説明

記録装置

【課題】擦傷やジャムの発生を抑制し、衝打時の騒音を低減できる記録装置を提供する。
【解決手段】用紙Psを衝打して記録するドットインパクトヘッド51と、ドットインパクトヘッド51と対向する衝打面52aを備えるプラテン52と、ドットインパクトヘッド51と衝打面52aとの間に用紙Psを搬送する搬送部20と、を有するプリンターであって、衝打面52aは、下向きで設けられており、用紙Psの搬送方向において衝打面52aに対し上流側と下流側の両方に配置され、用紙Psの一部を重力に抗して湾曲させて衝打面52aと接触させる搬送ローラー対24,25を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、記録装置としてドットインパクトプリンターが開示されている。
このドットインパクトプリンターは、プラテン上の用紙にインクリボンを介してワイヤピンを衝打することにより、用紙に対し文字等の記録を行うものである。ドットインパクトプリンターにおいては、プラテンの衝打面に対し用紙が浮いていると、衝打する際に、用紙が振動して騒音を発することが課題となっている。
【0003】
この課題に対し、下記特許文献1のドットインパクトプリンターは、リボンカセットのリボンマスクを湾曲させて設置し、ヘッド先端よりもプラテン側に突出させている。そして、リボンマスクを弾性変形させ、その復元力により用紙を衝打面に押し付けることで、用紙が衝打面から浮くことを抑制し、騒音を低減させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−61658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、記録装置においては、例えば、用紙上面にインクジェットにより写真等を記録し、その用紙下面にドットインパクトにより日付等の文字を記録するレイアウトを採用する場合がある。この場合、日付等を記録する際に、用紙を下向きの衝打面に向けてワイヤピンで突き上げることとなり、用紙がより振動し易く、その騒音対策が問題となる。
ここで、上記従来技術を適用しようとすると、リボンマスクを弾性変形させ用紙を衝打面に対して、ある一定の力で押し付けているので、当該押し付けにより衝打面と用紙上面との間に大きな摩擦が作用し、用紙上面に形成した写真等に擦傷等が発生する虞がある。また、リボンマスクを突出させるための部材が必要となると共に、ヘッドと衝打面との間のギャップが小さくなり、紙詰まり(ジャム)が生じ易くなる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、擦傷やジャムの発生を抑制し、衝打時の騒音を低減できる記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、記録媒体を衝打して記録する記録ヘッドと、上記記録ヘッドと対向する衝打面を備える記録媒体支持部材と、上記記録ヘッドと上記衝打面との間に上記記録媒体を搬送する搬送装置と、を有する記録装置であって、上記衝打面は、下向きで設けられており、上記記録媒体の搬送方向において上記衝打面に対し上流側と下流側の少なくともいずれか一方に配置され、上記記録媒体の一部を重力に抗して湾曲させて上記衝打面と接触させる案内部を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、記録媒体そのものを重力に抗して湾曲させ、下向きの衝打面に接触させるので、押し付け力の上限は記録媒体の剛性によって規定され、それを超える過度の押し付け力を作用させずに、記録媒体の衝打面に対する浮きを抑制することができる。また、記録媒体を湾曲させる案内部は、記録ヘッドと対向する衝打面に対し、搬送方向において上流側及び下流側の少なくともいずれか一方に設けられているから、記録ヘッドと衝打面とのギャップが狭くなることもない。
【0008】
また、本発明においては、上記案内部は、上記記録媒体を挟み込むローラー対を有しており、該ローラー対の上側ローラーは下側ローラーに対し、上記搬送方向において上記衝打面に対して配置される側に傾いているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、衝打面に対し搬送方向上流側に配置されたローラー対においては、上側ローラーは下側ローラーに対し、搬送方向上流側に傾いているので、当該ローラー対に挟み込まれた記録媒体は、その下流側の一部が衝打面に向かって上方に案内される。一方、衝打面に対し搬送方向下流側に配置されたローラー対においては、上側ローラーは下側ローラーに対し、搬送方向下流側に傾いているので、当該ローラー対に挟み込まれた記録媒体は、その上流側の一部が衝打面に向かって上方に案内される。
【0009】
また、本発明においては、上記案内部は、上記下流側に配置されているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、衝打面に対し搬送方向下流側に配置した案内部によって記録媒体を湾曲させ衝打面に接触させるので、記録媒体が衝打面を越えてその下流側の案内部に到るまでは、記録媒体を衝打面に接触させる必要が無く、記録媒体の衝打面に接する側に擦傷をより与え難くさせることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記衝打面は、母材である上記記録媒体支持部材よりも摩擦係数を小さくする表面処理が施されているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、衝打面を表面処理することにより摩擦係数を下げることで、記録媒体の衝打面に接する側に擦傷をより与え難くさせることができる。
【0011】
また、本発明においては、上記湾曲した上記記録媒体の一部を上記衝打面に案内する第2の案内部を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、湾曲した記録媒体を衝打面に適切に案内することにより、ジャムの発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明においては、上記搬送方向において上記衝打面よりも上流側で、上記記録ヘッドによって記録される面と反対の面に、流体を噴射して記録する第2の記録ヘッドを有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、流体により記録した面の擦傷を抑制しつつ、衝打時の騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターを示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態における裏面印字部を示す構成図である。
【図3】本発明の一別実施形態における裏面印字部を示す構成図である。
【図4】本発明の一別実施形態における裏面印字部を示す構成図である。
【図5】本発明の一別実施形態における裏面印字部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る記録装置の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面では、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。ここで、水平面内の所定方向をX軸方向(幅方向)、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(搬送方向)、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。
本実施形態では、記録装置として、インクジェット式ヘッドとドットインパクト式ヘッドとを併せ持つ複合プリンター(以下、単にプリンターと称する)について例示する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター11を示す概略構成図である。
プリンター11は、ロール状に巻かれたロール紙RPから延出される長尺の用紙(記録媒体)Pに対して、インクをインクジェットヘッド31から噴射して画像や文字等を印字する構成となっている。プリンター11は、ロール紙RPから延出された用紙Pを搬送する搬送部(搬送装置)20と、用紙Pに対し印字を行う記録部30と、印字を経た用紙Pを所定サイズに切断する切断部40と、切断後の用紙Psの裏面に印字を行う裏面印字部50とを有している。
【0016】
プリンター11は、ロール紙RPを収容するケース12と、搬送部20、記録部30、切断部40、裏面印字部50等を収容する本体ケース13と、を備えている。そして、本体ケース13の前側(+Y側)には、印字が施されて切断された用紙Psが排出される排紙トレイ17が設けられている。また、用紙Pの切断によって生ずる切断片Pkを受けて溜める容器(以降、「切屑容器」と称する)15が、本体ケース13の右側面において、表面から少し凹むように面が形成された凹部14内に配設されている。切屑容器15は、本実施形態では本体ケース13から搬送方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に引き抜くことができるようになっており、その直交方向の端面が凹部14において露出するとともに、その端面において切屑容器15を引く抜くための取手16が設けられている。
【0017】
以下、プリンター11に設けられた各構成部位について、プリンター11に備えられた搬送部20として機能する複数のローラー対によって搬送される用紙Pの搬送順に従って説明する。搬送部20は、給紙ローラー対21、搬送ローラー対22,23,24,25、排紙ローラー対26を有する。まず、ロール紙RPから巻き解かれた用紙Pは、給紙ローラー対21によって、記録部30に給紙されるようになっている。記録部30は、インク(流体)を噴射するインクジェットヘッド(第2の記録ヘッド)31と、用紙Pを支持する支持台32と、を有する。
【0018】
記録部30では、ロール紙RPから給送された用紙Pを搬送して、用紙Pの上面(表面)に画像等を印字する。まず搬送ローラー対22によってインクジェットヘッド31と支持台32との間に用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pの上面(表面)はインクジェットヘッド31に対して所定の距離を保って搬送され、このとき、用紙Pの上面にインクジェットヘッド31からインクが噴射されて印字が行われる。その後、用紙Pは、搬送ローラー対23によって切断部40に搬送される。
【0019】
切断部40は、回転刃などによって構成されるカッター41を機能部品として有し、用紙Pを、印字された画像等に対応する領域毎に切断する。このとき、切断部40では、印字された領域について搬送方向の端部に存在する不要な領域を取り除くように切断が行われるようになっている。このため、図示するように、用紙Pは、切断によって切断片Pkが発生し、発生した切断片Pkは重力方向に落下するようになっている。従って、この落下する切断片Pkを受けて溜めるために、切屑容器15が切断部40よりも下側に配設されている。
【0020】
切断後の用紙Psは、次に裏面に文字を印刷する裏面印字部50に搬送される。裏面印字部50は、インクリボンをワイヤピンで衝打することにより用紙Psの下面(裏面)に押し付けてインクドットを形成するドットインパクトヘッド(記録ヘッド)51と、用紙Psを印字の際に上側から支持するプラテン(記録媒体支持部材)52と、を有している。裏面印字部50では、搬送される用紙Psを、まず搬送ローラー対24によってドットインパクトヘッド51とプラテン52との間に用紙Psを送り出す。そして、送り出された用紙Psは、その下面(裏面)にドットインパクトヘッド51によってドットが記録されることによって所定の文字が印字され、搬送ローラー対25によって搬送方向に送られる。
【0021】
その後、用紙Psは、例えば、乾燥部(不図示)に搬送され、機能部品としてのヒーターユニット(不図示)などによって乾燥が施されるなどの処理を経て、最後に排紙ローラー対26によって排紙トレイ17に排出されるようになっている。
【0022】
次に、本実施形態の裏面印字部50の構成について詳しく説明する。
図2は、本発明の実施形態における裏面印字部50を示す構成図である。
裏面印字部50においては、ドットインパクトヘッド51とプラテン52の衝打面52aとが鉛直方向(Z軸方向)で対向配置されている。本実施形態の衝打面52aは、鉛直方向下向きで設けられている。
【0023】
ドットインパクトヘッド51が設けられる側には、用紙Psの下面を支持するガイド板53が設けられている。ドットインパクトヘッド51は、ガイド板53の下側に設けられている。ドットインパクトヘッド51は、ガイド板53に形成された開口部53aを介して、ガイド板53上にヘッド先端部51aを露出させ、用紙搬送経路の所定位置で用紙Psの下面の一部を衝打して記録する構成となっている。
【0024】
プラテン52は、Z軸方向に延在する略円柱形状を有し、下端部の底面が衝打面52aとなっている。プラテン52の母材は、例えばSUS304からなり、衝打面52aには、母材よりも摩擦係数小さくする表面処理が施されている。本実施形態の衝打面52aには、母材よりも表面粗さを小さくする鏡面処理を施している。なお、衝打面52aに、表面処理として、平滑で摺動性の極めて高い塗装(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)をコーティングしても良い。
【0025】
裏面印字部50は、用紙Psの搬送方向(Y軸方向)において、衝打面52aに対し上流側(−Y側)と下流側(+Y側)の両方に配置され、用紙Psの一部を重力に抗して湾曲させて衝打面52aを接触させる搬送ローラー対(案内部、ローラー対)24,25を有する。搬送ローラー対24,25は、上記のように搬送部20の一部を構成している。
【0026】
搬送ローラー対24は、衝打面52aに対し搬送方向上流側(−Y側)に配置され、用紙Psを挟持する構成となっている。搬送ローラー対24の上側ローラー24aは下側ローラー24bに対し、搬送方向において衝打面52aに対して配置される側(−Y側)に傾いている。換言すると、搬送ローラー対24は、上側ローラー24aと下側ローラー24bとの回転軸を結ぶ直線が、鉛直方向に延びる直線に対して12時の方向から3時の方向の範囲内(鋭角の範囲内)の所定角度で傾いて配置されている。
【0027】
一方、搬送ローラー対25は、衝打面52aに対し搬送方向上流側(+Y側)に配置され、用紙Psを挟持する構成となっている。搬送ローラー対25の上側ローラー25aは下側ローラー25bに対し、搬送方向において衝打面52aに対して配置される側(+Y側)に傾いている。換言すると、搬送ローラー対25は、上側ローラー25aと下側ローラー25bとの回転軸を結ぶ直線が、鉛直方向に延びる直線に対して12時の方向から9時の方向の範囲内(鋭角の範囲内)の所定角度で傾いて配置されている。
【0028】
搬送ローラー対24,25の傾きの度合いは、用紙Psの一部が湾曲して衝打面52aに接触できるように設定されている。具体的には、用紙Psの剛性(所謂こしの強さ)に基づいて実験的に設定されている。例えば、用紙Psの剛性が小さい場合は、搬送ローラー対24,25の傾きの度合いを大きくし、用紙Psの剛性が大きい場合は、搬送ローラー対24,25の傾きの度合いを小さく設定すればよい。
【0029】
本実施形態のプラテン52は、湾曲した用紙Psの一部を衝打面52aに案内する傾斜部(第2の案内部)52bを有する。本実施形態の傾斜部52bは、プラテン52の底面(衝打面52a)の角をテーパー状に加工することにより形成されている。なお、傾斜部52bにおいても、母材よりも摩擦係数小さくする表面処理を施しても良い。また、湾曲した用紙Psの一部が衝打面52aよりも上方へ移動することを規制するガイド板を別途設けても良い。また、このガイド板に、湾曲した用紙Psの一部を衝打面52aに案内する傾斜部をさらに設けても良い。
【0030】
続いて、上記構成の裏面印字部50における衝打時の騒音を抑制する作用について説明する。
【0031】
裏面印字部50においては、搬送ローラー対24,25が、用紙Psの一部を重力に抗して湾曲させて衝打面52aと接触させる。具体的に、搬送ローラー対24においては、上側ローラー24aは下側ローラー24bに対し、搬送方向上流側(−Y側)に傾いているので、当該ローラー対に挟み込まれた用紙Psは、その下流側の一部が衝打面52aに向かって上方に案内される。一方、搬送ローラー対25においては、上側ローラー25aは下側ローラー25bに対し、搬送方向下流側に傾いているので、当該ローラー対に挟み込まれた用紙Psは、その上流側の一部が衝打面52aに向かって上方に案内される。これにより、搬送ローラー対24,25の間の用紙Psの一部は、重力に抗して湾曲させられ、衝打面52aと接触する。
【0032】
このように、裏面印字部50においては、用紙Psの一部を重力に抗して湾曲させることにより衝打面52aに対する浮きを抑制することができる。したがって、ドットインパクトヘッド51によって衝打した際においても、ドットインパクトヘッド51と衝打面52aとのギャップの間で、用紙Psが重力の影響で上下に振動することがなく、騒音の発生が抑制されることとなる。
【0033】
また、用紙Psそのものを重力に抗して湾曲させ、下向きの衝打面52aに接触させるので、押し付け力の上限は用紙Pの剛性によって規定され、それを超える過度の押し付け力を作用させずに、用紙Psの衝打面52aに対する浮きを抑制することができる。具体的には、当該剛性を超える過度の押し付け力が作用しても、用紙Pが弾性変形するだけなので、その力が吸収される。すなわち、用紙Psは、リボンマスクのような部材によって剛的に拘束されていないので、ある程度の力を逃がす柔的な変形が可能となるためである。したがって、裏面印字部50よりも搬送方向上流側の記録部30によって、用紙Psの上面に画像等が形成されていても、その上面が衝打面52aと接触することによる擦傷の発生が抑制される。さらに、衝打面52aは、鏡面処理が施されており、摩擦係数を小さくしているので、用紙Psの上面に対する擦傷の発生がより確実に抑制される。
【0034】
また、用紙Psを湾曲させる搬送ローラー対24,25は、ドットインパクトヘッド51と対向する衝打面52aに対し、搬送方向において上流側及び下流側に設けられているから、ドットインパクトヘッド51と衝打面52aとのギャップが狭くなることもない。したがって、用紙Psのジャムの発生が抑制される。また、傾斜部52bや不図示のガイド板等により、湾曲した用紙Psの一部を衝打面52aに適切に案内することにより、例えば、用紙Psがプラテン52の側部等に接触してジャムが発生したりすることを抑制することができる。また、本実施形態では、搬送部20を構成する搬送ローラー対24,25の傾きを調節して、用紙Psの一部を重力に抗して湾曲させているので、既存のローラーの配置変更で実現可能となるため別途部材を設けることがなくコスト的に優位である。
【0035】
したがって、上述した本実施形態によれば、用紙Psを衝打して記録するドットインパクトヘッド51と、ドットインパクトヘッド51と対向する衝打面52aを備えるプラテン52と、ドットインパクトヘッド51と衝打面52aとの間に用紙Psを搬送する搬送部20と、を有するプリンター11であって、衝打面52aは、下向きで設けられており、用紙Psの搬送方向において衝打面52aに対し上流側と下流側の両方に配置され、用紙Psの一部を重力に抗して湾曲させて衝打面52aと接触させる搬送ローラー対24,25を有するという構成を採用することによって、擦傷やジャムの発生を抑制し、衝打時の騒音を低減することができる。
【0036】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0037】
上記実施形態においては、記録媒体の一部を重力に抗して湾曲させる案内部(搬送ローラー対24,25)を、搬送方向において衝打面に対し上流側と下流側の両方に配置した場合の例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。
例えば、図3に示すように、案内部(搬送ローラー対24)を、搬送方向において衝打面52aに対し上流側にのみ配置した場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
また、図4に示すように、案内部(搬送ローラー対25)を、搬送方向において衝打面52aに対し下流側にのみ配置した場合は、上記実施形態と同様の作用効果の他に次のような作用効果が得られる。すなわち、図4に示すように、衝打面52aに対し搬送方向下流側に配置した搬送ローラー対25によって用紙Psを湾曲させ衝打面52aに接触させる場合、用紙Psが衝打面52aの下を通過し、その下流側に配置された搬送ローラー対25に到るまで(図4において2点差線で示す)は、用紙Psを衝打面52aに接触させる必要が無く、用紙Psの衝打面52aに接する上面に擦傷をより与え難くさせることができる。
【0039】
また、上記実施形態においては、案内部としてローラー対を用いる構成について説明したが、図5に示すように、案内部を、ガイド傾斜部53bとして、用紙Psの一部を重力に抗して湾曲させる構成であっても良い。
【0040】
また、上記実施形態においては、記録装置がプリンター11である場合を例にして説明したが、プリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【0041】
また、記録装置としては、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。本発明は、例えば微小量の液滴を吐出させる記録ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。また、記録装置の具体例としては、上記実施形態で説明したような用紙がロール状に巻かれたロール紙を収容体(ケース12)に備えた装置に限られない。例えば、可撓性を有する基板や金属板、あるいはプラスチックシートや布など、長尺状の記録媒体がロール状に巻かれているものを収容体に備えた装置であれば、いずれも記録装置として採用することができる。さらに、収容体に備えられた長尺状の記録媒体は、例えば葛折状になっているなどのように必ずしもロール状に巻かれていなくてもよい。
【符号の説明】
【0042】
11…プリンター(記録装置)、20…搬送部(搬送装置)、24…搬送ローラー対(案内部、ローラー対)、24a…上側ローラー、24b…下側ローラー、25…搬送ローラー対(案内部、ローラー対)、25a…上側ローラー、25b…下側ローラー、31…インクジェットヘッド(第2の記録ヘッド)、51…ドットインパクトヘッド(記録ヘッド)、52…プラテン(記録媒体支持部材)、52a…衝打面、52b…傾斜部(第2の案内部)、53b…ガイド傾斜部(案内部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を衝打して記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと対向する衝打面を備える記録媒体支持部材と、前記記録ヘッドと前記衝打面との間に前記記録媒体を搬送する搬送装置と、を有する記録装置であって、
前記衝打面は、下向きで設けられており、
前記記録媒体の搬送方向において前記衝打面に対し上流側と下流側の少なくともいずれか一方に配置され、前記記録媒体の一部を重力に抗して湾曲させて前記衝打面と接触させる案内部を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記記録媒体を挟み込むローラー対を有しており、該ローラー対の上側ローラーは下側ローラーに対し、前記搬送方向において前記衝打面に対して配置される側に傾いていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記案内部は、前記下流側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記衝打面は、母材である前記記録媒体支持部材よりも摩擦係数を小さくする表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記湾曲した前記記録媒体の一部を前記衝打面に案内する第2の案内部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記搬送方向において前記衝打面よりも上流側で、前記記録ヘッドによって記録される面と反対の面に、流体を噴射して記録する第2の記録ヘッドを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−126020(P2012−126020A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279567(P2010−279567)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】