説明

記録装置

【課題】記録ヘッド内の気体を除去可能な、記録装置を提供する。
【解決手段】本発明の記録装置は、インク貯蔵部と、インク流入路105、インク排出路106、及びノズル101を有する記録ヘッドと、インク供給路と、インク循環路と、を有する。また、インクをインク貯蔵部と記録ヘッドの間で循環させるポンプ手段を有する。記録ヘッドの内部は、第1フィルタ107によって、インク流入路105が繋がる第1液室102と、ノズル101が設けられた面に接する第2液室103と、に分離されている。第2液室103には、第1フィルタ107よりもノズル101が設けられた面から離れて位置する第2フィルタ108が接続されている。インク貯蔵部からのインクの一部を、第2液室103を介さずインク貯蔵部に循環させる第1泡抜き路109と、第2液室103から第2フィルタ108を介してインク排出路106に繋がる第2泡抜き路110と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、特にインクを吐出することで記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の1つとして、インクジェット記録ヘッドを有するインクジェット記録装置がある。この記録装置において、記録ヘッドのインクが流れる経路の内部(以下「記録ヘッド内」という)に気体が存在すると、記録ヘッドの各ノズルにインクが供給されずに、気体が供給される場合があり、この場合、インク滴はノズルから吐出されずに記録不良となる。また、記録ヘッド内の気体は、周囲温度の変化により体積変化を起こす。記録ヘッド内の気体の体積変化により、微負圧に維持された記録ヘッド内の圧力は変化し正圧になることがある。下向きにノズル列が形成された記録ヘッドの場合、メニスカスの維持が困難となりノズルからのインクの流出を生じる場合がある。
【0003】
これに対し、記録ヘッド内の気体を除去する提案がなされている。従来、特許文献1に開示されているような、インクタンクと記録ヘッドとの間をインクが循環しているインクジェット記録装置では、記録ヘッド内の気体を除去する機構を備えている。例えば、特許文献1には、弁内へ気体が進入すると開放され、弁内がインクで満たされていると閉鎖する弁を、記録ヘッドからインクタンクに戻るインクが通過するインク循環路に設けた構成が示されている。この弁は、弁体であるフロートボールと、中空の円錐形をした弁体受けとで構成されている。弁体受けの頂点側は、インクタンクに繋がっており、底面側が記録ヘッドに繋がっている。記録ヘッド内に気体がない場合は、弁体受けが、循環するインクで満たされ、弁体内に収容されたフロートボールはインクの浮力で浮き上がり、弁体受けのインクタンクと繋がる開口を塞ぐ。記録ヘッド内に気体がある場合は、弁体受け内に気体が徐々に溜まっていく。すると弁体受け内のインクは徐々に減っていくため、フロートボールは、浮力を受けられなくなり、弁体受けの底面側に移動し、弁体受けのインクタンクと繋がる開口が開き、気体がインクタンクへ逃げていく。そして弁体受け内に気体がなくなると、再びインクが流入してくるため、弁体受けのインクタンクと繋がる開口がフロートボールで塞がれる。このようにして、記録ヘッド内の気体を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−23289号公報
【特許文献2】特開2009−107137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法だと、弁は、弁体受け内にインクがない場合に、フロートボールが自重で底面側に移動、つまり下降する必要がある。しかし、フロートボールの外表面と弁体受けの内表面との間に残留するインクの表面張力によってフロートボールが弁体受けの内面に付着して、下降しないおそれがあり、フロートボールのみでは弁の動作が不安定で、信頼性が損なわれる。これを解決するため、フロートボールを棒状の押し下げ部材で押し下げる方法が考えられるが、押し下げ部材を駆動させる機構を設ける必要があり、弁の構成が複雑化してしまう。また、コストの増加を避けられない。
【0006】
また、特許文献1の弁では、弁体受け内にフィルタを設けている。記録ヘッド内に気体が混入した場合に、弁体受け内に気体が集まるが、弁体受け内のフィルタに気泡となった気体が引っかかり、気体は簡単に上昇しない場合がある。この場合、気泡となった気体がインクタンクへ完全に抜けきらず記録ヘッド内へ移動するため、インク滴が吐出されずに記録不良となる。吐出不良を回復するためには、ノズルからインクを排出する回復ユニットで回復動作を行うため、廃インクを生じてしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、構成を複雑化することなく、記録ヘッド内の気体を除去することができる、記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の記録装置は、インク貯蔵部と、インク流入路及びインク排出路を有し、インクを吐出するノズルが設けられた記録ヘッドと、を有する。また、インク貯蔵部から記録ヘッドへ前記インクを供給するための流路であるインク供給路と、記録ヘッドからインク貯蔵部へインクを循環させるための流路であるインク循環路と、を有する。さらに、インクをインク貯蔵部からインク供給路を介してインク流入路に流入させ、インク排出路からインク循環路を介してインク貯蔵部へ排出させるポンプ手段を有する。記録ヘッドの内部は、第1フィルタによって、インク流入路が繋がる第1液室と、ノズルが設けられた面に接する第2液室と、に分離されている。第2液室には、第1フィルタよりもノズルが設けられた面から離れて位置する第2フィルタが接続されている。インク貯蔵部から流れてくるインクの一部を、第2液室に流入させずにインク貯蔵部に循環させる第1泡抜き路と、第2液室から第2フィルタを介してインク排出路に繋がる第2泡抜き路と、が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの循環によって記録ヘッド内の気体を除去することができ、そのため、構成を簡略化することができる。また、回復動作を減らせるため、廃インクを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る記録装置の第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】記録ヘッドの概略構成図である。
【図3】第1の気体溜まりと第2の気体溜まりが記録ヘッド内に存在する状態を示す概略図である。
【図4】第2の気体溜まりのみが記録ヘッド内に存在する状態を示す概略図である。
【図5】第1の気体溜まりのみが記録ヘッド内に存在する状態を示す概略図である。
【図6】気泡溜まりが存在する状態から記録ヘッドがインクで満たされるまでの変化を示すフローチャート図である。
【図7】気体溜まりとインクの状態を、第1泡抜き路と第2泡抜き路との関係で示した図である。
【図8】本発明に係る記録装置の第2の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図である。
【図9】本発明に係る記録装置の第3の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図である。
【図10】本発明に係る記録装置の第4の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図である。
【図11】本発明に係る記録装置の第5の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図である。
【図12】本発明に係る記録装置の第6の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
【0012】
[実施形態1]
図1は、本発明に係る記録装置の第1の実施形態の概略構成図である。本発明の記録装置は、交換可能な密閉容器であるインクタンク500と、大気連通口403を設けたサブタンク400と、インクを吐出するためのノズル101を有する記録ヘッド100と、吐出不良を回復するための回復系ユニット200とを有している。メインタンク500が記録装置本体に装着された時に、メインタンク500の接続部が、サブタンク400側に設けられた中空針であるインク供給ピン401及び空気導入部402に接続される。これにより、メインタンク500内に収容されているインクがサブタンク400に供給される。メインタンク500とサブタンク400とでインクを貯蔵するインク貯蔵部を構成する。サブタンク400は、インク供給チューブ301によって記録ヘッド100と繋がっており、インク供給チューブ301はインク供給路を形成している。また、一端が記録ヘッド100に繋がり、他端が液送ポンプ(ポンプ手段)300に繋がるインク循環チューブ302と、一端が液送ポンプ300に、他端がサブタンク400に繋がるポンプチューブ303とで形成されるインク循環路が設けられている。
【0013】
サブタンク400は、大気連通口403を介して、大気に開放されている。記録ヘッド100のインク吐出の不具合を解消するために、記録ヘッド100のノズル101が設けられた面に回復系ユニット200を当接させて、全てのノズルを覆うキャップ部材や吸引ポンプ、及びインク拭き取り用のブレード等を有して構成される。
【0014】
図2は、本発明の記録装置における記録ヘッドの概略構成図を示している。記録ヘッド100内には第1フィルタ107が、一端から他端に向かってノズル101の設けられた面から徐々に離れるように、つまり下方から上方に向かって記録ヘッド100内を分割するように斜めに設けられている。そして、第1フィルタ107を境に、記録ヘッド100内は上方に位置する第1液室102と下方に位置する第2液室103とに分かれている。また、第1液室102の第1フィルタ107と対向する壁面の一部も、第1フィルタ107と同様に、一端から他端に向かってノズル101の設けられた面から徐々に離れるようになっている。第1液室102の、最も上方の部分には気体溜め部102aが設けられ、第2液室103の最も上方の部分には第2フィルタ108が設けられている。第1液室102は、インク流入路105を介してインク供給チューブ301に繋がっている。なお、インク流入路105とインク供給チューブ301とは、切り離し可能なようにジョイント104aで繋がっている。また、気体溜め部102aはインクの一部が流れる第1泡抜き路109に繋がっており、第2フィルタ108は第2液室103からインクが流れる第2泡抜き路110に繋がっている。そして、第1泡抜き路109と第2泡抜き路110とは繋がっている。第1泡抜き路109と第2泡抜き路110との交点からインク循環路302に繋がるインク排出路106が設けられている。
【0015】
次に、インク吐出時のインクの流れについて説明する。サブタンク400から供給されたインクはインク供給チューブ301を介して、記録ヘッド100へと流れていく。インク供給チューブ301から供給されたインクはジョイント104aを介してインク流入路105へと流れ、第1液室102へと流れ込む。第1液室102に溜められたインクは、記録ヘッド100内の第1フィルタ107を通り、第2液室103へと溜められる。第1フィルタ107及び第2フィルタ108は、微細な小孔を形成した金網又は樹脂の多孔質体からなり、第2液室103に溜まるインクは、第1フィルタ107及び第2フィルタ108によって、外部からのゴミや毛羽などが除去されている。第2液室103内のインクは不図示のヒータボードの発熱により加熱され、ノズル101より吐出する。ノズル101には、サブタンク400の液面との間に高低差(水頭差)を設けて、微負圧を作用させ、良好なメニスカスを形成している。またサブタンク400から記録ヘッド100へのインクの供給源(動力源)は、微細なノズル101の毛管力であり、ノズル101から吐出し消費した分のインクだけがインク供給チューブ301を流れて自然にサブタンク400から記録ヘッド100に供給される。
【0016】
次に第1液室102と第2液室103の両方のインク内に気体が混入しておらず、気体溜まりが形成されていない場合において、インクを循環させたときのインク流れについて説明する。インク流入路105からインク排出路106へのインク流れを形成してインクを循環させる液送ポンプ300により、予め決められた所定の流量速度でサブタンク400から記録ヘッド100までの間のインクを循環させる。気体溜め部102aの上部には第1泡抜き路109が設けられ、第2フィルタ108の上部には第2泡抜き路110が設けられ、第1泡抜き路109と第2泡抜き路110が連結してインク排出路106へとインクを誘導している。インクの循環方向は図1に記載している通り、サブタンク400、インク供給チューブ301、記録ヘッド100、インク循環チューブ302、液送ポンプ300、ポンプチューブ303、サブタンク400の順である。インク流入路105から流れてきたインクは第1液室102内に溜まり、点Aにおいて、第1泡抜き路109へと導かれるインクと第1フィルタ107を介して第2液室103へ導かれるインクとに分かれて流れる。点Aは、第1泡抜き路109または第2液室103へ流れるインクの流れからみて、ともに上流側となっている。第2液室103内に溜まったインクは第2フィルタ108を介して第2泡抜き路110へと導かれる。このとき、第2液室103内の圧力は、ノズル101のメニスカス保持力以下になるような流量に設定し、流量が大きくなることで生じる第2液室103内の負圧で、ノズル101から外気を取り込むことを防いでいる。
【0017】
第1泡抜き路109と第2泡抜き路110に導かれたインクは両方が交わるところである点Bにて合流し、インク排出路106を通り、液送ポンプ300を介して、サブタンク400に導かれる。点Bは、第1泡抜き路109の下流側、かつ第2泡抜き路110の下流側である。液送ポンプ300は、回転数を制御して一定の流量を送液することが可能な公知のチューブポンプや、ストロークを制御して一定の流量を送液することが可能な公知のダイヤフラムポンプ、あるいはベローズポンプ等が適する。ここで言う流量とは、単位時間当りに移動する流体の体積を表わしている。
【0018】
第1液室102と第2液室103に気体溜まりが形成される場合について説明する。インク供給チューブ301は柔軟性を有し、記録装置内をサブタンク400と記録ヘッド100とを接続するために這い回されている。柔軟性を有するために気体(空気)を透過し易く、記録装置を長期間休止させておいた場合に、緩慢ではあるが、インク供給チューブ301内に気体が溜まる。インク供給チューブ301内に侵入した気体は、記録動作中の記録ヘッド100へのインクの供給によって、記録ヘッド100内まで移動することがある。この移動した気体が第1液室102の上部の気体溜め部102aに溜まり、第1の気体溜まり111aとなる(図3(a)参照)。
【0019】
また、記録ヘッド100は、ノズル101からインクを吐出する際に熱エネルギーを発生させ、記録ヘッドの熱作用面に沸騰膜を生じさせてインクに気泡を形成させ、気泡の成長と収縮を繰り返すことで、ノズル101からインクを吐出する。このとき、収縮しきれなかった気泡や、熱エネルギーによって高温となったノズル101近傍のインクに溶存していた気体(空気)が、インクに溶けきれなくなり、第2液室103に発生することがある。これらの気泡や気体は、浮力により第2液室103内を上昇したり、傾斜した第1フィルタ107を伝ったりして、第2フィルタ108の下方に第2の気体溜まり111bとなって存在することになる(図3(a)参照)。
【0020】
図3、図4、及び図5は、上記の第1の気体溜まり111a又は第2の気体溜まり111bの存在状態を3つの状態に分けて示した図である。図3に示す第1の状態は、第1液室102に第1の気体溜まり111aが存在し、第2液室103にも第2の気体溜まり111bが存在する状態である。図4に示す第2の状態は、第1液室102に気体溜まりがなく、第2液室103に第2の気体溜まり111bが存在する状態である。図5に示す第3の状態は、第1液室102に第1の気体溜まり111aが存在し、第2液室103には気体溜まりがない状態である。これらいずれの場合であっても、最終的には、気体溜まり111a、111bを第1液室102及び第2液室103から除去する必要がある。
【0021】
そこで、各気体溜まり111a、111bが存在する3つの状態から、記録ヘッド100がインクで満たされた状態にするための方法を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0022】
図6(a)が、最初に2つの気体溜まり111a、111bが存在する状態、図6(b)が、最初に第2の気体溜まり111bのみが存在する状態、図6(c)が、最初に第1の気体溜まり111aのみが存在する状態である。また、図7には、気体溜まりとインクの状態を、第1泡抜き路109と第2泡抜き路110との関係で整理したものを示す。第1泡抜き路109内が気体(空気)かインクか、第2泡抜き路110内が気体(空気)かインクか、第2泡抜き路110に流れがあるかないか、をマトリクスにして、図6の各ステップを用いて図示している。ちなみに、第1泡抜き路109と第2泡抜き路110に同時に気体が存在することはない。
【0023】
図6(a)に示す、第1液室102内に第1の気体溜まり111aが存在し、かつ第2液室103に第2の気体溜まり111bが存在する場合(S1:図3(a)参照)について説明する。まず、図3(b)に示すように、第1の気体溜まり111aから第1泡抜き路109を通して気体をインク排出路106に排出する(S2)。それによって、第1の気体溜まり111aが消滅し、第2の気体溜まり111bのみが存在する状態になる(S3)。これは、図4(a)に示されているのと同じ状態である。次に、図4(b)に示すように、第2の気体溜まり111bから第2泡抜き路110を通して気体をインク排出路106に排出する(S4)。それによって、第2の気体溜まり111bが消滅し、図2に示すように記録ヘッド100内がインクで満たされた状態になる(S5)。
【0024】
図6(b)に示す、当初から第1の気体溜まり111aが存在せず、第2の気体溜まり111bのみが存在する場合(S3:図4(a)参照)について説明する。この場合は、図6(a)に示すフローチャートの後半と同様のステップを行う。すなわち、図4(b)に示すように、第2の気体溜まり111bから第2泡抜き路110を通して気体をインク排出路106に排出する(S4)。それによって、第2の気体溜まり111bが消滅し、図2に示すように記録ヘッド100内がインクで満たされた状態になる(S5)。
【0025】
図6(c)に示す、当初から第2の気体溜まり111bが存在せず、第1の気体溜まり111aのみが存在する場合(S6:図5(a)参照)について説明する。図5(b)に示すように、第1の気体溜まり111aから第1泡抜き路109を通して気体をインク排出路106に排出する(S7)。それによって、第1の気体溜まり111aが消滅し、図2に示すように記録ヘッド100内がインクで満たされた状態になる(S5)。
【0026】
以上説明した方法は、インクの流量を調節して、以下に示す各条件を適宜に使い分けることによって実施することができる。
【0027】
各条件の説明に先立って、流抵抗の発生圧力(インクによる流抵抗と循環流量との積によって表される圧力)と、フィルタ及びノズルのメニスカス保持力について説明しておく。流抵抗の発生圧力とは、粘性層流流れにおけるハーゲン・ポアゼイユの法則、ΔP=R×Qにおける圧力ΔP(Pa)のことである。ここに、Rは流抵抗(Pa・sec・m-3)、Qは流量(m-3/sec)である。圧力ΔPは、流抵抗Rである流路に流量Qが流れるときの、その流路内の圧力差を表している。
【0028】
また、フィルタのメニスカス保持圧力とは、フィルタが有する微細な小孔(開口)と液体の間に生じる毛細管現象によって、気体溜まりと液体間に形成されるメニスカス(液面)を保持できる圧力のことである。ノズルのメニスカス保持圧力とは、微細なノズル内の液体に生じる毛細管現象によって、大気と液体間に形成されるメニスカス(液面)を保持できる圧力のことである。
【0029】
第1の条件は、第1及び第2の気体溜まり111a、111bが共に存在する状態(図3(a))から、第1の気体溜まり111aを泡抜きするための条件である。この場合、第2フィルタ108のメニスカス保持圧力は、第1泡抜き路109のインクによる流抵抗の発生圧力(インクによる流抵抗と循環流量との積によって表される圧力)よりも大きい関係とする。これは、第1液室102及び第2液室103の両方に第1及び第2の気体溜まり111a、111bが存在する状態(図3(a))において、第1泡抜き路109のインク又は第1の気体溜まり111aの気体を流すための条件である。さらに、この関係は、第2泡抜き路110の気体溜まり111bの気体を流さないための条件ともなる。この状態は、記録装置の休止後で、吐出の熱エネルギーを多く使うグラフィック、アート画像や写真印字等を行う場合に起こる。
【0030】
第1液室102及び第2液室103の両方に第1及び第2の気体溜まり111a、111bが存在する状態(S1)(図3(a))から、第1の条件で、インクの循環動作を行う。すると、図3(b)に示すように、第1の気体溜まり111aの気体が第1泡抜き路109に移動し、第1泡抜き路109が気体で満たされる(S2)。ただし、第1の気体溜まり111aの体積によっては、インクと気体が混在した状態となることもある。そして、第1泡抜き路109がインクで満たされた状態(S3)(図4(a)参照))となる。
【0031】
点Aと点Bを結ぶ流路には、点Aから第1泡抜き路109を経て点Bに至る第1の流路と、点Aから、第1フィルタ107、第2液室103、第2フィルタ108、第2泡抜き路110を経て点Bに至る第2の流路とがある。第1の流路と第2の流路とは並列流路を構成する。第1泡抜き路109のインクによる流抵抗の発生圧力は、第2泡抜き路110を介して第2フィルタ108に作用するが、第2フィルタ108のメニスカス保持力よりも小さいので、第2液室103内の第2の気体溜まり111bは移動せず、インクも流れない。
【0032】
第2の条件は、第2の気体溜まり111bのみが存在する状態(S3)(図4(a))から第2の気体溜まり111bを泡抜きするための条件である。第2の気体溜まり111bだけが存在する状態は、上述の、第1及び第2の気体溜まり111a、111bが共に存在する状態から第1の気体溜まり111aの気体を除去した後だけではなく、初めから第2の気体溜まり111bのみが生じてしまう場合もある。例えば、記録装置を休止せずに、連続して記録を行う場合には、インク供給チューブ301から侵入する気体は殆どない。しかしながら、上述したように、インクを吐出させる際に発生させる熱エネルギーによって生じる気体(気泡)が第2液室103に発生し、第2の気体溜まり111bとなる。
【0033】
第2の気体溜まり111bを除去するには、第1泡抜き路109のインクによる流抵抗の発生圧力が、第2フィルタ108のメニスカス保持圧力よりも大きい関係とする。ただし、第1泡抜き路109のインクによる流抵抗の発生圧力は、ノズル101のメニスカスを破るほど大きくならないようにする。この関係は、図4(a)に示す、第2の気体溜まり111bのみが存在する状態において、メニスカスが形成された第2フィルタ108に大きな圧力を作用させる。これにより、第2液室103の第2の気体溜まり111bの気体を、第2フィルタ108を通過させて、第2泡抜き路110へ流すための条件である。この条件下でインクの循環を行うと、第2の気体溜まり111bの気体は第2泡抜き路110を通り、インク排出路106へと導かれる(S4)(図4(b))。第2の気体溜まり111bの体積によっては、第2泡抜き路110はインクと気体が混在した状態となることもある。第2の流路に流れが生じるとき、第1泡抜き路109のインクも同時に流れるが、 第1泡抜き路109を流れるインクの流量と第2の流路を流れるインクの流量は、それぞれの部位に設定された流抵抗に応じた流量となり、必ずしも同じとはならない。
【0034】
以上のように第1及び第2の条件を使い分けることにより、第1及び第2の気体溜まり111a、111bの両方が存在する状態(S1)から第2の気体溜まり111bのみが存在する状態(S3)を経て、気体を除去する。その結果、図2に示すように、記録ヘッド100内をインクで満たす(S5)ことができる(図6(a)参照)。同様にして、初めから第2の気体溜まり111bのみが存在する状態(S3)から気体を除去し、記録ヘッド100内をインクで満たす(S5)ことができる(図6(b)参照)。
【0035】
第1及び第2の気体溜まり111a、111bの気体は、インクと共にインク排出路106を通り、インク循環チューブ302を流れ、液送ポンプ300を介して、サブタンク400に導かれる。サブタンク400においては、気体が気液分離され、インク供給チューブ301に、サブタンク400に送られてきた気体が吸い込まれることはない。
【0036】
第3の条件は、第1の気体溜まり111aのみが存在する状態(S6)(図5(a))から第1の気体溜まり111aを泡抜きするための条件である。第1の気体溜まり111aのみが存在する状態は、第1及び第2の気体溜まり111a、111bが共に存在する状態(S1)(図3(a))や、第2の気体溜まり111bのみが存在する状態(S3)(図4(a))から移行するのではない(図6参照)。線画や文字の記録等で、単位時間当りに消費するインクが少なく、インクを吐出する際の熱エネルギーがそれほど大きくない場合には、第2液室103に気体や気泡が生じない。しかし、インク供給チューブ301内に侵入した気体が、記録で消費されるインクと共に記録ヘッド100まで運ばれてくるような場合に、この現象が生じる。
【0037】
第1の気体溜まり111aを除去するために、インクの循環開始時においてインクの循環流量が小さい状態で、第1の気体溜まり111aの気体を第1泡抜き路109へ導く(S7)(図5(b))。そして、所定時間の経過後にインクの循環流量が大きくなるように液送ポンプ300を制御し、サブタンク400へ気体溜まり111aの気体を導き、記録へッド100内をインクで満たす(S5)(図2)。インクの循環流量を変化させるのは、第1液室102の第1の気体溜まり111aの気体を第1フィルタ107に呼び込まないようにするためである。つまり、第1の気体溜まり111aの気体が第1フィルタ107に呼び込まれ、表面張力の作用によって第1フィルタ107に貼り付いてしまうと、もはや気体自身の浮力では上昇することはできずに、不動化する。そして第1フィルタ107にはメニスカスが形成される。このメニスカスを打ち破って気体溜まり111aを除去するには、第2の条件で述べたような大きな圧力を作用させなければならず、あまりに大きな圧力が必要になると、ノズル101のメニスカスを破る恐れがあるので、これを避けなければならない。
【0038】
そこで、第1の気体溜まり111aを除去するには、第1泡抜き路109のインクの流量が、第2泡抜き路110のインクの流量より大きい関係とする。特に、第1泡抜き路109のインクの循環流量が、第2泡抜き路110のインクの循環流量の2倍以上あることが好ましい。所定時間の間、この関係を保つようにすれば、第1の気体溜まり111aが第1フィルタ107に呼び込まれることはない。
【0039】
なお、上述の所定時間とは、第1液室102に想定される第1の気体溜まり111aの気体を第1泡抜き路109から排出するまでの時間である。気体溜まりは、第1及び第2の気体溜まり111a、111bが、共に存在するか(図3参照)、どちらか一方が存在する状態(図4、及び図5参照)のいずれかである。このいずれの状態であっても、第1の気体溜まり111aの気体を排出するためには、予めわかっている第1液室102の容積相当分が全て第1の気体溜まり111aの体積であるとして、これを排出するまでの時間として設定する。所定時間後はノズル101のメニスカスを破壊しない範囲でインクの循環流量を大きくすることで、第1の気体溜まり111aの気体を速やかにサブタンク400まで循環し、動作時間を短縮する。
【0040】
上述したように、気体溜まり111a、111bが両方、またはいずれか一方が存在する状態(S1、S3、S6)から、記録ヘッド100内が最終的にインクで満たされた状態(S5)になる。
【0041】
ただし、以上説明したS1〜S7の全ての場合において、以下に示す第4の条件を満たすように設定する必要がある。その第4の条件は、インクの循環における第2液室103内の発生圧力が、ノズル101のメニスカス保持圧力よりも小さい関係とする。これは、図2を用いてインクの循環について説明したように、インクの循環流量が大きくなることで生じる第2液室103内の負圧で、ノズル101から外気を取り込むことを防ぐためである。気体溜まりがどこにあるか、また、第1泡抜き路109内と第2泡抜き路110内の気体とインクの存在状態で、インクの循環流量の上限が異なる。これについては後述する。
【0042】
なお、図3(a)や図5(a)に示すように第1泡抜き路109にインクがあって、第1液室102の第1泡抜き路109側に第1の気体溜まり111aが存在する場合(S1、S6)は、第1泡抜き路109にはメニスカスが形成される。したがって、ノズル101や第2フィルタ108と同様に第1泡抜き路109にメニスカス保持圧力が発生する。しかしながら、本実施形態では、第1泡抜き路109のメニスカス保持圧力は、ノズル101や第2フィルタ108のメニスカス保持圧力及び各部材の流抵抗による発生圧力と比べても僅かであり、流れ場に影響を与えないものとする。これは、第1泡抜き路109を極細管としなければ実現できるものである。
【0043】
上述したように、第1及び第2の気体溜まり111a、111bを除去するためには、インクの循環流量を調整すればよい。以下に第1〜第4の条件の具体例について説明する。
【0044】
フィルタのメニスカス保持圧力を構成する因子は、フィルタの平均開口径、インクの表面張力、インクとフィルタの接触角である。また、フィルタの流抵抗の発生圧力を構成する因子はフィルタの平均開口径、厚み、流体が流れる断面積と、流体の粘度や流量である。また、フィルタのない流路の流抵抗を構成する因子は、流体の粘度、流路長、流路径である。発生圧力はその流抵抗と流れる流体の流量との積である。さらに、ノズルのメニスカス保持圧力を構成する因子はノズルの径とインクの表面張力、インクとノズルの接触角である。
【0045】
フィルタのメニスカス保持圧力をPf(Pa)、フィルタの平均開口径df(m)、インクの表面張力T(N/m)、インクとフィルタの接触角をα(deg)とすると、式(1)となる。
【0046】
【数1】

【0047】
フィルタの流抵抗をRf(Pa・sec・m‐3)、フィルタの断面積をSf(m2)、インクの粘度μi(Pa・sec)、とすると、式(2)となる。
【0048】
【数2】

【0049】
係数kは、フィルタの厚みやフィルタを構成する繊維の織り方や多孔質体の積層状態、材質によって決まる係数である。本実施形態のフィルタは、発明者の測定によると、k=約(0.1〜20)×10(1/m)である。係数kは、大きな値である程小さなゴミや毛羽をトラップできる。トラップすべきゴミや毛羽の大きさや、後述する流抵抗の関係を設定するために最適な値を選ぶことができる。
【0050】
インクがフィルタを流れるときの発生圧力をP(Pa)、流れる流量をQ(m/sec)とすると、式(2)を用いて、式(3)となる。
【0051】
【数3】

【0052】
第1フィルタ107の断面積をSf1(m)、第2フィルタ108の断面積をSf2(m)とし、厚みや平均開口径、材質は同一とする。第1フィルタ107のインクによる発生圧力Pr1、第2フィルタ108のインクによる発生圧力Pr2は、式(3)を参照して、それぞれ、式(4)、式(5)となる。
【0053】
【数4】

【0054】
【数5】

【0055】
フィルタのない流路をインクが流れるときの流路長をl(m)、流路の断面積をS(m)とすると、流抵抗R(Pa・sec・m‐3)は、式(6)である。したがって、この流路の発生圧力P(Pa)は、式(7)である。
【0056】
【数6】

【0057】
【数7】

【0058】
また、フィルタのない流路を気体が流れるときの流抵抗R(Pa・sec・m‐3)は、気体の粘度をμ(Pa・sec)とすると、式(8)であり、流抵抗の発生圧力P(Pa)は、式(9)である。
【0059】
【数8】

【0060】
【数9】

【0061】
なお、前述の第1の条件が満たされるとき、(インクの粘度μ)>(気体の粘度μ)であれば、式(7)と式(9)の比較から、第1泡抜き路109のインクによる流抵抗の発生圧力は、第1泡抜き路109の気体による流抵抗の発生圧力よりも大きくなる。したがって、第2フィルタ108のメニスカス保持圧力は、第1泡抜き路109の気体による流抵抗の発生圧力よりも大きい関係となる。
【0062】
ノズル101のメニスカス保持力P(Pa)は、ノズル径をd(m)、インクとノズルの接触角をβ(deg)とすると、式(10)である。
【0063】
【数10】

【0064】
インクの循環中の第2液室103内の発生圧力P(Pa)は、次のように表すことができる。インク供給チューブ301の長さをL(m)、断面積をS(m)、サブタンク400の液面と第2液室103との水頭差をh(m)、インクの密度をρ(kg/m)、インクの循環流量をQ(m/sec)とする。また、第2の流路に流れがない場合と、流れがある場合とで生じる圧力が異なるために場合分けをする。
【0065】
第2の流路に流れがない場合は、式(7)において、Q=Qであり、またl=L、S=Sである。更に水頭圧を考慮して発生圧力Pは、式(11)である。
【0066】
【数11】

【0067】
発生圧力Pは、大気圧を基準とした負圧である。インクが循環しない場合(流量Q=0)は、サブタンク400とノズル101の静的な釣合い状態として、(−ρgh)で表される負圧となる。なお、インク流入路105の長さと断面積は、インク供給チューブ301と同じであるとし、式(11)の第1項の流抵抗に含めている。
【0068】
一方、第2の流路に流れがある場合は、式(11)に対し、第1フィルタ107をインクが流れることによる発生圧力の分を考慮し、第2の流路を流れるインクの流量をQ(m/sec)とすると、式(4)、(11)を参照して、式(12)となる。
【0069】
【数12】

【0070】
次に、前述した本発明の4つの条件について式を用いて説明する。
【0071】
第1の条件は、第1泡抜き路109のインクによる流抵抗の発生圧力をPi1(Pa)とすると、式(13)で表される。
【0072】
【数13】

【0073】
第1泡抜き路109のインクによる流抵抗をRi1(Pa・sec・m‐3)、第1泡抜き路109の流路長をl(m)、断面積をSb1(m)とすると、式(6)を参照し、l=L、S=Sb1として、式(14)となる。さらに、式(7)を参照して、インクの流れは第1泡抜き路109のみであることから、Q=Qであり、発生圧力Pi1は、式(14)を用い、式(15)となる。式(1)、(15)を参照して、第1の条件は、式(16)で表される。具体例は後述するが、式(16)を満足させるように各因子を設定することができる。
【0074】
【数14】

【0075】
【数15】

【0076】
【数16】

【0077】
次に、第2の条件を導出する。第2泡抜き路110のインクによる流抵抗をRi2(Pa・sec・m‐3)、第1泡抜き路109を流れるインクの流量をQ(m/sec)とする。なお、流抵抗Ri2は、式(6)において、流路長lを第2泡抜き路110の長さlとし、流路断面積Sを第2泡抜き路110の断面積Sb2にする。
【0078】
第2の気体溜まり111bのみが存在する状態(図4(a))を参照して、第1泡抜き路109と第2の流路とにおいて、圧力が同じとなるから、式(17)が成り立つ。
【0079】
【数17】

【0080】
なお、第2液室103をインクが流れるので、第2液室103の壁面摩擦による流抵抗の発生圧力が少なからず生じる。しかし、本実施形態では、第2液室103のインク通過断面を大きくすることで、式(17)の両辺それぞれに対し、無視できる程度の発生圧力としている。そのため、第2液室103の流抵抗による発生圧力は、式(17)には現れない。
【0081】
流量においては、保存則が成り立つから、式(18)である。そして、式(17)、(18)から流量Q、Qを求めると、それぞれ式(19)、式(20)である。
【0082】
【数18】

【0083】
【数19】

【0084】
【数20】

【0085】
第2の流路に流れが生じるには、式(20)において、Q>0とならなければならない。つまり、式(20)の分子において、式(21)である。
【0086】
【数21】

【0087】
これは、第1泡抜き路109のインクによる流抵抗Ri1と循環流量Qとの積によって表される圧力(式(21)の左辺)は、第2フィルタ108のメニスカス保持圧力P((式(21)の右辺)より大きいことを表している。なお、第2泡抜き路110に第2フィルタ108を通過した気体が侵入した場合は、式(17)の右辺第1項の流抵抗Ri2は、気体による流抵抗Rg2とインクによる流抵抗Ri2を適当に配分した和に置き換えられる。しかしながら、式(20)の符号には影響がないため、式(21)は同じく導出される。なお、流抵抗Rg2は、式(8)において、流路長lを第2泡抜き路110の長さlとし、流路断面積Sを第2泡抜き路110の断面積Sb2として表わされる。
【0088】
流抵抗Ri1は式(14)で表され、メニスカス保持圧力Pは式(1)であるから、結局、式(21)は、式(22)となる。
【0089】
【数22】

【0090】
式(22)は、式(16)と不等号の向きが逆転した関係である。具体例は後述するが、式(22)を満足させるように各因子を設定することができる。
【0091】
第3の条件は、以下のようにする。
【0092】
第2フィルタ108のインクによる流抵抗をRf2(Pa・sec・m‐3)とする。第1液室102に第1の気体溜まり111aが存在する状態(図5(a))を参照して、第1泡抜き路109と第2の流路とにおいて、圧力が同じとなるから式(23)が成り立つ。また、流量においては、保存則として前述の式(18)が成り立つ。また、式(18)、(23)から流量Q、Qを求めると、それぞれ式(24)、式(25)である。
【0093】
【数23】

【0094】
【数24】

【0095】
【数25】

【0096】
式(24)、(25)は、第1の気体溜まり111aのみが存在する状態(図5(a))での流量であるが、第1の気体溜まり111aが第1泡抜き路109を移動する状態(図5(b))に移行するため、この流量Q’、Q’を求めておく必要がある。式(24)、(25)において、第1泡抜き路109のインクによる流抵抗Ri1を、気体による流抵抗Rg1に置き換えればよく、即ち、それぞれ式(24’)、式(25’)である。
【0097】
【数26】

【0098】
【数27】

【0099】
第1の気体溜まり111aのみが存在する状態(図5(a))は、式(24)、(25)を参照して、インクの循環流量Qを小さくすることで、第2の流路のインクの流量Qを小さくできる。同時に第1泡抜き路109のインクの流量Qは小さくなるが、一方で、式(24)、(25)の各流抵抗を適当に設定すれば、流量の大小関係を、式(26)とすることができる。
【0100】
【数28】

【0101】
第1の気体溜まり111aが第1泡抜き路109を移動する状態(図5(b))は、式(24’)、(25’)を参照して、同様に式(26’)となるように設定する。
【0102】
【数29】

【0103】
具体例は後述するが、式(26)と式(26’)とで、流量Q、Qの差が小さい方(厳し目にみた安全側の条件)であっても、第1の気体溜まり111aの気体が、第1フィルタ107に呼び込まれることない。そのため、第1の気体溜まり111aの気体が先に第1泡抜き路109に吸い込まれるように各因子を設定すればよい。
【0104】
第4の条件は、式(27)で表される。
【0105】
【数30】

【0106】
第2液室103の発生圧力Pは、第2の流路のインクの流れの有無で式(11)と式(12)に区別されるので、それぞれの場合について関係を示す。
【0107】
第2の流路に流れがない場合(図3(a)の状態)は、式(10)、(11)を式(27)にそれぞれ代入して、式(28)となる。第1の気体溜まり111aの気体が第1泡抜き路109を移動する状態(図3(b))であっても、式(28)には影響がない。
【0108】
【数31】

【0109】
第2の流路に流れがある場合は、式(10)、(12)を式(27)にそれぞれ代入して式(29)である。ここで、式(29)中の流量Qは、第2液室103の第2の気体溜まり111bの有無により、式(20)または式(25)で表される。
【0110】
【数32】

【0111】
図4(a)に示す第2液室103に第2の気体溜まり111bが存在する場合は、式(29)に式(20)を代入して、インクの循環流量Qの範囲として、式(30)を得る。また、図4(b)に示す第2の気体溜まり111bの気体が第2泡抜き路110を移動する状態は、式(30)において、第2泡抜き路110のインクによる流抵抗Ri2を、気体による流抵抗Rg2に置き換えればよく、即ち、式(30’)となる。
【0112】
【数33】

【0113】
【数34】

【0114】
また、図5(a)に示す第1液室102に第1の気体溜まり111aが存在する場合は、式(29)に式(25)を代入して、循環流量Qの範囲として、式(31)を得る。
【0115】
【数35】

【0116】
第1液室102に第1の気体溜まり111aが存在する状態(図5(a))は、図7のマトリックスにおいて、記録ヘッド100内がインクで満たされた状態(図2)と同じに分類される。そのため、式(31)は、記録ヘッド100内がインクで満たされた状態(図2)における第4の条件でもある。第1液室102に第1の気体溜まり111aが存在する状態(図5(a))と記録ヘッド100内がインクで満たされた状態(図2)とでは違いがある。それは、第1液室102に第1の気体溜まり111aが存在する状態(図5(a))では、第1の気体溜まり111aの気体が第1泡抜き路109を移動する状態(図5(b))に移行することである。したがって、第4の条件は、後段の式(31’)に置き換わる。
【0117】
第1の気体溜まり111aの気体が第1泡抜き路109を移動する状態(図5(b))は、式(30)において、第1泡抜き路109のインクによる流抵抗Ri1を、気体による流抵抗Rg1に置き換えればよく、即ち、式(31’)である。
【0118】
【数36】

【0119】
上記の式(30)、(31)、(30’)、(31’)において、各部の流抵抗Rは式(2)や式(6)で表され、フィルタのメニスカス保持圧力Pは式(1)で表されるが、煩雑になるので詳細表記は割愛する。
【0120】
式(28)、(30)、(31)、(30’)、(31’)は第1泡抜き路109及び第2泡抜き路110におけるインクと気体の組み合わせ関係や、第2の流路の流れの有無等、それぞれの場合でのインクの循環流量Qの上限を与えるものである。今、気体溜まりがどの状態にあるかわからないので、これら5つの式の最小値を上限として設定する。
【0121】
これまで説明した条件を整理すると、以下になる。
第1の条件は、式(16)で表わされる。
第2の条件は、式(22)で表わされる。
第3の条件は、式(24)と式(25)の流量について、式(26)で表わされ、また式(24’)と式(25’)の流量について、式(26’)で表わされ、これら式(26)と式(26’)について、より安全側の方を満足させる。
第4の条件は、式(28)、(30)、(31)、(30’)、(31’)で表わされるインクの循環流量について、最小値を上限とする。
【0122】
上記を満たすように各因子を決定する。以下に一例を示す。
【0123】
第1の条件について例を挙げる。T=0.04(N/m)、cosα≒1、d=7.5×10‐5(m)、l=0.02(m)、μ=3×10‐3(Pa・sec)、Sb1=7.1×10‐8(m)、Q=6×10‐8(m/sec)とすると、
式(16)の左辺=約21(kPa)
式(16)の右辺=約18(kPa)
となり、式(16)が成り立つ。
【0124】
第2の条件について例を挙げる。Q=30×10‐8(m/sec)とすると、
式(22)の左辺=約71(kPa)
式(22)の右辺=約21(kPa)(=式(16)の左辺)
となり、式(22)が成り立つ。
【0125】
第2の条件のインクの循環流量は、第1の条件の循環流量に対し5倍の値にして、第1泡抜き路109の流抵抗の発生圧力を増加させている。
【0126】
第3の条件について例を挙げる。k=1.6×10(1/m)、l=0.05(m)、Sf1=1.2×10‐4(m)、Sf2=1×10‐6(m)、Sb2=7.1×10‐8(m)とすると、インクの循環の始めはQ=6×10‐8(m/sec)として、
式(24)の流量Qは、Q1=4.8×10‐8(m/sec)
式(25)の流量Qは、Q2=1.2×10‐8(m/sec)
となる。流量Qは、流量Qの約4倍となる。
【0127】
式(24’)の流量Q’は、Q’=6.0×10‐8(m/sec)
式(25’)の流量Q’は、Q’=0.009×10‐8(m/sec)
となる。流量Q’は、流量Q’の約680倍となる。第1液室102に第1の気体溜まり111aが存在する状態(図5(a))では、発明者の検討によると、流量Qが流量Qの少なくとも約2倍以上あれば、第1の気体溜まり111aの気体を第1フィルタ107に呼び込むことはなく、実質的な問題は生じない。
【0128】
第1液室102の容積分、インクを流した後、インクの循環流量Qを次の第4の条件まで流量を増やす。
【0129】
第4の条件について例を挙げる。cosβ≒1、d=1.5×10‐5(m)、L=1.5(m)、S=7.1×10‐6(m)、h=0.1(m)とすると、
式(28)の右辺=4.3×10‐6(m/sec)
式(30)の右辺=2.9×10‐6(m/sec)
式(31)の右辺=3.2×10‐6(m/sec)
式(30’)の右辺=1.6×10‐6(m/sec)
式(31’)の右辺=4.2×10‐6(m/sec)
である。最小値は、式(30’)の右辺であり、先のインクの循環開始時のインクの流量の約27倍である。Q=1.5×10‐6(m/sec)とすると、式(22)の左辺=約330(kPa)であるから、第2の条件についても満足している。この値に設定した循環流量でインクを流せば、ノズル101のメニスカスを破壊せずに、サブタンク400まで気体とインクを流すことができ、時間を短縮できる。
【0130】
[実施形態2]
図8は、本発明に係る記録装置の第2の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図を示している。本実施形態では、第1の実施形態の記録装置において、第2泡抜き路110の気体を検知する気体検知センサ131が設けられている。他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0131】
第1の実施形態では、式(28)、式(30)、式(31)、式(30’)、式(31’)のそれぞれの右辺の最小値を循環流量の上限値とした。本実施形態では、気体検知センサ131によって、第2泡抜き路110に気体があるかないかを検知して、循環流量を切り換えても良い。
【0132】
例えば、第2泡抜き路110に気体がある間は、Qc=1.5×10‐6(m/sec)とし、第2泡抜き路110に気体がなくなった(インクで満たされた)後は、Qc=2.8×10‐6(m/sec)とする。この値は、2番目に小さい循環流量(式(30)の右辺)よりも少し小さな循環流量である。気体がある間の循環流量よりも約1.9倍の流量であり、サブタンク400まで気体とインクを流す時間をさらに短縮できる。
【0133】
[実施形態3]
図9は、本発明に係る記録装置の第3の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図であり、(a)は記録ヘッドの概略図、(b)は第1泡抜き路の拡大概略図である。第1の実施形態では第1泡抜き路109の流抵抗の発生圧力をインクの循環流量によって変化させたが、本実施形態においては、気体溜め部102aにインクの比重より小さなフロートボール113を設けて第1泡抜き路109の流抵抗の発生圧力を変化させる。なお、他の構成については第1の実施形態の同様である。
【0134】
気体溜め部102aの上部(排出部)は、円錐形をしている。そして、気体溜め部102aの側面から第1泡抜き路109との接続部に向かって延びる複数の内部壁112が設けられている。内部壁112同士は間隔を有しており、気体溜め部102aの側面から延びた内部壁112は、他の位置では気体溜め部102aに接触しない。そして、フロートボール113を内部壁112の内側、つまり第1液室102側に配置する。このようにすることで、フロートボール113が気体溜め部102aと第1泡抜き路109との接続部に完全に栓をしないようにしている。
【0135】
フロートボール113はインクの比重より軽い部材で構成されていて、インク液面が上昇すると浮力により円錐型の排出口を閉塞する役目をする。本発明では内部壁112を形成することで、フロートボール113を弁ではなく第1泡抜き路109の流抵抗を変えるための手段として利用している。これにより、フロートボール113と気体溜め部102aとの隙間を通って気体やインクが流れる。内部壁112の長さや幅を適切に設定することで、フロートボール113が内部壁112に接触した状態における第1泡抜き路109の流抵抗を第1の実施形態の流抵抗とほぼ同じに設定することが可能である。
【0136】
また、フロートボール113は、インクの表面張力で内部壁112に付着しても気体溜め部102aの内面とフロートボールとの間には間隔があるため、気体やインクは第1泡抜き路109に流れることができる。これにより、第1液室102内の第1の気体溜まり111aを除去することができる。フロートボール113を落下させる機構を設ける必要がなく、記録装置の構成が複雑化しない。
【0137】
[実施形態4]
図10は、本発明に係る記録装置の第4の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図である。第1の実施形態では、第1泡抜き路109を記録ヘッド100内に設けた。本実施形態では、記録ヘッド100の内部に第1泡抜き路109を設けるのではなく、インク供給チューブ301とインク循環チューブ302とを接続する流路を設け、この流路を第1泡抜き路109とする。なお、他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0138】
インク供給チューブ301に気体溜め部102aを設け、この気体溜め部102aとインク循環チューブ302とを第1泡抜き路109で繋ぐ。なお、インク供給チューブ301の気体溜め部102aの位置や、インク循環チューブ302の第1泡抜き路109が繋がる位置は、ともに、ジョイント104a、104b側の端部付近が好ましい。インク供給チューブ301から流れてくる気体は、気体溜め部102aに溜まり、下流の第1液室102へは流れない。第1の実施形態で説明した第3の条件における所定時間の設定においては、気体溜め部102aの全容積が気体であるとして、これを排出するまでの時間とする。
【0139】
このように気体溜め部102aと第1泡抜き路109を記録ヘッド100の外部に設けているので、記録ヘッド100内の構成を簡素化することがき、記録ヘッド100を小さく構成することで、消耗品としての記録ヘッド100のコストを抑えることができる。
【0140】
[実施形態5]
図11は、本発明に係る記録装置の第5の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図である。上述の実施形態では、第2泡抜き路110はインク排出路106と直線状に繋がっており、第1泡抜き路109はインク排出路106と角度を有して繋がっていた。本実施形態では、第2泡抜き路110はインク排出路106と角度を有して繋がっており、第1泡抜き路109はインク排出路106と直線状に繋がっている。この場合でも、第1の実施形態で説明したのと同様に、気体溜まりを除去できる。これにより、インク流れの配管系路を自由に設計できることが可能となる。
【0141】
[実施形態6]
図12は、本発明に係る記録装置の第6の実施形態の記録ヘッド付近の拡大概略図である。
【0142】
上述の実施形態では、記録ヘッド100の内部に、第1フィルタ107と第2フィルタ108を別々に設けていた。一方、本実施形態では1つの部材としてフィルタ120を使用する構成である。フィルタ120と第2液室103の結合手段として、結合部114は接着又は熱溶着される部位であり、フィルタ120を第1フィルタ部121と第2フィルタ部122に分けている。
【0143】
結合部114にてフィルタ120が分けられ、第1液室102内のインクは第1フィルタ部121を介し第2液室103へと流れる。また第2液室103のインクまたは第2の気体溜まり111bの気体は、第2フィルタ部122を介し第2液室103から第2泡抜き路110へと導かれる。
【0144】
また、フィルタ120は、第1フィルタ部121から第2フィルタ部122に向かってノズル100の設けられた面から段々離れるように傾斜している。第1泡抜き路109は、そのフィルタ120に沿って気体溜め部102aから第2フィルタ部122の下流側に接続されている。したがって、本実施形態では、上述の実施形態で説明した第2泡抜き路110に相当する部位は、限りなく縮小されている。
【0145】
本実施形態における第1泡抜き路109の気体とインクの流れは、第1の実施形態と同様である。
【0146】
また、第1の実施形態で説明した流れを規定する条件を表わす式(24)、(25)、(24’)、(25’)、(30)、(31)、(30’)、(31’)において、第2泡抜き路110に関する流抵抗Ri2、流抵抗Rg2をそれぞれ、≒0として計算する。そして、各因子を決定すればよい。
【0147】
以上の構成によりフィルタの部品点数を少なくでき、記録ヘッド100をコストダウンできる。
【符号の説明】
【0148】
100 記録ヘッド
101 ノズル
102 第1液室
103 第2液室
105 インク流入路
106 インク排出路
107 第1フィルタ
108 第2フィルタ
109 第1泡抜き路
110 第2泡抜き路
300 液送ポンプ(ポンプ手段)
400 サブタンク
500 インクタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク貯蔵部と、インク流入路及びインク排出路を有し、インクを吐出するノズルが設けられた記録ヘッドと、前記インク貯蔵部から前記記録ヘッドへ前記インクを供給するための流路であるインク供給路と、前記記録ヘッドから前記インク貯蔵部へインクを循環させるための流路であるインク循環路と、前記インクを前記インク貯蔵部から前記インク供給路を介して前記インク流入路に流入させ、前記インク排出路から前記インク循環路を介して前記インク貯蔵部へ排出させるポンプ手段と、を有する記録装置であって、
前記記録ヘッドの内部は、第1フィルタによって、前記インク流入路が繋がる第1液室と、前記ノズルが設けられた面に接する第2液室と、に分離されており、
前記第2液室には、前記第1フィルタよりも前記ノズルが設けられた面から離れて位置する第2フィルタが接続されており、
前記インク貯蔵部から流れてくる前記インクの一部を、前記第2液室に流入させずに前記インク貯蔵部に循環させる第1泡抜き路と、前記第2液室から前記第2フィルタを介して前記インク排出路に繋がる第2泡抜き路と、が設けられている、記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドの、前記第2液室の前記ノズルが設けられた面と対向する面の少なくとも一部と前記第1フィルタとは、一端から他端に向かって前記ノズルが設けられた面から徐々に離れるように斜めになっている、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1泡抜き路は、前記第1液室の、前記ノズルが設けられた面から最も離れている部分から前記インク排出路に繋がっている、請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1泡抜き路は、前記第1液室の、前記ノズルが設けられた面から最も離れている部分から前記第1フィルタに沿って、前記第2フィルタの下流側に繋がっている、請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1泡抜き路は、前記インク供給路から前記インク循環路に繋がっている、請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項6】
前記インクが前記第1泡抜き路に流れ込む位置には、気体溜め部が設けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記気体溜め部には、前記インクの比重より小さなフロートボールと、前記フロートボールと前記気体溜め部の内面とが間隔を有するように設けられた内部壁と、が設けられている、請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記第2泡抜き路の気体を検知するためのセンサが設けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
インク貯蔵部と、インク流入路及びインク排出路を有し、インクを吐出するノズルが設けられた記録ヘッドと、前記インク貯蔵部から前記記録ヘッドへ前記インクを供給するための流路であるインク供給路と、前記記録ヘッドから前記インク貯蔵部へインクを循環させるための流路であるインク循環路と、前記インクを前記インク貯蔵部から前記インク供給路を介して前記インク流入路に流入させ、前記インク排出路から前記インク循環路を介して前記インク貯蔵部へ循環させるポンプ手段と、を有する記録装置における、気体を除去する方法であって、
前記記録ヘッドの内部を、第1フィルタによって前記インク流入路が繋がる第1液室と、前記ノズルが設けられた面に接する第2液室と、に分離して、
前記第2液室に前記第1フィルタよりも、前記ノズルが設けられた面から離れて位置する第2フィルタを接続し、
前記インク貯蔵部から流れてくる前記インクの一部を、前記第2液室に流入させずに前記インク貯蔵部に排出させる第1泡抜き路と、前記第2液室から前記第2フィルタを介して前記インク排出路に繋がる第2泡抜き路と、を形成し、
前記インク貯蔵部から、前記インクを、前記インクの流れ方向からみて、前記第1泡抜き路の上流側にある気体を前記第2液室に移動させない範囲の流量で送って、前記気体を、前記第1泡抜き路を介して前記インク貯蔵部に送り、
第1泡抜き路のインクによる流抵抗と流量との積によって表される圧力を、第2フィルタのメニスカス保持圧力よりも大きくして、前記インクの流れ方向からみて、前記第2泡抜き路の上流側にある気体を、前記第2泡抜き路から前記インク貯蔵部に送る、気体を除去する方法。
【請求項10】
前記ポンプ手段によって、前記第2液室の圧力が前記ノズルのメニスカス保持力以下となるように前記インクの流量を調整する、請求項9に記載の気体を除去する方法。
【請求項11】
前記記録ヘッドの、前記ノズルが設けられた面と対向する面の少なくとも一部及び前記第1フィルタを、一端から他端に向かって前記ノズルが設けられた面から徐々に離れるように斜めにして、前記第1液室および/または前記第2液室の前記気体を前記ノズルが設けられた面と対向する面および/または前記第1フィルタに沿って移動させる、請求項9または10に記載の気体を除去する方法。
【請求項12】
前記第1泡抜き路を、前記第1液室の、前記ノズルが設けられた面から最も離れている部分から前記インク排出路に繋げる、請求項9から11のいずれか1項に記載の気体を除去する方法。
【請求項13】
前記第1泡抜き路を、前記第1液室の、前記ノズルが設けられた面から最も離れている部分から、前記第1フィルタに沿って、前記第2フィルタの下流側に繋げる、請求項9から11のいずれか1項に記載の気体を除去する方法。
【請求項14】
前記第1液室の、前記インクが前記第1泡抜き路に流れ込む位置に、気体溜め部を形成する、請求項12または13のいずれか1項に記載の気体を除去する方法。
【請求項15】
前記第1泡抜き路から前記インク貯蔵部に気体を送る工程では、前記第1液室の容積に相当する量の前記気体を前記第1泡抜き路から送り出すまでの時間を求めておき、前記インクの循環を開始してから前記時間が経過するまでの間は、前記気体を前記第1フィルタに送らないように前記インク貯蔵部から流れるインクの流量を小さくし、前記時間の経過後は、前記ノズルのメニスカスを破壊しない範囲で前記インクの流量を大きくする、請求項12から14のいずれか1項に記載の気体を除去する方法。
【請求項16】
前記第1泡抜き路を、前記インク供給路から前記インク循環路に繋ぎ、
前記インク供給路の、前記インクが前記第1泡抜き路に流れ込む位置に、気体溜め部を形成して、
前記第1泡抜き路から前記インク貯蔵部に気体を送る工程では、前記気体溜め部の容積に相当する量の前記気体を前記第1泡抜き路から送り出すまでの時間を求めておき、前記インクの循環を開始してから前記時間が経過するまでの間は、前記気体を前記第1フィルタに送らないように前記インク貯蔵部から流れるインクの流量を小さくし、前記時間の経過後は、前記ノズルのメニスカスを破壊しない範囲で前記インクの流量を大きくする、請求項9から11のいずれか1項に記載の気体を除去する方法。
【請求項17】
前記気体溜め部の内面から間隔を有するように内部壁を設けて、前記インクの比重より小さなフロートボールと、前記内部壁とで前記第1泡抜き路へ流れる前記インクの流抵抗を変化させる、請求項14または16に記載の気体を除去する方法。
【請求項18】
前記第2泡抜き路の気体を検知するためのセンサを設けて、前記第2泡抜き路に気体がないときには、気体があるときよりも前記インクの流量を大きくする、請求項9から17のいずれか1項に記載の気体を除去する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−218398(P2012−218398A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89217(P2011−89217)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】