説明

誘導加熱装置

【課題】製品毎に共振手段の特性がばらついていても、加熱開始時から正確な入力で加熱することが可能な誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】誘導コイル6への通電開始時に、入力が所定値となる周波数で、スイッチング素子4A,4Bをスイッチング動作させる。そのとき入力電力検知手段14から読取った入力の値から、記憶装置16に記憶されているスイッチング素子4A,4Bの周波数と入力との関係を、その製品独自のものに補正する。以後、補正した周波数と入力との関係は、その製品における共振回路8のインピーダンスに合致したデータとなっており、製品毎に共振回路8の特性がばらついていても、加熱開始時から正確な入力で加熱することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を行なう機器などに適用される誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の誘導加熱装置は、例えば特許文献1などに開示されるように、共振手段の特性によるスイッチング周波数と入力との関係のデータを記憶手段に記憶して、制御が行なわれ、記憶されたデータを基に、入力となるようなスイッチング周波数を出力してスイッチング手段を動作させるように制御手段を構成していた。
【0003】
しかし、共振手段の特性は、部品特性バラツキにより製品毎に異なるため、共振手段の特性を基にしたデータからスイッチング周波数を決めて、これを出力した場合、製品によって実際の入力電力が異なる。
【0004】
一方、誘導加熱を行なう機器などに適用される誘導加熱装置として、例えば特許文献2などには、被加熱体と、被加熱体を加熱する加熱手段と、当該加熱手段に設けられるコアとを備えたものが開示されている。
【0005】
ここで図8に示すように、被加熱体101の中心部101Aについては、均一な温度分布となるように設計されているが、その一方で被加熱体の両端部101Bは、温度が下がり易いため、(a)に示す初期状態ではある程度高温であったものが、(b)に示すように、時間経過により温度が下がってしまう。そのため、(c)に示すように、被加熱体101の両端部101Bにおける温度分布を、中心部101Aにおける温度分布よりも高くすることが求められていた。
【特許文献1】特開2006−145887号公報
【特許文献2】特開2006−119494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、製品毎に共振手段の特性がばらついていても、正確な入力で加熱することが可能な誘導加熱装置を提供することを、その目的とする。
【0007】
また本発明の別な目的は、被加熱体の部分的な温度低下を防止し、所定時間で被加熱体全体を望ましい温度に加熱できる誘導加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る誘導加熱装置は、加熱を行なう加熱手段を含む共振手段と、所定部に電流を供給するスイッチング手段と、前記所定部への入力を検知する検知手段と、前記検知手段からの検知出力に基づき、前記スイッチング手段の周波数を変化させて前記加熱手段を制御する制御手段と、前記スイッチング手段の周波数と入力との関係を記憶する記憶手段と、を備えた誘導加熱装置において、前記制御手段は、前記入力が所定値以下となる周波数で前記スイッチング手段を動作させ、前記検知手段からの検知出力により、前記記憶手段に記憶される前記スイッチング手段の周波数と入力との関係を補正する構成としたものである。
【0009】
本発明の請求項2に係る誘導加熱装置は、被加熱体を加熱する加熱手段と、前記加熱手段に設けられるコアと、を備えた誘導加熱装置において、前記被加熱体の両端部よりも中心側に位置する部位で、前記コア間を狭く配置したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、入力が所定値以下となる周波数で、スイッチング手段を動作させ、検知手段から読取った検知出力すなわち入力の値から、記憶手段に記憶されているスイッチング手段の周波数と入力との関係を、その製品独自のものに補正する。以後、補正した周波数と入力との関係は、その製品における共振手段の特性に合致したデータとなっており、製品毎に共振手段の特性がばらついていても、加熱開始時から正確な入力で加熱することが可能になる。
【0011】
請求項2の発明によれば、被加熱体の両端側では、中心部よりもコアの間隔が狭く、コアが密集して配置されるので、温度が下がり易い被加熱体の両端部を、中心部よりも高い温度にすることができ、被加熱体の部分的な温度低下を防止できる。また、所定のウォームアップ時間で、被加熱体全体を望ましい温度に加熱できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における誘導加熱装置の好ましい各実施例を説明する。なお、各実施例において、共通する箇所には共通する符号を付し、共通する部分の説明については重複を避けるため極力省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1実施例における誘導加熱装置の電気的構成を示すものである。同図において、1は交流電源Eからの電力供給を受けて動作する誘導加熱装置で、この誘導加熱装置1は、負荷である被加熱物2を発熱させる主回路として、電源Eからの交流電力を整流平滑する直流整流回路3と、何れもIGBTなどからなる2個のスイッチング素子4A,4Bにより構成されるハーフブリッジ方式のインバータ5と、被加熱物2に対向配置される誘導コイル6と共振コンデンサ7との直列回路からなる共振回路8と、をそれぞれ備えている。また、各スイッチング素子4A,4Bのコレクタ・エミッタ間には、ダイオード9A,9Bが逆並列接続される。
【0014】
前記スイッチング素子4A,4Bの直列回路は、直流整流回路3間に接続され、また共振回路8は、スイッチング素子4Bの両端間に接続される。これにより、スイッチング素子4A,4Bのゲート・エミッタ間に駆動信号が交互に繰り返し与えられると、直流整流回路3からの直流電力が断続的に共振回路8に供給され、加熱手段である誘導コイル6に高周波電流が流れることにより、この誘導コイル6から交番磁界が発生して、磁性部材からなる被加熱物2を電磁誘導加熱する構成となっている。
【0015】
また前記直流整流回路3は、ここには図示していないが、前記交流電力を全波整流するダイオードブリッジや、ダイオードブリッジからの全波整流出力を平滑する平滑コンデンサおよびチョークコイルなどにより構成される。勿論、それ以外の回路構成で直流整流回路3を構成してもよく、また他のインバータ5や共振回路8の回路構成についても、図1の回路例に限定されるものではない。
【0016】
11は、電源装置ひいては共振回路8への入力電圧を検知する電圧検知手段としての入力電圧検知回路であり、12は、電源装置ひいては共振回路8への入力電流を検知する電流検知手段としての入力電流検知回路である。また13は、入力電力検知手段14と、スイッチング素子4A,4Bの駆動手段15と、記憶装置16とを内蔵した制御手段としての誘導加熱制御回路で、これは例えば図示しないマイクロコンピュータを含んで構成される。誘導加熱制御回路13には、前記入力電圧検知回路11や入力電流検知回路12からの各検知出力の他に、信号入力手段18からの検知出力が供給される。温度検知手段たる信号入力手段18は、誘導加熱制御回路13を任意の電力で動作させるために、被加熱物2の温度を検知し、そこから目標となる電力を算出して、その算出結果を誘導加熱制御回路13に出力するものである。
【0017】
誘導加熱制御回路13に内蔵する入力電力検知手段14は、入力電圧検知回路11と入力電圧検知回路12からの各検知出力を積算して、共振回路8への入力すなわち入力電力を検知するものである。また、同じく誘導加熱制御回路13に内蔵する駆動手段15は、スイッチング素子4A,4Bを交互にオン,オフする駆動信号を、それぞれのスイッチング素子4A,4Bに供給するが、ここでは入力電力検知手段14で算出検知された入力電力が、信号入力手段18からの設定値すなわち目標電力に近づくように、スイッチング素子4A,4Bに供給する駆動信号の周波数を変化させて、誘導コイル6に流す電流を制御するようになっている。さらに記憶装置16は、予め測定された標準的な共振回路8におけるインピーダンスでのスイッチング周波数と入力電力との関係が記憶される。
【0018】
図2は、共振回路8の周波数に対するインピーダンス変化を示した特性図である。共振回路8に供給する電流の周波数、すなわちスイッチング素子4A,4Bのスイッチング周波数が、共振周波数foに一致すると、共振回路8のインピーダンスは最小となり、当該スイッチング周波数が共振周波数foよりも高ければ、共振回路8は誘導性となる一方、スイッチング周波数が共振周波数foよりも低ければ、共振回路8は容量性となる。
【0019】
図3は、スイッチング素子4A,4Bのスイッチングに伴うインバータ5への電流(インバータ電流Iinv)の変化を経時的に示したものである。この図に示すように、スイッチング素子4A,4Bは、誘導加熱制御回路13からそれぞれ供給されるパルス状の各駆動信号によって、双方がオフになるデッドタイム期間を有しながら、周期Tで交互にオン・オフを繰り返すようになっており、これによりインバータ5から共振回路8に、スイッチング素子4A,4Bのスイッチング周波数(=1/T)に同期した正弦波状のインバータ電流Iinvが供給される。
【0020】
次に、上記構成についてその作用を説明する。電源Eからの交流電力は、直流整流平滑回路3にて直流に整流平滑され、インバータ5に印加される。ここで誘導加熱制御回路13は、信号入力手段18から入力された情報によって、当該信号入力手段18から目標となる入力電力(目標電力)が指示されると共に、入力電圧検知回路11と入力電流検知回路12からの各検知出力に基づいて、入力電圧と入力電流の情報を取り込み、内蔵する入力電力検知手段14によって、これらの入力電圧と入力電圧を積算することで、実際の入力電力を算出する。そして誘導加熱制御回路13に含まれる駆動手段15は、入力電力検知手段14で算出検知した入力電力が目標電力となるようにフィードバック制御を行ない、スイッチング素子4A,4Bのスイッチング周波数を変化させて、インバータ電流Iinvの増減を行なう。
【0021】
ここで前記図2に示すように、共振回路8に与えるインバータ電流Iinvの周波数が共振周波数fo以下になると、共振回路8は容量性となり、スイッチング素子4A,4Bに短絡電流が流れて悪影響を及ぼす懸念があることから、インバータ電流Iinvの周波数ひいてはスイッチング素子4A,4Bのスイッチング周波数は、共振周波数fo以上になるようにする必要がある。また、インバータ5が動作し始める被加熱物2への加熱開始時には、インバータ5や共振回路8への突入電流を低くする必要があることから、駆動手段15は、共振周波数foから離れた高いスイッチング周波数でスイッチング素子4A,4Bひいてはインバータ5を動作させ始める。このとき、共振回路8のインピーダンスは高くなることから、加熱開始時における入力電力は低く、そこから目標の入力電力となるように、スイッチング素子4A,4Bのスイッチング周波数を変化させる。
【0022】
ここで、最大定格電力が1.5kWの誘導加熱装置1を例とした、共振回路8のインピーダンスでのスイッチング周波数と入力電力との関係を図4に示す。同図において、実線で示す特性線Aは、標準の共振回路8のインピーダンスに対応したスイッチング周波数と入力電力との関係を示し、これは全ての製品に共通して記憶装置16に記憶されている。
【0023】
被加熱物2の温度を急激に上げたい場合には、最初から最大定格電力である1.5kWを目標電力として、誘導コイル6により加熱を行なう制御としたいため、マイクロコンピュータのメモリである記憶装置16に記憶された標準の共振回路8でのスイッチング周波数と入力電力との関係から、入力電力が1.5kWとなるスイッチング周波数40kHzを記憶装置16から読み出し、このスイッチング周波数でスイッチング素子4A,4Bを動作させる。ここで誘導加熱制御回路13は、入力電力検知手段14で算出される実際の入力電力を基に、インバータ5へのフィードバック制御を行ない、当該入力電力が目標電力になるように、スイッチング素子4A,4Bのスイッチング周波数を増減させる。
【0024】
ところで、共振回路8を構成する誘導コイル6や共振コンデンサ7は、製品毎に製造バラツキや部品特性バラツキがあり、製品に組み込まれる実際の共振回路8のインピーダンスは、標準となる共振回路8のインピーダンスからずれる場合がある。その結果、実際のスイッチング周波数と入力電力との関係は、図4の点線であらわした特性線Bや特性線Cのように、標準の共振回路8に基づく特性線Aから変化することとなる。したがって、単に記憶装置16に記憶される標準的なスイッチング周波数と入力電力との関係から、1.5kWの入力電力が得られるように、そのまま40kHzのスイッチング周波数でスイッチング素子4A,4Bを動作させた場合には、実際の入力電力が目標となる1.5kWから大きく逸脱することになる。
【0025】
そこで本実施例では、当該誘導加熱制御回路13の電源が最初に投入され、誘導コイル6から被加熱物2に対して最初の出力を行なう時に、実際の共振回路8のインピーダンスが、標準の共振回路8のインピーダンスからずれていても、誘導加熱装置1の主回路に過大な電流が流れて破壊しないように、誘導加熱制御回路13は、被加熱物2への加熱開始時において、記憶装置16に記憶された標準の共振回路8でのスイッチング周波数と入力電力との関係から、誘導加熱装置1の最大定格電力の80%以下となるスイッチング周波数で、スイッチング素子4A,4Bを動作させる。これにより、被加熱物2を素早く加熱しつつ、共振回路8への入力電力が最大となる共振周波数foに対し、十分高い周波数でスイッチング素子4A,4Bをスイッチング動作させることができる。
【0026】
それと共に、誘導加熱制御回路13は、入力電力検知手段14で算出される実際の入力電力から、記憶装置16に記憶される標準の共振回路8でのスイッチング周波数と入力電力との関係に対し、実際にその製品に組み込まれている共振回路8のインピーダンスにおいて、スイッチング周波数と入力電圧との関係が正しくなるように補正を行なう。こうした補正手段を誘導加熱制御回路13が備えることで、次回以降の被加熱物2に対する加熱制御は、実際の共振回路8のインピーダンスに合致したスイッチング周波数と入力電力との関係に基づいて行なわれることとなり、誘導加熱の開始時から目標入力電力となるスイッチング周波数で、スイッチング素子4A,4Bを動作させることが可能になる。
【0027】
図5は、誘導加熱制御回路13が実行する補正処理の制御フローチャートを示したものである。先ずステップS1では、電源投入後初回の手順であるか否かを誘導加熱制御回路13が判断する。ここで、駆動信号を最初にインバータ5に供給する初回の手順であると判断した場合は、ステップS2の手順に移行し、上述したように、最大定格電力の80%となるスイッチング周波数F1を、記憶装置16に記憶されたスイッチング周波数と入力電力との関係から算出する。そして、次のステップS3では、この算出したスイッチング周波数で、スイッチング素子4A,4Bを動作させる。
【0028】
こうして、誘導加熱制御回路13からスイッチング素子4A,4Bに駆動信号が与えられ、インバータ5としての動作が開始すると、誘導加熱制御回路13は入力電力検知手段14で算出される実際の入力電力を読込む(ステップS4)。このときの入力電力読込値をIW1とする。誘導加熱制御回路13は、次のステップS5で、記憶装置16に記憶された標準の共振回路8でのスイッチング周波数と入力電圧との関係から、入力電力読込値IW1に対応したスイッチング周波数F2を決定する。ここで、実際の共振回路8のインピーダンスが、標準的な共振回路8のインピーダンスと異なっていれば、ステップS2で最大定格電力の80%となる目標の電力値と、実際に入力電力検知手段14で検知した入力電力IW1との間に差異を生じ、スイッチング周波数F1,F2も異なる値となる。誘導加熱制御回路13はステップS6にて、スイッチング周波数F1,F2の差を補正値α(=F1−F2)として算出し、ステップS1の手順に戻る。
【0029】
再度ステップS1で、誘導加熱制御回路13が電源投入後初回の手順ではないと判断すると、ステップS11の手順に移行し、信号入力手段18から送られてくる目標電力に対し、標準の共振回路8におけるインピーダンスでのスイッチング周波数F1の値を決定する。このスイッチング周波数F1は、記憶装置16に記憶されるスイッチング周波数と入力電力との関係から導出できる。
【0030】
次に誘導加熱制御回路13は、実際の共振回路8のインピーダンスが、標準的な共振回路8のインピーダンスとの違いを加味して、スイッチング周波数F1の値を補正する(ステップS12)。この補正したスイッチング周波数F1’は、ステップS11で取得したスイッチング周波数F1から、補正値αを差し引くことで算出できる。そして、次のステップS13では、この補正したスイッチング周波数F1’で、スイッチング素子4A,4Bを動作させる。
【0031】
こうして、誘導加熱制御回路13からスイッチング素子4A,4Bに、補正したスイッチング周波数F1’を反映した駆動信号が与えられると、誘導加熱制御回路13は入力電力検知手段14で算出される実際の入力電力を読込む(ステップS14)。このときの入力電力読込値をIW1とする。誘導加熱制御回路13は、次のステップS15で、入力電力読込値IW1を基に、この入力電力読込値IW1が信号入力手段18から送られてくる目標電力となるようにフィードバック制御を行なう。これは前記ステップS11〜S13の手順によって、補正したスイッチング周波数F1’でスイッチング素子4A,4Bを動作させることにより可能となる。
【0032】
以上のように本実施例では、誘導加熱を行なう加熱手段としての誘導コイル6を含む共振手段たる共振回路8と、所定部である共振回路8に高周波の電流を供給するスイッチング手段としてのスイッチング素子4A,4Bと、共振回路8への入力すなわち入力電力を検知する検知手段としての入力電力検知手段14と、入力電力検知手段14からの検知出力に基づき、スイッチング素子4A,4Bの周波数(スイッチング周波数)を変化させて誘導コイル6を例えばフィードバック制御のように制御する制御手段としての誘導加熱制御回路13と、標準の共振回路8におけるスイッチング素子4A,4Bの周波数と入力との関係を記憶する記憶手段としての記憶装置16と、を備えた誘導加熱装置1において、誘導加熱制御回路13は、誘導コイル6への通電開始時に前記入力が所定値以下となる周波数でスイッチング素子4A,4Bを動作させ、その時の入力電力検知手段14からの検知出力により、記憶装置16に記憶されるスイッチング素子4A,4Bの周波数と入力との関係を補正し、補正した周波数でスイッチング素子4A,4Bを動作させるように構成している。
【0033】
このようにすると、被加熱体である被加熱物2に最初の出力を行なう誘導コイル6への通電開始時に、入力が所定値以下(例えば、入力電力が設定可能な最大定格入力電力の80%以下の値)となる周波数で、スイッチング素子4A,4Bをスイッチング動作させ、そのとき入力電力検知手段14から読取った検知出力すなわち入力の値から、記憶装置16に記憶されているスイッチング素子4A,4Bの周波数と入力との関係を、その製品独自のものに補正する。以後、補正した周波数と入力との関係は、その製品における共振回路8の特性であるインピーダンスに合致したデータとなっており、製品毎に共振回路8の特性がばらついていても、加熱開始時から正確な入力電力で加熱することが可能になる。
【実施例2】
【0034】
図6および図7は、本発明の第2実施例における誘導加熱装置を示すものである。同図において、31は前記第1実施例の被加熱物2に相当する加熱ローラであり、32は前記第1実施例の誘導コイル6を含むコイルユニットである。
【0035】
加熱ローラ31は、図示しない紙を送り出しながら、この紙に熱を付与してトナーを定着させるための回動可能な筒状金属被発熱体であり、中空な円筒状で鉄やステンレスなどの磁性金属で構成される。
【0036】
コイルユニット32は、電磁誘導により加熱ローラ31を外周面に沿って加熱する誘導コイル6の他に、誘導コイル6と発熱面たる加熱ローラ31の外周面とをほぼ一定距離に保持する支持体としてのコイル支持体34や、誘導コイル6に添設され、誘導コイル6に対する磁路を形成するためのフェライトコア35などにより構成される。
【0037】
誘導コイル6は、前記加熱ローラ31の回転軸Cと平行な方向に、例えばリッツ線のような導線を巻回して形成される。第1実施例で説明したように、この誘導コイル6にインバータ5からの高周波電流が与えられると、誘導コイル6から発生する磁束が加熱ローラ31に達し、当該加熱ローラ31に渦電流が流れて、加熱ローラ31がジュール発熱する。つまり、加熱ローラ31に対向して設けられる誘導コイル6は、磁束を発生して加熱ローラ31を加熱する加熱手段に相当するものである。
【0038】
図7に示すように、フェライトコア35は誘導コイル6の外側に所定の間隔を置いて設けられている。このフェライトコア35は、加熱ローラ31の外周面ひいては誘導コイル6の外側面に沿って湾曲した棒状に形成され、加熱ローラ31の回転軸Cと直交した方向にそれぞれが配置される。ここで注目すべきことは、本実施例ではフェライトコア35を等間隔に配置するのではなく、加熱ローラ31の両端部31Aよりも加熱ローラ31の中心部31Bに位置する部位で、隣接するフェライトコア35,35間のピッチを狭くして、各フェライトコア35が配置される。したがって、加熱ローラ31の両端部31Aに位置するフェライトコア35,35間のピッチP1は、加熱ローラ31の中心部31Bに位置するフェライトコア35,35間のピッチP2よりも狭い。
【0039】
また、ここではフェライトコア35の製造や組立てを容易にするために、各々のフェライトコア35は同一形状で、且つ同じ材質(透磁率)のものを使用しているが、各々のフェライトコア35で異なる形状(幅や厚み)としたり、異なる透磁率としたりすることも可能である。
【0040】
次に上記構成についてその作用を説明すると、インバータ5から誘導コイル6に高周波電流が与えられると、誘導コイル6から発生する磁束が対向する加熱ローラ31に達し、当該加熱ローラ31に渦電流が流れて、加熱ローラ31がジュール発熱する。また、フェライトコア35は、キュリー温度以下の場合に磁性体となり、誘導コイル6から加熱ローラ31への磁束が増えると共に、フェライトコア35自身も加熱される。一方、フェライトコア35が加熱してキュリー温度に達すると、今度はフェライトコア35が非磁性体となり、誘導コイル6から加熱ローラ31への磁束が減少する。これにより、加熱ローラ31に対する極端な温度上昇を抑制できる。
【0041】
ここで、紙が通過する加熱ローラ31の中心部31Bは、紙にトナーを定着した状態の画質に悪影響を及ぼさないように、当該中心部31Bにおける温度分布を均一にする必要がある。そこで、加熱ローラ31の中心部31Bに対応する位置でのフェライトコア35,35は、通常等しいピッチ間隔で誘導コイル6の外側に配置するように設計される。
【0042】
一方、加熱ローラ31の両端部31Aは、加熱ローラ31の熱伝導によって中心部31Bよりも温度が下がり易い。そのため、加熱ローラ31の中心部31Bよりも両端部31Aの温度を上げるために、フェライトコア35,3の両端部31Aでは、当該フェライトコア35を中心部31Bよりも狭いピッチで密集して配置する。こうすると、誘導コイル6から加熱ローラ31の両端部31Aを通過する磁束が増加し、当該加熱ローラ31の両端部31Aにて、発熱温度を高くすることができる。
【0043】
また、特に本実施例におけるコイルユニット32を、加熱ローラ31を有する定着装置に組み込んだ場合には、加熱ローラ31の両端部31Aにおける温度低下に起因した画質の劣化を改善することができ、コピー可能な時間が長くなることで省エネルギー性を高めることができる。また、定着装置に限らず、加熱ローラ31全体が望ましい温度にまで上昇するウォームアップ時間を短縮できる。
【0044】
以上のように本実施例では、被加熱体である加熱ローラ31に対向して、この加熱ローラ31を加熱する加熱手段としての誘導コイル6と、加熱ローラ31の軸方向Cである誘導コイル6の長手方向に、複数個並べて設けられるコアとしてのフェライトコア35と、を備えた誘導加熱装置において、加熱ローラ31の両端部31Aよりも、加熱ローラ31の中心側である中心部31Bに位置する部位で、隣接するフェライトコア35,35間のピッチを狭くして、それぞれのフェライトコア35を配置している。
【0045】
この場合、加熱ローラ31の中心部31Bでは、そこに対応して配置されるフェライトコア35,35間のピッチ間隔に応じて磁路が形成されるが、加熱ローラ31の両端部31Aでは、中心部31Bよりもフェライトコア35,35間のピッチ間隔が狭く、フェライトコア35が密集して配置されるので、誘導コイル6から加熱ローラ31を通過する磁束が増加する。したがって、温度が下がり易い加熱ローラ31の両端部31Aを、中心部31Bよりも高い温度にすることができ、加熱ローラ31の部分的な温度低下を防止できる。また、従来よりも短いウォームアップ時間で、加熱ローラ31全体を望ましい温度に加熱できる。
【0046】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、上述した各実施例の特徴をそれぞれ組み合わせた構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施例における誘導加熱装置の回路図である。
【図2】同上、共振回路の周波数に対するインピーダンス変化を示した特性図である。
【図3】同上、各スイッチング素子のスイッチングに伴うインバータ電流の経時的変化を示す波形図である。
【図4】同上、共振回路のインピーダンスを基にしたスイッチング周波数と入力電力との関係を示すグラフである。
【図5】同上、誘導加熱制御回路の制御手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施例における誘導加熱装置の断面図である。
【図7】同上、誘導加熱装置の平面図である。
【図8】被加熱体と、その温度分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
4A,4B スイッチング素子(スイッチング手段)
6 誘導コイル(加熱手段)
8 共振回路(共振手段,所定部)
13 誘導加熱制御回路(制御手段)
14 入力電力検知手段(検知手段)
16 記憶装置(記憶手段)
31 加熱ローラ(被加熱体)
35 フェライトコア(コア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱を行なう加熱手段を含む共振手段と、
所定部に電流を供給するスイッチング手段と、
前記所定部への入力を検知する検知手段と、
前記検知手段からの検知出力に基づき、前記スイッチング手段の周波数を変化させて前記加熱手段を制御する制御手段と、
前記スイッチング手段の周波数と入力との関係を記憶する記憶手段と、を備えた誘導加熱装置において、
前記制御手段は、前記入力が所定値以下となる周波数で前記スイッチング手段を動作させ、前記検知手段からの検知出力により、前記記憶手段に記憶される前記スイッチング手段の周波数と入力との関係を補正する構成としたことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
被加熱体を加熱する加熱手段と、前記加熱手段に設けられるコアと、を備えた誘導加熱装置において、
前記被加熱体の両端部よりも中心側に位置する部位で、前記コア間を狭く配置したことを特徴とする誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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