説明

試料容器

【課題】 簡便で正確に揮発性成分を捕集、分析することを可能とし、インキやグリスといった高粘性液体生産の品質管理手法に使用するに相応しい成分捕集のための試料容器を提供すること。
【解決手段】 円柱もしくは多角柱形状であり、
底部に1以上の円柱もしくは多角柱形状である凹部を有し、該凹部が多段形状であり、
開口部に密封可能な栓を有する
ことを特徴とした高粘度液体の成分量を測定するために用いられる試料容器を用いることにより種々の試料に対応できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性の高い液体中に含まれる揮発性成分量測定の際の試料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセットインキや油脂製品など粘性の高い液体に含まれる揮発性成分量の測定をする際、一般的にガスクロマトグラフによる測定が行われているが、一定量試料を採取して測定しても定量分析結果がまちまちになることがある。成分の確認が目的である測定ならば問題はないが、このような方法では成分の定量には精度が出ない。これは対象としている試料の粘性が高いため試料内部で成分の対流が起きにくく、表層付近の成分のみが発生成分となり同じ量を採取しても露出面の形状で成分濃度が変わってしまうことに起因するものである。定量分析をするためには、試料から目的の成分を蒸留などの操作や溶媒抽出で分離し、得られた液を分析する方法、試料全体を親和性のある溶媒などで希釈して固形分と共に直接装置に導入する方法などが考えられる(特許文献1)。
【0003】
ガスクロマトグラフとは、ガス成分の分析をする際に用いられる装置であり、環境中のガス成分分析などは当然であるが、試料に含まれるガス、または、揮発性成分の分析も行なえるものである。すなわち測定対象とする試料を加熱し、発生させたガス状の成分を装置の注入口より取り込み、カラムという分離管で混合成分を分離し、カラム出口の検出器にて分離した成分をクロマトグラム(ピーク)として検出するというものである。
【0004】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2005−55205
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘性の高い液体に含まれる揮発性成分の成分量測定を行う場合、前述の方法が一般的であるが、操作が煩雑ということ、少量の試料に対してはロスが多いこと、また直接装置に導入する場合、固形分などが装置の系を汚染してしまうことなどの不具合が発生する。
【0006】
また、対象とする液体に含まれる揮発性成分濃度が高い場合、試料容器内で露出させる一定面積が大きいと発生する揮発性成分が高濃度になり、後の定量分析の検量線領域から外れて不正確な数値となることがある。
【0007】
本発明の課題は、広範囲な揮発性成分濃度を有する高粘性の液体に対しても、短時間に精度良く揮発性成分の成分量測定が可能となる試料容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上部に開口部および密封可能な栓を有し、かつ底部を有する筒状試料容器であって、
該底部が多段の凹形状であることを特徴とする試料容器である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上部に開口部および密封可能な栓を有し、かつ底部を有する筒状試料容器であって、
該試料容器内に1以上の容器部を有することを特徴とする試料容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、試料露出面積が段階的に一定な試料容器を用いることで、粘性の高い液体に含まれる揮発性成分の成分量測定を短時間で精度良く行うことを可能としたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の試料容器を、図1をもとにして説明する。
【0012】
筒状の密封可能な試料容器の底部に、更に筒状である凹部を1つ設けた試料容器1内に、目的とする高粘性液体2を、試料容器の入口付近などに付着させないよう注意深く底部から流し込み、密封する。密封する栓3は一部ゴムなどの素材を有し、試料容器内に発生させた成分の捕集の際、注射器の針が通過できる構造のものを用いるのが好ましい。また、試料容器および試料容器の底部に設けられた凹部の形状は円形や多角形状であり、試料容器の底部に設けられた多段の凹形状は、1段以上の多段形状であればよい。さらに、試料容器の底部に設けられた凹部は1つに限るものでははい。
【0013】
通常、試料容器内空間に揮発性成分を発生させるにはある程度の加熱処理を行うことが良く、その後に栓のゴム部に針を通して注射器などの捕集器具で目的成分を一定量取り出し、分析装置(ガスクロマトグラフ)に導入する操作を行う。
【0014】
高粘性液体2に含まれる揮発性成分量が比較的多い場合などは、露出させる面積を小さくする必要があり、そのような場合は底部の小さい凹部に流し込むようにする。
【0015】
材質はガラス、金属など目的成分の吸着やその他の成分の発生が少ない材質のものであれば良い。
【0016】
図2に、本発明請求項1に記載の試料容器形状例を示す。
【0017】
本発明の試料容器を、図3をもとにして説明する。
【0018】
筒状の試料容器4内に容器部5を有し、目的とする高粘性液体2を、筒状の試料容器4内の容器部5入口付近などに付着させないよう注意深く底部から流し込み、試料容器4を密封する。密封する栓3は一部ゴムなどの素材を有し、試料容器4内に発生させた成分の捕集の際、注射器の針が通過できる構造のものを用いるのが好ましい。
【0019】
通常、試料容器4内空間に揮発性成分を発生させるにはある程度の加熱処理を行うことが良く、その後に栓のゴム部に針を通して注射器などの捕集器具で目的成分を一定量取り出し、分析装置(ガスクロマトグラフ)に導入する操作を行う。
【0020】
高粘性液体2に含まれる揮発性成分量が比較的多い場合などは、露出させる面積を小さくする必要がある。そのような場合は、露出面積がより小さい容器部5を選択するか、もしくは、体積がより大きくなる試料容器4を選択する必要がある。
ここで、試料容器4と容器部5とが取り外し可能なものでも、固定されているものでも構わない。
【0021】
材質はガラス、金属など目的成分の吸着やその他の成分の発生が少ない材質のものであれば良い。
【実施例】
【0022】
ガラス製注射器に大豆油系オフセットインキを入れ、市販容器2(バイアル瓶)内に、瓶内壁にインキが付着しないよう、またインキ露出面が平坦になるよう注意深く瓶の底から約5mmの高さまで入れ、ゴム栓付きフタで密封した。これはばらつき確認のため同様のものを2個作成した。同様にインキを底から約2cmまで入れたものを作成した。
【0023】
また、容器2の内側の円面積に対して約1/10相当の面積を持つ小さなアルミカップに同様にインキを入れ、密封したものも作成した。
【0024】
これらの瓶を60℃に加熱し、瓶内空間に発生した成分をガスタイトシリンジで一定量抜き取り、ガスクロマトグラフにて分析を行い、成分によるピーク面積の比較を行った。検出された主な成分はペンタデカン、ヘキサデカンであったのでこれらの成分を用いて発明の効果確認を行った。
【0025】
<比較例1>
容器2に実施例の5mmと同量(約1g)のインキを、薬さじを用いて容器内面に、半分の高さまで塗布して密封した。これはばらつき確認のため2個作成した。これらの試料も同様に加熱し、容器中のペンタデカン、ヘキサデカンの測定を行った。
【0026】
実施例、比較例1の結果を表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
実験の結果、容器内に一定面積露出させる方法は繰り返し精度が良好であり、また、多少液面が上下しても再現良く分析することが可能であること、更に1/10の露出面積での実験では約1/10の結果が得られたことで露出面積を規定すれば試料の比較分析は可能であることがいえる。
【0029】
試料容器の内面に試料を塗布する方法では、同量を塗布したにもかかわらず、得られた結果に大きなずれを生じてしまった。これは塗布した表面の状態や塗布する作業のばらつきが影響したものと考えら、ばらつきを低減させることは熟練を必要することが予想され、誰でもが行なえる作業とはいえない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、高粘度の液体に含まれている揮発性成分の測定を正確に行うことが可能である試料容器であり、インキ、マヨネーズ、グリスといった粘度の高い製品の品質管理工程に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の試料容器を模式的に示した図である。
【図2】本発明の試料容器を模式的に示した図である。
【図3】本発明の試料容器を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1 底部に円柱形状の凹部を設けた試料容器
2 高粘性液体
3 栓
4 試料容器
5 容器部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部および密封可能な栓を有し、かつ底部を有する筒状試料容器であって、
該底部が多段の凹形状であることを特徴とする試料容器。
【請求項2】
上部に開口部および密封可能な栓を有し、かつ底部を有する筒状試料容器であって、
該試料容器内に1以上の容器部を有することを特徴とする試料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−225328(P2007−225328A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44287(P2006−44287)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】