説明

試験管内及び生体内での軟骨形成のための方法及び組成物

本発明の態様は、軟骨形成を経験することが可能である胚性前駆細胞株の産生、特定及び使用に関連する方法及び組成物を包含する。原始幹細胞に由来する多数の例となる軟骨形成性細胞株が開示される。本明細書で記載される軟骨形成性細胞株は健全であり、40の継代を超えて増殖することができ、部位特異的な純度を有するので、研究及び治療での使用のために独特の分子組成を持つ多様な軟骨種を産生する組成物及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)条のもとで、以下の仮特許出願:2009年7月16日に出願された「胚性前駆細胞株を用いた試験管内及び生体内での軟骨形成に有用な方法及び組成物」と題する出願番号第61/226,237号、2009年9月18日に出願された「胚性前駆細胞株をスクリーニングする改善された方法」と題する出願番号第61/243,939号、2010年5月27日に出願された「胚性前駆細胞株をスクリーニングする改善された方法」と題する出願番号第61/349,088号、及び2010年7月16日に出願された「試験管内及び生体内での軟骨形成のための方法及び組成物」題する出願番号第61/365,308号の利益を主張する。これら出願のそれぞれの全体は参照によって本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
軟骨の限定された再生能力は、外傷又は変性疾患による損傷を回復する生体の自然の能力を限定する。たとえば、変形性関節症(OA)は、65歳を超えた70%の人々を苦しめている(2100万人のアメリカ人)。半月板又は前十字靭帯への傷害は、患者を関節炎の高いリスクに置くことが多い。変形性関節症は、関節面での軟骨の進行性の喪失を特徴とし、軟骨下骨の痛みを伴う露出を招く。関節軟骨へのこの傷害の後、ヒトの組織はほとんど修復能を示さない。自然の修復応答の結果と思われる新生軟骨は一般に線維性の性質であり、従って修復には好適ではない。
【0003】
軟骨に損傷を有する対象者を治療するために種々の治療計画が開発されている。これらの治療の例には、機械的な手段(たとえば、研磨及びマイクロフラクチャー術、たとえば、穿孔術、マイクロフラクチャー術、軟骨形成術、スポンジアリゼーション;レーザーによる治療、それらは、冒された軟骨の除去を軟骨再形成と組み合わせる)を用いて対象者における軟骨生成を誘発することを意図するもの、及び損傷部位への組織の移植(又は移植)(たとえば、骨膜移植、骨軟骨移植(モザイク形成)、及び関節軟骨ペースト移植)に頼る治療法が挙げられる。これらの治療法の成功率は様々であり、場合によっては、組織壊死、反応性滑膜炎、軟骨融解、及び関節軟骨変性の加速を含む有害な副作用を有する可能性がある。
【0004】
自家軟骨細胞療法(ACT)として知られる細胞に基づいた軟骨治療計画には、軟骨からの軟骨細胞の取り出し、試験管内での細胞の増殖、及び支持マトリクス(又はそのほかのタンパク質若しくはプロテオグリカン)の存在下又は非存在下でのこれら増殖させた細胞の患者への投与が含まれる。ACT療法は、試験管内で培養される場合のヒト関節軟骨細胞の脱分化、並びにそれらが移植部位で豊富な軟骨マトリクスを産生するように細胞を再分化させることの困難さによって複雑なものとなっている。さらに、ヒトからはほんのわずかな数の軟骨細胞しか回収できないので、培養の開始にほんのわずかな数の軟骨細胞しか使用できない。従って、実際上、単離されたヒト軟骨細胞を移植療法に適用する困難さは継続する。
【0005】
別の治療戦略は、骨髄由来の間葉幹細胞(hbmMSC)の利用である。単回用量のhbmMSC(軟骨原)を利用した臨床試験は、ヒアルロン酸(HA)対照に比べて疼痛の減少を示す。しかしながら、間葉幹細胞(MSC)は、軟骨の再生における使用に関して2つのハードルを有する。第1に、同種移植としての細胞の使用は、成人MSCの限定された増殖能のために問題であり、細胞が特定の量に増殖することができるとしても、それらは、軟骨を形成する能力を相対的に急速に失うことが多い。第2のハードルは、骨髄由来のMSCのようなMSCは、高レベルのCOL10A1及びIHHの発現を特徴とする肥大軟骨細胞を形成するということである。これらの軟骨細胞の発生における役割は、血管及び骨芽細胞を動員することであり、次いで死滅する。肥大軟骨細胞は、たとえば、長骨の成長板領域で認められる。それらはまた、それらが同様に骨形成で重要な役割を担う骨折部位でも認められる。従って、外傷や、たとえば、変形性関節症のような軟骨の変性疾患の治療でのMSCの使用は、混合した結果をもたらしている。加えて、生体には多数の種類の軟骨が存在する。耳の弾性軟骨は、鼻、胸骨、気管及び体重を支える関節とは異なった分子組成を有する。
【0006】
従って、再生医療の分野、特に軟骨の再生と修復の分野にいては、商業的な量の様々な種類の永続的で、肥大に対抗する軟骨細胞を生成する新規の細胞製剤のニーズが大きい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様には、軟骨形成に到ることが可能である胚性前駆細胞株の産生、特定及び使用に関連する方法及び組成物が含まれる。原始幹細胞に由来する多数の例となる軟骨形成性細胞株を開示する。本明細書で記載される軟骨形成性細胞株は、健全であり、40継代を超えて増殖することができ、部位特異的な純度を有するので、研究及び治療に使用するための独特な分子組成をもつ多様な軟骨の種類を産生する組成物及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】軟骨形成性の微細塊状態の14日目前後のqPCRによってアッセイされた細胞株におけるCOL2A1の誘導のレベルを示す図である。
【図2】未分化及び分化の状態における本発明の細胞株と共にMSC対照にて示す軟骨関連遺伝子、COL2A1、CRTAC1、CD74(図2A)、LECT1、IHH及びLHX8(図2B)の相対的な発現を示す図である。
【図3】4D20.8株とMSCの14日目ペレットにおけるペレット及びアイソタイプ対照による免疫染色として、すべて分化の21日目にて、継代6でのMSCと比べた継代14での株4D20.8と比べた脂肪組織幹細胞のサフラニンO染色の例を示す図である。
【図4】4D20.8RGDアルギン酸(図4A)、E15RGDアルギン酸及びSM30RGDアルギン酸(図4B)の生体内埋め込みの結果を示す図である。
【図5】細胞株4D20.8及びE15についてのガラス質軟骨に似た軟骨細胞様の外見を示す例となる組織像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
略号
AFP:α−フェトタンパク質
BMP:骨形成性タンパク質
BRL:バファローラット肝臓
BSA:ウシ血清アルブミン
CD:クラスター指定
cGMP:適正製造基準工程
CNS:中枢神経系
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地
DMSO:ジメチルスルホキシド
DPBS:ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
EC:胚性癌
EC Cells:胚性癌細胞、hEC細胞は、ヒト胚性癌細胞である
ECM:細胞外マトリクス
ED Cells:胚由来細胞;hED細胞はヒトED細胞である
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
EG Cells:胚性生殖細胞;hEG細胞はヒトEG細胞である
EP Cells:胚性前駆細胞は、それらが、ヒトにおける場合、SSEA4、TRA1−60又はTRA−1−81のようなマーカーの血清陽性をもはや示さないという点で原始幹細胞より分化しているが、完全に分化しているわけではない、原始幹細胞由来の細胞である。胚性前駆細胞は、発生の新生児段階ではなく胚段階に相当する。
ES Cells:胚性幹細胞;hES細胞はヒトES細胞である
FACS:蛍光活性化細胞選別
EBS:ウシ胎児血清
GMP:製造管理及び品質管理に関する基準
hED Cells:ヒト胚由来細胞
hEG Cells:ヒト胚性生殖細胞は胚組織の原始生殖細胞に由来する幹細胞である
hEP Cells:ヒト胚性前駆細胞はヒト種からの胚性前駆細胞である。
hiPS Cells:ヒトから誘導された多能性幹細胞は、たとえば、SOX2、KLF4、OCT4、MYC又はNANOG、LIN28、OCT4及びSOXのようなhES特異的な転写因子に暴露した後の体細胞から得られるhES細胞に類似する特性を持つ細胞である。
HSE:ヒト皮膚同等物は、創傷修復の促進で試験目的又は治療適用にために製造される細胞と生物学的マトリクス又は合成マトリクスの混合物である。
ICM:哺乳類の胚盤胞段階の胚の内部細胞塊
iPS細胞:誘導された多能性幹細胞は、たとえば、SOX2、KLF4、OCT4、MYC又はNANOG、LIN28、OCT4及びSOXのようなhES特異的な転写因子に暴露した後の体細胞から得られるhES細胞に類似する特性を持つ細胞である。
LOH:ヘテロ接合性の消失
MEM:最少必須培地
NT:核移植
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PS線維芽細胞:瘢痕化前の線維芽細胞は、早期妊娠の皮膚に由来する、又は瘢痕形成することなく皮膚創傷の迅速な治癒を促進するという点で遺伝子発現の出生前のパターンを示すED細胞に由来する線維芽細胞である。
RA:レチノイン酸
RFU:相対的蛍光単位
SCNT:体細胞核移植
SFM:無血清培地
SPF:特定病原体未感染
SV40:シミアンウイルス40
Tag:ラージT抗原
T−EDTA:トリプシンEDTA
【0010】
定義
用語「分析用再プログラム技術」は、体細胞の遺伝子発現のパターンをさらに多能性状態、たとえば、iPS細胞、ES細胞、ED細胞、EC細胞又はEG細胞のそれに再プログラムする種々の方法を指し、その際、再プログラムは、複数の別個の工程で生じ、体細胞の卵母細胞への移植及びその卵母細胞の活性化に単純に頼らない(2001年11月26出願の米国特許出願第60/332,510号;2002年11月26日出願の同第10/204,020号;2003年11月26日出願のPCT出願番号PCT/US02/37899;2005年8月3日出願の米国特許出願第60/705625号;2005年8月20日出願の同第60/729173号;2006年7月5日出願の同第60/818813号;2006年8月3日出願のPCT/US06/30632を参照のこと。そのそれぞれの全体が参照によって本明細書に組み入れられる)。
【0011】
用語「割球/桑実胚の細胞」は、哺乳類の胚における割球若しくは桑実胚の細胞、又はこれらの細胞の分化誘導体を含む追加の細胞の存在下又は非存在下で試験管内にて培養された割球若しくは桑実胚の細胞を指す。
【0012】
用語「遺伝子Xを発現する細胞」「遺伝子Xが細胞(又は細胞集団)にて発現される」、又はその同等物は、特定のアッセイプラットホームを用いた細胞の解析が陽性の結果を提供したことを意味する。逆もまた真実である(すなわち、遺伝子Xを発現しない細胞又はその同等物によって、特定のアッセイプラットホームを用いた細胞の解析が陰性の結果を提供したことを意味する)。従って、本明細書で記載される遺伝子発現の結果は、示された遺伝子についてアッセイプラットホーム(又はプラットホーム)で採用される特異的なプローブ(単数)又はプローブ(複数)に結びつく。
【0013】
用語「細胞株」は、試験管内で増える及び増殖することが可能である細胞の死すべき集団又は不死の集団を指す。
【0014】
用語「細胞性の再構築」は、機能的な細胞を得ることができるように核クロマチンの細胞質への移植を指す。
【0015】
用語「クローン性」は、すべて元々の単一細胞に由来し、ほかの細胞を含有しない、単一細胞から細胞の集団への増殖によって得られる細胞を指す。
【0016】
用語「コロニーのその場での分化」は、コロニーが未分化の幹細胞株として増殖した培養容器からコロニーを取り出す又はバラバラにすることなく、その場での細胞(たとえば、hES、hEG、hiPS、hEC又はhED)のコロニーの分化を指す。胚様体形成法又はたとえば、スピナー培養の使用のようなそのほかの凝集法が、それでもやはりコロニーのその場での分化の期間に付随するが、コロニーのその場での分化は胚様体を形成する中間工程を利用しない。
【0017】
用語「細胞質泡状突起」は、未処理の又は事前透過化したがほかは未処理の、しかし、核を欠く原形質膜によって結合される細胞の細胞質を指す。
【0018】
多能性幹細胞から本発明の方法によって作製された細胞を参照して使用される場合、用語「分化した細胞」は、親の多能性幹細胞と比較したとき、分化の低い能力を有する細胞を指す。本発明の分化した細胞は、さらに分化すればよい細胞を含む(すなわち、それらは最終的に分化していなくてもよい)。
【0019】
用語「直接分化」は、未分化細胞株としてのhES細胞のような単離した未分化幹細胞を増殖させる中間的な状態無しで直接、割球細胞、桑実胚細胞、ICM細胞、ED細胞又は未分化状態に再プログラムされた体細胞(たとえば、iPS細胞を作製する過程で、しかし、未分化状態でそのような細胞を精製する前に)を分化させる工程を指す。直接分化の非限定例は、培養された未処理のヒト胚盤胞の培養、及び記載された(Bongso et al, 1994. Human Reproduction 9:2110)ようなヒトES細胞株の生成なしでのED細胞の誘導である。
【0020】
用語「胚性幹細胞」(ES細胞)は、未分化状態を維持しつつ(たとえば、その種のES細胞に特異的なTERT、OCT4、及びSSEA及びTRAを発現している)細胞株として連続して継代されている胚盤胞の内部細胞塊、割球、又は桑実胚に由来する細胞を指す。ES細胞は、卵細胞の精子又はDNAとの受精、核移植、単為生殖、又はMHC領域における半接合体又はホモ接合体によってhESを生成する手段に由来してもよい。ES細胞は、未着床の胚に移植される場合の生殖細胞系と同様にあらゆる種類の体細胞に分化することが可能である細胞として歴史的に定義されている一方で、ヒトを含む多数の種からの候補ES培養物は、培養にてさらに平坦な外見を有し、通常生殖細胞系の分化には寄与せず、従って「ES様細胞」と呼ばれる。ヒトES細胞は、実際には「ES様」ではあるが、本出願では、我々は、ES細胞株及びES様細胞株を指して用語ES細胞を使用する。
【0021】
用語「組織特異的な培養物」は、たとえば、寒天の層上での体細胞の培養で生じるような、又はたとえば、コラーゲンゲル、スポンジ若しくは組織工学で一般に使用されるそのほかのポリマーにおける三次元で細胞が培養されるときに生じるような、凝集して、組織様の細胞密度で三次元構造を創る培養された細胞を指す。
【0022】
用語「ヒト胚由来の」(「hED」)細胞は、正常なヒトの発生の最初の8週間の同等物に相関する分化の状態までの原始内胚葉、外胚葉、中胚葉、神経堤及びその誘導体を含む、早期胚の内部細胞塊、胎盾、又は胚盤葉上層、又は万能性若しくは多能性の幹細胞を含むが、細胞株として継代されているhES細胞に由来する細胞(たとえば、Thomsonへの米国特許第7,582,479号、同第7,217,569号、同第6,887,706号、同第6,602,711号、同第6,280,718号、及び同第5,843,780号を参照のこと)を除く、割球由来の細胞、桑実胚由来の細胞、胚盤胞由来の細胞を指す。hED細胞は、卵細胞の精子又はDNAとの受精、核移植、又はクロマチン移植、単為生殖を介して単為生殖体を形成するように誘導される卵細胞、分析再プログラム技術、又はHLA領域における半接合体若しくはホモ接合体によるhES細胞を生成する手段によって生成される着床前の胚に由来してもよい。用語「ヒト胚性生殖細胞」(hEG細胞)は、生体で種々の組織に分化することができる、胚組織の原始生殖細胞又は成熟している若しくは成熟した、たとえば、卵母細胞及び精原細胞のような生殖細胞に由来する多能性幹細胞を指す。hEG細胞はまた、雌性発生又は雄性発生の手段、すなわち、多能性細胞がオス又はメスの起源のDNAのみを含有する卵母細胞に由来するので、すべてメス由来のDNA又はオス由来にDNAを含む方法によって産生される多能性幹細胞に由来してもよい(たとえば、1999年10月28日に出願された米国特許出願第60/161,987号、2000年10月27日に出願された同第09/697,297号、2001年11月29日に出願された同第09/995,659号、2003年2月27日に出願された同第10/374,512号、2000年10月27日に出願されたPCT出願番号PCT/US/00/09551を参照のこと;その開示はすべて参照によって本明細書に組み入れられる)。
【0023】
用語「ヒト胚性幹細胞」(hES細胞)は、ヒトのES細胞を指す。
【0024】
用語「ヒトiPS細胞」は、免疫に欠陥のあるマウスに移植した場合、3つの胚葉すべてを形成する能力を含む、hES細胞に似た特性を持つ細胞を指し、その際、前記iPS細胞は、脱分化因子、たとえば、hES細胞に特異的な転写因子の組み合わせ:KLF4、SOX2、MYC及びOCT4又はSOX2、OCT4、NANOG及びLIN28への暴露後の種々の体細胞系列の細胞に由来する。脱分化因子の任意の好都合な組み合わせを用いてiPS細胞を生成してもよい。たとえば、当該技術で既知であるレトロウイルス、レンチウイルス若しくはアデノウイルスのベクターのようなベクターを介したこれら遺伝子の発現によって、又はたとえば、透過化若しくはほかの技術によるタンパク質のような因子の導入を介して前記iPS細胞を産生してもよい。そのような例となる方法の記載については、2006年8月3日に出願されたPCT出願番号PCT/US2006/030632;米国特許出願第11/989,988;2000年6月30日に出願されたPCT出願PCT/US2000/018063;2000年12月15日に出願された米国特許出願第09,736,268号;2004年4月23日に出願された米国特許出願第10/831,599号;及び米国特許公開20020142397(「細胞の運命を変える方法」と題する出願番号10/015,824);米国特許公開20050014258(「細胞の運命を変える方法」と題する出願番号10/910,156);米国特許公開20030046722(「再プログラムしたドナーのクロマチン又はドナーの細胞を用いた哺乳類をクローニングする方法」題する出願番号10/032,191);米国特許公開20060212952(「再プログラムしたドナーのクロマチン又はドナーの細胞を用いた哺乳類をクローニングする方法」題する出願番号11/439,788)を参照のこと。そのすべてはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0025】
用語「ICM細胞」は、哺乳類胚の内部細胞塊の細胞、又は周辺の栄養外胚葉細胞の存在下若しくは非存在下にて試験管内で培養した内部細胞塊の細胞を指す。
【0026】
用語「オリゴクローン性」は、同一培養物でそのほかの細胞とは異なる形態や分化マーカーの存在又は非存在のような類似の特徴を共有すると思われる通常2〜1000細胞の小さな細胞集団を起源とする細胞の集団を指す。オリゴクローン性細胞は、これらの共通する特徴を共有しない細胞から単離され、増殖させて類似細胞の元々の集団に全体として本質的に由来する細胞集団を生成する。
【0027】
用語「器官型培養」は、たとえば、寒天の層上での若干の細胞の培養で生じるような、動物における奇形腫として培養されるような、さもなければ、三次元培養系で増殖させるような組織様の細胞密度での三次元構造を凝集して創る培養細胞を指すが、前記凝集した細胞は、たとえば、非限定の例証として、表皮角化細胞と皮膚線維芽細胞の組み合わせ、又は相当する組織間質を伴った実質細胞、又は間葉細胞を伴った上皮細胞の組み合わせのような異なった細胞系列の細胞を含有する。
【0028】
用語「多能性幹細胞」は、以下に定義されるような用語「原始幹細胞」と同義的に使用される。
【0029】
用語「プールされたクローン性」は、2以上のクローン性集団を組み合わせて遺伝子発現マーカーのようなマーカーの均一性を持つ、クローン集団に類似する細胞の集団を生成することによって得られる細胞の集団を指すが、細胞すべてが同一の最初のクローンに由来する集団ではない。前記プールされたクローン性細胞株には、単一の遺伝子型又は混合された遺伝子型の細胞が含まれる。プールされたクローン性細胞株は、クローン性細胞株が相対的に早く分化する場合、又は望ましくない方法で早期に増殖寿命で変化を生じる場合、特に有用である。
【0030】
用語「原始幹細胞」は、1を超える分化した細胞種に分化することが可能である動物細胞を指す。そのような細胞には、hES細胞、割球/桑実胚の細胞及びそれらに由来するhED細胞、hiPS細胞、hEG細胞、hEC細胞、並びに間葉幹細胞、神経幹細胞及び骨髄由来幹細胞を含む成人由来細胞が挙げられる。原始幹細胞は非ヒト動物に由来してもよい。原始幹細胞は遺伝子操作されてもよいし、遺伝子操作されなくてもよい。遺伝子操作された細胞は、たとえば、蛍光タンパク質のようなマーカーを含んで試験管内又は生体内での特定を円滑にしてもよい。
【0031】
詳細な説明
上記で要約したように、本発明の態様は、軟骨形成を経験することが可能である胚性前駆細胞株の産生、特定及び使用に関連する方法及び組成物を包含する。
【0032】
本発明をさらに詳細に説明する前に、本発明は記載される特定の実施形態に限定されることはなく、従って当然変化してもよいことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0033】
値の範囲が提供される場合、内容が明瞭に指示されない限り、下限の単位の10分の1までの各介在する値、その範囲の上限と下限の間及びその言及される範囲におけるそのほかの開始の値又は介在する値は、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのさらに小さな範囲の上限及び下限は独立してさらに小さな範囲に含まれてもよく、本発明の範囲内に包含され、開始範囲における特に排除される限界の対象となる。開始範囲が一方の限界又は双方の限界を含む場合、これらを含む限界のいずれか又は双方を排除する範囲も本発明に含まれる。
【0034】
特定の範囲は、用語「約」が先行する数値によって本明細書では提示される。用語「約」は、それが先行する正確な数、同様にその用語が先行する数に近い又は近似する数に対して文字通りの支援を提供するために本明細書で使用される。数が特に言及される数に近い又は近似するかどうかを決定する場合、近い又は近似する言及されない数が、それが提示される文脈で、特に言及された数の実質的な同等物を提供する数であってもよい。
【0035】
特に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書で記載されるものと類似の又は同等の方法及び材料を本発明の実践又は試験でも使用することができるが、代表的な説明となる方法及び材料を今や記載する。
【0036】
本明細書で引用される出版物及び特許はすべて、各個々の出版物又は特許が参照によって組み込まれるように特に且つ個々に指示されるかのように、及び言及される出版物と関連して方法及び/又は材料を開示し、記載するように参照によって本明細書に組み入れられるかのように、参照によって本明細書に組み入れられる。出版物の引用は、出願日の前の開示についてであり、前の発明によってそのような出版物に先行するように本発明に権利を与えないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される出版物の日付は、独立して確認される必要があってもよい実際の出版の日付とは異なってもよい。
【0037】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形態「a」、「an」及び「the」は、内容が明瞭に指示されていない限り、複数の参照を含むことが言及される。さらに、特許請求の範囲は、任意の要素を排除するように作成されてもよいことが言及される。従って、この文書は、特許請求の範囲の要素の言及又は「否定的な」限定の使用と併せてそのような排除的用語「単に」、「のみ」などの使用について先例を基準として役立つことが意図される。
【0038】
本開示を読み取る際、当業者に明らかであるように、本明細書で記載され、説明される実施形態のそれぞれは、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、そのほかの幾つかの実施形態の特徴から容易に分離されてもよい、又はそれと容易に組み合わせられてもよい別個の成分及び特徴を有する。言及される方法は、言及される事象の順に、又は理論的に可能なほかの順に実施することができる。
【0039】
胚性の軟骨形成性前駆細胞及び使用方法
本発明の態様は、軟骨形成を経験することが可能である胚性前駆細胞株の産生、特定及び使用に関連する方法及び組成物を包含する。四肢及び関節の中心的調節因子と関連して間充組織の中心的調節因子を発現する多様なセットのクローン性細胞株、たとえば、関節特異的なマーカーGDF5を高レベルで発現する細胞株のサブセットを伴った、MSX1、MSX2、及びSOX9を発現する細胞株が記載されている(補完情報を含む、参照によって本明細書に組み入れられるWest et al., 2008, Regenerative Medicine vol. 3(3) pp. 287-308; 及びその全体が参照によって本明細書に組み入れられる「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を促進する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2009年7月16日に出願された米国特許出願第12/504,630号を参照)。これらのクローン性に精製された細胞株は、健全であり、その遺伝子発現パターンを維持しつつ40を超える継代について増殖させることができ、腫瘍形成性は示されておらず、遺伝子発現の胚性パターンを有する。従って、これらの細胞株は、研究及び治療で使用するための独特の分子組成を持った多様な軟骨の種類を産生するための組成物及び方法を提供する。
【0040】
特定の実施形態では、本発明の未分化の胚性軟骨形成性前駆細胞又はその細胞株の遺伝子発現パターンは、適切な培養条件下では軟骨細胞になる可能性を有する兆候を提供しない。言い換えれば、細胞は、軟骨細胞の発生の可能性を示す遺伝子発現パターンを有さない。
【0041】
本発明の特定の胚性前駆細胞株は、軟骨形成条件下で誘導されると、COL10A1遺伝子又はIHH遺伝子を発現することなく軟骨を生成することが可能であるが、双方は、そのような条件下でMSCにて発現され、肥大軟骨細胞のマーカーである。肥大軟骨細胞は、後に骨芽細胞に侵襲されて骨を作る一時的なマトリクスを提供するので、特定の治療目的(たとえば、関節軟骨の外傷、関節炎の治療又は関連する使用のために組織を再生する尽力において関節に注入する場合、又はさもなければ、関節軟骨に移植する場合)には向いていない。従って、本発明の細胞株は、肥大軟骨細胞を発生させるそのほかの軟骨細胞の前駆細胞(たとえば、骨髄由来のMSC)との重要な治療上の差異を有する。
【0042】
本発明に係る例となる胚性の軟骨形成性前駆細胞は、以下の遺伝子:CD74、CD90、CD166、ITGA2及びKCNK2のいずれか1、2、3、4又はすべてについて陰性である。これら遺伝子のそれぞれは、間葉幹細胞(MSC)に存在するマーカーであり、それは現在、軟骨置換療法(以下でさらに記載する)で使用されている。従って、本発明の軟骨形成性の胚性前駆細胞株は、そのほかの既知の軟骨形成性前駆細胞とは異なった遺伝子発現パターンを有する。特定の実施形態では、軟骨形成性の胚性前駆細胞株はさらにHOX遺伝子とPITX1の発現についても陰性である。
【0043】
以下は、本発明の態様に係る例となるヒト胚性の軟骨形成性前駆細胞株及び当該の特定の遺伝子発現マーカー(陽性及び陰性のマーカー)のリストである。これらヒト胚性の軟骨形成性前駆細胞株は、ヒトES細胞又は類似のヒト原始幹細胞由来の細胞から単離された後、18〜21回の倍増クローン増殖を経験した場合、軟骨芽細胞、次いで通常の早期継代培養のヒト関節軟骨細胞(NHAC)よりも高いレベルのCOL2A1を発現する軟骨細胞に分化することが可能である。
【0044】
P22〜28の範囲における細胞株MEL2の遺伝子発現パターンを、表1に示す未分化(対照又はCtrl)の状態で細胞の遺伝子発現パターンを比較することによって決定することができる。細胞株によって発現される特定の遺伝子発現マーカーには、遺伝子:PIP、ENPP2、DLX5、CXADR、NPTX2、CLDN23、SFRP2、HSPB3、HAND2、HSD17B2、RCAN2、EBF3、GPM6B、RNF175、PPARGC1A、RGS16、GPM6B、SOX17、EPHB6及びBAPX1が挙げられる。P22〜28の範囲における細胞株MEL2で発現されるこれらのマーカーで最も特異的なのは、PIP(IlluminaプローブID4010519)、SOX17(IlluminaプローブID3610193)、DLX5(IlluminaプローブID3370767)、GPM6B(IlluminaプローブID2630279)、RGS16(IlluminaプローブID1030102)、EPHB6(IlluminaプローブID7400017)及びHAND2(IlluminaプローブID4640563)であり、TBX15(IlluminaプローブID6060113)、HOXA2(IlluminaプローブID2060471)、AJAP1(IlluminaID1300647)及びHOXB2(IlluminaプローブID3460097)の発現が陰性であることである。
【0045】
P13〜15の範囲における細胞株SM30の遺伝子発現パターンを、表1に示す未分化(対照又はCtrl)の状態で細胞の遺伝子発現パターンを比較することによって決定することができる。細胞株によって発現される特定の遺伝子発現マーカーには、遺伝子:COL15A1、DYSF、FST、ITGB4、TMEM119、MSX1、NDST3、NTRK1及びZIC2が挙げられる。P13〜15の範囲での細胞株SM30で発現されるこれらの遺伝子発現マーカーで最も特異的なのは、NTRK1(IlluminaプローブID7050113)、NDST3(IlluminaプローブID670537)、ZIC2(IlluminaプローブID510368)、ITGB4(IlluminaプローブID3940132)であり、PIP(IlluminaプローブID4010519)、NNAT(IlluminaプローブID4010709)、HOXA2(IlluminaプローブID2060471)、TBX15(IlluminaプローブID6060113)及びHAND2(IlluminaプローブID4640563)の発現が陰性であることである。
【0046】
P11〜18の範囲における細胞株7SMOO32の遺伝子発現パターンを、表1に示す未分化(対照又はCtrl)の状態で細胞の遺伝子発現パターンを比較することによって決定することができる。細胞株によって発現される特定の遺伝子発現マーカーには、遺伝子:EGFL6、FGF13、BEX2、CHRNA3、NCAM2、BBOX1及びDLK1が挙げられる。7SMOO32で発現されるこれらの遺伝子発現マーカーで最も特異的なのは、EGFL6(IlluminaプローブID6330079)、FGF13(IlluminaプローブID7380239)、CHRNA3(IlluminaプローブID4280180)、BBOX1(IlluminaプローブID3400386)であり、遺伝子:TBX15(IlluminaプローブID6060113)、NNAT(IlluminaプローブID4010709)、NTRK1(IlluminaプローブID7050113)、HAND2(IlluminaプローブID4640563)及びHOXA2(IlluminaプローブID2060471)の発現が陰性であることである。
【0047】
P12〜17の範囲における細胞株SK11の遺伝子発現パターンを、表1に示す未分化(対照又はCtrl)の状態で細胞の遺伝子発現パターンを比較することによって決定することができる。細胞株によって発現される特定の遺伝子発現マーカーには、遺伝子:PITX1、TBX15、NCAM1、COL21A1、CYYR1、LAMP3、MEGF10、RNF165及びGDF10が挙げられる。SK11で発現されるこれらの遺伝子発現マーカーで最も特異的なのは、TBX15(IlluminaプローブID6060113)、COL21A1(IlluminaプローブID3440747)、GDF10(IlluminaプローブID5690095)、PITX1(IlluminaプローブID2000373)であり、遺伝子:NNAT(IlluminaプローブID4010709)、HAND2(IlluminaプローブID4640563)、FOXF2(IlluminaプローブID1660470)、FOXG1(IlluminaプローブID4200458)、HOXA2(IlluminaプローブID2060471)、HOXB2(IlluminaプローブID3460097)及びAJAP1(IlluminaID1300647)の発現が陰性であることである。
【0048】
P15〜26の範囲における細胞株7PEND24の遺伝子発現パターンを、表1に示す未分化(対照又はCtrl)の状態で細胞の遺伝子発現パターンを比較することによって決定することができる。細胞株によって発現される特定の遺伝子発現マーカーには、遺伝子:TBX15、CA9、SPAG16、SUSD2、TBXAS1、AIF1、SLITRK5、FOXF2、AADAC及びFOXG1が挙げられる。7PEND24で発現されるこれらの遺伝子発現マーカーで最も特異的なのは、AADAC(IlluminaプローブID6200619)、TBX15(IlluminaプローブID6060113)、SPAG16(IlluminaプローブID4390537)、AIF1(IlluminaプローブID3800047)であり、遺伝子:NNAT(IlluminaプローブID4010709)、PITX1(IlluminaプローブID2000373)、SOX17(IlluminaプローブID3610193)及びAJAP1(IlluminaID1300647)の発現が陰性であることである。
【0049】
P14〜15の範囲における細胞株E15の遺伝子発現パターンを、表1に示す未分化(対照又はCtrl)の状態で細胞の遺伝子発現パターンを比較することによって決定することができる。細胞株によって発現される特定の遺伝子発現マーカーには、遺伝子:ENPP2、ABCA6、TBX15、BAI3、CNTN3、TSPYL5、GAP43、AJAP1、CYFIP2、HOXA2(IlluminaプローブID2060471)、HOXB2(IlluminaプローブID3460097)及びNNATが挙げられる。E15で発現されるこれらの遺伝子発現マーカーで最も特異的なのは、AJAP1(IlluminaプローブID1300647)、BAI3(IlluminaプローブID5690301)、NNAT(IlluminaプローブID4010709)、ABCA6(IlluminaプローブID5810209)であり、遺伝子:PITX1(IlluminaプローブID2000373)の発現が陰性であり、遺伝子発現マーカー:HAND2(IlluminaプローブID4640563)及びSOX17(IlluminaプローブID3610193)が陰性であることである。
【0050】
P12〜17の範囲における細胞株4D20.8の遺伝子発現パターンを、表1に示す未分化(対照又はCtrl)の状態で細胞の遺伝子発現パターンを比較することによって決定することができる。細胞株によって発現される特定の遺伝子発現マーカーには、遺伝子:LHX8、HAPLN1、LINGO2、FGF18、GPR126、BBOX1、ITGA4、SHISA3及びBARX1が挙げられ、遺伝子発現マーカー:NNAT及びHAND2については陰性である。4D20.8で発現されるこれらの遺伝子発現マーカーで最も特異的なのは、SHISA3(IlluminaプローブID5670286)、LHX8(IlluminaプローブID2900343)、BARX1(IlluminaプローブID6450040)、LINGO2(IlluminaプローブID1110291)であり、遺伝子:PITX1(IlluminaプローブID2000373)、SOX17(IlluminaプローブID3610193)及びAJAP1(IlluminaID1300647)の発現が陰性であることである。
【0051】
上記で言及したように、本発明の胚性の軟骨形成性前駆細胞は、試験管内又は生体内で軟骨を生成する方法での使用を見い出す(本明細書では軟骨細胞誘導法と呼ぶことがある)。治療上の使用に好適なものを含む好都合な軟骨細胞誘導法を使用してもよい(多数の例となる軟骨細胞誘導/軟骨生成の方法が以下及び実施例の項で記載される)。
【0052】
従って、本発明の胚性の軟骨形成性前駆細胞は、軟骨組織の修復のための治療応用に使用されてもよく、たとえば、治療上許容できるキャリアにて対象者に投与されてもよい。前駆細胞が投与される対象者は、軟骨の置換/再生が治療上の利益を提供する状態、傷害又は疾病を有してもよい。たとえば、対象者が、特定の部位での軟骨の損傷、たとえば、関節軟骨の損傷を有するのであれば、軟骨の損傷部位に胚性前駆細胞株を投与してもよい。そのような治療のための薬学上許容できるキャリアには、細胞の移植に治療用キャリアとして使用が見い出される多種多様な足場、マトリクスなどのいずれかが挙げられる。非限定例には、以下の成分:ヘクステンド;ヒアルロナン及びそのポリマー;コンドロイチン硫酸;I型コラーゲン;II型コラーゲン;III型コラーゲン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸及びそのポリマー;アルギン酸;アガロース;ポロキサマー;フィブリン;キチン;及びキトサンのいずれか1つ又は組み合わせを含有するキャリアが挙げられる。軟骨細胞の分化及び治療法における例となる足場/マトリクス及びその使用は以下でさらに詳細に記載する。
【0053】
特定の治療応用では、採用される軟骨胚性前駆細胞株は、対象者に投与するのに先立って、たとえば、移植の前に軟骨生成を誘導するために軟骨誘導条件下で培養されてもよい。たとえば、本発明の細胞株から生成される軟骨を含有する形態又はそのほかの構造体(たとえば、成形された構造体)が、たとえば、軟骨の喪失、傷害又は変性の部位にて対象者に移植されてもよい。そのような実施形態では、軟骨細胞培養条件;合成マトリクス又は生体吸収性不動化ビヒクルに胚性前駆細胞を含浸すること;及び成形された構造体に胚性前駆細胞を入れることのいずれか1つ又は組み合わせを含む好都合な軟骨産生条件を採用してもよい。
【0054】
本発明に係る治療方法には、移植後1以上の時点で所望の部位での軟骨の生成率を測定すること(たとえば、損傷した軟骨の修復又は置換を測定すること)、並びに対象者において新しく形成された軟骨の性能に関しての情報を得ることが含まれる。測定されるパラメータには、患者における移植部位での生き残り、局在化及び存在する投与された細胞の数を挙げることができる。種々の走査技法、たとえば、コンピュータ断層撮影(CAT又はCT)走査、磁気共鳴画像診断(MRI)又はポジトロン放出断層撮影(PET)走査を用いて細胞の生着又は再構築の程度を判定してもよい。本発明に係る移植された細胞の対象への機能的一体化は、損傷した又は冒された機能の回復、たとえば、関節の回復、又は機能の増強を調べることによって評価することができる。標的組織を取り出し、視覚的に又は顕微鏡でそれを調べることによって細胞移植の生着、局在化及び生き残りも評価することができる(たとえば、死後解析にて)。
【0055】
組織を操作した(tissue engineered)軟骨
哺乳類には3種の軟骨が存在し、ガラス質軟骨、線維軟骨及び弾性軟骨が挙げられる。ガラス質軟骨は、フィルム状の弾性粘度を有する軟骨質の塊から成り、半透明であり、真珠のような青色である。ガラス質軟骨は、関節接合する関節の関節接合する表面に優勢に見い出される。それはまた、骨端板、肋軟骨、気管軟骨、気管支軟骨及び鼻軟骨にも見い出される。線維軟骨は、軟骨に張力強度を付加するI型コラーゲンの原線維を含有することを除いてガラス質軟骨と本質的同じである。コラーゲン性の原線維が束に配置され、軟骨細胞が束の間に局在する。線維軟骨は一般に椎間円板の線維輪、腱と靭帯の挿入、半月板、恥骨結合、及び関節包の挿入に一般に見られる。弾性軟骨も、エラスチンの線維を含有することを除いてガラス質軟骨に類似する。それはガラス質軟骨より不透明であり、さらに柔軟性で曲げ易い。これらの特徴は、軟骨マトリクスに埋め込まれた弾性線維によって部分的には規定される。通常、耳介、咽頭蓋、及び喉頭には弾性軟骨が存在する。
【0056】
特定の実施形態では、本発明の軟骨産生細胞が治療応用に採用されて、対象者(たとえば、哺乳類、たとえば、ヒト対象者)において軟骨組織(たとえば、損傷された軟骨)を修復し、置き換え、又は整備する。試験管内で軟骨が生成され、その後冒された部位に移植されてもよく、特定の実施形態では、軟骨細胞が(たとえば、マトリクス又は足場の中に)移植されて対象者における所望の部位で軟骨を生成してもよい。軟骨産生細胞(又は軟骨細胞)を用いる多数の治療法が記載されており、その2,3を以下で要約する。
【0057】
特定の実施形態では、合成マトリクス又は生体吸収性の不動化媒体(「足場」又は「マトリクス」とも呼ぶことがある)に本発明の軟骨産生細胞を含浸させてもよい。種々の合成担体マトリクスが今日まで使用されており、それには、三次元コラーゲンゲル(米国特許第4,846,835号; Nishimoto (1990) Med. J. Kinki University 15; 75-86; Nixon et al. (1993) Am. J. Vet. Res. 54:349-356; Wakitani et al. (1989) J. Bone Joint Surg. 71B:74-80; Yasui (1989) J. Jpn. Ortho. Assoc. 63:529-538);再構築フィブリン/トロンビンゲル(米国特許第4,642,120号;同第5,053,050号及び同第4,904,259号);ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸及びそのコポリマーを含有する合成ポリマーマトリクス(米国特許第5,041,138号);並びにヒアルロン酸に基づいたポリマー(Robinson et al. (1990) Calcif. Tissue Int. 46:246-253)が挙げられる。I型コラーゲンマトリクス(たとえば、日本、東京の株式会社高研からのアテロコラーゲン);I型とIII型コラーゲンの二重層足場(たとえば、ドイツ、Leverkusen、Verigen);コラーゲン足場(たとえば、ドイツ、Hezoenrath、Matricelのカバーした自己軟骨細胞移植(CACI)及びマトリクス誘導の自己軟骨細胞移植(MACI)方式(ACI−Maix(商標));ブタのI型/III型二重層(たとえば、ChondroGide(登録商標)(Geistlich Biomaterials,Wolhusen、スイス);3D−コラーゲン/ゲル/マトリクス(たとえば、Stuttgart、Friedrichstrase,BioRegioSTERNからの及びMA、ボストンのKinetics社からのCaReS(登録商標)で使用されるような);ヒアルロナン足場、たとえば、ヒアルロナンを基にした生分解性ポリマーのエステル化(ベンジルエステル)誘導体(たとえば、イタリア、Abano Terme、Fida Advanced Biopolymers LaboratoriesからのHyaff(登録商標)−11);PGA/PLAコポリマー及びポリジオキサノン足場、たとえば、ゲル負荷多孔性生分解性フリース(たとえば、ドイツ、Freiburg、Biotissue TechnologiesからのBio−Seed−Cで採用されるような);アガロース/アルギン酸マトリクスを伴った固形足場(たとえば、フランス、MIONS、TBF Tissue EngineeringからのCartipatch(登録商標));二相性の三次元コラーゲン/コンドロイチン表面足場(たとえば、ドイツ、Reutlingen、TETECからのNOVOCART(商標)3D)を含む、これらの足場及びマトリクスの特定のものが治療用の軟骨修復に使用されている(又はそのために試されている)。
【0058】
軟骨再構築の記載について、参照によって本明細書に組み入れられる、Anthony Atala及びRobert P.Lanzaによって編集され、Academic Press(ロンドン)によって出版されたMethods of Tissue Engineering(2002)に記載されたように(1027〜1039頁を参照)、本発明の軟骨産生細胞を軟骨の再構築に採用してもよい。そこで記載されたように、軟骨産生細胞を成形された構造体(たとえば、射出成形によって)に入れ、動物に移植してもよい。時間が経てば、軟骨産生細胞によって生成された軟骨が成形された構造体を置き換え、それによって、形成された軟骨構造体を生成する(すなわち、当初の形成された構造体の形状にて)。形成された構造体のための例となる成形材料には、ヒドロゲル(たとえば、アルギン酸、アガロース、ポラクソマー(プルロニクス))及び天然の材料(たとえば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、及びフィブリン)が挙げられる。
【0059】
特定の実施形態では、本発明の軟骨産生細胞は、試験管内で培養されて合成軟骨(又は軟骨様の)材料を形成してもよい。得られた軟骨を続いて軟骨欠損の部位で対象者に埋め込んでもよい。この種のアプローチは、埋め込みの前に合成軟骨材料の成長がモニターされ得るという利点を有する。加えて、得られた軟骨は埋め込みに先立って生化学的に及び形態学的に性状分析され得る。試験管内で合成軟骨を増殖させるために2つの一般的な手順が開発されている。これらには、足場依存性の方法又は足場非依存性の方法のいずれかで軟骨産生細胞を増殖することが含まれる。
【0060】
足場非依存性の方法では、軟骨産生細胞をアガロースゲルの中でコロニーとして培養してもよい。たとえば、Benyaら、(1982)Cell、30:215−224;Aydlotteら、(1990)in Methods and Cartilage Research、Chapter:23:pp.90−92;Aulthouseら(1989)In Vitro Cellular and Developmental Biology 25:659−668;Delbruckら、(1986)Connective Tissue Res.15:1550−172;及びBohmeら、(1992)J.Cell Biol.116:1035−1042を参照のこと。或いは、別の足場非依存性の方法では、軟骨産生細胞を浮遊培養にてコロニーとして培養してもよい。たとえば、Franchimontら、(1989)J.Rheumatol.16:5−9;及びBassleerら、(1990) in 「Methods and Cartilage Research」,Academic Press Ltd.,Chapter 24を参照のこと。
【0061】
足場依存性の方法では、軟骨産生細胞の一次培養は細胞培養フラスコの表面に付着する単層として増殖させてもよい。たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるYoshihashi(1983)J.Jpn.Ortho.Assoc.58:629−641;及び米国特許第4,356,261号を参照のこと。
【0062】
特定の実施形態では、本発明の軟骨療法は、米国特許第5,723,331号及び同第5,786,217号(双方共その全体が参照によって本明細書に組み入れられる「哺乳類における関節軟骨欠陥の修復のための方法及び組成物」と題する)に記載されたものを含む。これらの特許は、軟骨の欠陥の修復のために合成軟骨パッチを試験管内で調製する方法を記載している。本発明の軟骨産生細胞を採用する場合、方法は、(1)細胞の接触を有する事前に成形されたウェル、細胞付着性の表面に本発明の軟骨産生細胞を播く工程と、(2)細胞が細胞外マトリクスを分泌できるのに十分な時間、ウェルにて本発明の軟骨産生細胞を培養し、それによって合成軟骨の三次元の多層細胞パッチを形成する工程を含む。得られた合成軟骨(たとえば、合成関節軟骨)は、内因的に産生され、分泌された細胞外マトリクスの中に分散された本発明の軟骨産生細胞を含有する。続いて、得られた合成軟骨パッチを対象者(たとえば、哺乳類)における軟骨の欠陥の修復(置き換え)に使用してもよい。
【0063】
別の例として、本発明の軟骨形成性細胞を三次元マトリクス、たとえば、ヒドロゲルに被包してもよい。例となるヒドロゲル被包方法は、参照によって本明細書に組み入れられる、「三次元ヒドロゲル培養における胚性幹細胞の指向分化」、Nathaniel S.Hwang,Shyni Varghese及びJennifer Elisseeff,Methods in Molecular Biology,vol.407:p351 Stem Cell Assaysに見つけることができる。そこに記載された例となる方法を以下に要約する。
【0064】
A.PEGDA又はRGDで修飾したPEGDAヒドロゲルにおける軟骨細胞前駆細胞の光被包
1)10%(w/v)の濃度にて無菌PBSでマクロマーを混合することによってPEGDAポリマー、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート(PRGDA:カタログ番号01010F12、米国、Nektar,Huntsville,AL)溶液又はRGDで修飾したPEGDA溶液を調製する。ポリマー溶液を光から保護し、それは、−20℃にて3ヵ月間保存することができる。
2)70%のフィルター滅菌したエタノール1mLに100mgの光開始剤、イグラキュア2959(製品番号1706673,Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY,USA)を溶解する。
3)その使用まで、粉砕した氷上にPEGDA溶液と光開始剤溶液の双方を置く。
5)PEGDA溶液に光開始剤を加え、十分に混合して最終濃度0.05%(w/v)とする。開始剤がマクロマー溶液と非常に良く混合されていることを確認する(5μLの光開始剤/ポリマー溶液のmL)。
6)光開始剤を含有するPEGDA溶液を細胞ペレットに加え、ピペットを用いて泡を創らずに十分に混合することによって前駆体(光開始剤を伴ったポリマー)溶液の中で細胞(2000〜3000万個/mL)を浮遊させる。
7)100_Lの前駆細胞/ポリマー溶液を円筒状の金型に移し、4.4mW/cm(Glowmark System,Upper Saddle River,NJ,USA)にて長波365nmの光に5分間暴露してゲル形成を完了させる。
8)「固化した」軟骨細胞前駆細胞を含むヒドロゲルをその金型から取り出し、10ng/mlのTGF−1を含有する軟骨形成性培地と共に12穴プレートのそれらを移し、37℃にて5%COでインキュベートする。2〜3日ごとに培地を交換する。
【0065】
B.アルギン酸ヒドロゲルにおける軟骨細胞前駆細胞の被包
1)軟骨形成性細胞を50mlの円錐管に回収し、145gにて5分間遠心する。上清を取り除き、アルギン酸ポリマー又はRGD修飾したアルギン酸ポリマーの溶液を加え、(P−1000)ピペットマンを用いて細胞を穏やかに浮遊させる。液体中での泡立ちを回避する。
2)Transwell組織培養インサートトレーの1つを取り、1mLの塩化カルシウム溶液でウェルを満たす。
3)ピペットマンを用いて、100μlの細胞浮遊液を組織培養インサートに加える。インサートをすべて満たした後、無菌のピンセットを用いて、塩化カルシウム溶液を含有するウェルにインサートを移す。5%COにて37℃で20分間それらをインキュベートする。
4)薄い曲がったヘラと共に穏やかなテコのような動きを用いてインサートから構築物を取り外す。各ウェルに構築物1つを入れ、5%COにて37℃でインキュベートする。
【0066】
ヒドロゲルに被包された軟骨細胞前駆細胞を試験管内で培養し、又は生体内で軟骨産生が望まれる部位に移植し、たとえば、損傷した又は失った軟骨を置き換えることができる。
【0067】
Glycosan Biosystemsもまた、培養、組織工学の足場及び細胞療法で使用を見い出す三次元細胞培養用のヒドロゲルを提供している。この会社はたとえば、試験管内及び生体内での細胞増殖及び分化で使用するためのヒアルロナン系、PEG系及びコラーゲン系のヒドロゲルを提供している。
【0068】
Glycosan Biosystemsからの例となるヒドロゲル方式の1つは、3−D培養にて被包された細胞の穏やかで迅速な回収を可能にするHyStem−CSS(商標)である。HyStem−CSSは、少量の還元剤のみを用いたHyStem−Cヒドロゲルの液化を可能にする新規の架橋剤、PEGSSDAを使用する。再構築されたHyStem−CSS(商標)は15〜37℃で液体のままである。架橋剤、PEGSSDAが、Glycosil(商標)(チオール修飾したヒアルロナン)とGelin−S(商標)(チオール修飾したゼラチン)の混合物に加えられるとヒドロゲルが形成される。3つの成分すべてが混合された後、約20分間でゲル化が生じる。工程は低温又は低pHに左右されない。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は細胞培養培地によって成分を希釈することはゲル化時間を増やすことができる。得られたヒドロゲルは、37℃にて2時間未満で40mlのアセチル−L−システイン(還元剤)に溶解することができる。
【0069】
製造元のプロトコールによれば、HyStem−CSSヒドロゲル(3×2.5ml=7.5ml)は以下のように調製される。
【0070】
HyStem、Gelin−S、PEGSSDA及びDG水のバイアルを室温にする。
【0071】
無菌条件下でシリンジと針を用いて、1.0mlのDG水をHyStemのバイアルに加える。Gelin−Sのバイアルについて繰り返す。
【0072】
ロッカー又は振盪器の上で双方のバイアルを水平に置く。固形物が完全に溶解するのに<30分かかるであろう。37℃以下に温めること及び/又は穏やかなボルテックス撹拌は溶解の速度を速める。溶液は透明であり、やや粘性である。
【0073】
無菌条件下でシリンジと針を用いて、0.5mlのDG水をPEGSSDAのバイアルに加える。数回反転して溶解する。
【0074】
できるだけ速く、しかし、溶液を作製して2時間以内に、同容量のHyStem toGelin−S(商標)を無菌的に混合する。混合するには、ピペットをゆっくり上下させ、気泡を捕捉するのを回避する。
【0075】
2.0mLのHyStem+Gelin−Sに細胞ペレットを再浮遊する。ピペットを上下させて混合する。
【0076】
ヒドロゲルを形成するには、1:4の容量比PEGSSDAをHyStem+Gelin−Sミックスに加え(2.0mLのHyStem+Gelin−Sに0.5mLのPEGSSDA(商標))、ピペットによって混合する。
【0077】
溶液を10分間反応させ、ピペットで再び混合して細胞の均一な分布を確保する。約10〜20分以内にゲル化が生じる。
【0078】
軟骨形成の応用で使用を見い出す別の例となる足場は、死体供給源、たとえば、ヒトの死体組織からの脱細胞化組織である。(たとえば、 Mineharaら,「A new technique for seeding chondrocytes onto solvent−preserved human meniscus using the chemokinetic effect of recombinant human bone morphogenetic protein−2」Cell Tissue Bank 2010 Jun 17.[Epub ahead of print];Yangら「A cartilage ECM−derived 3−D porous acellular matrix scaffold for in vivo cartilage tissue engineering with PKH26−labeled chondrogenic bone marrow−derived mesenchymal stem cells」 Biomaterials 2008 May;29(15):2378−87;及びStapletonら, 「Development and characterization of an acellular porcine medial meniscus for use in tissue engineering」 Tissue Eng Part A. 2008 Apr;14(4):505−18を参照のこと。これら各々は参照によって本明細書に組み入れられる)。
【0079】
たとえば、Mineharaらは、死体からの溶媒で保存したヒト半月板と軟骨細胞走化性物質を用いた走化性細胞播種法を記載している。MineharaはrhBMP−2(10ng/mlで)が軟骨細胞を誘導して脱細胞化したヒト半月板に移動させることができることを明らかにしている。Mineharaらは、3週間のインキュベートの後、3mmの深さまでの半月板全体に移動した軟骨細胞によって新しく形成された軟骨様の細胞外マトリクスが合成されることを示した。
【0080】
その場での軟骨形成を付与するための細胞の直接注入
たとえば、細胞株、4D20.8、MEL2、7SMOO32、SM30、SK11、7PEND24又はE15又は同一の若しくは類似のマーカーを持つヒト若しくは動物の細胞、又は本発明のそのほかの細胞の直接注入は、成人骨髄由来のMSC(軟骨原)で以前報告されたものに類似する治療有用性でもある。患者は、半月板切除を受け、その後、ヒアルロン酸(HA)又は低用量(5000万個の細胞)若しくは高用量(15000万個の細胞)のMSCの単回注入を受ける。患者は、安全性及び追加の予備的な有効性、たとえば、疼痛、軟骨の損傷、及び組織の修復について2年間モニターされる。半月板と軟骨の状態を調べるのに非侵襲性のMRIを用いる。手術の時点で変形性関節症(OA)のある患者では、1年で、対照、HAの注入を受けた患者に対してMSCの単回注入を受けた患者では、視覚的アナログ尺度(VAS)によって測定した場合、統計的に有意な20mmの疼痛低下が認められた(対照28mmに対してMSC48mm、p=0.05)。患者の関節でさらに重篤な変形性関節症がある場合、疼痛の低下は一層さらに37mmに増えた(p=0.004、対照19mmに対してMSC56mm)。因みに、HAのようなOAに対する現在利用可能な治療は、プラセボに対する9〜23mmの改善に基づいて食品医薬品局(FDA)によって認可された。MRIによる容量解析法は、読み取り間に高レベルの変動性が見られるので、コンピュータによる解析には不適当であると思われた。その結果、半月板の再生の意味のある評価を行うことはできない。成人MSCの有益な効果は、関節状態の物理的対策でも見られた。軟骨下硬化症及び骨棘形成のような変形性関節症に伴う生体の変化は、対照を受け取った患者の21%で報告されたが、MSC治療を受けた患者ではたった6%だった。陽性の用量反応効果もあった。1年で、損傷した半月板を取り出す手術に先立ったベースラインに比べた疼痛の改善は、高用量のMSCでは56mm、低用量のMSCでは26mm、及び対照では19mmだった。関節のための細胞に基づいた治療法は、関節特異的な及び患者特異的な細胞、関節組織を再生する改善された能力を持つ細胞、規模拡大及び凍結保存の改善された能力を持つ細胞を生成する技術から恩恵を受ける。本発明は、産業的な規模拡大に好適なSOX9、MSX1及びMSX2を発現する細胞株を提供する。
【0081】
胚性前駆細胞株の産生方法
以下に記載する方法に加えて、本明細書で記載される細胞株の産生及び使用において使用を見い出す方法は、以下において見つけることができる:「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する米国特許公開第20080070303号;「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2009年7月16日に出願された米国特許出願、出願番号12/504,630;「胚性前駆細胞株を用いた試験管内及び生体内での軟骨形成に有用な方法及び組成物」と題する2009年7月16日に出願された米国特許仮出願、出願番号61/226,237;「遺伝子発現の出生前パターンを持つ細胞の新規使用」と題する2006年4月11日に出願されたPCT出願、PCT/US2006/013519、そのそれぞれは、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0082】
以下の方法は、hES細胞からの胚性前駆細胞株の産生を記載するが、たとえば、ヒト又は非ヒト動物からの原始幹細胞のようなそのほかの原始幹細胞を採用してもよい。
【0083】
hES細胞の培養及び候補培養物の生成
使用したhES細胞は、以前記載したH9(米国国立衛生研究所、WA09として登録された)及びAdvanced Cell Technology(West et al., 2008, Regenerative Medicine vol. 3(3) pp. 287-308)に由来する株(MA03)だった。hES培地(KO−DMEM(CA、Carlsbad、Invitrogen)、1×非必須アミノ酸(CA、Carlsbad、Invitrogen)、1×Glutamax−1(CA、Carlsbad、Invitrogen)、55μMのβ−メルカプトエタノール(CA、Carlsbad、Invitrogen)、8%ノックアウト血清代替(CA、Carlsbad、Invitrogen)、8%プラスマネート、10ng/mlのLIF(MA、Billerica、Millipore)、4ng/mlのbFGF(MA、Billerica、Millipore)、50単位/mlのペニシリン/50単位/mlのストレプトマイシン(CA、Carlsbad、Invitrogen))にてhES細胞を日常的に培養した。hES細胞は、マイトマイシン−C処理したマウスの胚性線維芽細胞(MEF)上で10%のCOと5%のOの雰囲気にて37℃で維持し、トリプシン処理又はコロニーの定期的な手動選抜によって継代した。クローン性胚性前駆細胞の産生については、hES細胞を15mlのディッシュ当たり500〜10,000個の細胞を入れ、次いで、2工程プロトコールのもとで分化させ、第1の工程は、数々の条件下でhES細胞を分化させ、「候補培養物」と呼ばれる細胞の多様な不均質培養物を得ることである。候補培養物の生成は、MEF上で増殖する付着性のhES細胞(その場での分化のコロニー)と共に、又はhESに由来する胚様体と共に実施した。その場での分化のコロニー実験については、hES細胞を集密まで増殖させ、種々の方法(その全体が参照によって本明細書に組み入れられるWestら、2008,Regenerative Medicine、vol.3(3)pp.287−308からの補完表Iに記載されたように)によって分化させた。非限定の例証として、10%のFCSを伴ったDMEMでのその場の分化でのコロニーの場合、マウスのフィーダー上のhES細胞のコロニーの培養から培養培地を吸引し、分化のために、種々の時間後(分化培地における1,2,3,4,5,7及び9日目)、10%FCSを含有するDMED培地で培地を置き換えた。次いで0.25%トリプシン(CA、Carlsbad、Invitrogen)によって細胞を剥離し、増殖のために150cmのフラスコに入れた。150cmのフラスコにおける各時点からの候補細胞を以下に記載するようにクローニングと増殖のために別のプレートに入れた。EBの分化実験については、集密なhEC培養物を1mg/mlのコラゲナーゼIV(DMEM中、CA、Carlsbad、Invitrogen)によって37℃で15分間処理し、コロニーを分離した。剥離した無傷のコロニーを擦り取り、遠心(150×gで5分間)によって回収し、補完表I(その全体が参照によって本明細書に組み入れられるWestら、2008,Regenerative Medicine、vol.3(3)pp.287−308)に記載された分化培地に再浮遊し、同一の分化培地を含有する6穴超低結合プレート(Corning、PA、Pittsburgh,Fisher Scientificによって流通)の単一ウェルに移した。実験に応じて4〜7日間、EBを分化させ、分化したEBを0.25%トリプシンで剥離し、種々の増殖培地を含有する6穴プレートに入れた。6穴プレートでの候補培養物を集密まで増殖させ、以下に記載するようにクローニングと増殖のために別のプレートに入れた。
【0084】
クローン性細胞株の単離及び増殖
上述した部分的に分化した候補細胞培養物を0.25%トリプシンで単一細胞に剥離し、補完表I(その全体が参照によって本明細書に組み入れられるWestら、2008,Regenerative Medicine、vol.3(3)pp.287−308)に示された種々の増殖培地にてさらなる分化と増殖のためにプレート当たりおよそ500及び/又は1,000及び/又は2,000及び/又は5,000個の細胞のクローニング密度で2つ組の15cmゼラチン被覆プレートに入れた。クローン性密度の細胞を増殖させ、10〜14日間そのままにし、発達しているコロニーを特定し、標準的な技法を用いてクローニングシリンダーとトリプシンによって回収した。クローニングしたコロニーを増殖のためにゼラチン被覆した24穴プレートに移した。24穴プレートでクローンが集密になるにつれて(しかし、2日を超えて細胞を集密のままにすることなく)、それらを順次12穴、6穴、T−25フラスコ、T−75フラスコ、T−150フラスコ又はT−225フラスコ、及び最終的にローラーボトルに拡大した。ローラーボトルの段階まで増殖しているクローン性細胞株に独特にACTC特定番号を割り当て、写真撮影し、後の使用のためにアリコートで凍結保存した。細胞がいったん6穴ディッシュで集密に達すると、それらをT−25フラスコに継代し、遺伝子発現の特性分析のためにゼラチン化6cmディッシュに入れるために細胞の分画(5×10)を取り出した。或いは、一部の細胞を先ずT−225フラスコに継代し、次いで遺伝子発現の特性分析のためにゼラチン化6cmディッシュに入れるために細胞の分画(5×10)を取り出した。従って、細胞が経験した集団の倍増は18〜21PDであると判定された。クローニングプレートからの細胞クローンの取り出しに続いて、製造元の指示書当たり100%エタノールにてクリスタルバイオレット染色(Sigma、HT9132−IL)によって残りのコロニーを視覚化した。実験に利用した培養培地は以下を含み、平滑筋基礎培地(カタログ番号C−22062B)と増殖補完剤(カタログ番号C−39267)、骨格筋基礎培地(カタログ番号C−22060B)と増殖補完剤(カタログ番号C−39365)、内皮細胞基礎培地(カタログ番号C−22221)と増殖補完剤(カタログ番号C−39221)、色素細胞基礎培地(カタログ番号C−24010B)と増殖補完剤(カタログ番号C−39415)はPromoCell社(ドイツ、Heidelberg)から入手した。EpiLife、カルシウム/フェノールを含まない培地(カタログ番号M−EPIcf/PRF−500)と低血清増殖補完剤(カタログ番号S−003−10)は、Cascade Biologics(Oregon、Portland)から購入した。Mesencult基本培地(カタログ番号05041)と補完剤(カタログ番号5402)は、Stem Cell Technologies(Vancouver,BC)から入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(カタログ番号11960−069)とウシ胎児血清(カタログ番号SH30070−03)はそれぞれ、Invitrogen(Carlsbad,CA)とHyclone(Logan,UT)から購入した。培地及び補完剤は製造元の指示書に従って組み合わせた。
【0085】
クローン性胚性前駆細胞株の命名
別の記号表示を伴った本発明の細胞株は、バイオインフォマティクス解析の結果生じる名称の操作の結果生じる瑣末な改変を表す異名と共に表4に列記するが、それには、「.」について「−」の置換及びその逆、アラビア数字で細胞株の名称を開始する前の「x」の包含、並びに並行する解析で同一細胞株の凍結アンプルが融解され、伝播され、使用される場合の例である同一細胞株の生物学的複製を示す、「biol1」又は「biol2」、及び所与の細胞株から単離されたRNAが、融解することなく、又はさもなければ、細胞の新しい培養で開始することなく、反復する解析で2回目に利用される技術的複製を示す「Rep1」又は「Rep2」のような接尾辞が含まれる。細胞株の継代数(細胞がトリプシン処理され、再びプレートに入れられる回数)は普通、文字Pに続くアラビア数字で指定されるが、それに対して、集団の倍増数(1つの細胞からクローンで増殖する際、細胞株が経験する推定倍増の数を指す)は、文字「PD」に続くアラビア数字で指定される。継代におけるPDの数は、実験ごとに異なったが、一般に、それぞれのトリプシン処理と再プレート培養は、1:3〜1:4の比率(それぞれ1.5と2のPDの増加に相当する)だった。クローンの増殖では、クローニングシリンダーによって組織培養から元々のコロニーを取り出し、上述のように24穴プレート、次いで12穴プレート、そして6穴プレートに移した。第1の集密な24穴プレートをP1と名付け、第1の集密な12穴プレートをP2と名付け、第1の集密な6穴プレートをP3と名付け、次いで6穴培養物を第2の6穴プレート(P4)とT25(P4)に分けた。P4での第2の6穴プレートをRNA抽出に利用し(その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を促進する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2009年7月16日に出願された米国特許出願第12/504,630号を参照)、クローン性増殖のおよそ18〜21PPDを表す。典型的な、推定されるその後の継代とPDは、T75フラスコへの以下の分割(19.5〜22.5PD)、T225フラスコへの細胞のP6継代(21〜24PD)、次いでローラーボトルへの細胞のP7継代(850cm、23〜26PD)、及び4つのローラーボトルへのP8の分割(25〜28PD)である。括弧内に上記で示す範囲は、細胞の大きさ、付着効率及び計数誤差による細胞計数の推定範囲を表す。
【0086】
クローン性、プールしたクローン性、オリゴクローン性及びプールしたオリゴクローン性の細胞株の増殖
本発明の態様は、単一細胞(クローン性)、又はクローニングした細胞株が遺伝子発現マーカーのような見分けがつかないマーカーを有し、培養での細胞数を増やす目的でそれらを組み合わせて単一の細胞培養にすることを意味する「プールされたクローン性」である、又は株が、少数の通常2〜1,000個の類似細胞から生成され、細胞株として増殖させるオリゴクローン性、又は遺伝子発現のパターンのような見分けがつかないマーカーを有する2以上のオリゴクローン性細胞株を組み合わせることによって生成される株である「プールされたオリゴクローン性」株である、細胞株に由来する胚性前駆細胞株を特定し、分化させる方法を提供する。それらが付着する基材からの細胞の取り外しを介して、前記クローン性、プールしたクローン性、オリゴクローン性及びプールしたオリゴクローン性の細胞株を次いで試験管内で増殖させ、通常、元々の細胞数の1/3〜1/4に減らした密度で細胞を再びプレート培養してさらなる増殖を円滑にする。前記細胞株及び関連する細胞培養培地の例は、補完情報も含めて、双方共参照によって本明細書に組み入れられる、「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を促進する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2009年7月16日に出願された米国特許出願第12/504,630号及びWestら、2008,Regenerative Medicine vol.3(3)pp.287−308に開示されている。本発明の組成物及び方法は、クローン性増殖の21を超える倍増を別にして、記載されたように培養された前記細胞株に関する。
【0087】
遺伝子発現解析
6穴プレートで増殖させる際、細胞が集密に達する日に、細胞周期の人為性による遺伝子発現の変動を抑え、早期の遺伝子発現特性を把握するために、元々の血清濃度が>5%である場合、血清濃度を0.5%に減らした培地に細胞を入れた。ほかのすべての場合では、血清及び/又はそのほかの増殖因子は、その元々の値の10%に減らした。これらの静止条件を5日間課し、回収に先立って2日間培養物すべてを元どおり培養し、培養差による人為性を減らした。だから、例証として、元々の培地が10%FCSを伴うDMEM培地であれば、静止同期化培地は、0.5%FCSを伴うDMEMだった。全RNAは、製造元の指示書に従って、QiagenRNeasyミニキットを用いて、6穴プレート又は6cm組織培養プレートで増殖している細胞から直接抽出した。BeckmanDU530又はNanodrop分光光度計を用いてRNA濃度を測定し、変性アガロースゲル電気制動又はAgilent2100バイオアナライザによってRNAの質を判定した。Affymetrix Human Genome U133 Plus 2.0 GeneChip(登録商標)方式、Illumina Human−6 v1及びHumanRef−8 v1 Beadchips(Illumina1)及びIllumina Human−6 v2 Beadchips(Illumina2)を用いて全ゲノム発現解析を実施し、特定の遺伝子についてのRNAレベルを定量PCRによって確認した。Illumina BeadArraysについては、全RNAを線形に増幅し、Illumina TotalPrep kits(Ambion)を用いてビオチン標識し、Agilent2100バイオアナライザを用いてcRNAの質的制御を行った。cRNAをIllumina BeadChipsとハイブリッド形成させ、処理し、製造元の指示書(Illumina)に従ってBeadStationアレイリーダーを用いて読み取った。共通プローブセットによる細胞株すべての相対蛍光単位(RFU)を標準化した。
【0088】
上記の遺伝子発現解析のデータは、補完表すべてを含めて、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるWestら、2008,Regenerative Medicine vol.3(3)pp.287−308の補完表に見い出すことができる。補完表II〜IVでは、(細胞株の全体のセットでの遺伝子について認められた最高RFU値−平均RFU値)/平均RFU値の比について遺伝子がランク順(最高−最低)で示されている。補完表Vでは、全細胞株についての(個々の細胞株で認められた最高RFU値−平均RFU値)/平均RFU値の比について上から45の、分化して発現された遺伝子がランク順になっている。補完表VIでは、認識されるCD抗原に相当する遺伝子が、それぞれ、(細胞株の全体のセットでの遺伝子について認められた最高RFU値)/平均RFU値の比及び(細胞株の全体のセットでの遺伝子について認められた最低RFU値)/平均RFU値の比についてランク順(最高−最低)及びまた(最低−最高)で示されている。補完表VIIでは、分泌されたタンパク質に相当する遺伝子が、(細胞株の全体のセットでの遺伝子について認められた最高RFU値)/平均RFU値の比についてランク順(最高−最低)で示されている。
【0089】
軟骨細胞の分化を誘導する例となる条件
本明細書で記載される前駆細胞株を用いて軟骨形成(又は軟骨産生)を誘導する好都合な方法を研究又は治療のいずれかの目的に(生体内又は試験管内のいずれかで)採用してもよいので、この点での限定は意図されないことが言及される。従って、以下に記載されるアッセイは、軟骨形成のための条件の例となる非限定例を表す。
【0090】
微細塊分化プロトコール1
以下の分化プロトコールは単に「d14MM」と呼ばれる(たとえば、本明細書に記載されるマイクロアレイ表にて)。
1)細胞を、ゼラチン(0.1%)被覆したCorning組織培養処理した培養器具で培養し、PBS(Gibco、Ca,Mgを含まず)によって1:3に希釈された0.25%トリプシン/EDTA(Gibco)で剥離する。剥離と増殖培地の添加の後、Coulterカウンタを用いて細胞を数え、実験に必要とされる適当な数の細胞(たとえば、10×10個以上の細胞)を増殖培地中で20×10個の細胞/mlの細胞密度で再浮遊する。
2)塊又は「微細塊」として10μlのアリコートをCorning組織培養処理したポリスチレンプレート又はディッシュに播く。25以上の微細塊アリコート(200,000個の細胞/10μlアリコート)を播く。
3)播いた微細塊を付着のために、5%O及び10%COにて37℃の加湿インキュベータに90分間〜2時間入れる。
4)増殖培地を加え、翌朝、吸引し、PBS(Ca,Mgを含まず)で洗浄した後、軟骨形成用完全培地(ペレット微細塊用に以下で記載するように調製される)で置き換える。たとえば、10cmディッシュ当たり6mlの軟骨形成用完全培地を加える。5%O及び10%COにて37℃の加湿インキュベータで細胞を維持し、2〜3日ごとに新しく調製した培地で軟骨形成用培地を置き換える。
5)軟骨形成用培地にて種々の時間の後、Qiagenハンドブックに記載されたようにQiagenRNeasyキット(Qiagen、カタログ番号74104)を用いてRNAを抽出する。RNAの抽出に先立ってQiagenのQiaShredder(カタログ番号79654)を用いて、試料をホモジネートし、次いでRLT緩衝液(RNeasyミニキットで提供される)によって微細塊を溶解することによってRNAの収率を最大化する。
【0091】
Lonza軟骨形成用培地の代替は、Media TechからのCellGro(カタログ番号15−013−CV)である。各500mlに以下の補完剤を添加する:5.0mlのPen/Strep(Gibco、カタログ番号15140)、5.0mlのGlutamax(Gibco、カタログ番号35050)、デキサメタゾン(MO、セントルイス、Sigma、カタログ番号D1756−100)−0.1μMの最終濃度で0.1mMを500μl;L−プロリン(Sigma、カタログ番号D49752)−最終濃度0.35mMで0.35Mを500μl;アスコルビン酸−2−リン酸(Sigma、カタログ番号49792、Fluka)−最終濃度0.17mMで0.17Mを500μl;ITSプレミックス(NJ、Flanklin Lakes、BD、カタログ番号47743−628)−最終濃度で1000×を500μl;6.25μg/mlのインスリン、6.25μg/mlのトランスフェリン、6.25ng/mlの亜セレン酸、1.25mg/mlの血清アルブミン、5.35μg/mlのリノール酸。
【0092】
上記構成成分の添加に続いて、500mlのCorning0.2ミクロンフィルターユニットを介して培地を濾過する。
【0093】
微細塊の分化プロトコール2
以下の分化プロトコールは本明細書で記載されるマイクロアレイ表にて単に「d14MM」と呼ばれる。
【0094】
上記で記載されたLonzaTGFβ3の代替として我々は、TGFβ3(MN、Minneapolis、R&D Systems、カタログ番号243−B3−010)を使用する。それは、Lonzaから購入されたものと同様に調製され、等分され、保存され、使用される。
【0095】
微細塊の分化プロトコール3
以下の分化プロトコールは本明細書で記載されるマイクロアレイ表にて単に「d14CS」と呼ばれる。
【0096】
微細塊の分化プロトコール1の代替として、血清含有培地の存在下で微細塊を付着させるのではなく、細胞を軟骨形成用完全培地に直接入れてもよい。前記分化した微細塊は、本発明では、「軟骨播種」又は「CS」と名付けられる。
【0097】
ペレット分化プロトコール
以下の分化プロトコールは本明細書で記載されるマイクロアレイ表にて単に「d14Pel」と呼ばれる。
【0098】
1)細胞を、ゼラチン(0.1%)被覆したCorning組織培養処理した培養器具で培養し、PBS(Ca,Mgを含まず)によって1:3に希釈された0.25%トリプシン/EDTA(Invitrogen、Carsbad、CA、Gibco)で剥離する。剥離と増殖培地の添加の後、Coulterカウンタを用いて細胞を数え、実験に必要とされる適当な数の細胞(たとえば、10×10個以上)を無菌のポリスチレン管に移し、室温にて150gで5分間遠心する。
2)上清を吸引し、捨てる。補完剤(Lonza,Basel,Switzerland,Poietics Single−Quots,カタログ番号PT−4121)を添加するhMSC Chondro BulletKit(PT−3925)から成る軟骨形成用不完全培地の添加によって細胞を洗浄する。補完剤:デキサメタゾン(PT−4130G)、アスコルビン酸塩(PT−4131G)、ITS+補完剤(4113G)、ピルビン酸塩(4114G)、プロリン(4115G)、ゲンタマイシン(4505G)、グルタミン(PT−4140G)を加えて軟骨形成用不完全培地を調製する。
3)細胞を室温にて150gで遠心し、上清を吸引し、7.5×10個の細胞当たり1.0mlの軟骨形成用不完全培地に細胞を再浮遊し(もう一度)、150×gで5分間遠心する。上清を吸引し、捨てる。若干の改変と共に、Lonzaによって記載されたような軟骨形成培養プロトコールに従う(以下に記述するように)。
4)ml当たり5.0×10個の細胞の濃度に細胞ペレットを軟骨形成用不完全培地に再浮遊させる。軟骨形成用不完全培地はLonza不完全培地+TGFβ3(Lonza、PT−4124)から成る。1mg/mlのBSAを含有する無菌の4mMのHClの添加によって、無菌の凍結乾燥したTGFβ3を20μg/mlの濃度に再構築し、等分した後−80℃で保存する。軟骨形成用不完全培地の各2mlについて1μlのTGFβ3の添加(TGFβ3の最終濃度は10ng/ml)によって使用直前に軟骨形成用不完全培地を調製する。
5)細胞浮遊液の0.5ml(2.5×10個の細胞)のアリコートを無菌の15mlポリプロピレン培養チューブに入れる。室温にて150×gで5分間、細胞を遠心する。
6)遠心に続いてチューブのフタを半回転緩め、ガス交換を可能にする。10%CO及び5%Oにて37℃の加湿雰囲気にチューブを入れる。24時間ペレットをかき回さない。
7)無菌の1〜200μlのピペットチップによって古い培地を吸引し、各チューブに0.5mlの新しく調製した軟骨形成用完全培地を加えることによって各チューブの培地を完全に置き換えることにより、細胞ペレットに2〜3日ごとに養分を与える。
8)培地を置き換え、ペレットが自由に浮いていることを確認した後、フタを緩め、チューブをインキュベータに戻す。
9)軟骨形成用培地にて種々の時点の後、ペレットを回収し、中性の緩衝化ホルマリンによる固定によって組織学用に調製し、及び/又はペレットを合わせ、RNeasyミニキット(MD,Germantown,Qiagen,カタログ番号74104)を用いたRNA抽出用に調製する。
【0099】
RNA抽出のプロトコールはQiagenハンドブックによって記載されたように従う。RNAの抽出に先立って、QiagenのQiaShredder(カタログ番号79654)を用いて、試料をホモジネートし、次いでRLT緩衝液(RNeasyミニキットで提供される)によって細胞ペレットを溶解することによってRNAの収率を最大化する。
【0100】
アルギン酸ビーズ分化プロトコール
以下の分化プロトコールは本明細書で記載されるマイクロアレイ表にて単に「d14アルギン酸」と呼ばれる。
【0101】
本発明の細胞を低速で遠心することによってペレットにし、NaCl(155mM)で洗浄し、再び遠心し、ペレットを20×10にて1.2%アルギン酸(Lonza)に再浮遊した。22gの針を介して細胞浮遊液をシリンジに引き入れ、CaCl槽(102mM)に一滴ずつ分配した。ゲル化は即座である。NaCl(155mM)で3〜5回ビーズを洗浄し、次いで軟骨形成用培地(TGFなしで)で1回洗浄し、その後、軟骨形成用培地に浸漬した。6穴プレートの複数のウェルにビーズを入れ、1週間に3日、14日間養分を与えた。次いでビーズをNaClで複数回洗浄し、その後クエン酸ナトリウム(55mM)に20分間暴露して脱重合した。遠心の後、RLT(Qiagen)によって細胞ペレットを溶解し、QiaShredderを用いて収率を改善する破砕工程に続いて、RNeasyマイクロキット(Qiagen)を用いて全RNAを抽出した。上記のようなqPCRによってCOL2A1の発現を測定した。
【0102】
軟骨細胞分化の遺伝子発現マーカー
本明細書に記載されるようなマイクロアレイ又はqPCRによって軟骨細胞の遺伝子発現をアッセイしてもよい。qPCRプライマー配列は当該技術で既知の手段で選択してもよく、非限定の例証として、以下であってもよい。
【0103】



【0104】
qPCRプロトコールは様々であってもよく、当該技術で周知である。非限定の例証として、cDNAのRNA同等物30ng,プライマー当たり0.4μM、超純度蒸留水(Invitrogen)から成り、全反応容量25μlでAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼを組み入れる12.5μlのPowerSYBR GreenPCR Masterミックス(CA、Carlsbad、Applied Biosystems、カタログ番号4367659)で1:1に希釈した試験用試料を標準の光学96穴反応プレート(CA、Carlsbad、Applied Biosystems、PN4306737)にて調製する。SDSv1.2ソフトウエアを採用するApplied Biosystems 7500リアルタイムPCR方式を用いてリアルタイムqPCRを実行する。増幅条件は、50℃にて2分間(段階1)、95℃で10分間(段階2)、95℃で15秒間、次いで60℃で1分間を40サイクル(段階3)、95℃で15秒間、60℃で1分間、95℃で15秒間の解離段階(段階4)にて設定する。当該遺伝子の増幅産物のCt値を3つのハウスキーピング遺伝子(GAPD、RPS10及びGUSB)のCt値の平均に対して標準化する。
【0105】
サフラニンO染色アッセイ
軟骨関連のプロテオグリカンの検出では、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した組織切片のサフラニンOによる染色の周知の技法が一般に使用されるが、それは、ムチン、肥満細胞顆粒、及びおそらくそのほかの細胞種におけるそのほかの物質も染色するので、アッセイは軟骨に絶対に特異的であるわけではない。軟骨とムチンが橙色〜赤色に染色され、核が黒く染色され、背景が緑色に染色されるプロトコールの非限定例は、ホルマリン固定した細胞の微細塊、ペレット又は類似の凝集体を使用する。使用される試薬には、Weigertの鉄ヘマトキシリン溶液:その中では、95%アルコール100ml中の1グラムのヘマトキシリンから構成されるストック溶液A;蒸留水95mlと濃塩酸1.0mlで希釈した29%塩化第二鉄水溶液4mlで構成されるストック溶液B;等量のストック溶液AとBで構成され、4週間以内に使用されるWeigertの鉄ヘマトキシリン使用液;1000mlの蒸留水中の0.01グラムのFastGreen、FCF、C.I.42053で構成される0.001%FastGreen(FCF)溶液;99mlの蒸留水中1.0mlの氷酢酸で構成される1%酢酸溶液;及び100mlの蒸留水中0.1グラムのサフラニンO、C.I.50240で構成される0.1%サフラニンO溶液が含まれる。試料を脱パラフィンし、蒸留水で水和する。Weigertの鉄ヘマトキシリン使用液でそれらを10分間染色し、次いで流水で10分間洗浄し、FastGreen(FCF)溶液で5分間染色し、10〜15秒間以下で1%酢酸溶液にて迅速にすすぎ、0.1%サフラニンO溶液で5分間染色し、それぞれ2回交換し、それぞれ2分間、95%エチルアルコール、無水アルコール及びキシレンで脱水し、透徹し、樹脂媒体を用いて標本にし、上述のような染色について画像解析する。軟骨関連のプロテオグリカンは暗赤色〜橙色に染まる。
【0106】
低処理能力スクリーニング及びqPCR
1,2,3,4,5又は好ましくは10を超える多様な分化条件にて、<21、又は好ましくは>21のクローン性又はオリゴクローン性増殖の倍増のいずれか、最も好ましくはクローン性増殖の29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70の倍増(細胞のクローン性増殖の29倍増前は、限定された量でしか利用できず、70倍増を超えると細胞は一般に老化に近づくので)における本発明のクローン性、オリゴクローン性、又はプールしたクローン性又はプールしたオリゴクローン性の胚性前駆細胞株を同時にスクリーニングする。分化条件には、「微細塊分化」、「ペレット分化」及び「アルギン酸ビーズ分化」として記載されるものが含まれてもよい。
【0107】
アッセイの読み取りは、「軟骨細胞分化の遺伝子発現マーカー」として上述されたものを含むが、これらに限定されない軟骨細胞分化のmRNAマーカーであることができ、マイクロアレイ又はqPCRを含むが、これらに限定されないアレイ化標的配列へのハイブリッド形成によって測定することができる。検出はまた、特異抗体の使用を介して、酵素アッセイ、質量分光分析、又は当該技術で周知のそのほかの類似の手段の使用を介して検出されてもよいペプチド又はタンパク質のレベルであることもできる。
【0108】
クローン性又はオリゴクローン性の胚性前駆細胞の運命期間の中程度処理能力のスクリーニング
10、20、30、40、50又は好ましくは100を超える多様な分化条件(たとえば、それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2006年11月21日に出願された米国特許出願、出願番号11/604,047;及び「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2009年7月16日に出願された米国特許出願、出願番号12/504,630に記載された分化条件を参照)にて、<21、又は好ましくは>21のクローン性又はオリゴクローン性増殖の倍増のいずれか、最も好ましくはクローン性増殖の29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70の倍増(細胞のクローン性増殖の29倍増前は、限定された量でしか利用できず、70倍増を超えると細胞は一般に老化に近づくので)における本発明のクローン性、オリゴクローン性、又はプールしたクローン性又はプールしたオリゴクローン性の胚性前駆細胞株を同時にスクリーニングする。前記分化条件にて、1〜6週間、最も好ましくは4週間、細胞を培養する。
【0109】
アッセイの読み取りは、「軟骨細胞分化の遺伝子発現マーカー」のような軟骨細胞分化のmRNAマーカーであることができ、マイクロアレイ又はPCRを含むが、これらに限定されないアレイ化標的配列へのハイブリッド形成によって測定することができる。検出はまた、特異抗体の使用を介して、酵素アッセイ、質量分光分析、又は当該技術で周知のそのほかの類似の手段の使用を介して検出されてもよいペプチド又はタンパク質のレベルであることもできる。
【0110】
hEP細胞分化の中程度処理能力のqPCRスクリーニング
<21、又は好ましくは>21のクローン性又はオリゴクローン性増殖の倍増のいずれか、最も好ましくはクローン性増殖の29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70の倍増にて上述されたものを含むが、これらに限定されない本発明のクローン性、オリゴクローン性、又はプールしたクローン性又はプールしたオリゴクローン性の胚性前駆細胞株を12ウェル培養プレートに入れ、各ウェルは250,000細胞の10微細塊(すなわち、ウェル当たり250万個の細胞)を有する。或いは、ほかの培養条件(たとえば、それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2006年11月21日に出願された米国特許出願、出願番号11/604,047;及び「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2009年7月16日に出願された米国特許出願、出願番号12/504,630に記載されたような;表IIIで列記された培養培地の組み合わせに暴露された同一数の細胞を用いた表II及びこれらの出願の表IVで列記された補完された因子を参照)によって細胞を処理する。前記分化条件にて、1〜6週間、最も好ましくは4週間、細胞を培養する。
【0111】
製造元の指示書に従って、RNeasyミニキット(Qiagen)を用いて細胞溶解物からRNAを調製する。手短には、細胞培養物(微細塊)をPBSですすぎ、次いで最小限の量のRLN溶解緩衝液で溶解する。氷上でインキュベートした後、細胞残渣を遠心で取り除き、溶解物をRLT緩衝液と混合し、その後、エタノールを混合物に加える。次いで合わせた混合物をRNeasyスピンカラムに負荷し、遠心する。次いで負荷したカラムを洗浄し、精製されたRNAを最少限の量のDEPC処理水(通常30μl以下)と共にカラムから解放する。最終溶離液中のRNAの濃度は260nmでの吸収によって測定する。
【0112】
SuperScript First StrandcDNAキット(CA、Carlsbad、Invitrogen)を用いてcDNA合成を行う。手短には、ランダムヘキサマーの存在下で2.5μgの精製RNAを熱変性する。冷却後、SuperScript逆転写酵素とキットからの関連試薬を用いて第1鎖反応を完了する。製造元の指示書に従って、QIAquickPCR精製キット(Qiagen)を用いて、得られた産物をさらに精製する。手短には、第1鎖cDNA反応の産物にPB緩衝液を加え、次いで混合物をQIAquickスピンカラムに負荷し、遠心する。カラムをPE緩衝液で洗浄し、最少容量の水(20μl)を用いて精製cDNAをカラムから溶出する。
【0113】
各標的遺伝子についてqPCRプライマー対を合成する。手短には、標的mRNA配列のみを増幅し、65〜80℃の範囲にある標的配列のためのアニーリング温度と100〜500bpのサイズ範囲にある独特の増幅産物を最適に有するように標的遺伝子用のプライマー対を設計する。特注のqPCRオープンアレイプレートの作製のためにプライマー対を使用濃度(10μM)でBioTrove社に供給する。オープンアレイプレートは56〜336のプライマー対を収容するように設計され、乾燥させたプライマー対を伴った最終製造されたプレートがサービス会社に提供される。オープンアレイ自動負荷装置(BioTrove)を用いてオープンアレイプレートの個々のウェルに精製cDNA反応産物(2.)とSyberグリーンマスターミックスを負荷する。プレートを密封し、増幅のためにNTイメージャー/サイクラー装置(BioTrove)にqPCRを負荷する。各試料のCt値は、オープンアレイ応用ソフトウエアを用いて算出する。
【0114】
応用
動物の細胞及び組織の培養に関して開示される方法は、たとえば、変形性関節症のような関節炎、椎間組織の変性、一時的な下顎関節の疾患、鼻、外耳、下顎関節、気管、輪状軟骨、胸骨、又はそのほかの滑膜関節、たとえば、肩、肘、手首、指及び体重がかかる関節、たとえば、尻、膝、足首及び足指を含むが、これらに限定されない整形外科症状の治療に有用なヒト細胞及び細胞に由来する製剤を生成することに限定されない、哺乳類及びヒトの細胞療法において細胞又はその前駆細胞を生成することに有用である。
【0115】
本発明の特定の実施形態では、本発明の方法によって導かれる単一細胞由来の及びオリゴクローン性細胞由来の細胞が、細胞生物学、細胞に基づく創薬、及び細胞療法に関連する障害の研究及び治療に利用される。本発明の方法を用いて導かれる単一細胞由来の細胞集団は、分化経路に向かう必要なシグナルをすでに受け取っていてもよい。
【0116】
本発明の特定の実施形態では、単一細胞由来の及びオリゴクローン性細胞由来の細胞は、それらが治療上の有用性を示すために通常存在している組織に導入される。本発明の特定の実施形態では、本発明の方法によって導かれる単一細胞由来の及びオリゴクローン性細胞由来の細胞が、ほかの多能性幹細胞の分化の誘導に利用される。試験管内で増殖することが可能である一方で遺伝子発現の胚性パターンを維持している細胞の単一細胞由来の集団は、ほかの多能性幹細胞の分化を誘導することにおいて有用である。細胞と細胞の相互作用は、早期胚において分化を指向する一般的な手段である。脊髄ニューロン、心臓細胞、膵臓β細胞及び限定的な造血細胞を含む多数の医学的に有用である可能性がある細胞種は、正常な胚発生の間での誘導シグナルに影響される。試験管内で増殖することが可能である一方で遺伝子発現の胚性パターンを維持している細胞の単一細胞由来の集団を種々の試験管内、胚内、又は生体内での条件で培養してそのほかの多能性幹細胞が所望の細胞種又は組織種になる分化を誘導することができる。誘導細胞を標的細胞と並置する種々の方法にて誘導を行ってもよい。非限定の例証として、誘導細胞を組織培養にてプレート培養し、マイトマイシンC又は放射線で処理して細胞のさらなる複製を妨げる。次いで細胞分裂上不活化された誘導細胞の上で標的細胞をプレート培養する。或いは、細胞のさらに大きな培養又は元々の単一細胞由来のコロニーから取り外し可能な膜の上で単一細胞由来の誘導細胞を培養してもよく、標的細胞を誘導細胞の上でプレート培養してもよく、又は標的細胞で覆った別の膜を、直接接触にて2つの細胞層を挟むように並置してもよい。細胞の得られる二重層を試験管内で培養し、SPFの鳥類の卵に移し、血管支援を受けながら三次元への増殖を可能にする条件で培養してもよい(たとえば、その開示が参照によって本明細書に組み入れられる2005年7月28日に公開された国際特許公開番号WO2005068610を参照)。誘導細胞はまた、誘導細胞を任意で取り除くことができるように自殺構築物が導入されている、hES及びhED細胞を含む多能性幹細胞の起源に由来してもよい。単一細胞由来の及びオリゴクローン性細胞由来の誘導に有用な細胞種には、正常な胚発生で天然に生じることが当該技術で周知である誘導の場合が挙げられてもよい。本発明の特定の実施形態では、本発明の方法によって導かれる単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞は、多能性幹細胞を含むそのほかの細胞種の増殖を支援する「フィーダー細胞」として使用される。本発明の単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞のフィーダー細胞としての使用は、そのほかの哺乳類起源のフィーダー細胞からの病原体の標的細胞への伝染のリスクの可能性を緩和する。フィーダー細胞は、たとえば、γ線照射によって又はマイトマイシンC処理によって不活化されて複製を限定され、多能性幹細胞と共培養されてもよい。
【0117】
本発明の特定の実施形態では、本発明の方法によって導かれる単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞の細胞外マトリクス(ECM)を用いてあまり分化しない細胞を支援してもよい(たとえば、Stojkovic et al., Stem Cells (2005) 23(3):306-14を参照)。通常フィーダー細胞を必要とする特定の細胞種は、マトリクス上でのフィーダーのない培養で支援される(Rosler et al., Dev Dyn. (2004) 229(2):259-74)。たとえば、STOマウス線維芽細胞株(ATCC受入番号CRL−1503)又はヒト胎盤線維芽細胞のようなマトリクス形成細胞株を予備培養し、溶解することによってマトリクスを堆積させることができる(WO99/20741を参照)。
【0118】
本発明の特定の実施形態では、単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞の培養物の順化培地を回収し、プールし、濾過し、順化培地として保存してもよい。この順化培地を製剤化し、研究及び治療で使用してもよい。そのような順化培地は、あまり分化しない状態を維持し、多能性幹細胞のような細胞の増殖を可能にすることに寄与してもよい。本発明の特定の実施形態では、本発明の方法によって導かれる単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞の培養物の順化培地を用いて多能性幹細胞を含むそのほかの細胞種の分化を誘導することができる。単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞の培養物の順化培地の使用は、ほかの哺乳類起源に由来する非ヒト動物病原体に培養細胞を暴露するリスクの可能性を下げる点で有利であってもよい(すなわち、異種を含まない)。
【0119】
本発明の別の実施形態では、既知の細胞培養条件下では上手く増殖しない細胞種を誘導して、細胞周期の阻害を克服する因子の調節された発現、たとえば、SV40ウイルスラージT抗原(Tag)、又は調節されたE1a及び/又はE1b、又はパピローマウイルスE6及び/又はE7、又はCDK4の調節された発現を介して本発明の方法に従ってそれらをクローンで又はオリゴクローンで単離することができるように増殖させてもよい(たとえば、参照によって本明細書に組み入れられる「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2006年11月21日に出願された米国特許出願、出願番号11/604,047を参照)。
【0120】
本発明の別の実施形態では、細胞周期の停止に優先する因子を追加のタンパク質又はタンパク質ドメインに融合し、細胞に送達してもよい。たとえば、細胞周期の停止に優先する因子をタンパク質変換ドメイン(PTD)に連結してもよい。細胞周期の停止に優先する因子に共有結合する又は非共有結合するタンパク質変換ドメインは、前記因子の細胞膜を横切った移動を可能にするので、タンパク質は最終的に核に達する。細胞周期の停止に優先する因子と融合されてもよいPTDには、HIVトランス活性化タンパク質(TAT)(Tat47〜57)のPTDが挙げられる(Schwarze and Dowdy 2000 Trends Pharmacol. Sci. 21: 45-48; Krosl et al. 2003 Nature Medicine (9): 1428-1432)。HIVのTATタンパク質については、膜転移活性を付与するアミノ酸配列は残基47〜57に相当する(Ho et al., 2001, Cancer Research 61: 473-477; Vives et al., 1997, J. Biol. Chem. 272: 16010-16017)。これらの残基のみでタンパク質の転移活性を付与することができる。
【0121】
本発明の別の実施形態では、PTDと細胞周期停止因子はリンカーを介して結合してもよい。リンカーの正確な長さと配列及び連結される配列に対する方向付けは様々であってもよい。リンカーは、たとえば、2、10、20、30以上のアミノ酸を含んでもよく、たとえば、溶解性、長さ、立体分離などのような所望の特性に基づいて選択されてもよい。特定の実施形態では、リンカーは、たとえば、融合タンパク質の精製、検出、又は修飾に有用な官能配列を含んでもよい。
【0122】
本発明の別の実施形態では、その開示が参照によって本明細書に組み入れられる2005年8月3日に出願された米国特許出願第60/705,625号、2005年10月20日に出願された同第60/729,173号、2006年7月5日に出願された同第60/818,813号に記載されたように、新規の再プログラム技法を介して本発明の単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞を未分化状態に再プログラムしてもよい。手短には、第1の核リモデリング工程、第2の細胞再構築工程、工程2から生じる細胞の得られるコロニーが再プログラムの程度及び核型と質の正常性について特徴付けられる第3の工程が関与する少なくとも2工程、好ましくは3工程の過程を用いて細胞を未分化状態に再プログラムしてもよい。特定の実施形態では、分化した細胞の核エンベロープとクロマチンを未分化細胞又は生殖系列細胞の分子組成にさらによく似るようにリモデリングすることによって再プログラム過程の第1の核リモデリング工程にて、本発明の単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞を再プログラムしてもよい。再プログラム過程の第2の細胞再構築工程では、移した核と一緒に、たとえば、増殖可能なES様細胞又はED様細胞のような未分化幹細胞の集団を生成することが可能である必要な有糸分裂装置を含有する細胞質泡状突起と、工程1のリモデリングされたエンベロープを含有する核を次いで融合する。再プログラム過程の第3の工程では、工程2の結果生じる1又は多数の細胞から生じる細胞のコロニーを、再プログラムの程度と核型の正常性について特徴付け、高い品質のコロニーを選択する。この第3の工程は細胞を上手く再プログラムするのに必要とされず、応用の一部では必要ではない一方で、第3の品質管理工程の包含は、再プログラムされた細胞が、たとえば、ヒトでの移植のような特定の応用で使用される場合好まれる。最終的に、正常な核型を有するが、十分な程度のプログラムを有さない再プログラムされた細胞のコロニーは、工程1と2又は工程1〜3を繰り返すことによって再利用される。
【0123】
本発明の別の実施形態では、単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞を用いてファージディスプレイ法を用いたリガンドを生成してもよい(たとえば、その開示が参照によって本明細書に組み入れられる2005年5月27日に出願された米国特許出願第60/685,758号及び2006年5月26日に出願されたPCT/US2006/020552を参照)。
【0124】
遺伝子発現レベルの測定は、マイクロアレイ遺伝子発現解析、ビーズアレイ遺伝子発現解析及びノーザン解析を含むが、これらに限定されない、当該技術で既知の方法によって実施してもよい。遺伝子発現のレベルは、ADPRT(受入番号NM_001618.2)、CAPD(受入番号NM_002046.2)又は当該技術で既知のそのほかのハウスキーピング遺伝子に対して標準化された相対発現として表されてもよい。遺伝子発現のデータは中央値法の中央値によって標準化されてもよい。この方法では、各アレイは異なった総強度を与える。中央値を使用することは、実験にて細胞株(アレイ)を比較する堅実な方法である。一例として、中央値は各細胞株について見い出され、次いでそれら中央値の中央値が標準化のための値になった。各細胞株からのシグナルは、他の細胞株のそれぞれに対して相対的なものとなった。
【0125】
本発明の別の実施形態では、本発明の単一細胞由来の細胞又はオリゴクローン性細胞由来の細胞は、細胞表面の抗原であるCD抗原遺伝子の発現の独特のパターンを表してもよい。細胞表面におけるCD抗原の差次的発現は、たとえば、市販の抗体を用いて、DC抗原が細胞によって発現されることに基づいて細胞を選別するためのツールとして有用であり得る。本発明の一部の細胞のCD抗原の発現特性は、補完情報を含めて、参照によって本明細書に組み入れられるWestら、2008,Regenerative Medicine vol.3(3)pp.287−308に示されている。たとえば、ES細胞では発現されるが、本発明の相対的にさらに分化した細胞では発現されない(又は場合によって、低レベルでしか発現されない)CD抗原がある。これは、ES細胞を選択する、選別する、精製する及び/又は特徴付けるための非常に有用なツールであり得る。CD抗原は細胞表面に発現され、それに対する抗体は、一般的に言って市販されているので、抗体(又はそれらの特定の組み合わせ)を用いて細胞の不均質な混合物からES細胞又は本発明の細胞の純粋な集団を精製することができる。このことは、ES細胞又は本発明の細胞を増殖させる、又は種々の商業目的でこれらの細胞を調製する様々な戦略で有用であり得る。
【0126】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法によって導かれる単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞をマウスに注射して分化抗原に対する抗体を生じてもよい。分化抗原に対する抗体は、細胞療法のために、細胞分化における研究のために集団の純度を記録するように細胞を特定するのに、同様に移植後の細胞の存在と運命を記録するのに有用である。一般に、抗体を生じるための技法は当該技術で周知である。
【0127】
本発明の方法によって産生される細胞を遺伝子操作して大量のBMP3b又はBMPファミリーのほかのメンバーを産生することができるので、この細胞は骨消耗性疾患にて骨を誘導するのに有用であり得る。下顎の間充組織のマーカーを持つ4D20.8と称する本発明の細胞株の場合、たとえば、BMP3b又はBMPファミリーのほかのメンバーのような因子の過剰発現は、骨壊死又は下顎のような骨の骨折の治療に有用である。
【0128】
本発明の別の実施形態では、軟骨形成を経験することが可能である単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞は、非ヒト動物種から生成され、獣医疾患の治療に使用されてもよい。
【0129】
本発明の別の実施形態では、軟骨形成を経験することが可能である単一細胞由来の細胞及びオリゴクローン性細胞由来の細胞を実験的に用いて、ヒト及び非ヒトの生体における多様な軟骨種をもたらす転写調節ネットワークを含む軟骨細胞の分化における研究を実施してもよい。
【0130】
組み合わせ
明瞭性のために別々の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態における組み合わせにて提供されてもよいことが十分に理解される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載される本発明の種々の特徴はまた別々に又は好適な下位の組み合わせで提供されてもよい。対象となる胚性軟骨細胞前駆細胞の遺伝子発現パターンに関する実施形態の組み合わせはすべて本発明によって包含され、それぞれ及びあらゆる組み合わせが個々に且つ明白に開示されたかのように本明細書で開示される。従って、記載されるマーカーを示す胚性軟骨細胞前駆細胞が本明細書で提供される。
【0131】
システム及びキット
本発明によって提供されるのはまた、本明細書で記載されるような種々の応用で使用するために設計されたシステム及びキットである。
【0132】
たとえば、本発明の態様に係るシステム及びキット(一般に以下のように「キット」と呼ばれる)には、本発明の1以上の胚性軟骨細胞前駆細胞株が含まれる。キットはさらに、使用のための指示書と同様に、研究及び/又は治療応用のための細胞の増殖及び使用のための試薬及び材料を含んでもよい。キットはまた、上記で名付けたプロトコール:微細塊分化プロトコール1、微細塊分化プロトコール2、微細塊分化プロトコール3、ペレット分化プロトコール及びアルギン酸ビーズ分化プロトコールに記載された材料のような、細胞の軟骨細胞への分化を誘導するのに本明細書で使用される試薬も含有してもよい。
【0133】
一部の実施形態では、キットは軟骨産生用に設計され、本明細書で記載される1以上の胚性軟骨細胞前駆細胞株と、細胞を増殖する及び/又は軟骨形成を誘導するのに使用される1以上の追加の成分を含む。そのようなキットで提供される胚性軟骨細胞前駆細胞株は、たとえば、細胞株:SM30、E15、4D20.8、7SMOO32、MEL2、SK11及び7PEND24のそれのような、本発明の胚性前駆細胞の遺伝子発現マーカーを表示する。増殖及び/又は軟骨細胞分化のための成分には、マトリクス又は足場(又はマトリクス/足場を生成する、たとえば、ヒドロゲルを生成するための試薬)、水和剤(たとえば、生理学的に適合性の生理食塩水溶液、調製された細胞培養培地)、細胞培養上清(たとえば、培養ディッシュ、プレート、バイアル等)、細胞培養培地(液体形態であれ、粉末形態であれ)、抗生剤化合物、ホルモン、添加剤等を含む、そのような目的で本明細書に記載される任意の成分を挙げることができる。
【0134】
特定の実施形態では、キットはさらに、たとえば、実験動物への又はそれを必要とする患者、たとえば、軟骨修復療法/置換療法を必要とする患者への細胞集団の送達を円滑にするように設計された成分を含んでもよい。これら後者の実施形態では、キットの成分は、治療上の使用に好適な形態で提供されてもよい(たとえば、無菌/医療等級の成分として提供される)。送達成分には、細胞集団を被包する又は不動化するために設計されたもの(たとえば、足場又はマトリクス)、同様に、直接、又は、欠陥部位に単離した細胞を注入すること、好適な足場若しくはマトリクスと共に胚性前駆細胞を培養し、埋め込むこと、生体吸収性の足場と共にインキュベートすることを含む、そのほかの成分と関連して細胞を送達するために設計されたものが挙げられる。上記で詳述されたような生体吸収性、生体適合性の足場のような好都合な足場又はマトリクスを採用してもよく、治療用の軟骨修復/置換での使用のために多数が採用されており、又は試験されている。
【0135】
一部の実施形態では、キットは、送達された/移植された細胞集団が少なくとも1つの所望の部位、たとえば、軟骨損傷の部位に局在することを判定するのに使用するための成分を含む。そのような成分は、対象に送達された細胞の局在化及びさらに定量化の判定を可能にし得る。
【0136】
特定の実施形態では、キットにおける胚性軟骨細胞前駆細胞の株(単数)又は株(複数)を遺伝子操作する。たとえば、胚性軟骨細胞前駆細胞株を操作して外因性遺伝子、たとえば、細胞株に由来する細胞を後で特定するのに使用することができるマーカー遺伝子(たとえば、当該技術で周知のようなレポーター遺伝子)を発現させてもよい。レポーター遺伝子には、直接又は間接的に検出可能であるもの、たとえば、蛍光タンパク質、発光タンパク質、酵素、細胞表面マーカーなどが挙げられる。特定の実施形態では、異なった細胞株を再操作して、互いに識別可能な外因性レポーター遺伝子、たとえば、異なった励起及び/又は放射の特徴を有する蛍光タンパク質を発現させる。
【0137】
特定の実施形態では、キットは、その用途に必要な成分のいずれか又はすべてを含むことができる。たとえば、本発明に係るキットは、多数のそのほかの好適な物品又は成分、たとえば、人工関節、チューブ、縫合糸、外科用メス、針、シリンジ、手術部位の用意のための消毒剤、整形外科用具等を含んでもよい。
【0138】
本発明の態様では、追加の種類のキットも提供される。
【0139】
たとえば、本発明に係る軟骨細胞前駆細胞の特定及び/又は単離のためにキットが提供される。そのようなキットには、本明細書で記載される遺伝子発現マーカーのいずれかを含む細胞マーカーの発現を検出するために設計された試薬が含まれる。そのような検出試薬が製剤化されてタンパク質レベル又は核酸(たとえば、mRNA)レベルのいずれかでこれら遺伝子の発現産物を検出してもよい。従って、試薬には、抗体又はその特異的結合部分(たとえば、検出可能に標識された抗体)、そのほかの特異的結合剤(たとえば、リガンド又は可溶性受容体)、ハイブリッド形成の解析、たとえば、ノーザンブロット解析、マイクロアレイ解析などで使用するための核酸プローブ、PCRアッセイ、たとえば、上記で詳述されたような定量PCRアッセイで使用するためのプライマー対、等が挙げられてもよい。
【0140】
上記で言及したように、本キットは通常さらに、本方法を実践する、たとえば、本方法の態様に従って変異法を実施するために核酸試料を調製するためのキットの成分を使用するための指示書を含む。本方法を実践するための指示書は一般に、好適な記録媒体に記録される。たとえば、指示書は、たとえば、紙又はプラスチック等のような基材に印刷されてもよい。従って、指示書は、キットの容器のラベル又はそのコメント等にて(すなわち、包装又は下位包装と関連して)添付文書としてキットに存在してもよい。ほかの実施形態では、指示書は、好適なコンピュータ読み取り保存媒体、たとえば、CD−ROM、ディスク等に存在する電子保存データファイルとして存在する。さらにほかの実施形態では、実際の指示書は、キットには存在せず、たとえば、インターネットを介した遠隔供給源から指示書を入手する手段が提供される。この実施形態の例は、指示書を見ることができる及び/又は指示書をダウンロードすることができるWebアドレスを含むキットである。指示書と同様に、指示書を入手するためのこの手段は好適な基材に記録される。
【0141】
上記で言及した成分に加えて、キットはまた、1以上の対照試料及び試薬、たとえば、2以上の対照試料も含む。そのような対照試料は、任意の形態、たとえば、既知のマーカー特性を有する追加の細胞株、遺伝子発現データを解析するのに使用するための陰性及び陽性の対照試料、等の形態を取ってもよい。本キットでは、任意の対照試料を採用してもよい。
【0142】
生物寄託
本出願で記載される細胞株は、ブタペスト条約のもとでアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(「ATCC」:米国、VA、20108,Manassas,P.O.Box1549)に寄託されている。細胞株4D20.8(ACTC84としても知られる)は、継代11で2009年7月23日にATCCに寄託され、ATCC受入番号PTA−10231を有する。細胞株SM30(ACTC256としても知られる)は、継代12で2009年7月23日にATCCに寄託され、ATCC受入番号PTA−10232を有する。細胞株7SMOO32(ACTC278としても知られる)は、継代12で2009年7月23日にATCCに寄託され、ATCC受入番号PTA−10233を有する。細胞株E15(ACTC98としても知られる)は、継代20で2009年9月15日にATCCに寄託され、ATCC受入番号PTA−10341を有する。細胞株MEL2(ACTC268としても知られる)は、継代22で2010年7月1日にATCCに寄託され、ATCC受入番号PTA−11150を有する。細胞株SK11(ACTC250としても知られる)は、継代13で2010年7月1日にATCCに寄託され、ATCC受入番号PTA−11152を有する。細胞株7PEND24(ACTC283としても知られる)は、継代11で2010年7月1日にATCCに寄託され、ATCC受入番号PTA−11149を有する。
【0143】
実施例
以下の実施例は、本発明を如何に作製し、使用するかの完全な開示と記載を当業者に提供できるように提起されるものであって、本発明者らが本発明とみなす範囲を限定することを意図するものではなく、また以下の実験が実施された実験すべて、又はそれのみであることを表すことを意図するものではない。使用された数(たとえば、量、温度等)について精度を確保するように尽力したが、一部の実験の誤差及び偏差は説明されるべきである。特に指示されない限り、部分は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はそれに近い。
【0144】
実施例1
軟骨形成分化条件の低処理能力選抜におけるヒトのクローン性胚性前駆細胞株のマイクロアレイ解析
細胞株、10RPE8、4D20.8、4D20.9、4SKEL20、7PEND12、7PEND24、7PEND30、7PEND9、7SKEL4、7SKEL7、7SMOO25、7SMOO32、7SMOO7、7SMOO9、B16、C4.4、C4ELS5.1、C4ELS5.6、C4ELSR10、C4ELSR2、CMO2、E109、E111、E120、E15、E164、E33、E44、E68、E69、E85、EN1、EN13、EN16、EN18、EN2、EN22、EN23、EN26、EN27、EN31、EN4、EN42、EN47、EN5、EN51、EN55、EN7、EN8、F15、J16、MEL2、MEL2、MW1、RAD20.16、RAD20.19、RAD20.4、RAD20.5、RAD20.6、RAPEND10、RAPEND15、RAPEND18、RASKEL8、RASMO12、RASMO19、SK11、SK17、SK18、SK25、SK31、SK35、SK43、SK44、SK46、SK47、SK49、SK50、SK52、SM17、SM2、SM22、SM28、SM28、SM30、SM33、SM8、T14、T20、T36、T42、T43、T44、T7、U31、W10、W11、W8、Z1、Z11、Z2及びZ3を「微細塊分化プロトコール1」として上述のように選抜し、サブセットを「ペレット分化」及び「アルギン酸ビーズ分化」として分化させた。手短には、対照の細胞種:継代3のヒト骨髄間葉幹細胞(Lonza)、脂肪細胞幹細胞(ASC)、歯髄幹細胞(DPSC)、包皮皮膚線維芽細胞(XgeneFB)、及び正常ヒト関節軟骨細胞(NHAC)を選抜に含めた。本明細書で記載されるように、同様にそれぞれ参照によって本明細書に組み入れられる、「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2006年11月21日に出願された米国特許出願、出願番号11/604,047;及び「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2009年7月16日に出願された米国特許出願、出願番号12/504,630に記載されたように、選抜される細胞株並びに上述の対照の細胞種を5%の外気酸素を伴ったインキュベータにて、増殖停止又は微細塊及びペレットの軟骨形成条件にて同期化した。例証として、静止における同期化を誘導する条件については、通常製造元に推奨された濃度で補完剤を伴い、完全キットとして(カタログ番号C−22022)として販売されているPromocell内皮MV2培地にて細胞が集密に達するまで、細胞株7PEND24(ACTC283)を培養した。集密に達した際、培地を取り除き、元々の補完剤ミックスの10%を伴った同一のPromocell培地に置き換えた。3日後、培地を吸引し、さらに2日間(合計静止条件で5日間)、同一培地(すなわち、10%の通常補完剤)で置き換えた。細胞株4D20.8(ACTC84)の場合、細胞が集密に達するまで、20%FCSを補完したDMEM培地で細胞を培養した。集密に達すると、培地を取り出し、元々の濃度の10%(すなわち、2%FCS)を伴った同一のDMEM培地に置き換えた。3日後、培地を吸引し、同一の培地(すなわち、2%FCSを伴ったDMEM)でさらに2日間(すなわち、合計で静止条件の5日間)、置き換え、又はペレット若しくは微細塊として軟骨形成条件にて12日間若しくは14日間分化させた。本明細書で記載されるようにRNAを回収し、qPCRによってアッセイし、本明細書で記載されるように遺伝子発現解析のためにIlluminaマイクロアッセイとハイブリッド形成させた。骨髄の間葉幹細胞は、軟骨細胞遺伝子発現の顕著な上方調節と共にペレット及び微細塊双方の軟骨形成条件に反応した。軟骨細胞の分化マーカーの例には、軟骨に特異的ではないが、軟骨形成中に上方調節されるMGP及びPENK、軟骨の発生に相対的に特異的であるCOL2A1、MATN4、EPYC、COL9A2及びLECT1が挙げられる。細胞株4D20.8における未分化条件と14日目の微細塊条件における遺伝子発現の比較は、>479倍のMGPの発現、>10倍のMATN4の発現、>369倍のPENKの発現、>60倍のCOL2A1の発現、>42倍のEPYCの発現、>25倍のCOL9A2の発現、>24倍のLECT1の発現を示し、同様に、MSCでは、分化は、5倍のMGPの発現(4D20.8とは異なって、未分化のMSCは発現の相対的に高いベースレベルを示したが)、20倍のMATN4の発現、6倍のPENKの発現(再び、未分化の4D20.8では未発現であるのに比べて未分化のMSCでは相対的に高いレベル)、613倍のCOL2A1の発現、48倍のEPYCの発現、117倍のCOL9A2の発現、34倍のLECT1の発現の上方調節を示した。それに対して、皮膚線維芽細胞は、37倍のMGPの発現の上方調節を示したが、実験処理の前後でCOL2A1、EPYC、LECT1又はCOL9A2の発現は示されなかった。従って、皮膚線維芽細胞とは異なって、4D20.8は、MSCとは同一ではないが、MSCと類似の多様な軟骨特異的遺伝子を発現した。24,526個の評価した遺伝子の中で、265個の遺伝子はMSCの分化の間に発現の上昇を示し、191は4D20.8の分化の間に発現の上昇を示したが、共通するのはたった47個の遺伝子だった。従って、細胞株4D20.8は、LHX8の発現を示さないが、代わりにたとえば、HOXA10、HOXB7、HOXC8及びHOXD13のような尾部HOX遺伝子、及び下肢に特徴的なPITX1の発現を示したMSCとは異なって、口蓋及び下顎の部位特異的LHX8ホメオボックス遺伝子の発現を伴い、HOX又はPITX1を発現しないMSCとは識別可能な細胞株を代表する。細胞株7PRND24も低レベルで軟骨形成の誘導を示した。
【0145】
MSC及び正常ヒト関節軟骨細胞(NHAC)と共に軟骨形成条件の14日の前後で細胞株のマイクロアッセイによってアッセイしたCOL2A1の誘導レベルを「COL2A1」と題するグラフで図2に示す。図2でも見ることができるように、軟骨の共通する成分であるLECT1の遺伝子も細胞株で誘導されるが、細胞株では差次的に発現される。永続軟骨(肥大軟骨細胞に対して)のマーカーとして元々特徴付けされた遺伝子であるCRTAC1は実際、NHACでは発現されるが、MSCでは発現されず、本発明の細胞株では様々な程度に発現される。肥大軟骨細胞で発現されるマーカーIHHは、NHACでは発現されず、MSCで発現されるが、本発明の細胞では発現されないということは、それらがMSCとは識別可能であり、安定な軟骨への前駆細胞である可能性があることに一致する。MSCのマーカーであるが、線維芽細胞のマーカーではないとして元々特徴付けされた遺伝子であるCD74は、脂肪細胞幹細胞(ASC)、MSCで発現されるが、NHAC又は本発明の細胞では発現されない。最後に、下顎間充組織のマーカーであるLHX8は、NHAC、ACSでは発現されないが、下顎の神経堤に起源と一致する歯髄幹細胞(DPSC)では発現され、細胞株4D20.8において発現される。
【0146】
微細塊の14日後、及び記載されたようなこれら細胞株のペレットの軟骨形成条件のサブセットでは、細胞株、7PEND24、4D20.8、7SMOO32、MEL2、SK11、SM30及びE15が、分化の誘導の際、顕著に高いCOL2A1の発現を示し、4D20.8、7SMOO32、MEL2、E15及びSM30は、正常ヒト関節軟骨細胞よりも相対的に高いレベルの転写物を発現した。際立って、>1,000ほど高いCOL2A1を発現している株SM30。当該技術で周知のように、使用した細胞のロットや継代数で大きく変化することが認められているが、継代3の骨髄間葉幹細胞は、転写物があったにしてもほとんど発現しなかった。COL2A1の発現は、ASC、DPSC又はXgeneFBでは認められなかった。細胞株は、たとえば、中胚葉と神経堤のマーカーであるTBX5とHAND2のような種々のマーカーの組み合わせを発現するので、軟骨形成の多様な種類のモデル化及び臨床上の細胞に基づいた治療法にて有用である。加えて、それらは、生体にて軟骨の部位特異的な独特の機械的特性を生成する種々の部位特異的ホメオボックス遺伝子を示す。非限定の例証として、細胞株4D20.8は、たとえば、二次口蓋を生成すること、下顎を再構築すること、又は口蓋裂、歯周病の修復、歯の神経堤の成分を形成することが可能である細胞を寄与させることによって歯芽を再構築すること、下顎領域の真皮、下顎領域の末梢神経若しくは色素細胞を再構築すること、又は歯肉萎縮を修復することを含むが、これらに限定されない神経堤下顎間充組織のそのほかの派生物を再構築することのような、口周囲間充組織のマーカーであるマーカー遺伝子LHX8を強く発現する。
【0147】
実施例2
hMSCで以前明らかにしたように、外因性細胞の投与を用いて、ヒツジにおける中央若しくは外側の半月板切除又はACL切除の後の関節の軟骨及び半月板の傷害と修復を判定することができる(双方共その全体が参照によって本明細書に組み入れられるGhosh, et al., Clin. Orthop., Vol. 252, pgs. 101-113, 1990; Little, et al., J. Rheumatol., Vol. 11, pgs. 2199-2209, 1997)。hESに由来する細胞に対するヒツジにおける寛容は、hES由来細胞の出生前移植によって達成される。ヘクステンド、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン又はそのほかの足場/マトリクス(たとえば、脱細胞化した半月板)を含む1以上の医薬キャリアと共に、たとえば、7PEND24、7SMOO32、SM30、E15、4D20.8のようなhES−、iPS−に由来する胚性前駆細胞、並びにhMSC及びHAの対照の漸増用量を寛容化したヒツジの関節に注入する。傷害の修復速度を漸増投与量に反応して時間をかけて測定する。ヒト成人MSC及び媒体対照と比べた再注入、奇形腫の形成、及び効率について移植した細胞を組織学的に評価する。
【0148】
実施例3
長い継代にわたって胚性軟骨細胞前駆細胞の安定性をアッセイすること
我々が30の倍増を超えて成人の骨髄MSCを継代するのは不可能だったが、我々は、4D20.8と称する本発明の細胞株を33回の継代を超えて培養した。我々は、COL2A1の発現によって測定され、継代12と継代33にて本明細書で記載されるようなqPCRによってアッセイされる軟骨を誘導するその細胞の能力を比較した。長い継代での細胞は並行した実験におけるMSCのそれとは異なって、匹敵するレベルのCOL2A1を産生した。各継代が1.5の倍増である継代12での使用細胞集合からさらなる継代21以上に細胞を規模拡大する能力は、使用細胞集団よりおよそ52倍増又は250多い細胞に相当する。従って、細胞は、多数の患者における同種移植について商業的に規模拡大されるその可能性において独特である。
【0149】
実施例4
本発明の選択された軟骨形成性細胞株におけるCD抗原を認識する抗体のスクリーニング
本発明の軟骨形成性細胞株をCD抗原に対する抗体のライブラリに対して中程度の処理能力法にてアッセイし、陽性細胞の比率を以下(表2)に示すが、それらは、それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2006年11月21日に出願された米国特許出願、出願番号11/604,047;及び「多能性幹細胞からの新規の細胞株の単離を加速する方法及びそれによって得られる細胞」と題する2009年7月16日に出願された米国特許出願、出願番号12/504,630に記載された予測された抗原の一般的な有用性を明らかにしている。しかしながら、例外も特定することができる。特に、抗原CD56(NCAM1)は細胞株4D20.8の80%に結合するが、調べたほかの細胞株の極一部しか結合しない。このことは、マイクロアレイのデータにおけるNCAM1(Illuminaプローブ、ID4040725)の相対的に高いレベルと一致する。従って、CD56に対する抗体は、本明細書で記載される細胞株4D20.8の遺伝子発現マーカーを持つ細胞のアフィニティ精製に有用である。
【0150】


【0151】
実施例5.
NNAT陽性軟骨形成性前駆細胞株の発見
元々クローン増殖させたのと同じ培地である20%血清を補完したDMEM培地にて連続継代を行うことにとって継代17での細胞株E15(ACTC98としても知られる)を増殖させた(参照によって本明細書に組み入れられるWestら、2008,Regenerative Medicine、vol.3(3)pp.287−308かの補完表Iを参照)。継代14と17にて、細胞がいったん集密に達すると培地を取り除き、10倍低下した血清(2%)を補完した新鮮なDMEMによって培地を置き換えることによって細胞を静止期に同期化した。3日後、培地を吸引し、2%のFCSを補完した新鮮なDMEMでさらに2日間置き換えた。同一継代の細胞を微細塊条件及びペレット条件の双方でプレート培養し、本明細書で記載されるように軟骨形成を誘導した。微細塊培養の14日後、同一条件下で培養した細胞株E15と正常ヒト関節軟骨細胞(NHAC)対照を特異的マーカー(以下の実施例6を参照)の発現についてqPCRによってアッセイした。E15は、NHAC対照よりも>10,000多いCOL2A1のmRNAを発現することが認められた。14日目の微細塊を固定し、上述のようにサフラニンOで染色した。試料は、軟骨プロテオグリカンを強く染色した。細胞をさらに特徴付けるために、本明細書で記載されるように、RNAをIlluminaマイクロアッセイとハイブリッド形成させた。
【0152】
実施例6.
qPCRによる軟骨形成性前駆細胞のスコア化のための低処理能力選抜
10RPE8、4D20.8、4D20.9、4SKEL20、7PEND12、7PEND24、7PEND30、7PEND9、7SKEL4、7SKEL7、7SMOO25、7SMOO32、7SMOO7、7SMOO9、B16、C4.4、C4ELS5.1、C4ELS5.6、C4ELSR10、C4ELSR2、CMO2、E109、E111、E120、E15、E164、E33、E44、E68、E69、E85、EN1、EN13、EN16、EN18、EN2、EN22、EN23、EN26、EN27、EN31、EN4、EN42、EN47、EN5、EN51、EN55、EN7、EN8、F15、J16、MEL2、MEL2、MW1、RAD20.16、RAD20.19、RAD20.4、RAD20.5、RAD20.6、RAPEND10、RAPEND15、RAPEND18、RASKEL8、RASMO12、RASMO19、SK11、SK17、SK18、SK25、SK31、SK35、SK43、SK44、SK46、SK47、SK49、SK50、SK52、SM17、SM2、SM22、SM28、SM28、SM30、SM33、SM8、T14、T20、T36、T42、T43、T44、T7、U31、W10、W11、W8、Z1、Z11、Z2及びZ3と名付けられた本発明の細胞株は、hES由来の細胞から単離し、集密まで増殖させ、本明細書で記載されるような血清又はそのほかのマイトジェンを10倍減らして補完した培地で培地を置き換えることによって静止期に同期化させたので、それらを試験管内で>21の倍増でクローン増殖させた。試験管内で軟骨形成が可能である細胞についての低処理能力選抜では、細胞を微細塊条件で培養し、本明細書で記載されるように14日間、軟骨形成を誘導した。これら2つの条件のそれぞれからのRNAをcDNAに変換し、次いで軟骨形成に一般に関連する遺伝子(すなわち、COL2A1、COMP、CILP、SCX、CRTL1、SOX9、BARX2)の発現について調べた。遺伝子特異的なプライマー対プローブはInvitrogenから入手した。cDNAのRNA同等物30ng,プライマー当たり0.4μM、超純度蒸留水(Invitrogen)から成り、全反応容量25μlでAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼを組み入れる12.5μlのPowerSYBR GreenPCR Masterミックス(CA、Carlsbad、Applied Biosystems、カタログ番号4367659)で1:1に希釈した試験用試料を標準の光学96穴反応プレート(CA、Carlsbad、Applied Biosystems、PN4306737)にて調製した。SDSv1.2ソフトウエアを採用するApplied Biosystems7500リアルタイムPCR方式を用いてリアルタイムqPCRを実行した。増幅条件は、50℃にて2分間(段階1)、95℃で10分間(段階2)、95℃で15秒間、次いで60℃で1分間を40サイクル(段階3)、95℃で15秒間、60℃で1分間、95℃で15秒間の解離段階(段階4)にて設定した。当該遺伝子の増幅産物のCt値を3つのハウスキーピング遺伝子(GAPD、RPS10及びGUSB)のCt値の平均に対して標準化し、早期継代の正常ヒト膝関節軟骨細胞(Lonza)及び培養されたヒト骨髄間葉幹細胞に対して遺伝子発現を解析した。
【0153】
関節形成遺伝子を検出するのに使用したプライマーセットは上述したものであり;選抜される細胞株について培養された早期継代の正常ヒト関節軟骨細胞と比較して倍数発現として表現されたCOL2A1の発現を図1に示す。早期継代の正常ヒト関節軟骨細胞(NHAC)を1.0の値として設定する。NHACと比較して−倍誘導として定量化されるCOL2A1の発現レベルは、細胞株の大半では顕著には上昇しなかったが、細胞株の小さなサブセットでは際立って上昇し、すなわち、7SMOO32技術複製2(NHACの154倍の発現)、7SMOO32生物複製2(NHACの137倍の発現)、4D20.8生物複製2(NHACの130倍の発現)、SM30(NHACの1287倍の発現)、SM30生物複製2(NHACの13,494倍の発現)、SM30技術複製2(NHACの1168倍の発現)、E15(NHACの10,809倍の発現)、E15技術複製2(NHACの9810倍の発現)、MEL2(NHACの22倍の発現)及びSK11(NHACの4倍の発現)。
【0154】
驚くべきことに、COL2A1の誘導とSOX9のような関節形成間充組織の一般に使用されるマーカーとの相関はほとんどないか、少なかった。同様に、軟骨形成性間葉細胞のマーカーであると推測されているAQP1のようなマーカーは、微細塊軟骨形成条件でCOL2A1を誘導しない包皮皮膚線維芽細胞のRFU値にて存在したが、分化前及び分化後の本発明の細胞株には存在しなかった。たとえば、分化に先立って、AQP1の発現は、クローン増殖の18〜21の倍増にて、細胞株SM30には存在せず(バックグランドであるRFU135)、SK11には存在せず(126のRFU)、細胞株E15には存在しなかった(RFU139)(Westら、2008,Regenerative Medicine、vol.3(3)pp.287−308からの補完表IIを参照)。どちらも、本発明の細胞株は軟骨形成が可能であるかどうかを予測することにおいて予測値の本発明の未分化細胞株におけるSOX9の発現レベルではなかった。実際、軟骨細胞になってそのような予後を予測するこれら細胞株の可能性と十分に相関する、分化に先立つ未分化の細胞株では遺伝子を見つけることができなかった。部位特異的なホメオボックス遺伝子発現を含むSK11、7SMOO32、4D20.8、MEL2、SM30及びE15の群の範囲内での遺伝子発現マーカーの多様性は、各細胞株が独特で且つ識別可能な軟骨形成性前駆細胞を代表することを示唆している。同様に驚くべきことは、たとえば、COMP及びCILPのような試験管内での軟骨形成のマーカーとして一般に使用される遺伝子の多くが、COL2A1の発現によって及び軟骨形成の組織学的証拠を示すことによって証拠付けられるのと同一の条件下で皮膚線維芽細胞が、たとえば、本当の軟骨形成を経験することが可能であるかどうかにかかわりなく、培養された皮膚線維芽細胞を含む事実上任意の細胞種にて非特異的な方法での培養条件で誘導されることであった。加えて、細胞株SK11、7SMOO32、4D20.8、MEL2、SM30及びE15は、分化の前と後の双方での遺伝子発現マーカーに関して培養された骨髄MSCとは明瞭に識別可能だった。骨髄のMSCは一般にALCAM(CD166)陽性として記載されるが、たとえば、SK11、7SMOO32、4D20.8、MEL2、SM30及びE15のような未分化状態での本発明の細胞株は、CD166の発現は細胞株SM30では存在せず(バックグランドであるRFU125)、SK11では存在しなかった(164のRFU)(Westら、2008,Regenerative Medicine、vol.3(3)pp.287−308からの補完表IIを参照)。非限定の例証としてMSCと比較した場合の本発明の細胞株の追加の差異は、実際には特異的ではない一般的に使用されるマーカーの多くよりもさらに正確なMSCのマーカーであることが明らかにされているCD74の発現である(Ishii et al, 2005 BBRC 332:297-303)。表3に示されるように、未分化のMSCは実際非常に高いレベルのCD74転写物を発現し、脂肪細胞幹細胞は低レベルで同様にCD74を発現し、歯髄幹細胞は検出の限界でCD74を発現したが、その転写物は、SK11、7SMOO32、4D20.8、MEL2、SM30及びE15を含むCOL2A1を誘導可能な本発明の未分化細胞でも、培養された皮膚線維芽細胞でも非軟骨形成性の胚性前駆細胞株7SMOO7でも全く検出されなかった。細胞株の多様性及び本明細書で検討される成人幹細胞種での際立った差異を示す追加の非限定例は、細胞株E15にて高レベルで発現されるが、たとえば、MSC、脂肪細胞幹細胞、歯髄幹細胞又は皮膚線維芽細胞では発現されない発生遺伝子NNAT(NM_181689.1)の発現である。当該技術における幹細胞種からCOL2A1の発現を誘導することが可能である本発明の細胞株の顕著な差異の別の非限定例は、MSCのマーカーとして知られる遺伝子KCNK2(NM_001017425.2)の発現を測定することによって理解することができる。表3に示されるように、KCNK2は、MSC、脂肪細胞幹細胞及び歯髄肝細胞にて高レベルで発現されるが、SM30、E15、4D20.8、MEL2及びSK11のようなCOL2A1の発現を誘導することが可能である本発明の幾つかの細胞株では検出可能ではなかった。本発明の細胞株と骨髄由来のMSCの際立った差異は、細胞種における重要な治療上の差異を示す遺伝子においても見られる。MSCは試験管内で分化すると肥大軟骨細胞への形質転換を受けることに悩まされる。肥大軟骨細胞は、血管形成を誘導するのに有用な遺伝子を発現し、後に骨芽細胞によって侵襲されて骨を作る一時的なマトリクスを提供する。従って、関節に注入する場合、又はさもなければ関節軟骨に移植する場合、関節軟骨の外傷、関節炎の治療、又は関連する用途で組織を再生する尽力においてMSCは上手く機能しない。MSCが肥大軟骨細胞のマーカーであるIHHを非常に高いレベルで発現する一方で、本発明の細胞株は本明細書の軟骨形成条件で誘導される場合、ほとんどIHHを発現しないか、発現してもわずかである。同様に、細胞株4D20.8は肥大軟骨細胞の別のマーカーであるCOL10A1を検出可能なレベルで発現しなかったが、MSCはその転写物を非常に高いレベルで発現した。従って、7SMOO32、4D20.8、SM30及びE15のような本発明の細胞株は、関節軟骨の病理の修復のための永続軟骨に分化するその能力でMSCより優れているマーカーを示す。培養されたヒト骨髄MSC、脂肪細胞幹細胞、及び成人歯髄幹細胞と比べた細胞株SK11、7SMOO32、4D20.8、MEL2、SM30及びE15における差異のさらなる非限定例は、表3に示される、又は表3におけるような本明細書で記載されるものと細胞の遺伝子発現マーカーを比較することによって理解することができる。従って、これらの結果は、この選抜で特定された細胞株は新規であり、MSCを特定するのに一般に使用されるマーカーはヒトの胚性前駆細胞株において軟骨形成能を予測せず、前記細胞株が、軟骨形成の真のマーカーを発現する軟骨形成刺激に応答する株の小さなサブセットであることを予測するマーカーは現在存在しないことを示唆している。証拠は、軟骨形成の組織学的証拠の実施例7で提供される。
【0155】
表3
ヒト脂肪細胞(ACS)、ヒト骨髄間葉幹細胞(MSC)、ヒト成人歯髄幹細胞(DPSC)、培養されたヒト包皮線維芽細胞(Fibro)、COL2A1の誘導が可能ではないクローン性hEP細胞株7SMOO7、並びにそれぞれCOL2A1の発現を誘導することが可能であるヒト胚性前駆細胞SM30、E15、4D20.8、7SMOO32、MEL2及びSK11における遺伝子発現マーカーの比較。数字はRFU値である。陰性の発現は影付きボックスで示す(ND平均値はデータなし)。

【0156】
実施例7
軟骨形成の組織学的な及び免疫化学的な確認
たとえば、7PEND24、7SMOO32、MEL2、SM30、E15、SK11及び4D20.8のようなCOL2A1の中程度から堅実な誘導を示すような上記実施例6における低処理能力選抜で発見されたもののような本発明の細胞株、並びにたとえば、MSC、脂肪細胞幹細胞、及びそのほかの細胞株、たとえば、包皮皮膚線維芽細胞、Z11、歯髄幹細胞、7SMOO7、E44などのような対照を、1、8、14及び21日間を含む様々な時間、本明細書で記載されるような微細塊及びペレットの軟骨形成条件を経験させ、及びSCIDマウスの腎臓被膜に移動させた場合の前記ペレットのサブセットを経験させて、長時間の分化を促進した。前記微細塊とペレットをホルマリンで固定し、H&E染色、上述のようなプロテオグリカンを染色するサフラニンOによって、及び特異抗体と対照としての非特異抗体を用いた免疫反応性COL2A1について組織学的に解析した。サフラニンOに対する強い反応性及び/又はCOL2A1免疫反応性が細胞株4D20.8の14日目と21日目のペレットで認められ、サフラニンOの強い染色が細胞株E15の14日目の微細塊で認められた。驚くべきことに、細胞株RAD20.6は、14日目のペレットでCOL2A1に対する免疫反応性及びサフラニンO染色を示した。図2は、ペレットとしてすべて21日目の分化にて継代6でのMSCと比較した継代14での細胞株4D20.8と比較した脂肪組織幹細胞のサフラニンO染色及び細胞株4D20.8とMSCの14日目ペレットにおけるアイソタイプ対照を伴った免疫染色の例を示す。
【0157】
実施例8
関節軟骨を修復する能力について以下のように本発明の細胞株を調べた:提供されたヒト関節組織を外植した。細胞株SM30、E15、及び4D20.8の5×10個の細胞を10%FBS/DMEM/F12にて15mlの円錐チューブ中で400×gにて5分間遠心し、一晩インキュベートして細胞の凝集体を生成した。Arthrex Single Use OATSシステム(Naples、Fl)によって6mm径の円筒状片を関節外植片からくり抜いた。外科用掻爬器を用いて関節表面におよそ2mmの大きさの部分的な厚み欠損を作った。SM30、E15、及び4D20.8の細胞凝集体、又はヒト一次関節軟骨細胞、hES由来の軟骨細胞の塊培養、若しくは脂肪細胞由来の幹細胞(hASC)から成る対照によって欠損を満たした。TGFβ3の存在下又は非存在下で10%FBS/DMEM/F12にて関節外植片をインキュベートした。4週間後、外植片を固定し、パラフィン包埋し、切片にし、スコア化のためにサフラニンOで染色した。クローン性の前駆細胞株SM30、E15、及び4D20.8を用いた選択されたクローン性細胞株における遺伝子発現レベル及びマトリクスの染色は、不均質なhESC及びASCより高く、hACで見られるレベルに近づいた。軟骨外植片では、修復組織は関節軟骨に類似し、周辺の宿主組織と上手く統合した。
【0158】
実施例9
人工的なマトリクスにて軟骨形成を経験する能力について、軟骨形成が可能である本発明の細胞株を調べた。細胞株4D20.8及び7PEND24の細胞を増殖させ、低速での遠心によってペレットにし、NaCl(155mM)で洗浄し、再び遠心し、1.2%アルギン酸(Lonza)にて20×10でペレットを再浮遊させた。22gの針を介して細胞浮遊液を1mlのシリンジに引き入れ、CaCl槽(102mM)に一滴ずつ分配した。ゲル化は即座である。ビーズをNaCl(155mM)で3〜5回洗浄し、次いで軟骨形成用培地(TGFを含まず)で1回洗浄し、その後軟骨形成用培地に浸漬した。ビーズを6穴プレートの複数のウェルに入れ、1週間に3日、14日間養分を与えた。次いでビーズをNaClで複数回洗浄し、その後クエン酸ナトリウム(55mM)に20分間暴露することによって脱重合した。遠心の後、RLT(Qiagen)によって細胞ペレットを溶解し、QiaShredderを用いた粉砕工程を行って収率を改善したのに続いて、RNeasyマイクロキット(Qiagen)を用いて全RNAを抽出した。上記のようにqPCRによってCOL2A1の発現を測定した。細胞株4D20.8の場合、正常な微細塊条件に比べてCOL2A1の発現で51倍の上昇があった。細胞株7SMOO32の場合、正常な微細塊条件に比べてRGD−アルギン酸を用いたCOL2A1の発現で2.88倍の上昇があった。細胞株SK11の場合、正常な微細塊条件に比べてアルギン酸を用いたCOL2A1の発現で179倍の上昇があった。Lonzaアルギン酸に加えて、RGD結合したアルギン酸(NovaMatrix)ビーズも調製した。7PEND24の場合、微細塊条件ではCOL2A1を弱くしか誘導しないが、アルギン酸ビーズでは、微細塊条件に比べて45倍の上昇を示した。RGD−アルギン酸複合体に被包された7PEND24は、微細塊条件上で高いCOL2A1の発現を示さなかったが、正常なヒト関節軟骨細胞(NHAC)に比べて17倍高いCOL2A1の発現を示した。同様に、微細塊条件で軟骨形成性が弱かった7SMOO32は、RGD−アルギン酸ビーズではCOL2A1を堅実に発現した。
Illuminaのプラットホームを用いて、RGDアルギン酸は細胞株4D20.8にてCOL2A1の印象的な449倍の上方調節を示した。
【0159】
実施例10
試験管内の連続継代に対する細胞株の安定性を判定するために、未分化状態及び14の微細塊及び上述のような(実施例9)アルギン酸ビーズにて、定期的にRNAを単離しながら、細胞株4D20.8、E15、SM30及びhbmMSCを連続継代した。アルギン酸ビーズにてP12と比較した継代33の細胞株4D20.8はほぼ同一レベルのCOL2A1を示したが、hbmMSCは、老化のために匹敵する継代で比較することはできなかった。
【0160】
実施例11
アルギン酸に被包された軟骨形成性hEPの生体内s.c.埋め込み
hES細胞前駆細胞株、4D20.8、E15、SM30、7PEND24、MEL2及び対照のヒト骨髄MSC、及びx−遺伝子皮膚線維芽細胞を増やし、剥離し、ペレットにし、20×10個の細胞/mlでアルギン酸調製物(RGDペプチド結合アルギン酸を伴ったLonza1.2%又はNovaMatrix1.5%)に再浮遊させた。ゲル化と細胞の被包のために、1mlの無菌シリンジを用い、シリンジに負荷した後、アルギン酸浮遊液を22Gの針を介して一滴ずつCaCl(102mM)溶液に排出し、又は予めCaClで濡らした大腿形状のシリコーン金型に入れ、次いで完全で迅速なゲル化のために102mMのCaClで覆った。
【0161】
大腿形状の構築物を金型から取り出し、アルギン酸ビーズ(直径約1〜2mm)と同じようにNaCl(155mM)で洗浄し、その後、デキサメタゾン0.1μMとヒト組換えTGFβ3(10ng/ml)を含有する軟骨形成用分化培地に浸漬した。月曜日、水曜日及び金曜日に構築物及びビーズに養分を与えた。12日後、NOD−SCIDマウスの肩にs.c.で構築物を埋め込み、14日目に同様にビーズを埋め込んだ。
【0162】
埋め込みの6週後、組織を摘出し、4%のパラホルムアルデヒドで24時間固定し、次いで70%アルコールに浸漬した。
【0163】
顕微鏡観察では、特定のhEPC構築物が明らかであり、ビーズは、白っぽい外見を持つ皮膚の下にある正常な筋膜から容易に識別できた。4D20.8のアルギン酸外植片について例となる外植片(図4A)。
【0164】
組織学的な評価については、試料をパラフィン包埋し、約100μm間隔で4μmの切片に切り、スライド上に置き、次いでヘマトキシリンとエオシンで染色した。
【0165】
図5は、細胞株4D20.8及びE15についてガラス質軟骨に類似する軟骨細胞様の外見を示す例となる組織像を示す。
【0166】







【0167】
前述の発明は、理解の明瞭性の目的での説明及び例示のために少し詳しく記載してきたが、本発明の教示の観点から、添付の特許請求の範囲の精神と範囲から逸脱することなく、それに対する特定の変更及び改変を行ってもよいことが当業者に容易に明らかである。
【0168】
従って、先行は本発明の原理を単に説明している。本明細書で明白に記載されず、又は示されないが、本発明の原理を具体化し、その精神と範囲の中に含められる種々の取り決めを当業者が考案できることが十分に理解されるであろう。さらに、本明細書で言及される実施例及び条件付言語のすべては、本発明の原理及び本発明者らによって当該技術の推進に寄与させられる概念を理解する点で読者を助けることが原則として意図され、そのような具体的に言及される実施例や条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体例を言及する本明細書での記述すべては、その構造的な及び機能的な同等物双方を包含することが意図される。加えて、そのような同等物は、現在既知の同等物及び将来開発される同等物、すなわち、構造にかかわりなく、同一の機能を実行する開発される要素の双方を含むことが意図される。従って、本発明の範囲は、本明細書で示され、記載される例となる実施形態に限定されるように意図されるものではない。むしろ、本発明の範囲と精神は添付の特許請求の範囲によって具体化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者において軟骨を生成する方法であって、
(a)CD74、CD90、CD166、ITGA2、KCNK2及びそれらの組み合わせから成る群から選択される1以上の遺伝子の発現について陰性である胚性前駆細胞株と、
(b)薬学上許容可能なキャリアを含む有効量の胚性前駆細胞株組成物を対象者に投与することを含む方法。
【請求項2】
胚性前駆細胞株がCD74の発現について陰性である請求項1の方法。
【請求項3】
胚性前駆細胞株がさらに、HOX遺伝子及びPITX1から成る群から選択される1以上の遺伝子の発現について陰性である請求項2の方法。
【請求項4】
胚性前駆細胞株が、COL10A1マーカーの発現の非存在下で軟骨を生成する請求項1の方法。
【請求項5】
胚性前駆細胞株が、SM30、E15、4D20.8、7SMOO32、MEL2、SK11、7PEND24及び7SMOO7及びそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1の方法。
【請求項6】
対象者が軟骨の損傷を有し、方法が、胚性前駆細胞株組成物を前記軟骨損傷の部位に投与することを含む請求項1の方法。
【請求項7】
軟骨の損傷が関節軟骨の損傷である請求項6の方法。
【請求項8】
薬学上許容可能なキャリアが、ヘタスターチ;ヒアルロナン及びそのポリマー;コンドロイチン硫酸;I型コラーゲン;II型コラーゲン;III型コラーゲン;ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸及びそれらのコポリマー;アルギン酸;アガロース;ポロキサマー;フィブリン;キチン;及びキトサン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される組成物を含む請求項1の方法。
【請求項9】
胚性前駆細胞株が、対象者への投与に先立って軟骨細胞を誘導する条件下で培養される請求項1の方法。
【請求項10】
さらに、損傷された軟骨を時間とともに修復する速度を測定することを含む請求項1の方法。
【請求項11】
軟骨を産生する方法であって、軟骨産生条件下にてCD74、CD90、CD166,ITGA2及びKCNK2から成る群から選択される1以上の遺伝子の発現について陰性である、クローン性に精製した胚性前駆細胞株を培養することを含む方法。
【請求項12】
胚性前駆細胞株が、CD74の発現について陰性である請求項11の方法。
【請求項13】
胚性前駆細胞株がさらに、HOX遺伝子及びPITX1から成る群から選択される1以上の遺伝子の発現について陰性である請求項12の方法。
【請求項14】
胚性前駆細胞株が、COL10A1マーカーの発現の非存在下で軟骨を生成する請求項13の方法。
【請求項15】
胚性前駆細胞株が、SM30、E15、4D20.8、7SMOO32、MEL2、SK11、7PEND24及び7SMOO7及びそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項11の方法。
【請求項16】
軟骨産生条件が、軟骨細胞培養条件;胚性前駆細胞株を合成マトリクス又は生体吸収性不動化媒体に含浸させること;及び胚性前駆細胞株を成形構造に入れることから成る群の1以上から選択される請求項11の方法。
【請求項17】
方法がさらに、胚性前駆細胞株によって産生された軟骨を対象者に移植することを含む請求項11の方法。
【請求項18】
キットであって、
(a)CD74、CD90、CD166,ITGA2及びKCNK2から成る群から選択される1以上の遺伝子の発現について陰性である胚性前駆細胞株と
(b)前記細胞株から軟骨産生を誘導する試薬
を含むキット。
【請求項19】
胚性前駆細胞株が、SM30、E15、4D20.8、7SMOO32、MEL2、SK11、7PEND24及び7SMOO7及びそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項18のキット。
【請求項20】
軟骨産生を誘導する試薬が軟骨細胞培養試薬を含む請求項18のキット。
【請求項21】
組成物であって、CD74、CD90、CD166,ITGA2及びKCNK2から成る群から選択される1以上の遺伝子の発現について陰性である軟骨細胞前駆細胞株と、薬学上許容可能なキャリアを含む組成物。
【請求項22】
軟骨細胞前駆細胞株が、CD74の発現について陰性である請求項21の組成物。
【請求項23】
前記軟骨細胞前駆細胞株が、HOX遺伝子及びPITX1から成る群から選択される1以上の遺伝子の発現についてさらに陰性である請求項21の組成物。
【請求項24】
軟骨細胞前駆細胞株が、COL10A1マーカーの発現の非存在下で軟骨を生成する請求項21の組成物。
【請求項25】
軟骨細胞前駆細胞株が、SM30、E15、4D20.8、7SMOO32、MEL2、SK11、7PEND24及び7SMOO7及びそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項21の組成物。
【請求項26】
CD74、CD90、CD166,ITGA2及びKCNK2から成る群から選択される1以上の遺伝子の発現について陰性である軟骨細胞前駆細胞株。
【請求項27】
軟骨細胞前駆細胞株が、CD74の発現について陰性である請求項26の細胞株。
【請求項28】
前記軟骨細胞前駆細胞株が、HOX遺伝子及びPITX1から成る群から選択される1以上の遺伝子の発現についてさらに陰性である請求項26の細胞株。
【請求項29】
軟骨細胞前駆細胞株が、COL10A1マーカーの発現の非存在下で軟骨を生成する請求項26の細胞株。
【請求項30】
軟骨細胞前駆細胞株が、SM30、E15、4D20.8、7SMOO32、MEL2、SK11、7PEND24及び7SMOO7から成る群から選択される請求項26の細胞株。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−533571(P2012−533571A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520830(P2012−520830)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042369
【国際公開番号】WO2011/009106
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512012182)バイオタイム インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】BIOTIME INC.
【Fターム(参考)】