説明

誘導加熱調理用容器及び誘導加熱調理用の発熱体

【課題】導電性シートの両端部同士を連結して筒状に形成した発熱体を使用する場合において発熱体が確実に発熱するようにする。
【解決手段】非導電性材料からなる容器本体1の側壁部11に、電磁誘導によって発熱する発熱体2を備えた誘導加熱調理用容器であって、発熱体2は、電磁誘導で発熱可能な導電性シートの両端部同士が連結されることにより筒状に形成され、該発熱体2の連結部である重ね合わせ部20において、導電性シートの両端部同士が電気的に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を利用した誘導加熱調理器によって内容物を加熱することができる誘導加熱調理用容器と、該誘導加熱調理用容器に用いられる誘導加熱調理用の発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱を利用した誘導加熱調理器は、電磁調理器(IH調理器)とも称され、近年、いろいろな種類のものが提案されている。該誘導加熱調理器によって内容物を加熱するには、それに対応した容器を使用することが必要である。即ち、容器の全体を電磁誘導によって発熱する構成としたり、電磁誘導によって発熱する部分を容器の一部に備えたりすることが必要となる。容器の一部に電磁誘導によって発熱する発熱体を備える構成も種々のものが考えられ、例えば、電磁誘導によって発熱する発熱体を容器の側壁部に備えることがある(下記特許文献1、2)。そして、容器の側壁部に発熱体を備える場合には、下記特許文献2のように筒状の発熱体を容器本体に装着することが考えられる。
【0003】
ところで、本発明者らは、アルミニウム箔等の導電性シートを帯状にカットし、該帯状の導電性シートの両端部同士を接着剤によって接着して筒状にする方法を試みた。このようにして筒状に形成した発熱体を用いて容器を作製し、作製した容器に内容物を入れて加熱試験を行ったところ、内容物が加熱されない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−15487号公報
【特許文献2】特開2005−168648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、導電性シートの両端部同士を連結して筒状に形成した発熱体を使用する場合において発熱体が確実に発熱するようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、この課題を解決すべく、発熱体が発熱しないという現象の解明に向けて日々研究を重ねた結果、遂にその原因を突き止めた。即ち、導電性シートの両端部同士が電気的に接触していなければならないという知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
即ち、本発明に係る誘導加熱調理用容器は、非導電性材料からなる容器本体の側壁部に、電磁誘導によって発熱する発熱体を備えた誘導加熱調理用容器であって、発熱体は、電磁誘導で発熱可能な導電性シートの両端部同士が連結されることにより筒状に形成され、該発熱体の連結部において、導電性シートの両端部同士が電気的に接触していることを特徴とする。
【0008】
該構成の誘導加熱調理用容器にあっては、筒状に形成された発熱体の連結部において導電性シートの両端部同士の電気的な接触が確保されているので、筒状の発熱体が確実に発熱できる。
【0009】
特に、発熱体は、導電性シートの両端部同士が所定幅に亘って重ね合わせられた重ね合わせ部を備え、該重ね合わせ部には、接着層を介して導電性シート同士が重ね合わせられた接着領域と、接着層を介さずに導電性シート同士が重ね合わせられた接触領域とが存在していることが好ましい。該構成においては、重ね合わせ部における接着領域によって導電性シートの確実な連結状態が確保される。そして、重ね合わせ部における接触領域においては接着層が介在していないので、電気的な接触が確保されることとなる。尚、重ね合わせ部の構成としては、導電性シートの両端部内面同士が重ね合わせられた構成や、導電性シートの一端部内面が他端部外面に重ね合わせられた構成がある。
【0010】
更に、容器本体は射出成形により形成され、発熱体はインサート成形により容器本体と一体化されていることが好ましい。インサート成形によって発熱体を容器本体に一体化させることにより、容器本体に発熱体を別途装着する必要がない。導電性シートが特に薄い場合には筒状に形成した発熱体を容器本体に装着する工程は容易ではないが、このようにインサート成形によって両者を一体化させることにより製造工程が容易になる。また、発熱体を容器本体に接着させるための接着剤も不要になる。また、重ね合わせ部の段差により、容器本体と発熱体が良好に固定される。しかも、射出成形時の成形圧力が重ね合わせ部の接触領域に作用することで、該接触領域における電気的な接触状態がより一層強固に且つ確実なものになる。
【0011】
また更に、重ね合わせ部は、導電性シートの一端部内面が他端部外面に重ね合わせられて形成され、該重ね合わせ部の幅方向両端にはそれぞれ接着領域が設けられ、該両接着領域間に接触領域が設けられ、該発熱体が容器内面を構成していることが好ましい。導電性シートの一端部内面を他端部外面に重ね合わせて重ね合わせ部を形成すると、重ね合わせ部を容易に形成することができる。そして、重ね合わせ部の幅方向両端にそれぞれ接着領域が設けられているので、導電性シートの一端部における端縁や他端部における端縁が径方向に折れ曲がって突出したりするということが確実に防止される。更に、幅方向両端の接着領域によってその間に位置する接触領域において電気的な接触状態がより一層確実なものとなる。
【0012】
また本発明に係る誘導加熱調理用の発熱体は、非導電性材料からなる容器の側壁部に使用されて電磁誘導によって発熱する誘導加熱調理用の発熱体であって、電磁誘導で発熱可能な導電性シートの両端部同士が連結されて筒状に形成され、連結部において、導電性シートの両端部同士が電気的に接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明は、筒状に形成された発熱体の連結部において電気的な接触が確保されているので、安定した発熱が得られ、内容物を確実に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における誘導加熱調理用容器を示す縦断面図。
【図2】(a)は図1のA部拡大図、(b)は図1のB部拡大図。
【図3】同実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の製造工程を示す平面図であって、(a)は筒状に形成する前の状態を示し、(b)は筒状に形成した状態を示している。
【図4】同実施形態における誘導加熱調理用容器の製造工程を示す要部横断面図であって、(a)は樹脂を射出する前の型内部の状態を示し、(b)は樹脂を射出した後の型内部の状態を示している。
【図5】同実施形態における誘導加熱調理用容器を示す要部横断面図。
【図6】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態における誘導加熱調理用容器を示す要部横断面図。
【図7】本発明の他の実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の製造工程を示す平面図であって、(a)は筒状に形成する前の状態を示し、(b)は筒状に形成する際の状態を示している。
【図8】同実施形態における誘導加熱調理用容器を示す要部横断面図。
【図9】本発明の他の実施形態における誘導加熱調理用容器を示す要部横断面図。
【図10】本発明の他の実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の製造工程を示す要部断面図であって、(a)は筒状に形成する前の状態を示し、(b)は筒状に形成する際の状態を示している。
【図11】(a)は同実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の要部断面図、(b)は(a)の発熱体を用いて製造した誘導加熱調理用容器の要部横断面図。
【図12】本発明の他の実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の製造工程を示す要部断面図であって、(a)は筒状に形成する前の状態を示し、(b)は筒状に形成する際の状態を示している。
【図13】本発明の他の実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の製造工程を示す要部断面図であって、(a)は筒状に形成する前の状態を示し、(b)は筒状に形成する際の状態を示している。
【図14】本発明の他の実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の製造工程を示す要部断面図であって、(a)は筒状に形成する前の状態を示し、(b)は筒状に形成する際の状態を示している。
【図15】(a)は同実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の要部断面図、(b)は(a)の発熱体を用いて製造した誘導加熱調理用容器の要部横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る誘導加熱調理用容器について図1〜図5を参酌しつつ説明する。本実施形態における誘導加熱調理用容器は、有底筒状の容器本体1と、電磁誘導によって発熱する発熱体2とを備えている。
【0016】
容器本体1は、深底の円筒型のものであって、略平坦な底部10と、該底部10から上方に初めはテーパ状に拡径し、段差部15を介してその後は上方に垂直に延びる側壁部11と、該側壁部11の上端部から外方に向けて略水平に延設されたフランジ部12とを備えている。円盤状の底部10の周縁部には下方に向けて環状の脚部13が突設されている。側壁部11の外周面には、上下方向のリブ14が放射状に形成されている。該リブ14は、側壁部11のうち垂直に延びる径一定領域には設けられず、側壁部11のうちテーパ状に拡径した拡径領域の全高に亘って形成され、そのまま脚部13の外周面まで延設されている。リブ14の突出量は上述の段差部15と略等しく上下方向に沿って一定であり、従って、リブ14も側壁部11の拡径領域と同様に上方に向かって径方向外側に傾斜している。また、側壁部11の内周面の上下方向略中央部には、環状突起16が形成されている。
【0017】
かかる容器本体1は、熱可塑性樹脂から射出成形により形成されたものであり、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン等がある。特に、プロピレンエチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂が、軽く適度な機械的強度を有し、比較的安価で成形性も良く、適度な耐熱温度及び熱変形温度を有して、総合的に優れている。容器本体1を合成樹脂から構成すれば、軽いうえに焼却廃棄も比較的容易であるため、使い捨ての容器として好ましい。また、側壁部11の外側に筒状のシュリンクラベル等のラベルを装着してもよい。
【0018】
該容器本体1の側壁部11に発熱体2が設けられている。該発熱体2は、容器本体1の側壁部11の内周面の形状に合わせて筒状に形成されている。側壁部11のうちの拡径領域に発熱体2が設けられているので、発熱体2も側壁部11の拡径領域に合わせて上方に向けてテーパ状に拡径している。より詳細には、発熱体2は、環状突起16よりも下方に位置し、底部10よりも所定高さ上方に位置する。このように容器本体1の側壁部11の上下方向の一部に発熱体2が設けられていることから、側壁部11には、内側に発熱体2が設けられた領域と発熱体2が設けられていない領域とが存在する。図2に示すように、発熱体2は、その内周面全体が露出しており、この誘導加熱調理用容器の内周面の一部を構成している。発熱体2はその内周面が露出しつつもその厚さの全体が容器本体1の側壁部11に入り込むように埋設された状態にある。従って、発熱体2の上端面2aは容器本体1の側壁部11によって上側から覆われており、発熱体2の下端面2bも同様に容器本体1の側壁部11によって下側から覆われている。即ち、容器本体1の側壁部11のうち発熱体2が設けられていない領域における内周面と発熱体2の内周面とは略面一となっている。従って、容器本体1の側壁部11のうち発熱体2が設けられた領域における肉厚は、容器本体1の側壁部11のうち発熱体2が設けられていない領域における肉厚に比して、発熱体2の厚さの分だけ薄い。但し、容器本体1の側壁部11のうち発熱体2が設けられた領域の肉厚を外周側に向けて厚肉化することによって、両領域の肉厚を略同じ程度にしてもよい。
【0019】
該発熱体2は、帯状の導電性シートの長手方向(筒状にしたときの周方向)の両端部同士を連結して筒状に形成したものである。具体的には、導電性シートの一端部内面が他端部外面に接着剤によって貼り合わせられて所定幅の重ね合わせ部20が形成されている。この導電性シートとしてはアルミニウム箔が好ましく、その厚さは、例えば10乃至100μm、特に20乃至50μmが好ましい。尚、本実施形態においては、容器本体1の側壁部11の拡径領域に発熱体2が設けられているので、発熱体2も側壁部11の拡径領域に合わせて上方に向けてテーパ状に拡径している。従って、帯状の導電性シートは一直線状のものではなく、円弧状に湾曲したもの、即ち、中心部分のないドーナツ形状を所定の中心角で区画した扇形のものを使用して、それを筒状にして発熱体2としている。
【0020】
該発熱体2の製造方法の概要について説明すると、図3(a)のように、導電性シート50の一端部51には接着剤を塗布せず他端部52の片面にのみ接着剤を塗布する。該接着剤としては、例えばレトルトパウチ用のドライラミネート用接着剤が好ましい。接着剤を導電性シート50の他端部52の外面に短手方向(即ち上下方向)に沿って筋状に塗布し、また、導電性シート50の長手方向に間隔をあけて二箇所(二筋)塗布して接着剤層21を二本形成する。尚、例えばグラビア印刷やフレキソ印刷によって接着剤を塗布すると、接着剤の塗布工程が容易である。二本の接着剤層21のうち一方の接着剤層21は、導電性シート50の端縁に形成し、他方の接着剤層21は一方の接着剤層21から所定間隔隔ててそれと平行に形成する。そして、図3(b)のように導電性シート50の一端部51の内面を他端部52の外面に重ね合わせて二箇所の接着剤層21によって貼り合わせる。二箇所の接着剤層21の間には接着剤層21が介在していない領域がある。即ち、重ね合わせ部20には、接着剤層21を介して導電性シート50の一端部51の内面と他端部52の外面とが重ね合わせられた二つの接着領域の間に、接着剤層21を介さずに導電性シート50の一端部51の内面と他端部52の外面とが互いに電気的に接触する接触領域22が存在する。
【0021】
このように筒状に形成した発熱体2を金型の内部にインサートする。即ち、図4(a)のようにコア30とキャビティ31から構成される金型のうち、コア30の外側に発熱体2を被せる。そして、図4(b)のように、コア30とキャビティ31との間の空間に樹脂を射出して固化させて容器本体1を形成する。樹脂を射出する際の成形圧力によって接触領域22がより一層強固に密着する。また、成形圧力によって導電性シート50が全周に亘ってコア30に密着し、重ね合わせ部20の隣においては導電性シート50の一端部51側の内面が他端部52側の端面52aと接触することになる。
【0022】
このようにして射出成形により形成された誘導加熱調理用容器を金型から取り出す。図5のように、取り出された誘導加熱調理用容器においては、発熱体2が容器本体1に既に密着した状態にある。従って、発熱体2を別途接着剤等によって容器本体1に取り付ける作業は不要である。そして、重ね合わせ部20における二箇所の接着剤層21間の接触領域22において電気的な接触が確保されていると共に、導電性シート50の他端部52側の端面52aにおいても電気的な接触が確保されている。従って、発熱体2は電磁誘導によって確実に発熱することになり、内容物を安定して加熱することができる。また、発熱体2が容器内側に露出しているので、内容物を効率良く加熱することができる。しかも、二箇所の接着剤層21(接着領域)によって重ね合わせ部20の重ね合わせ状態が確実に維持される。更に、導電性シート50の他端部52側の端面52aに導電性シート50の一端部51側の内面が当接しているので、接着剤層21が内側に露出せず、接着剤層21と内容物との接触が防止される。尚、側壁部11に筒状の発熱体2を備えた誘導加熱調理用容器において内容物を加熱する場合、電磁調理器としては、例えば誘導加熱調理用容器が挿入可能な凹部を備えていて、該凹部の壁面内部に誘導加熱調理用容器の側面を加熱するためのコイルを備え、凹部底面には誘導加熱調理用容器が載置されて回転する回転体を備えたものが好ましい。この凹部に誘導加熱調理用容器を入れて回転体を回転させることにより、回転体と共に誘導加熱調理用容器も回転することになり、誘導加熱調理用容器を回転させながらその内容物を誘導加熱調理用容器の側面から加熱することができる。
【0023】
尚、本実施形態では、重ね合わせ部20に接着剤層21(接着領域)を二箇所設けたが、一箇所のみとしてもよい。例えば、図6のように、導電性シート50の一端部51の端縁側には接着剤層21を設けずに、導電性シート50の他端部52の端縁側にのみ接着剤層21を設けてもよい。導電性シート50の一端部51の端縁側に接着剤層21を設けない場合でも、図6(a)のように、成形圧力によって導電性シート50の一端部51が他端部52に押しつけられるので、導電性シート50の一端部51の内面が他端部52の外面に接触し、接触領域22によって電気的な接触が確保される。仮に、図6(b)のように、導電性シート50の一端部51の端縁が他端部52の外面から僅かに離間するような場合であっても、導電性シート50の他端部52側の端面52aに導電性シート50の一端部51側の内面が当接して電気的な接触が確保される。
【0024】
また、上記実施形態では、導電性シート50の一端部51の内面を他端部52の外面に重ね合わせて筒状に形成したが、導電性シート50の両端部51,52の内面同士を重ね合わせてもよい。例えば、図7(a)のように、導電性シート50の一端部51の内面と他端部52の外面にそれぞれ接着剤を塗布して接着剤層21を形成する。これらの接着剤層21は、何れも端縁に形成する。そして、図7(a)の矢印Yのように導電性シート50の他端部52側の所定領域を外面が内側となるように二つ折りにして接着剤層21によって固定し、図7(b)のように導電性シート50の他端部52側に二つ折り部24を形成する。そして、図7(a)、(b)の矢印Xのように導電性シート50の一端部51側を周回させて、他端部52側の二つ折り部24の外側に接着剤層21によって貼り合わせる。そして、上述したのと同様にインサート成形によって図8のような誘導加熱調理用容器を形成する。図8に示しているように、誘導加熱調理用容器の発熱体2は、導電性シート50の両端部51,52の内面同士が重ね合わせられると共に二つ折り部24を備えた重ね合わせ部20を有している。導電性シート50の一端部51の内面は二つ折り部24の外側において電気的に接触すると共に、二つ折り部24の折り返し部24aとも電気的に接触する。従って、電気的に接触している接触領域22の面積が大きくなり、より一層安定した加熱が得られる。また、筒状の発熱体2の内周面から接着剤層21が離れているので、内容物と接着剤層21との接触もより一層確実に防止される。
【0025】
尚、図9のように、二つ折り部24における接着剤層21を省略してもよい。但し、図8のように二つ折り部24において接着剤層21を設けることにより、二つ折り部24の折り返し状態が確実に維持されるので、好ましい。
【0026】
尚、導電性シート50の両面あるいは片面を接触領域となる部分を除いて非導電性の被覆層で被覆してもよい。該被覆層は、導電性シート50に接着剤を塗布することによって形成したり、導電性シート50に各種の合成樹脂フィルムをドライラミネート等の各種のラミネート法で積層することによって形成したりする。尚、合成樹脂フィルムとしては例えばCPPフィルムが使用できる。また、合成樹脂フィルムの厚さは、導電性シート50よりも薄くすることが好ましく、例えば20μm程度の厚さのものが好ましい。接着剤の塗布による被覆層も導電性シート50よりも薄くすることが好ましく、例えば20μm程度の厚さとする。
【0027】
導電性シート50の両面を被覆層で被覆する構成の一例としては、例えば図10(a)のように導電性シート50の一方の面にCPPフィルムからなるフィルム60を積層し、導電性シート50の他方の面に接着剤層を形成することが挙げられる。フィルム60は、導電性シート50の一端部51側の所定幅の領域を除いて導電性シート50の一方の面の全領域に積層する。導電性シート50の一方の面のうち一端部51側の所定幅の領域はフィルム60が積層されずに露出した状態の露出領域53となる。接着剤層は、上述したのと同様のレトルトパウチ用のドライラミネート用接着剤を塗布することにより形成され、導電性シート50の他端部52側の端縁近傍に所定幅の露出領域54を残すようにして導電性シート50の他方の面の全領域に形成する。具体的には、導電性シート50の他方の面における他端部52側の端縁に細幅の接着剤層70を形成し、該細幅の接着剤層70の隣に露出領域54を残し、該露出領域54の端から導電性シート50の一端部51側の端縁までの部分に主接着剤層71を形成する。即ち、主接着剤層71の一端部71aは導電性シート50の一端部51側の端縁に位置し、主接着剤層71の他端部71bは露出領域54の隣に位置する。尚、細幅の接着剤層70は、図3に示した一方の接着剤層21と同様である。
【0028】
このような積層シートを図10(b)のようにフィルム60が内側となるようにして筒状に形成して、導電性シート50の他端部52の外側に一端部51を重ね合わせる。図11(a)のように筒状に形成された発熱体2は、その重ね合わせ部20の幅方向両端においてそれぞれ細幅の接着剤層70と主接着剤層71の他端部71bを介して導電性シート50同士が重ね合わせられた接着領域を備えることになる。また、両接着領域間には、導電性シート50の一方の面の露出領域53と他方の面の露出領域54とが重ね合わせられて互いに接触する接触領域22が形成され、該接触領域22において電気的な接触が確保される。
【0029】
その後、上述したのと同様にインサート成形によって発熱体2の外側に容器本体1を形成する。その際の成形圧力によって図11(b)のようにフィルム60の一端部60aが導電性シート50の他端部52側の端面52aを覆うように内側に押されて移動し、フィルム60の一端部60aと他端部60bとの間の段差が解消され、フィルム60の一端部60aは他端部60bと略面一となって発熱体2の内周面及び容器の内周面となる。しかも、フィルム60がCPPフィルムから構成されてヒートシール性を備えているので、フィルム60の一端部60aと他端部60bとが成形時の熱で互いにヒートシールされて密着し、両者の間の隙間が密閉される。従って、内容物と細幅の接着剤層70との接触が確実に防止され、それと同時に導電性シート50の他端部52側の端面52aへの内容物の接触も確実に防止される。即ち、筒状となった導電性シート50はフィルム60によって内側から完全に覆われることになり、導電性シート50と内容物との接触が確実に防止される。従って、内容物の特性上、導電性シート50との接触を防止したい場合、例えば、内容物の酸やアルカリによって導電性シート50が腐食する可能性がある場合や、内容物の風味が落ちる可能性がある場合等において、特に効果が大きい。
【0030】
一方、導電性シート50の外周側はその略全体が主接着剤層71を介して容器本体1と一体化することになり、主接着剤層71によって容器本体1と発熱体2とが確実に密着する。
【0031】
尚、導電性シート50の他方の面にフィルム61を積層してもよい。例えば、図12のように、導電性シート50の一方の面にフィルム60を積層すると共に他方の面にもフィルム61を積層する。尚、導電性シート50の他方の面の他端部52側には図3に示したのと同様に二本の接着剤層72,73を形成し、フィルム61で導電性シート50の他方の面の主要領域を被覆する。該フィルム61の一端部61aは導電性シート50の一端部51側の端縁に位置し、フィルム61の他端部61bは接着剤層73の隣に僅かに離間して位置する。そして、フィルム60が内側となるようにして導電性シート50の他端部52の外側に一端部51を重ね合わせて二本の接着剤層72,73によって接着して筒状とする。導電性シート50の一方の面の露出領域53と他方の面における両接着剤層72,73間の露出領域54とが重ね合わせられて互いに接触することで接触領域22が形成されて、連結部における電気的な接触が確保される。また、導電性シート50の他方の面を被覆するフィルム61は発熱体2の外周面となって容器本体1と密着する。従って、導電性シート50の他方の面を被覆するフィルム61には容器本体1とヒートシール可能な合成樹脂フィルムを使用することが好ましい。容器本体1をポリプロピレン系樹脂から構成する場合には特にCPPフィルムが好ましい。このように導電性シート50の他方の面を被覆するフィルム61として容器本体1とヒートシール可能な合成樹脂フィルムを使用すれば、成形時の熱でフィルム61と容器本体1とがヒートシールされる結果、発熱体2と容器本体1との間の良好な密着性が得られる。
【0032】
尚、図12では導電性シート50の他方の面の他端部52にフィルム61とは別に接着剤を塗布することで接着層としての接着剤層72,73を形成して、該接着剤層72,73を介して導電性シート50同士が重ね合わせられた接着領域を形成したが、導電性シート50の他方の面の他端部52に接着剤層72,73を形成せずに、ヒートシール可能なフィルム同士をヒートシールさせることによって接着層としてのヒートシール層を形成して、該ヒートシール層を介して導電性シート50同士が重ね合わせられた接着領域を形成してもよい。
【0033】
例えば、図13のように、導電性シート50の一方の面には、上述のフィルム60を積層すると共に該フィルム60の一端部60aとの間に露出領域53を形成しつつ導電性シート50の一端部51側の端縁には細幅のフィルム62を積層する。また、導電性シート50の他方の面には、上述のフィルム61を積層すると共に該フィルム61の他端部61bとの間に露出領域54を形成しつつ導電性シート50の他端部52側の端縁には接着剤層72に代えて細幅のフィルム63を積層する。即ち、導電性シート50の一方の面は露出領域53を除いてフィルム60,62によって被覆され、導電性シート50の他方の面は露出領域54を除いてフィルム61,63によって被覆される。これらのフィルム60,61,62,63は互いにヒートシール可能であって、例えばCPPフィルムから構成する。従って、フィルム60が内側となるようにして筒状の発熱体2を形成すると、フィルム61の他端部61bの外側に細幅のフィルム62がヒートシールされて接着領域が形成され、細幅のフィルム63の外側にフィルム60の一端部60aがヒートシールされて接着領域が形成され、両接着領域間には露出領域53,54同士が接触した接触領域22が形成され、該接触領域22により連結部における電気的な接触が確保される。
【0034】
また、導電性シート50の両面に被覆層を形成する場合においても図7乃至図9で示した構成と同様に導電性シート50の片面同士(内面同士や外面同士)を重ね合わせて筒状にしてもよい。例えば、図14(a)ように、導電性シート50の一方の面の大部分にフィルム60を積層すると共に一端部51側の端縁には細幅の接着剤層74を形成し、導電性シート50の他方の面にはフィルム61を積層してその両側には露出領域54,55をそれぞれ形成すると共に他端部52側の端縁には細幅の接着剤層75を形成する。そして、図14(b)のようにフィルム61が内側となるようにして導電性シート50の両端部51,52の内面同士を合掌張りに重ね合わせて接着剤層75によって接着する。これにより両露出領域54,55同士が重なり合って接触して接触領域22が形成される。その後更に、図15(a)のように、導電性シート50の一端部51が二つ折りになるように重ね合わせ部20を一端部51側に折り曲げて導電性シート50の一端部51側に二つ折り部24を形成する。但し、図7において示したように先に二つ折り部24を形成してもよい。
【0035】
その後、図15(b)のようにインサート成形によって発熱体2の外周側に容器本体1を形成して誘導加熱調理用容器を形成する。二つ折り部24の折り返し部24aの全体あるいは大部分はフィルム61の一端部61aによって被覆されており、その一端部61aにフィルム61の他端部61bが合掌張り状に重なり合い、成形時の熱によって互いにヒートシールされて密着し、フィルム61の両端部61a,61b間の隙間が密閉される。即ち、両露出領域54,55から形成された接触領域22は、接着剤層75と、フィルム61の両端部61a,61b同士がヒートシールされて形成されたヒートシール層との間に形成され、その接触領域22に成形圧力も効果的に作用して、電気的な接触が確保される。また、フィルム61の両端部61a,61b同士がヒートシールされて隙間が密閉されるので、内容物と接着剤層75との接触が確実に防止される。更に、筒状となった導電性シート50はフィルム61によって内側から完全に覆われることになり、導電性シート50と内容物との接触が確実に防止される。従って、例えば、内容物の酸やアルカリによって導電性シート50が腐食する可能性がある場合や、内容物の風味が落ちる可能性がある場合のように、内容物の特性上、導電性シート50との接触を防止したい場合において特に効果が大きい。しかも、例えば図11(b)に示した構成ではフィルム60の他端部60bの端面が一端部60aと密着するのに対して、図15(b)の構成ではフィルム61の両端部61a,61bの内面同士が所定幅で重なり合ってヒートシールされるので、ヒートシールされた領域の面積が大きく、従って、より一層確実な密閉状態が得られて導電性シート50と内容物との接触が防止される。尚、導電性シート50の外周側はその略全体がフィルム60を介して容器本体1と一体化することになり、フィルム60が容器本体1とヒートシールされることによって発熱体2と容器本体1とが確実に密着し一体化する。尚、この実施形態においても、例えばフィルム60に代えて図10のような主接着剤層としてもよく、また、接着剤層74を形成せずに一方の面の全体にフィルム60を積層してもよい。
【0036】
また、容器本体1の形状も適宜設計変更可能であって、角筒状のものであってもよく、底の浅いタイプでもよい。
【0037】
更に、調理に際して容器内に内容物を入れる以外に、予め容器内に内容物が入れられて蓋で容器が密封されたものであってもよい。
【0038】
また、発熱体2が容器の内側に露出した構成としたが、発熱体2の一部のみが内側に露出してもよく、また、発熱体2が全く露出しない構成であってもよい。また、接着剤に代えてテープによって導電性シート50の両端部51,52同士を連結したり、ヒートシールによって連結したりしてもよく、接着層としてのヒートシール層を介して導電性シート50同士が重ね合わせられた接着領域を形成してもよい。更に、導電性シート50の両端部51,52同士を超音波溶接等の各種の溶接手法によって連結してもよい。何れにしても、導電性シート50の両端部51,52同士が電気的に接触した状態で筒状に形成されていればよい。
【0039】
また更に、容器本体1と発熱体2を接着剤等によって固定してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 容器本体
2 発熱体
2a 上端面
2b 下端面
10 底部
11 側壁部
12 フランジ部
13 脚部
14 リブ
15 段差部
16 環状突起
20 重ね合わせ部(連結部)
21 接着剤層(接着層)
22 接触領域
24 二つ折り部
24a 折り返し部
30 コア
31 キャビティ
50 導電性シート
51 一端部
52 他端部
52a 端面
53 露出領域
54 露出領域
55 露出領域
60 フィルム
60a 一端部
60b 他端部
61 フィルム
61a 一端部
61b 他端部
62 フィルム
63 フィルム
70 接着剤層(接着層)
71 主接着剤層(接着層)
71a 一端部
71b 他端部
72 接着剤層(接着層)
73 接着剤層(接着層)
74 接着剤層
75 接着剤層(接着層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料からなる容器本体の側壁部に、電磁誘導によって発熱する発熱体を備えた誘導加熱調理用容器であって、
発熱体は、電磁誘導で発熱可能な導電性シートの両端部同士が連結されることにより筒状に形成され、
該発熱体の連結部において、導電性シートの両端部同士が電気的に接触していることを特徴とする誘導加熱調理用容器。
【請求項2】
発熱体は、導電性シートの両端部同士が所定幅に亘って重ね合わせられた重ね合わせ部を備え、該重ね合わせ部には、接着層を介して導電性シート同士が重ね合わせられた接着領域と、接着層を介さずに導電性シート同士が重ね合わせられた接触領域とが存在している請求項1記載の誘導加熱調理用容器。
【請求項3】
容器本体は射出成形により形成され、発熱体はインサート成形により容器本体と一体化されている請求項2記載の誘導加熱調理用容器。
【請求項4】
重ね合わせ部は、導電性シートの一端部内面が他端部外面に重ね合わせられて形成され、該重ね合わせ部の幅方向両端にはそれぞれ接着領域が設けられ、該両接着領域間に接触領域が設けられ、該発熱体が容器内面を構成している請求項3記載の誘導加熱調理用容器。
【請求項5】
非導電性材料からなる容器の側壁部に使用されて電磁誘導によって発熱する誘導加熱調理用の発熱体であって、
電磁誘導で発熱可能な導電性シートの両端部同士が連結されて筒状に形成され、連結部において、導電性シートの両端部同士が電気的に接触していることを特徴とする誘導加熱調理用の発熱体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−166017(P2012−166017A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−11953(P2012−11953)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】