説明

誘電体磁器組成物

【課題】 比誘電率εrが150以上で、誘電率の温度特性τεが200ppm/K以下で、Q特性にも優れた誘電体磁器組成物を実現する。
【解決手段】 基本組成成分が、aBaTiO−bSrTiO−cCaTiO−dLi1/2RE1/2TiO−eLi1/2Nd1/2TiO[ただし、REはLa,Ce,Prから選択される少なくとも1種を表し、a〜eは各成分の配合比率(モル%)を表す。]で表される誘電体磁器組成物である。各成分の組成は、0≦a≦5、1≦b≦30、5≦c≦30、1≦d≦20、45≦e≦75、20≦a+b+c<35、a+b+c+d+e=100である。配合比率d,eは、d:e=1:2〜1:10であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物に関するものであり、BaTiO、SrTiO、CaTiO、Li1/2RE1/2TiO(REは希土類元素)等のチタン酸塩を固溶させた誘電体磁器組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、情報通信分野においては、使用周波数帯域が高周波数に移行する傾向にあり、衛星放送や衛星通信、携帯電話や自動車電話等の移動体通信では、ギガヘルツ(GHz)帯の高周波が使用されている。
【0003】
前述のような高周波帯域で使用される機器に搭載される回路基板や電子部品等では、使用する誘電体材料は、回路基板や電子部品の高性能化や小型化を図るためには、使用周波数帯域において高比誘電率εrを有する誘電体材料が必要である。これは、誘電体材料中の電磁波の波長が1/√εrによって短縮されるという原理に基づくものであり、比誘電率εrの大きい誘電体材料ほど回路基板や電子部品の小型化が可能である。さらに、Qが高く高周波領域での損失が低い材料であることが必要である。ここでQは誘電率正接tanδの逆数であり、Qが高いほど損失が少ない。また、周波数によりQの値が変わるので、本明細書ではQと共振周波数fの積、すなわちQfを用いて材料の損失特性を表す。Qfは高周波誘電体の品質係数とも呼ばれ、Qfが高いほど損失が低い。
【0004】
ただし、一般的に、高周波誘電体は、比誘電率εrが高いものほど比誘電率εrの温度特性τεが悪くなる傾向にあり、Q値が小さくなる傾向にある。したがって、比誘電率εrが高く、比誘電率εrの温度係数τεが小さく、しかもある程度のQ値を有する誘電体磁器組成物を実現することは難しく、各方面でこれら特性を満たす誘電体磁器組成物の開発が進められている。
【0005】
温度特性τεの小さな誘電体磁器組成物としては、例えばBa−希土類(RE)−Ti−O系誘電体磁器組成物、さらにはこれにBiやPb等を含ませた誘電体磁器組成物が開発されている。ただし、これらの誘電体磁器組成物は、平坦な温度特性と比較的高いQ値を持つものの、比誘電率εrが80〜100程度と小さい。
【0006】
そこで、比誘電率εrを改善する目的で、xCaTiO−yLi1/2La1/2TiO−zLi1/2Nd1/2TiO(但し、0.05<x<0.3、0<y<0.4、0.45<z<0.95であり、x+y+z=1である。)で表され、ペロブスカイト型結晶構造を有する誘電体材料も提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。
【0007】
特許文献1記載の誘電体材料は、所定量のLiCO、La、Nd、CaCO及びTiOの各粉末を混合し、成形した後、焼成することにより得られるものであり、比誘電率εrが120以上と高く、且つ、実用上十分な無負荷品質係数Qf及び共振周波数の温度係数を有するとされている。
【特許文献1】特開平11−189465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1記載の誘電体材料においても、比誘電率εrは150程度であり、必ずしも十分とは言い難い。また、温度特性τεに関しても、やはり十分とは言えない。
【0009】
前記特許文献1記載の誘電体材料に限らず、比誘電率εrが150を越え、誘電率の温度係数τεが±200ppm/K未満であり、しかも、ある程度高いQ値を持つ誘電体磁器組成物は、現状では見あたらないのが実情である。
【0010】
本発明は、前述の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、150を越える比誘電率εrを安定に得ることができるとともに、誘電率の温度特性τε±200ppm/K未満を達成することができ、ある程度高いQ値を実現することが可能な誘電体磁器組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前述の課題を解決するために長期に亘り鋭意研究を行ってきた。そして、チタン酸塩において、いわゆるAサイトにLiと希土類を同時に含有させることで正の温度特性τεを持たせることができることに着目し、BaTiO、SrTiO、CaTiO、Li1/2RE1/2TiO(REは希土類元素)等のチタン酸塩を適正な割合で固溶させることで、基本的に単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体からなり、誘電率、Q特性、温度特性の各特性について、バランス良く良好な値を示す誘電体磁器組成物を開発するに至った。
【0012】
本発明は、このような研究開発の成果として完成されたものであり、基本組成成分が、aBaTiO−bSrTiO−cCaTiO−dLi1/2RE1/2TiO−eLi1/2Nd1/2TiO[ただし、REはLa,Ce,Prから選択される少なくとも1種を表し、a〜eは各成分の配合比率(モル%)を表す。]で表され、
0≦a≦5
1≦b≦30
5≦c≦30
1≦d≦20
45≦e≦75
20≦a+b+c<35
a+b+c+d+e=100
であることを特徴とする。
【0013】
本発明の誘電体磁器組成物においては、BaTiO、SrTiO、CaTiOが高い比誘電率εrをもたらす。また、これら高い比誘電率εrをもたらすBaTiO、SrTiO、CaTiOのうち、特に、CaTiOは高いQ特性を持ち、BaTiOやSrTiOは、CaTiOを越える高い比誘電率εrを持つ。したがって、CaTiOに対して、SrTiOやBaTiOを配合することで、高いQ特性と高い比誘電率εrを兼ね備えた誘電体磁器組成物が実現される。
【0014】
また、前記BaTiO、SrTiO、CaTiOが負の温度特性を持つのに対して、Li1/2RE1/2TiO(REは希土類元素)は正の温度特性を有する。したがって、これらを同時に含有することで、比誘電率εrの温度特性τεがフラットになる。
【0015】
したがって、これらのチタン酸塩の割合を本発明で規定する範囲内で調整し、ペロブスカイト構造を持つ単相の固溶体とすることで、比誘電率εrやQ特性が高く、比誘電率εrの温度特性τεが小さな誘電体磁器組成物が実現される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、150を越える高い比誘電率εrを安定に得ることができ、高いQ値を有するとともに、誘電率の温度特性τεも±200ppm/K未満と小さな誘電体磁器組成物を提供することが可能である。また、係る誘電体磁器組成物を用いることで、低温焼成セラミックス基板やデバイス部品の高性能化を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る誘電体磁器組成物について詳細に説明する。
【0018】
本発明の誘電体磁器組成物は、BaTiO、SrTiO、CaTiO、Li1/2RE1/2TiO(REは希土類元素)等のチタン酸塩を所定の割合で固溶させたペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体である。そして、その基本組成成分は、aBaTiO−bSrTiO−cCaTiO−dLi1/2RE1/2TiO−eLi1/2Nd1/2TiO[ただし、REはLa,Ce,Prから選択される少なくとも1種を表し、a〜eは各成分の配合比率(モル%)を表す。]で表すことができ、各成分の組成は、
0≦a≦5
1≦b≦30
5≦c≦30
1≦d≦20
45≦e≦75
20≦a+b+c<35
a+b+c+d+e=100
なる範囲に設定される。
【0019】
前記組成範囲を図示したものが図1である。この図1は、(CaTiO+SrTiO+BaTiO)を1つの成分とする3元組成図である。図1において、斜線領域として表されているのが、本発明の組成範囲である。
【0020】
前記基本組成成分における、各成分の組成の限定理由について説明すると、先ず、BaTiOについては、比誘電率εrを向上する効果を有するが、BaTiOの配合比率aが5モル%を越えると、Q特性(Qf値)の低下が著しい。したがって、BaTiOの配合比率aは、5モル%以下とする。BaTiOの配合比率aは、場合によってはゼロであってもよい。
【0021】
次に、SrTiOの配合比率bであるが、SrTiOも比誘電率εrを向上する効果を有しており、本発明の誘電体磁器組成物の場合、必須の成分である。前記SrTiOの配合比率bが1モル%未満であると、誘電率向上効果が不十分となり、比誘電率εr150以上を実現することが難しくなるおそれがある。ただし、SrTiOの配合比率bが30モル%を越えると、Q特性の低下が著しくなることから、前記SrTiOの配合比率bは、1モル%以上、30モル%以下とする必要がある。
【0022】
CaTiOは、Q特性の向上に効果があり、比誘電率εrについても、ある程度高い値をもたらす効果を有する。ただし、CaTiOが多すぎると、誘電率の温度特性τεが悪くなるおそれがある。したがって、これらの観点から、CaTiOの配合比率cは、5モル%以上、30モル%以下とする。
【0023】
また、これらアルカリ土類金属(Ba,Sr,Ca)のチタン酸塩に関しては、その総量(a+b+c)についても考慮する必要がある。前記総量(a+b+c)が多すぎると、温度特性τεはマイナス方向での絶対値が大きくなる。逆に、前記総量(a+b+c)が少なすぎると、温度特性τεはプラス方向での絶対値が大きくなり、また、比誘電率εrやQ特性も低下する。したがって、前記総量(a+b+c)は、20モル%以上、35モル%以下とする。
【0024】
一方、Li1/2RE1/2TiOであるが、この成分は、Li1/2Nd1/2TiOとともに温度特性τεを制御する機能を有する。したがって、その配合比率dは、誘電体磁器組成物の温度特性τεを考慮して設定すればよいが、あまり配合比率dが大きすぎるとQ特性が悪くなり、小さすぎると比誘電率εrが低くなることから、1モル%以上、20モル%以下とすることが好ましい。
【0025】
Li1/2Nd1/2TiOは、主に誘電体磁器組成物の温度特性τεの制御に寄与し、その配合比率eが大きすぎると、温度特性τεはプラス方向での絶対値が大きくなる。また、比誘電率εrやQ特性も低下する。前記配合比率eが小さすぎると、温度特性τεはマイナス方向での絶対値が大きくなる。したがって、Li1/2Nd1/2TiOの配合比率eは、45モル%以上、75モル%以下とする必要がある。
【0026】
以上が本発明の誘電体磁器組成物を構成する各成分の組成についての限定理由であるが、本発明の誘電体磁器組成物においては、さらに、Li1/2RE1/2TiOとLi1/2Nd1/2TiOの比率を適正に設定することが好ましい。Li1/2Nd1/2TiOの配合比率eがLi1/2RE1/2TiOの配合比率dの10倍量を越えると、すなわちd/e<1/10であると、比誘電率εrを向上する効果と、温度特性τεの改善効果が少なくなるおそれがある。逆に、Li1/2Nd1/2TiOの配合比率eがLi1/2RE1/2TiOの配合比率dの2倍量未満であると、すなわちd/e>1/2であると、温度特性τεはプラス方向での絶対値が大きくなり、Q特性も低下するおそれがある。したがって、前記配合比率d,eは、d:e=1:2〜1:10とすることが好ましい。
【0027】
また、本発明の誘電体磁器組成物においては、前記基本組成成分のうち、Li1/2Nd1/2TiOにおいて、Ndの一部がランタニド族元素(Pm,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Yb,Yから選択される少なくとも1種)によって置換されていてもよい。Ndの一部をこれらのより小さいイオン半径を持つランタニド族元素で置換することにより、Qf特性の向上という効果を付与することができる。
【0028】
前述の本発明の誘電体磁器組成物は、例えば図2に示す製造プロセスにしたがって作製することができる。図2に示す製造プロセスは、混合工程1、仮焼成工程2、粉砕工程3、造粒工程4、成形工程5、及び焼成工程6とから構成されるものである。
【0029】
誘電体磁器組成物の製造に際しては、先ず、主成分の原料粉末を所定量秤量し、これらを混合する(混合工程1)。主成分の原料粉末としては、酸化物粉末の他、加熱により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、蓚酸塩、硝酸塩等の粉末を用いることができる。この場合、1種類の金属の酸化物(化合物)に限らず、例えば2種類以上の金属を含む複合酸化物の粉末を原料粉末としてもよい。各原料粉末の平均粒径は、0.1μm〜3.0μmの範囲内で適宜選択すればよい。
【0030】
混合方法としては、例えばボールミルによる湿式混合等を採用することができ、混合の後、乾燥、粉砕、篩いかけをし、仮焼成工程2を行う。仮焼成工程2では、例えば電気炉等を用い、900℃〜1300℃の温度範囲で所定時間保持し、仮焼を行う。このときの雰囲気は、O、Nまたは大気等の非還元性雰囲気とすればよい。また、仮焼における前記保持時間は、0.5〜5.0時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0031】
仮焼後、粉砕工程3において、仮焼体を例えば平均粒径0.5μm〜2.0μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、例えばボールミル等を用いることができる。
【0032】
なお、各成分の原料粉末を添加するタイミングは、前記混合工程1のみに限定されるものではない。例えば、必要な原料粉末のうちの一部の成分の原料粉末のみを秤量、混合し、仮焼する。これを粉砕した後、他の成分の原料粉末を所定量添加し、混合するようにしてもよい。
【0033】
粉砕工程3において粉砕した粉末は、後の成形工程5を円滑に実行するために、造粒工程4において、顆粒に造粒される。この際、粉砕粉末に適当なバインダ、例えばポリビニルアルコール(PVA)を少量添加することが望ましい。また、得られる顆粒の粒径は、80μm〜200μm程度とすることが望ましい。
【0034】
造粒した顆粒は、成形工程4において、例えば200MPa〜300MPaの圧力で加圧成形し、所望の形状の成形体を得る。次いで、成形時に添加したバインダを除去した後、焼成工程6において、1000℃〜1400℃の範囲内で所定時間成形体を加熱保持し、焼結体を得る。焼成工程6における焼成雰囲気は、例えばO、Nまたは大気等の非還元性雰囲気とすればよい。加熱保持時間は、例えば2〜6時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0035】
焼成後、必要に応じて研磨等により表面仕上げを行い、焼結体(誘電体磁器組成物)を得る。この誘電体磁器組成物は、例えば3GHzにおける比誘電率εrが150〜300、Qfが300〜10000、誘電率の温度特性τε(−40℃〜85℃)が絶対値で200ppm/K以下であり、優れた誘電特性を備える。したがって、本発明の誘電体磁器組成物は、高周波、特にマイクロ波用の共振器、フィルタ、積層コンデンサ等のデバイス部品や、低温焼成セラミックス基板の材料として好適である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
【0037】
誘電体磁器組成物の作製
原料粉末として、LiCO、CaCO、SrCO、BaCO、La(OH)、Nd(OH)、Sm、TiO等を用意した。各原料粉末の平均粒径は、0.1μm〜1.0μmである。
【0038】
これら原料粉末を所定のモル比で所定の値となるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合を16時間行った。得られたスラリーを十分に乾燥させた後、大気中、1200℃で2時間保持する仮焼を行い、仮焼体を得た。仮焼体が平均粒径1.0μmになるまでボールミルにより微粉砕した後、微粉砕粉末を乾燥させた。次いで、バインダとしてPVA(ポリビニルアルコール)を適量加えて造粒し、成形を行った後、1100℃〜1400℃の温度範囲で4時間焼成を行い、焼結体を得た。この焼結体をバーティカル研磨後、ラップで鏡面に仕上げ、直径10mm、厚さ5mmのサンプルを得た。
【0039】
以上の手順に従い、表1に示す組成を有する誘電体磁器組成物(実施例1〜11)及び表2に示す誘電体磁器組成物(比較例1〜14)を作製した。
【0040】
評価
作製した各誘電体磁器組成物について、誘電特性(比誘電率εr、Qf値、温度特性τε)を測定した。なお、比誘電率εr、Qf値、共振周波数は、Hakki−Coleman法により測定した。また、比誘電率εrの測定の際には、ネットワークアナライザ(ヒューレットパッカード社製、8510C)の一方のプローブより高周波を発振して周波数特性を測定し、得られたTE01δモードの共振周波数ピークと試料の寸法より比誘電率εrを求めた。温度特性τεは、共振法により、−45℃〜85℃の温度領域において測定し、測定時の共振周波数f0は2.5GHz〜3.5GHzとした。結果を表1及び表2に示す。なお、組成の違いにより、各サンプルの緻密化温度が若干違うため、同一作製条件での特性比較ができない。ここでは各サンプルにおいて最も高い焼成密度および電気特性が得られた条件でのデータを示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表1に示す本発明の組成範囲内にある各実施例の誘電体磁器組成物では、全ての実施例において比誘電率εr150以上が達成されている。温度特性τεも全ての実施例において±200ppm/K以下であり、大部分の実施例において±150ppm/K以下である。さらに、Qf特性についても、全ての実施例において300GHz以上であり、大部分の実施例において500GHz以上である。中でも、例えば実施例3の誘電体磁器組成物においては、比誘電率εrが160以上と非常に高く、Qf値が1200GHz以上、温度特性τεが±10ppm/K以下である。また、実施例7〜実施例10では、比誘電率εrが170以上、あるいは180以上である。このように、本発明を適用することにより、非常に優れた誘電特性が達成されることがわかる。
【0044】
これに対して、表2に示す各比較例では、誘電特性のいずれかにおいて、特性の劣化が認められる。例えば、SrTiOが含まれない比較例1、2、4、5、6では、比誘電率εrが150を下回っている。CaTiOが含まれない比較例3では、Q特性が不十分である。アルカリ土類金属のチタン酸塩を総量(a+b+c)が35モル%を越え、その結果Li1/2Nd1/2TiOの配合比率eが45モル%を下回っている比較例9〜12では、温度特性τεの値が大きくなり、いずれにおいても±200ppm/Kを大きく上回っている。また、Li1/2Nd1/2TiOが含まれない(基本組成成分においてe=0)比較例13では、Qf値が低下するとともに温度特性τεの値もプラス側に大きくなっており、逆にLi1/2RE1/2TiOが含まれない(基本組成成分においてd=0)比較例14では、比誘電率εrが150を下回り、温度特性τεの値がマイナス側に大きくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の誘電体磁器組成物の組成範囲を示す3元組成図である。
【図2】誘電体磁器組成物の製造プロセスの一例を示す図である。
【0046】
1 混合工程、2 仮焼成工程、3 粉砕工程、4 造粒工程、5 成形工程、6 焼成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本組成成分が、aBaTiO−bSrTiO−cCaTiO−dLi1/2RE1/2TiO−eLi1/2Nd1/2TiO[ただし、REはLa,Ce,Prから選択される少なくとも1種を表し、a〜eは各成分の配合比率(モル%)を表す。]で表され、
0≦a≦5
1≦b≦30
5≦c≦30
1≦d≦20
45≦e≦75
20≦a+b+c<35
a+b+c+d+e=100
であることを特徴とする誘電体磁器組成物。
【請求項2】
前記配合比率d,eが、d:e=1:2〜1:10であることを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
前記基本組成成分のうち、Li1/2Nd1/2TiOにおいて、Ndの一部がPm,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Yb,Yから選択される少なくとも1種によって置換されていることを特徴とする請求項1または2記載の誘電体磁器組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−256931(P2006−256931A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79369(P2005−79369)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】