説明

認知機能改善および心拍数低下のための方法

本発明は、加齢関連認知低下または軽度認知機能障害を有する被験者における認知機能を改善する方法、および、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まないドコサヘキサエン酸(DHA)を含む剤形を投与することにより被験者における心拍数を低下させる方法を対象とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年2月2日付出願の米国出願第61/149,310号、2009年6月2日付出願の米国出願第61/183,548号の35 U.S.C. 109(e)に基づく利益を主張するものであり、これらの内容は本明細書において参照により組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まないドコサヘキサエン酸(DHA)を含む剤形を投与することによって、加齢関連認知低下もしくは軽度認知機能障害を有する被験者における認知機能を改善する方法、および/または心拍数を低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
加齢関連認知障害は、認知症の発症に関する強いリスク因子と考えられる。高齢者人口が増加していること、および効果的な治癒的アプローチがいまだ得られないことから、予防的および緩和的な手段を開発および研究することが主に重要である。
【0004】
以前の研究では、魚およびn-3ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取の増大が加齢関連認知低下に対する防御的役割を果たす可能があると推測されていた。さらなる研究では、脳内の重要な長鎖オメガ-3脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)の血漿中での減少が、健康な高齢被験者、ならびにアルツハイマー病を伴うおよび伴わない、認知障害のある被験者における認知低下と関連することが示された。例えば、Nelson et al., Lipids 32: 11291136 (1997); Knapp et al., N Engl. J Med. 320: 1037-1043 (1989);およびBonaa et al., N. Engl. J Med. 322:795-801 (1990)(非特許文献1〜3)を参照されたい。DHAは、神経および視覚の発達、ならびに多様な脳機能において重要な役割を果たす。血漿DHAの減少は、健康な高齢者およびアルツハイマー患者における認知低下と関連する。例えば、Heude et al., Am. J Clin. Nutr. 77:803-808 (2003); Tully et al., Br. J Nutr. 89:483-490 (2003)(非特許文献4〜5)を参照されたい。より多量のDHA摂取およびより高い血漿DHAレベルは、偶発的なアルツハイマー病(AD)および全認知症の相対的リスクと逆相関する。例えば、Morris et al., Arch. Neurol. 60: 194-200 (2003); Schaefer, et al., Arch. Neurol. 63:1545-1550 (2006)(非特許文献6〜7)を参照されたい。DHAトリグリセリド油の藻類供給源の投与は、アルツハイマー病の加齢APPsw(Tg2576)マウスモデルにおいて不溶性アミロイド(70%)、Aβ42レベル(49%)およびプラーク負荷(40%)を低下させ、3xTg-ADマウスにおいてAβおよびタウレベルを低下させた。例えば、Calon et al., Neuron 43:633-645 (2004); Lim et al., J. Neurosci. 25:3032-40 (2005);およびGreen et al., J. Neurosci. 27:4385-95 (2007)(非特許文献8〜10)を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nelson et al., Lipids 32: 11291136 (1997)
【非特許文献2】Knapp et al., N Engl. J Med. 320: 1037-1043 (1989)
【非特許文献3】Bonaa et al., N. Engl. J Med. 322:795-801 (1990)
【非特許文献4】Heude et al., Am. J Clin. Nutr. 77:803-808 (2003)
【非特許文献5】Tully et al., Br. J Nutr. 89:483-490 (2003)
【非特許文献6】Morris et al., Arch. Neurol. 60: 194-200 (2003)
【非特許文献7】Schaefer, et al., Arch. Neurol. 63:1545-1550 (2006)
【非特許文献8】Calon et al., Neuron 43:633-645 (2004)
【非特許文献9】Lim et al., J. Neurosci. 25:3032-40 (2005)
【非特許文献10】Green et al., J. Neurosci. 27:4385-95 (2007)
【発明の概要】
【0006】
概要
一つの局面において、本開示は、軽度認知障害または加齢関連認知低下を伴う被験者における認知機能の改善方法に関し、該方法は、それを必要とする被験者に1日当たり約0.8g〜約4gのドコサヘキサエン酸(DHA)を投与する段階を含み、該DHAはエイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まず提供される。
【0007】
他の局面において、本開示は、被験者における心拍数を低下させる方法を目的とし、該方法は、それを必要とする被験者に1日当たり約0.8g〜約4gのドコサヘキサエン酸(DHA)を投与する段階を含み、該DHAは、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まずに提供される。いくつかの態様において、心拍数を低下させる処置のための被験者は、随伴性の軽度認知障害または加齢関連認知低下を有してもよく、有さなくてもよい。
【0008】
いくつかの態様において、DHAは、アラキドン酸(ARA)を実質的に含まずに提供される。
【0009】
いくつかの態様において、剤形は、少なくとも1単位用量で被験者に投与される。いくつかの態様において、該単位用量は約0.2g〜約1gのDHAを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】CANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)の24週でのベースラインからの変動および処置によるベースラインPAL総エラー(6つの形状)の散布図を表す。
【図2】CANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)の24週でのベースラインからの変動および処置によるWMS III論理記憶総スコア(即時)の散布図(母集団:改変した包括解析LOCF)を表す。
【図3】CANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)の24週でのベースラインからの変動および処置によるWMS III論理記憶総スコア(遅延)の散布図(母集団:改変した包括解析LOCF)を表す。
【図4】CANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)のベースラインからの変動および処置による24週でのDHA血漿濃度(重量%)のベースラインからのlog変動の散布図(母集団:改変した包括解析LOCF)を表す。
【図5A】DHA投薬計画の一次効果分析を表す表である:24週におけるCANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)のベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。
【図5B】DHA投薬計画の二次効果分析を表す:24週での他の認知および機能試験におけるベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。
【図6】DHA投薬計画の一次効果分析を表す表である:24週におけるCANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)のベースラインからの変動の要約(母集団:プロトコル当たりのLOCF)。
【図7】一次効果分析を表す表である:24週におけるCANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)のベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。
【図8A】二次効果分析を表す:追加の共変量ベースラインWMS III論理記憶総スコアパラメーター(即時または遅延)を用いた訪問によるCANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)のベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。図8A=即時記憶。
【図8B】二次効果分析を表す:追加の共変量ベースラインWMS III論理記憶総スコアパラメーター(即時または遅延)を用いた訪問によるCANTAB対連合学習(PAL)総エラー(6つの形状)のベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。図8B=遅延記憶。
【図9A】二次効果分析を表す:訪問によるCANTAB言語認識記憶(VRM)パラメーターのベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。図9A=VRM自由再生-総正解(即時)。
【図9B】二次効果分析を表す:訪問によるCANTAB言語認識記憶(VRM)パラメーターのベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。図9B=VRM総偽陽性(遅延)。
【図9C】二次効果分析を表す:訪問によるCANTAB言語認識記憶(VRM)パラメーターのベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。図9C=VRM認識-総正解(即時)。
【図9D】二次効果分析を表す:訪問によるCANTAB言語認識記憶(VRM)パラメーターのベースラインからの変動の要約(母集団:改変した包括解析LOCF)。図9D=VRM認識-総正解(遅延)。
【図10】約900mg/d DHAまたはプラセボを24週間に亘って投与された血漿リン脂質脂肪酸レベルIII被験者を表す表である。
【図11】心拍数のベースラインからの変動を包含する、ログ24週DHA血漿濃度(重量%)による選択効果および安全性パラメーターのベースラインからの変動を示す表である。
【図12A】図12Aおよび12Bは、安全性分析を示す表である:訪問によるバイタルサインパラメーターのベースラインからの変動の要約(母集団は安全性が観察された)。図12A=体重および収縮期血圧。
【図12B】図12Aおよび12Bは、安全性分析を示す表である:訪問によるバイタルサインパラメーターのベースラインからの変動の要約(母集団は安全性が観察された)。図12B=拡張期血圧および心拍数。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本開示は、被験者における、記憶、認知機能を改善する方法、および/または心拍数を低下させる方法を提供し、該方法は、それを必要とする被験者に約0.8g〜約4gのDHAを投与する段階を含み、該DHAはEPAを実質的に含まずに提供される。さらに以下で述べられように、いくつかの態様において、本明細書中に提供される方法は、認知機能の改善または認知障害もしくは認知低下の重症度の低減のための軽度認知障害または加齢関連認知低下を伴う被験者の処置に関し、本方法は、それを必要とする被験者に約0.8g〜約4gまでのDHAを投与する段階を含み、該DHAはEPAを実質的に含まずに提供される。
【0012】
また、本明細書において、DHAの投与は、処置された被験者の心拍数を低下させることが示される。従って、いくつかの態様において、DHAの投与を用いて被験者、特に心負荷の減少からの恩恵を受けうるであろう者の心拍数を低下させることもでき、本方法は、それを必要とする被験者に約0.8gから約4gまでのDHAを投与する段階を含み、該DHAはEPAを実質的に含まずに提供される。いくつかの態様において、DHAを、被験者における軽度認知障害または加齢関連認知低下に悩まされる被験者を処置するために使用することができ、同時に被験者における心拍数を低下させるために使用することができ、本方法はそれを必要とする被験者に約0.8gから約4gまでのDHAを投与する段階を含み、該DHAはEPAを実質的に含まずに提供される。
【0013】
従って、いくつかの態様において、本開示は、軽度認知障害または加齢関連認知低下を有する被験者における認知機能を改善しかつ/または心拍数を低下させる方法を提供し、該方法は、それを必要とする被験者に約0.8gから約4gまでのDHAを投与する段階を含み、該DHAはEPAを実質的に含まずに提供される。また、いくつかの態様において、剤形はまた、アラキドン酸(ARA)を実質的に含まない。
【0014】
以下にさらに論じられるように、いくつかの態様において、被験者に投与されるDHAの用量は、1日当たり約0.8g〜約4gである。いくつかの態様において、投与される用量は、1日当たり約0.84g〜約4gのDHAである。いくつかの態様において、投与される用量は、1日当たり約0.84g〜約1.5gのDHAである。いくつかの態様において、投与される用量は、1日当たり約0.84mg〜約1.0gのDHAである。いくつかの態様において、剤形とは、DHAが少なくとも1単位用量で投与される単位用量である。
【0015】
本明細書の方法において、「ドコサヘキサエン酸」および「DHA」は、化学名(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸を有する化合物および、そのあらゆる塩または誘導体を指すために本明細書中で互換的に使用される。従って、DHAは、遊離酸DHAならびに、DHAエステルおよびDHA含有トリグリセリドを含む。DHAは、ω-3ポリ不飽和脂肪酸である。それゆえに、様々な態様において、本方法において使用されるDHAは、リン脂質、トリグリセリド、遊離脂肪酸および/またはエステルの形態であってもよい。
【0016】
いくつかの態様において、DHAはモノ、ジまたはトリグリセリド形態であってもよい。例えば、1、2または3つのDHA分子がモノ、ジまたはトリグリセリド分子であってもよい。
【0017】
いくつかの態様において、DHAはエステルの形態であってもよい。用語「エステル」は、DHA分子のカルボン酸基中の水素の別の置換基との置換を指す。典型的なエステルは、当技術分野において公知のものであり、その検討はHiguchi, T. and V. Stella in Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14, A.C.S. Symposium Series, Bioreversible Carriers in Drug Design, Ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association, Pergamon Press, 1987, and Protective Groups in Organic Chemistry, McOmie ed., Plenum Press, New York, 1973によって提供される。最も一般的なエステルの例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、t-ブチル、ベンジル、ニトロベンジル、メトキシベンジル、ベンズヒドリル、およびトリクロロエチルが含まれる。いくつかの態様において、エステルは、カルボン酸保護エステル基、アラルキルを有するエステル(例えば、ベンジル、フェネチル)、低級アルケニルを有するエステル(例えば、アリル、2-ブテニル)、低級アルコキシ低級アルキルを有するエステル(例えば、メトキシメチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル)、低級アルカノイルオキシ低級アルキルを有するエステル(例えば、アセトキシメチル、ピバロイルオキシメチル、1-ピバロイルオキシエチル)、低級アルコキシカルボニル低級アルキルを有するエステル(例えば、メトキシカルボニルメチル、イソプロポキシカルボニルメチル)、カルボキシ低級アルキルを有するエステル(例えば、カルボキシメチル)、低級アルコキシカルボニルオキシ低級アルキルを有するエステル(例えば、1-エトキシカルボニルオキシ)エチル、1-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル)、カルバモイルオキシ-低級アルキルを有するエステル(例えば、カルバモイルオキシメチル)等である。いくつかの態様において、付加される置換基は、直鎖または環状炭化水素基、例えば、C1-C6アルキル、C1-C6シクロアルキル、C1-C6アルケニル、またはC1-C6アリールエステルである。
【0018】
いくつかの態様において、DHAエステルはアルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステルまたはプロピルエステルである。より具体的には、エステルはエチルエステルである。いくつかの態様において、エステル置換基は、DHAが精製または半精製状態の場合に、DHA遊離酸分子に付加される。あるいは、DHAエステルは、トリグリセリドからエステルへの変換に際して形成される。当業者は、本発明においていくつかの非エステル化DHA分子、例えば、エステル化されていないDHA分子、または開裂された(例えば、加水分解された)DHA架橋が存在すること、を理解することができる。いくつかの態様において、非エステル化DHA分子は、総DHA分子のうちの3%(モル/モル)未満、約2%〜約0.01%(モル/モル)、約1%〜約0.05%(モル/モル)、または約5%〜約0.1%(モル/モル)を構成する。あるいは、いくつかの態様において、DHAは、遊離酸の形態および/または塩形態であってもよい。
【0019】
DHAは、様々な供給源、例えば、油性微生物由来であってもよい。本明細書において使用される「油性微生物」は、その細胞の乾燥重量の20%超を脂質形態で蓄積することができる微生物として定義される。いくつかの態様において、DHAは栄養性または従属栄養性の単細胞生物または多細胞生物(例えば、藻類)に由来する。例えば、DHAは、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)種、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)種、シゾキトリウム(Schizochytrium)種またはこれらの組み合わせ等の海藻類由来であってもよい。従って、いくつかの態様において、DHAは藻類供給源由来である。いくつかの態様において、藻類供給源はクリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)またはシゾキトリウム種である。
【0020】
DHAの供給源は、微生物供給源を包含してもよく、微生物群ストラメノパイル(Stramenopiles)、スラウストキトリド(Thraustochytrids)、およびラビリンツリド(Labrinthulids)を包含する。ストラメノパイルは、微細藻類および藻類様微生物を包含し、以下の微生物のグループを包含する:ハマトレス(Hamatores)、プロテロモナド(Proteromonads)、オパリネス(Opalines)、デベルパエラ(Develpayella)、ジプロフィリス(Diplophrys)、ラビリンツリド、スラウストキトリド、ビオセシド(Biosecids)、オーマイセテス(Oomycetes)、ヒピキトリジオマイセテス(Hypochytridiomycetes)、コマチオン(Commation)、レチキュロスファエラ(Reticulosphaera)、パラゴモナス(Pelagomonas)、ペラゴコカス(Pelagococcus)、オリコラ(Ollicola)、アウレオコカス(Aureococcus)、パルマレス(Parmales)、ジアトムス(Diatoms)、キサントフィテス(Xanthophytes)、ファエロフィテス(Phaeophytes)(褐藻類)、ユースチグマトフィテス(Eustigmatophytes)、ラフィドフィテス(Raphidophytes)、シヌリド(Synurids)、アキソジネス(Axodines)(リドクロムリナーレス(Rhizochromulinaales)、ペジネラレス(Pedinellales)、ジクチオカレス(Dictyochales)を包含する)、クリソメリダレス(Chrysomeridales)、サルシノクリシダレス(Sarcinochrysidales)、ヒドルラレス(Hydrurales)、ヒベルジアレス(Hibberdiales)およびクロムリナレス(Chromulinales)。スラウストキトリドは、シゾキトリウム属(アグレガツム(aggregatum)、リムナセウム(limnaceum)、マングロベイ(mangrovei)、ミヌツム(minutum)、オクトスポルム(octosporum)を包含する種)、トラウストキトリウム属(アルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、キンネイイ(kinnei)、モチバム(motivum)、マルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum)を包含する種)、ウルケニア(Ulkenia)属(アメボイデア(amoeboidea)、ケルゲレンシス(kerguelensis)、ミヌタ(minuta)、プロフンダ(profunda)、ラジアテ(radiate)、サイレンス(sailens)、サルカリアナ(sarkariana)、シゾキトロプス(schizochytrops)、ビスルゲンシス(visurgensis)、ヨルケンシス(yorkensis)を包含する種)、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属(ハリオチジス(haliotidis)、ケンゲレンシス(kerguelensis)、プロフンダ(profunda)、ストッキノイ(stocchinoi)を包含する種)、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)属(マリナム(marinum)を包含する種)、アルトルニア(Althornia)属(クロウチー(crouchii)を包含する種)およびエリナ(Elina)属(マリサルバ(marisalba)、シノリフィカ(sinorifica)を包含する種)を包含する。ラビリンツリドは、ラブリンツラ(Labyrinthula)属(アルゲレンシス(algeriensis)、コエノシスチス(coenocystis)、チャットニー(chattonii)、マクロシスチス(macrocystis)、マクロシスチス・アトランチカ(atlantica)、マクロシスチス・マクロシスチス(macrocystis macrocystis)、マリナ(marina)、ミヌタ(minuta)、ロスコフジエンシス(roscofJensis)、バルカノビー(valkanovii)、ビテリナ(vitellina)、ビテリナ・パシフィカ(pacifica)、ビテリナ・ビテリナ(vitellina vitellina)、ゾプフィ(zopfi)を包含する種)、ラブリントミクサ(Labyrinthomyxa)属(マリナを包含する種)、ラブリンツロイデス(Labyrinthuloides)属(ハリオチジス(haliotidis)、ヨルケンシスを包含する種)、ジプロフリス(Diplophrys)属(アルケリ(archeri)を包含する種)、ピロソルス(Pyrrhosorus)属(マリヌス(marinus)を包含する種)、ソロジプロフリス(Sorodiplophrys)属(ステルコレア(stercorea)を包含する種)およびクラミドミクサ(Chlamydomyxa)属(ラビリンツロイデス(labyrinthuloides)、モンタナ(montana)を包含する種)を包含する(=これらの属の的確な分類学上の配置について、現在一般的な共通認識は存在しない)。
【0021】
いくつかの態様において藻類供給源は、クリプテコディニウム・コーニーである。C. コーニーのサンプルは、メリーランド州、ロックビルにあるAmerican Type Culture Collectionにより寄託され、アクセッション番号40750、30021、30334-30348、30541-30543、30555-30557、30571、30572、30772-30775、30812、40750、50050-50060および50297-50300により譲渡される。
【0022】
本明細書において使用される用語「微生物」または任意の具体的種類の生物は、野生株、突然変異株または組換え型、および増大したレベルのDHAを含有する油を産生することができる生物を包含する。また、より費用効率の高い基質を効率的に使用するように設計されるが、野生型株に匹敵する同量のDHAを産生する微生物も包含される。C. コーニー等の渦鞭毛藻類は以前に記載されている。例えば、米国特許出願第5,492,938号およびHenderson, et al., Phytochemistry 27: 16791683 (1988)を参照されたい。また、DHA産生に有用な生物は、遺伝子組換え生物または他の遺伝的に修飾された生物のあらゆる様式も包含し、例えば、培養発酵中または作物中のいずれかにおいて成長する植物、例えば、トウモロコシ、オオムギ、小麦、米、モロコシ、トウジンビエ、コム(com)、ライ麦、えん麦等の穀物;または豆、大豆、トウガラシ、レタス、サヤエンドウ、アブラナ属の種(例えば、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、菜種およびダイコン)、ニンジン、ビーツ、ナス、ホウレンソウ、キュウリ、カボチャ、メロン、マスクメロン、ヒマワリ、ベニバナ、キャノーラ、亜麻、ピーナッツ、マスタード、菜種、ヒヨコ豆、レンズ豆、シロツメクサ、オリーブ、ヤシ、ルリジサ、マツヨイグサ、亜麻仁およびタバコを包含する。
【0023】
本発明の組成物および方法に好適なDHA含有油の他の供給源は、動物供給源を包含する。動物供給源の例としては、水生動物(例えば、魚、海洋哺乳類および甲殻類(オキアミまたは他のオキアミ目(euphausid))、動物組織(例えば、脳、肝臓、目等)および動物生産物(卵または乳等)が含まれる。従って、いくつかの態様において、本発明の方法は、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まないドコサヘキサエン酸(DHA)を含む剤形を毎日被験者に投与する段階を含み、該DHAは非藻類の供給源(例えば、魚)由来である。
【0024】
DHAは、様々なレベルに精製され得る。DHA精製は、当業者に公知の任意の手段によって達成されることができ、DHAを産生する生物からの全油の抽出を包含してもよい。いくつかの態様において、EPAおよび/またはARAは、その後、例えばクロマトグラフィー法によって全油から除去される。あるいは、DHA精製は、DHAを産生するが、あったとしてもわずかな量のEPAおよび/またはARAしか産生しない生物からの、全油の抽出によって達成されてもよい。
【0025】
本明細書の方法において有用な微生物油は、当技術分野において公知のあらゆる好適な手段によって微生物供給源から回収される。例えば、クロロホルム、ヘキサン、塩化メチレン、メタノール等の溶媒による抽出、または超臨界流体抽出によって回収され得る。あるいは、油は、いずれも2001年1月19日付で出願され、「無溶剤抽出法」と題される米国特許出願第6,750,048号、および国際公開公報第01053512号等(両方とも本明細書中にその全体において参照として組み入れられる)に記載される抽出技術を用いて抽出されてもよい。
【0026】
さらなる抽出および/または精製技術は、国際公開公報第01076715号;国際公開公報第01076385号;米国特許出願公開第20070004678号;米国特許出願公開第20050129739号;米国特許第6,399,803号;および国際公開公報第01051598号において教示され、これらの全ては本明細書中にその全体において参照として組み入れられる。抽出された油を、濃縮油材料のサンプルを産生するために減圧下で蒸発してもよい。脂質回収のためのバイオマスの酵素処置の方法は、「遠心分離力による天然物質混合物からの水溶性ではない天然産物の抽出方法」と題して、国際公開公報第2003092628号;米国特許出願公開第20050170479号;欧州特許出願公開第0776356号および米国特許第5,928,696号に開示され、これらの全ては本明細書中にその全体において参照として組み入れられる。
【0027】
いくつかの態様において、DHAは以下を含む方法を用いて調製され得る:a)アルコールおよび塩基の存在下においてポリ不飽和脂肪酸を含む組成物を反応させてトリグリセリドからポリ不飽和脂肪酸のエステルを産生する段階;ならびにb)該組成物を蒸留してポリ不飽和脂肪酸のエステルを含む画分を回収する段階、ここで、該方法は任意で以下を含む:c)ポリ不飽和脂肪酸のエステルを含む画分と尿素を媒質中で混合する段階;d)媒質を冷却または濃縮して尿素含有沈殿物および液体画分を形成する段階;ならびにe)液体画分から沈殿物を分離する段階。例えば、本明細書中にその全体において参照として組み入れられる、米国特許出願公開第20090023808号を参照されたい。いくつかの態様において、精製処理は、脱酸され、脱色され、および脱臭された油(RBD油)を用いて開始し、その後、アセトンを用いて低温分画を行って濃縮物を提供する段階を包含する。最終DHA産物を産生するため、濃縮物を、塩基触媒エステル交換、蒸留およびシリカ脱酸により得ることもできる。
【0028】
脂肪酸の精製レベルを測定する方法は当技術分野において公知であり、例えば、クロマトグラフィー法(例えば、HPLC銀イオンクロマトグラフィーカラム(ChromSpher 5 Lipids HPLC Column、Chrompack、ラリタン、ニュージャージー州))を包含してもよい。あるいは、精製レベルは、DHAを対応するメチルエステルに変換してまたは変換せずに、ガスクロマトグラフィーによって測定されてもよい。
【0029】
軽度認知低下、加齢関連認知障害を伴う被験者を処置するため、および/または心拍数を低下させるため、様々な投与量のDHAを被験者に投与することができる。用語「1日用量」、「1日の用量レベル」、「1日投与量」または「1日当たりの用量」は、1日当たり(約24時間)に投与されたDHAの総量を指す。従って、例えば、1日用量2gの被験者へのDHAの投与とは、DHAが2gのDHAを含む単一剤形として投与されるか、各500mgのDHAを含む4つの剤形(合計2gのDHA)で投与されるかにかかわらず、被験者が1日当たり合計2gのDHAを受けたことを意味する。いくつかの態様において、DHAの1日量、または1日当たりの用量は、DHA約4g以下、DHA約200mg〜約3.8g、DHA約500mg〜約3.7g、DHA約750mg〜約3.5g、またはDHA約1g〜約2gである。いくつかの態様において、DHAの1日量は、約520mg〜約4g、約540mg〜約4g、約560mg〜約4g、約580mg〜4gである。いくつかの態様において、DHAの1日量は、DHA約3.8g未満、DHA約900mg〜約3.6g、DHA約1.8g〜約2.7gである。いくつかの態様において、DHAの1日量は、DHA約100mg、200mg、300mg、400mg、450mg、500mg、520mg、540mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、1.5g、1.8g、2.0g、2.5g、2.7g、3.0g、3.2g、3.3g、3.4g、3.5g、3.6g、3.7g、3.8g、3.9g、4.0g、4.5g、5.0g、6.0g、6.5g、7g、8g、9g、または10gを含む。
【0030】
いくつかの態様において、DHAの1日量または1日当たりの用量は、約0.8g〜約4gのDHAである。いくつかの態様において、DHAの1日当たりの用量は、約0.84g〜約4gのDHAである。いくつかの態様において、DHAの1日当たりの用量は、約0.84g〜約1.5gのDHAである。いくつかの態様において、DHAの1日当たりの用量は、約0.84mg〜約1.0gのDHAである。
【0031】
いくつかの態様において、DHAは、単一剤形(すなわち、単位用量)、または2個以上の剤形(すなわち、2個以上の単位用量)で投与され得る。本明細書に使用される「単位用量」は、単一剤形(例えば、ゲルカプセル)で被験者に投与されるDHAの量を指す。用語「単位用量」もまた、短時間で飲み込まれる、薬学的に好適な液体、シロップ、飲料または食品の単位を指してもよい。従って、処置される被験者は、少なくとも1日当たり1単位用量を投与される。いくつかの態様において、剤形は、1日当たり一回の適用または複数回の適用で摂取されてもよい。例えば、毎日4個のカプセルが摂取され、各カプセルは500mgのDHAを含む場合、したがって、4個全てのカプセルが1日1回摂取されてもよく、または2個のカプセルが1日2回摂取されてもよく、または6時間毎に1個のカプセルが摂取されてもよい。様々な量のDHAが単位用量中にあってもよい。いくつかの態様において、剤形は、約10g未満のDHA、約5g未満のDHA、約100mg〜約4.8gのDHA、約200mg〜約4.6gのDHA、または約500mg〜約4.0gのDHAを含む。いくつかの態様において、単位用量は、DHA約0.2g〜約2gを含む。いくつかの態様において、単位用量は、DHA約0.2g、0.3g、0.4g、0.45g、0.50g、0.6g、0.7g、0.8g、0.9g、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.8g、2.0g、2.5g、2.7g、3.0g、3.2g、3.3g、3.4g、3.5g、3.6g、3.7g、3.8g、3.9g、4.0g、4.5g、5.0g、6.0g、6.5g、7g、8g、9g、または10gを含む。
【0032】
いくつかの態様において、DHAがエステル、好ましくはアルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、またはこれらの組み合わせ等)の形態である場合、剤形または単位用量は、約430mg〜約480mgのDHAエステル、特にエチルエステルを含んでもよい。いくつかの態様において、剤形または単位用量は、約860mg〜約950mg、または約870mg〜約930mgのDHAエステル、特にエチルエステルを含んでもよい。
【0033】
いくつかの態様において、単位用量は、約0.2〜約2gの総重量を有する。限定ではなく例として、カプセルは総重量約0.2gの藻類油を含有してもよく、該藻類油は該油の総脂肪酸含有量の一定の重量%でおよび/または該油の総重量の既定の重量%でDHAを含有する。いくつかの態様において、単位用量は、約0.20g、0.25g、0.30g、0.35g、0.40g、0.45g、0.50g、0.55g、0.60g、0.65g、0.70g、0.75g、0.80g、0.85g、0.90g、0.95g、1.0g、または1.05gの総重量を有する。
【0034】
いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約30%(w/w)以上、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約30%〜約99.9%(w/w)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約99.9%(w/w)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約60%(w/w)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約50%(w/w)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約37%〜約45%(w/w)、または剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約38%〜約43%(w/w)である。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約35%を超え、約37%、約38%、約39%または約40%(w/w)である。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約30%〜約99.5%(w/w)、または剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約40%〜約65%(w/w)である。
【0035】
いくつかの態様において、DHAは剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約80%(w/w)を超え、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約80%〜99.9%(w/w)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約85%〜約99%(w/w)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約87%〜約98%(w/w)、または剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約90%〜約97%(w/w)である。いくつかの態様において、DHAは剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約95%を超え、約97%、約98%、約99%、または約99.5%(w/w)である。
【0036】
いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約40%〜約45%(w/w)を構成し得る。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約45%(w/w)を構成し得る。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約55%〜約67%(w/w)を構成し得る。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約70%(w/w)を超えて構成し得る。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約85%〜約99.5%(w/w)を構成し得る。
【0037】
いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量(例えば、藻類油)の重量の約35%〜約96%(w/w)を構成し得る。いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量の重量の約38%〜約42%(w/w)を構成し得る。いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量の重量の約35%〜約45%(w/w)を構成し得る。いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量の重量の約55%〜約57%(w/w)を構成し得る。いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量の重量の約85%〜約96%(w/w)を構成し得る。
【0038】
上述のように、本明細書中の態様において、剤形は、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まない。用語「EPA」および「エイコサペンタエン酸」は、その化学名(all Z)5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸として知られる化合物およびそのあらゆる塩または誘導体を指すために、本明細書中において互換的に使用される。従って、用語「EPA」は、遊離酸EPAならびに、EPAアルキルエステルおよびEPA含有トリグリセリドを含む。EPAは、ω-3ポリ不飽和脂肪酸である。本明細書中において使用される用語「EPAを実質的に含まない」は、EPAが剤形の総脂肪酸含有量の約3%(w/w)未満である剤形を指す。いくつかの態様において、剤形中のEPAは、剤形の総脂肪酸含有量の約2%(w/w)未満、剤形の総脂肪酸含有量の約1未満、剤形の総脂肪酸含有量の0.5%(w/w)未満、剤形の総脂肪酸含有量の0.2%(w/w)未満、または剤形の総脂肪酸含有量の0.01%(w/w)未満を構成する。いくつかの態様において、剤形は検出可能な量のEPAを全く有さない。
【0039】
また、本明細書の方法において、剤形はアラキドン酸(ARA)を実質的に含まなくてもよい。用語「ARA」および「アラキドン酸」は、その化学名all-cis-5,8,11,14-エイコサテトラエン酸((5Z,8Z,11Z,14Z)-icosa-5,8,11,14-テトラエン酸とも呼ばれる)として知られる化合物ならびにそのあらゆる塩および誘導体を指すために、本明細書中において互換的に使用される。従って、用語「ARA」は、遊離酸ARAならびに、ARAアルキルエステルおよびARA含有トリグリセリドを含む。ARAはω-6ポリ不飽和脂肪酸である。本明細書において使用される用語「ARAを実質的に含まない」は、ARAが剤形の総脂肪酸含有量の約3%(w/w)未満である剤形を指す。いくつかの態様において、剤形中のARAは、剤形の総脂肪酸含有量の約2%(w/w)未満、剤形の総脂肪酸含有量の1%(w/w)未満、剤形の総脂肪酸含有量の0.5%(w/w)未満、剤形の総脂肪酸含有量の0.2%(w/w)未満、または剤形の総脂肪酸含有量の0.01%(w/w)未満を構成する。いくつかの態様において、剤形は検出可能な量のARAを全く有さない。
【0040】
本明細書の方法において、剤形または単位用量中にさらなる脂肪酸が存在してもよい。これらの脂肪酸は、精製処理の間に除去されなかった脂肪酸(すなわち、生物由来のDHAと共分離された脂肪酸)を包含してもよい。本明細書中に使用される用語「脂肪酸」は、脂肪酸のあらゆる塩または誘導体を包含する。従って、用語「脂肪酸」は、遊離酸脂肪酸ならびに、エステルおよび脂肪酸を含有するトリグリセリドを含む。それゆえに、様々な態様において、脂肪酸はリン脂質、トリグリセリド、遊離脂肪酸および/またはエステルの形態であってもよい。これらの脂肪酸は、様々な濃度で存在してもよい。いくつかの態様において、剤形は0.1%〜60%の以下の脂肪酸の1種または複数種を含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3、22:5w3(DPAn3);(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6、22:5w6(DPAn6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。
【0041】
いくつかの態様において、剤形は20%〜40%の以下の脂肪酸の1種または複数種を含む;(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノレン酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3、22:5w3(DPAn3);(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6、22:5w6(DPAn6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。
【0042】
いくつかの態様において、剤形または単位用量は約0.1%〜約20%(w/w)の以下の脂肪酸の1種または複数種の脂肪酸含有量によって特徴づけられる:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3、22:5w3(DPAn3);(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6、22:5w6(DPAn6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。
【0043】
いくつかの態様において、剤形または単位用量は約1.0%〜約5%(w/w)の以下の脂肪酸の1種または複数種の脂肪酸含有量によって特徴づけられる:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3、22:5w3(DPAn3);(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6、22:5w6(DPAn6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。
【0044】
いくつかの態様において、剤形または単位用量は各1%(w/w)未満の以下の脂肪酸の脂肪酸含有量によって特徴づけられる:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3、22:5w3(DPAn3);(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6、22:5w6(DPAn6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。本明細書中の記載において、用語「未満」は、検出可能な量の既定の脂肪酸を全く包含しない。いくつかの態様において、本明細書中に記載される剤形は、計測可能な量のドコサペンタエン酸22:5n-3、22:5w3(DPAn3);ドコサペンタエン酸22:5n-6、22:5w6(DPAn6);および/または4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)を含有しない。
【0045】
本明細書に記載されるDHA剤形のいくつかの態様において、剤形または単位用量は、重量%総脂肪酸含有量で表される以下の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のカプリン酸(C10:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約6%以下(w/w)のラウリン酸(C12:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約20%以下(w/w)、好ましくは約5〜約20%(w/w)のミリスチン酸(C14:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約20%以下(w/w)、好ましくは約5〜約20%(w/w)のパルミチン酸(C16:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約3%以下(w/w)のパルミトレイン酸(C16:1n-7)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のステアリン酸(C18:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約40%以下(w/w)、好ましくは約10〜約40%(w/w)のオレイン酸(C18:1n-9)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約5%以下(w/w)のリノール酸(C18:2)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のネルボン酸(C24:1)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約3%以下(w/w)のその他の脂肪酸をさらに含んでもよい。前述の特徴を有するDHA剤形または単位用量は、DHASCO(登録商標)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有するクリプテコディニウム・コーニー由来の油を含んでもよい。
【0046】
クリプテコディニウム・コーニー由来のDHA含有油の例は、表1に列挙される成分量によって特徴づけられ、ここで、「最高」とは最大で規定量まで存在させることができる成分量を指す。
【0047】
(表1)

【0048】
本明細書に記載されるDHA剤形のいくつかの態様において、剤形または単位用量は、重量%総脂肪酸含有量として表される、以下の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる。本明細書中に提供される態様は、約12%以下(w/w)、好ましくは約6〜約12%(w/w)のミリスチン酸(C14:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約28%以下(w/w)、好ましくは約18〜約28%(w/w)のパルミチン酸(C16:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のステアリン酸(C18:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約8%以下(w/w)のオレイン酸(C18:1n-9)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のリノール酸(C18:2)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のアラキドン酸(C20:4)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約3%以下(w/w)のエイコサペンタエン酸(C20:5)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約18%以下(w/w)、好ましくは約12〜約18%(w/w)のドコサペンタエン酸(C22:5n-6)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約10%以下(w/w)のその他の脂肪酸をさらに含んでもよい。これらの態様のいくつかにおいて、DPAn6の重量%に対するDHAの重量%の比率は、約2.5〜約2.7である。前述の特徴を有するDHA剤形または単位用量は、Life's DHA(商標)(DHA(商標)-SおよびDHASCO(登録商標)-Sとしても以前に参照される)、多量のDHAと共にドコサペンタエン酸(n-6)(DPAn-6)も含有するスラウストキトリド、シゾキトリウム種由来の油を含んでもよい。
【0049】
シゾキトリウム種由来のDHA含有油の例は、表2に列挙される成分量によって特徴づけられ、ここで、「最高」とは最大で規定量まで存在させることができる成分量を指す。
【0050】
(表2)

【0051】
本明細書に記載されるDHA剤形のいくつかの態様において、剤形または単位用量は、重量%総脂肪酸含有量として表される、以下の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のカプリン酸(C10:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約6%以下(w/w)のラウリン酸(C12:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約20%以下(w/w)、好ましくは約10〜約20%(w/w)のミリスチン酸(C14:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約15%以下(w/w)、好ましくは約5〜約15%(w/w)のパルミチン酸(C16:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約5%以下(w/w)のパルミトレイン酸(C16:1n-7)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のステアリン酸(C18:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約20%以下(w/w)、好ましくは約5%〜約20%のオレイン酸(C18:1n-9)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下のリノール酸(C18:2)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下のネルボン酸(C24:1)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約3%以下のその他の脂肪酸をさらに含んでもよい。前述の特徴を有するDHA剤形または単位用量は、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有するクリプテコディニウム・コーニー由来の油であってもよい。
【0052】
クリプテコディニウム・コーニー由来のDHA含有油の例は、表3に列挙される成分量によって特徴づけられ、ここで、「最高」とは最大で規定量まで存在させることができる成分量を指す。
【0053】
(表3)

【0054】
いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、DPAn6の重量%に対するDHAの重量%の比約2.5〜約2.7で構成される。いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約70%(w/w)超を構成する。前述の特徴を有する剤形または単位用量中のDHAは、DHAエステル、好ましくはアルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、またはこれらの組み合わせ等)であってもよく、スラウストキトリド、シゾキトリウム種からの藻類油由来であってもよい。
【0055】
本明細書に記載されるDHA剤形のいくつかの態様において、剤形または単位用量は、重量%総脂肪酸含有量として表される、以下の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる。本明細書中に提供される態様は、約0.1%以下(w/w)の検出不可能なレベルのミリスチン酸(C14:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約0.5%以下(w/w)のパルミチン酸(C16:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約0.5%以下(w/w)のパルミトレイン酸(C16:1n-7)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約0.5%以下(w/w)または検出不可能なレベルのステアリン酸(C18:0)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約4%以下(w/w)のオレイン酸(C18:1n-9)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、0.1%未満(w/w)のまたは検出不可能なレベルのリノール酸(C18:2)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、0.1%未満(w/w)のまたは検出不可能なレベルのエイコサペンタエン酸(C20:5)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約2%以下(w/w)のドコサペンタノエン酸(22:5n-3)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約1%以下(w/w)のオクタコサオクタエン酸(28:8n-3)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約0.5%以下(w/w)のテトラコサエン酸(24:1ω9)をさらに含んでもよい。本明細書中に提供される態様は、約1%以下(w/w)のその他の脂肪酸をさらに含んでもよい。前述の特徴を有する剤形または単位用量中のDHAは、DHAエステル、好ましくはアルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、またはこれらの組み合わせ等)であってもよく、クリプテコディニウム・コーニーからの藻類油由来であってもよい。
【0056】
DHAがエチルエステルを含む、クリプテコディニウム・コーニーの藻類油由来のDHA含有油は、表4に列挙される成分量によって特徴づけられる。
【0057】
(表4)

ND=検出不可能
【0058】
いくつかの態様において、DHAエステルは単細胞微生物からの無希釈油由来であってもよく、いくつかの態様においては、無希釈DHASCO-T(登録商標)(Martek Bioscience Corporation)由来であってもよい。いくつかの態様において、DHAが得られる油は、植物油産業で一般的な方法を用いて、制御された発酵処理に続く油抽出および精製によって製造された、単細胞微生物油を包含する。特定の態様において、油抽出および精製の工程は、脱酸、脱色および脱臭を包含する。いくつかの態様において、無希釈DHA油は、約40重量%〜約50重量%のDHA(約400〜500mgDHA/g油)を含有する。特定の態様において、無希釈DHA油は、低温分画法によって富化され(約60%w/wのDHAトリグリセリドを含有する油を結果として生じる)、そこでDHA画分は任意にトランスエステル化されてもよく、有効なDHAを産生するためにさらなる後処理過程に供されてもよい。いくつかの態様において、油の後処理過程は、蒸留および/またはシリカ脱酸を含んでもよい。
【0059】
従って、DHAが得られる油を産生するため、特定の局面において、以下の工程が使用され得る:DHA産生微生物の発酵;バイオマスの回収;バイオマスのスプレードライ;バイオマスからの油の抽出;油の脱酸;油の脱色;油の冷却濾過;油の脱臭;および油への抗酸化剤の添加。いくつかの態様において、微生物培養は、より小さな規模の発酵槽から生産サイズへと段階的に移される。いくつかの態様において、予め確立された期間に亘る制御された成長に続き、培養物は遠心分離によって回収され、その後殺菌されて噴霧乾燥される。特定の態様において、乾燥されたバイオマスは、窒素で洗い流され、-20℃で凍結保存される前に包装される。特定の態様において、細胞を破壊して油と細胞デブリを分離させるバッチ処理において、n-ヘキサンまたはイソヘキサンと共にバイオマスを混合することによって、乾燥バイオマスからDHA油を抽出する。特定の態様において、溶媒はその後除去される。
【0060】
いくつかの態様において、粗DHA油は次に脱酸処理を受け、遊離脂肪酸およびリン脂質が除去される。脱酸DHA油を減圧脱色容器へ移し、全ての残存極性化合物および酸化促進金属を除去することを補助しかつ、脂質酸化産物を破壊する。脱酸および脱色したDHA油は、全ての残存する不溶性脂肪、ワックスおよび固形物の除去を促進するために油を冷却および濾過することによって、最終浄化工程を受ける。
【0061】
任意で、DHAを、充填カラム、向流(counter current)スチームストリッピング脱臭剤中、減圧下で脱臭してもよい。アスコルビン酸パルミテートおよびα-トコフェロール等の抗酸化剤を、任意に、油の安定化を補助するために脱臭油に添加してもよい。いくつかの態様において、最終の無希釈DHA油は、さらなる処理まで-20℃で凍結されたまま維持される。例示的な無希釈DHA油は、表5に列挙される成分量によって特徴づけられ、ここで、「最高」とは最大で規定量まで存在させることができる成分量を指す。
【0062】
(表5)無希釈DHA油の特徴

【0063】
いくつかの態様において、DHA油は当技術分野において公知の方法によってDHAエステルに変換される。いくつかの態様において、DHAエステルは、以下の工程によってDHA油から産生される:DHA油の低温分画および濾過(例えば、約60%のトリグリセリド油を得る);直接的トランスエステル化(約60%のDHAエチルエステルを得る);分子蒸留(約88%のDHAエチルエステルを得る);シリカ脱酸(約90%のDHAエチルエステルを得る);および抗酸化剤の添加。
【0064】
いくつかの態様において、低温分画工程は以下のように行われる:約5000mg/g DHAの無希釈DHA油(トリグリセリド)をアセトンと混合し、-80℃の冷却機能を有するタンク中で制御された速度で冷やす。飽和トリグリセリドは溶液から晶出する一方、ポリ不飽和トリグリセリドは約600mg/g DHAで液体状態で維持される。約300mg/gを含有する固体は、約600mg/gのDHAを含有する液体流から20ミクロンのステンレス鋼ふるいにより濾過される。固体流は、その後加熱され(融解され)、回収される。600mg/gのDHA液体流は、加熱および減圧により脱溶媒化(desolventized)され、その後トランスエステル化反応器へ移される。
【0065】
いくつかの態様において、トランスエステル化工程は600mg/gのDHA油に対して行われ、ここで、トランスエステル化は、エタノールおよびナトリウムエトキシドを用いた直接トランスエステル化を介して行われる。トランスエステル化材料(DHA-EE)は、その後、分子蒸留に供され、従って、大部分の他の飽和脂肪酸、ならびに一部のステロールおよび不けん化材料を除去するためにさらに蒸留される(3段階、重、軽、重)。DHA-EEは、シリカカラムを通すことによってさらに脱酸される。
【0066】
本明細書中のいくつかの態様において、剤形は薬学的剤形である。「薬学的に許容される」とは、正当な医学的判断の範囲内において、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、過剰な毒性または他の合併症を伴わない、ヒトおよび動物の組織との接触に好適な組成物を指す。いくつかの態様において、本明細書中の化合物(例えば、DHA)、組成物および剤形は、薬学的に許容される。
【0067】
いくつかの態様において、剤形は、栄養補助食品的剤形である。用語「栄養補助食品」とは、(1)医学的および/または健康上の利益を提供する単独品目の食事または規定食(diet)、あるいは(2)以下の規定食の1種または複数種の材料を有するまたは含有する規定食を追加することが意図される製品である、任意の物質を指す:医学的および/または健康上の利益を提供する、ビタミン、ミネラル、ハーブもしくは他の植物、アミノ酸、日常の総摂取量を増加することによって規定食を追加するためにヒトによって使用される規定食の物質、または濃縮物、代謝物、構成要素、抽出物またはこれらの材料の組み合わせ。医学的および/または健康上の利益とは、認知機能の向上および/または心拍数の低下によって症状のリスクを低減することを含んでもよい。例えば、いくつかの態様において、正常な加齢により、被験者の思い出す能力および学習能力は低下する。DHAは、老化に伴って、学習能力および思い出す能力を緩和、改善および/または増強することができる。
【0068】
DHAは、剤形で製剤化されてもよい。これらの剤形は、錠剤、カプセル、カシェー、ペレット、丸剤、ゲルキャップ、粉末および顆粒;ならびに本明細書に記載される有効量のDHAを含む液剤、懸濁剤、乳剤、被覆粒子、および乾燥粉末を包含するがこれらに限定されない非経口剤形を包含し得るが、これらに限定されない。いくつかの態様において、剤形は、食品中に挿入または混合され得る。粒子を被覆するための様々な物質が当技術分野において公知であり、セルロース誘導体(例えば、微結晶性セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース);ポリアルキレングリコール誘導体(例えば、ポリエチレングリコール);タルク、澱粉、メタクリレート等を包含する。いくつかの態様において、剤形はカプセルであり、ここで、該カプセルはDHAを含む液体、液剤、懸濁剤または乳剤で満たされる。また、有効成分をそのような製剤中に、希釈剤、充填剤、崩壊剤、バインダー、潤滑剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝溶液、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、保存剤、風味剤(flavorant)、矯味剤、甘味料等の薬学的に許容される賦形剤と共に含有してもよいことが、当技術分野において公知である。好適な賦形剤は、例えば植物油(例えば、コム(com)、大豆、ベニバナ、ヒマワリ、またはキャノーラ油)を包含してもよい。いくつかの態様において、保存剤は抗酸化剤(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオグリセロール、チオソルビトール、塩酸システイン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA));アスコルビン酸およびその誘導体(アスコルビン酸パルミテート等);ガリウム酸塩(プロピルガレートおよびガリウム酸);キニン;トコフェロール(α-、β-、γ-およびδ-トコフェロール等);カロテノイド(ルテイン、リコピンおよびβカロテン);ならびにこれらの組み合わせであってもよい。投与用の剤形の作製手段および方法は当技術分野において公知であり、当業者は手引きのために様々な薬理学の参考文献を参照することができる。例えば、"Modern Pharmaceutics," Banker & Rhodes, Informa Healthcare, 4th ed. (2002); "Goodman & Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics "McGraw-Hill, New York, 10th ed. (2001);およびRemingtons's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., 2001を閲覧してもよい。
【0069】
本発明のDHAは、経口的に有効であり、この投与経路は本明細書中に記載される方法において使用され得る。従って、投与形態は、DHAおよび1種または複数種の好適な薬学的に許容される担体を含有する、錠剤、糖衣錠、カプセル、カプレット、ゼラチンカプセルおよび丸剤を包含するが、これらに限定されない。
【0070】
経口投与に関して、DHAは油として投与することもでき、あるいは、これを一種または複数種の薬学的に許容される担体と共に混合することによって容易に製剤化することもできる。薬学的に許容される担体は、当技術分野において周知である。そのような担体によって、処置される被験者による経口摂取用に化合物を錠剤、ゲルキャップ、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤等として製剤化することが可能になる。いくつかの態様において、剤形は、錠剤、ゲルキャップ、丸剤またはカプレットである。経口用途のための薬学的製剤は、固形の賦形剤を添加し、得られた混合物を任意で粉砕し、所望であれば好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理加工して錠剤または糖衣錠のコアを得ることによって、得られてもよい。好適な賦形剤は、乳糖、ショ糖、マンニトール、およびソルビトールを包含するがこれらに限定されない砂糖;トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、植物油(例えば、大豆油)およびポリビニルピロリドン(PVP)等であるがこれらに限定されないセルロース製剤等の充填剤を包含するがこれらに限定されない。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウム等)等であるがこれらに限定されない崩壊剤を添加してもよい。経口的に使用され得る薬学的製剤には、ゼラチン製の押し込み式カプセルならびに、ゼラチン製の柔らかい密閉カプセル、およびグリセロールまたはソルビトール等の可塑剤が含まれるが、これらに限定されない。カプセルシェルは、非動物由来成分、すなわち、カラギーナン、アルギン酸、修飾形態の澱粉、セルロースおよび/または他の多糖等の菜食主義用成分で構成されてもよい。DHAを含むゼラチンカプセルは、「ドコサヘキサエン酸ゲルキャップ」と題した2009年10月1日出願の米国出願第61/247,944号に記載され、この内容は参照によって本明細書中に組み入れられる。経口投与用の全ての製剤は、そのような投与に好適な用量にあるべきである。
【0071】
上述のように、いくつかの態様において、用量は規定食のサプリメントまたは医療食として提供されてもよい。
【0072】
例示的なゲルカプセルは、表6に明記される範囲内の基準値を有する約1gの軟ゼラチンカプセルである。
【0073】
(表6)1グラムDHAエチルエステルゲルカプセルの基準値

【0074】
いくつかの態様において、ゲルカプセルは、カプセル製剤、有効成分、ならびに任意に着色剤および/または抗酸化剤を含む。他の態様において、i)カプセル製剤はゼラチン(ウシ酸皮(bovine acid hide))、グリセリン、および精製水を含む、ii)有効成分はDHA-EEを含む、iii)任意の着色剤は二酸化チタン、FD&C Yellow #5、FD&C Red 40およびこれらの混合物から選択される、ならびにiv)抗酸化剤はアスコルビン酸パルミテートである。いくつかの態様において、原材料はUSP原材料である。
【0075】
例示的なゲルカプセルは、表7に明記される範囲内の基準値を有する約1gの軟ゼラチンカプセルである。
【0076】
(表7)1グラムDHAエチルエステルゲルカプセルの基準値

【0077】
DHAエチルエステル軟ゼラチンカプセルの製造において使用される構成成分、および各構成成分に対する少なくとも一つの対応する機能の例示的なリストが表8に明記される。
【0078】
(表8)1グラムDHAエチルエステル軟ゼラチンカプセルの構成成分のリスト

【0079】
本明細書に記載されるように、いくつかの態様において、本発明は、被験者における認知機能を改善する方法に関する。記憶および認知機能の低下は、ヒトの加齢の正常な結果と考えられる。加齢関連認知低下(ARD)、または「加齢関連記憶障害」(AAMI)は、「自身の若い頃と比較して客観的には記憶低下を有するが、同年齢の者と比較すると正常な認知機能を有する、高齢者」を表現するために使用される用語である。例えば、APA Presidential Task Force on the Assessment of Age-Consistent Memory Decline and Dementia, February 1998を参照されたい。いくつかの態様において、客観的に同定された、加齢過程の結果にとして認知機能低下(年齢を考慮して正常範囲内である)として、ARCDが定義される。個人は、名前もしくは約束を思い出すことに関する問題を訴えることがあり、または複雑な問題の解決において困難を経験することがある。"Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. Fourth ed. Washington, DC: American Psychiatric Association; 1994。加齢関連認知低下は、「より深刻であるかまたは一貫性があり・・、かつ認知症等の症状の初期段階を示す可能性がある」軽度認知障害(MCI)とは異なる。例えば、ラトガーズ大学の記憶障害プロジェクト(www.memorylossonline.com/glossary/aami.html)を参照されたい。MCIは、年齢および教育に対して予想される以上の、認知症ではない被験者における記憶消失を包含する。いくつかの態様において、MCIは、(1)記憶愁訴、(2)正常な日常生活動作、(3)正常な一般的認知機能、(4)年齢の割に異常な記憶、および(5)認知症ではない、との基準を含む、Petersen et al., Arch. Neurol. 56:303-308 (1999)によって判定された被験者において、診断することができる。いくつかの態様において、本発明は、加齢関連認知低下を有し、軽度認知障害、アルツハイマー病、認知症、血管性認知症、混合型認知症、レビー小体型認知症、薬物により発症した認知症、精神錯乱、うつ病、またはこれらの組み合わせに罹患していないまたは診断されていない被験者における、認知機能の改善に関する。
【0080】
いくつかの態様において、MCIは、被験者におけるアミロイドβ(Aβ)、タウタンパク質、プレセニリン-1(PS1)タンパク質、またはこれらの組み合わせの発現レベル上昇および機能不全と関連する。いくつかの態様において、アミロイドβ(Aβ)、タウタンパク質、プレセニリン-1(PS1)タンパク質、またはこれらの組み合わせは、脳脊髄液および/または血漿から単離される。従って、いくつかの態様において、本発明は、加齢関連認知低下を有する被験者において認知機能を改善する方法に向けられ、ここで、該被験者はアミロイドβ(Aβ)、タウタンパク質、プレセニリン-1(PS1)タンパク質、またはこれらの組み合わせの、検出可能な比較的高い発現レベルおよび機能不全を有さない。いくつかの態様において、アミロイドβ(Aβ)、タウタンパク質、またはプレセニリン-1(PS1)タンパク質の発現レベルまたは機能不全は、ADを有する被験者のそれに類似している。
【0081】
いくつかの態様において、本発明は、軽度認知障害を有する被験者における認知低下を改善することに関する。いくつかの態様において、認知低下の原因は未知でありかつ/または診断が困難(または不可能)である可能性があり、あるいは、認知低下はARCDおよびMCIの組み合わせの結果である可能性がある。従って、本明細書の方法は、軽度認知障害および加齢関連認知低下を有する被験者における認知低下を改善することに向けられ得る。
【0082】
いくつかの態様において、本方法は、被験者における心拍数を低下させることに向けられ、該方法は、それを必要とする被験者に、EPAを実質的に含まないドコサヘキサエン酸を含む剤形を投与する段階を含む。用語「心拍数」とは、1分当たりの平均休息時心拍数を指す。休息時、ヒトにおいて、平均的な成人の心臓は、毎分脈拍約60〜80回(bpm)で拍動する。この速度は個人間で変動し、持久運動競技に参加する個人では有意に低い可能性がある。従って、本明細書に定義される用語「心拍数低下」は、DHAの投与前後の被験者の心拍数における相対的な低下を指す。いくつかの態様において、心拍数の低下は、本発明のDHAの投与の1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、または1年後に測定される。心拍数は当業者によって測定されてもよく、手動測定、聴診器、および聴診を包含し得る。いくつかの研究が、心血管疾患の独立したリスク因子として休息時心拍数を同定した。例えば、Cook, S., et al., Eur Heart J 27:2387-2393 (2006)を参照されたい。加えて、心拍数低下は、心筋梗塞後の患者における心臓死の減少と関連する。例えば、Cucherat, M., et al., Eur Heart J 27:590 (2006)を参照されたい。いくつかの態様において、本明細書の方法は、高血圧症を減少させるために使用され得る。特定の理論に縛られるわけではないが、心拍数の低下と同様、血圧の低下は心臓負荷を減少することができ、それによって心臓が行わなければならない仕事量を減少し得る。従って、本明細書中に記載される方法は、全般的な心臓血管系の健康に寄与し得る。特定の理論に縛られるわけではないが、いくつかの態様において、本発明の方法は、(a)一時的な外向き電流、(b)遅延整流性電流、(c)Ca2+-Mg2+-ATPase、(d)Na-Ca2+-交換体、(e)筋小胞体におけるCa2+取り込み、(f)L型Ca2+電流、または(g)これらの組み合わせを正常化する。いくつかの態様において、本発明の方法は、細胞質およびミトコンドリアにおけるCa2+の過剰負荷を予防し、およびまたは、Ca2+の処理(例えば、ジアシルグリセロールおよびIP3)に対する細胞内メッセンジャーの生成を招く膜ホスホリパーゼの活動を低減する。
【0083】
いくつかの態様において、心拍数は、休息状態で測定される。いくつかの態様において、心拍数は、「最高心拍数」(MHR、STDまたはHRmaxとも呼ばれる)で測定され、これは被験者において心臓が1分間に収縮できる最大回数であるか、または被験者が最大の身体的運動の間に達成できる心拍数である。いくつかの態様において、心拍数は、「回復心拍数」で測定される。これは、活動をやめた後の固定(または参照)期間で計測される(典型的には1分間を超えて計測される)心拍数である。
【0084】
本発明のいくつかの態様において、約1カ月間、2カ月間、3カ月間、6カ月間または1年間のDHA投薬計画の投与後の被験者において、心拍数が毎分脈拍約1〜10回、または毎分脈拍約1〜約5回、または毎分脈拍約2〜約4回低下する。
【0085】
いくつかの態様において、心拍数を低下させるための処置について選ばれた被験者が、軽度認知障害または加齢関連認知低下も有してもよい。そのような態様において、心拍数の低下に加えて、認知疾患を処置してもよい。従って、いくつかの態様において、心拍数を低下させるために被験者を処置する方法は、心拍数の低下を必要とする被験者を選択する段階をさらに含んでもよい。選択は、認知障害を評価するため、およびその心拍数を低下させるための処置について患者を評価するための本明細書中に記載の基準に基づいて行うことができる。
【0086】
また、本発明の方法は、正常な加齢に伴う認知機能低下のリスクを下げることにも関する。従って、いくつかの態様において、本方法は、被験者における認知低下を予防することができる。いくつかの態様において、本方法は、加齢関連認知低下と関連する記憶消失のリスクを下げることができ、かつ/または被験者において健康(正常)な認知機能を維持することができる。いくつかの態様において、本方法は、加齢関連認知低下に関連する兆候を既に呈する被験者における記憶機能を改善または促進することを対象とする。
【0087】
また、本発明の方法は、高齢の被験者(例えば、50歳を超える被験者)の記憶試験および/または実行機能測定に関する成績を改善することにも関する。いくつかの態様において、本方法は、被験者における問題解決スキル、計画スキル、集中力、注意を払う能力、および/または反応時間を改善する。いくつかの態様において、本発明の方法は、被験者における健康な視野および/または健康な視力を促進する。また、本方法は、被験者における日常生活スキルを改善し、または被験者の日常課題を行う能力を改善する。
【0088】
また、本発明の方法は、様々な二次測定(例えば、CANTAB VRM、PRM、SOC、SWM、MMSEおよび/または老年うつ病試験)によって測定される関連する認知機能を改善することに関する。これらの認知測定はそれぞれ、本明細書においてさらに記載されるが、いくつかはコンピューター化された神経心理学試験(例えば、Cambridge Cognition Ltd.(ケンブリッジ、英国)によって開発されたCANTAB(登録商標))を参照する。ミニメンタルステート検査(MMSE)は、成人における認知状態の簡潔な定量的測定であり(Folstein et al., Pyschiatr. Res. 12: 189-198 (1975))、Psychological Assessment Resources (PAR) Inc.(ルッツ、フロリダ州)から入手可能である。従って、いくつかの態様において、本発明は、被験者における1種または複数種の二次測定値(例えば、VRMスコア)を改善することに関する。いくつかの態様において、本方法は、個体における認知機能(例えば、記憶機能)を改善することに向けられ、ここで、被験者は初期段階の認知低下を患っているか、またはいかなる認知低下とも診断されていない。
【0089】
いくつかの態様において、認知機能は、作動記憶、記憶保持、注意、および実行機能アッセイを包含するCNATAB認知検査を測定することによって測定される。いくつかの態様において、改善された認知機能は、PAL 6パターンステージで行われたエラーの数によって測定される。いくつかの態様において、認知機能の改善は、WMSIIIの遅延論理記憶試験、CANTAB言語認識記憶試験、CANTABパターン認識試験、CANTAB空間作動記憶試験、ケンブリッジのストッキング(Stockings of Cambridge)試験、またはこれらの組み合わせによって測定される。
【0090】
DHAは、より若い年齢群の平均値未満の論理記憶ベースラインスコアの標準偏差≧1を有する被験者に投与されてもよい。いくつかの態様において、被験者は、50歳以上、または68歳以上である。
【0091】
いくつかの態様において、本明細書の方法におけるDHA投与の効果において様々な因子が役割を果たし得る。例えば、認知症の家族歴は、本発明の方法におけるDHAの効果増大の予測指標として使用されてもよい。従って、いくつかの態様において、本発明は、認知症の家族歴を有する被験者において、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まないドコサヘキサエン酸(DHA)を含む剤形を投与することにより、認知機能を改善しかつ/または心拍数を低下させる方法に関する。いくつかの態様において、併用スタチンを、本発明の方法におけるDHAの効果増大の予測指標として用いてもよい。従って、いくつかの態様において、本発明は、スタチンを併用投与された被験者において、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まないドコサヘキサエン酸(DHA)を含む剤形を投与することにより、認知機能を改善しかつ/または心拍数を低下させる方法に関する。
【0092】
いくつかの態様において、本発明は、被験者における血漿リン脂質DHAレベルを増加、被験者における血漿リン脂質DPAn-6レベルを増加、および/または被験者における血漿リン脂質アラキドン酸(ARA)レベルを増加させる方法に関する。特定の理論に縛られるわけではないが、いくつかの態様において、1種または複数種のリン脂質レベルの変更は、認知機能の改善および/または心拍数の低下をもたらす。これはr=-2.14(p<0.011)とした図10および11において示され、加齢関連認知低下を伴う高齢者において、血漿DHAレベルが増加すると心拍数のベースラインからの変動は下降することが実証されている。
【0093】
認知機能は、本明細書に記載され、当業者に公知の様々な手段によって測定され得る。例えば、実施例1に概説される方法を参照されたい。被験者における認知機能は、DHAを含む剤形を投与されていない被験者と比較して増大し得る。本発明のいくつかの態様において、上記に列挙される任意の技術によって測定される認知機能は、本明細書中に記載されるアッセイのうち1種によって測定して、5%超、または約5%〜約90%、約10%〜約80%、約25%〜約75%、もしくは約30%〜約65%で増大し得る。いくつかの態様において、被験者における認知機能は、DHAおよびEPAを含む剤形(例えば、Lovaza(登録商標))を投与された被験者と比較して増大し得る。これらの例において、上記技術のいずれかによって測定される認知機能は、DHAおよびEPAを投与された被験者と比較して、5%超、または約5%〜約90%、約10%〜約80%、約25%〜約75%、もしくは約30%〜約65%で増大し得る。当業者は、増大の程度は、様々なパラメーター(被験者の当初の認知機能等)に依存し得ることを理解するであろう。例えば、認知機能が低下した被験者において、認知機能増大の程度は、平均的な認知機能を有する被験者と比べてずっと大きくなり得る。また、認知機能増大は、DHA投与の期間および/もしくは量、またはDHA投与の投薬計画に依存し得る。例えば、いくつかの態様において、被験者における認知機能の低下は慢性的であり、従って、DHAは被験者の残りの生涯に亘って投与されるか、または1〜20年、または1、2、5、10もしくは15年間投与される。いくつかの態様において、被験者における認知機能は、本明細書中に列挙される手段のいずれかによって、1、5、10、15または20年までに、5%超、約5%〜約90%、約25%〜約75%、または約30%〜約65%で増大する。
【0094】
いくつかの態様において、認知機能増大は、DHAが投与された被験者の認知機能と、年齢および身体状態がほぼ同じ被験者(すなわち、同等者)とを比較することによって測定される。いくつかの態様において、認知機能増大は、DHAを本発明により1カ月間、2カ月間、3カ月間、6カ月間、1年間または5年間に亘って投与される前後の個人の認知機能を、DHAを投与された被験者について、比較することによって測定される。
【0095】
いくつかの態様において、本発明のDHAの投与は、比較的短い期間(例えば、1週間〜26週間(1週〜26週))で認知機能を増大させる。いくつかの態様において、被験者における認知機能は、26週において5%超、約5%〜約90%、約25%〜約75%、または約30%〜約65%で増大する。いくつかの態様において、DHAは1週間〜6週間(1週〜6週)に亘って毎日投与される。いくつかの態様において、被験者における認知機能は、6週において5%超、約5%〜約90%、約25%〜約75%、または約30%〜約65%で増大する。いくつかの態様において、DHAは2週間〜4週間(2週〜6週)に亘って毎日投与される。いくつかの態様において、被験者における認知機能は、6週において5%超、約5%〜約90%、約25%〜約75%、または約30%〜約65%で増大する。いくつかの態様において、DHAは28日間(28日)に亘って毎日投与される。いくつかの態様において、被験者における認知機能は、28日において5%超、約5%〜約90%、約25%〜約75%、または約30%〜約65%で増大する。
【0096】
本明細書において使用される用語「処置する」および「処置」は、治療的処置および防止または予防手段の両方を指し、ここで、望ましくない健康状態、障害または疾患を防止するかまたは減速させる(和らげる)ことを目的とするか、または有益なもしくは所望の臨床的結果を得ることを目的とする。本明細書における目的について、有益なもしくは所望の臨床的結果は、認知機能低下(すなわち、認知の老化)に関連する兆候の緩和;認知機能低下と関連する症状の程度の低下;認知機能低下に関連する症状、障害または疾患の状態の安定化(すなわち、悪化させない);検出可能か検出不可能かに関わらず、認知機能低下に関連する症状、障害または疾患の発症の遅延または減速;症状、障害または疾患状態の回復、認知機能低下に関連する症状、障害または疾患の軽減(部分的または全体的のいずれも);あるいは認知機能低下に関連する症状、障害または疾患の促進、沈静、増強または改善を包含するが、これらに限定されない。処置が心拍数低下のためである場合、有益なもしくは所望の臨床的結果は、心臓血管疾患リスクの低下、高血圧症の減少(血圧の低下)、心筋梗塞の発生率の低下、および/または心臓血管の拍出量の増加を包含するが、これらに限定されない。処置は、過剰なレベルの副作用を伴うことなく、臨床的に有意な反応を引き出すことを包含する。
【0097】
認知症、アルツハイマー病、軽度認知障害、加齢関連認知低下または加齢関連記憶障害、および未解明の記憶消失は、全て認知機能低下と関連し得る。従って、いくつかの態様において、本発明は、本発明のDHA用量の投与を含む、認知症、アルツハイマー病、軽度認知障害、加齢関連認知低下または加齢関連記憶障害、前駆アルツハイマー病、および未解明の記憶消失の発症を低減、予防または減速する方法に関する。用語「予防」とは、認知低下の結果として生じるであろう疾患、障害または疾患もしくは症状の兆候を停止もしくは妨害することを意味し得る。従って、文節「加齢関連認知低下を有する被験者における認知機能低下の予防」は、老化するにつれて個人において自然に生じるであろう認知低下の進行を停止または妨害することを包含するであろう。
【0098】
用語「被験者」は、ヒトまたは霊長類(類人猿、サル、オランウータン、ヒヒ、テナガザル、およびチンパンジー等)等の哺乳類を指す。被験者は、ヒトまたは非ヒトであってもよい。被験者はあらゆる年齢であってもよい。例えば、いくつかの態様において、被験者は、約50歳を超える、約55歳を超える、約60歳を超える、約65歳を超える、約68歳を超える、約70歳を超える、約72歳を超える、または約75歳を超えるヒトである。いくつかの態様において、被験者は、成人男性または成人女性のいずれでもよい。
【0099】
いくつかの態様において、被験者とは「それを必要とする被験者」である。それを必要とする被験者とは、処置が望ましい個体を指し、すなわち、加齢関連認知低下の発症のリスクを有する被験者、認知機能低下を患っている被験者、および/または心拍数低下を必要とする被験者である。また、それを必要とする被験者とは、軽度認知障害、認知症、アルツハイマー病、および未解明の記憶消失の影響を提示する被験者をも包含し得る。
【0100】
本明細書の態様において、剤形は、例として非経口、皮下、静脈内(急速投与または点滴)、筋肉内、または腹腔内経路を包含するがこれらに限定されない様々な経路によって、投与され得る。これらの投与様式のための剤形は、液体溶液または懸濁液のいずれか、注射前の溶液または懸濁液に好適な固体形態、または乳濁液としての従来形態を包含し得る。いくつかの態様において、投与は、適正物質(good substance)中に剤形を配置することによって起こり得る。
【0101】
いくつかの態様において、本明細書中に記載される方法によるDHAの投与は、本発明のDHAがEPAを実質的に含まないにもかかわらず、DHAとEPAを含む組成物(例えば、Lovaza(登録商標)(Reliant Pharmaceuticlas))のものに類似したDHAの薬物動態学的プロファイルを達成し得る。例えば、DHAの吸収、膜への取り込み、エステラーゼによる加水分解、腸細胞中への吸収、カイロミクロン中への導入、超低密度リポタンパク質(VLDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、および高密度リポタンパク質(HDL)は、DHAおよびEPAを含む組成物により観察されるものに類似し得る。
【0102】
逆変換(retroconversion)は、長鎖脂肪酸が、該分子からの2炭素単位の漸増除去を通して、その関連する単鎖前駆脂肪酸へと変換される、酵素過程である。DHAは、EPAおよびDPAn-3に逆変換される。例えば、Brossard et al., Am. J Clin. Nutr. 64:577-86 (1996)を参照されたい。いくつかの態様において、本発明のDHAは、DHA遊離酸および/または塩形態、またはDHAトリグリセリド形態と比較して小さな程度に(または低い速度で)逆変換される。例えば、いくつかの態様において、本発明のDHAを用いる方法においては、DHA遊離酸および/または塩形態、またはDHAトリグリセリド形態を用いる方法に比べ、より少ないEPAおよび/またはDPAn-3が産生される。
【0103】
本明細書の態様において、DHA剤形の投与は、所望の投与用量を達成するために様々な投薬計画を用いて行われる。いくつかの態様において、一単位用量等の剤形(例えば、ゼラチンカプセル)は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、1日8回、1日9回、1日10回、1日11回、または1日12回投与される。例えば、1日当たり約0.86gの投与用量を達成するため、約1gの1回単位用量(ここで、単位用量中のDHA量は約86%w/wである)を1日1回投与してもよい。あるいは、約430mgのDHAを含む1回単位用量を1日2回投与してもよく、また、あるいは、同一の投与用量を達成するために1日1回、2種類の同一単位用量を投与してもよい。いくつかの態様において、DHAは1日3回(例えば、各食事と共に)投与される。いくつかの態様において、DHA剤形の投与は毎日行われ、また、あるいは、1日おきに投与される(隔日)。
【0104】
処置の期間は、例として、被験者の年齢、障害の重症度、および診断された障害に対する処置か、予防的効果のための処置であるかのいずれかに依存して変化し得るが、これらに限定されない。従って、いくつかの対応において、DHA剤形の投与は、少なくとも28日間、少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、または少なくとも9カ月間に亘って行われる。また、該方法は、より短い期間(例えば、少なくとも、連続する7、14、21、または28日間に亘って毎日1回)に亘るDHAの投与も包含する。いくつかの態様において、DHAによる処置の期間は、より長くなってもよい(例えば、少なくとも1年;1〜5年、1〜10年、1〜20年、5〜10年、または5〜20年間に亘る1日当たりの規定用量でのDHAの投与)。いくつかの態様において、処置は、処方医師によって推奨されるように継続的に維持される。いくつかの態様において、DHAによる処置は、予め選択された標的レベルまで認知機能が回復するまで行われ、標的レベルは医学的専門家に決定される。いくつかの態様において、DHA剤形の投与は、認知機能が正常または境界レベル、または予め選択された標的レベルに到達した後であっても継続する。いくつかの態様において、DHAの投与は、認知機能が低下する前の予防的手段として投与される。
【0105】
いくつかの態様において、本発明は、被験者における認知機能を増大させる方法を対象とし、該方法は、EPAを実質的に含まない約200mg〜約4gのDHAを含む剤形を被験者に毎日投与する段階を含み、ここで、剤形は連続して28〜365日間、または連続して56〜185日間に亘って投与される。
【0106】
いくつかの態様において、DHAは継続的に投与される。「投与」と関連して本明細書中で使用される用語「継続的」または「連続的」は、投与頻度が少なくとも1日1回であることを意味する。しかしながら、本明細書中に規定される用量レベルが達成される限り、投与頻度は、1日1回を超えてもよく(例えば、1日2回またはさらに3回)、これも「継続的」または「連続的」であることに留意される。
【0107】
いくつかの態様において、DHA剤形の投与は、認知機能低下を処置するために使用される他の投薬計画(すなわち、非DHA投薬計画)と組み合わされてもよい。例えば、本発明の方法は、認知機能を改善するための食餌療法(例えば、高オメガ-3PUFA食等)、運動療法、減量療法、または禁煙療法と組み合わされてもよい。また、本発明の方法は、被験者における認知機能を改善するために他の薬学的製品(例えば、承認されたアルツハイマー病治療薬)と組み合わせて使用されてもよい。
【0108】
いくつかの態様において、DHA剤形の投与は、高血圧、高コレステロールレベル、心疾患またはこれらの組み合わせを処置するために使用される他の療法(すなわち、非DHA投薬計画)と組み合わされてもよい。例えば、本発明の方法は、例えば、抗不整脈剤、抗高血圧剤、カルシウムチャネルブロッカー、心筋保護液、強心剤、線維素溶解剤、血管収縮剤、血管拡張剤、酸化窒素供与体、カリウムチャネルブロッカー、ナトリウムチャネルブロッカー、スタチン;フィブラート系薬剤、ace阻害剤、またはナトリウム利尿薬(naturiuretic agent)を包含する他の治療的心臓血管剤と組み合わせてもよい。
【0109】
スタチンは、アトルバスタチン、メバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンおよびフルバスタチンを包含する。他の有用なフィブラート系薬剤の例は、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、エトフィリン、クロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、ピリフィブラート、シンフィブラートおよびトコフィブラートであり;特に有用なものは、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、ベザフィブラート、クロフィブラート、シプロフィブラート、およびフェノフィブリン酸等のあらゆる関連フィブリン酸を包含するそれらの有効代謝物および類似体である。
【0110】
抗不整脈剤は、しばしば、その作用機序(I型、ナトリウムチャネル遮断;II型、β-アドレナリン遮断;III型、再分極延長;およびIV型、カルシウムチャネル遮断)に従って4つの主要な群に体系化され、リドカイン、モリシジン、メキシレチン、トカミド(tocamide)、プロカインアミド、エンカミド(encamide)、フレカイニド(flecanide)、トカミド(tocamide)、フェニロイン(phenyloin)、プロパフェノン、キニジン、ジソピラミド、フレカミド(flecamide)、プロプラノロール、エスモロール、アミオダロン、アルチリド、ブレチリウム、クロフィリウム、イソブチリド(isobutilide)、ソタロール、アジミリド、ドフェチリド、ドロネダロン、エリセンチリド、イブチリド、テジサミル(tedisamil)、トレセチリド(trecetilide)、ベラパミル、ジルタイゼム(diltaizem)、ジギタリス、アデノシン、塩化ニッケル、およびマグネシウムイオンを包含し得る。
【0111】
他の心臓血管剤の例は、血管拡張剤、例えば、ヒドラジン;アンギオテンシン変換酵素阻害剤;抗狭心症薬;抗不整脈剤;強心配糖体(cardioglycoside)、例えば、ジゴキシンおよびジギトキシン;カルシウムアンタゴニスト、例えば、ベラパミルおよびネフェジピン;および利尿薬を包含する。
【0112】
他の例示的な心臓血管剤は、例として、アスピリンまたはインドメタシン等のシクロオキシゲナーゼ阻害剤、クロピドグレル、チクロピジン(ticlopidene)またはアスピリン等のペレット凝集阻害剤、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、フルメチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチルクロルチアジド(methylchlorthiazide)、トリクロルメチアジド、ポリチアジドまたはベンズチアジド等のフィブリノゲンアンタゴニストまたは利尿薬、カプトプリル、ゾフェノプリル、ホシノプリル、エナラプリル、セラノプリル、シラザプリル(cilazopril)、デラプリル、ペントプリル、キナプリル、ラミプリル、リジノプリル、およびそのような化合物の塩等のアンギオテンシン変換酵素阻害剤、ロサルタン、イルベサルタンまたはバルサルタン等のアンギオテンシンIIアンタゴニスト、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、組換えtPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、およびアニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化剤複合体(APSAC、Eminase、Beecham Laboratories)等の血栓溶解剤、ベラパミル、ネフェジピンまたはジルチアゼム等のカルシウムチャネルブロッキング剤、イフェトロバン(ifetroban)、プロスタサイクリン類縁体等のトロンボキサン受容体アンタゴニスト、またはホスホジエステラーゼ阻害剤を包含するが、これらに限定されない。
【0113】
非DHA剤形は、同一の剤形で投与されてもよく、または、DHAと同時であるが別々の剤形で投与されてもよい。いくつかの態様において、追加の非DHA剤形は、DHAを含む剤形と異なる時間に投与されてもよい(例えば、追加の非DHA剤形が朝に投与され、DHAを含む剤形が夕方に投与される)。
【0114】
いくつかの態様において、本発明のDHAは非DHA投薬計画の前に投与される。例えば、認知機能を増大させるためにDHA剤形が最初に使用され、続いて、予め選択された認知機能レベルを維持する(またはさらに低下させる)ために非DHA投薬計画を投与する。あるいは、いくつかの態様において、非DHA投薬計画を、被験者における認知機能を予め選択された標的レベルまで増大させるために最初に投与し、その後、本発明のDHA剤形を、被験者における認知機能を維持(またはさらに低下させる)ために投与する。従って、いくつかの態様において、本発明は、本明細書中に記載されるDHA剤形を用いた認知機能を維持する方法に向けられ、該方法は、(1)認知機能が予め選択されたレベルに到達するまで、非DHA投薬計画を、被験者における認知機能を増大させるために被験者に投与する段階、および(2)本発明のDHA剤形を、予め選択された認知機能レベルを維持するために投与する段階を含む。
【0115】
いくつかの態様において、本発明の方法は、当業者に公知の他のトリグリセリド低下方法と併せて、EPAを実質的に含まないDHAを含む剤形を被験者に毎日投与する段階を含む。例えば、本発明の方法は、胆汁酸結合樹脂(例えば、コレスチラミンおよびコレスチポール;ナイアシン;フィブリン酸誘導体(例えば、ゲムフィブロジル(gemfibozil)およびクロフィブラート);スタチン(例えば、ロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチンおよびシムバスタチン);ならびにこれらの組み合わせ等であるが、これらに限定されない、1種または複数種の追加のトリグリセリド低下剤と共に、EPAを実質的に含まないDHAを含む剤形を被験者に毎日投与する段階を含んでもよい。追加のトリグリセリド低下剤は、同一の剤形で投与されてもよく、または、DHAと同時であるが別々の剤形で投与されてもよい。いくつかの態様において、追加のトリグリセリド低下剤は、DHAを含む剤形と異なる時間に投与されてもよい(例えば、トリグリセリド低下剤が朝に投与され、DHAを含む剤形が夕方に投与される)。いくつかの態様において、本発明の方法は、食餌療法の変更(例えば、低総脂肪食、低飽和脂肪食、低食餌性コレステロール食、および/または澱粉および繊維増加食)と併せ、EPAを実質的に含まないDHAを含む剤形を被験者に毎日投与する段階を含んでもよい。いくつかの態様において、本発明の方法は、運動療法の変更、例えば少なくとも3〜5回/週の少なくとも20分間の有酸素運動の追加と併せ、EPAを実質的に含まないDHAを含む剤形を被験者に毎日投与する段階を含んでもよい。いくつかの態様において、本発明の方法は、減量療法と併せ、EPAを実質的に含まないDHAを含む剤形を被験者に毎日投与する段階を含んでもよい。
【0116】
本発明は、本明細書中に記載される方法に従って投与される1種または複数種の剤形を含有するキットまたはパッケージに関する。キットまたはパッケージは、一つの剤形、または2つ以上の剤形(すなわち、複数の剤形)を含有してもよい。複数の剤形がキットまたはパッケージ中に存在する場合、複数の剤形は、連続的な投与のため任意に配列されてもよい。キットは、慢性症状を有しかつ本発明のDHAの長期投与を必要とする被験者への簡便な投与を提供するのに十分な数の剤形を含有してもよい。各剤形は、約100mg〜約4gのDHA、約500mg〜約3gのDHA、または約1g〜約2gのDHAを含有し、連続した日に摂取されることが意図されてもよい。例えば、いくつかの態様において、キットは、1、2、3または4カ月に亘るDHAの毎日の投与に十分な数の剤形を提供する。本発明のいくつかの態様において、キットは、より短期間の投与のための剤形を含み、例えば、キットは、経口投与用の約28〜31日またはそれ以上の剤形を含有することができ、各剤形は、約500mg〜約4gのDHAを含有し、連続した日に摂取されることが意図される。
【0117】
本発明のキットは、任意に、キットの剤形に関連する指示書を含有してもよい。そのような指示書は、薬学製品の製造、使用または販売を管理する行政機関によって規定された形態であってもよく、その通知は、症状または障害の処置のためのヒトへの投与用の製造、使用または販売の機関による承認を示す。指示書は、本発明の方法によるキットにおける該剤形の使用に関する情報を伝達するいかなる形態であってもよい。例えば、指示書は、印刷物の形態、または予め記録されたメディア装置の形態であってもよい。
【0118】
患者の試験過程で、医療専門家は、本発明の方法のうち一つの投与が患者に適していることを判定してもよく、また、医療従事者が、患者の状態(例えば、患者が認知症またはアルツハイマー病に罹患している可能性がある)が本発明の方法のうちの一つの投与によって改善され得ると判定してもよい。何らかのDHA投薬計画を処方する前に、医療従事者は、例えば該投薬計画に伴う様々なリスクおよび利益について、患者に助言を行うことができる。患者には、該投薬計画に伴う全ての既知のおよび疑われるリスクの全開示が提供され得る。そのような助言は、言葉と同様に、書面で提供されてもよい。いくつかの態様において、医療従事者は、製品情報、教材等の投薬計画に関する文献材料を患者に提供してもよい。
【0119】
用語「消費者情報」は、英語テキスト、非英語テキスト、視覚イメージ、チャート、電話記録、ウェブサイト、および実際の顧客サービス担当者への接続を包含するが、これらに限定されない。いくつかの態様において、消費者情報は、本発明の方法によるDHA剤形の使用のための指示、使用の適切な年齢、適応、禁忌、適切な投薬、警告、電話番号、またはウェブサイトアドレスを提供するであろう。いくつかの態様において、本方法は、本発明の方法による開示された投薬計画の使用に関する消費者の質問に答える立場にある関係者への専門情報を提供する段階をさらに含む。用語「専門情報」は、医療専門家が消費者の質問に答えることを可能にするために設計され、本発明の方法により投与された場合の投薬計画に関する情報を包含するが、これに限定されない。
【0120】
「医療専門家」とは、例えば、医療従事者、医療従事者助手、看護実施者、薬剤師および顧客サービス担当者を包含する。本明細書中に記載される全ての様々な局面、態様および選択肢が、任意および全ての変化において組み合わされてもよい。
【0121】
以下の実施例は、本発明の組成物および方法の例であるが本発明を限定するものではない。通常、当業者が遭遇する、かつ自明な様々な条件およびパラメーターの他の好適な改変および適合は、本発明の精神および範囲内である。従って、本発明の広さおよび範囲は、上記記載の例示的態様によって限定されるべきではないが、以下の請求項およびそれらの等価物との関連のみを定義するべきである。
【実施例】
【0122】
実施例1
記憶、注意および実行機能の認知測定値が改善されたかどうかを測定するため、ケンブリッジ神経心理学検査自動バッテリー(CANTAB)認知バッテリーを利用して、軽度記憶愁訴を有する健康な高齢被験者において、DHA(約900mg/日)対プラセボの効果を試験した。本研究の一つの目的は、主観的な記憶愁訴を有する健康な高齢者における認知機能(すなわち、作動記憶、記憶保持、注意、処理速度および実行機能)の改善についてのプラセボに対するDHA投与の効果を測定することであった。本研究の別の目的は、視力、血漿リン脂質レベルに対するDHAの効果を測定すること、ならびに投与されたDHA用量の安全性および忍容性を評価することを包含する。
【0123】
本研究は、主観的記憶愁訴を有する健康な高齢者における認知機能に対するDHAの経口用量の効果を評価するための、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行研究であった。本研究は、スクリーニング/ベースライン期間、および24週処置期間からなった。
【0124】
適確な男性または女性の被験者を無作為に2つの処置群(DHA群およびプラセボ群)のいずれかに分けた。
【0125】
DHA群には、それぞれ藻類油(DHASCO(登録商標)-S油、40%DHA)由来のトリグリセリドとして約300mgのDHAを含有する、800mgの軟ゼラチンカプセルが提供された。40%のDHAに加え、DHASCO(登録商標)-S油は、40〜60%の飽和、モノおよびポリ不飽和脂肪酸、400ppmのアスコルビン酸パルミテート、2000ppmの混合トコフェロール、2000ppmのローズマリー抽出物、3%のオレンジ着香料、および1%の天然マスキング剤を含有するように製剤化された。被験者は、3個の800mgカプセル/日、すなわち約900mgDHA/日を接種するように指示された。
【0126】
プラセボ群は、48%のコム油、48%の大豆油、3%のオレンジ着香料および1%の天然マスキング剤を含有する800mgの軟ゼラチンカプセルが提供された。該カプセルも、400ppmのアスコルビン酸パルミテート、2000ppmの混合トコフェロール、および2000ppmのローズマリー抽出物を含有するように製剤化された。DHA群と同様、被験者は3個の800mgカプセル/日を接種するように指示された。
【0127】
各群には、ボトルに入れた該カプセルが提供された。各ボトルには、1カ月量のカプセルを含めた。被験者は、研究期間(24週間)にわたり連続して、すなわち毎日、かつ、毎日同じ時間に、食物と共にカプセルを接種するように指示され、全ての査定が完了した後、ベースライン訪問当日に開始した。被験者は、研究の間、普段の食餌を変更しないように指示された。オメガ-3脂肪酸の食餌摂取および投与計画のコンプライアンスを査定するため、DHA食物頻度アンケートを研究を通して管理した。
【0128】
被験者を、ベースライン、1カ月、3カ月および6カ月(「処置効果の査定の終わり」)で評価した。主観的記憶愁訴があり、標準偏差が1以上で、より若い集団の平均値を下回る論理記憶(WMS III)試験スクリーニング生スコアを有する、被験者を採用した。いくつかの研究において、これは加齢関連認知低下として知られ、また、加齢関連記憶障害(AAMI)、または年齢相応の記憶低下としても知られている。合計約485名の被験者の登録を得た。
【0129】
スクリーニング期間の間、被験者を、ウェスラー記憶検査(WMS III)の論理記憶サブテストのスクリーニングを包含する、具体的な包含基準または排除基準に基づいて選択した。例えば、Wechsler, D., Administration and Scoring Manual., 3rd ed. San Antonio, TX: Harcourt Brace & Company, 1997を参照されたい。論理記憶サブテストに加え、ミニメンタルステート検査(MMSE)、老年うつ病スケールおよび視力試験、ならびにDHA食物頻度アンケートを、スクリーニングにおいて全ての被験者に行った。例えば、Folstein et al., Pyschiatr. Res. 12: 189-198 (1975); Yesavage J., et al., J Psychiatr. Res. 1:37-49 (1982)を参照されたい。スクリーニング基準を満たす適確な被験者には、コンピューター化された認知バッテリーであるCANTABによるベースライン前のトレーニングセッションが与えられた。
【0130】
CANTBによるベースライン前の試験は、トレーニングセッションとして役立ち、かつ被験者をコンピューターシステムに慣らすために行われた。Morris R, et al., Computer Aided Assessment of Dementia: Comparative Studies of Neuropsychological Deficits in Alzheimer Type Dementia and Parkinson's Disease (1987)。このベースライン前の試験の7(+/-2)日後、ベースラインの実験室測定、バイタルサインおよびCANTAB認知検査を包含するベースライン測定を行った。ベースラインセッションにおいて、被験者は、年齢(55〜69;≧70)に基づいて階層化され、そして無作為に約900mgのDHAまたはプラセボを受けるように指定された。無作為に指定されたDHAまたはプラセボのいずれかのカプセルを、ベースライン訪問の終わりに各被験者に与えた。被験者は、次の24週間、毎日3カプセルを摂取するように指示され、最初に3カ月に値するカプセルが供給された。4週目の最後に、被験者はコンプライアンスおよび安全性評価のために開催地に帰還した。被験者は、安全性および効果の評価のために12週目に開催地に帰還し、最終3カ月に値するカプセルが再度供給された。被験者は、「調査終了」時点の効果および安全性評価のため24週目に開催地に帰還した。コンプライアンスを、食物頻度アンケート、戻されたカプセル数、および血漿DHAレベル(24週に採取)により評価した。CANTAB認知検査は、記憶、学習、注意、問題解決および実行機能(すなわち、計画および組織化スキル(organizational skill))からなる。例えば、Fowler et al., Applied Neuropsychology 2:72-78 (1995); Robbins et al., Dementia 5:266-281 (1994);およびDe Luca et al., J Clinical and Experimental Neuropsychology 25:242-254 (2003)を参照されたい。
【0131】
プッシュ式スクリーンを用いてコンピューター化検査を操作し、反応を記録し、コンピューターデータベースに保存した。データを、目的および解析の変数についてフォーマット化された中央データベースに送信した。ベースライン、12週および24週のCANTAB評価を、分析のため各被験者について得た。CANTABの使用説明書およびセットアップは、被験者の処置を知らない試験官によって管理された。
【0132】
本研究に適確な被験者は以下に列挙される算入基準を満たした。
・男性または女性、かつ少なくとも55歳である
・主観的記憶愁訴、および、標準偏差1以上かつより若い集団の平均値未満の、論理記憶サブテスト(WMS IIIの)生スコア(≦28即時再生カットオフ総スコア;または≦15遅延再生カットオフ総スコア)を有した
・研究の要件を理解する能力を有し、書面のインフォームドコンセント(施設内倫理委員会[IRE]により承認されたインフォームドコンセント用紙上の署名によって証明される)を提供する意志があり、研究の制限事項の遵守および必要な評価のための帰還に同意する意志があった
・禁止されていない医薬を摂取している場合、安定な投薬計画にあった(3カ月前以内)
【0133】
研究への参加に適確となるよう、被験者は以下に列挙されるいかなる除外基準にも該当してはならない。
・スクリーニングMMSE<26を有した
・スクリーニング2カ月前以内にDHA食物頻度アンケートに基づく評価で200mg/日を超えるDHAを摂取した
・スクリーニング2カ月前以内に栄養魚油、アマニ油、オメガ-3サプリメント、またはフペルジンを使用した
・スクリーニング2カ月前以内にアセチルコリンエステラーゼ阻害剤またはメマンチンを使用した
・強力な抗精神病薬または強力な抗鬱薬を使用した
・ゼニカル(登録商標)(オルリスタット)等のリパーゼ阻害剤を使用した
・虚血性発作、意識喪失を伴う頭部外傷、てんかん、精神障害、血管認知症、うつ病(老人性うつ病[15項目]>5)、心筋梗塞(1年以内)、非管理型糖尿病または失明を包含する重大な医学的症状の病歴
・過去6カ月以内に大手術を経験
・薬物乱用および/またはアルコール乱用、あるいは5年以内の病歴
・過去30日以内の何らかの治験製品の投与
・カプセルを飲み込むことができない
【0134】
ベースラインおよび24週、または「調査終了」の訪問時に、リン脂質レベルを測定するために被験者の血液試料を回収した。試料を10mlバキュテナーEDTAチューブ中に回収し、3000rpmで遠心分離し、分析まで血漿を-80℃で貯蔵した。血漿リン脂質脂肪酸を以前に記載されたように分析した。例えば、Arterburn, L.M., et al., Lipids 42: 1011-1024 (2007)を参照されたい。脂肪酸プロフィールは、脂肪酸の総数のパーセント(重量パーセント)として表された。
【0135】
処置の24週目における対連合学習(PAL)試験に対するCANTAB試験スコアの一次効果エンドポイントは、一次効果の結果として使用された。一次分析を、ベースラインスコア、教育、開催地および年齢の階層化因子について調整した。二次分析は、併用スタチン薬物療法の追加因子を伴う上記モデルに基づいた。CANTABのPALサブテストは、エピソード記憶の変動を検出する視空間の手がかり再生記憶の試験である。例えば、de Jager et al., Psychological Medicine 32:483-491(2002)を参照されたい。PAL等のエピソード記憶の試験は、長期的な研究およびMCI患者においてアルツハイマー病の初期段階を高度に予測することが示されており、リスクを有する個体を同定する際に非常に有効である可能性がある。例えば、Nestor et al., Nat. Med. 10:S34-41 (2004);およびBackman et al., Neuropsychology 19:520-531 (2005)を参照されたい。
【0136】
二次効果エンドポイントは以下を包含する:
・実行機能および計画についてのCANTAB試験:空間作動記憶(SPM)およびケンブリッジのストッキング(SOC)
・CANTAB言語認識記憶試験(VRM)
・CANTABパターン認識試験(PRM)
・視力(スネレン視力表により測定;矯正視力)
・記憶機能アンケート:忘却頻度-10(自己評価尺度)
・日常生活の活動(ADCS-ADL PI)スケール(自己評価)
・認知機能の臨床的測定およびコンピューター化された評価は、各開催地において被験者の処置について盲検の(CNATAB)公認の試験官によって管理された。
・CANTAB検査試験の説明書
【0137】
CNATAB検査における15種類の試験は、5つの主要なタイプの課題にわけられる:
・トレーニングおよびスクリーニング
・注意および記憶
・非戦略的学習および記憶
・持続的注意
・前頭/実行課題
【0138】
例えば、cantab.comのウェブサイト(2009年4月14日にアクセス)およびCambridge Cognition Ltd.によって提供される認知試験(ケンブリッジ、イギリス)を参照されたい。
【0139】
トレーニングおよびスクリーニング試験は、運動スクリーニング(大/小円(Big/Little Circle)アッセイおよび反応時間アッセイ)を包含した。運動スクリーニング試験は、全てのCANTAB検査に共通し、試験セッションの開始時に与えられた。スクリーン上の異なる位置に一連の十字記号が示される。利き手の人差し指を使って指す正しい方法のデモンストレーションの後、被験者は順番に十字記号を指し示さなければならない。この運動スクリーニング試験は、(i)被験者が正確に指し示すことができることを確実にするためのトレーニング手順として作用する、および(ii)被験者の運動スキルの指標を提供する速度および正確性の両方の測定を提供する、という2つの目的を有する。大/小円(BLC)アッセイは、一つは大きく一つは小さい、一連の円の対を含み、被験者に提示される。被験者は、最初に2つの円の小さい方を指すこと、および次に20試行後、大きい方の円を指すことを指示される。この視覚的識別試験は、(i)明示的な教育ルールに従うように、および(ii)ルールを逆転させるように、被験者を訓練するために設計される。反応時間アッセイ(RTI)は3つの目的を有する、すなわち、(i)プレスパッドを押し下げ、スクリーンに触ることに関するスキルについて被験者を訓練すること、(ii)この運動スキルを獲得および実行する能力についてのスクリーニングを提供すること、ならびに(iii)単純な単一および複数の選択肢反応時間課題として作用することである。被験者は、黄色ドットが表示される場合、スクリーンに触らなければならない。複数選択肢反応時間試験では、ドットは5つの位置のうちの一つに示される。
【0140】
注意および記憶試験は、(i)見本合わせ視覚探索、(ii)遅延見本合わせアッセイ、(iii)パターン認識記憶アッセイ、(iv)空間認識記憶アッセイ、および(v)空間スパンアッセイを包含する。見本合わせ視覚探索(MTS)は、速度/正確性トレードオフ課題であり、被験者が視覚サンプルを照合する能力を試験し、彼らの反応および動作時間を測定する。4色の要素で構成される抽象パターンが、スクリーンの中央に提示される。少し遅れて、様々な数の類似パターンがスクリーンの縁に沿ったボックスの輪の中に示される。これらのうち一つのみがスクリーンの中央のパターンと照合し、被験者はそれに触ることによってどれかを示さなければならない。輪の中のパターンの数は、1、2、4または8個であってもよく、誤ったパターンは、位置を変えた(juggled)サンプルパターンの要素または位置を変えた不正解の要素で構成される。この試験は、CANTABexpedioには含有されない。遅延見本合わせ(DMS)は、四選択肢の同時および遅延認識記憶パラダイムにおける、知覚的に適合する、即時および遅延視覚記憶の試験である。被験者に複雑な視覚パターン(サンプル)を見せ、その後、少し遅れて、4パターンを見せる。いくつかの試行において、サンプルおよび選択肢パターンは同時に見せるが、その他においてはサンプルパターンを隠して選択肢パターンを見せる際に遅延(0、4または12秒)を導入した。パターン認識記憶(RPM)は2選択肢強制識別パラダイムにおける視覚的パターン認識記憶の試験である。一連の識別パターンが、スクリーンの中央に提示される、これらのパターンは、容易に言語標識を与えることができないようにデザインされる。認識フェーズにおいて、被験者は彼らが既に見たパターンと新規のパターンを区別することが求められる。空間識別記憶(SRM)は、2選択肢強制識別パラダイムにおける空間識別記憶の試験である。白い四角がスクリーンの5つの異なる場所に連続して表示される。認識フェーズにおいて、被験者は連続する5対の四角(そのうちの一つが提示フェーズにおいて予め見た場所にあり、そのうちの一つは不正解の選択肢である)を見る。5つの四角は、逆の順序で示される。空間スパン(SSP)試験は、被験者の空間記憶スパンの測定を与える。白い四角のセットがスクリーンに示される。いくつかの四角は、一つずつ色が異なり、可変配列において変化する。各配列の終わりに、被験者がそれらが元々提示されたものと同じ順番でコンピューターによって着色された各ボックスを触るように、音で合図する。四角の数は、2〜9個の範囲である。
【0141】
非戦略的学習および記憶試験は、対連合学習試験を包含する。対連合学習(PAL)試験は、遅延反応法の一様式であり、これは、視空間関連性を形成する能力の2つの異なる局面を試験する、すなわち(i)各試行の最初の提示において正確に配置されたパターンの数が「リスト記憶」の指標を与え、(ii)被験者が全ての関連性を学習するために必要とする反復リマインダープレゼンテーション(reminder presentation)の数は「リスト学習」の測定値を提供する。6つのボックスがスクリーンに表示される。全てが無作為順で開けられる。それらの1つまたは複数がパターンを含有するであろう。被験者は、スクリーン上の異なる位置に関連するパターンを覚え、そして試験フェーズにおいて、各パターンが提示されたら、適切な位置を指すことが求められる。試験は非常に簡単なレベルから開始し、徐々に困難性を増す。
【0142】
持続注意試験は、迅速な視覚情報処理試験を包含する。わずかな作動記憶要素を伴う視覚的な持続的注意の迅速な視覚情報処理(RVP)試験。白いボックスがコンピューターのスクリーン中央に表示され、その内部に、1分当たり100桁の速度で2〜9の数字が偽無作為の順に表示される。被験者は、数字の奇数または偶数の連続配列(例えば、2-4-6)を見つけ、タッチパッドを押すことによって反応しなければならない。
【0143】
前頭/実行課題は、(i)空間作動記憶アッセイ、(ii)ID/EDシフトアッセイおよび(iii)ケンブリッジのストッキングアッセイを包含する。空間作動記憶(SWM)は、被験者の空間情報を保持する能力および作動記憶において思い出した項目を操作する能力が試験される。それはセルフオーダー課題であり、また発見的問題解決ストラテジーを評価する。試行は、スクリーン上に示される多数の着色された四角(ボックス)により始まる。全般的な目的は、各ボックスにおいて青色の「カウンター」を見つけ、スクリーン右手側の空のカラムを埋めるためにそれらを使用することである。被験者は、青色の「カウンター」を有するボックスが開くまで順に各ボックスに触らなければならない(探索)。この探索において既にサンプリングされた空のボックスに戻ることはエラーである。ID/EDシフト(IED)試験は、被験者の複合的な刺激の具体的な属性を処理し、そして必要な場合注意にシフトする能力を試験する。2つの人工的な次元(dimension)、すなわち、色つきの形および白線が本試験において使用される。単純刺激はこれらの次元のただ一つで構成される一方で、複合刺激は両方で、すなわち色つきの形に重なる白線で構成される。被験者は、各ステージのセット基準を満たすこと(6回の連続した正解反応)によって試験を通過する。どの段階においても、被験者が50試行の後もこの基準に到達しない場合、試験は終了する。ケンブリッジのストッキング(SOC)試験は、「ロンドン塔」試験に基づく空間プランニングの試験である。被験者は、3色のボールを含有する2つのディスプレイを示される。ディスプレイは、梁からぶら下がっているストッキングまたは靴下に保持される着色されたボールの積み重ねとして容易に理解され得る。この配置は、被験者が3-D概念に伴う問題のいくつかのルールを理解すること、および口答の指示になじむことを補助する。被験者は、上部に示されるパターンをコピーするために下部に表示されるボールを使用しなければならない。
【0144】
CANTABeclipseには追加試験が含まれ、これは、CANTABelectバッテリーにおいて利用可能である。感情(affective)Go/No-go(AGN)試験は、正および負の刺激に対する先入観および抑制制御を処理する情報を評価する。試験はいくつかのブロックからなり、それぞれが3種の異なる感情カテゴリー、正(例えば、嬉しそう)、負(例えば、絶望的な)および中性(例えば、エレメント(element))のうち2種から取られる一連の言葉を提示する。被験者は、標的カテゴリー(例えば、正)が与えられ、彼らがこのカテゴリーに照合する言葉を見た場合にプレスパッドを押してもらい、潜時(latency)および正解/不正解総スコアを与える。言語認識記憶(VRM)試験は、自由再生および強制選択認識条件の下での言語情報の即時および遅延記憶を評価する。この試験において、被験者は12語が示され、その後、(i)提示に続いてすぐに可能な限り多くの言葉を生じる、(ii)20分の遅延の後、オリジナルの12語および12の不正解を含有する24語のリストから以前に見たことのある語を識別する、(iii)オリジナルの12語および12の新たな不正解を含有する別の24語のリストから以前に見たことのある語を識別してもらう。この試験に包含される全ての語は、イメージ喚起しやすいものである。不正解は、頻度および単語の長さが標的語に非常に近い。
【0145】
他の二次測定は記憶の自己評価(Frequency of Forgetting- 10 scale)(Zelinski, E.M. et al., Aging and Mental Health 8:293-306(200))、アルツハイマー病協調試験-日常生活動作予防方法(ADCS-ADL PIスケール)(Galasko, D., Alzheimer Dis. Assoc. Disord. 20:S152-69 (200))、ミニメンタルステート試験(MMSE)(Folstein et al., Pyschiatr. Res. 12:189-198 (1975)、および老年うつ病スケール(Yesavage, J., et al., J Psychiatr. Res. 1:3749 (198))を包含する。
【0146】
結果
平均年齢70±9歳、および平均教育レベル14.6±2.6年で、研究完成度90%が達成された。一次効果について、ITT分析は、6カ月時点で、ベースラインに比べ、プラセボに対する約900mg/dDHAによってPAL6パターンステージ試験に関して行われたエラーが有意に少ないことを実証した(差のスコア -1.63±0.76、p<0.03)。例えば、図5Aを参照されたい。WMSIIIの遅延言語記憶試験は、PAL変動を高度に予測する(p<0.001)。また、CANTAB言語認識記憶試験は、プラセボと比較したDHAによる即時(差0.4±0.17、p<0.02)および遅延識別(差0.4±0.18、p<0.02)の両方について、ベースライン正解反応からの有意な変動を示した。CANTABパターン識別および空間作動記憶試験反応は、2群間で有意に異ならなかった。図5〜7を参照されたい。
【0147】
また、有意な心拍数低下(DHAはベースライン-3.2 vs. -1 BPM、p<0.03)が観察され、24週血漿DHAレベルと高い相関を示した(p<0.01)。血圧および体重は群間で変動せずに維持された。Abeta1-40,1-42およびhs-CRP血漿レベルは有意に異ならなかった。血漿リン脂質DHAレベルは2倍になり(3.2から6.4重量%、p<0.001)、PAL反応と相関し(p<0.04)、総コレステロールが低下した(p<0.01)。コンプライアンスは>82%であり、処置に関連しないSAEは報告されず、SAEを伴う被験者の数は2つの研究アーム(arm)を超えて同等であった。
【0148】
血漿リン脂質DHAレベルは、24週までにDHA処置群において平均3.2重量%、有意に増加した(平均ベースラインレベル3.2重量%)。図10を参照されたい。プラセボ群は、24週に亘って血漿リン脂質DHAのわずかな減少(変動平均-0.08重量%)を示した(スコア差3.15±0.16、p<0.001)。DHA追加に伴い、血漿リン脂質アラキドン酸(ARA)の対応する減少(変動平均-1.37重量%)が見られ、プラセボ群におけるベースラインレベルからのARA変動(変動平均-0.12重量%)と有意に異なった(p<0.001)。血漿リン脂質EPAレベルは、DHA追加群においてわずかに上昇し(変動平均0.16重量%)、プラセボ群においてわずかに低下した(変動平均-0.06重量%)、p<0.001。血漿リン脂質DPAn-6レベルもまた24週に亘るDHA投与により有意に増加する(変動平均0.37重量%)一方、プラセボ群においては、DPAn-6レベルは基本的に変動しなかった(変動平均-0.004重量%)、p<0.001。24週における血漿リン脂質DHAレベル(log血漿濃度として測定)は、ベースラインPAL反応からの変動と有意に相関した(r=-1.85、p<0.038)。
【0149】
コンプライアンスは、24週におけるベースライン血漿DHAレベルからの変動により予め測定された。1.5重量%を超える変動(ヒストリカル(historical)用量反応血漿DHAレベルに基づく)により、DHA処置群についてのコンプライアンスが確認された。この変動に基づき、DHA処置被験者の>82%はコンプライアンスであった。≦1.5重量%変動を用いたプラセボ群において、コンプライアンスは>99%であった。カプセルを数えることによるコンプライアンスの二次測定は、両方の群にわたって投与された臨床材料を用いてコンプライアンス>91%を示した。ベースラインに比べ、24週DHA FFQもまた、両群について食餌性のDHA摂取≦200mg/日に関して98%のコンプライアンスを示した。初期エンドポイントの承諾者分析により、プラセボに対するDHA群において同様の改善が明らかになった(スコア差-1.3±0.89;-3.1、0.4 95%CI)が、研究を早くに終了したか、血漿レベルデータがなかったか、または研究投薬計画と適合しなかった、85名の人々を分析において失ったことにより、有意とならなかった(p<0.13)。
【0150】
本研究の結果は、経口DHA(約900mg/日)の追加が、6カ月の期間に亘る多数の視空間学習およびエピソード記憶のエラーが有意に減少したことにより評価されるように、軽度の記憶愁訴を有する健康な高齢者における記憶および学習を改善することを実証した。DHAの追加は、プラセボ処置によるエラー数の減少に比べて、CANTAB PAL 6パターンエラーのおよそ2倍の減少を結果として生じた。DHA誘導認知変動は、この調査終了時のlog DHA血漿レベルと有意に相関した。CANTAB PALについての加齢関連標準データと比較し、DHA追加によるPALの結果は、プラセボによる3.6年の改善に対し、PAL試験成績において7年の改善を示した。DHA群における平均ベースラインPALエラー(13.4±11.5)は72.6歳の年齢に相当し、DHA追加の6カ月後には、平均PALエラーは8.8±9.9で、これは、この試験に関する年齢65.6歳に相当した。プラセボ処置被験者は、ベースラインにおいて70・63歳のPAL標準年齢を有し、6カ月後には、おそらく試験に対するわずかな学習効果により66・99の標準年齢を示した。CANTAB PAL試験は、側頭葉内側部の記憶増進過程に依存するエピソード記憶としてよく特徴づけられてきた。例えば、Blackwell, A.D., et al., Dement. Geriatr. Cogn. Disord. 17:42-8 (2004);およびde Jager, C.A., et al., Psychological Medicine 32: 483-491 (2002)を参照されたい。PALは、健康な対照、軽度の認知機能障害の個体、アルツハイマー病患者およびうつ病の個体間を区別することが示されてきた。例えば、Egerhazi, A., et al., Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 31:746-51 (2007);およびSwainson, R., et al., Dement. Geriatr. Cogn. Disord. 12:265-80 (2001)を参照されたい。これらの研究は、PAL試験における変動が、加齢関連認知低下の予測である初期記憶の機能障害の検出において非常に正確であることを実証し、前臨床アルツハイマー病の予測になる可能性がある。DHAによるこの課題に対する変動は、DHAオメガ-3脂肪酸追加が加齢に関連する初期の記憶および学習の欠損を回復させ得ることを示した。WMSの論理記憶試験、エピソード記憶試験を、加齢関連認知低下を伴う被験者を客観的に同定するために使用し、DHAによるPALの改善を高度に予測した。論理記憶の遅延再生スコアに対する調整、PALに対するDHA誘導性変動の強化、エピソード記憶機能に対する正の効果の確認。認知症の家族歴および併用スタチンの使用等の他のコファクターもまた、PALにおいてDHAの反応の予測となり、認知に対するDHAの効果に影響する可能性がある潜在的な遺伝的および心臓血管系の感受性因子を示唆した。被験者の無作為化は年齢について分類され、年齢は分析においてコファクターであったことから、年齢は初期エンドポイント変動の有意な予測ではなかったが、高齢者群においてより大きなPALエラーが見られた。
【0151】
CANTAB言語認識記憶、他のエピソード記憶課題もまた、DHA追加によりやや改善し、DHAが高齢者において初期の潜在的に分離された記憶機能を増強するという見解の支持に役立つ。作動記憶(SWM)および実行機能(SOC)の変動、マルチドメインMCIおよびアルツハイマー病の後期段階において典型的に損なわれる認知機能の変動はDHAが追加された被験者において見られなかった。MMSE、全般的認知機能の測定と同様、老年うつ病スケール、高齢者におけるうつ病の測定も6カ月に亘る研究を通して変動せず、群間で異ならず、軽度記憶消失を有する、比較的安定で健康な高齢者集団が研究されたことを示す。同様に、ADLおよび自己認識記憶評価はほとんど低下を示さず、DHA追加によって影響を受けず、かつ本研究の6カ月の時間枠に亘って両群でわずかであるが有意ではない改善を示した。
【0152】
約900mg/日の藻類DHAの用量は、良好に許容された。良好なコンプライアンスが、この用量で実証され、6カ月後の脱落者はたった10%であった。予測通り、この用量で血漿リン脂質脂肪酸レベルが変化し、DHAレベルが3.2重量%増加しかつ対応するARAレベルが1.4重量%減少した。ARAレベルは、典型的には、DHA摂取が増加すると下降する。EPAレベルのわずかな変動は、DHAからの微量脂肪酸の逆変換または油中の少量のEPAによる可能性がある一方、DPAn-6の増加も、油混合物中のこの脂肪酸の存在によると予想された。DPAn-6増加の有意性は、神経シグナル伝達およびタウタンパク質のリン酸化における役割を果たす可能性があるが、これにはさらなる探索が残される。例えば、Green, K.N., et al., J Neurosci. 27:4385-95 (2007)を参照されたい。
【0153】
本研究は、加齢性認知低下を伴う健康な成人における記憶および学習機能の改善に対するDHAの有意で有益な効果を臨床的に確認するものである。肯定的な知見は、約900mg/日のDHAが加齢に関連するごく初期の認知欠損のパターンの改善において栄養神経保護剤としてはたらくことを示す。これら認知変動は、正常な加齢過程の結果として生じ得るか、またはMCIもしくは軽度アルツハイマー等の診断前に検出される可能性がある。DHAは、初期のエピソード記憶の変動に有意な影響を有することが明らかとなった。PAL試験によって実証されたエピソード記憶の変動は、他者によって前臨床アルツハイマー疾患の予測となることが示されている。例えば、Fowler, K.S., et al., J Int. Neuropsychol. Soc. 8:58-71 (2002);およびBlackwell, A.D., et al., Dement. Geriatr. Cogn. Disord. 17:42-8 (2004)を参照されたい。我々の研究において見出されたDHAの認知への有益性は、高齢者における重大な健康上の懸念である記憶消失に影響し、加齢に伴い脳の健康を改善する良好に許容されかつ有効な栄養補助剤を提供する。
【0154】
要約すると、6カ月にわたるDHA(約900mg/日)追加は、加齢関連認知低下を伴う健康な高齢者において記憶機能を改善した。PALにおけるこの改善は、より若年群への標準的な分散のシフトと関連する。DHAは、前臨床ADの予測となり得る初期のエピソード記憶変動に対して有意な影響を有することが明らかとなった。また、6カ月にわたるDHA(約900mg/日)追加は、加齢関連認知低下を伴う健康な高齢者における心拍数も低下させた。DHAは、この高齢者集団において非常に安全なプロファイルを有する有益な心臓血管の効果を示した。
【0155】
本明細書に記載される全ての多様な態様または選択肢は、任意および全ての変種と組み合わされ得る。本発明が特に示され、いくつかのその態様を参照して記載されている一方で、それらは例としてのみ提示され、限定するものではなく、本発明の精神および範囲から離れることなく、その中で形態および基準値の様々な変化が行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。従って、本発明の範囲および目的は、いかなる上記例示的態様によっても限定されるべきではないが、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【0156】
具体的態様の上記記載は、他者が当技術分野の知識を適用することによって、そのような具体的な態様の様々な適用のために、過度の実験を伴うことなく、本発明の一般概念から離れることなく、容易に変更および/または適応できる本発明の一般的特徴を十分に明らかにするであろう。従って、そのような適応および変更は、本明細書に提示される教示および指針に基づいて、開示された態様の等価物の意味および範囲内であると意図される。本明細書中の語法および用語は、説明の目的であって限定を目的とするものではなく、本明細書の用語および語法は教示および指針に照らして当業者によって解釈されるものと理解される。
【0157】
本明細書において言及された全ての出版物および特許出願は、あたかも各個別の出版物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み入れられることが示されたかのように、同程度にそれらの全体において参照により本明細書中に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢関連認知低下(ARCD)または軽度認知機能障害(MCI)を処置する方法であって、それを必要とする被験者に1日当たり約0.8g〜約4gのドコサヘキサエン酸(DHA)を、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まずかつアラキドン酸(ARA)を実質的に含まない剤形で投与する段階を含む、方法。
【請求項2】
EPAが前記剤形の総脂肪酸含有量の2%(w/w)未満である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
EPAが前記剤形の総脂肪酸含有量の0.1%(w/w)未満である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
EPAが前記剤形中において検出不可能である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ARAが前記剤形の総脂肪酸含有量の約2%(w/w)未満である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ARAが前記剤形の総脂肪酸含有量の約0.1%(w/w)未満である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ARAが前記剤形中において検出不可能である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
DHAが藻類供給源由来である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記藻類供給源がクリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)種またはシゾキトリウム(Schizochytrium)種である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記被験者に1日当たり約0.84g〜約4gのDHAが投与される、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記被験者に1日当たり約0.84g〜約1.5gのDHAが投与される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記被験者に1日当たり約0.84mg〜約1.0gのDHAが投与される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記剤形が1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、1日8回、1日9回、1日10回、1日11回または1日12回投与される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
DHAが少なくとも1単位用量投与される、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記単位用量が約0.2g〜約1gのDHAを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記単位用量が約0.20g、0.35g、0.40g、0.45g、0.50g、0.55g、0.60g、0.65g、0.70g、0.75g、0.80g、0.85g、0.90g、0.95g、1.0gまたは1.05gの総重量を有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総脂肪酸含有量の約30%〜約99.5%(w/w)である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約65%(w/w)である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記単位用量が、下記量の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる、請求項14〜18のいずれか一項記載の方法:
該単位用量の総脂肪酸含有量のうち
(a)カプリン酸が1%(w/w)未満;
(b)ラウリン酸が1%(w/w)未満;
(c)ミリスチン酸が1%(w/w)未満;
(d)パルミチン酸が1%(w/w)未満;
(e)パルミトレイン酸が1%(w/w)未満;
(f)ステアリン酸が1%(w/w)未満;
(g)オレイン酸が1%(w/w)未満;
(h)リノール酸が1%(w/w)未満;
(i)α-リノレン酸が1%(w/w)未満;
(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3、22:5w3(DPAn3)が1%(w/w)未満;
(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6、22:5w6(DPAn6)が1%(w/w)未満;および
(l)4,7,10,13,16,19,22,25-オクタコサオクタエン酸(C28:8)が1%(w/w)未満。
【請求項20】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総重量の約40%〜約50%(w/w)を構成する、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総脂肪酸含有量の約40%〜約45%(w/w)を構成する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記単位用量が下記量の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる、請求項20または21記載の方法:
該単位用量の総脂肪酸組成のうち
(a)カプリン酸(C10:0)が約2%以下;
(b)ラウリン酸(C12:0)が約6%以下;
(c)ミリスチン酸(C14:0)が約20%以下;
(d)パルミチン酸(C16:0)が約20%以下;
(e)パルミトレイン酸(C16:1n-7)が約3%以下;
(f)ステアリン酸(C18:0)が約2%以下;
(g)オレイン酸(C18:1n-9)が約40%以下;
(h)リノール酸(C18:2)が約5%以下;
(i)ネルボン酸(C24:1)が約2%以下;および
(j)その他が約3%以下。
【請求項23】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総重量の約35%〜約45%(w/w)を構成する、請求項14記載の方法。
【請求項24】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約45%(w/w)を構成する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記単位用量が下記量の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる、請求項23または24記載の方法:
該単位用量の総脂肪酸組成のうち
(a)ミリスチン酸(C14:0)が約12%以下;
(b)パルミチン酸(C16:0)が約28%以下;
(c)ステアリン酸(C18:0)が約2%以下;
(d)オレイン酸(C18:1n-9)が約8%以下;
(e)リノール酸(C18:2)が約2%以下;
(f)アラキドン酸(C20:4)が約2%以下;
(g)エイコサペンタエン酸(C20:5)が約3%以下;
(h)ドコサペンタエン酸(22:5n-6)が約18%以下;および
(i)その他が約10%以下。
【請求項26】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総重量の約55%〜約57%(w/w)を構成する、請求項14記載の方法。
【請求項27】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総脂肪酸含有量の約55%〜約67%(w/w)を構成する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記単位用量が下記量の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる、請求項26または27記載の方法:
該単位用量の総脂肪酸組成のうち
(a)カプリン酸(C10:0)が2%以下;
(b)ラウリン酸(C12:0)が約6%以下;
(c)ミリスチン酸(C14:0)が約20%以下;
(d)パルミチン酸(C16:0)が約15%以下;
(e)パルミトレイン酸(C16:1n-7)が約5%以下;
(f)ステアリン酸(C18:0)が約2%以下;
(g)オレイン酸(C18:1n-9)が約20%以下;
(h)リノール酸(C18:2)が約2%以下;
(i)ネルボン酸(C24:1)が約2%以下;および
(l)その他が約3%以下。
【請求項29】
DHAが藻類油を含む、請求項19〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
DHAがトリグリセリドを含む、請求項19〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記単位用量中のDHAが、重量%DPAn6に対するDHAの重量%比約2.5〜約2.7を構成する、請求項14記載の方法。
【請求項32】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総脂肪酸含有量の約67%超〜約72%(w/w)を構成する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記単位用量が、該単位用量の脂肪酸含有量の総重量の約15%〜約30%(w/w)のDPAn6を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総重量の約85%〜約96%(w/w)を構成する、請求項15記載の方法。
【請求項35】
前記単位用量中のDHAが、該単位用量の総脂肪酸含有量の約85%〜約99.5%(w/w)を構成する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記単位用量が下記量の脂肪酸の1種または複数種によって特徴づけられる、請求項34または35記載の方法:
該単位用量の総脂肪酸組成のうち
(a)カプリン酸(C10:0)が0.1%未満または検出不可能;
(b)ラウリン酸(C12:0)が0.1%未満または検出不可能;
(c)ミリスチン酸(C14:0)が約0.1%未満または検出不可能;
(d)パルミチン酸(C16:0)が約0.5%以下;
(e)パルミトレイン酸(C16:1n-7)が約0.5%以下;
(f)ステアリン酸(C18:0)が約0.5%以下または検出不可能;
(g)オレイン酸(C18:1n-9)が約4%以下;
(h)リノール酸(C18:2)が0.1%未満または検出不可能;
(i)アラキドン酸(C20:4)が約0.1%以下;
(i)エイコサペンタエン酸(C20:5)が0.1%未満または検出不可能;
(j)ドコサペンタエン酸(22:5n-6)が約3%以下;および
(j)その他が約1%以下。
【請求項37】
DHAがDHAエステルを含む、請求項34〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記DHAエステルがアルキルエステルである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記DHAアルキルエステルが、DHAメチルエステル、DHAエチルエステル、DHAプロピルエステルまたはこれらの組み合わせである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記単位用量が約430mg〜約480mgのDHAエチルエステルを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記単位用量が約860mg〜約950mgのDHAエチルエステルを含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記単位用量が約870mg〜約930mgのDHAエチルエステルを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記剤形が、1種もしくは複数種のトコフェロール類、1種もしくは複数種のトコトリエノール類、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1〜42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記剤形が毎日1回投与される、請求項1記載の方法。
【請求項45】
前記剤形が1〜10年間に亘って毎日投与される、請求項1記載の方法。
【請求項46】
前記剤形が連続1〜12カ月間に亘って毎日投与される、請求項1記載の方法。
【請求項47】
前記剤形が少なくとも連続6カ月間に亘って毎日投与される、請求項1記載の方法。
【請求項48】
前記剤形が経口単位用量である、請求項1記載の方法。
【請求項49】
前記経口用量単位がゼラチンカプセルまたはカプレットである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記被験者が、より若い年齢群の平均値を下回る、標準偏差1よりも大きな論理記憶ベースラインスコアを有する、請求項1記載の方法。
【請求項51】
被験者が50歳以上である、請求項1記載の方法。
【請求項52】
認知機能が、作動記憶、記憶保持、注意および実行機能の測定を包含するCANTAB認知バッテリー検査を測定することによって測定される、請求項1記載の方法。
【請求項53】
改善された認知機能が、PAL 6パターンステージ試験において行われたエラーの数によって測定される、請求項1記載の方法。
【請求項54】
改善された認知機能が、WMSIIIの遅延論理記憶試験、CANTAB言語認識記憶試験、CANTABパターン認識試験、CANTAB空間作動記憶試験、ケンブリッジのストッキング(Stockings of Cambridge)試験、またはこれらの組み合わせによって測定される、請求項1記載の方法。
【請求項55】
心拍数を低下させる方法であって、それを必要とする被験者に1日当たり約0.8g〜約4gのドコサヘキサエン酸(DHA)を、エイコサペンタエン酸(EPA)を実質的に含まずかつアラキドン酸(ARA)を実質的に含まない剤形で、ドコサヘキサエン酸を投与する段階を含む、方法。
【請求項56】
前記被験者に1日当たり約0.84g〜約4gのDHAが投与される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記被験者に1日当たり約0.84g〜約1.5gのDHAが投与される、請求項55記載の方法。
【請求項58】
前記被験者に1日当たり約0.84mg〜約1.0gのDHAが投与される、請求項55記載の方法。
【請求項59】
前記剤形が1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、1日8回、1日9回、1日10回、1日11回または1日12回投与される、請求項55〜58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
DHAが少なくとも1単位用量投与される、請求項55〜59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
前記単位用量が約0.2g〜約1gのDHAを含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記単位用量が約0.20g、0.35g、0.40g、0.45g、0.50g、0.55g、0.60g、0.65g、0.70g、0.75g、0.80g、0.85g、0.90g、0.95g、1.0gまたは1.05gの総重量を有する、請求項61記載の方法。
【請求項63】
DHAがDHAエステルを含む、請求項55〜62のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
前記DHAエステルがアルキルエステルである、請求項63記載の方法。
【請求項65】
DHAアルキルエステルがDHAメチルエステル、DHAエチルエステル、DHAプロピルエステルまたはこれらの組み合わせである、請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記単位用量が約430mg〜約480mgのDHAエチルエステルを含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記単位用量が約860mg〜約950mgのDHAエチルエステルを含む、請求項65記載の方法。
【請求項68】
前記単位用量が約870mg〜約930mgのDHAエチルエステルを含む、請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記心拍数が、毎分脈拍約1回〜毎分脈拍約10回低下する、請求項55記載の方法。
【請求項70】
前記心拍数が、毎分脈拍約2回〜毎分脈拍約4回低下する、請求項55記載の方法。
【請求項71】
心拍数の低下を必要とする被験者を選択する段階をさらに含む、請求項55記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【公表番号】特表2012−516852(P2012−516852A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548414(P2011−548414)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/022952
【国際公開番号】WO2010/088700
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】