誘電性構造体、誘電性構造体を用いた放電装置、流体改質装置、および反応システム
【課題】処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことのできる誘電性構造体を提供する。
【解決手段】 誘電性構造体U1は、第1表面S1と第2表面S2との間に少なくとも1つの貫通孔3を有する誘電体2と、誘電体における第1表面S1と第2表面S2との間に設けられ、少なくとも一部が貫通孔3の内周面に沿って位置する第1導電体4と、誘電体2における第1導電体4と第2表面S1との間、又は第2表面S2上に設けられ、少なくとも一部が貫通孔に沿って位置する第2導電体6とを有する。貫通孔3は、第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。
【解決手段】 誘電性構造体U1は、第1表面S1と第2表面S2との間に少なくとも1つの貫通孔3を有する誘電体2と、誘電体における第1表面S1と第2表面S2との間に設けられ、少なくとも一部が貫通孔3の内周面に沿って位置する第1導電体4と、誘電体2における第1導電体4と第2表面S1との間、又は第2表面S2上に設けられ、少なくとも一部が貫通孔に沿って位置する第2導電体6とを有する。貫通孔3は、第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマ発生体として用いられる誘電性構造体、誘電性構造体を用いた放電装置、流体改質装置、および反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、反応系および光源系の様々な分野で利用されている。例えば、反応系では、窒素酸化物(NOx)分解装置、炭化水素(HC)分解装置、ダイオキシン分解装置、飽和フッ化炭素及び化合物(PFC)分解装置、揮発性有機化合物(VOC)、すす等の粒子状不純物(PM)除去装置、脱臭装置ウイルス除菌装置、オゾン発生装置、またはマイナスイオン発生装置等においてプラズマが利用されている。また、光源系では、例えば、プラズマランプ(蛍光灯、ネオン管など)、エッチング装置用光源、レジスト露光装置用光源、またはプラズマディスプレイにおいてプラズマが利用されている。
【0003】
このプラズマを発生させるプラズマ発生体としては種々の形態があるが、近年においては、プラズマ発生体と金属若しくはセラミックスからなるフィルターとを連結し、供給する流体の流速によってプラズマ発生体内で発生したプラズマをフィルター内に流入させ、連結されたプラズマ発生体とフィルターとを流れる流体をプラズマと反応させるものがある(以降、プラズマ発生体及びフィルター連結方式と呼ぶ。)(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2001−87658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラズマ発生体及びフィルター連結方式では、プラズマ発生体とフィルターとの連結面の形状によっては、プラズマ発生体内で発生したプラズマがフィルター内に均一に流れず、プラズマの分布にばらつきがあった。その結果、流体の反応にばらつきが生じ反応効率が悪くなるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、プラズマ発生体及びフィルター連結方式で用いた場合に流体をできるだけ均一に反応させることが可能な誘電性構造体、誘電性構造体を用いた放電装置、流体改質装置、および反応システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の誘電性構造体は、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、前記誘電体における前記第1表面上、前記第1表面と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体とを有し、前記貫通孔は、前記第1表面における開口の開口面積が、前記第2表面における開口の開口面積よりも大きい開口を有している。この誘電性構造体を第1誘電性構造体という。
【0007】
好ましくは、前記の第1誘電性構造体において、前記貫通孔の貫通方向に投影したとき、前記貫通方向に沿って離間した前記貫通孔における任意の2箇所のうち前記第2表面に近い箇所の内周面の位置が、前記第1表面に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側に有している。この誘電性構造体を第2誘電性構造体という。
【0008】
本発明の誘電性構造体は、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、前記誘電体における前記第1導電体と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と、前記誘電体における前記第1表面上に設けられた第3導電体とを有し、前記第3導電体は、前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面積が、該貫通方向に沿って前記第1表面から離れるに従って小さくなっている。この誘電性構造体を第3誘電性構造体という。
【0009】
本発明の誘電性構造体は、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、前記誘電体における前記第1導電体と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と、前記誘電体における前記第1表面上に設けられた第3導電体と、前記第3導電体において前記第1表面に隣接する面と反対側の面に設けられた誘電性部材とを有し、前記誘電性部材は、前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面積が、該貫通方向に沿って前記第1表面から離れるに従って小さくなっている。この誘電性構造体を第4誘電性構造体という。
【0010】
また、好ましくは、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する複数の誘電体と、前記各誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置している第1導電体と、前記各誘電体における前記第1表面上、前記第1表面と前記第2表面との間、又は前記第2表面上にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体とを有し、複数の前記誘電体は、前記第1導電体と前記第2導電体が交互に位置するとともに、前記各誘電体に設けられた前記貫通孔が連通するように配列されており、前記複数の誘電体の配列方向において一方の端部に位置する前記第1表面における前記貫通孔の開口面積は、前記配列方向において他方の端部に位置する前記第2表面における前記貫通孔の開口面積よりも大きい。この誘電性構造体を第5誘電性構造体という。
【0011】
好ましくは、前記の第5誘電性構造体において、連通した複数の前記貫通孔からなる連続貫通孔の貫通方向に投影したとき、前記貫通方向に沿って離間した前記連続貫通孔における任意の2箇所のうち、前記配列方向における一方の端部に位置する前記第2表面に近い箇所の内周面の位置が、前記配列方向における他方の端部に位置する前記第1表面に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側にある。この誘電性構造体を第6誘電性構造体という。
【0012】
また、好ましくは、前記の第1〜6誘電性構造体のいずれかにおいて、前記第1導電体および前記第2導電体は、前記貫通孔に対応する位置に貫通孔をそれぞれ有した平板状の導体である。この誘電性構造体を第7誘電性構造体という。
【0013】
また、好ましくは、前記の第1〜7誘電性構造体のいずれかおいて、前記貫通孔の貫通方向に投影したときに、前記第2導電体の外縁部は、前記第1導電体の外縁部の内側に位置する。この誘電性構造体を第8誘電性構造体という。
【0014】
また、好ましくは、前記の第1〜8誘電性構造体のいずれかにおいて、前記第2導電体は、前記貫通孔に対応する位置以外にも貫通孔を有する。この誘電性構造体を第9誘電性構造体という
本発明の放電装置は、前記の第1〜9誘電性構造体のいずれかと、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源とを備えた放電装置である。この放電装置を第1放電装置という。
【0015】
好ましくは、前記の第1放電装置は、前記第1導電体と前記第2導電体との間に直流電圧を印加するための第2電源を備えている。この放電装置を第2放電装置という。
【0016】
本発明の放電装置は、前記第3または第4の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源と、前記第1導電体と前記第3導電体との間に交流電圧を印加するための第2電源とを備えている。この放電装置を第3放電装置という。
【0017】
本発明の放電装置は、前記第3または第4の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源と、前記第1導電体と前記第3導電体との間に交流電圧を印加するための第2電源と、前記第1導電体と前記第2導電体の間および前記第1導電体と前記第3導電体の少なくとも一方に直流電圧を印加する第3電源とを備えている。この放電装置を第4放電装置という。
【0018】
本発明の流体改質装置は、第1から第4のいずれかの放電装置と、前記貫通孔における前記第2導電体側から前記第1導電体側に流体を流す流体供給部と、前記放電装置の下流に設けられた集塵部とを備えた流体改質装置である。
【0019】
本発明の反応システムは、前記の第1および3放電装置のいずれかの放電装置と、前記貫通孔における前記第1導電体側から前記第2導電体側に流体を流す流体供給部と、前記誘電性構造体に関して前記流体供給部と反対側に設けられた電極と、前記電極と前記第1導電体との間に直流電位を供給する第3電源と、前記誘電性構造体と前記電極との間に設けられた集塵部とを備えた反応システムである。
【0020】
また、本発明の反応システムは、前記の第2放電装置と、前記貫通孔における前記第1導電体側から前記第2導電体側に流体を流す流体供給部と、前記誘電性構造体に関して前記流体供給部と反対側に設けられた電極と、記誘電性構造体と前記電極との間に設けられた集塵部と、前記第2電源を、前記第1導電体と前記第2導電体との間および前記電極と前記第1導電体との間で切り換える切り換え部とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の誘電性構造体によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0022】
本発明の放電装置によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0023】
本発明の流体改質装置によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0024】
本発明の反応システムによれば、処理流体の圧力損失を低減でき、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の誘電性構造体の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による誘電性構造体の正面図であり、図2は、図1におけるA−A’線における断面図である。本実施の形態による誘電性構造体U1は、誘電体からなる基体2を備える。この基体2は、対向する第1表面S1および第2表面S2の間を貫通する貫通孔3を有する。基体2の内部には、対向する第1表面S1と第2表面S2との間に第1導電体4が配設される。第1導電体4は、基体2の貫通孔3に対応する位置に貫通孔5を有している。この貫通孔5の径は、基体2の貫通孔3の径よりも大きく、貫通孔5の開口は、貫通孔3の開口に沿って位置している。
【0027】
また、基体2の第2表面S2には第1導電体4に対向して設けられるとともに、外縁部が第2表面S2上に位置する第2導電体6が設けられている。この第2導電体6も、基体2の貫通孔3に対応する位置に貫通孔7を有する。この貫通孔7の径は、基体2の貫通孔3の径と同じか、若しくは貫通孔3の径よりも大きく、貫通孔7の開口は、貫通孔3の開口に沿って位置している。
【0028】
また、貫通孔3は、第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。
【0029】
また、誘電性構造体U1を貫通孔3の貫通方向に投影したとき、貫通方向に沿って離間した貫通孔3の任意の2箇所のうち第2表面S2に近い箇所の内周面の位置が、第1表面S1に近い箇所の内周面の位置より内側に存在するように形成されている。すなわち、基体2を貫通孔3の貫通方向に垂直な面で切断したときの貫通孔3の開口面積は、第2表面S2から第1表面S1に近づくにつれて大きくなる。
【0030】
さらに、基体2の第1表面S1および第2表面S2に垂直な端面S3,S4には、第1導電体4に電力を供給するために第1導電体4と電気的に接続される外部端子8、および第2導電体6に電力を供給するために第2導電体6と電気的に接続される外部端子9がそれぞれ設けられる。
【0031】
本実施の形態による誘電性構造体U1では、第1導電体4に基準電位を供給し、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧、又はパルス電圧を印加することにより、第1導電体4と第2導電体6との間の領域に対応する貫通孔3内の領域、および第2導電体6のエッジ、すなわち貫通孔7の開口部に沿って、沿面放電(プラズマ)を発生させることができる。なお、図3に示すように、第1導電体4と第2導電体6との間の領域に対応する貫通孔3内の領域において、沿面放電が発生する場合、この領域を放電領域11という。
【0032】
基体2は、電気絶縁材料から成り、例えば、セラミックスから成る。具体的に、基体2を製造する場合には、セラミックグリーンシートを準備し、次に準備したセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層し、高温(約1300〜1800℃)で焼成することにより製作される。電気絶縁材料としては、例えば、酸化アルミニウム焼結体(アルミナセラミックス)がある。例えば酸化アルミニウム質焼結体から成るグリーンシートは、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、およびマグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤および溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれを従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法等を採用し、シート状に成形することによって得られる。
【0033】
セラミックグリーンシートの積層体を作製する場合には、セラミックグリーンシートを積層した後圧着を行なう。圧着は3.0〜8.0MPa程度の圧力を加えて行ない、必要に応じて35〜100℃で加熱を行なう。このとき、貫通孔3を形成するために、金型やレーザーを用いてグリーンシートに打ち抜き加工を施す。また、セラミックグリーンシート同士の十分な接着性を得るために、溶剤と樹脂バインダーを混合するなどして作製した接着剤を用いてもよい。なお、電気絶縁材料としては、酸化アルミニウム質焼結体以外にも、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、コーディライト質焼結体、または炭化珪素質焼結体等が挙げられる。
【0034】
また、第1表面S1における貫通孔開口の開口面積を、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きく形成するには、金型打抜き工法、レーザー打抜き工法、または切削工法等により、複数のセラミックグリーンシートに径が大から小の異なる貫通孔をあらかじめ形成しておき、形成された貫通孔が大から小の径の順に複数のセラミックグリーンシートを積層してプレス機等で加圧するとよい。このようにすると、第2表面S2から第1表面S1に向かって、貫通孔の径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0035】
また、他の方法として、セラミックグリーンシートが複数積層された積層体の所望の位置をテーパドリル等で第1表面S1側から切削することにより、第2表面S2から第1表面S1に向かって径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0036】
さらに、他の方法として、セラミックグリーンシートの積層体の所望の位置を第1表面S1側から、錐状または凸状金型等で40℃から100℃程度に加熱しながらプレスすることにより、第2表面S1から第1表面S2に向かって径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0037】
本実施の形態による誘電性構造体U1においては、第1導電体4は、基体2内に保持されており、第1導電体4には貫通孔3に対応する位置に貫通孔5が設けられている。また、第2導電体6は、基体2の第2表面S2上に保持されており、第2導電体6には貫通孔3に対応する位置に貫通孔7が設けられている。このため、第1導電体4に基準電位を供給し、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加することにより、貫通孔3の放電領域11および第2導電体6の貫通孔7の開口部に沿った領域(以下、「開口部領域」ともいう。)に沿面放電(プラズマ)を発生させることができる。これにより、第2表面S2側から貫通孔3に供給された流体を、第2導電体6の貫通孔7の開口部領域、および放電領域11において、プラズマと反応させることができる。これにより、流体内の微粒子状不純物とプラズマとを反応させることができる。
【0038】
なお、第1導電体5、第1導電体4、および第2導電体6はそれぞれ、その端部が基体2の外表面近傍まで導出されており、対応する外部端子8,9に直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。
【0039】
第1導電体4および第2導電体6は、タングステン、モリブデン、白金、銅、または銀等の金属粉末導電体からなる。第1導電体4および第2導電体6は、スクリーン印刷法等の印刷手段を用いて、基体2用のセラミックグリーンシートの所定の位置に導電体ペーストを所望の形状に印刷塗布し、基体2用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって基体2の内部に所定のパターンに形成することができる。導電体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダーおよび有機溶剤、並びに必要に応じて分散剤等を加えて、ボールミル、三本ロールミル、またはプラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することにより製作される。導電体ペーストには、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼結後の基体2との接合強度を高めたりするためにガラスやセラミックスの粉末を添加しても良い。
【0040】
次に、基体2の外表面には、外部端子8、9が形成されている。外部端子8、9は、外部電源から第1導電体4および第2導電体6に電圧を印加するための導電路として機能し、基体2の外表面に導出された第1導電体4および第2導電体6のそれぞれに電気的に接続されている。外部端子8、9は、タングステン、モリブデン、白金、銅、または銀等の金属粉末導電体からなり、スクリーン印刷や吹付け印刷法等の印刷手段を用いて、基体2用のセラミックグリーンシートの所定の位置に導電体ペーストを印刷塗布し、基体2用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって誘電性構造体U1の所定の位置に形成することができる。
【0041】
なお、第1導電体4、第2導電体6、および外部端子8,9は、基体2用のセラミックグリーンシートに、第1導電体4および第2導電体6用の導体ペースト、並びに外部端子8,9用の導電体ペーストを塗布して同時焼成することにより形成することができる。また、他の製造方法としては基体2用のセラミックグリーンシートと第1導電体4および第2導電体6用の導電体ペーストとを同時焼成し、その後、外部端子8、9用の導電体ペーストを所望の位置に印刷塗布し焼成することにより、外部端子8、9を誘電性構造体U1の所定の位置に形成することができる。
【0042】
外部端子8、9の導電体ペーストは、第1導電体4および第2導電体6の導電体ペーストと同様にして作製されるが、有機バインダーおよび有機溶剤の量により印刷に適した粘度に調整される。
【0043】
なお、外部端子8、9の露出する表面には、ニッケルまたは金等の耐蝕性に優れる金属をめっき法若しくは蒸着法にて形成しておくことが好ましい。なお、外部端子8、9が酸化腐食するのを抑制するとともに、外部端子8、9と外部電源の電源端子との接合を強固なものとするために、厚みが1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚みが0.1〜3μm程度の金めっき層とが順次形成されていることが好ましい。なお、外部端子8、9においても、上述と同様に、高温下にて使用する場合には、ニッケルまたは金等の耐蝕性に優れる金属を単層で形成着しておいても構わない。
【0044】
あるいは、外部端子8、9は、基体2用のセラミックグリーンシートの焼成後に、所定の位置に貼り付けられた鉄−ニッケル合金、鉄−ニッケル−コバルト合金、白金、銅、または銀等からなる金属板でもよい。例えば銀と銅を主成分とするロウ材、または比較的低温下にて使用する場合には錫若しくは銀を主成分としたロウ材を基体2用のセラミックグリーンシートの焼成後に所望の位置に印刷塗布し、ロウ材と同じ位置に金属板を位置決め固定する。その後、ロウ材の溶融温度にてブレージングまたはリフローを行うことで基体2に形成された外部端子8、9に接合することができる。また、更に低温下にて使用する場合には、銀などの金属粉末とエポキシ等の樹脂と有機溶剤を混練しペースト状とした導電性ペーストを使用しても良い。
【0045】
そして、外部交流電源の基準電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子8に電気的に接続し、高電圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子9に電気的に接続して交流高電圧を印加すると、放電領域11に沿面放電を発生させることができる。
【0046】
また、外部直流電源の基準電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子8に電気的に接続し、高電圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子9に電気的に接続して直流高電圧を印加すると、電界領域15を形成することができる。
【0047】
以下に、誘電性構造体U1の外部端子8,9間に電圧が印加され、貫通孔3に流体が供給された場合の誘電性構造体U1の動作について、図4を参照して説明する。まず、第1導電体4と第2導電体6との間に電源V1により交流電圧を印加して、放電領域11に沿面放電を発生させる。そして、誘電性構造体U1の貫通孔3に、第2導電体6が形成されている第2表面S2側の開口部から、流体供給部13により流体が供給されると、流体内の微粒子状不純物は、放電領域11において沿面放電領域を通過することとなり、プラズマ(励起電子)授受によって分解される。
【0048】
例えば、C(すす)は、酸素濃度が10%程度以上の酸素条件下において、下記の式(1)に示された反応により酸化改質して、CO2が生成される。
【0049】
C+O2→ CO2・・・・・・・・・・(1)
また、例えば、CnHm(有機物)は、酸素濃度が10%程度以上の酸素条件下において、下記の式(2)に示された反応により酸化改質して、CO2及びH2Oが生成される。
【0050】
CnHm+2O2→ Cn−1Hm−4+CO2+2H2O・・・(2)
なお、第1導電体4と第2導電体6との間に沿面放電を発生させるために、第1導電体4と第2導電体6との間には周波数の高い交流電圧が印加される。印加される交流電圧は、必要とされる沿面放電の強度等によって適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のC(すす)を改質する誘電性構造体U1において印加される交流電圧の周波数は、例えば、1kHz〜100MHzである。
【0051】
また、第1導電体4と第2導電体6との間に印加する電圧は、交流電圧以外に、パルス電圧であってもよい。なお、交流電圧は、正弦波電圧に限らず、矩形波電圧若しくは方形波電圧等であってよい。
【0052】
上述のように、本実施の形態による誘電性構造体U1は、流体が供給される側の表面に第2導電体6が設けられ、第2導電体6の貫通孔7に沿って、すなわち誘電性構造体U1の流体流入口に沿って沿面放電が発生することから、流体中の微粒子状不純物は、誘電性構造体U1の流体流入口においてプラズマと反応する。これにより、流体が留まり易い第2表面S2において流体中の微粒子状不純物をプラズマと反応させることができ、微粒子状不純物の反応効率を上げることができる。
【0053】
また、誘電性構造体U1の貫通孔3は、第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。また、誘電性構造体U1を貫通孔3の貫通方向に投影したとき、貫通方向に沿って離間した貫通孔3の任意の2箇所のうち第2表面S2に近い箇所の内周面の位置が、第1表面S1に近い箇所の内周面より内側に存在するように形成され、流体の下流側に向かって貫通孔3の径が漸次大きくなる。これにより、誘電性構造体U1の流体流入口付近では貫通孔3の径を小さくして、プラズマを密に発生させ、処理流体の反応効率を上げるとともに、流体流出口に近づくにつれて貫通孔3の径を大きくし、処理済の流体を誘電性構造体U1からスムーズに排出させることが可能になる。結果として、処理流体の圧力損失を低減しつつ、消費電力を小さくして、流体中の微粒子状不純物の反応効率を上げることができる。
【0054】
なお、図1〜図4に示した誘電性構造体U1では、第2導電体6を第2表面S2上に設けたが、基体2における第1導電体5と第2表面S2との間に設けてもよい。その場合にも、処理流体の圧力損失を低減しつつ、消費電力を小さくして、流体中の微粒状不純物の反応効率を上げることができる。また、第2導電体6を基体2の内部に設けるために、第2導電体6の処理流体およびプラズマによる腐食を抑制することができる。
【0055】
さらに、図5に示すように、誘電性構造体U1の下流にDPF(Diesel particulate filter)13を設けて、流体中に含まれる微粒子状不純物をさらに捕集する場合、誘電性構造体U1の貫通孔3の第1表面S1における開口の開口面積が大きいことから、単位時間当たりにDPF13に流れる流体の量が多くなるため、捕集効率を上げることができる。
【0056】
また、誘電性構造体U1で発生したプラズマが下流のDPF13に流入する場合、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、プラズマは流れを阻害されること無くDPF13に流入する。その結果、流体中に含まれる微粒子状不純物をDPF13で捕集する場合、高い反応効率で微粒子状不純物の処理が可能となる。
【0057】
また、図6のように、DPF13の下流に電極14を設けて、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加した後、第1導電体4と電極14との間に直流電圧を印加すると、放電領域11において帯電した微粒子状不純物がDPF13に引き寄せられ、DPF13の捕集効率をさらに上げることができる。加えて、放電領域11に発生したプラズマが、電極14に引き寄せられて、プラズマ領域が下流側に拡大する。これにより、放電領域11において帯電した粒子状不純物が、DPF13に捕集されるとともに、そのDPF13において粒子状不純物がプラズマと反応し、改質される。結果として、より多くの粒子状不純物を分解、改質させることが可能になる。
【0058】
また、誘電性構造体U1で発生したプラズマが電極14に引き寄せられて下流のDPF13に流入する場合、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、プラズマは流れを阻害されること無く、より多くのプラズマがDPF13に流入する。その結果、流体中に含まれる微粒子状不純物をDPF13で捕集する場合、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。
【0059】
さらに、本実施の形態による誘電性構造体U1によれば、誘電性構造体U1の第1導電体4と第2導電体6との間に直流電圧を印加することもできる。例えば図7に示すように、第1導電体4に基準電位を供給し、第1導電体4と第2導電体6との間に直流高電圧を印加することにより、基体2内部における第1導電体4と第2導電体6との間の領域に対応する貫通孔3内の領域に強電界を発生させることができる。なお、第1導電体4と第2導電体6との間の領域に対応する貫通孔3内の領域において、強電界が発生する場合、この領域を電界領域15という。
【0060】
ここで、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加した後に直流電圧を印加すると、放電領域11においてプラズマとの反応により正または負に帯電した微粒子状不純物は、電界領域15に電気的に引き寄せられ、電界領域15に接する基体2の表面に電気的に吸着される。これにより、貫通孔3の内部を通過する流体から微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0061】
以下に、誘電性構造体U1の外部端子8,9間に電圧が印加され、貫通孔3に流体が供給された場合の誘電性構造体U1の動作について、図7を参照して説明する。まず、第1導電体4と第2導電体6との間に電源V1により交流電圧を印加して、放電領域11に沿面放電を発生させる。そして、誘電性構造体U1の貫通孔3に、第2導電体6が形成されている第2表面S2側の開口部から、流体供給部13により流体が供給されると、流体中に含まれるNOx等の物質が、放電領域11によりプラズマと反応し、分解および改質が行われる。
【0062】
また、流体内の微粒子状不純物は、放電領域11において沿面放電領域を通過することとなり、プラズマ(励起電子)授受によって分解される。
【0063】
例えば、C(すす)は、酸素濃度が10%程度以上の酸素条件下において、下記の式(1)に示された反応により酸化改質して、CO2が生成される。
【0064】
C+O2→ CO2・・・・・・・・・・(1)
また、例えば、CnHm(有機物)は、酸素濃度が10%程度以上の酸素条件下において、下記の式(2)に示された反応により酸化改質して、CO2及びH2Oが生成される。
【0065】
CnHm+2O2→ Cn−1Hm−4+CO2+2H2O・・・(2)
さらに、流体中の微粒子状不純物の一部は、プラズマによって正または負に帯電される。
【0066】
次に、外部端子8、9を電源V2に接続して、外部端子8,9に印加する電圧を直流高電圧に切り替えることにより、帯電した微粒子状不純物を電界領域15に引き寄せ、第2導電体6および第2導電体6近傍の基体2の表面に、その帯電した微粒子状不純物を電気的に吸着させることができる。これにより、流体中の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0067】
ここで、第1導電体4と第2導電体6との間に直流電圧を印加する場合、直流電圧は、必要とされる電界強度の大きさ等により適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のC(すす)を放電領域11にて帯電させ、その後、第2導電体6および第2導電体6近傍の基体2の表面に帯電したC(すす)を電気的に吸着されるときに印加される直流電圧の大きさは、1kV〜50kVあるいは−50kV〜−1kVである。また、すすは、一般的に、放電領域11において負に帯電するため、第1導電体4に基準電位である接地電位を供給し、第2導電体6に正の電位を供給すると、すすは、第2導電体6および第2導電体6近傍の基体2の表面に電気的に吸着される。
【0068】
誘電性構造体U1は、流体が供給される側の表面に第2導電体6が設けられ、第2導電体6の貫通孔7に沿って、すなわち誘電性構造体U1の流体流入口に沿って沿面放電が発生することから、流体中の微粒子状不純物は、誘電性構造体U1の流体流入口においてプラズマと反応して電荷を有する。よって、第1導電体4と第2導電体6との間に直流電圧を印加すると、これらの微粒子状不純物は、電界領域15に引き寄せられる。これにより、流体が誘電性構造体U1に供給された際に、微粒子状不純物が貫通孔3の開口付近に付着、および堆積することを抑制でき、例えば、微粒子状不純物が貫通孔3の開口を塞いで、流体が流れにくくなるといったことを抑制することができる。また、第2導電体6の表面に堆積する微粒子状不純物の全体量を低減できることから、流体の圧力損失の増大を抑制でき、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。
【0069】
また、誘電性構造体U1の下流にDPF13を設けて、誘電性構造体U1で発生したプラズマが下流のDPF13に流入する場合、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、プラズマは流れを阻害されること無くDPF13に流入する。その結果、流体中に含まれる微粒子状不純物をDPF13で捕集する場合、高い反応効率で微粒子状不純物の処理が可能となる。
【0070】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態による誘電性構造体の、図2に対応した断面図である。図8において、図2と同一の構成には、同一の符号を付す。図8に示すように、本実施の形態による誘電性構造体U2は、基体2の第1表面S1上に第3導電体16を有する。
この第3導電体16には、第1導電体4に基準電位を供給した場合に、第2導電体6と同様に、交流電位が供給される。すわなち、第1導電体4と第3導電体16との間に交流電圧が印加される。このとき、第3導電体16の表面近傍には沿面放電が発生する。
【0071】
このように第3導電体16を用いて沿面放電を発生させると、誘電性構造体U11の流体流出口においても、処理流体中の微粒状不純物をプラズマと反応させることができる。ここで、第3導電体16は、基体2の貫通孔3に対応する位置に貫通孔を有する平板状の導電体であってよく、単に複数の個片状の導電体であってもよい。
【0072】
また、第3導電体16は、図8に示すように、貫通孔3の貫通方向に垂直な断面積が貫通方向に沿って第1表面S1から離れるに従って小さくなっているとよい。このような形状にすると、流体の流れを阻害することがない上に、プラズマと未反応の微量の微粒子状不純物が放電領域11を通過した場合でも、その粒子状不純物が第1表面S1に堆積しにくくなる。よって、第1表面S1の表面に堆積する微粒子状不純物の全体量を低減できることから、流体の圧力損失の増大を抑制でき、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。
【0073】
なお、貫通孔3の貫通方向に垂直な断面積が貫通方向に沿って第1表面S1から離れるに従って小さくなるように形成するには、金型打抜き工法、レーザー打抜き工法、または切削工法等により、複数のセラミックグリーンシートに径が大から小の異なる貫通孔をあらかじめ形成しておき、形成された貫通孔が大から小径の順に複数のセラミックグリーンシートを積層してプレス機等で加圧するとよい。このようにすると、第2表面S2から第1表面S1に向かって、貫通孔の径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0074】
さらに、他の方法として、セラミックグリーンシートの積層体の所望の位置を第1表面S1側から錐状、または凸状金型等で40℃から100℃程度に加熱しながらプレスすることにより、第2表面S1から第1表面S2に向かって径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0075】
なお、第1導電体4と第3導電体16との間に印加する交流電圧を制御することにより、第1導電体4と第3導電体16との間の領域に対応する貫通孔3内の領域において、沿面放電を発生させることができる。このように第1導電体4と第3導電体16の間においても沿面放電を発生させた場合には、流体中のより多くの微粒子状不純物を反応させることができる。
【0076】
また、第1の実施の形態において述べたように、第1導電体4と第2導電体6との間、および第1導電体4と第3導電体16との間に交流電圧を印加した後、第1導電体4と第2導電体6との間および第1導電体4と第3導電体16の少なくとも一方に直流電圧を印加すれば、帯電した粒子状不純物を基体2の表面に吸着させることができ、流体から粒子状不純物を除去することができる。
【0077】
また、誘電性構造体U2の下流にDPF13および電極14を設けた場合、貫通孔3の貫通方向に垂直な方向において少なくとも第3導電体16の断面積が第1表面S1から離れるに従って小さくなっていると、基体2によって塞がれるDPF13の領域は小さくなる。よって、放電領域11に発生したプラズマがDPF13を通って電極14に引き寄せられるとき、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。すなわち、この効果に関しては、第1表面S1における開口の開口面積と第2表面S2おける開口の開口面積とは同一であってもよい。
【0078】
また、第3導電体16の上記断面積を貫通孔3の貫通方向に沿って略同一とし、第3導電体16の第1表面S1に隣接する面と反対側の面に、さらに誘電性部材を設けてもよい。そして、その誘電性部材は、貫通孔3の貫通方向に垂直な断面積が貫通方向に沿って第1表面S1から離れるに従って小さくなっていることが好ましい。このような構成にすると、第1表面S1の表面に堆積する微粒子状不純物の全体量を低減できることから、流体の圧力損失の増大を抑制でき、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。また、第3導電体16を薄くし、誘電性部材に厚みを持たせることができるため、製造コストも安く抑えることができる。
【0079】
また、この誘電性構造体の下流にDPF13および電極14を設けた場合、貫通孔3の貫通方向に垂直な方向において少なくとも誘電性部材の断面積が第1表面S1から離れるに従って小さくなっていると、基体2によって塞がれるDPF13の領域は小さくなる。よって、放電領域11に発生したプラズマがDPF13を通って電極14に引き寄せられるとき、誘電性構造体U2とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。
【0080】
なお、DPF13を下流に設けた場合の効果に関しては、第1表面S1における開口の開口面積と第2表面S2おける開口の開口面積とが同一であってもよい。その場合でも、誘電性部材の断面積が第1表面S1から離れるに従って小さくなっていると、誘電性構造体U2とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。
【0081】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態による誘電性構造体の断面図である。図9において、図2と同一の構成には、同一の符号を付す。図9に示すように、本実施の形態による誘電性構造体U3は、複数の基体2を配列して形成されている。ここで、誘電性構造体U3は、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔3a,3b,3cを有する複数の基体2a,2b,2cと、各基体2a,2b,2cにおける第1表面と第2表面との間にそれぞれ設けられた第1導電体4a,4b,4cと、各基体2a,2b,2cにおける第2表面上にそれぞれ設けられ、外縁部が第2表面上に位置する第2導電体6a,6b,6cとを有している。複数の基体2a,2b,2cは、第1導電体4a,4b,4cと第2導電体6a,6b,6cが交互に位置するとともに、各基体2に設けられた貫通孔3a,3b,3cが連通するように配列されている。
【0082】
また、各基体2a,2b,2cに設けられた貫通孔3a,3b,3cは、それぞれに第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。これにより、複数の基体2a,2b,2cの配列方向において一方の端部に位置する第1表面S1における貫通孔3a,3b,3cの開口面積は、複数の基体2a,2b,2cの配列方向において他方の端部に位置する第2表面S2における貫通孔3a,3b,3cの開口面積よりも大きく形成されている。
【0083】
なお、このような貫通孔3a,3b,3cを形成するには、誘電性構造体U1,U2,U3それぞれについて、金型打抜き工法、レーザー打抜き工法、または切削工法等により、複数のセラミックグリーンシートに径が大から小の異なる貫通孔をあらかじめ形成しておき、形成された貫通孔が大から小径の順に複数のセラミックグリーンシートを積層してプレス機等で加圧するとよい。このようにすると、第2表面S2から第1表面S1に向かって、貫通孔の径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。このようにして形成された誘電性構造体U1,U2,U3それぞれを連結または接合させることにより、図9に示す形状を形成することができる。
【0084】
さらに、他の方法として、誘電性構造体U1,U2,U3それぞれについて、セラミックグリーンシートの積層体の所望の位置を第1表面S1側から、錐状または凸状金型等で40℃から100℃程度に加熱しながらプレスすることにより、第2表面S1から第1表面S2に向かって径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。このようにして形成された誘電性構造体U1,U2,U3それぞれを連結または接合させることにより、図9に示す形状を形成することができる。
【0085】
ここで、誘電性構造体U3の第1導電体4a,4b,4cおよび第2導電体6a,6b,6cの間に、第1の実施の形態による誘電性構造体U1と同様に交流電圧を印加すると、第1導電体4a,4b,4cと第2導電体6a,6b,6cとの間に放電領域11a,11b,11cが形成される。
【0086】
なお、連通する貫通孔3a,3b,3cからなり、誘電性構造体U1,U2,U3を貫通する貫通孔を、連続貫通孔ということもできる。1つの連続貫通孔は、3つの放電領域11a,11b,11cを有する。
【0087】
このような誘電性構造体U3においては、貫通孔3aに進入する流体中の微粒子状不純物が多い場合は、放電領域11a,11b,11c全てにプラズマを発生させて、流体中の微粒子状不純物の分解および改質を行う。また、貫通孔3aに進入する流体中の微粒子状不純物が少ない場合は、放電領域11a,11b,11cのいずれか1つにプラズマを発生させて、流体中の微粒子状不純物の分解および改質を行う。このように、誘電性構造体U3では、流体中の微粒子状不純物の量に応じて消費電力を適切に制御しつつ、微粒子状不純物の分解および改質を行うことが可能である。
【0088】
また、第1導電体4a,4b,4cおよび第2導電体6a,6b,6cの間に、第1の実施の形態による誘電性構造体U1と同様に直流電圧を印加すると、第1導電体4a,4b,4cと第2導電体6a,6b,6cとの間に電界領域15a,15b,15cが形成される。さらに、誘電性構造体U3の下流にDPF13またはDPF13と電極14とを設けた場合にも、第1の実施の形態で述べた作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0089】
また、誘電性構造体U3では、複数の放電領域11を形成することができるため、流体流出口から排出される処理流体において、プラズマと未反応の微粒子不純物の量を低減できる。また、誘電性構造体U3では、複数の電界領域15を形成することができるため、流体流出口から排出される処理流体において、微粒子不純物の量を低減できる。
【0090】
また、誘電性構造体U3では、第1導電体5a、5b、5cと第2導電体6a、6b、6cとの間に印加する電圧をそれぞれ変化させることができることから、放電領域11a,11b,11cに発生するプラズマ量、プラズマ発生の周波数、及びプラズマ強度を放電領域11a,11b,11c毎に変化させることが可能である。このため、流体中の複数種類の微粒子状不純物に対して異なる分解効率で分解を行うことが可能である。例えば、放電領域11aでは、主にC(すす)を分解し、放電領域11bでは、主にCnHmを分解するといったように、放電領域11a,11b,11cによって分解する物質を異ならせることができる。
【0091】
なお、誘電性構造体U3の下流にDPF13を設けた場合の作用効果は、実施の形態1および実施の形態2で説明した作用効果と同様である。
(第4の実施の形態)
図10は、本発明の第4の実施の形態による誘電性構造体の、図2に対応した断面図である。図10において、図2と同一の構成には、同一の符号を付す。図10に示すように、本実施の形態による誘電性構造体U4は、第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。そして、誘電性構造体U3を貫通孔3の貫通方向に投影したとき貫通方向に沿って離間した貫通孔3の任意の2箇所のうち、配列方向における一方の端部に位置する第2表面S1に近い箇所の内周面の位置が、配列方向における他方の端部に位置する第1表面S1に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側にある。
【0092】
図10に示した誘電性構造体U4によれば、これまで説明した誘電性構造体U1〜U3と異なり、貫通孔3の径が貫通方向に沿って表面S1に向かって段階的に大きくなる。このような場合にも、誘電性構造体U1の流体流入口付近では貫通孔3の径を小さくして、プラズマを密に発生させ、処理流体の反応効率を上げるとともに、流体流出口に近づくにつれて貫通孔3の径を大きくし、処理済の流体を誘電性構造体U1からスムーズに排出させることが可能になる。結果として、処理流体の圧力損失を低減しつつ、消費電力を小さくして、流体中の微粒子状不純物の反応効率を上げることができる。
【0093】
また、貫通孔3の径が漸次大きくなる場合は、よりスムーズに流体を排出することができるが、このように、貫通孔3の径が段階的に大きくなる場合は、貫通孔3の内周面において径が変化する部分に段差ができることから、この段差部分に流体が一時的に溜まりやすくなる。よって、内部に段差部分が位置するように放電領域11を形成すると、流体中の微粒子状不純物を効率よく反応させることができる。また、この段差部分に微粒子状不純物と反応する触媒を担持しておいてもよい。
【0094】
なお、貫通孔3の径を段階的に大きくする形成するには、金型打抜き工法、レーザー打抜き工法、または切削工法等により、複数のセラミックグリーンシートに径が大から小の異なる貫通孔をあらかじめ形成しておき、形成された貫通孔が大から小径の順に複数のセラミックグリーンシートを積層してプレス機等で加圧するとよい。このようにすると、第2表面S2から第1表面S1に向かって、貫通孔の径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。ことにより、貫通孔3の径を段階的に大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0095】
なお、上述の誘電性構造体U1〜U3の下流にDPF13またはDPF13と電極14を設けた場合の作用効果は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0096】
なお、上述の誘電性構造体U1〜U4において、第1導電体4と第2導電体6は、それぞれ少なくとも一部が貫通孔3の内周面に沿った領域を有していれば、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加した場合に、貫通孔3に沿面放電が発生する。よって、第1導電体4と第2導電体6は、必ずしも対向して配置されていなくともよい。しかし、第1導電体4と第2導電体6とを対向させて配置すると、第1導電体4と第2導電体6との間に発生する電界強度がより均一になり、その結果、放電領域11に発生するプラズマ密度もより均一となるため、より安定した微粒子状不純物の分解および改質が可能となる。
【0097】
また、上述の誘電性構造体U1〜U4において、第1導電体4および第2導電体6は、貫通孔3に対応する位置に貫通孔をそれぞれ有した平板状の導体である。このように、平板状の導体であると、第1導電体4および第2導電体6に電圧を印加した場合、電界集中する凸部が低減され、より均一な電界強度を得ることができる。その結果、放電領域11に発生するプラズマ密度もより均一となるため、より安定した微粒子状不純物の分解および改質が可能である。
【0098】
なお、上述の誘電性構造体U1〜U4において、第2導電体6は、貫通孔3に対応する位置以外にも貫通孔を有していてもよい。図11は、そのような場合の誘電性構造体U1の変形例を示す断面図である。図11に示すように、第2導電体6は、貫通孔3に対応する位置に貫通孔7aを有するとともに、別の位置にも貫通孔7bを有する。このような誘電性構造体においては、第2導電体6の貫通孔7bに沿った領域にも、沿面放電を発生させることが可能である。その結果、貫通孔7bの開口部領域に付着、堆積した微粒子状不純物もより効率的に分解、改質することが可能になる。よって、長期使用する場合、振動等で脱落し流体流入口に堆積する可能性のある微粒子状不純物の堆積をあらかじめ除去することができ、長期に渡りより安定した分解、改質効率を得ることが可能である。
【0099】
また、上述の誘電性構造体U1〜U4を、貫通孔3の貫通方向に平面透視したときに、第2導電体6の外縁部は、第1導電体4の外縁部の外側に位置しているが、内側に位置していると、その第2導電体6の外縁部に沿って沿面放電が発生しやすくなる。このように外縁部に沿って沿面放電を生じさせると、第2導電体6の外縁部付近に付着、堆積した微粒子状不純物もより効率的に分解、改質することが可能になる。
【0100】
また、上述の誘電性構造体U1〜U4では、第2導電体6の外縁部が基体2の第2表面S2上に位置しているが、この外縁部が例えば第3表面S3上または第4表面S4上に位置していてもよい。ただし、第2導電体6の外縁部が、流体の流れる方向に垂直な第2表面S2上にあると、流体流入口付近に微粒子状不純物が堆積する可能性をより低減できる。
【0101】
なお、上述の説明において、外部端子8、9、すなわち第1および第2導電体4,6に直流電圧を印加した後、再度交流電圧に切り替えると、再び放電領域11が形成され、基体2の表面に吸着された微粒子状不純物を、プラズマによって分解および改質することができる。
【0102】
このように外部端子8,9に印加する電圧を制御すると、最初の沿面放電において分解できなかった微粒子状不純物も、帯電させて基体2の表面に吸着させた後、再びプラズマにより分解および改質させることができることから、微粒子状不純物の除去をより十分に行うことができる。さらに、基体2に付着した微粒子状不純物も除去することが可能であるから、流体の圧力損失の増大をより抑制することが可能となり、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。
【0103】
なお、上述の説明では、粒子状不純物のみ着目しているが、例えばNOx等の流体中に含まれる他の物質も、放電領域11によりプラズマと反応し、分解および改質が行われる。
【0104】
(第5の実施の形態)
図12は、本発明の第5の実施の形態による誘電性構造体の構成例を示す断面図である。図12では、第1の実施の形態による誘電性構造体U1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。本実施の形態による誘電性構造体U5では、第2導電体6が、第2表面S2ではなく、第1表面S1に設けられている。また、第2導電体6は、貫通孔7の貫通方向に垂直な断面積が貫通方向に沿って第1表面S1から離れるに従って小さくなっている。そして、貫通孔7の径は、第1表面S1から離れるに従って大きくなっている。
【0105】
このとき、外部端子8,9を介して、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧が印加されると、放電領域11および第2導電体6の貫通孔7の開口部領域に沿面放電が発生する。そして、流体供給部12により供給された流体がこの沿面放電領域を通過すると、流体中の粒子状不純物は、プラズマと反応して分解および改質される。しかし、粒子状不純物の一部は分解されずに帯電した状態で残留する。次に、第1導電体4に基準電位が供給され、第1導電体4と第2導電体6との間に直流電圧が印加されると、帯電した粒子状不純物は電界領域15に引き寄せられ、電界領域15に接する基体2の表面に電気的に吸着される。
【0106】
本実施の形態による誘電性構造体U5においては、流体が排出される側の表面に第2導電体6が設けられ、第2導電体6の貫通孔7に沿って、すなわち誘電性構造体U5の流体排出口に沿って沿面放電が発生する。ここで、流体の流れる方向において、誘電性構造体U5の下流側にDPF13、電極22を配置することにより、以下のような動作を実現することができる。まず、第1導電体4に基準電位を供給し、第1導電体4と第2導電体6との間に電源V1により交流電圧を印加して、放電領域11および第2導電体6の貫通孔7の開口部領域に沿面放電を発生させる。そして、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加した状態で、電極22と第1導電体4との間に電源V3を用いて直流電圧を印加する。すると、第2導電体6側に発生したプラズマは、この電極22に引き寄せられて、プラズマ領域が下流側に拡大し、DPF13に流入する。
【0107】
これにより、放電領域11において帯電した粒子状不純物は、電極22に引き寄せられるとともに、DPF13に捕集され、DPF13の内部においてプラズマと反応し、改質される。すなわち、より多くの粒子状不純物を分解、改質させることが可能になる。
【0108】
また、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、プラズマは流れを阻害されること無く、より多くのプラズマがDPF13に流入する。その結果、流体中に含まれる微粒子状不純物をDPF13で捕集する場合、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。
【0109】
また、第2導電体6の貫通孔7の径を第1表面S1から離れるに従って大きくしたことから、流体の流れを阻害することない上に、プラズマと未反応の微量の微粒子状不純物が放電領域11を通過した場合でも、その粒子状不純物が第1表面S1に堆積しにくくなる。よって、第1表面S1の表面に堆積する微粒子状不純物の全体量を低減できることから、流体の圧力損失の増大を抑制でき、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。
【0110】
(第6の実施の形態)
図13は、本発明の第6の実施の形態に係る反応装置100の構造的な構成を示す概念図である。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、第1の実施の形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0111】
反応装置100は、第1の実施の形態の誘電性構造体U1を備え、誘電性構造体U1により被処理流体を処理して排出する装置として構成されている。被処理流体は、例えば、自動車の内燃機関の排気ガスであり、貫通孔3における化学変化によりNOxが改質される。また、例えば、被処理流体は、冷蔵庫やエアコンに冷却媒体として使用されたフロンであり、貫通孔3における化学変化によりフロンが分解される。なお、以下では、反応装置100のうち、誘電性構造体U1以外の部分を、反応装置本体部101ということがある。
【0112】
反応装置本体部101は、被処理流体を供給する流体源103と、流体源103から誘電性構造体U1に被処理流体を導く供給管105と、誘電性構造体U1により処理された被処理流体を排出する排出管107と、被処理流体の流動を制御するための被処理流体用ポンプ109と、冷却媒体を供給する冷媒源111と、冷媒源111から誘電性構造体U1に冷却媒体を導く供給用流動管50A(冷却部の一例)と、誘電性構造体U1から冷媒源111に冷却媒体を導く排出用流動管50Bと、冷却媒体の流動を制御するための冷却媒体用ポンプ113(冷却部の一例)とを備えている。なお、上記流体源103および供給管105は、流体供給部をなす。
【0113】
流体源103は、被処理流体としての排気ガスを排出する自動車の内燃機関等、被処理流体を生成するものである。あるいは、流体源103は、使用済みの冷蔵庫やエアコンの冷却媒体を保持したタンク等、被処理流体を保持するものである。
【0114】
供給管105は、一端側が、流体源103の被処理流体を生成又は保持する空間に連通し、他端側が、誘電性構造体U1の貫通孔3に連通している。供給管105の誘電性構造体U1側は、貫通孔3の数に対応して第1分岐部105aA、第2分岐部105aB、第3分岐部105aC(以下、単に「分岐部105a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部105aA〜第3分岐部105aCは、それぞれ貫通孔3A〜貫通孔3Cに連通している。
【0115】
排出管107は、一端側が、誘電性構造体U1の貫通孔3に、供給管105とは反対側から連通し、他端側が、大気に開放され、又は、処理後の被処理流体を保持若しくは処理後の被処理流体に別の処理を施す不図示の空間に連通している。排出管107の誘電性構造体U1側は、貫通孔3の数に対応して第1分岐部107aA、第2分岐部107a
B、第3分岐部107aC(以下、単に「分岐部107a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部107aA〜第3分岐部107aCは、それぞれ貫通孔3A〜貫通孔3Cに連通している。なお、排出管107は、省略されてもよい。例えば、処理後の被処理流体が貫通孔3から大気へ直接的に排出されてもよい。
【0116】
供給管105及び排出管107は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。供給管105及び排出管107は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。分岐部105a及び分岐部107aと、貫通孔3との接続は、例えば、分岐部105a及び分岐部107aの端部を、基体2における貫通孔3の開口を有していない側面に当接させて、接着剤や螺合部材などの適宜な固定部材により分岐部105a及び分岐部107aと基体2とを固定することにより行われる。なお、分岐部105a及び分岐部107aを貫通孔3に嵌合挿入したり、流出用接続管等の突出した環状部分を貫通孔3の端部に基体2と一体的に形成し、その突出部分を分岐部105a及び分岐部107aに嵌合挿入することにより行われてもよい。
【0117】
被処理流体用ポンプ109は、供給管105及び排出管107の少なくともいずれかに設けられている。図10では、供給管105に設けられた場合を例示している。なお、流体源103が内燃機関である場合など、流体源103の動力により被処理流体が流動される場合には、被処理流体用ポンプ109は省略されてもよい。また、被処理流体用ポンプ109は、誘電性構造体U1に設けることも可能である。被処理流体用ポンプ109は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
冷媒源111は、例えば、熱交換器を含んで構成され、排出用流動管50Bからの冷却媒体の温度を熱交換器により降下させて供給用流動管50Aに供給する。なお、冷媒源111は、冷却媒体を供給することができればよく、排出用流動管50Bからの冷却媒体を受け入れて冷却媒体を循環させるものでなくてもよい。すなわち、排出用流動管50Bからの冷却媒体は、冷媒源111とは異なる場所へ排出されてよい。例えば、冷却媒体として水道水が利用されるような場合に、排出用流動管50Bからの水は、冷媒源111としての水源とは異なる場所へ排出されてよい。逆に、冷却媒体が循環される構成である場合には、冷媒源111は省略されてもよい。
【0118】
供給用流動管50Aは、一端が冷媒源111に連通するとともに、他端が、上述のように、流入用接続管等を介して誘電性構造体U1の貫通孔3(流路)に連通している。排出用流動管50Bは、一端が、基体2に一体的に設けられた流出用接続管等を介して誘電性構造体U1の貫通孔3に連通するとともに、他端が冷媒源111に連通している。流動管50は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。流動管50は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0119】
冷却媒体用ポンプ113は、供給用流動管50A及び排出用流動管50Bの少なくともいずれかに設けられている。図10では、供給用流動管50Aに設けられた場合を例示している。なお、冷媒源111が高位置にあるタンクであり、重力により冷却媒体を流動させることができるなど、適宜に冷却媒体を流動させる動力が得られる場合には、冷却媒体用ポンプ113は省略されてもよい。また、冷却媒体用ポンプ113は、誘電性構造体U1に設けることも可能である。冷却媒体用ポンプ113は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
【0120】
図14は、反応装置100の電気系の構成を示すブロック図である。ここでは、例として、基体2の内部に基体2の温度を検出するための温度検出素子115と、基体2を加熱するためのヒータ116とが設けられているものする。また、基体2の表面に、第1導電鯛4および第2導電体6に電圧を印加するための外部端子8および外部端子9、温度検出素子115からの電気信号を出力ためのセンサ用端子118、ヒータ116に電力を供給するためのヒータ用端子119がそれぞれ露出しているものとする。
【0121】
反応装置本体部101は、導電体用端子117、センサ用端子118、ヒータ用端子119に接続される装置側導電体用端子141、装置側センサ用端子143、装置側ヒータ用端子145を備えている。誘電性構造体U1は、これら端子を介して反応装置本体部101から電力が供給されて駆動制御される。具体的には、以下のとおりである。
【0122】
電源部121は、例えば、バッテリを含んで構成され、バッテリからの直流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。あるいは、商用周波数の交流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。電源部121の電力は、制御部123、放電制御部125、温度検出部127、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109、冷却媒体用ポンプ113に供給される。
【0123】
放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力に変換し、その変換後の電力を装置側導電体用端子141及び導電体用端子117を介して第1導電体4と第2導電体6に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。このとき、放電領域11では、放電制御部125により印加された電圧に応じた量の放電が行われる。
【0124】
また、放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電圧に変換し、その変換後の電力を装置側導電体用端子141及び導電体用端子117を介して第1導電体4と第2導電体6に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。このとき、電界領域15では、放電制御部125により印加された電圧に応じた電位勾配が形成され、電界領域15に帯電した微粒子状不純物を捕集することができる。
【0125】
温度検出部127は、例えば、温度検出素子115が温度変化により抵抗値が変化する抵抗体により構成されている場合、電源部121から供給される電力を適宜な電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側センサ用端子143及びセンサ用端子118を介して温度検出素子115に供給する。そして、温度検出素子115は、温度検出素子115の抵抗値を検出し、その検出した抵抗値に応じた信号を制御部123に出力する。温度検出素子115は、検出した抵抗値に基づいて温度検出素子115の温度を算出し、その算出値に応じた信号を制御部123に出力してもよい。
【0126】
ヒータ駆動部129は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側ヒータ用導電体145及びヒータ用導電体119を介してヒータ116に供給する。ヒータ駆動部129は、例えば、整流回路や変圧器等の電源回路を含んで構成されている。ヒータ116では、ヒータ駆動部129により印加された電圧に応じた量の発熱が行われる。
【0127】
被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113はそれぞれ、例えば、特に図示しないが、ポンプの駆動源としてのモータと、当該モータを駆動するモータドライバとを含んで構成されており、モータドライバは、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力又は直流電力に変換してモータに印加する。モータは、印加された電圧に応じた回転数で回転し、ひいては、印加された電圧に応じた力が被処理流体や冷却媒体に加えられる。
【0128】
入力部131は、ユーザの操作を受け付け、ユーザの操作に応じた信号を制御部123に出力する。例えば、入力部131は、反応装置100の駆動開始操作、駆動停止操作、温度設定や流量制御に係る各種のパラメータの設定操作を受け付け、操作に応じた信号を出力する。入力部131は、例えば、各種スイッチを含んだ制御パネルやキーボードにより構成されている。
【0129】
制御部123は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を備えたコンピュータにより構成されている。制御部123は、温度検出部127や入力部131からの信号に基づいて、放電制御部125、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113に制御信号を出力する。
【0130】
例えば、制御部123は、入力部131から反応装置100の駆動開始操作に応じた信号が入力された場合には、導電体用端子117への電力の供給を開始するように放電制御部125に制御信号を出力し、入力部131から反応装置100の駆動停止操作に応じた信号が入力された場合には、第1導電体4および第2導電体6への電力の供給を停止するように放電制御部125に制御信号を出力する。
【0131】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体U1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、第1導電体4および第2導電体6へ供給する電力を、通常運転時に供給する電力よりも増加させるように、放電制御部125に制御信号を出力し、誘電性構造体U1が目標温度に到達した場合には、第1導電体4および第2導電体6へ供給する電力を通常運転時に供給する電力に維持するように、放電制御部125に制御信号を出力する。
【0132】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体U1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、ヒータ116へ電力を供給し、又は、ヒータ116へ供給する電力を増加させるように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。そして、誘電性構造体U1が目標温度に到達した場合には、ヒータ116へ供給する電力を減少させ、又は、ヒータ116への電力の供給を停止するように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。
【0133】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、誘電性構造体U1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度、あるいは、誘電性構造体U1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の目標温度とを比較し、検出された温度が目標温度よりも高い場合には冷却媒体の流速を高く、低い場合には冷却媒体の流速を低くするように、冷却媒体用ポンプ113へ制御信号を出力する。
【0134】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体U1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、被処理流体の流速を低く、達したと判定した場合は、被処理流体の流速を高くするように、被処理流体用ポンプ109へ制御信号を出力する。
【0135】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、誘電性構造体U1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の温度範囲とを比較し、検出された温度が設定された温度範囲を超えた場合には、不図示の表示装置やスピーカ等の報知部に、異常の発生を報知するように制御信号を出力する。
【0136】
以上の第3の実施の形態によれば、反応装置100は、第1の実施の形態の誘電性構造体U1と、貫通孔3に被処理流体を供給する供給管105と、貫通孔3でプラズマ発生を行なって被処理流体を化学変化させた反応流体を排出するための排出管107とを備えているから、第1の実施の形態と同様に、誘電性構造体U1の耐久性の向上や誘電性構造体U1の小型化の効果が得られ、ひいては、反応装置100の耐久性の向上や小型化の効果が得られる。
【0137】
なお、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述においては、自動車、船舶、発電機等に使用されるディーゼルエンジン等の排気ガスの改質について説明を行っているが、その他の用途に使用される誘電性構造体およびその反応装置に適用しても良い。例えば、消臭、ダイオキシン分解、花粉分解等に使用される空気洗浄機器やプラズマエッチング、薄膜装置等に搭載される誘電性構造体および反応装置等に適用することができる。また、沿面放電により貫通孔3を通過する流体を反応または分解させるための誘電性構造体およびその反応装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1は、本発明の第1の実施の形態による誘電性構造体の正面図であり、図2は、図1におけるA−A’線における断面図である。
【図1】本発明の第1の実施の形態による誘電性構造体U1の正面図である。
【図2】図1におけるA−A’線における断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】第1の実施の形態による誘電性構造体の動作例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態による誘電性構造体の動作例を示す図である。
【図6】第1の実施の形態による誘電性構造体の動作例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態による誘電性構造体の動作例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による誘電性構造体を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態による誘電性構造体を示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態による誘電性構造体を示す断面図である。
【図11】第1乃至第4の実施の形態による誘電性構造体の変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態による誘電性構造体を示す断面図および電気的な接続を示す図である。
【図13】本発明の反応装置の構造的な構成例を示す概念図である。
【図14】図10の反応装置の電気系の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0139】
U1・・・・・・誘電性構造体
2・・・・・・基体
3・・・・・・貫通孔
4・・・・・・第1導電体
5・・・・・・第1導電体の貫通孔
6・・・・・・・第2導電体
7・・・・・・・第2導電体の貫通孔
8、9・・・・・外部端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマ発生体として用いられる誘電性構造体、誘電性構造体を用いた放電装置、流体改質装置、および反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、反応系および光源系の様々な分野で利用されている。例えば、反応系では、窒素酸化物(NOx)分解装置、炭化水素(HC)分解装置、ダイオキシン分解装置、飽和フッ化炭素及び化合物(PFC)分解装置、揮発性有機化合物(VOC)、すす等の粒子状不純物(PM)除去装置、脱臭装置ウイルス除菌装置、オゾン発生装置、またはマイナスイオン発生装置等においてプラズマが利用されている。また、光源系では、例えば、プラズマランプ(蛍光灯、ネオン管など)、エッチング装置用光源、レジスト露光装置用光源、またはプラズマディスプレイにおいてプラズマが利用されている。
【0003】
このプラズマを発生させるプラズマ発生体としては種々の形態があるが、近年においては、プラズマ発生体と金属若しくはセラミックスからなるフィルターとを連結し、供給する流体の流速によってプラズマ発生体内で発生したプラズマをフィルター内に流入させ、連結されたプラズマ発生体とフィルターとを流れる流体をプラズマと反応させるものがある(以降、プラズマ発生体及びフィルター連結方式と呼ぶ。)(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2001−87658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラズマ発生体及びフィルター連結方式では、プラズマ発生体とフィルターとの連結面の形状によっては、プラズマ発生体内で発生したプラズマがフィルター内に均一に流れず、プラズマの分布にばらつきがあった。その結果、流体の反応にばらつきが生じ反応効率が悪くなるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、プラズマ発生体及びフィルター連結方式で用いた場合に流体をできるだけ均一に反応させることが可能な誘電性構造体、誘電性構造体を用いた放電装置、流体改質装置、および反応システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の誘電性構造体は、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、前記誘電体における前記第1表面上、前記第1表面と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体とを有し、前記貫通孔は、前記第1表面における開口の開口面積が、前記第2表面における開口の開口面積よりも大きい開口を有している。この誘電性構造体を第1誘電性構造体という。
【0007】
好ましくは、前記の第1誘電性構造体において、前記貫通孔の貫通方向に投影したとき、前記貫通方向に沿って離間した前記貫通孔における任意の2箇所のうち前記第2表面に近い箇所の内周面の位置が、前記第1表面に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側に有している。この誘電性構造体を第2誘電性構造体という。
【0008】
本発明の誘電性構造体は、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、前記誘電体における前記第1導電体と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と、前記誘電体における前記第1表面上に設けられた第3導電体とを有し、前記第3導電体は、前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面積が、該貫通方向に沿って前記第1表面から離れるに従って小さくなっている。この誘電性構造体を第3誘電性構造体という。
【0009】
本発明の誘電性構造体は、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、前記誘電体における前記第1導電体と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と、前記誘電体における前記第1表面上に設けられた第3導電体と、前記第3導電体において前記第1表面に隣接する面と反対側の面に設けられた誘電性部材とを有し、前記誘電性部材は、前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面積が、該貫通方向に沿って前記第1表面から離れるに従って小さくなっている。この誘電性構造体を第4誘電性構造体という。
【0010】
また、好ましくは、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する複数の誘電体と、前記各誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置している第1導電体と、前記各誘電体における前記第1表面上、前記第1表面と前記第2表面との間、又は前記第2表面上にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体とを有し、複数の前記誘電体は、前記第1導電体と前記第2導電体が交互に位置するとともに、前記各誘電体に設けられた前記貫通孔が連通するように配列されており、前記複数の誘電体の配列方向において一方の端部に位置する前記第1表面における前記貫通孔の開口面積は、前記配列方向において他方の端部に位置する前記第2表面における前記貫通孔の開口面積よりも大きい。この誘電性構造体を第5誘電性構造体という。
【0011】
好ましくは、前記の第5誘電性構造体において、連通した複数の前記貫通孔からなる連続貫通孔の貫通方向に投影したとき、前記貫通方向に沿って離間した前記連続貫通孔における任意の2箇所のうち、前記配列方向における一方の端部に位置する前記第2表面に近い箇所の内周面の位置が、前記配列方向における他方の端部に位置する前記第1表面に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側にある。この誘電性構造体を第6誘電性構造体という。
【0012】
また、好ましくは、前記の第1〜6誘電性構造体のいずれかにおいて、前記第1導電体および前記第2導電体は、前記貫通孔に対応する位置に貫通孔をそれぞれ有した平板状の導体である。この誘電性構造体を第7誘電性構造体という。
【0013】
また、好ましくは、前記の第1〜7誘電性構造体のいずれかおいて、前記貫通孔の貫通方向に投影したときに、前記第2導電体の外縁部は、前記第1導電体の外縁部の内側に位置する。この誘電性構造体を第8誘電性構造体という。
【0014】
また、好ましくは、前記の第1〜8誘電性構造体のいずれかにおいて、前記第2導電体は、前記貫通孔に対応する位置以外にも貫通孔を有する。この誘電性構造体を第9誘電性構造体という
本発明の放電装置は、前記の第1〜9誘電性構造体のいずれかと、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源とを備えた放電装置である。この放電装置を第1放電装置という。
【0015】
好ましくは、前記の第1放電装置は、前記第1導電体と前記第2導電体との間に直流電圧を印加するための第2電源を備えている。この放電装置を第2放電装置という。
【0016】
本発明の放電装置は、前記第3または第4の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源と、前記第1導電体と前記第3導電体との間に交流電圧を印加するための第2電源とを備えている。この放電装置を第3放電装置という。
【0017】
本発明の放電装置は、前記第3または第4の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源と、前記第1導電体と前記第3導電体との間に交流電圧を印加するための第2電源と、前記第1導電体と前記第2導電体の間および前記第1導電体と前記第3導電体の少なくとも一方に直流電圧を印加する第3電源とを備えている。この放電装置を第4放電装置という。
【0018】
本発明の流体改質装置は、第1から第4のいずれかの放電装置と、前記貫通孔における前記第2導電体側から前記第1導電体側に流体を流す流体供給部と、前記放電装置の下流に設けられた集塵部とを備えた流体改質装置である。
【0019】
本発明の反応システムは、前記の第1および3放電装置のいずれかの放電装置と、前記貫通孔における前記第1導電体側から前記第2導電体側に流体を流す流体供給部と、前記誘電性構造体に関して前記流体供給部と反対側に設けられた電極と、前記電極と前記第1導電体との間に直流電位を供給する第3電源と、前記誘電性構造体と前記電極との間に設けられた集塵部とを備えた反応システムである。
【0020】
また、本発明の反応システムは、前記の第2放電装置と、前記貫通孔における前記第1導電体側から前記第2導電体側に流体を流す流体供給部と、前記誘電性構造体に関して前記流体供給部と反対側に設けられた電極と、記誘電性構造体と前記電極との間に設けられた集塵部と、前記第2電源を、前記第1導電体と前記第2導電体との間および前記電極と前記第1導電体との間で切り換える切り換え部とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の誘電性構造体によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0022】
本発明の放電装置によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0023】
本発明の流体改質装置によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0024】
本発明の反応システムによれば、処理流体の圧力損失を低減でき、高効率で処理流体内の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の誘電性構造体の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による誘電性構造体の正面図であり、図2は、図1におけるA−A’線における断面図である。本実施の形態による誘電性構造体U1は、誘電体からなる基体2を備える。この基体2は、対向する第1表面S1および第2表面S2の間を貫通する貫通孔3を有する。基体2の内部には、対向する第1表面S1と第2表面S2との間に第1導電体4が配設される。第1導電体4は、基体2の貫通孔3に対応する位置に貫通孔5を有している。この貫通孔5の径は、基体2の貫通孔3の径よりも大きく、貫通孔5の開口は、貫通孔3の開口に沿って位置している。
【0027】
また、基体2の第2表面S2には第1導電体4に対向して設けられるとともに、外縁部が第2表面S2上に位置する第2導電体6が設けられている。この第2導電体6も、基体2の貫通孔3に対応する位置に貫通孔7を有する。この貫通孔7の径は、基体2の貫通孔3の径と同じか、若しくは貫通孔3の径よりも大きく、貫通孔7の開口は、貫通孔3の開口に沿って位置している。
【0028】
また、貫通孔3は、第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。
【0029】
また、誘電性構造体U1を貫通孔3の貫通方向に投影したとき、貫通方向に沿って離間した貫通孔3の任意の2箇所のうち第2表面S2に近い箇所の内周面の位置が、第1表面S1に近い箇所の内周面の位置より内側に存在するように形成されている。すなわち、基体2を貫通孔3の貫通方向に垂直な面で切断したときの貫通孔3の開口面積は、第2表面S2から第1表面S1に近づくにつれて大きくなる。
【0030】
さらに、基体2の第1表面S1および第2表面S2に垂直な端面S3,S4には、第1導電体4に電力を供給するために第1導電体4と電気的に接続される外部端子8、および第2導電体6に電力を供給するために第2導電体6と電気的に接続される外部端子9がそれぞれ設けられる。
【0031】
本実施の形態による誘電性構造体U1では、第1導電体4に基準電位を供給し、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧、又はパルス電圧を印加することにより、第1導電体4と第2導電体6との間の領域に対応する貫通孔3内の領域、および第2導電体6のエッジ、すなわち貫通孔7の開口部に沿って、沿面放電(プラズマ)を発生させることができる。なお、図3に示すように、第1導電体4と第2導電体6との間の領域に対応する貫通孔3内の領域において、沿面放電が発生する場合、この領域を放電領域11という。
【0032】
基体2は、電気絶縁材料から成り、例えば、セラミックスから成る。具体的に、基体2を製造する場合には、セラミックグリーンシートを準備し、次に準備したセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層し、高温(約1300〜1800℃)で焼成することにより製作される。電気絶縁材料としては、例えば、酸化アルミニウム焼結体(アルミナセラミックス)がある。例えば酸化アルミニウム質焼結体から成るグリーンシートは、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、およびマグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤および溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれを従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法等を採用し、シート状に成形することによって得られる。
【0033】
セラミックグリーンシートの積層体を作製する場合には、セラミックグリーンシートを積層した後圧着を行なう。圧着は3.0〜8.0MPa程度の圧力を加えて行ない、必要に応じて35〜100℃で加熱を行なう。このとき、貫通孔3を形成するために、金型やレーザーを用いてグリーンシートに打ち抜き加工を施す。また、セラミックグリーンシート同士の十分な接着性を得るために、溶剤と樹脂バインダーを混合するなどして作製した接着剤を用いてもよい。なお、電気絶縁材料としては、酸化アルミニウム質焼結体以外にも、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、コーディライト質焼結体、または炭化珪素質焼結体等が挙げられる。
【0034】
また、第1表面S1における貫通孔開口の開口面積を、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きく形成するには、金型打抜き工法、レーザー打抜き工法、または切削工法等により、複数のセラミックグリーンシートに径が大から小の異なる貫通孔をあらかじめ形成しておき、形成された貫通孔が大から小の径の順に複数のセラミックグリーンシートを積層してプレス機等で加圧するとよい。このようにすると、第2表面S2から第1表面S1に向かって、貫通孔の径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0035】
また、他の方法として、セラミックグリーンシートが複数積層された積層体の所望の位置をテーパドリル等で第1表面S1側から切削することにより、第2表面S2から第1表面S1に向かって径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0036】
さらに、他の方法として、セラミックグリーンシートの積層体の所望の位置を第1表面S1側から、錐状または凸状金型等で40℃から100℃程度に加熱しながらプレスすることにより、第2表面S1から第1表面S2に向かって径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0037】
本実施の形態による誘電性構造体U1においては、第1導電体4は、基体2内に保持されており、第1導電体4には貫通孔3に対応する位置に貫通孔5が設けられている。また、第2導電体6は、基体2の第2表面S2上に保持されており、第2導電体6には貫通孔3に対応する位置に貫通孔7が設けられている。このため、第1導電体4に基準電位を供給し、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加することにより、貫通孔3の放電領域11および第2導電体6の貫通孔7の開口部に沿った領域(以下、「開口部領域」ともいう。)に沿面放電(プラズマ)を発生させることができる。これにより、第2表面S2側から貫通孔3に供給された流体を、第2導電体6の貫通孔7の開口部領域、および放電領域11において、プラズマと反応させることができる。これにより、流体内の微粒子状不純物とプラズマとを反応させることができる。
【0038】
なお、第1導電体5、第1導電体4、および第2導電体6はそれぞれ、その端部が基体2の外表面近傍まで導出されており、対応する外部端子8,9に直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。
【0039】
第1導電体4および第2導電体6は、タングステン、モリブデン、白金、銅、または銀等の金属粉末導電体からなる。第1導電体4および第2導電体6は、スクリーン印刷法等の印刷手段を用いて、基体2用のセラミックグリーンシートの所定の位置に導電体ペーストを所望の形状に印刷塗布し、基体2用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって基体2の内部に所定のパターンに形成することができる。導電体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダーおよび有機溶剤、並びに必要に応じて分散剤等を加えて、ボールミル、三本ロールミル、またはプラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することにより製作される。導電体ペーストには、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼結後の基体2との接合強度を高めたりするためにガラスやセラミックスの粉末を添加しても良い。
【0040】
次に、基体2の外表面には、外部端子8、9が形成されている。外部端子8、9は、外部電源から第1導電体4および第2導電体6に電圧を印加するための導電路として機能し、基体2の外表面に導出された第1導電体4および第2導電体6のそれぞれに電気的に接続されている。外部端子8、9は、タングステン、モリブデン、白金、銅、または銀等の金属粉末導電体からなり、スクリーン印刷や吹付け印刷法等の印刷手段を用いて、基体2用のセラミックグリーンシートの所定の位置に導電体ペーストを印刷塗布し、基体2用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって誘電性構造体U1の所定の位置に形成することができる。
【0041】
なお、第1導電体4、第2導電体6、および外部端子8,9は、基体2用のセラミックグリーンシートに、第1導電体4および第2導電体6用の導体ペースト、並びに外部端子8,9用の導電体ペーストを塗布して同時焼成することにより形成することができる。また、他の製造方法としては基体2用のセラミックグリーンシートと第1導電体4および第2導電体6用の導電体ペーストとを同時焼成し、その後、外部端子8、9用の導電体ペーストを所望の位置に印刷塗布し焼成することにより、外部端子8、9を誘電性構造体U1の所定の位置に形成することができる。
【0042】
外部端子8、9の導電体ペーストは、第1導電体4および第2導電体6の導電体ペーストと同様にして作製されるが、有機バインダーおよび有機溶剤の量により印刷に適した粘度に調整される。
【0043】
なお、外部端子8、9の露出する表面には、ニッケルまたは金等の耐蝕性に優れる金属をめっき法若しくは蒸着法にて形成しておくことが好ましい。なお、外部端子8、9が酸化腐食するのを抑制するとともに、外部端子8、9と外部電源の電源端子との接合を強固なものとするために、厚みが1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚みが0.1〜3μm程度の金めっき層とが順次形成されていることが好ましい。なお、外部端子8、9においても、上述と同様に、高温下にて使用する場合には、ニッケルまたは金等の耐蝕性に優れる金属を単層で形成着しておいても構わない。
【0044】
あるいは、外部端子8、9は、基体2用のセラミックグリーンシートの焼成後に、所定の位置に貼り付けられた鉄−ニッケル合金、鉄−ニッケル−コバルト合金、白金、銅、または銀等からなる金属板でもよい。例えば銀と銅を主成分とするロウ材、または比較的低温下にて使用する場合には錫若しくは銀を主成分としたロウ材を基体2用のセラミックグリーンシートの焼成後に所望の位置に印刷塗布し、ロウ材と同じ位置に金属板を位置決め固定する。その後、ロウ材の溶融温度にてブレージングまたはリフローを行うことで基体2に形成された外部端子8、9に接合することができる。また、更に低温下にて使用する場合には、銀などの金属粉末とエポキシ等の樹脂と有機溶剤を混練しペースト状とした導電性ペーストを使用しても良い。
【0045】
そして、外部交流電源の基準電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子8に電気的に接続し、高電圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子9に電気的に接続して交流高電圧を印加すると、放電領域11に沿面放電を発生させることができる。
【0046】
また、外部直流電源の基準電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子8に電気的に接続し、高電圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子9に電気的に接続して直流高電圧を印加すると、電界領域15を形成することができる。
【0047】
以下に、誘電性構造体U1の外部端子8,9間に電圧が印加され、貫通孔3に流体が供給された場合の誘電性構造体U1の動作について、図4を参照して説明する。まず、第1導電体4と第2導電体6との間に電源V1により交流電圧を印加して、放電領域11に沿面放電を発生させる。そして、誘電性構造体U1の貫通孔3に、第2導電体6が形成されている第2表面S2側の開口部から、流体供給部13により流体が供給されると、流体内の微粒子状不純物は、放電領域11において沿面放電領域を通過することとなり、プラズマ(励起電子)授受によって分解される。
【0048】
例えば、C(すす)は、酸素濃度が10%程度以上の酸素条件下において、下記の式(1)に示された反応により酸化改質して、CO2が生成される。
【0049】
C+O2→ CO2・・・・・・・・・・(1)
また、例えば、CnHm(有機物)は、酸素濃度が10%程度以上の酸素条件下において、下記の式(2)に示された反応により酸化改質して、CO2及びH2Oが生成される。
【0050】
CnHm+2O2→ Cn−1Hm−4+CO2+2H2O・・・(2)
なお、第1導電体4と第2導電体6との間に沿面放電を発生させるために、第1導電体4と第2導電体6との間には周波数の高い交流電圧が印加される。印加される交流電圧は、必要とされる沿面放電の強度等によって適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のC(すす)を改質する誘電性構造体U1において印加される交流電圧の周波数は、例えば、1kHz〜100MHzである。
【0051】
また、第1導電体4と第2導電体6との間に印加する電圧は、交流電圧以外に、パルス電圧であってもよい。なお、交流電圧は、正弦波電圧に限らず、矩形波電圧若しくは方形波電圧等であってよい。
【0052】
上述のように、本実施の形態による誘電性構造体U1は、流体が供給される側の表面に第2導電体6が設けられ、第2導電体6の貫通孔7に沿って、すなわち誘電性構造体U1の流体流入口に沿って沿面放電が発生することから、流体中の微粒子状不純物は、誘電性構造体U1の流体流入口においてプラズマと反応する。これにより、流体が留まり易い第2表面S2において流体中の微粒子状不純物をプラズマと反応させることができ、微粒子状不純物の反応効率を上げることができる。
【0053】
また、誘電性構造体U1の貫通孔3は、第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。また、誘電性構造体U1を貫通孔3の貫通方向に投影したとき、貫通方向に沿って離間した貫通孔3の任意の2箇所のうち第2表面S2に近い箇所の内周面の位置が、第1表面S1に近い箇所の内周面より内側に存在するように形成され、流体の下流側に向かって貫通孔3の径が漸次大きくなる。これにより、誘電性構造体U1の流体流入口付近では貫通孔3の径を小さくして、プラズマを密に発生させ、処理流体の反応効率を上げるとともに、流体流出口に近づくにつれて貫通孔3の径を大きくし、処理済の流体を誘電性構造体U1からスムーズに排出させることが可能になる。結果として、処理流体の圧力損失を低減しつつ、消費電力を小さくして、流体中の微粒子状不純物の反応効率を上げることができる。
【0054】
なお、図1〜図4に示した誘電性構造体U1では、第2導電体6を第2表面S2上に設けたが、基体2における第1導電体5と第2表面S2との間に設けてもよい。その場合にも、処理流体の圧力損失を低減しつつ、消費電力を小さくして、流体中の微粒状不純物の反応効率を上げることができる。また、第2導電体6を基体2の内部に設けるために、第2導電体6の処理流体およびプラズマによる腐食を抑制することができる。
【0055】
さらに、図5に示すように、誘電性構造体U1の下流にDPF(Diesel particulate filter)13を設けて、流体中に含まれる微粒子状不純物をさらに捕集する場合、誘電性構造体U1の貫通孔3の第1表面S1における開口の開口面積が大きいことから、単位時間当たりにDPF13に流れる流体の量が多くなるため、捕集効率を上げることができる。
【0056】
また、誘電性構造体U1で発生したプラズマが下流のDPF13に流入する場合、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、プラズマは流れを阻害されること無くDPF13に流入する。その結果、流体中に含まれる微粒子状不純物をDPF13で捕集する場合、高い反応効率で微粒子状不純物の処理が可能となる。
【0057】
また、図6のように、DPF13の下流に電極14を設けて、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加した後、第1導電体4と電極14との間に直流電圧を印加すると、放電領域11において帯電した微粒子状不純物がDPF13に引き寄せられ、DPF13の捕集効率をさらに上げることができる。加えて、放電領域11に発生したプラズマが、電極14に引き寄せられて、プラズマ領域が下流側に拡大する。これにより、放電領域11において帯電した粒子状不純物が、DPF13に捕集されるとともに、そのDPF13において粒子状不純物がプラズマと反応し、改質される。結果として、より多くの粒子状不純物を分解、改質させることが可能になる。
【0058】
また、誘電性構造体U1で発生したプラズマが電極14に引き寄せられて下流のDPF13に流入する場合、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、プラズマは流れを阻害されること無く、より多くのプラズマがDPF13に流入する。その結果、流体中に含まれる微粒子状不純物をDPF13で捕集する場合、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。
【0059】
さらに、本実施の形態による誘電性構造体U1によれば、誘電性構造体U1の第1導電体4と第2導電体6との間に直流電圧を印加することもできる。例えば図7に示すように、第1導電体4に基準電位を供給し、第1導電体4と第2導電体6との間に直流高電圧を印加することにより、基体2内部における第1導電体4と第2導電体6との間の領域に対応する貫通孔3内の領域に強電界を発生させることができる。なお、第1導電体4と第2導電体6との間の領域に対応する貫通孔3内の領域において、強電界が発生する場合、この領域を電界領域15という。
【0060】
ここで、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加した後に直流電圧を印加すると、放電領域11においてプラズマとの反応により正または負に帯電した微粒子状不純物は、電界領域15に電気的に引き寄せられ、電界領域15に接する基体2の表面に電気的に吸着される。これにより、貫通孔3の内部を通過する流体から微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0061】
以下に、誘電性構造体U1の外部端子8,9間に電圧が印加され、貫通孔3に流体が供給された場合の誘電性構造体U1の動作について、図7を参照して説明する。まず、第1導電体4と第2導電体6との間に電源V1により交流電圧を印加して、放電領域11に沿面放電を発生させる。そして、誘電性構造体U1の貫通孔3に、第2導電体6が形成されている第2表面S2側の開口部から、流体供給部13により流体が供給されると、流体中に含まれるNOx等の物質が、放電領域11によりプラズマと反応し、分解および改質が行われる。
【0062】
また、流体内の微粒子状不純物は、放電領域11において沿面放電領域を通過することとなり、プラズマ(励起電子)授受によって分解される。
【0063】
例えば、C(すす)は、酸素濃度が10%程度以上の酸素条件下において、下記の式(1)に示された反応により酸化改質して、CO2が生成される。
【0064】
C+O2→ CO2・・・・・・・・・・(1)
また、例えば、CnHm(有機物)は、酸素濃度が10%程度以上の酸素条件下において、下記の式(2)に示された反応により酸化改質して、CO2及びH2Oが生成される。
【0065】
CnHm+2O2→ Cn−1Hm−4+CO2+2H2O・・・(2)
さらに、流体中の微粒子状不純物の一部は、プラズマによって正または負に帯電される。
【0066】
次に、外部端子8、9を電源V2に接続して、外部端子8,9に印加する電圧を直流高電圧に切り替えることにより、帯電した微粒子状不純物を電界領域15に引き寄せ、第2導電体6および第2導電体6近傍の基体2の表面に、その帯電した微粒子状不純物を電気的に吸着させることができる。これにより、流体中の微粒子状不純物を取り除くことができる。
【0067】
ここで、第1導電体4と第2導電体6との間に直流電圧を印加する場合、直流電圧は、必要とされる電界強度の大きさ等により適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のC(すす)を放電領域11にて帯電させ、その後、第2導電体6および第2導電体6近傍の基体2の表面に帯電したC(すす)を電気的に吸着されるときに印加される直流電圧の大きさは、1kV〜50kVあるいは−50kV〜−1kVである。また、すすは、一般的に、放電領域11において負に帯電するため、第1導電体4に基準電位である接地電位を供給し、第2導電体6に正の電位を供給すると、すすは、第2導電体6および第2導電体6近傍の基体2の表面に電気的に吸着される。
【0068】
誘電性構造体U1は、流体が供給される側の表面に第2導電体6が設けられ、第2導電体6の貫通孔7に沿って、すなわち誘電性構造体U1の流体流入口に沿って沿面放電が発生することから、流体中の微粒子状不純物は、誘電性構造体U1の流体流入口においてプラズマと反応して電荷を有する。よって、第1導電体4と第2導電体6との間に直流電圧を印加すると、これらの微粒子状不純物は、電界領域15に引き寄せられる。これにより、流体が誘電性構造体U1に供給された際に、微粒子状不純物が貫通孔3の開口付近に付着、および堆積することを抑制でき、例えば、微粒子状不純物が貫通孔3の開口を塞いで、流体が流れにくくなるといったことを抑制することができる。また、第2導電体6の表面に堆積する微粒子状不純物の全体量を低減できることから、流体の圧力損失の増大を抑制でき、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。
【0069】
また、誘電性構造体U1の下流にDPF13を設けて、誘電性構造体U1で発生したプラズマが下流のDPF13に流入する場合、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、プラズマは流れを阻害されること無くDPF13に流入する。その結果、流体中に含まれる微粒子状不純物をDPF13で捕集する場合、高い反応効率で微粒子状不純物の処理が可能となる。
【0070】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態による誘電性構造体の、図2に対応した断面図である。図8において、図2と同一の構成には、同一の符号を付す。図8に示すように、本実施の形態による誘電性構造体U2は、基体2の第1表面S1上に第3導電体16を有する。
この第3導電体16には、第1導電体4に基準電位を供給した場合に、第2導電体6と同様に、交流電位が供給される。すわなち、第1導電体4と第3導電体16との間に交流電圧が印加される。このとき、第3導電体16の表面近傍には沿面放電が発生する。
【0071】
このように第3導電体16を用いて沿面放電を発生させると、誘電性構造体U11の流体流出口においても、処理流体中の微粒状不純物をプラズマと反応させることができる。ここで、第3導電体16は、基体2の貫通孔3に対応する位置に貫通孔を有する平板状の導電体であってよく、単に複数の個片状の導電体であってもよい。
【0072】
また、第3導電体16は、図8に示すように、貫通孔3の貫通方向に垂直な断面積が貫通方向に沿って第1表面S1から離れるに従って小さくなっているとよい。このような形状にすると、流体の流れを阻害することがない上に、プラズマと未反応の微量の微粒子状不純物が放電領域11を通過した場合でも、その粒子状不純物が第1表面S1に堆積しにくくなる。よって、第1表面S1の表面に堆積する微粒子状不純物の全体量を低減できることから、流体の圧力損失の増大を抑制でき、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。
【0073】
なお、貫通孔3の貫通方向に垂直な断面積が貫通方向に沿って第1表面S1から離れるに従って小さくなるように形成するには、金型打抜き工法、レーザー打抜き工法、または切削工法等により、複数のセラミックグリーンシートに径が大から小の異なる貫通孔をあらかじめ形成しておき、形成された貫通孔が大から小径の順に複数のセラミックグリーンシートを積層してプレス機等で加圧するとよい。このようにすると、第2表面S2から第1表面S1に向かって、貫通孔の径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0074】
さらに、他の方法として、セラミックグリーンシートの積層体の所望の位置を第1表面S1側から錐状、または凸状金型等で40℃から100℃程度に加熱しながらプレスすることにより、第2表面S1から第1表面S2に向かって径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0075】
なお、第1導電体4と第3導電体16との間に印加する交流電圧を制御することにより、第1導電体4と第3導電体16との間の領域に対応する貫通孔3内の領域において、沿面放電を発生させることができる。このように第1導電体4と第3導電体16の間においても沿面放電を発生させた場合には、流体中のより多くの微粒子状不純物を反応させることができる。
【0076】
また、第1の実施の形態において述べたように、第1導電体4と第2導電体6との間、および第1導電体4と第3導電体16との間に交流電圧を印加した後、第1導電体4と第2導電体6との間および第1導電体4と第3導電体16の少なくとも一方に直流電圧を印加すれば、帯電した粒子状不純物を基体2の表面に吸着させることができ、流体から粒子状不純物を除去することができる。
【0077】
また、誘電性構造体U2の下流にDPF13および電極14を設けた場合、貫通孔3の貫通方向に垂直な方向において少なくとも第3導電体16の断面積が第1表面S1から離れるに従って小さくなっていると、基体2によって塞がれるDPF13の領域は小さくなる。よって、放電領域11に発生したプラズマがDPF13を通って電極14に引き寄せられるとき、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。すなわち、この効果に関しては、第1表面S1における開口の開口面積と第2表面S2おける開口の開口面積とは同一であってもよい。
【0078】
また、第3導電体16の上記断面積を貫通孔3の貫通方向に沿って略同一とし、第3導電体16の第1表面S1に隣接する面と反対側の面に、さらに誘電性部材を設けてもよい。そして、その誘電性部材は、貫通孔3の貫通方向に垂直な断面積が貫通方向に沿って第1表面S1から離れるに従って小さくなっていることが好ましい。このような構成にすると、第1表面S1の表面に堆積する微粒子状不純物の全体量を低減できることから、流体の圧力損失の増大を抑制でき、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。また、第3導電体16を薄くし、誘電性部材に厚みを持たせることができるため、製造コストも安く抑えることができる。
【0079】
また、この誘電性構造体の下流にDPF13および電極14を設けた場合、貫通孔3の貫通方向に垂直な方向において少なくとも誘電性部材の断面積が第1表面S1から離れるに従って小さくなっていると、基体2によって塞がれるDPF13の領域は小さくなる。よって、放電領域11に発生したプラズマがDPF13を通って電極14に引き寄せられるとき、誘電性構造体U2とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。
【0080】
なお、DPF13を下流に設けた場合の効果に関しては、第1表面S1における開口の開口面積と第2表面S2おける開口の開口面積とが同一であってもよい。その場合でも、誘電性部材の断面積が第1表面S1から離れるに従って小さくなっていると、誘電性構造体U2とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。
【0081】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態による誘電性構造体の断面図である。図9において、図2と同一の構成には、同一の符号を付す。図9に示すように、本実施の形態による誘電性構造体U3は、複数の基体2を配列して形成されている。ここで、誘電性構造体U3は、第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔3a,3b,3cを有する複数の基体2a,2b,2cと、各基体2a,2b,2cにおける第1表面と第2表面との間にそれぞれ設けられた第1導電体4a,4b,4cと、各基体2a,2b,2cにおける第2表面上にそれぞれ設けられ、外縁部が第2表面上に位置する第2導電体6a,6b,6cとを有している。複数の基体2a,2b,2cは、第1導電体4a,4b,4cと第2導電体6a,6b,6cが交互に位置するとともに、各基体2に設けられた貫通孔3a,3b,3cが連通するように配列されている。
【0082】
また、各基体2a,2b,2cに設けられた貫通孔3a,3b,3cは、それぞれに第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。これにより、複数の基体2a,2b,2cの配列方向において一方の端部に位置する第1表面S1における貫通孔3a,3b,3cの開口面積は、複数の基体2a,2b,2cの配列方向において他方の端部に位置する第2表面S2における貫通孔3a,3b,3cの開口面積よりも大きく形成されている。
【0083】
なお、このような貫通孔3a,3b,3cを形成するには、誘電性構造体U1,U2,U3それぞれについて、金型打抜き工法、レーザー打抜き工法、または切削工法等により、複数のセラミックグリーンシートに径が大から小の異なる貫通孔をあらかじめ形成しておき、形成された貫通孔が大から小径の順に複数のセラミックグリーンシートを積層してプレス機等で加圧するとよい。このようにすると、第2表面S2から第1表面S1に向かって、貫通孔の径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。このようにして形成された誘電性構造体U1,U2,U3それぞれを連結または接合させることにより、図9に示す形状を形成することができる。
【0084】
さらに、他の方法として、誘電性構造体U1,U2,U3それぞれについて、セラミックグリーンシートの積層体の所望の位置を第1表面S1側から、錐状または凸状金型等で40℃から100℃程度に加熱しながらプレスすることにより、第2表面S1から第1表面S2に向かって径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。このようにして形成された誘電性構造体U1,U2,U3それぞれを連結または接合させることにより、図9に示す形状を形成することができる。
【0085】
ここで、誘電性構造体U3の第1導電体4a,4b,4cおよび第2導電体6a,6b,6cの間に、第1の実施の形態による誘電性構造体U1と同様に交流電圧を印加すると、第1導電体4a,4b,4cと第2導電体6a,6b,6cとの間に放電領域11a,11b,11cが形成される。
【0086】
なお、連通する貫通孔3a,3b,3cからなり、誘電性構造体U1,U2,U3を貫通する貫通孔を、連続貫通孔ということもできる。1つの連続貫通孔は、3つの放電領域11a,11b,11cを有する。
【0087】
このような誘電性構造体U3においては、貫通孔3aに進入する流体中の微粒子状不純物が多い場合は、放電領域11a,11b,11c全てにプラズマを発生させて、流体中の微粒子状不純物の分解および改質を行う。また、貫通孔3aに進入する流体中の微粒子状不純物が少ない場合は、放電領域11a,11b,11cのいずれか1つにプラズマを発生させて、流体中の微粒子状不純物の分解および改質を行う。このように、誘電性構造体U3では、流体中の微粒子状不純物の量に応じて消費電力を適切に制御しつつ、微粒子状不純物の分解および改質を行うことが可能である。
【0088】
また、第1導電体4a,4b,4cおよび第2導電体6a,6b,6cの間に、第1の実施の形態による誘電性構造体U1と同様に直流電圧を印加すると、第1導電体4a,4b,4cと第2導電体6a,6b,6cとの間に電界領域15a,15b,15cが形成される。さらに、誘電性構造体U3の下流にDPF13またはDPF13と電極14とを設けた場合にも、第1の実施の形態で述べた作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0089】
また、誘電性構造体U3では、複数の放電領域11を形成することができるため、流体流出口から排出される処理流体において、プラズマと未反応の微粒子不純物の量を低減できる。また、誘電性構造体U3では、複数の電界領域15を形成することができるため、流体流出口から排出される処理流体において、微粒子不純物の量を低減できる。
【0090】
また、誘電性構造体U3では、第1導電体5a、5b、5cと第2導電体6a、6b、6cとの間に印加する電圧をそれぞれ変化させることができることから、放電領域11a,11b,11cに発生するプラズマ量、プラズマ発生の周波数、及びプラズマ強度を放電領域11a,11b,11c毎に変化させることが可能である。このため、流体中の複数種類の微粒子状不純物に対して異なる分解効率で分解を行うことが可能である。例えば、放電領域11aでは、主にC(すす)を分解し、放電領域11bでは、主にCnHmを分解するといったように、放電領域11a,11b,11cによって分解する物質を異ならせることができる。
【0091】
なお、誘電性構造体U3の下流にDPF13を設けた場合の作用効果は、実施の形態1および実施の形態2で説明した作用効果と同様である。
(第4の実施の形態)
図10は、本発明の第4の実施の形態による誘電性構造体の、図2に対応した断面図である。図10において、図2と同一の構成には、同一の符号を付す。図10に示すように、本実施の形態による誘電性構造体U4は、第1表面S1における開口の開口面積が、第2表面S2における開口の開口面積よりも大きい。そして、誘電性構造体U3を貫通孔3の貫通方向に投影したとき貫通方向に沿って離間した貫通孔3の任意の2箇所のうち、配列方向における一方の端部に位置する第2表面S1に近い箇所の内周面の位置が、配列方向における他方の端部に位置する第1表面S1に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側にある。
【0092】
図10に示した誘電性構造体U4によれば、これまで説明した誘電性構造体U1〜U3と異なり、貫通孔3の径が貫通方向に沿って表面S1に向かって段階的に大きくなる。このような場合にも、誘電性構造体U1の流体流入口付近では貫通孔3の径を小さくして、プラズマを密に発生させ、処理流体の反応効率を上げるとともに、流体流出口に近づくにつれて貫通孔3の径を大きくし、処理済の流体を誘電性構造体U1からスムーズに排出させることが可能になる。結果として、処理流体の圧力損失を低減しつつ、消費電力を小さくして、流体中の微粒子状不純物の反応効率を上げることができる。
【0093】
また、貫通孔3の径が漸次大きくなる場合は、よりスムーズに流体を排出することができるが、このように、貫通孔3の径が段階的に大きくなる場合は、貫通孔3の内周面において径が変化する部分に段差ができることから、この段差部分に流体が一時的に溜まりやすくなる。よって、内部に段差部分が位置するように放電領域11を形成すると、流体中の微粒子状不純物を効率よく反応させることができる。また、この段差部分に微粒子状不純物と反応する触媒を担持しておいてもよい。
【0094】
なお、貫通孔3の径を段階的に大きくする形成するには、金型打抜き工法、レーザー打抜き工法、または切削工法等により、複数のセラミックグリーンシートに径が大から小の異なる貫通孔をあらかじめ形成しておき、形成された貫通孔が大から小径の順に複数のセラミックグリーンシートを積層してプレス機等で加圧するとよい。このようにすると、第2表面S2から第1表面S1に向かって、貫通孔の径が大きくなる貫通孔3を得ることができる。ことにより、貫通孔3の径を段階的に大きくなる貫通孔3を得ることができる。
【0095】
なお、上述の誘電性構造体U1〜U3の下流にDPF13またはDPF13と電極14を設けた場合の作用効果は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0096】
なお、上述の誘電性構造体U1〜U4において、第1導電体4と第2導電体6は、それぞれ少なくとも一部が貫通孔3の内周面に沿った領域を有していれば、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加した場合に、貫通孔3に沿面放電が発生する。よって、第1導電体4と第2導電体6は、必ずしも対向して配置されていなくともよい。しかし、第1導電体4と第2導電体6とを対向させて配置すると、第1導電体4と第2導電体6との間に発生する電界強度がより均一になり、その結果、放電領域11に発生するプラズマ密度もより均一となるため、より安定した微粒子状不純物の分解および改質が可能となる。
【0097】
また、上述の誘電性構造体U1〜U4において、第1導電体4および第2導電体6は、貫通孔3に対応する位置に貫通孔をそれぞれ有した平板状の導体である。このように、平板状の導体であると、第1導電体4および第2導電体6に電圧を印加した場合、電界集中する凸部が低減され、より均一な電界強度を得ることができる。その結果、放電領域11に発生するプラズマ密度もより均一となるため、より安定した微粒子状不純物の分解および改質が可能である。
【0098】
なお、上述の誘電性構造体U1〜U4において、第2導電体6は、貫通孔3に対応する位置以外にも貫通孔を有していてもよい。図11は、そのような場合の誘電性構造体U1の変形例を示す断面図である。図11に示すように、第2導電体6は、貫通孔3に対応する位置に貫通孔7aを有するとともに、別の位置にも貫通孔7bを有する。このような誘電性構造体においては、第2導電体6の貫通孔7bに沿った領域にも、沿面放電を発生させることが可能である。その結果、貫通孔7bの開口部領域に付着、堆積した微粒子状不純物もより効率的に分解、改質することが可能になる。よって、長期使用する場合、振動等で脱落し流体流入口に堆積する可能性のある微粒子状不純物の堆積をあらかじめ除去することができ、長期に渡りより安定した分解、改質効率を得ることが可能である。
【0099】
また、上述の誘電性構造体U1〜U4を、貫通孔3の貫通方向に平面透視したときに、第2導電体6の外縁部は、第1導電体4の外縁部の外側に位置しているが、内側に位置していると、その第2導電体6の外縁部に沿って沿面放電が発生しやすくなる。このように外縁部に沿って沿面放電を生じさせると、第2導電体6の外縁部付近に付着、堆積した微粒子状不純物もより効率的に分解、改質することが可能になる。
【0100】
また、上述の誘電性構造体U1〜U4では、第2導電体6の外縁部が基体2の第2表面S2上に位置しているが、この外縁部が例えば第3表面S3上または第4表面S4上に位置していてもよい。ただし、第2導電体6の外縁部が、流体の流れる方向に垂直な第2表面S2上にあると、流体流入口付近に微粒子状不純物が堆積する可能性をより低減できる。
【0101】
なお、上述の説明において、外部端子8、9、すなわち第1および第2導電体4,6に直流電圧を印加した後、再度交流電圧に切り替えると、再び放電領域11が形成され、基体2の表面に吸着された微粒子状不純物を、プラズマによって分解および改質することができる。
【0102】
このように外部端子8,9に印加する電圧を制御すると、最初の沿面放電において分解できなかった微粒子状不純物も、帯電させて基体2の表面に吸着させた後、再びプラズマにより分解および改質させることができることから、微粒子状不純物の除去をより十分に行うことができる。さらに、基体2に付着した微粒子状不純物も除去することが可能であるから、流体の圧力損失の増大をより抑制することが可能となり、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。
【0103】
なお、上述の説明では、粒子状不純物のみ着目しているが、例えばNOx等の流体中に含まれる他の物質も、放電領域11によりプラズマと反応し、分解および改質が行われる。
【0104】
(第5の実施の形態)
図12は、本発明の第5の実施の形態による誘電性構造体の構成例を示す断面図である。図12では、第1の実施の形態による誘電性構造体U1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。本実施の形態による誘電性構造体U5では、第2導電体6が、第2表面S2ではなく、第1表面S1に設けられている。また、第2導電体6は、貫通孔7の貫通方向に垂直な断面積が貫通方向に沿って第1表面S1から離れるに従って小さくなっている。そして、貫通孔7の径は、第1表面S1から離れるに従って大きくなっている。
【0105】
このとき、外部端子8,9を介して、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧が印加されると、放電領域11および第2導電体6の貫通孔7の開口部領域に沿面放電が発生する。そして、流体供給部12により供給された流体がこの沿面放電領域を通過すると、流体中の粒子状不純物は、プラズマと反応して分解および改質される。しかし、粒子状不純物の一部は分解されずに帯電した状態で残留する。次に、第1導電体4に基準電位が供給され、第1導電体4と第2導電体6との間に直流電圧が印加されると、帯電した粒子状不純物は電界領域15に引き寄せられ、電界領域15に接する基体2の表面に電気的に吸着される。
【0106】
本実施の形態による誘電性構造体U5においては、流体が排出される側の表面に第2導電体6が設けられ、第2導電体6の貫通孔7に沿って、すなわち誘電性構造体U5の流体排出口に沿って沿面放電が発生する。ここで、流体の流れる方向において、誘電性構造体U5の下流側にDPF13、電極22を配置することにより、以下のような動作を実現することができる。まず、第1導電体4に基準電位を供給し、第1導電体4と第2導電体6との間に電源V1により交流電圧を印加して、放電領域11および第2導電体6の貫通孔7の開口部領域に沿面放電を発生させる。そして、第1導電体4と第2導電体6との間に交流電圧を印加した状態で、電極22と第1導電体4との間に電源V3を用いて直流電圧を印加する。すると、第2導電体6側に発生したプラズマは、この電極22に引き寄せられて、プラズマ領域が下流側に拡大し、DPF13に流入する。
【0107】
これにより、放電領域11において帯電した粒子状不純物は、電極22に引き寄せられるとともに、DPF13に捕集され、DPF13の内部においてプラズマと反応し、改質される。すなわち、より多くの粒子状不純物を分解、改質させることが可能になる。
【0108】
また、誘電性構造体U1とDPF13の連結面にプラズマの流れに対する影部が存在しないため、すなわち、DPF13においてプラズマが通る経路がいわば太くなるため、プラズマは流れを阻害されること無く、より多くのプラズマがDPF13に流入する。その結果、流体中に含まれる微粒子状不純物をDPF13で捕集する場合、DPF13に捕集された粒子状不純物をより効率良く分解および改質させることができる。
【0109】
また、第2導電体6の貫通孔7の径を第1表面S1から離れるに従って大きくしたことから、流体の流れを阻害することない上に、プラズマと未反応の微量の微粒子状不純物が放電領域11を通過した場合でも、その粒子状不純物が第1表面S1に堆積しにくくなる。よって、第1表面S1の表面に堆積する微粒子状不純物の全体量を低減できることから、流体の圧力損失の増大を抑制でき、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して分解および改質することができる。
【0110】
(第6の実施の形態)
図13は、本発明の第6の実施の形態に係る反応装置100の構造的な構成を示す概念図である。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、第1の実施の形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0111】
反応装置100は、第1の実施の形態の誘電性構造体U1を備え、誘電性構造体U1により被処理流体を処理して排出する装置として構成されている。被処理流体は、例えば、自動車の内燃機関の排気ガスであり、貫通孔3における化学変化によりNOxが改質される。また、例えば、被処理流体は、冷蔵庫やエアコンに冷却媒体として使用されたフロンであり、貫通孔3における化学変化によりフロンが分解される。なお、以下では、反応装置100のうち、誘電性構造体U1以外の部分を、反応装置本体部101ということがある。
【0112】
反応装置本体部101は、被処理流体を供給する流体源103と、流体源103から誘電性構造体U1に被処理流体を導く供給管105と、誘電性構造体U1により処理された被処理流体を排出する排出管107と、被処理流体の流動を制御するための被処理流体用ポンプ109と、冷却媒体を供給する冷媒源111と、冷媒源111から誘電性構造体U1に冷却媒体を導く供給用流動管50A(冷却部の一例)と、誘電性構造体U1から冷媒源111に冷却媒体を導く排出用流動管50Bと、冷却媒体の流動を制御するための冷却媒体用ポンプ113(冷却部の一例)とを備えている。なお、上記流体源103および供給管105は、流体供給部をなす。
【0113】
流体源103は、被処理流体としての排気ガスを排出する自動車の内燃機関等、被処理流体を生成するものである。あるいは、流体源103は、使用済みの冷蔵庫やエアコンの冷却媒体を保持したタンク等、被処理流体を保持するものである。
【0114】
供給管105は、一端側が、流体源103の被処理流体を生成又は保持する空間に連通し、他端側が、誘電性構造体U1の貫通孔3に連通している。供給管105の誘電性構造体U1側は、貫通孔3の数に対応して第1分岐部105aA、第2分岐部105aB、第3分岐部105aC(以下、単に「分岐部105a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部105aA〜第3分岐部105aCは、それぞれ貫通孔3A〜貫通孔3Cに連通している。
【0115】
排出管107は、一端側が、誘電性構造体U1の貫通孔3に、供給管105とは反対側から連通し、他端側が、大気に開放され、又は、処理後の被処理流体を保持若しくは処理後の被処理流体に別の処理を施す不図示の空間に連通している。排出管107の誘電性構造体U1側は、貫通孔3の数に対応して第1分岐部107aA、第2分岐部107a
B、第3分岐部107aC(以下、単に「分岐部107a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部107aA〜第3分岐部107aCは、それぞれ貫通孔3A〜貫通孔3Cに連通している。なお、排出管107は、省略されてもよい。例えば、処理後の被処理流体が貫通孔3から大気へ直接的に排出されてもよい。
【0116】
供給管105及び排出管107は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。供給管105及び排出管107は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。分岐部105a及び分岐部107aと、貫通孔3との接続は、例えば、分岐部105a及び分岐部107aの端部を、基体2における貫通孔3の開口を有していない側面に当接させて、接着剤や螺合部材などの適宜な固定部材により分岐部105a及び分岐部107aと基体2とを固定することにより行われる。なお、分岐部105a及び分岐部107aを貫通孔3に嵌合挿入したり、流出用接続管等の突出した環状部分を貫通孔3の端部に基体2と一体的に形成し、その突出部分を分岐部105a及び分岐部107aに嵌合挿入することにより行われてもよい。
【0117】
被処理流体用ポンプ109は、供給管105及び排出管107の少なくともいずれかに設けられている。図10では、供給管105に設けられた場合を例示している。なお、流体源103が内燃機関である場合など、流体源103の動力により被処理流体が流動される場合には、被処理流体用ポンプ109は省略されてもよい。また、被処理流体用ポンプ109は、誘電性構造体U1に設けることも可能である。被処理流体用ポンプ109は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
冷媒源111は、例えば、熱交換器を含んで構成され、排出用流動管50Bからの冷却媒体の温度を熱交換器により降下させて供給用流動管50Aに供給する。なお、冷媒源111は、冷却媒体を供給することができればよく、排出用流動管50Bからの冷却媒体を受け入れて冷却媒体を循環させるものでなくてもよい。すなわち、排出用流動管50Bからの冷却媒体は、冷媒源111とは異なる場所へ排出されてよい。例えば、冷却媒体として水道水が利用されるような場合に、排出用流動管50Bからの水は、冷媒源111としての水源とは異なる場所へ排出されてよい。逆に、冷却媒体が循環される構成である場合には、冷媒源111は省略されてもよい。
【0118】
供給用流動管50Aは、一端が冷媒源111に連通するとともに、他端が、上述のように、流入用接続管等を介して誘電性構造体U1の貫通孔3(流路)に連通している。排出用流動管50Bは、一端が、基体2に一体的に設けられた流出用接続管等を介して誘電性構造体U1の貫通孔3に連通するとともに、他端が冷媒源111に連通している。流動管50は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。流動管50は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0119】
冷却媒体用ポンプ113は、供給用流動管50A及び排出用流動管50Bの少なくともいずれかに設けられている。図10では、供給用流動管50Aに設けられた場合を例示している。なお、冷媒源111が高位置にあるタンクであり、重力により冷却媒体を流動させることができるなど、適宜に冷却媒体を流動させる動力が得られる場合には、冷却媒体用ポンプ113は省略されてもよい。また、冷却媒体用ポンプ113は、誘電性構造体U1に設けることも可能である。冷却媒体用ポンプ113は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
【0120】
図14は、反応装置100の電気系の構成を示すブロック図である。ここでは、例として、基体2の内部に基体2の温度を検出するための温度検出素子115と、基体2を加熱するためのヒータ116とが設けられているものする。また、基体2の表面に、第1導電鯛4および第2導電体6に電圧を印加するための外部端子8および外部端子9、温度検出素子115からの電気信号を出力ためのセンサ用端子118、ヒータ116に電力を供給するためのヒータ用端子119がそれぞれ露出しているものとする。
【0121】
反応装置本体部101は、導電体用端子117、センサ用端子118、ヒータ用端子119に接続される装置側導電体用端子141、装置側センサ用端子143、装置側ヒータ用端子145を備えている。誘電性構造体U1は、これら端子を介して反応装置本体部101から電力が供給されて駆動制御される。具体的には、以下のとおりである。
【0122】
電源部121は、例えば、バッテリを含んで構成され、バッテリからの直流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。あるいは、商用周波数の交流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。電源部121の電力は、制御部123、放電制御部125、温度検出部127、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109、冷却媒体用ポンプ113に供給される。
【0123】
放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力に変換し、その変換後の電力を装置側導電体用端子141及び導電体用端子117を介して第1導電体4と第2導電体6に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。このとき、放電領域11では、放電制御部125により印加された電圧に応じた量の放電が行われる。
【0124】
また、放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電圧に変換し、その変換後の電力を装置側導電体用端子141及び導電体用端子117を介して第1導電体4と第2導電体6に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。このとき、電界領域15では、放電制御部125により印加された電圧に応じた電位勾配が形成され、電界領域15に帯電した微粒子状不純物を捕集することができる。
【0125】
温度検出部127は、例えば、温度検出素子115が温度変化により抵抗値が変化する抵抗体により構成されている場合、電源部121から供給される電力を適宜な電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側センサ用端子143及びセンサ用端子118を介して温度検出素子115に供給する。そして、温度検出素子115は、温度検出素子115の抵抗値を検出し、その検出した抵抗値に応じた信号を制御部123に出力する。温度検出素子115は、検出した抵抗値に基づいて温度検出素子115の温度を算出し、その算出値に応じた信号を制御部123に出力してもよい。
【0126】
ヒータ駆動部129は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側ヒータ用導電体145及びヒータ用導電体119を介してヒータ116に供給する。ヒータ駆動部129は、例えば、整流回路や変圧器等の電源回路を含んで構成されている。ヒータ116では、ヒータ駆動部129により印加された電圧に応じた量の発熱が行われる。
【0127】
被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113はそれぞれ、例えば、特に図示しないが、ポンプの駆動源としてのモータと、当該モータを駆動するモータドライバとを含んで構成されており、モータドライバは、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力又は直流電力に変換してモータに印加する。モータは、印加された電圧に応じた回転数で回転し、ひいては、印加された電圧に応じた力が被処理流体や冷却媒体に加えられる。
【0128】
入力部131は、ユーザの操作を受け付け、ユーザの操作に応じた信号を制御部123に出力する。例えば、入力部131は、反応装置100の駆動開始操作、駆動停止操作、温度設定や流量制御に係る各種のパラメータの設定操作を受け付け、操作に応じた信号を出力する。入力部131は、例えば、各種スイッチを含んだ制御パネルやキーボードにより構成されている。
【0129】
制御部123は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を備えたコンピュータにより構成されている。制御部123は、温度検出部127や入力部131からの信号に基づいて、放電制御部125、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113に制御信号を出力する。
【0130】
例えば、制御部123は、入力部131から反応装置100の駆動開始操作に応じた信号が入力された場合には、導電体用端子117への電力の供給を開始するように放電制御部125に制御信号を出力し、入力部131から反応装置100の駆動停止操作に応じた信号が入力された場合には、第1導電体4および第2導電体6への電力の供給を停止するように放電制御部125に制御信号を出力する。
【0131】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体U1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、第1導電体4および第2導電体6へ供給する電力を、通常運転時に供給する電力よりも増加させるように、放電制御部125に制御信号を出力し、誘電性構造体U1が目標温度に到達した場合には、第1導電体4および第2導電体6へ供給する電力を通常運転時に供給する電力に維持するように、放電制御部125に制御信号を出力する。
【0132】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体U1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、ヒータ116へ電力を供給し、又は、ヒータ116へ供給する電力を増加させるように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。そして、誘電性構造体U1が目標温度に到達した場合には、ヒータ116へ供給する電力を減少させ、又は、ヒータ116への電力の供給を停止するように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。
【0133】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、誘電性構造体U1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度、あるいは、誘電性構造体U1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の目標温度とを比較し、検出された温度が目標温度よりも高い場合には冷却媒体の流速を高く、低い場合には冷却媒体の流速を低くするように、冷却媒体用ポンプ113へ制御信号を出力する。
【0134】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体U1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、被処理流体の流速を低く、達したと判定した場合は、被処理流体の流速を高くするように、被処理流体用ポンプ109へ制御信号を出力する。
【0135】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、誘電性構造体U1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の温度範囲とを比較し、検出された温度が設定された温度範囲を超えた場合には、不図示の表示装置やスピーカ等の報知部に、異常の発生を報知するように制御信号を出力する。
【0136】
以上の第3の実施の形態によれば、反応装置100は、第1の実施の形態の誘電性構造体U1と、貫通孔3に被処理流体を供給する供給管105と、貫通孔3でプラズマ発生を行なって被処理流体を化学変化させた反応流体を排出するための排出管107とを備えているから、第1の実施の形態と同様に、誘電性構造体U1の耐久性の向上や誘電性構造体U1の小型化の効果が得られ、ひいては、反応装置100の耐久性の向上や小型化の効果が得られる。
【0137】
なお、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述においては、自動車、船舶、発電機等に使用されるディーゼルエンジン等の排気ガスの改質について説明を行っているが、その他の用途に使用される誘電性構造体およびその反応装置に適用しても良い。例えば、消臭、ダイオキシン分解、花粉分解等に使用される空気洗浄機器やプラズマエッチング、薄膜装置等に搭載される誘電性構造体および反応装置等に適用することができる。また、沿面放電により貫通孔3を通過する流体を反応または分解させるための誘電性構造体およびその反応装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1は、本発明の第1の実施の形態による誘電性構造体の正面図であり、図2は、図1におけるA−A’線における断面図である。
【図1】本発明の第1の実施の形態による誘電性構造体U1の正面図である。
【図2】図1におけるA−A’線における断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】第1の実施の形態による誘電性構造体の動作例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態による誘電性構造体の動作例を示す図である。
【図6】第1の実施の形態による誘電性構造体の動作例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態による誘電性構造体の動作例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による誘電性構造体を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態による誘電性構造体を示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態による誘電性構造体を示す断面図である。
【図11】第1乃至第4の実施の形態による誘電性構造体の変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態による誘電性構造体を示す断面図および電気的な接続を示す図である。
【図13】本発明の反応装置の構造的な構成例を示す概念図である。
【図14】図10の反応装置の電気系の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0139】
U1・・・・・・誘電性構造体
2・・・・・・基体
3・・・・・・貫通孔
4・・・・・・第1導電体
5・・・・・・第1導電体の貫通孔
6・・・・・・・第2導電体
7・・・・・・・第2導電体の貫通孔
8、9・・・・・外部端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、
前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、
前記誘電体における前記第1表面上、前記第1表面と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と
を有し、
前記貫通孔は、前記第1表面における開口の開口面積が、前記第2表面における開口の開口面積よりも大きい誘電性構造体。
【請求項2】
前記貫通孔の貫通方向に投影したとき、前記貫通方向に沿って離間した前記貫通孔における任意の2箇所のうち前記第2表面に近い箇所の内周面の位置が、前記第1表面に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側にある請求項1に記載の誘電性構造体。
【請求項3】
第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、
前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、
前記誘電体における前記第1導電体と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と、
前記誘電体における前記第1表面上に設けられた第3導電体と
を有し、
前記第3導電体は、前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面積が、該貫通方向に沿って前記第1表面から離れるに従って小さくなる誘電性構造体。
【請求項4】
第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、
前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、
前記誘電体における前記第1導電体と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と、
前記誘電体における前記第1表面上に設けられた第3導電体と、
前記第3導電体において前記第1表面に隣接する面と反対側の面に設けられた誘電性部材と
を有し、
前記誘電性部材は、前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面積が、該貫通方向に沿って前記第1表面から離れるに従って小さくなる誘電性構造体。
【請求項5】
第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する複数の誘電体と、
前記各誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置している第1導電体と、
前記各誘電体における前記第1表面上、前記第1表面と前記第2表面との間、又は前記第2表面上にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と
を有し、
複数の前記誘電体は、前記第1導電体と前記第2導電体が交互に位置するとともに、前記各誘電体に設けられた前記貫通孔が連通するように配列されており、
前記複数の誘電体の配列方向において一方の端部に位置する前記第1表面における前記貫通孔の開口面積は、前記配列方向において他方の端部に位置する前記第2表面における前記貫通孔の開口面積よりも大きい誘電性構造体。
【請求項6】
連通した複数の前記貫通孔からなる連続貫通孔の貫通方向に投影したとき、前記貫通方向に沿って離間した前記連続貫通孔における任意の2箇所のうち、前記配列方向における一方の端部に位置する前記第2表面に近い箇所の内周面の位置が、前記配列方向における他方の端部に位置する前記第1表面に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側にある請求項5に記載の誘電性構造体。
【請求項7】
前記第1導電体および前記第2導電体は、前記貫通孔に対応する位置に貫通孔をそれぞれ有した平板状の導体である請求項1から請求項6のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項8】
前記貫通孔の貫通方向に投影したときに、前記第2導電体の外縁部は、前記第1導電体の外縁部の内側に位置する請求項1から請求項7のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項9】
前記第2導電体は、前記貫通孔に対応する位置以外にも貫通孔を有する請求項1から請求項8のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源とを備えた放電装置。
【請求項11】
前記第1導電体と前記第2導電体との間に直流電圧を印加するための第2電源を備えた請求項10に記載の放電装置。
【請求項12】
請求項3または請求項4に記載の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源と、前記第1導電体と前記第3導電体との間に交流電圧を印加するための第2電源とを備えた放電装置。
【請求項13】
請求項3または請求項4に記載の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源と、前記第1導電体と前記第3導電体との間に交流電圧を印加するための第2電源と、前記第1導電体と前記第2導電体の間および前記第1導電体と前記第3導電体の少なくとも一方に直流電圧を印加する第3電源とを備えた放電装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13のいずれかに記載の放電装置と、前記貫通孔に前記第1表面側から前記第2表面側に流体を流す流体供給部と、前記放電装置の下流に設けられた集塵部を備えた流体改質装置。
【請求項15】
請求項10または請求項12に記載の放電装置と、前記貫通孔に前記第1表面側から前記第2表面側に流体を流す流体供給部と、前記誘電性構造体に関して前記流体供給部と反対側に設けられた電極と、前記電極と前記第1導電体との間に直流電位を供給する第3電源と、前記誘電性構造体と前記電極との間に設けられた集塵部とを備えた反応システム。
【請求項16】
請求項11に記載の放電装置と、前記貫通孔における前記第1表面側から前記第2表面側に流体を流す流体供給部と、前記誘電性構造体に関して前記流体供給部と反対側に設けられた電極と、前記誘電性構造体と前記電極との間に設けられた集塵部と、前記第2電源を、前記第1導電体と前記第2導電体との間および前記電極と前記第1導電体との間で切り換える切り換え部とを備える反応システム。
【請求項1】
第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、
前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、
前記誘電体における前記第1表面上、前記第1表面と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と
を有し、
前記貫通孔は、前記第1表面における開口の開口面積が、前記第2表面における開口の開口面積よりも大きい誘電性構造体。
【請求項2】
前記貫通孔の貫通方向に投影したとき、前記貫通方向に沿って離間した前記貫通孔における任意の2箇所のうち前記第2表面に近い箇所の内周面の位置が、前記第1表面に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側にある請求項1に記載の誘電性構造体。
【請求項3】
第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、
前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、
前記誘電体における前記第1導電体と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と、
前記誘電体における前記第1表面上に設けられた第3導電体と
を有し、
前記第3導電体は、前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面積が、該貫通方向に沿って前記第1表面から離れるに従って小さくなる誘電性構造体。
【請求項4】
第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する誘電体と、
前記誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置する第1導電体と、
前記誘電体における前記第1導電体と前記第2表面との間、又は前記第2表面上に設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と、
前記誘電体における前記第1表面上に設けられた第3導電体と、
前記第3導電体において前記第1表面に隣接する面と反対側の面に設けられた誘電性部材と
を有し、
前記誘電性部材は、前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面積が、該貫通方向に沿って前記第1表面から離れるに従って小さくなる誘電性構造体。
【請求項5】
第1表面と第2表面との間に少なくとも1つの貫通孔を有する複数の誘電体と、
前記各誘電体における前記第1表面と前記第2表面との間にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔の内周面に沿って位置している第1導電体と、
前記各誘電体における前記第1表面上、前記第1表面と前記第2表面との間、又は前記第2表面上にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が前記貫通孔に沿って位置する第2導電体と
を有し、
複数の前記誘電体は、前記第1導電体と前記第2導電体が交互に位置するとともに、前記各誘電体に設けられた前記貫通孔が連通するように配列されており、
前記複数の誘電体の配列方向において一方の端部に位置する前記第1表面における前記貫通孔の開口面積は、前記配列方向において他方の端部に位置する前記第2表面における前記貫通孔の開口面積よりも大きい誘電性構造体。
【請求項6】
連通した複数の前記貫通孔からなる連続貫通孔の貫通方向に投影したとき、前記貫通方向に沿って離間した前記連続貫通孔における任意の2箇所のうち、前記配列方向における一方の端部に位置する前記第2表面に近い箇所の内周面の位置が、前記配列方向における他方の端部に位置する前記第1表面に近い箇所の内周面の位置と同じ、又はより内側にある請求項5に記載の誘電性構造体。
【請求項7】
前記第1導電体および前記第2導電体は、前記貫通孔に対応する位置に貫通孔をそれぞれ有した平板状の導体である請求項1から請求項6のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項8】
前記貫通孔の貫通方向に投影したときに、前記第2導電体の外縁部は、前記第1導電体の外縁部の内側に位置する請求項1から請求項7のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項9】
前記第2導電体は、前記貫通孔に対応する位置以外にも貫通孔を有する請求項1から請求項8のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源とを備えた放電装置。
【請求項11】
前記第1導電体と前記第2導電体との間に直流電圧を印加するための第2電源を備えた請求項10に記載の放電装置。
【請求項12】
請求項3または請求項4に記載の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源と、前記第1導電体と前記第3導電体との間に交流電圧を印加するための第2電源とを備えた放電装置。
【請求項13】
請求項3または請求項4に記載の誘電性構造体と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に交流電圧またはパルス電圧を印加するための第1電源と、前記第1導電体と前記第3導電体との間に交流電圧を印加するための第2電源と、前記第1導電体と前記第2導電体の間および前記第1導電体と前記第3導電体の少なくとも一方に直流電圧を印加する第3電源とを備えた放電装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13のいずれかに記載の放電装置と、前記貫通孔に前記第1表面側から前記第2表面側に流体を流す流体供給部と、前記放電装置の下流に設けられた集塵部を備えた流体改質装置。
【請求項15】
請求項10または請求項12に記載の放電装置と、前記貫通孔に前記第1表面側から前記第2表面側に流体を流す流体供給部と、前記誘電性構造体に関して前記流体供給部と反対側に設けられた電極と、前記電極と前記第1導電体との間に直流電位を供給する第3電源と、前記誘電性構造体と前記電極との間に設けられた集塵部とを備えた反応システム。
【請求項16】
請求項11に記載の放電装置と、前記貫通孔における前記第1表面側から前記第2表面側に流体を流す流体供給部と、前記誘電性構造体に関して前記流体供給部と反対側に設けられた電極と、前記誘電性構造体と前記電極との間に設けられた集塵部と、前記第2電源を、前記第1導電体と前記第2導電体との間および前記電極と前記第1導電体との間で切り換える切り換え部とを備える反応システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−149053(P2010−149053A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330400(P2008−330400)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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