説明

誘導溶解炉の制御装置

【課題】高い力率を保持しつつ電力制御が可能な誘導溶解炉の制御装置を提供する。
【解決手段】位相差検出回路21aは、出力電圧信号生成回路19の出力電圧信号(g)と出力電流信号生成回路20の出力電流信号(h)の位相差を検出する。位相差補正回路21aは、基準周波数保持回路26から基準周波数信号(n1)を受信すると、制御信号変換部30は、基準周波数信号(n1)を基にスイッチング素子の制御信号(c)に生成する。位相差補正回路21bは、位相差検出回路21aで検出される位相差が閾値となった場合、基準周波数信号(n1)を補正し、基準周波数信号(n2)を出力する。制御信号変換部30は、補正されて基準周波数信号(n1)からわずかに変化した基準周波数信号(n2)を基にスイッチング素子の制御信号(c)を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
加熱コイルの熱によって炉内に収納された被溶解材を溶解させる誘導溶解炉の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の誘導溶解炉の制御装置には、スイッチング素子を使用した電圧型インバータが用いられており、このインバータを負荷共振周波数に同期した共振状態で動作させている。このような装置では、電圧型インバータの出力電圧と出力電流の位相差を検出してインバータ出力周波数を調整し、被溶解材の状態により負荷共振周波数が変化した場合にも共振状態を保持できるようになっている。
【0003】
例えば、上記スイッチング素子を使用した制御手法としては、次の手法が知られている。インバータの出力電流と出力電圧との位相差γを検出し、検出した位相差γが位相差最下限γを超えたと判別した場合、すなわち負荷共振周波数が調整困難となる状態に近づいた場合、V/fコンバータを作動させ、インバータの出力周波数を一度最高周波数まで引き上げて調整する手法である(特許文献1、〔0026〕,〔0027〕,図10,11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−071444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の制御手法では、位相差γが位相差最下限γを超える毎に最高周波数まで引き上げる制御をするため、一時的に共振状態、すなわち力率が最も高い状態から離れてしまう。したがって、高い力率を保持して被溶解材を安定的に加熱・溶解することが困難であった。
【0006】
以上の事情に鑑みて、本発明は、高い力率を保持しつつ電力制御が可能な誘導溶解炉の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の誘導溶解炉の制御装置は、加熱コイルの熱によって炉内に収納された被溶解材を溶解させる誘導溶解炉の制御装置であって、前記加熱コイルに供給する高周波電力を生成する高周波電力生成部と、前記高周波電力の電圧と電流の位相差を検出する位相差検出部と、前記位相差検出部により検出された前記位相差に応じて前記高周波電力を生成するように前記高周波電力生成部の制御信号を生成する制御信号生成部とを備え、前記制御信号生成部は、前記高周波電力生成部に対して予め設定された起動周波数から前記位相差が小さくなるように前記制御信号を変化させると共に、前記位相差が予め設定された閾値となった場合には前記位相差を一定値だけ大きくする制御信号を生成することを特徴とする。
【0008】
かかる第1発明の誘導溶解の制御装置によれば、高周波電力生成部が生成する高周波電力を加熱コイルに供給するので、加熱コイルにジュール熱が発生し、被溶解材を加熱・溶解することができる。
【0009】
制御信号生成部は、高周波電力生成部を制御するための制御信号を生成するが、その際に位相差検出部が検出した位相差に応じた高周波電力を生成する。このため、位相差の変化により制御信号を調整することができる。
【0010】
ここで、高周波電力の電圧と電流の位相差がゼロであるとき、力率は最大の1となる。そして、制御信号生成部は、力率が1に近い状態となるように制御信号を生成する。
【0011】
制御装置の起動時には、制御信号生成部は、予め設定された起動周波数から位相差が小さくなるように、すなわち力率が1に近づくように制御信号を生成する。
【0012】
また、位相差が予め設定された閾値となった場合、すなわち力率が低下して高周波電力の制御が不安定領域に移行するような場合には、制御信号生成部は、力率を1からできる限り離れないように、位相差を一定値だけ大きくする制御信号を生成する。これは、位相差が閾値となった場合に、再度、起動周波数から開始する方法とは異なり、力率が大きく低下することがない。
【0013】
したがって、第1発明の誘導溶解の制御装置では、高い力率を保持しながら被溶解材を加熱・溶解することができる。
【0014】
第2発明の誘導溶解炉の制御装置は、第1発明に記載の誘導溶解炉の制御装置において、前記高周波電力生成部は、交流電源を直流電力に変換する順変換器と、第1および第2スイッチング素子を用いてブリッジ回路を構成することにより前記直流電力を前記高周波電力に変換する逆変換器とを備え、前記逆変換器は、前記高周波電力生成部の制御信号により第1および第2スイッチング素子を交互に動作させることで、前記直流電力を前記高周波電力に変換することを特徴とする。
【0015】
かかる第2発明の誘導溶解炉の制御装置によれば、高周波電力生成部は、大きく順変換器と、逆変換器で構成される。順変換器は、交流電源(50Hzまたは60Hz)を、直流電力に変換する。
【0016】
次に、逆変換器は、加熱コイルに供給する電力を生成するために、順変換器で生成された直流電力を再度、交流電力に変換する。ここで、逆変換器には第1および第2のスイッチング素子があり、ブリッジ回路を構成している。
【0017】
ブリッジ回路は、制御信号を与えてこれらスイッチング素子を交互に動作させると、回路を流れる直流電流の経路が順次切換わるので、加熱コイルに供給する高周波電力を生成することができる。
【0018】
したがって、第2発明の誘導溶解炉の制御装置では、加熱コイルに供給される高周波電力の生成を簡易な構成で実現し、高い力率を保持しながら被溶解材を加熱・溶解することができる。
【0019】
第3発明の誘導溶解炉の制御装置は、第1または第2発明に記載の誘導溶解炉の制御装置において、前記制御信号生成部は、モノマルチ回路を備え、前記位相差が予め設定された閾値となった場合に、該モノマルチ回路が一定時間出力する内部信号により該位相差を一定値だけ大きくする制御信号を生成することを特徴とする。
【0020】
かかる第3発明の誘導溶解炉の制御装置によれば、位相差検出部により検出された位相差が予め設定された閾値となった場合に、発振器であるモノマルチ回路が一定時間内部信号を出力する。
【0021】
このとき、制御信号生成部は、モノマルチ回路が出力した内部信号をトリガとして、その位相差を一定値だけ大きくする制御信号を生成する。
【0022】
したがって、第3発明の誘導溶解炉の制御装置では、位相差が閾値となった場合、一定時間に限り、一定値だけ位相差を大きくするため動作し、あとは高い力率を保持しながら被溶解材を加熱・溶解させることが可能となる。
【0023】
第4発明は、第1乃至第3発明の何れか1に記載の誘導溶解炉の制御装置において、前記高周波電力生成部は、前記高周波電力の電圧を検出する交流電圧検出部と、前記高周波電力の電流を検出する交流電流検出部とをさらに備え、前記位相差検出部は、前記交流電圧検出部により検出された電圧の各立ち上がりのエッジ幅をON信号として、リセット・セット・フリップ・フロップ回路を介して生成された出力電圧信号と、前記交流電流検出部により検出された前記高周波電力の電流の立ち上がりおよび立ち下りのエッジ幅をON信号として、リセット・セット・フリップ・フロップ回路を介して生成された出力電流信号との位相差を検出することを特徴とする。
【0024】
かかる第4発明の誘導溶解炉の制御装置によれば、位相差検出部は、交流電圧検出部により検出された高周波電力の電圧から次のようにして出力電流信号を生成する。
【0025】
出力電圧信号は、交流電圧検出部により検出された高周波電力の電圧そのものではなく、電圧の各立ち上がりのエッジ幅をON信号として、リセット・セット・フリップ・フロップ回路を介して生成された信号である。
【0026】
リセット・セット・フリップ・フロップ回路は、最初に入力された電圧の立ち上がりエッジと、次に入力された電圧の立ち上がりエッジを記憶し、両エッジ幅をON信号とするパルスを出力する。このため、簡易な回路で出力電圧信号を生成することができる。
【0027】
また、位相差検出部は、交流電流検出部により検出された高周波電力の電流から次のようにして出力電流信号を生成する。
【0028】
出力電流信号は、交流電流検出部により検出された高周波電力の電流そのものではなく、電流の立ち上がりおよび立ち下りのエッジ幅をON信号として、リセット・セット・フリップ・フロップ回路を介して生成された信号である。
【0029】
この場合も、リセット・セット・フリップ・フロップ回路は、入力された電流の立ち上がりエッジおよび立ち下りエッジを記憶し、両エッジ幅をON信号とするパルスを出力する。このため、簡易な回路で出力電流信号を生成することができる。
【0030】
したがって、第4発明の誘導溶解炉の制御装置では、位相差検出部が、上記処理で出力された出力電圧信号と出力電流信号の位相差を検出するため、簡易な構成で位相差を確実に検出し、高い力率を保持しながら被溶解材を加熱・溶解させることが可能となる。
【0031】
第5発明は、第1乃至第4発明の何れか1に記載の誘導溶解炉の制御装置において、前記第1および第2スイッチング素子は共にIGBT素子であり、前記制御信号生成部は、前記高周波電力生成部に対して予め設定された起動周波数から前記位相差が小さくなるように前記IGBT素子の動作周波数を低下させる制御信号を生成すると共に、該位相差が前記閾値となった場合には、該位相差を一定値だけ大きくするため前記IGBT素子の動作周波数を一定値だけ上昇させる制御信号を生成することを特徴とする。
【0032】
かかる第5発明の誘導溶解炉の制御装置によれば、第1および第2スイッチング素子は共にIGBT素子であるので、制御装置の起動時に、制御信号生成部は、予め設定された起動周波数から位相差が小さくなるように、すなわち力率が1に近づくようにIGBT素子の動作周波数を低下させる制御信号を生成する。
【0033】
しかし、制御信号生成部は、位相差検出部により検出される位相差が閾値となった場合、この位相差を一定値だけ大きくする。このとき、制御信号生成部は、IGBT素子の動作周波数を上昇させる制御信号を生成する。
【0034】
したがって、第5発明の誘導溶解炉の制御装置では、、逆変換器にIGBT素子を用いた場合にも、動作周波数の制御が困難になることを防止し、高い力率を保持しながら被溶解材を加熱・溶解させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】誘導溶解炉とその制御装置の構成を示す全体構成図。
【図2】制御装置中の制御回路の内部構成を示す構成図。
【図3】図2の出力電圧信号生成回路の内容を示す説明図。
【図4】図2の出力電流信号生成回路の内容を示す説明図。
【図5】(a)図2の位相差検出回路の内容を示す説明図と、(b)位相差補正回路の内容を示す説明図。
【図6】(a)通常の遅れ力率の場合の位相差補正回路の動作を示す説明図と、(b)遅れ力率が不足した場合の位相差補正回路の動作を示す説明図。
【図7】インバータ動作周波数の位相差補正制御の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1を参照して、本実施形態の誘導溶解炉の制御装置について説明する。
【0037】
誘導溶解炉とは、炉内に収納された被溶解材を加熱コイルに発生するジュール熱により溶解させるものである。また、装置全体は、電源1と、受電ユニット2と、電力変換装置4と、誘導溶解炉15と、コントローラ18とで構成される。以下、各構成の詳細を説明する。
【0038】
電源1は、定格の交流電源(50Hzまたは60Hz)であって、受電ユニット2に接続されている。
【0039】
受電ユニット2は、誘導溶解炉への電源電通・停止と故障発生時の電源遮断を行う。その内部には、パワーヒューズ2aと、遮断器2bと、変換装置用変圧器3を備えている。
【0040】
パワーヒューズ2aは、短絡事故時に電流を遮断する。また、遮断器2bは、電源の通電と停止に伴う開閉動作をする。
【0041】
変換装置用変圧器3は、電力変換装置4が所定の電圧を出力できるように、電力変換装置4への入力電圧を調整する。変換装置用変圧器3の一次側には三相商用電源が入力される。二次側には一次側に対して30°位相が進んだ電圧が出力され、三次側は一次側に対して同位相の電圧が出力される。
【0042】
電力変換装置4は、50Hzまたは60Hzの商用電源から任意の高周波電力を生成するための装置であり、変換装置用変圧器3に接続されている。電力変換装置4は、その内部に、順変換器ユニット4aと、逆変換器ユニット4bと、高周波整合ユニット4cと、制御回路11を備えている。
【0043】
なお、電力変換装置4は、本発明の制御装置に相当する。また、順変換器ユニット4a、逆変換器ユニット4b、高周波整合ユニット4cは、本発明の高周波電力生成部を構成する。
【0044】
順変換器ユニット4aは、交流を直流に変換する装置である。その内部には、交流/直流変換器を構成するダイオード式順変換器(以下、順変換器と略す)5a、5bと、この出力電圧リプルを平滑する直流リアクトル6を備えている。
【0045】
逆変換器ユニット4bは、直流を交流に変換する装置である。その内部には、直流/交流変換器であるIGBT式逆変換器(以下、逆変換器と略す)10a、10bを備えている。以下、逆変換機10a、10bをまとめてインバータ10ということがある。
【0046】
IGBTとは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称であり、絶縁ゲートバイポーラトランジスタのことである。また、逆変換器10a、10bは、それぞれ本発明の第1、第2スイッチング素子に相当する。
【0047】
図1に示す通り、逆変換機10a、10bと、後述する高周波コンデンサ12a、12bはハーフ・ブリッジ回路を構成しており、逆変換機10a、10bを交互にON/OFFすることにより、高周波電圧を発生させている。
【0048】
さらに、逆変換器ユニット4bは、その内部に、順変換器5a、5bの出力リプルと逆変換器10a、10bの動作に伴う電圧変動を平滑する直流コンデンサ7と、直流電圧を検出して直流電圧(a)を出力する直流電圧検出器8と、直流電流を検出して直流電流(b)を出力する直流電流検出器9を備えている。
【0049】
直流電圧(a)、直流電流(b)は、直流電力を算出するために用いられるので、両信号は共に制御回路11に入力される。なお、制御回路11の詳細については後述する。
【0050】
高周波整合ユニット4cは、その内部に、力率の調整に用いられる力率調整用高周波コンデンサ(以下、高周波コンデンサと略す)12a、12bを備えている。高周波コンデンサ12a、12bは、誘導溶解炉15が低力率であるため、負荷力率を改善する。また、誘導溶解炉15内の加熱コイル16から負荷共振周波数を生成する。
【0051】
なお、一般的に高周波コンデンサ12a、12bは同容量のものが使用されるが、容量は相違していても動作は可能である。
【0052】
さらに、高周波整合ユニット4cは、その内部に、逆変換器10a、10bから出力され加熱コイル16へ流れる通電電流(d)を検出する通電電流検出器13と、加熱コイル16に印加される負荷電圧(e)を検出する負荷電圧検出器14を備えている。なお、通電電流検出器13は本発明の交流電流検出部に、負荷電圧検出器14は本発明の交流電圧検出部にそれぞれ相当する。
【0053】
通電電流(d)は、後述する電流一定制御ACRに用いられ、この制御により、逆変換器10a、10bを過電流から保護する。また、負荷電圧(e)は、後述する電圧一定制御AVRに用いられ、この制御により、高周波コンデンサ12a、12bを過電圧から保護する。
【0054】
また、通電電流(d)および負荷電圧(e)は、電力変換装置4内部の制御回路11に入力され、逆変換器10a、10bの制御信号、すなわちIGBTゲート信号(c)を生成するために用いられる。
【0055】
誘導溶解炉15は、被溶解材17を加熱・溶解する装置である。誘導溶解炉15は、加熱コイル16を備えており、被溶解材17は炉内に収納される。誘導溶解炉15は、高周波電力が加熱コイル16に供給されることにより、炉内の被溶解材17に渦電流を発生させる。そして、この渦電流と被溶解材17がもつ固有の内部抵抗とによるジュール熱によって被溶解材17を加熱・溶解する。
【0056】
コントローラ18は、コントローラ制御信号(f)により装置全体の運転・停止や被溶解材17への電力供給調整を行う。また、装置構成機器の破損・故障を防止するための保護も行う。
【0057】
次に、図2〜5を参照して制御回路11の構成について説明する。
【0058】
まず、図2を参照して制御装置中の制御回路11の内部構成について説明する。
【0059】
図2の制御回路11は、第1〜第3系統の回路で構成されている。
【0060】
第1系統の回路は、主にIGBTゲート信号(c)を生成するために用いられる基準周波数を生成する回路であって、電圧一定制御回路22と、電流一定制御回路23と、電力一定制御回路24と、遅れ優先回路25と、基準周波数保持回路26とで構成される。
【0061】
第2系統の回路は、主にIGBTゲート信号(c)を生成するために用いられる位相差を検出する回路であって、出力電圧信号生成回路19、出力電流信号生成回路20、位相差検出回路21aとで構成される。
【0062】
第3系統の回路は、主に基準周波数と位相差の情報を基にIGBTゲート信号(c)を生成する回路であって、位相差補正回路21b等で構成される制御信号生成部30の部分である。
【0063】
まず、第1系統の回路について説明する。
【0064】
電圧一定制御回路(AVR:Automatic Voltage Regulator)22は、高周波コンデンサ12a、12bが過電圧の場合に、インバータ10の動作周波数を制御する回路である。
【0065】
負荷電圧(e)は、誘導溶解炉15の加熱コイル16にかかる電圧であり、加熱コイル16に供給される高周波電力の電圧成分である(図1参照)。電圧基準であるVrefに対して、負荷電圧(e)を減算した信号を電圧一定制御回路22に入力し、さらにその出力信号を後述する遅れ優先回路25に入力する。
【0066】
電流一定制御回路(ACR:Automatic Current Regulator)23は逆変換器10a、10bが過電流の場合、インバータ10の動作周波数を制御する回路である。
【0067】
通電電流(d)は、加熱コイル16に供給される高周波電力の電流成分である(図1参照)。電流基準であるIrefに対して、通電電流(d)を減算した信号を電流一定制御回路23に入力し、さらにその出力信号を後述する遅れ優先回路25に入力する。
【0068】
電力一定制御回路(APR:Automatic Power Regulator)24は、出力電力が一定となるようにインバータ10の動作周波数を制御する回路である。
【0069】
電力基準Prefに対して、直流電圧(a)と直流電流(b)との積を減算した信号を電力一定制御回路24に入力し、さらにその出力信号を後述する遅れ優先回路25に入力する。
【0070】
遅れ優先回路25は、電圧一定制御回路22、電流一定制御回路23および電力一定制御回路24の出力信号を常時検出し、最も基準に対し遅れている信号を選択して周波数基準Frefに対して加減する回路である。この回路によりインバータ10の動作周波数制御の基準となるインバータ周波数基準信号(n1)が生成される。
【0071】
基準周波数保持回路26は、インバータ10をインバータ周波数基準信号(n1)に基づいた基準周波数に保持するための回路である。逆変換器10a、10bは、この回路の出力信号に基づく動作周波数で動作することになる。
【0072】
次に、第2系統の回路について説明する。
【0073】
出力電圧信号生成回路19、出力電流信号生成回路20は、共に位相差の検出に用いられる信号を生成する回路である。出力電圧信号生成回路19は、負荷電圧(e)から後述する出力電圧信号(g)を生成し、この信号を位相差検出回路21aへ出力する。
【0074】
出力電流信号生成回路20は、通電電流(d)から後述する出力電流信号(h)を生成し、位相差検出回路21aへ出力する。出力電圧信号生成回路19、出力電流信号生成回路20の処理の内容についてはそれぞれ図3,4で説明する。
【0075】
位相差検出回路21aは、出力電圧信号(g)と出力電流信号(h)との位相差を検出する回路であり、検出した位相差から力率を求めることも可能である。なお、位相差検出回路21aは、本発明の位相差検出部に相当する。位相差検出回路21aの処理の詳細については図5(a)にて説明する。
【0076】
次に、第3系統の回路について説明する。
【0077】
制御信号生成部30は、位相差補正回路21bと、電圧制御発振回路27と、ANDゲート28と、リセット・セット・フリップ・フロップ回路29とで構成され、後述するインバータ周波数基準信号(n1)、または(n2)を基にIGBTゲート信号(c)を生成する。なお、制御信号生成部30は、本発明の制御信号生成部に相当する。
【0078】
位相差補正回路21bは、所定の位相遅れとなった場合に位相差を補正する信号を出力し、インバータ基準周波数を補正する回路である。位相差補正回路21bの処理の詳細については図5(b)にて説明する。
【0079】
電圧制御発振回路27は、印加された電圧に応じて動作周波数を変更可能な発振器である。電圧制御発振回路27は、確定したインバータ周波数基準信号を基にインバータ10の動作周波数を設定し、逆変換器10a、10bの制御するための信号として、極性検出信号、READ信号およびRESET信号を出力する。
【0080】
最後に、極性検出信号とREAD信号のANDゲート28による演算の出力信号と、RESET信号がリセット・セット・フリップ・フロップ回路29に入力され、逆変換器10a、10bの制御信号であるIGBTゲート信号(c)を出力される。
【0081】
次に、図3を参照して出力電圧信号生成回路19の内容について説明する。
【0082】
出力電圧信号生成回路19は、負荷電圧検出器14で検出された負荷電圧(e)であるゲート信号から電力変換装置4の出力電圧信号(g)を以下のように生成する。
【0083】
図3に示すように、出力電圧信号生成回路19では、デッドタイム調整回路19aに逆変換器10aのゲート信号であるU相ゲート信号1が入力される。なお、U相ゲート信号1とは、ゲート信号の基準となる信号である。
【0084】
U相ゲート信号1は、デッドタイム調整したゲート信号であるX相ゲート信号2を参照してデッドタイム調整される。そして、U相ゲート信号1以外の信号を除去してデットタイム調整したU相ゲート信号2を取り出す。
【0085】
ここで、デッドタイムとは、逆変換器10a、10bが同時にONしないように2つの動作の間に設定された休止期間をいい、デッドタイム調整を行うのは、デッドタイムを考慮してパルス幅をわずかに変更させる必要があるからである。
【0086】
同様にして、デッドタイム調整回路19bに逆変換器10bのゲート信号であるX相ゲート信号1が入力される。なお、X相ゲート信号1とは、ゲート信号の基準となる信号である。
【0087】
X相ゲート信号1は、デッドタイム調整した出力信号であるU相ゲート信号2を参照してデッドタイム調整される。そして、X相ゲート信号1以外の信号を除去してデッドタイム調整したX相ゲート信号2を取り出す。
【0088】
次に、取り出されたU相ゲート信号2とX相ゲート信号2は、リセット・セット・フリップ・フロップ回路19cに入力される。ここで、リセット・セット・フリップ・フロップ回路19cは、U相ゲート信号2とX相ゲート信号2の各立ち上がりエッジを記憶する。
【0089】
最終的に、出力電圧信号生成回路19は、U相ゲート信号2とX相ゲート信号2の各立ち上がりにより規定される時間領域(エッジ幅)をON信号とするデューティー比50%の出力電圧信号(g)を生成する。
【0090】
次に、図4を参照して出力電流信号生成回路20の内容について説明する。
【0091】
出力電流信号生成回路20は、通電電流検出器13により検出された通電電流(d)を基に電力変換装置4の出力電流信号(h)を以下のように生成する。
【0092】
図4に示すように、出力電流信号生成回路20では、通電電流検出器13により検出された正弦波である通電電流(d)の立ち上がりおよび立ち下りを2つの二値化回路20a、20bによりそれぞれ検出する。
【0093】
二値化回路20a、20bにより通電電流(d)は矩形波に変換され、これら矩形波はリセット・セット・フリップ・フロップ回路20cに入力される。ここで、リセット・セット・フリップ・フロップ回路20cは、通電電流(d)の立ち上がりおよび立ち下がりエッジをそれぞれ記憶する。
【0094】
最終的に、出力電流信号生成回路20は、通電電流の(d)の立ち上がりから立ち下りまでの時間領域(パルス幅)をON信号とするデューティー比50%の出力電流信号(h)を生成する。
【0095】
次に、図5を参照して、位相差補正回路の信号処理内容について説明する。
【0096】
図5(a)に示す位相差検出回路21aは、出力電圧信号生成回路19により生成された出力電圧信号(g)と、出力電流信号生成回路20により生成された出力電流信号(h)を入力し、位相差情報として位相進み信号(i)と位相遅れ信号(j)を出力する。位相差検出回路21aは複数のNANDゲート32で構成され、出力信号の一部は、次回の入力として使用するため帰還させている。
【0097】
ここで、出力電圧信号(g)と出力電流信号(h)はともに矩形波であり、両波形のずれが位相差である。図5(a)は、位相進み、または位相遅れのいずれかの状態となったときに位相進み信号(i)、または位相遅れ信号(j)のパルスが変化する回路となっている(図6参照)。位相進み信号(i)と位相遅れ信号(j)のパルスが同時に変化する場合はない。
【0098】
なお、位相差と力率の関係は位相差が0である場合、「力率1」の状態である。また、出力電圧信号(g)に対し出力電流信号(h)の位相が遅れている場合、「遅れ力率」の状態であり、出力電圧信号(g)に対し出力電流信号(h)の位相が進んでいる場合、「進み力率」の状態である。
【0099】
図5(b)に示す位相差補正回路21bは、2つの入力信号(i)、(j)の位相差を判定し、位相差が所定の値より小さいとき位相差補正信号(m)を発生させ、インバータ周波数基準信号(n1)を(n2)に変化させる。以下、位相差補正回路21bの詳細を説明する。
【0100】
まず、入力信号として位相差検出回路21aから出力される位相進み信号(i)と位相遅れ信号(j)を入力する。位相遅れ信号(j)はそのまま、位相進み信号(i)はNOTゲート33を介してANDゲート34に入力される。第1のモノマルチ回路(MM)35aは、ANDゲート34から常時出力される内部信号(k1)を基に位相差レベルを設定し、位相差確認のための内部信号(k2)を生成する。
【0101】
ここで、モノマルチ回路とは、単安定マルチバイブレータのことであり、外部からの制御信号により、1個のパルスを発生させる発振器である。
【0102】
次に、内部信号(k1)と内部信号(k2)がNANDゲート36に入力され、NAND演算による内部信号(k3)が出力される。内部信号(k3)は所定の位相遅れ状態まではLowレベルが出力される(図6の説明で詳述する)。このとき、第2のモノマルチ回路(MM)35bから出力される内部信号(k4)もLowレベルであり、予めアナログスイッチ(ASW)37に設定されたアナログ電圧信号である位相差補正信号(m)が加算器38へ出力されることはない。
【0103】
したがって、最終的なインバータ周波数基準信号として(n1)が出力される。ここで、インバータ周波数基準信号とは、逆変換器10a、10bの動作周波数の基準信号であり、通常の遅れ力率状態では、この信号を出力し続けることにより動作周波数を負荷共振周波数付近に保持する。
【0104】
一方で、力率が進み方向に変化して位相差が所定の値より不足したとき、内部信号(k3)はHighレベルを含むパルス状となる。
【0105】
パルス状の内部信号(k3)が出力されると、第2のモノマルチ回路35bは内部信号(k4)を一定時間、アナログスイッチ37へ出力し、アナログスイッチ37は予め設定された位相差補正信号(m)を加算器38へ出力する。なお、第2のモノマルチ回路35bが本発明のモノマルチ回路に相当する。
【0106】
遅れ優先回路25で生成されたインバータ周波数基準信号(n1)は(図2参照)、加算器38により位相差補正信号(m)が加算されることで、(n1)から(n2)に変化する。この場合、最終的なインバータ周波数基準信号として(n2)が出力されるが、(n2)=(n1)+(m)の関係となっている。
【0107】
位相差補正信号(m)はアナログの電圧値を設定した信号であり、例えば0.5(v)のように設定されている。仮に、インバータ周波数基準信号(n1)が3.0(v)であれば、インバータ周波数基準信号(n2)に相当する電圧信号は、3.5(v)ということになる。
【0108】
その後、逆変換器10a、10bの動作周波数が変化し、所定の遅れ力率以上が確保された場合には、インバータ周波数基準信号は(n2)から(n1)に戻る。
【0109】
換言すれば、位相差補正回路21bは、力率が進み方向に変化するのを回避するため、位相差補正信号(m)を発生させてインバータ動作周波数を一定値だけ上昇させる。そして、その後徐々に負荷共振周波数に近づける。このことにより、常にインバータの動作周波数を遅れ力率の領域の負荷共振周波数付近に保持することができる。
【0110】
次に、図6を参照して位相差補正回路21bの動作について説明する。
【0111】
図6(a)は、通常の遅れ力率の場合の位相差補正回路21bの動作を示した図である。図6(a)では、出力電流信号(h)が出力電圧信号(g)に対して位相が遅れた状態にあるため、その位相差分だけ位相遅れ信号(j)が変化している。
【0112】
ここで、位相遅れ信号(j)に出力パルス(Highレベル)が発生する場合、もう一方の位相進み信号(i)は常にLowレベルである。位相進み信号(i)は信号が反転されてHighレベル信号となり、ANDゲート34に入力されるため(図5(b)参照)、位相遅れ信号(j)の出力パルス発生時(Highレベル)に内部信号(k1)はHighレベルとなる。
【0113】
内部信号(k2)は、位相差がある場合に内部信号(k1)を基に位相差レベルを設定する第1のモノマルチ回路35aから出力される信号である。
【0114】
次に、内部信号(k1)のHighレベルパルス幅と内部信号(k2)のLowレベルパルス幅を比較するが、位相差が所定値以下でない場合には、内部信号(k3)はLowレベルの出力となる。
【0115】
この場合、上述の通り第2のモノマルチ回路35bから出力される内部信号(k4)もLowレベルとなり、アナログスイッチ36は作動しない。すなわち、最終的にインバータ周波数基準信号として(n1)が出力される。
【0116】
一方、図6(b)は、遅れ力率が不足した場合の位相差補正回路21bの動作を示した図である。図6(b)では、図6(a)と比較し、出力電流信号(h)と出力電圧信号(g)の位相差が小さくなっている。
【0117】
この場合には、内部信号(k1)のHighレベルパルス幅と内部信号(k2)のLowレベルパルス幅を比較したとき、位相差が所定値以下と判定され、内部信号(k3)はHighレベルの出力となる。したがって、第2のモノマルチ回路35bから出力される内部信号(k4)もHighレベルの出力となる。
【0118】
このとき、内部信号(k4)によりアナログスイッチ37が一定時間作動し、位相差補正信号(m)を加算する信号が出力される。加算器により位相差補正信号(m)がインバータ周波数基準信号(n1)に加算されると、最終的にインバータ周波数基準信号として(n2)が出力される。
【0119】
このように、遅れ力率が不足した場合、すなわち、位相差が所定値以下となった場合に、位相差補正回路21bが動作し位相差を回復する。
【0120】
次に、図7を参照して制御信号生成回路30による位相差補正制御の例について説明する。
【0121】
高周波コンデンサ12a、12bと加熱コイル16とで構成される回路(図1参照)に交流電力が供給されるため、この回路は図7のような共振特性を示す。なお、横軸が周波数、縦軸が共振倍率となっている。
【0122】
共振曲線の中央部は共振周波数f1であるが、共振周波数f1は、被溶解材17の状態により定格周波数を100%として、50〜105%の間で変化する。
【0123】
共振周波数f1のときは、「力率1」の状態であり、出力電流信号(h)と出力電圧信号(g)は位相差がない状態である。また、共振曲線の右側は、出力電圧信号(g)に対し出力電流信号(h)の位相が遅れている「遅れ力率」の状態であり、通常はインバータの動作周波数f2を遅れ力率の範囲(出力調整範囲)内で制御している。
【0124】
一方、共振曲線の左側は「進み力率」の状態であり、動作周波数の調整が困難な範囲である。また、本実施形態の周波数制御では、起動時は周波数が最大値である起動周波数f2′に設定し、徐々に共振周波数f1へ近づけて遅れ力率範囲内の動作周波数f2で保持する(図7の点線矢印(1))。
【0125】
ここで、位相差は常に検出され、共振周波数f1が変化した場合にも、動作周波数f2はその変化に応じて共振周波数f1を追従するように制御される。通常時は、共振周波数f1の変化の幅が小さいため、補正がされていないインバータ周波数基準信号(n1)による制御となる。
【0126】
しかし、共振周波数f1の変化の幅が大きい場合には、動作周波数f2の追従の際、位相差が最下限値(位相差の閾値)に到達する場合がある。この場合、位相差を一定値まで大きくして位相差を回復するため、位相差補正回路21bを動作させ、インバータ周波数基準信号(n2)による制御に切り替える。
【0127】
インバータ周波数基準信号(n2)による制御では、一時的に動作周波数f2を上昇させた後(図7の点線矢印(2))、徐々に共振周波数f1へ近づけて再度、遅れ力率の範囲内で保持する(図7の点線矢印(3))。このとき、動作周波数f2の一時的な上昇は、最大でも全出力調整範囲(遅れ力率の範囲)の20%程度にとどめている。
【0128】
したがって、位相差調整のため変化する周波数の幅が狭く、急激な出力変動が発生することがなくなる。すなわち、常に高い力率を保持しながら誘導溶解炉15の電力制御が可能となる。
【0129】
以上、説明してきたように本実施例の誘導溶解炉の制御装置は、逆変換器としてIGBT素子を用いたものであるが、この代用としてサイリスタ素子を用いた装置であってもよい。なお、この場合は、進み力率の範囲が出力調整可能範囲となるため、位相差が最下限値に到達した場合、一時的に動作周波数f2を降下させた後、徐々に共振周波数f1へ近づける制御となる。
【符号の説明】
【0130】
1 電源、
2 受電ユニット、
2a パワーヒューズ、
2b 遮断器、
3 変換装置用変圧器、
4 電力変換装置(制御装置)、
4a 順変換器ユニット(順変換器、高周波電力生成部)、
4b 逆変換器ユニット(逆変換器、高周波電力生成部)、
4c 高周波整合ユニット(高周波電力生成部)、
5a,5b ダイオード式順変換器、
6 直流リアクトル、
7 直流コンデンサ、
8 直流電圧検出器、
9 直流電流検出器、
10 インバータ、
10a,10b IGBT式逆変換器(第1、第2スイッチング素子)、
11 制御回路、
12a,12b 力率調整用高周波コンデンサ、
13 通電電流検出器(交流電流検出部)、
14 負荷電圧検出器(交流電圧検出部)、
15 誘導溶解炉、
16 加熱コイル、
17 被溶解材、
18 コントローラ、
19 出力電圧信号生成回路、
19a,19b デッドタイム調整回路、
19c、20c、29 リセット・セット・フリップ・フロップ回路、
20 出力電流信号生成回路、
20a,20b 二値化回路、
21a 位相差検出回路(位相差検出部)、
21b 位相差補正回路、
22 電圧一定制御回路(AVR)、
23 電流一定制御回路(ACR)、
24 電力一定制御回路(APR)、
25 遅れ優先回路、
26 基準周波数保持回路、
27 電圧制御発振回路、
28、34 ANDゲート、
30 制御信号生成回路(制御信号生成部)、
32、36 NANDゲート、
33 NOTゲート、
35a、35b モノマルチ回路(MM)、
37 アナログスイッチ(ASW)、
38 加算器、
(a) 直流電圧、
(b) 直流電流、
(c) IGBTゲート信号、
(d) 通電電流、
(e) 負荷電圧、
(f) コントローラ制御信号、
(g) 出力電圧信号、
(h) 出力電流信号、
(i) 位相進み信号、
(j) 位相遅れ信号、
(k1)〜(k4) 内部信号、
(m) 位相差補正信号、
(n1),(n2) インバータ周波数基準信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱コイルの熱によって炉内に収納された被溶解材を溶解させる誘導溶解炉の制御装置であって、
前記加熱コイルに供給する高周波電力を生成する高周波電力生成部と、
前記高周波電力の電圧と電流の位相差を検出する位相差検出部と、
前記位相差検出部により検出された前記位相差に応じて前記高周波電力を生成するように前記高周波電力生成部の制御信号を生成する制御信号生成部とを備え、
前記制御信号生成部は、前記高周波電力生成部に対して予め設定された起動周波数から前記位相差が小さくなるように前記制御信号を変化させると共に、該位相差が予め設定された閾値となった場合には、該位相差を一定値だけ大きくする制御信号を生成することを特徴とする誘導溶解炉の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導溶解炉の制御装置において、
前記高周波電力生成部は、
交流電源を直流電力に変換する順変換器と、
第1および第2スイッチング素子を用いてブリッジ回路を構成することにより前記直流電力を前記高周波電力に変換する逆変換器とを備え、
前記逆変換器は、前記高周波電力生成部の制御信号により前記第1および第2スイッチング素子を交互に動作させることで、前記直流電力を前記高周波電力に変換することを特徴とする誘導溶解炉の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の誘導溶解炉の制御装置において、
前記制御信号生成部は、モノマルチ回路を備え、前記位相差が予め設定された閾値となった場合に、該モノマルチ回路が一定時間出力する内部信号により該位相差を一定値だけ大きくする制御信号を生成することを特徴とする誘導溶解炉の制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の誘導溶解炉の制御装置において、
前記高周波電力生成部は、
前記高周波電力の電圧を検出する交流電圧検出部と、
前記高周波電力の電流を検出する交流電流検出部とをさらに備え、
前記位相差検出部は、
前記交流電圧検出部により検出された電圧の各立ち上がりのエッジ幅をON信号として、リセット・セット・フリップ・フロップ回路を介して生成された出力電圧信号と、
前記交流電流検出部により検出された前記高周波電力の電流の立ち上がりおよび立ち下りのエッジ幅をON信号として、リセット・セット・フリップ・フロップ回路を介して生成された出力電流信号との位相差を検出することを特徴とする誘導溶解炉の制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の誘導溶解炉の制御装置において、
前記第1および第2スイッチング素子は共にIGBT素子であり、
前記制御信号生成部は、前記高周波電力生成部に対して予め設定された起動周波数から前記位相差が小さくなるように前記IGBT素子の動作周波数を低下させる制御信号を生成すると共に、該位相差が予め設定された閾値となった場合には、該位相差を一定値だけ大きくするため前記IGBT素子の動作周波数を一定値だけ上昇させる制御信号を生成することを特徴とする誘導溶解炉の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−69427(P2013−69427A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205281(P2011−205281)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000242127)北芝電機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】