診断用抗体アッセイ
本発明は、アミロイドーシス、特にアルツハイマー病の診断、及び関連の態様のための、新規診断用アッセイに関する。特にモノクローナル抗体及び抗体アッセイが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病などのアミロイドタンパク質に関連した障害及び異常の群であるアミロイドーシスの診断、及び関連した態様のための、新規診断用アッセイに関する。特に、抗体アッセイが提供される。
【背景技術】
【0002】
アミロイドーシスは、単独の疾患実体ではなく、むしろ1つ以上の臓器又は生体系内に蓄積する、アミロイドと称されるロウ様の類デンプン質タンパク質の細胞外組織沈着物により特徴づけられる様々な進行性疾患過程群である。アミロイド沈着物が蓄積するにつれ、これらは臓器又は生体系の正常な機能を妨害し始める。少なくとも15種の異なる型のアミロイドーシスが存在する。主要な型は、既知の前駆状態のない原発性アミロイドーシス、何らかの他の状態に続く続発性アミロイドーシス、及び遺伝性アミロイドーシスである。
【0003】
続発性アミロイドーシスは、結核、家族性地中海熱と称される細菌感染症、骨感染症(骨髄炎)、関節リウマチ、小腸の炎症(肉芽腫性回腸炎)、ホジキン病及びハンセン病などの、慢性感染症又は炎症疾患時に生じる。
【0004】
アミロイド沈着物は、アミロイドP(五角形)成分(AP)、正常血清アミロイドP(SAP)に関連した糖タンパク質、及び硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)、結合組織の複合糖質を含む。アミロイドタンパク質原線維は、アミロイド物質の約90%を占めるが、これはいくつかの異なる型のタンパク質の1つを含む。これらのタンパク質は、アミロイドタンパク質の独特な染色特性を生じるコンゴレッドへの結合部位を示す独特なタンパク質立体配置である、いわゆる「βプリーツ」シート原線維へのフォールディングが可能である。
【0005】
多くの加齢疾患は、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連し、かつ一部は、病因、更には疾患進行の一因となるアミロイド又はアミロイド様物質の細胞外沈着物の累積により特徴づけられる。これらの疾患は、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)などのアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性、レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの、神経学的障害を含むが、これらに限定されるものではない。その他のアミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した疾患は、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病、老人性心アミロイドーシス、内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むその他などである。
【0006】
これらの疾患の病因は多様であるが、それらの特徴的沈着物は、多くの共通の分子構成要素を含むことが多い。これは、かなりの程度まで、炎症誘発性経路の局所的活性化に起因し得、それにより活性化された補体成分、急性相反応物質、免疫モジュレーター、及び他の炎症メディエーターの同時沈着につながり得る(McGeerらの論文、Tohoku J Exp Med. 174(3):269-277 (1994))。
【0007】
最近積み重ねられつつある証拠は、アルツハイマー病におけるN-末端が修飾されたAβペプチド変種の関与を実証している。狙撃生検(aiming biopsy)は、アルツハイマー患者の脳内のみではなく、罹患していない個人の老人斑内においても、Aβ1-40及びAβ1-42の存在を示している。しかしN-末端切断型及びピログルタミン酸(pGlu)修飾型AβN3pE-40/AβN3pE-42は、ほぼ例外なくアルツハイマー病患者の斑内に染み付き(engrained)、このことはこのAβ変種を適格な診断用マーカー及び可能性のある創薬標的としている。
【0008】
現時点でいくつかの商業的製造業者が、低いピコグラム(pg)範囲における、Aβ1-40/1-42及びAβN3pE-40/AβN3pE-42の検出を可能にするELISAキットを提供している。
【0009】
アルツハイマー病(AD)患者の脳は、神経原線維のもつれの存在により、及び新皮質脳構造内のAβペプチドの沈着により、形態学的に特徴づけられる(Selkoe, D.J.及びSchenk, D.の論文、「アルツハイマー病:アミロイドベースの治療を予測する分子理解(Alzheimer's disease: molecular understanding predicts amyloid-based therapeutics)」、Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 43:545-584 (2003))。Aβペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から、β-及びγ-セクレターゼによる逐次切断の後、遊離される。γ-セクレターゼ切断は、Aβ1-40ペプチド及びAβ1-42ペプチドの生成を生じ、これらはそのC-末端が異なり、かつ凝集、原線維形成及び神経毒性の様々な効力を発揮する(Shin, R. W.らの論文、「ラット脳内のアルツハイマー病アミロイド原線維の実験的形成に寄与するアミロイドβ-タンパク質1-40、寄与しないAβ1-42(Amyloid beta-protein (Abeta) 1-40 but not Abeta 1-42 contributes to the experimental formation of Alzheimer disease amyloid fibrils in rat brain)」、J. Neurosci. 17:8187-8193 (1997);Iwatsubo, T.らの論文、「末端特異的Aβモノクローナルによる老人斑内のAβ42(43)及びAβ40の視覚化:最初に沈着した種はAβ42(43)である証拠(Visualization of Abeta 42 (43) and Abeta 40 in senile plaques with end-specific Abeta monoclonals: evidence that an initially deposited species is Abeta 42(43))」、Neuron, 13:45-53 (1994);Iwatsubo, T.、Mann, D. M.、Odaka, A.、Suzuki, N.及びIhara, Y.の論文、「アミロイドβタンパク質(Aβ)沈着:ダウン症候群においてAβ42(43)はAβ40に先行する(Amyloid beta protein (Abeta) deposition: Abeta 42(43) precedes Abeta 40 in Down syndrome)」、Ann. Neurol. 37:294-299 (1995);Hardy, J. A.及びHiggins, G. A.の論文、「アルツハイマー病:アミロイドカスケード仮説(Alzheimer's disease: the amyloid cascade hypothesis)」、Ann. Neurol. 37:294-299 (1995);Hardy, J. A.及びHiggins, G. A.の論文、「アルツハイマー病:アミロイドカスケード仮説(Alzheimer's disease: the amyloid cascade hypothesis)」、Science, 256:184-185 (1992);Roner, S.、Ueberham, U.、Schliebs, R.、Perez-Polo, J. R.及びBigl, V.の論文、「コリン作動性機構及び神経栄養因子受容体シグナル伝達によるアミロイド前駆体タンパク質代謝の調節(The regulation of amyloid precursor protein metabolism by cholinergic mechanisms and neurotrophin receptor signaling)」、Prog. Neurobiol. 56:541-569 (1998))。C-末端可変性に加え、N-末端が修飾されたAβペプチドが豊富である(Saido, T. C.らの論文、「老人斑内の個別のβ-アミロイドペプチド種AβN3(pE)のドミナント及びディファレンシャル沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, A beta N3 (pE), in senile plaques)」、Neuron, 14:457-466 (1995);Russo, C.らの論文、「アルツハイマー病におけるプレセニリン-1突然変異(Presenilin-1 mutations in Alzheimer's disease)、Nature, 405:531-532 (2000);Saido, T. C、Yamao, H.、Iwatsubo, T.及びKawashima, S.の論文、「ヒト脳内沈着したβ-アミロイドペプチドのアミノ-及びカルボキシル-末端の不均一性(Amino- and carboxyl-terminal heterogeneity of beta-amyloid peptides deposited in human brain)」、Neurosci. Lett. 215:173-176 (1996))。大きい割合のAβペプチドは、2種のアミノ酸により、N-末端切断を受け、グルタミン酸残基を露出し、これは引き続きピログルタミン酸(pE)へ環化され、Aβ3(pE)-42ペプチドを生じるように思われる(Saido, T. C.らの論文、「老人斑内の個別のβ-アミロイドペプチド種AβN3(pE)のドミナント及びディファレンシャル沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, A beta N3 (pE), in senile plaques)」、Neuron, 14:457-466 (1995);Saido, T. C、Yamao, H.、Iwatsubo, T.及びKawashima, S.の論文、「ヒト脳内沈着したβ-アミロイドペプチドのアミノ-及びカルボキシル-末端の不均一性(Amino- and carboxyl-terminal heterogeneity of beta-amyloid peptides deposited in human brain)」、Neurosci. Lett. 215:173-176 (1996))。あるいは、pEは、BACElによるβ'-切断後に形成され、AβN11(pE)-42を生じることができる(Naslund, J.らの論文、「アルツハイマー病及び正常加齢におけるアルツハイマーAβアミロイドペプチド変種の相対存在量(Relative abundance of Alzheimer A beta amyloid peptide variants in Alzheimer disease and normal aging)」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:8378-8382 (1994);Liu, K.らの論文、「アルツハイマー病及び若年性ダウン症候群の脳におけるAβ11-40/42ペプチド沈着の特徴:アルツハイマー病の病因におけるN-末端切断型Aβ種の意味(Characterization of Abeta 11-40/42 peptide deposition in Alzheimer's disease and young Down's syndrome brains: implication of N-terminally truncated Abeta species in the pathogenesis of Alzheimer's disease)」、Acta Neuropathol. 112:163-174 (2006))。特にAβN3(pE)-42は、散発性及び家族性アルツハイマー病(FAD)におけるAβ沈着の主要な構成要素であることが示されている(Saido, T. C.らの論文、「老人斑内の個別のβ-アミロイドペプチド種AβN3(pE)のドミナント及びディファレンシャル沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, A beta N3 (pE), in senile plaques)」、Neuron, 14, 457-466 (1995);Miravalle, L.らの論文、「コットンウール斑の主成分であるアミノ-末端切断型Aβペプチド種(Amino-terminally truncated Abeta peptide species are the main component of cotton wool plaqaues)」、Biochemistry, 44:10810-10821 (2005))。
【0010】
前記AβN3pE-42ペプチドは、Aβ1-40/1-42ペプチドと同時存在し(Saido, T. C.らの論文、「老人斑内の個別のβ-アミロイドペプチド種AβN3(pE)のドミナント及びディファレンシャル沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, Abeta N3pE), in senile plaques)」、Neuron, 14:457-466 (1995);Saido, T. C. Yamao, H.、Iwatsubo, T.及びKawashima, S.の論文、「ヒト脳内沈着したβ-アミロイドペプチドのアミノ-及びカルボキシル-末端の不均一性(Amino- and carboxyl-terminal heterogeneity of beta-amyloid peptides deposited in human brain)」、Neurosci. Lett. 215:173-176 (1996))、かつ多くの知見を基に、ADの病因において顕著な役割を果たすことができる。例えば、AβN3pE-42ペプチドの特定の神経毒性が概説されており(Russo, C.らの論文、「ピログルタミン酸-修飾されたアミロイドβ-ペプチド--AβN3(pE)--は培養されたニューロン及び星状膠細胞の生存に強い影響を及ぼす(Pyroglutamate-modified amyloid beta-peptides-- AbetaN3 (pE) --strongly affect cultured neuron and astrocyte survival)」、J. Neurochem. 82:1480-1489 (2002))、かつN-切断型AβペプチドのpE-修飾は、ほとんどのアミノペプチダーゼに加え、Aβ-分解性エンドペプチダーゼによる分解に対する抵抗を付与する(Russo, C.らの論文、「ピログルタミン酸-修飾されたアミロイドβ-ペプチド--AβN3(pE)--は培養されたニューロン及び星状膠細胞の生存に強い影響を及ぼす(Pyroglutamate-modified amyloid beta-peptides--AbetaN3 (pE)--strongly affect cultured neuron and astrocyte survival)」、J. Neurochem. 82:1480-1489 (2002);Saido, T. C.の論文、「タンパク質分解性障害としてのアルツハイマー病:β-アミロイドの同化作用及び異化作用(Alzheimer's disease as proteolytic disorders: anabolism and catabolism of beta-amyloid)」、Neurobiol. Aging 19:S69-S75 (1998))。グルタミン酸のpEへの環化は、N-末端電荷の喪失につながり、AβN3pEの、修飾されないAβペプチドと比べ加速された凝集を生じる(He, W.及びBarrow, C.J.の論文「完全長Aβよりもインビトロにおけるより大きいβ-シート形成及び凝集の性向を有する老人斑内に認められたAβ3-ピログルタミル及び11-ピログルタミルペプチド(The Abeta 3-pyroglutamyl and 11-pyroglutamyl peptides found in senile plaque have greater beta-sheet forming and aggregation propensities in vitro than full-length A beta)」、Biochemistry, 38:10871-10877 (1999);Schilling, S.らの論文、「pGlu-アミロイドペプチドの播種及びオリゴマー化(インビトロ)(On the seeding and oligomerization of pGlu-amyloid peptides (in vitro))」、Biochemistry, 45:12393-12399 (2006))。従ってAβN3pE-42形成の減少は、それらのペプチドを分解されやすくすることにより、ペプチドを不安定化し、次により大きい分子量のAβ凝集物の形成を防止し、かつニューロンの生存を増強するであろう。
【0011】
しかし長い間、どうやってAβペプチドのpE-修飾が生じるかは不明であった。最近になって、グルタミニルシクラーゼ(QC)は、AβN3pE-42形成を弱酸性条件下で触媒することが可能であること、及び特異的QC阻害剤は、インビトロにおけるAβN3pE-42生成を妨害することが発見された(Schilling, S.、Hoffmann, T.、Manhart, S.、Hoffmann, M.及びDemuth, H.-U.の論文、「弱酸性条件下でグルタミルシクラーゼ活性を展開するグルタミニルシクラーゼ(Glutaminyl cyclases unfold glutamyl cyclase activity under mild acid conditions)」、FEBS Lett. 563:191-196 (2004);Cynis, H.らの論文、「哺乳動物細胞におけるピログルタミン酸形成を変更するグルタミニルシクラーゼの阻害(Inhibition of glutaminyl cyclase alters pyroglutamate formation in mammalian cells)」、Biochim. Biophys. Acta, 1764:1618-1625 (2006))。
【0012】
レヴィー小体型認知症(LBD)は、65歳以上の人々において生じ得、典型的には認知(思考)機能障害の症状及び異常な行動変化を引き起こす神経変性障害である。症状は、認知機能障害、神経学的徴候、睡眠障害、及び自律神経機能不全を含み得る。認知機能障害は、ほとんどの症例においてLBDの主症状である。患者は、進行性に増悪する錯乱の再発性のエピソードを有する。認識能のゆらぎは、注意及び警戒の程度の推移に関連することが多い。認知機能障害及び思考のゆらぎは、数分間、数時間、又は数日間にわたり変動することができる。レヴィー小体は、リン酸化された及びされないニューロフィラメントタンパク質から形成され;これらは、シナプスタンパク質α-シヌクレインに加え、ユビキチンを含み、これらは損傷タンパク質又は異常タンパク質の排泄に関与している。レヴィー小体に加え、神経細胞の細胞突起における封入体であるレヴィー神経突起(Lewy neurite)も存在し得る。アミロイド斑は、DLBに罹患した患者の脳内で形成されるが、これらはアルツハイマー病患者において認められる数よりも少ない傾向がある。その他のADの顕微病理学上の顕著な特徴である神経原線維もつれは、LBDの主要な特徴ではないが、アミロイド斑に加え頻繁に存在する。
【0013】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位及び下位運動ニューロンの変性により特徴づけられる。一部のALS患者において、認知症又は失語が存在することがある(ALS-D)。この認知症は、最も一般的には前頭側頭型認知症(FTD)であり、かつこれらの症例の多くは、歯状回並びに前頭葉及び側頭葉浅層のニューロン内にユビキチン-陽性、タウ-陰性封入体を有する。
【0014】
封入体筋炎(IBM)は、通常50歳を超える人々において認められる肢体不自由になる(crippling)疾患であり、本疾患では筋繊維が炎症を発症し、かつ萎縮が始まるが、しかしそこでは脳は生き延び(spared)、かつ患者は自身の完全な知性を保持している。アミロイド-βタンパク質生成に関与したふたつの酵素は、そこではアミロイド-βも増加されている比較的高齢なヒトのこの最も一般的進行性筋疾患の患者の筋細胞の内側で増大されることが認められた。
【0015】
アミロイド様タンパク質の蓄積及び沈着を基にした又はそれらに関連した別の疾患は、黄斑変性である。黄斑変性は、網膜の中心領域(感光性細胞が視覚シグナルを脳に送る眼底の紙のように薄い組織)である黄斑の劣化を引き起こす一般的眼疾患である。はっきりした明瞭な「直進性」の視覚は、黄斑により処理される。この黄斑の損傷は、盲点の発生及び不鮮明又はゆがんだ視覚を生じる。加齢黄斑変性症(AMD)は、米国における視力障害の原因の大半であり、かつ65歳を超える人々にとって、これは白人人種における法的盲の主因である。40歳以上の米国人およそ180万人が、進行期AMDを有し、中間期AMDの別の730万人には、失明の実質的リスクがある。米国政府は、2020年までに、進行期AMDは290万人に達すると推定している。AMDの犠牲者は、この視覚消失状態の原因及び治療についてほとんど分かっていないことを知り、驚きかつ苛立つことが多い。ふたつの型の黄斑変性が存在する:乾燥型黄斑変性と湿潤型黄斑変性。黄斑の細胞が徐々に破壊され始める乾燥型は、黄斑変性症例の85%において診断される。通常両眼が乾燥型AMDに冒されるが、片眼が視力を失っても、他眼は罹患されずにいることがある。網膜下の黄色沈着物であるドルーゼンは、乾燥型AMDの一般的初期徴候である。ドルーゼンの数又はサイズが増加するにつれ、進行期乾燥型AMD又は湿潤型AMDのリスクが増大する。乾燥型AMDに関して、本疾患の湿潤型に変わることなく、進行しかつ失明を引き起こす可能性があるが;しかし初期の乾燥型AMDが湿潤型に突然変化する可能性もある。
【0016】
湿潤型は、本症例のわずかに15%を占めているが、これは失明の90%を生じ、かつ進行期AMDと考えられる(初期又は中間期湿潤型AMDは存在しない)。湿潤型AMDには、常に本疾患の乾燥型が先行する。乾燥型が悪化するにつれ、一部患者では、黄斑の後方に異常な血管増殖を有し始める。これらの血管は、非常に脆く、かつ体液及び血液を漏出し(従って「湿潤型」黄斑変性)、黄斑に急激な損傷が引き起こされる。乾燥型AMDは、最初はわずかなかすみ目を引き起こすことが多い。特に視覚中心が、次にぼやけ始めることが多く、かつこの領域は本疾患が進行するにつれ拡大していく。片眼のみ罹患した場合には、症状に気付かないことがある。湿潤型AMDにおいて、直線が波形に見えることがあり、中心視覚喪失が迅速に起こり得る。
【0017】
黄斑変性の診断は典型的には、散瞳試験(dilated eye exam)、視力検査、及びAMD診断を助ける眼底検査と称される手法を使用する眼底の観察が関与し、かつ湿潤型AMDが疑われる場合は、蛍光眼底血管造影も行われることがある。乾燥型AMDが進行期に到達した場合、現在失明を阻止する治療は存在しない。しかし抗酸化剤及び亜鉛の特定の高用量処方は、中間期AMDが進行期へと進行することを遅延若しくは防止することができる。Macugen(登録商標)(ペガプタニブナトリウム注射剤)、レーザー光凝固及び光線力学的療法は、黄斑における異常な血管増殖及び出血を制御することができ、これは湿潤型AMDを有する患者の一部については有用であるが;しかし既に失われた視覚は、これらの技術によっては回復しないであろう。視覚が既に喪失された場合、生活の質を改善する助けとなることができる低視力補助具が存在する。
【0018】
加齢黄斑変性症(AMD)の最初期の徴候のひとつは、網膜色素上皮(RPE)の基底膜とブルーフ膜(BM)の間のドルーゼンとして公知の細胞外沈着物の蓄積である。Andersonらにより行われた最近の研究は、ドルーゼンはアミロイドβを含有することを確認した(Experimental Eye Research, 78:243-256 (2004))。
【0019】
本発明の目的は、例えば液体試料又は血清試料、好ましくは血清試料などの、生物学的試料中の、Aβ変種、特にpGlu-Aβペプチドの量的決定を可能にする高感度かつそれに付随して堅牢な検出技術を確立することである。これは、血液中のAβペプチドが豊富でないことを考慮すると、途方もない挑戦である。しかし利用可能なそのような検出技術を有することは、薬物スクリーニングプログラムにおける小型分子阻害剤の有効性を試験する上での前提条件である。
【0020】
本発明は、凝集体、ファイバー、フィラメントの形で、又はプラークの凝縮形、モノマー型、ダイマー型、トリマー型など若しくはポリマー型で該抗体に提示され得る、一連のβ-アミロイド抗原、特にpGlu-Aβペプチド由来の特異的エピトープを特異的に認識しかつ結合する能力を有する、部分的又は完全にヒト化された抗体及びそれらの断片を含む、キメラ抗体及びそれらの断片を含む、高度に特異的かつ高度に有効な抗体を含有する、新規方法及び組成物を提供する。本発明の内容により可能とされる抗体は、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシスの診断に特に有用であり、これらの疾患はいくつか名前を挙げると、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの、神経学的障害;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、黄斑変性を含むその他などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前述の全ての要求に合致するためには、ELISAベースの技術が特に望ましいであろう。この作業は、AβN3pE ELISAにより開始され、その理由はこのAβ変種に関するELISAシステムは既に市販されているからであり(Human Amyloid β (N3pE) Assay Kit-IBL社、コード番号27716)、これが参照及び内部品質対照として使用される。このAβN3pE-40ペプチドの捕獲は、TGC社(The Genetics Company、Wagistrasse 23, 8952 Schlieren、チューリッヒ、スイス)のhAβ(x-40)ELISA(HS)により実行され、これは本開発プロセスを容易にしかつ促進するものであった。
【発明の概要】
【0022】
(発明の概要)
本発明は、特に高親和性でAβ-ペプチドに結合することで特徴づけられる抗体又はそれらの変種に関する。前記高親和性とは、本発明の状況においては、親和性が、10-7M以上のKD値、好ましくは10-8M以上のKD値、更により好ましくは10-9M〜10-12MのKD値であることを意味する。
【0023】
特に本抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、かつ下記群から選択される:
Aβ5-5-6、
Aβ6-1-6、
Aβ17-4-3、
Aβ24-2-3。
本発明の抗体は、アミロイドーシス、特にアルツハイマー病を検出するための診断方法において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
(図面の説明)
【図1】A)pGlu-6166抗体(クローン12-1)の漸増濃度による10ng/mlアミロイドβN3pE-40の検出。 B)10ng/mlアミロイドβN3pE-40の検出に必要なpGlu-6166抗体(クローン12-1)の最高濃度の決定。
【図2】個別のIgの産生クローンのハイブリドーマ細胞培養液上清のドットブロット分析。
【図3】pGlu-6166ハイブリドーマ細胞クローン及びIBL-AβN3pE抗体のPepSpot分析。
【図4】20μg pGlu-6166抗体及びハイブリドーマ細胞培養液上清の12%SDS-PAGE。
【図5】ハイブリドーマ細胞培養液上清のBiacore分析。モニタリングされた結合過程のオーバーレイが、図示されている。
【図6】抗-AβN3pE抗体クローン6-1-6のAβpE3-40との相互作用のセンサグラム。
【図7】抗-AβN3pE抗体クローン24-2-3のAβpE3-40との相互作用のセンサグラム。
【図8】クローン6-1-6に関するN3pE-ELISA。AβpE3-40の標準曲線。
【図9】N3pE抗体クローン6-1-6のセンサグラム。
【図10】EIA緩衝液中1:20希釈、3.5Mトリス860μlによるpH滴定による中和方法を使用する、AβpE3-42の定量。
【図11】アルツハイマー病(AD)患者の染色された脳切片。 (A)総Aβを認識する、抗-Aβ抗体6E10により染色された散発性AD(SAD)患者の脳、 (B)AβpE3-xを認識する、N3pE抗体クローン24-2-3により染色された散発性AD(SAD)患者の脳、 (C)AβpE3-xを認識する、N3pE抗体クローン24-2-3により染色された家族性AD(FAD)患者の脳。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
(定義)
用語「抗体」は、最も広範な意味で使用され、かつ具体的には、それらが所望の生物活性を示す限りは、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を対象としている。本抗体は、例としてIgM、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4)、IgD、IgA又はIgEであることができる。しかし好ましくは本抗体は、IgM抗体ではない。
【0026】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、一般には無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片:ダイアボディ;単鎖抗体分子;及び、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0027】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわちその集団を構成している個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然の突然変異以外は、同一である。モノクローナル抗体は、単独の抗原性部位に対して向けられている高度な特異性がある。更に、典型的には様々な抗原決定基(エピトープ)に対して向けられた様々な抗体を含む「ポリクローナル抗体」調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単独の抗原決定に対して向けられている。それらの特異性に加え、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンが夾雑されないハイブリドーマ培養により合成される点で、それらは有利であり得ることが多い。「モノクローナル」とは、抗体の実質的に均質な集団から得られるという抗体の特徴を示しており、かついずれか特定の方法による抗体産生を必要とするとは解釈されない。例えば本発明において使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerらの論文(Nature, 256:495 (1975))に最初に説明されたハイブリドーマ法により作製されることができるか、又は一般に周知の組換えDNA法により作製されることができる。「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonらの論文(Nature, 352:624-628 (1991))及びMarksらの論文(J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991))に説明された技術を用い、ファージ抗体ライブラリーから単離されることもできる。
【0028】
モノクローナル抗体は、本明細書において具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、この鎖(複数)の残りは、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である、キメラ抗体(免疫グロブリン)、更には所望の生物活性を示す限りはそのような抗体の断片を含む。
【0029】
非-ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非-ヒト免疫グロブリンに由来した最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、それらの免疫グロブリン鎖又は断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2又は抗体の他の抗原結合性部分配列)である。大部分に関して、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非-ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非-ヒト残基により置き換えられている。更にヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも認められない残基を含むことができる。
【0030】
これらの修飾は、抗体性能を更に純化しかつ最適化するために行われる。概してヒト化抗体は、少なくとも1個の、及び典型的には2個の可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで全て又は実質的に全てのCDR領域は、非-ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、かつ全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリン配列のそれであろう。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むであろう。更なる詳細に関しては、Jonesらの論文、Nature, 321:522-525 (1986)、Reichmannらの論文、Nature, 332:323-329 (1988):及び、Prestaの論文、Curr. Op. Struct. Biel., 2:593-596 (1992)を参照されたい。ヒト化抗体は、抗体の抗原-結合領域が、関心対象の抗原によるマカクザルの免疫化により産生された抗体に由来している、Primatized(商標)抗体を含む。
【0031】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは、単独のポリペプチド鎖に存在する。一般にFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーを更に含み、このことはsFvが、抗原結合の望ましい構造を形成することを可能にする。sFvの総説については、Pluckthunの文献、「モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibody)」、113巻、Rosenburg及びMoore編集、Springer-Verlag社、ニューヨーク、269-315頁(1994)を参照されたい。
【0032】
用語「ダイアボディ」は、その断片が、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VD)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原-結合部位を伴う小型の抗体断片(VH-VD)をいう。同じ鎖上の2つのドメインを対合させるには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補ドメインと対合するように強制され、かつ2つの抗原結合部位を形成する。ダイアボディは、Hollingerらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)においてより十分に説明されている。
【0033】
「単離された」抗体は、同定されかつその天然の環境の成分から分離及び/又は回収されたものである。その天然の環境の夾雑成分は、この抗体の診断用又は治療用の用途と干渉するであろう物質であり、かつこれは酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性若しくは非-タンパク質性溶質を含むことができる。好ましい実施態様において、本抗体は、(1)Lowry法により決定された抗体の95重量%を超えるまで、及び最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用により、N-末端又は中間部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、若しくは(3)クマーシーブルー又は好ましくは銀染色を用い、還元又は非還元条件下で、SDS-PAGEにより均質であるまで:精製されるであろう。単離された抗体とは、少なくとも1つのその抗体の天然環境の成分も存在しないことを理由に、組換え細胞内のインサイチュ抗体を含む。しかし通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
【0034】
本明細書において使用される表現「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養液」は、互換的に使用され、かつそのような呼称は全て後代を含む。従って語句「形質転換体」及び「形質転換された細胞」は、継代(transfer)された数とは関係なくそれらから誘導された初代の対象細胞及び培養物を含む。全ての子孫は、意図的な又は不用意な突然変異のために、DNA含量が正確に同一でないことがあり得ることも理解される。当初の形質転換された細胞に関してスクリーニングされたものと同じ機能又は生物活性を有する突然変異体子孫が含まれる。明確な指定が意図される場合、これは文脈から明らかであろう。
【0035】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、互換性があり、かつペプチド結合により連結されたアミノ酸で構成された生体分子を意味すると定義される。
本明細書において使用される用語「ある(a、an及びthe)」は、「1以上」を意味するように定義され、かつ文脈が不適切でない限りは、複数を含む。
【0036】
語句「アミロイド又はアミロイド様タンパク質により引き起こされた又は関連した疾患及び障害」は、モノマー、フィブリル、若しくはポリマーの状態、又はこれら3種の任意の組合せの、アミロイド様タンパク質の存在又は活性により引き起こされた疾患及び障害を含むが、これらに限定されるものではない。このような疾患及び障害は、アミロイドーシス、内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むが、これらに限定されるものではない。
【0037】
用語「アミロイドーシス」とは、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むが、これらに限定されるものではない、アミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群をいい、これは例えば、軽度認知障害(MCI)、散発性アルツハイマー病、レヴィー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合、家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー病などの、認知記憶能の喪失により特徴づけられる疾患又は状態を含む、アルツハイマー病(AD)などの神経学的障害;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、及び老人性心アミロイドーシス;並びに、黄斑変性、ドルーゼン関連視神経症、及びβアミロイド沈着に起因した白内障を含む様々な眼疾患などの疾患を含むが、これらに限定されるものではない。
【0038】
「アミロイドβ、Aβ又は/β-アミロイド」は、当該技術分野において認められた技術用語であり、並びにアミロイドβタンパク質及びペプチド、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)、更にはそれらの修飾物、断片及び任意の機能的同等物をいう。特に本明細書において使用されるアミロイドβは、APPのタンパク質分解性切断により作製された任意の断片を意味するが、特に非限定的に、Aβ1-38、Aβ1-40、Aβ1-42を含む、アミロイド病理に関与しているか又は関連しているそれらの断片を意味する。これらのAβペプチドのアミノ酸配列は、以下である:
【化1】
【0039】
「pGlu-Aβ」又は「AβN3pE」とは、グルタミン酸残基が環化され、ピログルタミン酸残基を形成している、Aβのアミノ酸配列の3位のグルタミン酸残基で始まるAβのN-末端切断型をいう。特に本明細書において使用されるpGlu-Aβは、非限定的に、pGlu-Aβ3-38、pGlu-Aβ3-40、p-Glu-Aβ3-42を含む、アミロイド病理に関与しているか又は関連しているそれらの断片を意味する。AβのN-末端切断型、Aβ3-38、Aβ3-40、Aβ3-42の配列は、以下である:
【化2】
【0040】
特に本発明は、下記の項目に関する:
1.Aβペプチド又はそれらの変種に、好ましくは高親和性で結合することで特徴づけられる、抗体、
2.該高親和性が、解離定数(KD)値10-7M以上を意味する、項目1記載の抗体、
3.該抗体がモノクローナル抗体である、項目1又は2記載の抗体、
4.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:49、53、57及び61から選択されたヌクレオチド配列、又は配列番号:50、54、58、及び62から選択されたアミノ酸配列を有する、項目1〜3のいずれか1項記載の抗体、
5.該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:51、55、59及び63から選択されたヌクレオチド配列、又は配列番号:52、56、60及び64から選択されたアミノ酸配列を有する、項目1〜4のいずれか1項記載の抗体、
【0041】
6.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:49のヌクレオチド配列、又は配列番号:50のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:51のヌクレオチド配列、又は配列番号:52のアミノ酸配列を有する、項目1〜5のいずれか1項記載の抗体、
7.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:53のヌクレオチド配列、又は配列番号:54のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:55のヌクレオチド配列、又は配列番号:56のアミノ酸配列を有する、項目1〜6のいずれか1項記載の抗体、
8.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:57のヌクレオチド配列、又は配列番号:58のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:59のヌクレオチド配列、又は配列番号:60のアミノ酸配列を有する、項目1〜7のいずれか1項記載の抗体、
9.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:61のヌクレオチド配列、又は配列番号:62のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:63のヌクレオチド配列、又は配列番号:64のアミノ酸配列を有する、項目1〜8のいずれか1項記載の抗体、
【0042】
10.該抗体が、下記群から選択される、項目1〜9のいずれか1項記載の抗体:
Aβ5-5-6(寄託番号DSM ACC 2923)
Aβ6-1-6(寄託番号DSM ACC 2924)
Aβ17-4-3(寄託番号DSM ACC 2925)
Aβ24-2-3(寄託番号DSM ACC 2926)
又は、それらの機能的変種、
11.該抗体が、Aβ6-1-6(寄託番号DSM ACC 2924)である、項目1〜10のいずれか1項記載の抗体、
12.該抗体が、Aβ24-2-3(寄託番号DSM ACC 2926)である、項目1〜11のいずれか1項記載の抗体、
13.該抗体が、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体、又は、高親和性を保持している抗体断片である、項目1〜12のいずれか1項記載の抗体、
14.Aβペプチド又はそれらの変種の検出において使用するための、項目1〜13のいずれか1項記載の抗体、
【0043】
15.該変種が、下記群から選択される、項目14記載の抗体:
pGlu-Aβ3-38
pGlu-Aβ3-40
pGlu-Aβ3-42、及び
pGlu-Aβ3-x変種、
ここで、xは、10〜42;好ましくは18〜42、より好ましくは30〜42の間の整数である、
16.ヒトである、項目1〜15のいずれか1項記載の抗体、
17.高親和性を保持する、ダイアボディ又は単鎖抗体である、項目1〜16のいずれか1項記載の抗体、
18.項目15において定義された抗体により結合されたエピトープへ結合する、項目1〜17のいずれか1項記載の抗体、
19.項目15において定義された抗体の相補性決定領域を有する、項目1〜18のいずれか1項記載の抗体、
【0044】
20.標識されている、項目1〜19のいずれか1項記載の抗体、
21.固相上に固定されている、項目1〜20のいずれか1項記載の抗体、
22.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2923、DSM ACC 2924、DSM ACC 2925、DSM ACC 2926のいずれかひとつから入手可能である、抗体、
23.項目1〜22のいずれか1項で定義された抗体を含有する、組成物、
24.アミロイドーシスの治療、予防又は遅延のための、項目23記載の組成物、
25.該アミロイドーシスが、軽度認知障害、アルツハイマー病及びダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患である、項目23又は24記載の組成物、
26. 該アミロイドーシスが、散発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー型認知症である、項目23又は24記載の組成物、
27.該家族性アルツハイマー型認知症が、家族性英国型認知症又は家族性デンマーク型認知症である、項目26記載の組成物、
【0045】
28.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2923、
29.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2924、
30.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2925、
31.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2926、
32.診断方法又は治療方法における、項目1〜22のいずれか1項で定義された抗体、又は項目23〜27のいずれか1項で定義された組成物の使用、
33.アミロイド-関連疾患又は状態の診断に関する、項目32記載の使用、
34.該アミロイドーシスが、軽度認知障害、アルツハイマー病及びダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患である、項目33記載の使用、
35.該アミロイドーシスが、散発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー型認知症である、項目33記載の使用、
36.該家族性アルツハイマー型認知症が、家族性英国型認知症又は家族性デンマーク型認知症である、項目35記載の使用、
【0046】
37.項目1〜22のいずれか1項記載の抗体を、該疾患又は状態に罹患していることが疑われる対象由来の試料と接触する工程;並びに
該試料由来のpGlu-アミロイドタンパク質、好ましくはpGlu-Aβペプチドに対する、本抗体の結合を検出する工程:を含む、アミロイド-関連疾患又は状態、特にアルツハイマー病を診断するための、インビトロ診断方法、
38.項目1〜22のいずれか1項で定義された抗体、及び使用説明書、並びに−任意に−更なる生物学的活性物質(1又は複数)を備える、診断キット、
39.該更なる生物学的物質が、グルタミニルシクラーゼ(glutaminy cyclase)の阻害剤である、項目32の診断用キット、
40.配列番号:23〜48からなる群から選択される、オリゴヌクレオチド。
【0047】
本発明の抗体は、アミロイドーシスの診断に有用であることができる。
本発明の抗体は、アフィニティ精製物質として使用されることができる。このプロセスにおいて、抗体は、当該技術分野において周知の方法を用い、Sephadex樹脂又はフィルターペーパーのような固相上に固定される。固定された抗体は、精製されるべきAβ-ペプチド(又はそれらの断片)を含有する試料と接触され、その後この支持体は、固定された抗体に結合されているAβ-ペプチド以外の試料中の物質全てを実質的に除去する好適な溶媒により洗浄される。最後に、この支持体は、Aβ-ペプチドを抗体から放出するグリシン緩衝液(pH5.0)などの別の好適な溶媒により洗浄される。
【0048】
抗-Aβ-ペプチド抗体は、例えば特定の細胞、組織、又は血清中のAβ-ペプチドの出現の検出などのような、Aβ-ペプチドに関する診断アッセイにおいて有用であることもできる。従って本抗体は、アミロイドーシス、特に軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、並びにダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくは、アルツハイマー病の診断において使用されることができる。
【0049】
診断適用に関して、本抗体は典型的には、検出可能な部分により標識されるであろう。一般に下記の範疇に群別される数多くの標識が、利用可能である:
(a) 35S、14C、125I、3H、及び131Iなどの、放射性同位元素。本抗体は、例えば、「免疫学最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」、第1及び2巻、Gutigenら編集、Wiley-Interscience社、ニューヨーク、NY. 刊行1991年に説明された技術を用い、放射性同位元素により標識されることができ、かつ放射活性は、シンチレーションカウンティングを用いて測定されることができる。
(b)希土類キレート(ユーロピウムキレート)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン及びテキサスレッドなどの蛍光標識が、利用可能である。これらの蛍光標識は、例えば、「免疫学最新プロトコール」(前掲)に明らかにされた技術を用い、本抗体に複合されることができる。蛍光は、蛍光光度計を用い定量されることができる。
(c)様々な酵素-基質標識が利用可能である。この酵素は一般に、様々な技術を用い測定されることができる発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、この酵素は、基質内の色の変化を触媒することができ、この変化は分光光度計により測定されることができる。あるいはこの酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変更することができる。蛍光の変化を定量する技術は、先に説明されている。化学発光基質は、化学反応により電子的に励起され始め、その後測定され得る光を放出するか(例えばケミルミノメーターを用いて)、又は蛍光アクセプターへエネルギーを提供する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例えばホタルのルシフェラーゼ及び細菌のルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、O-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどを含む。酵素を抗体に複合する技術は、O'Sullivanらの文献、「酵素免疫検定法における使用のための酵素-抗体複合体の調製方法(Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay)」、Methods in Enzym (編集Langone及びH. Van Vunakis)、Academic Press社、ニューヨーク、73: 147-166 (1981)に説明されている。
【0050】
酵素-基質組合せの例は、例えば以下を含む:
(i)基質としてのハイドロジェンペルオキシダーゼ(hydrogen peroxidase)と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで過酸化水素は、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)発色基質としてのp-ニトロフェニルリン酸と、アルカリホスファターゼ(AP);並びに
(iii)発色基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は発蛍光基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼとの、β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
数多くの他の酵素-基質組合せが、当業者には利用可能である。
【0051】
場合によって、前記標識は、本抗体と間接的に複合される。当業者は、これを実現する様々な技術を知っているであろう。例えば本抗体は、ビオチンと複合されることができ、かつ前述の標識の3つの広範な範疇のいずれかは、アビジンと複合されることができ、その逆もまた同様である。ビオチンは、アビジンに選択的に結合し、その結果この標識は、この間接的様式で、本抗体と複合される。あるいは、標識の抗体との間接的複合を実現するために、本抗体は、小型ハプテン(例えばジゴキシン)と複合され、かつ前述の異なる種類の標識のひとつは、抗-ハプテン抗体(例えば抗-ジゴキシン抗体)と複合されることができる。従って、標識の本抗体との間接的複合が実現され得る。
【0052】
Aβ-抗体は、標識される必要はなく、かつそれらの存在は、Aβ-抗体に結合する標識された抗体を用いて検出されることができる。
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイなどの、いずれか公知のアッセイ方法において利用されることができる。Zolaの文献、「モノクローナル抗体:技術マニュアル(Monoclonal Antibodies A Manual of Techniques)」、147-158頁(CRC Press社、1987)。
【0053】
競合結合アッセイは、標識された標準の、限定された量の抗体との結合に関して被験試料分析物と競合する能力に頼っている。被験試料中のAβペプチドの量は、抗体に結合され始める標準の量に反比例する。結合され始める標準の量の決定を促進するために、本抗体は一般に、競合の前後には不溶化され、その結果該抗体に結合されている標準及び分析物は、未結合のままでいる標準及び分析物から簡便に分離されることができる。
【0054】
サンドイッチアッセイは、各々検出されるべきタンパク質の異なる免疫原性部分又はエピトープに結合することが可能である2つの抗体の使用に関与している。サンドイッチアッセイにおいて、被験試料分析物は、固形支持体上に固定されている第一の抗体により結合され、その後第二の抗体が分析物に結合し、その結果不溶性の3つの部分の複合物を形成する。第二の抗体それ自身は、検出可能な部分により標識されている(直接サンドイッチアッセイ)か、又は検出可能な部分により標識されている抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されることができる(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイのひとつの好ましい型はELISAアッセイであり、その場合検出可能な部分は酵素である。
免疫組織化学に関して、本組織試料は、新鮮若しくは凍結されているか、又はパラフィン内に包埋され、かつ例えばホルマリンなどの保存剤により固定されることができる。
【0055】
(診断キット)
便宜上本発明の抗体は、キット、すなわち予め定められた量の試薬のその診断用アッセイの実行に関する指示書との包装された組合せにおいて提供されることができる。抗体が酵素により標識されている場合、このキットは、その酵素により必要とされる基質及び補因子(例えば、検出可能な発色団又は発蛍光団を提供する基質前駆体)を備えるであろう。加えて、安定剤、緩衝液(例えばブロック緩衝液又は溶解緩衝液)などの他の添加剤が備えられることができる。これらの様々な試薬の相対量は、このアッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度を提供するために、広範に変動されることができる。特にこれらの試薬は、溶解時に好適な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含有する、通常凍結乾燥された乾燥粉末として提供されることができる。
【0056】
本発明の診断用キットは、以下に説明されたような更なる生物学的活性物質を含むことができる。本診断用キットにおける使用に関して特に好ましいのは、グルタミニルシクラーゼ阻害剤である。
【0057】
本発明の診断用キットは、アミロイド-関連疾患及び状態、特に軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病の検出及び診断に特に有用である。
【0058】
本発明は、Aβ-ペプチドへ高親和性で結合することで特徴づけられる抗体に特に関する。本発明は、Aβ-ペプチド又はそれらの変種に高親和性で結合することで特徴づけられる抗体にも関する。本発明の文脈において、前述の高親和性とは、親和性が10-7M以上のKD値、好ましくは10-8M以上のKD値、更により好ましくは10-9M〜10-12MのKD値であることを意味する。これにより本発明の抗体はAβ-ペプチドへ、先行する公知の抗体よりも、より高い親和性で結合する。
【0059】
特に本抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、かつ下記群から選択される:
Aβ5-5-6 (DSM ACC 2923)
Aβ6-1-6 (DSM ACC 2924)
Aβ17-4-3 (DSM ACC 2925)
Aβ24-2-3 (DSM ACC 2926)。
【0060】
本発明の抗体は、アミロイドーシス、特に軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病を検出するための診断方法において特に有用である。
【0061】
好ましい実施態様において、本抗体は、ヒト化されることができるか、又はキメラ抗体であるか、又はヒト抗体である。
更に前述の群から選択されるような抗体は、前記群の機能的変種であることもできる。
本発明の状況において、p-Glu-Aβペプチドの変種は、特に下記のものである:
pGlu-Aβ3-38、
pGlu-Aβ3-40、
pGlu-Aβ3-42。
【0062】
Aβペプチドの更なる変種は、アルツハイマー病又は先行するアルツハイマー病の結果として脳内に蓄積することが示されている、全てのpGlu-Aβ3-x変種である。Xは、10〜42の間の整数として定義され、例えば先のpGlu-Aβ3-42において、「42」が「x」に相当する整数である。
【0063】
本発明の状況において、本発明の抗体の「機能的変種」とは、結合能を保持している抗体、特にpGlu-Aβ3-xペプチド又はそれらの機能的変種への高親和性の結合能を保持している抗体である。そのような機能的変種の提供は、当該技術分野において公知であり、かつ抗体及びそれらの断片の定義において指摘された、前述の可能性を包含している。
【0064】
好ましい実施態様において、本抗体は、先に定義されたような抗体断片である。
更なる好ましい実施態様において、本発明の抗体は、先に定義されたように抗体により結合されるエピトープに結合する抗体、特に抗体5-5-6、抗体6-1-6、抗体17-4-3及び抗体24-2-3である。
【0065】
更なる好ましい実施態様において、本発明の抗体は、先に定義された抗体の相補性決定領域(CDR)を有する抗体である。好ましくは、本抗体は標識されることができ;可能性のある標識は、前述のもの及び特に抗体の診断用途の当業者に公知のもの全てである。
好ましくは、本抗体は、固相上に固定されている。
本発明は、ハイブリドーマ細胞株6-1-6(DSM ACC 2924)から入手可能である抗体にも関する。
【0066】
本発明は、先に定義されたように本抗体を含有する組成物にも関する。特に、該組成物は、特に生物学的試料中のAβペプチド又はそれらの変種の検出による;診断用途のための、特別に軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病の診断のための組成物である。
【0067】
別の実施態様において、本発明の及び本明細書において先に説明されたような抗体又はそれらの断片は、Aβモノマーに対する結合親和性よりも、少なくとも2倍、特に少なくとも4倍、特に少なくとも10倍、特に少なくとも15倍、より特定すると少なくとも20倍、しかし特別に少なくとも25倍より高い、Aβオリゴマー、ファイバー、フィブリル又はフィラメントに対する結合親和性を示す。
【0068】
更に別の実施態様において、抗体若しくはそれらの断片又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又はヒト化抗体若しくはそれらの断片は、先に本明細書において説明されたように提供され、その抗体は、哺乳動物における、特にヒト脳内の、Aβ斑を含む凝集されたAβに実質的に結合するが、好ましくはアミロイド前駆体タンパク質(APP)とはいかなる交差反応性も示さない。
【0069】
本発明の別の態様において、抗体若しくはそれらの断片又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又はヒト化抗体若しくはそれらの断片は、先に本明細書において説明されたように提供され、その抗体は、哺乳動物における、特にヒト脳内の、可溶性ポリマー性アミロイド、特にAβモノマーを含むアミロイドβ(Aβ)に実質的に結合するが、好ましくはアミロイド前駆体タンパク質(APP)とはいかなる交差反応性も示さない。
【0070】
本発明は、先に定義された抗体のヒト化された型、該ヒト化抗体を含有する組成物、及び哺乳動物、特にヒトにおけるアミロイドーシスの治療のための、特に神経変性疾患の治療のための該組成物の使用にも関する。前記神経変性疾患は、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から特に選択される。好ましくは前記神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
【0071】
本発明は、ハイブリドーマ細胞株5-5-6、6-1-6、17-4-3及び24-2-3にも関する。
本発明は、インビトロ診断方法における使用のための、両方とも先に定義されたような、抗体又はその抗体を含有する組成物の使用にも関する。特に、この診断方法は、特に生物学的試料中のAβペプチド又はそれらの変種の検出による、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病の診断に対して行われる。
【0072】
好ましくは、前記試料は、血清試料である。
別の好ましい実施態様に従い、前記試料は、液体又は脳脊髄液(CSF)試料である。
【0073】
特に好ましい実施態様において、本発明は下記の方法に関する:
本発明の抗体を、該状態又は疾患に罹患していることが疑われる対象の、好ましくは血清、液体若しくはCSF試料から選択された試料と、最も好ましくは血清試料と;又は特定の体部分若しくは体領域と、接触する工程、並びに
該抗体の該試料由来のpGlu-アミロイドタンパク質、好ましくはpGlu-Aβペプチドへの結合を検出する工程:を含む、アミロイド-関連疾患又は状態、好ましくはアルツハイマー病の診断のための、インビトロ又はインサイチュ診断方法。
【0074】
より特定すると、本発明は、試料中の又はインサイチュにおいて、pGlu-アミロイドタンパク質、好ましくはpGlu-Aβペプチドへの抗体又はそれらの活性断片の免疫特異的結合を検出することを含む、アミロイド-関連疾患又は状態、好ましくはアルツハイマー病の診断方法であって:
(a)前記アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料又は特定の体部分若しくは体領域を、抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、及び/又はそれらの機能部分と接触させる工程であって、ここで抗体はpGlu-Aβペプチドに結合する工程;
(b)前記抗体及び/又はそれらの機能部分を、pGlu-Aβペプチドと結合させ、免疫複合体を形成する工程;
(c)前記免疫複合体の形成を検出する工程;並びに
(d)前記免疫複合体の存在又は非存在を、試料又は特定の体部分若しくは領域中のpGlu-Aβペプチドの存在又は非存在と相関させる工程:を含む方法に関する。
【0075】
同じく、組織及び/又は体液中のアミロイド形成性斑負荷(plaque burden)の程度を決定する方法であって:
(a)検査下の組織及び/又は体液を代表する試料を得る工程;
(b)前記試料を、アミロイドタンパク質の存在について、抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、及び/又はそれらの機能部分により試験する工程;
(c)前記タンパク質に結合された抗体の量を決定する工程;並びに
(d)組織及び/又は体液中の斑負荷を算出する工程:を含む方法も含まれる。
【0076】
特に本発明は、工程c)において免疫複合体の形成が決定され、その結果この免疫複合体の存在又は非存在が、アミロイドタンパク質、特にpGlu-Aβペプチドの存在又は非存在と相関されている、組織及び/又は体液中のアミロイド形成性斑負荷の程度を決定する方法に関する。
【0077】
更に別の実施態様において、本発明は、任意の機能的に同等な抗体又はそれらの任意の誘導体若しくは機能部分を含む、本発明の抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片を、治療的有効量含有する組成物、特に任意に医薬として許容し得る担体を更に含有する医薬組成物を含む、組成物に関する。
【0078】
別の本発明の実施態様において、前記組成物は、治療的有効量の抗体を含有する。更に本発明に含まれるのは、任意の機能的に同等な抗体又はそれらの任意の誘導体若しくは機能部分を含む、抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片を治療的有効量、並びに任意に更なる生物学的活性物質及び/又は医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤を含有する混合物である。
【0079】
特に本発明は、この更なる生物学的活性物質が、アミロイドーシスの投薬治療に使用される化合物、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患に関連した、Aβタンパク質などのアミロイド又はアミロイド様タンパク質に関連した疾患及び障害の群;好ましくは、アルツハイマー病の投薬治療に使用される化合物である、混合物に関する。
【0080】
本発明の別の実施態様において、その他の生物学的活性物質又は化合物は、アミロイドβにより引き起こされたアミロイドーシスの治療に使用されることができるか、又は他の神経学的障害の投薬治療において使用されることができる治療的物質であることもできる。
その他の生物学的活性物質又は化合物は、本発明の抗体と同じ若しくは同様の機構によるか、又はある無関係の作用機序によるか、又は多数の関連した及び/若しくは無関係の作用機序により、その生物学的作用を発揮することができる。
【0081】
一般に、その他の生物学的活性化合物は、神経(neutron)伝達エンハンサー、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム-チャネル遮断薬、生体アミン、ベンゾジアゼピン系精神安定薬、アセチルコリンの合成、貯蔵若しくは放出のエンハンサー、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-A若しくは-B阻害剤、N-メチル-D-アスパラギン酸グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド系抗炎症薬、抗酸化薬、及びセロトニン受容体アンタゴニストを含むことができる。より特定すると、本発明は、酸化的ストレスに対し有効である化合物、抗アポトーシス化合物、金属キレート剤、ピレンゼピン及び代謝産物などのDNA修復阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化因子、β-及びγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、3-シート破壊因子、アミロイドβ除去/枯渇細胞成分に対する誘引物質、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などのピログルタミン酸修飾アミロイドβ3-42を含むN-末端切断型アミロイドβの阻害剤、抗炎症分子、又はタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、及び/若しくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、M1アゴニスト並びに任意のアミロイド若しくはタウ修飾物質及び栄養補助物質を含む他の薬物、並びに栄養補助物質からなる群から選択される少なくともひとつの化合物を、本発明の抗体、及び任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含有する混合物に関する。
【0082】
本発明は更に、前記化合物がコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)である混合物、特に該化合物がタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、ナイアシン及びメマンチンからなる群から選択されるひとつである混合物に関する。
【0083】
更なる実施態様において、本発明の混合物は、ナイアシン又はメマンチンを、本発明の抗体、並びに任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含有することができる。
【0084】
更なる実施態様において、本発明の混合物は、グルタミニルシクラーゼ阻害剤を、本発明の抗体、並びに任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含有することができる。
【0085】
好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2005/075436に、特に31〜40頁に示された実施例1−141に開示されている。実施例1−141の合成は、WO 2005/075436の40〜48頁に示されている。実施例1−141、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2005/075436の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0086】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/055945に、特に46〜155頁に示された実施例1−473に開示されている。実施例1−473の合成は、WO 2008/055945の156〜192頁に示されている。実施例1−473、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/055945の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0087】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/055947に、特に53〜118頁に示された実施例1−345に開示されている。実施例1−345の合成は、WO 2008/055947の119〜133頁に示されている。実施例1−345、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/055947の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0088】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/055950に、特に57〜120頁に示された実施例1−212に開示されている。実施例1−212の合成は、WO 2008/055950の121〜128頁に示されている。実施例1−212、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/055950の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0089】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO2008/065141に、特に56〜59頁に示された実施例1−25に開示されている。実施例1−25の合成は、WO2008/065141の60〜67頁に示されている。実施例1−25、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO2008/065141の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0090】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/110523に、特に55〜59頁に示された実施例1−27に開示されている。実施例1−27の合成は、WO 2008/110523の59〜71頁に示されている。実施例1−27、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/110523の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0091】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128981に、特に62〜65頁に示された実施例1−18に開示されている。実施例1−18の合成は、WO 2008/128981の65〜74頁に示されている。実施例1−18、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128981の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0092】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128982に、特に61〜67頁に示された実施例1−44に開示されている。実施例1−44の合成は、WO 2008/128982の68〜83頁に示されている。実施例1−44、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128982の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0093】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128983に、特に64〜68頁に示された実施例1−30に開示されている。実施例1−30の合成は、WO 2008/128983の68〜80頁に示されている。実施例1−30、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128983の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0094】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128984に、特に63〜69頁に示された実施例1−36に開示されている。実施例1−36の合成は、WO 2008/128984の69〜81頁に示されている。実施例1−36、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128984の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0095】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128985に、特に66〜76頁に示された実施例1−71に開示されている。実施例1−71の合成は、WO 2008/128985の76〜98頁に示されている。実施例1−71、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128985の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0096】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128986に、特に65〜66頁に示された実施例1−7に開示されている。実施例1−7の合成は、WO 2008/128986の66〜73頁に示されている。実施例1−7、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128986の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0097】
更に別の本発明の実施態様において、本抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、とりわけキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、並びに幻覚、妄想、思考障害(顕著な思考散乱、脱線、脱線思考により顕在化)、及び突飛な行動又は解体した行動、更には無快感症、平坦情動、感情鈍麻、及び引きこもりを含む精神病の陽性及び陰性症状の治療のための「非定型抗精神病薬」、例えばクロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリピプラゾール又はオランザピンなどを、任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含有する混合物が提供される。
【0098】
本発明の特定の実施態様において、本発明の及び先に本明細書において説明されたような組成物及び混合物は、前記抗体及び生物学的活性物質を、各々、治療的有効量で含有する。
【0099】
本発明の抗体と組合せた混合物中で好適に使用されることができる他の化合物は、WO2008/065141に開示されており(特に37/38頁参照)、これはPEP阻害剤(43/44頁)、LiCl、ジペプチジルアミノペプチダーゼ阻害剤、好ましくはDP IV又はDP IV-様酵素阻害剤(48/49頁参照);アセチルコリンエステラーゼ(ACE)阻害剤(47頁参照)、PIMTエンハンサー、βセクレターゼ阻害剤(41頁参照)、γセクレターゼ阻害剤(41/42頁参照)、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害剤(42/43頁参照)、TNFα阻害剤、ムスカリンM1受容体アンタゴニスト(46頁参照)、NMDA受容体アンタゴニスト(47/48頁参照)、σ-1受容体阻害剤、ヒスタミンH3アンタゴニスト(43頁参照)、免疫調節薬、免疫抑制薬、又はアンテグレン(ナタリズマブ)、Neurelan(ファムプリジン-SR)、カンパス(アレムツズマブ)、IR 208、NBI 5788/MSP 771(チプリモチド)、パクリタキセル、Anergix.MS(AG 284)、SH636、Differin(CD 271、アダパレン)、BAY 361677(インターロイキン-4)、マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えばBB 76163)、インターフェロン-τ(トロホブラスチン)及びSAIK-MSからなる群から選択される物質;β-アミロイド抗体(44頁参照)、システインプロテアーゼ阻害剤(44頁参照);MCP-1アンタゴニスト(44/45頁参照)、アミロイドタンパク質沈着阻害剤(42頁参照)及びβアミロイド合成阻害剤(42頁参照)を含み、この文献は引用により本明細書中に組み込まれている。
【0100】
別の実施態様において、本発明は、本抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、並びに/又は前記生物学的活性物質を治療的有効量含有する混合物に関する。
【0101】
本発明は、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの、神経学的障害;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むその他などを含むが、これらに限定されるものではない疾患などの、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシスの作用を治療若しくは緩和するための医薬品の調製のための、抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、とりわけキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、及び/又はそれらの機能部分、並びに/又は該抗体を含有する医薬組成物若しくは混合物の使用に更に関する。
【0102】
同じく、本発明は、本発明の抗体、特にモノクローナル抗体、とりわけキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、及び/又はそれらの機能部分の調製方法、並びに/又は本発明の抗体、特にモノクローナル抗体、とりわけキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明のヒト化抗体若しくはそれらの断片を、医薬として許容し得る形状で製剤することを含む、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性;レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの神経変性疾患;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むその他などを含むが、これらに限定されるものではない疾患などの、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシスの作用を予防、治療若しくは緩和する方法において使用するための、該抗体及び/若しくはそれらの機能部分を、特に治療的有効量で含有する医薬組成物若しくは混合物の調製の方法も含む。
【0103】
更に、本発明は、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性;レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの神経学的疾患;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むその他を含むが、これらに限定されるものではない疾患などの、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシスの作用を予防、治療又は緩和するための方法であって、治療的有効量の本抗体を投与することを含む、抗体及び/若しくはそれらの機能部分、とりわけヒト化抗体及び/若しくはそれらの機能部分、又はそのような抗体及び/若しくはそれらの機能部分を含有する組成物若しくは混合物を、そのような障害に罹患した動物又はヒトへ投与することによる、前記方法を含む。
【0104】
動物、特に哺乳動物又はヒトへ、抗体、特に本発明の及び本明細書において説明された医薬組成物を投与することによる、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性などの神経変性疾患を含むが、これらに限定されるものではない、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシス;特に、認知記憶能の喪失により特徴づけられる疾患又は状態の治療方法を提供することも、本発明の目的である。
【0105】
特定の実施態様において、本発明は、動物、特に哺乳動物又はヒトへ、抗体、特に本発明の及び本明細書において説明された医薬組成物を投与することによる、記憶障害に罹患した動物、特に哺乳動物又はヒトの、認知記憶能を保持又は増強するが、特に認知記憶能を回復する方法を提供する。
【0106】
本発明の及び本明細書において説明された抗体を使用し、治療的組成物及びそのような組成物を作製する方法、更には軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性などの神経変性疾患を含むが、これらに限定されるものではない、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシス;特に、認知記憶能の喪失により特徴づけられる疾患又は状態の治療方法を提供することは、本発明の更なる目的である。
【0107】
特に、本発明は、認知記憶能の保持につながる、認知記憶能の喪失により特徴づけられるアミロイド-関連状態に罹患している動物、特に哺乳動物又はヒトの治療に関する。
【実施例】
【0108】
(実施例)
(1.材料及び方法)
(1.1.抗体の産生)
(マウス)
ハイブリドーマ産生のために、8週齢の雌BALB/Cマウス(Charles River社)を使用した。
(骨髄腫細胞株)
ハイブリドーマの作製のために、ドイツ細胞バンク(DSMZ)からの骨髄腫細胞株SP2/0-Ag14を使用した。
(抗原)
ペプチドpGlu-6166(配列pGlu-FRHDSGC、配列番号:65)を使用した。
【0109】
(戦略)
免疫原として、本ペプチドを、ウシサイログロブリン(BTG, SIGMA社)と、3種の異なるリンカーに由来したマレイミド基を介して結合した。N-[e-マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル(EMCS)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LCSMCC)及びN-[b-マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル(BMPS)由来の異なる長さの3種のリンカーを使用した。
作製された抗体の検出のために、同じペプチドを、スクシンイミジル-6-[(b-マレイミド-プロピオンアミド)ヘキサノエート](SMPH)由来のマレイミド基を介して、ウシ血清アルブミン(BSA, SIGMA社)に複合した。
【0110】
(方法)
(免疫化のためのペプチド複合)
複合は、ペプチドのシステイン残基からのSH基を介して、2工程で行った。
1.担体タンパク質のマレイル化(maleoylation)
各リンカー2〜5mg(N-メチルピロリドン(NMP)中50mg/ml)を、担体タンパク質溶液(0.1mM NaHCO3(pH8.0)中10mg/ml)2mlに添加した。この反応混合液を、室温(RT)で1時間インキュベーションした。その後この反応混合液を、50mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl、pH6.8により平衡としたSephadex G-50カラム(1.5×14cm)を用いて脱塩した。
2.マレイル化BTGのペプチドとの結合
前記ペプチド溶液(Aqua bidest中10mg/ml)250μlを、50mMリン酸ナトリウム、250ml NaCl、pH6.8中にマレイル化された担体タンパク質(2.5mg/ml)を含有する溶液2mlと混合し、4℃で2時間、更にRTで4時間インキュベーションした。未反応のマレイミド基を、2-メルカプトエタノールの最大濃度10mMまでの添加、及び4℃で一晩のインキュベーションによりブロックした。得られた複合体を、10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.5に対して4℃で透析した(緩衝液交換3回、MWカットオフ値10,000)。
【0111】
(ELISAのためのペプチド複合)
複合は、ペプチドのシステイン残基からのSH基を介して、2工程で行った。
1.担体タンパク質のマレイル化
SMPHの2mg(N-メチルピロリドン(NMP)中50mg/ml)を、担体タンパク質溶液(BSA、0.1mM NaHCO3(pH8.0)中10mg/ml)2mlに添加した。この反応混合液を、室温(RT)で1時間インキュベーションした。その後この反応混合液を、50mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl、pH6.8により平衡としたSephadex G-50カラム(1.5×14cm)を用いて脱塩した。
2.マレイル化BTGのペプチドとの結合
前記ペプチド溶液(50mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl、pH6.8中10mg/ml)100μlを、50mMリン酸ナトリウム、250ml NaCl、pH6.8中にマレイル化された担体タンパク質(2.5mg/ml)を含有する溶液1mlと混合し、4℃で2時間、更にRTで4時間インキュベーションした。未反応のマレイミド基を、2-メルカプトエタノールの最大濃度10mMまでの添加、及び4℃で一晩のインキュベーションによりブロックした。得られた複合体を、10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.5に対して4℃で透析した(緩衝液交換3回、MWカットオフ値10,000)。
【0112】
(免疫化)
5匹のマウスを、腹腔内経路により39日間免疫化した。免疫化に関して、同等部の抗原溶液(同等部の3種の異なるペプチド-BTG-複合体からなる)及び完全又は不完全フロイントアジュバントからなるからなる油中水型エマルションを使用した。
【0113】
(融合)
3匹の免疫化したマウスを、CO2インキュベーションにより屠殺した。脾臓を摘出し、無菌条件下でホモジナイズした。脾細胞及び骨髄腫SP2/0細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、SIGMA社)において数回洗浄し、かつポリエチレングリコール3350(1ml、50%(w/v))を用い、脾細胞:SP2/0細胞の比2,3:1で融合した。融合したハイブリドーマの更なる操作は、標準的方法に従い行った。
【0114】
(ELISA)
IgGに対するELISAを使用し、細胞培養液上清をスクリーニングした。96-ウェルポリスチロール製マイクロタイタープレート(Greiner社、カタログ番号655061)において試験を行った。これらのプレートを、BSA-pGlu-6166ペプチドによりコーティングした。未希釈の細胞培養液上清100μlを、各ウェルに添加し、かつRTで1時間インキュベーションした。SP2/0細胞からの上清を、陰性対照として使用した。脾細胞からの上清を、陽性対照として使用した。
陽性ウェルを、アルカリホスファターゼと複合されたヤギ-抗-マウスIgGを用い検出した。光学密度(OD)を、Dynex Opsys MRマイクロプレートリーダーにおいて405nmで測定した。
【0115】
(安定した抗体産生ハイブリドーマ細胞の選択)
陽性ウェルからの細胞を、24-ウェルプレートへ移し、数日間培養した。細胞を再度移し、ELISAにおいてBSA-pGlu6199結合及び交差反応性について試験した。陽性ウェルを、ハイブリドーマ細胞株の凍結保存(cryo-conservation)に使用した。
【0116】
(限界希釈によるクローニング)
抗体産生細胞を非産生細胞から分離し、かつ選択された細胞がモノクローナルであることを確実にするために、2回の連続するクローニング工程を行った。クローニング工程は両方共、限定希釈法に従い行った。
(凍結保存)
選択されたハイブリドーマを、DMSO及び標準的方法を用いて凍結保存した。
【0117】
(1.2. ELISAアッセイ)
AβN3pE-40の捕獲は、TGCからのhAβ(x-40)ELISA(HS)(The GENETICS社;スイス)を用い、基本的には製造業者の指示に従い行った。
AβN3pE(pGlu-6166)に関するビオチン化された検出用抗体が作製された。指示された場合、IBL社のHRP-複合したAβN3pE抗体を、陽性対照として使用した(IBL ELISAヒトアミロイドβ(N3pE)アッセイキットと一緒の場合のみ入手可能)。対応するAβN3pE-40ペプチド(ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中の50μgアリコートは、-80℃で貯蔵した)を合成した。使用直前に、HFIPを蒸発させ、このペプチドを、100mMトリス/HCl(pH10.4)により1μg/μlに希釈した。このストック溶液を、TGC抗体希釈液により更に希釈した。引き続きの捕獲及び検出を、製造業者の指示に従い行った。
【0118】
(1.3. PepSpot(商標)解析)
AβN3pE抗体及び細胞培養液上清の特異性及び生物学的完全性を、JPT Peptide Technologies社(Volmerstrasse 5 (UTZ), 12489 ベルリン、独国)のPepSpot(商標)技術を用いて決定した。
対応するPepSpot(商標)メンブレンは、JPT社で調製した。この方法の原理は、先にKramerらの論文(Cell, 91:799-809 (1997))により紹介されかつ説明されている。
【0119】
解析のために、メンブレンを、TBST-M(10mMトリス-HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.005%Tween20+5%スキムミルク)により室温で2時間、穏やかに振盪しながらブロックした。メンブレンを、等量のTBST-M中に希釈した個々の細胞培養液上清と共に、揺動するプラットフォーム上で、4℃で一晩インキュベーションした。アルカリホスファターゼと複合された抗-マウス二次抗体を、標準的手法に従うシグナル検出のために使用した。
【0120】
(1.4.ドットブロット解析)
簡単なドットブロットプロトコールを、各未変性ペプチドに対するAβN3pE抗体及び細胞培養液上清の感度に関する情報を得るために遂行した。その目的のために、漸減濃度(1000ng−8ng)のAβN3pE-40ペプチドを、ニトロセルロースメンブレン小片上にスポットし、PepSpot(商標)メンブレンに関する引き続きの実験手順を行った。
【0121】
(1.5. SDS PAGE)
12%SDSポリアクリルアミドゲルを、標準プロトコールに従い成型した。細胞培養液上清15μl及びビオチン化された抗体10μgを、12%SDSポリアクリルアミドゲル上で分離した。電気泳動を、100V定圧で2時間実行した。
【0122】
(1.6. BIACORE解析)
AβN3pE-40ペプチド(陽性対照)及びAβN3E-40ペプチド(陰性対照)を、Biacore CM5チップ上に結合した。修飾されなかったチップを使用し、ブランク値を決定した。TGC希釈液中に20μg/ml〜1μg/mlに希釈されたビオチン化された抗体の会合及び解離をモニタリングし、各KD値の引き続きの決定を可能にした。この方法で、個々の細胞培養液上清の結合特性も決定した。
【0123】
(1.6.1. AβN3pE特異性抗体クローン6-1-6及び24-2-3の親和性)
精製された抗体クローン6-1-6を、HBS-EP緩衝液(Biacore)中に、100、50、30、20、15、10、7、4、2、1nMまで順に希釈した。その上にAβpE3-40が固定されたCM5-チップを備えたBiacore 3000を用い、その親和性を決定した。このシステムは、30μl/分で試行した。測定されたバルク作用及びチップ表面への非特異的結合を、そこにAβpE3-40が固定されたフローセル4及び空のフローセル3のシグナルの減算により補正した。会合(10分間)は、各濃度300μlの注入により得た。解離は、10分間にわたり観察した。残存する抗体分子を、0.1M HClの5μlの注入により除去した。各抗体濃度に関して、会合及び解離を記録した。会合速度及び解離速度及び解離定数の決定は、「二価アナライト(Bivalent analyte)」モデルを使用し、全ての記録された抗体濃度に関する会合相及び解離相の同時のグローバルフィッティング(global simultaneously fit)により行った。
【0124】
(1.7.抗体可変領域の配列決定)
ハイブリドーマ細胞の培養:
ハイブリドーマ細胞を、15%FBS、1%MEM-NEA(非必須アミノ酸、Gibco社)、50μg/mlゲンタマイシン(Gibco社)及び50μMβ-メルカプトエタノールを添加した、D-MEM(+L-グルタミン、+Na-ピルビン酸、4.5g/lグルコース、Gibco社)上で、37℃及び5%CO2で増殖した。細胞密度に応じて、3〜4日後に継代培養を行った。細胞を、濃度0.5×106個細胞/mlで播種し、細胞密度2〜5×106個細胞/mlで分割を行った。
【0125】
cDNA合成及び逆転写:
総RNAを、NucleospinRNA単離キット(Macherey-Nagel社)のマニュアルに従い、2×106個細胞から単離した。100ng RNAを、オリゴ(dT)15プライマー(Promega社)及びSuperscript III逆転写酵素(Invitrogen社)を使用することにより、cDNA合成に適用した。
【0126】
重鎖及び軽鎖の可変領域のPCR-増幅:
重鎖可変領域は、プライマーMHV1-12と組み合わせたプライマーMHCG1(クローン5-5-6及び6-1-6の場合)並びにMHCG2b(クローン17-4-3及び24-2-3)と共に、Phusion(商標)高忠実度DNAポリメラーゼ(NEW ENGLAND BioLabs社)を使用することにより、鋳型cDNAから増幅した。軽鎖可変領域の増幅に関して、プライマーMKV1-MKV11と組合せたプライマーMKCを使用した。プライマー配列は、表1に示している。
【0127】
pJET1.2におけるPCR産物のクローニング:
PCRにより増幅された重鎖及び軽鎖可変領域を、pJETl.2/平滑端ベクターへClone JET(商標)PCRクローニングキット(Fermentas社)のプロトコールに従いクローニングした。配列決定は、pJET1.2配列決定プライマーにより行った。
【0128】
【表1】
【0129】
(1.8.抗体クローン6-1-6のN3pE ELISAへの適用)
96-ウェルマキシソーブプレート(Nunc社)を、D-PBS中に希釈した2μg/ml抗-Aβ抗体4G8の100μl/ウェルを4℃で一晩インキュベーションすることにより、捕獲抗体でコーティングした。これらのプレート(plated)を密封した。そのコーティング溶液を除去し、かつプレートの表面を、200μl/ウェルのPIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20非含有)により、室温で2時間ブロックした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。AβpE3-40標準ペプチドを、PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中で200、100、50、25、12.5、6.25、3.125pg/mlへ順に希釈した。各濃度100μl及び希釈緩衝液(ブランク)100μlを、プレート上にピペッティングした。このプレートを密封し、かつ4℃で2時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中に溶解したAβN3pE特異性抗体クローン6-1-6の1μg/ml及びストレプトアビジン-HRP複合体(Sigma社)2μg/mlを含有する検出用抗体-酵素複合溶液100μlを、各ウェルにピペッティングした。このプレートを密封し、4℃で1時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。各ウェル中に、SureBlue基質溶液(KPL)100μlをピペッティングし、かつこのプレートを暗所において、室温で30分間インキュベーションした。この反応を、1M H2SO4の100μl/ウェルの添加により停止した。吸光度を、TECAN Sunriseにより450nmで測定し、540nmの吸光度により補正した。
【0130】
(1.9. ELISA及び表面プラズモン共鳴(SPR)により分析された交差反応性の研究)
ELISA:
96-ウェルマキシソーブプレート(Nunc社)を、D-PBS中に希釈した2μg/ml抗-Aβ抗体4G8の100μl/ウェルを4℃で一晩インキュベーションすることにより、捕獲抗体でコーティングした。これらのプレート(plated)を密封した。そのコーティング溶液を除去し、かつプレートの表面を、200μl/ウェルのPIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20非含有)により、室温で2時間ブロックした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。AβpE3-40標準ペプチド及び他のAβ-ペプチド(2-40、3-40、4-40、1-42、3-42及びpE11-40)を、PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中で800、400、200、100、50、25、12.5へ順に希釈した。各濃度100μl及び希釈緩衝液(ブランク)100μlを、プレート上にピペッティングした。このプレートを密封し、かつ4℃で2時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中に溶解したAβN3pE特異性抗体クローン6-1-6の1μg/ml及びストレプトアビジン-HRP複合体(Sigma社)2μg/mlを含有する検出用抗体-酵素複合溶液100μlを、各ウェルにピペッティングした。このプレートを密封し、4℃で1時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。各ウェル中に、SureBlue基質溶液(KPL)100μlをピペッティングし、かつこのプレートを暗所において、室温で30分間インキュベーションした。この反応を、1M H2SO4の100μl/ウェルの添加により停止した。吸光度を、TECAN Sunriseにより450nmで測定し、540nmの吸光度により補正した。
【0131】
SPR:
様々なAβ種に加え、ヒト体において生じる他のpGlu-ペプチドへの交差反応性も決定した。これは、表面プラズモン共鳴により行った。以下のペプチド又はそれらのN-末端領域を、CM5-チップの表面に固定した:MCP1、MCP2、大ガストリン、ゴナドリベリン、ニューロテンシン、オレキシンA、フィブロネクチン、コラーゲン1及びTRH。陽性対照として、同じくAβpE3-40への結合も分析した。N3pE抗体クローン6-1-6及び24-2-3を、HBS-EP(Biacore社)中に25μg/mlまで希釈した。この結合は、その上に各ペプチド(フローセル2、3及び4)が固定された数個のCM5-チップを備えたBiacore 3000を用い、観察した。このシステムは、20μl/分で試行した。測定されたバルク作用及びチップ表面への非特異的結合を、そこに被験ペプチドが固定されたフローセル2、3及び4並びに空のフローセル1のシグナルの減算により補正した。会合(9分間)は、抗体クローン6-1-6及び24-2-3の各々180μlの注入により得た。解離は、9分間にわたり観察した。残存する抗体分子を、0.1M HClの5μlの注入により除去した。この抗体の様々なペプチドとの各相互作用に関して、会合及び解離を記録した。交差反応性は、最終時の速度及びシグナルに関する会合相の評価により決定した。全てのpGlu-ペプチドの値は、AβpE3-40に関するシグナルと比較した。
【0132】
(1.10.脳分析に関するN3pE ELISAの最適化及びバリデーション)
本発明者らが開発したN3pE ELISAは、トランスジェニックマウスの脳内のAβpE3-42濃度の分析に使用されるべきである。概して脳半球及び脳幹は、AβpE3-42含量に関して、個別に分析された。マウス脳を、セラミックビーズを使用するPrecelly(Peqlab社)ホモジナイザー内で、プロテアーゼインヒビターを含む2%SDS溶液500μl中でホモジナイズした。この浮遊液を、ビーズからピペットにより取り出し、遠心管に移した。ビーズは、プロテアーゼインヒビターを含む2%SDS溶液250μlで再度洗浄し、かつ溶液を前記遠心管に移した。SDS脳浮遊液750μlを、粉砕氷上で20秒間音波処理した。この試料を、75000×g、4℃で1時間遠心した。その後、上清を取り出し、アリコートとし、かつELISA分析まで-80℃で貯蔵した。残存するSDS不溶性ペレットを、70%ギ酸150μlと混合し、粉砕氷上で20秒間音波処理した。音波処理の直後に、この溶液を、旧方式である1Mトリス2850μlにより中和するか、又はEIA緩衝液(PBS+10mg/ml BSA+0.05%Tween-20)2850μl+3.5Mトリス860μlにより中和し、これは新方式を表している。これらのギ酸画分試料を、ELISAまで-80℃で貯蔵した。
【0133】
N3pE ELISAを、下記のプロトコールにより行った:
96-ウェルマキシソーブプレート(Nunc社)を、D-PBS中に希釈した2μg/ml抗-Aβ抗体4G8の100μl/ウェルを4℃で一晩インキュベーションすることにより、捕獲抗体でコーティングした。これらのプレート(plated)を密封した。そのコーティング溶液を除去し、かつプレートの表面を、200μl/ウェルのPIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20非含有)により、室温で2時間ブロックした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。AβpE3-42標準ペプチドを、PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)(旧方式)又はEIA緩衝液(新方式)中で1029.2、514.6、257.3、128.65、64.32、31.16、16.08pg/mlへ順に希釈した。各濃度100μl及び希釈緩衝液(ブランク)100μlを、プレート上にピペッティングした。前述のSDS試料を解凍し、各々PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)(旧方式)又はEIA緩衝液(新方式)中で1:25及び1:100に希釈し、かつELISAプレート上にピペッティングした。前述のギ酸試料(旧方式:ギ酸/トリス;新方式:ギ酸/EIA緩衝液/トリス)を解凍し、かつ希釈せずELISAプレート上にピペッティングした。このプレートを密封し、かつ4℃で2時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中に溶解したAβN3pE特異性抗体クローン6-1-6の1μg/ml及びストレプトアビジン-HRP複合体(Sigma社)2μg/mlを含有する検出用抗体-酵素複合溶液100μlを、各ウェルにピペッティングした。このプレートを密封し、4℃で1時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。各ウェル中に、SureBlue基質溶液(KPL)100μlをピペッティングし、かつこのプレートを暗所において、室温で30分間インキュベーションした。この反応を、1M H2SO4の100μl/ウェルの添加により停止した。吸光度を、TECAN Sunriseにより450nmで測定し、540nmの吸光度により補正した。
【0134】
(1.11.免疫組織化学へのN3pE抗体クローンの適用)
ヒト脳(皮質)由来のホルマリン-固定切片及びパラフィン-包埋切片を、下記のように処理した:
1.切片(スライド上に固定された)の脱パラフィン化及び再水和:
a.スライドのヒストクリア又はキシレン中で3分間のインキュベーション、
b.クリーニング液の除去、
c.スライドのヒストクリア又はキシレン中で3分間の再度のインキュベーション、
d.スライドのヒストクリア又はキシレンの100%エタノールとの1:1溶液中で3分間のインキュベーション、
e.スライドの100%エタノール中で3分間のインキュベーション、溶液の除去、
f.スライドの100%エタノール中で3分間の再度のインキュベーション、
g.スライドの95%エタノール中で3分間のインキュベーション、
h.スライドの70%エタノール中で3分間のインキュベーション、
i.スライドの50%エタノール中で3分間のインキュベーション、
j.スライドの蒸留水中で3分間のインキュベーション。
【0135】
2.内在性ペルオキシダーゼ活性のクエンチング:
スライドのメタノール99ml+30%過酸化水素1mlによる、室温で10分間のインキュベーション、
3.スライドの水による洗浄:2×5分間
4.個々のスライド中の水の除去、及び切片の乾燥を防ぐための、加湿チャンバー内のスライドラック上へのスライドの配置。ドラフト下室温で10分間の88%ギ酸による、切片の被覆。水中で数回のすすぎ、及び水を満たした染色皿内で10分間の振盪、
5. 10%ウマ血清中での室温で20分間のブロッキング、
6.ブロッキング溶液の振り払い(又は吸引)、及び一次抗体(N3pE抗体クローン6又は24)の4℃で一晩の適用、
7. 1枚のスライドから別のスライドへのドラッキングを避けるための、TBSによる10分間の個別のスライド洗浄、
8.ビオチン化された二次抗体(Vector Laboratories社のヤギ抗-マウス抗体)の添加:TBS 9ml、ヤギ血清1ml、二次抗体45μl。室温で30分間のインキュベーション、
9. 1枚のスライドから別のスライドへのドラッキングを避けるための、TBSによる10分間の個別のスライド洗浄、
10. ABC-溶液(TBS 10ml、ウマ血清100μl、成分A 90μl、成分B 90μl)の添加。室温で30分間のインキュベーション、
11.スライドの50mMトリスによる洗浄:2×10分間
12.呈色反応:切片のDAB溶液(50mMトリス100ml中のSigma社のDAB 20mg、濾過し、33%過酸化水素33μlの添加)と一緒のインキュベーション。顕微鏡を使用する、呈色反応の観察。この反応生成物は茶色を呈した。水が入った染色皿へのスライドの投入による反応の停止、
13.スライドの水による10分間の洗浄、
14.ヘマトキシリンによる対比染色、水による洗浄、
15.脱水及びクリーニング:逆順で工程1を辿る(例えば、水、エタノールから100%ヒストクリアへ)、
16. Permount付きカバーガラス(Fisher Scientific社)。空気中でのスライドの乾燥。カミソリの刃及びエタノールによるスライドのクリーニング。
【0136】
(2.結果)
(2.1.抗体の産生)
pGlu-6166-BSAペプチドに対する抗体を安定して産生する6種のクローンを単離した:クローン1-8-12、5-5-6、6-1-6、12-1-8、17-4-3及び24-2-3。これらのクローンを更なる特徴決定に供した。
【0137】
(2.2.必要な抗体濃度の決定)
ELISAアッセイにおけるシグナル強度は、分析物/Aβ変種の濃度に相関されるのみではなく、配置された抗体の濃度にも強力に左右される。Aβ変種は、血清試料中に低濃度でのみ存在するので、対応するAβ変種の低濃度を検出することができる抗体濃度を決定することが必要である。市販のAβELISAキットは、低いpg範囲において、Aβに対する特定された検出限界を有する。標準曲線において、最高濃度は通常500pg/mlである。しかし一般的文献から引き出せる更なる情報では、抗体1μg/mlがデフォルトとして使用されるために、配置された抗体濃度に関する一般的情報は、典型的にはデータシート/指示マニュアル中に欠けている。
【0138】
最初の一連の実験において、対応するpGlu-6166ビオチン-複合された抗体12-1により、AβN3pE-40 500pg/mlを検出することは不可能であった。実際に、1μg/ml抗体によりシグナルを得るためには、比較的高いAβN3pE濃度(10ng/ml)が必要であった(図IA:中央のバー参照)。このシグナルの強度は、抗体濃度の10μg/mlへの増加により、顕著に増強された(図IA:左側バー参照)。抗体20μg/mlまで、シグナル強度は更に上昇されることができる(図IB参照)。この濃度を超えると、シグナル強度の更なる増加は達成されない。従って抗体20μg/mlを使用し、pGlu-6166抗体の検出限界を決定した。
【0139】
(2.3.ドットブロット解析)
AβN3pE-x抗体pGlu-6166をスクリーニングプロセスにおいて選択したが、その理由は、その当初の細胞クローン(12-1-8と称される)が、免疫化のために採取した該ペプチドに対する強力な結合及び非常に低い交差反応性を示したからである(表2参照)。
【0140】
【表2】
【0141】
完全長未変性AβN3pE-40ペプチドに対処するスクリーニング工程は、これまで含まれていない。従って入手可能なpGlu6166ハイブリドーマ細胞クローンのプールを、未変性AβN3pE-40ペプチドに対し比較的高い親和性を示すことができる抗体を発現しているクローンに関してスクリーニングした。
【0142】
図2に認められるように、実際に未変性の完全長AβN3pE-40ペプチドに対し比較的高い感度を示す細胞クローンを同定することができる。pGlu-6166抗体クローン12-1は、ペプチド1μgのみを検出できるのに対し、クローン6-1-6及び24-2-3は、ペプチド8ngと少ないものもシグナルを生じた。従ってクローン6-1-6及び24-2-3は、125倍より感度が高い。これらのクローンにより、対応するELISAにおけるAβN3pE-40ペプチドの検出限界8pg/mlを達成することができる。
【0143】
(2.4. PepSpot解析)
次に特異性を、ビオチン化されたAβN3pE-x抗体pGlu-6166と、ハイブリドーマ細胞クローンとで比較するために、PepSpot解析によりチェックした。表3に、PepSpotメンブレン上のスポットに相当する全てのペプチドを列記している。図3において認められるように、pGlu-6166クローン6-1-6及び24-2-3は、pGlu-6166抗体クローン12-1よりもより多くの交差シグナルを生じなかった。調べた全てのクローンは、主としてスポット番号6−特異的AβN3pE-xスポット(pEFRHD...、すなわち配列番号:12)、それに続くスポット番号5(EFRHD...配列番号:11)及び7(FRHD... 配列番号:13)を認めた。かすかなシグナルも、スポット番号4(AEFRHD... 配列番号:10)において得られた。
【0144】
【表3】
表3のpEは、pGlu、ピログルタミン酸を意味する。
表3のiDは、イソAsp、イソアスパラギン酸を意味する。
【0145】
(2.5. SDS-PAGE解析)
Aβ-N3pE抗体及びハイブリドーマ細胞培養液上清の生物学的完全性を、SDS-PAGE解析によりおおまかに決定した(詳細については前掲の「材料及び方法」を参照されたい)。
図4に認められるように、ゲルに装加した全ての試料は、不明瞭部分(smear)のない尖鋭なバンドを明らかにし、このことはpGlu-6166 12-1抗体及びハイブリドーマ細胞クローン上清の完全性を示している。
【0146】
(2.6. BIACORE解析)
ドットブロット解析により、ハイブリドーマ細胞クローン上清のAβN3pE-40ペプチドに対する感度を、ビオチン化されたpGlu-6166抗体と比較し、有意差を判断した。しかしこの方法では、エンドポイントの結果のみをモニタリングした。他方Biacore解析は、所定の抗体の結合過程の時間に関する(timewise)解明を可能にする。pGlu-6166抗体12-1の不十分な結合は、AβN3pE-40ペプチドへの低い会合の結果であるかどうかをチェックするために、Biacore解析を、前掲の「材料及び方法」に説明されたように行った。
【0147】
漸増濃度のpGlu-6166抗体の結合過程のモニタリングは、30nMのKD値の算出を可能にした。ハイブリドーマ細胞クローン上清12-1の細胞クローン上清6-1-6との比較は、結合の特徴の特筆すべき差異を明らかにした。クローン6-1-6の会合は、クローン12-1で認められるものよりも、およそ5倍より高かった。しかし最も顕著であるのは、解離挙動の差異であった。クローン6-1-6はAβN3pE-40ペプチドからほとんど解離しないのに対し、12-1は、数分以内に容易に洗浄除去される。従って、クローン12-1の不十分な結合は、観察された「オフ-レート(off-rate)」の結果である可能性が極めて高い。この仮定は、ドットブロット解析において特に有利な結果をもたらすクローン24-3-2は、AβN3pE-40ペプチドへの非常に遅い会合を示すが、クローン12-1とは対照的に、注目すべき「オフ-レート」はないという知見により更に裏付けられる(同じく図5を参照されたい)。
【0148】
(2.6.1. AβN3pE特異性抗体クローン6-1-6及び24-2-3の親和性)
N3pE抗体クローン6-1-6に関して、会合速度、解離速度、及び解離定数を、図6に示された全てのセンサグラムのグローバルフィッティングにより算出した。
会合速度は1.67e5 M-1s-1、解離速度は2.63e-4 s-1、及び解離定数は1.57nMと算出した。
N3pE抗体クローン24-2-3に関して、会合速度、解離速度及び解離定数は、図7に示された全てのセンサグラムのグローバルフィッティングにより算出した。
会合速度は3.25e3 M-1s-1、解離速度は3.29e-4 s-1、及び解離定数は101nMと算出した。
【0149】
(2.7.抗体可変領域の配列決定)
下記配列を同定した:
(2.7.1クローン5-5-6)
【化3】
【0150】
(2.7.2クローン6-1-6)
【化4】
【0151】
(2.7.3クローン17-4-3)
【化5】
【0152】
(2.7.4クローン24-2-3)
【化6】
【0153】
(2.8.抗体クローン6-1-6のN3pE ELISAへの適用)
最終のN3pE ELISAプロトコールを、定量限界(LOQ)及びシグナル-対-ノイズ比(S/N)に関して試験した。このELISAの標準曲線は、図8に示している。この標準曲線の形状は、特に低濃度範囲について非常に良好であり、これは吸光度にほぼ直線的依存関係と思われる。この標準曲線を基に、S/N=1.3で、LOQは3.125pg/mlと決定した。
【0154】
(2.9 ELISA及びSPRにより分析された交差反応性の研究)
ELISA:
他のAβ変種に対する交差反応性を、本発明者らのN3pE-ELISAを用い決定した。生データを、表4に示している。
【0155】
【表4】
【0156】
AβpE3-40に関してのみ、吸光度の濃度への依存関係が認められた。Aβ3-40以外の、全ての試験したAβ変種は、1%未満の交差反応性を示した。800pg/mlに関するシグナル(ブランクにより補正)は、AβpE3-40に関するシグナルの約2.7%であった。これは、両ペプチドのN-末端は、AβpE3-40の場合環化されている最初の1個を除いて同じアミノ酸を有することを考慮すると、非常に良い値である。全般的に、ELISAに一般的に使用されるAβN3pE抗体クローン6は、3位でpGluで始まるAβ-ペプチドのN-末端に関して非常に高い特異性がある。
【0157】
SPR:
クローン6-1-6及び24-2-3の他の非-AβpGluペプチドに対する交差反応性を、表面プラズモン共鳴により解析した。典型的結合センサグラムを示すAβpE3-40の代わりに試験した他のpGluペプチドは全て、クローン6-1-6及び24-2-3と、各々、相互作用をほぼ示さず、これも図9に示している(データはクローン6-1-6についてのみ示している)。pGluペプチドのセンサグラムを、AβpE3-40のセンサグラムと比較した。概算された交差反応性は、全て1%未満であった。全ての解析されたペプチドのまとめを、表5に示している。
【0158】
【表5】
【0159】
全ての実験は、N3pE抗体クローン6-1-6及び24-2-3は、AβpE3-xのN-末端エピトープに対し特異的であるという事実を確認した。他のpGlu N-末端はいずれも、N-末端pE残基を持たない他のAβペプチド変種を認識しなかった。
【0160】
(2.10.脳分析に関するN3pE ELISAの最適化及びバリデーション)
マウス脳幹中のAβpE3-42濃度を、使用した方法に応じて分析した。これらの試料は、QCによりAβpE3-42に環化されている、ヒトAβQ3-42を脳内に過剰発現しているトランスジェニックマウス(tg)に由来した。ヘテロ接合型トランスジェニックマウス(tg het)及びホモ接合型トランスジェニックマウス(tg hom)及び野生型非-トランスジェニックマウス(wt)から得た試料を比較した。試料作製に使用したマウスは、WO2009034158に開示されたように作出された。
【0161】
全ての更なる実験のために、試料及び標準を、EIA緩衝液中に希釈した。次工程において、ギ酸画分試料を分析するための中和方法を、最適化し、すなわち中和はN3pE ELISAであった。得られた及びここで開発されたN3pE ELISAは良好に働き、これはtg homマウス脳内で有意なレベルのヒトAβpE3-42を検出し、tg hetマウス脳内で有意に低いレベルのヒトAβpE3-42を検出し、かつwtマウス脳内でヒトAβpE3-42を検出しなかった(図10参照)。本発明のELISAは、高シグナル、結果的に非常に許容し得るLOQをもたらし、従ってギ酸試料、特にギ酸脳試料の分析に適している。
【0162】
(2.11.免疫組織化学のためのN3pE抗体クローンの適用)
本発明のN3pE抗体により、AβpE3-xを、散発性アルツハイマー病(SAD)及び家族性アルツハイマー病(FAD)の後期の患者、すなわちプレセニリン1(PS1)遺伝子に変異を持つ患者の脳切片において染色した。染色した脳切片を、図11に示す。図11は、本発明のN3pE抗体は、免疫組織化学に適していることを示している。この抗体は、SAD及びFAD患者の脳内でpGlu-Aβを特異的に検出する。N3pE抗体は、これらの画像においてバックグラウンドシグナルを示さず、このことは、ELISA及びSPR解析により示された特異的結合を証明している。
【0163】
(3.寄託)
AβN3pE-xを特異的に認識するモノクローナル抗体が作製された。現在、モノクローナル抗体発現する対応するハイブリドーマ細胞株5-5-6、6-1-6、17-4-3、及び24-2-3は全て、「ブダペスト条約(Budapest Treaty)」に基づき寄託されており、かつドイツ細胞バンク(Deutsche Stammsammlung von Mikoorganismen und Zellkulturen(DSMZ))(ブラウンシュヴァイク, DE)において、かつ各々寄託日2008年6月17日付けの、各々下記寄託番号で入手可能である:
(クローン5-5-6):DSM ACC2923
(クローン6-1-6):DSM ACC2924
(クローン17-4-3):DSM ACC2925
(クローン24-2-3):DSM ACC2926。
【0164】
これらの抗体のそれらの各標的配列に対する特異性は、確認することができる。AβN3pE-xに関して、高親和性抗体クローンは、低いpg範囲で、期待される検出限界を持つELISA設定において強力なシグナルを生じることを確定することができる。
【0165】
(4.要約)
本発明の主目的は、生物学的試料中のAβ変種の定量測定を可能にする高感度かつ堅牢な検出技術を確立することであった。
好ましくは、ELISAベースの技術を追跡した。この作業はAβN3pE ELISAから始め、その理由はこのAβ変種に関しては好適なELISAシステムが既に市販されているからである(IBL社)。このシステムは、参照及び内部定量対照として使用した。
【0166】
選択されたELISAアッセイ設定におけるpGlu-6166抗体の適用可能性を調べた。明らかに測定可能なシグナルを得るためには、高い抗体濃度が配置されることが必要であった(20μg/ml)。高親和性のAβN3pE-x抗体クローンを確定することができた。低いpg範囲(3〜8pg/ml)での検出限界を、これらのクローンで達成することができる。
【表6】
【図1A−B】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病などのアミロイドタンパク質に関連した障害及び異常の群であるアミロイドーシスの診断、及び関連した態様のための、新規診断用アッセイに関する。特に、抗体アッセイが提供される。
【背景技術】
【0002】
アミロイドーシスは、単独の疾患実体ではなく、むしろ1つ以上の臓器又は生体系内に蓄積する、アミロイドと称されるロウ様の類デンプン質タンパク質の細胞外組織沈着物により特徴づけられる様々な進行性疾患過程群である。アミロイド沈着物が蓄積するにつれ、これらは臓器又は生体系の正常な機能を妨害し始める。少なくとも15種の異なる型のアミロイドーシスが存在する。主要な型は、既知の前駆状態のない原発性アミロイドーシス、何らかの他の状態に続く続発性アミロイドーシス、及び遺伝性アミロイドーシスである。
【0003】
続発性アミロイドーシスは、結核、家族性地中海熱と称される細菌感染症、骨感染症(骨髄炎)、関節リウマチ、小腸の炎症(肉芽腫性回腸炎)、ホジキン病及びハンセン病などの、慢性感染症又は炎症疾患時に生じる。
【0004】
アミロイド沈着物は、アミロイドP(五角形)成分(AP)、正常血清アミロイドP(SAP)に関連した糖タンパク質、及び硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)、結合組織の複合糖質を含む。アミロイドタンパク質原線維は、アミロイド物質の約90%を占めるが、これはいくつかの異なる型のタンパク質の1つを含む。これらのタンパク質は、アミロイドタンパク質の独特な染色特性を生じるコンゴレッドへの結合部位を示す独特なタンパク質立体配置である、いわゆる「βプリーツ」シート原線維へのフォールディングが可能である。
【0005】
多くの加齢疾患は、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連し、かつ一部は、病因、更には疾患進行の一因となるアミロイド又はアミロイド様物質の細胞外沈着物の累積により特徴づけられる。これらの疾患は、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)などのアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性、レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの、神経学的障害を含むが、これらに限定されるものではない。その他のアミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した疾患は、進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病、老人性心アミロイドーシス、内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むその他などである。
【0006】
これらの疾患の病因は多様であるが、それらの特徴的沈着物は、多くの共通の分子構成要素を含むことが多い。これは、かなりの程度まで、炎症誘発性経路の局所的活性化に起因し得、それにより活性化された補体成分、急性相反応物質、免疫モジュレーター、及び他の炎症メディエーターの同時沈着につながり得る(McGeerらの論文、Tohoku J Exp Med. 174(3):269-277 (1994))。
【0007】
最近積み重ねられつつある証拠は、アルツハイマー病におけるN-末端が修飾されたAβペプチド変種の関与を実証している。狙撃生検(aiming biopsy)は、アルツハイマー患者の脳内のみではなく、罹患していない個人の老人斑内においても、Aβ1-40及びAβ1-42の存在を示している。しかしN-末端切断型及びピログルタミン酸(pGlu)修飾型AβN3pE-40/AβN3pE-42は、ほぼ例外なくアルツハイマー病患者の斑内に染み付き(engrained)、このことはこのAβ変種を適格な診断用マーカー及び可能性のある創薬標的としている。
【0008】
現時点でいくつかの商業的製造業者が、低いピコグラム(pg)範囲における、Aβ1-40/1-42及びAβN3pE-40/AβN3pE-42の検出を可能にするELISAキットを提供している。
【0009】
アルツハイマー病(AD)患者の脳は、神経原線維のもつれの存在により、及び新皮質脳構造内のAβペプチドの沈着により、形態学的に特徴づけられる(Selkoe, D.J.及びSchenk, D.の論文、「アルツハイマー病:アミロイドベースの治療を予測する分子理解(Alzheimer's disease: molecular understanding predicts amyloid-based therapeutics)」、Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 43:545-584 (2003))。Aβペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から、β-及びγ-セクレターゼによる逐次切断の後、遊離される。γ-セクレターゼ切断は、Aβ1-40ペプチド及びAβ1-42ペプチドの生成を生じ、これらはそのC-末端が異なり、かつ凝集、原線維形成及び神経毒性の様々な効力を発揮する(Shin, R. W.らの論文、「ラット脳内のアルツハイマー病アミロイド原線維の実験的形成に寄与するアミロイドβ-タンパク質1-40、寄与しないAβ1-42(Amyloid beta-protein (Abeta) 1-40 but not Abeta 1-42 contributes to the experimental formation of Alzheimer disease amyloid fibrils in rat brain)」、J. Neurosci. 17:8187-8193 (1997);Iwatsubo, T.らの論文、「末端特異的Aβモノクローナルによる老人斑内のAβ42(43)及びAβ40の視覚化:最初に沈着した種はAβ42(43)である証拠(Visualization of Abeta 42 (43) and Abeta 40 in senile plaques with end-specific Abeta monoclonals: evidence that an initially deposited species is Abeta 42(43))」、Neuron, 13:45-53 (1994);Iwatsubo, T.、Mann, D. M.、Odaka, A.、Suzuki, N.及びIhara, Y.の論文、「アミロイドβタンパク質(Aβ)沈着:ダウン症候群においてAβ42(43)はAβ40に先行する(Amyloid beta protein (Abeta) deposition: Abeta 42(43) precedes Abeta 40 in Down syndrome)」、Ann. Neurol. 37:294-299 (1995);Hardy, J. A.及びHiggins, G. A.の論文、「アルツハイマー病:アミロイドカスケード仮説(Alzheimer's disease: the amyloid cascade hypothesis)」、Ann. Neurol. 37:294-299 (1995);Hardy, J. A.及びHiggins, G. A.の論文、「アルツハイマー病:アミロイドカスケード仮説(Alzheimer's disease: the amyloid cascade hypothesis)」、Science, 256:184-185 (1992);Roner, S.、Ueberham, U.、Schliebs, R.、Perez-Polo, J. R.及びBigl, V.の論文、「コリン作動性機構及び神経栄養因子受容体シグナル伝達によるアミロイド前駆体タンパク質代謝の調節(The regulation of amyloid precursor protein metabolism by cholinergic mechanisms and neurotrophin receptor signaling)」、Prog. Neurobiol. 56:541-569 (1998))。C-末端可変性に加え、N-末端が修飾されたAβペプチドが豊富である(Saido, T. C.らの論文、「老人斑内の個別のβ-アミロイドペプチド種AβN3(pE)のドミナント及びディファレンシャル沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, A beta N3 (pE), in senile plaques)」、Neuron, 14:457-466 (1995);Russo, C.らの論文、「アルツハイマー病におけるプレセニリン-1突然変異(Presenilin-1 mutations in Alzheimer's disease)、Nature, 405:531-532 (2000);Saido, T. C、Yamao, H.、Iwatsubo, T.及びKawashima, S.の論文、「ヒト脳内沈着したβ-アミロイドペプチドのアミノ-及びカルボキシル-末端の不均一性(Amino- and carboxyl-terminal heterogeneity of beta-amyloid peptides deposited in human brain)」、Neurosci. Lett. 215:173-176 (1996))。大きい割合のAβペプチドは、2種のアミノ酸により、N-末端切断を受け、グルタミン酸残基を露出し、これは引き続きピログルタミン酸(pE)へ環化され、Aβ3(pE)-42ペプチドを生じるように思われる(Saido, T. C.らの論文、「老人斑内の個別のβ-アミロイドペプチド種AβN3(pE)のドミナント及びディファレンシャル沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, A beta N3 (pE), in senile plaques)」、Neuron, 14:457-466 (1995);Saido, T. C、Yamao, H.、Iwatsubo, T.及びKawashima, S.の論文、「ヒト脳内沈着したβ-アミロイドペプチドのアミノ-及びカルボキシル-末端の不均一性(Amino- and carboxyl-terminal heterogeneity of beta-amyloid peptides deposited in human brain)」、Neurosci. Lett. 215:173-176 (1996))。あるいは、pEは、BACElによるβ'-切断後に形成され、AβN11(pE)-42を生じることができる(Naslund, J.らの論文、「アルツハイマー病及び正常加齢におけるアルツハイマーAβアミロイドペプチド変種の相対存在量(Relative abundance of Alzheimer A beta amyloid peptide variants in Alzheimer disease and normal aging)」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:8378-8382 (1994);Liu, K.らの論文、「アルツハイマー病及び若年性ダウン症候群の脳におけるAβ11-40/42ペプチド沈着の特徴:アルツハイマー病の病因におけるN-末端切断型Aβ種の意味(Characterization of Abeta 11-40/42 peptide deposition in Alzheimer's disease and young Down's syndrome brains: implication of N-terminally truncated Abeta species in the pathogenesis of Alzheimer's disease)」、Acta Neuropathol. 112:163-174 (2006))。特にAβN3(pE)-42は、散発性及び家族性アルツハイマー病(FAD)におけるAβ沈着の主要な構成要素であることが示されている(Saido, T. C.らの論文、「老人斑内の個別のβ-アミロイドペプチド種AβN3(pE)のドミナント及びディファレンシャル沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, A beta N3 (pE), in senile plaques)」、Neuron, 14, 457-466 (1995);Miravalle, L.らの論文、「コットンウール斑の主成分であるアミノ-末端切断型Aβペプチド種(Amino-terminally truncated Abeta peptide species are the main component of cotton wool plaqaues)」、Biochemistry, 44:10810-10821 (2005))。
【0010】
前記AβN3pE-42ペプチドは、Aβ1-40/1-42ペプチドと同時存在し(Saido, T. C.らの論文、「老人斑内の個別のβ-アミロイドペプチド種AβN3(pE)のドミナント及びディファレンシャル沈着(Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, Abeta N3pE), in senile plaques)」、Neuron, 14:457-466 (1995);Saido, T. C. Yamao, H.、Iwatsubo, T.及びKawashima, S.の論文、「ヒト脳内沈着したβ-アミロイドペプチドのアミノ-及びカルボキシル-末端の不均一性(Amino- and carboxyl-terminal heterogeneity of beta-amyloid peptides deposited in human brain)」、Neurosci. Lett. 215:173-176 (1996))、かつ多くの知見を基に、ADの病因において顕著な役割を果たすことができる。例えば、AβN3pE-42ペプチドの特定の神経毒性が概説されており(Russo, C.らの論文、「ピログルタミン酸-修飾されたアミロイドβ-ペプチド--AβN3(pE)--は培養されたニューロン及び星状膠細胞の生存に強い影響を及ぼす(Pyroglutamate-modified amyloid beta-peptides-- AbetaN3 (pE) --strongly affect cultured neuron and astrocyte survival)」、J. Neurochem. 82:1480-1489 (2002))、かつN-切断型AβペプチドのpE-修飾は、ほとんどのアミノペプチダーゼに加え、Aβ-分解性エンドペプチダーゼによる分解に対する抵抗を付与する(Russo, C.らの論文、「ピログルタミン酸-修飾されたアミロイドβ-ペプチド--AβN3(pE)--は培養されたニューロン及び星状膠細胞の生存に強い影響を及ぼす(Pyroglutamate-modified amyloid beta-peptides--AbetaN3 (pE)--strongly affect cultured neuron and astrocyte survival)」、J. Neurochem. 82:1480-1489 (2002);Saido, T. C.の論文、「タンパク質分解性障害としてのアルツハイマー病:β-アミロイドの同化作用及び異化作用(Alzheimer's disease as proteolytic disorders: anabolism and catabolism of beta-amyloid)」、Neurobiol. Aging 19:S69-S75 (1998))。グルタミン酸のpEへの環化は、N-末端電荷の喪失につながり、AβN3pEの、修飾されないAβペプチドと比べ加速された凝集を生じる(He, W.及びBarrow, C.J.の論文「完全長Aβよりもインビトロにおけるより大きいβ-シート形成及び凝集の性向を有する老人斑内に認められたAβ3-ピログルタミル及び11-ピログルタミルペプチド(The Abeta 3-pyroglutamyl and 11-pyroglutamyl peptides found in senile plaque have greater beta-sheet forming and aggregation propensities in vitro than full-length A beta)」、Biochemistry, 38:10871-10877 (1999);Schilling, S.らの論文、「pGlu-アミロイドペプチドの播種及びオリゴマー化(インビトロ)(On the seeding and oligomerization of pGlu-amyloid peptides (in vitro))」、Biochemistry, 45:12393-12399 (2006))。従ってAβN3pE-42形成の減少は、それらのペプチドを分解されやすくすることにより、ペプチドを不安定化し、次により大きい分子量のAβ凝集物の形成を防止し、かつニューロンの生存を増強するであろう。
【0011】
しかし長い間、どうやってAβペプチドのpE-修飾が生じるかは不明であった。最近になって、グルタミニルシクラーゼ(QC)は、AβN3pE-42形成を弱酸性条件下で触媒することが可能であること、及び特異的QC阻害剤は、インビトロにおけるAβN3pE-42生成を妨害することが発見された(Schilling, S.、Hoffmann, T.、Manhart, S.、Hoffmann, M.及びDemuth, H.-U.の論文、「弱酸性条件下でグルタミルシクラーゼ活性を展開するグルタミニルシクラーゼ(Glutaminyl cyclases unfold glutamyl cyclase activity under mild acid conditions)」、FEBS Lett. 563:191-196 (2004);Cynis, H.らの論文、「哺乳動物細胞におけるピログルタミン酸形成を変更するグルタミニルシクラーゼの阻害(Inhibition of glutaminyl cyclase alters pyroglutamate formation in mammalian cells)」、Biochim. Biophys. Acta, 1764:1618-1625 (2006))。
【0012】
レヴィー小体型認知症(LBD)は、65歳以上の人々において生じ得、典型的には認知(思考)機能障害の症状及び異常な行動変化を引き起こす神経変性障害である。症状は、認知機能障害、神経学的徴候、睡眠障害、及び自律神経機能不全を含み得る。認知機能障害は、ほとんどの症例においてLBDの主症状である。患者は、進行性に増悪する錯乱の再発性のエピソードを有する。認識能のゆらぎは、注意及び警戒の程度の推移に関連することが多い。認知機能障害及び思考のゆらぎは、数分間、数時間、又は数日間にわたり変動することができる。レヴィー小体は、リン酸化された及びされないニューロフィラメントタンパク質から形成され;これらは、シナプスタンパク質α-シヌクレインに加え、ユビキチンを含み、これらは損傷タンパク質又は異常タンパク質の排泄に関与している。レヴィー小体に加え、神経細胞の細胞突起における封入体であるレヴィー神経突起(Lewy neurite)も存在し得る。アミロイド斑は、DLBに罹患した患者の脳内で形成されるが、これらはアルツハイマー病患者において認められる数よりも少ない傾向がある。その他のADの顕微病理学上の顕著な特徴である神経原線維もつれは、LBDの主要な特徴ではないが、アミロイド斑に加え頻繁に存在する。
【0013】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位及び下位運動ニューロンの変性により特徴づけられる。一部のALS患者において、認知症又は失語が存在することがある(ALS-D)。この認知症は、最も一般的には前頭側頭型認知症(FTD)であり、かつこれらの症例の多くは、歯状回並びに前頭葉及び側頭葉浅層のニューロン内にユビキチン-陽性、タウ-陰性封入体を有する。
【0014】
封入体筋炎(IBM)は、通常50歳を超える人々において認められる肢体不自由になる(crippling)疾患であり、本疾患では筋繊維が炎症を発症し、かつ萎縮が始まるが、しかしそこでは脳は生き延び(spared)、かつ患者は自身の完全な知性を保持している。アミロイド-βタンパク質生成に関与したふたつの酵素は、そこではアミロイド-βも増加されている比較的高齢なヒトのこの最も一般的進行性筋疾患の患者の筋細胞の内側で増大されることが認められた。
【0015】
アミロイド様タンパク質の蓄積及び沈着を基にした又はそれらに関連した別の疾患は、黄斑変性である。黄斑変性は、網膜の中心領域(感光性細胞が視覚シグナルを脳に送る眼底の紙のように薄い組織)である黄斑の劣化を引き起こす一般的眼疾患である。はっきりした明瞭な「直進性」の視覚は、黄斑により処理される。この黄斑の損傷は、盲点の発生及び不鮮明又はゆがんだ視覚を生じる。加齢黄斑変性症(AMD)は、米国における視力障害の原因の大半であり、かつ65歳を超える人々にとって、これは白人人種における法的盲の主因である。40歳以上の米国人およそ180万人が、進行期AMDを有し、中間期AMDの別の730万人には、失明の実質的リスクがある。米国政府は、2020年までに、進行期AMDは290万人に達すると推定している。AMDの犠牲者は、この視覚消失状態の原因及び治療についてほとんど分かっていないことを知り、驚きかつ苛立つことが多い。ふたつの型の黄斑変性が存在する:乾燥型黄斑変性と湿潤型黄斑変性。黄斑の細胞が徐々に破壊され始める乾燥型は、黄斑変性症例の85%において診断される。通常両眼が乾燥型AMDに冒されるが、片眼が視力を失っても、他眼は罹患されずにいることがある。網膜下の黄色沈着物であるドルーゼンは、乾燥型AMDの一般的初期徴候である。ドルーゼンの数又はサイズが増加するにつれ、進行期乾燥型AMD又は湿潤型AMDのリスクが増大する。乾燥型AMDに関して、本疾患の湿潤型に変わることなく、進行しかつ失明を引き起こす可能性があるが;しかし初期の乾燥型AMDが湿潤型に突然変化する可能性もある。
【0016】
湿潤型は、本症例のわずかに15%を占めているが、これは失明の90%を生じ、かつ進行期AMDと考えられる(初期又は中間期湿潤型AMDは存在しない)。湿潤型AMDには、常に本疾患の乾燥型が先行する。乾燥型が悪化するにつれ、一部患者では、黄斑の後方に異常な血管増殖を有し始める。これらの血管は、非常に脆く、かつ体液及び血液を漏出し(従って「湿潤型」黄斑変性)、黄斑に急激な損傷が引き起こされる。乾燥型AMDは、最初はわずかなかすみ目を引き起こすことが多い。特に視覚中心が、次にぼやけ始めることが多く、かつこの領域は本疾患が進行するにつれ拡大していく。片眼のみ罹患した場合には、症状に気付かないことがある。湿潤型AMDにおいて、直線が波形に見えることがあり、中心視覚喪失が迅速に起こり得る。
【0017】
黄斑変性の診断は典型的には、散瞳試験(dilated eye exam)、視力検査、及びAMD診断を助ける眼底検査と称される手法を使用する眼底の観察が関与し、かつ湿潤型AMDが疑われる場合は、蛍光眼底血管造影も行われることがある。乾燥型AMDが進行期に到達した場合、現在失明を阻止する治療は存在しない。しかし抗酸化剤及び亜鉛の特定の高用量処方は、中間期AMDが進行期へと進行することを遅延若しくは防止することができる。Macugen(登録商標)(ペガプタニブナトリウム注射剤)、レーザー光凝固及び光線力学的療法は、黄斑における異常な血管増殖及び出血を制御することができ、これは湿潤型AMDを有する患者の一部については有用であるが;しかし既に失われた視覚は、これらの技術によっては回復しないであろう。視覚が既に喪失された場合、生活の質を改善する助けとなることができる低視力補助具が存在する。
【0018】
加齢黄斑変性症(AMD)の最初期の徴候のひとつは、網膜色素上皮(RPE)の基底膜とブルーフ膜(BM)の間のドルーゼンとして公知の細胞外沈着物の蓄積である。Andersonらにより行われた最近の研究は、ドルーゼンはアミロイドβを含有することを確認した(Experimental Eye Research, 78:243-256 (2004))。
【0019】
本発明の目的は、例えば液体試料又は血清試料、好ましくは血清試料などの、生物学的試料中の、Aβ変種、特にpGlu-Aβペプチドの量的決定を可能にする高感度かつそれに付随して堅牢な検出技術を確立することである。これは、血液中のAβペプチドが豊富でないことを考慮すると、途方もない挑戦である。しかし利用可能なそのような検出技術を有することは、薬物スクリーニングプログラムにおける小型分子阻害剤の有効性を試験する上での前提条件である。
【0020】
本発明は、凝集体、ファイバー、フィラメントの形で、又はプラークの凝縮形、モノマー型、ダイマー型、トリマー型など若しくはポリマー型で該抗体に提示され得る、一連のβ-アミロイド抗原、特にpGlu-Aβペプチド由来の特異的エピトープを特異的に認識しかつ結合する能力を有する、部分的又は完全にヒト化された抗体及びそれらの断片を含む、キメラ抗体及びそれらの断片を含む、高度に特異的かつ高度に有効な抗体を含有する、新規方法及び組成物を提供する。本発明の内容により可能とされる抗体は、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシスの診断に特に有用であり、これらの疾患はいくつか名前を挙げると、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの、神経学的障害;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、黄斑変性を含むその他などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前述の全ての要求に合致するためには、ELISAベースの技術が特に望ましいであろう。この作業は、AβN3pE ELISAにより開始され、その理由はこのAβ変種に関するELISAシステムは既に市販されているからであり(Human Amyloid β (N3pE) Assay Kit-IBL社、コード番号27716)、これが参照及び内部品質対照として使用される。このAβN3pE-40ペプチドの捕獲は、TGC社(The Genetics Company、Wagistrasse 23, 8952 Schlieren、チューリッヒ、スイス)のhAβ(x-40)ELISA(HS)により実行され、これは本開発プロセスを容易にしかつ促進するものであった。
【発明の概要】
【0022】
(発明の概要)
本発明は、特に高親和性でAβ-ペプチドに結合することで特徴づけられる抗体又はそれらの変種に関する。前記高親和性とは、本発明の状況においては、親和性が、10-7M以上のKD値、好ましくは10-8M以上のKD値、更により好ましくは10-9M〜10-12MのKD値であることを意味する。
【0023】
特に本抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、かつ下記群から選択される:
Aβ5-5-6、
Aβ6-1-6、
Aβ17-4-3、
Aβ24-2-3。
本発明の抗体は、アミロイドーシス、特にアルツハイマー病を検出するための診断方法において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
(図面の説明)
【図1】A)pGlu-6166抗体(クローン12-1)の漸増濃度による10ng/mlアミロイドβN3pE-40の検出。 B)10ng/mlアミロイドβN3pE-40の検出に必要なpGlu-6166抗体(クローン12-1)の最高濃度の決定。
【図2】個別のIgの産生クローンのハイブリドーマ細胞培養液上清のドットブロット分析。
【図3】pGlu-6166ハイブリドーマ細胞クローン及びIBL-AβN3pE抗体のPepSpot分析。
【図4】20μg pGlu-6166抗体及びハイブリドーマ細胞培養液上清の12%SDS-PAGE。
【図5】ハイブリドーマ細胞培養液上清のBiacore分析。モニタリングされた結合過程のオーバーレイが、図示されている。
【図6】抗-AβN3pE抗体クローン6-1-6のAβpE3-40との相互作用のセンサグラム。
【図7】抗-AβN3pE抗体クローン24-2-3のAβpE3-40との相互作用のセンサグラム。
【図8】クローン6-1-6に関するN3pE-ELISA。AβpE3-40の標準曲線。
【図9】N3pE抗体クローン6-1-6のセンサグラム。
【図10】EIA緩衝液中1:20希釈、3.5Mトリス860μlによるpH滴定による中和方法を使用する、AβpE3-42の定量。
【図11】アルツハイマー病(AD)患者の染色された脳切片。 (A)総Aβを認識する、抗-Aβ抗体6E10により染色された散発性AD(SAD)患者の脳、 (B)AβpE3-xを認識する、N3pE抗体クローン24-2-3により染色された散発性AD(SAD)患者の脳、 (C)AβpE3-xを認識する、N3pE抗体クローン24-2-3により染色された家族性AD(FAD)患者の脳。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
(定義)
用語「抗体」は、最も広範な意味で使用され、かつ具体的には、それらが所望の生物活性を示す限りは、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を対象としている。本抗体は、例としてIgM、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4)、IgD、IgA又はIgEであることができる。しかし好ましくは本抗体は、IgM抗体ではない。
【0026】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、一般には無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片:ダイアボディ;単鎖抗体分子;及び、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0027】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわちその集団を構成している個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然の突然変異以外は、同一である。モノクローナル抗体は、単独の抗原性部位に対して向けられている高度な特異性がある。更に、典型的には様々な抗原決定基(エピトープ)に対して向けられた様々な抗体を含む「ポリクローナル抗体」調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単独の抗原決定に対して向けられている。それらの特異性に加え、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンが夾雑されないハイブリドーマ培養により合成される点で、それらは有利であり得ることが多い。「モノクローナル」とは、抗体の実質的に均質な集団から得られるという抗体の特徴を示しており、かついずれか特定の方法による抗体産生を必要とするとは解釈されない。例えば本発明において使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerらの論文(Nature, 256:495 (1975))に最初に説明されたハイブリドーマ法により作製されることができるか、又は一般に周知の組換えDNA法により作製されることができる。「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonらの論文(Nature, 352:624-628 (1991))及びMarksらの論文(J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991))に説明された技術を用い、ファージ抗体ライブラリーから単離されることもできる。
【0028】
モノクローナル抗体は、本明細書において具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、この鎖(複数)の残りは、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である、キメラ抗体(免疫グロブリン)、更には所望の生物活性を示す限りはそのような抗体の断片を含む。
【0029】
非-ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非-ヒト免疫グロブリンに由来した最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、それらの免疫グロブリン鎖又は断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2又は抗体の他の抗原結合性部分配列)である。大部分に関して、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非-ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非-ヒト残基により置き換えられている。更にヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも認められない残基を含むことができる。
【0030】
これらの修飾は、抗体性能を更に純化しかつ最適化するために行われる。概してヒト化抗体は、少なくとも1個の、及び典型的には2個の可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで全て又は実質的に全てのCDR領域は、非-ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、かつ全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリン配列のそれであろう。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むであろう。更なる詳細に関しては、Jonesらの論文、Nature, 321:522-525 (1986)、Reichmannらの論文、Nature, 332:323-329 (1988):及び、Prestaの論文、Curr. Op. Struct. Biel., 2:593-596 (1992)を参照されたい。ヒト化抗体は、抗体の抗原-結合領域が、関心対象の抗原によるマカクザルの免疫化により産生された抗体に由来している、Primatized(商標)抗体を含む。
【0031】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは、単独のポリペプチド鎖に存在する。一般にFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーを更に含み、このことはsFvが、抗原結合の望ましい構造を形成することを可能にする。sFvの総説については、Pluckthunの文献、「モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibody)」、113巻、Rosenburg及びMoore編集、Springer-Verlag社、ニューヨーク、269-315頁(1994)を参照されたい。
【0032】
用語「ダイアボディ」は、その断片が、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VD)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原-結合部位を伴う小型の抗体断片(VH-VD)をいう。同じ鎖上の2つのドメインを対合させるには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補ドメインと対合するように強制され、かつ2つの抗原結合部位を形成する。ダイアボディは、Hollingerらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)においてより十分に説明されている。
【0033】
「単離された」抗体は、同定されかつその天然の環境の成分から分離及び/又は回収されたものである。その天然の環境の夾雑成分は、この抗体の診断用又は治療用の用途と干渉するであろう物質であり、かつこれは酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性若しくは非-タンパク質性溶質を含むことができる。好ましい実施態様において、本抗体は、(1)Lowry法により決定された抗体の95重量%を超えるまで、及び最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用により、N-末端又は中間部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、若しくは(3)クマーシーブルー又は好ましくは銀染色を用い、還元又は非還元条件下で、SDS-PAGEにより均質であるまで:精製されるであろう。単離された抗体とは、少なくとも1つのその抗体の天然環境の成分も存在しないことを理由に、組換え細胞内のインサイチュ抗体を含む。しかし通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
【0034】
本明細書において使用される表現「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養液」は、互換的に使用され、かつそのような呼称は全て後代を含む。従って語句「形質転換体」及び「形質転換された細胞」は、継代(transfer)された数とは関係なくそれらから誘導された初代の対象細胞及び培養物を含む。全ての子孫は、意図的な又は不用意な突然変異のために、DNA含量が正確に同一でないことがあり得ることも理解される。当初の形質転換された細胞に関してスクリーニングされたものと同じ機能又は生物活性を有する突然変異体子孫が含まれる。明確な指定が意図される場合、これは文脈から明らかであろう。
【0035】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、互換性があり、かつペプチド結合により連結されたアミノ酸で構成された生体分子を意味すると定義される。
本明細書において使用される用語「ある(a、an及びthe)」は、「1以上」を意味するように定義され、かつ文脈が不適切でない限りは、複数を含む。
【0036】
語句「アミロイド又はアミロイド様タンパク質により引き起こされた又は関連した疾患及び障害」は、モノマー、フィブリル、若しくはポリマーの状態、又はこれら3種の任意の組合せの、アミロイド様タンパク質の存在又は活性により引き起こされた疾患及び障害を含むが、これらに限定されるものではない。このような疾患及び障害は、アミロイドーシス、内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むが、これらに限定されるものではない。
【0037】
用語「アミロイドーシス」とは、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むが、これらに限定されるものではない、アミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群をいい、これは例えば、軽度認知障害(MCI)、散発性アルツハイマー病、レヴィー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合、家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)のような家族性アルツハイマー病などの、認知記憶能の喪失により特徴づけられる疾患又は状態を含む、アルツハイマー病(AD)などの神経学的障害;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、及び老人性心アミロイドーシス;並びに、黄斑変性、ドルーゼン関連視神経症、及びβアミロイド沈着に起因した白内障を含む様々な眼疾患などの疾患を含むが、これらに限定されるものではない。
【0038】
「アミロイドβ、Aβ又は/β-アミロイド」は、当該技術分野において認められた技術用語であり、並びにアミロイドβタンパク質及びペプチド、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)、更にはそれらの修飾物、断片及び任意の機能的同等物をいう。特に本明細書において使用されるアミロイドβは、APPのタンパク質分解性切断により作製された任意の断片を意味するが、特に非限定的に、Aβ1-38、Aβ1-40、Aβ1-42を含む、アミロイド病理に関与しているか又は関連しているそれらの断片を意味する。これらのAβペプチドのアミノ酸配列は、以下である:
【化1】
【0039】
「pGlu-Aβ」又は「AβN3pE」とは、グルタミン酸残基が環化され、ピログルタミン酸残基を形成している、Aβのアミノ酸配列の3位のグルタミン酸残基で始まるAβのN-末端切断型をいう。特に本明細書において使用されるpGlu-Aβは、非限定的に、pGlu-Aβ3-38、pGlu-Aβ3-40、p-Glu-Aβ3-42を含む、アミロイド病理に関与しているか又は関連しているそれらの断片を意味する。AβのN-末端切断型、Aβ3-38、Aβ3-40、Aβ3-42の配列は、以下である:
【化2】
【0040】
特に本発明は、下記の項目に関する:
1.Aβペプチド又はそれらの変種に、好ましくは高親和性で結合することで特徴づけられる、抗体、
2.該高親和性が、解離定数(KD)値10-7M以上を意味する、項目1記載の抗体、
3.該抗体がモノクローナル抗体である、項目1又は2記載の抗体、
4.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:49、53、57及び61から選択されたヌクレオチド配列、又は配列番号:50、54、58、及び62から選択されたアミノ酸配列を有する、項目1〜3のいずれか1項記載の抗体、
5.該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:51、55、59及び63から選択されたヌクレオチド配列、又は配列番号:52、56、60及び64から選択されたアミノ酸配列を有する、項目1〜4のいずれか1項記載の抗体、
【0041】
6.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:49のヌクレオチド配列、又は配列番号:50のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:51のヌクレオチド配列、又は配列番号:52のアミノ酸配列を有する、項目1〜5のいずれか1項記載の抗体、
7.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:53のヌクレオチド配列、又は配列番号:54のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:55のヌクレオチド配列、又は配列番号:56のアミノ酸配列を有する、項目1〜6のいずれか1項記載の抗体、
8.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:57のヌクレオチド配列、又は配列番号:58のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:59のヌクレオチド配列、又は配列番号:60のアミノ酸配列を有する、項目1〜7のいずれか1項記載の抗体、
9.該抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:61のヌクレオチド配列、又は配列番号:62のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:63のヌクレオチド配列、又は配列番号:64のアミノ酸配列を有する、項目1〜8のいずれか1項記載の抗体、
【0042】
10.該抗体が、下記群から選択される、項目1〜9のいずれか1項記載の抗体:
Aβ5-5-6(寄託番号DSM ACC 2923)
Aβ6-1-6(寄託番号DSM ACC 2924)
Aβ17-4-3(寄託番号DSM ACC 2925)
Aβ24-2-3(寄託番号DSM ACC 2926)
又は、それらの機能的変種、
11.該抗体が、Aβ6-1-6(寄託番号DSM ACC 2924)である、項目1〜10のいずれか1項記載の抗体、
12.該抗体が、Aβ24-2-3(寄託番号DSM ACC 2926)である、項目1〜11のいずれか1項記載の抗体、
13.該抗体が、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体、又は、高親和性を保持している抗体断片である、項目1〜12のいずれか1項記載の抗体、
14.Aβペプチド又はそれらの変種の検出において使用するための、項目1〜13のいずれか1項記載の抗体、
【0043】
15.該変種が、下記群から選択される、項目14記載の抗体:
pGlu-Aβ3-38
pGlu-Aβ3-40
pGlu-Aβ3-42、及び
pGlu-Aβ3-x変種、
ここで、xは、10〜42;好ましくは18〜42、より好ましくは30〜42の間の整数である、
16.ヒトである、項目1〜15のいずれか1項記載の抗体、
17.高親和性を保持する、ダイアボディ又は単鎖抗体である、項目1〜16のいずれか1項記載の抗体、
18.項目15において定義された抗体により結合されたエピトープへ結合する、項目1〜17のいずれか1項記載の抗体、
19.項目15において定義された抗体の相補性決定領域を有する、項目1〜18のいずれか1項記載の抗体、
【0044】
20.標識されている、項目1〜19のいずれか1項記載の抗体、
21.固相上に固定されている、項目1〜20のいずれか1項記載の抗体、
22.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2923、DSM ACC 2924、DSM ACC 2925、DSM ACC 2926のいずれかひとつから入手可能である、抗体、
23.項目1〜22のいずれか1項で定義された抗体を含有する、組成物、
24.アミロイドーシスの治療、予防又は遅延のための、項目23記載の組成物、
25.該アミロイドーシスが、軽度認知障害、アルツハイマー病及びダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患である、項目23又は24記載の組成物、
26. 該アミロイドーシスが、散発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー型認知症である、項目23又は24記載の組成物、
27.該家族性アルツハイマー型認知症が、家族性英国型認知症又は家族性デンマーク型認知症である、項目26記載の組成物、
【0045】
28.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2923、
29.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2924、
30.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2925、
31.ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2926、
32.診断方法又は治療方法における、項目1〜22のいずれか1項で定義された抗体、又は項目23〜27のいずれか1項で定義された組成物の使用、
33.アミロイド-関連疾患又は状態の診断に関する、項目32記載の使用、
34.該アミロイドーシスが、軽度認知障害、アルツハイマー病及びダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患である、項目33記載の使用、
35.該アミロイドーシスが、散発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー型認知症である、項目33記載の使用、
36.該家族性アルツハイマー型認知症が、家族性英国型認知症又は家族性デンマーク型認知症である、項目35記載の使用、
【0046】
37.項目1〜22のいずれか1項記載の抗体を、該疾患又は状態に罹患していることが疑われる対象由来の試料と接触する工程;並びに
該試料由来のpGlu-アミロイドタンパク質、好ましくはpGlu-Aβペプチドに対する、本抗体の結合を検出する工程:を含む、アミロイド-関連疾患又は状態、特にアルツハイマー病を診断するための、インビトロ診断方法、
38.項目1〜22のいずれか1項で定義された抗体、及び使用説明書、並びに−任意に−更なる生物学的活性物質(1又は複数)を備える、診断キット、
39.該更なる生物学的物質が、グルタミニルシクラーゼ(glutaminy cyclase)の阻害剤である、項目32の診断用キット、
40.配列番号:23〜48からなる群から選択される、オリゴヌクレオチド。
【0047】
本発明の抗体は、アミロイドーシスの診断に有用であることができる。
本発明の抗体は、アフィニティ精製物質として使用されることができる。このプロセスにおいて、抗体は、当該技術分野において周知の方法を用い、Sephadex樹脂又はフィルターペーパーのような固相上に固定される。固定された抗体は、精製されるべきAβ-ペプチド(又はそれらの断片)を含有する試料と接触され、その後この支持体は、固定された抗体に結合されているAβ-ペプチド以外の試料中の物質全てを実質的に除去する好適な溶媒により洗浄される。最後に、この支持体は、Aβ-ペプチドを抗体から放出するグリシン緩衝液(pH5.0)などの別の好適な溶媒により洗浄される。
【0048】
抗-Aβ-ペプチド抗体は、例えば特定の細胞、組織、又は血清中のAβ-ペプチドの出現の検出などのような、Aβ-ペプチドに関する診断アッセイにおいて有用であることもできる。従って本抗体は、アミロイドーシス、特に軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、並びにダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくは、アルツハイマー病の診断において使用されることができる。
【0049】
診断適用に関して、本抗体は典型的には、検出可能な部分により標識されるであろう。一般に下記の範疇に群別される数多くの標識が、利用可能である:
(a) 35S、14C、125I、3H、及び131Iなどの、放射性同位元素。本抗体は、例えば、「免疫学最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」、第1及び2巻、Gutigenら編集、Wiley-Interscience社、ニューヨーク、NY. 刊行1991年に説明された技術を用い、放射性同位元素により標識されることができ、かつ放射活性は、シンチレーションカウンティングを用いて測定されることができる。
(b)希土類キレート(ユーロピウムキレート)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン及びテキサスレッドなどの蛍光標識が、利用可能である。これらの蛍光標識は、例えば、「免疫学最新プロトコール」(前掲)に明らかにされた技術を用い、本抗体に複合されることができる。蛍光は、蛍光光度計を用い定量されることができる。
(c)様々な酵素-基質標識が利用可能である。この酵素は一般に、様々な技術を用い測定されることができる発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、この酵素は、基質内の色の変化を触媒することができ、この変化は分光光度計により測定されることができる。あるいはこの酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変更することができる。蛍光の変化を定量する技術は、先に説明されている。化学発光基質は、化学反応により電子的に励起され始め、その後測定され得る光を放出するか(例えばケミルミノメーターを用いて)、又は蛍光アクセプターへエネルギーを提供する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例えばホタルのルシフェラーゼ及び細菌のルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、O-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどを含む。酵素を抗体に複合する技術は、O'Sullivanらの文献、「酵素免疫検定法における使用のための酵素-抗体複合体の調製方法(Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay)」、Methods in Enzym (編集Langone及びH. Van Vunakis)、Academic Press社、ニューヨーク、73: 147-166 (1981)に説明されている。
【0050】
酵素-基質組合せの例は、例えば以下を含む:
(i)基質としてのハイドロジェンペルオキシダーゼ(hydrogen peroxidase)と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで過酸化水素は、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)発色基質としてのp-ニトロフェニルリン酸と、アルカリホスファターゼ(AP);並びに
(iii)発色基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は発蛍光基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼとの、β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
数多くの他の酵素-基質組合せが、当業者には利用可能である。
【0051】
場合によって、前記標識は、本抗体と間接的に複合される。当業者は、これを実現する様々な技術を知っているであろう。例えば本抗体は、ビオチンと複合されることができ、かつ前述の標識の3つの広範な範疇のいずれかは、アビジンと複合されることができ、その逆もまた同様である。ビオチンは、アビジンに選択的に結合し、その結果この標識は、この間接的様式で、本抗体と複合される。あるいは、標識の抗体との間接的複合を実現するために、本抗体は、小型ハプテン(例えばジゴキシン)と複合され、かつ前述の異なる種類の標識のひとつは、抗-ハプテン抗体(例えば抗-ジゴキシン抗体)と複合されることができる。従って、標識の本抗体との間接的複合が実現され得る。
【0052】
Aβ-抗体は、標識される必要はなく、かつそれらの存在は、Aβ-抗体に結合する標識された抗体を用いて検出されることができる。
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイなどの、いずれか公知のアッセイ方法において利用されることができる。Zolaの文献、「モノクローナル抗体:技術マニュアル(Monoclonal Antibodies A Manual of Techniques)」、147-158頁(CRC Press社、1987)。
【0053】
競合結合アッセイは、標識された標準の、限定された量の抗体との結合に関して被験試料分析物と競合する能力に頼っている。被験試料中のAβペプチドの量は、抗体に結合され始める標準の量に反比例する。結合され始める標準の量の決定を促進するために、本抗体は一般に、競合の前後には不溶化され、その結果該抗体に結合されている標準及び分析物は、未結合のままでいる標準及び分析物から簡便に分離されることができる。
【0054】
サンドイッチアッセイは、各々検出されるべきタンパク質の異なる免疫原性部分又はエピトープに結合することが可能である2つの抗体の使用に関与している。サンドイッチアッセイにおいて、被験試料分析物は、固形支持体上に固定されている第一の抗体により結合され、その後第二の抗体が分析物に結合し、その結果不溶性の3つの部分の複合物を形成する。第二の抗体それ自身は、検出可能な部分により標識されている(直接サンドイッチアッセイ)か、又は検出可能な部分により標識されている抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されることができる(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイのひとつの好ましい型はELISAアッセイであり、その場合検出可能な部分は酵素である。
免疫組織化学に関して、本組織試料は、新鮮若しくは凍結されているか、又はパラフィン内に包埋され、かつ例えばホルマリンなどの保存剤により固定されることができる。
【0055】
(診断キット)
便宜上本発明の抗体は、キット、すなわち予め定められた量の試薬のその診断用アッセイの実行に関する指示書との包装された組合せにおいて提供されることができる。抗体が酵素により標識されている場合、このキットは、その酵素により必要とされる基質及び補因子(例えば、検出可能な発色団又は発蛍光団を提供する基質前駆体)を備えるであろう。加えて、安定剤、緩衝液(例えばブロック緩衝液又は溶解緩衝液)などの他の添加剤が備えられることができる。これらの様々な試薬の相対量は、このアッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度を提供するために、広範に変動されることができる。特にこれらの試薬は、溶解時に好適な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含有する、通常凍結乾燥された乾燥粉末として提供されることができる。
【0056】
本発明の診断用キットは、以下に説明されたような更なる生物学的活性物質を含むことができる。本診断用キットにおける使用に関して特に好ましいのは、グルタミニルシクラーゼ阻害剤である。
【0057】
本発明の診断用キットは、アミロイド-関連疾患及び状態、特に軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病の検出及び診断に特に有用である。
【0058】
本発明は、Aβ-ペプチドへ高親和性で結合することで特徴づけられる抗体に特に関する。本発明は、Aβ-ペプチド又はそれらの変種に高親和性で結合することで特徴づけられる抗体にも関する。本発明の文脈において、前述の高親和性とは、親和性が10-7M以上のKD値、好ましくは10-8M以上のKD値、更により好ましくは10-9M〜10-12MのKD値であることを意味する。これにより本発明の抗体はAβ-ペプチドへ、先行する公知の抗体よりも、より高い親和性で結合する。
【0059】
特に本抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、かつ下記群から選択される:
Aβ5-5-6 (DSM ACC 2923)
Aβ6-1-6 (DSM ACC 2924)
Aβ17-4-3 (DSM ACC 2925)
Aβ24-2-3 (DSM ACC 2926)。
【0060】
本発明の抗体は、アミロイドーシス、特に軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病を検出するための診断方法において特に有用である。
【0061】
好ましい実施態様において、本抗体は、ヒト化されることができるか、又はキメラ抗体であるか、又はヒト抗体である。
更に前述の群から選択されるような抗体は、前記群の機能的変種であることもできる。
本発明の状況において、p-Glu-Aβペプチドの変種は、特に下記のものである:
pGlu-Aβ3-38、
pGlu-Aβ3-40、
pGlu-Aβ3-42。
【0062】
Aβペプチドの更なる変種は、アルツハイマー病又は先行するアルツハイマー病の結果として脳内に蓄積することが示されている、全てのpGlu-Aβ3-x変種である。Xは、10〜42の間の整数として定義され、例えば先のpGlu-Aβ3-42において、「42」が「x」に相当する整数である。
【0063】
本発明の状況において、本発明の抗体の「機能的変種」とは、結合能を保持している抗体、特にpGlu-Aβ3-xペプチド又はそれらの機能的変種への高親和性の結合能を保持している抗体である。そのような機能的変種の提供は、当該技術分野において公知であり、かつ抗体及びそれらの断片の定義において指摘された、前述の可能性を包含している。
【0064】
好ましい実施態様において、本抗体は、先に定義されたような抗体断片である。
更なる好ましい実施態様において、本発明の抗体は、先に定義されたように抗体により結合されるエピトープに結合する抗体、特に抗体5-5-6、抗体6-1-6、抗体17-4-3及び抗体24-2-3である。
【0065】
更なる好ましい実施態様において、本発明の抗体は、先に定義された抗体の相補性決定領域(CDR)を有する抗体である。好ましくは、本抗体は標識されることができ;可能性のある標識は、前述のもの及び特に抗体の診断用途の当業者に公知のもの全てである。
好ましくは、本抗体は、固相上に固定されている。
本発明は、ハイブリドーマ細胞株6-1-6(DSM ACC 2924)から入手可能である抗体にも関する。
【0066】
本発明は、先に定義されたように本抗体を含有する組成物にも関する。特に、該組成物は、特に生物学的試料中のAβペプチド又はそれらの変種の検出による;診断用途のための、特別に軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病の診断のための組成物である。
【0067】
別の実施態様において、本発明の及び本明細書において先に説明されたような抗体又はそれらの断片は、Aβモノマーに対する結合親和性よりも、少なくとも2倍、特に少なくとも4倍、特に少なくとも10倍、特に少なくとも15倍、より特定すると少なくとも20倍、しかし特別に少なくとも25倍より高い、Aβオリゴマー、ファイバー、フィブリル又はフィラメントに対する結合親和性を示す。
【0068】
更に別の実施態様において、抗体若しくはそれらの断片又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又はヒト化抗体若しくはそれらの断片は、先に本明細書において説明されたように提供され、その抗体は、哺乳動物における、特にヒト脳内の、Aβ斑を含む凝集されたAβに実質的に結合するが、好ましくはアミロイド前駆体タンパク質(APP)とはいかなる交差反応性も示さない。
【0069】
本発明の別の態様において、抗体若しくはそれらの断片又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又はヒト化抗体若しくはそれらの断片は、先に本明細書において説明されたように提供され、その抗体は、哺乳動物における、特にヒト脳内の、可溶性ポリマー性アミロイド、特にAβモノマーを含むアミロイドβ(Aβ)に実質的に結合するが、好ましくはアミロイド前駆体タンパク質(APP)とはいかなる交差反応性も示さない。
【0070】
本発明は、先に定義された抗体のヒト化された型、該ヒト化抗体を含有する組成物、及び哺乳動物、特にヒトにおけるアミロイドーシスの治療のための、特に神経変性疾患の治療のための該組成物の使用にも関する。前記神経変性疾患は、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から特に選択される。好ましくは前記神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
【0071】
本発明は、ハイブリドーマ細胞株5-5-6、6-1-6、17-4-3及び24-2-3にも関する。
本発明は、インビトロ診断方法における使用のための、両方とも先に定義されたような、抗体又はその抗体を含有する組成物の使用にも関する。特に、この診断方法は、特に生物学的試料中のAβペプチド又はそれらの変種の検出による、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患;好ましくはアルツハイマー病の診断に対して行われる。
【0072】
好ましくは、前記試料は、血清試料である。
別の好ましい実施態様に従い、前記試料は、液体又は脳脊髄液(CSF)試料である。
【0073】
特に好ましい実施態様において、本発明は下記の方法に関する:
本発明の抗体を、該状態又は疾患に罹患していることが疑われる対象の、好ましくは血清、液体若しくはCSF試料から選択された試料と、最も好ましくは血清試料と;又は特定の体部分若しくは体領域と、接触する工程、並びに
該抗体の該試料由来のpGlu-アミロイドタンパク質、好ましくはpGlu-Aβペプチドへの結合を検出する工程:を含む、アミロイド-関連疾患又は状態、好ましくはアルツハイマー病の診断のための、インビトロ又はインサイチュ診断方法。
【0074】
より特定すると、本発明は、試料中の又はインサイチュにおいて、pGlu-アミロイドタンパク質、好ましくはpGlu-Aβペプチドへの抗体又はそれらの活性断片の免疫特異的結合を検出することを含む、アミロイド-関連疾患又は状態、好ましくはアルツハイマー病の診断方法であって:
(a)前記アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料又は特定の体部分若しくは体領域を、抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、及び/又はそれらの機能部分と接触させる工程であって、ここで抗体はpGlu-Aβペプチドに結合する工程;
(b)前記抗体及び/又はそれらの機能部分を、pGlu-Aβペプチドと結合させ、免疫複合体を形成する工程;
(c)前記免疫複合体の形成を検出する工程;並びに
(d)前記免疫複合体の存在又は非存在を、試料又は特定の体部分若しくは領域中のpGlu-Aβペプチドの存在又は非存在と相関させる工程:を含む方法に関する。
【0075】
同じく、組織及び/又は体液中のアミロイド形成性斑負荷(plaque burden)の程度を決定する方法であって:
(a)検査下の組織及び/又は体液を代表する試料を得る工程;
(b)前記試料を、アミロイドタンパク質の存在について、抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、及び/又はそれらの機能部分により試験する工程;
(c)前記タンパク質に結合された抗体の量を決定する工程;並びに
(d)組織及び/又は体液中の斑負荷を算出する工程:を含む方法も含まれる。
【0076】
特に本発明は、工程c)において免疫複合体の形成が決定され、その結果この免疫複合体の存在又は非存在が、アミロイドタンパク質、特にpGlu-Aβペプチドの存在又は非存在と相関されている、組織及び/又は体液中のアミロイド形成性斑負荷の程度を決定する方法に関する。
【0077】
更に別の実施態様において、本発明は、任意の機能的に同等な抗体又はそれらの任意の誘導体若しくは機能部分を含む、本発明の抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片を、治療的有効量含有する組成物、特に任意に医薬として許容し得る担体を更に含有する医薬組成物を含む、組成物に関する。
【0078】
別の本発明の実施態様において、前記組成物は、治療的有効量の抗体を含有する。更に本発明に含まれるのは、任意の機能的に同等な抗体又はそれらの任意の誘導体若しくは機能部分を含む、抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片を治療的有効量、並びに任意に更なる生物学的活性物質及び/又は医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤を含有する混合物である。
【0079】
特に本発明は、この更なる生物学的活性物質が、アミロイドーシスの投薬治療に使用される化合物、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患に関連した、Aβタンパク質などのアミロイド又はアミロイド様タンパク質に関連した疾患及び障害の群;好ましくは、アルツハイマー病の投薬治療に使用される化合物である、混合物に関する。
【0080】
本発明の別の実施態様において、その他の生物学的活性物質又は化合物は、アミロイドβにより引き起こされたアミロイドーシスの治療に使用されることができるか、又は他の神経学的障害の投薬治療において使用されることができる治療的物質であることもできる。
その他の生物学的活性物質又は化合物は、本発明の抗体と同じ若しくは同様の機構によるか、又はある無関係の作用機序によるか、又は多数の関連した及び/若しくは無関係の作用機序により、その生物学的作用を発揮することができる。
【0081】
一般に、その他の生物学的活性化合物は、神経(neutron)伝達エンハンサー、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム-チャネル遮断薬、生体アミン、ベンゾジアゼピン系精神安定薬、アセチルコリンの合成、貯蔵若しくは放出のエンハンサー、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-A若しくは-B阻害剤、N-メチル-D-アスパラギン酸グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド系抗炎症薬、抗酸化薬、及びセロトニン受容体アンタゴニストを含むことができる。より特定すると、本発明は、酸化的ストレスに対し有効である化合物、抗アポトーシス化合物、金属キレート剤、ピレンゼピン及び代謝産物などのDNA修復阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化因子、β-及びγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、3-シート破壊因子、アミロイドβ除去/枯渇細胞成分に対する誘引物質、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などのピログルタミン酸修飾アミロイドβ3-42を含むN-末端切断型アミロイドβの阻害剤、抗炎症分子、又はタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、及び/若しくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、M1アゴニスト並びに任意のアミロイド若しくはタウ修飾物質及び栄養補助物質を含む他の薬物、並びに栄養補助物質からなる群から選択される少なくともひとつの化合物を、本発明の抗体、及び任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含有する混合物に関する。
【0082】
本発明は更に、前記化合物がコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)である混合物、特に該化合物がタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、ナイアシン及びメマンチンからなる群から選択されるひとつである混合物に関する。
【0083】
更なる実施態様において、本発明の混合物は、ナイアシン又はメマンチンを、本発明の抗体、並びに任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含有することができる。
【0084】
更なる実施態様において、本発明の混合物は、グルタミニルシクラーゼ阻害剤を、本発明の抗体、並びに任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含有することができる。
【0085】
好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2005/075436に、特に31〜40頁に示された実施例1−141に開示されている。実施例1−141の合成は、WO 2005/075436の40〜48頁に示されている。実施例1−141、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2005/075436の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0086】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/055945に、特に46〜155頁に示された実施例1−473に開示されている。実施例1−473の合成は、WO 2008/055945の156〜192頁に示されている。実施例1−473、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/055945の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0087】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/055947に、特に53〜118頁に示された実施例1−345に開示されている。実施例1−345の合成は、WO 2008/055947の119〜133頁に示されている。実施例1−345、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/055947の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0088】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/055950に、特に57〜120頁に示された実施例1−212に開示されている。実施例1−212の合成は、WO 2008/055950の121〜128頁に示されている。実施例1−212、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/055950の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0089】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO2008/065141に、特に56〜59頁に示された実施例1−25に開示されている。実施例1−25の合成は、WO2008/065141の60〜67頁に示されている。実施例1−25、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO2008/065141の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0090】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/110523に、特に55〜59頁に示された実施例1−27に開示されている。実施例1−27の合成は、WO 2008/110523の59〜71頁に示されている。実施例1−27、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/110523の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0091】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128981に、特に62〜65頁に示された実施例1−18に開示されている。実施例1−18の合成は、WO 2008/128981の65〜74頁に示されている。実施例1−18、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128981の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0092】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128982に、特に61〜67頁に示された実施例1−44に開示されている。実施例1−44の合成は、WO 2008/128982の68〜83頁に示されている。実施例1−44、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128982の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0093】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128983に、特に64〜68頁に示された実施例1−30に開示されている。実施例1−30の合成は、WO 2008/128983の68〜80頁に示されている。実施例1−30、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128983の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0094】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128984に、特に63〜69頁に示された実施例1−36に開示されている。実施例1−36の合成は、WO 2008/128984の69〜81頁に示されている。実施例1−36、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128984の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0095】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128985に、特に66〜76頁に示された実施例1−71に開示されている。実施例1−71の合成は、WO 2008/128985の76〜98頁に示されている。実施例1−71、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128985の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0096】
更に好ましいグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、WO 2008/128986に、特に65〜66頁に示された実施例1−7に開示されている。実施例1−7の合成は、WO 2008/128986の66〜73頁に示されている。実施例1−7、それらの合成及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用に関するWO 2008/128986の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0097】
更に別の本発明の実施態様において、本抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、とりわけキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、並びに幻覚、妄想、思考障害(顕著な思考散乱、脱線、脱線思考により顕在化)、及び突飛な行動又は解体した行動、更には無快感症、平坦情動、感情鈍麻、及び引きこもりを含む精神病の陽性及び陰性症状の治療のための「非定型抗精神病薬」、例えばクロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリピプラゾール又はオランザピンなどを、任意に医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と一緒に含有する混合物が提供される。
【0098】
本発明の特定の実施態様において、本発明の及び先に本明細書において説明されたような組成物及び混合物は、前記抗体及び生物学的活性物質を、各々、治療的有効量で含有する。
【0099】
本発明の抗体と組合せた混合物中で好適に使用されることができる他の化合物は、WO2008/065141に開示されており(特に37/38頁参照)、これはPEP阻害剤(43/44頁)、LiCl、ジペプチジルアミノペプチダーゼ阻害剤、好ましくはDP IV又はDP IV-様酵素阻害剤(48/49頁参照);アセチルコリンエステラーゼ(ACE)阻害剤(47頁参照)、PIMTエンハンサー、βセクレターゼ阻害剤(41頁参照)、γセクレターゼ阻害剤(41/42頁参照)、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害剤(42/43頁参照)、TNFα阻害剤、ムスカリンM1受容体アンタゴニスト(46頁参照)、NMDA受容体アンタゴニスト(47/48頁参照)、σ-1受容体阻害剤、ヒスタミンH3アンタゴニスト(43頁参照)、免疫調節薬、免疫抑制薬、又はアンテグレン(ナタリズマブ)、Neurelan(ファムプリジン-SR)、カンパス(アレムツズマブ)、IR 208、NBI 5788/MSP 771(チプリモチド)、パクリタキセル、Anergix.MS(AG 284)、SH636、Differin(CD 271、アダパレン)、BAY 361677(インターロイキン-4)、マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えばBB 76163)、インターフェロン-τ(トロホブラスチン)及びSAIK-MSからなる群から選択される物質;β-アミロイド抗体(44頁参照)、システインプロテアーゼ阻害剤(44頁参照);MCP-1アンタゴニスト(44/45頁参照)、アミロイドタンパク質沈着阻害剤(42頁参照)及びβアミロイド合成阻害剤(42頁参照)を含み、この文献は引用により本明細書中に組み込まれている。
【0100】
別の実施態様において、本発明は、本抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、又はキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、並びに/又は前記生物学的活性物質を治療的有効量含有する混合物に関する。
【0101】
本発明は、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの、神経学的障害;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むその他などを含むが、これらに限定されるものではない疾患などの、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシスの作用を治療若しくは緩和するための医薬品の調製のための、抗体、特に本発明のモノクローナル抗体、とりわけキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、及び/又はそれらの機能部分、並びに/又は該抗体を含有する医薬組成物若しくは混合物の使用に更に関する。
【0102】
同じく、本発明は、本発明の抗体、特にモノクローナル抗体、とりわけキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明の及び先に本明細書において説明されたようなヒト化抗体若しくはそれらの断片、及び/又はそれらの機能部分の調製方法、並びに/又は本発明の抗体、特にモノクローナル抗体、とりわけキメラ抗体若しくはそれらの断片、又は本発明のヒト化抗体若しくはそれらの断片を、医薬として許容し得る形状で製剤することを含む、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性;レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの神経変性疾患;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むその他などを含むが、これらに限定されるものではない疾患などの、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシスの作用を予防、治療若しくは緩和する方法において使用するための、該抗体及び/若しくはそれらの機能部分を、特に治療的有効量で含有する医薬組成物若しくは混合物の調製の方法も含む。
【0103】
更に、本発明は、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性;レヴィー小体型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島パーキンソン認知症複合などの神経学的疾患;更には、アミロイド様タンパク質に基づくか又はそれらに関連した他の疾患、例えば進行性核上麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV-関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、及び黄斑変性を含むその他を含むが、これらに限定されるものではない疾患などの、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシスの作用を予防、治療又は緩和するための方法であって、治療的有効量の本抗体を投与することを含む、抗体及び/若しくはそれらの機能部分、とりわけヒト化抗体及び/若しくはそれらの機能部分、又はそのような抗体及び/若しくはそれらの機能部分を含有する組成物若しくは混合物を、そのような障害に罹患した動物又はヒトへ投与することによる、前記方法を含む。
【0104】
動物、特に哺乳動物又はヒトへ、抗体、特に本発明の及び本明細書において説明された医薬組成物を投与することによる、軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性などの神経変性疾患を含むが、これらに限定されるものではない、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシス;特に、認知記憶能の喪失により特徴づけられる疾患又は状態の治療方法を提供することも、本発明の目的である。
【0105】
特定の実施態様において、本発明は、動物、特に哺乳動物又はヒトへ、抗体、特に本発明の及び本明細書において説明された医薬組成物を投与することによる、記憶障害に罹患した動物、特に哺乳動物又はヒトの、認知記憶能を保持又は増強するが、特に認知記憶能を回復する方法を提供する。
【0106】
本発明の及び本明細書において説明された抗体を使用し、治療的組成物及びそのような組成物を作製する方法、更には軽度認知障害(MCI)、例えば散発性アルツハイマー病(SAD)、又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)などの家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のようなアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群の神経変性などの神経変性疾患を含むが、これらに限定されるものではない、続発性アミロイドーシス及び加齢関連アミロイドーシスを含むアミロイド斑形成に関連した疾患及び障害の群である、アミロイドーシス;特に、認知記憶能の喪失により特徴づけられる疾患又は状態の治療方法を提供することは、本発明の更なる目的である。
【0107】
特に、本発明は、認知記憶能の保持につながる、認知記憶能の喪失により特徴づけられるアミロイド-関連状態に罹患している動物、特に哺乳動物又はヒトの治療に関する。
【実施例】
【0108】
(実施例)
(1.材料及び方法)
(1.1.抗体の産生)
(マウス)
ハイブリドーマ産生のために、8週齢の雌BALB/Cマウス(Charles River社)を使用した。
(骨髄腫細胞株)
ハイブリドーマの作製のために、ドイツ細胞バンク(DSMZ)からの骨髄腫細胞株SP2/0-Ag14を使用した。
(抗原)
ペプチドpGlu-6166(配列pGlu-FRHDSGC、配列番号:65)を使用した。
【0109】
(戦略)
免疫原として、本ペプチドを、ウシサイログロブリン(BTG, SIGMA社)と、3種の異なるリンカーに由来したマレイミド基を介して結合した。N-[e-マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル(EMCS)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LCSMCC)及びN-[b-マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル(BMPS)由来の異なる長さの3種のリンカーを使用した。
作製された抗体の検出のために、同じペプチドを、スクシンイミジル-6-[(b-マレイミド-プロピオンアミド)ヘキサノエート](SMPH)由来のマレイミド基を介して、ウシ血清アルブミン(BSA, SIGMA社)に複合した。
【0110】
(方法)
(免疫化のためのペプチド複合)
複合は、ペプチドのシステイン残基からのSH基を介して、2工程で行った。
1.担体タンパク質のマレイル化(maleoylation)
各リンカー2〜5mg(N-メチルピロリドン(NMP)中50mg/ml)を、担体タンパク質溶液(0.1mM NaHCO3(pH8.0)中10mg/ml)2mlに添加した。この反応混合液を、室温(RT)で1時間インキュベーションした。その後この反応混合液を、50mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl、pH6.8により平衡としたSephadex G-50カラム(1.5×14cm)を用いて脱塩した。
2.マレイル化BTGのペプチドとの結合
前記ペプチド溶液(Aqua bidest中10mg/ml)250μlを、50mMリン酸ナトリウム、250ml NaCl、pH6.8中にマレイル化された担体タンパク質(2.5mg/ml)を含有する溶液2mlと混合し、4℃で2時間、更にRTで4時間インキュベーションした。未反応のマレイミド基を、2-メルカプトエタノールの最大濃度10mMまでの添加、及び4℃で一晩のインキュベーションによりブロックした。得られた複合体を、10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.5に対して4℃で透析した(緩衝液交換3回、MWカットオフ値10,000)。
【0111】
(ELISAのためのペプチド複合)
複合は、ペプチドのシステイン残基からのSH基を介して、2工程で行った。
1.担体タンパク質のマレイル化
SMPHの2mg(N-メチルピロリドン(NMP)中50mg/ml)を、担体タンパク質溶液(BSA、0.1mM NaHCO3(pH8.0)中10mg/ml)2mlに添加した。この反応混合液を、室温(RT)で1時間インキュベーションした。その後この反応混合液を、50mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl、pH6.8により平衡としたSephadex G-50カラム(1.5×14cm)を用いて脱塩した。
2.マレイル化BTGのペプチドとの結合
前記ペプチド溶液(50mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl、pH6.8中10mg/ml)100μlを、50mMリン酸ナトリウム、250ml NaCl、pH6.8中にマレイル化された担体タンパク質(2.5mg/ml)を含有する溶液1mlと混合し、4℃で2時間、更にRTで4時間インキュベーションした。未反応のマレイミド基を、2-メルカプトエタノールの最大濃度10mMまでの添加、及び4℃で一晩のインキュベーションによりブロックした。得られた複合体を、10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.5に対して4℃で透析した(緩衝液交換3回、MWカットオフ値10,000)。
【0112】
(免疫化)
5匹のマウスを、腹腔内経路により39日間免疫化した。免疫化に関して、同等部の抗原溶液(同等部の3種の異なるペプチド-BTG-複合体からなる)及び完全又は不完全フロイントアジュバントからなるからなる油中水型エマルションを使用した。
【0113】
(融合)
3匹の免疫化したマウスを、CO2インキュベーションにより屠殺した。脾臓を摘出し、無菌条件下でホモジナイズした。脾細胞及び骨髄腫SP2/0細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、SIGMA社)において数回洗浄し、かつポリエチレングリコール3350(1ml、50%(w/v))を用い、脾細胞:SP2/0細胞の比2,3:1で融合した。融合したハイブリドーマの更なる操作は、標準的方法に従い行った。
【0114】
(ELISA)
IgGに対するELISAを使用し、細胞培養液上清をスクリーニングした。96-ウェルポリスチロール製マイクロタイタープレート(Greiner社、カタログ番号655061)において試験を行った。これらのプレートを、BSA-pGlu-6166ペプチドによりコーティングした。未希釈の細胞培養液上清100μlを、各ウェルに添加し、かつRTで1時間インキュベーションした。SP2/0細胞からの上清を、陰性対照として使用した。脾細胞からの上清を、陽性対照として使用した。
陽性ウェルを、アルカリホスファターゼと複合されたヤギ-抗-マウスIgGを用い検出した。光学密度(OD)を、Dynex Opsys MRマイクロプレートリーダーにおいて405nmで測定した。
【0115】
(安定した抗体産生ハイブリドーマ細胞の選択)
陽性ウェルからの細胞を、24-ウェルプレートへ移し、数日間培養した。細胞を再度移し、ELISAにおいてBSA-pGlu6199結合及び交差反応性について試験した。陽性ウェルを、ハイブリドーマ細胞株の凍結保存(cryo-conservation)に使用した。
【0116】
(限界希釈によるクローニング)
抗体産生細胞を非産生細胞から分離し、かつ選択された細胞がモノクローナルであることを確実にするために、2回の連続するクローニング工程を行った。クローニング工程は両方共、限定希釈法に従い行った。
(凍結保存)
選択されたハイブリドーマを、DMSO及び標準的方法を用いて凍結保存した。
【0117】
(1.2. ELISAアッセイ)
AβN3pE-40の捕獲は、TGCからのhAβ(x-40)ELISA(HS)(The GENETICS社;スイス)を用い、基本的には製造業者の指示に従い行った。
AβN3pE(pGlu-6166)に関するビオチン化された検出用抗体が作製された。指示された場合、IBL社のHRP-複合したAβN3pE抗体を、陽性対照として使用した(IBL ELISAヒトアミロイドβ(N3pE)アッセイキットと一緒の場合のみ入手可能)。対応するAβN3pE-40ペプチド(ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中の50μgアリコートは、-80℃で貯蔵した)を合成した。使用直前に、HFIPを蒸発させ、このペプチドを、100mMトリス/HCl(pH10.4)により1μg/μlに希釈した。このストック溶液を、TGC抗体希釈液により更に希釈した。引き続きの捕獲及び検出を、製造業者の指示に従い行った。
【0118】
(1.3. PepSpot(商標)解析)
AβN3pE抗体及び細胞培養液上清の特異性及び生物学的完全性を、JPT Peptide Technologies社(Volmerstrasse 5 (UTZ), 12489 ベルリン、独国)のPepSpot(商標)技術を用いて決定した。
対応するPepSpot(商標)メンブレンは、JPT社で調製した。この方法の原理は、先にKramerらの論文(Cell, 91:799-809 (1997))により紹介されかつ説明されている。
【0119】
解析のために、メンブレンを、TBST-M(10mMトリス-HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.005%Tween20+5%スキムミルク)により室温で2時間、穏やかに振盪しながらブロックした。メンブレンを、等量のTBST-M中に希釈した個々の細胞培養液上清と共に、揺動するプラットフォーム上で、4℃で一晩インキュベーションした。アルカリホスファターゼと複合された抗-マウス二次抗体を、標準的手法に従うシグナル検出のために使用した。
【0120】
(1.4.ドットブロット解析)
簡単なドットブロットプロトコールを、各未変性ペプチドに対するAβN3pE抗体及び細胞培養液上清の感度に関する情報を得るために遂行した。その目的のために、漸減濃度(1000ng−8ng)のAβN3pE-40ペプチドを、ニトロセルロースメンブレン小片上にスポットし、PepSpot(商標)メンブレンに関する引き続きの実験手順を行った。
【0121】
(1.5. SDS PAGE)
12%SDSポリアクリルアミドゲルを、標準プロトコールに従い成型した。細胞培養液上清15μl及びビオチン化された抗体10μgを、12%SDSポリアクリルアミドゲル上で分離した。電気泳動を、100V定圧で2時間実行した。
【0122】
(1.6. BIACORE解析)
AβN3pE-40ペプチド(陽性対照)及びAβN3E-40ペプチド(陰性対照)を、Biacore CM5チップ上に結合した。修飾されなかったチップを使用し、ブランク値を決定した。TGC希釈液中に20μg/ml〜1μg/mlに希釈されたビオチン化された抗体の会合及び解離をモニタリングし、各KD値の引き続きの決定を可能にした。この方法で、個々の細胞培養液上清の結合特性も決定した。
【0123】
(1.6.1. AβN3pE特異性抗体クローン6-1-6及び24-2-3の親和性)
精製された抗体クローン6-1-6を、HBS-EP緩衝液(Biacore)中に、100、50、30、20、15、10、7、4、2、1nMまで順に希釈した。その上にAβpE3-40が固定されたCM5-チップを備えたBiacore 3000を用い、その親和性を決定した。このシステムは、30μl/分で試行した。測定されたバルク作用及びチップ表面への非特異的結合を、そこにAβpE3-40が固定されたフローセル4及び空のフローセル3のシグナルの減算により補正した。会合(10分間)は、各濃度300μlの注入により得た。解離は、10分間にわたり観察した。残存する抗体分子を、0.1M HClの5μlの注入により除去した。各抗体濃度に関して、会合及び解離を記録した。会合速度及び解離速度及び解離定数の決定は、「二価アナライト(Bivalent analyte)」モデルを使用し、全ての記録された抗体濃度に関する会合相及び解離相の同時のグローバルフィッティング(global simultaneously fit)により行った。
【0124】
(1.7.抗体可変領域の配列決定)
ハイブリドーマ細胞の培養:
ハイブリドーマ細胞を、15%FBS、1%MEM-NEA(非必須アミノ酸、Gibco社)、50μg/mlゲンタマイシン(Gibco社)及び50μMβ-メルカプトエタノールを添加した、D-MEM(+L-グルタミン、+Na-ピルビン酸、4.5g/lグルコース、Gibco社)上で、37℃及び5%CO2で増殖した。細胞密度に応じて、3〜4日後に継代培養を行った。細胞を、濃度0.5×106個細胞/mlで播種し、細胞密度2〜5×106個細胞/mlで分割を行った。
【0125】
cDNA合成及び逆転写:
総RNAを、NucleospinRNA単離キット(Macherey-Nagel社)のマニュアルに従い、2×106個細胞から単離した。100ng RNAを、オリゴ(dT)15プライマー(Promega社)及びSuperscript III逆転写酵素(Invitrogen社)を使用することにより、cDNA合成に適用した。
【0126】
重鎖及び軽鎖の可変領域のPCR-増幅:
重鎖可変領域は、プライマーMHV1-12と組み合わせたプライマーMHCG1(クローン5-5-6及び6-1-6の場合)並びにMHCG2b(クローン17-4-3及び24-2-3)と共に、Phusion(商標)高忠実度DNAポリメラーゼ(NEW ENGLAND BioLabs社)を使用することにより、鋳型cDNAから増幅した。軽鎖可変領域の増幅に関して、プライマーMKV1-MKV11と組合せたプライマーMKCを使用した。プライマー配列は、表1に示している。
【0127】
pJET1.2におけるPCR産物のクローニング:
PCRにより増幅された重鎖及び軽鎖可変領域を、pJETl.2/平滑端ベクターへClone JET(商標)PCRクローニングキット(Fermentas社)のプロトコールに従いクローニングした。配列決定は、pJET1.2配列決定プライマーにより行った。
【0128】
【表1】
【0129】
(1.8.抗体クローン6-1-6のN3pE ELISAへの適用)
96-ウェルマキシソーブプレート(Nunc社)を、D-PBS中に希釈した2μg/ml抗-Aβ抗体4G8の100μl/ウェルを4℃で一晩インキュベーションすることにより、捕獲抗体でコーティングした。これらのプレート(plated)を密封した。そのコーティング溶液を除去し、かつプレートの表面を、200μl/ウェルのPIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20非含有)により、室温で2時間ブロックした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。AβpE3-40標準ペプチドを、PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中で200、100、50、25、12.5、6.25、3.125pg/mlへ順に希釈した。各濃度100μl及び希釈緩衝液(ブランク)100μlを、プレート上にピペッティングした。このプレートを密封し、かつ4℃で2時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中に溶解したAβN3pE特異性抗体クローン6-1-6の1μg/ml及びストレプトアビジン-HRP複合体(Sigma社)2μg/mlを含有する検出用抗体-酵素複合溶液100μlを、各ウェルにピペッティングした。このプレートを密封し、4℃で1時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。各ウェル中に、SureBlue基質溶液(KPL)100μlをピペッティングし、かつこのプレートを暗所において、室温で30分間インキュベーションした。この反応を、1M H2SO4の100μl/ウェルの添加により停止した。吸光度を、TECAN Sunriseにより450nmで測定し、540nmの吸光度により補正した。
【0130】
(1.9. ELISA及び表面プラズモン共鳴(SPR)により分析された交差反応性の研究)
ELISA:
96-ウェルマキシソーブプレート(Nunc社)を、D-PBS中に希釈した2μg/ml抗-Aβ抗体4G8の100μl/ウェルを4℃で一晩インキュベーションすることにより、捕獲抗体でコーティングした。これらのプレート(plated)を密封した。そのコーティング溶液を除去し、かつプレートの表面を、200μl/ウェルのPIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20非含有)により、室温で2時間ブロックした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。AβpE3-40標準ペプチド及び他のAβ-ペプチド(2-40、3-40、4-40、1-42、3-42及びpE11-40)を、PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中で800、400、200、100、50、25、12.5へ順に希釈した。各濃度100μl及び希釈緩衝液(ブランク)100μlを、プレート上にピペッティングした。このプレートを密封し、かつ4℃で2時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中に溶解したAβN3pE特異性抗体クローン6-1-6の1μg/ml及びストレプトアビジン-HRP複合体(Sigma社)2μg/mlを含有する検出用抗体-酵素複合溶液100μlを、各ウェルにピペッティングした。このプレートを密封し、4℃で1時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。各ウェル中に、SureBlue基質溶液(KPL)100μlをピペッティングし、かつこのプレートを暗所において、室温で30分間インキュベーションした。この反応を、1M H2SO4の100μl/ウェルの添加により停止した。吸光度を、TECAN Sunriseにより450nmで測定し、540nmの吸光度により補正した。
【0131】
SPR:
様々なAβ種に加え、ヒト体において生じる他のpGlu-ペプチドへの交差反応性も決定した。これは、表面プラズモン共鳴により行った。以下のペプチド又はそれらのN-末端領域を、CM5-チップの表面に固定した:MCP1、MCP2、大ガストリン、ゴナドリベリン、ニューロテンシン、オレキシンA、フィブロネクチン、コラーゲン1及びTRH。陽性対照として、同じくAβpE3-40への結合も分析した。N3pE抗体クローン6-1-6及び24-2-3を、HBS-EP(Biacore社)中に25μg/mlまで希釈した。この結合は、その上に各ペプチド(フローセル2、3及び4)が固定された数個のCM5-チップを備えたBiacore 3000を用い、観察した。このシステムは、20μl/分で試行した。測定されたバルク作用及びチップ表面への非特異的結合を、そこに被験ペプチドが固定されたフローセル2、3及び4並びに空のフローセル1のシグナルの減算により補正した。会合(9分間)は、抗体クローン6-1-6及び24-2-3の各々180μlの注入により得た。解離は、9分間にわたり観察した。残存する抗体分子を、0.1M HClの5μlの注入により除去した。この抗体の様々なペプチドとの各相互作用に関して、会合及び解離を記録した。交差反応性は、最終時の速度及びシグナルに関する会合相の評価により決定した。全てのpGlu-ペプチドの値は、AβpE3-40に関するシグナルと比較した。
【0132】
(1.10.脳分析に関するN3pE ELISAの最適化及びバリデーション)
本発明者らが開発したN3pE ELISAは、トランスジェニックマウスの脳内のAβpE3-42濃度の分析に使用されるべきである。概して脳半球及び脳幹は、AβpE3-42含量に関して、個別に分析された。マウス脳を、セラミックビーズを使用するPrecelly(Peqlab社)ホモジナイザー内で、プロテアーゼインヒビターを含む2%SDS溶液500μl中でホモジナイズした。この浮遊液を、ビーズからピペットにより取り出し、遠心管に移した。ビーズは、プロテアーゼインヒビターを含む2%SDS溶液250μlで再度洗浄し、かつ溶液を前記遠心管に移した。SDS脳浮遊液750μlを、粉砕氷上で20秒間音波処理した。この試料を、75000×g、4℃で1時間遠心した。その後、上清を取り出し、アリコートとし、かつELISA分析まで-80℃で貯蔵した。残存するSDS不溶性ペレットを、70%ギ酸150μlと混合し、粉砕氷上で20秒間音波処理した。音波処理の直後に、この溶液を、旧方式である1Mトリス2850μlにより中和するか、又はEIA緩衝液(PBS+10mg/ml BSA+0.05%Tween-20)2850μl+3.5Mトリス860μlにより中和し、これは新方式を表している。これらのギ酸画分試料を、ELISAまで-80℃で貯蔵した。
【0133】
N3pE ELISAを、下記のプロトコールにより行った:
96-ウェルマキシソーブプレート(Nunc社)を、D-PBS中に希釈した2μg/ml抗-Aβ抗体4G8の100μl/ウェルを4℃で一晩インキュベーションすることにより、捕獲抗体でコーティングした。これらのプレート(plated)を密封した。そのコーティング溶液を除去し、かつプレートの表面を、200μl/ウェルのPIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20非含有)により、室温で2時間ブロックした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。AβpE3-42標準ペプチドを、PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)(旧方式)又はEIA緩衝液(新方式)中で1029.2、514.6、257.3、128.65、64.32、31.16、16.08pg/mlへ順に希釈した。各濃度100μl及び希釈緩衝液(ブランク)100μlを、プレート上にピペッティングした。前述のSDS試料を解凍し、各々PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)(旧方式)又はEIA緩衝液(新方式)中で1:25及び1:100に希釈し、かつELISAプレート上にピペッティングした。前述のギ酸試料(旧方式:ギ酸/トリス;新方式:ギ酸/EIA緩衝液/トリス)を解凍し、かつ希釈せずELISAプレート上にピペッティングした。このプレートを密封し、かつ4℃で2時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。PIERCEタンパク質-非含有ELISA-ブロッカー(Tween-20含有)中に溶解したAβN3pE特異性抗体クローン6-1-6の1μg/ml及びストレプトアビジン-HRP複合体(Sigma社)2μg/mlを含有する検出用抗体-酵素複合溶液100μlを、各ウェルにピペッティングした。このプレートを密封し、4℃で1時間インキュベーションした。その後このプレートを、TBS+0.05%(v/v)Tween-20により6回洗浄した。残存する洗浄液を、プレートを軽く叩くことにより除去した。各ウェル中に、SureBlue基質溶液(KPL)100μlをピペッティングし、かつこのプレートを暗所において、室温で30分間インキュベーションした。この反応を、1M H2SO4の100μl/ウェルの添加により停止した。吸光度を、TECAN Sunriseにより450nmで測定し、540nmの吸光度により補正した。
【0134】
(1.11.免疫組織化学へのN3pE抗体クローンの適用)
ヒト脳(皮質)由来のホルマリン-固定切片及びパラフィン-包埋切片を、下記のように処理した:
1.切片(スライド上に固定された)の脱パラフィン化及び再水和:
a.スライドのヒストクリア又はキシレン中で3分間のインキュベーション、
b.クリーニング液の除去、
c.スライドのヒストクリア又はキシレン中で3分間の再度のインキュベーション、
d.スライドのヒストクリア又はキシレンの100%エタノールとの1:1溶液中で3分間のインキュベーション、
e.スライドの100%エタノール中で3分間のインキュベーション、溶液の除去、
f.スライドの100%エタノール中で3分間の再度のインキュベーション、
g.スライドの95%エタノール中で3分間のインキュベーション、
h.スライドの70%エタノール中で3分間のインキュベーション、
i.スライドの50%エタノール中で3分間のインキュベーション、
j.スライドの蒸留水中で3分間のインキュベーション。
【0135】
2.内在性ペルオキシダーゼ活性のクエンチング:
スライドのメタノール99ml+30%過酸化水素1mlによる、室温で10分間のインキュベーション、
3.スライドの水による洗浄:2×5分間
4.個々のスライド中の水の除去、及び切片の乾燥を防ぐための、加湿チャンバー内のスライドラック上へのスライドの配置。ドラフト下室温で10分間の88%ギ酸による、切片の被覆。水中で数回のすすぎ、及び水を満たした染色皿内で10分間の振盪、
5. 10%ウマ血清中での室温で20分間のブロッキング、
6.ブロッキング溶液の振り払い(又は吸引)、及び一次抗体(N3pE抗体クローン6又は24)の4℃で一晩の適用、
7. 1枚のスライドから別のスライドへのドラッキングを避けるための、TBSによる10分間の個別のスライド洗浄、
8.ビオチン化された二次抗体(Vector Laboratories社のヤギ抗-マウス抗体)の添加:TBS 9ml、ヤギ血清1ml、二次抗体45μl。室温で30分間のインキュベーション、
9. 1枚のスライドから別のスライドへのドラッキングを避けるための、TBSによる10分間の個別のスライド洗浄、
10. ABC-溶液(TBS 10ml、ウマ血清100μl、成分A 90μl、成分B 90μl)の添加。室温で30分間のインキュベーション、
11.スライドの50mMトリスによる洗浄:2×10分間
12.呈色反応:切片のDAB溶液(50mMトリス100ml中のSigma社のDAB 20mg、濾過し、33%過酸化水素33μlの添加)と一緒のインキュベーション。顕微鏡を使用する、呈色反応の観察。この反応生成物は茶色を呈した。水が入った染色皿へのスライドの投入による反応の停止、
13.スライドの水による10分間の洗浄、
14.ヘマトキシリンによる対比染色、水による洗浄、
15.脱水及びクリーニング:逆順で工程1を辿る(例えば、水、エタノールから100%ヒストクリアへ)、
16. Permount付きカバーガラス(Fisher Scientific社)。空気中でのスライドの乾燥。カミソリの刃及びエタノールによるスライドのクリーニング。
【0136】
(2.結果)
(2.1.抗体の産生)
pGlu-6166-BSAペプチドに対する抗体を安定して産生する6種のクローンを単離した:クローン1-8-12、5-5-6、6-1-6、12-1-8、17-4-3及び24-2-3。これらのクローンを更なる特徴決定に供した。
【0137】
(2.2.必要な抗体濃度の決定)
ELISAアッセイにおけるシグナル強度は、分析物/Aβ変種の濃度に相関されるのみではなく、配置された抗体の濃度にも強力に左右される。Aβ変種は、血清試料中に低濃度でのみ存在するので、対応するAβ変種の低濃度を検出することができる抗体濃度を決定することが必要である。市販のAβELISAキットは、低いpg範囲において、Aβに対する特定された検出限界を有する。標準曲線において、最高濃度は通常500pg/mlである。しかし一般的文献から引き出せる更なる情報では、抗体1μg/mlがデフォルトとして使用されるために、配置された抗体濃度に関する一般的情報は、典型的にはデータシート/指示マニュアル中に欠けている。
【0138】
最初の一連の実験において、対応するpGlu-6166ビオチン-複合された抗体12-1により、AβN3pE-40 500pg/mlを検出することは不可能であった。実際に、1μg/ml抗体によりシグナルを得るためには、比較的高いAβN3pE濃度(10ng/ml)が必要であった(図IA:中央のバー参照)。このシグナルの強度は、抗体濃度の10μg/mlへの増加により、顕著に増強された(図IA:左側バー参照)。抗体20μg/mlまで、シグナル強度は更に上昇されることができる(図IB参照)。この濃度を超えると、シグナル強度の更なる増加は達成されない。従って抗体20μg/mlを使用し、pGlu-6166抗体の検出限界を決定した。
【0139】
(2.3.ドットブロット解析)
AβN3pE-x抗体pGlu-6166をスクリーニングプロセスにおいて選択したが、その理由は、その当初の細胞クローン(12-1-8と称される)が、免疫化のために採取した該ペプチドに対する強力な結合及び非常に低い交差反応性を示したからである(表2参照)。
【0140】
【表2】
【0141】
完全長未変性AβN3pE-40ペプチドに対処するスクリーニング工程は、これまで含まれていない。従って入手可能なpGlu6166ハイブリドーマ細胞クローンのプールを、未変性AβN3pE-40ペプチドに対し比較的高い親和性を示すことができる抗体を発現しているクローンに関してスクリーニングした。
【0142】
図2に認められるように、実際に未変性の完全長AβN3pE-40ペプチドに対し比較的高い感度を示す細胞クローンを同定することができる。pGlu-6166抗体クローン12-1は、ペプチド1μgのみを検出できるのに対し、クローン6-1-6及び24-2-3は、ペプチド8ngと少ないものもシグナルを生じた。従ってクローン6-1-6及び24-2-3は、125倍より感度が高い。これらのクローンにより、対応するELISAにおけるAβN3pE-40ペプチドの検出限界8pg/mlを達成することができる。
【0143】
(2.4. PepSpot解析)
次に特異性を、ビオチン化されたAβN3pE-x抗体pGlu-6166と、ハイブリドーマ細胞クローンとで比較するために、PepSpot解析によりチェックした。表3に、PepSpotメンブレン上のスポットに相当する全てのペプチドを列記している。図3において認められるように、pGlu-6166クローン6-1-6及び24-2-3は、pGlu-6166抗体クローン12-1よりもより多くの交差シグナルを生じなかった。調べた全てのクローンは、主としてスポット番号6−特異的AβN3pE-xスポット(pEFRHD...、すなわち配列番号:12)、それに続くスポット番号5(EFRHD...配列番号:11)及び7(FRHD... 配列番号:13)を認めた。かすかなシグナルも、スポット番号4(AEFRHD... 配列番号:10)において得られた。
【0144】
【表3】
表3のpEは、pGlu、ピログルタミン酸を意味する。
表3のiDは、イソAsp、イソアスパラギン酸を意味する。
【0145】
(2.5. SDS-PAGE解析)
Aβ-N3pE抗体及びハイブリドーマ細胞培養液上清の生物学的完全性を、SDS-PAGE解析によりおおまかに決定した(詳細については前掲の「材料及び方法」を参照されたい)。
図4に認められるように、ゲルに装加した全ての試料は、不明瞭部分(smear)のない尖鋭なバンドを明らかにし、このことはpGlu-6166 12-1抗体及びハイブリドーマ細胞クローン上清の完全性を示している。
【0146】
(2.6. BIACORE解析)
ドットブロット解析により、ハイブリドーマ細胞クローン上清のAβN3pE-40ペプチドに対する感度を、ビオチン化されたpGlu-6166抗体と比較し、有意差を判断した。しかしこの方法では、エンドポイントの結果のみをモニタリングした。他方Biacore解析は、所定の抗体の結合過程の時間に関する(timewise)解明を可能にする。pGlu-6166抗体12-1の不十分な結合は、AβN3pE-40ペプチドへの低い会合の結果であるかどうかをチェックするために、Biacore解析を、前掲の「材料及び方法」に説明されたように行った。
【0147】
漸増濃度のpGlu-6166抗体の結合過程のモニタリングは、30nMのKD値の算出を可能にした。ハイブリドーマ細胞クローン上清12-1の細胞クローン上清6-1-6との比較は、結合の特徴の特筆すべき差異を明らかにした。クローン6-1-6の会合は、クローン12-1で認められるものよりも、およそ5倍より高かった。しかし最も顕著であるのは、解離挙動の差異であった。クローン6-1-6はAβN3pE-40ペプチドからほとんど解離しないのに対し、12-1は、数分以内に容易に洗浄除去される。従って、クローン12-1の不十分な結合は、観察された「オフ-レート(off-rate)」の結果である可能性が極めて高い。この仮定は、ドットブロット解析において特に有利な結果をもたらすクローン24-3-2は、AβN3pE-40ペプチドへの非常に遅い会合を示すが、クローン12-1とは対照的に、注目すべき「オフ-レート」はないという知見により更に裏付けられる(同じく図5を参照されたい)。
【0148】
(2.6.1. AβN3pE特異性抗体クローン6-1-6及び24-2-3の親和性)
N3pE抗体クローン6-1-6に関して、会合速度、解離速度、及び解離定数を、図6に示された全てのセンサグラムのグローバルフィッティングにより算出した。
会合速度は1.67e5 M-1s-1、解離速度は2.63e-4 s-1、及び解離定数は1.57nMと算出した。
N3pE抗体クローン24-2-3に関して、会合速度、解離速度及び解離定数は、図7に示された全てのセンサグラムのグローバルフィッティングにより算出した。
会合速度は3.25e3 M-1s-1、解離速度は3.29e-4 s-1、及び解離定数は101nMと算出した。
【0149】
(2.7.抗体可変領域の配列決定)
下記配列を同定した:
(2.7.1クローン5-5-6)
【化3】
【0150】
(2.7.2クローン6-1-6)
【化4】
【0151】
(2.7.3クローン17-4-3)
【化5】
【0152】
(2.7.4クローン24-2-3)
【化6】
【0153】
(2.8.抗体クローン6-1-6のN3pE ELISAへの適用)
最終のN3pE ELISAプロトコールを、定量限界(LOQ)及びシグナル-対-ノイズ比(S/N)に関して試験した。このELISAの標準曲線は、図8に示している。この標準曲線の形状は、特に低濃度範囲について非常に良好であり、これは吸光度にほぼ直線的依存関係と思われる。この標準曲線を基に、S/N=1.3で、LOQは3.125pg/mlと決定した。
【0154】
(2.9 ELISA及びSPRにより分析された交差反応性の研究)
ELISA:
他のAβ変種に対する交差反応性を、本発明者らのN3pE-ELISAを用い決定した。生データを、表4に示している。
【0155】
【表4】
【0156】
AβpE3-40に関してのみ、吸光度の濃度への依存関係が認められた。Aβ3-40以外の、全ての試験したAβ変種は、1%未満の交差反応性を示した。800pg/mlに関するシグナル(ブランクにより補正)は、AβpE3-40に関するシグナルの約2.7%であった。これは、両ペプチドのN-末端は、AβpE3-40の場合環化されている最初の1個を除いて同じアミノ酸を有することを考慮すると、非常に良い値である。全般的に、ELISAに一般的に使用されるAβN3pE抗体クローン6は、3位でpGluで始まるAβ-ペプチドのN-末端に関して非常に高い特異性がある。
【0157】
SPR:
クローン6-1-6及び24-2-3の他の非-AβpGluペプチドに対する交差反応性を、表面プラズモン共鳴により解析した。典型的結合センサグラムを示すAβpE3-40の代わりに試験した他のpGluペプチドは全て、クローン6-1-6及び24-2-3と、各々、相互作用をほぼ示さず、これも図9に示している(データはクローン6-1-6についてのみ示している)。pGluペプチドのセンサグラムを、AβpE3-40のセンサグラムと比較した。概算された交差反応性は、全て1%未満であった。全ての解析されたペプチドのまとめを、表5に示している。
【0158】
【表5】
【0159】
全ての実験は、N3pE抗体クローン6-1-6及び24-2-3は、AβpE3-xのN-末端エピトープに対し特異的であるという事実を確認した。他のpGlu N-末端はいずれも、N-末端pE残基を持たない他のAβペプチド変種を認識しなかった。
【0160】
(2.10.脳分析に関するN3pE ELISAの最適化及びバリデーション)
マウス脳幹中のAβpE3-42濃度を、使用した方法に応じて分析した。これらの試料は、QCによりAβpE3-42に環化されている、ヒトAβQ3-42を脳内に過剰発現しているトランスジェニックマウス(tg)に由来した。ヘテロ接合型トランスジェニックマウス(tg het)及びホモ接合型トランスジェニックマウス(tg hom)及び野生型非-トランスジェニックマウス(wt)から得た試料を比較した。試料作製に使用したマウスは、WO2009034158に開示されたように作出された。
【0161】
全ての更なる実験のために、試料及び標準を、EIA緩衝液中に希釈した。次工程において、ギ酸画分試料を分析するための中和方法を、最適化し、すなわち中和はN3pE ELISAであった。得られた及びここで開発されたN3pE ELISAは良好に働き、これはtg homマウス脳内で有意なレベルのヒトAβpE3-42を検出し、tg hetマウス脳内で有意に低いレベルのヒトAβpE3-42を検出し、かつwtマウス脳内でヒトAβpE3-42を検出しなかった(図10参照)。本発明のELISAは、高シグナル、結果的に非常に許容し得るLOQをもたらし、従ってギ酸試料、特にギ酸脳試料の分析に適している。
【0162】
(2.11.免疫組織化学のためのN3pE抗体クローンの適用)
本発明のN3pE抗体により、AβpE3-xを、散発性アルツハイマー病(SAD)及び家族性アルツハイマー病(FAD)の後期の患者、すなわちプレセニリン1(PS1)遺伝子に変異を持つ患者の脳切片において染色した。染色した脳切片を、図11に示す。図11は、本発明のN3pE抗体は、免疫組織化学に適していることを示している。この抗体は、SAD及びFAD患者の脳内でpGlu-Aβを特異的に検出する。N3pE抗体は、これらの画像においてバックグラウンドシグナルを示さず、このことは、ELISA及びSPR解析により示された特異的結合を証明している。
【0163】
(3.寄託)
AβN3pE-xを特異的に認識するモノクローナル抗体が作製された。現在、モノクローナル抗体発現する対応するハイブリドーマ細胞株5-5-6、6-1-6、17-4-3、及び24-2-3は全て、「ブダペスト条約(Budapest Treaty)」に基づき寄託されており、かつドイツ細胞バンク(Deutsche Stammsammlung von Mikoorganismen und Zellkulturen(DSMZ))(ブラウンシュヴァイク, DE)において、かつ各々寄託日2008年6月17日付けの、各々下記寄託番号で入手可能である:
(クローン5-5-6):DSM ACC2923
(クローン6-1-6):DSM ACC2924
(クローン17-4-3):DSM ACC2925
(クローン24-2-3):DSM ACC2926。
【0164】
これらの抗体のそれらの各標的配列に対する特異性は、確認することができる。AβN3pE-xに関して、高親和性抗体クローンは、低いpg範囲で、期待される検出限界を持つELISA設定において強力なシグナルを生じることを確定することができる。
【0165】
(4.要約)
本発明の主目的は、生物学的試料中のAβ変種の定量測定を可能にする高感度かつ堅牢な検出技術を確立することであった。
好ましくは、ELISAベースの技術を追跡した。この作業はAβN3pE ELISAから始め、その理由はこのAβ変種に関しては好適なELISAシステムが既に市販されているからである(IBL社)。このシステムは、参照及び内部定量対照として使用した。
【0166】
選択されたELISAアッセイ設定におけるpGlu-6166抗体の適用可能性を調べた。明らかに測定可能なシグナルを得るためには、高い抗体濃度が配置されることが必要であった(20μg/ml)。高親和性のAβN3pE-x抗体クローンを確定することができた。低いpg範囲(3〜8pg/ml)での検出限界を、これらのクローンで達成することができる。
【表6】
【図1A−B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイド(A)ペプチド、又はそれらの変種へ、好ましくは高親和性で、結合することを特徴とする、抗体。
【請求項2】
前記高親和性が、解離定数(KD)値10-7M以上を意味する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:49、53、57及び61から選択されたヌクレオチド配列、又は配列番号:50、54、58及び62から選択されたアミノ酸配列を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:51、55、59及び63から選択されるヌクレオチド配列、又は配列番号:52、56、60及び64から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:49のヌクレオチド配列又は配列番号:50のアミノ酸配列を有し、ここで該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:51のヌクレオチド配列、又は配列番号:52のアミノ酸配列を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:53のヌクレオチド配列又は配列番号:54のアミノ酸配列を有し、ここで該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:55のヌクレオチド配列、又は配列番号:56のアミノ酸配列を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:57のヌクレオチド配列又は配列番号:58のアミノ酸配列を有し、ここで該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:59のヌクレオチド配列、又は配列番号:60のアミノ酸配列を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:61のヌクレオチド配列又は配列番号:62のアミノ酸配列を有し、ここで該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:63のヌクレオチド配列、又は配列番号:64のアミノ酸配列を有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が:
Aβ 5-5-6 (寄託番号DSM ACC 2923)
Aβ 6-1-6 (寄託番号DSM ACC 2924)
Aβ 17-4-3 (寄託番号DSM ACC 2925)
Aβ 24-2-3 (寄託番号DSM ACC 2926)
又はそれらの機能的変種の群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が、Aβ 6-1-6 (寄託番号DSM ACC 2924)である、請求項1〜10のいずれか1項記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体が、Aβ 24-2-3(寄託番号DSM ACC 2926)である、請求項1〜11のいずれか1項記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が、ヒト化抗体又はキメラ抗体、又はその高親和性を保持している抗体断片である、請求項1〜12のいずれか1項記載の抗体。
【請求項14】
Aβペプチド又はそれらの変種の検出において使用するための、請求項1〜13のいずれか1項記載の抗体。
【請求項15】
前記変種が:
pGlu-Aβ3-38
pGlu-Aβ3-40
pGlu-Aβ3-42、及び
pGlu-Aβ3-x変種:の群から選択され、ここでxは、10〜42;好ましくは18〜42、より好ましくは30〜42の間の整数である、請求項14記載の抗体。
【請求項16】
ヒトである、請求項1〜15のいずれか1項記載の抗体。
【請求項17】
前記高親和性を保持している、ダイアボディ又は単鎖抗体である、請求項1〜16のいずれか1項記載の抗体。
【請求項18】
請求項15記載の抗体により結合されたエピトープへ結合する、請求項1〜17のいずれか1項記載の抗体。
【請求項19】
請求項15記載の抗体の相補性決定領域を有する、請求項1〜18のいずれか1項記載の抗体。
【請求項20】
標識されている、請求項1〜19のいずれか1項記載の抗体。
【請求項21】
固相上に固定されている、請求項1〜20のいずれか1項記載の抗体。
【請求項22】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2923、DSM ACC 2924、DSM ACC 2925、DSM ACC 2926のいずれか1つから入手可能である抗体。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項記載の抗体を含有する組成物。
【請求項24】
アミロイドーシスの治療、予防又は遅延のための、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
前記アミロイドーシスが、軽度認知障害、アルツハイマー病及びダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患である、請求項23又は24記載の組成物。
【請求項26】
前記アミロイドーシスが、散発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー型認知症である、請求項23又は24記載の組成物。
【請求項27】
前記家族性アルツハイマー型認知症が、家族性英国型認知症又は家族性デンマーク型認知症である、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2923。
【請求項29】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2924。
【請求項30】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2925。
【請求項31】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2926。
【請求項32】
診断方法又は治療方法における、請求項1〜22のいずれか1項記載の抗体、又は請求項23〜27のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項33】
アミロイド-関連疾患又は状態の診断のための、請求項32記載の使用。
【請求項34】
前記アミロイドーシスが、軽度認知障害、アルツハイマー病及びダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患である、請求項33記載の使用。
【請求項35】
前記アミロイドーシスが、散発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー型認知症である、請求項33記載の使用。
【請求項36】
前記家族性アルツハイマー型認知症が、家族性英国型認知症又は家族性デンマーク型認知症である、請求項35記載の使用。
【請求項37】
請求項1〜22のいずれか1項記載の抗体を、該疾患又は状態に罹患していることが疑われる対象からの試料と接触する工程、並びに該抗体の該試料由来のpGlu-アミロイドタンパク質、好ましくはpGlu-Aβペプチドへの結合を検出する工程を含む、アミロイド-関連疾患又は状態、特にアルツハイマー病の診断のための、インビトロ診断方法。
【請求項38】
請求項1〜22のいずれか1項記載の抗体、及び使用説明書、並びに任意に更なる生物学的活性物質を備える、診断用キット。
【請求項39】
前記更なる生物学的物質が、グルタミニルシクラーゼの阻害剤である、請求項32記載の診断用キット。
【請求項40】
配列番号:23〜48からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド。
【請求項1】
アミロイド(A)ペプチド、又はそれらの変種へ、好ましくは高親和性で、結合することを特徴とする、抗体。
【請求項2】
前記高親和性が、解離定数(KD)値10-7M以上を意味する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:49、53、57及び61から選択されたヌクレオチド配列、又は配列番号:50、54、58及び62から選択されたアミノ酸配列を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:51、55、59及び63から選択されるヌクレオチド配列、又は配列番号:52、56、60及び64から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:49のヌクレオチド配列又は配列番号:50のアミノ酸配列を有し、ここで該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:51のヌクレオチド配列、又は配列番号:52のアミノ酸配列を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:53のヌクレオチド配列又は配列番号:54のアミノ酸配列を有し、ここで該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:55のヌクレオチド配列、又は配列番号:56のアミノ酸配列を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:57のヌクレオチド配列又は配列番号:58のアミノ酸配列を有し、ここで該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:59のヌクレオチド配列、又は配列番号:60のアミノ酸配列を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体の軽鎖の可変部分が、配列番号:61のヌクレオチド配列又は配列番号:62のアミノ酸配列を有し、ここで該抗体の重鎖の可変部分が、配列番号:63のヌクレオチド配列、又は配列番号:64のアミノ酸配列を有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が:
Aβ 5-5-6 (寄託番号DSM ACC 2923)
Aβ 6-1-6 (寄託番号DSM ACC 2924)
Aβ 17-4-3 (寄託番号DSM ACC 2925)
Aβ 24-2-3 (寄託番号DSM ACC 2926)
又はそれらの機能的変種の群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が、Aβ 6-1-6 (寄託番号DSM ACC 2924)である、請求項1〜10のいずれか1項記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体が、Aβ 24-2-3(寄託番号DSM ACC 2926)である、請求項1〜11のいずれか1項記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が、ヒト化抗体又はキメラ抗体、又はその高親和性を保持している抗体断片である、請求項1〜12のいずれか1項記載の抗体。
【請求項14】
Aβペプチド又はそれらの変種の検出において使用するための、請求項1〜13のいずれか1項記載の抗体。
【請求項15】
前記変種が:
pGlu-Aβ3-38
pGlu-Aβ3-40
pGlu-Aβ3-42、及び
pGlu-Aβ3-x変種:の群から選択され、ここでxは、10〜42;好ましくは18〜42、より好ましくは30〜42の間の整数である、請求項14記載の抗体。
【請求項16】
ヒトである、請求項1〜15のいずれか1項記載の抗体。
【請求項17】
前記高親和性を保持している、ダイアボディ又は単鎖抗体である、請求項1〜16のいずれか1項記載の抗体。
【請求項18】
請求項15記載の抗体により結合されたエピトープへ結合する、請求項1〜17のいずれか1項記載の抗体。
【請求項19】
請求項15記載の抗体の相補性決定領域を有する、請求項1〜18のいずれか1項記載の抗体。
【請求項20】
標識されている、請求項1〜19のいずれか1項記載の抗体。
【請求項21】
固相上に固定されている、請求項1〜20のいずれか1項記載の抗体。
【請求項22】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2923、DSM ACC 2924、DSM ACC 2925、DSM ACC 2926のいずれか1つから入手可能である抗体。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項記載の抗体を含有する組成物。
【請求項24】
アミロイドーシスの治療、予防又は遅延のための、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
前記アミロイドーシスが、軽度認知障害、アルツハイマー病及びダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患である、請求項23又は24記載の組成物。
【請求項26】
前記アミロイドーシスが、散発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー型認知症である、請求項23又は24記載の組成物。
【請求項27】
前記家族性アルツハイマー型認知症が、家族性英国型認知症又は家族性デンマーク型認知症である、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2923。
【請求項29】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2924。
【請求項30】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2925。
【請求項31】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2926。
【請求項32】
診断方法又は治療方法における、請求項1〜22のいずれか1項記載の抗体、又は請求項23〜27のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項33】
アミロイド-関連疾患又は状態の診断のための、請求項32記載の使用。
【請求項34】
前記アミロイドーシスが、軽度認知障害、アルツハイマー病及びダウン症候群の神経変性からなる群から選択される神経変性疾患である、請求項33記載の使用。
【請求項35】
前記アミロイドーシスが、散発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー型認知症である、請求項33記載の使用。
【請求項36】
前記家族性アルツハイマー型認知症が、家族性英国型認知症又は家族性デンマーク型認知症である、請求項35記載の使用。
【請求項37】
請求項1〜22のいずれか1項記載の抗体を、該疾患又は状態に罹患していることが疑われる対象からの試料と接触する工程、並びに該抗体の該試料由来のpGlu-アミロイドタンパク質、好ましくはpGlu-Aβペプチドへの結合を検出する工程を含む、アミロイド-関連疾患又は状態、特にアルツハイマー病の診断のための、インビトロ診断方法。
【請求項38】
請求項1〜22のいずれか1項記載の抗体、及び使用説明書、並びに任意に更なる生物学的活性物質を備える、診断用キット。
【請求項39】
前記更なる生物学的物質が、グルタミニルシクラーゼの阻害剤である、請求項32記載の診断用キット。
【請求項40】
配列番号:23〜48からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【公表番号】特表2011−528561(P2011−528561A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519110(P2011−519110)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058803
【国際公開番号】WO2010/009987
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505403119)プロビオドルグ エージー (39)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058803
【国際公開番号】WO2010/009987
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505403119)プロビオドルグ エージー (39)
【Fターム(参考)】
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