説明

許容可能な色を有する洗剤

タイロン(1,2−ジヒドロキシベンゼン(diydroxybenzene)−3,5−ジスルホン酸)などのカテコールを含有し、カテコール/第二鉄キレートに関連する赤みを帯びた色を有さないか又は発現しない洗剤組成物が開示されている。タイロン含有洗剤組成物における赤色の強度を減少させるための方法もまた開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイロン/第二鉄キレートに関連する赤みを帯びた色を有さない、タイロンを含有する洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カテコールは、置換された1,2−ベンゼンジオール骨格を有する芳香族ジオール群に属するものとして定義される。1,2−ジヒドロキシベンゼン(diydroxybenzene)−3,5−ジスルホン酸としても既知であるタイロンは、カテコール族の1つであり、スキーム1に示された分子構造を有する。他のスルホン化カテコールも存在する。ジスルホン酸に加えて、用語「タイロン」はまた、例えば、ジナトリウムスルホン酸塩のようなこの酸のモノ−又はジ−スルホン酸塩を包含してもよい。
【化1】

【0003】
タイロン及び他のカテコールは、鉄及びチタンのイオンなどの特定の遷移金属のイオンに結合して、着色した金属/キレート剤(chelant)錯体を形成する。例えば、溶液中でタイロンは第二鉄(Fe3+)に結合して赤ワイン色の金属/タイロン錯体を形成する。この着色したFe3+/タイロン種の存在は、百万部当たり0.1部(0.1ppm)又は更に低い金属イオン濃度でも検出される場合がある。故に、タイロンは従来よりチタン又は鉄の存在に関する比色分析の指示薬/キレート剤として使用されてきた。
【0004】
タイロンなどのカテコールはまた、洗浄剤として使用されてもよい小分子のキレート剤でもある。例えば、タイロンは堅牢な親水性の洗浄効果を送達し、そしてまた、粘土解膠、懸濁、及び/又は高分子分散系との相乗作用によって微粒子洗浄を促進する場合もある。加えて、タイロンは、特定の洗剤組成物中で使用される特定の酵素系洗浄剤と適合性がある場合がある。
【0005】
しかしながら、多くの洗剤組成物は低濃度の第二鉄などの可溶性鉄を含有する。これらの洗剤中の第二鉄の濃度が、洗剤に望ましくない赤みを帯びた色を与えるのに十分な金属/キレート剤錯体をタイロンなどの特定のカテコールと共に形成するのに十分である。このことは、可溶性の第二鉄が液体洗剤中のタイロンと自由に錯体形成し得る液体洗剤組成物に関して、特に当てはまることである。例えば、低濃度のタイロンを市販の洗剤に添加することにより、洗剤は鉄/タイロン錯体の形成に関連する赤みを帯びた色相を有するようになってしまう。
【0006】
多くの消費者は、赤みを帯びた着色した洗剤を嫌うことがある。例えば、洗剤における赤みを帯びた色は、錆を連想させる場合がある。それ故、青色空間内の洗剤組成物を製造するために、多くの洗剤メーカーは特に赤色発色団を避ける。洗剤製剤中に赤色発色団が存在することで、洗剤からその赤色を除去するために追加のコストが必要となる場合がある。タイロンなどの特定のカテコールを含む洗剤は、洗剤組成物に第二鉄の存在に起因する赤みを帯びた色相をもたらし得るため、タイロンを包含する多くのカテコールは従来より、洗剤用途、特に液体洗剤においては使用されてこなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タイロンに関連する洗浄効果を有し、赤みを帯びた鉄/キレート剤錯体の形成を伴わない洗剤を製造することは望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は一般に、許容可能な色レベルを有する、タイロンを含む洗剤組成物に関する。
【0009】
一実施形態では、本開示は洗剤組成物を提供する。洗剤組成物は、タイロンと、第二鉄に対してキレート化することのできる配位子と、を含む。第二鉄及び配位子は錯体を形成してもよく、この際、その錯体は赤色を有さない。
【0010】
別の実施形態では、本開示はタイロン、ジエチレントリアミン五酢酸(「DTPA」)、カルシウム塩、及び第二鉄を含む洗剤組成物を提供する。特定の実施形態によれば、第二鉄の実質的にすべてがDTPAに対して錯体化する。
【0011】
更なる実施形態では、本開示はタイロン含有洗剤組成物における赤色の強度を減少させる方法を提供する。本方法は、洗剤組成物中に存在する第二鉄に対してキレート化することのできる配位子を加えることを含む。具体的な実施形態によれば、配位子はDTPAであり、洗剤組成物中の第二鉄の実質的にすべてをキレート化する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
「発明を実施するための形態(the Description of the Invention)」において述べる種々の実施形態は、以下の図面を参照することでよりよく理解されるであろう。
【図1】5×5の試料行列における鉄及び配位子の種々の濃度での、鉄/タイロン錯体による色形成。
【図2】3×3試料行列における、洗剤中での色/錯体形成への配位子/カルシウム比の影響。
【図3】配位子の添加に伴う鉄/タイロン錯体の可逆的形成。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.定義
本明細書で使用するとき、「含む(comprising)」との用語は、本開示の組成物の調製において共に使用される種々の構成成分を意味する。したがって、用語「から本質的に成る(consisting essentially of)」及び「から成る(consisting of)」は用語「含む(comprising)」に包含される。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「カテコール」は、置換及び非置換の1,2−ジヒドロキシベンゼンを包含する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「タイロン」は、1,2−ジヒドロキシベンゼン−3,5−ジスルホン酸及びそのモノ−及びジ−スルホン酸塩を包含する。
【0016】
本明細書で使用するとき、「第二鉄/配位子錯体」又は「金属/配位子錯体」との用語は、金属イオン(第二鉄など)がイオン結合、共有結合、又は配位共有結合を介して配位子に結合するときに形成される錯体を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、「結合定数」との用語は錯体を形成するための金属イオン、配位子間の結合のような結合の平衡状態の指標である。特定の場合には、結合定数Kbcは以下の等式を用いて計算されてもよい。
bc=[ML]/([M][L]
式中、[L]は配位子の濃度であり、xは金属に結合する配位子の数であり、[M]は金属イオンの濃度であり、及び[MLx]は金属/配位子錯体の濃度である。
【0018】
B.プロセス及び組成物
タイロンなどのカテコールは、第二鉄イオン(Fe3+)などの鉄と着色した金属/配位子錯体を形成し、これは、金属イオンの濃度が低くても目に見える場合がある。例えば、タイロンの第二鉄との錯体形成は、等式(1)によって表されてもよく、この際、溶液中で赤ワイン色に着色したFe(タイロン)金属/配位子錯体が形成される。Fe(タイロン)は、電磁スペクトル内で476nmにおいて強い吸光係数をもって吸光度の最大値を示す。赤く着色したFe(タイロン)金属/配位子錯体は0.1ppm以下の第二鉄濃度で目に見える場合がある。それ故に、タイロンなどのカテコールは、溶液中における鉄及びチタンなどの遷移金属の存在に関する比色分析の指示薬として用いられてきた。
Fe3++3タイロン→Fe(タイロン) (1)
【0019】
タイロンなどのカテコールはまた、堅牢な親水性洗浄効果を送達する場合のある小分子キレート剤でもある。加えて、タイロンなどのカテコールは、例えば、粘土解膠、懸濁、及び/又は高分子分散系との相乗作用によって、微粒子洗浄を促進する場合がある。カテコールから引き出される洗浄効果は、従来のキレート剤技術によって通常可能であるものを上回る場合がある。例えば、タイロンなどのカテコールは、カルシウム依存性の酵素を包含する洗剤処方において使用される特定の酵素と適合性がある場合がある。故に、これらの及び他の効果を組み合わせることにより、例えば、タイロンを包含するカテコールが、重質液体(「HDL」)洗剤のための魅力的な洗浄技術となる。
【0020】
しかしながら、HDL洗剤中に第二鉄などの可溶性鉄が存在すると、タイロンなどの特定のカテコールがこれらの洗剤の構成成分として添加された場合に、鉄/カテコール錯体に関連する望ましくない赤く着色した発色団がもたらされる場合がある。多くの市販の洗剤は、低濃度のタイロンを添加すると観察可能な赤みを帯びた色を形成するだけの十分な残留第二鉄濃度を有する。例えば、HDL洗剤サンプルの「在庫」サンプルの回収品の鉄濃度を測定した。市販のHDL洗剤(24サンプル)は、0.6〜0.7±0.2ppmの平均総Fe濃度を示した。これらの鉄濃度は、HDLにタイロンを添加した際に着色した錯体の形成を促進するのに十分である。したがって、HDL洗剤組成物にタイロンなどのカテコールを添加することにより、その洗剤組成物が望ましくない赤色又は赤みがかった色を発現してしまう場合がある。
【0021】
本明細書で述べたように、洗剤組成物の消費者は、彼らの洗剤製品において赤い又は赤みを帯びた色を好まない。例えば、赤色は錆又は他の染色性の不純物を連想させる場合がある。これらのHDL洗剤中に、添加されたタイロンと共に微量の濃度の可溶性の鉄が存在すると、研究室の、市場の、又は工場の試料中に赤ワイン色の錯体(Fe(タイロン))が生ずる。結果として生ずるこの赤色は、消費者の好む製品の色を得るためにこれらの洗剤に使用される現行の染料系の妨げとなる場合がある。故に、タイロンを洗剤組成物に組み込むには、最適な経済効果及び消費者の嗜好のために組成物から赤色発色団を除去すること及び/又は鉄を排除することがどうしても必要である。
【0022】
本開示は、洗剤中で、カテコール配位子と第二鉄などの残留の可溶性鉄との間の金属/配位子錯体形成に起因する目に見える又は顕著な赤色若しくは赤みを帯びた色を発現しない、タイロンなどのカテコールを含む洗剤組成物の開発に関する。鉄/タイロン錯体の形成及びそれに伴う赤色着色を抑制することにより、HDL洗剤などの洗剤組成物にタイロンを組み込むことが可能となる。本開示の特定の実施形態のよる1つの手法は、洗剤中の第二鉄イオンと優先的に結合又は錯体を形成して、非着色錯体、又は洗剤系及び/又は消費者の嗜好と適合性のある色を有する錯体を形成することのできる化合物を添加し、それによって第二鉄が着色鉄/タイロン錯体を形成するのを防ぐことを包含する。第二鉄に結合する又は第二鉄と錯体を形成することのできる化合物の例としては、第二鉄と共にキレートを形成し、HDL洗剤の高いイオン強度環境の中で可溶性の鉄に対してタイロンに打つ勝つことのできるキレート化配位子が挙げられる。本明細書の特定の実施形態はカテコールタイロンの使用について記載しているが、他のカテコールジスルホン酸、カテコールモノスルホン酸、及びこれらの酸の塩類などであるが、これらに限定されない他のカテコールを、種々の実施形態においてタイロンに置き換えることが可能である場合があることに留意すべきである。
【0023】
一実施形態によれば、本開示は、タイロンと、洗剤中で第二鉄に対してキレート化することのできる配位子と、を含む洗剤組成物に関し、この際配位子とタイロンの間で形成される錯体は赤色を有さない。本実施形態によれば、洗剤中で第二鉄に対しキレート化することのできる配位子が、洗剤中の可溶性第二鉄と優先的に結合し及び配位し、それによって洗剤組成物から可溶性の第二鉄の濃度を減少させる場合がある。可溶性の第二鉄は第二鉄に対してキレート化することのできる配位子に結合するので、第二鉄は、タイロンと結合することによって赤く着色された鉄/タイロン錯体を形成するためには利用できない。特定の実施形態によれば、洗剤組成物中の第二鉄の実質的にすべてが第二鉄/配位子錯体の形態にある。本明細書で使用するとき、「実質的にすべて」との用語は、第二鉄濃度と共に使用される場合、第二鉄/配位子錯体の形態ではない第二鉄が0.3ppm未満、特定の実施形態では、0.1ppm未満であることを意味する。
【0024】
特定の実施形態では、第二鉄に対してキレート化することのできる配位子が、第二鉄に対する結合定数が少なくとも1021である。本明細書において定義されるとき、結合定数とは、錯体を形成するための、第二鉄イオンと配位子との間の結合のような結合の平衡状態の指標である。例えば、Fe3+のタイロンに対する結合定数は、米国標準技術局(the National Institute of Standards and Technology)(「NIST])、R.M.スミス(R.M. Smith)、及びA.E.マーテル(A.E. Martell)、NIST標準参照データベース(NIST Standard Reference Database)46、NISTで厳密に選定された金属錯体の安定定数(NIST Critically Selected Stability Constants of Metal Complexes)、バージョン8.0、2004年5月、米商務省(U.S. Department of Commerce)、技術局(Technology Administration)、NIST、標準参照データプログラム(Standard Reference Data Program)、メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)に従って、約1020.3であると報告されている。したがって、少なくとも1021の第二鉄に対する結合定数を有する配位子が、第二鉄に対してタイロンよりも優先的に結合することになる。特定の実施形態では、配位子が、第二鉄に対する結合定数が約1026〜約1030の範囲であってもよい。
【0025】
種々の実施形態では、第二鉄に対してキレート化できる配位子が、ジエチレントリアミン五酢酸(「DTPA」)、ジエチレントリアミンーペンタメチルホスホン酸(「DTPMP」)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。第二鉄に対してキレート化できる他の好適な配位子が、モダン・インオーガニック・ケミストリー(Modern Inorganic Chemistry)(プレナム・プレス(Plenum Press)、ニューヨーク州ニューヨーク(New York)、1996年、58〜197ページ、特に151〜158ページ)の、A.E.マーテル(A.E. Martell)、R.D.ハンコック(R.D. Hancock)、「水溶液における金属錯体(Metal Complexes in Aqueous Solutions)」に開示されている。本明細書に引用される配位子としては、遊離酸配位子、並びに一、二、三、四、及び五酢酸塩(アルカリ金属塩を包含する)及び一、二、三、四、五リン酸塩などの種々の酸塩が挙げられる。一実施形態では、配位子が、五ナトリウム酢酸塩を包含するDTPAである。他の実施形態では、配位子はDTPMPであってもよい。例えば、特定の国々では、洗剤組成物中のホスフェート含有量が制限されている場合がある。アメリカ合衆国などのこうした国々では、DTPAなどのホスフェートを含まない配位子が配位子としての機能を果たしてもよい。洗剤組成物中のホスフェートの含有量が厳密には規制されていない他の国々では、DTPMPのようなリン含有配位子をDTPAの代替物として、又はDTPAとの混合物として使用してもよい。DTPAの第二鉄との結合定数は、約1027.7であり、一方、DTPMPの第二鉄との結合定数は1028よりも大きい。第二鉄は、配位子、例えばDTPA又はDTPMPに対してタイロンよりも優先的に結合し、したがって、洗剤組成物中で顕著な濃度の着色金属/タイロン錯体を形成しない。DTPAはまた、特定のHDL洗剤組成物に加えられた場合に、親水性の洗浄効果を提供する場合がある。特定の実施形態では、洗剤組成物中でのDTPA及び/又はDTPMPのような配位子の濃度が、約0.05重量%〜約2.0重量%の範囲であってもよい。他の実施形態では、洗剤組成物中での配位子の濃度が、約0.10重量%〜約1.0重量%の範囲であってもよく、更に他の実施形態では、配位子の濃度が約0.10重量%〜約0.50重量%の範囲であってもよい。
【0026】
特定の実施形態によれば、洗剤組成物は、少なくとも1つのカルシウム塩を更に含んでもよい。本洗剤組成物に使用するのに好適なカルシウム塩の例としては、例えば、ギ酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、及びこれらうちのいずれかの組み合わせのような、Ca2+イオンの水溶性塩が挙げられる。特定の実施形態では、カルシウム塩はギ酸カルシウムであってもよい。特定の処方においては、カルシウムイオン(Ca2+)は、洗剤組成物中の特定の酵素系構成成分を安定化するように作用する場合もある。例えば、ナタラーゼ(NATALASE)(登録商標)(ノボザイムズ(Novozymes A/S Corp.)、デンマークから市販)は、特定のHDL洗剤組成物中で、例えば、特定のデンプン系の染みを除去するために使用されてもよいアルファアミラーゼ酵素である。HDL洗剤組成物に一般に添加される他の酵素としては、例えば、プロテアーゼ(アルカラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、及びマキサターゼなど)、アミラーゼ(ターマミルなど)、リパーゼ、オキシダーゼ、オキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラタナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、b−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びこれらのうちのいずれかの混合物が挙げられる。カルシウムイオン(Ca2+)は、洗剤組成物中の特定のアミラーゼ(ナタラーゼ(NATALASE)(登録商標)などであるがこれに限定されないもの)又は特定の他の酵素を安定化するように作用する場合があり、したがって、特定の濃度のカルシウムイオンが、酵素を含む洗剤組成物中の効果的な酵素の洗浄活性のために必要である場合がある。故に、洗剤組成物中の配位子が、洗剤中のFe3+などの可溶性鉄に効果的に結合する能力を有していなければならないが、酵素含有洗剤中では、洗剤中の他の金属イオンに結合する配位子についても考慮しなければならない。したがって、特定の実施形態によれば、配位子は可溶性のFe3+イオンと共にキレートを形成する能力を有していなければならないだけでなく、Ca2+などの他のイオンに対する化合物の結合は、洗剤酵素に対するそのイオンの安定化効果を軽減しないように十分に低くなければならない。
【0027】
少なくとも1つのカルシウム塩を含む洗剤組成物の特定の実施形態によれば、カルシウム塩は、0.1ppm〜500ppmの遊離のCa2+イオンを与えるのに十分な量で存在する場合がる。具体的な実施形態では、洗剤組成物は、100ppm〜400ppmの範囲の遊離カルシウムイオン濃度を有するのに十分なカルシウム塩を含んでもよい。例えば、カルシウム塩がギ酸カルシウムである一実施形態では、洗剤組成物中のギ酸カルシウムの濃度が約0.04%〜約1.60%(w/w)の範囲のギ酸カルシウムでもよい。ギ酸カルシウムの値は、約0.01〜約0.4%(w/w)のカルシウムイオンに等しく、この値は約100ppm〜約400ppmに相当する。
【0028】
特定の実施形態では、第二鉄をキレート化することができる配位子のカルシウムイオン濃度に対するモル比は、酵素の安定性及び活性を維持しつつ許容可能な色の制御を維持するために重要である場合がある。例えば、配位子がDTPAであるそれらの実施形態では、カルシウムイオンは、DTPAの色制御の有効性を軽減する場合があり、一方、DTPAの(カルシウムイオンに対しての)高い濃度が、特定のアミラーゼ、例えば、ナタラーゼ(NATALASE)(登録商標)などの特定の酵素の安定性を損なう場合がある。したがって、最適な色制御及び酵素活性/安定性のためには、配位子(DTPAなど)のカルシウムイオンに対する特別なモル比の範囲が存在する。特定の実施形態では、洗剤組成物はDTPAを含み、当該洗剤組成物はDTPAのCa2+に対するモル比が少なくともCa2+1部に対してDTPA 1.05部である。他の実施形態では、DTPA対Ca2+のモル比は約1.05:1〜約1.8:1の範囲であってもよい。更に他の実施形態では、DTPA対Ca2+のモル比は約1.2:1〜約1.8:1の範囲であってもよい。更に他の実施形態では、DTPA対Ca2+のモル比は約1.2:1〜約1.6:1の範囲であってもよい。DTPMPなど、DTPAとは異なる配位子を含む他の洗剤組成物についても、同様の配位子対Ca2+比を使用することができる。例えば、表2に記載されたデータは、DTPA対カルシウムイオンの比率が、HDL洗剤中のアミラーゼ、ナタラーゼ(NATALASE)(登録商標)の安定性に影響を及ぼす場合があるということを実証している。表1で分かるように、酵素の安定性はより高いカルシウムイオン濃度において最も良好であり、DTPA濃度が増すほど酵素安定性は減少する。図2は、表1において測定された種々のモル比において観察された色形成を示している。図2は、1.05:1未満のDTPA:Ca2+のモル比において、例えば、0.075%(w/w)のギ酸カルシウム濃度及び0.3%(w/w)又は0.2%(w/w)のDTPA濃度において、及び0.050%(w/w)のギ酸カルシウム濃度及び0.2%(w/w)のDTPA濃度において、赤い第二鉄/タイロン発色団が観察されることを実証している。表1及び図2は、約1.2:1〜約1.6:1のDTPA対カルシウムイオンのモル比において、良好なタイロン色制御(即ち、第二鉄/タイロン錯体形成により形成される顕著な赤色がないこと)と、良好な酵素処方安定性とのバランスが達成されるということを示している。Ca2+イオン濃度に応じて活性が変化する酵素を含まない洗剤組成物については、配位子とCa2+濃度の比率には、いかなる上限もないはずであるということに留意すべきである。即ち、配位子対カルシウムイオンのモル比の上限は、1.8:1.0よりも大きくてもよい。このような洗剤組成物は、本開示の範囲内である。
【0029】
本明細書で論ずるとき、タイロンのFe3+に対する結合定数は1020.3であり、一方DTPAのFe3+に対する結合定数は1027.7である。それに対し、タイロンのCa2+に対する結合定数は約10であり、一方、DTPAのCa2+に対する結合定数は約1010である。それ故、DTPAはFe3+イオンに対して強く結合しCa2+イオンに対してはあまり強く結合しない好適な配位子である場合がある。
【0030】
種々の実施形態によれば、本開示の洗剤組成物では、例えば、HDL洗剤のような液体洗剤中で、第二鉄/タイロンキレート錯体形成の赤色特性が低減される場合がある。洗剤組成物に関連する赤色の減少は、当該技術分野で既知のいずれかの比色分析法又は分光法によって測定されてもよい。好適な比色分析法としては、例えば、ガードナーカラースケール(米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)(「ASTM」)法、ASTM D1544、D6166、及び/若しくは米国油化学会(American Oil Chemists’ Society)(「AOCS」)法、AOCS Td−1a−64による)、ハンターL.a.b.(CIE)カラースケール(ASTM D5386−93bによる)、アメリカ公衆保健協会(the American Public Health Association)(「APHA」)カラースケール(ASTM D1209若しくはAOCS Td−1b−64による)、セイボルトカラースケール(the Saybolt color scale)(ASTM D156若しくはD6045による)、又はロビボンド(Lovibond)(レッド)スケール(AOCS Cc−13b−45による)が挙げられる。本開示はいずれかの特定の比色分析測定に限定されず、洗剤組成物の種々の実施形態において観察される赤色の減少は、いずれの好適な比色分析法によって測定されてもよいということに留意すべきである。
【0031】
特定の実施形態によれば、低濃度の第二鉄の存在下での、本開示の洗剤組成物の赤色の減少は、種々の比色分析法によって測定されてもよい。赤色形成がハンターL.a.b.(CIE)カラースケールを用いて測定される種々の実施形態では、低濃度の第二鉄の存在下における本開示の洗剤組成物は、85を超える「L」値及び/又は−2未満の「a」値を有し、また特定の実施形態では、−4未満の「a」値を有する。赤色形成がロビボンド(Lovibond)レッドカラースケールを用いて測定される特定の実施形態によれば、低濃度の第二鉄の存在下における本開示の洗剤組成物は、1未満のロビボンドレッド値を有する場合があり、具体的な実施形態では、ロビボンドレッド値は0.0〜1.0の範囲である場合がある。赤色形成がAPHAカラースケールを用いて測定される他の実施形態によれば、低濃度の第二鉄の存在下における本開示の洗剤組成物は、110未満のAPHAカラー値を有する場合があり、具体的な実施形態では、APHAカラー値は約80〜約110の範囲であってもよい。赤色形成がセイボルト(Saybolt)カラースケールを用いて測定される更に他の実施形態では、低濃度の第二鉄の存在下における本開示の洗剤組成物は、7.0よりも大きいセイボルトカラー値を有する場合があり、具体的な実施形態では、セイボルトカラー値は約7.0〜約14.0の範囲であってもよい。赤色形成がガードナーカラースケールを用いて測定される他の実施形態では、低濃度の第二鉄の存在下における本開示の洗剤組成物は、5.0未満のガードナーカラー値を有する場合があり、具体的な実施形態では、ガードナーカラー値は約3.0〜約5.0の範囲であってもよい。本明細書で使用されるとき、これらの比色分析法及び分析値に関して、用語「低濃度の第二鉄」とは、洗剤組成物中、15ppm未満、特定の実施形態では10ppm未満、他の実施形態では5ppm未満の第二鉄の濃度を包含する。
【0032】
分光光度法などの異なる比色分析法を用いて、例えば、洗剤組成物/第二鉄混合物による所定の波長の光の吸光度を測定することによって、赤色の形成を測定してもよい。例えば、一実施形態では、波長540nmの光の吸収を測定して赤色形成と相関させてもよい。特定の実施形態では、本開示の洗剤組成物は、低濃度の第二鉄の存在下で、540nmにおける吸光度の値が0.8以上の吸収スペクトルを示す場合がある。
【0033】
別の実施形態では、本開示はタイロン、DTPA、カルシウム塩、及び第二鉄を含む洗剤組成物を提供する。特定の実施形態では、カルシウム塩は、例えば、ギ酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、及びこれらのうちのいずれかの組み合わせのようないずれかの可溶性のカルシウム塩であってもよい。
【0034】
洗剤組成物の他の実施形態によれば、第二鉄の実質的にすべてがDTPAに対し錯体化されている。本明細書で使用するとき、「実質的にすべて」との用語は、第二鉄濃度に関して使用される場合、組成物中で0.3ppm未満(及び特定の実施形態では、0.1ppm未満)の第二鉄が遊離している、又はDTPAに錯体化されていない。即ち、0.3ppm未満(又は0.1ppm未満)の第二鉄が、洗剤組成物中のタイロンと錯体化するために利用可能である。洗剤組成物の他の実施形態では、洗剤組成物は第二鉄/タイロン錯体の濃度を本質的に有さない。本明細書で使用するとき、用語「濃度を本質的に有さない」とは、第二鉄/タイロン錯体の濃度に関して使用される場合、第二鉄/タイロン錯体の濃度が、例えば、洗剤組成物の遷移スペクトルを測定することにより、又は本明細書に記載されたもののいずれかのようないずれかの一般的な比色分析法を用いることなどにより、分光法又は比色分析法によって検出可能な濃度よりも低いということを意味する。故に、これらの実施形態によれば、洗剤組成物は第二鉄/タイロン発色団の存在に起因する赤色を有さない。
【0035】
本洗剤組成物の種々の実施形態では、カルシウム塩の濃度が、約0.1ppm〜約500ppmの遊離のCa2+イオンの範囲のCa2+イオン濃度を与えるのに十分であってもよい。他の実施形態では、カルシウム塩の濃度が、約100ppm〜約400ppmの遊離のCa2+イオンの範囲のCa2+イオン濃度を与えるのに十分であってもよい。本明細書において論ずるとき、特定の実施形態では、洗剤組成物中のカルシウムイオンの濃度が洗剤の有効性のために重要である場合がある。例えば、洗剤組成物が酵素を含む特定の場合には、最適な酵素活性のために最小限のカルシウムイオン濃度が必要である場合がある。
【0036】
他の実施形態では、DTPAのカルシウムイオンに対するモル比を最適化してよく、この際、第二鉄/タイロン錯体に起因する色形成の制御及び酵素安定性の両方が最大とされる。一実施形態によれば、洗剤組成物は、約1.05:1よりも大きなDTPA対Ca2+モル比を有していてもよい。他の実施形態では、洗剤組成物は、DTPA対Ca2+のモル比が約1.05:1〜約1.8:1の範囲であってもよい。更に他の実施形態では、DTPA対Ca2+のモル比は約1.2:1〜約1.8:1の範囲であってもよい。更に他の実施形態では、DTPA対Ca2+のモル比は約1.2:1〜約1.6:1の範囲であってもよい。
【0037】
他の実施形態によれば、洗剤組成物は、プロテアーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラタナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、b−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される酵素を更に含んでいてもよい。好適な酵素の例について、本明細書において詳細に説明する。
【0038】
本明細書に開示される洗剤組成物の特定の実施形態によれば、洗剤組成物のpHが色形成及び/又は酵素の安定性に影響をもつ場合がある。一実施形態によれば、洗剤組成物は約6〜約10の範囲のpHを有していてもよい。別の実施形態では、洗剤組成物は約7〜約9の範囲のpHを有していてもよい。別の実施形態では、洗剤組成物は約8のpHを有していてもよい。
【0039】
本開示の他の実施形態は、タイロン含有洗剤組成物における赤色の強度を減少させる方法を提供する。本明細書において説明するように、タイロン含有洗剤組成物は、洗剤組成物中のタイロンと可溶性の鉄との間で形成される金属配位子錯体に関連する赤い発色団の形成に起因して、赤又は赤みがかった色を示す場合がある。種々の実施形態によれば、本方法は、洗剤組成物中の第二鉄などの可溶性の鉄に対してキレート化することのできる配位子を添加することを含む。他の実施形態では、本方法は、可溶性鉄の実質的にすべてをその可溶性鉄をキレート化できる配位子でキレート化することを更に含んでもよい。これらの実施形態によれば、洗剤組成物中の可溶性鉄の実質的にすべての、配位子とのキレート化又は結合は、洗剤組成物中で形成される可溶性鉄/タイロン錯体の量を最小限にする。
【0040】
洗剤組成物構成成分
本明細書に開示された特定の実施形態によれば、本開示の洗剤組成物は、当該技術分野において既知の特定の他の構成成分を更に含んでいてもよい。このような組成物は、その洗剤組成物を含有する溶液中で洗浄される布地に対して汚れ及び/又は染み除去効果を提供するために、所望のレベルの1つ以上の洗浄特性を提供するのに十分な量、典型的には総組成物の重量基準で、約5%〜約90%、約5%〜約70%、又は更には約5%〜約40%の界面活性剤と、本開示のタイロン及び配位子と、を含んでいてもよい。典型的には、洗剤は洗浄溶液中で、その洗浄溶液の約0.0001重量%〜約0.05重量%、又は更には約0.001重量%〜約0.01重量%の濃度で使用される。
【0041】
液体洗剤組成物は、水性の、非界面活性液体キャリアを含んでいてもよい。一般的に、本明細書の組成物中に使用される水性非界面活性液体キャリアの量は、組成物構成成分を可溶化し、懸濁し、又は分散するのに有効である。例えば、組成物は、約5重量%〜約90重量%、約10重量%〜約70重量%、又は更には約20重量%〜約70重量%の水性非界面活性液体キャリアを含んでいてもよい。
【0042】
最もコスト効率のよい種類の水性非界面活性液体キャリアは水であってもよい。したがって、水性非界面活性液体キャリア構成成分は一般に、完全でないとしても、大部分が水であってもよい。従来から、アルカノール、ジオール、他のポリオール、エーテル、アミン等のような他の種類の水相溶性液体が、共溶媒又は安定剤として液体洗剤組成物に添加されてきたが、本開示の目的のためには、そのような水相溶性液体の利用は、組成物コストを抑制するため最小限となされてもよい。それ故に、本明細書における液体洗剤製品の水性液体キャリア構成成分は一般に、組成物の約5重量%〜約90重量%、又は更には約20重量%〜約70重量%の範囲の濃度で存在する水を含む。
【0043】
本明細書における液体洗剤組成物は、界面活性剤、二重特性ポリマー、及び特定の任意補助成分の水溶液、又は均一分散液若しくは懸濁液の形態をとってよく、それらの成分のいくつかは通常、液体アルコールエトキシレート非イオン性物質、水性液体キャリア、及びいずれかの他の通常液体の任意成分のような通常液体の組成物構成成分と組み合わされた固形の形態であってもよい。そのような溶液、分散液、若しくは懸濁液は許容できるように相安定であり、及び典型的に約100〜600cps、より好ましくは約150〜400cpsの範囲の粘度を有する。本開示の目的のため、粘度は#21スピンドルを使用したブルックフィールド(Brookfield)LVDV−II+の粘度計で測定する。
【0044】
好適な界面活性剤はアニオン性、非イオン性、カチオン性、双極性、及び/又は両性界面活性剤であってもよい。1つの態様では、洗剤組成物はアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はこれらの混合物を含む。
【0045】
好適なアニオン性界面活性剤は、液体洗剤製品で典型的に用いられる従来のアニオン性界面活性剤のいかなる種類のものであってもよい。このような界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸及びそれらの塩類、並びにアルコキシル化又は非アルコキシル化アルキルサルフェート物質類が挙げられる。代表的なアニオン性界面活性剤は、C10〜C16のアルキルベンゼンスルホン酸、好ましくは、C11〜C14のアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩である。1つの態様では、アルキル基は直鎖である。このような直鎖アルキルベンゼンスルホネートは「LAS」として公知である。そのような界面活性剤及びそれらの調製は、例えば、米国特許第2,220,099号及び同第2,477,383号に記載されている。特に好ましいものは、アルキル基の炭素原子の平均数が約11〜14の線状直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びカリウムである。ナトリウムC11〜C14LAS、例えば、C12LASはそのような界面活性剤の具体的な例である。
【0046】
他の代表的な種類のアニオン性界面活性剤にはエトキシ化アルキルサルフェート界面活性剤が含まれる。アルキルエーテルサルフェート、又はアルキルポリエトキシレートサルフェートとしても既知のこのような物質は、式:R’−O−(CO)−SOMに従うものであり、式中、R’は、C〜C20のアルキル基であり、nは約1〜20であり、及びMは塩生成カチオンである。具体的な実施形態において、R’はC10〜C18アルキルであり、nは約1〜15であり、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム、又はアルカノールアンモニウムである。より具体的な実施形態において、R’はC12〜C16であり、nは約1〜6であり、及びMはナトリウムである。
【0047】
アルキルエーテルサルフェートは一般に、様々なR’鎖長及び様々なエトキシル化度を含む混合物の形態で使用される。しばしばそのような混合物はまた、必然的にいくつかの非エトキシル化アルキルサルフェート物質、即ち、上記エトキシル化アルキルサルフェート式で、式中、n=0である界面活性剤も含有することになる。非エトキシル化アルキルサルフェートも本発明の組成物に別途加え、存在してもよいいずれかのアニオン性界面活性剤成分として又は成分中で使用されてもよい。非アルコキシル化、例えば、非エトキシ化、アルキルエーテルサルフェート界面活性剤の具体例は、高級C〜C20脂肪族アルコールの硫酸化により製造されるものである。従来の一級アルキルサルフェート界面活性剤は、一般式ROSO(式中、Rは典型的に、直鎖又は分枝鎖であってもよいC〜C20アルキル基であり、Mは水溶性化カチオンである)を有する。具体的な実施形態において、RはC10〜C15アルキル基であり、Mはアルカリ金属であり、より具体的には、RはC12〜C14アルキルであり、Mはナトリウムである。
【0048】
本明細書に有用なアニオン性界面活性剤の具体的な非限定例には、a)C11〜C18アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、b)C10〜C20の1級の分岐鎖及びランダムなアルキルサルフェート(AS)、c)式(I)及び(II)を有するC10〜C18の2級(2,3)−アルキルサルフェート、
【化2】

(ここで、式(I)及び(II)中のMは水素又は電気的中性を与えるカチオンであり、及び界面活性剤と関連づけられるか補助成分と関連づけられるかにかかわらず全てのM単位は熟練工により分離された形態又は化合物が使用されている系の相対的なpHに依存し水素原子かカチオンのいずれかであることができ、好ましいカチオンの非限定例としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びこれらの混合物が挙げられ、xは少なくとも約7、好ましくは少なくとも約9の整数であり、yは少なくとも8、好ましくは少なくとも約9の整数である)、d)C10〜C18アルキルアルコキシサルフェート(AES)(式中、好ましくはzは1〜30である)、e)好ましくは1〜5のエトキシ単位を含むC1018アルキルアルコキシカルボキシレート、f)米国特許第6,020,303号及び同第6,060,443号で述べられているような中鎖分枝状アルキルサルフェート、g)米国特許第6,008,181号及び同第6,020,303号で述べられているような中鎖分枝状アルキルアルコキシサルフェート、h)国際公開第99/05243号、同第99/05242号、同第99/05244号、同第99/05082号、同第99/05084号、同第99/05241号、同第99/07656号、同第00/23549号、及び同第00/23548号で述べられているような変性されたアルキルベンゼンスルホネート(MLAS)、i)メチルエステルスルホネート(MES)、及びj)α−オレフィンスルホネート(AOS)が挙げられる。
【0049】
本明細書で有用な好適な非イオン性界面活性剤には、液体洗剤製品で典型的に使用される従来の種類のいかなる非イオン性界面活性剤を含めてもよい。これらとしては、例えば、アルコキシル化脂肪族アルコール及びアミンオキシド界面活性剤が挙げられる。通常液体である非イオン性界面活性剤は、本明細書の液体洗剤製品に用いるのに好ましい。本明細書に用いるのに適した非イオン性界面活性剤としてはアルコールアルコキシレート非イオン性界面活性剤が挙げられる。アルコールアルコキシレートは、一般式、R(C2mO)OHに対応する物質であり、式中、RはC〜C16アルキル基であり、mは2〜4であり、pは約2〜12の範囲である。好ましくは、Rは、第1級又は第2級であってもよいアルキル基であり、約9〜約15個の炭素原子、より好ましくは約10〜約14個の炭素原子を含有する。実施形態の1つでは、アルコキシル化脂肪族アルコールはまた、分子当り約2〜約12のエチレンオキシド部分、より好ましくは分子当り約3〜約10のエチレンオキシド部分を含有するエトキシ化物質であってもよい。
【0050】
本明細書の液体洗剤組成物に有用なアルコキシル化脂肪族アルコール物質はしばしば約3〜17の範囲の親水性−親油性バランス(HLB)を有するであろう。より好ましくは、この物質のHLBは、約6〜15、最も好ましくは約8〜15の範囲となる。好適なアルコキシル化脂肪族アルコール非イオン性界面活性剤は、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Company)により商標名ネオドール(NEODOL)(登録商標)で市販されている。
【0051】
本明細書において有用な非イオン性界面活性剤の他の好適な種類には、アミンオキシド界面活性剤が含まれる。アミンオキシドは、当該技術分野では多くの場合「半極性」非イオン性物質と呼ばれる物質である。アミンオキシドは、式、R(EO)(PO)(BO)N(O)(CH2・qHOを有する。この式中、Rは、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖であることができる比較的長鎖のアルキル部分であり、8〜20個、好ましくは10〜16個の炭素原子を含有することができ、より好ましくはC12〜C16第一級アルキルである。Rは短鎖部分で、好ましくは水素、メチル及び−CHOHから選択される。f+g+hが0と異なる場合、EOはエチレンオキシ、POはプロピレンオキシ、及びBOはブチレンオキシである。代表的なアミンオキシド界面活性剤は、C12〜C14アルキルジメチルアミンオキシドにより示されてもよい。
【0052】
非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。a)C12〜C18アルキルエトキシレート、例えば、シェル社(Shell)製のネオドール(NEODOL)(登録商標)非イオン性界面活性剤、b)C〜C12アルキルフェノールアルコキシレートであって、ここでアルコキシレート単位は、エチレンオキシ単位とプロピレンオキシ単位の混合物である、c)エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーとの、C12〜C18アルコール及びC〜C12アルキルフェノールの縮合体、例えば、BASF社(BASF)製のプルロニック(PLURONIC)(登録商標)、d)米国特許第6,150,322号に述べられているようなC14〜C22中鎖分枝アルコール、(「BA」)、e)米国特許第6,153,577号、同第6,020,303号、及び同第6,093,856号に述べられているようなC14〜C22中鎖分枝アルキルアルコキシレート、(「BAE」)ここで、zは、1〜30である、f)米国特許第4,565,647号に述べられているようなアルキル多糖類であって、特に、米国特許第4,483,780号及び同第4,483,779号に述べられているようなアルキルポリグリコシド、g)米国特許第5,332,528号、国際公開第92/06162号、同第93/19146号、同第93/19038号、及び同第94/09099号に述べられているようなポリヒドロキシ脂肪酸アミド、及びh)米国特許第6,482,994号及び国際公開第01/42408号に述べられているような、エーテルで末端保護されたポリ(オキシアルキル化)アルコール界面活性剤。
【0053】
本明細書の洗濯洗剤組成物の特定の実施形態において、洗浄性界面活性剤構成成分は、アニオン性及び非イオン性界面活性剤物質の組み合わせを含んでいてもよい。この場合、アニオン性と非イオン性との重量比は、典型的には10:90〜90:10、より典型的には30:70〜70:30の範囲である。
【0054】
カチオン性界面活性剤は、当該技術分野において既知であり、これらの非限定例としては四級アンモニウム界面活性剤が挙げられ、26までの炭素原子を有することができる。追加の例にはa)米国特許第6,136,769号での述べられているようなアルコキシレート第四級アンモニウム(AQA)界面活性剤、b)米国特許第6,004,922号で述べられているようなジメチルヒドロキシエチル第四級アンモニウム、c)国際公開第98/35002号、同第98/35003号、同第98/35004号、同第98/35005号及び同第98/35006号で述べられているようなポリアミンカチオン性界面活性剤、d)米国特許第4,228,042号、同第4,239,660号、同第4,260,529号及び同第6,022,844号で述べられているようなカチオン性エステル界面活性剤並びにe)米国特許第6,221,825号及び国際公開第00/47708号で述べられているようなアミノ界面活性剤、例えばアミドプロピルジメチルアミン(「APA」)が挙げられる。
【0055】
双極性界面活性剤の非限定的な例としては、二級及び三級アミンの誘導体、複素環式二級及び三級アミンの誘導体、又は四級アンモニウム化合物、四級ホスホニウム化合物若しくは三級スルホニウム化合物の誘導体が挙げられる。双極性界面活性剤の例である、アルキルジメチルベタイン及びココジメチルアミドプロピルベタイン、C〜C18(例えば、C12〜C18)アミンオキシド、並びに、例えば、アルキル基がC〜C18、及び特定の実施形態ではC10〜C14であることができるN−アルキル−N,N−ジメチルアミノ−1−プロパンスルホネートのようなスルホ及びヒドロキシベタインを包含するベタインについては、米国特許第3,929,678号の19欄38行〜22欄48行を参照のこと。
【0056】
両性界面活性剤の非限定的な例としては、二級若しくは三級アミンの脂肪族誘導体、又は、脂肪族ラジカルが直鎖又は分枝鎖であることができる、複素環式二級及び三級アミンの脂肪族誘導体が挙げられる。脂肪族置換基の1つは、少なくとも約8個の炭素原子、例えば約8〜約18個の炭素原子を含有してもよく、少なくとも1つが、アニオン水溶性化基、例えば、カルボキシ基、スルホネート基、サルフェート基を含有する。両性界面活性剤の好適な例については、米国特許第3,929,678号、19欄18〜35行を参照のこと。
【0057】
界面活性剤系の非限定例としては、従来のC11〜C18アルキルベンゼンスルホネート(「LAS」)及び一級分枝鎖及びランダムC10〜C20アルキルサルフェート(「AS」)、式C10〜C18二級(2,3)アルキルサルフェート、オレイルサルフェートなどの不飽和サルフェート、CH(CH(CHOSO)CH及びCH(CH(CHOSO)CHCH式中、x及び(y+1)は少なくとも約7、他の実施形態では少なくとも約9の整数であり、及びMは水溶性化カチオン、特にナトリウムである、C10〜C18アルキルアルコキシサルフェート(「AES」、特にEO1〜7エトキシサルフェート)、C10〜C18アルキルアルコキシカルボキシレート(特に、EO1〜5エトキシカルボキシレート)、10〜C18グリセロールエーテル、C10〜C18アルキルポリグリコシド及びそれらの対応する硫酸化ポリグリコシド、並びにC12〜C18α−スルホン化脂肪酸エステルが挙げられる。所望される場合、従来の非イオン性及び両性界面活性剤、例えば、いわゆる狭いピークを有するアルキルエトキシレートが挙げられるC12〜C18アルキルエトキシレート(「AE」)、及びC〜C12アルキルフェノールアルコキシラート(特にエトキシレート及び混合エトキシ/プロポキシレート)、C12〜C18ベタイン及びスルホベタイン(「スルタイン」)、C10〜C18アミンオキシド等もまた界面活性剤系に包含されることができる。C10〜C18N−アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドもまた使用できる。国際公開第92/06154号を参照のこと。糖から誘導される他の界面活性剤としては、C10〜C18N−(3−メトキシプロピル)グルカミドなどのN−アルコキシポリヒドロキシ脂肪酸アミドが挙げられる。低発泡性のためには、N−プロピル〜N−ヘキシルC12〜C18グルカミドを使用することができる。C10〜C20の従来型石鹸を使用してもよい。高い泡立ちが望まれる場合には、分枝鎖のC10〜C16石鹸を使用してもよい。アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の混合物が特に有用である。他の従来の有用な界面活性剤は、標準テキストに列挙されている。
【0058】
洗剤組成物はまた洗剤ビルダーを包含してもよく、特定の実施形態では、洗剤ビルダーを包含する。ビルダーは一般に、種々の水溶性、アルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウムホスフェート、ポリホスフェート、ホスホネート、ポリホスホネート、カーボネート、シリケート、ボレート、ポリヒドロキシスルホネート、ポリアセテート、カルボキシレート、及びポリカルボキシレートから選択される。具体的な実施形態は上述のもののアルカリ金属、特にはナトリウム塩を包含する。本明細書で使用するための他の実施形態は、ホスフェート、カーボネート、シリケート、C10〜C18脂肪酸、ポリカルボキシレート、及びこれらの混合物である。更に他の実施形態はトリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、シトレート、タータラートモノ−及びジ−スクシナート、ケイ酸ナトリウム、及びこれらの混合物を包含する。
【0059】
無機ホスフェートビルダーの具体的な例としては、ナトリウム及びカリウムトリポリホスフェート、ピロホスフェート、約6〜21の重合度を有する高分子メタホスフェート、及びオルトホスフェートが挙げられる。ポリホスホネートビルダーの例には、エチレンジホスホン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、エタン1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、及びエタン、1,1,2−トリホスホン酸のナトリウム塩及びカリウム塩がある。他のリン系のビルダー化合物は、米国特許第3,159,581号、同第3,213,030号、同第3,422,021号、同第3,422,137号、同第3,400,176号、及び同第3,400,148号に開示されている。非リン系の無機ビルダーの例には、ナトリウム及びカリウムの炭酸塩、炭酸水素塩、セスキ炭酸塩、テトラホウ酸十水和物、及びSiOとアルカリ金属酸化物の重量比が約0.5〜約4.0、又は他の実施形態では約1.0〜約2.4のケイ酸塩がある。本明細書で有用な水溶性無リン有機ビルダーには、様々なアルカリ金属、アンモニウム、並びに置換アンモニウムのポリアセテート、カルボネート、ポリカルボネート、及びポリヒドロキシスルホネートが挙げられる。ポリアセテートビルダー及びポリカルボキシレートビルダーの例としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、オキシジコハク酸、メリト酸、ベンゼンポリカルボン酸、及びクエン酸の、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、及び置換アンモニウム塩が挙げられる。
【0060】
高分子ポリカルボキシレートビルダーについては、米国特許第3,308,067号に記載されている。こうした物質には、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、アコニット酸、シトラコン酸、及びメチレンマロン酸のような脂肪族カルボン酸の、ホモ−及びコポリマーの水溶性塩が挙げられる。これらの物質の幾つかは後述するように水溶性アニオン性ポリマーとして有用であるが、非石鹸アニオン性界面活性剤と完全に混合された場合に限る。本明細書に用いる他の好適なポリカルボキシレートは、米国特許第4,144,226号及び同第4,246,495号に記載されているポリアセタールカルボキシレートである。
【0061】
式SiO・MOによって表される水溶性シリケート固体であって、Mがアルカリ金属であり、及びSiO:MOの重量比が約0.5〜約4.0であるものが、本発明の洗剤顆粒において、無水の重量基準で約2%〜約15%の濃度で有用な塩類である。無水の又は水和した粒子状シリケートがまた、特定の実施形態において使用されてもよい。
【0062】
粒状洗剤組成物の構成成分として、追加の成分を幾つでも包含させることができる。これらとしては、他の洗浄性ビルダー、漂白剤、漂白活性化剤、泡促進剤又は泡抑制剤、色褪せ防止及び腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、殺菌剤、pH調整剤、非ビルダーアルカリ源、キレート化剤、スメクタイト粘土、酵素安定剤、及び香料が挙げられる。例えば、米国特許第3,936,537号を参照のこと。
【0063】
漂白剤及び活性剤については、米国特許第4,412,934号及び同第4,483,781号に記載されている。キレート化剤についてはまた、米国特許第4,663,071号の17欄54行〜18欄68行に記載されている。泡変性剤もまた任意成分であり、米国特許第3,933,672号及び同第4,136,045号に記載されている。本明細書で使用するのに好適なスメクタイト粘土類については、米国特許第4,762,645号の6欄3行〜7欄24行に記載されている。本明細書で使用するのに好適な追加の洗浄性ビルダーについては、米国特許第3,936,537号の13欄54行〜16欄16行、及び米国特許第4,663,071号に列挙されている。
【0064】
補助剤物質
本開示の目的のために必須ではないが、以下に例示される補助剤の非限定的な一覧は、洗剤組成物において使用するのに適している場合があり、例えば、性能を補助若しくは向上させるために、洗浄化される基材の処理のために、又は香料、着色剤、染料等を用いる場合のように組成物の審美性を変化させるために、望ましくは特定の実施形態に組み込んでもよい。このような補助剤はいずれかの特定の実施形態に関して上記に列挙された構成成分に追加できることが理解される。このような補助剤の総量は、洗剤組成物の約0.1重量%〜約50重量%、又は更には約1重量%〜約30重量%の範囲であってもよい。
【0065】
これらの追加的構成成分の明確な性質、及びそれを組み込む濃度が、組成物の物理的形態及び使用されるべき作業の性質によって決まる。好適な補助材料には、ポリマー、例えば、カチオン性ポリマー、界面活性剤、ビルダー、キレート化剤、移染防止剤、分散剤、酵素安定剤、触媒作用性物質、漂白活性化剤、ポリマー分散剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、増白剤、泡抑制剤、染料、追加の香料及び香料送達系、構造弾性化剤、柔軟仕上げ剤、キャリア、向水性物質、加工助剤、並びに/又は顔料が挙げられるが、これらに限定されない。以下の開示に加えて、このような他の補助剤の適した例及び使用濃度が、米国特許第5,576,282号、同第6,306,812 B1号及び同第6,326,348 B1号に見出される。
【0066】
上述したように、補助成分は本明細書で述べた洗剤組成物に必須ではない。したがって、洗剤組成物の特定の実施形態は、以下の補助物質の1つ以上を含有しなくてもよい。漂白活性化剤、界面活性剤、ビルダー、キレート化剤、移染防止剤、分散剤、酵素安定剤、触媒金属錯体、ポリマー系分散剤、粘土及び汚れ除去/再付着防止剤、増白剤、泡抑制剤、染料、追加の香料及び香料送達系、構造弾性化剤、柔軟仕上げ剤、キャリア、向水性物質、加工助剤、及び/又は顔料。しかしながら、1つ以上の補助剤が存在する場合、その1つ以上の補助剤は、本明細書に詳細に記載されているように存在してもよい。
【0067】
ビルダー−本発明の組成物は、1つ以上の洗剤ビルダー又はビルダー系を含むことができる。存在する場合、組成物は、典型的に、少なくとも約1重量%のビルダー、又は約5重量%若しくは10重量%から、約80重量%まで、50重量%まで、又は更には30重量%までのこのビルダーを含む。ビルダーとしては、ポリホスフェートのアルカリ金属、アンモニウム及びアルカノールアンモニウム塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類及びアルカリ金属炭酸塩、アルミノシリケートビルダー、ポリカルボキシレート化合物、エーテルヒドロキシポリカルボキシレート、無水マレイン酸とエチレン又はビニルメチルエーテルとのコポリマー、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸、及びカルボキシメチルオキシコハク酸、エチレンジアミン四酢酸及びニトリロ三酢酸のようなポリ酢酸の種々のアルカリ金属、アンモニウム及び置換アンモニウム塩、並びにメリト酸、コハク酸、オキシジコハク酸、ポリマレイン酸、ベンゼン1,3,5−トリカルボン酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、及びそれらの可溶性塩類のようなポリカルボキシレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
移染防止剤−本発明の組成物はまた、1つ以上の移染防止剤を含んでもよい。好適なポリマー移染防止剤には、ポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンN−オキシドポリマー、N−ビニルピロリドンとN−ビニルイミダゾールとのコポリマー、ポリビニルオキサゾリドン及びポリビニルイミダゾール、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の組成物中に存在する場合、移染防止剤は、洗浄組成物の約0.0001重量%から、約0.01重量%から、約0.05重量%から、洗浄組成物の約10重量%まで、約2重量%まで、又は更には約1重量%までの濃度で存在する。
【0069】
分散剤−本発明の組成物は分散剤も含むことができる。好適な水溶性有機物質は、ホモポリマー若しくはコポリマーの酸類又はこれらの塩類であり、それらのうちのポリカルボン酸は、互いに2個を超えない炭素原子によって離間されている少なくとも2個のカルボキシル基を含んでもよい。
【0070】
洗剤組成物をの製造方法
本発明の洗剤組成物は、いかなる適切な形態にも処方されることができ、配合者によって選択される任意のプロセスによって調製され、プロセスの非限定例は、米国特許第5,879,584号、同第5,691,297号、同第5,574,005号、同第5,569,645号、同第5,565,422号、同第5,516,448号、同第5,489,392号、及び同第5,486,303号に記載されている。
【0071】
1つの態様では、本明細書に開示されている洗剤組成物は、その構成成分をいずれかの簡便な順番で組み合わせることによって、及び得られた構成成分の組み合わせを混合、例えば、攪拌して相安定液体洗剤組成物を形成することによって、調製されてもよい。1つの態様では、液体構成成分、例えば非イオン性界面活性剤、非界面活性液体キャリア及び他の任意の液体構成成分の少なくとも主要部分、又は更には実質的に全てを含有する液体マトリクスが形成され、この液体構成成分はこの液体の組み合せに剪断力攪拌を付与することにより完全に混合される。例えば、機械的撹拌器での高速撹拌を用いるのが有用である場合もある。剪断力攪拌が維持される間に、タイロン、並びに任意のアニオン性界面活性剤及び固体成分の実質的にすべてを加えることができる。混合物の撹拌を継続し及び必要ならその時点で増大し、液相内に不溶性固相粒子状物質の溶液又は均一分散体を形成することができる。固形形態の物質のいくらか又は全てがこの撹拌混合物に添加された後、包含されるべき任意の酵素物質の粒子、例えば酵素プリル、が組み込まれる。上述した組成物製造手順の変形として、1つ以上の固形構成成分を1つ以上の液体構成成分の微量部分と予混合した粒子の溶液又はスラリーとして前記攪拌混合物に添加してもよい。全ての組成物成分が加えられた後、混合物の撹拌は、必要な粘度及び相安定度特性を有する組成物を形成するために十分な時間継続される。しばしば、これには約30分〜60分の間の撹拌を伴う。
【0072】
洗剤組成物の使用方法
本開示の洗剤組成物は布地を洗浄又は処理するために使用されてもよい。典型的には布地の少なくとも一部分を前述の洗剤組成物の実施形態と、そのままの形態で、又は液体、例えば洗浄溶液中に希釈された形態で接触させ、及びその後布地を任意に洗浄し及び/又はすすいでもよい。1つの態様では、布地を任意に洗浄及び/又はすすぎ、前述の洗剤組成物の実施形態と接触させ、及びその後任意に洗浄し及び/又はすすぐ。本発明の目的上、洗浄には、擦ること及び機械的攪拌が挙げられるが、これらに限定されない。布地は洗濯又は処理できるほとんどあらゆる布地を含んでよい。
【0073】
本開示の洗剤組成物は、布地の洗濯で使用するための水性洗浄溶液を形成するために使用されてもよい。一般に、有効量のこうした組成物を、例えば、従来の布地洗濯自動洗濯機にて、又は手洗い法によって、水に添加し、こうした水性洗濯溶液を形成する。次に、このように形成した水性洗浄溶液を、好ましくは撹拌下で、それにより洗濯する布地と接触させる。本開示のHDL洗剤組成物のような洗剤組成物の有効量を水に加えて、約500〜約7,000ppm、又は更には約1,000〜約3,000ppmの洗剤組成物を含んでよい水性洗濯溶液を形成してもよい。
【0074】
次の代表的な実施例は、例示の目的で挙げられ、限定の目的ではない。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
この実施例では、タイロン色制御と酵素安定性との間の良好なバランスが得られるDTPAとカルシウムイオンとのモル比が決定される。カルシウムイオンの種々の濃度及びDTPAの種々の濃度におけるナタラーゼ(NATALASE)(登録商標)アミラーゼ酵素の安定性が判定される。
【0076】
市販のHDL液体洗剤のサンプル製剤に、5ppmのFe3+及び1%(wt)のタイロンを加える。様々な濃度のDTPA(五ナトリウム塩)及びカルシウムイオン(ギ酸カルシウムの形態)を洗剤混合物に加えて、9サンプルの3×3行列を形成し、溶液を機械的攪拌により攪拌する。色及び酵素安定性を測定する。酵素安定性は、インフィニティ(Infinity)(商標)試薬を用いて基質としてエチリデン(ehylidene)−pNP−G7(サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific)(マサチューセッツ州ワルタム(Waltham))から市販)を使用して、32℃にて21日間にわたり測定した。種々の実験条件下での酵素の安定性を、表1に示す。表1で分かるように、酵素安定性はより高いカルシウムイオン濃度において最大となり、DTPA濃度が増すほど、酵素安定性は減少する。図2は3×3サンプル行列における洗剤サンプルについて観察された色を表示している。許容できない赤色のレベルは、DTPAの低い濃度及びカルシウムイオンの高い濃度、例えば、0.30%のDTPA及び0.075%のカルシウム、0.20%のDTPA及び0.075%のカルシウム、及び0.20%のDTPA及び0.050%のカルシウムにおいて観察される。加えて、酵素安定性の低いレベルは、DTPAの高い濃度及びカルシウムの低い濃度において、例えば、0.40%のDTPA及び0.050%のカルシウム、0.40%のDTPA及び0.025%のカルシウム、及び0.30%のDTPA及び0.025%のカルシウムにおいて観察される。表1は、約1.2:1〜約1.6:1のDTPA対カルシウムイオンのモル比において、例えば、0.40%のDTPA及び0.075%のカルシウム、0.30%のDTPA及び0.050%のカルシウム、及び0.20%のDTPA及び0.025%のカルシウムにおいて、良好なタイロン色制御(即ちタイロン/鉄錯体形成による顕著な赤色が形成されない)と良好な酵素処方安定性との間のバランスが達成される。
【表1】

【0077】
(実施例2)
この実施例では、鉄/タイロン錯体の色の可逆性が実証される。赤色形成は、タイロン、ギ酸カルシウム、及びDTPAを含む洗剤組成物への過剰の鉄の添加により実証され、赤色は次いでDTPAの添加により除去/反転される。
【0078】
カルシウムを含有する市販のHDL液体洗剤のサンプル処方に、1%(wt)のタイロン、赤い着色を形成するのに十分なFe3+、HDLサンプルによる色形成を軽減するには不十分な濃度の鉄と結合するキレート化剤(例えば、DTPA)を添加する。例えば、1.0未満のDTPA:カルシウムモル比が得られるように、1%のタイロン、10ppmのFe3+、及び低濃度のDTPAをHDL製剤に加える。次いで得られる赤いHDLサンプルを、DTPA:カルシウムのモル比が少なくとも1.05を超えるまでDTPA溶液で滴定し、混合物を少なくとも15分間機械攪拌する。得られるHDLサンプルの色は赤から黄色へと戻り、タイロン/鉄キレート形成の反転を示す。
【0079】
(実施例3)
この実施例では、液体洗剤組成物を形成し、鉄の標準物質を加え、そして得られる溶液の分光学的特性を測定する。
【0080】
洗剤組成物は以下の手順を用いて作製した。7.6Lの重質プラスティックバケツにアルキルエトキシサルフェート(「AES」)ペースト(テクニカルグレード、約50%wt/wt)のブレンド2,122gを加える。この混合物に以下の材料をこの順番で、確実に適切な混合がなされるようにオーバーヘッド攪拌機(IKAモデルDZM.N.RW20)で攪拌しながら加える。660gの分枝状アルキルサルフェートペースト(約50%wt/wt)、100gの未処理のアミンアルコール、50gのジエチレングリコール、160gの蛍光増白剤、24.5gのDTPA溶液(バーセネックス(VERSENEX)(登録商標)80、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)(ミシガン州ミッドランド(Midland))から市販)は、ギ酸カルシウムの溶解を確実にするために加えられた、144gのLASペースト(97%wt/wt活性)、300gのクエン酸(50%活性)、12.5gのギ酸カルシウム(10%wt/wt活性)、100gのC12〜C18脂肪酸、400gのボラックスプレミックス、20%wt/wt活性となるように水に溶解された319gのタイロン、及び480gの蒸留水。
【0081】
得られる液体洗剤組成物は、以下の特性を有する。Ca2+濃度が0.00630モラーを超えない、Feイオンによる汚染がないか又は測定可能なFeイオン濃度を有さない、洗剤組成物が1%wt/wtのタイロンを含有する、洗剤組成物の密度が1.09±0.1g/mL、及び洗剤組成物のpHが7〜9であり、特定の実施形態ではpHが8である。
【0082】
洗剤組成物は、各重さが195.0g(182.1mL)の25のサンプルに分けられる。サンプルは5×5行列(5つのサンプルの5つの群)へと分けられ、表2に記載した各群のサンプルに、追加の量のDTPA溶液(バーセネックス(VERSENEX)(登録商標)80)を加える。各サンプル群についてDTPA:Ca2+の比率を計算する。1000ppmのFeイオンを含有する標準溶液(0.2mL、0.5mL、1.0mL、2.0mL、及び3.0mLのFe標準溶液)を各群のサンプルに加えて、各サンプル群のサンプルに対して、それぞれ1.0ppm(3.58×10−6モル)、2.5ppm(8.95×10−6モル)、5.0ppm(1.79×10−5モル)、10.0ppm(3.58×10−5モル)、及び15.0ppm(5.37×10−5モル)のFeイオン濃度を与える。
【表2】

【0083】
得られる25のサンプルの各々の色が図1に表示されている。得られるサンプルを分光法によって試験してタイロン/Feイオンキレート錯体から発現される赤色のレベルを判定する。サンプルの色を、ロビボンド(Lovibond)カラースケール、ハンター(Hunter)L.a.b(CIE)カラースケール、APHAカラースケール、セイボルト(Saybolt)カラースケール、及びガードナー(Gardner)カラースケールを用いて測定する。分光法の結果を表3に記載する。
【0084】
許容可能な赤色のレベルは、サンプル群3〜5中のすべてのサンプル、サンプル群2中の5ppm以下のFeを有するサンプル、及びサンプル群1中の1ppmのFeを有するサンプルにおいて観察される。
【0085】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に指定されない限り、各こうした寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0086】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈すべきではない。本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0087】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には自明である。したがって、添付特許請求の範囲において本発明の範囲内にあるすべてのこうした変更及び修正を扱うものとする。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイロンと、
第二鉄に対してキレート化することのできる配位子と、を含み、好ましくは前記配位子がタイロンの第二鉄に対する結合定数よりも大きな第二鉄に対する結合定数を有し、前記第二鉄と前記配位子とによって形成される錯体が赤色を有さないことを特徴とする、洗剤組成物。
【請求項2】
前記洗剤組成物中の実質的にすべての第二鉄が第二鉄/配位子錯体の形態である、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項3】
前記配位子が、少なくとも1021モル−1、好ましくは1026モル−1〜1028モル−1の範囲の、第二鉄に対する結合定数を有する、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項4】
前記配位子が、DTPA、DTPMP、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはDTPAである、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項5】
Ca2+カチオンを含む少なくとも1つのカルシウム塩を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
【請求項6】
前記洗剤組成物が、1.05:1〜1.8:1の範囲の配位子対Ca2+のモル比を有する、請求項5に記載の洗剤組成物。
【請求項7】
タイロンと、
DTPAと、
カルシウム塩と、
第二鉄と、を含み、好ましくは、前記第二鉄の実質的にすべてが前記DTPAに対し錯体化されている、洗剤組成物。
【請求項8】
前記洗剤組成物の水性溶液が、第二鉄/タイロン錯体の濃度を実質的に有さない、請求項7に記載の洗剤組成物。
【請求項9】
前記カルシウム塩の濃度が、0.1ppm〜500ppmの範囲の遊離Ca2+、好ましくは100ppm〜400ppmの範囲の遊離Ca2+の、Ca2+濃度を与える、請求項7に記載の洗剤組成物。
【請求項10】
前記洗剤組成物が、1.05:1よりも大きく、好ましくは1.05:1〜1.8:1の範囲のDTPA対Ca2+のモル比を有する、請求項7に記載の洗剤組成物。
【請求項11】
プロテアーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラタナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される酵素を更に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の洗剤組成物。
【請求項12】
前記洗剤組成物が、−2未満のハンター(Hunter)「a」値、1.0未満のロビボンドレッド値(Lovibond red value)、110未満のAPHAカラー値、7.0よりも大きなセイボルト(Saybolt)カラー値、5.0未満のガードナー(Gardner)カラー値からなる群から選択される赤の比色分析値を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の洗剤組成物。
【請求項13】
洗剤組成物中の第二鉄に対してキレート化することのできる配位子を加えることを含む、タイロン含有洗剤組成物の赤色の強度を減少させるための方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−508817(P2011−508817A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541116(P2010−541116)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2008/055398
【国際公開番号】WO2009/087515
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】