説明

誘電体層形成用組成物、グリーンシート、誘電体層形成基板及びその製造方法

【課題】
焼成して誘電体層を形成する際において、焼成温度に温度差が生じて不均一な条件で焼成する場合であっても、均一で高品質な誘電体層を得ることができる誘電体層形成用組成物、グリーンシート、並びに誘電体層形成基板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
熱分解性バインダー、ガラス成分及び分散剤を含有する誘電体層形成用組成物であって、前記熱分解性バインダーが、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量が1〜50重量%の共重合体であり、かつ前記熱分解性バインダーの含有量が、ガラス成分100重量部に対し、12〜50重量部であることを特徴とする誘電体層形成用組成物、この誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシート、基板上に、前記グリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板、及びこの誘電体層形成基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル等の誘電体層の形成に好適な誘電体層形成用組成物、この組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシート、並びに、前記グリーンシートから得られた誘電体層を有する誘電体層形成基板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマディスプレイパネル等がある。これらの中でも、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう)は、次世代のマルチメディアディスプレイとして注目を集めている。
【0003】
図3にPDPの一例の断面図を示す。図3に示すPDPは、前面板用ガラス基板1及び背面板用ガラス基板2の1対のガラス基板からなる。この前面板用ガラス基板1と背面板用ガラス基板2の内面には、互いに直交する表示電極3及びアドレス電極4がそれぞれ形成されている。表示電極3及びアドレス電極4は、誘電体層5(前面板誘電体層)及び6(背面板誘電体層)によりそれぞれ覆われている。また、ガラス基板1及び2は、保護膜7を介してリブ(隔壁)8によって放電空間(画素)に分離され、各画素には蛍光体9が形成されている。
【0004】
PDPの誘電体層を形成する方法としては、誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシートを基板と貼り合わせ、その後グリーンシートを焼成する方法等が知られている(特許文献1,2等)。この方法によれば、高品質な誘電体層を効率よく形成することができる。
【特許文献1】特開平9−102273号公報
【特許文献2】特開平10−182919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年においては、PDPの大型化に伴うガラス基板の大型化、生産効率の向上の要請に伴うガラス基板の多面取り化(1枚のガラス基板を切断して多面のガラス基板を取り出すこと)などに伴い、大型のガラス基板を使用するようになってきている。そのため、大型のガラス基板と貼り合わせたグリーンシートを焼成する工程において、基板の中心部と周辺部での焼成温度に温度差が生じて、基板全体を均一な条件で焼成することができない場合が生じた。また、同じ焼成炉を繰り返し使用して連続的に多くの誘電体層付基板を量産する場合において、焼成炉内の雰囲気が変化して、均一な焼成条件で焼成することができない場合もあった。これらの場合においては、得られる誘電体層の透過率等にムラが生じ、均一で高品質な誘電体層を形成することが困難となり、問題となっていた。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、焼成して誘電体層を形成する際において、焼成温度に温度差が生じて均一な条件で焼成できない場合であっても、均一で高品質な誘電体層を得ることができる誘電体層形成用組成物、グリーンシート、並びに誘電体層形成基板、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、熱分解性バインダー、ガラス成分及び分散剤を含有してなる誘電体層形成用組成物において、前記熱分解性バインダーがメチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量が1〜50重量%の共重合体であり、かつ、熱分解性バインダーの含有量をガラス成分100重量部に対し、12〜50重量部である誘電体層形成用組成物から得られるグリーンシートを焼成して誘電体層を形成すると、焼成温度に温度差が生じて均一な条件で焼成できない場合であっても、均一で高品質な誘電体層を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、熱分解性バインダー、ガラス成分及び分散剤を含有する誘電体層形成用組成物であって、前記熱分解性バインダーが、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量が1〜50重量%の共重合体であり、かつ前記熱分解性バインダーの含有量が、ガラス成分100重量部に対し、12〜50重量部であることを特徴とする誘電体層形成用組成物が提供される。
【0009】
本発明の誘電体層形成用組成物においては、前記ガラス成分の平均粒子径が0.5〜5μmであることが好ましい。
また、本発明の誘電体層形成用組成物は、プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に用いられるものであるのが好ましい。
【0010】
本発明の第2によれば、本発明の誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシートが提供される。
本発明の第3によれば、基板上に、本発明のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板が提供される。
本発明の第4によれば、本発明のグリーンシートを基板と貼り合わせる工程と、前記グリーンシートを焼成することにより、誘電体層を形成する工程とを有する誘電体層形成基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の誘電体層形成用組成物及びグリーンシートによれば、焼成して誘電体層を形成する際において、焼成温度に温度差が生じて不均一な条件で焼成する場合であっても、均一で高品質な誘電体層を得ることができる。
本発明の誘電体層形成用組成物及びグリーンシートは、大型のパネル、特にプラズマディスプレイパネルの誘電体層を量産するのに好適に用いることができる。
本発明の誘電体層形成基板は、本発明のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有するため、均一で高品質である。
本発明の誘電体層形成基板の製造方法によれば、大面積であっても、均一で高品質な誘電体層形成基板を製造することができる。また、焼成炉を長時間使用することにより生じる焼成温度の変化にも影響を受けずに均質で高い透過率を有する誘電体層を有する誘電体層形成基板を量産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を、1)誘電体層形成用組成物、2)グリーンシート、並びに、3)誘電体層形成基板及びその製造方法に項分けして詳細に説明する。
【0013】
1)誘電体層形成用組成物
本発明の誘電体層形成用組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、熱分解性バインダー、ガラス成分及び分散剤を含有する誘電体層形成用組成物であって、前記熱分解性バインダーが、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量が1〜50重量%の共重合体であり、かつ前記熱分解性バインダーの含有量が、ガラス成分100重量部に対し、12〜50重量部であることを特徴とする。
【0014】
(1)熱分解性バインダー
本発明の組成物は熱分解性バインダーを含有する。熱分解性バインダーは、焼成することにより分解して容易に除去できる、結合剤としての機能を有する。
【0015】
本発明に用いる熱分解性バインダーは、メチルメタクリレートをモノマー成分の一つとする共重合体であり、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量が1〜50重量%、好ましくは5〜25重量%のものである。メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量がこの範囲より小さいと、得られる誘電体層の直線光透過率が焼成温度に影響され易くなり、誘電体層の直線光透過率にムラが生じ易くなる。一方、この範囲より大きいと、組成物の成形性及び基板への貼り合わせ適性が低下するおそれがある。
【0016】
本発明に用いる熱分解性バインダー中の全繰り返し単位に対するメチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量を1〜50重量%とする方法としては、例えば、後述するように、少なくともメチルメタクリレートを含むモノマー混合物を共重合する際に、該モノマー混合物中のメチルメタクリレートの含有量を1〜50重量%に設定する方法が挙げられる。熱分解性バインダー中のメチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量は、H−NMRなどの公知の分析手段により測定することができる。
【0017】
本発明に用いる熱分解性バインダーとしては、メチルメタクリレートとメチルメタクリレート以外のモノマー(以下、「他のモノマー」ということがある)とから得られる共重合体であれば特に制限されず、メチルメタクリレートと一種の他のモノマーとから得られる二元共重合体であっても、メチルメタクリレートと二種以上の他のモノマーとから得られる三元以上の多元共重合体であってもよい。また、前記共重合体の形態は特に制限されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、いかなる形態のものであってもよい。
【0018】
前記他のモノマーとしては、メチルメタクリレートと共重合可能な化合物であれば特に制限されない。例えば、(メタ)アクリレート化合物(メチルメタクリレートを除く);スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル化合物;ブタジエン、イソプレン等のジエン化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ビニルフタル酸等の不飽和カルボン酸化合物;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等のビニルエーテル化合物;1−ビニル−2−ピロリドン;等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかを表す(以下にて同じ)。
【0019】
(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
【0020】
フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
【0021】
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;
【0022】
1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基置換アルキル(メタ)アクリレート;
【0023】
2−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基置換フェニル(メタ)アクリレート;
【0024】
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
【0025】
カルボキシメチル(メタ)アクリレート、1−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、2−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、3−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、4−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基置換アルキル(メタ)アクリレート;2−カルボキシフェニル(メタ)アクリレート、3−カルボキシフェニル(メタ)アクリレート、4−カルボキシフェニル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基置換フェニル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、本発明に用いる熱分解性バインダーとしては、より均一で高品質な誘電体層を得ることができることから、少なくともメチルメタクリレートとヒドロキシル基置換アルキル(メタ)アクリレートをモノマー成分とする共重合体であるのがより好ましい。
【0027】
本発明に用いる熱分解性バインダーを得る方法としては、メチルメタクリレート及び他のモノマーを共重合する方法であれば特に制限されず、アニオン重合法、カチオン重合法及びラジカル重合法等の、従来公知の重合方法が挙げられる。これらのうち、簡便な操作により、収率よく目的とする熱分解性バインダーを得ることができることから、ラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が好ましい。
【0028】
用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、イソブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物;過酸化水素−アスコルビン酸、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス開始剤;等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いる熱分解性バインダーの重量平均分子量は、特に制限されないが、通常15,000〜400,000、好ましくは50,000〜300,000である。分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0030】
本発明に用いる熱分解性バインダーのガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、通常、−15℃〜+40℃である。
ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により測定することができる。
【0031】
また本発明においては、熱分解性バインダーとして、熱分解性バインダーが水相に微粒子状に分散してなる熱分解性バインダーのエマルションを用いることもできる。
【0032】
本発明の組成物において、熱分解性バインダーの含有量は、後述するガラス成分100重量部に対し、12〜50重量部、好ましくは15〜35重量部である。熱分解性バインダーをこのような範囲で使用するときに、焼成温度に温度差が生じて均一な条件で焼成できない場合であっても、均一で高品質な誘電体層を形成できる誘電体層形成用組成物を得ることができる。
【0033】
(2)ガラス成分
本発明の誘電体層形成用組成物はガラス成分を含有する。用いるガラス成分としては、例えば、PbO−B(酸化鉛−酸化ホウ素)系ガラス、PbO−B−SiO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−B−SiO−A1(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−BaO−SiO−A1(酸化鉛−酸化バリウム−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−BaO−B−SiO−Al(酸化鉛−酸化バリウム−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、Bi−BaO−B−ZnO−SiO(酸化ビスマス−酸化バリウム−酸化ホウ素−酸化亜鉛−酸化ケイ素)系ガラス、ZnO−B−SiO(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−ZnO−B−SiO(酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、NaO−B−SiO(酸化ナトリウム−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、BaO−CaO−SiO(酸化バリウム−酸化カルシウム−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−BaO−B−SiO(酸化鉛−酸化バリウム−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−ZnO−B−BaO−SiO(酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化バリウム−酸化ケイ素)系ガラス、ZnO−B−SiO−Al(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−ZnO−B−SiO−Al(酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス等が挙げられる。また、これらのガラス成分には、CaO、SiO、TiO、CuO等が添加されていてもよい。
【0034】
これらの中でも、PbO−B−SiO系ガラス、PbO−B−SiO−A1系ガラス、PbO−BaO−SiO−A1系ガラス、PbO−BaO−B−SiO−Al系ガラス、Bi−BaO−B−ZnO−SiO系ガラスの使用が好ましく、PbO−BaO−B−SiO−Al系ガラス、Bi−BaO−B−ZnO−SiO系ガラスの使用がより好ましい。
【0035】
本発明においては、これらのガラス成分を粉末状にして用いる。ガラス成分の平均粒子径は、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは1.0〜3.0μmである。ガラス成分の平均粒子径がこの範囲より小さいと、見かけの焼成温度が下がり、熱分解性バインダーが分解する前にガラス成分の軟化が開始され、誘電体層にムラが生じ、透明性が低下するおそれがある。逆に平均粒子径がこの範囲より大きいと、見かけの焼成温度が上がり、均一で、透明な誘電体層を得ることが困難となる。
また、ガラス成分の最大粒子径は、均一で透明な誘電体層を得る上から、20μm以下であるのが好ましい。
【0036】
本発明においては、ガラス成分をガラスフリットとして用いることもできる。ガラスフリットは、ガラス成分及び所望によりフィラー成分を所定割合で混合し、得られた混合物を溶融し、次いで、冷却することで得ることができる。得られたガラスフリットは粉砕して粉末状にして用いる。粉末状に粉砕したガラスフリットの平均粒子径は、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは1.0〜3.0μmである。
【0037】
(3)分散剤
本発明の誘電体層形成用組成物は、さらに分散剤を含有する。分散剤を含有することで、誘電体層形成用組成物中のガラス成分の二次凝集を防止し、透明性等の物性に優れた誘電体層を形成することができる。
【0038】
用いる分散剤としては、例えば、界面活性剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ホルマリン縮合物ナトリウム塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等の陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ラウリン酸ジエタノールアミド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド等の非イオン性界面活性剤;α−オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分エステル、脂肪族ポリカルボン酸塩、脂肪族ポリカルボン酸特殊シリコーン等のポリカルボン酸系高分子界面活性剤;ポリエーテルポリエステル酸、ポリエーテルポリオールポリエステル酸等のポリエーテルエステル酸類と、高分子ポリアミン等の有機アミン類とから得られる高分子分散剤のポリエーテルエステル酸アミン塩;等が挙げられる。
【0039】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの分散剤は一種単独で、あるいは二種以上を組合わせて用いることができる。
【0040】
分散剤の使用量は、誘電体層形成用組成物に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。分散剤の添加量が0.01重量%未満であると、分散状態が不均一で、ガラス成分が沈降又は凝集しやすい誘電体層形成用組成物が得られるおそれがあり、10重量%より多いと、焼成工程を経ても分散剤が誘電体層内に残存し、耐電圧及び透明性の低下の原因となる。
【0041】
(4)溶剤
本発明の組成物には、適度な流動性又は可塑性、良好な膜形成性を付与するため、溶剤を添加してもよい。用いる溶剤としては、水;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類:N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸ホスホロアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;γ−ラクトン、δ−ラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、又はこれらの2種以上からなる混合溶媒の使用が好ましい。
溶剤の使用量は、組成物全体に対して、通常0〜55重量%である。
【0042】
(5)その他の添加剤
本発明の誘電体層形成用組成物には、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤等のその他の添加剤が添加されていてもよい。例えば、可塑剤は、加工適性を向上させるために添加される。用いる可塑剤としては、アジピン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤等が挙げられる。可塑剤の使用量は、ガラス成分100重量部に対して、0〜10重量部である。
【0043】
(6)誘電体層形成用組成物の調製
本発明の誘電体層形成用組成物は、上述した熱分解性バインダー、ガラス成分、分散剤、及び溶剤等の原料をプレミキシングした後、分散機にかけて機械的に分散させることにより調製することができる。
【0044】
分散に用いる分散機としては特に制約はなく、例えば、ボールミル、ビーズミルなどのメディアミル;超音波式、撹拌式等の各種ホモジナイザー;ジェットミル;ロールミル;等の公知の分散機が挙げられる。
【0045】
以上のようにして得られる本発明の誘電体層形成用組成物は、フラットパネルディスプレイの誘電体層、特にPDPの誘電体層の形成に好適に用いることができる。また、本発明の組成物は、後述する本発明のグリーンシートの製造原料としても有用である。
【0046】
2)グリーンシート
本発明のグリーンシートは、本発明の誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるものである。具体的には、本発明の組成物をキャリアーフィルム上に塗工し、次いで乾燥してフィルム化して製造することができる。
【0047】
本発明のグリーンシートを製造する一例を図1に示す。
図1において、13はキャリアーフィルム、14は本発明の誘電体層形成用組成物を塗工する塗工装置、18は誘電体層形成用組成物の塗膜を乾燥する(溶媒を除去する)乾燥装置、20a及び20bは、グリーンシート上に保護フィルムを積層する積層ロールである。
【0048】
以下、図1を参照しながら、本発明のグリーンシートの製造方法を説明する。
先ず、ロール状に巻き取られたキャリアーフィルム13が塗工装置14へ送られる。キャリアーフィルム13としては、誘電体層形成用組成物の塗膜との剥離性に優れるものであれば特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることができる。また、前記プラスチックフィルムの片面に、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル樹脂等の剥離剤を塗布したものを用いるのが好ましい。さらに、上記プラスチックフィルム上に剥離性を有する樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にポリオレフィン樹脂を押し出したものでもよい。キャリアーフィルムの厚さは、通常10〜200μmである。
【0049】
次に、塗工装置14により、キャリアーフィルム13上に組成物が塗布される。塗工装置14は貯蔵部15と塗工部16からなる。貯蔵部15は、スラリー状の組成物を貯蔵し、この組成物を一定量ずつ塗工部16に送液する。塗工部16としては特に制限されない。例えば、ナイフコーター、ダイコーター等の公知のコーターを用いることができる。
本発明の組成物の塗工量は、形成する組成物の塗膜17aの厚みに応じて適宜設定することができる。
【0050】
次に、表面に組成物の塗膜17aが形成されたキャリアーフィルム13は、乾燥装置18に送り込まれる。この乾燥装置18内で組成物の塗膜17aを乾燥する(すなわち、溶剤等の揮発成分を除去する)ことにより、組成物の乾燥塗膜、すなわち、グリーンシート17がキャリアーフィルム13上に積層された積層物を得ることができる。
【0051】
前記組成物の塗膜17aを乾燥する方法としては特に制限されないが、例えば、(イ)塗膜が形成されたキャリアーフィルムを所定温度に加熱する方法、(ロ)前記塗膜表面に乾燥空気又は熱風を送り込む方法、(ハ)前記(イ)及び(ロ)を組み合わせる方法等が挙げられる。
乾燥するときの温度は、キャリアーフィルムが熱変形を生じることのない温度以下であれば特に制限されず、通常室温から150℃、好ましくは60〜130℃であり、乾燥時間は1〜10分である。
乾燥後の塗膜17aの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは20〜120μmである。
【0052】
次いで、グリーンシート17上に保護フィルム19を積層する。
図1中、保護フィルム19はロール状に巻き取られた長尺のフィルムである。用いる保護フィルムとしては、前記キャリアーフィルムと同じものを使用することができる。保護フィルムの厚みは、通常10〜200μmである。
【0053】
グリーンシート17上に保護フィルム19を積層するには、図1中、2つの積層ロール20a及び20bの間をグリーンシート17と保護フィルム19とを通過させて、貼り合わせる(ラミネートする)。この場合、積層ロール20a及び20bの両方又は一方、例えば、保護フィルム面側のロール20bを加熱してもよい。
【0054】
以上のようにして、キャリアーフィルム13−グリーンシート17−保護フィルム19の3層からなる積層フィルム21を得ることができる。
得られた積層フィルム21は、ロール状に巻き取り、回収して保存、運搬することができる。
【0055】
以上のようにして得られる本発明のグリーンシートは、本発明の組成物をフィルム状に成形して得られたものであるので、焼成温度依存性が低く、大面積であっても、また長時間連続的に焼成する場合であっても、透過率が均一な高品質の誘電体層を形成することができる。
【0056】
3)誘電体層形成基板及びその製造方法
本発明の誘電体層形成基板は、基板上に、本発明のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする。
【0057】
本発明の誘電体層形成基板は、例えば、グリーンシートを基板と貼り合わせる工程と、前記グリーンシートを焼成することにより、誘電体層を形成する工程とを有する本発明の誘電体層形成基板の製造方法によって得ることができる。具体的には、グリーンシートから保護フィルムを剥離した後、基板にラミネートし、次いで、キャリアーフィルムを剥離した後、該グリーンシートを焼成して得ることができる。この方法によれば、大面積であっても、均一で高品質な誘電体層形成基板を製造することができる。また、焼成炉を長時間使用することにより生じる焼成温度の変化にも影響を受けることなく、均質で高い直線光透過率を有する誘電体層を有する誘電体層形成基板を量産することができる。
【0058】
ここで用いる基板としては、ガラス基板、セラミック基板等が挙げられ、ガラス基板が好ましい。ガラス基板としては、例えば、表面に表示電極が形成された前面板用ガラス基板等が挙げられる。基板の厚みは特に制限されないが、通常1〜10mm程度である。
【0059】
本発明の誘電体層形成基板として、PDPの前面板用ガラス基板に用いられる透明誘電体層を製造する一例を図2に示す。図2に示すものは、図3中、前面板用ガラス基板1上に透明誘電体層5を形成する例である。
【0060】
先ず、図2(a)に示すように、積層フィルム21の片面の保護フィルム19を剥離除去する。
次に、図2(b)に示すように、グリーンシート17を、表面に表示電極3が形成された前面板用ガラス基板1上(表示電極3が形成されている側)に熱圧着する。熱圧着は、例えば、加熱ローラーを用いて、加熱温度50℃〜130℃、圧力0.05MPa〜2.0MPaの条件で行うことができる。本発明の組成物中の熱分解性バインダーは、バインダーであるとともに感圧性接着剤でもあるため、簡便な操作により、グリーンシート17をガラス基板1に均一に貼着することができる。
【0061】
次いで、図2(c)に示すように、グリーンシート17からキャリアーフィルム13を剥離除去し、グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板1を焼成する。この過程で、組成物中の熱分解性バインダーが熱分解し、有機成分が完全に除去される。
【0062】
グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板を焼成する方法としては、例えば、グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板を焼成炉の中に入れて全体を加熱する方法が挙げられる。
【0063】
焼成温度は、熱分解性バインダーが熱分解し、有機成分が完全に除去され、かつ、ガラス成分が均一な溶融状態となって溶融し、均一化する温度である。この焼成温度は、通常、グリーンシート中のガラス成分の軟化点付近の温度であるとされている。具体的には、通常500〜650℃、好ましくは550〜620℃である。
焼成時間は通常1分から3時間、好ましくは5分〜60分である。
【0064】
焼成後は、冷却することにより、図2(d)に示すように、厚さ5〜100μm、好ましくは5〜90μmの透明誘電体層5が積層されたガラス基板1を得ることができる。
【0065】
以上のようにして得られる透明誘電体層5は、大面積であってもすべての箇所で高い透過率を有するものであって、透明性に優れている。
【0066】
透明誘電体層5の直線光透過率は、好ましくは65%以上である。透明誘電体層の直線光透過率は、例えば、公知のヘイズメーター(HAZEMETER)を用いて測定することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、PDPの前面板用ガラス基板1に用いられる透明誘電体層5を形成する場合について説明したが、背面板用ガラス基板2に対する白色誘電体層6や、セラミック基板上や回路基板上の誘電体層等も同様にして形成することができる。
【0068】
本発明の誘電体層形成基板を用いることにより、高品質な大型のフラットパネルディスプレイを製造することができる。フラットパネルディスプレイとしては、PDP、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置等が挙げられる。
【実施例】
【0069】
次に実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0070】
ガラス成分、熱分解性バインダー、分散剤、溶剤及び可塑剤は、次のものを用いた。
1)ガラス成分
(1)ガラス成分A:PbO、BaO、B、SiO、Alを主成分とする、平均粒子径2.4μmのガラスフリット
(2)ガラス成分B:Bi、BaO、B、ZnO、SiOを主成分とする、平均粒子径1.7μmのガラスフリット
(3)ガラス成分C:PbO、BaO、B、SiO、Alを主成分とする、平均粒子径0.9μmのガラスフリット
(4)ガラス成分D:PbO、BaO、B、SiO、Alを主成分とする、平均粒子径2.0μmのガラスフリット
(5)ガラス成分E:PbO、BaO、B、SiO、Alを主成分とする、平均粒子径が3.5μmのガラスフリット
【0071】
2)熱分解性バインダー
熱分解性バインダーとして、下記のものを用いた。なお、以下においては、2−エチルヘキシルメタクリレートを「2−EHMA」と、ブチルメタクリレートを「BMA」と、メチルメタクリレートを「MMA」と、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを「HEMA」とそれぞれ略記する。
【0072】
(1)熱分解性バインダーA:アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部をラジカル重合開始剤として用い、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=40:40:10:10(重量%)のモノマー混合物200重量部を、メチルイソブチルケトン:酢酸エチル=25:75(重量%)の混合溶媒中で、70℃16時間重合させることにより得られた共重合体(重量平均分子量:100,000)の50重量%溶液。
(2)熱分解性バインダーB:アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部をラジカル重合開始剤として用い、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=45:40:5:10(重量%)のモノマー混合物200重量部を、メチルイソブチルケトン:酢酸エチル=25:75(重量%)の混合溶媒中で、70℃16時間重合させることにより得られた共重合体(重量平均分子量:80,000)の50重量%溶液。
(3)熱分解性バインダーC:アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部をラジカル重合開始剤として用い、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=50:40:0:10(重量%)のモノマー混合物200重量部を、メチルイソブチルケトン:酢酸エチル=25:75(重量%)の混合溶媒中で、70℃16時間重合させることにより得られた共重合体(重量平均分子量:100,000)の50重量%溶液。
(4)熱分解性バインダーD:アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部をラジカル重合開始剤として用い、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=20:15:55:10(重量%)のモノマー混合物200重量部を、メチルイソブチルケトン:酢酸エチル=25:75(重量%)の混合溶媒中で、70℃16時間重合させることにより得られた共重合体(重量平均分子量:100,000)の50重量%溶液。
【0073】
3)分散剤
ポリカルボン酸系高分子界面活性剤(商品名:フローレン G700,共栄社化学社製)
4)溶剤
メチルイソブチルケトン
5)可塑剤
アジピン酸ジ2−エチルヘキシル(商品名:オリバインBXX5429,東洋インキ製造社製、固形分80重量%)
【0074】
(実施例1)
前記ガラス成分A 100重量部、熱分解性バインダーA 35重量部、分散剤0.5重量部、溶剤10重量部、及び可塑剤4重量部を、ビーズミル系分散機を用いて分散させることにより、実施例1の誘電体層形成用組成物のスラリーを調製した。
【0075】
キャリアーフィルムとして、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された厚さ50μmの長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このフィルムの剥離処理された面上に、上記で得たスラリーをナイフコーターを用いて塗布した。次いで、100℃で2分間乾燥して、PETフィルム上に厚さ70μmのグリーンシート1を得た。
【0076】
次に、上記で得たグリーンシート1上に、前記PETフィルムと同じ長尺の、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された保護用PETフィルムの剥離処理面をロール間圧着させることにより、PETフィルム−グリーンシート−PETフィルムの3層が積層されてなる積層フィルムを得た。
【0077】
上記で得たグリーンシート1上の保護用PETフィルムを剥離除去し、積層フィルムのグリーンシート面を下にして、表面に表示電極が形成された厚さ3mmのガラス基板(100mm×100mm)表面に重ね合わせ、加熱ローラーを用いて熱圧着(100℃、0.5MPa)した。このサンプルを3枚作製した。
【0078】
次に、キャリアーフィルム(PETフィルム)を剥離除去し、焼成炉内に入れ、グリーンシート1内の樹脂を焼成することにより熱分解除去した。
焼成は、550℃、580℃、620℃の各温度でそれぞれ30分間行った。厚さ32μmの誘電体層が形成された誘電体層形成ガラス基板1を3枚得た。
【0079】
(実施例2)
ガラス成分Aの代わりにガラス成分Bを用い、熱分解性バインダーAの代わりに熱分解性バインダーBを用いた以外は実施例1と同様にして、グリーンシート2及び誘電体層形成ガラス基板2を3枚得た。
【0080】
(実施例3)
ガラス成分Aの代わりにガラス成分Cを用いた以外は実施例1と同様にして、グリーンシート3及び誘電体層形成ガラス基板3を3枚得た。
【0081】
(実施例4)
ガラス成分Aの代わりにガラス成分Eを用いた以外は実施例1と同様にして、グリーンシート4及び誘電体層形成ガラス基板4を3枚得た。
【0082】
(比較例1)
ガラス成分Aの代わりにガラス成分Dを用い、熱分解性バインダーAの代わりに熱分解性バインダーCを用いた以外は実施例1と同様にして、グリーンシート5及び誘電体層形成ガラス基板5を3枚得た。
【0083】
(比較例2)
熱分解性バンダーAに代えて熱分解性バインダーDを用いた以外は実施例1と同様にして、グリーンシート6及び誘電体層形成ガラス基板6を3枚得た。
【0084】
(グリーンシートの膜厚の測定)
実施例1〜4で得られたグリーンシート1〜4、比較例1、2で得られたグリーンシート5,6の厚み(膜厚)を、定圧厚さ測定器(TECLOCK CORPORATION社製)を使用して測定した。
測定結果(平均値)を第1表に示す。
【0085】
(グリーンシートの成形性及び貼り合わせ適性の評価)
実施例1〜4で得られたグリーンシート1〜4、比較例1、2で得られたグリーンシート5,6の成形性及び貼り合わせ適性を次のようにして評価した。
【0086】
グリーンシートの成形性は、次のようにして評価した。上記で得たグリーンシート1〜6をロール状に巻き取った際、グリーンシート表面にひび割れが発生したものを×、発生しなかったものを○として評価した。
これらの評価結果を第1表に示す。
【0087】
グリーンシートの貼り合わせ適性は、次のようにして評価した。表示電極付前面板用ガラス基板に、上記で得たグリーンシート1〜6を貼付する際、うまく追従せず、ガラス基板とグリーンシートの間にすき間が発生してしまうものを×、発生しないものを○として評価した。
これらの評価結果を第1表に示す。
【0088】
(誘電体層形成ガラス基板の直線光透過率の測定)
実施例1〜4、比較例1、2で得た誘電体層形成ガラス基板1〜6について、焼成温度550℃、580℃及び620℃の各温度での直線光透過率(%)を測定した。測定結果を下記第1表に示す。
透過率は、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業社製)を用いて測定した。なお、誘電体層形成ガラス基板の直線光透過率としては、65%以上が好ましい。
【0089】
【表1】

【0090】
第1表から、実施例1〜4のグリンシートを用いることにより、焼成温度が550℃、580℃、620℃と異なる場合であっても、得られる誘電体層形成ガラス基板の直線光透過率はほとんど変化しておらず、焼成温度が多少変化しても優れた直線光透過率を有する透明性の高い誘電体層形成基板が得られることがわかる。
【0091】
一方、比較例1では、焼成温度が変化すると、得られる誘電体層形成ガラス基板の直線光透過率が著しく変化し、焼成温度によっては良好な透過率を有する誘電体層形成基板が得られなかった。比較例2では、グリーンシートの柔軟性が低下しているため、成形性及び基板への貼り合わせ適性が劣っていた。
【0092】
以上のことから、本発明(実施例1〜4)の誘電体層形成用組成物を用いて得られるグリーンシートを用いることにより、焼成する際に焼成温度の影響を受けにくく、焼成温度にムラがあっても、直線光透過率が高く均質な誘電体層を形成することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明のグリーンシートを製造する工程概略図である。
【図2】本発明の誘電体層形成基板の形成方法を示す工程断面図である。
【図3】プラズマディスプレイパネルの一例の構造断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1…前面板用ガラス基板、2…背面板用ガラス基板、3…表示電極、4…アドレス電極、5…誘電体層(前面板誘電体層)、6…誘電体層(背面板誘電体層)、7…保護膜、8…リブ(隔壁)、9…蛍光体、13…キャリアーフィルム、14…塗工装置、15…貯蔵部、16…塗工部、17a…誘電体層形成用組成物の塗膜、17…グリーンシート、18…乾燥装置、19…保護フィルム、20a、20b…積層ロール、21…積層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解性バインダー、ガラス成分及び分散剤を含有する誘電体層形成用組成物であって、前記熱分解性バインダーが、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の存在量が1〜50重量%の共重合体であり、かつ前記熱分解性バインダーの含有量が、ガラス成分100重量部に対し、12〜50重量部であることを特徴とする誘電体層形成用組成物。
【請求項2】
前記ガラス成分の平均粒子径が0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体層形成用組成物。
【請求項3】
プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に用いられるものである請求項1又は2に記載の誘電体層形成用組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシート。
【請求項5】
基板上に、請求項4に記載のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板。
【請求項6】
請求項4に記載のグリーンシートを基板と貼り合わせる工程と、前記グリーンシートを焼成することにより、誘電体層を形成する工程とを有する誘電体層形成基板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−73331(P2007−73331A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259065(P2005−259065)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】