試料体液における検体の濃度を測定するシステムおよび方法
本開示は、電気化学的テスト工程を使って、生体の体液に存在する検体の量を測定する様々な方法に関する。ACテスト信号の使用、および、約2.0秒以下のトータルテストタイムを持つ、および/または、臨床的に低いトータルシステムエラーを持つ、テストの性能を含めて様々な実施形態が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液における検体の濃度の測定において使用する測定方法および装置に関する。本発明は、より詳しくは、但し限定的にではなく、血中グルコース濃度の測定に使用できる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に他の紛らわしい物質が存在する場合、物質の濃度測定は、多くの分野において、特に医学診断において重要である。たとえば、血液などの体液におけるグルコースの測定は、糖尿病の効果的な治療にとって重大である。
【0003】
糖尿病の治療には、典型的には、2つのタイプのインスリン療法、基礎と追加とがある。基礎インスリンとは、継続的な、たとえば、持効性インスリンである。追加インスリン療法とは、食事中の糖質や炭水化物などの代謝を含む、様々な要因によって起こる血中グルコースの変動を調整するために、追加量の、より速く作用するインスリンを供給するものである。血中グルコースの変動を正しく調整するためには、血液中のグルコース濃度を正確に測定する必要がある。これができなければ、失明、または、最終的には糖尿病患者から指や手足などの使用を奪う四肢循環障害を含む、極度の合併症を引き起こす恐れがある。
【0004】
たとえばグルコースのような血液試料において、検体の濃度を測定するための複数の方法が知られている。こうした方法は、典型的には、光学的方法と電気化学的方法との2つのカテゴリーのうち、1つに該当する。光学的方法は、一般的には、試薬におけるスペクトル変化を観察するための反射率または吸光分光器を必要とする。こうした変化は、検体の濃度を示す色の変化を生じる化学反応によって起こる。電気化学的方法は、その代わりに、一般的には、検体の濃度を示す電流応答または電量応答を伴う。たとえば、米国特許、第4233029号(Columbus)、第4225410号(Pace)、第4323536号(Columbus)、第4008448号(Muggli)、第4654197号(Liljaら)、第5108564号(Szuminskyら)、第5120420号(Nankaiら)、第5128015号(Szuminskyら)、第5243516号(White)、第5437999号(Dieboldら)、第5288636号(Pollmannら)、第5628890号(Carterら)、第5682884号(Hillら)、第5727548号(Hillら)、第5997817号(Crismoreら)、第6004441号(Fujiwaraら)、第4919770号(Priedelら)、第6054039号(Shieh)、および第6645368号(Beatyら)明細書を参照されたい。これらの全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザの利便性のために、血液試料中のグルコース値を表示するのに必要な時間を減らすことは、長年、システム設計者にとっての目標である。値を表示するのに約2分かかった初期の色度測定器から、約20〜40秒のテスト時間まで、テスト時間は減少している。もっと最近では、10秒未満のテスト時間について記載されており、(たとえば、米国特許第7276146号および第7276147号明細書参照)、現在の市場のいくつかの製品では、およそ5秒のテスト時間が宣伝されている。これより短い2秒未満のテスト時間についても、様々な特許出願において論じられている(たとえば、米国特許出願公開、第2003/0116447A1号および第2004/0031682A1号明細書参照)。しかし、混同させる干渉物による影響を実質的に受けない結果という点から見ると、こうした教示によって、短いテスト時間の真の有用性が完全に達成されてはいない。
【0006】
血液中の化学物質の濃度を測定するための電気化学的方法を制限するものとして重要なのは、検体と試薬の様々な有効成分との拡散における、混同させる変化性の物による影響である。血中グルコース測定の正確性を制限するものの例として、血液組成または状態(測定される状況以外のもの)の変化が挙げられる。たとえば、ヘマトクリット(赤血球の濃度)または血液中の他の化学物質の濃度の変化が、血液試料の信号の生成に影響しうる。血液の化学的性質を測定する上で、血液試料の温度変化は、混同させる変化性の物の、さらにもう1つの例である。短いテスト時間後に報告される血中グルコース応答の有用性は、その結果について、ヘマトクリットや温度などの試料の他の変化性の物、または干渉物に対する補償をしないで適用するにあたって疑問の余地がある。
【0007】
血液試料におけるヘマトクリットに関して、先行技術の方法は、たとえば、ガラス繊維フィルタによって、または、血漿だけが膜を通ることを可能にする孔形成体を含んだ試薬膜で、試料において血漿から赤血球を分離することに依存している。ガラス繊維フィルタによる赤血球の分離は、テストメータの顧客の期待に反して、測定に要する血液試料の量を増加させる。多孔質膜は、ヘマトクリットの影響を減少させる上で部分的にのみ効果的であり、所望の正確性を達成するには、遅延時間の増加および/またはAC測定(以下を参照のこと)と組み合わせて使用する必要がある。
【0008】
先行技術の方法では、テストストリップの試薬上での試料のより長い培養時間を含むDC測定を使用することによって、グルコース測定値への試料のヘマトクリットによる影響の規模を小さくして、ヘマトクリットによる干渉を減少または排除する試みもある。こうした方法でも、テスト時間が非常に長くなってしまう。
【0009】
ヘマトクリットおよび温度による干渉を減少またはなくすためのその他の試みについては、米国特許第7407811号明細書と同様に、本願の親出願の開示においても教示される。これらにおいては、低振幅のAC電位を試料に印加することによって、AC励起信号に対する電流応答からの、位相角(ここでは、「位相」とも呼ばれる)およびアドミタンス情報に基づいて、ある一定の試料の特性が判定される。教示のとおり、AC励起信号の複数の周波数がシーケンシャルブロックで印加され、その後、従来のDC励起信号が印加される。しかしながら、こうした開示が示すのは、ACおよびDC励起信号の両方から、有用で一貫した、相応に再生可能な情報を得るために各周波数が印加されるべき最小時間には限度があるという、発明者の考えである。それでも、完全なAC法から実際に達成できる最短の全テスト時間は3秒であった。代わりに、実際の分析を3秒未満で達成するために、AC励起中に使用される周波数ブロックの数を制限、つまり4ではなく2ブロックにした。しかし、使用する周波数ブロックの数を減らすことは、たとえばヘマトクリットや温度などの複数の干渉物に関する補正を行うにあたって、得られる正確性レベルに悪影響を及ぼす恐れがある。AC励起に関する、これら過去の開示に教示されるとおり、AC信号励起の複数の周波数から生じる位相および/またはアドミタンス応答データのような複数の補正係数を求めることによって、示されるグルコースを、複数の干渉物に関して補正することができる。複数の補正係数は、特に、複数の干渉物の、個別の、または異なる局面を測定する場合、または、1つの干渉物による影響が他よりも大きい場合に有益である。
【0010】
さらに、所望の検体濃度を判定するために使用される補正係数、または測定値でさえ、血液のヘマトクリット値またはヘマトクリットの範囲のような追加のパラメータを計算すること、および任意に報告することにも使用され得る。潜在的な補正係数の数を減少させると、たとえば、3つ、4つまたは5つ以上ではなく、たった2つだけのAC励起の周波数からの位相および/またはアドミタンスを測定すると、潜在的に有用な情報が捨て去られるおそれがある。疾患または治療のために医学的に重要なヘマトクリット値異常に、より陥りやすい患者を、通常の血中グルコース検査で識別できるような臨床状況において、たとえば、ヘマトクリット値またはヘマトクリットの範囲などの情報は、ユーザにとって、特に医療従事者にとって有用となり得る。ある状況では、たとえばグルコース濃度に加えてヘマトクリット値を提供することが、情報の貴重な一片となるだろう。しかし、この情報は、この先行技術によって提示される解決策の結果として失われ得る。
【0011】
したがって、ヘマトクリット、温度、および血液中の他の化学物質の濃度の変化などの、混同させる変化性の物の存在下においても、より正確に血中グルコースを測定するシステムおよび方法が必要とされる。こういったシステムおよび方法で、テスト時間が2秒未満となるものが、さらに必要である。その上、あらゆる生体の体液のあらゆる医学的に重要な成分を、2秒未満のテスト時間で正確に測定するシステムおよび方法が必要とされる。そのようなシステムおよび方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態において、生体の体液の医学的に重要な成分の濃度を判定するための方法であって、AC成分を有する第1の信号を生体の体液へ印加すること、第1の信号に対する第1の電流応答を測定すること、DC信号を含んでいる第2の信号をその生体の体液に印加すること、第2の信号に対する第2の電流応答を測定すること、第1および第2の応答を組み合わせること、および、医学的に重要な成分の濃度の表示を決定することを含んでいる方法が開示されている。他の実施形態においては、これらの工程を完了する時間が約2秒のみである。さらに他の実施形態においては、この方法によるトータルシステムエラーは、およそ10%のみである。さらに他の実施形態においては、第1の信号は、多周波励起波形(multi-frequency excitation waveform)を含んでいるAC信号を含み、第1および第2の信号の印加を完了する時間を最小にするために、異なるAC周波数が、順次ではなく、概ね同時に印加される。
【0013】
本発明は、幅広い種類の医学的に重要な成分(つまり、検体とも呼ばれるもので、たとえば、グルコース、乳酸塩、コレステロール、トリグリセリドなど。グルコースがもっとも重要な検体である)および、たとえば、血液、血清、血漿、尿などの生体の体液(つまり、試料体液)に関して有用であり、生体の体液としては、血液がもっとも典型的な例である。
【0014】
システムおよび方法の他の実施形態は、本文の記載から、添付の請求項に記載のとおり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面を単に例として参照して、本発明についてさらに説明する。
【図1】約3.6μmの試薬層厚を有するバイオセンサーを使った、試料塗布とDC励起の印加との間の時間についてパラメータ化された測定に関する、電流対時間のプロットである。
【図2】ここに記載の第1の共変量(covariate)の調査において使用されるグルコース、ヘマトクリットおよび温度の値を示す表である。
【図3】ここに記載の第1の調査について、励起信号のプロファイルおよびタイミングを示す表である。
【図4】ここに記載の第1の調査について、励起信号のプロファイルおよびタイミングを示す図である。
【図5】ここに記載の第1の調査の、未補正の測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図6】ここに記載の方法を使って補正された図5のデータに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図7】約1.6μmの試薬層厚を有するバイオセンサーを使った、試料塗布とDC励起印加との間の時間についてパラメータ化された測定に関する、電流対時間のプロットである。
【図8】ここに記載の第1の調査における、AC応答の安定化を示す、アドミタンス対時間のプロットである。
【図9】ここに記載の第1の調査における、バイオセンサーの試薬ストライプの断面の厚さを示すプロットである。
【図10】ここに記載の第1の調査で使用される、全血試料のグルコース、ヘマトクリットおよび温度の値を示す表である。
【図11】ここに記載の第2の調査のために使用される、励起信号のプロファイルおよびタイミングを示す図である。
【図12】ここに記載の第2の調査において使用される、3つの試薬の厚みに対する測定の実績を示す表である。
【図13】ここに記載の第2の調査について、正規化誤差対基準グルコース値のプロットである。
【図14】ここに記載の第2の調査において得られた未補正のDCデータについて、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図15】AC測定データを使って補正された図14のDCデータについて、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図16】ここに記載の第3の調査において使用されたマルチサイン波の励起波形(multi-sine excitation waveform)の1つの実施形態のプロットである。
【図17A】ここに開示された方法を使用して得られた、第3の共変量の血中グルコース測定調査に関する、200ミリ秒での、アドミタンスおよび位相応答データの表である。
【図17B】図17Aのデータ表の、アドミタンスの大きさ対ヘマトクリット値のグラフである。
【図17C】図17Aのデータ表の、位相対ヘマトクリット値のグラフである。
【図18】ここに記載された第3の調査における、いくつかのテスト時間での未補正の血中グルコース測定評価と、ここに開示された方法を使って補正された同一のデータの測定評価との両方を示す表である。
【図19】ここに記載された第3の調査による未補正の測定に関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図20】ここに開示された方法を使って補正された図19のデータに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図21】図19の未補正データおよび図20の補正後データの両方に関する、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図22】ここに記載された第4の調査において、いくつかのテスト時間での未補正の血中グルコース測定評価と、ここで開示される方法を使って補正された同一のデータの測定評価との両方を示す表である。
【図23】ここに記載された第4の調査による未補正の測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図24】ここに開示された方法を使って補正された図23のデータに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図25】図23の未補正データ、および、図24の補正後データの両方に関する、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図26】ここに記載された第4の共変量の調査の結果に関する、目標対実際の値を示す表である。
【図27】ここに記載された第4の共変量の調査による、アドミタンスの大きさ対ヘマトクリットのグラフである。
【図28】ここに記載された第4の共変量の調査による、位相対ヘマトクリットのグラフである。
【図29】目標グルコース濃度が93mg/dlで、かつ、70%のヘマトクリットを有する全血試料に対して実施され、多周波AC励起波形と、その後に続くDC励起とを含む測定シーケンスから生じた例示的な電流応答である。
【図30】既知の湿潤試薬の塗布工程における塗装重量に従った、乾燥被膜厚の推定値および測定値の表である。
【図31】ここに記載された第5の共変量の調査による、アドミタンスの大きさ対ヘマトクリット値のグラフである。
【図32】ヘマトクリット値と共に変化する異なったテスト時間で測定されたDC電流応答のグラフである。
【図33】ここに記載された第5の調査による、900ミリ秒で測定された未補正のDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図34】900ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図35】1100ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図36】1500ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図37】2000ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図38】2500ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図39】3000ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図40】ここに記載された第5の調査に従って補正された異なるDCテスト時間での、補正された応答に関するTSEを示す表である。
【図41】ここに記載された第5の調査に従った、900ミリ秒での未補正のDC応答データに関する、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図42】ここに記載された第5の調査に従って、1つのAC周波数による応答データによって補正された900ミリ秒でのDC応答データに関する、予測グルコース対基準グルコースを示すクラークエラーグリッドである。
【図43】ここに記載された第5の調査に従って、もう1つのAC周波数による応答データによって補正された900ミリ秒でのDC応答データに関する、予測グルコース対基準グルコースを示すクラークエラーグリッドである。
【図44】ここに記載された第5の調査に従って、2つのAC周波数による応答データによって補正された900ミリ秒でのDC応答データに関する、予測グルコース対基準グルコースを示すクラークエラーグリッドである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の原理をよりよく理解するために、これから、図示される実施形態を参照し、これらの実施形態を説明するために特定の用語を使用することにする。しかし、本発明の範囲を制限することは意図されていないことが理解されよう。本発明が関連する分野の当業者が通常思いつくであろう例示される装置における改良および変更、および、その中に例示される本発明の原理のさらなる応用については考慮されているし、これらが保護されることが望まれる。特に、本発明は、血中グルコースの検査装置および測定方法という観点から論じられているが、本発明が、他の検体および他の試料タイプを測定するための装置とともに使用できることが考慮されている。こうした他の実施形態は、本文にて論じられる実施形態へのある程度の適合を必要とし、これについては、当業者にとっては自明であろう。
【0017】
本発明によるシステムおよび方法によって、極めて短いテスト時間で、すなわち、わずか約2秒で、体液内の検体の正確な測定が可能になる。特に、この検体測定は、別の方法では誤差を生じさせる干渉物が存在しても、依然として正確である。たとえば、本発明による血中グルコース測定器は、試料のヘマトクリット値および試料の温度の変化によって典型的に生じる誤差なく、全血試料内の血中グルコースの濃度を測定する。糖尿病患者における、不十分な血中グルコース調整による失明、血行障害、およびその他の合併症を防ぐ上で、血中グルコースの正確な測定は、非常に重要である。本発明によるシステムおよび方法のさらなる利点は、よりいっそう迅速に、よりいっそう少ない量の試料で、測定を行うことができることであり、このため、糖尿病患者に自分の血中グルコースを測定することを、より便宜良くさせる。同様に、血液、尿、または他の生体の体液における、その他の検体の正確かつ迅速な測定によって、広範囲の医療条件の診断および治療が改良される。
【0018】
電気化学血中グルコース測定器は、典型的には(すべてではないが)、試薬の存在下で血液試料の電気化学的応答を測定するものであることが分かるであろう。試薬は、グルコースと反応して、反応しなければ血液中には存在しない荷電キャリアを生成する。その結果、所定の信号の存在下における、血液の電気化学的応答は、第1に、血中グルコース濃度に依存することが意図される。しかし、第2に、所定の信号に対する血液の電気化学的応答は、ヘマトクリットおよび温度を含む他の要因に依存しうる。たとえば、米国特許第5243516号、第5288636号、第5352351号、第5385846号、および第5508171号明細書を参照されたい。これらは、血中グルコースの測定にあたって、ヘマトクリットによる混同の影響について論じており、これらの全体がここに参照として組み込まれる。さらに、たとえば、尿酸、ビリルビンおよび酸素を含む、特定の他の化学物質が血液試料を介した荷電キャリアの移動に影響を与えることによって、グルコースの測定に誤差が起こりうる。
【0019】
ここに開示される様々な実施形態は、混同させる干渉物(ヘマトクリットおよび温度、またはその他の干渉物)について補正された検体測定(血中グルコースまたは別の体液の試料検体)を行いながらも、より短いテスト時間を達成することを可能にするシステムおよび方法に関する。ここに開示されるシステムおよび方法によって、1秒未満の時間も含めて2秒未満のテスト時間が可能になる。ここで使用される「トータルテストタイム」は、第1の電気的信号が試料に印加される際の試料検知(または、両方が検出される場合は試料の用量の充足性)から、濃度判定の計算において使用される最後の測定を行うまでの時間の長さとして定義される。
【0020】
トータルテストタイムを短くすることに加えて、ここに開示される実施形態の結果として、検体測定のトータルシステムエラー、すなわち「TSE」が低くなる。TSEは一般的に、システムまたは方法の正確性および精度を組み合わせた基準を含む。これは、典型的に、(バイアスの絶対値)+2×(精度)として計算され、この式中、バイアスとは正規化誤差の平均であり、精度とは(正規化誤差の)標準偏差(StdDev)である。正規化誤差は、典型的には、標準の基準値との関連で計算される。たとえば、血中グルコース測定において、75mg/dl以下の基準グルコース試料については、正規化誤差=(予測グルコース−基準グルコース)であるが、75mg/dlを超える基準グルコース試料については、正規化誤差=(予測グルコース−基準グルコース)×100/(基準グルコース)となる。
【0021】
本文で使用されるフレーズ「AC成分を有する信号」は、いくらかの交番の電位(電圧)部分を有する信号のことである。たとえば、この信号は、100%の交番の電位(電圧)を有し、DC部分のない「AC信号」であってよく、この信号は、時間的な隔たりがあるACおよびDC部分を有してよく、また、この信号は、(ACおよびDC信号が重畳された)DCオフセットを有するACであってよい。後者の例においては、変化する電位の極性が交番しなくても、この信号は、なおAC成分を有すると記載され得る。
【0022】
実施例1および2には、トータルテストタイムが減少された実験について詳細に記載されている。それぞれの実施例において、ACブロックを使って、ACCU−CHEK(登録商標)Aviva測定器において利用されている既知の測定シーケンスに類似したDC測定とアルゴリズム的に組み合わされるための補正データが生成される。つまり、複数の周波数でAC電位が順次印加され、それぞれの周波数に対する電流応答およびその他の測定データが測定される。しかし、実施例1および2においては、連続的なAC周波数ブロックそれぞれの時間とDCブロックの時間とを減らすことによって、トータルテストタイムが減少する。実施例1は、共通の試薬層の厚さを有するバイオセンサーを使った共変量の調査において、このように短縮した時間のブロックを使用した実験について詳述している。実施例2は、様々な試薬層の厚さを有するバイオセンサーを使った共変量の調査において、時間を短縮した実験について詳述している。
【0023】
実施例1および2の測定シーケンスは、所望の測定パラメータをプログラムするための変更されたコードキーを使っているマルチメータテストスタンドとして構成された血中グルコース測定器のバンクを含んでいる、社内のデータ取得テストスタンド(DATSポテンショスタット)を使って実行された。こうした測定器は、1つのテストシーケンスに関して様々な方法および持続時間でプログラムまたは構成できるが、測定器のハードウェアに事前にプログラムされた利用可能な周波数の選択のような、いくつかの制限がある。この社内の試験装置は、ここではこれ以降、「DATS」と呼ぶこととする。
【0024】
ここに開示される本発明の特定の実施形態では、概して、多周波励起波形技術を使うことによって、より短い時間における複数の周波数でのACテストデータの収集が利用される。実施例3および4は、多周波励起波形を使用した実験について詳細に説明している。周波数の異なる複数の個々の波形を一緒に加えることによって、こうした多周波励起波形が形成されるため、体液の試料が同時に複数の周波数で励起される。多周波励起波形によって、測定時間を短くできるだけでなく、適応型の測定シーケンスも可能になる。なぜなら、AC信号データの収集は、印加された励起の交互する極性のために、感知された化学的性質を、DC測定のようにいつまでも変化させないからである。さらに、同時係属中の米国特許出願公開、第2004/0157339A1号、第2004/0157337A1号、第2004/0157338A1号、第2004/0260511A1号、第2004/0256248A1号、および第2004/0259180A1号の各明細書に開示された方法にしたがって、AC信号のさらなる周波数が低励起AC電位で印加されることによって、位相角がそこから一定の干渉要因を示す非ファラデー電流応答が生成され、、この徴候から、1つまたは2つ以上の干渉の補正が決定され、かつ、これを、体液試料における検体濃度をより正確に決定するために使用できる。
【0025】
そして、結果として生じた試料応答が測定でき、各励起周波数成分による寄与が、離散型フーリエ変換(DFT)などのフーリエ変換技術を使用することによって推定できる。ここで開示される様々な実施例は、マルチサイン波の励起波形を利用しているが、当業者であれば、あらゆる所望の形状を有する個々の波形を使用して、多周波数の波形が形成され得ることがわかるだろう。この形状として、いくつか例を挙げると、三角、矩形、のこぎり歯、デルタなどがあるが、これらに限定されない。多周波数の波形を形成するために使用される成分のAC波形は、それぞれ、あらゆる所望の周波数およびあらゆる所望の振幅を有してよい。多周波数の技術の使用により、所望のデータを収集するために必要な時間が短くなる(AC測定は順次ではなく同時に行われるため)だけでなく、それぞれの印加された周波数に対応するデータ収集中の試料の変化が少なくなるため、補正との相関性が良くなる。また、AC測定は、DC測定と時間的に近づけられ得る。ACおよびDCそれぞれの測定中の、試料の状態間のより良好な関連は、試料が安定した状態でなくても、より良好な干渉物の補償を可能にする。
【0026】
アジレントのVXIコンポーネントをベースに組み立てられ、かつ、要求された組み合わせおよび順序でACおよびDC電位をセンサーに印加して、また、その結果生じるセンサーの電流応答を測定するようプログラム可能な電気化学的なテストスタンドで、実施例3および4の測定は行われた。Microsoft(登録商標)のExcel(登録商標)を使って分析するために、電気化学的分析器からデスクトップコンピュータへデータが送られた。適切な周波数応答分析器およびデジタル信号取得システムを備えた、あらゆる市販のプログラム可能なポテンショスタットによって、この測定は実行できた。商用利用に関しては、この方法は、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)血中グルコース測定器など、ファームウェアが多周波数の波形のAC信号を印加することができるように構成された、専用の低コストのハンドヘルド測定装置において実行できる。このような場合、測定パラメータは、測定器のファームウェア、ならびに利用者の作用なしに自動的に実行される測定シーケンスおよびデータの評価に含まれるか、または設けられてよい。たとえば、検体を含んだ試料が、バイオセンサーに塗布され、装置によって検知された後、2秒未満のトータルテストタイムが可能となるような方法で、上記のようなプログラム可能なポテンショスタットを使って測定が行われ、結果が分析された。同様に、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)血中グルコース測定器のファームウェアは、同一の時間、すなわち、検体を含んだ試料がバイオセンサーに塗布され、測定器によって検知された後、2秒未満のトータルテストタイム内に、測定シーケンスが起こるように構成され、および調整された測定パラメータを備えてよい。測定データの評価が完了したら、典型的には、最後の測定が行われてから25〜50ミリ秒後に、測定結果は測定器のデジタルディスプレイに表示されてよい。
【0027】
実施例1−短いトータルテストタイムでの連続的な多周波数のACテスト
米国特許第7407811号明細書は、順次印加される複数の周波数のACブロックと、その後のDCブロックとの使用について教示している。たとえば、米国特許第7407811号明細書で記載される実施例5では、順次印加されるAC励起と、その後印加されるDC励起とを利用している。この励起信号は、およそ1.8間秒印加される10kHzのAC信号、およそ0.2秒間印加される20kHzのAC信号、およそ0.2秒間印加される2kHzのAC信号、およそ0.2秒間印加される1kHzのAC信号、および、およそ0.5秒間印加されるDC信号を含んでいた。トータルテストタイムは3秒であった。
【0028】
この同じ特許の実施例6において、この特許の実施例5で使われたものと同じテストストリップの設計を使って、1.1秒という短いトータルテストタイムを達成することが望まれていた。これを達成するために、発明者は、単に実施例5の連続的な励起を印加して、所要時間を短くすることができるとは考えなかった。この特許に
「実施例5に対して上述した同一のテストストリップ1700および試薬を用いて、図24中に示された励起プロファイルを、トータルテストタイムを減少させるために利用した。図5に対して上述されたように、20kHzおよび10kHzにおける位相角は、ヘマトクリット推定値と最も密接に相関していることが決定された。したがって、トータルテストタイムを減少させるために、実施例6中のこれら2つの周波数にAC部分の励起を限定することが決められた。トータルテストタイムをさらに減少させるために、10kHzのAC励起がDC信号と同時に印加され(すなわち、DCオフセットを持ったAC信号)、またこの理論は、この組み合わされたモードが、DC電流、AC位相およびACアドミタンスについて同時の結果の収集を可能にし、最速の可能な結果を提供している。したがって、20kHzの信号は0.9秒間印加された。その後、10kHzおよびDC信号が、0.1秒の間隔後、1.0秒間同時に印加された。」(米国特許第7407811号明細書、23段、23〜40行)
と記載されている。したがって、米国特許第7407811号の発明者は、トータルテストタイムを3.0秒未満にまで短くするためには、AC励起ブロックを2つ(2kHzおよび1kHzのもの)取り除き、残り2つのAC励起ブロックのうち1つをDC励起と同時に印加する必要があると考えた。
【0029】
この先行技術で、このように考えられた理由の1つが、試料塗布後のDC励起信号の印加のタイミングが異なる様々なテストについて、試薬の化学特性に適用された試料の、測定されたDC応答を示す図1および7に、図示されている。試料塗布後すぐにDC励起が印加されたとき、応答は、期待されるコットレルの減衰(Cottrellian decay)を示さないため、短いテスト時間では、試料のグルコース濃度の正確な判定をさせることは不可能であるということがわかる。これは、試薬層内における、酵素とメディエータとの効力、水和作用、および拡散が、再生可能な方法でDC測定がどれほどすぐに実行できるかを制限するからである。どのくらい速くDC応答を測定できるか、という点において、センサー同士の、試薬の水和およびコーティングの均一性は重要な要素である。
【0030】
早期であっても、ヘマトクリットなどの干渉物と相関する情報がAC応答データにおいて示されるため、より短いAC時間が可能であることが見出された。また、最初の数100ミリ秒に亘って、ACの少しの安定化があるが、短い時間でもACについての信号は、ヘマトクリットによる干渉と良く関連する。所望のグルコースDC応答から同一の間隔で集められた全ての所望の周波数についての情報を使うことによって、良好な相関性が、つまりは、ACで測定されたヘマトクリット干渉によるDCグルコース応答の補正が可能になる。
【0031】
先行技術の連続的な多周波数のACテスト方法を、グルコースオキシダーゼを含んでいる均一な試薬品でスロットダイコートされた(slot die coated)センサーを使って、より速い速度で実行することの実現性を実証するために、本実施例1が実施された(均一な試薬のスロットダイコーティングについては、米国特許出願公開第2005/0008537号明細書において記載され、その全体が本明細書に参照として組み込まれる)。メリネックス(登録商標)329フィルムに金をスパッタリング(約50ηm)する工程と、その後、作用および用量の充足性の電極を画定する導電層のパターンを形成するために、クロムオンクォーツマスク(chrome-on-quartz mask)を通したレーザーアブレーションによって、センサー電極がつくられた。使用された構造は、米国特許第7407811号明細書、図33に示されるものと類似していた。これら電極は、一対の測定電極から独立した一対の用量の充足性の電極を含んでいた。測定は、DATSを使って行われた。DATS構成の有益な点は、セットアップの容易さ、および、異なる温度の環境室における迅速なマルチチャネルデータ収集である。ACを励起する測定方法で使用するように構成された既存の測定器を備えたDATSを使用することは、ブロック間に要求される特定の遷移時間を含んだプログラム可能性において、また、本質的にすべて基本的な、DATSに使用される測定器のプログラムできない側面である利用可能なAC周波数においても、いくつかの制限を示した。しかし、こうした既存の測定器を使用することは、実施例1(および以下の実施例2)において検討された連続的な多周波数のACでの方法が、使用面で既存の測定器に対する上位互換性を有しうるという点で、有用であった。
【0032】
7つの異なる目標グルコース濃度(50mg/dl、100mg/dl、150mg/dl、250mg/dl、300mg/dl、450mg/dl、および550mg/dl)、3つの異なる目標ヘマトクリット濃度(25%、45%、および70%)および、5つの異なる温度(8℃、14℃、24℃、35℃、および42℃)を有する全血試料で、共変量の調査が行われた。図2の表には、この実施例1で使用された全血試料の成分が詳細に記載されている。
【0033】
実効値9mVで順次印加される10kHz、20kHz、2kHz、および1kHzのAC励起信号を使ってACデータが収集された。そして、100ミリ秒の回路オープン後、450mVのDC電位の印加が、1300ミリ秒で開始した。DC測定データの収集が、1400ミリ秒で開始して100ミリ秒毎に行われ、1525ミリ秒でのDCデータポイントが本実施例1において分析された(つまり、このテストでは、トータルテストタイムが1.525秒であった)。(トータルテストタイムをより短くする実現性を確認するために、DCデータポイントは、トータルテストタイムより遅い時間に取得された。たとえば、1.525秒以下のトータルテストタイムの実行可能性が確認されたため、これより長い時間でのDCデータポイントは、最終的な結果を計算するのに使われなかった)。図3は、励起信号の成分とタイミングを表にしたものであるが、このデータは、一般的な方法で図4において図示されている。
【0034】
図5は、1525ミリ秒で行った未補正のDC測定だけを使った、全105の共変量のサンプル([G]、%HCT、℃)に対する、およそ1600のデータポイントについて、正規化誤差対基準グルコースをプロットしたものである。DC測定からの予測グルコースの決定は、周知の先行技術の技法を使って行われた。当業者にとっては容易に明白となるとおり、このように短い、DCだけのテスト時間では、測定システムのパフォーマンスは非常に悪く、トータルシステムエラーは51%である。
【0035】
図3および4に示すとおり、この実施例1のAC励起電位(1〜5)は、順次印加された。試料塗布の検知(用量検知)、および毛細管テストチャンバの充填(試料充足)の判定のためにの10kHzの信号が最初に印加され(図示せず)、記載のシーケンスは開始された。滴下検出および用量の充足性のためにAC測定を使用することは、米国特許第7597793号明細書に記載されており、これは、ここに参照として組み込まれる。
【0036】
試料充足性の判定後、300ミリ秒間、10kHzのブロックがAC安定化のために印加され、続いて、それぞれ持続時間が100ミリ秒となる、10kHz、20kHz、2kHzおよび1kHzの信号の、4つのさらなるACデータブロックが印加された。ここでいうすべての時間は、試料の用量の充足性の検出から始まる。さらに、本発明とは無関係であるが、主に、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)関連の測定器との上位互換性の安全確保のために、ブロック1は、図3のような順番に保たれた。さらに、AC安定化のために、ブロック1が使用されてから、同じ周波数で次のブロックが使用された。こうした作業の一部における目的の1つは、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)測定器の製品基盤に対する上位互換性の短いテスト時間を示すことであった。連続的なAC/DC対テスト時間において、補正効果の限度を調べるために、2つの周波数のみで、追加で実験が行われた。たとえば、図8を参照されたい。
【0037】
AC測定後、測定電極が100ミリ秒間、回路オープンに保たれて、その後、450mVのDC信号が印加された。50ミリ秒の予備安定化と、25ミリ秒のトレーリングデータ通信時間とからなる、75ミリ秒の遅延が、各励起ブロック間にあった。テスト時間は、1525ミリ秒(1.525秒のテスト時間では、DCが1.5秒、通信時間が0.025秒であった)と評価された。
【0038】
ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響についてDCグルコース測定値を補正するために、以下の方程式を使って、4つの100ミリ秒のAC励起ブロックそれぞれについて、ACアドミタンス値が得られた。
【0039】
予測グルコース=INT+Yi2×Y2+Pi2×P2+Yi3×Y3+Pi3×P3+Yi4×Y4+Pi4×P4+Yi5×Y5+Pi5×P5+exp(SLOPE+Ys2×Y2+Ps2×P2+Ys3×Y3+Ps3×P3+Ys4×Y4+Ps4×P4+Ys5×Y5+Ps5×P5)×DCPOWER (方程式1)
ここで、
Yi2、Yi3、Yi4、Yi5、Ys2、Ys3、Ys4およびYs5は定数
Pi2、Pi3、Pi4、Pi5、Ps2、Ps3、Ps4およびPs5は定数
Y2は、10kHz(第2のブロック)でのアドミタンスの大きさ
Y3は、20kHzでのアドミタンスの大きさ
Y4は、2kHzでのアドミタンスの大きさ
Y5は、1kHzでのアドミタンスの大きさ
P2は、10kHz(第2のブロック)での位相角
P3は、20kHzでの位相角
P4は、2kHzでの位相角
P5は、1kHzでの位相角
INTは、切片(intercept)
SLOPEは、傾き(slope)
DCは、DC測定で予測された未補正のグルコース応答
POWER=Const+Yp2×Y2+Pp2×P2+Yp3×Y3+Pp3×P3+Yp4×Y4+Pp4×P4+Yp5×Y5+Pp5×P5
【0040】
方程式1は、指数モデルによって、システムの用量の応答が概算され得ることを実証している。この指数モデルの傾き(slope)および指数(POWER)は、温度やヘマトクリット値などの共変量による影響を受ける。AC測定値(アドミタンスおよび位相)は、こうした共変量に敏感なため、共変量の影響を補償するために、傾きおよび指数の項において使用される。パラメータの推定値は、グルコース、温度およびヘマトクリット値が共変するところで収集されたデータでパラメータの推定を行うことによって定められる。この実施例におけるDC値は、1つの測定されたDCポイントから選択されたもので、方程式1は、単一のDC値について固有のものである。これより多いDC値、つまり、DCブロック中に行われる2つ以上の電流応答測定について、より一般的な数式は、
予測グルコース=ba0+a1×Ieff+a2×Peff+a3×Yeff+(b4+exp(b0+b2×Peff+b3×Yeff))×Ieff(c0+c2×Peff+c3×Yeff)
ここで、
Ieff=bV0+bV1×DCl+bV2×DC2+bV3×DC3+bV4×D4+bV5×DC5+bV6×DC6
Peff=bP0+bP1×P1+bP2×P2+bP3×P3+bP4×P4+bP5×P5+bP6×P6
Yeff=bY0+bY1×Y1+bY2×Y2+bY3×Y3+bY4×Y4+bY5×Y5+bY6×Y6
である。
【0041】
ACアドミタンスの大きさおよび位相データを使って、ヘマトクリットおよび温度による影響に関して、DCグルコース応答データを補正することについては、米国特許第7407811号明細書において詳細に論じられている。
【0042】
図6もまた、1525ミリ秒で行われたDC測定がAC測定と上述の方法とを使って補正されていることを除いて図5と同様に、全105個の試料に関する、正規化誤差対基準グルコースをプロットしたものである。こうして補正することによって、測定システムは、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響を補償することができる。図示のとおり、今度は、全測定結果が、±15%の正規化誤差となり、トータルシステムエラーは9.4%で、全てたった1.525秒のテスト時間で行われた。
【0043】
したがって、試料を調べて、グルコースレベルの正確な評価を妨げる干渉物を測定するため、そして、グルコース測定値を補正することによって測定時のこうした干渉物による影響を取り除くために、複数の連続的なAC励起周波数を使って、1.525秒という非常に短いテスト時間が達成できることを、この実施例1は実証している。この驚くべき結果は、上記に指摘したような先行技術の教示とは相違するものである。
【0044】
試薬の厚みの調節
以下の実施例2の記載から示される実施形態を含めて、ここに開示される実施形態のいくつかにおいては、たとえば、スロットダイコーティングのような、バイオセンサーの表面に試薬を均一に塗布する方法を使って、バイオセンサーの試薬の厚みを正確に調節することも利用されている。本文にて開示される試薬コーティングの厚みは、概しておよそ1.6〜5μmである。試薬コーティングの均一性、およびその結果生じる、試薬膜の体液試料との均一な溶解/水和が、AC測定値と良好に相関する再現性を可能にするため、正確に補償されたグルコースを提供することができる。試薬の厚みが均一でなければ、特に短時間では、測定値のばらつきが増えるため、より高速な方法およびパフォーマンスの向上を達成するにあたって支障がある。強固な性能を求めて、我々は非常に均一な膜を目指した努力を行ってきた。均一な膜のコーティングに関する方法についての記載、および開示については、上述した米国特許出願公開第2005/008537を参照されたい。
【0045】
図1および図7は、試料塗布後のDC励起信号の印加のタイミングが、約75ミリ秒から1400ミリ秒までの間で異なるような様々なテストについて、試薬の化学的性質に適用された試料のDC応答測定値を示す。図1の水和作用は、より薄い図7の試薬よりも、ストリップ同士の均一性が悪い。試料塗布後にDC励起を印加するのが早すぎると、非コットレルな応答(non-Cottrellian response)を生じ、このため、グルコース濃度の測定が不正確となる恐れがある。
【0046】
その概要が米国特許出願公開第2005/0008537号明細書に記載されるコーティング方法を使っている試薬コーティングは、図1(塗装重量:50g/m2)では、およそ3.6μm、図7(塗装重量:20g/m2)では、およそ1.6μmであった。これらの図からわかるように、試料が塗布される試薬層が薄いほど、塗布後すぐにDC励起が印加されると、その応答が、予測されるコットレル的な減衰(Cottrellian-like decay)をよりいっそう速く示し始めるため、短いテスト時間での、試料グルコース濃度の正確な判定が可能になる。これは、DC測定ができる時間を制限する試薬層内での酵素の効力、水和および拡散が、より薄く、および/または、より均一な試薬層の濃度によって高められるからである。図30は、米国特許出願公開第2005/0008537号明細書に記載される、湿潤試薬コーティング方法を使った、塗装重量設定値と、乾燥被膜厚の推定値および実際の測定値との表を示している。各塗装重量を達成するために必要とされる機器操作パラメータは、この刊行物およびこれに関連する分野の通常の技術により、理解されるであろう。
【0047】
バイオセンサー上に薄い試薬ストリップを形成するのに有用な技術および方法は、米国特許出願公開第2005/0016844号、および第2005/0008537号明細書において開示され、それら開示の全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【0048】
図8は、4μm、2.5μmおよび2.0μmの厚みで形成された試薬コーティングを、その上に有するバイオセンサーで行われたテストを要約したものである。表1は、図8で使われたバイオセンサーにコーティングされた湿潤試薬の全体的な配合を示す。この試薬は、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)バイオセンサーの試薬に類似するものだったが、破砕シリカが調合された。未破砕シリカが、より薄いコーティングを損なうであろう粒子サイズを有しうるという懸念から、シリカの平均的な粒子サイズを小さくするために、破砕シリカが使用された。これらは、測定される厚みが異なるように、異なった塗装重量でコーティングされる。この目的は、より上の厚みレベルのために少なくとも予めいくらか最適化された、グルコースバイオセンサー用の試薬の塊で始めることであった。そして、スロットダイコーティング法を使って、同一の試薬の塊を使って、塗装重量を調節することによって、およそ4μm〜2μm厚の試薬が用意された。試薬をこのようにつくることによって、より厚くなる塗装重量のために最初に最適化された有効成分の濃度もまた低くなる。
【0049】
【表1】
【0050】
血液試料が、バイオセンサーのそれぞれに塗布され、試薬が試料と水和すると、2kHzまたは20kHzのAC励起周波数が、バイオセンサーに印加された。アドミタンスデータは、100ミリ秒毎に1秒間測定され、図8にプロットされている。示されているように、ACアドミタンスは、試料塗布後、400ミリ秒未満で安定し、100ミリ秒でのACデータは、ここに以下に開示する手順を使ったDCグルコーステスト結果の補正に使用するのに十分であることが示された。図1および7に示されるデータから、薄い試薬は、試料塗布後、非常に迅速に安定することが明らかである。テストされた膜のうち、試薬が薄いほど、AC応答は、より早く、しかもより高い再現性をもって安定した。
【0051】
本文において開示される短いテスト時間を達成できるかどうかは、試薬膜における酵素およびメディエータの水和の速さと、試薬膜下の電極表面への反応生成物の拡散の速さとに大きな影響を受ける。米国特許出願公開第2005/0016844号および第2005/0008537号明細書において開示された、試薬層の堆積のためにスロットダイコーティング法を使用することにより、より速く、より再現性の高い、試薬の溶解、充填時間および水和プロファイルのための均一な薄膜の試薬の堆積が可能になる。図9は、これらの方法を使って、目標の2.5μmの厚みまで(名目上の塗装重量=30g/m2)、バイオセンサー上に堆積させた薄膜の試薬の表面形状測定値を示す。理解されるように、試薬ストリップの中央のB領域における厚みの平均は、2.46μmである。酵素の効力、水和および拡散は、薄い試薬膜(1つの実施形態において、厚みは約1.6〜10μm、また、他の実施形態においては、厚みは約1.6〜5μm)に、より速く、より均一に作用する。
【0052】
水和がより早いため、試料塗布後すぐに測定ができるという点で、薄膜は測定に役立つ。DC応答と比較して、AC安定化は膜厚による影響が少ないようである。膜が薄ければ薄いほど、DC励起に対して、より早く、よりコットレル的な反応(Cottrellian-like behavior)が観察される。このことは、図1と図7とを比較するとわかる。図1は、より厚い、つまり、50g/m2の膜での電流応答を示しているが、試料の充足性の検出後、DC励起がおよそ100〜700ミリ秒で始まると、図示されるように、早期の電流対時間のトレースにばらつきが生じる。対照的に、図7に示されるとおり、20g/m2では、同一の時間範囲について、電流応答は良好な傾向をたどる。さらに、DC電位印加後、電流対時間の応答は、およそ300ミリ秒で、よりコットレル的(Cottrellian-like)になる。しかし、薄膜に関しては、考慮する必要のある、いくつかの制限がある。リニアな応答を得ることと、求められるセンサーの長期安定性を維持することとの両方のため、センサーに必要とされる酵素には最小量がある。この実施例の膜は、同一の試薬の塊からできているため、薄ければ薄いほど、比例的に、酵素が少なくなる。膜厚の下限は、一般的に、十分な応答と安定性が得られるような、試薬塊における酵素濃度に依存する。このコーティング方法および基質の厚みのばらつきによって、均一なコーティング厚が得られない場合、厚みに下限があろうことも理解される。均一かつ一様に膜厚を調節することに関するその他の事項および開示については、たとえば、上述された米国特許出願公開第2005/0008537号明細書を参照されたい。
【0053】
実施例2−短いトータルテストタイムおよび様々な試薬厚みでの連続的な多周波数のACテスト
米国インディアナ州、インディアナポリスにあるロシュ・ダイアグノスティックス社のACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)バイオセンサーと類似した、電極およびテスト構成を使って、複数の全血試料のグルコース濃度をテストする共変量の調査が行われた。表1(上記)と同一または実質的に類似した配合の、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素(PQQ−GDH)をベースとする試薬が、3種類の厚み、2μm、2.5μm、および4μmのうち、いずれか1つの厚みでバイオセンサーに適用された。共変量の調査は、実施例1と類似した全血試料で、ただし、図10に詳細に記載されるとおり、6種類のグルコース濃度、5種類のヘマトクリット値、および5種類の温度で行われた。
【0054】
この実施例2のAC励起電位が、図11に詳細に記載されるとおり、順次印加された。10kHzでの用量検出および試料充足性の方法(図示せず)の後、300ミリ秒間、20kHzの信号が印加され、その後、100ミリ秒の、20kHz、10kHz、2kHz、および1kHzの信号が印加された。そして、測定電極が100ミリ秒間、回路オープンの状態に保たれた後、550mVのDC信号が印加された。DATSの既存の測定器に事前設定されたタイミングパラメータにより、それぞれの励起ブロック間に、50ミリ秒の安定化遅延および25ミリ秒の、トレーリングデータの通信時間があった。DC信号に対する応答の測定値は、トータルテストタイムで抽出され、およそ1500ミリ秒で始まり、100ミリ秒の間隔で測定された。ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して、DCグルコース測定値を以下の方程式を使って補正するために、AC励起ブロックのそれぞれからACアドミタンス値が得られた。
【0055】
予測グルコース=INT+Yi2×Y2+Pi2×P2+Yi3×Y3+Pi3×P3+Yi4×Y4+Pi4×P4+Yi5×Y5+Pi5×P5+exp(SLOPE+Ys2×Y2+Ps2×P2+Ys3×Y3+Ps3×P3+Ys4×Y4+Ps4×P4+Ys5×Y5+Ps5×P5)×DCPOWER (方程式2)
ここで、
Yi2、Yi3、Yi4、Yi5、Ys2、Ys3、Ys4、およびYs5は定数
Pi2、Pi3、Pi4、Pi5、Ps2、Ps3、Ps4、およびPs5は定数
Y2は、20kHz(第2ブロック)でのアドミタンスの大きさ
Y3は、10kHzでのアドミタンスの大きさ
Y4は、2kHzでのアドミタンスの大きさ
Y5は、1kHzでのアドミタンスの大きさ
P2は、20kHz(第2ブロック)での位相角
P3は、10kHzでの位相角
P4は、2kHzでの位相角
P5は、1kHzでの位相角
INTは、切片
SLOPEは、傾き
DCは、DC測定で予測された未補正のグルコース応答
POWER=Const+Yp2×Y2+Pp2×P2+Yp3×Y3+Pp3×P3+Yp4×Y4+Pp4×P4+Yp5×Y5+Pp5×P5
である。
【0056】
方程式2が、実施例1の方程式1と実質的に同一であることが理解されるであろう。主要な相違点は、異なる周波数を印加するためのシーケンス順だけであり、実施例1で印加された周波数シーケンスは10−20−2−1kHzで、実施例2で印加された周波数シーケンスは、20−10−2−1kHzであった。
【0057】
DC測定による未補正のグルコース応答(つまり、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響について未補正の)は、周知の先行技術技法を使って測定された。その後、方程式2において上記に詳細に説明したとおり、このDCグルコース応答は、ACアドミタンスの大きさおよび位相測定データを使って、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して補正された。トータルシステムエラー、バイアス、精度、およびNVarは、それぞれ計算され、図12において表で示されている。理解されるように、全3つの試薬の厚みに関するトータルシステムエラーは、1.525秒という短いトータルテストタイムで、非常に良好であった。
【0058】
上述のとおり、トータルシステムエラー、すなわちTSEは、システムの正確性および精度を組み合わせた評価基準である。これは、典型的には、(バイアスの絶対値)+2×(精度)として定義される。詳細については、以下の通りである。
バイアス=正規化誤差の平均値
精度=標準偏差(正規化誤差)
ここで、
基準グルコース≦75mg/dlの場合、
正規化誤差=(予測グルコース−基準グルコース)、および
基準グルコース>75mg/dlの場合、
正規化誤差=(予測グルコース−基準グルコース)×100/(基準グルコース)
である。
【0059】
図13は、上記に詳細に記載したようなAC測定を使って補正されたDC測定データについての、正規化誤差対基準グルコース値のプロットである。1500ミリ秒で行われたDC測定だけが使われ(通信に、さらに25ミリ秒かかった)、そのため、このデータは、1.525秒という実際のトータルテストタイムを表している。ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響は大幅に減少し、トータルシステムエラーは、共変量の調査全体で、10.0%となっている。
【0060】
図14は、1525ミリ秒で行われた未補正のDCグルコース測定のすべてに関して、予測グルコース値対基準グルコース値を示すクラークエラーグリッドである。クラークエラーグリッド分析(EGA)は、患者の現在の血中グルコースの推定値の臨床的正確さを、測定器において得られた血中グルコース値と比較して明確にするために、1987に開発された。Clarke WL, Cox D, Gonder-Frederick LA, Carter W, Pohl SL:Evaluating clinical accuracy of systems for self-monitoring of blood glucose、Diabetes Care 10:622-628, 1987、を参照されたい。その後、クラークエラーグリッドは、テストメータによって生成された血中グルコースの推定値の臨床的正確さを、基準値と比較して明確にするために使用されている。EGAは、血中グルコース測定器の正確性を決定する標準的な方法として、一般的に受け入れられている。
【0061】
クラークエラーグリッドでは、基準グルコース測定器および評価されるグルコース測定器から得られたテスト結果の散布図が、5つの領域に分かれている。基準センサーの20%以内の値となる領域A、20%からは外れるが不適切な処置を招くことにはならないポイントを含む領域B、不必要な処置を招くポイントの領域C、低血糖症が検出されない可能性のある危険を意味するポイントの領域D、および、低血糖症の処置を高血糖症と、また、高血糖症の処置を低血糖症と混同させることになるようなポイントの領域Eである。図14において、点線は、基準センサーから15%以内の値を追加で表している。
【0062】
図14においてわかりやすく示されるとおり、未補正のグルコース値は、クラークエラーグリッドに設定される所望の誤差範囲である、±15%の誤差範囲からかなり外れている。このような正確性レベルでは、血中グルコース監視システムに関する一般的な業界の慣習にしたがって、また、FDAガイドラインにしたがって、グルコーステストメータにおいては許容できないと考えられるであろう。
【0063】
図15は、図14に示されるものと同一のDCテストデータを示すクラークエラーグリッドである。ただし、このデータは、上述の方法を使って、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に関して補正されている。わかりやすく示されているように、非常に短いトータルテストタイムでグルコース値を予測するにあたって、ヘマトクリットおよび温度に関する補正がAC測定データを使って行われる場合、測定システムのパフォーマンスは、DC測定結果だけを使うより、はるかに優れたものとなる。
【0064】
上記実施例2からわかるように、厚みが約1.6〜5μmのような薄い試薬膜の使用は、2秒未満のトータルテストタイムで、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して補正された正確なグルコースの測定を行う能力を支持する。均一な試薬コーティング、および、その結果として、試薬膜が体液の試料と均一に拡散/水和することによって、AC測定と良好に相関する再現性が可能になるため、正確に補償されたグルコースのテスト結果が得られると考えられる。
【0065】
実施例1および2から、当技術におけるこれまでの理解にかかわらず、連続的なACブロックを短くすること、および/または、より少ない連続的なAC周波数を使用することによって、より短いテスト時間が達成できることが明らかとなっている。しかし、特に複数の変化要素について補正するときに、または、検体測定に加えて、1つまたは2つ以上のこうした変化要素のレベルまたは概略の範囲の表示を実際に示すことが望まれるときに、より多くの周波数を使用することによって、測定の補正における利点が得られる。これを達成するために、かつ、依然として可能な限り最短のテストを成し遂げるために、実施例3および4に記載されるような、多周波励起波形の使用が検討された。
【0066】
多周波数の励起
ここで述べたように、ここに開示される実施形態のいくつかにおいては、多周波励起波形技術を使うことによって、複数の周波数での、より短い時間にわたるACテストデータの収集を利用している。こうした多周波励起波形が、周波数が異なる個々の波形を複数、一緒に加えることによって形成されるため、体液試料が、順次ではなく実質的に同時に、複数の周波数によって励起される。
【0067】
そして、結果として生じる試料の応答が測定でき、この測定は、すべての励起周波数に対する試料応答を含んでいるであろう。そして、離散型フーリエ変換(DFT)などのフーリエ変換技術を使用することよって、それぞれの励起周波数成分の固有の寄与量を推定することができる。ここに開示される様々な実施例では、マルチサイン波の励起波形が利用されているが、当業者であれば、あらゆる所望の形状を有するそれぞれの波形を使って、多周波数の波形を形成してよいことが分かるであろう。波形の形状としては、三角、矩形、のこぎり状、デルタなど、いくつかが、単に例として挙げられるが、これらに限定されない。多周波数の波形を形成するために使用される成分のAC波形は、それぞれ、あらゆる所望の周波数、およびあらゆる所望の振幅を有してよい。多周波の技術の使用により、所望のデータを収集するのに必要な時間が縮まるだけでなく(AC測定は、順次ではなく同時に行われるため)、印加されたそれぞれの周波数に対応するデータ収集の間の試料の変化が減るため、補正によって良好に相関する。このことは、特に、非常に短いトータルテストタイムを利用するテストであって、しかも、試料塗布後すぐ測定が行われるため、試料がまだ拡散中であり、かつ試薬の化学的性質との反応中であるようなテストに有効である。また、AC測定は、DC測定と時間的に近づけて行うことができる。ACとDCとの間の相関が良好であるほど、試料が安定していなくても、干渉補償がより良好になる。
【0068】
米国特許第7407811号明細書に開示されるような、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響について補正を行う、血中グルコーステストシステムの例示的な先行技術の測定シーケンスは以下の通りである。
工程1:血液が、測定器内のバイオセンサーに塗布される。
工程2:滴下の検出および/または用量の充足性のため、試料のAC測定が行われる。
工程3:ヘマトクリットおよび温度に対する補正係数の算出を可能にするために、AC測定が、1つの期間にわたって行われる。多くの例では、複数のAC励起周波数が試料に順次印加される。
工程4:手を加えていない(未補正の)グルコース応答を測定するために、DC測定が行われる。
工程5:AC測定で得られた補正係数を使って、手を加えていないDC応答が、ヘマトクリットおよび温度の影響に対して補償される。
工程6:測定結果が、ユーザに対して表示される。
【0069】
測定結果を2秒未満で取得するにあたって、この手順には、いくつかの欠点がある。ヘマトクリットおよび温度についてのACで得られたデータで、手を加えていないDCグルコース測定値を補正することによって、正確な測定結果が得られるかもしれないが、ACデータを収集するための時間が追加で必要となるため、トータルテストタイムが長くなり、さらに、最終的な測定結果に到達するために使用される様々なACおよびDC測定は時間的に分離される。テスト中の試料が試薬と化学反応を続け、試薬はこの間、水和し続けるので、この、様々なACおよびDC測定の時間的な分離は、幾つかの状況においては、幾らかの憂慮となり得る。つまり、AC信号が、様々な波形の周波数で順次印加される測定シーケンスにおいて、各周波数に対するアドミタンスおよび位相データは、後続の手を加えていないDC応答の測定を補正するのに依然として有用であるが、理想的ではない。なぜなら、試料−試薬の、水和−反応の変遷の進行中に、それぞれのデータポイントは、異なる時間で取得されるからである。AC励起の波形ですべての周波数を同時に印加することによって、各周波数に対するアドミタンスおよび位相データは、なお個別に認識可能であり、有利にも、試料−試薬の変遷の同一状態に符号する。
【0070】
例示的な多周波数のAC励起波形の印加と、その後のDC信号の印加とから測定される電流応答が図29に示される。実施例3および4については、アジレント社のVXIコンポーネントをベースに構成され、かつ、要請された組み合わせおよび順序で、センサーにACおよびDC電位を印加して、その結果として生じるセンサーの電流応答を測定するようにプログラム可能な電気化学試験スタンドを使って、データ取得が実施された。
【0071】
実施例3−短いトータルテストタイムでの多周波数のACテスト
実施例3について実施された測定は、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)バイオセンサーの電極構造に類似した電極構造、および、(上記)表1に記載された配合と同一または類似した試薬で行われた。スパッタリング、レーザーアブレーション、試薬スロットダイコーティング、およびラミネート加工を含んだ工程を組み合わせて、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)バイオセンサーと概して同じ技術を使って、こうしたセンサーは製造された。
【0072】
測定シーケンスは、3つの基本的ブロックからなるものであった。第1の測定ブロック(図示せず)では、試料の用量充足性(測定を実施するのに十分な毛細管テストチャンバの充填)を検出するために、テストストリップに印加される10240Hzのサイン波励起が利用された。滴下検出および用量充足性のためのAC測定の使用は、上述にて参照された米国特許第7597793号明細書において記載されている。
【0073】
十分な試料が検出された後、対象のそれぞれの周波数に対するACアドミタンスの大きさおよび位相データを同時に収集するために、(以下に詳述するとおり)短い間隔で、(多音としても知られる)マルチサイン波の波形を使った第2の測定ブロックが開始された。本実施例3で使用されるマルチサイン波の波形は、4つの周波数(1024、2048、10240、および20480Hz)のサイン波を合計することによってつくられた。上述にて参照されたAC励起の使用に関する出願人の過去の開示によると、これらの周波数が選択されたのは、これらが干渉物の補正に有用であることが知られているためである。高い方の約20kHzおよび約10kHzの周波数範囲は、ヘマトクリットに対する有用な補正をもたらすことが知られている。低い方の、約1kHzおよび約2kHzの周波数範囲は、潜在的な個別の測定の有用性が知られているために含められた。一般的に、こうした周波数の組み合わせによって、ヘマトクリットや温度などの、複数のパラメータの補正が可能となる。これらの値は、たとえば、特に20kHzでなくてもよく、干渉物が、補正されるグルコース応答から無理なく独立して測定できるような範囲内であればよいことが、よく理解される。周波数が高いほど、ヘマトクリットなどの、1つの干渉物との相関がより良好になり得るが、別の周波数が、別の干渉物とより良好に相関することがある。最良の全体的な補正応答をもたらすであろう周波数または周波数の組み合わせの最適化は有用であり、それはこの開示を鑑みて、十分に、この技術の通常の当業者の能力の範囲内にある。しかし、優れた補正、および短いトータルテストタイムをもたらしながら、複数の周波数から応答データを収集する時間を減らすために多周波数のAC波形を扱うにあたって、過去の経験を頼りにするには、これら既知の範囲における周波数を使用することが有用であろうと判断された。さらに、1つの周波数だけで測定するよりも、1つより多い周波数からのデータにより、複数の干渉物について、より良好な補正ができることを、過去の経験が示している。ここでは、事前にプログラムされたデータ分析の手順が使用できるように、4つの周波数が選択された。しかし、たとえば、2つ、3つ、または、5つ以上の周波数でさえも、十分な補正をまさに良く供給し得る。AC周波数が2つだけの、いくつかの個別のAC法が実施されている。
【0074】
実施例3について、そのマルチサイン波の波形は、1周期の1024Hzの信号、2周期の2048Hzの信号、10周期の10240Hzの信号、および20周期の20480Hzの信号からなるものであった。ピークの振幅は、12.7mVに設定されたが、この信号のマルチサイン波の性質により、実際の実効値は大幅に低くなるであろう。(実効値は、波形の二乗平均平方根値、SQRT[(1/N)×SUM(x2)]である。)波形は、デジタル−アナログ変換器に入力された16000データポイントを含んでおり、図16に示されている。
【0075】
マルチサイン波の励起波形を使用する1つの利点は、測定が同時に行われるため、全4つの周波数についてのデータを収集するために必要とされるAC測定時間が減少することである。マルチサイン波の励起波形のもう1つの利点は、周波数すべてに対するAC測定データが同時に収集されるため、試薬と反応するにつれて試料が変化していることによる影響が、より少なくなることである。
【0076】
マルチサイン波の波形は、用量充足性の表示後、300ミリ秒間、テスト試料に印加され、100ミリ秒の間隔で分析された。この実施例3では、測定時間を300ミリ秒にしたが、似たような結果のために、これよりも長い、短い、および、可変の時間が採用され得る。一般的に、2秒以下のトータルテストタイムを達成するための、1つの実施形態におけるマルチサイン波の測定時間の範囲は、100ミリ秒〜1900ミリ秒である。ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)のテスト構成を使用すれば、200〜500ミリ秒は、テスト試料から再現可能なAC応答を与えるのに、十分な時間であった。
【0077】
マルチサイン波の信号を使って、様々な励起周波数が同時に試料に印加されるが、それぞれの周波数成分に起因する応答は、それらの当業者に良く理解される、高速フーリエ変換(FFT)、または離散型フーリエ変換(DFT)などの適切な数学的機能、またはその他の数学的技術を使って、AC測定データから求められ得る。本実施例3において、各周波数に対するアドミタンスの大きさおよび位相データは、DFTを使って求められた。各周波数に対して求められた、このアドミタンスデータが、テストされた全9個の試料の用量充足性の後、200ミリ秒に対応する時点に関して、図17Aに示される。実施例3の各周波数におけるヘマトクリットに対する位相のグラフが図17Bに示され、実施例3の各周波数におけるヘマトクリットに対するアドミタンスの大きさのグラフが図17Cに示される。
【0078】
第2の測定ブロックは、当該技術において知られるような、手を加えていない(未補正の)予測グルコース値を得るために、試料に印加される550mVのDC信号からなるものであった。DCの4つの時点が、500、600、1000および1500ミリ秒の(つまり、0.5、0.6、1.0および1.5秒のトータルテストタイムについての)終了データポイントで、100ミリ秒の平均データポイントとして測定データから抽出された。
【0079】
目標グルコース濃度を90mg/dl、250mg/dl、および600mg/dlとし、目標ヘマトクリット値を20%、45%、および70%として、共変量の調査用に9つの全血試料が用意された。それぞれのテスト試料について、DCのそれぞれの時点が、ノンリニア・フィット(Nonlinear fit)によって分析され、300ミリ秒でのACアドミタンスの大きさおよび位相データを使用して、ヘマトクリットおよび温度による影響に対して補償された予測グルコース応答を、以下の方程式で算出した。
予測グルコース=INT+Yi1×Y1+Pi1×P1+Yi2×Y2+Pi2×P2+Yi3×Y3+Pi3×P3+Yi4×Y4+Pi4×P4+exp(SLOPE+Ys1×Y1+Ps1×P1+Ys2×Y2+Ps2×P2+Ys3×Y3+Ps3×P3+Ys4×Y4+Ps4×P4)×DCPOWER (方程式3)
ここで、
Yi1、Yi2、Yi3、Yi4、Ys1、Ys2、Ys3、およびYs4は定数
Pi1、Pi2、Pi3、Pi4、Ps1、Ps2、Ps3、およびPs4は定数
Y1は、1024Hzでのアドミタンスの大きさ
Y2は、2048Hzでのアドミタンスの大きさ
Y3は、10240Hzでのアドミタンスの大きさ
Y4は、20480Hzでのアドミタンスの大きさ
P1は、1024Hzでの位相角
P2は、2048Hzでの位相角
P3は、10240Hzでの位相角
P4は、20480Hzでの位相角
INTは、切片
SLOPEは、傾き
DCは、DC測定で予測された未補正のグルコース応答
POWER=Const+Yp1×Y1+Pp1×P1+Yp2×Y2+Pp2×P2+Yp3×Y3+Pp3×P3+Yp4×Y4+Pp4×P4
である。
【0080】
ここでも、この方程式は、方程式1および2と同じ形態であるが、変数の範囲は、方程式1および2で使われたようなY2〜Y5およびP2〜P5ではなく、200ミリ秒での同時のACのための、Y1〜Y4およびP1〜P4に亘ることが理解できる。
【0081】
上述のように、ACアドミタンスの大きさおよび位相データを使って、ヘマトクリットおよび温度による影響に対してDCグルコース応答データを補正することは、米国特許第7407811号明細書において論じられている。
【0082】
DC測定による未補正の(つまり、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して未補正の)グルコース応答は、周知の先行技術の技法を使って測定された。そして、このDCグルコース応答は、方程式3において上記に詳述されているように、ACアドミタンスの大きさおよび位相測定データを使って、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して補正された。トータルシステムエラー(TSE)、バイアス、精度、およびNVarが、(補正後および未補正の、両方の結果について)それぞれのトータルテストタイムについて算出され、これらは、図18において表で示されている。わかりやすく示されているように、グルコース値を予測するにあたって、ヘマトクリットおよび温度に関する補正が、AC測定データを使って行われる場合、測定システムのパフォーマンスは、DC測定結果だけを使うより、はるかに優れたものとなる。さらに、複数の励起周波数について、同時にAC測定データを取得することによって、非常に短いトータルテストタイムが可能となり、その測定結果は、1.5秒、1.0秒、0.6秒および0.5秒のトータルテストタイムで、非常によいTSE値を示す。
【0083】
図19は、未補正のグルコース測定値について、正規化誤差対基準グルコース値をプロットしたもので、このデータにおいて、ヘマトクリット値への著しい依存がみられる。トータルシステムエラーは53.8%である。図20は、同じ測定に関して正規化誤差対基準グルコース値をプロットしたものであり、ただし今回は、上記に詳述されたようにAC測定を使ってDC測定データが補正されている。明らかに、ヘマトクリットによる干渉の影響は大幅に減少し、トータルシステムエラーは14.2%となっている。用量の充足性の表示後、500ミリ秒で取得されたAC測定データだけを使って、このような減少が達成された。
【0084】
図21は、上記500ミリ秒のデータポイントのすべてについて、補正後および未補正の両方に関して、予測グルコース値対基準グルコース値を示すクラークエラーグリッドである。わかりやすく示されているように、未補正のグルコース値は、±15%の誤差範囲からかなり外れているが、補正後のデータは、すべてこの限度内にある。したがって、2分の1秒のグルコーストータルテストタイムを達成するための多周波数の励起の使用が実証された。
【0085】
ここに開示される多周波数の励起の技術を使用すると、複数の周波数によって同時に試料を励起させ、これらの周波数に対する試料の応答を同時に測定できるようにすることによって非常に短いテスト時間が可能となることを、この実施例3の上記データは明確に示している。2分の1秒のトータルテストタイムでさえ、このデータは、干渉物によって生じるDC測定誤差の大幅な減少をもたらし、本質的に、瞬間的に起こる測定結果が、十分に、容認される業界基準の範囲内にある測定正確性をもって、ユーザに報告されることを可能にしている。
【0086】
実施例4−短いトータルテストタイムでの多周波数のACテスト
実施例4で実施された測定は、実施例3と同一の電極構造および試薬で、しかも同一の測定シーケンスで行われた。しかし、実施例3の測定は、3つの異なった目標検体濃度、および各濃度に対する3つの異なったヘマトクリット値を有する試料について行われたが、実施例4の測定は、7つの異なった目標検体濃度、および各濃度に対する3つのヘマトクリット値を有する試料について行われた。
【0087】
実施例3においてわかったように、実施例4の測定から、マルチサイン波の励起波形を使用する利点は、測定が同時に行われるため、全4つの周波数に対するデータを収集するのに必要なAC測定の時間が減少することだということがわかった。マルチサイン波の励起波形のもう1つの利点は、全周波数に対するAC測定データは、同時に収集されるため、試料が試薬と反応するにつれて変化することによって受ける影響が少なくなるということである。
【0088】
目標グルコース濃度を50mg/dl、100mg/dl、140mg/dl、250mg/dl、300mg/dl、450mg/dl、および550mg/dlとし、目標ヘマトクリット値を20%、45%、および70%とする、共変量の調査のために、21の全血試料が用意された。各テスト試料に関して、DCのそれぞれの時点が、ノンリニア・フィットで分析され、300ミリ秒でのACアドミタンスの大きさおよび位相データを使って、ヘマトクリットおよび温度による影響に対して補償された予測グルコース応答を、以下の方程式で計算した。
予測グルコース=INT+Yi1×Y1+Pi1×P1+Yi2×Y2+Pi2×P2+Yi3×Y3+Pi3×P3+Yi4×Y4+Pi4×P4+exp(SLOPE+Ys1×Y1+Ps1×P1+Ys2×Y2+Ps2×P2+Ys3×Y3+Ps3×P3+Ys4×Y4+Ps4×P4)×DCPOWER (方程式4)
ここで、
Yi1、Yi2、Yi3、Yi4、Ys1、Ys2、Ys3、およびYs4は定数
Pi1、Pi2、Pi3、Pi4、Ps1、Ps2、Ps3、およびPs4は定数
Y1は、1024Hzでのアドミタンスの大きさ
Y2は、2048Hzでのアドミタンスの大きさ
Y3は、10240Hzでのアドミタンスの大きさ
Y4は、20480Hzでのアドミタンスの大きさ
P1は、1024Hzでの位相角
P2は、2048Hzでの位相角
P3は、10240Hzでの位相角
P4は、20480Hzでの位相角
INTは、切片
SLOPEは、傾き
DCは、DC測定で予測された未補正のグルコース応答
POWER=Const+Yp1×Y1+Pp1×P1+Yp2×Y2+Pp2×P2+Yp3×Y3+Pp3×P3+Yp4×Y4+Pp4×P4
である。
【0089】
ここでも、方程式4は、方程式1および2と同じ形態であるが、実施例3の方程式3と同様に、この変数の範囲が、方程式1および2で使用されたY2〜Y5およびP2〜P5ではなく、200ミリ秒での同時のACのための、Y1〜Y4およびP1〜P4に亘ることがわかる。
【0090】
実施例3にて論じているように、ヘマトクリットおよび温度による影響に対してDCグルコース応答データを補正するためにACアドミタンスの大きさおよび位相データを使用することは、米国特許第7407811号明細書において論じられている。実施例4について各周波数でのヘマトクリットに対するアドミタンスの大きさのグラフは、図27に示され、実施例4について各周波数でのヘマトクリットに対する位相のグラフは、図28に示される。
【0091】
DC測定による未補正の(つまり、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して未補正の)グルコース応答は、周知の先行技術の技法を使って測定された。そして、このDCグルコース応答は、方程式4において上記に詳述したように、ACアドミタンスの大きさおよび位相測定データを使って、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して補正された。トータルシステムエラー(TSE)、バイアス、精度、およびNVarは、それぞれのトータルテストタイムに関して(補正後および未補正の両方の結果について)計算され、図22において表に示された。わかりやすく示されているように、グルコース値を予測するにあたって、ヘマトクリットおよび温度に関する補正が、AC測定データを使って行われる場合、測定システムのパフォーマンスは、DC測定結果だけを使うより、はるかに優れたものとなる。さらに、複数の励起周波数について、同時にAC測定データを取得することによって、非常に短いトータルテストタイムが可能になる。図22に示したとおり、測定結果は、1.525秒、1.025秒、0.725秒および0.625秒のトータルテストタイムで、非常に良好なTSE値を示す。
【0092】
図23は、未補正のグルコース測定値に関して、正規化誤差対基準グルコース値のプロットしたもので、このデータにおいて、ヘマトクリット値への著しい依存がみられる。トータルシステムエラーは47.5%である。図24は、同じ測定に関して正規化誤差対基準グルコース値をプロットしたものでり、ただし今回は、ここに詳しく上述されたように、AC測定を使ってDC測定データが補正されている。明らかに、ヘマトクリットによる干渉の影響は大幅に減少し、トータルシステムエラーは10.2%となっている。21回の測定実行のそれぞれの測定データが図26に示されている。
【0093】
図25は、補正後および未補正の両方について、725ミリ秒でのデータポイントのすべてに関する、予測グルコース値対基準グルコース値を示すクラークエラーグリッドである。わかりやすく示されているように、未補正のグルコース値のほとんどは、±15%の誤差範囲からかなり外れているが、補正後のデータはすべて、この限度内にある。したがって、4分の3秒未満のグルコーストータルテストタイムを達成するための多周波数の励起の使用が実証された。
【0094】
ここに開示される多周波数の励起の技術を使用することによって複数の周波数で試料を同時に励起させ、これらの周波数に対する試料応答を同時に測定できるようにすることによって非常に短いテスト時間が可能になることを、この実施例4の上記データは、明らかに示している。4分の3秒未満のトータルテストタイムでさえ、このデータは、干渉物によって起こるDC測定の誤差の大幅な減少をもたらし、本質的に、瞬間的に起こる測定結果が、十分に、容認される業界基準の範囲内にある測定正確性をもって、ユーザに報告されることを可能にしている。
【0095】
実施例5−短いトータルテストタイムでの、DCの様々な時点にける連続的な多周波数のACテスト
本実施例5は、図30に示されるとおり、2.45μmの厚みに略相当する、名目上30g/m2の塗装重量の塗布に基づいた試薬膜厚を有するテストセンサーを使って、(上記)実施例2と同様に実施された。ただし、実施例2とは違い、アジレント社のVXIコンポーネントをベースに構成され、かつ、要請された組み合わせおよび順序で、センサーにACおよびDC電位を印加して、その結果として生じるセンサーの電流応答を測定するようにプログラム可能な電気化学試験スタンドを使って、データ取得が実施された。このようにしたのは、実施例1および2に関して述べたように、こうした測定のために、DATSとともに使用される既存の測定器は、波形の予備安定化、各周波数ブロック後のトレーリングの通信、および、DC信号印加の最初の100ミリ秒における、あらかじめ設定された「スキップ」時間のために、その間電流応答を測定することができない強制的な時間ブロックが要求される、あらかじめ設定されたパラメータを備えるからである。しかし、この実施例5に関しては、DATSの既存の測定器によって課される、あらかじめ設定されたタイミング条件の制限なく、連続的な多周波数のACを印加することが望まれた。実施例3および4において使用された、アジレントをベースにした試験スタンドによって、このように、所望の測定シーケンスをプログラムする柔軟性がもたらされた。
【0096】
実施例5の目的は、単一の、概して均一な試薬膜厚において、順次印加され、かつ、20kHz、2kHz、10kHz、および1kHzの周波数を有する、4つの短い200ミリ秒のAC励起ブロック一式を使って、ヘマトクリットと共変するDCグルコース応答を補正することができる様々な方法を、検討することであった。AC励起ブロックの印加は、十分な試料の添加が検出される時間である時間ゼロで開始した。したがって、AC励起ブロックは、間に時間を空けずゼロ時間に開始し、DC励起が印加される時間である、約800ミリ秒で終了する。
【0097】
DC応答データの収集は、800ミリ秒で開始して、3700ミリ秒まで行われた。このデータセットを使って、様々なACおよびDCパラメータを有するデータを分析した。この目的は、この均一な薄膜で、短いテスト時間において、良好なパフォーマンスに達することができるかどうかを判断し、1つまたは複数のAC応答を、補正のために使用することの効果を判定することであった。図31は、4つのAC周波数に関して測定された、AC応答対ヘマトクリット値を示す。これらすべてのデータは、ヘマトクリット値の増加に対するアドミタンス応答の逆の関係を示す。これが示すとおり、20kHzおよび10kHzの、より高い周波数での測定で、概して類似した応答が示され、2kHzおよび1kHzの、より低い周波数での測定で、概して類似した応答が示される。しかし、周波数が高くなるにつれて、ヘマトクリット対アドミタンスの関連性は高くなる。
【0098】
図32は、この共変量の調査のために収集された、未補正のDC応答データを示す。各DCテスト時間において、様々なヘマトクリット値に関連して電流応答が変化することは明確である。図33は、900ミリ秒で測定されたDC応答を使った共変量の調査に関して、基準グルコース値に対する未補正の正規化誤差の典型的な応答を示す。未補正の応答のTSEは41%である。しかし、図34に示したとおり、900ミリ秒でのDC応答が、たった2つ、つまり20kHzおよび2kHzの周波数によるAC応答データを使って補正される場合、TSEが大幅に改善し、7.1%まで低減している。図35〜39は、1100ミリ秒、1500ミリ秒、2000ミリ秒、2500ミリ秒および3000ミリ秒のそれぞれで測定され、かつ、ここでも、順次印加される20kHzおよび2kHzのAC信号の周波数から得られたAC応答データだけを使って補正された、補正後のDC応答に関する正規化誤差のプロットを示す。
【0099】
図40は、2通りの方法で、つまり、第1に、20kHzおよび2kHzのAC応答データで、第2に、10kHzおよび1kHzのAC応答データで補正された、様々なDCテスト時間に応じた、DC応答データのTSEの表を示す。このテスト構成では(TSEに関していえば)、20kHzおよび2kHzでのAC応答データは、10kHzおよび1kHzの応答データよりも、より良好に補正された。
【0100】
図40はまた、900ミリ秒という短いテスト時間では、より長い時間に比べて、TSEが実際に、より良好であることを示す、つまり、DC測定時間が長くなるにつれTSEが増加する、しかし、その後、3000ミリ秒という、よりいっそう長い時間ではTSEは減少する。より短いDC測定時間では、(補正係数を獲得するための)AC応答測定と(検体関連データを獲得するための)DC応答測定との間の時間が、およそ、たったの100〜900ミリ秒となるから、DC測定時間が短いほどTSEは低くなると考えられる。つまり、およそ200ミリ秒、400ミリ秒、600ミリ秒および800ミリ秒の時間でAC応答データが取得され、より短いDC応答データは、900ミリ秒および1100ミリ秒で取得される。したがって、膜の水和と反応特性とが、ほぼ同一になるときに、補正係数の応答と検体の応答との相関は最良となる。より短いDC応答測定時間で、膜の水和および膨張による影響がより少ない、拡散距離が短い電極表面近くで、測定が行われる。
【0101】
膜がすばやく水和および膨張し、DC応答が、このすばやく変化する領域において測定されているから、測定を行うDC応答時間が、ほどほどに長くなると、AC補正係数とDC応答とが、さらに離れる(相関性が低くなる)ため、TSEが増加する。しかし、たとえば、3000ミリ秒といった、よりいっそう長いDC測定時間では、試薬の水和および膨張が安定し始めると、DC値のばらつきが少なくなって、AC補正係数による補正が必要なくなり、TSEは再び小さくなる。したがって、このような、より長い測定時間では、TSEは、より早いDC応答測定時間のTSEに近い値にまで改善するようである。典型的には、先行技術の開示において教示されるAC/DC応答によって、DC応答が最も安定したときに、DC応答データが測定されたが、これは概して後になるので、補正係数と検体応答との間の相関がいくらか失われた。ここに、より早い測定時間でDC応答を測定でき、かつ、依然としてテスト時間が減少するという追加的な利点をもって許容範囲内の検体応答が得られることを示す。この実施例5の場合、トータルテストタイムは1秒未満(つまり900ミリ秒)である。
【0102】
ここに開示されたAC補正係数によって、ヘマトクリットによる影響だけでなく、誤差の他の原因または試薬膜の状態のばらつきも補正される、ということも考えられる。ここに記載される例において、AC信号応答を検出するために使用される電極は、DC信号応答に使用されるものと同一であるから、試薬膜でコーティングされている。その結果、すべてのAC応答測定値は、液体試料が塗布された試薬膜の状態(たとえば厚みや膨張)によって影響される。
【0103】
これらのデータのもう1つの見方は、該当するクラークエラーグリッドによるものである。図41は、900ミリ秒のDC測定時間での、未補正のDC応答データのエラーグリッドを示す。図42〜44は、20kHzだけ(図42)、2kHzだけ(図43)、および、20kHzと2kHzとの両方について(図44)、AC応答データで補正された、同一の900ミリ秒のDC測定データを示す。
【0104】
実施例5のデータは、良好なTSEを有する検体測定が、900ミリ秒〜3000ミリ秒の短いトータルテストタイムで達成できることを見出されたことを裏付けるものである。
【0105】
実施例5は、実施例2のように、温度と共変されなかったが、これは、電気化学試験スタンドが、「環境的」調査の実行に、より貢献するものではなかったからである。したがって、この例における、AC信号応答、または、これらの応答から判定される補正係数は、試料温度の変化、および実施例2で示したような補正についての情報を含まない。しかし、4つのAC周波数を使うACの方法が、ヘマトクリットおよび温度の両方のばらつきを補正することが示されていて、1000ミリ秒未満のテスト時間で、これを行うにあたっては、実施例5の測定方法で十分であろう。
【0106】
ここに開示される実施例を目的として、印加されるDC励起は、概して、単一の持続時間についての、印加電位の単一のブロックとして記載され、示される。その持続時間全体で、またはその持続時間における1つまたは数個のポイントだけで、DC応答データを取得してよい。しかし、パルスそれぞれについて測定された応答データを有する、2つまたは3つ以上の、より短いDC励起のパルスを備えたDC励起の印加については示していないし、記載もしていない。実施例では、このタイプのDC励起の使用について、ここに例示しているものはないが、ここに記載されたAC波形は、連続的なおよび多周波数の(同時)波形の両方に関して、パルス型DC励起から獲得された応答データを補正できると考えられる。
【0107】
上記の明細書、請求項、および図面に開示される特徴は、個別に、そして、あらゆる相互的な組み合わせにおいても、様々な実施形態において本発明を実施する上で、重要となりうる。
【0108】
「好ましくは」、「通常」および「典型的には」のような用語は、請求項に記載された発明の範囲を制限するため、また、いくつかの特徴が、請求項に記載された発明の構造または機能にとって決定的、本質的または重要でさえあるということを暗示するために、ここに使用されたのではないことに留意されたい。正しくは、これらの用語は、単に、本発明の特定の実施形態において利用されるかもしれないし、利用されないかも知れない、別の、または追加的な特徴を強調することを意図している。
【0109】
本発明を記載および定義する目的で、「実質的に」という用語は、あらゆる定量比較、値、測定値、またはその他の表現に起因しうる不確実性の本質的な程度を表すためにここに使用されていることに留意されたい。定量的表現が、論点となる発明特定事項の基本的な機能に変化を生じることなく、記述された参考値と異なるかも知れず、「実質的に」という用語が、ここに使用されるのは、その相違の度合いを表すためでもある。
【0110】
本発明について詳しく、その特定の実施形態を参照して記載したとおり、添付の請求項において定義される本発明の範囲から逸脱することなく、改良及び変更が可能であることは、明白であろう。より具体的には、本発明のいくつかの態様は、ここに、好ましく、または特に有利であるとされるが、本発明が、必ずしも本発明のこれらの好ましい態様に制限されるものではないと考えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液における検体の濃度の測定において使用する測定方法および装置に関する。本発明は、より詳しくは、但し限定的にではなく、血中グルコース濃度の測定に使用できる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に他の紛らわしい物質が存在する場合、物質の濃度測定は、多くの分野において、特に医学診断において重要である。たとえば、血液などの体液におけるグルコースの測定は、糖尿病の効果的な治療にとって重大である。
【0003】
糖尿病の治療には、典型的には、2つのタイプのインスリン療法、基礎と追加とがある。基礎インスリンとは、継続的な、たとえば、持効性インスリンである。追加インスリン療法とは、食事中の糖質や炭水化物などの代謝を含む、様々な要因によって起こる血中グルコースの変動を調整するために、追加量の、より速く作用するインスリンを供給するものである。血中グルコースの変動を正しく調整するためには、血液中のグルコース濃度を正確に測定する必要がある。これができなければ、失明、または、最終的には糖尿病患者から指や手足などの使用を奪う四肢循環障害を含む、極度の合併症を引き起こす恐れがある。
【0004】
たとえばグルコースのような血液試料において、検体の濃度を測定するための複数の方法が知られている。こうした方法は、典型的には、光学的方法と電気化学的方法との2つのカテゴリーのうち、1つに該当する。光学的方法は、一般的には、試薬におけるスペクトル変化を観察するための反射率または吸光分光器を必要とする。こうした変化は、検体の濃度を示す色の変化を生じる化学反応によって起こる。電気化学的方法は、その代わりに、一般的には、検体の濃度を示す電流応答または電量応答を伴う。たとえば、米国特許、第4233029号(Columbus)、第4225410号(Pace)、第4323536号(Columbus)、第4008448号(Muggli)、第4654197号(Liljaら)、第5108564号(Szuminskyら)、第5120420号(Nankaiら)、第5128015号(Szuminskyら)、第5243516号(White)、第5437999号(Dieboldら)、第5288636号(Pollmannら)、第5628890号(Carterら)、第5682884号(Hillら)、第5727548号(Hillら)、第5997817号(Crismoreら)、第6004441号(Fujiwaraら)、第4919770号(Priedelら)、第6054039号(Shieh)、および第6645368号(Beatyら)明細書を参照されたい。これらの全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザの利便性のために、血液試料中のグルコース値を表示するのに必要な時間を減らすことは、長年、システム設計者にとっての目標である。値を表示するのに約2分かかった初期の色度測定器から、約20〜40秒のテスト時間まで、テスト時間は減少している。もっと最近では、10秒未満のテスト時間について記載されており、(たとえば、米国特許第7276146号および第7276147号明細書参照)、現在の市場のいくつかの製品では、およそ5秒のテスト時間が宣伝されている。これより短い2秒未満のテスト時間についても、様々な特許出願において論じられている(たとえば、米国特許出願公開、第2003/0116447A1号および第2004/0031682A1号明細書参照)。しかし、混同させる干渉物による影響を実質的に受けない結果という点から見ると、こうした教示によって、短いテスト時間の真の有用性が完全に達成されてはいない。
【0006】
血液中の化学物質の濃度を測定するための電気化学的方法を制限するものとして重要なのは、検体と試薬の様々な有効成分との拡散における、混同させる変化性の物による影響である。血中グルコース測定の正確性を制限するものの例として、血液組成または状態(測定される状況以外のもの)の変化が挙げられる。たとえば、ヘマトクリット(赤血球の濃度)または血液中の他の化学物質の濃度の変化が、血液試料の信号の生成に影響しうる。血液の化学的性質を測定する上で、血液試料の温度変化は、混同させる変化性の物の、さらにもう1つの例である。短いテスト時間後に報告される血中グルコース応答の有用性は、その結果について、ヘマトクリットや温度などの試料の他の変化性の物、または干渉物に対する補償をしないで適用するにあたって疑問の余地がある。
【0007】
血液試料におけるヘマトクリットに関して、先行技術の方法は、たとえば、ガラス繊維フィルタによって、または、血漿だけが膜を通ることを可能にする孔形成体を含んだ試薬膜で、試料において血漿から赤血球を分離することに依存している。ガラス繊維フィルタによる赤血球の分離は、テストメータの顧客の期待に反して、測定に要する血液試料の量を増加させる。多孔質膜は、ヘマトクリットの影響を減少させる上で部分的にのみ効果的であり、所望の正確性を達成するには、遅延時間の増加および/またはAC測定(以下を参照のこと)と組み合わせて使用する必要がある。
【0008】
先行技術の方法では、テストストリップの試薬上での試料のより長い培養時間を含むDC測定を使用することによって、グルコース測定値への試料のヘマトクリットによる影響の規模を小さくして、ヘマトクリットによる干渉を減少または排除する試みもある。こうした方法でも、テスト時間が非常に長くなってしまう。
【0009】
ヘマトクリットおよび温度による干渉を減少またはなくすためのその他の試みについては、米国特許第7407811号明細書と同様に、本願の親出願の開示においても教示される。これらにおいては、低振幅のAC電位を試料に印加することによって、AC励起信号に対する電流応答からの、位相角(ここでは、「位相」とも呼ばれる)およびアドミタンス情報に基づいて、ある一定の試料の特性が判定される。教示のとおり、AC励起信号の複数の周波数がシーケンシャルブロックで印加され、その後、従来のDC励起信号が印加される。しかしながら、こうした開示が示すのは、ACおよびDC励起信号の両方から、有用で一貫した、相応に再生可能な情報を得るために各周波数が印加されるべき最小時間には限度があるという、発明者の考えである。それでも、完全なAC法から実際に達成できる最短の全テスト時間は3秒であった。代わりに、実際の分析を3秒未満で達成するために、AC励起中に使用される周波数ブロックの数を制限、つまり4ではなく2ブロックにした。しかし、使用する周波数ブロックの数を減らすことは、たとえばヘマトクリットや温度などの複数の干渉物に関する補正を行うにあたって、得られる正確性レベルに悪影響を及ぼす恐れがある。AC励起に関する、これら過去の開示に教示されるとおり、AC信号励起の複数の周波数から生じる位相および/またはアドミタンス応答データのような複数の補正係数を求めることによって、示されるグルコースを、複数の干渉物に関して補正することができる。複数の補正係数は、特に、複数の干渉物の、個別の、または異なる局面を測定する場合、または、1つの干渉物による影響が他よりも大きい場合に有益である。
【0010】
さらに、所望の検体濃度を判定するために使用される補正係数、または測定値でさえ、血液のヘマトクリット値またはヘマトクリットの範囲のような追加のパラメータを計算すること、および任意に報告することにも使用され得る。潜在的な補正係数の数を減少させると、たとえば、3つ、4つまたは5つ以上ではなく、たった2つだけのAC励起の周波数からの位相および/またはアドミタンスを測定すると、潜在的に有用な情報が捨て去られるおそれがある。疾患または治療のために医学的に重要なヘマトクリット値異常に、より陥りやすい患者を、通常の血中グルコース検査で識別できるような臨床状況において、たとえば、ヘマトクリット値またはヘマトクリットの範囲などの情報は、ユーザにとって、特に医療従事者にとって有用となり得る。ある状況では、たとえばグルコース濃度に加えてヘマトクリット値を提供することが、情報の貴重な一片となるだろう。しかし、この情報は、この先行技術によって提示される解決策の結果として失われ得る。
【0011】
したがって、ヘマトクリット、温度、および血液中の他の化学物質の濃度の変化などの、混同させる変化性の物の存在下においても、より正確に血中グルコースを測定するシステムおよび方法が必要とされる。こういったシステムおよび方法で、テスト時間が2秒未満となるものが、さらに必要である。その上、あらゆる生体の体液のあらゆる医学的に重要な成分を、2秒未満のテスト時間で正確に測定するシステムおよび方法が必要とされる。そのようなシステムおよび方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態において、生体の体液の医学的に重要な成分の濃度を判定するための方法であって、AC成分を有する第1の信号を生体の体液へ印加すること、第1の信号に対する第1の電流応答を測定すること、DC信号を含んでいる第2の信号をその生体の体液に印加すること、第2の信号に対する第2の電流応答を測定すること、第1および第2の応答を組み合わせること、および、医学的に重要な成分の濃度の表示を決定することを含んでいる方法が開示されている。他の実施形態においては、これらの工程を完了する時間が約2秒のみである。さらに他の実施形態においては、この方法によるトータルシステムエラーは、およそ10%のみである。さらに他の実施形態においては、第1の信号は、多周波励起波形(multi-frequency excitation waveform)を含んでいるAC信号を含み、第1および第2の信号の印加を完了する時間を最小にするために、異なるAC周波数が、順次ではなく、概ね同時に印加される。
【0013】
本発明は、幅広い種類の医学的に重要な成分(つまり、検体とも呼ばれるもので、たとえば、グルコース、乳酸塩、コレステロール、トリグリセリドなど。グルコースがもっとも重要な検体である)および、たとえば、血液、血清、血漿、尿などの生体の体液(つまり、試料体液)に関して有用であり、生体の体液としては、血液がもっとも典型的な例である。
【0014】
システムおよび方法の他の実施形態は、本文の記載から、添付の請求項に記載のとおり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面を単に例として参照して、本発明についてさらに説明する。
【図1】約3.6μmの試薬層厚を有するバイオセンサーを使った、試料塗布とDC励起の印加との間の時間についてパラメータ化された測定に関する、電流対時間のプロットである。
【図2】ここに記載の第1の共変量(covariate)の調査において使用されるグルコース、ヘマトクリットおよび温度の値を示す表である。
【図3】ここに記載の第1の調査について、励起信号のプロファイルおよびタイミングを示す表である。
【図4】ここに記載の第1の調査について、励起信号のプロファイルおよびタイミングを示す図である。
【図5】ここに記載の第1の調査の、未補正の測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図6】ここに記載の方法を使って補正された図5のデータに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図7】約1.6μmの試薬層厚を有するバイオセンサーを使った、試料塗布とDC励起印加との間の時間についてパラメータ化された測定に関する、電流対時間のプロットである。
【図8】ここに記載の第1の調査における、AC応答の安定化を示す、アドミタンス対時間のプロットである。
【図9】ここに記載の第1の調査における、バイオセンサーの試薬ストライプの断面の厚さを示すプロットである。
【図10】ここに記載の第1の調査で使用される、全血試料のグルコース、ヘマトクリットおよび温度の値を示す表である。
【図11】ここに記載の第2の調査のために使用される、励起信号のプロファイルおよびタイミングを示す図である。
【図12】ここに記載の第2の調査において使用される、3つの試薬の厚みに対する測定の実績を示す表である。
【図13】ここに記載の第2の調査について、正規化誤差対基準グルコース値のプロットである。
【図14】ここに記載の第2の調査において得られた未補正のDCデータについて、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図15】AC測定データを使って補正された図14のDCデータについて、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図16】ここに記載の第3の調査において使用されたマルチサイン波の励起波形(multi-sine excitation waveform)の1つの実施形態のプロットである。
【図17A】ここに開示された方法を使用して得られた、第3の共変量の血中グルコース測定調査に関する、200ミリ秒での、アドミタンスおよび位相応答データの表である。
【図17B】図17Aのデータ表の、アドミタンスの大きさ対ヘマトクリット値のグラフである。
【図17C】図17Aのデータ表の、位相対ヘマトクリット値のグラフである。
【図18】ここに記載された第3の調査における、いくつかのテスト時間での未補正の血中グルコース測定評価と、ここに開示された方法を使って補正された同一のデータの測定評価との両方を示す表である。
【図19】ここに記載された第3の調査による未補正の測定に関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図20】ここに開示された方法を使って補正された図19のデータに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図21】図19の未補正データおよび図20の補正後データの両方に関する、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図22】ここに記載された第4の調査において、いくつかのテスト時間での未補正の血中グルコース測定評価と、ここで開示される方法を使って補正された同一のデータの測定評価との両方を示す表である。
【図23】ここに記載された第4の調査による未補正の測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図24】ここに開示された方法を使って補正された図23のデータに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図25】図23の未補正データ、および、図24の補正後データの両方に関する、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図26】ここに記載された第4の共変量の調査の結果に関する、目標対実際の値を示す表である。
【図27】ここに記載された第4の共変量の調査による、アドミタンスの大きさ対ヘマトクリットのグラフである。
【図28】ここに記載された第4の共変量の調査による、位相対ヘマトクリットのグラフである。
【図29】目標グルコース濃度が93mg/dlで、かつ、70%のヘマトクリットを有する全血試料に対して実施され、多周波AC励起波形と、その後に続くDC励起とを含む測定シーケンスから生じた例示的な電流応答である。
【図30】既知の湿潤試薬の塗布工程における塗装重量に従った、乾燥被膜厚の推定値および測定値の表である。
【図31】ここに記載された第5の共変量の調査による、アドミタンスの大きさ対ヘマトクリット値のグラフである。
【図32】ヘマトクリット値と共に変化する異なったテスト時間で測定されたDC電流応答のグラフである。
【図33】ここに記載された第5の調査による、900ミリ秒で測定された未補正のDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図34】900ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図35】1100ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図36】1500ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図37】2000ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図38】2500ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図39】3000ミリ秒で測定され、ここに記載された第5の調査に従って補正されたDC測定データに関する、正規化誤差対基準グルコースのグラフである。
【図40】ここに記載された第5の調査に従って補正された異なるDCテスト時間での、補正された応答に関するTSEを示す表である。
【図41】ここに記載された第5の調査に従った、900ミリ秒での未補正のDC応答データに関する、予測グルコース対基準グルコースを示しているクラークエラーグリッドである。
【図42】ここに記載された第5の調査に従って、1つのAC周波数による応答データによって補正された900ミリ秒でのDC応答データに関する、予測グルコース対基準グルコースを示すクラークエラーグリッドである。
【図43】ここに記載された第5の調査に従って、もう1つのAC周波数による応答データによって補正された900ミリ秒でのDC応答データに関する、予測グルコース対基準グルコースを示すクラークエラーグリッドである。
【図44】ここに記載された第5の調査に従って、2つのAC周波数による応答データによって補正された900ミリ秒でのDC応答データに関する、予測グルコース対基準グルコースを示すクラークエラーグリッドである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の原理をよりよく理解するために、これから、図示される実施形態を参照し、これらの実施形態を説明するために特定の用語を使用することにする。しかし、本発明の範囲を制限することは意図されていないことが理解されよう。本発明が関連する分野の当業者が通常思いつくであろう例示される装置における改良および変更、および、その中に例示される本発明の原理のさらなる応用については考慮されているし、これらが保護されることが望まれる。特に、本発明は、血中グルコースの検査装置および測定方法という観点から論じられているが、本発明が、他の検体および他の試料タイプを測定するための装置とともに使用できることが考慮されている。こうした他の実施形態は、本文にて論じられる実施形態へのある程度の適合を必要とし、これについては、当業者にとっては自明であろう。
【0017】
本発明によるシステムおよび方法によって、極めて短いテスト時間で、すなわち、わずか約2秒で、体液内の検体の正確な測定が可能になる。特に、この検体測定は、別の方法では誤差を生じさせる干渉物が存在しても、依然として正確である。たとえば、本発明による血中グルコース測定器は、試料のヘマトクリット値および試料の温度の変化によって典型的に生じる誤差なく、全血試料内の血中グルコースの濃度を測定する。糖尿病患者における、不十分な血中グルコース調整による失明、血行障害、およびその他の合併症を防ぐ上で、血中グルコースの正確な測定は、非常に重要である。本発明によるシステムおよび方法のさらなる利点は、よりいっそう迅速に、よりいっそう少ない量の試料で、測定を行うことができることであり、このため、糖尿病患者に自分の血中グルコースを測定することを、より便宜良くさせる。同様に、血液、尿、または他の生体の体液における、その他の検体の正確かつ迅速な測定によって、広範囲の医療条件の診断および治療が改良される。
【0018】
電気化学血中グルコース測定器は、典型的には(すべてではないが)、試薬の存在下で血液試料の電気化学的応答を測定するものであることが分かるであろう。試薬は、グルコースと反応して、反応しなければ血液中には存在しない荷電キャリアを生成する。その結果、所定の信号の存在下における、血液の電気化学的応答は、第1に、血中グルコース濃度に依存することが意図される。しかし、第2に、所定の信号に対する血液の電気化学的応答は、ヘマトクリットおよび温度を含む他の要因に依存しうる。たとえば、米国特許第5243516号、第5288636号、第5352351号、第5385846号、および第5508171号明細書を参照されたい。これらは、血中グルコースの測定にあたって、ヘマトクリットによる混同の影響について論じており、これらの全体がここに参照として組み込まれる。さらに、たとえば、尿酸、ビリルビンおよび酸素を含む、特定の他の化学物質が血液試料を介した荷電キャリアの移動に影響を与えることによって、グルコースの測定に誤差が起こりうる。
【0019】
ここに開示される様々な実施形態は、混同させる干渉物(ヘマトクリットおよび温度、またはその他の干渉物)について補正された検体測定(血中グルコースまたは別の体液の試料検体)を行いながらも、より短いテスト時間を達成することを可能にするシステムおよび方法に関する。ここに開示されるシステムおよび方法によって、1秒未満の時間も含めて2秒未満のテスト時間が可能になる。ここで使用される「トータルテストタイム」は、第1の電気的信号が試料に印加される際の試料検知(または、両方が検出される場合は試料の用量の充足性)から、濃度判定の計算において使用される最後の測定を行うまでの時間の長さとして定義される。
【0020】
トータルテストタイムを短くすることに加えて、ここに開示される実施形態の結果として、検体測定のトータルシステムエラー、すなわち「TSE」が低くなる。TSEは一般的に、システムまたは方法の正確性および精度を組み合わせた基準を含む。これは、典型的に、(バイアスの絶対値)+2×(精度)として計算され、この式中、バイアスとは正規化誤差の平均であり、精度とは(正規化誤差の)標準偏差(StdDev)である。正規化誤差は、典型的には、標準の基準値との関連で計算される。たとえば、血中グルコース測定において、75mg/dl以下の基準グルコース試料については、正規化誤差=(予測グルコース−基準グルコース)であるが、75mg/dlを超える基準グルコース試料については、正規化誤差=(予測グルコース−基準グルコース)×100/(基準グルコース)となる。
【0021】
本文で使用されるフレーズ「AC成分を有する信号」は、いくらかの交番の電位(電圧)部分を有する信号のことである。たとえば、この信号は、100%の交番の電位(電圧)を有し、DC部分のない「AC信号」であってよく、この信号は、時間的な隔たりがあるACおよびDC部分を有してよく、また、この信号は、(ACおよびDC信号が重畳された)DCオフセットを有するACであってよい。後者の例においては、変化する電位の極性が交番しなくても、この信号は、なおAC成分を有すると記載され得る。
【0022】
実施例1および2には、トータルテストタイムが減少された実験について詳細に記載されている。それぞれの実施例において、ACブロックを使って、ACCU−CHEK(登録商標)Aviva測定器において利用されている既知の測定シーケンスに類似したDC測定とアルゴリズム的に組み合わされるための補正データが生成される。つまり、複数の周波数でAC電位が順次印加され、それぞれの周波数に対する電流応答およびその他の測定データが測定される。しかし、実施例1および2においては、連続的なAC周波数ブロックそれぞれの時間とDCブロックの時間とを減らすことによって、トータルテストタイムが減少する。実施例1は、共通の試薬層の厚さを有するバイオセンサーを使った共変量の調査において、このように短縮した時間のブロックを使用した実験について詳述している。実施例2は、様々な試薬層の厚さを有するバイオセンサーを使った共変量の調査において、時間を短縮した実験について詳述している。
【0023】
実施例1および2の測定シーケンスは、所望の測定パラメータをプログラムするための変更されたコードキーを使っているマルチメータテストスタンドとして構成された血中グルコース測定器のバンクを含んでいる、社内のデータ取得テストスタンド(DATSポテンショスタット)を使って実行された。こうした測定器は、1つのテストシーケンスに関して様々な方法および持続時間でプログラムまたは構成できるが、測定器のハードウェアに事前にプログラムされた利用可能な周波数の選択のような、いくつかの制限がある。この社内の試験装置は、ここではこれ以降、「DATS」と呼ぶこととする。
【0024】
ここに開示される本発明の特定の実施形態では、概して、多周波励起波形技術を使うことによって、より短い時間における複数の周波数でのACテストデータの収集が利用される。実施例3および4は、多周波励起波形を使用した実験について詳細に説明している。周波数の異なる複数の個々の波形を一緒に加えることによって、こうした多周波励起波形が形成されるため、体液の試料が同時に複数の周波数で励起される。多周波励起波形によって、測定時間を短くできるだけでなく、適応型の測定シーケンスも可能になる。なぜなら、AC信号データの収集は、印加された励起の交互する極性のために、感知された化学的性質を、DC測定のようにいつまでも変化させないからである。さらに、同時係属中の米国特許出願公開、第2004/0157339A1号、第2004/0157337A1号、第2004/0157338A1号、第2004/0260511A1号、第2004/0256248A1号、および第2004/0259180A1号の各明細書に開示された方法にしたがって、AC信号のさらなる周波数が低励起AC電位で印加されることによって、位相角がそこから一定の干渉要因を示す非ファラデー電流応答が生成され、、この徴候から、1つまたは2つ以上の干渉の補正が決定され、かつ、これを、体液試料における検体濃度をより正確に決定するために使用できる。
【0025】
そして、結果として生じた試料応答が測定でき、各励起周波数成分による寄与が、離散型フーリエ変換(DFT)などのフーリエ変換技術を使用することによって推定できる。ここで開示される様々な実施例は、マルチサイン波の励起波形を利用しているが、当業者であれば、あらゆる所望の形状を有する個々の波形を使用して、多周波数の波形が形成され得ることがわかるだろう。この形状として、いくつか例を挙げると、三角、矩形、のこぎり歯、デルタなどがあるが、これらに限定されない。多周波数の波形を形成するために使用される成分のAC波形は、それぞれ、あらゆる所望の周波数およびあらゆる所望の振幅を有してよい。多周波数の技術の使用により、所望のデータを収集するために必要な時間が短くなる(AC測定は順次ではなく同時に行われるため)だけでなく、それぞれの印加された周波数に対応するデータ収集中の試料の変化が少なくなるため、補正との相関性が良くなる。また、AC測定は、DC測定と時間的に近づけられ得る。ACおよびDCそれぞれの測定中の、試料の状態間のより良好な関連は、試料が安定した状態でなくても、より良好な干渉物の補償を可能にする。
【0026】
アジレントのVXIコンポーネントをベースに組み立てられ、かつ、要求された組み合わせおよび順序でACおよびDC電位をセンサーに印加して、また、その結果生じるセンサーの電流応答を測定するようプログラム可能な電気化学的なテストスタンドで、実施例3および4の測定は行われた。Microsoft(登録商標)のExcel(登録商標)を使って分析するために、電気化学的分析器からデスクトップコンピュータへデータが送られた。適切な周波数応答分析器およびデジタル信号取得システムを備えた、あらゆる市販のプログラム可能なポテンショスタットによって、この測定は実行できた。商用利用に関しては、この方法は、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)血中グルコース測定器など、ファームウェアが多周波数の波形のAC信号を印加することができるように構成された、専用の低コストのハンドヘルド測定装置において実行できる。このような場合、測定パラメータは、測定器のファームウェア、ならびに利用者の作用なしに自動的に実行される測定シーケンスおよびデータの評価に含まれるか、または設けられてよい。たとえば、検体を含んだ試料が、バイオセンサーに塗布され、装置によって検知された後、2秒未満のトータルテストタイムが可能となるような方法で、上記のようなプログラム可能なポテンショスタットを使って測定が行われ、結果が分析された。同様に、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)血中グルコース測定器のファームウェアは、同一の時間、すなわち、検体を含んだ試料がバイオセンサーに塗布され、測定器によって検知された後、2秒未満のトータルテストタイム内に、測定シーケンスが起こるように構成され、および調整された測定パラメータを備えてよい。測定データの評価が完了したら、典型的には、最後の測定が行われてから25〜50ミリ秒後に、測定結果は測定器のデジタルディスプレイに表示されてよい。
【0027】
実施例1−短いトータルテストタイムでの連続的な多周波数のACテスト
米国特許第7407811号明細書は、順次印加される複数の周波数のACブロックと、その後のDCブロックとの使用について教示している。たとえば、米国特許第7407811号明細書で記載される実施例5では、順次印加されるAC励起と、その後印加されるDC励起とを利用している。この励起信号は、およそ1.8間秒印加される10kHzのAC信号、およそ0.2秒間印加される20kHzのAC信号、およそ0.2秒間印加される2kHzのAC信号、およそ0.2秒間印加される1kHzのAC信号、および、およそ0.5秒間印加されるDC信号を含んでいた。トータルテストタイムは3秒であった。
【0028】
この同じ特許の実施例6において、この特許の実施例5で使われたものと同じテストストリップの設計を使って、1.1秒という短いトータルテストタイムを達成することが望まれていた。これを達成するために、発明者は、単に実施例5の連続的な励起を印加して、所要時間を短くすることができるとは考えなかった。この特許に
「実施例5に対して上述した同一のテストストリップ1700および試薬を用いて、図24中に示された励起プロファイルを、トータルテストタイムを減少させるために利用した。図5に対して上述されたように、20kHzおよび10kHzにおける位相角は、ヘマトクリット推定値と最も密接に相関していることが決定された。したがって、トータルテストタイムを減少させるために、実施例6中のこれら2つの周波数にAC部分の励起を限定することが決められた。トータルテストタイムをさらに減少させるために、10kHzのAC励起がDC信号と同時に印加され(すなわち、DCオフセットを持ったAC信号)、またこの理論は、この組み合わされたモードが、DC電流、AC位相およびACアドミタンスについて同時の結果の収集を可能にし、最速の可能な結果を提供している。したがって、20kHzの信号は0.9秒間印加された。その後、10kHzおよびDC信号が、0.1秒の間隔後、1.0秒間同時に印加された。」(米国特許第7407811号明細書、23段、23〜40行)
と記載されている。したがって、米国特許第7407811号の発明者は、トータルテストタイムを3.0秒未満にまで短くするためには、AC励起ブロックを2つ(2kHzおよび1kHzのもの)取り除き、残り2つのAC励起ブロックのうち1つをDC励起と同時に印加する必要があると考えた。
【0029】
この先行技術で、このように考えられた理由の1つが、試料塗布後のDC励起信号の印加のタイミングが異なる様々なテストについて、試薬の化学特性に適用された試料の、測定されたDC応答を示す図1および7に、図示されている。試料塗布後すぐにDC励起が印加されたとき、応答は、期待されるコットレルの減衰(Cottrellian decay)を示さないため、短いテスト時間では、試料のグルコース濃度の正確な判定をさせることは不可能であるということがわかる。これは、試薬層内における、酵素とメディエータとの効力、水和作用、および拡散が、再生可能な方法でDC測定がどれほどすぐに実行できるかを制限するからである。どのくらい速くDC応答を測定できるか、という点において、センサー同士の、試薬の水和およびコーティングの均一性は重要な要素である。
【0030】
早期であっても、ヘマトクリットなどの干渉物と相関する情報がAC応答データにおいて示されるため、より短いAC時間が可能であることが見出された。また、最初の数100ミリ秒に亘って、ACの少しの安定化があるが、短い時間でもACについての信号は、ヘマトクリットによる干渉と良く関連する。所望のグルコースDC応答から同一の間隔で集められた全ての所望の周波数についての情報を使うことによって、良好な相関性が、つまりは、ACで測定されたヘマトクリット干渉によるDCグルコース応答の補正が可能になる。
【0031】
先行技術の連続的な多周波数のACテスト方法を、グルコースオキシダーゼを含んでいる均一な試薬品でスロットダイコートされた(slot die coated)センサーを使って、より速い速度で実行することの実現性を実証するために、本実施例1が実施された(均一な試薬のスロットダイコーティングについては、米国特許出願公開第2005/0008537号明細書において記載され、その全体が本明細書に参照として組み込まれる)。メリネックス(登録商標)329フィルムに金をスパッタリング(約50ηm)する工程と、その後、作用および用量の充足性の電極を画定する導電層のパターンを形成するために、クロムオンクォーツマスク(chrome-on-quartz mask)を通したレーザーアブレーションによって、センサー電極がつくられた。使用された構造は、米国特許第7407811号明細書、図33に示されるものと類似していた。これら電極は、一対の測定電極から独立した一対の用量の充足性の電極を含んでいた。測定は、DATSを使って行われた。DATS構成の有益な点は、セットアップの容易さ、および、異なる温度の環境室における迅速なマルチチャネルデータ収集である。ACを励起する測定方法で使用するように構成された既存の測定器を備えたDATSを使用することは、ブロック間に要求される特定の遷移時間を含んだプログラム可能性において、また、本質的にすべて基本的な、DATSに使用される測定器のプログラムできない側面である利用可能なAC周波数においても、いくつかの制限を示した。しかし、こうした既存の測定器を使用することは、実施例1(および以下の実施例2)において検討された連続的な多周波数のACでの方法が、使用面で既存の測定器に対する上位互換性を有しうるという点で、有用であった。
【0032】
7つの異なる目標グルコース濃度(50mg/dl、100mg/dl、150mg/dl、250mg/dl、300mg/dl、450mg/dl、および550mg/dl)、3つの異なる目標ヘマトクリット濃度(25%、45%、および70%)および、5つの異なる温度(8℃、14℃、24℃、35℃、および42℃)を有する全血試料で、共変量の調査が行われた。図2の表には、この実施例1で使用された全血試料の成分が詳細に記載されている。
【0033】
実効値9mVで順次印加される10kHz、20kHz、2kHz、および1kHzのAC励起信号を使ってACデータが収集された。そして、100ミリ秒の回路オープン後、450mVのDC電位の印加が、1300ミリ秒で開始した。DC測定データの収集が、1400ミリ秒で開始して100ミリ秒毎に行われ、1525ミリ秒でのDCデータポイントが本実施例1において分析された(つまり、このテストでは、トータルテストタイムが1.525秒であった)。(トータルテストタイムをより短くする実現性を確認するために、DCデータポイントは、トータルテストタイムより遅い時間に取得された。たとえば、1.525秒以下のトータルテストタイムの実行可能性が確認されたため、これより長い時間でのDCデータポイントは、最終的な結果を計算するのに使われなかった)。図3は、励起信号の成分とタイミングを表にしたものであるが、このデータは、一般的な方法で図4において図示されている。
【0034】
図5は、1525ミリ秒で行った未補正のDC測定だけを使った、全105の共変量のサンプル([G]、%HCT、℃)に対する、およそ1600のデータポイントについて、正規化誤差対基準グルコースをプロットしたものである。DC測定からの予測グルコースの決定は、周知の先行技術の技法を使って行われた。当業者にとっては容易に明白となるとおり、このように短い、DCだけのテスト時間では、測定システムのパフォーマンスは非常に悪く、トータルシステムエラーは51%である。
【0035】
図3および4に示すとおり、この実施例1のAC励起電位(1〜5)は、順次印加された。試料塗布の検知(用量検知)、および毛細管テストチャンバの充填(試料充足)の判定のためにの10kHzの信号が最初に印加され(図示せず)、記載のシーケンスは開始された。滴下検出および用量の充足性のためにAC測定を使用することは、米国特許第7597793号明細書に記載されており、これは、ここに参照として組み込まれる。
【0036】
試料充足性の判定後、300ミリ秒間、10kHzのブロックがAC安定化のために印加され、続いて、それぞれ持続時間が100ミリ秒となる、10kHz、20kHz、2kHzおよび1kHzの信号の、4つのさらなるACデータブロックが印加された。ここでいうすべての時間は、試料の用量の充足性の検出から始まる。さらに、本発明とは無関係であるが、主に、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)関連の測定器との上位互換性の安全確保のために、ブロック1は、図3のような順番に保たれた。さらに、AC安定化のために、ブロック1が使用されてから、同じ周波数で次のブロックが使用された。こうした作業の一部における目的の1つは、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)測定器の製品基盤に対する上位互換性の短いテスト時間を示すことであった。連続的なAC/DC対テスト時間において、補正効果の限度を調べるために、2つの周波数のみで、追加で実験が行われた。たとえば、図8を参照されたい。
【0037】
AC測定後、測定電極が100ミリ秒間、回路オープンに保たれて、その後、450mVのDC信号が印加された。50ミリ秒の予備安定化と、25ミリ秒のトレーリングデータ通信時間とからなる、75ミリ秒の遅延が、各励起ブロック間にあった。テスト時間は、1525ミリ秒(1.525秒のテスト時間では、DCが1.5秒、通信時間が0.025秒であった)と評価された。
【0038】
ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響についてDCグルコース測定値を補正するために、以下の方程式を使って、4つの100ミリ秒のAC励起ブロックそれぞれについて、ACアドミタンス値が得られた。
【0039】
予測グルコース=INT+Yi2×Y2+Pi2×P2+Yi3×Y3+Pi3×P3+Yi4×Y4+Pi4×P4+Yi5×Y5+Pi5×P5+exp(SLOPE+Ys2×Y2+Ps2×P2+Ys3×Y3+Ps3×P3+Ys4×Y4+Ps4×P4+Ys5×Y5+Ps5×P5)×DCPOWER (方程式1)
ここで、
Yi2、Yi3、Yi4、Yi5、Ys2、Ys3、Ys4およびYs5は定数
Pi2、Pi3、Pi4、Pi5、Ps2、Ps3、Ps4およびPs5は定数
Y2は、10kHz(第2のブロック)でのアドミタンスの大きさ
Y3は、20kHzでのアドミタンスの大きさ
Y4は、2kHzでのアドミタンスの大きさ
Y5は、1kHzでのアドミタンスの大きさ
P2は、10kHz(第2のブロック)での位相角
P3は、20kHzでの位相角
P4は、2kHzでの位相角
P5は、1kHzでの位相角
INTは、切片(intercept)
SLOPEは、傾き(slope)
DCは、DC測定で予測された未補正のグルコース応答
POWER=Const+Yp2×Y2+Pp2×P2+Yp3×Y3+Pp3×P3+Yp4×Y4+Pp4×P4+Yp5×Y5+Pp5×P5
【0040】
方程式1は、指数モデルによって、システムの用量の応答が概算され得ることを実証している。この指数モデルの傾き(slope)および指数(POWER)は、温度やヘマトクリット値などの共変量による影響を受ける。AC測定値(アドミタンスおよび位相)は、こうした共変量に敏感なため、共変量の影響を補償するために、傾きおよび指数の項において使用される。パラメータの推定値は、グルコース、温度およびヘマトクリット値が共変するところで収集されたデータでパラメータの推定を行うことによって定められる。この実施例におけるDC値は、1つの測定されたDCポイントから選択されたもので、方程式1は、単一のDC値について固有のものである。これより多いDC値、つまり、DCブロック中に行われる2つ以上の電流応答測定について、より一般的な数式は、
予測グルコース=ba0+a1×Ieff+a2×Peff+a3×Yeff+(b4+exp(b0+b2×Peff+b3×Yeff))×Ieff(c0+c2×Peff+c3×Yeff)
ここで、
Ieff=bV0+bV1×DCl+bV2×DC2+bV3×DC3+bV4×D4+bV5×DC5+bV6×DC6
Peff=bP0+bP1×P1+bP2×P2+bP3×P3+bP4×P4+bP5×P5+bP6×P6
Yeff=bY0+bY1×Y1+bY2×Y2+bY3×Y3+bY4×Y4+bY5×Y5+bY6×Y6
である。
【0041】
ACアドミタンスの大きさおよび位相データを使って、ヘマトクリットおよび温度による影響に関して、DCグルコース応答データを補正することについては、米国特許第7407811号明細書において詳細に論じられている。
【0042】
図6もまた、1525ミリ秒で行われたDC測定がAC測定と上述の方法とを使って補正されていることを除いて図5と同様に、全105個の試料に関する、正規化誤差対基準グルコースをプロットしたものである。こうして補正することによって、測定システムは、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響を補償することができる。図示のとおり、今度は、全測定結果が、±15%の正規化誤差となり、トータルシステムエラーは9.4%で、全てたった1.525秒のテスト時間で行われた。
【0043】
したがって、試料を調べて、グルコースレベルの正確な評価を妨げる干渉物を測定するため、そして、グルコース測定値を補正することによって測定時のこうした干渉物による影響を取り除くために、複数の連続的なAC励起周波数を使って、1.525秒という非常に短いテスト時間が達成できることを、この実施例1は実証している。この驚くべき結果は、上記に指摘したような先行技術の教示とは相違するものである。
【0044】
試薬の厚みの調節
以下の実施例2の記載から示される実施形態を含めて、ここに開示される実施形態のいくつかにおいては、たとえば、スロットダイコーティングのような、バイオセンサーの表面に試薬を均一に塗布する方法を使って、バイオセンサーの試薬の厚みを正確に調節することも利用されている。本文にて開示される試薬コーティングの厚みは、概しておよそ1.6〜5μmである。試薬コーティングの均一性、およびその結果生じる、試薬膜の体液試料との均一な溶解/水和が、AC測定値と良好に相関する再現性を可能にするため、正確に補償されたグルコースを提供することができる。試薬の厚みが均一でなければ、特に短時間では、測定値のばらつきが増えるため、より高速な方法およびパフォーマンスの向上を達成するにあたって支障がある。強固な性能を求めて、我々は非常に均一な膜を目指した努力を行ってきた。均一な膜のコーティングに関する方法についての記載、および開示については、上述した米国特許出願公開第2005/008537を参照されたい。
【0045】
図1および図7は、試料塗布後のDC励起信号の印加のタイミングが、約75ミリ秒から1400ミリ秒までの間で異なるような様々なテストについて、試薬の化学的性質に適用された試料のDC応答測定値を示す。図1の水和作用は、より薄い図7の試薬よりも、ストリップ同士の均一性が悪い。試料塗布後にDC励起を印加するのが早すぎると、非コットレルな応答(non-Cottrellian response)を生じ、このため、グルコース濃度の測定が不正確となる恐れがある。
【0046】
その概要が米国特許出願公開第2005/0008537号明細書に記載されるコーティング方法を使っている試薬コーティングは、図1(塗装重量:50g/m2)では、およそ3.6μm、図7(塗装重量:20g/m2)では、およそ1.6μmであった。これらの図からわかるように、試料が塗布される試薬層が薄いほど、塗布後すぐにDC励起が印加されると、その応答が、予測されるコットレル的な減衰(Cottrellian-like decay)をよりいっそう速く示し始めるため、短いテスト時間での、試料グルコース濃度の正確な判定が可能になる。これは、DC測定ができる時間を制限する試薬層内での酵素の効力、水和および拡散が、より薄く、および/または、より均一な試薬層の濃度によって高められるからである。図30は、米国特許出願公開第2005/0008537号明細書に記載される、湿潤試薬コーティング方法を使った、塗装重量設定値と、乾燥被膜厚の推定値および実際の測定値との表を示している。各塗装重量を達成するために必要とされる機器操作パラメータは、この刊行物およびこれに関連する分野の通常の技術により、理解されるであろう。
【0047】
バイオセンサー上に薄い試薬ストリップを形成するのに有用な技術および方法は、米国特許出願公開第2005/0016844号、および第2005/0008537号明細書において開示され、それら開示の全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【0048】
図8は、4μm、2.5μmおよび2.0μmの厚みで形成された試薬コーティングを、その上に有するバイオセンサーで行われたテストを要約したものである。表1は、図8で使われたバイオセンサーにコーティングされた湿潤試薬の全体的な配合を示す。この試薬は、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)バイオセンサーの試薬に類似するものだったが、破砕シリカが調合された。未破砕シリカが、より薄いコーティングを損なうであろう粒子サイズを有しうるという懸念から、シリカの平均的な粒子サイズを小さくするために、破砕シリカが使用された。これらは、測定される厚みが異なるように、異なった塗装重量でコーティングされる。この目的は、より上の厚みレベルのために少なくとも予めいくらか最適化された、グルコースバイオセンサー用の試薬の塊で始めることであった。そして、スロットダイコーティング法を使って、同一の試薬の塊を使って、塗装重量を調節することによって、およそ4μm〜2μm厚の試薬が用意された。試薬をこのようにつくることによって、より厚くなる塗装重量のために最初に最適化された有効成分の濃度もまた低くなる。
【0049】
【表1】
【0050】
血液試料が、バイオセンサーのそれぞれに塗布され、試薬が試料と水和すると、2kHzまたは20kHzのAC励起周波数が、バイオセンサーに印加された。アドミタンスデータは、100ミリ秒毎に1秒間測定され、図8にプロットされている。示されているように、ACアドミタンスは、試料塗布後、400ミリ秒未満で安定し、100ミリ秒でのACデータは、ここに以下に開示する手順を使ったDCグルコーステスト結果の補正に使用するのに十分であることが示された。図1および7に示されるデータから、薄い試薬は、試料塗布後、非常に迅速に安定することが明らかである。テストされた膜のうち、試薬が薄いほど、AC応答は、より早く、しかもより高い再現性をもって安定した。
【0051】
本文において開示される短いテスト時間を達成できるかどうかは、試薬膜における酵素およびメディエータの水和の速さと、試薬膜下の電極表面への反応生成物の拡散の速さとに大きな影響を受ける。米国特許出願公開第2005/0016844号および第2005/0008537号明細書において開示された、試薬層の堆積のためにスロットダイコーティング法を使用することにより、より速く、より再現性の高い、試薬の溶解、充填時間および水和プロファイルのための均一な薄膜の試薬の堆積が可能になる。図9は、これらの方法を使って、目標の2.5μmの厚みまで(名目上の塗装重量=30g/m2)、バイオセンサー上に堆積させた薄膜の試薬の表面形状測定値を示す。理解されるように、試薬ストリップの中央のB領域における厚みの平均は、2.46μmである。酵素の効力、水和および拡散は、薄い試薬膜(1つの実施形態において、厚みは約1.6〜10μm、また、他の実施形態においては、厚みは約1.6〜5μm)に、より速く、より均一に作用する。
【0052】
水和がより早いため、試料塗布後すぐに測定ができるという点で、薄膜は測定に役立つ。DC応答と比較して、AC安定化は膜厚による影響が少ないようである。膜が薄ければ薄いほど、DC励起に対して、より早く、よりコットレル的な反応(Cottrellian-like behavior)が観察される。このことは、図1と図7とを比較するとわかる。図1は、より厚い、つまり、50g/m2の膜での電流応答を示しているが、試料の充足性の検出後、DC励起がおよそ100〜700ミリ秒で始まると、図示されるように、早期の電流対時間のトレースにばらつきが生じる。対照的に、図7に示されるとおり、20g/m2では、同一の時間範囲について、電流応答は良好な傾向をたどる。さらに、DC電位印加後、電流対時間の応答は、およそ300ミリ秒で、よりコットレル的(Cottrellian-like)になる。しかし、薄膜に関しては、考慮する必要のある、いくつかの制限がある。リニアな応答を得ることと、求められるセンサーの長期安定性を維持することとの両方のため、センサーに必要とされる酵素には最小量がある。この実施例の膜は、同一の試薬の塊からできているため、薄ければ薄いほど、比例的に、酵素が少なくなる。膜厚の下限は、一般的に、十分な応答と安定性が得られるような、試薬塊における酵素濃度に依存する。このコーティング方法および基質の厚みのばらつきによって、均一なコーティング厚が得られない場合、厚みに下限があろうことも理解される。均一かつ一様に膜厚を調節することに関するその他の事項および開示については、たとえば、上述された米国特許出願公開第2005/0008537号明細書を参照されたい。
【0053】
実施例2−短いトータルテストタイムおよび様々な試薬厚みでの連続的な多周波数のACテスト
米国インディアナ州、インディアナポリスにあるロシュ・ダイアグノスティックス社のACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)バイオセンサーと類似した、電極およびテスト構成を使って、複数の全血試料のグルコース濃度をテストする共変量の調査が行われた。表1(上記)と同一または実質的に類似した配合の、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素(PQQ−GDH)をベースとする試薬が、3種類の厚み、2μm、2.5μm、および4μmのうち、いずれか1つの厚みでバイオセンサーに適用された。共変量の調査は、実施例1と類似した全血試料で、ただし、図10に詳細に記載されるとおり、6種類のグルコース濃度、5種類のヘマトクリット値、および5種類の温度で行われた。
【0054】
この実施例2のAC励起電位が、図11に詳細に記載されるとおり、順次印加された。10kHzでの用量検出および試料充足性の方法(図示せず)の後、300ミリ秒間、20kHzの信号が印加され、その後、100ミリ秒の、20kHz、10kHz、2kHz、および1kHzの信号が印加された。そして、測定電極が100ミリ秒間、回路オープンの状態に保たれた後、550mVのDC信号が印加された。DATSの既存の測定器に事前設定されたタイミングパラメータにより、それぞれの励起ブロック間に、50ミリ秒の安定化遅延および25ミリ秒の、トレーリングデータの通信時間があった。DC信号に対する応答の測定値は、トータルテストタイムで抽出され、およそ1500ミリ秒で始まり、100ミリ秒の間隔で測定された。ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して、DCグルコース測定値を以下の方程式を使って補正するために、AC励起ブロックのそれぞれからACアドミタンス値が得られた。
【0055】
予測グルコース=INT+Yi2×Y2+Pi2×P2+Yi3×Y3+Pi3×P3+Yi4×Y4+Pi4×P4+Yi5×Y5+Pi5×P5+exp(SLOPE+Ys2×Y2+Ps2×P2+Ys3×Y3+Ps3×P3+Ys4×Y4+Ps4×P4+Ys5×Y5+Ps5×P5)×DCPOWER (方程式2)
ここで、
Yi2、Yi3、Yi4、Yi5、Ys2、Ys3、Ys4、およびYs5は定数
Pi2、Pi3、Pi4、Pi5、Ps2、Ps3、Ps4、およびPs5は定数
Y2は、20kHz(第2ブロック)でのアドミタンスの大きさ
Y3は、10kHzでのアドミタンスの大きさ
Y4は、2kHzでのアドミタンスの大きさ
Y5は、1kHzでのアドミタンスの大きさ
P2は、20kHz(第2ブロック)での位相角
P3は、10kHzでの位相角
P4は、2kHzでの位相角
P5は、1kHzでの位相角
INTは、切片
SLOPEは、傾き
DCは、DC測定で予測された未補正のグルコース応答
POWER=Const+Yp2×Y2+Pp2×P2+Yp3×Y3+Pp3×P3+Yp4×Y4+Pp4×P4+Yp5×Y5+Pp5×P5
である。
【0056】
方程式2が、実施例1の方程式1と実質的に同一であることが理解されるであろう。主要な相違点は、異なる周波数を印加するためのシーケンス順だけであり、実施例1で印加された周波数シーケンスは10−20−2−1kHzで、実施例2で印加された周波数シーケンスは、20−10−2−1kHzであった。
【0057】
DC測定による未補正のグルコース応答(つまり、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響について未補正の)は、周知の先行技術技法を使って測定された。その後、方程式2において上記に詳細に説明したとおり、このDCグルコース応答は、ACアドミタンスの大きさおよび位相測定データを使って、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して補正された。トータルシステムエラー、バイアス、精度、およびNVarは、それぞれ計算され、図12において表で示されている。理解されるように、全3つの試薬の厚みに関するトータルシステムエラーは、1.525秒という短いトータルテストタイムで、非常に良好であった。
【0058】
上述のとおり、トータルシステムエラー、すなわちTSEは、システムの正確性および精度を組み合わせた評価基準である。これは、典型的には、(バイアスの絶対値)+2×(精度)として定義される。詳細については、以下の通りである。
バイアス=正規化誤差の平均値
精度=標準偏差(正規化誤差)
ここで、
基準グルコース≦75mg/dlの場合、
正規化誤差=(予測グルコース−基準グルコース)、および
基準グルコース>75mg/dlの場合、
正規化誤差=(予測グルコース−基準グルコース)×100/(基準グルコース)
である。
【0059】
図13は、上記に詳細に記載したようなAC測定を使って補正されたDC測定データについての、正規化誤差対基準グルコース値のプロットである。1500ミリ秒で行われたDC測定だけが使われ(通信に、さらに25ミリ秒かかった)、そのため、このデータは、1.525秒という実際のトータルテストタイムを表している。ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響は大幅に減少し、トータルシステムエラーは、共変量の調査全体で、10.0%となっている。
【0060】
図14は、1525ミリ秒で行われた未補正のDCグルコース測定のすべてに関して、予測グルコース値対基準グルコース値を示すクラークエラーグリッドである。クラークエラーグリッド分析(EGA)は、患者の現在の血中グルコースの推定値の臨床的正確さを、測定器において得られた血中グルコース値と比較して明確にするために、1987に開発された。Clarke WL, Cox D, Gonder-Frederick LA, Carter W, Pohl SL:Evaluating clinical accuracy of systems for self-monitoring of blood glucose、Diabetes Care 10:622-628, 1987、を参照されたい。その後、クラークエラーグリッドは、テストメータによって生成された血中グルコースの推定値の臨床的正確さを、基準値と比較して明確にするために使用されている。EGAは、血中グルコース測定器の正確性を決定する標準的な方法として、一般的に受け入れられている。
【0061】
クラークエラーグリッドでは、基準グルコース測定器および評価されるグルコース測定器から得られたテスト結果の散布図が、5つの領域に分かれている。基準センサーの20%以内の値となる領域A、20%からは外れるが不適切な処置を招くことにはならないポイントを含む領域B、不必要な処置を招くポイントの領域C、低血糖症が検出されない可能性のある危険を意味するポイントの領域D、および、低血糖症の処置を高血糖症と、また、高血糖症の処置を低血糖症と混同させることになるようなポイントの領域Eである。図14において、点線は、基準センサーから15%以内の値を追加で表している。
【0062】
図14においてわかりやすく示されるとおり、未補正のグルコース値は、クラークエラーグリッドに設定される所望の誤差範囲である、±15%の誤差範囲からかなり外れている。このような正確性レベルでは、血中グルコース監視システムに関する一般的な業界の慣習にしたがって、また、FDAガイドラインにしたがって、グルコーステストメータにおいては許容できないと考えられるであろう。
【0063】
図15は、図14に示されるものと同一のDCテストデータを示すクラークエラーグリッドである。ただし、このデータは、上述の方法を使って、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に関して補正されている。わかりやすく示されているように、非常に短いトータルテストタイムでグルコース値を予測するにあたって、ヘマトクリットおよび温度に関する補正がAC測定データを使って行われる場合、測定システムのパフォーマンスは、DC測定結果だけを使うより、はるかに優れたものとなる。
【0064】
上記実施例2からわかるように、厚みが約1.6〜5μmのような薄い試薬膜の使用は、2秒未満のトータルテストタイムで、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して補正された正確なグルコースの測定を行う能力を支持する。均一な試薬コーティング、および、その結果として、試薬膜が体液の試料と均一に拡散/水和することによって、AC測定と良好に相関する再現性が可能になるため、正確に補償されたグルコースのテスト結果が得られると考えられる。
【0065】
実施例1および2から、当技術におけるこれまでの理解にかかわらず、連続的なACブロックを短くすること、および/または、より少ない連続的なAC周波数を使用することによって、より短いテスト時間が達成できることが明らかとなっている。しかし、特に複数の変化要素について補正するときに、または、検体測定に加えて、1つまたは2つ以上のこうした変化要素のレベルまたは概略の範囲の表示を実際に示すことが望まれるときに、より多くの周波数を使用することによって、測定の補正における利点が得られる。これを達成するために、かつ、依然として可能な限り最短のテストを成し遂げるために、実施例3および4に記載されるような、多周波励起波形の使用が検討された。
【0066】
多周波数の励起
ここで述べたように、ここに開示される実施形態のいくつかにおいては、多周波励起波形技術を使うことによって、複数の周波数での、より短い時間にわたるACテストデータの収集を利用している。こうした多周波励起波形が、周波数が異なる個々の波形を複数、一緒に加えることによって形成されるため、体液試料が、順次ではなく実質的に同時に、複数の周波数によって励起される。
【0067】
そして、結果として生じる試料の応答が測定でき、この測定は、すべての励起周波数に対する試料応答を含んでいるであろう。そして、離散型フーリエ変換(DFT)などのフーリエ変換技術を使用することよって、それぞれの励起周波数成分の固有の寄与量を推定することができる。ここに開示される様々な実施例では、マルチサイン波の励起波形が利用されているが、当業者であれば、あらゆる所望の形状を有するそれぞれの波形を使って、多周波数の波形を形成してよいことが分かるであろう。波形の形状としては、三角、矩形、のこぎり状、デルタなど、いくつかが、単に例として挙げられるが、これらに限定されない。多周波数の波形を形成するために使用される成分のAC波形は、それぞれ、あらゆる所望の周波数、およびあらゆる所望の振幅を有してよい。多周波の技術の使用により、所望のデータを収集するのに必要な時間が縮まるだけでなく(AC測定は、順次ではなく同時に行われるため)、印加されたそれぞれの周波数に対応するデータ収集の間の試料の変化が減るため、補正によって良好に相関する。このことは、特に、非常に短いトータルテストタイムを利用するテストであって、しかも、試料塗布後すぐ測定が行われるため、試料がまだ拡散中であり、かつ試薬の化学的性質との反応中であるようなテストに有効である。また、AC測定は、DC測定と時間的に近づけて行うことができる。ACとDCとの間の相関が良好であるほど、試料が安定していなくても、干渉補償がより良好になる。
【0068】
米国特許第7407811号明細書に開示されるような、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響について補正を行う、血中グルコーステストシステムの例示的な先行技術の測定シーケンスは以下の通りである。
工程1:血液が、測定器内のバイオセンサーに塗布される。
工程2:滴下の検出および/または用量の充足性のため、試料のAC測定が行われる。
工程3:ヘマトクリットおよび温度に対する補正係数の算出を可能にするために、AC測定が、1つの期間にわたって行われる。多くの例では、複数のAC励起周波数が試料に順次印加される。
工程4:手を加えていない(未補正の)グルコース応答を測定するために、DC測定が行われる。
工程5:AC測定で得られた補正係数を使って、手を加えていないDC応答が、ヘマトクリットおよび温度の影響に対して補償される。
工程6:測定結果が、ユーザに対して表示される。
【0069】
測定結果を2秒未満で取得するにあたって、この手順には、いくつかの欠点がある。ヘマトクリットおよび温度についてのACで得られたデータで、手を加えていないDCグルコース測定値を補正することによって、正確な測定結果が得られるかもしれないが、ACデータを収集するための時間が追加で必要となるため、トータルテストタイムが長くなり、さらに、最終的な測定結果に到達するために使用される様々なACおよびDC測定は時間的に分離される。テスト中の試料が試薬と化学反応を続け、試薬はこの間、水和し続けるので、この、様々なACおよびDC測定の時間的な分離は、幾つかの状況においては、幾らかの憂慮となり得る。つまり、AC信号が、様々な波形の周波数で順次印加される測定シーケンスにおいて、各周波数に対するアドミタンスおよび位相データは、後続の手を加えていないDC応答の測定を補正するのに依然として有用であるが、理想的ではない。なぜなら、試料−試薬の、水和−反応の変遷の進行中に、それぞれのデータポイントは、異なる時間で取得されるからである。AC励起の波形ですべての周波数を同時に印加することによって、各周波数に対するアドミタンスおよび位相データは、なお個別に認識可能であり、有利にも、試料−試薬の変遷の同一状態に符号する。
【0070】
例示的な多周波数のAC励起波形の印加と、その後のDC信号の印加とから測定される電流応答が図29に示される。実施例3および4については、アジレント社のVXIコンポーネントをベースに構成され、かつ、要請された組み合わせおよび順序で、センサーにACおよびDC電位を印加して、その結果として生じるセンサーの電流応答を測定するようにプログラム可能な電気化学試験スタンドを使って、データ取得が実施された。
【0071】
実施例3−短いトータルテストタイムでの多周波数のACテスト
実施例3について実施された測定は、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)バイオセンサーの電極構造に類似した電極構造、および、(上記)表1に記載された配合と同一または類似した試薬で行われた。スパッタリング、レーザーアブレーション、試薬スロットダイコーティング、およびラミネート加工を含んだ工程を組み合わせて、ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)バイオセンサーと概して同じ技術を使って、こうしたセンサーは製造された。
【0072】
測定シーケンスは、3つの基本的ブロックからなるものであった。第1の測定ブロック(図示せず)では、試料の用量充足性(測定を実施するのに十分な毛細管テストチャンバの充填)を検出するために、テストストリップに印加される10240Hzのサイン波励起が利用された。滴下検出および用量充足性のためのAC測定の使用は、上述にて参照された米国特許第7597793号明細書において記載されている。
【0073】
十分な試料が検出された後、対象のそれぞれの周波数に対するACアドミタンスの大きさおよび位相データを同時に収集するために、(以下に詳述するとおり)短い間隔で、(多音としても知られる)マルチサイン波の波形を使った第2の測定ブロックが開始された。本実施例3で使用されるマルチサイン波の波形は、4つの周波数(1024、2048、10240、および20480Hz)のサイン波を合計することによってつくられた。上述にて参照されたAC励起の使用に関する出願人の過去の開示によると、これらの周波数が選択されたのは、これらが干渉物の補正に有用であることが知られているためである。高い方の約20kHzおよび約10kHzの周波数範囲は、ヘマトクリットに対する有用な補正をもたらすことが知られている。低い方の、約1kHzおよび約2kHzの周波数範囲は、潜在的な個別の測定の有用性が知られているために含められた。一般的に、こうした周波数の組み合わせによって、ヘマトクリットや温度などの、複数のパラメータの補正が可能となる。これらの値は、たとえば、特に20kHzでなくてもよく、干渉物が、補正されるグルコース応答から無理なく独立して測定できるような範囲内であればよいことが、よく理解される。周波数が高いほど、ヘマトクリットなどの、1つの干渉物との相関がより良好になり得るが、別の周波数が、別の干渉物とより良好に相関することがある。最良の全体的な補正応答をもたらすであろう周波数または周波数の組み合わせの最適化は有用であり、それはこの開示を鑑みて、十分に、この技術の通常の当業者の能力の範囲内にある。しかし、優れた補正、および短いトータルテストタイムをもたらしながら、複数の周波数から応答データを収集する時間を減らすために多周波数のAC波形を扱うにあたって、過去の経験を頼りにするには、これら既知の範囲における周波数を使用することが有用であろうと判断された。さらに、1つの周波数だけで測定するよりも、1つより多い周波数からのデータにより、複数の干渉物について、より良好な補正ができることを、過去の経験が示している。ここでは、事前にプログラムされたデータ分析の手順が使用できるように、4つの周波数が選択された。しかし、たとえば、2つ、3つ、または、5つ以上の周波数でさえも、十分な補正をまさに良く供給し得る。AC周波数が2つだけの、いくつかの個別のAC法が実施されている。
【0074】
実施例3について、そのマルチサイン波の波形は、1周期の1024Hzの信号、2周期の2048Hzの信号、10周期の10240Hzの信号、および20周期の20480Hzの信号からなるものであった。ピークの振幅は、12.7mVに設定されたが、この信号のマルチサイン波の性質により、実際の実効値は大幅に低くなるであろう。(実効値は、波形の二乗平均平方根値、SQRT[(1/N)×SUM(x2)]である。)波形は、デジタル−アナログ変換器に入力された16000データポイントを含んでおり、図16に示されている。
【0075】
マルチサイン波の励起波形を使用する1つの利点は、測定が同時に行われるため、全4つの周波数についてのデータを収集するために必要とされるAC測定時間が減少することである。マルチサイン波の励起波形のもう1つの利点は、周波数すべてに対するAC測定データが同時に収集されるため、試薬と反応するにつれて試料が変化していることによる影響が、より少なくなることである。
【0076】
マルチサイン波の波形は、用量充足性の表示後、300ミリ秒間、テスト試料に印加され、100ミリ秒の間隔で分析された。この実施例3では、測定時間を300ミリ秒にしたが、似たような結果のために、これよりも長い、短い、および、可変の時間が採用され得る。一般的に、2秒以下のトータルテストタイムを達成するための、1つの実施形態におけるマルチサイン波の測定時間の範囲は、100ミリ秒〜1900ミリ秒である。ACCU−CHEK(登録商標)AVIVA(トレードマーク)のテスト構成を使用すれば、200〜500ミリ秒は、テスト試料から再現可能なAC応答を与えるのに、十分な時間であった。
【0077】
マルチサイン波の信号を使って、様々な励起周波数が同時に試料に印加されるが、それぞれの周波数成分に起因する応答は、それらの当業者に良く理解される、高速フーリエ変換(FFT)、または離散型フーリエ変換(DFT)などの適切な数学的機能、またはその他の数学的技術を使って、AC測定データから求められ得る。本実施例3において、各周波数に対するアドミタンスの大きさおよび位相データは、DFTを使って求められた。各周波数に対して求められた、このアドミタンスデータが、テストされた全9個の試料の用量充足性の後、200ミリ秒に対応する時点に関して、図17Aに示される。実施例3の各周波数におけるヘマトクリットに対する位相のグラフが図17Bに示され、実施例3の各周波数におけるヘマトクリットに対するアドミタンスの大きさのグラフが図17Cに示される。
【0078】
第2の測定ブロックは、当該技術において知られるような、手を加えていない(未補正の)予測グルコース値を得るために、試料に印加される550mVのDC信号からなるものであった。DCの4つの時点が、500、600、1000および1500ミリ秒の(つまり、0.5、0.6、1.0および1.5秒のトータルテストタイムについての)終了データポイントで、100ミリ秒の平均データポイントとして測定データから抽出された。
【0079】
目標グルコース濃度を90mg/dl、250mg/dl、および600mg/dlとし、目標ヘマトクリット値を20%、45%、および70%として、共変量の調査用に9つの全血試料が用意された。それぞれのテスト試料について、DCのそれぞれの時点が、ノンリニア・フィット(Nonlinear fit)によって分析され、300ミリ秒でのACアドミタンスの大きさおよび位相データを使用して、ヘマトクリットおよび温度による影響に対して補償された予測グルコース応答を、以下の方程式で算出した。
予測グルコース=INT+Yi1×Y1+Pi1×P1+Yi2×Y2+Pi2×P2+Yi3×Y3+Pi3×P3+Yi4×Y4+Pi4×P4+exp(SLOPE+Ys1×Y1+Ps1×P1+Ys2×Y2+Ps2×P2+Ys3×Y3+Ps3×P3+Ys4×Y4+Ps4×P4)×DCPOWER (方程式3)
ここで、
Yi1、Yi2、Yi3、Yi4、Ys1、Ys2、Ys3、およびYs4は定数
Pi1、Pi2、Pi3、Pi4、Ps1、Ps2、Ps3、およびPs4は定数
Y1は、1024Hzでのアドミタンスの大きさ
Y2は、2048Hzでのアドミタンスの大きさ
Y3は、10240Hzでのアドミタンスの大きさ
Y4は、20480Hzでのアドミタンスの大きさ
P1は、1024Hzでの位相角
P2は、2048Hzでの位相角
P3は、10240Hzでの位相角
P4は、20480Hzでの位相角
INTは、切片
SLOPEは、傾き
DCは、DC測定で予測された未補正のグルコース応答
POWER=Const+Yp1×Y1+Pp1×P1+Yp2×Y2+Pp2×P2+Yp3×Y3+Pp3×P3+Yp4×Y4+Pp4×P4
である。
【0080】
ここでも、この方程式は、方程式1および2と同じ形態であるが、変数の範囲は、方程式1および2で使われたようなY2〜Y5およびP2〜P5ではなく、200ミリ秒での同時のACのための、Y1〜Y4およびP1〜P4に亘ることが理解できる。
【0081】
上述のように、ACアドミタンスの大きさおよび位相データを使って、ヘマトクリットおよび温度による影響に対してDCグルコース応答データを補正することは、米国特許第7407811号明細書において論じられている。
【0082】
DC測定による未補正の(つまり、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して未補正の)グルコース応答は、周知の先行技術の技法を使って測定された。そして、このDCグルコース応答は、方程式3において上記に詳述されているように、ACアドミタンスの大きさおよび位相測定データを使って、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して補正された。トータルシステムエラー(TSE)、バイアス、精度、およびNVarが、(補正後および未補正の、両方の結果について)それぞれのトータルテストタイムについて算出され、これらは、図18において表で示されている。わかりやすく示されているように、グルコース値を予測するにあたって、ヘマトクリットおよび温度に関する補正が、AC測定データを使って行われる場合、測定システムのパフォーマンスは、DC測定結果だけを使うより、はるかに優れたものとなる。さらに、複数の励起周波数について、同時にAC測定データを取得することによって、非常に短いトータルテストタイムが可能となり、その測定結果は、1.5秒、1.0秒、0.6秒および0.5秒のトータルテストタイムで、非常によいTSE値を示す。
【0083】
図19は、未補正のグルコース測定値について、正規化誤差対基準グルコース値をプロットしたもので、このデータにおいて、ヘマトクリット値への著しい依存がみられる。トータルシステムエラーは53.8%である。図20は、同じ測定に関して正規化誤差対基準グルコース値をプロットしたものであり、ただし今回は、上記に詳述されたようにAC測定を使ってDC測定データが補正されている。明らかに、ヘマトクリットによる干渉の影響は大幅に減少し、トータルシステムエラーは14.2%となっている。用量の充足性の表示後、500ミリ秒で取得されたAC測定データだけを使って、このような減少が達成された。
【0084】
図21は、上記500ミリ秒のデータポイントのすべてについて、補正後および未補正の両方に関して、予測グルコース値対基準グルコース値を示すクラークエラーグリッドである。わかりやすく示されているように、未補正のグルコース値は、±15%の誤差範囲からかなり外れているが、補正後のデータは、すべてこの限度内にある。したがって、2分の1秒のグルコーストータルテストタイムを達成するための多周波数の励起の使用が実証された。
【0085】
ここに開示される多周波数の励起の技術を使用すると、複数の周波数によって同時に試料を励起させ、これらの周波数に対する試料の応答を同時に測定できるようにすることによって非常に短いテスト時間が可能となることを、この実施例3の上記データは明確に示している。2分の1秒のトータルテストタイムでさえ、このデータは、干渉物によって生じるDC測定誤差の大幅な減少をもたらし、本質的に、瞬間的に起こる測定結果が、十分に、容認される業界基準の範囲内にある測定正確性をもって、ユーザに報告されることを可能にしている。
【0086】
実施例4−短いトータルテストタイムでの多周波数のACテスト
実施例4で実施された測定は、実施例3と同一の電極構造および試薬で、しかも同一の測定シーケンスで行われた。しかし、実施例3の測定は、3つの異なった目標検体濃度、および各濃度に対する3つの異なったヘマトクリット値を有する試料について行われたが、実施例4の測定は、7つの異なった目標検体濃度、および各濃度に対する3つのヘマトクリット値を有する試料について行われた。
【0087】
実施例3においてわかったように、実施例4の測定から、マルチサイン波の励起波形を使用する利点は、測定が同時に行われるため、全4つの周波数に対するデータを収集するのに必要なAC測定の時間が減少することだということがわかった。マルチサイン波の励起波形のもう1つの利点は、全周波数に対するAC測定データは、同時に収集されるため、試料が試薬と反応するにつれて変化することによって受ける影響が少なくなるということである。
【0088】
目標グルコース濃度を50mg/dl、100mg/dl、140mg/dl、250mg/dl、300mg/dl、450mg/dl、および550mg/dlとし、目標ヘマトクリット値を20%、45%、および70%とする、共変量の調査のために、21の全血試料が用意された。各テスト試料に関して、DCのそれぞれの時点が、ノンリニア・フィットで分析され、300ミリ秒でのACアドミタンスの大きさおよび位相データを使って、ヘマトクリットおよび温度による影響に対して補償された予測グルコース応答を、以下の方程式で計算した。
予測グルコース=INT+Yi1×Y1+Pi1×P1+Yi2×Y2+Pi2×P2+Yi3×Y3+Pi3×P3+Yi4×Y4+Pi4×P4+exp(SLOPE+Ys1×Y1+Ps1×P1+Ys2×Y2+Ps2×P2+Ys3×Y3+Ps3×P3+Ys4×Y4+Ps4×P4)×DCPOWER (方程式4)
ここで、
Yi1、Yi2、Yi3、Yi4、Ys1、Ys2、Ys3、およびYs4は定数
Pi1、Pi2、Pi3、Pi4、Ps1、Ps2、Ps3、およびPs4は定数
Y1は、1024Hzでのアドミタンスの大きさ
Y2は、2048Hzでのアドミタンスの大きさ
Y3は、10240Hzでのアドミタンスの大きさ
Y4は、20480Hzでのアドミタンスの大きさ
P1は、1024Hzでの位相角
P2は、2048Hzでの位相角
P3は、10240Hzでの位相角
P4は、20480Hzでの位相角
INTは、切片
SLOPEは、傾き
DCは、DC測定で予測された未補正のグルコース応答
POWER=Const+Yp1×Y1+Pp1×P1+Yp2×Y2+Pp2×P2+Yp3×Y3+Pp3×P3+Yp4×Y4+Pp4×P4
である。
【0089】
ここでも、方程式4は、方程式1および2と同じ形態であるが、実施例3の方程式3と同様に、この変数の範囲が、方程式1および2で使用されたY2〜Y5およびP2〜P5ではなく、200ミリ秒での同時のACのための、Y1〜Y4およびP1〜P4に亘ることがわかる。
【0090】
実施例3にて論じているように、ヘマトクリットおよび温度による影響に対してDCグルコース応答データを補正するためにACアドミタンスの大きさおよび位相データを使用することは、米国特許第7407811号明細書において論じられている。実施例4について各周波数でのヘマトクリットに対するアドミタンスの大きさのグラフは、図27に示され、実施例4について各周波数でのヘマトクリットに対する位相のグラフは、図28に示される。
【0091】
DC測定による未補正の(つまり、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して未補正の)グルコース応答は、周知の先行技術の技法を使って測定された。そして、このDCグルコース応答は、方程式4において上記に詳述したように、ACアドミタンスの大きさおよび位相測定データを使って、ヘマトクリットおよび温度による干渉の影響に対して補正された。トータルシステムエラー(TSE)、バイアス、精度、およびNVarは、それぞれのトータルテストタイムに関して(補正後および未補正の両方の結果について)計算され、図22において表に示された。わかりやすく示されているように、グルコース値を予測するにあたって、ヘマトクリットおよび温度に関する補正が、AC測定データを使って行われる場合、測定システムのパフォーマンスは、DC測定結果だけを使うより、はるかに優れたものとなる。さらに、複数の励起周波数について、同時にAC測定データを取得することによって、非常に短いトータルテストタイムが可能になる。図22に示したとおり、測定結果は、1.525秒、1.025秒、0.725秒および0.625秒のトータルテストタイムで、非常に良好なTSE値を示す。
【0092】
図23は、未補正のグルコース測定値に関して、正規化誤差対基準グルコース値のプロットしたもので、このデータにおいて、ヘマトクリット値への著しい依存がみられる。トータルシステムエラーは47.5%である。図24は、同じ測定に関して正規化誤差対基準グルコース値をプロットしたものでり、ただし今回は、ここに詳しく上述されたように、AC測定を使ってDC測定データが補正されている。明らかに、ヘマトクリットによる干渉の影響は大幅に減少し、トータルシステムエラーは10.2%となっている。21回の測定実行のそれぞれの測定データが図26に示されている。
【0093】
図25は、補正後および未補正の両方について、725ミリ秒でのデータポイントのすべてに関する、予測グルコース値対基準グルコース値を示すクラークエラーグリッドである。わかりやすく示されているように、未補正のグルコース値のほとんどは、±15%の誤差範囲からかなり外れているが、補正後のデータはすべて、この限度内にある。したがって、4分の3秒未満のグルコーストータルテストタイムを達成するための多周波数の励起の使用が実証された。
【0094】
ここに開示される多周波数の励起の技術を使用することによって複数の周波数で試料を同時に励起させ、これらの周波数に対する試料応答を同時に測定できるようにすることによって非常に短いテスト時間が可能になることを、この実施例4の上記データは、明らかに示している。4分の3秒未満のトータルテストタイムでさえ、このデータは、干渉物によって起こるDC測定の誤差の大幅な減少をもたらし、本質的に、瞬間的に起こる測定結果が、十分に、容認される業界基準の範囲内にある測定正確性をもって、ユーザに報告されることを可能にしている。
【0095】
実施例5−短いトータルテストタイムでの、DCの様々な時点にける連続的な多周波数のACテスト
本実施例5は、図30に示されるとおり、2.45μmの厚みに略相当する、名目上30g/m2の塗装重量の塗布に基づいた試薬膜厚を有するテストセンサーを使って、(上記)実施例2と同様に実施された。ただし、実施例2とは違い、アジレント社のVXIコンポーネントをベースに構成され、かつ、要請された組み合わせおよび順序で、センサーにACおよびDC電位を印加して、その結果として生じるセンサーの電流応答を測定するようにプログラム可能な電気化学試験スタンドを使って、データ取得が実施された。このようにしたのは、実施例1および2に関して述べたように、こうした測定のために、DATSとともに使用される既存の測定器は、波形の予備安定化、各周波数ブロック後のトレーリングの通信、および、DC信号印加の最初の100ミリ秒における、あらかじめ設定された「スキップ」時間のために、その間電流応答を測定することができない強制的な時間ブロックが要求される、あらかじめ設定されたパラメータを備えるからである。しかし、この実施例5に関しては、DATSの既存の測定器によって課される、あらかじめ設定されたタイミング条件の制限なく、連続的な多周波数のACを印加することが望まれた。実施例3および4において使用された、アジレントをベースにした試験スタンドによって、このように、所望の測定シーケンスをプログラムする柔軟性がもたらされた。
【0096】
実施例5の目的は、単一の、概して均一な試薬膜厚において、順次印加され、かつ、20kHz、2kHz、10kHz、および1kHzの周波数を有する、4つの短い200ミリ秒のAC励起ブロック一式を使って、ヘマトクリットと共変するDCグルコース応答を補正することができる様々な方法を、検討することであった。AC励起ブロックの印加は、十分な試料の添加が検出される時間である時間ゼロで開始した。したがって、AC励起ブロックは、間に時間を空けずゼロ時間に開始し、DC励起が印加される時間である、約800ミリ秒で終了する。
【0097】
DC応答データの収集は、800ミリ秒で開始して、3700ミリ秒まで行われた。このデータセットを使って、様々なACおよびDCパラメータを有するデータを分析した。この目的は、この均一な薄膜で、短いテスト時間において、良好なパフォーマンスに達することができるかどうかを判断し、1つまたは複数のAC応答を、補正のために使用することの効果を判定することであった。図31は、4つのAC周波数に関して測定された、AC応答対ヘマトクリット値を示す。これらすべてのデータは、ヘマトクリット値の増加に対するアドミタンス応答の逆の関係を示す。これが示すとおり、20kHzおよび10kHzの、より高い周波数での測定で、概して類似した応答が示され、2kHzおよび1kHzの、より低い周波数での測定で、概して類似した応答が示される。しかし、周波数が高くなるにつれて、ヘマトクリット対アドミタンスの関連性は高くなる。
【0098】
図32は、この共変量の調査のために収集された、未補正のDC応答データを示す。各DCテスト時間において、様々なヘマトクリット値に関連して電流応答が変化することは明確である。図33は、900ミリ秒で測定されたDC応答を使った共変量の調査に関して、基準グルコース値に対する未補正の正規化誤差の典型的な応答を示す。未補正の応答のTSEは41%である。しかし、図34に示したとおり、900ミリ秒でのDC応答が、たった2つ、つまり20kHzおよび2kHzの周波数によるAC応答データを使って補正される場合、TSEが大幅に改善し、7.1%まで低減している。図35〜39は、1100ミリ秒、1500ミリ秒、2000ミリ秒、2500ミリ秒および3000ミリ秒のそれぞれで測定され、かつ、ここでも、順次印加される20kHzおよび2kHzのAC信号の周波数から得られたAC応答データだけを使って補正された、補正後のDC応答に関する正規化誤差のプロットを示す。
【0099】
図40は、2通りの方法で、つまり、第1に、20kHzおよび2kHzのAC応答データで、第2に、10kHzおよび1kHzのAC応答データで補正された、様々なDCテスト時間に応じた、DC応答データのTSEの表を示す。このテスト構成では(TSEに関していえば)、20kHzおよび2kHzでのAC応答データは、10kHzおよび1kHzの応答データよりも、より良好に補正された。
【0100】
図40はまた、900ミリ秒という短いテスト時間では、より長い時間に比べて、TSEが実際に、より良好であることを示す、つまり、DC測定時間が長くなるにつれTSEが増加する、しかし、その後、3000ミリ秒という、よりいっそう長い時間ではTSEは減少する。より短いDC測定時間では、(補正係数を獲得するための)AC応答測定と(検体関連データを獲得するための)DC応答測定との間の時間が、およそ、たったの100〜900ミリ秒となるから、DC測定時間が短いほどTSEは低くなると考えられる。つまり、およそ200ミリ秒、400ミリ秒、600ミリ秒および800ミリ秒の時間でAC応答データが取得され、より短いDC応答データは、900ミリ秒および1100ミリ秒で取得される。したがって、膜の水和と反応特性とが、ほぼ同一になるときに、補正係数の応答と検体の応答との相関は最良となる。より短いDC応答測定時間で、膜の水和および膨張による影響がより少ない、拡散距離が短い電極表面近くで、測定が行われる。
【0101】
膜がすばやく水和および膨張し、DC応答が、このすばやく変化する領域において測定されているから、測定を行うDC応答時間が、ほどほどに長くなると、AC補正係数とDC応答とが、さらに離れる(相関性が低くなる)ため、TSEが増加する。しかし、たとえば、3000ミリ秒といった、よりいっそう長いDC測定時間では、試薬の水和および膨張が安定し始めると、DC値のばらつきが少なくなって、AC補正係数による補正が必要なくなり、TSEは再び小さくなる。したがって、このような、より長い測定時間では、TSEは、より早いDC応答測定時間のTSEに近い値にまで改善するようである。典型的には、先行技術の開示において教示されるAC/DC応答によって、DC応答が最も安定したときに、DC応答データが測定されたが、これは概して後になるので、補正係数と検体応答との間の相関がいくらか失われた。ここに、より早い測定時間でDC応答を測定でき、かつ、依然としてテスト時間が減少するという追加的な利点をもって許容範囲内の検体応答が得られることを示す。この実施例5の場合、トータルテストタイムは1秒未満(つまり900ミリ秒)である。
【0102】
ここに開示されたAC補正係数によって、ヘマトクリットによる影響だけでなく、誤差の他の原因または試薬膜の状態のばらつきも補正される、ということも考えられる。ここに記載される例において、AC信号応答を検出するために使用される電極は、DC信号応答に使用されるものと同一であるから、試薬膜でコーティングされている。その結果、すべてのAC応答測定値は、液体試料が塗布された試薬膜の状態(たとえば厚みや膨張)によって影響される。
【0103】
これらのデータのもう1つの見方は、該当するクラークエラーグリッドによるものである。図41は、900ミリ秒のDC測定時間での、未補正のDC応答データのエラーグリッドを示す。図42〜44は、20kHzだけ(図42)、2kHzだけ(図43)、および、20kHzと2kHzとの両方について(図44)、AC応答データで補正された、同一の900ミリ秒のDC測定データを示す。
【0104】
実施例5のデータは、良好なTSEを有する検体測定が、900ミリ秒〜3000ミリ秒の短いトータルテストタイムで達成できることを見出されたことを裏付けるものである。
【0105】
実施例5は、実施例2のように、温度と共変されなかったが、これは、電気化学試験スタンドが、「環境的」調査の実行に、より貢献するものではなかったからである。したがって、この例における、AC信号応答、または、これらの応答から判定される補正係数は、試料温度の変化、および実施例2で示したような補正についての情報を含まない。しかし、4つのAC周波数を使うACの方法が、ヘマトクリットおよび温度の両方のばらつきを補正することが示されていて、1000ミリ秒未満のテスト時間で、これを行うにあたっては、実施例5の測定方法で十分であろう。
【0106】
ここに開示される実施例を目的として、印加されるDC励起は、概して、単一の持続時間についての、印加電位の単一のブロックとして記載され、示される。その持続時間全体で、またはその持続時間における1つまたは数個のポイントだけで、DC応答データを取得してよい。しかし、パルスそれぞれについて測定された応答データを有する、2つまたは3つ以上の、より短いDC励起のパルスを備えたDC励起の印加については示していないし、記載もしていない。実施例では、このタイプのDC励起の使用について、ここに例示しているものはないが、ここに記載されたAC波形は、連続的なおよび多周波数の(同時)波形の両方に関して、パルス型DC励起から獲得された応答データを補正できると考えられる。
【0107】
上記の明細書、請求項、および図面に開示される特徴は、個別に、そして、あらゆる相互的な組み合わせにおいても、様々な実施形態において本発明を実施する上で、重要となりうる。
【0108】
「好ましくは」、「通常」および「典型的には」のような用語は、請求項に記載された発明の範囲を制限するため、また、いくつかの特徴が、請求項に記載された発明の構造または機能にとって決定的、本質的または重要でさえあるということを暗示するために、ここに使用されたのではないことに留意されたい。正しくは、これらの用語は、単に、本発明の特定の実施形態において利用されるかもしれないし、利用されないかも知れない、別の、または追加的な特徴を強調することを意図している。
【0109】
本発明を記載および定義する目的で、「実質的に」という用語は、あらゆる定量比較、値、測定値、またはその他の表現に起因しうる不確実性の本質的な程度を表すためにここに使用されていることに留意されたい。定量的表現が、論点となる発明特定事項の基本的な機能に変化を生じることなく、記述された参考値と異なるかも知れず、「実質的に」という用語が、ここに使用されるのは、その相違の度合いを表すためでもある。
【0110】
本発明について詳しく、その特定の実施形態を参照して記載したとおり、添付の請求項において定義される本発明の範囲から逸脱することなく、改良及び変更が可能であることは、明白であろう。より具体的には、本発明のいくつかの態様は、ここに、好ましく、または特に有利であるとされるが、本発明が、必ずしも本発明のこれらの好ましい態様に制限されるものではないと考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬の化合物と接触する生体の体液の医学的に重要な成分の濃度を決定する方法であって、
a)前記生体の体液に、AC成分を有する第1の信号を印加する工程
b)前記第1の信号に対する第1の応答を測定する工程
c)前記生体の体液に第2の信号を印加する工程、ここで、前記第2の信号はDC信号である、
d)前記第2の信号に対する第2の応答を測定する工程、および
e)前記医学的に重要な成分の濃度の表示を生成するために前記第1の応答と前記第2の応答とを組み合わせる工程
を含んでおり、
前記第1の信号が多周波励起波形を含んでいる方法。
【請求項2】
前記第1の応答が、前記多周波励起波形の各周波数に対応するアドミタンスデータを含み、前記第2の応答が、前記DC信号で予測された前記医学的に重要な成分の未補正の応答を含んでおり、前記第1の応答と前記第2の応答とを組み合わせることが、前記生体の体液における前記医学的に重要な成分の予測濃度を算出するための、前記アドミタンスデータと前記未補正の応答とのアルゴリズム的な組み合わせを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の応答と前記第2の応答とを組み合わせることが、前記第1の応答から干渉補正を決定する工程、前記第2の応答から表示濃度を決定する工程、および、前記干渉補正を使って前記表示濃度を補正する工程を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記医学的に重要な成分がグルコースを含み、前記生体の体液が血液を含んでおり、前記第1の応答が、ヘマトクリットおよび温度のいずれかのみ、または両方に実質的に関連する情報を含んでいる請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1の信号を印加してから、前記第2の応答を測定するまでの全時間が、約2.0秒以内である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
トータルシステムエラーが約15%未満である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記多周波励起波形が、約1kHz、約2kHz、約10kHzおよび約20kHzからなる群から選択される、少なくとも2つの周波数を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記第1の応答を測定することが、前記多周波励起波形を構成している周波数のそれぞれに対応したアドミタンスおよび位相の情報のいずれかまたは両方を、概して同時に測定することを含んでいる請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第2の応答を測定することが、前記第1の応答の測定後、約1000ミリ秒以下のうちに起こる請求項8記載の方法。
【請求項10】
全血の試料におけるグルコース濃度の決定をする方法であって、
a)前記試料に信号を印加すること
b)前記信号に対する応答を測定すること、および
c)少なくとも前記応答を使って前記試料の検体の濃度を決定すること
を含んでおり、前記決定は、約2.0秒以下のトータルテストタイムを有しており、
前記信号は、多周波励起波形を含んでいるAC成分を有している方法。
【請求項11】
前記決定が、約0.5秒と約1.525秒との間のトータルテストタイムを有し、約11%未満のトータルシステムエラーを有している請求項10記載の方法。
【請求項12】
生体の試料における、対象の検体の濃度の決定をする方法であって、
a)前記試料に、第1のAC成分を有する第1の信号を印加すること、
b)前記第1の信号に対する第1の応答を測定すること、
c)前記試料に、第2のAC成分を有する第2の信号を印加すること、
d)前記第2の信号に対する第2の応答を測定すること、
e)前記試料に、第3のAC成分を有する第3の信号を印加すること、
f)前記第3の信号に対する第3の応答を測定すること、
g)前記試料に、第4のDC信号を印加すること、
h)前記第4の信号に対する第4の応答を測定すること、および、
e)前記試料内の少なくとも1つの干渉物の影響に対して前記第4の応答を補正するために少なくとも前記第1、第2、および第3の応答を使って、前記試料の検体の濃度を決定すること
を含んでおり、前記決定が、約2.0秒以下のトータルテストタイムを有している方法。
【請求項13】
前記決定が、約0.5秒と約1.525秒との間のトータルテストタイムを有している請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記第1、第2、および第3の信号が、それぞれ、異なる周波数を有しているAC信号を含んでおり、前記第4の信号が、DC信号を含んでいる請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記干渉物が、ヘマトクリットおよび温度のいずれか、または両方を包んでいる請求項12記載の方法。
【請求項16】
生体の試料における、対象の検体の濃度の決定をする方法であって、
a)前記試料に、第1のAC成分を有する第1の信号を印加すること、
b)前記第1の信号に対する第1の応答を測定すること、ここで、前記第1の信号は、前記第1の応答が測定される前に約100ミリ秒間だけ印加される、
c)前記試料に、第2のAC成分を有する第2の信号を印加すること、
d)前記第2の信号に対する第2の応答を測定すること、ここで、前記第2の信号は、前記第2の応答が測定される前に、約100ミリ秒間だけ印加される、
e)前記試料に、第3のAC成分を有する第3の信号を印加すること、
f)前記第3の信号に対する第3の応答を測定すること、ここで、前記第3の信号は、前記第3の応答が測定される前に、約100ミリ秒間だけ印加される、
g)前記試料に、第4のAC成分を有する第4の信号を印加すること、
h)前記第4の信号に対する第4の応答を測定すること、ここで、前記第4の信号は、前記第4の応答が測定される前に、約100ミリ秒間だけ印加される、
i)前記試料に、第5のDC信号を印加すること、
j)前記第5の信号に対する第5の応答を測定すること、および、
k)前記試料内の少なくとも1つの干渉物の影響に対して前記第5の応答を補正するために少なくとも前記第1、第2、第3、および第4の応答を使って、前記試料の検体の濃度を決定すること
を含んでいる方法。
【請求項17】
前記決定が、約0.5秒と約2.0秒との間のトータルテストタイムを有している請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記干渉物が、ヘマトクリットおよび温度のいずれか、または両方を包んでいる請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記第1の信号が10kHzのAC信号であり、前記第2の信号が20kHzのAC信号であり、前記第3の信号が1kHzのAC信号であり、前記第4の信号が2kHzのAC信号である請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記第5の信号が、前記第5の応答が測定される前に、約200ミリ秒間だけ印加される請求項16記載の方法。
【請求項21】
約7.5%と約11%との間のトータルシステムエラーを持つ請求項16または17に記載の方法。
【請求項22】
生体の試料における、対象の検体の濃度の決定をする方法であって、
a)約1.6μmと約5μmとの間の厚みを有する試薬膜に前記試料を付着すること、
b)前記試料に信号を印加すること、
c)前記信号に対する応答を測定すること、および、
d)少なくとも前記応答を使って前記試料の前記検体の濃度を決定すること
を含んでおり、前記決定が、約2.0秒以下のトータルテストタイムを有している方法。
【請求項23】
前記決定が、約0.6秒と約1.525秒との間のトータルテストタイムを有している請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記信号が、AC成分を有する信号である請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記信号が、多周波数のAC信号である請求項24記載の方法。
【請求項26】
請求項22記載の方法であって、
e)前記試料に第2の信号を印加する工程、および、
f)前記第2の信号に対する第2の応答を測定する工程
をさらに含んでおり、
工程(d)が、前記試料内の少なくとも1つの干渉物の影響に対して前記第2の応答を補正するために少なくとも前記第1の応答を使って、前記試料の前記検体の濃度を決定することを含んでい方法。
【請求項27】
前記第2の信号がDC信号である請求項26記載の方法。
【請求項28】
生体の試料における、対象の検体の濃度の決定をする方法であって、
a)試薬コーティングを有する電気化学的なバイオセンサーに、電気化学的分析における使用のために構成された電極システムを設けること、ここで、前記試薬コーティングは4μm未満の厚さを有している、
b)生体試料を前記バイオセンサーに供給すること、ここで、前記バイオセンサーは前記試料を前記試薬コーティングに接触させるように構成されている、
c)前記試料が前記試薬コーティングに接触する時を電気的に検出すること、
d)前記試料に、第1の信号を印加すること、
e)前記第1の信号に対する第1の応答を測定すること、
f)前記試料に、第2の信号を印加すること、
g)前記第2の信号に対する第2の応答を測定すること、および、
h)少なくとも前記第1および第2の応答を使って、前記試料の前記検体の濃度を決定すること
を含んでおり、
前記第1の信号が少なくとも2つの順次印加される周波数を有するAC成分を含み、前記第1の応答が前記周波数のそれぞれに対する応答データを含み、前記応答データが補正係数の情報を含んでおり、
前記第2の信号がDC信号を含み、前記第2の応答が前記検体の濃度を示す電流応答を含んでおり、
前記第1の信号が、実質的に、前記試料が前記試薬コーティングに接触するときに、約400ミリ秒〜約800ミリ秒の第1の時間帯で印加され、
前記第2の信号が、前記第1の信号の時間帯の後、実質的にすぐに、約100ミリ秒〜約2200ミリ秒の第2の時間帯で印加され、
前記決定が、約3.0秒以下のトータルテストタイム、および、約9.0%以下のTSEを有している方法。
【請求項29】
前記第2の時間帯が約100ミリ秒〜約300ミリ秒であり、前記トータルテストタイムが約1.1秒以下であり、前記TSEが約8.5%以下である請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記AC成分が、前記第1の時間帯が800ミリ秒を超えないように、それぞれが200ミリ秒間だけ印加される、4つの順次印加される周波数を含んでおり、前記第2の時間帯が約100ミリ秒であり、前記トータルテストタイムが約900ミリ秒であり、前記TSEが約8.0%以下である請求項28記載の方法。
【請求項1】
試薬の化合物と接触する生体の体液の医学的に重要な成分の濃度を決定する方法であって、
a)前記生体の体液に、AC成分を有する第1の信号を印加する工程
b)前記第1の信号に対する第1の応答を測定する工程
c)前記生体の体液に第2の信号を印加する工程、ここで、前記第2の信号はDC信号である、
d)前記第2の信号に対する第2の応答を測定する工程、および
e)前記医学的に重要な成分の濃度の表示を生成するために前記第1の応答と前記第2の応答とを組み合わせる工程
を含んでおり、
前記第1の信号が多周波励起波形を含んでいる方法。
【請求項2】
前記第1の応答が、前記多周波励起波形の各周波数に対応するアドミタンスデータを含み、前記第2の応答が、前記DC信号で予測された前記医学的に重要な成分の未補正の応答を含んでおり、前記第1の応答と前記第2の応答とを組み合わせることが、前記生体の体液における前記医学的に重要な成分の予測濃度を算出するための、前記アドミタンスデータと前記未補正の応答とのアルゴリズム的な組み合わせを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の応答と前記第2の応答とを組み合わせることが、前記第1の応答から干渉補正を決定する工程、前記第2の応答から表示濃度を決定する工程、および、前記干渉補正を使って前記表示濃度を補正する工程を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記医学的に重要な成分がグルコースを含み、前記生体の体液が血液を含んでおり、前記第1の応答が、ヘマトクリットおよび温度のいずれかのみ、または両方に実質的に関連する情報を含んでいる請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1の信号を印加してから、前記第2の応答を測定するまでの全時間が、約2.0秒以内である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
トータルシステムエラーが約15%未満である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記多周波励起波形が、約1kHz、約2kHz、約10kHzおよび約20kHzからなる群から選択される、少なくとも2つの周波数を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記第1の応答を測定することが、前記多周波励起波形を構成している周波数のそれぞれに対応したアドミタンスおよび位相の情報のいずれかまたは両方を、概して同時に測定することを含んでいる請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第2の応答を測定することが、前記第1の応答の測定後、約1000ミリ秒以下のうちに起こる請求項8記載の方法。
【請求項10】
全血の試料におけるグルコース濃度の決定をする方法であって、
a)前記試料に信号を印加すること
b)前記信号に対する応答を測定すること、および
c)少なくとも前記応答を使って前記試料の検体の濃度を決定すること
を含んでおり、前記決定は、約2.0秒以下のトータルテストタイムを有しており、
前記信号は、多周波励起波形を含んでいるAC成分を有している方法。
【請求項11】
前記決定が、約0.5秒と約1.525秒との間のトータルテストタイムを有し、約11%未満のトータルシステムエラーを有している請求項10記載の方法。
【請求項12】
生体の試料における、対象の検体の濃度の決定をする方法であって、
a)前記試料に、第1のAC成分を有する第1の信号を印加すること、
b)前記第1の信号に対する第1の応答を測定すること、
c)前記試料に、第2のAC成分を有する第2の信号を印加すること、
d)前記第2の信号に対する第2の応答を測定すること、
e)前記試料に、第3のAC成分を有する第3の信号を印加すること、
f)前記第3の信号に対する第3の応答を測定すること、
g)前記試料に、第4のDC信号を印加すること、
h)前記第4の信号に対する第4の応答を測定すること、および、
e)前記試料内の少なくとも1つの干渉物の影響に対して前記第4の応答を補正するために少なくとも前記第1、第2、および第3の応答を使って、前記試料の検体の濃度を決定すること
を含んでおり、前記決定が、約2.0秒以下のトータルテストタイムを有している方法。
【請求項13】
前記決定が、約0.5秒と約1.525秒との間のトータルテストタイムを有している請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記第1、第2、および第3の信号が、それぞれ、異なる周波数を有しているAC信号を含んでおり、前記第4の信号が、DC信号を含んでいる請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記干渉物が、ヘマトクリットおよび温度のいずれか、または両方を包んでいる請求項12記載の方法。
【請求項16】
生体の試料における、対象の検体の濃度の決定をする方法であって、
a)前記試料に、第1のAC成分を有する第1の信号を印加すること、
b)前記第1の信号に対する第1の応答を測定すること、ここで、前記第1の信号は、前記第1の応答が測定される前に約100ミリ秒間だけ印加される、
c)前記試料に、第2のAC成分を有する第2の信号を印加すること、
d)前記第2の信号に対する第2の応答を測定すること、ここで、前記第2の信号は、前記第2の応答が測定される前に、約100ミリ秒間だけ印加される、
e)前記試料に、第3のAC成分を有する第3の信号を印加すること、
f)前記第3の信号に対する第3の応答を測定すること、ここで、前記第3の信号は、前記第3の応答が測定される前に、約100ミリ秒間だけ印加される、
g)前記試料に、第4のAC成分を有する第4の信号を印加すること、
h)前記第4の信号に対する第4の応答を測定すること、ここで、前記第4の信号は、前記第4の応答が測定される前に、約100ミリ秒間だけ印加される、
i)前記試料に、第5のDC信号を印加すること、
j)前記第5の信号に対する第5の応答を測定すること、および、
k)前記試料内の少なくとも1つの干渉物の影響に対して前記第5の応答を補正するために少なくとも前記第1、第2、第3、および第4の応答を使って、前記試料の検体の濃度を決定すること
を含んでいる方法。
【請求項17】
前記決定が、約0.5秒と約2.0秒との間のトータルテストタイムを有している請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記干渉物が、ヘマトクリットおよび温度のいずれか、または両方を包んでいる請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記第1の信号が10kHzのAC信号であり、前記第2の信号が20kHzのAC信号であり、前記第3の信号が1kHzのAC信号であり、前記第4の信号が2kHzのAC信号である請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記第5の信号が、前記第5の応答が測定される前に、約200ミリ秒間だけ印加される請求項16記載の方法。
【請求項21】
約7.5%と約11%との間のトータルシステムエラーを持つ請求項16または17に記載の方法。
【請求項22】
生体の試料における、対象の検体の濃度の決定をする方法であって、
a)約1.6μmと約5μmとの間の厚みを有する試薬膜に前記試料を付着すること、
b)前記試料に信号を印加すること、
c)前記信号に対する応答を測定すること、および、
d)少なくとも前記応答を使って前記試料の前記検体の濃度を決定すること
を含んでおり、前記決定が、約2.0秒以下のトータルテストタイムを有している方法。
【請求項23】
前記決定が、約0.6秒と約1.525秒との間のトータルテストタイムを有している請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記信号が、AC成分を有する信号である請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記信号が、多周波数のAC信号である請求項24記載の方法。
【請求項26】
請求項22記載の方法であって、
e)前記試料に第2の信号を印加する工程、および、
f)前記第2の信号に対する第2の応答を測定する工程
をさらに含んでおり、
工程(d)が、前記試料内の少なくとも1つの干渉物の影響に対して前記第2の応答を補正するために少なくとも前記第1の応答を使って、前記試料の前記検体の濃度を決定することを含んでい方法。
【請求項27】
前記第2の信号がDC信号である請求項26記載の方法。
【請求項28】
生体の試料における、対象の検体の濃度の決定をする方法であって、
a)試薬コーティングを有する電気化学的なバイオセンサーに、電気化学的分析における使用のために構成された電極システムを設けること、ここで、前記試薬コーティングは4μm未満の厚さを有している、
b)生体試料を前記バイオセンサーに供給すること、ここで、前記バイオセンサーは前記試料を前記試薬コーティングに接触させるように構成されている、
c)前記試料が前記試薬コーティングに接触する時を電気的に検出すること、
d)前記試料に、第1の信号を印加すること、
e)前記第1の信号に対する第1の応答を測定すること、
f)前記試料に、第2の信号を印加すること、
g)前記第2の信号に対する第2の応答を測定すること、および、
h)少なくとも前記第1および第2の応答を使って、前記試料の前記検体の濃度を決定すること
を含んでおり、
前記第1の信号が少なくとも2つの順次印加される周波数を有するAC成分を含み、前記第1の応答が前記周波数のそれぞれに対する応答データを含み、前記応答データが補正係数の情報を含んでおり、
前記第2の信号がDC信号を含み、前記第2の応答が前記検体の濃度を示す電流応答を含んでおり、
前記第1の信号が、実質的に、前記試料が前記試薬コーティングに接触するときに、約400ミリ秒〜約800ミリ秒の第1の時間帯で印加され、
前記第2の信号が、前記第1の信号の時間帯の後、実質的にすぐに、約100ミリ秒〜約2200ミリ秒の第2の時間帯で印加され、
前記決定が、約3.0秒以下のトータルテストタイム、および、約9.0%以下のTSEを有している方法。
【請求項29】
前記第2の時間帯が約100ミリ秒〜約300ミリ秒であり、前記トータルテストタイムが約1.1秒以下であり、前記TSEが約8.5%以下である請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記AC成分が、前記第1の時間帯が800ミリ秒を超えないように、それぞれが200ミリ秒間だけ印加される、4つの順次印加される周波数を含んでおり、前記第2の時間帯が約100ミリ秒であり、前記トータルテストタイムが約900ミリ秒であり、前記TSEが約8.0%以下である請求項28記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図2】
【図3】
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【図6】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
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【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公表番号】特表2013−516599(P2013−516599A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546387(P2012−546387)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007931
【国際公開番号】WO2011/079938
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007931
【国際公開番号】WO2011/079938
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】
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