説明

試料中に含有される物質の直接定量的invitro決定の装置および方法

本発明は、試料中に含有される物質の直接定量的in vitro 決定の装置および方法に関する。本発明による装置は、表面上に固定化された物質検出因子、遊離物質-放出体複合体、および表面上に固定化された放出体検出因子を含んでなる。使用する装置の放出体は、放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる。本発明による装置により、抗原、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、血液成分、血清成分、脂質、薬剤および低分子量化合物または、他の設計において、抗体および抗体フラグメントから選択される物質を、例えば、全血試料において、直接定量的に決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含有される物質の直接定量的in vitro 決定の装置および方法に関する。本発明による装置は、表面上に固定化された物質検出因子、遊離物質-放出体(emitter)複合体、および表面上に固定化された放出体(emitter)検出因子を含んでなる。使用する装置の放出体は、放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる。本発明による装置により、抗原、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、血液成分、血清成分、脂質、薬剤および低分子量化合物または抗体および抗体フラグメントから選択される物質を、例えば、全血試料において、直接定量的に決定することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
物質を診断的に検出しかつそれらの濃度を決定するために、多くの場合において、決定すべき物質に対して高いアフィニティーを有する、生物学的分子、例えば、ペプチド、タンパク質またはオリゴヌクレオチドに基づく、in vitro 診断測定法が現在使用されている。この目的のために、ペプチドおよびペプチドを使用することが好ましく、抗体および抗体フラグメントを使用することが特に好ましい。
【0003】
この場合において、使用する抗物質抗体は種々の目的を満足する。一方において、抗物質抗体は決定すべき物質を試料から分離するために使用されるが、他方において、抗物質抗体は、また、検査すべき物質上で使用される種々のシグナル伝達物質を突き止めまたは位置決定する目的を満足する。試料中の、例えば、抗体を検出するために、主要な光学的測定法および放射線測定法が確立されたが、また、音響的 (例えば、下記の文献を参照のこと: Cooper A. M. 他、Direct and Sensitive Detection of a Human Virus by Rupture Event Scanning. Nat Biotechnol. 2001 Separation; 19(9): 833-7) および磁気的測定法が知られている。光学的測定法は最大の分布を獲得した[Nakamura R. M.、Dito W. R.、Tucker E. S. (編者) 、Immunoassays: Clinical Laboratory Techniques for the 1980s、A. R. Liss、New York。Edwards R. (編者) 、Immunoassays: Essential Data、1996、Wiley Europe] 。
【0004】
低分子量分子に対して向けられた抗体およびペプチドは既に知られている。また、これらは色素分子に対する抗体およびペプチドを包含する[Simeonov A. 他、Science 2000、290、307-313; Watt R. M. 他、Immunochemistry 1977、14、533-541; Rozinov M. N. 他、Chem. Biol. 1998、5、713-728] 。 さらに、種々の色素、例えば、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、テキサス・レッド、アレキサ・フルオリン488、BODIPY FL、ルシファー・イエロウおよびカスケード・ブルー、オレゴン・グリーンに対する抗体は既に商業的に入手可能である (Molecular Probe Company, Inc.、 USA) 。しかしながら、これらは生物分析的目的のためのIgGポリクローナル抗体であり、部分的に制御不可能な交差反応性を有し、そして厳格な選択方法から産生されない。
【0005】
ある種のin vitro 診断方法、例えば、エレクトロルミネッセンスは決定すべき物質に対する種々の抗体の組み合わせに基づき、ここで一方の抗体は決定すべき物質を研究試料から分離するために使用され、そして他方の抗体は診断的に検出されるシグナル分子を担持する。エレクトロルミネッセンスの診断法の場合において、標識化された抗体を光学的に検出する[Grayeski M. L.、Anal. Chem. 1987、59、1243] 。
【0006】
エレクトロルミネッセンスに加えて、光誘導燐光および蛍光を診断的測定法に使用される分子の光学的性質として使用することもできる。エレクトロルミネッセンスおよび燐光に比較して、特に蛍光は、分子の光学的性質として、高い検出感度および大きい力学的範囲にわたる測定シグナルの高い線形性という利点を提供する。
【0007】
発蛍光団の蛍光を検出するために、蛍光プロセス内の種々の原理を使用する種々の測定法が開発された。確立された測定法において、例えば、偏光の弱化 (蛍光偏極 = FP) 、フォトン有効寿命の測定 (蛍光有効寿命の測定 - FLM) 、漂白性質 (蛍光光漂白回収率 - FPR) および種々の発蛍光団間のエネルギー移動 (蛍光-共鳴-エネルギー移動 - FRET) が使用される [Williams A. T. 他、Methods Immunol. Anal. 1993、1、466; Youn H. J. 他、Anal. Biochem. 1995、Oswald B. 他、Anal. Biochem. 2000、280、272; Szollosi J. 他、Cytometry 1998、34、159] 。
【0008】
他の検出方法は、偏極面の変化および燐光の検出に基づく。
大部分の既に利用可能な測定法において、抗物質抗体は発蛍光団で標識化される。この標識化は特異的および非特異的化学的カップリングにより実施される。標識化された抗体は研究試料に過剰に添加される。これは検査すべきすべての物質分子を結合するために必要である。発蛍光団の最も感受性のパラメーターとして蛍光強度を測定するとき、非結合の、標識化された抗物質抗体もまた蛍光シグナルを放射することを考慮しなくてはならない。この理由で、物質に特異的に結合される抗物質抗体を非結合部分から分離することが必要である。
【0009】
さらに、この方法において、基準として、検査すべき物質の分離に1つの抗物質抗体を使用し、そして研究物質を他の結合部位において検出する第2抗物質抗体をシグナリング分子で標識化する。このようにして、非結合であるが、シグナルを発生する抗体による測定結果の歪みを回避することができる。しかしながら、この手法は、分離工程により生ずる組織的かつ技術的費用の増加およびより高い原価を伴う。このような高い技術的費用は、この高速診断法の確立を妨げ、特に不都合であることが証明された。
【0010】
より新しい蛍光に基づく測定法、例えば、蛍光偏極および蛍光-共鳴エネルギー移動 (FRET) は、非結合の発蛍光団標識化抗体の部分を分離しないで、特異的に結合した抗物質抗体の含有率を決定できる方法である。
【0011】
これに関して、濃度が未知の決定すべき物質の含有率の測定は1工程において可能である。しかしながら、ここに記載する両方の方法は、また、in vitro 診断における広い分布を妨げる、決定的な欠点を有する。こうして、蛍光偏極は蛍光強度の測定に比較して高い検出限界を有し、こうして非常に少量の未知物質を決定することができない。他の欠点は雑音源に暴露しないで全血試料または血清試料において測定法を使用できないということである。なぜなら、偏光はかなりの数のタンパク質により影響され、こうしてエラーなしに血液試料を徹照することが不可能であるからである。
【0012】
また、FRETは分離工程なしに特異的に結合した発蛍光団標識化抗体を検出できる方法であるが、蛍光偏極と対照的に、蛍光強度が測定シグナルとして検出される; また、全血試料または血清試料の使用は不可能である。この原因はこれらの波長における測定試料の強い吸収および自己蛍光にあり、これらは蛍光-共鳴-エネルギー移動測定法 (約550 nmまでの可視スペクトル範囲) に現在使用されている [Mathis G.、J. Clin. Ligand Assay 1997、20、141; Mathis G.、Clin. Chem. 1995、41、1391; Mathis G.、Clin. Chem. 1993、39、1251; Clarke E. E. 他、J. Neuroscience Methods 2000、102、61; Leblanc V. 他、Anal. Biochem. 2002、308、247] 。
【0013】
こうして、本発明の目的は、なかでも、全血試料の定量的決定にも使用できる、分離工程を含まない、未知物質の含有率を決定するために、この目的に必要である試薬を検出する装置および光学的測定法を提供することである。
この目的は、本発明によれば、本発明による測定法により、そして独立特許請求の範囲1、18および19に従う本発明による測定法を実施する装置を提供することによって達成される。
【発明の開示】
【0014】
本発明の第1面によれば、試料中に含有される物質 (3) の直接定量的in vitro 決定装置 (1) が提供され、この装置 (1) は、a) 表面 (6) 上に固定化された物質検出因子 (5) 、b) 遊離物質-放出体複合体 (2) 、およびc) 表面上に固定化された放出体検出因子 (4) を含んでなり、ここで使用する放出体は放出体検出因子 (4) との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる。本発明による装置は、さらに、試料中に含有される物質を直接定量的にin vitro 決定するための放出体の放出特性の変化を測定する因子を含んでなることが好ましい。
【0015】
物質が抗原、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、血液成分、血清成分、脂質、薬剤および低分子量化合物、特に糖、色素または500 ダルトン以下の分子量をもつ他の化合物から選択される、本発明による装置は好ましい。
【0016】
物質が抗体および抗体フラグメントである、本発明による装置はさらに好ましい。この場合において、本発明による装置 (10) は、試料中に含有される抗体または抗体フラグメント (13) を直接定量的にin vitro 決定するために使用され、a) 表面 (16) 上に固定化された抗原 (15) 、b) 遊離抗体 (または抗体フラグメント) -放出体複合体 (12) 、およびc) 表面上に固定化された放出体検出因子 (14) を含んでなり、ここで使用する放出体は放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる。また、本発明によるこの装置は、試料中に含有される抗体または抗体フラグメントを直接定量的にin vitro 決定するための放出体の放出特性の変化を測定する因子を含んでなることが最も好ましい。
【0017】
放出体の部分の放出特性の変化が偏極面、蛍光強度、燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトの変化から選択される、本発明による装置はさらに好ましい。本発明は、これらの特別の現象に限定されないが、本発明の範囲内に入る用語 「放出特性の変化」 はすべての物理的現象または効果を含み、ここで放出体において発生する高エネルギー放射線はその性質を変更し、この場合において、この変化は放出体-結合性相手および/または物質との物質-放出体複合体の結合/非結合に定量的に依存する。本発明による装置の1つの態様において、物質は、例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよび特に抗体または抗体フラグメントである。本発明の範囲内において、抗体フラグメントは、少なくともいわゆる 「相補性決定領域」 (“CDR”) を含有する抗原-結合性区域を含んでなるフラグメントである。この場合において、抗原-結合性区域は完全に可変性の鎖VHおよびVLを含んでなることが最も好ましい。
【0018】
本発明による特に好ましい面において、抗体または抗体フラグメントは、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、ヒト化抗体、Fabフラグメント、特にモノマーのFabフラグメント、scFvフラグメント、合成および組換え抗体、scTCR鎖およびそれらの混合物から選択される。
【0019】
本発明の装置の抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントは、最適には抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを有する。このアフィニティーは、本発明によれば、抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントが、抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも少なくとも2×高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを有するように選択される。抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントは、抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも少なくとも10×高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを有することがさらに好ましい。こうして、抗体の結合アフィニティーは好ましくは50 nmより小さく、より好ましくは10 nmより小さい。アフィニティーの選択により、試験の感度を最適に選択することができる。この目的に対して、最適な設定は費用がかかる分離工程を必要としないで慣用の試験系列により直接決定できることが好都合である。同一のことが本発明の試験の第2態様に適用され、ここで調節は成分の量により実施される。
【0020】
こうして、本発明による装置において、表面上に固定化された抗放出体抗体は抗物質抗体に比較してまたは固定化された抗原に比較してモル過剰量で存在することができ、ここでその比は好ましくは1:2〜1:50である。
【0021】
本発明の他の面は、放出体が700〜1000 nmのスペクトル範囲内の少なくとも1つの吸収最大および/または蛍光最大、好ましくは少なくとも750〜900 nmのスペクトル範囲内の少なくとも1つの吸収最大および/または蛍光最大を示す色素を含んでなる、本発明による装置に関する。この色素の深色シフトは、吸収最大および/または蛍光最大のシフトが、放出体検出因子との相互作用後に、15 nmより大きい値、好ましくは25 nmより大きい値、最も好ましくはほぼ30 nmだけ高い波長において起こるように選択される。この場合において、シフトは必ずしも色素の1性質であるとして考慮することは必要ではない。通常、シフトは色素に合致する放出値の1つの変化、こうしてある単一の波長における変化として測定されるであろう。この目的のために、本発明による装置は、好ましくは、例えば、適当な光学的測定因子を有し、これらはこの分野において知られている。また、これは偏極面、蛍光強度、燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトにおける変化の測定に適用される。
【0022】
本発明による装置のために、使用する放出体は、ポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、インドトリカルボシアニン、メロシアニン、スチリル、スクアリリウムおよびオキソノール色素およびローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素から成る群から選択されることが好ましい。一般に、本発明による装置の物質-放出体複合体の放出体は、一般式 (I) のシアニン色素、およびこれらの化合物の塩および溶媒和物を含んでなることができる:
【化1】

式中Dは基 (II) または (III) であり、
【化2】

ここで星印で標識した位置は基Bとの結合点意味し、そして基 (IV)、(V)、(VI)、(VII) または (VIII) であることができ、
【化3】

式中、R1およびR2は、互いに独立して、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和、分枝鎖状または直鎖状C1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、そして/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されることができ; R3およびR4は、互いに独立して、基-COOE1、-CONE1E2、-NHCOE1、-NHCONHE1、-NE1E2、-OE1、-OSO3E1、-SO3E1、-SO2NHE1または-E1であり、ここでE1およびE2は、互いに独立して、水素原子、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和、分枝鎖状または直鎖状C1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、そして/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されていてもよく; R5は水素原子、メチル、メチルまたはプロピル基、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子であり、bは2または3の数であり、そしてXおよびYは、互いに独立して、O、S、=C(CH3)2または-(CH=CH)-である。
【0023】
近赤外スペクトル範囲 (>750 nm) における吸収および蛍光を有するシアニン色素に対する抗体の高度にアフィニティーの結合後、約30 mm〜より高い波長による吸収最大および蛍光最大のシフト (深色シフト) が発生することを、十分に驚くべきことには、発見することができた。この原理を使用して、例えば、大きい濃度範囲を介して、全血試料からのシグナルを直接かつスペクトル的に別々に検出することが可能であり、ここでこのシグナルは決定すべき物質の濃度に関して線形的に挙動する。
【0024】
本発明の範囲内で、物質-放出体複合体として下記一般式のものを使用する:
S-E
式中Sは検査すべき物質であり、そしてEは放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる放出体である。本発明による複合体の構造成分として、なかでも、少なくとも600〜1200 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および蛍光最大を有する色素は適当である。この場合において、少なくとも700〜1000 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および蛍光最大を有する色素は好ましい。これらの基準を満足する色素は、例えば、下記のクラスの色素である: ポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、メロシアニンおよびオキソノール色素、ローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素、テトラピロール色素、特にベンゾポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、フェオホルバイド、バクテリオフェオホルバイド、プルプリンおよびフタロシアニン。
【0025】
好ましい色素は、750〜900 nm間において吸収最大を有するシアニン色素であり、そしてインドトリカルボシアニンは特に好ましい。また、本発明による複合体の構造成分は、本発明による方法により濃度の決定を実施する物質である。
これらは、例えば、抗原、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、血液成分、血清成分、脂質、薬剤および低分子量化合物、特に糖、色素または500 ダルトン以下の分子量をもつ他の化合物から選択される。
これと同様に、当業者の技量の範囲内において、物質検出因子-放出体-複合体として、下記一般式のものを使用する:
【0026】
SEM-E
式中SEMは検査すべき物質検出因子であり、そしてEは放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる放出体である。本発明による複合体の構造成分として、なかでも、少なくとも600〜1200 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および蛍光最大を有する色素は適当である。この場合において、少なくとも700〜1000 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および蛍光最大を有する色素は好ましい。これらの基準を満足する色素は、例えば、下記のクラスの色素である: ポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、メロシアニンおよびオキソノール色素、ローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素、テトラピロール色素、特にベンゾポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、フェオホルバイド、バクテリオフェオホルバイド、プルプリンおよびフタロシアニン。
【0027】
好ましい色素は、750〜900 nm間において吸収最大を有するシアニン色素であり、そしてインドトリカルボシアニンは特に好ましい。また、本発明による複合体の構造成分は、本発明による方法により濃度の決定を実施する物質である。
これらは、例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、および特に抗体または抗体フラグメントから選択される。
【0028】
色素は構造要素を含有し、それらの構造要素を介して物質の構造または物質検出構造に対する共有結合が形成される。構造要素は、例えば、カルボキシ基、アミノ基、およびヒドロキシ基とのリンカーである。抗原-抗体-結合の場合において、検査すべき物質および放出体からの複合体は、一方において、検査すべき物質に対する抗体に対する結合アフィニティーおよび、他方において、放出体部分 (例えば、発蛍光団) に対する抗体に対して結合アフィニティーを有する。発蛍光団に抗発蛍光団抗体が結合した後、吸収最大および/または蛍光最大のシフトが起こる。この場合において、吸収最大および蛍光最大のシフトはより高い波長において15 nmより大きい値だけ起こることが好ましい。この値は特に好ましくは25 nmより大きい。
【0029】
本発明による装置の他の面において、因子および/または抗原 (物質) は表面上に統計的にランダムに直接的または間接的に存在するか、あるいはターゲテッド方法で固定化されている。 「間接的」 固定化は、ここにおいて適当な 「リンカー」 を介するカップリングとして定義される。このようなリンカーは、例えば、生物学的 「チップ」 の技術において、広範に使用され、そして当業者によく知られている。リンカーの一般的機能は、表面上の因子の任意お正確な位置決定である。この場合において、固定は共有結合または非共有結合で実施することができる。
【0030】
通常、リンカーは検出すべき物質と固定化された因子との間の結合に関係しない。リンカーの例は、例えば、PNAオリゴマー、シラン含有基およびスクシンイミド基からペプチド結合を形成する基まで拡張される。表面上の 「直接的」 固定化は、それ以上の中間的基を使用しないで、例えば、因子の活性化された末端基により実施される。また、このような化学的に活性化された基は当業者によく知られている。前述の固定化基により、表面上の因子の分布は統計的にランダムに、またはターゲテッド方法で発生させることができる。ターゲテッド固定化は、例えば、表面上の種々の検出因子の導入を可能とし、こうして、例えば、いくつかの試験に同時に適することができる表面の生成を可能とする。
【0031】
本発明によれば、装置は膜、球 (パールまたはビーズ) または固体状平面を含んでなり、ここでこれらのベヒクルはナイロン、セルロースまたはその誘導体、樹脂マトリックス、ケイ素、ガラス、ポリスチレン、アルミニウム、鋼、鉄、銅、ニッケル、銀または金から成る。
【0032】
本発明の他の面は、下記工程を含んでなる、試料中に含有される物質 (3) の直接定量的in vitro 決定方法に関する: a) 下記因子を含んでなる装置 (1) を準備し、i) 表面 (6) 上に固定化された物質検出因子 (5) 、ii) 遊離物質-放出体複合体 (2) 、およびiii) 表面上に固定化された放出体検出因子 (4) 、ここで使用する放出体は放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる、b) 定量すべき物質を含有する試料と前記装置を接触させ、そしてc) 放出体の放出特性の変化を測定する。
【0033】
次いで、本発明の他の面は、下記工程を含んでなる、試料中に含有される物質検出因子の直接定量的in vitro 決定方法に関する: a) 下記因子を含んでなる装置 (10) を準備し、i) 表面 (16) 上に固定化された物質検出因子 (15) 、ii) 遊離物質-放出体複合体 (12) 、およびiii) 表面上に固定化された放出体検出因子 (14) 、ここで使用する放出体は放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる、b) 定量すべき物質または物質検出因子を含有する試料と前記装置を接触させ、そしてc) 放出体の放出特性の変化を測定する。さらに、ここにおける装置は放出体の放出特性の変化を測定する因子を含んでなる。
【0034】
さらに、d) 放出体の放出特性の測定された変化により、試料中に含有される物質または物質検出因子を定量することを含んでなる、試料中に含有される物質の定量的in vitro 決定方法は好ましい。
【0035】
本発明の測定法は、本発明の好ましい態様 (第1図参照) において、決定すべき物質および放出体 (特に発蛍光団) と2つの抗体 (4、5) との組み合わせから成る複合体 (2) の使用に基づき、ここで一方の抗体は決定すべき物質に抗原 (抗物質抗体、5) として結合し、そして他方の抗体は放出体に抗原 (抗放出体抗体、4) として放出体に結合する。決定すべき物質および放出体からの本発明による複合体 (2) は、物質結合性抗体 (5) の結合部位について、試料中の決定すべき遊離物質 (3) と共同して作用する。研究試料中の決定すべき物質 (3) の含有率が高いほど、より多い複合体 (2) は抗物質抗体の抗体-結合部位から変位し、そして増加する濃度で抗放出体抗体 (4) に結合する (第1図参照) 。抗放出体抗体 (5) は、放出体のスペクトル性質が抗体の抗原-結合性ポケット中の放出体の結合により特徴的に変化することにおいて区別される。これに関して、抗物質抗体 (5) に結合する部分とのスペクトルの差を使用して、抗放出体抗体 (4) に結合する物質-放出体複合体 (2) の部分を別々に決定することが可能である。
【0036】
物質-放出体複合体 (2) は、検査すべき物質 (5) に対して向けられた抗体に対する結合部位について、検査すべき物質 (3) と競合する。研究試料中の検査すべき物質 (3) の濃度の増加は、複合体の結合を放出体に対して向けられた抗体 (4) の方向に変位させる。
【0037】
好ましい態様 (第2図参照) において、本発明による測定法は複合体 (12) の使用に基づき、複合体 (12) は特異的物質検出因子、例えば、抗体、および放出体 (特に発蛍光団) と抗体および抗原 (13、14) との組み合わせから成り、ここで抗原は特異的物質、例えば、抗体 (抗物質抗体、13) に結合し、そして抗体は抗原 (抗放出体抗体、14) として放出体に結合する。物質検出因子および放出体から成る複合体は、固定化された物質 (15) について遊離抗体 (13) と共同して作用する。研究試料中の決定すべき物質検出因子、例えば、抗体 (13) の含有率が高いほど、より多い複合体は抗物質抗体 (13) の抗体-結合部位から変位し、そして増加する濃度で抗放出体抗体 (14) に結合する (第2図) 。抗放出体抗体 (14) は、放出体のスペクトル性質が抗体の抗原-結合ポケット中の放出体の結合により特徴的に変化することにおいて区別される。これに関して、抗物質抗体 (15) に結合する部分とのスペクトルの差を使用して、抗放出体抗体 (14) に結合する物質検出因子 (例えば、抗体) -放出体複合体 (12) の部分を別々に決定することが可能である。
【0038】
物質検出因子-放出体複合体 (12) は、物質 (5) に対する結合部位について、検査すべき物質検出因子 (13) と競合する。研究試料中の検査すべき物質検出因子(13) の濃度の増加は、放出体に対して向けられた抗体 (14) の方向に複合体の結合をシフトする。
決定すべき物質が抗原、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、血液成分、血清成分、脂質、薬剤および低分子量化合物、特に糖、色素または500 ダルトン以下の分子量をもつ他の化合物から選択される、本発明による方法は好ましい。物質検出因子は、例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよび特に抗体または抗体フラグメントから選択される。
【0039】
放出体の部分の放出特性の変化が偏極面、蛍光強度、燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトの変化から選択される、本発明による方法はさらに好ましい。しかしながら、本発明は、これらの特別の現象に限定されない: 本発明の範囲内に入る用語 「放出特性の変化」 はすべての物理的現象または効果を含み、ここで放出体において発生する高エネルギー放射線はその性質を変更し、この場合において、この変化は放出体-結合相手および/または物質との物質-放出体複合体または物質検出因子-放出体複合体の結合/非結合に定量的に依存する。本発明による装置の1つの態様において、物質は、例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよび特に抗体または抗体フラグメントである。
【0040】
光学的測定の場合において、この測定は種々の方法で実施することができ、そして主として放出体 (例えば、発蛍光団) のスペクトル性質の特徴的変化のタイプに従い指示される。一般に、吸収波長および発光波長のシフトの検出、および大部分について抗体に結合する放出体の部分を検出する波長における吸収最大および/または蛍光最大の測定は好ましい。抗体結合放出体のスペクトル性質における変化に依存して、他の性質、例えば、フォトン有効寿命、偏極、および漂白挙動を光学的測定に使用することもできる。
近赤外線スペクトル範囲における発蛍光団の特別の利点は、血液成分によるシャドウィング速度が低いことにある。これに関して、検出すべきシグナルを主要な程度に変化させないで、深い透過が可能となる。
【0041】
物質検出因子として、ペプチド、タンパク質、および特に抗体または抗体フラグメントを試料と接触させる、本発明による方法は好ましい。本発明による方法の特に好ましい面において、抗体または抗体フラグメントは、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、ヒト化抗体、Fabフラグメント、特にモノマーのFabフラグメント、scFvフラグメント、合成および組換え抗体、scTCR鎖およびそれらの混合物から選択される。
【0042】
使用する抗体は2価の全免疫グロブリンであることができるが、試験系においてモノマーのFabフラグメントを使用することが好ましい。固相に対する遊離の結合性部位をブロックした後、この系を一定の物質-発蛍光団濃度において飽和する濃度および増加する物質濃度で目盛り定めする。測定のために、決定すべき物質は希釈された形態で、好ましくは非希釈形態で使用する。
【0043】
検査すべき物質に対して向けられた抗体 (抗物質抗体) は既に知られている。本発明によれば、物質に対して高いアフィニティーをもつ抗物質抗体は好ましい。Simeonov A. 他、Sequence 200、290、307-313には、スチルベンに対する抗体 (「青色蛍光抗体」) が記載されている。これらの抗体は特異的光化学的異性化プロセスを触媒し、吸収を赤色にシフトさせ、UV-VIS範囲において蛍光最大を生ずる (吸収シフトの最大12 nm、蛍光シフト22 nm) 。Simeonov A. 他は、シアニン色素の場合において蛍光量子効率を600〜1200 nmの波長範囲において保存する間の赤色シフトに対して何も言及していない。
【0044】
Watt R. M. 他 (Immunochemistry 1977、14、533-541) は、既知の抗蛍光抗体構築物のスペクトル性質を記載している。フルオレセインを結合した後、抗体は可視スペクトル範囲において吸収最大および蛍光最大をわずかに12 nmまたは5 nmだけシフトさせる。さらに、蛍光量子効率の強い減少 (約90%だけ) が起こる。本発明に従い使用する抗体-色素-構築物の赤色シフトは、蛍光量子効率を保存しながら、NIRスペクトル範囲において>15 nmである。
【0045】
Rozinov M. N. 他 (Chem. Biol. 1998、5、713-728) は、テキサス・レッド、ローダミン・レッド、オレンジ・グリーン514およびフルオレセインに結合する、ファージライブラリーから12マーのペプチドを選択することを最後に記載している。テキサス・レッドについて、吸収および蛍光の赤色シフトが観測されたが、シフトはわずかに2.8 nmまたは1.4 nmだけであった。しかしながら、Rozinov 他は、シアニン色素に対する抗体がより大きいシフトに導くと同時に蛍光量子効率を保存し、したがって本発明による方法に適することを提案していない。
【0046】
その上、発蛍光団を結合した後UV範囲においてスペクトル性質を変化させることができる発蛍光団に対する抗体は、既に当業者に知られている。抗体の抗原結合ポケットに発蛍光団を結合させることによって、主として蛍光強度、吸収最大、発光最大、およびフォトン有効寿命を変化させることができる[Simeonov A. 他、Sequence (2000) 307-313] 。これらの既知の抗体は放出体 (発蛍光団) に対して向けられているが、光の可視およびUV範囲において吸収および蛍光発光を有する。
【0047】
本発明の方法における抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントは、抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを有する。このアフィニティーは、本発明によれば、抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントが、抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも少なくとも2×高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを有するように選択される。抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントは、抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも少なくとも10×高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを有することがさらに好ましい。こうして、抗体の結合アフィニティーは好ましくは50 nmより小さく、より好ましくは10 nmより小さい。アフィニティーの選択により、試験の感度を最適に選択することができる。この目的に対して、最適な設定は費用がかかる分離工程を必要としないで慣用の試験系列により直接決定できることが好都合である。同一のことが本発明の試験の第2態様に適用され、ここで調節は成分の量により実施される。
【0048】
こうして、本発明による測定法において、抗発蛍光団抗体よりも高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを有する抗物質抗体を使用することが好ましい。抗発蛍光団抗体に比較して少なくとも2×高い結合アフィニティーをもつ抗物質抗体は好ましい。10×より高い結合アフィニティーをもつ抗物質抗体は特に好ましい。抗発蛍光団抗体は近赤外線のスペクトル範囲において吸収しかつ発光する発蛍光団に対して向けられることが好ましく、そしてそれらのスペクトル性質は、発蛍光団中の抗体結合部分の発光シグナルが発蛍光団の遊離部分から別々にスペクトル的に検出できるという意味において、抗体に対する結合により変化される。
【0049】
こうして、本発明による測定法において、表面上に固定化された抗放出体抗体は抗物質抗体に比較してまたは固定化された抗原に比較してモル過剰量で存在することができ、ここでその比は好ましくは1:2〜1:50である。
本発明の他の面は、本発明によるin vitro 診断装置の使用に関する。なお他の面は、物質-放出体複合体または放出体-検出因子、特に物質-発蛍光団複合体または抗発蛍光団約をin vitro 診断において使用することに関する。
【0050】
この目的で、本発明による装置は、また、診断キット中に存在することができ、ここでこの装置の構成成分は、必要に応じて他のアジュバントと一緒に、一緒にまたは別々の容器で提供される。他の可能性は、本発明の装置の基本的要素 (例えば、適当な表面およびそれにカップリングされた抗体および/または物質) を利用可能とする第1キットから成り、次いでこのキットは第2キットの内容物 (目盛り定めのための物質および/または他の抗体を含有する) と一緒にそれぞれの用途のために 「特殊化」 される。このような第2キットは、例えば、特別の物質-放出体複合体を含有できるであろう。さらに、これらのキットのすべては特別の使用説明書および文書 (例えば、目盛り定め曲線、定量化のための指示、およびその他) を含有することができる。
【0051】
次に添付図面を参照して実施例に基づいて本発明をいっそう詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0052】
実施例1.放出体-結合性抗体の選択、産生および特性決定:
シアニン色素Fuji 6-4 (ZK203468) [3,3-ジメチル-2-{4-メチル-7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル]ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩] に対するHuCAL GOLD抗体フラグメントの選択
【0053】
HuCAL GOLD抗体ライブラリー:
HuCAL GOLD抗体ライブラリー。HuCAL GOLDは、Fab抗体フラグメントのフォーマットにおける完全に合成の、モジュラーヒト抗体ライブラリーである。HuCAL GOLDは、HuCAL-scFv1ライブラリーについて記載されたHuCAL-コンセンサス-抗体遺伝子に基づく (WO 97/08320; Knappik (2000) J. Mol. Biol. 296、57-86; Krebs 他、J. Immunol. Methods 2001 Aug 1; 254(1-2): 67-84) 。
【0054】
HuCAL GOLDにおいて、すべての6つのCDR区域は、ヒト抗体におけるこれらの区域の組成に対応して、いわゆるトリヌクレオチド突然変異誘発 (Virnekaes 他 (1994) Nucl. Acids Res. 1994 Dec 25; 22(25): 5600-7) を使用することによって多様化されるが、以前のHuCALライブラリー (HuCAL-scFv1およびHuCAL-Fab1) において、VHおよびVL中のCDR3-区域のみが天然組成に対応して多様化されるであろう (参照: Knappik 他、2000) 。その上、補正されたスクリーニングプロセス、いわゆるCys展示 (WO 01/05950) もまたHuCAL GOLDにおいて見出される。
【0055】
Vλ位置1および2
もとのHuCALマスター遺伝子の真性N-末端を使用して、それらの遺伝子を構築した: VLλ1: QS (CAGAGC) 、VLλ2: QS (CAGAGC) およびVLλ3: SY (AGCTAT) 。これらの配列はWO 97/08320に記載されている。HuCAL-scFv1ライブラリーの産生において、これらの2つのアミノ酸基を 「DI」 において変化させてクローニング (EcoRI部位) を促進した。これらの基はHuCAL-Fab1およびHuCAL GOLDの産生において保存される。したがって、すべてのHuCALライブラリーは、5’-末端にEcoRVインターフェースGATATC (DI) をもつVLλ遺伝子を含有する。すべてのHuCALカッパ遺伝子 (マスター遺伝子およびライブラリー中のすべての遺伝子) はいずれの場合においても5’-末端にDIを含有する。なぜなら、これらは真性N-末端を表すからである (WO 97/08320) 。
【0056】
VH位置1
もとのHuCALマスター遺伝子の真性N-末端を使用して、それらの遺伝子を産生した: VH1A、VH1B、VH2、VH4、および第1アミノ酸基としてQ (= CAG) をもつVH6およびVH3ならびにE (= GAA) をもつVH5。対応する配列はWO 97/08320に見出される。HuCAL-Fab1ならびにHuCAL GOLDライブラリーのクローニングにおいて、アミノ酸Q (= CAG) はすべてのVH遺伝子中のこの位置1に組込まれた。
【0057】
ファージミドの産生
HuCAL GOLD抗体ライブラリーからまたは成熟ライブラリーからの大腸菌 (E. coli) TOP10F’細胞をヘルパーファージで感染させることによって、大量のファージミドを産生し、濃縮した。この目的に対して、34 μg/mlのクロラムフェニコール/10 μg/mlのテトラサイクリン/1%のグルコースを含む2×YT培地中で37℃においてHuCAL GOLDまたは成熟ライブラリー (TOP10F’細胞中の) をOD600 = 0.5までに培養した。次いで、37℃においてVCSM13ヘルパーファージを使用して感染を実施した。感染した細胞をペレット化し、2×YT /34 μg/mlのクロラムフェニコール/10 μg/mlのテトラサイクリン/50 μg/mlのカナマイシン/0.25 mmolのIPTG中に再懸濁させ、22℃において一夜培養した。ファージを上清からPEGで2×沈降させ、遠心により収集した (Ausubel (1998) Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, Inc.、New York、USA) 。ファージをPBS/20%グリセロール中に再懸濁させ、-80℃において貯蔵した。
【0058】
個々の選択ラウンド間のファージミドの増幅を次のようにして実施した: 対数期の大腸菌 (E. coli) TG1細胞を選択したファージで感染させ、1%のグルコース/34 μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレート上で平坦化した。一夜インキュベートした後、細菌コロニーを擦り取り、新しく培養し、VCSM13ヘルパーファージで感染させた。
【0059】
色素Fuji 6-4 (ZK203468) に対する抗体の一次的選択
HuCAL GOLD抗体ライブラリーの精製し、濃縮したファージミドを標準的選択プロセスにおいて使用した。抗原として、BSA-またはトランスフェリン-カップルドZK203468を選択的に使用した。抗原をPBS中に吸収させ、マクシソープ (MaxisorpTM) マイクロタイタープレートF96 (Nunc) 上に50 μg/mlの濃度で適用した。マクシソーププレートを4℃において一夜インキュベートした ( 「コーティング」 ) 。
【0060】
マクシソーププレートをPBS中の5%のミルクでブロックした後、約2E + 13 HuCAL GOLDファージを抗原負荷し、ブロックしたスポットに添加し、そこで一夜または室温において2時間インキュベートした。数回の洗浄工程 (これらは進行する選択ラウンドでいっそうストリンジェントとなった) 後、結合したファージを20 mmolのDTTまたは100μmolの非複合化ZK203468で溶離した。全体的に見て、3回の連続的選択ラウンドを実施し、ここでファージ増幅を、前述したように、選択ラウンド間で実施した。
【0061】
発現のために選択したFabフラグメントのサブクローニング
3ラウンドを含んでなる抗体の選択後、単離したHuCALクローンのFabコーディングインサートを発現ベクターpMORPHX9_MS中でサブクローニングして、Fabフラグメントの引き続く発現を促進した。この目的で、選択したHuCAL Fabクローンの精製したプラスミド-DNAを制限酵素XbaIおよびEcoRIで消化した。Fabコーディングインサートを精製し、相応して消化したベクターpMORPHX9_MS中に結合した。このクローニング工程により、Fab発現性ベクターpMORPHX9_Fab_MSが生じた。このベクターにより発現されるFabフラグメントは、精製および検出のための2つのC-末端タグ (MycタグおよびStrepタグII) を担持する。
【0062】
ZK203468結合性Fabフラグメントのスクリーニングおよび特性決定
選択およびサブクローニング後に数千のクローンが単離され、これらをサブクローニングし、そしてパンニングにおいて使用する抗原ZK203468-BSAおよび-トランスフェリンの特異的検出のための384ウェルのフォーマットでELISAにより試験した。これに関して同定されたクローンを阻害-ELISAにおいて非複合化色素の効率よい結合について研究した。これにより、下記の配列が生じた: 親FabフラグメントMOR02628 (タンパク質配列、配列番号1 (VH-CH) および配列番号2 (VL-CL); DNA配列、配列番号3 (VH-CH) および配列番号4 (VL-CL)) 、MOR02965 (タンパク質配列、配列番号5 (VH-CH) および配列番号6 (VL-CL); DNA配列、配列番号7 (VH-CH) および配列番号8 (VL-CL)) およびMOR02977 (タンパク質配列、配列番号9 (VH-CH) および配列番号10 (VL-CL); DNA配列、配列番号11 (VH-CH) および配列番号12 (VL-CL)) 、これらは複合化しなかった色素ZK203468に効率よく結合する。
【0063】
実施例2.色素-抗体複合体の光物理的特性決定およびスペクトルシフト/蛍光量子効率の決定
インドトリカルボシアニン色素3,3-ジメチル-2-{4-メチル-7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル]ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩に結合する抗体に基づく色素-抗体複合体を検査した (実施例1参照) 。PBS中の濃度1μmol/lの前述の色素および2.4μmol/lのそれぞれの抗体の溶液を調製し、室温において2時間インキュベートした。
【0064】
スペクトル測光計 (Perkin-Elmer、Lambda 2) を使用して吸収最大を決定した。インドシアニン・グリーンに関してSPEXフルオロログ (ランプおよび検出器により目盛り定めした波長依存性感度) を使用して、蛍光最大および蛍光量子効率を決定した (DMSO中のQ = 0.13、J. Chem. Eng. Data 1977、22、379、Bioconjugate Chem. 2001、12、44) 。吸収最大および蛍光最大から、PBS中に抗体を含まない前述の色素溶液の最大に関して、スペクトルシフトを計算した (1μmol/l) (吸収最大: 754 nm; 蛍光最大: 783 nm; 蛍光量子効率: 10%) 。
【0065】
結果を下記表1に要約する:
【表1】

【0066】
実施例3.物質検出手段および放出体: 抗ED-B-フィブロネクチン抗体/インドトリカルボシアニン複合体からの複合体の合成
胎児性フィブロネクチンの極めて純粋な組換えED-Bドメインに対する抗体を好ましくはscFv、Fab、(Fab)2または全IgGとして使用する。この実施例において、C-末端のシステインタグをもつFabを使用し、インドトリカルボシアニン色素3,3-ジメチル-2-{4-メチル-7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル]ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩のリンカー修飾誘導体と共有結合的に複合化した。下記の操作工程を実施した:
【0067】
Fab上の複合化のための3,3-ジメチル-2-{7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル] -4-(5-{[2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル]カルバモイル}-3-オキサ-ペンチル)ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩の合成
【0068】
【化4】

【0069】
a) 3-オキサ-6-(4-ピリジニル)ヘキサン酸-t-ブチルエステル
400 mlのトルエン/50 mlのTHF中の75 g (0.4 mol) の3-(4-ピリジニル)-1-プロパノールの溶液を、10 gのテトラブチルアンモニウムサルフェートおよび350 mlの32%の水酸化ナトリウム溶液と混合する。次いで、123 g (0.68 mol) のブロモ酢酸-tert-ブチルエステルを滴下し、室温において18時間攪拌する。有機相を分離し、そして水性相をジエチルエーテルで3回抽出する。一緒にした有機相をNaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発により濃縮する。クロマトグラフィー精製 (シリカゲル; 移動溶媒ヘキサン:酢酸エチル) 後、56 gの生成物 (理論値の41%) が褐色油状物として得られる。
【0070】
b) 3-[4-オキサ-5-(tert-ブトキシカルボニル)ペンチル]グルタコンアルデヒド-ジアニリド-臭化水素酸塩
60 mlのジエチルエーテル中の5.0 g (20 mmol)の3-オキサ-6-(4-ピリジニル)ヘキサン酸-tert-ブチルエステルの溶液を3.7 g (40 mmol) のアニリンと混合し、次いで0℃において8 mlのジエチルエーテル中の2.2 g (20 mmol) のブロモシアノゲンの溶液と混合する。0℃において1時間攪拌した後、それを50 mlのジエチルエーテルと混合し、そして生成する赤色固体を濾過し、エーテルで洗浄し、真空乾燥する。収量: 8.5 g (理論値の85%) の紫色固体。
【0071】
c) 3,3-ジメチル-2-{7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル]-4-(6-カルボキシ-4-オキサヘキシル)ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩
50 mlの酢酸無水物および10 mlの酢酸中の3.0 g (6 mmol) の3-[2-(tert-ブトキシカルボニル)エチル] グルタコンアルデヒド-ジアニリド-臭化水素酸塩 (実施例10b) および4.2 g (12 mmol) の1-(2-スルホナトエチル)-2,3,3-トリメチル-3H-インドレニン-5-スルホン酸 (実施例1a) の懸濁液を2.5 g (30 mmol) の酢酸ナトリウムと混合し、120℃において50分間攪拌する。冷却後、それをジエチルエーテルと混合し、沈殿した固体を濾過し、アセトン中で吸収的に沈殿させ、乾燥する。クロマトグラフィー精製 (RP-C18シリカゲル、移動溶媒水/メタノール) 後、メタノールを真空除去し、凍結乾燥し、標題化合物が直接得られる。収量: 2.3 g (理論値の41%) の青色凍結乾燥物。
【0072】
d) 3,3-ジメチル-2-{7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル]-4-(5-{[2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル]カルバモイル}-3-オキサ-ペンチル)ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩
1.0 g (1.1 mmol) の実施例Xeの標題化合物および0.1 g (1.1 mmol) のトリエチルアミンを15 mlのジメチルホルムアミド中に溶解し、0℃において0.37 g (1.1 mmol) のTBTU と混合し、15分間攪拌する。次いで、1.0 mlのジメチルホルムアミド中の0.42 g (1.7 mmol) のN-(2-アミノエチル)マレイミド-トリフルオロアセテート (Int. J. Pept. Protein Res. 1992、40、445) および0.17 mg (1.7 mmol) のトリエチルアミンの溶液を添加し、室温において1時間攪拌する。30 mlのジエチルエーテルを添加した後、固体を遠心により取出し、乾燥し、クロマトグラフィー (RP-C-18シリカゲル、/メタノール/水の勾配) により精製する。収量: 0.85 gの青色凍結乾燥物 (理論値の73%) 。
【0073】
インドトリカルボシアニン-Fab複合体の合成
0.3 mlのPBS中のFab抗体溶液 (濃度0.8 mg/ml) を60 μlのPBS中のトリス(カルボキシエチル)ホスフィン (TCEP) 溶液 (2.8 mg/ml) と混合し、窒素雰囲気下に25℃において1時間インキュベートする。過剰のTCEPをNAP-5カラムのゲル濾過 (溶離液: PBS) により分離する。測光 (OD280nm = 1.4) により決定されるFabの量は230〜250 μg (体積0.5〜0.6 ml) である。
【0074】
この溶液を0.03 μmolの3,3-ジメチル-2-{7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル]-4-(5-{[2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル]カルバモイル}-3-オキサ-ペンチル)ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩 (PBS中の0.5 mg/mlの貯蔵溶液) と混合し、25℃において30分間インキュベートする。この複合体をNAP-5カラム上のゲルクロマトグラフィー (溶離液: PBS/10%のグリセロール) により精製する。複合体溶液の免疫反応性をアフィニティークロマトグラフィー (ED-B-フィブロネクチン樹脂) により決定し (J. Immunol. Meth. 1999、231、239) 、そしてこれは約75%である。
【0075】
実施例4.ヒト血清中の胚性フィブロネクチン (ED-B-フィブロネクチン) を定量するin vitro アッセイ
循環胎児性フィブロネクチン (ED-Bフィブロネクチン) (Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 2002、5、204) の定量はELISA技術に基づく。この目的に対して、透明な96ウェルの免疫吸着ELISAプレート、好ましくは免疫吸着ELISAプレート (Nunk、デンマーク国) を化学発光検出に使用する。下記の操作工程を実施する:
【0076】
ELISAプレートのコーティング
抗原として胎児性フィブロネクチン (ED-B-FN) の極めて純粋な組換えED-Bドメインを、極めて純粋な抗放出体抗体 (実施例1参照) と一緒にELISAプレート上に固定化する。前記抗体は好ましくはscFv、Fab、(Fab)2または全IgGとして存在することができる。カップリング緩衝液として、PBS、好ましくはアルカリ性カップリング緩衝液を使用する。アルカリ性カップリング緩衝液は17 mlの0.2 M Na2CO3溶液および8 mlのNaHCO3溶液の混合物から構成され、2回蒸留した水で100 mlとして、すぐに使用できるカップリング緩衝液とされる。組換え抗原および抗放出体抗体の濃縮は1〜10 μg/mlの範囲であり、ここで組換え抗原および抗放出体抗体の最適モル比を実験的に決定しなくてはならない。しかしながら、好ましくは、1:5〜1:100の範囲の比を選択する。カップリングは100 μl/スポットの体積で37℃において2時間または4℃において一夜実施する。
【0077】
遊離結合部位のブロッキング
カップリングが完結した後、遊離結合部位をELISAプレート上においてPBSでブロックし、ここでPBSは2% (w/v) のウシ血清アルブミンまたはゼラチンを含有するが、好ましくは2% (w/v) のウシアルブミンまたはゼラチンを含むブロッキング緩衝液を使用する。この目的に対して、プレートをカップリング後に叩いて過剰の材料を除去し、200 μl/穴のブロッキング緩衝液と37℃において2時間インキュベートする。
【0078】
目盛り定め
この系を目盛り定めするために、目盛り定め系列の極めて純粋なED-B-FNをピペットでヒト血清中に入れる。この目的に対して、10 μg/mlの濃度のED-B-FN試料を1:2ステップで連続希釈し、ここで各試料は一定濃度の放出体標識化抗物質抗体 (実施例3からの抗ED-B-FN Fab-インドトリカルボシアニン複合体) を含有する。この複合体は、試験系に対応して、0.1 μg/ml〜10 μg/mlの範囲であることができる。
【0079】
定量的ELISAのピペッティング
ブロックしたELISAプレートを叩いて過剰の材料を除去し、各場合において100 μlの目盛り定めタンパク質系列を三重反復実験においてELISAプレートのそれぞれの穴の中にピペットで入れる。決定すべき血清または全血の試料を三重反復実験においてプレート上に適用し、37℃において30分間インキュベートする。
【0080】
試料の測定
2つのモノクロメータを有するスペクトル蛍光光度計 (SPEX-Fluorog、Jobin Yvon) により、試料測定を実施する。励起光の波長および放射された蛍光についての検出波長は、自由に選択することができる。試料はELISAプレートモジュールで検査する。この実施例において、790 nmの励起波長を選択する。蛍光の検出は805〜860 nmの帯域において実施する。その結果、色素を介して固定化抗放出体抗体に結合する抗体物質-放出体複合体の部分の増加により、蛍光シグナルの増加は赤色シフトした波長 (図面参照) において検出される。典型的には、S字形曲線プロットが見出され、ここで目盛り定め系列の線形測定範囲を測定試料の定量的決定に使用する。
【0081】
実施例5.ED-B-フィブロネクチンに対する抗体
実施例1に記載する手順と同様にして、抗原としてED-B-フィブロネクチンに対するHuCAL GOLD-抗体ライブラリーから、ED-B-フィブロネクチンに対する抗体を発生させた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、本発明の装置の第1態様を示す。
【図2】図2は、本発明の装置の第2態様を示す。
【図3】図3は、実施例2からのPBS中の抗体MOR02965の存在または非存在下の吸収スペクトル (左) および蛍光スペクトルを示す。凡例 (1) 試料中の物質を測定する装置 (2) 物質-放出体複合体 (3) 物質 (4) 放出体検出因子 (5) 物質検出因子 (6) 表面 (10) 試料中の抗体検出因子を測定する装置 (12) 抗体-放出体複合体 (13) 抗体 (14) 放出体-検出因子 (15) 固定化された抗原 (16) 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の因子を含んでなる、試料中に含有される物質の直接定量的in vitro 決定装置:
a) 表面上に固定化された物質検出因子、
b) 遊離物質-放出体複合体、および
c) 表面上に固定化された放出体検出因子、ここで使用する放出体は放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる。
【請求項2】
さらに下記の因子を含んでなる、請求項1に記載の試料中に含有される物質の直接定量的in vitro 決定装置:
d) 放出体の放出特性の変化を測定する因子。
【請求項3】
前記物質が抗原、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、血液成分、血清成分、脂質、薬剤および低分子量化合物、または抗体および抗体フラグメントから選択される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記放出体の部分の放出特性の変化が偏極面、蛍光強度、燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトの変化から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記物質検出因子がペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよび特に抗体または抗体フラグメントである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記抗体または抗体フラグメントがポリクローナルまたはモノクローナル抗体、ヒト化抗体、Fabフラグメント、特にモノマーのFabフラグメント、scFvフラグメント、合成および組換え抗体、scTCR鎖およびそれらの混合物から選択される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントが抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも高い抗原結合アフィニティーを示す、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントが抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも少なくとも2×高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを示す、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントが抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも少なくとも10×高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを示す、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記抗物質抗体または拮抗物質抗体フラグメントの結合アフィニティーが50 nmより小さく、好ましくは10 nmより小さい、請求項7〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記表面上に固定化された抗放出体抗体が、抗物質抗体に比較してまたは抗原に比較してモル過剰量で存在し、ここでその比は好ましくは1:2〜1:50である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記放出体が少なくとも700〜1000 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および/または蛍光最大、好ましくは少なくとも750〜900 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および/または蛍光最大を示す色素を含んでなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
吸収最大および/または蛍光最大のシフトが、放出体検出因子との相互作用後に、15 nmより大きい値、好ましくは25 nmより大きい値、最も好ましくはほぼ30 nmだけ高い波長において起こる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記使用する放出体がポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、インドトリカルボシアニン、メロシアニン、スチリル、スクアリリウムおよびオキソノール色素およびローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素から成る群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記物質-放出体複合体の放出体が一般式 (I) のシアニン色素、およびこれらの化合物の塩および溶媒和物を含んでなる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置:
【化1】

式中Dは基 (II) または (III) であり、
【化2】

ここで星印で標識した位置は基Bとの結合点意味し、そして基 (IV)、(V)、(VI)、(VII) または (VIII) であることができ、
【化3】

式中、
R1およびR2は、互いに独立して、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和、分枝鎖状または直鎖状C1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、そして/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されることができ、
R3およびR4は、互いに独立して、基-COOE1、-CONE1E2、-NHCOE1、-NHCONHE1、-NE1E2、-OE1、-OSO3E1、-SO3E1、-SO2NHE1または-E1であり、ここでE1およびE2は、互いに独立して、水素原子、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和、分枝鎖状または直鎖状C1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、そして/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されていてもよく、
R5は水素原子、メチル、メチルまたはプロピル基、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子であり、
bは2または3の数であり、そして
XおよびYは、互いに独立して、O、S、=C(CH3)2または-(CH=CH)-である。
【請求項16】
前記物質検出因子および/または物質が表面上に統計的にランダムに直接的または間接的に存在するか、あるいはターゲテッド方法で固定化されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
表面が樹脂マトリックス、ケイ素、ガラス、ポリスチレン、アルミニウム、鋼、鉄、銅、ニッケル、銀または金から成る膜、球 (ビーズ) または固体状平面を含んでなる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
in vitro 診断における請求項1〜17のいずれか1項に記載の装置の使用。
【請求項19】
下記工程を含んでなる、試料中に含有される物質の直接定量的in vitro 決定方法:
a) 下記因子を含んでなる装置を準備し、
i) 表面上に固定化された物質検出因子、
ii) 遊離物質-放出体複合体、および
iii) 表面上に固定化された放出体検出因子、ここで使用する放出体は放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる、
b) 定量すべき物質を含有する試料と前記装置を接触させ、そして
c) 放出体の放出特性の変化を測定する。
【請求項20】
下記工程を含んでなる、試料中に含有される物質の直接定量的in vitro 決定方法:
a) 請求項1〜17のいずれか1項に記載の装置を準備し、
b) 定量すべき物質を含有する試料と前記装置を接触させ、そして
c) 放出体の放出特性の変化を測定する。
【請求項21】
下記工程をさらに含んでなる、請求項19または20に記載の試料中に含有される物質の定量的in vitro 決定方法:
d) 放出体の放出特性の変化を測定することによって、試料中に含有される物質を定量する。
【請求項22】
前記物質が抗原、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、血液成分、血清成分、脂質、薬剤および低分子量化合物、または抗体および抗体フラグメントから選択される、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記放出体の部分の放出特性の変化が、偏極面、蛍光強度、燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトの変化から選択される、請求項19〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記物質検出因子として、ペプチド、タンパク質、および特に抗体または抗体フラグメントを試料と接触させる、請求項19〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体または抗体フラグメントがポリクローナルまたはモノクローナル抗体、ヒト化抗体、Fabフラグメント、特にモノマーのFabフラグメント、scFvフラグメント、合成および組換え抗体、scTCR鎖およびそれらの混合物から選択される、請求項19〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントが抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを示す、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗物質抗体または抗物質抗体フラグメントが抗放出体抗体または抗放出体抗体フラグメントよりも少なくとも2×高い、特に10×高い放出体に対する抗原結合アフィニティーを示す、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記表面上に固定化された抗放出体抗体が、抗物質抗体に比較してまたは抗原に比較してモル過剰量で存在し、ここでその比は好ましくは1:2〜1:50である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記放出体が少なくとも700〜1000 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および/または蛍光最大、好ましくは少なくとも750〜900 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および/または蛍光最大を示す色素を含んでなる、請求項24〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
吸収最大および/または蛍光最大のシフトが、放出体検出因子との相互作用後に、15 nmより大きい値、好ましくは25 nmより大きい値、最も好ましくはほぼ30 nmだけ高い波長において起こる、請求項24〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記使用する放出体がポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、インドトリカルボシアニン、メロシアニン、スチリル、スクアリリウムおよびオキソノール色素およびローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素から成る群から選択される、請求項24〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記物質-放出体複合体の放出体が一般式 (I) のシアニン色素、およびこれらの化合物の塩および溶媒和物を含んでなる、請求項24〜30のいずれか1項に記載の方法:
【化4】

式中Dは基 (II) または (III) であり、
【化5】

ここで星印で標識した位置は基Bとの結合点意味し、そして基 (IV)、(V)、(VI)、(VII) または (VIII) であることができ、
【化6】

式中、
R1およびR2は、互いに独立して、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和、分枝鎖状または直鎖状C1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、そして/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されることができ、
R3およびR4は、互いに独立して、基-COOE1、-CONE1E2、-NHCOE1、-NHCONHE1、-NE1E2、-OE1、-OSO3E1、-SO3E1、-SO2NHE1または-E1であり、ここでE1およびE2は、互いに独立して、水素原子、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和、分枝鎖状または直鎖状C1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、そして/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されていてもよく、
R5は水素原子、メチル、メチルまたはプロピル基、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子であり、
bは2または3の数であり、そして
XおよびYは、互いに独立して、O、S、=C(CH3)2または-(CH=CH)-である。
【請求項33】
請求項19〜32のいずれか1項に記載の試料中に含有される物質の直接定量的in vitro 決定方法における物質-放出体複合体の使用。
【請求項34】
請求項19〜32のいずれか1項に記載の方法を実行するための因子を、必要に応じて他のアジュバントおよび/または使用説明書と一緒に、一緒にまたは別々の容器中に、含んでなる診断キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−513940(P2009−513940A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518164(P2006−518164)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007595
【国際公開番号】WO2005/005985
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】