する。
【符号の説明】
【0043】
10,10b,10c,10d…記録装置、11…筐体、12…保持部、13…外光遮断部、20,20a,20b,20d…表示媒体、30…操作子、40…位置検出装置、41a…タッチパネル、51b…波長変換層、110…電圧印加部、120,120b…光照射部、121…液晶パネル、122…バックライト、124c…偏光変換層、130…I/F、140…制御部、150…記憶部、160,160d…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射される光及び印加される電圧に応じて画像を記録する表示媒体に対して電圧を印加する印加手段と、
前記表示媒体に光を照射する照射手段と、
移動可能な操作子が指し示している前記表示媒体上の位置を示す位置信号を出力する装置から当該位置信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記位置信号を記憶する記憶手段と、
電圧を印加しないように前記印加手段を制御し、前記取得手段が取得した前記位置信号に応じて前記表示媒体を透過する第1の光を前記表示媒体に対して照射するように前記照射手段を制御する第1の制御と、その後に、前記記憶手段に記憶されている前記位置信号に応じて前記表示媒体に画像を記録させるように前記印加手段に電圧を印加させ前記照射手段に第2の光を照射させるように制御する第2の制御とを行う制御手段と
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1の光は、前記第2の光とは波長分布または強度が異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記表示媒体を透過した前記第1の光は可視光である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記表示媒体は、コレステリック液晶を有し、
前記第1の光は、前記コレステリック液晶が反射する光の円偏光成分とは反対周りの円偏光である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記表示媒体は可視光以外の光を吸収する割合よりも可視光を吸収する割合の方が大きく、
前記第1の光は、可視光以外の波長分布を有し、
前記照射手段は、前記表示媒体を透過して可視光以外の光を可視光に変換する変換手段に入射するように前記第1の光を照射する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記操作子の移動する態様に応じて前記第1の制御を前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−133565(P2011−133565A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291034(P2009−291034)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】