誘導加熱調理器
【課題】大きな対流流路を移動させる機能を持つ誘導加熱調理器を実現すること。
【解決手段】複数の加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の加熱コイルに誘導加熱電力を供給する量を、残りの加熱コイルの誘導加熱電力よりも多くすることにより、被加熱物である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として被加熱物内の被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることができる。また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【解決手段】複数の加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の加熱コイルに誘導加熱電力を供給する量を、残りの加熱コイルの誘導加熱電力よりも多くすることにより、被加熱物である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として被加熱物内の被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることができる。また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加熱コイルによって被加熱物を誘導加熱する誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器は、同心円上に配置され、径の異なる内側コイルと外側コイルを備え、内側コイルと外側コイルに交互に誘導加熱電力を投入する誘導加熱調理器が開示されている。特許文献1の誘導加熱調理器では、内側コイルが被加熱物を加熱しているときは、外側コイルは停止しており、外側コイルが被加熱物を加熱しているときは、内側コイルは停止している。これにより、被加熱物内の被調理物に対流が生じて、熱が被調理物全体にいきわたる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2978069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、図11に示すように被加熱物内の被調理物に発生する対流は、軸対象平面の半分の中で閉じた流路しか形成できない。このような流路の対流では、被調理物がその場で鉛直方向に上下するような小さな流路しか形成できないため、調理者が箸などのかき混ぜ手段を用いて、被加熱物内の被調理物をかき混ぜるような大きな流路を作ることができない。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被加熱物内の被調理物を大きく動かしてかき混ぜるような効果を持つ対流路を、加熱制御により発生させることが可能な誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱調理器は、被調理物と、前記被調理物を入れる鍋などの被加熱物と、前記被加熱物を載置するためのトッププレートと、前記トッププレートの下方に略同一平面に配置され、異なる円心を有する複数の円環状の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルに誘導加熱電力を供給するインバータと、前記インバータの出力を制御する制御部と、前記制御部に加熱の開始/停止や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記制御部は、前記操作部の指示により、複数の前記加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の前記加熱コイルに誘導加熱電力を供給する量を、残りの加熱コイルの誘導加熱電力よりも多く制御することにより、被加熱物である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として前記被加熱物内の前記被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0007】
また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の誘導加熱調理器は、被加熱物である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として前記
被加熱物内の前記被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における対流の様子を示す図
【図3】本発明の実施の形態2における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態2における対流方向移動の様子を示す図
【図5】本発明の実施の形態2における対流方向移動(加熱部3つ)の様子を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における対流方向移動(コイル6つ)の様子を示す図
【図7】本発明の実施の形態3における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施の形態3における発熱分布の様子を示す図
【図9】本発明の実施の形態4における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態4における発熱分布の様子を示す図
【図11】従来の誘導加熱調理器における対流の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、被調理物と、前記被調理物を入れる鍋などの被加熱物と、前記被加熱物を載置するためのトッププレートと、前記トッププレートの下方に略同一平面に配置され、異なる円心を有する複数の円環状の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルに誘導加熱電力を供給するインバータと、前記インバータの出力を制御する制御部と、前記制御部に加熱の開始/停止や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記制御部は、前記操作部の指示により、複数の前記加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の前記加熱コイルに誘導加熱電力を供給する量を、残りの加熱コイルの誘導加熱電力よりも多く制御することにより、被加熱物である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として前記被加熱物内の前記被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0011】
また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明の制御部を、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更するように制御することにより、電力が多く供給されている部分を移動させて大きな対流ループの方向を鉛直方向に対し垂直な方向に移動して攪拌効果を発生させ、調理物の乳化を促進したり、溶解可能な固形物の溶解を早めたり、液体内にある固体の調理物を物理的に動かしてかき混ぜたりする効果を得る際に、誘導加熱電力を少なく供給している部分が保温電力の役割を果たすことで、加熱部分移動時に被加熱物をあたためる為に必要な時間遅れと、被加熱物から被調理物への熱伝達を始める為に必要な時間遅れをなくし、即応性を上げ効率よく加熱することが可能な誘導加熱調理を提供することができる。
【0013】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の制御部を、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように前記加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向を制御することで、対流の基となる強い上昇の流れを発生させ対流をより強くすることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0014】
第4の発明は、特に第1または第2の発明の制御部を、隣り合う加熱コイルで発生する
磁束が打ち消しあうように前記加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向を制御することにより、定常的に加熱すると焦げが発生してしまうような(対流が生じにくい)高粘性の調理物に対し、加熱ゆらぎを与え、熱伝導を促進しながらあたためを行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0015】
第5の発明は、特に第2〜4のいずれか1つの発明の制御部を、前記誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更しても、総電力量は一定であるように制御することにより、加熱部移動を行わない場合と調理感覚を概同一とすることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0016】
第6の発明は、特に第5の発明の前記制御部を、前記誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において徐々に変更するように制御することにより、加熱部移動時における対流方向変化の際に無駄な乱流の発生を抑え、滑らかに対流方向移動を行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0017】
第7の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の誘導加熱調理器を、複数の加熱コイルは4つの加熱コイルであり、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを2つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを2つとしたことにより、底が円形の前記被加熱物を円形の加熱コイルでカバーする場合に最小限の加熱コイル数とした安価な構成で鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動を行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0018】
第8の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の誘導加熱調理器を、複数の加熱コイルは4つの加熱コイルであり、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを3つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを1つとしたことにより、同一エネルギーを投入する際の加熱コイル1個あたりの電力負担を減らすことで損失を抑え効率よく加熱を行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0019】
第9の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の誘導加熱調理器を、複数の加熱コイルは6つの加熱コイルであり、誘導加熱電力を供給する加熱コイルを3つとし、誘導加熱電力を供給しない加熱コイルを3つとしたことにより、鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動をより細かく行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0020】
第10の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の誘導加熱調理器を、複数の加熱コイルは6つの加熱コイルであり、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを4つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを2つとしたことにより、同一エネルギーを投入する際の加熱コイル1個あたりの電力負担を減らした上で、鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動をより細かく行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。
【0023】
図1において、101は被調理物、102は被加熱物、103は加熱コイル、104はインバータ、105は制御部、106は操作部、107はトッププレートである。
【0024】
なお、被加熱物102には鍋、加熱コイル103には同一平面上に概同一サイズの異なる円心を有する円環状の4つのコイルを近接して並べ4つのコイルで1つの被加熱物102を加熱する構成、制御部105、操作部106にはマイクロコンピュータ、トッププレート107にはガラス板を用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0025】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0026】
まず、使用者が被調理物101を被加熱物102に入れ、被調理物101の温め開始を指示すると、制御部105はインバータ104を動作させ、加熱コイル103に高周波磁界を発生させ被加熱物102の誘導加熱を行う。この際、図2に示すように、加熱コイル103を構成する半分の面積を占めるコイル(例えば、1と4のコイル)に多くの誘導加熱電力を供給し、残りのコイル(例えば、2と3のコイル)に、保温電力程度の少ない誘導加熱電力を供給すると、被加熱物内102内の多くの誘導加熱電力が供給されている部分の比重が軽くなる。1と4のコイルで最も被加熱物102を加熱するのは、白抜きの矢印で示したコイル部の中央部であり、この部分に被調理物101に対流の基となる上昇の流れが生じる。そして、誘導加熱による熱は熱伝導でも被加熱物102を伝わっていくため、上昇した被調理物101が物理的に下降し易いのは誘導加熱されている部分から最も遠い場所ということになる。したがって、被加熱物102内の被調理物101に生じる対流の流路は図2に示すような被調理物101内の半面以上を通る大きな対流ループとなる。
【0027】
以上のように、本実施の形態においては、複数の加熱コイル103のうち、半数以上、全部未満の加熱コイル103に誘導加熱電力を供給する量を、残りの加熱コイルの誘導加熱電力よりも多くすることにより、被加熱物102である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として被加熱物102内の被調理物101に大きな流路ループを持つ対流を発生させることができる。
【0028】
なお、被調理物101が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【0029】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。図3において301は誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更する制御部である。なお、制御部301にはマイクロコンピュータを用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0030】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。なお、図面において、実施の形態1と同一動作を示す部分は同一番号を付与している。
【0031】
実施の形態2における誘導加熱調理器の基本的な動作は、実施の形態1と同様であるが、実施の形態2においては誘導加熱電力を多く供給する部分を所定時間毎(例えば10秒毎)に順番に変更する動作を行う。このように誘導加熱電力を多く供給する部分を変動させることで、被調理物101内に発生する対流ループの方向を周期的に変動させることが可能となり、被調理物101内に箸などで行うような物理的な攪拌効果を発生することができる。ここで、被調理物101がジャガイモなどの固形物と出し汁のような液体から構成される場合は、固形物を鍋内で転がし、出し汁を浸透させるような効果を得ることができる。
【0032】
この際、誘導加熱電力を少なく供給している部分が保温電力の役割を果たすことで、加
熱部分移動を行う時に、被加熱物をあたためる為に必要な時間遅れと、被加熱物から被調理物への熱伝達を始める為に必要な時間遅れをなくすことができるため、加熱位置変更の即応性を向上し効率よく加熱を行うことができる。
【0033】
以上のように、本実施の形態においては、制御部301が誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更することにより、電力が多く供給されている部分を移動させて大きな対流ループの方向を鉛直方向に対し垂直な方向に移動して攪拌効果を発生させ、調理物の乳化を促進したり、溶解可能な固形物の溶解を早めたり、液体内にある固体の調理物を物理的に動かしてかき混ぜたりする効果を得ることができ、この際に、誘導加熱電力を少なく供給している部分が保温電力の役割を果たすことで、加熱部分移動時に被加熱物をあたためる為に必要な時間遅れと、被加熱物から被調理物への熱伝達を始める為に必要な時間遅れをなくし、即応性を上げ効率よく加熱を行うことができる。
【0034】
なお本実施の形態では複数の加熱コイルを4つとして説明したが、加熱コイルは4つには限らない。
【0035】
ここで、図4に示すように、複数の加熱コイル103を4つの加熱コイルとして、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを2つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを2つとした場合には、底が円形の被加熱物102を円形の加熱コイルでカバーする場合に最小限の加熱コイル数とした安価な構成で鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動を行うことができる。
【0036】
また、図5に示すように、複数の加熱コイル103を4つの加熱コイルとして、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを3つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを1つとした場合には、同一エネルギーを投入する際の加熱コイル1個あたりの電力負担を減らすことで損失を抑え効率よく加熱を行うことができる。
【0037】
また、図6(a)に示すように、複数の加熱コイル103は6つの加熱コイルとして、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを3つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを3つとした場合には、鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動をより細かく行うことができる。
【0038】
また、図6(b)に示すように、複数の加熱コイルは6つの加熱コイルとして、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを4つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを2つとした場合には、同一エネルギーを投入する際の加熱コイル1個あたりの電力負担を減らした上で、鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動をより細かく行うことができる。
【0039】
また、制御部301が、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更する際に、総電力量は一定となるように電力変動を制御することにより、被調理物に与えるエネルギーの総和に変動がなくなるため、加熱部移動を行わない場合と調理感覚を概同一とすることができる。
【0040】
また、制御部301が、誘導加熱電力を供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を供給しない加熱コイルを、調理中において徐々に変更する(例えば非変更時間15秒、変更時間3秒)ことにより、加熱部移動時における対流方向変化の際に無駄な乱流の発生を抑え、滑らかに対流方向移動を行うことができる。
【0041】
なお、図4、5、6の図面の加熱コイルは円環状の加熱コイルであるが、簡素化して示
している。
【0042】
(実施の形態3)
図7は、本発明の第3の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。図7において701は誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更する制御部であり、誘導加熱電力を供給する際は、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向を決定する。なお、制御部701にはマイクロコンピュータを用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0043】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。なお、図面において、実施の形態1、実施の形態2と同一動作を示す部分は同一番号を付与している。
【0044】
実施の形態3における誘導加熱調理器の基本的な動作は、実施の形態1、実施の形態2と同様であるが、実施の形態3においては誘導加熱を行う際に、図8で示すように、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向が決定される。図8(a)に示すように同一方向に巻かれた隣り合うコイルの場合は同位相の電流を流すと近接している部分では逆方向に流れることになる。したがって、図8(b)のようにコイル1、コイル2に高周波電流において逆位相となるような電流を流すことで、近接した部分で相互に影響し合って発生する磁束を強め合う方向に揃えることができ、結果として図8(c)のように磁束の強調効果による高温部を作り出すことができる。誘導加熱の強さは磁束量に比例するため、この部分は他の部位に比べ高温となり、対流の基となる上昇部分をより強くすることができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態においては、制御部701が、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように加熱コイル103に誘導加熱電力を与える際の電流方向を決定することで、対流の基となる強い上昇の流れを発生させ対流をより強くすることができる。
【0046】
なお、本実施の形態の動作は、操作部106から選択される被調理物101の調理メニューに合わせて自動的に本動作を行うようにしてもよいことは言うまでもない。
【0047】
(実施の形態4)
図9は、本発明の第4の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。図9において901は誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更する制御部であり、誘導加熱電力を供給する際は、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が打ち消しあうように加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向を決定する。なお、制御部901にはマイクロコンピュータを用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0048】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。なお、図面において、実施の形態1、実施の形態2と同一動作を示す部分は同一番号を付与している。
【0049】
実施の形態4における誘導加熱調理器の基本的な動作は、実施の形態1、実施の形態2と同様であるが、図10に示すように、実施の形態4においては誘導加熱を行う際に、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が打ち消しあうように加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向が決定される。図10(a)に示すように同一方向に巻かれた隣り合うコイルの場合は逆位相の電流を流すと近接している部分では同方向に流れることになる。し
たがって、図10(b)のようにコイル1、コイル2に高周波電流において同位相となるような電流を流すことで、近接した部分で相互に影響し合って発生する磁束を打ち消し合う方向に揃えることができる。結果として図10(c)のように、コイルの近接部においては、磁束の打ち消し効果により誘導加熱量は抑えられるが、隣り合う両側の加熱コイルの発熱部からの伝熱効果は存在するため、コイル2つ分の発熱量が適度に伝えられることにより、誘導加熱電力を与えられている加熱コイル全体に均一な発熱分布状態を作り出すことができる。
【0050】
これにより高温部のない均一な発熱部となり、対流を発生させる場合は、焦げ付きなどが発生しにくい状態で対流を発生させることができるようになる。また、被調理物101の特性が対流を発生しにくいものである場合は、焦げ付きを抑えることができる。
【0051】
以上のように、本実施の形態においては、制御部901が隣り合う加熱コイルで発生する磁束が打ち消しあうように加熱コイル103に誘導加熱電力を与える際の電流方向を決定することにより、定常的に加熱すると焦げが発生してしまうような(対流が生じにくい)高粘性の調理物に対し、加熱ゆらぎを与え、熱伝導を促進しながらあたためを行うことができる。
【0052】
なお、本実施の形態の動作は、操作部106から選択される被調理物101の調理メニューに合わせて自動的に本動作を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器は、複数の加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の加熱コイルに誘導加熱電力を供給し、残りの加熱コイルに誘導加熱電力を供給しないことにより、被加熱物である鍋の誘導加熱部分を対流の上昇部、誘導加熱部分から遠い部分を下降部として被加熱物内の被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることができる。また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【0054】
この動作は、誘導加熱コイルによる加熱部移動を、ガスなどにより発生する炎を直接被加熱物に当てる位置を移動することで実現すれば、誘導加熱機調理器以外にも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
101 被調理物
102 被加熱物
103 加熱コイル
104 インバータ
105 制御部
106 操作部
107 トッププレート
301 制御部
701 制御部
901 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加熱コイルによって被加熱物を誘導加熱する誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器は、同心円上に配置され、径の異なる内側コイルと外側コイルを備え、内側コイルと外側コイルに交互に誘導加熱電力を投入する誘導加熱調理器が開示されている。特許文献1の誘導加熱調理器では、内側コイルが被加熱物を加熱しているときは、外側コイルは停止しており、外側コイルが被加熱物を加熱しているときは、内側コイルは停止している。これにより、被加熱物内の被調理物に対流が生じて、熱が被調理物全体にいきわたる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2978069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、図11に示すように被加熱物内の被調理物に発生する対流は、軸対象平面の半分の中で閉じた流路しか形成できない。このような流路の対流では、被調理物がその場で鉛直方向に上下するような小さな流路しか形成できないため、調理者が箸などのかき混ぜ手段を用いて、被加熱物内の被調理物をかき混ぜるような大きな流路を作ることができない。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被加熱物内の被調理物を大きく動かしてかき混ぜるような効果を持つ対流路を、加熱制御により発生させることが可能な誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱調理器は、被調理物と、前記被調理物を入れる鍋などの被加熱物と、前記被加熱物を載置するためのトッププレートと、前記トッププレートの下方に略同一平面に配置され、異なる円心を有する複数の円環状の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルに誘導加熱電力を供給するインバータと、前記インバータの出力を制御する制御部と、前記制御部に加熱の開始/停止や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記制御部は、前記操作部の指示により、複数の前記加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の前記加熱コイルに誘導加熱電力を供給する量を、残りの加熱コイルの誘導加熱電力よりも多く制御することにより、被加熱物である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として前記被加熱物内の前記被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0007】
また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の誘導加熱調理器は、被加熱物である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として前記
被加熱物内の前記被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における対流の様子を示す図
【図3】本発明の実施の形態2における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態2における対流方向移動の様子を示す図
【図5】本発明の実施の形態2における対流方向移動(加熱部3つ)の様子を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における対流方向移動(コイル6つ)の様子を示す図
【図7】本発明の実施の形態3における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施の形態3における発熱分布の様子を示す図
【図9】本発明の実施の形態4における加熱調理器の構成を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態4における発熱分布の様子を示す図
【図11】従来の誘導加熱調理器における対流の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、被調理物と、前記被調理物を入れる鍋などの被加熱物と、前記被加熱物を載置するためのトッププレートと、前記トッププレートの下方に略同一平面に配置され、異なる円心を有する複数の円環状の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルに誘導加熱電力を供給するインバータと、前記インバータの出力を制御する制御部と、前記制御部に加熱の開始/停止や火力設定などを指示する操作部と、を有し、前記制御部は、前記操作部の指示により、複数の前記加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の前記加熱コイルに誘導加熱電力を供給する量を、残りの加熱コイルの誘導加熱電力よりも多く制御することにより、被加熱物である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として前記被加熱物内の前記被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0011】
また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明の制御部を、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更するように制御することにより、電力が多く供給されている部分を移動させて大きな対流ループの方向を鉛直方向に対し垂直な方向に移動して攪拌効果を発生させ、調理物の乳化を促進したり、溶解可能な固形物の溶解を早めたり、液体内にある固体の調理物を物理的に動かしてかき混ぜたりする効果を得る際に、誘導加熱電力を少なく供給している部分が保温電力の役割を果たすことで、加熱部分移動時に被加熱物をあたためる為に必要な時間遅れと、被加熱物から被調理物への熱伝達を始める為に必要な時間遅れをなくし、即応性を上げ効率よく加熱することが可能な誘導加熱調理を提供することができる。
【0013】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の制御部を、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように前記加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向を制御することで、対流の基となる強い上昇の流れを発生させ対流をより強くすることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0014】
第4の発明は、特に第1または第2の発明の制御部を、隣り合う加熱コイルで発生する
磁束が打ち消しあうように前記加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向を制御することにより、定常的に加熱すると焦げが発生してしまうような(対流が生じにくい)高粘性の調理物に対し、加熱ゆらぎを与え、熱伝導を促進しながらあたためを行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0015】
第5の発明は、特に第2〜4のいずれか1つの発明の制御部を、前記誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更しても、総電力量は一定であるように制御することにより、加熱部移動を行わない場合と調理感覚を概同一とすることが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0016】
第6の発明は、特に第5の発明の前記制御部を、前記誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において徐々に変更するように制御することにより、加熱部移動時における対流方向変化の際に無駄な乱流の発生を抑え、滑らかに対流方向移動を行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0017】
第7の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の誘導加熱調理器を、複数の加熱コイルは4つの加熱コイルであり、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを2つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを2つとしたことにより、底が円形の前記被加熱物を円形の加熱コイルでカバーする場合に最小限の加熱コイル数とした安価な構成で鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動を行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0018】
第8の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の誘導加熱調理器を、複数の加熱コイルは4つの加熱コイルであり、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを3つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを1つとしたことにより、同一エネルギーを投入する際の加熱コイル1個あたりの電力負担を減らすことで損失を抑え効率よく加熱を行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0019】
第9の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の誘導加熱調理器を、複数の加熱コイルは6つの加熱コイルであり、誘導加熱電力を供給する加熱コイルを3つとし、誘導加熱電力を供給しない加熱コイルを3つとしたことにより、鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動をより細かく行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0020】
第10の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の誘導加熱調理器を、複数の加熱コイルは6つの加熱コイルであり、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを4つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを2つとしたことにより、同一エネルギーを投入する際の加熱コイル1個あたりの電力負担を減らした上で、鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動をより細かく行うことが可能な誘導加熱調理器を提供することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。
【0023】
図1において、101は被調理物、102は被加熱物、103は加熱コイル、104はインバータ、105は制御部、106は操作部、107はトッププレートである。
【0024】
なお、被加熱物102には鍋、加熱コイル103には同一平面上に概同一サイズの異なる円心を有する円環状の4つのコイルを近接して並べ4つのコイルで1つの被加熱物102を加熱する構成、制御部105、操作部106にはマイクロコンピュータ、トッププレート107にはガラス板を用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0025】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0026】
まず、使用者が被調理物101を被加熱物102に入れ、被調理物101の温め開始を指示すると、制御部105はインバータ104を動作させ、加熱コイル103に高周波磁界を発生させ被加熱物102の誘導加熱を行う。この際、図2に示すように、加熱コイル103を構成する半分の面積を占めるコイル(例えば、1と4のコイル)に多くの誘導加熱電力を供給し、残りのコイル(例えば、2と3のコイル)に、保温電力程度の少ない誘導加熱電力を供給すると、被加熱物内102内の多くの誘導加熱電力が供給されている部分の比重が軽くなる。1と4のコイルで最も被加熱物102を加熱するのは、白抜きの矢印で示したコイル部の中央部であり、この部分に被調理物101に対流の基となる上昇の流れが生じる。そして、誘導加熱による熱は熱伝導でも被加熱物102を伝わっていくため、上昇した被調理物101が物理的に下降し易いのは誘導加熱されている部分から最も遠い場所ということになる。したがって、被加熱物102内の被調理物101に生じる対流の流路は図2に示すような被調理物101内の半面以上を通る大きな対流ループとなる。
【0027】
以上のように、本実施の形態においては、複数の加熱コイル103のうち、半数以上、全部未満の加熱コイル103に誘導加熱電力を供給する量を、残りの加熱コイルの誘導加熱電力よりも多くすることにより、被加熱物102である鍋の誘導加熱電力を多く供給している部分を対流の上昇部、誘導加熱電力を多く供給している部分から遠い部分を下降部として被加熱物102内の被調理物101に大きな流路ループを持つ対流を発生させることができる。
【0028】
なお、被調理物101が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【0029】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。図3において301は誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更する制御部である。なお、制御部301にはマイクロコンピュータを用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0030】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。なお、図面において、実施の形態1と同一動作を示す部分は同一番号を付与している。
【0031】
実施の形態2における誘導加熱調理器の基本的な動作は、実施の形態1と同様であるが、実施の形態2においては誘導加熱電力を多く供給する部分を所定時間毎(例えば10秒毎)に順番に変更する動作を行う。このように誘導加熱電力を多く供給する部分を変動させることで、被調理物101内に発生する対流ループの方向を周期的に変動させることが可能となり、被調理物101内に箸などで行うような物理的な攪拌効果を発生することができる。ここで、被調理物101がジャガイモなどの固形物と出し汁のような液体から構成される場合は、固形物を鍋内で転がし、出し汁を浸透させるような効果を得ることができる。
【0032】
この際、誘導加熱電力を少なく供給している部分が保温電力の役割を果たすことで、加
熱部分移動を行う時に、被加熱物をあたためる為に必要な時間遅れと、被加熱物から被調理物への熱伝達を始める為に必要な時間遅れをなくすことができるため、加熱位置変更の即応性を向上し効率よく加熱を行うことができる。
【0033】
以上のように、本実施の形態においては、制御部301が誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更することにより、電力が多く供給されている部分を移動させて大きな対流ループの方向を鉛直方向に対し垂直な方向に移動して攪拌効果を発生させ、調理物の乳化を促進したり、溶解可能な固形物の溶解を早めたり、液体内にある固体の調理物を物理的に動かしてかき混ぜたりする効果を得ることができ、この際に、誘導加熱電力を少なく供給している部分が保温電力の役割を果たすことで、加熱部分移動時に被加熱物をあたためる為に必要な時間遅れと、被加熱物から被調理物への熱伝達を始める為に必要な時間遅れをなくし、即応性を上げ効率よく加熱を行うことができる。
【0034】
なお本実施の形態では複数の加熱コイルを4つとして説明したが、加熱コイルは4つには限らない。
【0035】
ここで、図4に示すように、複数の加熱コイル103を4つの加熱コイルとして、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを2つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを2つとした場合には、底が円形の被加熱物102を円形の加熱コイルでカバーする場合に最小限の加熱コイル数とした安価な構成で鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動を行うことができる。
【0036】
また、図5に示すように、複数の加熱コイル103を4つの加熱コイルとして、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを3つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを1つとした場合には、同一エネルギーを投入する際の加熱コイル1個あたりの電力負担を減らすことで損失を抑え効率よく加熱を行うことができる。
【0037】
また、図6(a)に示すように、複数の加熱コイル103は6つの加熱コイルとして、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを3つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを3つとした場合には、鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動をより細かく行うことができる。
【0038】
また、図6(b)に示すように、複数の加熱コイルは6つの加熱コイルとして、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルを4つとし、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを2つとした場合には、同一エネルギーを投入する際の加熱コイル1個あたりの電力負担を減らした上で、鉛直方向に対し垂直な方向への対流の移動をより細かく行うことができる。
【0039】
また、制御部301が、誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更する際に、総電力量は一定となるように電力変動を制御することにより、被調理物に与えるエネルギーの総和に変動がなくなるため、加熱部移動を行わない場合と調理感覚を概同一とすることができる。
【0040】
また、制御部301が、誘導加熱電力を供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を供給しない加熱コイルを、調理中において徐々に変更する(例えば非変更時間15秒、変更時間3秒)ことにより、加熱部移動時における対流方向変化の際に無駄な乱流の発生を抑え、滑らかに対流方向移動を行うことができる。
【0041】
なお、図4、5、6の図面の加熱コイルは円環状の加熱コイルであるが、簡素化して示
している。
【0042】
(実施の形態3)
図7は、本発明の第3の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。図7において701は誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更する制御部であり、誘導加熱電力を供給する際は、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向を決定する。なお、制御部701にはマイクロコンピュータを用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0043】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。なお、図面において、実施の形態1、実施の形態2と同一動作を示す部分は同一番号を付与している。
【0044】
実施の形態3における誘導加熱調理器の基本的な動作は、実施の形態1、実施の形態2と同様であるが、実施の形態3においては誘導加熱を行う際に、図8で示すように、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向が決定される。図8(a)に示すように同一方向に巻かれた隣り合うコイルの場合は同位相の電流を流すと近接している部分では逆方向に流れることになる。したがって、図8(b)のようにコイル1、コイル2に高周波電流において逆位相となるような電流を流すことで、近接した部分で相互に影響し合って発生する磁束を強め合う方向に揃えることができ、結果として図8(c)のように磁束の強調効果による高温部を作り出すことができる。誘導加熱の強さは磁束量に比例するため、この部分は他の部位に比べ高温となり、対流の基となる上昇部分をより強くすることができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態においては、制御部701が、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように加熱コイル103に誘導加熱電力を与える際の電流方向を決定することで、対流の基となる強い上昇の流れを発生させ対流をより強くすることができる。
【0046】
なお、本実施の形態の動作は、操作部106から選択される被調理物101の調理メニューに合わせて自動的に本動作を行うようにしてもよいことは言うまでもない。
【0047】
(実施の形態4)
図9は、本発明の第4の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。図9において901は誘導加熱電力を多く供給する加熱コイルと、誘導加熱電力を少なく供給する加熱コイルを、調理中において変更する制御部であり、誘導加熱電力を供給する際は、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が打ち消しあうように加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向を決定する。なお、制御部901にはマイクロコンピュータを用いることでこの構成を容易に実現できる。
【0048】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。なお、図面において、実施の形態1、実施の形態2と同一動作を示す部分は同一番号を付与している。
【0049】
実施の形態4における誘導加熱調理器の基本的な動作は、実施の形態1、実施の形態2と同様であるが、図10に示すように、実施の形態4においては誘導加熱を行う際に、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が打ち消しあうように加熱コイルに誘導加熱電力を与える際の電流方向が決定される。図10(a)に示すように同一方向に巻かれた隣り合うコイルの場合は逆位相の電流を流すと近接している部分では同方向に流れることになる。し
たがって、図10(b)のようにコイル1、コイル2に高周波電流において同位相となるような電流を流すことで、近接した部分で相互に影響し合って発生する磁束を打ち消し合う方向に揃えることができる。結果として図10(c)のように、コイルの近接部においては、磁束の打ち消し効果により誘導加熱量は抑えられるが、隣り合う両側の加熱コイルの発熱部からの伝熱効果は存在するため、コイル2つ分の発熱量が適度に伝えられることにより、誘導加熱電力を与えられている加熱コイル全体に均一な発熱分布状態を作り出すことができる。
【0050】
これにより高温部のない均一な発熱部となり、対流を発生させる場合は、焦げ付きなどが発生しにくい状態で対流を発生させることができるようになる。また、被調理物101の特性が対流を発生しにくいものである場合は、焦げ付きを抑えることができる。
【0051】
以上のように、本実施の形態においては、制御部901が隣り合う加熱コイルで発生する磁束が打ち消しあうように加熱コイル103に誘導加熱電力を与える際の電流方向を決定することにより、定常的に加熱すると焦げが発生してしまうような(対流が生じにくい)高粘性の調理物に対し、加熱ゆらぎを与え、熱伝導を促進しながらあたためを行うことができる。
【0052】
なお、本実施の形態の動作は、操作部106から選択される被調理物101の調理メニューに合わせて自動的に本動作を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器は、複数の加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の加熱コイルに誘導加熱電力を供給し、残りの加熱コイルに誘導加熱電力を供給しないことにより、被加熱物である鍋の誘導加熱部分を対流の上昇部、誘導加熱部分から遠い部分を下降部として被加熱物内の被調理物に大きな流路ループを持つ対流を発生させることができる。また、被調理物が高粘性で対流が発生しない場合でも、半面で強火調理、半面で弱火調理といった複数の加熱調理を同時に行なうこともできる。
【0054】
この動作は、誘導加熱コイルによる加熱部移動を、ガスなどにより発生する炎を直接被加熱物に当てる位置を移動することで実現すれば、誘導加熱機調理器以外にも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
101 被調理物
102 被加熱物
103 加熱コイル
104 インバータ
105 制御部
106 操作部
107 トッププレート
301 制御部
701 制御部
901 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を載置するためのトッププレートと、前記トッププレートの下方の略同一平面上に互いに近接して配置され、略同一の形状およびサイズを有する複数の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルに電力を供給するインバータと、前記インバータを制御する制御部と、前記制御部に指示するための操作部と、を有し、前記制御部は、前記操作部の指示に応じて、前記複数の加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の加熱コイルに対する電力の供給量が、残りの加熱コイルに対する電力の供給量より多くなるように制御する誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、前記電力を多く供給する加熱コイルと前記電力を少なく供給する加熱コイルとを調理中に変更するように制御する請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記制御部は、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように前記加熱コイルに流れる電流方向を制御する請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記制御部は、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が打ち消しあうように前記加熱コイルに流れる電流方向を制御する請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、前記電力を多く供給する加熱コイルと前記電力を少なく供給する加熱コイルとを調理中に変更しても、総電力量は一定であるように制御する請求項2〜4に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記複数の加熱コイルは4つの加熱コイルからなり、前記制御手段は、前記4つの加熱コイルのうちの2つまたは3つの加熱コイルに対する電力の供給量が、残りの加熱コイルに対する電力の供給量より多くなるように制御する請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記複数の加熱コイルは6つの加熱コイルからなり、前記制御手段は、前記6つの加熱コイルのうちの3つまたは4つの加熱コイルに対する電力の供給量が、残りの加熱コイルに対する電力の供給量より多くなるように制御する請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項1】
被加熱物を載置するためのトッププレートと、前記トッププレートの下方の略同一平面上に互いに近接して配置され、略同一の形状およびサイズを有する複数の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルに電力を供給するインバータと、前記インバータを制御する制御部と、前記制御部に指示するための操作部と、を有し、前記制御部は、前記操作部の指示に応じて、前記複数の加熱コイルのうち、半数以上、全部未満の加熱コイルに対する電力の供給量が、残りの加熱コイルに対する電力の供給量より多くなるように制御する誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、前記電力を多く供給する加熱コイルと前記電力を少なく供給する加熱コイルとを調理中に変更するように制御する請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記制御部は、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が同一方向となるように前記加熱コイルに流れる電流方向を制御する請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記制御部は、隣り合う加熱コイルで発生する磁束が打ち消しあうように前記加熱コイルに流れる電流方向を制御する請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、前記電力を多く供給する加熱コイルと前記電力を少なく供給する加熱コイルとを調理中に変更しても、総電力量は一定であるように制御する請求項2〜4に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記複数の加熱コイルは4つの加熱コイルからなり、前記制御手段は、前記4つの加熱コイルのうちの2つまたは3つの加熱コイルに対する電力の供給量が、残りの加熱コイルに対する電力の供給量より多くなるように制御する請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記複数の加熱コイルは6つの加熱コイルからなり、前記制御手段は、前記6つの加熱コイルのうちの3つまたは4つの加熱コイルに対する電力の供給量が、残りの加熱コイルに対する電力の供給量より多くなるように制御する請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−110132(P2013−110132A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−48604(P2013−48604)
【出願日】平成25年3月12日(2013.3.12)
【分割の表示】特願2008−323698(P2008−323698)の分割
【原出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年3月12日(2013.3.12)
【分割の表示】特願2008−323698(P2008−323698)の分割
【原出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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