説明

誘導システムの制御装置,誘導システムの制御方法及び誘導システム

【課題】
通路を移動する人や車両,航空機などが進行方法を誤らないように正確に誘導するための誘導情報を提示する誘導システムを提供し、かつ、通路の構成に大きな変更を与えずに簡易に設置することが可能な誘導システムを提供する。
【解決手段】
画像情報送信機4から無線通信5を介して画像情報を表示する電子ペーパー1を通路脇に路面に対して水平に進行方法に対して帯状に設置し、既存の誘導路灯2,停止線灯3と連携した誘導情報を提供する機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導システムの制御装置,誘導システムの制御方法及び誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理技術,通信技術、及び映像技術の発達により、移動する物体の位置の把握と誘導を人手に頼らずに行うことが可能となりつつある。位置を把握する手法としてはGPS(Global Positioning System),携帯電話,RFID(Radio Frequency Identification)などの端末を移動体に装備させることによる追跡処理が挙げられる。なお、誘導の方法としては人が持つ携帯電話の画面に地図情報と移動体の現在位置を表示させることによる誘導サービスが実用化されている。また、路面を走行する自動車や空港の誘導路を走行する航空機に対する誘導についても様々な検討がなされている。
【0003】
特に、航空機に搭載した表示装置に誘導情報を表示させることによる航空機を地上で走行誘導する技術が知られている。このような技術は例えば特開平10−269500号公報(特許文献1)に記載されている。
【0004】
また、航空機の進行方向の航空灯火を順次点灯し、通過後消灯するよう航空灯火を誘導制御し、誘導路交差点における指示板と、コックピット内のヘッドアップディスプレイによる航空機を地上で走行誘導する技術が知られている。このような技術は、例えば、特開2003−30800号公報(特許文献2)に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−269500号公報
【特許文献2】特開2003−30800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、移動体の誘導を行ううえで、移動体に搭載した表示装置に誘導情報を表示する場合、関係業界又は関係国による規格の策定が必須となるが、現在においては各国の利害関係に起因して規格化の動きが鈍く、当面は実用化が望める環境にない。
【0007】
走行路面に設置した灯火を連続的に透過させることにより自動車又は航空機を誘導する方法について、進行方向を正確に視認するためには多数の灯火を路面に埋設する必要があるが、灯火一基辺りの埋設工事に数十〜数百万円の費用がかかり、又、工事の間はその通路は使用不能となるため、公共性が高く既に運用されている施設又は場所への適用には実現性に難がある。
【0008】
交差点に誘導指示を可変で表示する指示板について、移動を続ける車両又は航空機に搭乗する運転手又はパイロットが遠方から視認するためには相当の大きさを必要とし、継続的に情報を提供し続けるためには進行方向に対して連続的に多数の指示板の設置が必要となるが、一般に車両が通行する道路及び航空機が走行する誘導路に大型の指示板を多数設置することは設置場所の確保の観点から容易ではない。また、設置できたとしても不測の事態により走行する通路を外れた場合において衝突する恐れがあるため、特に空港の誘導路については望ましくない。
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点の少なくとも1つを解決することにあり、主に既設の通路に対し通路を移動する物体の誘導が容易な誘導システムの制御装置,誘導システムの制御方法及び誘導システムの提供を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、誘導対象の対象識別情報と前記誘導対象の対象位置情報を受信し、前記対象識別情報及び対象位置情報に基づいて標識情報及び表示位置情報を得て、誘導通路近傍に設置された表示装置を制御する表示制御装置に前記標識情報及び表示位置情報を送信するように構成した。
【0011】
具体的には、通路に沿う形で帯状に敷設した電子ペーパー型ディスプレイと、画像情報を無線で送信する機器と、電子ペーパー型ディスプレイに電源を供給する装置と、通路の誘導路灯及び停止線灯と、誘導予定経路に基づき、誘導路及び停止線灯と連動して移動する物体に誘導情報を表示する処理装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通路を移動する移動体の誘導が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図5を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の運用形態における航空機202の右折方向への誘導を示している。空港の誘導路の脇に電子ペーパー帯1(1−1,1−2,1−3,1−4)を敷設し、無線LAN等による画像情報無線送信機4が送信する画像情報を電子ペーパー帯1(1−1,1−2,1−3,1−4)に表示して、停止線灯3及び誘導路灯2と連携して航空機201,202,203を誘導する。電子ペーパー帯1(1−1,1−2,1−3,1−4)のそれぞれは任意の位置に任意の文字,図形(これらを総称して標識と称す。なお、後述する「ANA905」「JAL503」「GO」「STOP」等は標識の概念に含まれる。)を表示できるように構成される。また、電子ペーパー帯1(1−1,1−2,1−3,1−4)は、1枚のものでも、比較的に短い電子ペーパーを複数つなぎ合わせたものでも良い。ただし、複数つなぎ合わせたものは、視覚上、あたかも1枚の電子ペーパーに表示されるように制御がなされる。航空機201は交差点を通過してエリアBに到達した状態を示しており、航空機201の背面の停止線灯3は点灯する。電子ペーパー帯1−1が航空機201の背面に位置する交差点入口の誘導路脇で停止標識102を表示し、また、電子ペーパー帯1−2は停止標識102を表示し、他の航空機の侵入を不可とする。航空機201の進行方向の両脇には、電子ペーパー帯1−1が進行標識101,進行指示103,便名表示105を表示し、また、電子ペーパー帯1−2が、進行標識101,進行指示103,便名表示105を表示し、航空機201のパイロットに進行の誘導を行う。
【0015】
ここで、航空機202はエリアAからエリアDに進行が許可され、航空機203はエリアCで停止するものとする。航空機203は停止線灯3の点灯,誘導路灯2の消灯により指示を受ける。また、電子ペーパー帯1−2が、停止標識102,停止指示104,便名表示105により停止指示を行う。同様に、電子ペーパー帯1−3が停止標識102,停止指示104,便名表示105により停止指示を行う。このように表示により、交差点前で停止した状態を指示することになる。
【0016】
一方、航空機202は停止線灯3の消灯,誘導路灯2の点灯による指示を受ける。また、電子ペーパー帯1−1が航空機202の直ぐ後方に進行標識101を表示すると共に前方方向と停止標識102を表示し、電子ペーパー帯1−4が、進行標識101,進行指示103,便名表示105を表示している。これによって、進行方向正面の交差点に対して右折進行の誘導を受ける。
【0017】
図2は、本発明の一実施の運用形態における直進方向への誘導を示している。航空機202は交差点エリアを通過した状態を示している。そして、航空機203は交差点にこれから入る状態である。
【0018】
航空機202の背面の停止線灯3は点灯されている。また、航空機202の背面に位置する交差点入口の誘導路脇の電子ペーパー帯1−3は停止標識102を表示し、また、電子ペーパー帯1−4は停止標識102を表示し、他の航空機の侵入を不可としている。
【0019】
ここで、航空機203はエリアCからエリアAに向けて進行が許可されているものとする。航空機203の進行方向の両脇には(エリアBの近傍及びエリアDの近傍を除く)、電子ペーパー帯1−3が進行標識101,進行指示103,便名表示105を表示し、また、電子ペーパー帯1−4が進行標識101,進行指示103,便名表示105を表示し、航空機202のパイロットに進行の誘導を行う。航空機203は停止線灯3の消灯,誘導路灯2の点灯で誘導される。さらに、電子ペーパー帯1−1が、進行標識101,進行指示103,便名表示105を表示し、電子ペーパー帯1−4が進行標識101,進行指示103,便名表示105を表示し、進行方向正面の交差点に対して直進の誘導を受けている状態を示している。なお、電子ペーパー帯1−1,1−2,1−3,1−4は、エリアB及びエリアDの近傍相当位置では、停止標識102を表示する
【0020】
図3は、本発明の一実施の形態におけるゴムトランスによる給電方式のシステム構成図を示している。誘導路・滑走路内301に設置した電子ペーパー帯1(1−1,1−2,1−3,1−4),誘導路灯2、及び停止線灯3への電源供給は定電流装置10からゴムトランス6(6−1,…,6−n)を経由して行う。また誘導路灯2及び停止線灯3の点灯,消灯を行うスイッチユニット7(7−1,7−2,…,7−n)を誘導路灯2又は停止線灯3と、ゴムトランス6(6−1,6−2,…,6−n)の間に設置する。電子ペーパー帯1(1−1,1−2,1−3,1−4)にはそれぞれ画像情報受信機8(8−1,8−2,8−3,8−4)を接続し、画像情報送信機4から送信された画像情報を電子ペーパー帯1(1−1,1−2,1−3,1−4)に表示する。スイッチユニット7(7−1,7−2,…,7−n)及び画像情報無線送信機4はデバイスネットなどのフィールド通信ケーブル9を介して管制塔内302の通信装置11に接続される。管制塔内302の入出力装置13,処理装置12,通信装置11はIEEE802,3規格のネットワークなどのローカルエリアネットワーク14により接続される。入出力装置13から手動または自動で入力された誘導経路情報に基づいて処理装置12は誘導路灯2及び停止線灯3の点灯や消灯、電子ペーパー帯1(1−1,1−2,1−3,1−4)の表示内容を判定し、判定結果に基づいて通信装置11,通信ケーブル9を介してスイッチユニット7(7−1,7−2,…,7−n)を操作して誘導路灯2及び停止線灯3の点灯・消灯の指示を行い、また、画像情報無線送信機4,画像情報受信機8を介して電子ペーパー(1−1,1−2,1−3,1−4)に表示を行う。
【0021】
なお、誘導路灯2,停止線灯3,スイッチユニット7(7−1,7−2,…,7−n),ゴムトランス6(6−1,6−2,…,6−n),定電流装置10,フィールド通信ケーブル9,通信装置11は既存の空港に設置されている機器を用いても良い。また、処理装置12における誘導路灯2及び停止線灯3の点灯・消灯の機能については既に実用化されているものを用いても良い。
【0022】
図4は、本発明の一実施の形態におけるソーラーパネルによる給電方式のシステム構成図を示している。図4の構成と異なる部分のみ説明し他の部分は同様であるので説明は省略する。本図は電子ペーパー帯1の給電方式を図3のゴムトランス6からソーラーパネル15に変更した形態であり、電子ペーパー帯1の給電方式以外の構成及び機能については図3と同様である。
【0023】
図5は、交差点における処理装置12の処理動作である誘導の処理例をフローチャートで示した図である。サーバ等の処理装置12は、航空機201,202,203から識別情報を受信し、データベースから、各々の航空機201,202,203の進行ルートを読み出す。また、各々の航空機201,202,203は高精度GPSを搭載してあり、各々の航空機201,202,203から位置情報を無線通信により取得する。または、空港に仕掛けられた対物センサ,画像センサなどの情報から各々の航空機201,202,203の位置情報を特定する。
【0024】
ここで、交差点内に向かう航空機が複数ある場合は優先航空機を特定し、該航空機のルートを「進行ルート」とする。交差点に向かう航空機が単独の場合は該航空機のルートを「進行ルート」とする(ステップ1000)。次に、入出力装置13から通路における航空機の誘導経路と、通路に対する航空機の位置情報と、航空機の便名を入手し、航空機の進行ルート以外の通路に接する交差点内の電子ペーパー帯1について、進行ルート以外の通路への侵入を阻む向きに停止標識102を表示する。次に、進行ルート以外の交差点入口の停止指示104を表示し、他の航空機の侵入を不可とする(ステップ1001)。また、進行ルート以外の交差点入口の停止線灯3を点灯する(ステップ1002)。次に、交差点内への誘導進行がなされているルート以外の通路を移動し、かつ交差点内に向かう航空機が存在するとの位置情報が入出力装置13から得られる場合、当該航空機の方向に対する交差点入口の両脇の電子ペーパー帯1について、当該航空機の便名表示105を表示し、停止指示104を表示し、交差点内への侵入を不可とする(ステップ1003)。次に、交差点を誘導する航空機の交差点内の進行ルートに対して内側となる電子ペーパー帯1について、進行標識101を表示し、航空機の便名表示105を表示し、進行指示103を表示する(S1004)。次に、交差点を誘導する航空機に対して交差点内の進行ルートの誘導路灯2を点灯する。そして、該航空機の位置から所定の前後の位置の進行標識を変更する(S1005)。
【0025】
以上説明したように、本例では、電子ペーパーを通路の路面または壁面に対して水平に帯状に敷設し、停止線灯や誘導路灯などの既存の機器と連動させることにより、通路を移動する人や航空機のパイロットによる誘導方向の認識が可能となる。また、通路の構成に大きな変更を与えることなく誘導するシステムの敷設が可能となる。
【0026】
以上説明したように、従来は降雨,降雪による耐水,耐圧の問題、及び移動体が踏みつけた場合における破損の危険性から、路面に対して垂直に接する必要があり、自立型の表示板を構築するためにはディスプレイの荷重に耐え、且つ風圧による倒壊を避ける必要性から相応の基台が必要となり、表示板一枚辺りのコストが高価となり、また、そのような強度を持つ表示板を大量に敷設することは空港の誘導路のような場所では航空機などの移動体が衝突する危険性が高まるため、実現性が非常に低かったが、本実施例における電子ペーパー型ディスプレイは、路面に対して水平かつ帯状に設置することが可能であり、敷設に関しても強固な基台を必要とせず、容積をとらないため通路の進行方向の脇に帯状に敷設しても障害とならず、万一移動体の車輪等が踏みつけた場合においても表示面には柔軟性があるため、破片が飛散する可能性が小さい。
【0027】
通路の壁面や空港の誘導路の両脇等に大掛かりな設置工事を必要とせずに進行方向に対して誘導情報を表示する装置の敷設が可能となる。また、空港の誘導路などに適用する場合には既に設置されている停止線灯,誘導路灯と組み合わせることにより、航空機を操縦しているパイロットに対して効果的な誘導情報を提供することが出来る。また、従来提案されている航空機内にディスプレイを設置する方法と異なり、空港単位で独立した機能であることから、技術的には規格の統一の必要性は無く、導入を検討することが比較的容易である。
【0028】
なお、航空機の誘導の例を示したが、一般進路の車両等、他の通路の移動体に用いることができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の運用形態における右折方向への誘導を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の運用形態における直進方向への誘導を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるゴムトランスによる給電方式のシステム構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるソーラーパネルによる給電方式のシステム構成図である。
【図5】本発明の一実施の形態による交差点における誘導の処理例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1 電子ペーパー帯
2 誘導路灯
3 停止線灯
4 画像情報無線送信機
5 無線通信
6 ゴムトランス
7 スイッチユニット
8 画像情報受信機
9 フィールド通信ケーブル
10 定電流装置
11 通信装置
12 処理装置
13 入出力装置
14 ローカルエリアネットワーク
15 ソーラーパネル
101 進行標識
102 停止標識
103 進行指示
104 停止指示
105 便名表示
201,202,203 航空機
301 誘導路・滑走路内
302 管制塔内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導対象の対象識別情報と前記誘導対象の対象位置情報を受信する手段と、前記対象識別情報及び対象位置情報に基づいて標識情報及び表示位置情報を得る手段と、誘導通路近傍に設置された表示装置を制御する表示制御装置に前記標識情報及び表示位置情報を送信する手段を有することを特徴とする誘導システムの制御装置。
【請求項2】
請求項1において、前記標識情報及び表示位置情報を得る手段は、前記対象識別情報に応じた誘導経路を得て、前記該誘導経路及び対象位置情報に基づいて標識情報及び表示位置情報を得るように構成されることを特徴とする誘導システムの制御装置。
【請求項3】
請求項2において、前記標識情報は、進行指示情報と停止指示情報のうち一方を選択することで得られることを特徴とする誘導システムの制御装置。
【請求項4】
請求項3において、前記進行指示情報及び停止指示情報は、図形標識あるいは文字標識であることを特徴とする誘導システムの制御装置。
【請求項5】
請求項4において、誘導通路近傍に設置された表示装置を制御する表示制御装置に前記標識情報及び表示位置情報と共に、前記対象識別情報に応じた対象識別標識情報を送信することを特徴とする誘導システムの制御装置。
【請求項6】
請求項1において、前記表示装置は、誘導路の路側近傍に設置される電子ペーパー型ディスプレーで構成されることを特徴とする誘導システムの制御装置。
【請求項7】
請求項6において、前記誘導路は、航空機の誘導路であることを特徴とする誘導システムの制御装置。
【請求項8】
誘導対象の対象識別情報と前記誘導対象の対象位置情報を受信し、前記対象識別情報及び対象位置情報に基づいて標識情報及び表示位置情報を得て、誘導通路近傍に設置された表示装置を制御する表示制御装置に前記標識情報及び表示位置情報を送信する誘導システムの制御方法。
【請求項9】
誘導路の路側近傍に設置される表示装置と、前記表示装置を制御する表示制御装置と、前記表示制御装置に情報を送信する誘導制御装置とを有する誘導システムにおいて、前記誘導制御装置は、誘導対象の対象識別情報と前記誘導対象の対象位置情報を受信する手段と、前記対象識別情報及び対象位置情報に基づいて標識情報及び表示位置情報を得る手段と、前記表示制御装置に前記標識情報及び表示位置情報を送信する手段を有してなることを特徴とする誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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