説明

試料ホルダ

【課題】微小な異物であっても充分に保持することが出来る試料ホルダを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、試料を保持するための凹部を設けた試料ホルダにおいて、静電気出力装置を備えたことを特徴とする試料ホルダであり、静電吸着により微小試料を充分に試料ホルダに保持することが出来る。このため、微小な異物であっても充分に保持し、試料採取場所から測定装置まで運ぶ速度を上げても、保持した試料を紛失することを防ぐことが出来る。このため、分析時間を短縮することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダに関するものであり、特に微細試料を保持する試料ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体関連分野や液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の平面ディスプレイなどの産業分野はますます発展を遂げているが、そのような製造工程には少なからず微小な異物が存在し、製品に混入することで歩留まりに大きな影響を与えるばかりか、得意先の信用問題にも発展しかねない。よってこれらの微小異物を分析・解析して収率向上や品質管理のための対策を立てることが重要である。
【0003】
またそのような微小異物のサンプリング方法としては、光学顕微鏡下において、金属性ニードルを装着したハンディータイプの器具を、人間の手で直接操作したり、又はその金属性ニードルを装備したマイクロマニピュレーターを使って光学顕微鏡下で拡大視しつつ採取したりする方法がある。(特許文献1参照)
【0004】
しかしながら、試料が微小になればなるほど、それに伴い安定した試料の保持は困難となる。また、保持が充分でない場合、試料採取場所から測定装置まで運ぶ速度を上げると、保持した試料が紛失してしまう恐れがあるため、分析に要する時間が長くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平5−208387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、微小な異物であっても充分に保持することが出来る試料ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、試料を保持するための凹部を設けた試料ホルダにおいて、静電気出力装置を備えたことを特徴とする試料ホルダである。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の試料ホルダであって、凹部を複数備えたことを特徴とする試料ホルダである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、静電吸着により微小試料を充分に試料ホルダに保持することが出来る。このため、微小な異物であっても充分に保持し、試料採取場所から測定装置まで運ぶ速度を上げても、保持した試料を紛失することを防ぐことが出来る。このため、分析時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明である試料ホルダを実施の形態に沿って図1を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
本発明の試料ホルダは、
試料3を設置するための凹部2を備えたプレート1と、
静電気を発生させるための静電気出力装置4と、
静電気出力装置4から発生した静電気をプレート1に伝え、凹部2に設置された試料3を静電吸着するための伝達部5からなる。
【0011】
プレート1の材質は特に限定はなく、ガラス板や、金属板などを用いることが出来る。また、プレート1は正極あるいは負極に帯電しやすい物質を局所的にコートしてもよい。正極に帯電しやすい物質として、ナイロン樹脂や金属アルミニウム、負極に帯電しやすい物質としてフッ素系樹脂、シリコン、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。しかし、帯電しやすい物質を局所的にコート場合、目的物のみならずコート部分から発生したスペクトルを含む場合も考えられるため、測定後に得られたスペクトルを解析する時にはコート物質を含んでいるかどうかを考慮する必要がある。
【0012】
プレート1は試料3を設置するための凹部2を設ける。凹部2は、一度に多量の試料3を保持するために、プレート1上に多数設けてもよい。このとき、凹部2は、多くの顕微分光分析装置に付属しているマッピングソフトを利用できるために規則的に設けることが望ましい。凹部2の形状としては、試料3を設置し、プレート1上の位置を確認できるのであれば、特に限定はされない。例えば、具体的には、円形の穴やV字のくぼみであってもよい。また、凹部3の大きさは5〜20μmの範囲であり、かつさまざまな試料の形に対応するために、大きさや形の異なる複数の種類の凹部を有することが好ましい。また、凹部の中心と中心の距離aは10〜25μmの範囲であることが好ましい。(図2参照)
【0013】
試料3としては、たとえば顕微レーザーラマン分光分析では試料の種類に制限はないが、試料の大きさは1〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0014】
静電気出力装置4は静電気を出力するために設けられる。静電気出力装置としては、静電気出力装置としては、0〜1000Vの直流電圧を発生させることができる電源装置と極性を変えることができる切り替えスイッチを具備していれば特に制限はなく、その大きさは150×60×60(L×H×D)以下であることが好ましい。
【0015】
伝達部5は静電気出力装置4から発生した静電気をプレート1に伝え、凹部2に設置された試料3を静電吸着するために設けられる。伝達部5の材質としては、導電性材料であれば特に制限はなく、金属、導電性ポリマー、及び導電性のフィラーを含んだポリマーなどが挙げられるが、好ましくは金属が良い。また各凹部につながる伝達部5は他の伝達部5同士に電気的影響を及ぼさないように、プラスチックなどの絶縁材料で覆われていることが望ましい。伝達部5の形状はなるべくスペースをとらないように、プレート1下部にプレート及び凹部の並びと平行に取り付けられていることが好ましい。(図1参照)
【0016】
本発明の試料ホルダは静電気出力装置4から発生した静電気を、伝達部5を介してプレート1に伝え、凹部2に設置された試料3を静電吸着することが出来る。このため、試料3が微細であっても充分に保持することが出来る。
【0017】
以下、本発明の試料ホルダを用いた分析方法の一例について説明する。
【0018】
まず、凹部2に試料3を設置する。このとき、試料の設置方法は顕微鏡下において、金属性ニードルを装着したハンディータイプの器具を人間の手で操作したり、同じく顕微鏡下において金属性ニードルを装着したマイクロマニピュレーターを使ったりして、拡大視しながら金属ニードルの先に微小試料をくっつけて採取する。くっつける仕組みとしては微小試料自体の粘着性や柔軟性、及び微小試料と金属性ニードルの分子間力やクーロン力などの相互作用による。その後微小試料を凹部2まで静かに運び設置する。その際、試料ホルダから発生する静電気は、ニードルから微小試料を離すためにも有用である。
【0019】
次に、試料3を設置した試料ホルダを分析装置へと導入する。このとき、分析装置としては例えば、顕微赤外分光分析や顕微ラマン分光分析が挙げられるが、試料の形態に制約が少なく、より小さなサイズの試料の分析が可能な顕微ラマン分光分析が望ましい。また試料が大量に存在する際には、規則的、例えばアレイ状に設けられた凹部2に試料3を設置し、顕微分光分析装置では標準で搭載されているマッピングソフトと併用することで自動測定が可能となる。
【0020】
次に、試料3を分析する。このときの測定スピードの範囲は特に制限はなく、スペクトルが十分に得られる速度でよい。顕微ラマン分光分析ではその速度を見極めるために、一度1点あたり1〜10秒かけて予備測定を行うと効率が良い。
【0021】
以上より、試料3が微細であっても、試料3を紛失することなく効率的に測定を行える。これにより、測定時間を短縮することが出来る。
【実施例】
【0022】
上記の発明について具体的な実施例を以下に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
<実施例>
本発明の試料ホルダとして、プレートがガラス製であり、凹部の大きさが10μm、凹部と凹部の間隔が25μm、凹部を100個、凹部を10×10のアレイ状のパターンで規則的に並べ、静電気出力装置(グリーンテクノ(株)製、商品名;GT80)を備えた試料ホルダを用意した。
【0024】
マイクロマニピュレーター(島津製作所製、商品名;MMS−77)を用いて、アクリル樹脂に埋まっている5μm程の異物を試料として、試料ホルダの凹部に設置した。このとき、50点の凹部に試料を設置した。また、静電気出力装置から、静電気出力を行い、試料を静電吸着した。
【0025】
前記試料ホルダを顕微レーザーラマン分光分析装置(サーモエレクトロン(株)製、商品名;Nicolet Almega)の試料ステージに設置し、自動測定の条件として25μmステップでマッピング測定を行った。
【0026】
<比較例>
実施例と同様に顕微レーザーラマン分光分析装置を用いて測定を行った。ただし、試料を静電吸着させなかった。
【0027】
<評価>
以下、実施例と比較例の結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

サンプリング速度については1点あたり◎:1分以内、○2分30秒以内、△4分以内、
サンプルロス率については◎:5%未満、○5〜10%、△10〜15%、
測定スピードについては1点あたり◎:10秒以内、○1分以内、△2分以内、
であることを意味する。
【0029】
本発明の試料ホルダによって試料を静電圧着させながら測定することにより、測定スピードを向上することが出来た。また、試料の紛失も減少させることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の試料ホルダの構成の一例を示す断面概念図である。
【図2】本発明の試料ホルダの構成の一例を示す上面概念図である。
【符号の説明】
【0031】
1…プレート
2…凹部
3…試料
4…静電気出力装置
5…伝達部
a…凹部の中心と中心の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するための凹部を設けた試料ホルダにおいて、
該凹部に試料を静電吸着する機構を備えたこと
を特徴とする試料ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の試料ホルダであって、
凹部を複数備えたこと
を特徴とする試料ホルダ。

【図1】
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【図2】
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