説明

誘電体磁器組成物の製造方法

【課題】所望の高比誘電率を確保することができ、かつ静電容量の温度特性を安定した良好なものに維持できる誘電体磁器組成物を得ることのできる誘電体磁器組成物の製造方法を実現する。
【解決手段】BaCO及びTiOに含有されているCa成分を測定する。次いで、合成後の主成分粉末に含まれるCa成分の含有量が、不可避不純物を含め200〜322ppmとなるように、BaCO、TiO及びCaCOを秤量する。この秤量物を湿式で混合・粉砕した後、仮焼し、BaTiOを主成分とする主成分粉末を作製する。その後、この主成分粉末に所定の副成分粉末を添加し、湿式で混合・粉砕し、その後乾燥させて誘電体磁器組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物の製造方法に関し、より詳しくはチタン酸バリウムを主成分とした誘電体磁器組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるエレクトロニクス技術の発展に伴い、積層セラミックコンデンサ等の電子部品では、小型化、大容量化が急速に進行している。
【0003】
そして、高性能なセラミックコンデンサを得るべく、従来より、材料面から様々な工夫がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、不純物が、Ca、Sr、Mg、Y、Zrおよびアルカリ金属酸化物であり、前記チタン酸バリウム粉末100重量%に対して、 前記不純物としてのCa量が4〜340ppmであり、
前記不純物としてのSr量が120〜1500ppmであり、 前記不純物としてのMg量が0.6〜150ppmであり、前記不純物としてのY量が5〜1000ppmであり、
前記不純物としてのZr量が85〜2000ppmであり、 前記不純物としてのアルカリ金属酸化物量が300〜2000ppmであるチタン酸バリウム粉末が提案されている。
【0005】
この特許文献1では、Ca、Sr、Mg、Y、Zr、及びアルカリ金属酸化物などの不純物を上記所定の範囲とすることにより、積層セラミックコンデンサなどの電子部品を構成する誘電体層のさらなる薄層化や積層数の増加を図った場合であっても、クラックの発生を低減し、製造歩留まりを向上させることができる。
【0006】
すなわち、例えば、上記不純物のうちCaについては、Ca量が少なすぎると、得られたチタン酸バリウム粉末を用いて焼結体を製造する際に、セラミック材料の焼結収縮挙動と導電性材料の焼結収縮挙動のミスマッチが起こり易くなり、一方、Ca量が多すぎると、クラック率や電気特性が劣化し、焼結性低下を招くおそれがある。
【0007】
そこで、特許文献1では、チタン酸バリウム粉末中の不純物としてのCaについて、その含有量を4〜340ppmとすることにより、焼結性を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−105870号公報(請求項1、段落番号〔0062〕等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、上述したように、不純物であるCaの含有量を4〜340ppmに調整することにより、焼結性を安定させているが、この場合、比誘電率が低下したり、比誘電率や温度特性などの電気特性が安定しない場合があるという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、所望の高比誘電率を確保することができ、かつ静電容量の温度特性を安定した良好なものに維持できる誘電体磁器組成物を得ることのできる誘電体磁器組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
チタン酸バリウムを主成分とする高比誘電率系のセラミックコンデンサ用誘電体磁器組成物では、通常、副成分としてCaZrOやその他の各種複合酸化物、酸化物を適宜含有させ、用途に応じた電気特性を得るようにしている。
【0012】
また、これら誘電体磁器組成物を合成するためのセラミック素原料には、通常、Ca等が不純物として不可避的に含まれている。
【0013】
そして、チタン酸バリウムを主成分とする主成分粉末に副成分粉末を添加して誘電体磁器組成物を作製し、電気特性を評価したところ、副成分粉末に含まれるCa量は電気特性への影響が小さいのに対し、主成分粉末であるチタン酸バリウム中に含まれるCa量は電気特性に大きな影響を及ぼすことが分かった。
【0014】
そこで、本発明者らが、更に鋭意研究を行ったところ、チタン酸バリウム中に含まれるCa成分の含有量を200〜322ppmに調整することにより、所望の高比誘電率を確保でき、かつ静電容量の温度特性が良好な誘電体磁器組成物を安定して得ることができることが分かった。
【0015】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法は、バリウム化合物及びチタン化合物を含む複数のセラミック素原料を調合してチタン酸バリウムを主成分とする主成分粉末を作製する主成分粉末作製工程を備えた誘電体磁器組成物の製造方法において、前記主成分粉末作製工程は、前記主成分粉末中のカルシウム成分の含有量が200〜322ppmとなるようにカルシウム化合物の添加量を調整する添加量調整工程を含むことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の誘電体磁器組成物の製造方法は、前記カルシウム成分には、不可避不純物を含むことを特徴としている。
【0017】
さらに、本発明の誘電体磁器組成物の製造方法は、前記主成分粉末作製工程は、前記バリウム化合物及び前記チタン化合物と前記添加量調整工程で添加された前記カルシウム化合物との調合物を仮焼する仮焼工程を含むことを特徴としている。
【0018】
また、本発明の誘電体磁器組成物の製造方法は、前記主成分粉末と、少なくとも1種以上の副成分粉末とを所定比率で配合する配合工程を含むことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の誘電体磁器組成物の製造方法は、前記副成分粉末には、CaZrOを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
上記誘電体磁器組成物の製造方法によれば、チタン酸バリウムを主成分とする主成分粉末中のカルシウム成分の含有量が200〜322ppmとなるようにカルシウム化合物の添加量を調整するので、所望の高比誘電率を確保でき、かつ静電容量の温度特性が良好な誘電体磁器組成物を安定して得ることが可能となる。
【0021】
また、Ca成分には不可避不純物を含むので、Ca含有量を正確に管理することができる。
【0022】
また、前記主成分粉末と、CaZrO等の少なくとも1種以上の副成分粉末とを所定比率で配合する配合工程を含むので、副成分粉末中のCa含有量に依存することなく主成分粉末中のCa成分を管理するだけで、静電容量の温度特性や比誘電率が安定し、かつ所望の高比誘電率を確保できる誘電体磁器組成物を容易に得ることができ、多品種生産する場合のコストダウンに効果的な製造方法を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】試料番号1〜9におけるBaTiO中のCa量と比誘電率εrとの関係を示す図である。
【図2】試料番号1〜9におけるBaTiO中のCa含有量と静電容量の温度変化率ΔC+85との関係を示す図である。
【図3】試料番号1〜9におけるBaTiO中のCa含有量と静電容量の温度変化率ΔC-25との関係を示す図である。
【図4】試料番号11〜17におけるCaZrO中のCa変動量と比誘電率εrとの関係を示す図である。
【図5】試料番号11〜17におけるCaZrO中のCa変動量と静電容量の温度変化率ΔC+85との関係を示す図である。
【図6】試料番号11〜17におけるCaZrO中のCa変動量と静電容量の温度変化率ΔC-25との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0025】
本発明の製造方法により製造される誘電体磁器組成物は、BaTiOを主成分とする主成分粉末に副成分粉末が配合されている。
【0026】
副成分粉末としては、用途に応じた所望の電気特性を得る観点から、必要に応じCaZrO、SrTiO、MgTiO等の各種複合酸化物、Y、Dy等の希土類酸化物、SiO、Al等の各種酸化物を適宜選択して使用することができる。
【0027】
そして、上記誘電体磁器組成物は、主成分粉末であるBaTiO中のCa含有量が不可避不純物を含め200〜322ppmとなるように調整されている。
【0028】
すなわち、誘電体磁器組成物中には、種々の不純物が不可避的に含有されており、例えば、主成分粉末や副成分粉末を合成するためのセラミック素原料中には、微量のCa成分が不純物として含有されている。
【0029】
そして、本発明者らの研究結果により、副成分粉末中の微量のCa成分は、電気特性に殆ど影響がないのに対し、主成分粉末であるBaTiO中に含有されている微量のCa成分は、電気特性に大きな影響を及ぼすことが分かった。
【0030】
具体的には、BaTiO粉末中のCa成分の含有量が200ppm未満になると、比誘電率εrが低下傾向となって所望の高比誘電率を維持することができなくなる。一方、BaTiO粉末中のCa成分の含有量が322ppmを超えると、静電容量の温度変化率が大きくなって温度特性の劣化を招くおそれがある。
【0031】
そこで、本誘電体磁器組成物は、主成分粉末であるBaTiO中のCa含有量が不可避不純物を含め200〜322ppmとなるように、Ca化合物の添加量を調整している。
【0032】
以下、本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法を詳述する。
【0033】
まず、セラミック素原料として、Ba化合物、及びTi化合物を用意し、ICP−AES(誘導結合プラズマ質量分析法)等の分析法を使用し、これらセラミック素原料に含まれるCa成分の含有量を予め測定する。すなわち、上述したように、これらのセラミック素原料には、通常、不可避不純物としてCa成分が含まれているため、これらセラミック素原料中のCa成分の含有量を予め測定しておく。
【0034】
次いで、合成後のBaTiO粉末に含有されるCa成分の含有量が200〜322ppmとなるように所定量のBa化合物、Ti化合物、及びCa化合物を秤量する。
【0035】
そして、このように秤量された秤量物を分散剤及び純水と共に撹拌ミルに投入し、混合・粉砕してスラリーを作製する。
【0036】
得られたスラリーを所定温度に加熱して仮焼し、次いで、乾式で粉砕し、BaTiO粉末を主成分とする主成分粉末を作製する。
【0037】
次に、所望の電気特性を得るために所定の副成分粉末を所定量秤量し、前記主成分粉末、バインダー、純水等と共にPSZ(部分安定化ジルコニア)ボールを内有したボールミルに投入し、混合・粉砕してスラリーを作製する。そして、このスラリーを乾燥させ、これにより誘電体磁器組成物を得ることができる。
【0038】
このように本実施の形態によれば、BaTiOを主成分とする主成分粉末中のCa成分の含有量が不可避不純物を含め200〜322ppmとなるようにCa化合物の添加量を調整しているので、高比誘電率を確保しつつ、良好な温度特性を有する誘電体磁器組成物を安定して得ることができる。
【0039】
また、Ca成分には不可避不純物を含むので、Ca含有量を常に正確に管理することができる。
【0040】
また、前記主成分粉末と、CaZrO等の少なくとも1種以上の副成分粉末とを所定比率で配合する配合工程を含むので、副成分粉末中のCa含有量に依存することなく主成分粉末中のCa成分を管理するだけで、静電容量の温度特性や比誘電率が安定し、かつ所望の高比誘電率を有する誘電体磁器組成物を容易に得ることができ、多品種生産する場合のコストダウンに効果的な製造方法を実現することができる。
【0041】
そしてこの誘電体磁器組成物をセラミック原料として使用することにより、所望の積層セラミックコンデンサや単板形状のセラミックコンデンサを得ることができる。
【0042】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、Caの存在形態についても、結晶粒内、結晶粒界、結晶三重点のいずれに存在していてもよい。また、セラミック素原料となるBa化合物、Ti化合物、Ca化合物の形態についても、炭酸物、水酸化物、酸化物等いずれでもよく、特に限定されるものではない。
【0043】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0044】
セラミック素原料として、BaCO及びTiOの粉末を用意し、ICP−AES(誘導結合プラズマ質量分析法)で、これらのセラミック素原料に含まれるCa成分の含有量を測定したところ、25ppmであった。
【0045】
そして、合成後のBaTiO粉末に含有されるCa成分の含有量が129〜400ppmとなるように所定量のBaCO、TiO、及びCaCOの各粉末を秤量した。
【0046】
次に、分散剤が予め含有された純水と共に、この秤量物を媒体型攪拌ミルに投入し、混合・粉砕してスラリーを作製した。
【0047】
次いで、得られたスラリーを脱水乾燥した後、所定温度に加熱した回転式の管状炉に投入した。管状炉に投入された乾燥粉末は、管状炉の回転に伴って中央部に送られ、仮焼される。そしてこの仮焼物を乾式で粉砕してBaTiO粉末(主成分粉末)を作製し、BaTiO粉末のCa含有量をICP−AESで実測した。
【0048】
次に、セラミック素原料として、CaCO粉末及びZrO粉末を所定量秤量し、上述と同様、分散剤が予め含有された純水と共に、この秤量物を媒体型攪拌ミルに投入し、混合・粉砕してスラリーを作製した。粉砕媒体としてのPSZボールが内有されたボールミルに分散剤、純水に投入し、混合・粉砕してスラリーを作製した。
【0049】
次いで、得られたスラリーを脱水乾燥した後、所定の温度に加熱した回転式の管状炉に投入し、上述と同様、仮焼し、乾式で粉砕し、CaZrO粉末を作製した。
【0050】
次に、モル比が88:12となるように、BaTiO粉末、CaZrO粉末を所定量秤量し、さらにMgTiO粉末、Y粉末、SiO粉末、Al粉末を所定量秤量した。
【0051】
そして、この秤量物を、バインダー等を含有した純水と共にPSZボールを内有したボールミルに投入し、混合・粉砕してスラリーを作製し、このスラリーを乾燥させ、組成式(Ba0.88Ca0.12)(Ti0.88Zr0.12)Oで表わされる誘電体磁器組成物を得た。
【0052】
そして、この誘電体磁器組成物をプレス加工して成形体を作製し、所定温度で2時間保持して焼成を行い、直径12.5mm、厚み1.0mmのセラミック焼結体を得た。
【0053】
次に、得られたセラミック焼結体の両主面にAgを蒸着させて電極を形成し、試料番号1〜9の試料を作製した、
次に、試料番号1〜9の各試料について、LCRメータを使用して1kHz、1Vrmsの条件で+20℃における比誘電率εrを測定した。
【0054】
また、雰囲気温度を−25℃〜+85℃の範囲で変化させ、+85℃及び−25℃における比誘電率εrをそれぞれ求め、試料寸法から静電容量C+85、C-25を各々算出し、下記数式(1)、(2)に基づき+20℃を基準にした静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25を求めた。
【0055】
ΔC+85=(C+85℃−C20℃)/C20℃×100 …(1)
ΔC-25=(C-25℃−C20℃)/C20℃×100 …(2)
表1はBaTiO中のCa含有量、比誘電率εr、静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25を示している。
【0056】
【表1】

【0057】
試料番号6及び7は、BaTiO中のCa含有量がそれぞれ129ppm、150ppmと少ないため、静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25は良好であるが、比誘電率εrは7500以下に低下している。
【0058】
一方、試料番号8及び9は、BaTiO中のCa含有量がそれぞれ357ppm、400ppmと過剰であるため、比誘電率は高いものの、静電容量の温度変化率ΔC+85がそれぞれ−55.0%、−55.9%となって変動幅が大きくなり、温度特性が悪化している。
【0059】
これに対し試料番号1〜5は、BaTiO中のCa含有量は、200〜322ppmと本発明の範囲内であるので、7500以上の高比誘電率を確保でき、しかも静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25も−38.0%〜−53.5%と許容範囲内であり、良好な温度特性を得ることのできることが分かった。
【0060】
図1は、試料番号1〜9におけるBaTiO中のCa含有量と比誘電率εrの関係を示す図であり、横軸がCa含有量(ppm)、縦軸が比誘電率εrである。
【0061】
また、図2及び図3は、試料番号1〜9におけるBaTiO中のCa含有量と静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25の関係を示す図であり、横軸がCa含有量(ppm)、縦軸が静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25(%)である。
【0062】
この図1〜図3から明らかなように、BaTiO中のCa含有量を200〜322ppmに調整することにより、静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25(%)の変動幅を抑制しつつ、7500以上の高比誘電率を維持できる誘電体磁器組成物を得ることができた。
【実施例2】
【0063】
実施例1の試料番号3で作製したCa含有量が257ppmのBaTiO粉末を用意した。
【0064】
次に、実施例1で作製したCaZrO粉末を用意し、さらにMgTiO粉末、Y粉末、SiO粉末、Al粉末を用意し、実施例1と同様の方法・手順で組成式(Ba0.88Ca0.12)(Ti0.88Zr0.12)Oで表わされる試料番号15の試料を得た。
【0065】
また、CaZrOの添加量を変化させることによって、BaTiO粉末とCaZrO粉末との混合比を変化させ、Caの含有モル比0.12に対し、重量比率で−726ppm〜+364ppmの範囲で異ならせた試料番号11〜14、16、17の試料を作製した。
【0066】
そして、〔実施例1〕と同様、比誘電率εr及び静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25を求めた。
【0067】
表2はCaZrOにおけるCaの変動量と測定結果を示している。
【0068】
【表2】

【0069】
また、図4は、試料番号11〜17におけるCaZrOのCa変動量と比誘電率εrの関係を示す図であり、横軸がCa変動量(ppm)、縦軸が比誘電率εrである。
【0070】
また、図5及び図6は、試料番号11〜17におけるCaZrOのCa変動量と静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25の関係を示す図であり、横軸がCa含有量Δα(ppm)、縦軸が静電容量の温度変化率ΔC+85、ΔC-25(%)である。
【0071】
この表2及び図4から明らかなように、BaTiO中のCa含有量が一定(257ppm)であれば、CaZrOのCaが−700ppm〜350ppm程度の範囲で変動しても、比誘電率εrは7500以上を確保できることが分かった。
【0072】
また、表2及び図5、6から明らかなように、BaTiO中のCa含有量が一定(257ppm)であれば、CaZrOのCaが−700ppm〜350ppm程度の範囲で変動しても、温度変化率の変動幅は−37.5〜−54.3%と比較的安定していることが分かった。
【0073】
上述した〔実施例1〕、〔実施例2〕から明らかなように、BaTiO系の誘電体磁器組成物では、高比誘電率を確保でき、かつ静電容量の温度特性を安定した良好なものとするには、主成分粉末であるBaTiOに含有されるCa成分の添加量を200〜322ppmに調整するのが効果的であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
BaTiOを主成分粉末とし、副成分粉末が添加された誘電体磁器組成物において、BaTiO中のCa成分の含有量を200〜322ppmに調整することにより、高比誘電率と良好な温度特性を安定的に確保する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウム化合物及びチタン化合物を含む複数のセラミック素原料を調合してチタン酸バリウムを主成分とする主成分粉末を作製する主成分粉末作製工程を備えた誘電体磁器組成物の製造方法において、
前記主成分粉末作製工程は、前記主成分粉末中のカルシウム成分の含有量が200〜322ppmとなるようにカルシウム化合物の添加量を調整する添加量調整工程を含むことを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項2】
前記カルシウム成分には、不可避不純物を含むことを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項3】
前記主成分粉末作製工程は、前記バリウム化合物及び前記チタン化合物と前記添加量調整工程で添加された前記カルシウム化合物との調合物を仮焼する仮焼工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項4】
前記主成分粉末と、少なくとも1種以上の副成分粉末とを所定比率で配合する配合工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項5】
前記副成分粉末には、CaZrOを含むことを特徴とする請求項4記載の誘電体磁器組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−16682(P2011−16682A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161825(P2009−161825)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】