説明

記録装置

【課題】カセット部が記録装置本体に取り付けられた際における前記カセット部に載置された被記録媒体の位置を安定させることを考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置(1)は、カセット部7と、固定して設けられた規制部8と、傾斜部(10)と、前記傾斜部を被記録媒体(P)の前後方向へ移動させる第1移動手段22と、を備え、前記カセット部7が記録装置本体(2)の所定の位置へ取り付けられた時、前記規制部8は、前記傾斜部(10)よりも被記録媒体(P)の先端に接近しており、前記カセット部が前記所定の位置へ取り付けられた時から送り手段が載置された被記録媒体(P)を送り方向下流側へ送り始める時までの間に、前記第1移動手段22が、前記傾斜部(10)を被記録媒体(P)の前後方向後側へ移動させ、前記傾斜部(10)を前記規制部8よりも被記録媒体(P)の先端に接近させる構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置本体の所定の位置に対して着脱可能であり、被記録媒体が載置されるカセット部を有する記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、記録装置は、カセットと、装着部と、給紙ローラーとを備えていた。このうち、前記カセットは、記録装置本体に対して着脱可能に設けられていた。また、前記装着部は、複数の用紙が積層状態に載置された前記カセットを、用紙の積層方向と直交する方向に沿って挿入して着脱自在に装着することができるように設けられていた。またさらに、前記給紙ローラーは、前記装着部に装着された状態にある前記カセットから用紙を一枚ずつ取り出して順次記録部側に給送することができるように設けられていた。
【0003】
また、前記記録装置における前記カセットが装着される前記装着部の内奥には、給紙ローラーによってカセット側から取り出されて給送される用紙を一枚ずつ分離しながら記録部に案内するための上り勾配の案内面が設けられていた。
ここで、前記カセットがユーザーによって前記装着部に装着される場合において、前記装着部への挿入速度が速い場合などには、積層状態の用紙が、その慣性力により前記カセット内から挿入方向に移動して前記案内面に乗り上げてしまう虞があった。これにより、案内面によって用紙を一枚ずつ分離することができない問題が生じる。
そこで、特許文献1には、上記問題を回避する手段として、用紙の給送方向における先端部がカセットの挿入方向に移動するのを規制する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−8416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の前記回避する手段は、用紙の移動経路内に突出して移動経路を遮断する位置と、突出しないで移動経路を遮断しない位置との間を、規制部材を移動させる構造であった。従って、前記規制部材の各位置を切り換える切換構造は複雑となり、さらに、規制部材自体が十分な強度を有することができず、確実性に劣る問題があった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、カセット部が記録装置本体の所定の位置に取り付けられた際における前記カセット部に載置された被記録媒体の位置を安定させることを考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、記録装置本体の所定の位置に対して着脱可能であり、被記録媒体が載置されるカセット部と、該カセット部の装着方向前側を被記録媒体の前側として、前記カセット部が前記記録装置本体に取り付けられた状態の載置された被記録媒体の先端より載置された被記録媒体の前後方向前側の位置に固定して設けられ、被記録媒体の先端と当接することにより被記録媒体の前方向への移動を規制する規制部と、載置された被記録媒体の先端より被記録媒体の前後方向前側の位置に設けられ、載置された被記録媒体の姿勢に対して前記前後方向前側が後側より被記録媒体の積層方向において高くなるように傾斜した傾斜部と、前記傾斜部を被記録媒体の前後方向へ移動させる第1移動手段と、を備え、前記カセット部が前記記録装置本体の前記所定の位置へ取り付けられた時、前記規制部は、前記傾斜部よりも被記録媒体の先端に接近しており、前記カセット部が前記所定の位置へ取り付けられた時から送り手段が載置された被記録媒体を送り方向下流側へ送り始める時までの間に、前記第1移動手段が、前記傾斜部を被記録媒体の前後方向後側へ移動させ、前記傾斜部を前記規制部よりも被記録媒体の先端に接近させる構成であることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記規制部が固定して設けられているので、前記規制部は十分な強度を有することができる。従って、前記カセット部が前記記録装置本体の所定の位置に取り付けられた時、前記規制部は、被記録媒体の先端と当接し、被記録媒体が移動し続けようとする力をしっかりと受け止めることができる。つまり、前記カセット部が停止することに伴って、前記規制部は被記録媒体を確実に停止させ、前記カセット部における被記録媒体の位置を安定させることができる。
尚、その後、前記第1移動手段によって、前記規制部は、前記傾斜部よりも被記録媒体に対して相対的に退避した位置となる。従って、前記規制部が、被記録媒体の給送を妨げる虞はない。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記カセット部に設けられ、被記録媒体の後端と当接可能な後端ガイド部と、該後端ガイド部を被記録媒体の前後方向へ移動させる第2移動手段と、を備え、前記第1移動手段が前記傾斜部を被記録媒体の前後方向後側へ移動させる際、前記第2移動手段が、前記後端ガイド部を被記録媒体の前後方向後側へ移動させる構成であることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記後端ガイド部を有する場合であっても前記傾斜部が移動する際に該移動によって前記カセット部に載置された被記録媒体が破損する虞がない。つまり、前記傾斜部が移動することにより被記録媒体の先端が後端側へ移動した分、後端も同様に移動することができる。その結果、被記録媒体が先端側と後端側との間で撓む虞がない。また、被記録媒体における先端および後端が折れる虞もない。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記第2移動手段は、前記傾斜部が移動する力によって前記後端ガイド部を移動させる構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、前記後端ガイド部専用の動力を必要としない。つまり、前記傾斜部が移動する力を利用して、前記後端ガイド部を移動させることができる。そして、専用の動力を必要としない分、記録装置を小型化することができる。また、軽量化することもできる。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記規制部は、前記カセット部に設けられている構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、仮に前記規制部が前記記録装置本体に設けられている場合と比較して、前記カセット部の前記記録装置本体への取り付けが完了する前段階において、より効果的に前記カセット部に積層された被記録媒体の位置を安定させることができる。言い換えると、積層された被記録媒体が積層方向上方から崩れるように前記カセット部に対して移動する所謂、雪崩現象が生じることを防止することができる。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記第1移動手段は、モーターの動力によって前記傾斜部を移動させる構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記モーターの動力を用いることにより、容易に前記傾斜部を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例のプリンターの内部の概略を示す側面図。
【図2】本実施例のカセット部のプリンター本体への取り付け完了前を示す側面図。
【図3】本実施例のカセット部のプリンター本体への取り付け完了時を示す側面図。
【図4】本実施例の取り付け完了した際の分離部の移動の様子を示す側面図。
【図5】本実施例のカセット部のプリンター本体からの取り外し時を示す側面図。
【図6】本実施例の取り外した際の分離部の移動の様子を示す側面図。
【図7】他の実施例の取り付け時の分離部が移動する前の様子を示す側面図。
【図8】他の実施例の取り付け完了した際の分離部が移動した後の様子を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明に係る記録装置の一例であるプリンター1の概略を示す側面図である。
図1に示す如く、本発明に係るプリンター1は、プリンター本体2と、プリンター本体2の所定の位置に対して着脱可能なカセット部7と、を備えている。このうち、カセット部7は、プリンター本体2に取り付けられた状態において、プリンター1における載置部を構成する。載置部としてのカセット部7は、被送り媒体の一例である用紙Pを載置することができるように設けられている。
【0016】
一方、プリンター本体2は、送り手段3と、送り経路と、記録部16と、排出部20と、を備えている。
このうち、送り手段3は、カセット部7に載置された用紙Pをプリンター本体2に設けられた分離部10によって一枚ずつ分離しながら送り方向Yに送ることができるように設けられている。尚、分離部10は、カセット部7に設けられている構成でもよい。
【0017】
また、送り経路は、送り手段3等によって送られる用紙Pを案内する媒体案内部によって構成されており、用紙Pが送られる経路である。
また、記録部16は、送り手段3によって送られた用紙Pに対して記録を実行することができるように構成されている。またさらに、排出部20は、記録された用紙Pを排出し、排出トレイ上(図示せず)に載置することができるように設けられている。
【0018】
具体的に、送り手段3は、ピックアップローラー4と、アーム部5と、第1ローラー対14と、第2ローラー対15と、を備えている。
このうち、ピックアップローラー4は、図示しないモーターの動力によって駆動することができ、カセット部7の載置面9に積層された用紙Pのうち、積層方向Z(載置方向)最上位の用紙Pと接触することができるように設けられている。尚、Z軸の矢印が示す方向は載置方向上方である。
【0019】
またさらに、アーム部5は、送り方向上流側である一端側のアーム揺動軸6を中心に揺動可能に設けられている。そして、送り方向下流側である他端側にピックアップローラー4を回動可能に保持するように構成されている。
また、分離部10は、カセット部7の載置面9における用紙Pがセットされる箇所より送り方向下流側に設けられている。
【0020】
具体的には、ピックアップローラー4によって送られる用紙Pを側視した姿勢に対して傾斜した傾斜面11と有している。そして、用紙Pが重送された場合、ピックアップローラー4に対して最上位の用紙Pと次位以降の用紙Pとを分離することができるように設けられている。所謂、土手分離機構である。
ここで、「土手分離機構」とは、所定の角度で用紙Pが進入するように面を設け用紙Pの先端に負荷を与えることにより分離する機構をいう。
【0021】
またさらに、第1ローラー対14および第2ローラー対15は、分離部10を通過した用紙Pを記録部16へ送ることができるように設けられている。このうち、第1ローラー対14は、第1駆動ローラー14aと、第1従動ローラー14bとを有している。
尚、第1従動ローラー14bに代えて回動に所定の負荷を伴う所謂、リタードローラーでもよい。係る場合、土手分離機構での分離が十分でない場合に、重送された用紙Pを確実に分離することができる。即ち、第1駆動ローラー14aと直接的に接触する用紙Pを、該用紙Pよりリタードローラー側の用紙Pから分離することができる。
【0022】
また、第2ローラー対15は、送り経路において第1ローラー対14より下流側に設けられている。具体的には、第2ローラー対15は、第2駆動ローラー15aと第2従動ローラー15bとを有している。
そして、例えば、ステッピングモーターによって精度よく用紙Pを記録部16へ送ることができるように設けられている。
【0023】
また、記録部16は、キャリッジ17と、記録ヘッド18と、媒体支持部19と、を備えている。このうち、キャリッジ17は、用紙Pの幅方向Xへ延設されたガイド軸(図示せず)に案内されながら移動手段(図示せず)の動力によって幅方向Xへ移動するように構成されている。また、記録ヘッド18は、キャリッジ17に設けられており、インクを用紙Pに対して吐出することができるように設けられている。所謂、インクジェット式の記録である。
【0024】
またさらに、媒体支持部19は、記録ヘッド18と対向する位置に設けられ、用紙Pを支持し、用紙Pと記録ヘッド18との間の距離を所定の間隔にすることができるように構成されている。
尚、本実施形態では、インクを吐出するインクジェット式の記録部16を採用したが他の構成でもよい。例えば、トナーを用紙Pに付着させ、熱と圧力をかけて用紙Pに記録する所謂、レーザープリンターの構成でもよい。
また、排出部20は、第3ローラー対21と、図示しない排出トレイを備えている。第3ローラー対21は、送り経路において記録部16より下流側に設けられ、記録された用紙Pを排出トレイへ送ることができるように設けられている。
【0025】
続いて、カセット部7および分離部10についてさらに詳しく説明する。
図2に示すのは、本実施例のカセット部7のプリンター本体2への取り付けが完了する前の状態を示す概略側面図である。
図2に示す如く、プリンター本体2には、カセット部7に載置された用紙Pの前後方向へ分離部10を移動可能な第1移動手段22が設けられている。
【0026】
第1移動手段22の一例として、具体的には、移動用モーター23と、オスねじ状ギア24と、メスねじ状ギア25と、制御部26と、図示しないセンサーとが設けられている。移動用モーター23の回転軸には、オスねじ状ギア24が取り付けられている。また、メスねじ状ギア25は、分離部10と一体に形成されており、オスねじ状ギア24と噛み合うように設けられている。
【0027】
また、図示しないセンサーは、プリンター本体2におけるカセット部7が取り付けられる所定の位置において、カセット部7の有無を検出することができるように構成されている。
ここで、センサーはカセット部7と直接接触しない光学式、直接接触する機械式のどちらでもよい。
【0028】
またさらに、制御部26は、センサーによるカセット部7の検出状態が切り替わった際、移動用モーター23を駆動させ、分離部10を移動させることができるように設けられている。
尚、第1移動手段22は移動用モーター23の動力でははく、ばね等の力を利用して分離部10を移動させる構成でもよい。また、移動用モーター23の動力を分離部10へ伝達させる機構は、ラックアンドピニオン、ウォームギア等の本実施例と異なる機構でもよいのは勿論である。
【0029】
一方、カセット部7における載置された用紙Pの先端より用紙Pの前後方向前側には、規制部8が固定して設けられている。規制部8は、用紙Pの先端と当接することにより、後述するようにカセット部7がプリンター本体2に取り付けられた際に載置された用紙Pが傾斜面11を上ることを防止することができるように設けられている。尚、規制部8は、用紙Pの前後方向に対して側視、鉤状に形成されている。従って、用紙Pの先端が規制部8を乗り越える虞がない。
【0030】
また、カセット部7における載置された用紙Pの後端近傍には、後端ガイド部9が設けられている。後端ガイド部9は、用紙Pの前後方向へ位置を調整可能に設けられている。具体的には、図示しない凹部と凸部との係合によって、当接部12に対して相対的に前後方向における位置を調整することができるように設けられている。
そして、載置された用紙Pのサイズに応じて前後方向の位置を調整し、用紙Pの後端と当接し、積層された用紙Pの後端を揃えることができるように構成されている。また、用紙Pの後端と当接することにより、載置された用紙Pの位置を安定させることができるように設けられている。
尚、当接部12は、カセット部7に対して図示しない付勢手段の一例であるばねによって用紙Pの前後方向前側へ付勢されているものとする。
【0031】
またさらに、カセット部7には、分離部10の移動に伴って後端ガイド部9を移動させる第2移動手段27が設けられている。第2移動手段27の一例であるリンク部材28は、カセット部7における載置された用紙Pの下方に設けられている。そして、リンク部材28は、詳しくは後述するように、分離部10および当接部12と当接可能に設けられている。
【0032】
尚、本実施例では、カセット部7が後端ガイド部9を有する構成について説明するが、後端ガイド部9を有しない構成でもよい。技術的思想としては、後述するように第1移動手段22によって、規制部8と分離部10の傾斜面11との位置関係が変わる構成であればよいからである。
カセット部7のプリンター本体2の所定の位置への取り付けが完了する前の段階では、センサー(図示せず)によってカセット部7が検出されていない状態である。また、分離部10は、移動可能な範囲における用紙Pの前後方向前側端部に位置している。
【0033】
図3に示すのは、本実施例のカセット部7のプリンター本体2への取り付けが完了した時を示す概略側面図である。
図3に示す如く、図2に示す状態からカセット部7が載置された用紙Pの前後方向前側へ移動し、カセット部7はプリンター本体2の所定の位置まで到達する。このとき、プリンター本体2に設けられた図示しない度当て部にカセット部7が度当たることにより、カセット部7は停止する。
【0034】
この際、カセット部7に載置されただけの用紙Pには慣性力Fが作用するため、用紙Pの前後方向前側へ移動し続けようとする。
ここで、前述した規制部8が固定して設けられているので、規制部8は十分な強度を有している。従って、規制部8は、用紙Pの先端と当接し、用紙Pが移動し続けようとする力Fをしっかりと受け止めることができる。つまり、カセット部7が停止することに伴って、規制部8は用紙Pを確実に停止させることができる。
【0035】
また、規制部8は、側視鉤形状に形成されているので、用紙Pの先端が規制部8を乗り越える虞がない。特に、用紙Pの積層枚数が多い場合に有効である。
また、カセット部7がプリンター本体2の所定の位置まで到達すると、前述したセンサーがカセット部7を検出する。その後、僅かに遅れたタイミングで、分離部10が移動する。
【0036】
図4に示すのは、本実施例のカセット部7のプリンター本体2への取り付けが完了した際の分離部10の移動の様子を示す概略側面図である。
図4に示す如く、カセット部7のプリンター本体2への取り付けが完了すると、完了した時から僅かに遅れたタイミングで、第1移動手段22によって分離部10の傾斜面11が、規制部8より用紙Pの先端に接近する位置まで移動するように構成されている。
【0037】
具体的には、センサー(図示せず)によってカセット部7が所定の位置に取り付けられたと制御部26が判断すると、僅かに遅れたタイミングで制御部26が移動用モーター23を一の方向へ駆動させる。これにより、分離部10が、用紙Pの前後方向後側へ移動する。そして、分離部10の傾斜面11が、規制部8より用紙Pの先端に接近する位置まで移動する。つまり、相対的に観て、規制部8が送り経路において傾斜面11より退避する。従って、ピックアップローラー4によって用紙Pが送られた場合であっても、用紙Pの送りが規制部8によって妨げられる虞がない。尚、分離部10の移動は、カセット部7が所定の位置に取り付けられた時から前述したピックアップローラー4による給送が開始する時までの間であればよい。
【0038】
また、分離部10が用紙Pの前後方向後側へ移動することに伴って、分離部10がリンク部材28の一端と接触し、リンク部材28を用紙Pの前後方向後側へ押して移動させる。これにより、当接部12は、リンク部材28の他端によって用紙Pの前後方向後側へ押されて移動する。従って、後端ガイド部9も用紙Pの前後方向後側へ移動する。ここで、後端ガイド部9の移動距離は、傾斜面11が規制部8に対して用紙Pの先端に接近する方向へ相対的に突出した距離と同程度である。
【0039】
その結果、分離部10の用紙Pの前後方向後側への移動によって用紙Pが先端と後端との間で撓む虞がない。また、用紙Pの先端および後端が折れ曲がる等の破損が生じる虞もない。
その後、前述したように、ピックアップローラー4によって用紙Pが送られ、記録部16によって記録が実行される。
続いて、カセット部7のプリンター本体2からの取り外しについて説明する。
【0040】
図5に示すのは、本実施例のカセット部7をプリンター本体2の所定の位置から取り外し方向(用紙Pの前後方向後側)へ移動させた時を示す概略側面図である。
図5に示す如く、用紙Pを補充する場合や用紙Pのサイズを変更する場合、カセット部7をプリンター本体2から取り外す必要がある。カセット部7を、図4に示す状態からプリンター本体2の所定の位置から用紙Pの前後方向後側へ移動させると、規制部8は、分離部10の傾斜面11から突出する。
【0041】
また、リンク部材28の一端側が分離部10から離間し、前述したばね(図示せず)の付勢力によって、後端ガイド部9、当接部12およびリンク部材28は、カセット部7に対して相対的に用紙Pの前後方向前側へ移動する。
また、カセット部7がプリンター本体2の所定の位置から移動すると、前述したセンサー(図示せず)がカセット部7を検出しなくなる。その後、僅かに遅れたタイミングで、分離部10が移動する。尚、カセット部7を取り外した際の分離部10の移動は、遅れたタイミングでなくてもよい。
【0042】
図6に示すのは、本実施例のカセット部7をプリンター本体2の所定の位置から取り外し方向(用紙Pの前後方向後側)へ移動させた際の分離部10の移動の様子を示す側面図である。
図6に示す如く、カセット部7がプリンター本体2の所定の位置から用紙Pの前後方向後側へ移動すると、前述したセンサー(図示せず)がカセット部7を検出しなくなる。その後、僅かに遅れたタイミングで、第1移動手段22によって分離部10が、移動可能な範囲における用紙Pの前後方向前側端部の位置まで移動するように構成されている。
【0043】
具体的には、センサー(図示せず)によってカセット部7が所定の位置から移動したと制御部26が判断すると、僅かに遅れたタイミングで制御部26が移動用モーター23を前記一の方向と逆方向へ駆動させる。これにより、分離部10が、用紙Pの前後方向前側へ移動する。そして、分離部10は、カセット部7をプリンター本体2に取り付ける前段階に位置していた位置まで移動する。その結果、図2に示すカセット部7をプリンター本体2に取り付ける前段階と同じ状態となる。
【0044】
尚、本実施例では、規制部8をカセット部7に設けたが、プリンター本体2に設けてもよい。規制部8がカセット部7およびプリンター本体2の一方に固定されて設けられていれば、カセット部7が取り付けられた際の用紙Pが移動し続けようとする力F(図3参照)をしっかりと受け止めることができるからである。本実施例において、規制部8をカセット部7に設けた理由は、カセット部7を取り付ける前段階において、仮にプリンター本体2に設けた構成と比較して、載置された用紙Pの位置をカセット部7においてより効果的に安定させることができるからである。
【0045】
また、本実施例では、分離部10をプリンター本体2に設けたが、カセット部7に設けてもよい。技術的思想としては、カセット部7をプリンター本体2の所定の位置に取り付けた際、規制部8と分離部10の傾斜面11との位置関係が変わる構成であればよいからである。本実施例において、分離部10をプリンター本体2に設けた理由は、カセット部7に規制部8が設けられていれば、載置された用紙Pがカセット部7からこぼれ落ちる虞が殆どなく、分離部10をカセット部7に設ける必要がないからである。仮に、分離部10をカセット部7に設けた場合、カセット部7をプリンター本体2の所定の位置に取り付けた際、ギア等が噛み合ってプリンター本体2に設けられた移動用モーター23の動力が伝達可能な状態となるように構成することができる。
【0046】
尚、規制部8が固定であるため、カセット部7における用紙Pの送り方向Yに対する幅方向Xにおいて、中央に配置する必要がない。幅方向Xにおける中央に分離部10を配置、分離部10の両側に規制部8を配置することができる。これにより、用紙Pの分離精度が向上する。また、送り方向Yに対して用紙Pが斜行しにくくなる。
また、衝撃を受ける規制部8と、移動する分離部10とが異なるため、制御が容易である。
【0047】
本実施例の記録装置の一例であるプリンター1は、記録装置本体であるプリンター本体2の所定の位置に対して着脱可能であり、被記録媒体の一例である用紙Pが載置されるカセット部7と、カセット部7の装着方向前側を用紙Pの前側として、カセット部7がプリンター本体2に取り付けられた状態の載置された用紙Pの先端より載置された用紙Pの前後方向前側の位置に固定して設けられ、用紙Pの先端と当接することにより用紙Pの前方向への移動を規制する規制部8と、載置された用紙Pの先端より用紙Pの前後方向前側の位置に設けられ、載置された用紙Pの姿勢に対して前記前後方向前側が後側より用紙Pの積層方向Zにおいて高くなるように傾斜した傾斜部としての分離部10の傾斜面11と、分離部10を用紙Pの前後方向へ移動させる第1移動手段22と、を備え、カセット部7がプリンター本体2の前記所定の位置へ取り付けられた時、規制部8は、分離部10の傾斜面11よりも用紙Pの先端に接近しており、カセット部7が前記所定の位置へ取り付けられた時から送り手段3のピックアップローラー4が載置された用紙Pを送り方向下流側へ送り始める時までの間に、第1移動手段22が、分離部10を用紙Pの前後方向後側へ移動させ、分離部10の傾斜面11を規制部8よりも用紙Pの先端に接近させる構成であることを特徴とする。
【0048】
また、本実施例において、カセット部7に設けられ、用紙Pの後端と当接可能な後端ガイド部9と、後端ガイド部9を用紙Pの前後方向へ移動させる第2移動手段27と、を備え、第1移動手段22が分離部10を用紙Pの前後方向後側へ移動させる際、第2移動手段27が、後端ガイド部9を用紙Pの前後方向後側へ移動させる構成であることを特徴とする。
【0049】
またさらに、本実施例において、第2移動手段27は、分離部10が移動する力によって後端ガイド部9を移動させる構成であることを特徴とする。
また、本実施例において、規制部8は、カセット部7に設けられている構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、第1移動手段22は、移動用モーター23の動力によって分離部10を移動させる構成であることを特徴とする。
【0050】
[他の実施例]
図7に示すのは、他の実施例の取り付け時の分離部10が移動する前の様子を示す概略側面図である。また、図8に示すのは、他の実施例の取り付け完了した際の分離部10が移動した後の様子を示す概略側面図である。
図7および図8に示す如く、他の実施例の後端ガイド部30における用紙Pの後端と接触可能なガイド面31は、分離部10の傾斜面11と同じ向きに、載置された用紙Pの姿勢に対して傾斜している。
【0051】
従って、図7に示す状態から図8に示す状態に分離部10が移動した場合であっても、後端ガイド部30が用紙Pの前後方向後側へ移動しなくてもよい。
尚、その他の部材および構成については、前述した実施例と同様であるので、同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
また、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 プリンター、2 プリンター本体、3 送り手段、4 ピックアップローラー、
5 アーム部、6 アーム揺動軸、7 カセット部、8 規制部、9 後端ガイド部、
10 分離部(傾斜部)、11 傾斜面、12 当接部、14 第1ローラー対、
14a 第1駆動ローラー、14b 第1従動ローラー(リタードローラー)、
15 第2ローラー対、15a 第2駆動ローラー、15b 第2従動ローラー、
16 記録部、17 キャリッジ、18 記録ヘッド、19 媒体支持部、
20 排出部、21 第3ローラー対、22 第1移動手段、23 移動用モーター、
24 オスねじ状ギア、25 メスねじ状ギア、26 制御部、27 第2移動手段、
28 リンク部材、30 (他の実施例)後端ガイド部、31 ガイド面、F 慣性力、
P 用紙、X 幅方向、Y 送り方向、Z 積層方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置本体の所定の位置に対して着脱可能であり、被記録媒体が載置されるカセット部と、
該カセット部の装着方向前側を被記録媒体の前側として、前記カセット部が前記記録装置本体に取り付けられた状態の載置された被記録媒体の先端より載置された被記録媒体の前後方向前側の位置に固定して設けられ、被記録媒体の先端と当接することにより被記録媒体の前方向への移動を規制する規制部と、
載置された被記録媒体の先端より被記録媒体の前後方向前側の位置に設けられ、載置された被記録媒体の姿勢に対して前記前後方向前側が後側より被記録媒体の積層方向において高くなるように傾斜した傾斜部と、
前記傾斜部を被記録媒体の前後方向へ移動させる第1移動手段と、を備え、
前記カセット部が前記記録装置本体の前記所定の位置へ取り付けられた時、前記規制部は、前記傾斜部よりも被記録媒体の先端に接近しており、
前記カセット部が前記所定の位置へ取り付けられた時から送り手段が載置された被記録媒体を送り方向下流側へ送り始める時までの間に、前記第1移動手段が、前記傾斜部を被記録媒体の前後方向後側へ移動させ、前記傾斜部を前記規制部よりも被記録媒体の先端に接近させる構成である記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記カセット部に設けられ、被記録媒体の後端と当接可能な後端ガイド部と、
該後端ガイド部を被記録媒体の前後方向へ移動させる第2移動手段と、を備え、
前記第1移動手段が前記傾斜部を被記録媒体の前後方向後側へ移動させる際、前記第2移動手段が、前記後端ガイド部を被記録媒体の前後方向後側へ移動させる構成である記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記第2移動手段は、前記傾斜部が移動する力によって前記後端ガイド部を移動させる構成である記録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記規制部は、前記カセット部に設けられている構成である記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記第1移動手段は、モーターの動力によって前記傾斜部を移動させる構成である記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18612(P2013−18612A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153602(P2011−153602)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】