誘電体積層構造体とその製造方法、及びコンデンサ
【課題】金属層に誘電体層が積層された誘電体積層構造体を製造するにあたり、金属層と誘電体層との熱膨張係数の差に起因する反りの発生および誘電体層のクラックの発生を抑制し、良好な品質の誘電体積層構造体を提供する。
【解決手段】誘電体積層構造体5は、金属層3に誘電体層4が積層されて構成されている。金属層3は、鉄(Fe)とニッケル(Ni)を主成分とする鉄ニッケル合金層1がニッケル被覆2にて被覆された構成となっている。また、鉄ニッケル合金層1と誘電体層(チタン酸バリウム)4の熱膨張係数は、700〜800℃程度の温度においてほぼ同一(約12ppm/K)である。この熱膨張係数は、金属層3としてニッケルを用いた場合(約16ppm/K)よりも低い。これにより、製造工程において、熱膨張係数の差に起因する反りの発生や熱膨張に起因する誘電体層4のクラックの発生が抑制される。
【解決手段】誘電体積層構造体5は、金属層3に誘電体層4が積層されて構成されている。金属層3は、鉄(Fe)とニッケル(Ni)を主成分とする鉄ニッケル合金層1がニッケル被覆2にて被覆された構成となっている。また、鉄ニッケル合金層1と誘電体層(チタン酸バリウム)4の熱膨張係数は、700〜800℃程度の温度においてほぼ同一(約12ppm/K)である。この熱膨張係数は、金属層3としてニッケルを用いた場合(約16ppm/K)よりも低い。これにより、製造工程において、熱膨張係数の差に起因する反りの発生や熱膨張に起因する誘電体層4のクラックの発生が抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層と、該金属層に積層される誘電体層とを備えた誘電体積層構造体とその製造方法、及び、この誘電体積層構造体を用いたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
殆どの電子機器は高速化するにつれて、発生する電磁波ノイズが高周波帯域で強力になる。特に、CPU等の半導体集積回路素子のデカップリングやスイッチング電源のノイズ対策などには、高容量で低インダクタンスのコンデンサが必要とされる。このような用途に用いられるコンデンサは、一般的にデカップリングコンデンサと呼ばれている。そして、このデカップリングコンデンサを、例えば半導体集積回路素子が搭載されるパッケージ基板内に半導体集積回路素子近傍となるように配置し、半導体集積回路素子の動作に必要な高周波電流をこのデカップリングコンデンサを介して供給することにより、ノイズの低減を図ることが提案されている。
【0003】
パッケージ基板内へのコンデンサの配置方法としては、例えば、多層化された基板における所定の層に穴をあけてチップコンデンサを埋め込むという方法も考えられるが、そのような方法だとパッケージ基板の大型化を招く。そのため、近年ますます要求される電子機器の小型化を考慮し、金属電極層間に誘電体層を配置してなるコンデンサ構造体をパッケージ基板内の所定の層に埋め込むことで、パッケージ基板全体の大型化を防ぐことが考えられている。
【0004】
この場合、コンデンサ構造体を構成する誘電体層としては主にチタン酸バリウムやアルミナなど、製造の過程で焼成工程を必要とするものが用いられる。そのため、ビルドアップにより多層パッケージ基板を製造していく工程とは別に、別途、コンデンサ構造体を焼成により製造しておく必要がある。そして、焼成後のコンデンサ構造体を、ビルドアップの過程でパッケージ基板に埋め込むこととなる。
【0005】
そして、コンデンサ構造体の製造方法としては、例えば、金属箔上に導電性ペーストを付着させて焼成を行った後、次にその上に誘電体ペーストを塗布して焼成を行い、さらに導電性ペーストを塗布して焼成を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−160672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属箔上に誘電体ペーストが塗布されたものを焼成してコンデンサ構造体を製造しようとすると、金属箔と誘電体との熱膨張係数の差に起因してコンデンサ構造体に反りが生じてしまうことがあった。
【0007】
即ち、例えば金属箔としてのニッケル箔の片面側に誘電体ペーストとしてのチタン酸バリウムを塗布して焼成させた場合、チタン酸バリウムの熱膨張係数(約12ppm/K)よりもニッケル箔の熱膨張係数(約16ppm/K)の方が大きい。しかも、誘電体ペーストは実際には膨張よりもむしろ焼成によって収縮するため、ニッケル箔の方がチタン酸バリウムに対して相対的に大きく膨張することとなり、焼成の過程でコンデンサ構造体に反りが生じてしまうのである。なお、上記の熱膨張係数は、焼成時の温度(約1300℃)での値ではなく熱膨張係数の差の影響が生じる温度での値(ここでは約700〜800℃での値)である。
【0008】
このように反りが生じてしまうと、そのままの状態ではそのコンデンサ構造体をパッケージ基板に埋め込むのは困難となる。また、反りが生じている焼成後のコンデンサ構造体を外力によって無理に平面状に戻そうとすると、誘電体層が割れてしまい、品質が大きく低下してしまうおそれがある。
【0009】
また、金属箔の熱膨張係数が誘電体の熱膨張係数よりも大きいと、その大きさの程度によっては、上述した反りの発生だけでなく更に誘電体層(誘電体ペースト)の焼結に不具合をもたらすおそれもある。即ち、焼成時の温度上昇により金属箔が熱膨張すると、焼結の進んでいない(つまり焼結の過渡状態で収縮中の)誘電体層に引っ張り応力が加わることになり、その結果、誘電体層にクラックが生じるおそれがある。そうなると、生成されたコンデンサ構造体が所期の電気的特性・物理的特性を満たさず、実際に使用できない不良品となってしまうおそれがある。
【0010】
上記特許文献1の製造方法は、金属箔と誘電体ペーストとの間に導電性ペーストを介在させて焼成させているが、この導電性ペーストによって、金属箔と誘電体との熱膨張係数の差に起因する反りの発生を完全に抑えることは困難である。しかも、金属箔の熱膨張によって導電性ペーストおよび誘電体ペーストの双方にクラックが発生するおそれがあるため、品質低下の問題の解決にもならない。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、金属層に誘電体層が積層された誘電体積層構造体を製造するにあたり、金属層と誘電体層との熱膨張係数の差に起因する反りの発生が抑制されると共に金属層の熱膨張に起因する誘電体層のクラックの発生も抑制された良好な品質の誘電体積層構造体とその製造方法、およびその誘電体積層構造体を利用したコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の誘電体積層構造体は、金属層と、その金属層に積層された誘電体層とを有し、金属層は、その熱膨張係数と誘電体層の熱膨張係数との差が予め設定した値以下となるような材質の金属にて構成されていることを特徴とする。
【0013】
つまり、従来のように金属層と誘電体層とで熱膨張係数の差が大きい(金属層の熱膨張係数の方が大きい)構成ではなく、両者の熱膨張係数が同等あるいは近接したものとなるような材質の金属層を用いるのである。
【0014】
このように、金属層として熱膨張係数が誘電体層の熱膨張係数と同程度のものを用いることで、製造過程で高温に晒されることがあっても、熱膨張係数の差に起因する反りの発生や、金属層の熱膨張による誘電体層のクラックの発生が抑制される。そのため、製造過程において反りの発生やクラックの発生が抑制された、良好な品質の誘電体積層構造体を提供することが可能となる。
【0015】
なお、熱膨張係数は一意的に定まる値ではなく、温度によって、或いは物質によって異なるものであるが、ここでいう熱膨張係数とは、当該誘電体積層構造体の製造過程で金属層および誘電体層が共に晒されるある一定の温度(その温度で熱膨張係数の差があると上述した問題が生じるおそれのある温度)での熱膨張係数をいう。
【0016】
金属層は、上述した効果(製造過程における反りの発生やクラック発生の抑制)が得られる材質を適宜用いることができるが、より具体的には、例えば、その熱膨張係数をαとして誘電体層の熱膨張係数をβとした場合、0.7β≦α≦1.3β、の関係を満たすような材質の金属で構成されたものとすることができる。このようにすることで、上述した効果がより確実に得られる。
【0017】
ここで、上記の各誘電体積層構造体は、金属層が、鉄およびニッケルを主成分とする合金により形成されたものであるとよい。なお、「主成分」とは、全重量に対する割合が90重量%以上であることを意味する(以下同様)。つまり、全体の90重量%以上が鉄およびニッケルである合金を金属層とするのである。
【0018】
鉄とニッケルを主成分とする合金(以下「鉄ニッケル合金」或いは「FeNi合金」ともいう)は、耐熱性や耐蝕性などに優れていると共に、熱膨張係数も低い(例えばニッケル単体に比べて)という特徴をも有している。
【0019】
また、主成分として鉄が含まれているものの、銅(Cu)やニッケルをエッチングする際のエッチング液で鉄をエッチングすることも可能である。そのため、この誘電体積層構造体を例えばコンデンサ等の電子部品として実際に使用する際などに金属層をエッチングする場合、そのエッチング工程に悪影響(例えば工程増加など)を及ぼすことはない。
【0020】
従って、鉄ニッケル合金にて金属層を形成することで、耐熱性や耐蝕性を持たせつつ、熱膨張係数を誘電体層と同程度にすることが可能となり、且つ、後にエッチングする必要がある場合にもそのエッチング工程に悪影響を及ぼすこともない。
【0021】
また、上記合金はさらにクロムも含むもの、即ち、鉄、ニッケル、クロムを主成分とする合金(以下「鉄ニッケルクロム合金」或いは「FeNiCr合金」ともいう)により形成されたものであってもよい。鉄・ニッケルにクロムを加えた3成分を主成分とすることで、より細かい熱膨張係数の制御が可能となる。しかも、剛性も向上するため、特に金属層を薄い箔状に形成する場合、クロムを含む方が取り扱い性で有利となる。
【0022】
上記のように鉄ニッケルクロム合金にて金属層が形成されたものであって、誘電体層として例えばチタン酸バリウムを用いる場合は、上記合金における主成分の比率を、例えば、鉄:ニッケル:クロム=52:42:6、となるように形成するとよい。このような比率で鉄ニッケルクロム合金を形成すれば、誘電体層(チタン酸バリウム)と金属層の熱膨張係数をほぼ等しくすることができ、より良好な品質の誘電体積層構造体を提供することが可能となる。
【0023】
なお、上記比率(52:42:6)はあくまでも一例(好ましい例)であり、誘電体層と金属層の熱膨張係数を等しく(或いはほぼ等しく)できる範囲内で、適宜その比率を設定すればよい。具体的には、例えば鉄:ニッケル:クロム=48〜80:2〜52:0〜18、の比率に設定するとよい。
【0024】
ところで、誘電体積層構造体を製造するにあたり、例えば誘電体層として未焼結状態の誘電体を金属層上に塗工し、それを所定の焼成雰囲気中で焼成することにより焼結させる方法が知られている。この場合、焼成雰囲気中に水蒸気が含まれることが多いが、この焼成雰囲気中に鉄を含む金属層が晒されると、水蒸気によって鉄が酸化し、結果として品質の劣化した誘電体積層構造体が得られるおそれがある。
【0025】
そこで、主成分として少なくとも鉄を含んでいる合金にて金属層が形成される場合は、その合金をそのまま金属層として用いるのではなく、その合金によって金属層の大部分を構成する主金属層部を形成すると共に、その主金属層部における少なくとも誘電体層が積層される側の面にニッケル、クロム又は銅のうち少なくとも一つの金属からなる被覆金属部を被覆したものを金属層として用いるとよい。
【0026】
ニッケル、クロム又は銅は、いずれも、水蒸気を含む焼成雰囲気中で酸化されることのない(或いは酸化されにくい)金属である。少なくとも誘電体層が積層される面に被覆するのは、その面については焼成雰囲気中に晒される可能性が高いからである。それ以外の面も焼成雰囲気中に晒される場合は、その晒される面にも必要に応じて被覆金属部が被覆された状態となるようにするとよい。
【0027】
このように、鉄を主成分として含む合金で形成された主金属層部によって金属層を形成する場合であっても、被覆金属部で被覆することによって、当該誘電体積層構造体の製造過程において合金が酸化・腐蝕(延いては金属層が酸化・腐蝕)するおそれがなく、誘電体積層構造体の品質を良好に維持することが可能となる。
【0028】
なお、被覆金属部は、ニッケル、クロム又は銅の少なくとも一つに加え、更に、コバルト又はボロンを第三成分として含んでいてもよい。このようにコバルト又はボロンを第三成分として添加することで、主金属層部の鉄が被覆金属部の内部に拡散するのを防止することができるため、被覆金属部を通して金属層表面に拡散した鉄が酸化(つまり金属層表面が酸化)されてしまうのを防止することができる。
【0029】
またこの場合、金属層と誘電体層の厚さは、例えば、金属層の厚さが10μm以上200μm以下であって、誘電体層の厚さが1μm以上20μm以下であるとよい。なお、金属層の厚さと誘電体層の厚さの相対関係については、金属層の厚さに対して誘電体層の厚さが小さくなるようにするとよい。
【0030】
未焼結状態の誘電体を焼成する場合に誘電体の焼成収縮によっても反りが発生することは既に述べた通りだが、金属層および誘電体層をそれぞれ上記範囲の厚さとなるように形成することで、誘電体の焼成収縮に起因する反りの発生はほぼ抑えられることになり、反りの発生をさらに抑制することが可能となる。
【0031】
なお、金属層の厚みが10μm未満では、誘電体層の焼成収縮に耐えられず、反りが生じる可能性が高くなる。また、作製時の取り扱いも困難となる。200μmを越えると、この誘電体積層構造体の基板への内蔵が困難となる。また、誘電体層の厚さが1μm未満では、電気的にショートする可能性が高くなり、20μmを越えると、焼成収縮が大きくなるため、反りやクラックが発生する可能性が大きくなる。そのため、金属層および誘電体層の厚さはそれぞれ上記の範囲内にするのが好ましいのである。
【0032】
ここで、金属層および誘電体層それぞれの厚さ、焼成による線収縮比、熱膨張係数、剛性率と、反りの発生との関係について説明する。なお、線収縮比とは、誘電体積層構造体を製造する過程で行われる焼成工程の前後の寸法比率を表す。ここでいう寸法とは、金属層の面方向の一次元的な寸法である。より具体的には、焼成後の寸法を焼成前の寸法で除することにより得られるものである。
【0033】
反りの要因は、大きく分けると、誘電体層の焼成収縮に起因するものと、金属層と誘電体層との熱膨張係数の差に起因するものとがある。
誘電体層の焼成収縮に起因して生じる反りを抑制するためには、金属層の厚さt0に対して誘電体層の厚さt1が小さいほどよい。また、金属層の線収縮比β0と誘電体層の線収縮比β1の比率の差が小さいほどよく、次式(1)で表される焼成収縮起因の反り発生率A1が小さいほど、反りも小さくなることがわかった。
【0034】
【数1】
【0035】
なお、誘電体積層構造体を製造するにあたり、金属層としてはじめから固体状の金属を用いるならば、焼成収縮は起こらないため、線収縮比は1となる。その場合は、誘電体層の線収縮比も1に近いほど(つまり収縮の程度が小さいほど)反りが小さくなり、逆に誘電体層の線収縮比が小さくなるほど焼成収縮による応力が大きくなって反りやすくなる。
【0036】
一方、熱膨張係数の差に起因して生じる反りに関しては、金属層の熱膨張係数α0と誘電体層の熱膨張係数α1の差が大きいほど反りも大きくなるため、反りを抑制するためには両者の差(α1−α0)を小さくすることが必要である。
【0037】
加えて、両者の剛性も考慮すると、誘電体積層構造体全体の剛性が大きいほど反りにくく、金属層の剛性率をG0、誘電体層の剛性率をG1としたとき、t0・G0+t1・G1が大きいほど反りにくくなることがわかった。
【0038】
これらの結果、熱膨張係数の差に起因して生じる反りを小さくするには、次式(2)で表される熱膨張起因の反り発生率A2が小さいほどよいことがわかった。
【0039】
【数2】
【0040】
そして、上記式(1)および(2)の各反り発生率A1,A2を総合的に考慮し、反りの発生を抑制するためには、次式(3)で表される指標Aが、−0.25≦A≦0.5の範囲内となるように、金属層および誘電体層をそれぞれ用意すればよい。この指標Aは、反りがどの程度発生するかを示すものであり、0に近いほど反りも小さくなる。
【0041】
【数3】
【0042】
なお、上記式(3)の右辺第2項の係数「50」は、同右辺第1項と数値レベルを合わせるためのものである。また、式(3)中の各値t0,t1,α0,α1,G0,G1はいずれも、焼成後の値を示すものである。
【0043】
つまり、反りの発生を抑制するためには、既述の通り、金属層の厚さを10μm以上200μm以下、誘電体層の厚さを1μm以上20μm以下の範囲にするとよいのだが、これに加えて更に、上記式(3)の指標Aが−0.25≦A≦0.5の範囲内に入るように式(3)中の各値を設定すれば、反りの抑制効果をより高めることができる。
【0044】
上述した構成の誘電体積層構造体は、さらに、その誘電体層における金属層と対向する面とは反対側の面に金属(積層金属)が積層されることで、金属層を一方の電極、積層金属を他方の電極とし、該各電極間に誘電体層が挟まれてなるコンデンサとして構成することができる。
【0045】
次に、上記課題を解決するためになされた本発明の誘電体積層構造体の製造方法は、金属層と、該金属層に積層される誘電体層とを備えた誘電体積層構造体の製造方法であって、誘電体層の熱膨張係数との差が予め設定した値以下となるような熱膨張係数を有する材質の金属にて金属層を形成する金属層形成工程と、誘電体層となるべき未焼結状態の誘電体である未焼結誘電体部を金属層の一方の面に積層する未焼結誘電体積層工程と、この未焼結誘電体積層工程によって互いに積層された金属層および未焼結誘電体部を一体に焼成して未焼結誘電体部を焼結させる焼成工程とを有することを特徴とする。
【0046】
このように熱膨張係数が誘電体層の熱膨張係数と同程度の金属層を形成することで、焼成工程で高温に晒されても、熱膨張係数の差に起因する反りの発生や、金属層の熱膨張による誘電体層のクラックの発生が抑制される。そのため、製造過程において反りの発生やクラックの発生を抑制することができ、良好な品質の誘電体積層構造体を製造することが可能となる。
【0047】
この場合さらに、焼成工程における焼成が、少なくとも水蒸気を含む焼成雰囲気中で行われるものであって、金属層形成工程は、鉄およびニッケルを主成分とする合金を金属層の形状に合わせて形成する合金形成工程と、その合金形成工程にて形成された合金における、少なくとも焼成工程において焼成雰囲気中に晒される面を、焼成雰囲気中で腐蝕が生じない金属によって被覆する合金被覆工程とを備えたものであってもよい。
【0048】
このような製造方法において、焼成雰囲気中に晒される面には少なくとも未焼結誘電体部が積層される面が含まれることとなる。そして、その焼成雰囲気中に晒される面は合金被覆工程により金属で被覆される。そのため、未焼結誘電体積層工程では、未焼結誘電体部は合金上に直接積層されず被覆された金属上に積層されることとなる。
【0049】
そのため、この未焼結誘電体部が焼成工程で焼成雰囲気中に晒されても、合金が直接その焼成雰囲気中に晒されることがなくなるため、焼成雰囲気中の水蒸気による合金の腐蝕(酸化)が防止され、延いては、焼成工程における金属層全体の腐蝕(酸化)が防止される。
【0050】
これにより、耐熱性や耐蝕性を持たせつつ、熱膨張係数も誘電体層と同程度であって、更に、誘電体積層構造体の製造過程において合金(金属層)が腐蝕するおそれがない、高品質な誘電体積層構造体を製造することが可能となる。
【0051】
なお、焼成雰囲気中で腐蝕(酸化)が生じない金属としては、例えば、上述した被覆金属部としてのニッケル、クロム又は銅などが挙げられる。
そして、上述した各製造方法において、更に、焼成工程の前に、未焼結状態の金属である未焼結金属部を未焼結誘電体部上へ積層する未焼結金属積層工程を有するようにすることで、誘電体積層構造体が、金属層を一方の電極、未焼結金属部が焼成工程にて焼結することにより形成される金属層を他方の電極とし、該各電極間に誘電体層が挟まれてなるコンデンサとして形成されるようにすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の誘電体積層構造体の構成を表す断面図である。図1に示す如く、本実施形態の誘電体積層構造体5は、金属層3における一方の面に誘電体層4が積層されてなる構造体である。なお、この誘電体積層構造体5の製造方法については、後で詳述する(実施例1参照)。
【0053】
誘電体積層構造体5を構成する金属層3は、そのほとんどが、鉄(Fe)とニッケル(Ni)を主成分とする鉄ニッケル合金からなる鉄ニッケル合金層1にて形成されている。そして、この鉄ニッケル合金層1の全面がニッケル(Ni)被覆2にて被覆された構成となっている。
【0054】
なお、実際には、この誘電体積層構造体5の製造過程において、鉄ニッケル合金層1の全面がニッケル被覆2でコーティングされた状態で高温(約1200〜1300℃)に晒されるため、鉄ニッケル合金層1とニッケル被覆2との境界は図示のように明確にはならない。ただ、金属層3の全面はニッケル被覆2が露出しており、内部の鉄ニッケル合金層1は露出していない。
【0055】
鉄ニッケル合金層1の組成は、本実施形態では、鉄が50%、ニッケルが50%となっている。即ち、いわゆる50アロイと呼ばれている合金にて鉄ニッケル合金層1が形成されているのである。
【0056】
この鉄ニッケル合金層1の熱膨張係数は、温度によって変化するものであるが、例えば 約700〜800℃における熱膨張係数は約12ppm/Kである。なお、「ppm」は10-6を表すものである。
【0057】
一方、誘電体層4は、本実施形態ではチタン酸バリウムにて形成されている。チタン酸バリウムの熱膨張係数も温度によって変化するものであり、例えば1300℃では約14ppm/K、1200℃では約13ppm/K、700〜800℃では約12ppm/Kである。
【0058】
つまり、本実施形態の誘電体積層構造体5は、700〜800℃程度の温度における熱膨張係数が、鉄ニッケル合金層1と誘電体層4とでほぼ同一となるように構成されているのである。言い換えれば、鉄ニッケル合金層1は金属層3の大部分を占めるものであるため、上記温度において金属層3と誘電体層4の熱膨張係数がほぼ同一であるとも言える。
【0059】
このように、700〜800℃における熱膨張係数が同一となるように金属層3及び誘電体層4が形成されているのは、この誘電体積層構造体5の製造過程において熱膨張係数の差に起因する反りの発生や、金属層3の熱膨張による誘電体層4のクラック発生といった不具合を抑制するためである。
【0060】
後述するように、誘電体積層構造体5の製造過程においては、金属層3に未焼結状態の誘電体(後に誘電体層4となるもの)を積層して約1200〜1300℃の焼成雰囲気にて焼成する工程があり、この温度域では誘電体層4の熱膨張係数は既述の如く約13ppm/Kとなる。しかし、金属層3を構成する鉄ニッケル合金層1の特性上、熱膨張係数による上記不具合が発生するのは1000℃よりも低い、700〜800℃の温度域である。なお、誘電体は塑性変形が出来るため、高温域では熱膨張係数差をある程度吸収してクラックが起こりにくいのに対し、低温域では弾性変形となるために、熱膨張係数差によってクラックが生じやすくなる。
【0061】
そのため、本実施形態の誘電体積層構造体5は、700〜800℃程度の温度における熱膨張係数が鉄ニッケル合金層1と誘電体層4とでほぼ同一となるように構成されているのである。
【0062】
また、本実施形態の誘電体積層構造体5は、金属層3の厚さt10が約50μmであり、誘電体層4の厚さt20が約3μmである。さらに金属層3のうち、鉄ニッケル合金層1の厚さt11は約30μmであり、ニッケル被覆2の厚さt12は約10μmである。
【0063】
鉄ニッケル合金層1をニッケル被覆2にて被覆するのは、誘電体積層構造体5の製造過程における上述した焼成工程において、少なくとも未焼結状態の誘電体が水蒸気を含む高温の焼成雰囲気中に晒されることになり、その際に鉄ニッケル合金層1が酸化・腐蝕するおそれがあるからである。鉄ニッケル合金層1をこのように被覆することで、焼成工程において鉄ニッケル合金層1が焼成雰囲気中に直接晒されることがなくなるため、その酸化・腐蝕を防止できるのである。ニッケル被覆2は、水蒸気を含む焼成雰囲気に晒されてもほとんど酸化せず、腐蝕することはない。
【0064】
なお、図1の誘電体積層構造体5は、鉄ニッケル合金層1の全面に渡ってニッケル被覆2が被覆されている構成であるが、必ずしも鉄ニッケル合金層1の全面をニッケル被覆2で被覆する必要はない。
【0065】
例えば、鉄ニッケル合金層の側面部分が焼成雰囲気中に晒されても問題ない場合や、焼成工程において鉄ニッケル合金層の側面部分が焼成雰囲気中に晒されることがない場合は、図2に示す誘電体積層構造体10のように、鉄ニッケル合金層6の一方の面(表面)側を表面側ニッケル被覆8で被覆すると共に他方の面(裏面)側を裏面側ニッケル被覆7で被覆するようにしてもよい。つまり、鉄ニッケル合金層6の表裏両面にそれぞれ表面側ニッケル被覆8及び裏面側ニッケル被覆7を被覆することで金属層9を形成するのである。
【0066】
更に例えば、焼成工程において焼成雰囲気中に晒される部分が誘電体層4のみならば、誘電体層4が積層される面のみをニッケル被覆で被覆するようにしてもよい。即ち、図2において表面側ニッケル被覆8のみによる被覆とするわけである。
【0067】
つまり、少なくとも、焼成工程において焼成雰囲気中に晒される部分をニッケル被覆にて被覆すればよく、他の部分を被覆するかしないかは適宜決めることができる。誘電体積層構造体の製造過程で鉄ニッケル合金層が酸化・腐蝕しないように、被覆する部分を適宜決めればよいわけである。
【0068】
このように構成された本実施形態(図1,図2)の誘電体積層構造体5,10によれば、金属層3,9として、熱膨張係数が誘電体層4(本実施形態ではチタン酸バリウム)の熱膨張係数と同程度の鉄ニッケル合金層1,6を用いているため、製造過程で高温に晒されることがあっても、熱膨張係数の差に起因する反りの発生や、金属層3,9の熱膨張による誘電体層4のクラックの発生が抑制される。そのため、製造過程において反りの発生やクラックの発生が抑制された、良好な品質の誘電体積層構造体5,10を提供することができる。
【0069】
また、鉄ニッケル合金層1,6に誘電体層4が直接積層されるのではなく、鉄ニッケル合金層1,6における少なくとも誘電体層4が積層される部分にはニッケル被覆2,8が被覆されている。
【0070】
これにより、当該誘電体積層構造体5,10の製造過程(特に焼成時)において鉄ニッケル合金層1,6は焼成雰囲気中に晒されることはなく、酸化・腐蝕するおそれはない。そのため、誘電体積層構造体5,10の品質を良好に維持することが可能となる。
【0071】
なお、鉄ニッケル合金層1は本発明の主金属層部に相当し、ニッケル被覆2は本発明の被覆金属部に相当する。
[第2実施形態]
図3は、本実施形態のコンデンサの構成を表す断面図である。図3に示す如く、本実施形態のコンデンサ15は、図1の誘電体積層構造体5に対してさらにニッケル層16(本発明の積層金属に相当)が積層されて構成されたものである。なお、このコンデンサ15の製造方法についても後で詳述する(第3実施形態参照)。
【0072】
図3に示すように、図1の誘電体積層構造体5に対し、誘電体層4における金属層3と対向する面とは反対側の面にニッケル層16が積層されることにより、金属層3を一方の電極、ニッケル層16を他方の電極とし、これら各電極間に誘電体層4が挟まれてなるコンデンサ15が形成されるのである。なお、ニッケル層16の厚さt30は約5μmである。
【0073】
このコンデンサ15は、このまま一つのコンデンサとして実際に使用することができるが、例えば図4に示すように、誘電体層4に適宜貫通孔を設けると共に一方の電極たる金属層3をエッチングすることで、複数種類の容量を持つコンデンサ20とすることも可能である。
【0074】
即ち、図4のコンデンサ20は、図3のコンデンサ15における金属層3がエッチングされてなるパターン化金属層31と、図3のコンデンサ15における誘電体層4に貫通孔91,92が形成されてなる誘電体層21と、図3のコンデンサ15におけるニッケル層16が上記貫通孔91,92を介してパターン化金属層31の一部と導通されたニッケル層22とにより構成されている。
【0075】
これにより、パターン化金属層31は、より具体的には、ニッケル層22と導通することによってこのニッケル層22と共に当該コンデンサ20における下部電極35を構成する部分と、この下部電極35とは誘電体層21によって絶縁されると共に当該コンデンサ20における上部電極36,37,38を構成する部分とに分けられる。
【0076】
つまり、図4のコンデンサ20は、下部電極35と上部電極36,37,38との間に誘電体層21が挟まれてなるコンデンサとして構成されているのである。
このコンデンサ20が内蔵された基板の一例を図5に示す。図5は、図4のコンデンサ20が内蔵されたコンデンサ内蔵基板を表す断面図である。
【0077】
図5に示すコンデンサ内蔵基板120は、ガラスエポキシ等からなるコア基材121の片面側にビルドアップ層122を形成し、他方の面側にビルドアップ層123を形成してなるものである。一方のビルドアップ層122は、同じくエポキシ樹脂等からなる5層の樹脂絶縁層126,127,128,129,130を備えており、他方のビルドアップ層123は、同じくエポキシ樹脂等からなる2層の樹脂絶縁層131,132を備えている。
【0078】
一方のビルドアップ層122における各樹脂絶縁層126,127,128,129,130の界面には、銅からなる導体層135,136,137,138,139が形成されており、他方のビルドアップ層123における各樹脂絶縁層131,132の界面にも、銅からなる導体層140,141が形成されている。コア基材121には、表裏の導体層135,140間を導通させるための、内部に樹脂が充填されたスルーホール導体145,146,147,148,149,150が形成されている。
【0079】
なお、最上層の絶縁樹脂層126はソルダレジストである。また、裏面のビルドアップ層123における最外層部に形成される導体層141は、電子部品等のハンダ付け用ランドとして、或いは、図示しない他の基板に搭載するためのピン付け用パッドとして用いられる。
【0080】
また、最上層の絶縁樹脂層126には、この樹脂絶縁層126とその下の樹脂絶縁層127との間に形成される導体層139と電気的に接続されたハンダバンプ162、163,164,165,166,167が複数設けられている。このハンダバンプは、当該コンデンサ内蔵基板120に搭載される半導体チップとの電気的接続端子としての役目を果たす。さらに、各樹脂絶縁層には、層間を電気的に接続するビア導体153,154,155,156,157,158,159,160,161等が形成されている。
【0081】
そして、図5のコンデンサ内蔵基板120では、ビルドアップ層122における第一層(樹脂絶縁層130)と第二層(樹脂絶縁層129)との間に、図4に示したコンデンサ20が配置されている。
【0082】
このように構成されたコンデンサ内蔵基板120において、例えば下部電極35がビア導体160を介してハンダバンプ165と導通し、上部電極36がビア導体161を介してハンダバンプ166と導通している。そのため、下部電極35と上部電極36の間に誘電体層21が挟まれてなるコンデンサを回路素子として用いる際には、各電極と導通している各ハンダバンプ165,166を介して電気的に接続すればよいわけである。
【0083】
[実施例1]
次に、上述した第1実施形態の誘電体積層構造体5の詳細な製造方法を、実施例1として、図6に基づいて以下に説明する。
【0084】
(1)基材金属の準備
基材金属、即ち金属層3の主たる部分を構成する鉄ニッケル合金層1を用意した(図6;「基材金属準備」参照)。この鉄ニッケル合金層1は、既述の通り、鉄とニッケルの組成比率が50:50の50アロイ(熱膨張係数:12ppm/K)にて、150mm角の寸法に形成した。
【0085】
(2)被覆
上記(1)で用意した鉄ニッケル合金層1の全面に、ニッケル被覆2を被覆した(図6;「被覆」参照)。この被覆は、一般的に知られている電解ニッケルメッキにより行った。これにより、150mm角の金属層3を得た。
【0086】
(3)未焼結誘電体シート用スラリーの調製
平均粒径0.7μmのチタン酸バリウム粉末(誘電体セラミック粉)、エタノールとトルエンとの混合溶剤(揮発性溶剤)、分散剤、可塑剤、有機バインダとを、樹脂製ポットとジルコニアボールとで混合することにより、未焼結誘電体シート形成用のスラリーを得た。このときの各成分の配合比率は、前記スラリーの粘度が約0.5Pa・sとなるように決定した。なお、ここでいう粘度とは、リオン株式会社製ビスコテスターVT−04型粘度計とNo.1ロータを用い、62.5rpm、25℃の条件で測定した1分値をいう。
【0087】
(4)未焼結誘電体シートの形成
幅220mmかつ厚さ50μmのPETフィルムを用意し、その上に、上記(3)で調製した未焼結誘電体シート用スラリーを、ドクターブレード法などの汎用の方法により、幅180mm、厚さは所望となるように塗工した。具体的には、焼成後のシート厚さ(以下「焼成後厚さ」という)が3μmとなるような未焼結シートを形成した。
【0088】
(5)未焼結誘電体シートの切断
打ち抜き金型等の従来周知の手段を用いて、上記(3)〜(4)の工程により準備された、PETフィルム上に塗工された未焼結誘電体シートを切断し、所定枚数の150mm角のシートを得た。
【0089】
即ち、図6(「積層体準備」)に示すように、PETフィルム30上に塗工された未焼結誘電体シート14、及び、鉄ニッケル合金層1がニッケル被覆2で被覆されてなる金属層3がそれぞれ、150mm角の寸法形状で得られ、積層体製造の準備が整った。
【0090】
(6)金属層及び未焼結誘電体シートからなる積層体の作製
150mm角の圧着用金型を準備し、金属層3、及び、PETフィルム30上に塗工された未焼結誘電体シート14を、未焼結誘電体シート14と金属層3とが向き合うように(接するように)積層し、上記金型の中に入れた。そして、従来より周知の圧着装置を用いて、100℃、750kgf/cm2の条件にて熱圧着を行った(図6;「積層・熱圧着」参照)。
【0091】
(7)脱脂及び焼成
そして、熱圧着後、得られた積層体をNC切断機などの汎用の切断機にてPETフィルム30と共に25mm角に切断し、PETフィルム30を剥離することにより、金属層3と未焼結誘電体シート14が積層された焼成前積層体を得た。さらに、この焼成前積層体を、大気中250℃で10時間脱脂した後、窒素、水素、水蒸気の混合気体からなる雰囲気中、1150℃にて2時間焼成を行った。
【0092】
これにより、焼成前積層体における未焼結誘電体シート14が焼結し、金属層3及び誘電体層4からなる誘電体積層構造体5が得られた(図6;「PET剥離・焼成」参照)。
(8)反り量の測定
次に、上記(7)で得られた25mm角の誘電体積層構造体5の反り量を、画像測定システム(株式会社ニコン製NEXIV)を用いて測定した。詳しくは、縦横5mm間隔で25点(5行×5列)のz座標を測定し、最小二乗法により決定された仮想平面に垂直な方向において、最下点から最上点までの距離を反り量と定義した。
【0093】
その結果、誘電体積層構造体5の反り量は、0.13mmであった。この反り量0.13mmは、後述する比較例の反り量(約2mm)と比較して明らかなように小さな量である。また、金属層3に対する誘電体層4の積層状態も良好であり、誘電体層4の剥離やクラック発生などの不具合は見られなかった。
【0094】
[実施例2]
次に、実施例2の誘電体積層構造体の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
【0095】
本実施例2は、基材金属として鉄、ニッケル、及びクロムからなる合金を用いるものであり、それ以外(基材金属の組成以外)は上記実施例1と全く同じである。つまり、上記実施例1では、金属層3の主たる部分を鉄ニッケル合金層1で構成したが、本実施例2では、実施例1における鉄ニッケル合金層1を、鉄、ニッケルおよびクロムを主成分とする合金(以下、「鉄ニッケルクロム合金」ともいう)にて構成する。
【0096】
そして、この鉄ニッケルクロム合金の表面を、実施例1と同様にニッケル被覆2で覆うことで金属層を形成し、その一方の面上に誘電体層4を形成した。鉄ニッケルクロム合金の主成分3種類の組成比率は、鉄:ニッケル:クロム=52:42:6となるようにした。この鉄ニッケルクロム合金の熱膨張係数は14ppm/Kである。
【0097】
このように、実施例1における鉄ニッケル合金層1を上記の鉄ニッケルクロム合金に代えて製造した本実施例2の誘電体積層構造体について、反り量を測定したところ、0.62mmであった。この値は、上記実施例1よりは若干大きいものの、実用上は特に問題とならないレベルである。また、金属層に対する誘電体層の積層状態も良好であり、誘電体層の剥離やクラック発生などの不具合も見られなかった。
【0098】
[比較例1]
次に、比較例1の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本比較例1は、基材金属として純ニッケル(ニッケル箔:熱膨張係数16ppm/K)を用いた積層体を製造するものである。つまり、上記実施例1で詳述した製造方法では、金属層3は、鉄ニッケル合金層1の表面全体をニッケル被覆2で被覆した構成であったが、本比較例1では、実施例1の金属層3に代えて、熱膨張係数のより大きいニッケル箔を用いる。それ以外の構成や製造工程については、実施例1と同じである。そのため、本比較例1の詳細な製造工程については説明を省略し、その概略だけを述べる。
【0099】
すなわち、本比較例1では、まずニッケル箔を準備し、実施例1の(1)と同様、150mm角の寸法に切断した。なお、この金属層となるべきニッケル箔の厚さは、実施例1の金属層3の厚さと同じ50μmとした。
【0100】
一方、実施例1の(3)〜(5)と同じ方法で、PETフィルム上に塗工された未焼結誘電体シートを準備し、ニッケル箔と同様に150mm角のシートに切断した。
以後は、実施例1の(6)以降と同様、積層・熱圧着・・切断・PETフィルムの剥離・脱脂・焼成、の各工程を経て、ニッケル箔と誘電体層(未焼結誘電体シートが焼結してなるもの)とが積層された誘電体積層構造体を得た。
【0101】
このようにして得られた本比較例1の誘電体積層構造体について、実施例1の(8)と同様の方法で反り量を測定した結果、反り量は2.6mmであった。また、誘電体層において局所的にクラックの発生が確認された。
【0102】
本比較例1では、金属層としてのニッケルの熱膨張係数と、誘電体層としてのチタン酸バリウムの熱膨張係数との差が、比較的大きいため、上記のように、反り量が2.6mmという大きな値となった。
【0103】
これに対し、実施例1では、金属層の大部分が鉄ニッケル合金層1にて構成されており、この鉄ニッケル合金層1の熱膨張係数とチタン酸バリウムの熱膨張係数との差は小さいため、反り量は0.13mmという小さな値となっている。つまり、金属層と誘電体層の熱膨張係数の差を小さくすることで、反り量が低減され、クラックの発生も防止されるということが実証された。
【0104】
[比較例2]
次に、比較例2の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本比較例2は、基材金属として、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる合金を用いるものであり、それ以外(基材金属の組成以外)は上記実施例1と全く同じである。つまり、本比較例2では、実施例1における鉄ニッケル合金層1を、鉄、ニッケルおよびコバルトを主成分とする合金(以下、「鉄ニッケルコバルト合金」ともいう)にて構成する。
【0105】
具体的な組成比率は、鉄:ニッケル:コバルト=54:29:17となるようにした。この鉄ニッケルコバルト合金の熱膨張係数は8ppm/Kである。即ち、コバルトを加えることで、熱膨張係数は小さくなり、誘電体層の熱膨張係数との差が大きくなっている。
【0106】
このように、実施例1における鉄ニッケル合金層1を上記の鉄ニッケルコバルト合金に代えて製造した本比較例2の誘電体積層構造体について、反り量を測定したところ、2.1mmという大きな値になった。このように反り量が大きくなった主要因は、上記比較例1と同じく、金属層と誘電体層の熱膨張係数の差が大きいことである。この比較例2の結果からも、熱膨張係数の差を小さくすることで反り量を低減できることがわかる。
【0107】
[実施例3]
次に、実施例3の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本実施例3は、基材金属(金属層3)として、ニッケル被覆2で被覆されていない50アロイのみを用いる。つまり、上記実施例1では、金属層3は鉄ニッケル合金層1の表面全体をニッケル被覆2で被覆した構成であったが、本実施例3では、実施例1の金属層3として、鉄ニッケル合金層1(但し、厚さは金属層3と同じ50μm)のみを用い、表面被覆は行わない。それ以外の構成や製造工程については、実施例1と同じである。そのため、本実施例3の詳細な製造工程については説明を省略し、その概略だけを述べる。
【0108】
すなわち、本実施例3では、実施例1の(1)及び(3)〜(5)と同じ方法で、鉄ニッケル合金層のみからなる金属層と未焼結誘電体シートを得た。これらはいずれも150mm角とした。その後、実施例1の(6)以降と同様の各工程を経て、鉄ニッケル合金層からなる金属層と誘電体層とが積層された誘電体積層構造体を得た。
【0109】
このようにして得られた本実施例3の誘電体積層構造体について、実施例1の(8)と同様の方法で反り量を測定した結果、反り量は0.11mmであった。つまり、反り量としては、実施例1と同レベルであり、良好な結果となった。
【0110】
但し、鉄ニッケル合金層の表面が酸化し、その表面が荒れた状態となった。この酸化は、焼成工程において生じたものである。そのため、鉄ニッケル合金層に積層された誘電体層の一部が、鉄ニッケル合金層から剥離してしまった。
【0111】
これに対し、実施例1では、鉄ニッケル合金層1の表面がニッケル被覆2にて覆われていることから、本実施例3のような表面酸化は生じず、誘電体層の剥離も見られなかった。このことから、実施例1のように鉄ニッケル合金層1をニッケル被覆2で覆うことで金属層の表面酸化が防止されることが実証された。
【0112】
[実施例4]
更に、上記実施例3において、焼成工程における焼成温度を変えた場合の例を、実施例4として示す。本実施例4における誘電体積層構造体の製造は、焼成工程における焼成温度が異なること以外は、上記実施例3と全く同じである。具体的には、上記実施例3では1150℃の温度で2時間焼成を行ったのに対し、本実施例4では、それよりも高い温度である1250℃で2時間焼成を行った。
【0113】
このように焼成温度をより高温にした本実施例4の誘電体積層構造体について、実施例1と同様の方法で反り量を測定した結果、反り量は0.21mmであった。つまり、反り量としては、実施例1や実施例3と同レベルであり、良好な結果となった。
【0114】
但し、鉄ニッケル合金層の表面が酸化し、その表面が荒れた状態となった。この酸化は、焼成工程において生じたものである。そのため、鉄ニッケル合金層に積層された誘電体層の一部が、鉄ニッケル合金層から剥離してしまった。この酸化や剥離は、上記実施例3でも発生したが、実施例3よりもより多く発生した。これは、焼成温度を高温にしたことで、熱膨張係数がその分上昇して誘電体層の熱膨張係数との差が広がり、且つ環境的にも酸化をより促進させる方向に進んだためである。
【0115】
[実施例5]
次に、実施例5の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本実施例5は、実施例1と同様、鉄ニッケル合金からなる主金属層(鉄ニッケル合金層1)の表面をニッケル被覆2で被覆することで金属層3を形成し、その上に誘電体層4を積層するものであり、誘電体積層構造体の組成や製造工程は基本的に実施例1と同じである。そして、実施例1と一つ異なるのが、金属層3の厚さである。即ち、上記実施例1では金属層3の厚さが50μmだったのに対し、本実施例5では100μmと厚くした。
【0116】
このように、実施例1よりも厚い100μmの厚さの金属層3を用いて実施例1と同様の工程で製造した誘電体積層構造体に対し、その反り量を測定した。その結果、反り量は0.08mmであり、実施例1の反り量(0.13mm)よりも少ない結果となった。しかも、金属層3に対する誘電体層4の積層状態も良好であり、誘電体層4の剥離やクラック発生などの不具合も見られなかった。
【0117】
このように、実施例1よりもむしろ良好な結果が得られたのは、金属層3の厚さを厚くしたことで、金属層3の剛性が増し、金属層3自体が反りにくくなったためであるといえる。つまり、誘電体層4に対して金属層3を厚くするほど、反りの量は小さくなる。但し、金属層3を厚くしすぎると、上記第2実施形態のようにコンデンサとして基板に内蔵することが困難になるなど、実用上の問題が生じる。そのため、反り量の低減と実用性とを考慮しつつ金属層3の厚さを決める必要がある。
【0118】
[実施例6]
次に、実施例6の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本実施例6は、誘電体層4として厚さ15μmのチタン酸バリウムを用いるものであり、それ以外(誘電体層4の厚さ以外)の、誘電体積層構造体の各組成や製造工程は上記実施例1と全く同じである。つまり、上記実施例1では誘電体層4の厚さを3μmとした(実施例2〜5も同様)のに対し、本実施例6ではより厚い15μmとした。
【0119】
このようにして製造された誘電体積層構造体に対し、実施例1と同様の方法で反り量を測定したところ、0.23mmであった。この値は、上記実施例1よりは若干大きいものの、実用上は特に問題とならないレベルである。
【0120】
但し、製造された誘電体積層構造体の端部の一部分が筒状に丸まってしまった。また、若干のクラックも確認された。これは、焼成工程において収縮する誘電体層4の厚さを厚くしたことで、収縮の影響が大きくなったことに起因する。
【0121】
[実施例7]
次に、実施例7の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本実施例7は、上記実施例6に対し、金属層3の厚さを100μmと厚くした。それ以外(金属層3の厚さ以外)の、誘電体積層構造体の各組成や製造工程は、上記実施例6と全く同じである。
【0122】
このようにして製造された誘電体積層構造体に対し、実施例1と同様の方法で反り量を測定したところ、0.11mmであった。この値は、上記実施例1とほぼ同等のレベルである。これは、実施例1に対して誘電体層4の厚さを厚くしたものの、金属層3の厚さも厚くしたため、金属層3の剛性が増し、反りにくくなったためである。但し、製造された誘電体積層構造体における誘電体層4に若干のクラックも確認された。
【0123】
[実施例1〜7及び比較例1,2のまとめ]
ここで、上記各実施例1〜7および比較例1,2の、組成や諸特性、指標A、反り量等の各種評価結果を、表1にまとめた。なお、表1中の指標Aや総合評価については後で詳述する。
【0124】
【表1】
【0125】
既述のように、誘電体層4の厚さに対して金属層3の厚さが厚いほど、反りの量も小さくなるものの、金属層3の厚さが厚すぎると、逆に実用上の問題が生じる。つまり、あまり厚すぎると、上記第2実施形態のようにコンデンサとして基板に内蔵することが困難となる。そのため、反りの量を抑制し、且つ実用上も問題とならないようにすることを考慮すれば、金属層3の厚さを10μm以上200μm以下、誘電体層4の厚さを1μm以上20μm以下の範囲にするとよい。
【0126】
更に加えて、単に厚さだけでなく、各々の諸特性(熱膨張係数、線収縮比、剛性など)も考慮した上で、金属層3及び誘電体層4を形成するのが望ましい。
具体的には、次式(4)で表される指標Aが−0.25≦A≦0.5の範囲内に入るように、式(4)中の各値を設定すればよい。なお、下記式(4)は既に説明した式(3)と同じものである。
【0127】
【数4】
【0128】
この指標Aは、反り量の度合いを表す数値であり、この指標Aが0に近いほど反り量が小さくなる。表1には、各実施例1〜7及び各比較例1,2における指標Aも示されている。表1に示された指標Aからもわかるように、実施例1〜7については全て上記範囲内に入っている。つまり、指標Aからも、実施例1〜7はいずれも反り量としては問題ないことがわかる。これに対し、比較例1,2はいずれも指標Aが上記範囲を外れており、反り量も大きくなっている。そのため、比較例1,2については、表1に示す通り、総合評価として実用レベルに達していないことを示す「×」を付けている。
【0129】
実施例1〜7はいずれも、指標Aが上記範囲内に入っているが、既述の通り、実施例6の場合は、誘電体層4の厚さを15μmと厚くしたことで、各実施例の中では指標Aが最も大きく且つ端部ロールやクラック発生なども確認されている。また、実施例4の場合は、指標Aおよび反り量は共に問題ないレベルだが、金属層3を鉄ニッケル合金のみで構成したため(ニッケル被覆無し)、金属層の表面酸化や誘電体層の剥離などが確認されている。そのため、表1では、これら実施例4,6を総合評価として、実用レベルではあるが若干の不具合が生じることを示す「△」を付けている。
【0130】
「△」評価の実施例4,6以外の各実施例のうち、実施例2は、金属層3に対する誘電体層4の積層状態は良好だったものの、反り量が若干大きい(実用上問題はないが)。また、実施例3は、反り量は小さいものの金属層3の表面酸化や荒れなどが確認された。また、実施例7は、反り量は小さいものの誘電体層4にクラックが発生した。そのため、これら実施例2,3,7については、総合評価として、実用上問題のない良好なレベルであることを示す「○」を付けている。
【0131】
そして、「△」および「○」以外の実施例である実施例1,5については、反り量が非常に少なく、しかも、金属層3の表面酸化や誘電体層4のクラック等が発生せず金属層3に対する誘電体層4の積層状態も良好であるため、非常に良好なレベルであることを示す「◎」を付けている。
【0132】
[第3実施形態]
次に、上述した第2実施形態のコンデンサ内蔵基板120の製造方法について説明する。なお、本第3実施形態では、コンデンサ20(図4参照)を作製する一方で基板の作製も行い、基板作製過程でコンデンサ20を基板に埋め込むこととなる。そこで、コンデンサ20の製造工程及びそれを基板に内蔵する工程以外は、周知の基板製造プロセス(ビルドアップによる配線基板製造プロセス)と同様であるため、詳細説明を省略する。
【0133】
(1)金属層、未焼結ニッケルテープ、及び未焼結誘電体シートの準備
上記実施例1と同様の方法を用いて、焼成後厚さが3μmとなるようにPETフィルム66上に塗工された未焼結誘電体シート64及び厚さ50μmの金属層61を準備した(図7;「積層体準備」参照)。金属層61は、図6の金属層3と同じ構成であり、鉄ニッケル合金層63の全面がニッケル被覆62でコーティングされたものである。
【0134】
更に、焼成後厚さが5μmとなるようにPETフィルム67上に塗工された未焼結ニッケルテープ65を準備した。この未焼結ニッケルテープ65の形成方法は、次の通りである。
【0135】
まず、未焼結ニッケルテープ用原料スラリーを調製した。この調製方法は、チタン酸バリウム粉末に代えて平均粒径0.7μmのニッケル粉(導電性金属粉)を用いること以外は上記実施例1の(3)における未焼結誘電体シート用スラリーの調製方法と同様である。
【0136】
そして、調製した未焼結ニッケルテープ用原料スラリーを、上記実施例1の(4)における未焼結誘電体シート形成方法と同様、ドクターブレード法などの汎用の方法により、幅180mm、厚さは所望となるように、厚さ50μmのPETフィルム上に塗工した。これにより、未焼結ニッケルテープ65が得られた。
【0137】
なお、これらは後述する図8(「PET剥離」参照)に示すように、厚さ50μmの金属層61、焼成後厚さが3μmとなるような未焼結誘電体シート74(64)、焼成後厚さが5μmとなるような未焼結ニッケルテープ65の順に並ぶ積層体となる。そして、これらの厚さは、焼成後の反りがほとんど生じないように選択されたものである。
【0138】
(2)金属層、未焼結誘電体シート及び未焼結ニッケルテープの切断とガイド穴の形成
ガイド穴を同時に形成できる打ち抜き金型を用いて、上記工程(1)で準備された金属層61、PETフィルム66上に塗工された未焼結誘電体シート64、PETフィルム67上に塗工された未焼結ニッケルテープ64をそれぞれ切断し、150mm角の箔、シート、及び、テープを得た。
【0139】
(3)未焼結誘電体シート及び未焼結ニッケルテープへの貫通孔の形成
上記工程(2)により得られた、PETフィルム66上に塗工された未焼結誘電体シート64の所定の位置を、CO2レーザーにより、PETフィルム66ごと貫通させて貫通孔91,92を形成した。これにより、貫通孔91,92が形成されたPETフィルム76と、同じく貫通孔91,92が形成された未焼結誘電体シート74とからなる積層体が形成された(図7;「貫通孔の形成」参照)。
【0140】
同様に、PETフィルム67上に塗工された未焼結ニッケルテープ65の所定の位置にも、図示は省略するものの、貫通孔を形成した。この貫通孔は、後述する工程(7)において、基板に対する位置合わせのためのアライメントマークとなるものである。従って、未焼結誘電体シート64(74)に形成された貫通孔91,92の位置とは異なる。なお、未焼結誘電体シート64(74)へ形成する貫通孔は、実際には二つの貫通孔91,92だけでなく複数形成されるが、本第3実施形態では説明の簡略化のため二つだけ図示している。
【0141】
(4)コンデンサ用未焼結積層体の作製
ガイドピンで位置合わせできる汎用の仮積層機を用いて、まず金属層61の上に、上記工程(3)により得られた、貫通孔91,92の形成された焼成後厚さ3μmの未焼結誘電体シート74を、金属層61と未焼結誘電体シート74とが向かい合うようにして、80℃、200kgf/cm2の条件にて仮積層した(図7;「仮積層」参照)。
【0142】
なお、未焼結誘電体シート74のビアホールとなるべく貫通孔91,92の形成は、本工程(4)の後に行うこともできる。即ち、金属層61の表面に露出しているニッケル被覆62はCO2レーザーを反射するため、本工程(4)で得られた積層体であっても、CO2レーザーを用いて未焼結誘電体シート74にのみ貫通孔91,92を形成することができるのである。
【0143】
そして、未焼結誘電体シート74が塗工されていたPETフィルム76をその未焼結誘電体シート74から剥離した後(図7;「PET剥離」参照)、図8に示すように、焼成後厚さが5μmとなるようにPETフィルム67上に塗工された未焼結ニッケルテープ65を、その未焼結ニッケルテープ65と未焼結誘電体シート74とが向かい合うようにして仮積層した。このようにして得られた仮積層体を、150mm角の圧着用金型に入れ、100℃、750kgf/cm2の条件にて熱圧着した(図8;「仮積層・熱圧着」参照)。
【0144】
そして、得られた積層体を、NC切断機などの汎用の切断機にて、PETフィルム67と共に切断し、その後、このPETフィルム67を剥離することにより、15mm角の積層体を作製した(図8;「PET剥離」参照)。これにより、金属層61の一方の面に未焼結誘電体シート74及び未焼結ニッケルテープ65(それぞれ焼成後厚さが3μm,5μm)が順に積層された状態となる。
【0145】
なお、本第3実施形態では、未焼結ニッケルテープ65にて形成される層はパターンを有さないため、工程的に容易となるテープ状の未焼結テープを用いているが、この層をパターン形成する必要がある場合は、未焼結ニッケルテープ65に代えて、例えばニッケルペーストを用いたスクリーン印刷などによって未焼結ニッケルを塗布するのが好ましい。
【0146】
(5)脱脂及び焼成
このようにして得られた積層体を、大気中250℃で10時間脱脂した後、窒素、水素、水蒸気の混合気体からなる雰囲気中、1260℃にて2時間焼成を行うことにより、金属層61、誘電体層21、ニッケル層22がこの順に積層されてなるコンデンサ用焼成積層体80を得た(図8;「焼成」参照)。これが、後に基板内に内蔵される(埋め込まれる)コンデンサ、即ち図4で説明したコンデンサ20となるのである。
【0147】
(6)コア基板の準備
次に、図9に示すようにコア基板100を準備した。コンデンサへの配線とは直接関連しないため図示は省略するが、コア基板100には、周知のオーガニック基板製造プロセスにて形成されたスルーホール導体と、表面には所望の銅配線パターンとを備えている。このコア基板100上に、表面配線パターンを形成する銅の粗化を行った後、厚さ50μmの樹脂絶縁層102となるドライフィルムを積層した(図9;「コア基材準備」参照)。
【0148】
(7)コンデンサ用焼成積層体の積層
上記樹脂絶縁層102上に、加熱機構付きのマウンターなどを用い、ニッケル層22が接着されるように、上記工程(5)で形成されたコンデンサ用焼成積層体80を所定の位置に積層し、その後、仮キュアを行った(図9;「コンデンサ積層」参照)。
【0149】
(8)コンデンサ用焼成積層体上部電極のパターニング
通常のフォトリソグラフィ工程により金属層61のパターニングを行い、エッチング処理(金属層61における該当領域を溶解)することで、上部電極36,37,38と下部電極35とが絶縁されたコンデンサ20を得た(図9;「パターニング」参照)。エッチング剤としては、塩化鉄水溶液を用いた。
【0150】
なお、このパターニング工程において、端部の上部電極36,38と下部電極35とは、積層体端部側面において短絡する可能性があるため、上部電極36の外周部を端部72から100μm程度、同時に除去(エッチング)すると共に、上部電極38の外周部についても、端部71から100μm程度、同時に除去(エッチング等)した。
【0151】
この後、図示は省略するものの、樹脂絶縁層102上にビアホールを形成した後、この樹脂絶縁層102の粗化を行い、本キュアを行った後、銅メッキによりビア電極を含む配線パターンを形成した。
【0152】
(9)コンデンサへの導通ビア電極の形成
上記樹脂絶縁層102の表面配線パターンを形成する銅の粗化を行った後、この樹脂絶縁層102上に、厚さ50μmの樹脂絶縁層(ドライフィルム)104を積層(ラミネート)した(図10;「樹脂ラミネート」参照)。
【0153】
その後、周知のプロセスにて、所定箇所にビアホールを形成した後、樹脂層の粗化を行い、本キュアを行った。そして、銅メッキによりビア電極106を含む配線パターン105を形成した(図10;「メッキビア形成」参照)。
【0154】
(10)後工程
その後は、周知のプロセスにて、必要に応じた層数だけ順次ビルドアップしていくことにより、最終的に、図5に示したような、コンデンサ20が内蔵されたコンデンサ内蔵基板120を完成させた。
【0155】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、本発明の適用は上記各実施形態、実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0156】
例えば、上記実施形態では誘電体層4をチタン酸バリウムにて形成したが、他の誘電体を用いることも勿論可能であり、以下の(1)〜(3)に列挙した物質を一種以上含むものとして形成することができる。ここでいう「一種以上」とは、混合物の他、化合物、合金、固溶体なども含む表現である。
(1)チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタニア、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、等。
(2)アルミナ(酸化アルミニウム)、マグネシア、ジルコニア、シリカ、チタニア、二酸化スズ、希土類の酸化物、カルシア、ストロンチア、窒化珪素、窒化ほう素、窒化アルミニウム、等。
(3)ガラス(例えば、アルミナ−シリカ−アルカリ度類酸化物などからなる)。
【0157】
このうち、誘電体層4を形成する物質として好ましいのは、(1)、(2)、(3)の順である。なお、周知の如く(3)のガラスはセラミックには含まれない。また、誘電体層4は、当該誘電体積層構造体4の製造完了状態で上記(1)〜(3)に列挙した物質となるものでよく、例えば、水酸化物や炭酸塩を出発原料として用いてもよい。
【0158】
また、金属層3を構成する鉄ニッケル合金層1についても、上記実施形態はあくまでも一例であって、鉄とニッケルの比率を適宜調整したり、鉄とニッケル以外に他の金属が混合されたものを用いるようにしてもよい。具体的には、例えば実施例2のように鉄ニッケルクロム合金を、鉄ニッケル合金1に代えて用いることができる。
【0159】
また、上記実施形態では、鉄ニッケル合金層1を覆う被覆金属としてニッケル被覆2を用いた例を示したが、ニッケルによる被覆はあくまでも一例であって、鉄ニッケル合金層1(つまり被覆対象)の酸化や腐蝕を防止でき、且つ自身も酸化、腐蝕されにくいような金属であれば何でもよい。具体的には、ニッケル、クロム、又は銅のうち少なくとも一つの金属からなるものを被覆金属として用いることができる。
【0160】
一方、この被覆金属は必ずしも必要なものではなく、被覆対象の金属層が焼成雰囲気中でも酸化や腐蝕しにくい(問題とならないレベル)ならば、上記実施例3に示したように、鉄ニッケル合金のみで金属層3を形成してもよい。ただし、焼成温度等の諸条件・環境等によっては、上記実施例4のように酸化や腐蝕の程度が大きくなるため、酸化や腐蝕の程度などに応じて被覆するか否かを適宜決める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】第1実施形態の誘電体積層構造体の構成を表す断面図である。
【図2】第1実施形態の誘電体積層構造体の変形例を表す断面図である。
【図3】第2実施形態のコンデンサの構成を表す断面図である。
【図4】図3のコンデンサにおける一方の電極をエッチングした状態を表す断面図である。
【図5】図4のコンデンサが内蔵されたコンデンサ内蔵基板の一例を表す断面図である。
【図6】実施例1の、誘電体積層構造体の製造工程を表す説明図である。
【図7】第3実施形態の、コンデンサ用焼成積層体の製造工程(前半)を示す説明図である。
【図8】第3実施形態の、コンデンサ用焼成積層体の製造工程(後半)を示す説明図である。
【図9】コンデンサ内蔵基板の製造工程(前半)を示す説明図である。
【図10】コンデンサ内蔵基板の製造工程(後半)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0162】
1,6,63…鉄ニッケル合金層、2,62…ニッケル被覆、3,9,61…金属層、4,21…誘電体層、5,10…誘電体積層構造体、7…裏面側ニッケル被覆、8…表面側ニッケル被覆、9…金属層、14,64,74…未焼結誘電体シート、15,20…コンデンサ、16,22…ニッケル層、31…パターン化金属層、35…下部電極、36,37,38…上部電極、65…未焼結ニッケルテープ、71,72…端部、80…コンデンサ用焼成積層体、91,92…貫通孔、100…コア基板、105…配線パターン、106…ビア電極、120…コンデンサ内蔵基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層と、該金属層に積層される誘電体層とを備えた誘電体積層構造体とその製造方法、及び、この誘電体積層構造体を用いたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
殆どの電子機器は高速化するにつれて、発生する電磁波ノイズが高周波帯域で強力になる。特に、CPU等の半導体集積回路素子のデカップリングやスイッチング電源のノイズ対策などには、高容量で低インダクタンスのコンデンサが必要とされる。このような用途に用いられるコンデンサは、一般的にデカップリングコンデンサと呼ばれている。そして、このデカップリングコンデンサを、例えば半導体集積回路素子が搭載されるパッケージ基板内に半導体集積回路素子近傍となるように配置し、半導体集積回路素子の動作に必要な高周波電流をこのデカップリングコンデンサを介して供給することにより、ノイズの低減を図ることが提案されている。
【0003】
パッケージ基板内へのコンデンサの配置方法としては、例えば、多層化された基板における所定の層に穴をあけてチップコンデンサを埋め込むという方法も考えられるが、そのような方法だとパッケージ基板の大型化を招く。そのため、近年ますます要求される電子機器の小型化を考慮し、金属電極層間に誘電体層を配置してなるコンデンサ構造体をパッケージ基板内の所定の層に埋め込むことで、パッケージ基板全体の大型化を防ぐことが考えられている。
【0004】
この場合、コンデンサ構造体を構成する誘電体層としては主にチタン酸バリウムやアルミナなど、製造の過程で焼成工程を必要とするものが用いられる。そのため、ビルドアップにより多層パッケージ基板を製造していく工程とは別に、別途、コンデンサ構造体を焼成により製造しておく必要がある。そして、焼成後のコンデンサ構造体を、ビルドアップの過程でパッケージ基板に埋め込むこととなる。
【0005】
そして、コンデンサ構造体の製造方法としては、例えば、金属箔上に導電性ペーストを付着させて焼成を行った後、次にその上に誘電体ペーストを塗布して焼成を行い、さらに導電性ペーストを塗布して焼成を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−160672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属箔上に誘電体ペーストが塗布されたものを焼成してコンデンサ構造体を製造しようとすると、金属箔と誘電体との熱膨張係数の差に起因してコンデンサ構造体に反りが生じてしまうことがあった。
【0007】
即ち、例えば金属箔としてのニッケル箔の片面側に誘電体ペーストとしてのチタン酸バリウムを塗布して焼成させた場合、チタン酸バリウムの熱膨張係数(約12ppm/K)よりもニッケル箔の熱膨張係数(約16ppm/K)の方が大きい。しかも、誘電体ペーストは実際には膨張よりもむしろ焼成によって収縮するため、ニッケル箔の方がチタン酸バリウムに対して相対的に大きく膨張することとなり、焼成の過程でコンデンサ構造体に反りが生じてしまうのである。なお、上記の熱膨張係数は、焼成時の温度(約1300℃)での値ではなく熱膨張係数の差の影響が生じる温度での値(ここでは約700〜800℃での値)である。
【0008】
このように反りが生じてしまうと、そのままの状態ではそのコンデンサ構造体をパッケージ基板に埋め込むのは困難となる。また、反りが生じている焼成後のコンデンサ構造体を外力によって無理に平面状に戻そうとすると、誘電体層が割れてしまい、品質が大きく低下してしまうおそれがある。
【0009】
また、金属箔の熱膨張係数が誘電体の熱膨張係数よりも大きいと、その大きさの程度によっては、上述した反りの発生だけでなく更に誘電体層(誘電体ペースト)の焼結に不具合をもたらすおそれもある。即ち、焼成時の温度上昇により金属箔が熱膨張すると、焼結の進んでいない(つまり焼結の過渡状態で収縮中の)誘電体層に引っ張り応力が加わることになり、その結果、誘電体層にクラックが生じるおそれがある。そうなると、生成されたコンデンサ構造体が所期の電気的特性・物理的特性を満たさず、実際に使用できない不良品となってしまうおそれがある。
【0010】
上記特許文献1の製造方法は、金属箔と誘電体ペーストとの間に導電性ペーストを介在させて焼成させているが、この導電性ペーストによって、金属箔と誘電体との熱膨張係数の差に起因する反りの発生を完全に抑えることは困難である。しかも、金属箔の熱膨張によって導電性ペーストおよび誘電体ペーストの双方にクラックが発生するおそれがあるため、品質低下の問題の解決にもならない。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、金属層に誘電体層が積層された誘電体積層構造体を製造するにあたり、金属層と誘電体層との熱膨張係数の差に起因する反りの発生が抑制されると共に金属層の熱膨張に起因する誘電体層のクラックの発生も抑制された良好な品質の誘電体積層構造体とその製造方法、およびその誘電体積層構造体を利用したコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の誘電体積層構造体は、金属層と、その金属層に積層された誘電体層とを有し、金属層は、その熱膨張係数と誘電体層の熱膨張係数との差が予め設定した値以下となるような材質の金属にて構成されていることを特徴とする。
【0013】
つまり、従来のように金属層と誘電体層とで熱膨張係数の差が大きい(金属層の熱膨張係数の方が大きい)構成ではなく、両者の熱膨張係数が同等あるいは近接したものとなるような材質の金属層を用いるのである。
【0014】
このように、金属層として熱膨張係数が誘電体層の熱膨張係数と同程度のものを用いることで、製造過程で高温に晒されることがあっても、熱膨張係数の差に起因する反りの発生や、金属層の熱膨張による誘電体層のクラックの発生が抑制される。そのため、製造過程において反りの発生やクラックの発生が抑制された、良好な品質の誘電体積層構造体を提供することが可能となる。
【0015】
なお、熱膨張係数は一意的に定まる値ではなく、温度によって、或いは物質によって異なるものであるが、ここでいう熱膨張係数とは、当該誘電体積層構造体の製造過程で金属層および誘電体層が共に晒されるある一定の温度(その温度で熱膨張係数の差があると上述した問題が生じるおそれのある温度)での熱膨張係数をいう。
【0016】
金属層は、上述した効果(製造過程における反りの発生やクラック発生の抑制)が得られる材質を適宜用いることができるが、より具体的には、例えば、その熱膨張係数をαとして誘電体層の熱膨張係数をβとした場合、0.7β≦α≦1.3β、の関係を満たすような材質の金属で構成されたものとすることができる。このようにすることで、上述した効果がより確実に得られる。
【0017】
ここで、上記の各誘電体積層構造体は、金属層が、鉄およびニッケルを主成分とする合金により形成されたものであるとよい。なお、「主成分」とは、全重量に対する割合が90重量%以上であることを意味する(以下同様)。つまり、全体の90重量%以上が鉄およびニッケルである合金を金属層とするのである。
【0018】
鉄とニッケルを主成分とする合金(以下「鉄ニッケル合金」或いは「FeNi合金」ともいう)は、耐熱性や耐蝕性などに優れていると共に、熱膨張係数も低い(例えばニッケル単体に比べて)という特徴をも有している。
【0019】
また、主成分として鉄が含まれているものの、銅(Cu)やニッケルをエッチングする際のエッチング液で鉄をエッチングすることも可能である。そのため、この誘電体積層構造体を例えばコンデンサ等の電子部品として実際に使用する際などに金属層をエッチングする場合、そのエッチング工程に悪影響(例えば工程増加など)を及ぼすことはない。
【0020】
従って、鉄ニッケル合金にて金属層を形成することで、耐熱性や耐蝕性を持たせつつ、熱膨張係数を誘電体層と同程度にすることが可能となり、且つ、後にエッチングする必要がある場合にもそのエッチング工程に悪影響を及ぼすこともない。
【0021】
また、上記合金はさらにクロムも含むもの、即ち、鉄、ニッケル、クロムを主成分とする合金(以下「鉄ニッケルクロム合金」或いは「FeNiCr合金」ともいう)により形成されたものであってもよい。鉄・ニッケルにクロムを加えた3成分を主成分とすることで、より細かい熱膨張係数の制御が可能となる。しかも、剛性も向上するため、特に金属層を薄い箔状に形成する場合、クロムを含む方が取り扱い性で有利となる。
【0022】
上記のように鉄ニッケルクロム合金にて金属層が形成されたものであって、誘電体層として例えばチタン酸バリウムを用いる場合は、上記合金における主成分の比率を、例えば、鉄:ニッケル:クロム=52:42:6、となるように形成するとよい。このような比率で鉄ニッケルクロム合金を形成すれば、誘電体層(チタン酸バリウム)と金属層の熱膨張係数をほぼ等しくすることができ、より良好な品質の誘電体積層構造体を提供することが可能となる。
【0023】
なお、上記比率(52:42:6)はあくまでも一例(好ましい例)であり、誘電体層と金属層の熱膨張係数を等しく(或いはほぼ等しく)できる範囲内で、適宜その比率を設定すればよい。具体的には、例えば鉄:ニッケル:クロム=48〜80:2〜52:0〜18、の比率に設定するとよい。
【0024】
ところで、誘電体積層構造体を製造するにあたり、例えば誘電体層として未焼結状態の誘電体を金属層上に塗工し、それを所定の焼成雰囲気中で焼成することにより焼結させる方法が知られている。この場合、焼成雰囲気中に水蒸気が含まれることが多いが、この焼成雰囲気中に鉄を含む金属層が晒されると、水蒸気によって鉄が酸化し、結果として品質の劣化した誘電体積層構造体が得られるおそれがある。
【0025】
そこで、主成分として少なくとも鉄を含んでいる合金にて金属層が形成される場合は、その合金をそのまま金属層として用いるのではなく、その合金によって金属層の大部分を構成する主金属層部を形成すると共に、その主金属層部における少なくとも誘電体層が積層される側の面にニッケル、クロム又は銅のうち少なくとも一つの金属からなる被覆金属部を被覆したものを金属層として用いるとよい。
【0026】
ニッケル、クロム又は銅は、いずれも、水蒸気を含む焼成雰囲気中で酸化されることのない(或いは酸化されにくい)金属である。少なくとも誘電体層が積層される面に被覆するのは、その面については焼成雰囲気中に晒される可能性が高いからである。それ以外の面も焼成雰囲気中に晒される場合は、その晒される面にも必要に応じて被覆金属部が被覆された状態となるようにするとよい。
【0027】
このように、鉄を主成分として含む合金で形成された主金属層部によって金属層を形成する場合であっても、被覆金属部で被覆することによって、当該誘電体積層構造体の製造過程において合金が酸化・腐蝕(延いては金属層が酸化・腐蝕)するおそれがなく、誘電体積層構造体の品質を良好に維持することが可能となる。
【0028】
なお、被覆金属部は、ニッケル、クロム又は銅の少なくとも一つに加え、更に、コバルト又はボロンを第三成分として含んでいてもよい。このようにコバルト又はボロンを第三成分として添加することで、主金属層部の鉄が被覆金属部の内部に拡散するのを防止することができるため、被覆金属部を通して金属層表面に拡散した鉄が酸化(つまり金属層表面が酸化)されてしまうのを防止することができる。
【0029】
またこの場合、金属層と誘電体層の厚さは、例えば、金属層の厚さが10μm以上200μm以下であって、誘電体層の厚さが1μm以上20μm以下であるとよい。なお、金属層の厚さと誘電体層の厚さの相対関係については、金属層の厚さに対して誘電体層の厚さが小さくなるようにするとよい。
【0030】
未焼結状態の誘電体を焼成する場合に誘電体の焼成収縮によっても反りが発生することは既に述べた通りだが、金属層および誘電体層をそれぞれ上記範囲の厚さとなるように形成することで、誘電体の焼成収縮に起因する反りの発生はほぼ抑えられることになり、反りの発生をさらに抑制することが可能となる。
【0031】
なお、金属層の厚みが10μm未満では、誘電体層の焼成収縮に耐えられず、反りが生じる可能性が高くなる。また、作製時の取り扱いも困難となる。200μmを越えると、この誘電体積層構造体の基板への内蔵が困難となる。また、誘電体層の厚さが1μm未満では、電気的にショートする可能性が高くなり、20μmを越えると、焼成収縮が大きくなるため、反りやクラックが発生する可能性が大きくなる。そのため、金属層および誘電体層の厚さはそれぞれ上記の範囲内にするのが好ましいのである。
【0032】
ここで、金属層および誘電体層それぞれの厚さ、焼成による線収縮比、熱膨張係数、剛性率と、反りの発生との関係について説明する。なお、線収縮比とは、誘電体積層構造体を製造する過程で行われる焼成工程の前後の寸法比率を表す。ここでいう寸法とは、金属層の面方向の一次元的な寸法である。より具体的には、焼成後の寸法を焼成前の寸法で除することにより得られるものである。
【0033】
反りの要因は、大きく分けると、誘電体層の焼成収縮に起因するものと、金属層と誘電体層との熱膨張係数の差に起因するものとがある。
誘電体層の焼成収縮に起因して生じる反りを抑制するためには、金属層の厚さt0に対して誘電体層の厚さt1が小さいほどよい。また、金属層の線収縮比β0と誘電体層の線収縮比β1の比率の差が小さいほどよく、次式(1)で表される焼成収縮起因の反り発生率A1が小さいほど、反りも小さくなることがわかった。
【0034】
【数1】
【0035】
なお、誘電体積層構造体を製造するにあたり、金属層としてはじめから固体状の金属を用いるならば、焼成収縮は起こらないため、線収縮比は1となる。その場合は、誘電体層の線収縮比も1に近いほど(つまり収縮の程度が小さいほど)反りが小さくなり、逆に誘電体層の線収縮比が小さくなるほど焼成収縮による応力が大きくなって反りやすくなる。
【0036】
一方、熱膨張係数の差に起因して生じる反りに関しては、金属層の熱膨張係数α0と誘電体層の熱膨張係数α1の差が大きいほど反りも大きくなるため、反りを抑制するためには両者の差(α1−α0)を小さくすることが必要である。
【0037】
加えて、両者の剛性も考慮すると、誘電体積層構造体全体の剛性が大きいほど反りにくく、金属層の剛性率をG0、誘電体層の剛性率をG1としたとき、t0・G0+t1・G1が大きいほど反りにくくなることがわかった。
【0038】
これらの結果、熱膨張係数の差に起因して生じる反りを小さくするには、次式(2)で表される熱膨張起因の反り発生率A2が小さいほどよいことがわかった。
【0039】
【数2】
【0040】
そして、上記式(1)および(2)の各反り発生率A1,A2を総合的に考慮し、反りの発生を抑制するためには、次式(3)で表される指標Aが、−0.25≦A≦0.5の範囲内となるように、金属層および誘電体層をそれぞれ用意すればよい。この指標Aは、反りがどの程度発生するかを示すものであり、0に近いほど反りも小さくなる。
【0041】
【数3】
【0042】
なお、上記式(3)の右辺第2項の係数「50」は、同右辺第1項と数値レベルを合わせるためのものである。また、式(3)中の各値t0,t1,α0,α1,G0,G1はいずれも、焼成後の値を示すものである。
【0043】
つまり、反りの発生を抑制するためには、既述の通り、金属層の厚さを10μm以上200μm以下、誘電体層の厚さを1μm以上20μm以下の範囲にするとよいのだが、これに加えて更に、上記式(3)の指標Aが−0.25≦A≦0.5の範囲内に入るように式(3)中の各値を設定すれば、反りの抑制効果をより高めることができる。
【0044】
上述した構成の誘電体積層構造体は、さらに、その誘電体層における金属層と対向する面とは反対側の面に金属(積層金属)が積層されることで、金属層を一方の電極、積層金属を他方の電極とし、該各電極間に誘電体層が挟まれてなるコンデンサとして構成することができる。
【0045】
次に、上記課題を解決するためになされた本発明の誘電体積層構造体の製造方法は、金属層と、該金属層に積層される誘電体層とを備えた誘電体積層構造体の製造方法であって、誘電体層の熱膨張係数との差が予め設定した値以下となるような熱膨張係数を有する材質の金属にて金属層を形成する金属層形成工程と、誘電体層となるべき未焼結状態の誘電体である未焼結誘電体部を金属層の一方の面に積層する未焼結誘電体積層工程と、この未焼結誘電体積層工程によって互いに積層された金属層および未焼結誘電体部を一体に焼成して未焼結誘電体部を焼結させる焼成工程とを有することを特徴とする。
【0046】
このように熱膨張係数が誘電体層の熱膨張係数と同程度の金属層を形成することで、焼成工程で高温に晒されても、熱膨張係数の差に起因する反りの発生や、金属層の熱膨張による誘電体層のクラックの発生が抑制される。そのため、製造過程において反りの発生やクラックの発生を抑制することができ、良好な品質の誘電体積層構造体を製造することが可能となる。
【0047】
この場合さらに、焼成工程における焼成が、少なくとも水蒸気を含む焼成雰囲気中で行われるものであって、金属層形成工程は、鉄およびニッケルを主成分とする合金を金属層の形状に合わせて形成する合金形成工程と、その合金形成工程にて形成された合金における、少なくとも焼成工程において焼成雰囲気中に晒される面を、焼成雰囲気中で腐蝕が生じない金属によって被覆する合金被覆工程とを備えたものであってもよい。
【0048】
このような製造方法において、焼成雰囲気中に晒される面には少なくとも未焼結誘電体部が積層される面が含まれることとなる。そして、その焼成雰囲気中に晒される面は合金被覆工程により金属で被覆される。そのため、未焼結誘電体積層工程では、未焼結誘電体部は合金上に直接積層されず被覆された金属上に積層されることとなる。
【0049】
そのため、この未焼結誘電体部が焼成工程で焼成雰囲気中に晒されても、合金が直接その焼成雰囲気中に晒されることがなくなるため、焼成雰囲気中の水蒸気による合金の腐蝕(酸化)が防止され、延いては、焼成工程における金属層全体の腐蝕(酸化)が防止される。
【0050】
これにより、耐熱性や耐蝕性を持たせつつ、熱膨張係数も誘電体層と同程度であって、更に、誘電体積層構造体の製造過程において合金(金属層)が腐蝕するおそれがない、高品質な誘電体積層構造体を製造することが可能となる。
【0051】
なお、焼成雰囲気中で腐蝕(酸化)が生じない金属としては、例えば、上述した被覆金属部としてのニッケル、クロム又は銅などが挙げられる。
そして、上述した各製造方法において、更に、焼成工程の前に、未焼結状態の金属である未焼結金属部を未焼結誘電体部上へ積層する未焼結金属積層工程を有するようにすることで、誘電体積層構造体が、金属層を一方の電極、未焼結金属部が焼成工程にて焼結することにより形成される金属層を他方の電極とし、該各電極間に誘電体層が挟まれてなるコンデンサとして形成されるようにすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の誘電体積層構造体の構成を表す断面図である。図1に示す如く、本実施形態の誘電体積層構造体5は、金属層3における一方の面に誘電体層4が積層されてなる構造体である。なお、この誘電体積層構造体5の製造方法については、後で詳述する(実施例1参照)。
【0053】
誘電体積層構造体5を構成する金属層3は、そのほとんどが、鉄(Fe)とニッケル(Ni)を主成分とする鉄ニッケル合金からなる鉄ニッケル合金層1にて形成されている。そして、この鉄ニッケル合金層1の全面がニッケル(Ni)被覆2にて被覆された構成となっている。
【0054】
なお、実際には、この誘電体積層構造体5の製造過程において、鉄ニッケル合金層1の全面がニッケル被覆2でコーティングされた状態で高温(約1200〜1300℃)に晒されるため、鉄ニッケル合金層1とニッケル被覆2との境界は図示のように明確にはならない。ただ、金属層3の全面はニッケル被覆2が露出しており、内部の鉄ニッケル合金層1は露出していない。
【0055】
鉄ニッケル合金層1の組成は、本実施形態では、鉄が50%、ニッケルが50%となっている。即ち、いわゆる50アロイと呼ばれている合金にて鉄ニッケル合金層1が形成されているのである。
【0056】
この鉄ニッケル合金層1の熱膨張係数は、温度によって変化するものであるが、例えば 約700〜800℃における熱膨張係数は約12ppm/Kである。なお、「ppm」は10-6を表すものである。
【0057】
一方、誘電体層4は、本実施形態ではチタン酸バリウムにて形成されている。チタン酸バリウムの熱膨張係数も温度によって変化するものであり、例えば1300℃では約14ppm/K、1200℃では約13ppm/K、700〜800℃では約12ppm/Kである。
【0058】
つまり、本実施形態の誘電体積層構造体5は、700〜800℃程度の温度における熱膨張係数が、鉄ニッケル合金層1と誘電体層4とでほぼ同一となるように構成されているのである。言い換えれば、鉄ニッケル合金層1は金属層3の大部分を占めるものであるため、上記温度において金属層3と誘電体層4の熱膨張係数がほぼ同一であるとも言える。
【0059】
このように、700〜800℃における熱膨張係数が同一となるように金属層3及び誘電体層4が形成されているのは、この誘電体積層構造体5の製造過程において熱膨張係数の差に起因する反りの発生や、金属層3の熱膨張による誘電体層4のクラック発生といった不具合を抑制するためである。
【0060】
後述するように、誘電体積層構造体5の製造過程においては、金属層3に未焼結状態の誘電体(後に誘電体層4となるもの)を積層して約1200〜1300℃の焼成雰囲気にて焼成する工程があり、この温度域では誘電体層4の熱膨張係数は既述の如く約13ppm/Kとなる。しかし、金属層3を構成する鉄ニッケル合金層1の特性上、熱膨張係数による上記不具合が発生するのは1000℃よりも低い、700〜800℃の温度域である。なお、誘電体は塑性変形が出来るため、高温域では熱膨張係数差をある程度吸収してクラックが起こりにくいのに対し、低温域では弾性変形となるために、熱膨張係数差によってクラックが生じやすくなる。
【0061】
そのため、本実施形態の誘電体積層構造体5は、700〜800℃程度の温度における熱膨張係数が鉄ニッケル合金層1と誘電体層4とでほぼ同一となるように構成されているのである。
【0062】
また、本実施形態の誘電体積層構造体5は、金属層3の厚さt10が約50μmであり、誘電体層4の厚さt20が約3μmである。さらに金属層3のうち、鉄ニッケル合金層1の厚さt11は約30μmであり、ニッケル被覆2の厚さt12は約10μmである。
【0063】
鉄ニッケル合金層1をニッケル被覆2にて被覆するのは、誘電体積層構造体5の製造過程における上述した焼成工程において、少なくとも未焼結状態の誘電体が水蒸気を含む高温の焼成雰囲気中に晒されることになり、その際に鉄ニッケル合金層1が酸化・腐蝕するおそれがあるからである。鉄ニッケル合金層1をこのように被覆することで、焼成工程において鉄ニッケル合金層1が焼成雰囲気中に直接晒されることがなくなるため、その酸化・腐蝕を防止できるのである。ニッケル被覆2は、水蒸気を含む焼成雰囲気に晒されてもほとんど酸化せず、腐蝕することはない。
【0064】
なお、図1の誘電体積層構造体5は、鉄ニッケル合金層1の全面に渡ってニッケル被覆2が被覆されている構成であるが、必ずしも鉄ニッケル合金層1の全面をニッケル被覆2で被覆する必要はない。
【0065】
例えば、鉄ニッケル合金層の側面部分が焼成雰囲気中に晒されても問題ない場合や、焼成工程において鉄ニッケル合金層の側面部分が焼成雰囲気中に晒されることがない場合は、図2に示す誘電体積層構造体10のように、鉄ニッケル合金層6の一方の面(表面)側を表面側ニッケル被覆8で被覆すると共に他方の面(裏面)側を裏面側ニッケル被覆7で被覆するようにしてもよい。つまり、鉄ニッケル合金層6の表裏両面にそれぞれ表面側ニッケル被覆8及び裏面側ニッケル被覆7を被覆することで金属層9を形成するのである。
【0066】
更に例えば、焼成工程において焼成雰囲気中に晒される部分が誘電体層4のみならば、誘電体層4が積層される面のみをニッケル被覆で被覆するようにしてもよい。即ち、図2において表面側ニッケル被覆8のみによる被覆とするわけである。
【0067】
つまり、少なくとも、焼成工程において焼成雰囲気中に晒される部分をニッケル被覆にて被覆すればよく、他の部分を被覆するかしないかは適宜決めることができる。誘電体積層構造体の製造過程で鉄ニッケル合金層が酸化・腐蝕しないように、被覆する部分を適宜決めればよいわけである。
【0068】
このように構成された本実施形態(図1,図2)の誘電体積層構造体5,10によれば、金属層3,9として、熱膨張係数が誘電体層4(本実施形態ではチタン酸バリウム)の熱膨張係数と同程度の鉄ニッケル合金層1,6を用いているため、製造過程で高温に晒されることがあっても、熱膨張係数の差に起因する反りの発生や、金属層3,9の熱膨張による誘電体層4のクラックの発生が抑制される。そのため、製造過程において反りの発生やクラックの発生が抑制された、良好な品質の誘電体積層構造体5,10を提供することができる。
【0069】
また、鉄ニッケル合金層1,6に誘電体層4が直接積層されるのではなく、鉄ニッケル合金層1,6における少なくとも誘電体層4が積層される部分にはニッケル被覆2,8が被覆されている。
【0070】
これにより、当該誘電体積層構造体5,10の製造過程(特に焼成時)において鉄ニッケル合金層1,6は焼成雰囲気中に晒されることはなく、酸化・腐蝕するおそれはない。そのため、誘電体積層構造体5,10の品質を良好に維持することが可能となる。
【0071】
なお、鉄ニッケル合金層1は本発明の主金属層部に相当し、ニッケル被覆2は本発明の被覆金属部に相当する。
[第2実施形態]
図3は、本実施形態のコンデンサの構成を表す断面図である。図3に示す如く、本実施形態のコンデンサ15は、図1の誘電体積層構造体5に対してさらにニッケル層16(本発明の積層金属に相当)が積層されて構成されたものである。なお、このコンデンサ15の製造方法についても後で詳述する(第3実施形態参照)。
【0072】
図3に示すように、図1の誘電体積層構造体5に対し、誘電体層4における金属層3と対向する面とは反対側の面にニッケル層16が積層されることにより、金属層3を一方の電極、ニッケル層16を他方の電極とし、これら各電極間に誘電体層4が挟まれてなるコンデンサ15が形成されるのである。なお、ニッケル層16の厚さt30は約5μmである。
【0073】
このコンデンサ15は、このまま一つのコンデンサとして実際に使用することができるが、例えば図4に示すように、誘電体層4に適宜貫通孔を設けると共に一方の電極たる金属層3をエッチングすることで、複数種類の容量を持つコンデンサ20とすることも可能である。
【0074】
即ち、図4のコンデンサ20は、図3のコンデンサ15における金属層3がエッチングされてなるパターン化金属層31と、図3のコンデンサ15における誘電体層4に貫通孔91,92が形成されてなる誘電体層21と、図3のコンデンサ15におけるニッケル層16が上記貫通孔91,92を介してパターン化金属層31の一部と導通されたニッケル層22とにより構成されている。
【0075】
これにより、パターン化金属層31は、より具体的には、ニッケル層22と導通することによってこのニッケル層22と共に当該コンデンサ20における下部電極35を構成する部分と、この下部電極35とは誘電体層21によって絶縁されると共に当該コンデンサ20における上部電極36,37,38を構成する部分とに分けられる。
【0076】
つまり、図4のコンデンサ20は、下部電極35と上部電極36,37,38との間に誘電体層21が挟まれてなるコンデンサとして構成されているのである。
このコンデンサ20が内蔵された基板の一例を図5に示す。図5は、図4のコンデンサ20が内蔵されたコンデンサ内蔵基板を表す断面図である。
【0077】
図5に示すコンデンサ内蔵基板120は、ガラスエポキシ等からなるコア基材121の片面側にビルドアップ層122を形成し、他方の面側にビルドアップ層123を形成してなるものである。一方のビルドアップ層122は、同じくエポキシ樹脂等からなる5層の樹脂絶縁層126,127,128,129,130を備えており、他方のビルドアップ層123は、同じくエポキシ樹脂等からなる2層の樹脂絶縁層131,132を備えている。
【0078】
一方のビルドアップ層122における各樹脂絶縁層126,127,128,129,130の界面には、銅からなる導体層135,136,137,138,139が形成されており、他方のビルドアップ層123における各樹脂絶縁層131,132の界面にも、銅からなる導体層140,141が形成されている。コア基材121には、表裏の導体層135,140間を導通させるための、内部に樹脂が充填されたスルーホール導体145,146,147,148,149,150が形成されている。
【0079】
なお、最上層の絶縁樹脂層126はソルダレジストである。また、裏面のビルドアップ層123における最外層部に形成される導体層141は、電子部品等のハンダ付け用ランドとして、或いは、図示しない他の基板に搭載するためのピン付け用パッドとして用いられる。
【0080】
また、最上層の絶縁樹脂層126には、この樹脂絶縁層126とその下の樹脂絶縁層127との間に形成される導体層139と電気的に接続されたハンダバンプ162、163,164,165,166,167が複数設けられている。このハンダバンプは、当該コンデンサ内蔵基板120に搭載される半導体チップとの電気的接続端子としての役目を果たす。さらに、各樹脂絶縁層には、層間を電気的に接続するビア導体153,154,155,156,157,158,159,160,161等が形成されている。
【0081】
そして、図5のコンデンサ内蔵基板120では、ビルドアップ層122における第一層(樹脂絶縁層130)と第二層(樹脂絶縁層129)との間に、図4に示したコンデンサ20が配置されている。
【0082】
このように構成されたコンデンサ内蔵基板120において、例えば下部電極35がビア導体160を介してハンダバンプ165と導通し、上部電極36がビア導体161を介してハンダバンプ166と導通している。そのため、下部電極35と上部電極36の間に誘電体層21が挟まれてなるコンデンサを回路素子として用いる際には、各電極と導通している各ハンダバンプ165,166を介して電気的に接続すればよいわけである。
【0083】
[実施例1]
次に、上述した第1実施形態の誘電体積層構造体5の詳細な製造方法を、実施例1として、図6に基づいて以下に説明する。
【0084】
(1)基材金属の準備
基材金属、即ち金属層3の主たる部分を構成する鉄ニッケル合金層1を用意した(図6;「基材金属準備」参照)。この鉄ニッケル合金層1は、既述の通り、鉄とニッケルの組成比率が50:50の50アロイ(熱膨張係数:12ppm/K)にて、150mm角の寸法に形成した。
【0085】
(2)被覆
上記(1)で用意した鉄ニッケル合金層1の全面に、ニッケル被覆2を被覆した(図6;「被覆」参照)。この被覆は、一般的に知られている電解ニッケルメッキにより行った。これにより、150mm角の金属層3を得た。
【0086】
(3)未焼結誘電体シート用スラリーの調製
平均粒径0.7μmのチタン酸バリウム粉末(誘電体セラミック粉)、エタノールとトルエンとの混合溶剤(揮発性溶剤)、分散剤、可塑剤、有機バインダとを、樹脂製ポットとジルコニアボールとで混合することにより、未焼結誘電体シート形成用のスラリーを得た。このときの各成分の配合比率は、前記スラリーの粘度が約0.5Pa・sとなるように決定した。なお、ここでいう粘度とは、リオン株式会社製ビスコテスターVT−04型粘度計とNo.1ロータを用い、62.5rpm、25℃の条件で測定した1分値をいう。
【0087】
(4)未焼結誘電体シートの形成
幅220mmかつ厚さ50μmのPETフィルムを用意し、その上に、上記(3)で調製した未焼結誘電体シート用スラリーを、ドクターブレード法などの汎用の方法により、幅180mm、厚さは所望となるように塗工した。具体的には、焼成後のシート厚さ(以下「焼成後厚さ」という)が3μmとなるような未焼結シートを形成した。
【0088】
(5)未焼結誘電体シートの切断
打ち抜き金型等の従来周知の手段を用いて、上記(3)〜(4)の工程により準備された、PETフィルム上に塗工された未焼結誘電体シートを切断し、所定枚数の150mm角のシートを得た。
【0089】
即ち、図6(「積層体準備」)に示すように、PETフィルム30上に塗工された未焼結誘電体シート14、及び、鉄ニッケル合金層1がニッケル被覆2で被覆されてなる金属層3がそれぞれ、150mm角の寸法形状で得られ、積層体製造の準備が整った。
【0090】
(6)金属層及び未焼結誘電体シートからなる積層体の作製
150mm角の圧着用金型を準備し、金属層3、及び、PETフィルム30上に塗工された未焼結誘電体シート14を、未焼結誘電体シート14と金属層3とが向き合うように(接するように)積層し、上記金型の中に入れた。そして、従来より周知の圧着装置を用いて、100℃、750kgf/cm2の条件にて熱圧着を行った(図6;「積層・熱圧着」参照)。
【0091】
(7)脱脂及び焼成
そして、熱圧着後、得られた積層体をNC切断機などの汎用の切断機にてPETフィルム30と共に25mm角に切断し、PETフィルム30を剥離することにより、金属層3と未焼結誘電体シート14が積層された焼成前積層体を得た。さらに、この焼成前積層体を、大気中250℃で10時間脱脂した後、窒素、水素、水蒸気の混合気体からなる雰囲気中、1150℃にて2時間焼成を行った。
【0092】
これにより、焼成前積層体における未焼結誘電体シート14が焼結し、金属層3及び誘電体層4からなる誘電体積層構造体5が得られた(図6;「PET剥離・焼成」参照)。
(8)反り量の測定
次に、上記(7)で得られた25mm角の誘電体積層構造体5の反り量を、画像測定システム(株式会社ニコン製NEXIV)を用いて測定した。詳しくは、縦横5mm間隔で25点(5行×5列)のz座標を測定し、最小二乗法により決定された仮想平面に垂直な方向において、最下点から最上点までの距離を反り量と定義した。
【0093】
その結果、誘電体積層構造体5の反り量は、0.13mmであった。この反り量0.13mmは、後述する比較例の反り量(約2mm)と比較して明らかなように小さな量である。また、金属層3に対する誘電体層4の積層状態も良好であり、誘電体層4の剥離やクラック発生などの不具合は見られなかった。
【0094】
[実施例2]
次に、実施例2の誘電体積層構造体の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
【0095】
本実施例2は、基材金属として鉄、ニッケル、及びクロムからなる合金を用いるものであり、それ以外(基材金属の組成以外)は上記実施例1と全く同じである。つまり、上記実施例1では、金属層3の主たる部分を鉄ニッケル合金層1で構成したが、本実施例2では、実施例1における鉄ニッケル合金層1を、鉄、ニッケルおよびクロムを主成分とする合金(以下、「鉄ニッケルクロム合金」ともいう)にて構成する。
【0096】
そして、この鉄ニッケルクロム合金の表面を、実施例1と同様にニッケル被覆2で覆うことで金属層を形成し、その一方の面上に誘電体層4を形成した。鉄ニッケルクロム合金の主成分3種類の組成比率は、鉄:ニッケル:クロム=52:42:6となるようにした。この鉄ニッケルクロム合金の熱膨張係数は14ppm/Kである。
【0097】
このように、実施例1における鉄ニッケル合金層1を上記の鉄ニッケルクロム合金に代えて製造した本実施例2の誘電体積層構造体について、反り量を測定したところ、0.62mmであった。この値は、上記実施例1よりは若干大きいものの、実用上は特に問題とならないレベルである。また、金属層に対する誘電体層の積層状態も良好であり、誘電体層の剥離やクラック発生などの不具合も見られなかった。
【0098】
[比較例1]
次に、比較例1の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本比較例1は、基材金属として純ニッケル(ニッケル箔:熱膨張係数16ppm/K)を用いた積層体を製造するものである。つまり、上記実施例1で詳述した製造方法では、金属層3は、鉄ニッケル合金層1の表面全体をニッケル被覆2で被覆した構成であったが、本比較例1では、実施例1の金属層3に代えて、熱膨張係数のより大きいニッケル箔を用いる。それ以外の構成や製造工程については、実施例1と同じである。そのため、本比較例1の詳細な製造工程については説明を省略し、その概略だけを述べる。
【0099】
すなわち、本比較例1では、まずニッケル箔を準備し、実施例1の(1)と同様、150mm角の寸法に切断した。なお、この金属層となるべきニッケル箔の厚さは、実施例1の金属層3の厚さと同じ50μmとした。
【0100】
一方、実施例1の(3)〜(5)と同じ方法で、PETフィルム上に塗工された未焼結誘電体シートを準備し、ニッケル箔と同様に150mm角のシートに切断した。
以後は、実施例1の(6)以降と同様、積層・熱圧着・・切断・PETフィルムの剥離・脱脂・焼成、の各工程を経て、ニッケル箔と誘電体層(未焼結誘電体シートが焼結してなるもの)とが積層された誘電体積層構造体を得た。
【0101】
このようにして得られた本比較例1の誘電体積層構造体について、実施例1の(8)と同様の方法で反り量を測定した結果、反り量は2.6mmであった。また、誘電体層において局所的にクラックの発生が確認された。
【0102】
本比較例1では、金属層としてのニッケルの熱膨張係数と、誘電体層としてのチタン酸バリウムの熱膨張係数との差が、比較的大きいため、上記のように、反り量が2.6mmという大きな値となった。
【0103】
これに対し、実施例1では、金属層の大部分が鉄ニッケル合金層1にて構成されており、この鉄ニッケル合金層1の熱膨張係数とチタン酸バリウムの熱膨張係数との差は小さいため、反り量は0.13mmという小さな値となっている。つまり、金属層と誘電体層の熱膨張係数の差を小さくすることで、反り量が低減され、クラックの発生も防止されるということが実証された。
【0104】
[比較例2]
次に、比較例2の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本比較例2は、基材金属として、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる合金を用いるものであり、それ以外(基材金属の組成以外)は上記実施例1と全く同じである。つまり、本比較例2では、実施例1における鉄ニッケル合金層1を、鉄、ニッケルおよびコバルトを主成分とする合金(以下、「鉄ニッケルコバルト合金」ともいう)にて構成する。
【0105】
具体的な組成比率は、鉄:ニッケル:コバルト=54:29:17となるようにした。この鉄ニッケルコバルト合金の熱膨張係数は8ppm/Kである。即ち、コバルトを加えることで、熱膨張係数は小さくなり、誘電体層の熱膨張係数との差が大きくなっている。
【0106】
このように、実施例1における鉄ニッケル合金層1を上記の鉄ニッケルコバルト合金に代えて製造した本比較例2の誘電体積層構造体について、反り量を測定したところ、2.1mmという大きな値になった。このように反り量が大きくなった主要因は、上記比較例1と同じく、金属層と誘電体層の熱膨張係数の差が大きいことである。この比較例2の結果からも、熱膨張係数の差を小さくすることで反り量を低減できることがわかる。
【0107】
[実施例3]
次に、実施例3の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本実施例3は、基材金属(金属層3)として、ニッケル被覆2で被覆されていない50アロイのみを用いる。つまり、上記実施例1では、金属層3は鉄ニッケル合金層1の表面全体をニッケル被覆2で被覆した構成であったが、本実施例3では、実施例1の金属層3として、鉄ニッケル合金層1(但し、厚さは金属層3と同じ50μm)のみを用い、表面被覆は行わない。それ以外の構成や製造工程については、実施例1と同じである。そのため、本実施例3の詳細な製造工程については説明を省略し、その概略だけを述べる。
【0108】
すなわち、本実施例3では、実施例1の(1)及び(3)〜(5)と同じ方法で、鉄ニッケル合金層のみからなる金属層と未焼結誘電体シートを得た。これらはいずれも150mm角とした。その後、実施例1の(6)以降と同様の各工程を経て、鉄ニッケル合金層からなる金属層と誘電体層とが積層された誘電体積層構造体を得た。
【0109】
このようにして得られた本実施例3の誘電体積層構造体について、実施例1の(8)と同様の方法で反り量を測定した結果、反り量は0.11mmであった。つまり、反り量としては、実施例1と同レベルであり、良好な結果となった。
【0110】
但し、鉄ニッケル合金層の表面が酸化し、その表面が荒れた状態となった。この酸化は、焼成工程において生じたものである。そのため、鉄ニッケル合金層に積層された誘電体層の一部が、鉄ニッケル合金層から剥離してしまった。
【0111】
これに対し、実施例1では、鉄ニッケル合金層1の表面がニッケル被覆2にて覆われていることから、本実施例3のような表面酸化は生じず、誘電体層の剥離も見られなかった。このことから、実施例1のように鉄ニッケル合金層1をニッケル被覆2で覆うことで金属層の表面酸化が防止されることが実証された。
【0112】
[実施例4]
更に、上記実施例3において、焼成工程における焼成温度を変えた場合の例を、実施例4として示す。本実施例4における誘電体積層構造体の製造は、焼成工程における焼成温度が異なること以外は、上記実施例3と全く同じである。具体的には、上記実施例3では1150℃の温度で2時間焼成を行ったのに対し、本実施例4では、それよりも高い温度である1250℃で2時間焼成を行った。
【0113】
このように焼成温度をより高温にした本実施例4の誘電体積層構造体について、実施例1と同様の方法で反り量を測定した結果、反り量は0.21mmであった。つまり、反り量としては、実施例1や実施例3と同レベルであり、良好な結果となった。
【0114】
但し、鉄ニッケル合金層の表面が酸化し、その表面が荒れた状態となった。この酸化は、焼成工程において生じたものである。そのため、鉄ニッケル合金層に積層された誘電体層の一部が、鉄ニッケル合金層から剥離してしまった。この酸化や剥離は、上記実施例3でも発生したが、実施例3よりもより多く発生した。これは、焼成温度を高温にしたことで、熱膨張係数がその分上昇して誘電体層の熱膨張係数との差が広がり、且つ環境的にも酸化をより促進させる方向に進んだためである。
【0115】
[実施例5]
次に、実施例5の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本実施例5は、実施例1と同様、鉄ニッケル合金からなる主金属層(鉄ニッケル合金層1)の表面をニッケル被覆2で被覆することで金属層3を形成し、その上に誘電体層4を積層するものであり、誘電体積層構造体の組成や製造工程は基本的に実施例1と同じである。そして、実施例1と一つ異なるのが、金属層3の厚さである。即ち、上記実施例1では金属層3の厚さが50μmだったのに対し、本実施例5では100μmと厚くした。
【0116】
このように、実施例1よりも厚い100μmの厚さの金属層3を用いて実施例1と同様の工程で製造した誘電体積層構造体に対し、その反り量を測定した。その結果、反り量は0.08mmであり、実施例1の反り量(0.13mm)よりも少ない結果となった。しかも、金属層3に対する誘電体層4の積層状態も良好であり、誘電体層4の剥離やクラック発生などの不具合も見られなかった。
【0117】
このように、実施例1よりもむしろ良好な結果が得られたのは、金属層3の厚さを厚くしたことで、金属層3の剛性が増し、金属層3自体が反りにくくなったためであるといえる。つまり、誘電体層4に対して金属層3を厚くするほど、反りの量は小さくなる。但し、金属層3を厚くしすぎると、上記第2実施形態のようにコンデンサとして基板に内蔵することが困難になるなど、実用上の問題が生じる。そのため、反り量の低減と実用性とを考慮しつつ金属層3の厚さを決める必要がある。
【0118】
[実施例6]
次に、実施例6の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本実施例6は、誘電体層4として厚さ15μmのチタン酸バリウムを用いるものであり、それ以外(誘電体層4の厚さ以外)の、誘電体積層構造体の各組成や製造工程は上記実施例1と全く同じである。つまり、上記実施例1では誘電体層4の厚さを3μmとした(実施例2〜5も同様)のに対し、本実施例6ではより厚い15μmとした。
【0119】
このようにして製造された誘電体積層構造体に対し、実施例1と同様の方法で反り量を測定したところ、0.23mmであった。この値は、上記実施例1よりは若干大きいものの、実用上は特に問題とならないレベルである。
【0120】
但し、製造された誘電体積層構造体の端部の一部分が筒状に丸まってしまった。また、若干のクラックも確認された。これは、焼成工程において収縮する誘電体層4の厚さを厚くしたことで、収縮の影響が大きくなったことに起因する。
【0121】
[実施例7]
次に、実施例7の製造方法を述べると共に、その反り量について評価する。
本実施例7は、上記実施例6に対し、金属層3の厚さを100μmと厚くした。それ以外(金属層3の厚さ以外)の、誘電体積層構造体の各組成や製造工程は、上記実施例6と全く同じである。
【0122】
このようにして製造された誘電体積層構造体に対し、実施例1と同様の方法で反り量を測定したところ、0.11mmであった。この値は、上記実施例1とほぼ同等のレベルである。これは、実施例1に対して誘電体層4の厚さを厚くしたものの、金属層3の厚さも厚くしたため、金属層3の剛性が増し、反りにくくなったためである。但し、製造された誘電体積層構造体における誘電体層4に若干のクラックも確認された。
【0123】
[実施例1〜7及び比較例1,2のまとめ]
ここで、上記各実施例1〜7および比較例1,2の、組成や諸特性、指標A、反り量等の各種評価結果を、表1にまとめた。なお、表1中の指標Aや総合評価については後で詳述する。
【0124】
【表1】
【0125】
既述のように、誘電体層4の厚さに対して金属層3の厚さが厚いほど、反りの量も小さくなるものの、金属層3の厚さが厚すぎると、逆に実用上の問題が生じる。つまり、あまり厚すぎると、上記第2実施形態のようにコンデンサとして基板に内蔵することが困難となる。そのため、反りの量を抑制し、且つ実用上も問題とならないようにすることを考慮すれば、金属層3の厚さを10μm以上200μm以下、誘電体層4の厚さを1μm以上20μm以下の範囲にするとよい。
【0126】
更に加えて、単に厚さだけでなく、各々の諸特性(熱膨張係数、線収縮比、剛性など)も考慮した上で、金属層3及び誘電体層4を形成するのが望ましい。
具体的には、次式(4)で表される指標Aが−0.25≦A≦0.5の範囲内に入るように、式(4)中の各値を設定すればよい。なお、下記式(4)は既に説明した式(3)と同じものである。
【0127】
【数4】
【0128】
この指標Aは、反り量の度合いを表す数値であり、この指標Aが0に近いほど反り量が小さくなる。表1には、各実施例1〜7及び各比較例1,2における指標Aも示されている。表1に示された指標Aからもわかるように、実施例1〜7については全て上記範囲内に入っている。つまり、指標Aからも、実施例1〜7はいずれも反り量としては問題ないことがわかる。これに対し、比較例1,2はいずれも指標Aが上記範囲を外れており、反り量も大きくなっている。そのため、比較例1,2については、表1に示す通り、総合評価として実用レベルに達していないことを示す「×」を付けている。
【0129】
実施例1〜7はいずれも、指標Aが上記範囲内に入っているが、既述の通り、実施例6の場合は、誘電体層4の厚さを15μmと厚くしたことで、各実施例の中では指標Aが最も大きく且つ端部ロールやクラック発生なども確認されている。また、実施例4の場合は、指標Aおよび反り量は共に問題ないレベルだが、金属層3を鉄ニッケル合金のみで構成したため(ニッケル被覆無し)、金属層の表面酸化や誘電体層の剥離などが確認されている。そのため、表1では、これら実施例4,6を総合評価として、実用レベルではあるが若干の不具合が生じることを示す「△」を付けている。
【0130】
「△」評価の実施例4,6以外の各実施例のうち、実施例2は、金属層3に対する誘電体層4の積層状態は良好だったものの、反り量が若干大きい(実用上問題はないが)。また、実施例3は、反り量は小さいものの金属層3の表面酸化や荒れなどが確認された。また、実施例7は、反り量は小さいものの誘電体層4にクラックが発生した。そのため、これら実施例2,3,7については、総合評価として、実用上問題のない良好なレベルであることを示す「○」を付けている。
【0131】
そして、「△」および「○」以外の実施例である実施例1,5については、反り量が非常に少なく、しかも、金属層3の表面酸化や誘電体層4のクラック等が発生せず金属層3に対する誘電体層4の積層状態も良好であるため、非常に良好なレベルであることを示す「◎」を付けている。
【0132】
[第3実施形態]
次に、上述した第2実施形態のコンデンサ内蔵基板120の製造方法について説明する。なお、本第3実施形態では、コンデンサ20(図4参照)を作製する一方で基板の作製も行い、基板作製過程でコンデンサ20を基板に埋め込むこととなる。そこで、コンデンサ20の製造工程及びそれを基板に内蔵する工程以外は、周知の基板製造プロセス(ビルドアップによる配線基板製造プロセス)と同様であるため、詳細説明を省略する。
【0133】
(1)金属層、未焼結ニッケルテープ、及び未焼結誘電体シートの準備
上記実施例1と同様の方法を用いて、焼成後厚さが3μmとなるようにPETフィルム66上に塗工された未焼結誘電体シート64及び厚さ50μmの金属層61を準備した(図7;「積層体準備」参照)。金属層61は、図6の金属層3と同じ構成であり、鉄ニッケル合金層63の全面がニッケル被覆62でコーティングされたものである。
【0134】
更に、焼成後厚さが5μmとなるようにPETフィルム67上に塗工された未焼結ニッケルテープ65を準備した。この未焼結ニッケルテープ65の形成方法は、次の通りである。
【0135】
まず、未焼結ニッケルテープ用原料スラリーを調製した。この調製方法は、チタン酸バリウム粉末に代えて平均粒径0.7μmのニッケル粉(導電性金属粉)を用いること以外は上記実施例1の(3)における未焼結誘電体シート用スラリーの調製方法と同様である。
【0136】
そして、調製した未焼結ニッケルテープ用原料スラリーを、上記実施例1の(4)における未焼結誘電体シート形成方法と同様、ドクターブレード法などの汎用の方法により、幅180mm、厚さは所望となるように、厚さ50μmのPETフィルム上に塗工した。これにより、未焼結ニッケルテープ65が得られた。
【0137】
なお、これらは後述する図8(「PET剥離」参照)に示すように、厚さ50μmの金属層61、焼成後厚さが3μmとなるような未焼結誘電体シート74(64)、焼成後厚さが5μmとなるような未焼結ニッケルテープ65の順に並ぶ積層体となる。そして、これらの厚さは、焼成後の反りがほとんど生じないように選択されたものである。
【0138】
(2)金属層、未焼結誘電体シート及び未焼結ニッケルテープの切断とガイド穴の形成
ガイド穴を同時に形成できる打ち抜き金型を用いて、上記工程(1)で準備された金属層61、PETフィルム66上に塗工された未焼結誘電体シート64、PETフィルム67上に塗工された未焼結ニッケルテープ64をそれぞれ切断し、150mm角の箔、シート、及び、テープを得た。
【0139】
(3)未焼結誘電体シート及び未焼結ニッケルテープへの貫通孔の形成
上記工程(2)により得られた、PETフィルム66上に塗工された未焼結誘電体シート64の所定の位置を、CO2レーザーにより、PETフィルム66ごと貫通させて貫通孔91,92を形成した。これにより、貫通孔91,92が形成されたPETフィルム76と、同じく貫通孔91,92が形成された未焼結誘電体シート74とからなる積層体が形成された(図7;「貫通孔の形成」参照)。
【0140】
同様に、PETフィルム67上に塗工された未焼結ニッケルテープ65の所定の位置にも、図示は省略するものの、貫通孔を形成した。この貫通孔は、後述する工程(7)において、基板に対する位置合わせのためのアライメントマークとなるものである。従って、未焼結誘電体シート64(74)に形成された貫通孔91,92の位置とは異なる。なお、未焼結誘電体シート64(74)へ形成する貫通孔は、実際には二つの貫通孔91,92だけでなく複数形成されるが、本第3実施形態では説明の簡略化のため二つだけ図示している。
【0141】
(4)コンデンサ用未焼結積層体の作製
ガイドピンで位置合わせできる汎用の仮積層機を用いて、まず金属層61の上に、上記工程(3)により得られた、貫通孔91,92の形成された焼成後厚さ3μmの未焼結誘電体シート74を、金属層61と未焼結誘電体シート74とが向かい合うようにして、80℃、200kgf/cm2の条件にて仮積層した(図7;「仮積層」参照)。
【0142】
なお、未焼結誘電体シート74のビアホールとなるべく貫通孔91,92の形成は、本工程(4)の後に行うこともできる。即ち、金属層61の表面に露出しているニッケル被覆62はCO2レーザーを反射するため、本工程(4)で得られた積層体であっても、CO2レーザーを用いて未焼結誘電体シート74にのみ貫通孔91,92を形成することができるのである。
【0143】
そして、未焼結誘電体シート74が塗工されていたPETフィルム76をその未焼結誘電体シート74から剥離した後(図7;「PET剥離」参照)、図8に示すように、焼成後厚さが5μmとなるようにPETフィルム67上に塗工された未焼結ニッケルテープ65を、その未焼結ニッケルテープ65と未焼結誘電体シート74とが向かい合うようにして仮積層した。このようにして得られた仮積層体を、150mm角の圧着用金型に入れ、100℃、750kgf/cm2の条件にて熱圧着した(図8;「仮積層・熱圧着」参照)。
【0144】
そして、得られた積層体を、NC切断機などの汎用の切断機にて、PETフィルム67と共に切断し、その後、このPETフィルム67を剥離することにより、15mm角の積層体を作製した(図8;「PET剥離」参照)。これにより、金属層61の一方の面に未焼結誘電体シート74及び未焼結ニッケルテープ65(それぞれ焼成後厚さが3μm,5μm)が順に積層された状態となる。
【0145】
なお、本第3実施形態では、未焼結ニッケルテープ65にて形成される層はパターンを有さないため、工程的に容易となるテープ状の未焼結テープを用いているが、この層をパターン形成する必要がある場合は、未焼結ニッケルテープ65に代えて、例えばニッケルペーストを用いたスクリーン印刷などによって未焼結ニッケルを塗布するのが好ましい。
【0146】
(5)脱脂及び焼成
このようにして得られた積層体を、大気中250℃で10時間脱脂した後、窒素、水素、水蒸気の混合気体からなる雰囲気中、1260℃にて2時間焼成を行うことにより、金属層61、誘電体層21、ニッケル層22がこの順に積層されてなるコンデンサ用焼成積層体80を得た(図8;「焼成」参照)。これが、後に基板内に内蔵される(埋め込まれる)コンデンサ、即ち図4で説明したコンデンサ20となるのである。
【0147】
(6)コア基板の準備
次に、図9に示すようにコア基板100を準備した。コンデンサへの配線とは直接関連しないため図示は省略するが、コア基板100には、周知のオーガニック基板製造プロセスにて形成されたスルーホール導体と、表面には所望の銅配線パターンとを備えている。このコア基板100上に、表面配線パターンを形成する銅の粗化を行った後、厚さ50μmの樹脂絶縁層102となるドライフィルムを積層した(図9;「コア基材準備」参照)。
【0148】
(7)コンデンサ用焼成積層体の積層
上記樹脂絶縁層102上に、加熱機構付きのマウンターなどを用い、ニッケル層22が接着されるように、上記工程(5)で形成されたコンデンサ用焼成積層体80を所定の位置に積層し、その後、仮キュアを行った(図9;「コンデンサ積層」参照)。
【0149】
(8)コンデンサ用焼成積層体上部電極のパターニング
通常のフォトリソグラフィ工程により金属層61のパターニングを行い、エッチング処理(金属層61における該当領域を溶解)することで、上部電極36,37,38と下部電極35とが絶縁されたコンデンサ20を得た(図9;「パターニング」参照)。エッチング剤としては、塩化鉄水溶液を用いた。
【0150】
なお、このパターニング工程において、端部の上部電極36,38と下部電極35とは、積層体端部側面において短絡する可能性があるため、上部電極36の外周部を端部72から100μm程度、同時に除去(エッチング)すると共に、上部電極38の外周部についても、端部71から100μm程度、同時に除去(エッチング等)した。
【0151】
この後、図示は省略するものの、樹脂絶縁層102上にビアホールを形成した後、この樹脂絶縁層102の粗化を行い、本キュアを行った後、銅メッキによりビア電極を含む配線パターンを形成した。
【0152】
(9)コンデンサへの導通ビア電極の形成
上記樹脂絶縁層102の表面配線パターンを形成する銅の粗化を行った後、この樹脂絶縁層102上に、厚さ50μmの樹脂絶縁層(ドライフィルム)104を積層(ラミネート)した(図10;「樹脂ラミネート」参照)。
【0153】
その後、周知のプロセスにて、所定箇所にビアホールを形成した後、樹脂層の粗化を行い、本キュアを行った。そして、銅メッキによりビア電極106を含む配線パターン105を形成した(図10;「メッキビア形成」参照)。
【0154】
(10)後工程
その後は、周知のプロセスにて、必要に応じた層数だけ順次ビルドアップしていくことにより、最終的に、図5に示したような、コンデンサ20が内蔵されたコンデンサ内蔵基板120を完成させた。
【0155】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、本発明の適用は上記各実施形態、実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0156】
例えば、上記実施形態では誘電体層4をチタン酸バリウムにて形成したが、他の誘電体を用いることも勿論可能であり、以下の(1)〜(3)に列挙した物質を一種以上含むものとして形成することができる。ここでいう「一種以上」とは、混合物の他、化合物、合金、固溶体なども含む表現である。
(1)チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタニア、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、等。
(2)アルミナ(酸化アルミニウム)、マグネシア、ジルコニア、シリカ、チタニア、二酸化スズ、希土類の酸化物、カルシア、ストロンチア、窒化珪素、窒化ほう素、窒化アルミニウム、等。
(3)ガラス(例えば、アルミナ−シリカ−アルカリ度類酸化物などからなる)。
【0157】
このうち、誘電体層4を形成する物質として好ましいのは、(1)、(2)、(3)の順である。なお、周知の如く(3)のガラスはセラミックには含まれない。また、誘電体層4は、当該誘電体積層構造体4の製造完了状態で上記(1)〜(3)に列挙した物質となるものでよく、例えば、水酸化物や炭酸塩を出発原料として用いてもよい。
【0158】
また、金属層3を構成する鉄ニッケル合金層1についても、上記実施形態はあくまでも一例であって、鉄とニッケルの比率を適宜調整したり、鉄とニッケル以外に他の金属が混合されたものを用いるようにしてもよい。具体的には、例えば実施例2のように鉄ニッケルクロム合金を、鉄ニッケル合金1に代えて用いることができる。
【0159】
また、上記実施形態では、鉄ニッケル合金層1を覆う被覆金属としてニッケル被覆2を用いた例を示したが、ニッケルによる被覆はあくまでも一例であって、鉄ニッケル合金層1(つまり被覆対象)の酸化や腐蝕を防止でき、且つ自身も酸化、腐蝕されにくいような金属であれば何でもよい。具体的には、ニッケル、クロム、又は銅のうち少なくとも一つの金属からなるものを被覆金属として用いることができる。
【0160】
一方、この被覆金属は必ずしも必要なものではなく、被覆対象の金属層が焼成雰囲気中でも酸化や腐蝕しにくい(問題とならないレベル)ならば、上記実施例3に示したように、鉄ニッケル合金のみで金属層3を形成してもよい。ただし、焼成温度等の諸条件・環境等によっては、上記実施例4のように酸化や腐蝕の程度が大きくなるため、酸化や腐蝕の程度などに応じて被覆するか否かを適宜決める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】第1実施形態の誘電体積層構造体の構成を表す断面図である。
【図2】第1実施形態の誘電体積層構造体の変形例を表す断面図である。
【図3】第2実施形態のコンデンサの構成を表す断面図である。
【図4】図3のコンデンサにおける一方の電極をエッチングした状態を表す断面図である。
【図5】図4のコンデンサが内蔵されたコンデンサ内蔵基板の一例を表す断面図である。
【図6】実施例1の、誘電体積層構造体の製造工程を表す説明図である。
【図7】第3実施形態の、コンデンサ用焼成積層体の製造工程(前半)を示す説明図である。
【図8】第3実施形態の、コンデンサ用焼成積層体の製造工程(後半)を示す説明図である。
【図9】コンデンサ内蔵基板の製造工程(前半)を示す説明図である。
【図10】コンデンサ内蔵基板の製造工程(後半)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0162】
1,6,63…鉄ニッケル合金層、2,62…ニッケル被覆、3,9,61…金属層、4,21…誘電体層、5,10…誘電体積層構造体、7…裏面側ニッケル被覆、8…表面側ニッケル被覆、9…金属層、14,64,74…未焼結誘電体シート、15,20…コンデンサ、16,22…ニッケル層、31…パターン化金属層、35…下部電極、36,37,38…上部電極、65…未焼結ニッケルテープ、71,72…端部、80…コンデンサ用焼成積層体、91,92…貫通孔、100…コア基板、105…配線パターン、106…ビア電極、120…コンデンサ内蔵基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、
前記金属層に積層された誘電体層と、
を有し、
前記金属層は、その熱膨張係数と前記誘電体層の熱膨張係数との差が予め設定した値以下となるような材質の金属にて構成されている
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項2】
請求項1記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層は、その熱膨張係数αが、前記誘電体層の熱膨張係数βに対して、0.7β≦α≦1.3β、の関係を満たすような材質の金属にて構成されている
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層は、鉄およびニッケルを主成分とする合金により形成されている
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項4】
請求項1又は2記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層は、鉄、ニッケル、およびクロムを主成分とする合金により形成されている
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項5】
請求項3又は4記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層は、
前記合金からなる主金属層部と、
前記主金属層部における少なくとも前記誘電体層が積層される面に被覆された、ニッケル、クロム又は銅のうち少なくとも一つの金属からなる被覆金属部と、
を有することを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項6】
請求項5記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層の厚さは10μm以上200μm以下であり、前記誘電体層の厚さは1μm以上20μm以下である
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の誘電体積層構造体と、
該誘電体積層構造体の前記誘電体層における前記金属層と対向する面とは反対側の面に積層された積層金属と、を有し、
前記金属層を一方の電極、前記積層金属を他方の電極とし、該各電極間に前記誘電体層が挟まれてなる
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項8】
金属層と、該金属層に積層される誘電体層とを備えた誘電体積層構造体の製造方法であって、
前記誘電体層の熱膨張係数との差が予め設定した値以下となるような熱膨張係数を有する材質の金属にて前記金属層を形成する金属層形成工程と、
前記誘電体層となるべき未焼結状態の誘電体である未焼結誘電体部を前記金属層の一方の面に積層する未焼結誘電体積層工程と、
前記未焼結誘電体積層工程によって互いに積層された金属層および未焼結誘電体部を一体に焼成して、前記未焼結誘電体部を焼結させる焼成工程と
を有することを特徴とする誘電体積層構造体の製造方法。
【請求項1】
金属層と、
前記金属層に積層された誘電体層と、
を有し、
前記金属層は、その熱膨張係数と前記誘電体層の熱膨張係数との差が予め設定した値以下となるような材質の金属にて構成されている
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項2】
請求項1記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層は、その熱膨張係数αが、前記誘電体層の熱膨張係数βに対して、0.7β≦α≦1.3β、の関係を満たすような材質の金属にて構成されている
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層は、鉄およびニッケルを主成分とする合金により形成されている
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項4】
請求項1又は2記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層は、鉄、ニッケル、およびクロムを主成分とする合金により形成されている
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項5】
請求項3又は4記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層は、
前記合金からなる主金属層部と、
前記主金属層部における少なくとも前記誘電体層が積層される面に被覆された、ニッケル、クロム又は銅のうち少なくとも一つの金属からなる被覆金属部と、
を有することを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項6】
請求項5記載の誘電体積層構造体であって、
前記金属層の厚さは10μm以上200μm以下であり、前記誘電体層の厚さは1μm以上20μm以下である
ことを特徴とする誘電体積層構造体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の誘電体積層構造体と、
該誘電体積層構造体の前記誘電体層における前記金属層と対向する面とは反対側の面に積層された積層金属と、を有し、
前記金属層を一方の電極、前記積層金属を他方の電極とし、該各電極間に前記誘電体層が挟まれてなる
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項8】
金属層と、該金属層に積層される誘電体層とを備えた誘電体積層構造体の製造方法であって、
前記誘電体層の熱膨張係数との差が予め設定した値以下となるような熱膨張係数を有する材質の金属にて前記金属層を形成する金属層形成工程と、
前記誘電体層となるべき未焼結状態の誘電体である未焼結誘電体部を前記金属層の一方の面に積層する未焼結誘電体積層工程と、
前記未焼結誘電体積層工程によって互いに積層された金属層および未焼結誘電体部を一体に焼成して、前記未焼結誘電体部を焼結させる焼成工程と
を有することを特徴とする誘電体積層構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−142089(P2007−142089A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332791(P2005−332791)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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